(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041812
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】改善された免疫療法
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240319BHJP
G01N 33/50 20060101ALI20240319BHJP
A61K 38/51 20060101ALI20240319BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240319BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240319BHJP
A61K 31/59 20060101ALI20240319BHJP
A61K 33/06 20060101ALI20240319BHJP
C12N 9/88 20060101ALI20240319BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20240319BHJP
C07K 16/40 20060101ALN20240319BHJP
C07K 14/54 20060101ALN20240319BHJP
C07K 14/57 20060101ALN20240319BHJP
C07K 14/525 20060101ALN20240319BHJP
C12N 5/0781 20100101ALN20240319BHJP
C12N 5/0783 20100101ALN20240319BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
G01N33/53 N
G01N33/53 P
G01N33/50 Z
A61K38/51
A61P37/06
A61P3/10
A61K31/59
A61K33/06
C12N9/88
C12Q1/02
C07K16/40
C07K14/54
C07K14/57
C07K14/525
C12N5/0781
C12N5/0783
C07K16/28
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023220649
(22)【出願日】2023-12-27
(62)【分割の表示】P 2020513867の分割
【原出願日】2018-09-06
(31)【優先権主張番号】1751091-8
(32)【優先日】2017-09-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(31)【優先権主張番号】1850017-3
(32)【優先日】2018-01-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(71)【出願人】
【識別番号】516363950
【氏名又は名称】ダイアミド・メディカル・アクチボラゲット
【氏名又は名称原語表記】DIAMYD MEDICAL AB
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルードビグソン,ヨンヌ
(72)【発明者】
【氏名】カサス,ロサウラ
(72)【発明者】
【氏名】ハンネリウス,ウルフ
(72)【発明者】
【氏名】リンドクビスト,アントン
(72)【発明者】
【氏名】エッセン-メールレル,アンデシュ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】患者に投与された免疫療法の効力の評価方法
【解決手段】上記免疫療法はGADの投与を含み、第1の時点において上記患者から得られた血液、血漿、または血清の第1の試料中、および、それより後の第2の時点において上記患者から得られた血液、血漿、または血清の第2の試料中の、GADA IgGサブクラスの分布、GADAレベル、リンパ球から分泌されるサイトカインの分布、およびGADまたはCD3/CD28ビーズの存在下におけるリンパ球増殖のうち少なくとも1つを測定する工程と、得られた測定値を比較する工程とを含む、方法に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項2】
患者に投与された免疫療法の効力の評価方法であって、前記免疫療法はGADの投与を含み、
第1の時点において前記患者から得られた血液、血漿、または血清の第1の試料中、および、それより後の第2の時点において前記患者から得られた血液、血漿、または血清の第2の試料中の、
・GADA IgGサブクラスの分布、
・GADAレベル、
・リンパ球から分泌されるサイトカインの分布、および
・GADまたはCD3/CD28ビーズの存在下におけるリンパ球増殖のうち少なくとも1つを測定する工程と、
得られた測定値を比較する工程とを含み、
前記第2の試料中で測定されたものを、前記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、前記GADA IgGサブクラスの分布における、IgG2、IgG3、および/もしくはIgG4の相対量の増加、またはIgG1の相対量の減少;GADAレベルの増加;前記リンパ球から分泌されるサイトカインの分布における、IL-13および/もしくはIL-5の相対量の増加、またはIFNγおよび/もしくはTNFαの相対量の減少;ならびに/または、GADもしくはCD3/CD28ビーズの存在下におけるリンパ球増殖の低下は、有効な免疫療法であることを示唆する、方法。
【請求項3】
・GADA IgGサブクラスの分布、
・GADAレベル、
・リンパ球から分泌されるサイトカインの分布、および
・リンパ球増殖
のうち、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つが、前記血液、血漿、または血清の第1の試料中および前記血液、血漿、または血清の第2の試料中において測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の試料は、前記免疫療法の開始前もしくは開始時、または前記免疫療法の開始後80~100日目、たとえば90日目に得られる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の試料は、前記免疫療法の開始後160~200日目、たとえば180日目、または12、15、24、30、もしくは36か月目に得られる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の試料は、前記第1の試料が得られた後160~200日目、たとえば180日目、または12、15、24、30、もしくは36か月目に得られる、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記免疫療法は、ビタミンDの投与を1日目に開始して毎日実施することと、GADのリンパ内注射を30、60、および90日目に実施することとを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
1日目に開始する前記ビタミンDの投与は、3か月間以上、たとえば4、5、または6か月間続く、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
GADA IgGサブクラスの分布が前記第1の試料中および前記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、前記第2の試料中で測定されたものを、前記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、前記GADA IgGサブクラスの分布
におけるIgG4の相対量の増加は、有効な免疫療法であることを示唆する、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
GADA IgGサブクラスの分布が前記第1の試料中および前記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、前記第2の試料中で測定されたものを、前記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、前記GADA IgGサブクラスの分布におけるIgG1の相対量の減少は、有効な免疫療法であることを示唆する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
GADA IgGサブクラスの分布が前記第1の試料中および前記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、前記第2の試料中で測定されたものを、前記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、前記GADA IgGサブクラスの分布におけるIgG1の量に対するIgG4の量の増加は、有効な免疫療法であることを示唆する、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
GADAレベルが前記第1の試料中および前記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、前記第2の試料中で測定されたものを、前記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、GADAレベルの増加は、有効な免疫療法であることを示唆する、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
