(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004180
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】小型経皮薬用袋
(51)【国際特許分類】
B65D 75/62 20060101AFI20240109BHJP
B65D 33/00 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
B65D75/62 A
B65D33/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103700
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】390033868
【氏名又は名称】株式会社メイワパックス
(74)【代理人】
【識別番号】110003797
【氏名又は名称】弁理士法人清原国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 静香
【テーマコード(参考)】
3E064
3E067
【Fターム(参考)】
3E064AA05
3E064BA17
3E064BA24
3E064BA36
3E064BA54
3E064BB03
3E064BC08
3E064BC18
3E064EA12
3E064FA01
3E064HN05
3E064HP01
3E064HP02
3E067AA12
3E067AB81
3E067AC01
3E067BA12A
3E067BB12A
3E067BB14A
3E067BB25A
3E067CA04
3E067CA24
3E067EA09
3E067EB02
3E067EB07
3E067FA01
3E067FB07
3E067FC01
3E067GD07
(57)【要約】 (修正有)
【課題】小型の経皮浸透性薬剤を含有させた薄型貼付薬を安全に密封包装でき、更に、包装された貼付薬を取り出す際、手切りによる引き裂きにより、開封性及び開口の大きさも向上させた、貼付薬を取り出しやすい小型経皮薬用袋を提供する。
【解決手段】合成樹脂製のフィルム及び金属箔から成る積層体の周縁部をシールすることで袋が形成される、経皮薬を含有する小型の貼付薬を密封包装する袋であって、当該袋は、当該袋を開口させるノッチ部と、当該ノッチ部を始点として、当該袋の表面あるいは裏面に、所定波長域のレーザー光を照射及び走査して形成された、1以上の開封線と、当該ノッチ部より誘導される当該開封線の最短箇所に、1以上の斜めに交差する形状を有する開封誘導線と、を設けて形成されてなる、小型経皮薬用袋を特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂製のフィルム及び金属箔から成る積層体の、周縁部をシールすることで袋が形成される、経皮薬を含有する小型の貼付薬を密封包装する袋であって、当該袋は、
当該袋を開口させるノッチ部と、
当該ノッチ部を始点として当該袋の表面あるいは裏面に、所定波長域のレーザー光を照射及び走査して形成された、1以上の開封線と、
当該ノッチ部より誘導される当該開封線の最短箇所に、1以上の斜めに交差する形状を有する開封誘導線と、
を設けて形成されてなる、小型経皮薬用袋。
【請求項2】
前記袋の右辺部または左辺部の上端部及び底辺部に前記ノッチ部が設けられ、
前記ノッチ部より誘導される、2以上の前記開封線により開封されて形成されてなる、
請求項1に記載の小型経皮薬用袋。
【請求項3】
前記ノッチ部より誘導される、2以上の各前記開封線が、前記袋の角部手前まで延出し、かつ角部で相互に交わらない、請求項2に記載の小型経皮薬用袋。
【請求項4】
前記積層体が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される1種以上である、請求項1または2に記載の小型経皮薬用袋。
【請求項5】
前記所定波長域のレーザー光が、炭酸ガスレーザー光である請求項1または2に記載の小型経皮薬用袋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、経皮薬を含有する貼付薬を密封包装可能な袋に関し、特に、経皮浸透性薬剤を含有させた小型シート状の貼付薬を安全に密封包装でき、更に、包装された内容物を取り出す際の開封も容易な小型経皮薬用袋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医薬品の内、沈痛消炎剤等の経皮浸透性薬剤を含有させた、粘着シート状の薄膜貼付薬(「膏薬」とも言う)を密封包装する包装袋として、例えば、基材層、バリア層、ポリオレフィン系樹脂から成るシーラント層等を、接着層を介して積層させた積層体を、ヒートシール(熱融着)して作製した包装袋が使用されている。
【0003】
しかしながら、上記の包装袋を用いて小型のシート形状を有する貼付薬を密封包装する場合、手切りにより袋を開封しても袋の開口が小さく、貼付薬を取り出しにくい状況にあった。
【0004】
