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特開2024-41805皮膚水分量、皮膚油分量の増加及び/又は維持剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041805
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】皮膚水分量、皮膚油分量の増加及び/又は維持剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/10 20160101AFI20240319BHJP
   A61K 35/586 20150101ALI20240319BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61K 8/98 20060101ALI20240319BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A23L33/10
A61K35/586
A61P17/00
A61P43/00 105
A61K8/98
A61Q19/00
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023220188
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2023101516の分割
【原出願日】2019-04-12
(71)【出願人】
【識別番号】504374182
【氏名又は名称】株式会社中栄薬化交易
(71)【出願人】
【識別番号】391034879
【氏名又は名称】日成興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】海川 直人
(72)【発明者】
【氏名】藤田 忠
(57)【要約】      (修正有)
【課題】皮膚水分量や皮膚油分量を増加させる及び/又は維持させるための作用剤、ならびにこれらの作用剤を含有する組成物を提供すること。
【解決手段】スッポン成分(スッポンオイル、スッポン粉末など)を含有することを特徴とする、皮膚水分量の増加及び/又は維持剤、皮膚油分量の増加及び/又は維持剤、ならびに、これらの作用剤を含有する組成物、好ましくは、皮脂欠乏症、皮脂欠乏性湿疹、乾皮症、アトピー性皮膚炎、乾燥肌、ひび、あかぎれ等を治療及び/又は予防するために好適に使用することができる飲食品、美容用飲食品。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚水分量、皮膚油分量の増加及び/又は維持剤に関する。より詳しくは、本発明は、皮膚水分量の増加及び/又は維持剤、皮膚油分量の増加及び/又は維持剤、ならびにこれらの剤を含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
高齢化が社会問題となっている現代社会において、高齢者が健康で長生きするための研究が多様な方面から進んでおり、健康と皮膚の状態についても多くの研究がおこなわれている(非特許文献1参照)。また、高齢者に拘わらずアトピー性皮膚炎の成因や悪化についても皮膚のバリア機能の低下による皮膚の乾燥(atopic dry skin)が関係していることが指摘されており、角質層バリアの修復による皮膚の保水性改善や皮脂成分の消失防御がその治療法の一つとなっている。皮膚のバリア機能は生体組織に必要な水分の放出を防ぎ、生体機能を維持するうえで必須であるが(非特許文献2参照)、正常なバリア機能を維持するには皮膚外層の厚さ20μm程度の角質層にある水分が大きく寄与しており(非特許文献1参照)、角質層の水分保持は重要な要素となっている。
【0003】
スッポンは、古来より食物や薬物として利用され、中国最古の医学書「神農本草経」にも収載されている。そして、アミノ酸をはじめ、ビタミン、ミネラル、コラーゲンなどの栄養素を豊富に含んでいることから、滋養強壮、貧血予防、骨粗鬆症予防、美肌効果、生活習慣予防などの様々な効能があると言われている。しかし、優れた効果があるという評判はありながら、それらの根拠を示す化学的研究がほとんどされておらず、例えば、細小血管に対する収縮増強・抑制作用やクレアチンキナーゼ活性を抑制して持久力向上・抗疲労作用などが奏されることが報告される(非特許文献3、4参照)にとどまるのが現状である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】白井喜代子他、成人女性の前腕表皮角質層の水分量、母性衛生44(4)、504-514、2003
【非特許文献2】心身健康科学、10巻1号、25~32(2014)