リンパ球から分泌されるサイトカインの分布が前記第1の試料中および前記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、前記第2の試料中で測定されたものを、前記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、IL-13および/またはIL-5の相対量の増加は、有効な免疫療法であることを示唆する、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
リンパ球から分泌されるサイトカインの分布が前記第1の試料中および前記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、前記第2の試料中で測定されたものを、前記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、IFNγの量に対するIL-13の量の増加は、有効な免疫療法であることを示唆する、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
リンパ球から分泌されるサイトカインの分布が前記第1の試料中および前記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、前記第2の試料中で測定されたものを、前記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、IFNγおよび/またはTNFαの相対量の減少は、有効な免疫療法であることを示唆する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
GADまたはCD3/CD28ビーズの存在下におけるリンパ球増殖が前記第1の試料中および前記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、前記第2の試料中で測定されたものを、前記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、GADまたはCD3/CD28ビーズの存在下におけるリンパ球増殖の低下は、有効な免疫療法であることを示唆する、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記免疫療法は、リンパ節内への注射を含むリンパ内注射、皮内注射、皮下注射、または経口投与によるGADの投与を含む、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項18】
免疫療法による1型糖尿病の治療または予防方法であって、
対象にGADを投与する工程と、
請求項1~16のいずれか1項に記載の方法によって、前記免疫療法の効力の評価を得
る工程と、
前記評価に基づいて、GADの投薬量および/または投与経路を調整する工程とを含む、方法。
【請求項19】
前記得られた測定値の比較が、有効な免疫療法であることを示唆しない場合、次いで、前記GADの投薬量の調整は、リンパ節内への注射によるGADのさらなる投与を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、
ビタミンDの投与を、1日目に開始して3~6か月間継続する工程と、
GADを前記対象のリンパ節内に、3回、それぞれ30、60、および90日目に投与する工程と、
請求項1~16のいずれか1項に記載の方法によって、前記免疫療法の効力の評価を得る工程とを含み、
前記得られた測定値の比較が、有効な免疫療法であることを示唆しない場合、次いで、前記GADの投薬量の調整は、リンパ節内へのGADの4回目の投与を、1日目の後12~18か月目に行なうことを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
免疫療法による、対象における1型糖尿病の治療または予防方法であって、
ビタミンDの投与を、1日目に開始して3~6か月間継続する工程と、
GADをリンパ節内に、3回、それぞれ30、60、および90日目に投与する工程と、
リンパ節内へのGADの4回目の投与を、1日目の後12~18か月目に行なう工程とを含む、方法。
【請求項22】
HbA1cおよび必要インスリン用量が、1回目のGAD-alum注射後5~6か月目に観察されたレベルと比較して、12~18か月目にて上昇した場合、ならびに、任意に、IFN/IL-13比率が前記観察の間に減少しなかった場合、4回目の、またはさらなる投与が行なわれる、請求項17~20のいずれか1項に記載の方法。
【請求項23】
1日目の後30か月目にリンパ節内にGADのさらなる投与を行なう工程をさらに含む、請求項17~21のいずれか1項に記載の方法。
【請求項24】
HbA1cおよび/または前記対象の必要インスリン用量が、1回目のGAD-alum注射後15か月目に観察されたレベルと比較して、30か月目にて上昇した場合、ならびに、任意に、IFN/IL-13比率が前記観察の間に減少しなかった場合、GAD-alumのさらなる投与が行なわれる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
GADを前記対象のリンパ節内に、少なくとも3回、それぞれ30、60、および90日目に投与する工程を含み、かつ、所与の時間におけるHbA1cレベルおよび/または前記対象の必要インスリン用量が、前記所与の時間より6~24か月間前に観察されたレベルと比較して増加した場合、リンパ節内への少なくとも1回のさらなる投与が行なわれる、請求項17~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
GADを前記対象のリンパ節内に、少なくとも3回、それぞれ30、60、および90日目に投与する工程を含み、かつ、前記リンパ球から分泌されるサイトカインの分布におけるIL-13および/またはIL-5の相対量が、所与の時間において、前記所与の時間より6~24か月間前に観察されたレベルと比較して変化していないまたは減少した場合、リンパ節内への少なくとも1回のさらなる投与が行なわれる、請求項17~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
GADを前記対象のリンパ節内に、少なくとも3回、それぞれ30、60、および90日目に投与する工程を含み、かつ、前記リンパ球から分泌されるサイトカインの分布における比率IFNγ/IL-13が、所与の時間において、前記所与の時間より6~24か月間前に観察された同比率と比較して変化していないまたは増加した場合、リンパ節内への少なくとも1回のさらなる投与が行なわれる、請求項17~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
GADを前記対象のリンパ節内に、少なくとも3回、それぞれ30、60、および90日目に投与する工程を含み、かつ、GAD特異的抗体の集団におけるIgG1/IgG4の比率が、所与の時間において、前記所与の時間より6~24か月間前に観察された前記と同じ比率と比較して変化していないまたは増加した場合、リンパ節内への少なくとも1回のさらなる投与が行なわれる、請求項17~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
ビタミンDの投与を、リンパ節内へのGADの4回目の、または任意のさらなる投与より0~90日前に開始して、毎日実施することを含む、請求項17~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
ビタミンDは、1日あたり2000IUの用量にて投与される、請求項17~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
ビタミンDは4か月間投与される、請求項17~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
GADは、alum配合GADの形態で投与される、請求項17~30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項33】
請求項1~31のいずれか1項に記載の治療方法において使用するためのGAD。
【請求項34】
請求項1~31のいずれか1項に記載の治療方法において使用するための医薬組成物の製造におけるGADの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、概して、免疫学、特に免疫療法の分野に関する。より具体的には、本発明は、1型糖尿病または自己免疫性糖尿病などの自己免疫性疾患の予防および/または治療に属する。本発明は、このような疾患の予防および/または治療において特に有用なバイオマーカーおよび投与レジメンを提供する。
【背景技術】
【0002】
背景
1型糖尿病(T1D)の治療は、生涯続くインスリン投与からなるが、この補充療法では、重篤な合併症が十分に予防されない。疾患の進行を遅延または停止させるための試みがこれまで数十年間継続されているが、発症して間もないT1D患者の臨床介入試験では、効力が無いまたは限定的であることが示されており、このことから、動物モデルからヒトT1Dへの変換が複雑であることが強調される。自己抗原による免疫調節は、最も特異的かつ安全なT1D治療となり得る。グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)65を水酸化アルミニウムと共に配合したもの(GAD-alum)が皮下投与された際、T1Dを発症して間もない子供および青年における残存インスリン分泌の保存に効力が示されたが、続いて実施された第II相および第III相の試験は一次転帰(primary outcomes)に到達しなかった。しかしながら、第III相試験にて、あらかじめ指定されたサブグループにおいて著しい効力が示され、かつ、インフルエンザワクチンを間を空けずに投与したこと(close administration)が当該試験の転帰に影響を及ぼした可能性が示された。したがって、GAD-alumでの治療は、有益である可能性はあるが十分に有効ではなかったと考えるのが最も妥当である。