そのような状況下で、特許文献1では、香りや有効成分の吸着のないシーラント層で、かつアルミニウム箔を介在させずに遮光性とガスバリア性を保持して環境負荷の低減に貢献し、開封に際し引き裂き可能な外装材とパップ剤用外装袋が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、貼付薬を包装する袋の製造方法として、包装袋に用いる積層体の製造の際に排出される有機溶剤の量を削減でき、更に、包装された内容物を取り出す際の包装袋の開封性も向上させた貼付薬用包装袋の製造方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2で開示される袋は、1ヵ所からの手切りによる引裂きによって形成される開口が、引き裂き性に従って直線状に形成され、直線状の開口が前後に重なるため、表側及び裏側の合成樹脂製フィルムを離間させにくく、袋の開封性が悪くなる問題点が生じており、手切りによる引裂き性も悪く、ハサミ等を用いて開封するわずらわしさも生じていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002-166495号公報
【特許文献2】特許6065965号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、経皮浸透性薬剤を含有させたシート状の貼付薬を安全に密封包装でき、更に、包装された貼付薬を取り出す際、手切りによる引き裂きから袋の開封性及び開口の大きさも向上させた、貼付薬を取り出しやすい小型経皮薬用袋を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、合成樹脂製のフィルム及び金属箔から成る積層体の周縁部をシールすることで袋が形成される、経皮薬を含有する小型の貼付薬を密封包装する袋であって、当該袋は、
当該袋を開口させるノッチ部と、
当該ノッチ部を始点として当該袋の表面あるいは裏面に、所定波長域のレーザー光を照射及び走査して形成された、1以上の開封線と、
当該ノッチ部より誘導される当該開封線の最短箇所に、1以上の斜めに交差する形状を有する開封誘導線と、
を設けて形成されてなる、小型経皮薬用袋に関する。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記袋の右辺部または左辺部の上端部及び底辺部に前記ノッチ部が設けられ、
前記ノッチ部より誘導される、2以上の前記開封線により開封されて形成されてなる、
請求項1に記載の小型経皮薬用袋に関する。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記ノッチ部より誘導される、2以上の各前記開封線が、前記袋の角部手前まで延出し、かつ角部で相互に交わらない、請求項2に記載の小型経皮薬用袋に関する。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記積層体が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド樹脂、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択された1種以上である、請求項1または2に記載の小型経皮薬用袋に関する。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記所定波長域のレーザー光が、炭酸ガスレーザー光である請求項1または2に記載の小型経皮薬用袋に関する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明の小型経皮薬用袋によれば、合成樹脂製のフィルム及び金属箔から成る積層体の、周縁部をシールすることで袋が形成される、経皮薬を含有する小型の貼付薬を密封包装する袋であって、当該袋は、
当該袋を開口させるノッチ部と、
当該ノッチ部を始点として当該袋の表面あるいは裏面に、所定波長域のレーザー光を照射及び走査して形成された、1以上の開封線と、
当該ノッチ部より誘導される当該開封線の最短箇所に、1以上の斜めに交差する形状を有する開封誘導線と、
を設けて形成されてなることで、開封時に当該袋の表面及び裏面に段差が生じて、指が掛けやすくなり、袋の開口が大きくなるので、開封方向に関わらず内容物の取り出しが容易となる効果を奏する。
更に開封線を1以上設けることで、開封線が脱線しても袋の開封がしやすくなる効果を奏する。
【0015】
請求項2に係る発明の小型経皮薬用袋によれば、前記袋の右辺部または左辺部の上端部及び底辺部に前記ノッチ部が設けられ、前記ノッチ部より誘導される2以上の前記開封線により開封されて形成されてなることで、袋の右辺部または左辺部の上端部、及び底辺部の2箇所から開封して、内容物の大きさや開封順に関係なく開口が大きくなり、内容物の取り出しが容易となる効果を奏する。
更に、開封線を2以上設けることで、袋の開封し難さに伴う脱線を防止する効果を奏する。
【0016】