【非特許文献3】難波恒雄他、“鼈の研究(第一報)スッポン抽出物のマウス細小血管に対する効果について”、薬学雑誌、1984、Vol.104、No.9、997-1003頁
【非特許文献4】大森貴舟、“ミミズ・スッポン等動物系ヘルスフード素材の持久力向上・抗疲労作用”、東京海洋大学修士学位論文、2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
肌は、表面から表皮層、真皮層、皮下組織という順に存在し、表皮層は角質層と新しい皮膚を作る基底層からなる。一方、コラーゲンは、真皮、腱、軟骨等の主成分であり、真皮においては肌の弾力維持、水分保持、潤いを保つ役割を果たしていると言われている。しかし、経口により摂取されたコラーゲンは、体内でペプチド又はアミノ酸に分解されるため、期待される部位においてコラーゲンの効果が発揮されるとは限らず、スッポンを食することによる美肌効果作用は未だ不明な点がある。
【0006】
また、スッポンを食することにより、皮膚の水分量や油分量が増加及び/又は保持される作用が奏されることは知られていない。
【0007】
本発明は、皮膚水分量の増加及び/又は維持剤ならびに該剤を含有する組成物を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、皮膚油分量の増加及び/又は維持剤ならびに該剤を含有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、スッポンを経口摂取することにより、皮膚の水分量の他、油分量も維持又は増加するということを見出し、さらに検討を重ねて本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、下記〔1〕~〔11〕に関する。
〔1〕 スッポン成分を含有する、皮膚水分量の増加及び/又は維持剤。
〔2〕 スッポン成分を含有する、皮膚油分量の増加及び/又は維持剤。
〔3〕 スッポン成分を含有する、皮膚疾患の改善及び/又は予防剤。
〔4〕 スッポン成分がスッポンの粉末である、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の剤。
〔5〕 スッポン成分がスッポンのエキスである、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の剤。
〔6〕 スッポン成分がスッポンのオイルである、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の剤。
〔7〕 経口摂取される用途に用いられる、前記〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の剤。
〔8〕 飲食品添加剤用である、前記〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の剤。
〔9〕 スッポン成分を含有する、前記〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の用途に用いられるための組成物。
〔10〕 飲食品である、前記〔9〕記載の組成物。
〔11〕 美容用である、前記〔10〕記載の組成物。
【0011】
また、本発明は、下記の態様も包含する。
〔12〕 前記〔1〕~〔8〕のいずれかに記載の剤を経口投与する工程を含む、皮膚疾患の予防及び/又は治療方法。
〔13〕 皮膚疾患の予防及び/又は治療するための、スッポン成分の使用。
〔14〕 皮膚疾患の予防及び/又は治療剤を製造するための、スッポン成分の使用。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、皮膚の水分量を増加及び/又は維持させる作用に優れた剤を提供することができる。
【0013】
また、本発明によれば、皮膚の油分量を増加及び/又は維持させる作用に優れた剤を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、スッポン粉末の服用によるヘアレスマウスの背部皮膚の皮膚厚みの違いを確認した結果を示す図である。
図2図2は、スッポン粉末の服用によるヘアレスマウスの背部皮膚の表皮層の厚みの違いを確認した結果を示す図である。
図3図3は、スッポン粉末の服用によるヘアレスマウスの背部皮膚のコラーゲン層の厚みの違いを確認した結果を示す図である。
図4図4は、スッポン粉末の服用によるヘアレスマウスの背部皮膚の水分含量推移を確認した結果を示す図である。
図5図5は、スッポン粉末の服用によるヘアレスマウスの背部皮膚の水分蒸散量推移を確認した結果を示す図である。
図6図6は、スッポンオイル服用前後の肌水分値を確認した結果を示す図である。
図7図7は、スッポンオイル服用前後の肌水分値の男女差を確認した結果を示す図である。