【0003】
リンパ節内のT細胞におけるGAD65抗原の提示を、以前に記載されているよりも高効率とするために、非盲検臨床試験(DIAGNODE)に参加した患者6人のリンパ節内にGAD-alumが投与された。当該患者らにおける結果から、当該患者らにおけるC-ペプチドの保存が、他の免疫介入試験の患者らで観察された有望な結果と類似するようであることが示された。
【発明の概要】
【0004】
驚くべきことに、本発明者らは、免疫療法を受けている患者において測定および分析できる新たなバイオマーカーおよびバイオマーカーの組み合わせを、当該免疫療法の効力を評価する目的でGADを投与したことによって見いだした。また、本発明者らは、先行技術に係る免疫療法を受けている何人かの患者は、自己抗原GADをさらに投与する必要があることを明らかにした。
【0005】
したがって、第1の態様において、本発明は、患者に投与された免疫療法の効力の評価方法であって、上記免疫療法はGADの投与を含み、
第1の時点において上記患者から得られた血液、血漿、または血清の第1の試料中、および、それより後の第2の時点において上記患者から得られた血液、血漿、または血清の第2の試料中の、
・GADA IgGサブクラスの分布、
・GADAレベル、
・リンパ球から分泌されるサイトカインの分布、および
・GADまたはCD3/CD28ビーズの存在下におけるリンパ球増殖のうち少なくとも1つを測定する工程と、
得られた測定値を比較する工程とを含み、
上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、上記GADA IgGサブクラスの分布における、IgG2、IgG3、および/もしくはIgG4の相対量の増加、またはIgG1の相対量の減少;GADAレベルの増加;上記リンパ球から分泌されるサイトカインの分布における、IL-13および/もしくはIL-5の相対量の増加、またはIFNγおよび/もしくはTNFαの相対量の減少;ならびに/または、GADもしくはCD3/CD28ビーズの存在下におけるリンパ球増殖の低下は、有効な免疫療法であることを示唆する、方法に関する。
【0006】
一態様において、本発明は、免疫療法による1型糖尿病の治療または予防方法であって、
対象にGADを投与する工程と、
上述される方法によって上記免疫療法の効力の評価を得る工程と、
上記評価に基づいて、GADの投薬量および/または投与経路を調整する工程とを含む、方法に関する。
【0007】
一態様において、本発明は、免疫療法による、対象における1型糖尿病の治療または予防方法であって、
ビタミンDの投与を、1日目に開始して3~6か月間継続する工程と、
GADをリンパ節内に、3回、それぞれ30、60、および90日目に投与する工程と、
リンパ節内へのGADの4回目の投与を、1日目の後12~18か月目に行なう工程を含む、方法に関する。
【0008】
本発明は、本発明に係る方法において使用するためのGAD、および本発明に係る方法において使用するための医薬組成物の製造におけるGADの使用にも関する。
【0009】
本発明のいくつかの実施形態について、以下と、付属の請求項とに、さらに記載される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図面の説明
【
図1】GAD-alum治療の全体像。(a)1型糖尿病患者(n=6)に、リンパ節(LN)内にGAD-alum(4μg)の1回目の注射をし、続いて追加免疫注射を1か月間隔で2回注射した。別の研究に参加した患者のコントロール群(n=6)には、1回目の皮下(SC)GAD-alum投与(20μg)に続き、1か月後に2回目の注射を行なった。平行して、すべての患者に、LN患者には最初の120日間、SC群には450日間、ビタミンD(カルシフェロール)を与えた。
【
図2】a)リンパ節内(LN、n=6)または皮下(SC、n=6)にGAD-alumを注射した患者のGADAタイターの平均値。(b)IgG
1、IgG
2、IgG
3、IgG
4GADAサブクラスの頻度の変化(%)。頻度は、各試料について、4種のサブクラスの合計(すなわち、総IgG)に対して計算した。各サブクラスについて、総IgGに対する中央値の割合を示す。(c)LN群およびSC群について、ベースライン、90日目、および180日目におけるGADAサブクラスの相対的寄与。
【
図3】in vitroでPMBCを刺激した際のGAD65誘発性のサイトカイン分泌。患者に、リンパ節内(LN、n=6)または皮下(SC、n=6)にGAD-alumを注射した。(a)LN(黒丸)およびSC(白丸)患者について、ベースライン、90日目、および180日目における、IL-13、IL-5、IL-10、IL-2、IL-17、TNF-α、およびIFN-γの中央値レベル(pg/ml)を、Luminexを用いて、培地またはGAD65(5μg/ml)の存在下において7日間培養後に採取した上清中にて検出した。各個体について自発性分泌を差し引いて、GAD65誘発性サイトカイン分泌を求める。(b)90日目および180日目におけるリンパ節患者(LN)および皮下群(SC)でのサイトカインの相対的寄与(%)。
【
図4】GAD65およびCD3/CD28ビーズに対する増殖応答。患者に、リンパ節内(LN、n=6)または皮下(SC、n=6)にGAD-alumを注射した。GAD
65(5μg/ml)、CD3/CD28ビーズ、または培地と共にPBMCを3日間培養し、その後、細胞に、[
3H]チミジンを瞬間適用して、回収した。増殖については、3通りの平均を培地単独の3通りの平均で除したものを計算して、刺激指標(SI)として表す。
【
図5】GAD
65に誘発されたT細胞活性化。リンパ節内(n=6、LN、黒丸)および皮下(n=6、SC、白丸)にGAD-alumを投与した患者由来の、ベースライン(1日目)、90日目、および180日目のPBMCを、GAD
65(5μg/ml)または培地で7日間刺激した。(a)GAD
65活性化CD4
+CD25
+CD127
+T細胞および(b)CD8
+CD25
+CD127
+T細胞の割合。(c)安静時試料(培地単独)中のCD4
+CD25
+CD127
lo/-FOXP3
+(Treg)の割合の平均および(d)GAD
65刺激による誘発。(e)安静時試料(培地単独)中、および(f)GAD
65刺激試料中における、FOXP3
loCD45RA非抑制制御性T細胞の割合の平均。
【
図6】CD4
+およびCD8
+T細胞の分化状態の変化(%)。リンパ節内(n=6、LN、黒丸)および皮下(n=6、SC、白丸)にGAD-alumを投与した患者由来の、ベースライン(1日目)、90日目、および180日目のPBMCを、GAD
65(5μg/ml)または培地と共に7日間培養した。GAD
65によって、(a)ナイーブ(T
N、CD45RA
+CCR7
+)、(b)セントラルメモリー(T
CM、CD45RA
-CCR7
+)、(c)エフェクターメモリー(T
EM、CD45RA
-CCR7
-)、および(d)高分化エフェクターメモリー(T
EMRA、CD45RA
+CCR7
-)CD4 T細胞において、変化が誘発された。GAD-alumによって、(e)ナイーブ(T
N、CD45RA
+CCR7
+)、(f)セントラルメモリー(T
CM、CD45RA
-CCR7
+)(g)割合エフェクターメモリー(T
EM、CD45RA
-CCR7
-)、および(h)高分化エフェクターメモリー(T
EMRA、CD45RA
+CCR7
-)CD8 T細胞において変化が誘発された。線は平均の傾向を表す。
【
図7】GAD-alumをリンパ節に注射した患者1人の代表的なフローサイトメトリー解析。試料を180日目に採取し、PBMCを、GAD
65(5μg/ml)または培地の存在下において7日間培養した。安静時(培地単独)およびGAD
65刺激試料中のCD4
+、CD8
+T細胞、およびTregの割合を評価した。
【
図8】GAD-alum治療によって誘発される免疫学的変化を表すために、ヒートマップを作成した。変化を、ベースラインの値に対する90日目および180日目の値の比率として計算した。患者のリンパ節内(LN、n=6)または皮下(SC、n=6)にGAD-alumを注射して、180日目における臨床転帰に従って左から右に階層化した。臨床変数を、ベースラインからの変化の割合(%)として表す。90日目では、食事耐性試験を行なわなかったため、最大刺激およびAUC c-ペプチドは計算せず、「x」と表す。グレイスケールは、ベースライン値に対する治療後の免疫学的変数の増加を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
定義
本明細書中において使用されるすべての用語および表現は、他の表現が本開示の文脈から明らかである場合以外は、本出願の出願日において当業者により与えられた意味を有することが意図される。しかしながら、明確さを期して、いくつかの用語および表現が、以下に明白に定義される。
【0012】
「自己抗体」は、それを産生する生物の自己抗原と反応する抗体である。
【0013】
「自己抗原」または「自己の抗原」は、自己抗体と相互作用して免疫応答を引き起こす能力を有する、内在性の組織構成要素である。「ベータ細胞自己抗原」は、膵ベータ細胞に由来する自己抗原である。
【0014】