請求項3に係る発明の小型経皮薬用袋によれば、前記ノッチ部より誘導される、2以上の各前記開封線が、前記袋の角部手前まで延出し、かつ角部で相互に交わらないことで、袋の底辺部もしくは、右辺部または左辺部のいずれかより先に開封しても段差が生じ、一方の開封線に脱線せず、袋の角部が留まるので、開口が大きくなり、袋の開封性が良好となる効果を奏する。
【0017】
請求項4に係る発明の小型経皮薬用袋によれば、前記積層体が、ポリエステル系樹脂、ポリアミド合成樹脂、及びポリオレフィン系樹脂からなる群から選択される1種以上で構成される積層体の配向により、袋の開封し難さが軽減されるので、開封がより容易となる効果を奏する。
【0018】
請求項5に係る発明の小型経皮薬用袋によれば、前記所定波長域のレーザー光が、炭酸ガスレーザー光であることで、レーザー光を袋に照射しても、袋の構造を損なわずに加工可能な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る小型経皮薬用袋のオモテ面を示す正面図である。
【
図2】本発明に係る小型経皮薬用袋のウラ面を示す正面図である。
【
図3】本発明に係る小型経皮薬用袋の開封線、開封誘導線及びノッチ部の配置を示す模式図である。
【
図4】本発明に係る小型経皮薬用袋の開封誘導線を示す正面図である。
【
図5】本発明に係る小型経皮薬用袋の表面及び裏面での開封線、開封誘導線及び角部の位置関係を示す正面図である。
【
図6】本発明に係る小型経皮薬用袋のレーザー光を照射した積層体の構成を示す断面図である。
【
図7】本発明に係る小型経皮薬用袋にて、経皮薬を包装した模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る小型経皮薬用袋の好適な実施形態について、図面を参照しながら袋の一例を示して詳細に説明する。
図1及び
図2は、本発明に係る小型経皮薬用袋の一例を示す正面図であり、
図1は、包装袋の表面を構成する正面図、
図2は、
図1に示す包装袋の裏面を構成する正面図である。
小型経皮薬用袋1は、袋の周縁部がシールされた所謂シール袋であり、袋本体に開封線を有し、袋本体の表面及び裏面に形成される。
【0021】
後述するように、当該袋は、少なくとも2以上の層が積層される積層体を構成する合成樹脂製フィルムがシールされて、袋状に形成される。具体的には、上記積層体を有する表面側フィルム100aと、同様の構造である裏面側フィルム100bとの周縁部をシールすることで袋状に形成されている。
【0022】
図1乃至
図3及び
図5に例示されるように、当該袋1の右辺部または左辺部の、上方の所定位置及び底辺部の所定位置にそれぞれ、手切りによる引裂きを容易に開始させる切り込み等のノッチ部40(引裂き開始部)、ノッチ部40からの引裂きによる開封を誘導するために、当該フィルムを線状に弱化させた第1開封線10、第2開封線20及び第3開封線30が、前記袋の角部41の手前まで延出して設けられ、各開封線より開封すると、各開封線が角部41で相互に交わらないように形成されている。
ここで、角部41に対向する側の領域に、内容物(薄型形状を有する医薬品)の収容部が形成され、各開封線より開封することで開口が大きく形成され、収容部から内容物を取り出すことができる。
【0023】
さらに詳述すると、表面側フィルム100aには、
図1、
図3及び
図5に示すように、第1開封線10が形成され、第1開封線10は、第1主開封線11及び第1副開封線13を含む。
第1主開封線11は、ノッチ部40より下方の所定位置である、角部41の手前まで直線的に延びるように形成されており、第1副開封線13が、ノッチ部40に対して第1主開封線11と逆側の所定位置に、ほぼ互いに平行に形成されている。
また、6つの第1開封誘導線12(121、122、123、124、125,126(図示せず))及び第2開封誘導線14(141、142、143、144、145,146(図示せず))が、第1主開封線11と第1副開封線13との間隔内において、シールされた袋の周縁部から離れるまたは近づく方向に、かつ、第1主開封線11及び第1副開封線13に向けてそれぞれ斜めに延びるように形成されている(
図4参照)。
【0024】
裏面側フィルム100bにおいては、第2開封線20が形成されており、第2主開封線21及び第2副開封線23を含む。
第2主開封線21及び第2副開封線23は、略互いに平行にノッチ部40より上方の所定位置から、角部41の手前まで直線的に延びるように形成されている(
図2及び
図5参照)。
【0025】
同様に、表面側フィルム100a及び裏面側フィルム100bの底面部に、ノッチ部40から角部41の手前まで直線的に延びる第3開封線30が、巾を設けて少なくとも2本以上、望ましくは3本形成されている(
図1乃至
図3及び
図5参照)。
【0026】
なお、小型経皮薬用袋1において、表面側フィルム100aに形成された第1開封線10(第1主開封線11、第1副開封線13)と、裏面側フィルム100bに形成された第2開封線20(第2主誘導線21、第2副開封線23)、第3開封線30、第1開封誘導線12及び第2開封誘導線14との相対的な位置関係は、
図3に示すようになる。
【0027】
ここで、第1主開封線11と第2主開封線21は重ならないように形成されている(