図8図8は、スッポンオイル服用前後の肌油分値を確認した結果を示す図である。
図9図9は、スッポンオイル服用前後の肌油分値の男女差を確認した結果を示す図である。
図10図10は、スッポン粉末服用前後の肌水分値を確認した結果を示す図である。
図11図11は、スッポン粉末服用前後の肌水分値の男女差を確認した結果を示す図である。
図12図12は、スッポン粉末服用前後の肌油分値を確認した結果を示す図である。
図13図13は、スッポン粉末服用前後の肌油分値の男女差を確認した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の皮膚水分量の増加及び/又は維持剤、ならびに、皮膚油分量の増加及び/又は維持剤は、スッポン成分を有効成分とすることを特徴とする。以降、これらをまとめて本発明の作用剤と記載することもある。
【0016】
スッポンにはコラーゲン等の栄養分が豊富に含まれるが、コラーゲンは経口摂取により体内でペプチド又はアミノ酸に分解されたのち再吸収されるのでコラーゲン本体による肌への作用が期待できるものではないところ、本発明はスッポンを経口摂取することにより、意外にも、肌、好ましくは表皮の水分及び油分そのものが増加又は維持されることに基づくものである。
【0017】
本発明におけるスッポン成分は、スッポンに対し人為的な処理を施して得られたものであれば特に限定はない。スッポンそのものの加工品(例えば、裁断物、破砕物、粉砕物、粉末、乾燥物)であってもよく、エキスであってもよい。また、オイル(例えば、水蒸気蒸留物、搾汁液、圧搾物、溶剤抽出物、超臨界流体抽出物)であってもよい。これらの組み合わせであってもよい。スッポンは、従来食用として利用されているため、本発明のスッポン成分は安全性が高いことが分かる。
【0018】
スッポンは、産地は特に限定されず、日本産、台湾産、中国産等、どのような産地から入手されたものであってもよい。また、品種も特に限定されず、シナスッポン、キョクトウスッポンなどが挙げられる。
【0019】
使用される部位も特に限定はない。スッポン個体の全体であっても部分(例えば、胴体、手足、頭部、尾部、胆のう、血液、卵、脂肪、甲羅)であってもよい。
【0020】
スッポンの加工品は、公知の方法に従って加工して得ることができる。その大きさは特に限定されず、例えば、スッポンの粉砕物は、内臓や脂肪などを除去し乾燥させて得られた原料スッポンを、必要により破砕後、公知の粉砕機に供して得ることができる。
【0021】
スッポンのエキスは、公知の方法に従って溶媒により抽出し、溶媒を留去することにより得ることができる。
【0022】
抽出溶媒としては、例えば、低級アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、イソブチルアルコール等)、多価アルコール(エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン等)、エーテル(ジオキサン、メチルエチルエーテル、ジエチルエーテル等)、ハロゲン化炭化水素(クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等)、極性溶媒(ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等)のほか、酢酸エチル、トルエン、n-ヘキサン、石油エーテル等の各種有機溶媒、或いは水等を、それぞれ単独で又は2種以上組み合わせて用いることが出来る。
【0023】
抽出温度は、用いる溶媒やスッポン原料の部位・形態などによって一概には設定することができないが、抽出効率の観点から、下限としては4℃、上限としては150℃を挙げることができる。本発明においては、前記した温度範囲内であれば上限値や下限値を適宜設定することができ、例えば、10℃、15℃、20℃、30℃、40℃、60℃、80℃、100℃、120℃、140℃等を上限値あるいは下限値として設定することができる。抽出時間は、抽出に供する原料の使用量や装置に応じて適宜設定することができる。
【0024】
スッポンのオイルは、公知の方法に従って処理して得ることができる。例えば、脂肪などを除去した原料スッポンを圧搾して得ることができる。
【0025】
得られたエキスやオイルは、そのまま用いてもよく、ろ過、遠心分離、精製、濃縮、希釈、限外ろ過、透析、凍結乾燥、粉末化、及び分画からなる群より選ばれる1種又は2種以上の処理を公知の方法に従って行ってから用いてもよい。必要により、常圧下又は減圧下で前記処理を行うことができる。また、公知の殺菌処理に供してもよい。
【0026】