本明細書中において使用される場合、「同時投与」は、本発明に係るレジメンの複数の化合物を、それぞれの投与レジメンが部分的に重なり合うように投与することを指す。当該化合物は、同じ時点で投与される必要はない。
【0015】
用語「シクロオキシゲナーゼ阻害剤」、または「cox阻害剤」は、シクロオキシゲナーゼと結合して、そのアラキドン酸との基質-酵素結合と、エイコサノイド、プロスタグランジン、およびトロンボキサンの形成とを防止する化合物に関する。シクロオキシゲナーゼ阻害剤のサブグループはシクロオキシゲナーゼ-2阻害剤であり、シクロオキシゲナーゼ-2に対する特異性を有する。
【0016】
治療方法の「1日目」は、治療レジメンに含まれる化合物の1回目の投与が行なわれる日であるとみなされる。本発明の文脈において、一般的に、患者への1回目のビタミンDまたはGADの投与により、本発明に係る治療方法が開始される。
【0017】
本明細書中において使用される場合、サイトカインまたは抗体などの化合物のクラスの「分布」は、そのクラスに属するすべての化合物の総量または総濃度に対する、そのクラスに属する特定の化合物の相対的な量または濃度に関する。
【0018】
「エピトープ」は、免疫応答を顕在化させることができ、かつ、この応答に対抗するために産生される抗体と結合できる、抗原の表面部分、またはT細胞受容体である。
【0019】
「GAD」はグルタミン酸デカルボキシラーゼに関し、「GAD-alum」は、水酸化アルミニウムと共に配合されたグルタミン酸デカルボキシラーゼに関する。GAD65は、GADの65kDaの形態である。
【0020】
用語「ガンマ-アミノ酪酸類似体」は、ビガバトリンおよびバクロフェンを含む。
【0021】
用語「必要インスリン用量」は、糖尿病患者が血糖レベルを制御するのに必要な毎日の平均のインスリン用量を指す。
【0022】
用語「ビタミンD」は、ビタミンD2およびビタミンD3を含む。「ビタミンD類似体」は、権利関係に不利益を与えることなく、エルゴカルシフェロール、ジヒドロタキステロール、アルファカルシドール、カルシトリオール、コレカルシフェロール、およびカルシフェジオール、およびそれらの組み合わせ、ならびに、解剖治療化学分類法のA11CC群に分類される任意の他のビタミンD類似体を含む。
【0023】
用語「TNFアルファ阻害剤」は、腫瘍壊死因子アルファ(TNFアルファ)の作用を阻害する化合物に関し、アダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ、および解剖治療化学分類法のL04AB群に分類される任意の他の化合物を含む。
【0024】
単数形「a」および「an」などを用いた表現は、複数形を含むものと解釈される。
【0025】
省略形
GABA:ガンマ-アミノ酪酸
GADA:グルタミン酸デカルボキシラーゼ自己抗体
LN:リンパ節
PBMC:末梢血単核細胞
SC:皮下
Th:Tヘルパー
T1D:1型糖尿病
【0026】
発明の詳細な説明
本発明者らは、多くのバイオマーカーと、GADを使用する免疫療法の臨床転帰とが、どのような相関関係にあるのかについて研究した。実験部分に記載される結果から、GADを使用する療法の効力の評価に使用できる複数のバイオマーカーが特定される。この研究に含まれるバイオマーカーについて、治療前には特異的免疫シグネチャは特定されなかったが、代謝転帰が改善された患者、すなわち、HbA1cおよびインスリン要求が低下してC-ペプチド分泌の保存が良好となった患者は、何らかの共通した免疫上の相関を有するようであった。
【0027】
T1D介入試験における主な未解決事項は、治療の背景にある機序の特定、ならびに治療前および治療後の免疫シグネチャの定義である。T1Dは耐性の不足または欠如と自己反応性T細胞の関与とによって生じる、という一般的なコンセンサスに基づくと、自己抗原を用いた免疫療法の効力には、耐性の誘発と、問題の自己抗原に対する免疫応答の低下または喪失とが伴われるべきである、ということが予期されている。ここで、本発明者らが観察したところによると、LN注射後に臨床転帰が改善した個体は、IgGサブクラスのシフトとGAD誘発性のサイトカイン分泌とによって裏付けられた、GADAの上昇、増殖の低下、および支配的なTh2様応答の誘発(特に、IL-13の増加)を特徴とする免疫応答を有していた。
【0028】
LN群において、GAD65に対する免疫応答の方向はTh2に偏っているが、しかしながら、個体差が大きい。印象的であることには、LN群において、180日後に、臨床転帰が最も良好な患者のみにおいて、GAD65誘発性サイトカインが検出された。
【0029】
特に関心深いことに、臨床転帰の改善を示す患者は、SCおよびLNの治療後のいずれにおいても、Th2サイトカインプロファイルの方に偏移したGAD誘発性T細胞応答が特徴的であった。LN患者におけるT細胞応答は、免疫寛容原性の偏移を示さなかったが、むしろ、Th2関連プロファイル、およびいくつかのTh1サイトカインも産生された。しかしながら、Th2サイトカインは、SC患者よりもLN群の応答患者において、より支配的であった。本発明者らは、以前に、サイトカイン分泌は、GAD-alumの2回用量をSC注射してから少し後に広いサイトカインプロファイルを示す特徴があったこと、および、サイトカイン分泌は、より支配的なTh2関連プロファイルに経時的に切り換わる傾向があったことを示した。その研究において、さらなる用量を投与したところ、分泌レベルは増加したが、サイトカイン応答の質は影響を受けず、サイトカインプロファイルは、GAD-alumを2回用量または4回用量投与した患者間で類似していた。したがって、3回目のLN注射の後に生じたIL-13の支配的な分泌は、用量を追加したことでは説明できず、むしろ投与経路で説明し得る。リンパ内投与によって、より多くの抗原が免疫応答誘発部位に運搬され、かつ、さらに、抗原特異的T細胞の刺激に使われる抗原用量が異なるためにTh2応答の増大が導かれているのかもしれない。アジュバントであるアルミニウムの作用は、Th2応答の誘発に関連しており、細胞性免疫応答よりもむしろ体液性免疫応答を優先的に誘発する。そのため、GAD65を用いた促進介在性b細胞破壊(promoting-mediated b-cell destruction)の可能性を最小限にするアジュバントとして、alumを選択した。
【0030】
このようにして、臨床転帰性の複数のバイオマーカーを特定した。
【0031】
GAD-alum治療により誘発された個々の免疫学的変化を、治療前の特異的免疫応答に対する、90日目および180日目におけるGAD
65誘発性免疫応答の比率として計算し、患者を、各人の代謝およびC-ペプチド保存に応じて階層化した(
図8)。
【0032】
ベースラインの免疫学的パラメータは、臨床転帰に関すると考えられた治療前の特徴を1つも示さなかった。
【0033】
治療後の抗原誘発性サイトカイン分泌において誘発された変化を提示したことによって、ほとんどの患者における90日後のGAD
65刺激により、投与経路とは独立して、Th1およびTh2関連サイトカインが誘発されたことが示された。しかしながら、180日目に、最も良好な臨床応答(すなわち、HbAc1の低下、インスリン取り込みの減少、およびC-ペプチド分泌の最も良好な保存)を示したLN患者(n=3)において、GAD
65誘発性サイトカインの変化を検出できた。印象的であることには、上述された3人の患者において、活性化されたCD4細胞が観察されたが、CD8は観察されなかった。IgG
1の減少ならびにIgG
2およびIgG
4の増大は、臨床応答が最も良好であった患者(患者1)において最も顕著であり、この患者は、LN群で観察されたIgG
4の増加を説明するものであった(
図8)。
【0034】
SC群のうち臨床応答が最も良好であった患者(患者1)における、GAD65誘発性サイトカイン分泌は、応答が最も良好であったLN患者において観察されたものと類似していたが、SC治療患者においては、IgG1が支配的GADAサブクラスであり、活性化されたCD4細胞とCD8細胞とが両方とも検出された。
【0035】
両群で良好な応答を示した個体(LNにおいてn=2、およびSCにおいてn=1)についての、180日目におけるTh2(IL-13およびIL-5)/Th1(IFN-γおよびTNF-α)サイトカインの比率を計算したところ、LN患者におけるTh2応答はSC群の3倍強い(比率は、LNで6.44に対し、SCで2.24)ことが明らかとなった。
【0036】
したがって、一態様において、本発明は、患者に投与された免疫療法の効力の評価方法であって、上記免疫療法はGADの投与を含み、
第1の時点において上記患者から得られた血液、血漿、または血清の第1の試料中、および、それより後の第2の時点において上記患者から得られた血液、血漿、または血清の第2の試料中の、
・GADA IgGサブクラスの分布、
・GADAレベル、
・リンパ球から分泌されるサイトカインの分布、および
・GADまたはCD3/CD28ビーズの存在下におけるリンパ球増殖のうち少なくとも1つを測定する工程と、
得られた測定値を比較する工程とを含み、
上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、上記GADA IgGサブクラスの分布における、IgG2、IgG3、および/もしくはIgG4の相対量の増加、またはIgG1の相対量の減少;GADAレベルの増加;上記リンパ球から分泌されるサイトカインの分布における、IL-13および/もしくはIL-5の相対量の増加、またはIFNγおよび/もしくはTNFαの相対量の減少;ならびに/または、GADもしくはCD3/CD28ビーズの存在下におけるリンパ球増殖の低下は、有効な免疫療法であることを示唆する、方法に関する。
【0037】