図3参照)ので、表面側フィルム100aの開封口と裏面側フィルム100bの開封口とは、少なくとも、第1主開封線11と第2主開封線21、及び/または第1副開封線13と第2副開封線23との対応した部分では重ならずに、ずれた状態になる。このずれ量は、第1主開封線11と第2主開封線21または第2副開封線23の間隔、もしくは第1副開封線13と第2主開封線21または第2副開封線23の間隔で対応する。そして、そのずれた部分の表面側フィルム100aまたは裏面側フィルム100bを摘んで、小型経皮薬用袋1を容易に開封することができる。
【0028】
この場合、表面側フィルム100aに形成された第1主開封線11と裏面側フィルム100bに形成された第2主開封線21とは、ノッチ部40から始まる開封方向に配置されるので、第1主開封線11と第2主開封線21との間隔を比較的大きく設定することができ、結果として、第1主開封線11に対応する表面側フィルム100aの開封口と、裏面側フィルム100bの開封口とのずれ量を大きくすることができる。
【0029】
また、表面側フィルム100aに形成された第1開封誘導線12(121、122、123、124、125,126(図示せず))と、第1開封誘導線とは逆方向に斜めに配向するように形成された第2開封誘導線14(141、142、143、144、145,146(図示せず))とが重ならないので(
図3及び
図4参照)、ノッチ部40から始まる表面側フィルム100aの開封にて、より少ない時間差で、表面側フィルム100aでは第1主開封線11及び第1副開封線13に、それぞれ誘導されて段差が形成され、同様に底辺部に設けられたノッチ部40により切り裂きにて第3開封線30により開封されて、表面部及び裏面部を容易に摘持して互いに離れる方向にそれぞれ引くことで、小型経皮薬用袋1を容易に開封することができる。
なお、当該袋1は、ノッチ部40よりも袋上部を奥(背面)側に引く場合と、手前(前)側に引く場合でも同様に開封する事が可能である。
【0030】
なお、上述した小型経皮薬用袋1において、表面側フィルム100aにノッチ部40を挟んで形成された第1主開封線11と第1副開封線13との間隔と、裏面側フィルム100bにノッチ部40を挟んで形成された第2主開封線21と第2副開封線23との間の間隔は、異なるほうがよい。
【0031】
更に、第1開封誘導線12と第2開封誘導線14とは、重ならないように表面側フィルム100aに形成する。この場合、表面側フィルム100aでは、ノッチ部40からの引裂きを、袋上部を奥(背面)側に引く場合は、第1開封誘導線12を経由して第1主誘導線13に、また、手前(前)側に袋上部を引く場合は、第2開封誘導線14を経由して第1主誘導線11にそれぞれ誘導することができる。
ここで、第1開封誘導線12及び第2開封誘導線14に形成される線数は、例示される6つに限定されず、1つ以上であれば良く、好ましくは3つ以上がよい。
【0032】
一方、
図6に例示されるように、当該袋1を形成する表面側フィルム100a及び裏面側フィルム100bは、小型経皮薬用袋本体1の外側から内側に向かって順に、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、及び/またはナイロン(NY)6,ナイロン6,6等のポリアミド系樹脂から成る基材層101、アルミ箔から成る金属箔層102及びシーラント層103の3層が積層した積層体である樹脂フィルム100として形成され、基材層101とシーラント層103とは接着層を介して接着される。
なお、上記積層体を構成する層は、前述した3つに限定されず、基材層とシーラント層が含まれる2層以上の層があれば良い。
【0033】
基材層101の下面の所定位置に、内容物に関する情報(文字や図柄等)が印刷される印刷層104が形成されるが、基材層101の上面(外側)に設けてもよく、所定位置に配したインキにより、厚さ約1~3μmに形成される。
なお、内容物に関する情報が印刷されたシートを、袋の前面部及び背面部の外面に貼着してもよい。
【0034】
基材層101を構成する、ポリエチレンテレフタレート等のポリエチレン系樹脂は、透明性が高く、伸び縮みし難い寸法安定性の良い性質を有し、印刷層としても好適である。また、ナイロンをはじめとするポリアミド合成樹脂は、衝撃や折り曲げに強く、穴が開き難い性質を有し、強度が確保されうる。
基材層101は、後述する炭酸ガスレーザー光の一部を吸収する材料を広く採用でき、ポリブチレンテレフタレートでできたPBT層、ポリエチレンテレフタレートとポリブチレンテレフタレートの共押出フィルムでできた層、ポリエチレンテレフタレートとナイロンの共押出フィルムでできた層、ポリブチレンテレフタレートとナイロンの共押出フィルムでできた層等が例示される。なお、基材層101の厚さは、約5~100μmに形成されることが望ましく、好ましくは9~40μmである。
【0035】
シーラント層103は、60℃~180℃程度で溶融する性質を有し、熱融着に適した層であり、対向する同層が互いに熱接着または熱融着されることで、シーラント部として形成される。なお、シーラント層103の厚さは、約20~100μmに形成されることが望ましい。