スッポン成分の形状は、特に限定されず、固体状、液体状のいずれの形状であっても良い。スッポン加工品やエキス、オイルをそのまま用いてもよく、それらを適当な媒体又は分散剤に溶解又は分散させて使用してもよい。また、上記調製品以外にも、市販品を用いることもできる。
【0027】
本発明の作用剤は、前記スッポン成分を有効成分として含有するのであれば特に限定はなく、作用剤におけるスッポン成分の含有量は、例えば、0.1~100重量%が例示される。
【0028】
本発明の作用剤は、経口摂取することにより皮膚における水分及び/又は油分の含量を増加及び/又は維持する作用を奏することができる。これにより、例えば、皮膚疾患を改善及び/又は予防するために、より効果的に用いることができる。よって、本発明の一態様として、スッポン成分を含有する、皮膚疾患の改善及び/又は予防剤を挙げることができる。皮膚疾患としては、皮膚を保湿することにより症状の改善が認められる疾患であれば限定されず、例えば、皮脂欠乏症、皮脂欠乏性湿疹、乾皮症、アトピー性皮膚炎、乾燥肌、ひび、あかぎれ等を挙げることができる。
【0029】
本発明はまた、本発明の有効成分である、スッポン成分を含有する組成物を提供する。本発明の組成物は、前記有効成分を含有するため、皮膚の水分量や油分量を増加及び/又は維持するために用いることができる。本発明の組成物は、前記有効成分を経口により体内に摂取することができる形態であれば特に限定はなく、例えば、内服剤組成物としての形態が例示される。
【0030】
内服剤組成物としては、医薬や飲食品として用いることができる。これらの組成物は、公知の医薬品、医薬部外品又は飲食品を調製する際に、その原材料に本発明のスッポン成分を用いれば、公知の製造方法に従って調製することができる。具体的には、例えば、本発明のスッポン成分に、所望により溶剤、分散剤、乳化剤、緩衝剤、安定剤、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤等を加えて、公知の方法に従って、錠剤、顆粒剤、散剤、粉末剤、カプセル剤(ソフトカプセル剤、ハードカプセル剤を含む)等の固形剤や、通常液剤、懸濁剤、乳剤等の液剤等に製剤化することができる。また、例えば、炭酸飲料、天然果汁、果汁飲料、清涼飲料水(果汁入りも含む)、果肉飲料、果粒入り果実食品、野菜系飲料、豆乳・豆乳飲料、コーヒー飲料、お茶飲料、ゼリー飲料、粉末飲料、濃縮飲料、スポーツ飲料、栄養飲料、アルコール飲料等の嗜好飲料類;パン、麺類等の小麦粉食品;キャラメル・キャンディー、チューイングガム、チョコレート、クッキー・ビスケット、ゼリー等の菓子類;しょうゆ、ソース類、カレーの素、たれ類、ドレッシング、スパイス等の調味料;バター、マーガリン、マヨネーズ等の油脂食品;牛乳・加工乳、乳飲料、ヨーグルト類、チーズ、アイスクリーム等の乳・乳製品;栄養食品;健康食品;美容食品;サプリメント等の原材料に本発明のスッポン成分を混合して、公知の方法に従って調製することもできる。これらの組成物における、本発明のスッポン成分の混合方法は、その形態や目的に応じて適宜設定することができる。
【0031】
本発明の組成物は、スッポン成分をこれらと同じ用途に使用可能な他の成分、例えば公知の皮膚の水分や油分を増加及び/又は維持する作用を有する成分(例、ヒアルロン酸、セラミド、プラセンタ、各種アミノ酸、ビタミン)等と共に含有することができる。
【0032】
また、飲食品に本発明のスッポン成分を配合することで、皮膚の水分や油分を増加及び/又は維持する作用を付与することができるので、本発明の作用剤は飲食品添加剤としても用いることができる。
【0033】
本発明の組成物は、皮膚の水分や油分を増加及び/又は維持するために好適に用いられる。例えば、治療又は予防に皮膚の保湿を要する皮膚疾患に用いることができ、具体的には、皮脂欠乏症、皮脂欠乏性湿疹、乾皮症、アトピー性皮膚炎、乾燥肌、ひび、あかぎれの予防剤及び/又は治療剤として用いることができる。また、前記皮膚疾患の改善及び/又は予防用であるとして、機能性表示食品、栄養機能食品、特定保健用食品、特別用途食品、老人用食品、病者用食品、健康補助食品(サプリメント)としても用いることができる。また、スッポンは元来滋養強壮などの効能効果を有することから、該効能効果に加え、保湿用であるという付加価値を付して提供することも可能となる。なお、本明細書中の用語「治療」は、「改善」を包含することを意図して用いられる。
【0034】
本発明の組成物における、スッポン成分の含有量は、その形態や使用方法などを考慮し、本発明の所望の効果が得られるような量であれば、特に限定されるものではない。例えば、本発明の組成物を飲食品とした場合には、スッポン成分の含有量は、例えば、0.01~99.9重量%、0.01~90重量%、0.01~80重量%、0.05~70重量%、0.1~40重量%の範囲内に設定することができる。
【0035】