試料が「第1」および「第2」の試料として指定されているが、これは、最初の第1の時点およびそれより後の第2の時点において得られるまたは得られたという、試料間の関係を定義することのみを意図しており、第1の試料より前に、または、第1の試料が得られた時点と第2の試料が得られた時点との間に、さらなる試料が得られていてかつ任意に分析されている可能性を除外しない。
【0038】
一実施形態において、
・GADA IgGサブクラスの分布、
・GADAレベル、
・リンパ球から分泌されるサイトカインの分布、および
・リンパ球増殖
のうち、少なくとも2つ、少なくとも3つ、または4つが、上記血液、血漿、または血清の第1の試料中および上記血液、血漿、または血清の第2の試料中において測定される。
【0039】
一実施形態において、上記第1の試料は、上記免疫療法の開始前もしくは開始時、または上記免疫療法の開始後80~100日目、たとえば90日目に得られる。
【0040】
一実施形態において、上記第2の試料は、上記免疫療法の開始後160~200日目、たとえば180日目、または12、15、24、30、もしくは36か月目に得られる。
【0041】
一実施形態において、上記第2の試料は、上記第1の試料が得られた後160~200日目、たとえば180日目、または12、15、24、30、もしくは36か月目に得られる。
【0042】
一実施形態において、上記免疫療法は、ビタミンDの投与を1日目に開始して毎日実施することと、GADのリンパ内注射を30、60、および90日目に実施することとを含む。
【0043】
一実施形態において、1日目に開始する上記ビタミンDの投与は、3か月間以上、たとえば4、5、または6か月間続く。
【0044】
一実施形態において、GADA IgGサブクラスの分布が上記第1の試料中および上記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、上記GADA IgGサブクラスの分布におけるIgG2の相対量の増加は、有効な免疫療法であることを示唆する。
【0045】
一実施形態において、GADA IgGサブクラスの分布が上記第1の試料中および上記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、上記GADA IgGサブクラスの分布におけるIgG3の相対量の増加は、有効な免疫療法であることを示唆する。
【0046】
一実施形態において、GADA IgGサブクラスの分布が上記第1の試料中および上記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、上記GADA IgGサブクラスの分布におけるIgG4の相対量の増加は、有効な免疫療法であることを示唆する。
【0047】
一実施形態において、GADA IgGサブクラスの分布が上記第1の試料中および上記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、上記GADA IgGサブクラスの分布におけるIgG1の相対量の減少は、有効な免疫療法であることを示唆する。
【0048】
一実施形態において、GADA IgGサブクラスの分布が上記第1の試料中および上記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、上記GADA IgGサブクラスの分布におけるIgG1の量に対するIgG4の量の増加は、有効な免疫療法であることを示唆する。
【0049】
一実施形態において、GADA IgGサブクラスの分布が上記第1の試料中および上記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、上記GADA IgGサブクラスの分布におけるIgG1の量に対するIgG2の量の増加は、有効な免疫療法であることを示唆する。
【0050】
一実施形態において、GADA IgGサブクラスの分布が上記第1の試料中および上記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、上記GADA IgGサブクラスの分布におけるIgG1の量に対するIgG1の量の増加は、有効な免疫療法であることを示唆する。
【0051】
一実施形態において、GADAレベルが上記第1の試料中および上記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、GADAレベルの増加は、有効な免疫療法であることを示唆する。
【0052】
一実施形態において、リンパ球から分泌されるサイトカインの分布が上記第1の試料中および上記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、IL-13および/またはIL-5の相対量の増加は、有効な免疫療法であることを示唆する。
【0053】
一実施形態において、リンパ球から分泌されるサイトカインの分布が上記第1の試料中および上記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、IFNγおよび/またはTNFαの相対量の減少は、有効な免疫療法であることを示唆する。
【0054】
一実施形態において、リンパ球から分泌されるサイトカインの分布が上記第1の試料中および上記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、IFNγの量に対するIL-13の量の増加は、有効な免疫療法であることを示唆する。
【0055】
一実施形態において、リンパ球から分泌されるサイトカインの分布が上記第1の試料中および上記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、IFNγの量に対するIL-5の量の増加は、有効な免疫療法であることを示唆する。
【0056】
一実施形態において、リンパ球から分泌されるサイトカインの分布が上記第1の試料中
および上記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、TNFαの量に対するIL-13の量の増加は、有効な免疫療法であることを示唆する。
【0057】
一実施形態において、リンパ球から分泌されるサイトカインの分布が上記第1の試料中および上記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、TNFαの量に対するIL-5の量の増加は、有効な免疫療法であることを示唆する。
【0058】
一実施形態において、GADまたはCD3/CD28ビーズの存在下におけるリンパ球増殖が上記第1の試料中および上記第2の試料中で測定され、得られた測定値が比較される、かつ、上記第2の試料中で測定されたものを、上記第1の試料中で測定されたものと比較した際の、GADまたはCD3/CD28ビーズの存在下におけるリンパ球増殖の低下は、有効な免疫療法であることを示唆する。
【0059】
一実施形態において、上記免疫療法は、リンパ節内への注射を含むリンパ内注射、皮内注射、皮下注射、または経口投与によるGADの投与を含む。
【0060】
さらなる一態様において、本発明は、免疫療法による1型糖尿病の治療または予防方法であって、
対象にGADを投与する工程と、
上述される方法によって上記免疫療法の効力の評価を得る工程と、
上記評価に基づいて、GADの投薬量および/または投与経路を調整する工程とを含む、方法に関する。
【0061】
一実施形態において、上記得られた測定値の比較が、有効な免疫療法であることを示唆しない場合、上記GADの投薬量の調整は、リンパ節内への注射によるGADのさらなる投与を含む。
【0062】
一実施形態において、上記方法は、
ビタミンDの投与を、1日目に開始して3~6か月間継続する工程と、
GADを上記対象のリンパ節内に、3回、それぞれ30、60、および90日目に投与する工程と、
上述される方法によって上記免疫療法の効力の評価を得る工程とを含み、
上記得られた測定値の比較が、有効な免疫療法であることを示唆しない場合、次いで、上記GADの投薬量の調整は、リンパ節内へのGADの4回目の投与を、1日目の後12~18か月目に行なうことを含む。
【0063】
さらに、GAD-alumのリンパ節内への直接投与が大きな成功を収めているが、本発明者らは、何人かの治療患者におけるインスリン産生が、治療レジメンの開始後15か月~30か月目に減少したことを見いだした(刺激C-ペプチドAUC(32%減少)により測定)。しかしながら、HbA1cおよびインスリン使用は、治療開始時よりも減少していた(それぞれ15%および22%減少)。
【0064】
この結果、本発明者らは、リンパ節内へのGAD-alumのさらなる投与が有益である可能性があることを見いだした。たとえば、GAD-alumのリンパ節内への4回目の投与を、治療開始後12~18か月目、たとえば15か月目に行なうことができる。
【0065】
したがって、一態様において、本発明は、免疫療法による、対象における1型糖尿病の治療または予防方法であって、
ビタミンDの投与を、1日目に開始して3~6か月間継続する工程と、
GADをリンパ節内に、3回、それぞれ30、60、および90日目に投与する工程と、
リンパ節内へのGADの4回目の投与を、1日目の後12~18か月目に行なう工程とを含む、方法に関する。
【0066】
GADの4回目の投与は、上述される本発明に係る免疫療法の効力の評価の実施後に行なわれてよい。同様に、GADのさらなる投与は、上述される本発明に係る免疫療法の効力の評価の実施後で、かつ、対象に提供される免疫療法中の任意の所与の時間にて、行なわれてよい。
【0067】
一実施形態において、HbA1cおよび必要インスリン用量が、1回目のGAD-alum注射後5~6か月目に観察されたレベルと比較して、1日目の後12~18か月目に上昇した場合、ならびに、任意に、IFN/IL-13比率が上記観察の間に減少しなかった場合、4回目の投与が行なわれる。