また、シーラント層103を構成するフィルムは、熱接着及び熱融着性を有する材料を広く採用することができ、特にオレフィン系樹脂フィルム(PEF)により形成されるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)や、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)や低密度ポリエチレン(LDPE)により形成してもよく、ポリプロピレン(無延伸ポリプロピレン:CPP)により形成してもよい。
【0036】
接着層は、例えば約5~30μmの厚さを有するポリエチレン等により形成される。エクストルージョンコーター(図示せず)等を用いた押出し法により、接着層を介して基材層101とシーラント層103とが接着される。また、ウレタン系等の接着剤から成る接着層を用いたドライラミネート法、ノンソルベントラミネート法により、基材層101とシーラント層103とを接着してもよい。
更に、金属箔層102は、この層を境として空気(酸素)等のガスや水分を遮蔽する層であり、アルミ箔等の金属箔層102に限定されず、上記性質を有する他材料から形成される層であってもよい。
【0037】
また、当該袋の表面部及び裏面部の外側(
図6の矢印方向)からレーザー光を照射する(
図6参照)。この時、基材層101のレーザー光が照射された部分において、基材層101に到達したレーザー光のエネルギーの少なくとも一部が基材層101に吸収され、吸収したエネルギーにより基材層101が発熱及び溶融され、レーザー光が照射された軌跡に沿って基材層101の全て又は一部が切断され、開封線としての線状溝105が形成される。
上述の実施形態では、開封線及び開封誘導線を形成するレーザー光として、炭酸ガスレーザー光を例示しているが、これに限定されず、YAGレーザー光、YVO4レーザー光、アルゴンイオンレーザー光、半導体レーザー光等を用いてもよい。
【0038】
したがって、袋の表面及び裏面にレーザー光を照射及び走査(移動)することで、基材層101に開封線及び開封誘導線が形成される。
この時、強度確保されうる特性を有する、開封しても引裂き難いポリアミド合成樹脂であるナイロンを基材層に適用しても、開封線としての線状溝が形成され、開封誘導線に誘導されながら、開封線の延びる方向に引裂かれ易くなる。
更に、金属箔層102も、基材層101に形成される開封線によって誘導される引裂きに連れ、当該開封線の延出する方向に引裂かれ易くなる。
【0039】
また、樹脂延伸フィルムは、特定の方向に引裂かれ易い特性を有し、特に、ナイロン等のポリアミド合成樹脂が、顕著に上記特性が発現されるため、開封時に所望する方向でない方向へ引き裂かれる場合がある。そのような特性の影響下においても、ノッチ部からの引き裂きにより、前記開封線に沿って所望の方向に確実に誘導することができ、小型経皮薬用袋1を容易に開封することが可能となる。
【0040】
ゆえに上記したように、レーザー加工後に、袋の表面及び裏面を、シーラント層103を接触させて、加熱及び加圧することで熱接着または熱融着を行いシールすることで、内容物を収容できうる包装袋として、易開封性を備えた小型経皮薬用袋を実現することができる。
【実施例0041】
以下に、本発明に係る小型経皮薬用袋に関する実施例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明はこの実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
<小型経皮薬用袋の作製>
試験片は、基材層101として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名:E5202、東洋紡株式会社製)を使用した。また、シーラント層103として、30μmのポリエステルフィルム(商品名:ハイトロンPG、タマポリ株式会社製)をそれぞれ使用した。そして、ドライラミネート法により各フィルムを積層させて、積層体である樹脂フィルム100を形成した。
【0043】
樹脂フィルム100の外側から炭酸ガスレーザー光を照射して開封線及び開封誘導線をそれぞれ形成した。炭酸ガスレーザー光は、炭酸ガスレーザー光照射装置(装置名:LP-400、パナソニック株式会社製)を用いて照射した。
その後、上記樹脂フィルムを用いて、それぞれ当該袋の表面と裏面を互いにシーラント層103が接触するように重ね合わせ、熱融着してシールすることで、包装袋1を形成した。
【0044】
上記の行程を経て、貼付薬を取り出すのに十分な開口を形成されうる、本発明に係る小型経皮薬用袋を製造できることが分かった。
【0045】
なお、本発明は、上記実施形態以外にも本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形を行うことが可能である。
例えば、本発明では、湿布等の薄型貼付薬に用途を限定しているが、それ以外にも本構成の袋では円形パッチ状の禁煙補助薬や、金属箔層を外した袋の構成にすれば、絆創膏等の剥離紙を有する経皮薬剤に適用することが可能である。