本発明の組成物は、形態に応じた適当な方法で使用される。例えば、そのまま摂取してもよく、水などの飲料と共に摂取してもよく、また、調理に供して摂取してもよい。なお、本明細書において「投与」とは、「摂取」、「服用」を包含することを意図して用いられる。
【0036】
本発明の組成物の使用量は、その形態、使用方法、使用目的及び当該組成物の対象者の年齢、体重、症状によって適宜設定され一定ではない。例えば、通常、成人1人体重約50kgあたり、スッポン成分として、好ましくは約0.1μg~50g/日、より好ましくは約0.5μg~50g/日が例示される。使用は、所望の使用量範囲内において、1日内において単回で、又は数回に分けて行ってもよい。使用期間も任意である。
【0037】
本発明の組成物の対象者としては、好ましくは皮膚を保湿する作用を必要とするヒトであるが、ペット動物等であってもよい。また、前記対象者としては、前記皮膚疾患の治療及び/又は予防を望む個体のほか、皮膚を保湿したい個体、乾燥はしていないが予防したい個体なども含まれる。
【0038】
本発明はまた、皮膚の水分や油分を増加及び/又は維持する作用を必要とする個体に、本発明のスッポン成分を含有する組成物の治療有効量を経口投与することを含む、皮膚疾患の予防及び/又は治療する方法を提供する。なお、皮膚の水分や油分を増加及び/又は維持する作用を必要とする個体とは、前記した本発明の組成物の対象者と同様である。
【0039】
また、本明細書中において治療有効量とは、本発明のスッポン成分を含む組成物を上記個体に投与した場合に、投与していない個体と比較して、皮膚の水分や油分が増加又は維持する作用を奏する量のことである。具体的な有効量としては、投与形態、投与方法、使用目的及び個体の年齢、体重、症状等によって適宜設定され一定ではない。
【実施例0040】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
試験例1
4週齢のHR-1雄ヘアレスマウス(株式会社星野試験動物飼育所)を購入し、試験に用いた。1週間(7日間)の馴化期間を設けた後、体重が平均20.8g~21.0g程度になるように、Control群、1%スッポン粉末群、5%スッポン粉末群の3群に分け(n=5)、試験を2~6週の間で行なった。馴化期間中は、栄養研究用標準飼料であるAIN-93G飼料と水を自由摂取で与え、試験期間中は、下表に示す飼料と水を自由摂取で与えた(スッポン粉末サンプルは株式会社中栄薬化交易から提供を受けたものを使用した)。飼育は、室温23±3℃、湿度50±2%、明暗12時間の照明時間に設定して行なった。なお、試験期間中の各群の摂餌量、飲水量に変動はなく、また、体重は安定的に増加を示し3群間における有意差は認められなかった。
【0042】
【表1】
【0043】
(1)皮膚厚
試験最終週にヘアレスマウスの背部皮膚をつまみ上げ、常法によりノギスを用いて背部皮膚の厚さ(二重の厚さ)を測定した。各群の皮膚の厚みとして、実測値(二重の厚さ)の二分の一を算出して皮膚厚とした。結果を図1に示す。
【0044】
図1より、いずれも約0.3~0.4mm程度の皮膚厚になり、3群間において差は認めらなかった。
【0045】
(2)表皮層厚及びコラーゲン層厚
試験最終日に解剖して背部皮膚を摘出後、10%中性緩衝ホルマリン液に24時間、室温で浸漬して固定させた後、70%エタノールに浸すことで脱水を行った。その後、株式会社栄養・病理学研究所にサンプルを送付し、マッソン・トリクローム染色法による組織観察を委託し、表皮層及びコラーゲン層(真皮層)の厚みを測定した。結果をそれぞれ図2及び図3に示す。
【0046】
図2及び図3より、表皮層厚は約20~25μm、コラーゲン層厚は約330~400μm程度になり、いずれも3群間において差は認めらなかった。
【0047】
(3)皮膚水分量及び水分蒸散量
マウスの背部皮膚表面の水分量(%)、水分蒸散量(g/hm2)を、CUTOMETER MPA580分析システム(Courage+Khazaka Electronic GmbH,Germany)を用いて測定した。具体的には、水分量(%)の測定には、コルネオメーターのプローブ(CM8253: Courage+Khazaka Electronic GmbH, Germany)を使用し、マウス1匹当たり、1秒あたり1測定を計3回測定した値の平均値を一つのデータとして用いた。また、水分蒸散量(g/hm2)の測定には、テバメーターのプローブ(TM300:Courage+Khazaka Electronic GmbH, Germany)を使用し、マウス1匹当たり、1秒あたり1測定を連続して30秒測定した値の平均値を一つのデータとして用いた。なお、得られた実験結果は、Student’s t-testにより統計学的に解析して有意水準は5%とし、それぞれの値はすべて平均値±標準誤差で示した。水分量の結果を図4に、水分蒸散量の結果を図5に示す。