【0068】
一実施形態において、HbA1cおよび必要インスリン用量が、1回目のGAD-alum注射後15か月目に観察されたレベルと比較して、30か月目にて上昇した場合、ならびに、任意に、IFN/IL-13比率が上記観察の間に減少しなかった場合、GAD-alumのさらなる投与が、1日目の後30か月目に行なわれる。
【0069】
一実施形態において、本発明に係る治療方法は、GADを上記対象のリンパ節内に、少なくとも3回、それぞれ30、60、および90日目に投与する工程を含み、かつ、所与の時間におけるHbA1cレベルおよび/または上記対象の必要インスリン用量が、上記所与の時間より6~24か月間前に観察されたレベルと比較して増加した場合、リンパ節内への少なくとも1回のさらなる投与が行なわれる。
【0070】
一実施形態において、本発明に係る治療方法は、GADを上記対象のリンパ節内に、少なくとも3回、それぞれ30、60、および90日目に投与する工程を含み、かつ、上記リンパ球から分泌されるサイトカインの分布におけるIL-13および/またはIL-5の相対量が、所与の時間において、上記所与の時間より6~24か月間前に観察されたレベルと比較して変化していないまたは減少した場合、リンパ節内への少なくとも1回のさらなる投与が行なわれる。
【0071】
一実施形態において、本発明に係る治療方法は、GADを上記対象のリンパ節内に、少なくとも3回、それぞれ30、60、および90日目に投与する工程を含み、かつ、上記リンパ球から分泌されるサイトカインの分布における比率IFNγ/IL-13が、所与の時間において、上記所与の時間より6~24か月間前に観察された上記と同じ比率と比較して変化していないまたは増加した場合、リンパ節内への少なくとも1回のさらなる投与が行なわれる。
【0072】
一実施形態において、本発明に係る治療方法は、GADを上記対象のリンパ節内に、少なくとも3回、それぞれ30、60、および90日目に投与する工程を含み、かつ、GAD特異的抗体の集団におけるIgG1/IgG4の比率が、所与の時間において、上記所与の時間より6~24か月間前に観察された上記と同じ比率と比較して変化していないまたは増加した場合、リンパ節内への少なくとも1回のさらなる投与が行なわれる。
【0073】
一実施形態において、本発明に係る治療方法は、ビタミンDの投与を、リンパ節内へのGADの4回目のまたは任意のさらなる投与より0~90日前に開始して、毎日実施することを含む。
【0074】
一実施形態において、本発明に係る治療方法において、ビタミンDは、1日あたり2000IUの用量にて投与される。
【0075】
一実施形態において、本発明に係る治療方法において、ビタミンDは4か月間投与される。
【0076】
一実施形態において、本発明に係る治療方法において、GADは、alum配合GADの形態で投与される。
【0077】
一態様において、本発明は、本発明に係る治療方法において使用するためのGADを提供する。
【0078】
一態様において、本発明は、本発明に係る治療方法において使用するための医薬組成物の製造におけるGADの使用を提供する。
【0079】
本発明に係る治療方法は、概してWO2015/187087(その開示内容を引用により本明細書に援用する)中に記載される組成物、方法、および投与レジメンを用いて、ベータ細胞自己抗原GADを使用する1型糖尿病の治療に適用してよい。全面的開示を目的として、こうした方法が以下に記載される。
【0080】
一態様において、本発明は、自己免疫性疾患の予防および/または治療方法であって、血清ビタミンDレベルが50ナノモル/リットルを超える対象に組成物を投与する工程を含み、組成物は少なくとも1種のベータ細胞自己抗原を含む、方法を用いる。この結果、これら少なくとも2種の分子の各々は、これら抗原が提示された適応免疫細胞の反応に影響を及ぼし得る。
【0081】
対象は、血清D-ビタミンレベルが、50~150ナノモル/リットル、たとえば60~100ナノモル/リットル、75~100ナノモル/リットル、または100~150ナノモル/リットルであってよい。
【0082】
上記方法は、血清ビタミンDレベルを調整するための対象の前治療を含んでよく、このような前治療は、ビタミンDおよび/もしくはビタミンD類似体の投与、ならびに/またはUVB放射線曝露を、好ましくは、少なくとも1種のベータ細胞自己抗原を含む組成物を上記対象に投与する7~90日前に、行なうことを含んでよい。
【0083】
上記方法は、ビタミンDおよび/またはビタミンD類似体を、7000~70000IU/週の量にて、3~48か月間投与することをさらに含んでよい。
【0084】
上記ベータ細胞自己抗原は、上記に定義されるとおりの、GADである。
【0085】
上記方法は、以下に見出し「シクロオキシゲナーゼ阻害剤」の下に記載されるとおりのシクロオキシゲナーゼ阻害剤の投与をさらに含んでよい。
【0086】
上記方法は、以下に見出し「CTLA4化合物」の下に記載されるとおりのCTLA4化合物の投与をさらに含んでよい。
【0087】
上記方法は、以下に見出し「TNFアルファ阻害剤」の下に記載されるとおりのTNFアルファ阻害剤の投与をさらに含んでよい。
【0088】
本発明は、それを必要とする個体における、自己免疫性疾患の予防および/または治療方法であって、上記個体に、
a)特異的抗原を寛容化するために、少なくとも1種の自己抗原もしくはその断片、または、上記に列記される自己免疫性および炎症性疾患のうち少なくとも1種に関する分子をコードする核酸、プラスミド、もしくはベクターを投与する工程と(一実施形態において、自己抗原は、血清ビタミンDレベルが50~150nM/l、より好ましくは75~100nM/l、最も好ましくは100~150nM/lである場合に投与される。)、
b)APCの能力の成熟を妨げるために、上記に列記される、ビタミンD、ビタミンD類似体、ガンマ-アミノ酪酸、ガンマ-アミノ酪酸類似体、およびチロシンキナーゼ阻害剤からなる群より選択される少なくとも1種のIL-10誘発性化合物を上記個体に投与する工程と(一実施形態において、IL-10誘発は、UVB光曝露の使用によって増大または達成される。)、
c)免疫系の能力によって、ナイーブなTCおよびBCが活性化され、活性化されたメモリーリンパ球からの応答が呼び戻されるのを妨げるために、上記に列記される、NSAID化合物、CTLA-4化合物、またはTNFアルファ阻害剤などの化合物を投与する工程と
を含む、方法を提供する。
【0089】
本発明は、T1Dおよび自己免疫性糖尿病などの自己免疫性疾患の治療方法であって、上記疾患を有する対象に、
(a)抗原提示樹状細胞(dendritric cells)が免疫系に対して寛容様式で抗原ペプチドを提示する能力を強化するための、ビタミンD(Vit D)の複数回投与と、
b)当該自己抗原に対する耐性の回復または誘発に十分な量にて投与される、製薬学的担体中に配合されたGAD65などの自己抗原と、任意に、
c)たとえば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤(イブプロフェンなど)またはより明白にはcox-2もしくはcox-1阻害剤といった、抗炎症性化合物の治療用量と
を投与する工程を含む、方法を開示する。
【0090】
ビタミンD(Vit D)の複数回投与は、好ましくは、自己抗原の投与の15~90日前、または自己抗原の投与の7~90日前に開始され、液体または錠剤の形態で、1週間あたり7000~70000iuに対応する用量にて、3~48か月間にわたって与えられる。
【0091】
ビタミンDでの前治療は、治療対象のビタミンDの血清レベルを上昇させて、約50ナノモル/リットルより高く、または60、75、もしくは100ナノモル/リットルより高くすることを目的とする。この前治療は、対象のビタミンDの血清レベルが既に上記レベルである場合には、不要とされてよい。
【0092】
本発明の別の一実施形態において、ビタミンD(Vit D)の血清濃度は、光線療法によって増大させることができる。この場合、対象は、紫外線B放射線に、好ましくは、自己抗原の投与の15~90日前に毎日10~120分間曝露されてよい。この光線療法は3~48か月間継続されるべきである。
【0093】
自己抗原の好ましい用量として、注射による場合には、各回に抗原10~200μgずつを2~4回、間隔を少なくとも2週間あけて、より好ましくは1か月間あけて、投与される。経口投与の場合には、好ましい用量は、1日500mg~5gを3か月~48か月間である。イブプロフェンは、好ましくは、1日用量100~800mgにて、自己抗原投与中の60~150日間にわたって投与される。
【0094】
自己抗原は、リンパ内注射によって、すなわち、リンパ節内に直接注射することによって、投与できる。抗炎症性化合物および自己抗原は、製薬学的に許容される担体、賦形剤、もしくは希釈剤中にて、またはこれらと共に、投与できる。
【0095】
一実施形態において、ベータ細胞自己抗原を含有する組成物は、治療初期である3~4か月目は間隔を1~4週間あけて、たとえば2~4週間または2週間あけて、かつ、任意に、継続治療期間である6~9か月目は間隔を2~3か月間あけて、投与される。
【0096】
一実施形態において、ベータ細胞自己抗原の量は、治療期間の始めは投与1回あたり1~5μgであるものが、投与の終わりには投与1回あたり約40~100μgに増加される。
【0097】
本発明の一実施形態において、自己抗原の投与は、常在性APCが免疫系に抗原ペプチドを提示できるよう、リンパ節内またはリンパ系内に直接行なわれる。自己抗原の投与がリンパ節内またはリンパ系内に直接行なわれる場合、その用量は、好ましくは自己抗原1種あたり1~15μg、より好ましくは自己抗原1種あたり2~10μgまたは自己抗原1種あたり2~5μgであってよい。alum中に配合することが好ましい。
【0098】
特定の実施形態によれば、上記少なくとも1種の自己抗原は、鼠蹊内、リンパ節内、またはリンパ内に投与される。いくつかの実施形態において、鼠蹊内注射される抗原の体積は、0.05~0.2ml、より好ましくは0.05~0.15mlである。
【0099】
特定の実施形態によれば、上記少なくとも1種の抗原がリンパ節内またはリンパ内注射によって投与される場合、好ましい投薬量は、注射1回あたり、かつ使用される自己抗原1種あたり、1~15ug、より好ましくは2~10、最も好ましくは2~5ugであり、この投与が、少なくとも2回、より好ましくは少なくとも3回、最も好ましくは少なくとも4回、間隔を少なくとも14日間あけて、より好ましくは少なくとも30日間あけて、行なわれる。
【0100】
特定の実施形態によれば、上記少なくとも1種の抗原が静脈内に投与される場合、各抗原あたり少なくとも100~10000ugが、治療1回あたりに、少なくとも2回で、間隔を少なくとも1週間あけて、投与される。
【0101】
特定の実施形態によれば、上記少なくとも1種の抗原が経口投与される場合、各抗原あたり少なくとも0.5~5gが、治療1回あたりに、1週間に少なくとも1回、投与される。
【0102】
特定の実施形態によれば、上記少なくとも1種の抗原は、他の抗原とは別々に、または場合によっては他の抗原と一緒に、alum中、生理食塩水中、またはヒト血清アルブミン中に配合される。
【0103】
特定の実施形態によれば、上記少なくとも1種の医薬組成物は、少なくとも2種の抗原を、同一の担体粒子上に含む。特定の他の実施形態によれば、上記少なくとも1種の医薬組成物は、少なくとも2種の抗原を、異なる担体粒子上に含む。特定の実施形態によれば、上記少なくとも2種の抗原は、別々に、かつ、その特定の抗原にとって好適な、異なる時点および頻度、レジメン、および配合で投与される。より好ましくは、上記少なくとも2種の抗原は、同一の医薬組成物中に配合され、その結果、同時に投与される。
【0104】
いくつかの実施形態において、上記少なくとも1種の抗原は、alumなどのアジュバント中に配合される。さらなる具体的な実施形態において、上記少なくとも1種の抗原は
、生理食塩水中またはヒト血清アルブミン中に配合される。
【0105】
特定の実施形態によれば、上記少なくとも1種の抗原および上記少なくとも1種のIL-10誘発性化合物は、同時に投与される。特定の実施形態によれば、上記少なくとも1種の抗原および上記少なくとも1種のIL-10誘発性化合物は、別々に投与される。
【0106】
特定の実施形態によれば、上記少なくとも1種のIL-10誘発性化合物は、上記少なくとも1種の抗原と同時に投与される。特定の実施形態によれば、上記少なくとも1種のIL-10誘発性化合物の投与は、上記少なくとも1種の抗原の1回目の投与の1~14日前に開始される。特定の実施形態によれば、上記少なくとも1種のIL-10誘発性化合物の投与は、上記少なくとも1種の自己抗原の1回目の投与の、少なくとも2週間前、好ましくは少なくとも10週間に開始される。
【0107】
ビタミンDでの治療期間を含む特定の実施形態によれば、500~10000IU、より好ましくは1000~3000IUの、ビタミンD3などのビタミンDが、1日あたりに投与される。
【0108】
ビタミンDでの前治療期間を含む特定の実施形態によれば、7,000~100,000IUの、ビタミンD3などのビタミンDが、1週間あたりに、上記少なくとも1種の抗原の1回目の投与より前に、投与され、その後の維持用量は、1日あたり500~2000IUとされる。
【0109】
いくつかの実施形態において、ビタミンDでの治療期間は、抗原の1回目の投与後60~420日目である。
【0110】
ナイーブなTCおよびBCを活性化しかつ活性化されたメモリーリンパ球からの応答を呼び戻す免疫系の能力を低下させる、NSAID化合物、CTLA-4化合物、またはTNFα阻害剤などの化合物は、上記少なくとも1種の抗原および/または上記少なくとも1種のIL-10誘発性化合物と同時に、または、これらとは別々に、投与されてよい。
【0111】
いくつかの実施形態において、ナイーブなTCおよびBCを活性化しかつ活性化されたメモリーリンパ球からの応答を呼び戻す免疫系の能力を低下させる化合物は、COX-阻害剤などのNSAID化合物である。
【0112】
特定の実施形態によれば、NSAIDでの治療期間は、上記少なくとも1種の抗原の1回目の投与の少なくとも2週間前に開始される。
【0113】
特定の実施形態によれば、COX阻害剤がイブプロフェンである場合、1日あたり少なくとも1回用量の400~1000mgが、NSAID治療期間中に投与される。
【0114】
NSAID治療期間は、少なくとも4~14週間、より好ましくは4~8週間である。
【0115】
この方法において、抗炎症性化合物は、経口または注射によって投与されるべきである。
【0116】
いくつかの実施形態において、ナイーブなTCおよびBCを活性化しかつ活性化されたメモリーリンパ球からの応答を呼び戻す免疫系の能力を低下させる化合物は、TNFα阻害剤である。
【0117】
TNFアルファの遮断によって、免疫応答の活性化状態が抑制され、DCおよび他の免
疫細胞の活性が低下する。さらに、TNFアルファは、リンパ組織内においてFSCおよびGCの構造を破壊し、B細胞の機能を損なうものであるため、抗原特異的なエフェクターT細胞および自己抗体の産生の活性化が低下する。最近の糖尿病前臨床データから、休止状態のDCにより運搬されるベータ細胞抗原は、末梢T細胞(peripheral T cell)の非応答を誘発でき、進行中のベータ細胞破壊を下方調節でき、ベータ細胞破壊を抑止できる、ということが示される。したがって、自己抗原とTNFアルファ阻害剤との併用療法によれば、自己抗体レベルとエフェクターT細胞の活性および数とを比較的低下させることができ、かつ、自己抗原特異的なTregの数および機能を少なくとも維持できる。こうした免疫学的プロセスの変更およびその作用の記録には何か月もかかるが、この間、TNFアルファ阻害によって、そのベータ細胞保護および代謝作用が急速に生じるために、さらに、ベータ細胞が直接保存され得る。GAD65はT1DMにおける主要な自己抗原の1つであるとして知られているため、このアプローチが、糖尿病の自己免疫応答を、十分な限界質量(critical mass)の制御的表現型の方に偏移させ、ベータ細胞の保存に対する顕著かつ長期的な作用を導く。
【0118】
したがって、本発明の一態様において、たとえばインフリキシマブ、アダリムマブ、ゴリムマブ、およびエタネルセプトに限定されないTNF-アルファ阻害剤が、抗炎症性化合物として使用される。エタネルセプトが使用される場合、好ましい用量は、0.2~1mg/kg SQ、1週間あたり1回または2回、2~9か月間である。
【0119】
特定の実施形態によれば、TNFα阻害剤がエタネルセプトである場合、FDA承認の投薬量である、0、2、および6週目に5mg/kgが好ましい。別の一実施形態において、この用量は、第I相のTNFα阻害剤単独療法試験において用いられるもの(0.4mg/kg(最大25mg) SQ、週2回を26週間)と同一である。最も好ましい別の一実施形態において、投与は2回だけであり、ビタミンDおよび自己抗原を含む併用治療レジメンにおいて、最大25mg/投与である。
【0120】
特定の実施形態によれば、TNFα阻害剤は、上記少なくとも1種の抗原の1回目の投与より前に投与される。
【0121】
いくつかの実施形態において、ナイーブなTCおよびBCを活性化しかつ活性化されたメモリーリンパ球からの応答を呼び戻す免疫系の能力を低下させる化合物は、アバタセプトなどのCTLA-4化合物である。具体的な実施形態によれば、上記化合物がアバタセプトである場合、アバタセプトの投与は、治療1回あたりの用量が少なくとも2~20mg/kgにて、上記少なくとも1種の抗原の1回目投与時点の+/-7日以内に開始される。
【0122】
特定の実施形態によれば、CTLA-4化合物は、上記少なくとも1種の抗原の1回目の投与と同時に投与される。
【0123】
特定の実施形態によれば、上記少なくとも1種の抗原ならびにナイーブなTCおよびBCを活性化しかつ活性化されたメモリーリンパ球からの応答を呼び戻す免疫系の能力を低下させる化合物の投与は、TC上のCD28を確実に遮断するために、場合によっては14、28、および45日目(+/-1週間)に繰り返して行なわれ、その際、1日目は、上記少なくとも1種のIL-10誘発性化合物の1回目の投与日である。
【0124】
一態様において、本発明は、T1Dに関連する1つ以上の症状の治療方法を提供する。T1Dに関連する症状は、インスリン産生の低下、インスリン感受性の低下、高い血中グルコースレベル、インスリン産生細胞の破壊、およびCペプチドレベルの異常を含むが、これらに限定されない。
【0125】
本発明に係る方法は、T1Dだけでなく、一般的に自己免疫性疾患および障害の治療および予防に関するものであってよい。たとえば、対象は、バセドウ病(Grave’s disease)、橋本甲状腺炎、低血糖(hypoglyceimia)、多発性硬化症、混合型本態性クリオグロブリン血症、全身性エリテマトーデス(erthematosus)、関節リウマチ(RA)、セリアック病、T1D、またはそれらの任意の組み合わせに罹患している。こうした場合、上記疾患に関連する自己抗原が、自己抗原として、治療方法に含まれる必要がある。本発明の一態様において、対象は、抗原特異性を有するT細胞もしくはB細胞、または、自己抗原に対するT細胞受容体(TCR)もしくはB細胞受容体(BCR)抗原特異性を有するT細胞受容体(TCR)および/もしくはB細胞に関与する自己免疫応答に罹患している。
【0126】