【0048】
図4より、Control群においては飼育3週間目からやや水分量が低下したが、5%スッポン粉末群、1%スッポン粉末群ともに水分量が低下することはなく、いずれも水分量の増加を確認することができた。また水分値の増加は4週目ころから確認され、1%スッポン粉末群においても顕著に確認され、t検定による有意差が認められる水分量の増加を示した。これにより、スッポン粉末の経口摂取により皮膚の水分量を増加させる効果が奏されることが示唆される。
【0049】
図5より、Control群、1%スッポン粉末群、5%スッポン粉末群のいずれも水分蒸散量が低下したが3群間において差は認められず、スッポン粉末の経口摂取による皮膚からの水分蒸散量に差がなく、水分増加の効果が水分量そのものの増加であることが示唆される。
【0050】
これらより、スッポン粉末の経口摂取により、表皮層やコラーゲン層の厚みには変動は生じないが、表皮の水分量が有意に増加することが示唆される。
【0051】
試験例2
総ての被験者に実験の目的、趣旨、方法、及び被験体の安全性を充分に説明し、同意を得たうえで、被験者17名(男性8名、女性9名)に「スッポンオイル球」(スッポンオイル97%に、酸化防止目的でビタミンE3%を添加した内容量300mgのソフトカプセル製品)を1週間服用してもらい、TECCO社製 Skin Moisture and oil content Analyzer 型式TK17を用いて服用前後の腕の水分値及び油分値の測定を行った。服用は毎食後30分以内に2粒を水又はぬるま湯で行なうという条件とした。測定箇所は前腕の肘裏側付け根から約3cm付近で3回測定し、平均値を個人の結果として算出した。各個人の結果を表2に、図6は水分値全結果の平均値を対比した結果、図7は水分値を男女間で対比した結果、図8は油分値全結果の平均値を対比した結果、図9は油分値を男女間で対比した結果を示す。
【0052】
【表2】
【0053】
結果、スッポンオイルを服用することにより、服用前にくらべて肌の水分値及び油分値が増加する傾向が17人中16人に認められ、水分及び油分ともに有意な増量が認められた。また、男女ともに同様の傾向が認められ、服用によって同様の効果が期待できることが示唆された。
【0054】
試験例3
試験例2と同じ被験者17名(男性8名、女性9名)に、試験例2の終了から約1ヶ月後に、「スッポン粉末カプセル」(スッポン粉末94%に賦形剤としてデンプンを加えて製した内容量320mgのハードカプセル製品)を1週間服用してもらい、試験例2と同様にして腕の水分値及び油分値の測定を行った。なお、服用期間中に風邪を引いた者、測定前夜に飲酒した者を除いた15名(男性7名、女性8名)の結果を採用した。各個人の結果を表3に、図10は水分値全結果の平均値を対比した結果、図11は水分値を男女間で対比した結果、図12は油分値全結果の平均値を対比した結果、図13は油分値を男女間で対比した結果を示す。
【0055】
【表3】
【0056】
結果、スッポン粉末を服用することにより、服用前にくらべて、水分値は15人中10人に、油分値は15人中11人に、増加又は維持する傾向がそれぞれ認められ、水分及び油分ともに有意な増量が認められた。また、男女ともに同様の傾向が認められ、スッポン成分が粉末状であってもオイルと同様の効果が示されることが分かった。
【0057】
次に、本発明のスッポン成分を配合した調製例を示すが、本発明はこれに限定されるものでない。以下、本発明に係る飲食品の例を示す。なお、製法は常法によるものであり、含有量は%(重量%)で示す。
【0058】
<調製例1>(錠剤)
スッポン粉末 60.0%
結晶セルロース 24.0%
マルトース 10.0%
クエン酸 3.0%
ステアリン酸カルシウム 3.0%
以上を混合し、常法により打錠して1粒250mgの錠剤とした。
【0059】
<調剤例2>(ソフトカプセル剤)
スッポンオイル 40.0%
スッポン粉末 35.0%
サフラワー油 15.0%
ミツロウ 10.0%
以上を混合し均等分散させ常法により内容量300mgのソフトカプセル剤とした。
【0060】
<調剤例3>(ハードカプセル剤)
スッポン粉末 97.5%
ショ糖脂肪酸ナトリウム 2.5%
以上を均等に混合し常法にて内容物250mgのハードカプセル剤とした。
【産業上の利用可能性】
【0061】
本発明の作用剤は、皮膚の水分量や油分量を増加及び/又は維持することが可能となるので、例えば、皮脂欠乏症、皮脂欠乏性湿疹、乾皮症、アトピー性皮膚炎、乾燥肌、ひび、あかぎれ等を治療及び/又は予防するために好適に使用することができる。
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