特定の実施形態によれば、本発明に係る治療される個体は、哺乳動物である。具体的な実施形態によれば、本発明に係る治療される個体は、ヒトである。特定の実施形態によれば、本発明に係る治療される個体は、幼児である。具体的な実施形態によれば、本発明に係る治療される個体は、ヒト青年である。具体的な実施形態によれば、本発明に係る治療される個体は、ヒト成人である。
【0127】
いくつかの実施形態において、治療されるヒト対象は、4歳を超えている。
【0128】
他の実施形態において、治療されるヒト対象は、8歳以上である。
【0129】
他の実施形態において、治療されるヒト対象は、10歳以上である。
【0130】
いくつかの実施形態において、治療されるヒト対象は、18歳以下である。
【0131】
いくつかの実施形態において、治療されるヒト対象は、4~10歳、または4~18歳、または8~18歳、または10~18歳である。
【0132】
他の実施形態において、治療されるヒト対象は、18歳以上である。
【0133】
いくつかの実施形態において、治療されるヒト対象は、18~30歳である。
【0134】
IL-10誘発性化合物
いくつかの態様において、本発明に係る方法、組成物、およびキットは、IL-10誘発性化合物を使用する。
【0135】
特定の実施形態によれば、上記少なくとも1種のIL-10誘発性化合物は、1,25-ジヒドロキシビタミンDなどのビタミンDである。
【0136】
特定の他の実施形態によれば、上記少なくとも1種のIL-10誘発性化合物は、TX527などのビタミンD類似体である。
【0137】
特定の他の実施形態によれば、上記少なくとも1種のIL-10誘発性化合物は、UVB放射線による血清ビタミンDの増大を含む。
【0138】
特定の他の実施形態によれば、上記少なくとも1種のIL-10誘発性化合物は、ダサチニブ、ボスチニブ、サラカチニブ、イマチニブ、スニチニブ、またはそれらの組み合わせなどの、チロシンキナーゼ阻害剤である。
【0139】
具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤はダサチニブである。
【0140】
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤はボスチニブである。
【0141】
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤はサラカチニブである。
【0142】
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤はイマチニブである。
【0143】
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤はスニチニブである。
【0144】
他の具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤は、ダサチニブ、ボスチニブ、サラカチニブ、イマチニブ、およびスニチニブのうち少なくとも2種の組み合わせである。たとえば、チロシンキナーゼ阻害剤は、ダサチニブおよびボスチニブの組み合わせであってよい。他のさらなる具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤は、ダサチニブおよびサラカチニブの組み合わせである。他のさらなる具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤は、ダサチニブおよびイマチニブの組み合わせである。他のさらなる具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤は、ダサチニブおよびスニチニブの組み合わせである。他のさらなる具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤は、ボスチニブおよびサラカチニブの組み合わせである。他のさらなる具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤は、ボスチニブおよびイマチニブの組み合わせである。他のさらなる具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤は、ボスチニブおよびスニチニブの組み合わせである。他のさらなる具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤は、イマチニブおよびスニチニブの組み合わせである。他のさらなる具体的な実施形態によれば、チロシンキナーゼ阻害剤は、ダサチニブ、ボスチニブ、およびサラカチニブの組み合わせである。
【0145】
本発明に係る組成物は、複数種のIL-10誘発性化合物を含んでよい。したがって、特定の実施形態によれば、組成物は、少なくとも2種のIL-10誘発性化合物を含む。特定の他の実施形態によれば、組成物は、少なくとも3種のIL-10誘発性化合物を含む。特定の他の実施形態によれば、組成物は、少なくとも4種のIL-10誘発性化合物を含む。
【0146】
シクロオキシゲナーゼ阻害剤
いくつかの態様において、本発明に係る方法、組成物、およびキットは、1種以上のシクロオキシゲナーゼ阻害剤を使用する。
【0147】
こうしたシクロオキシゲナーゼ阻害剤は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)であってよい。さらなる具体的な実施形態によれば、NSAIDは、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、ナブメトン、アスピリン(アセチルサリチル酸)、ジフルニサル(Dolobid)、サリチル酸、サルサラート(Disalcid)、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、エトリコキシブ、およびニメスリドからなる群より選択される。
【0148】
特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、イブプロフェン、デクスイブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェ
ン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、またはロキソプロフェンなどの、プロピオン酸誘導体である。
【0149】
特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラク、ケトロラク、ジクロフェナク、アセクロフェナク、またはナブメトンなどの、酢酸誘導体である。
【0150】
特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、アスピリン(アセチルサリチル酸)、ジフルニサル(Dolobid)、サリチル酸、またはサルサラートなどの、サリチル酸塩である。
【0151】
特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、またはイソキシカムなどの、エノール酸(enolic acid)(オキシカム)誘導体である。
【0152】
特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、またはトルフェナム酸などの、アントラニル酸誘導体である。
【0153】
特定の実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、セレコキシブ、ロフェコキシブ、バルデコキシブ、パレコキシブ、ルミラコキシブ、またはエトリコキシブなどの、選択的COX-2阻害剤である。
【0154】
さらなる具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、イブプロフェンである。
【0155】
さらなる具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、デクスイブプロフェンである。
【0156】
さらなる具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、ナプロキセンである。
【0157】
さらなる具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、フェノプロフェンである。
【0158】
さらなる具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、ケトプロフェンである。
【0159】
さらなる具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、デクスケトプロフェンである。
【0160】
さらなる具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、フルルビプロフェンである。
【0161】
さらなる具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、オキサプロジンである。
【0162】
さらなる具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、ロキソプロフェンである。
【0163】
さらなる具体的な実施形態によれば、シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、インドメタシン
である。
【0164】
イブプロフェンは、主としてcox-2を遮断するが、ある程度はcox-1をも遮断する。イブプロフェンは、狭いIL-1遮断薬よりも、免疫系に対する作用がやや広く、かつ、非常に顕著な抗炎症作用を有し、重篤なリスクを伴わない。イブプロフェンを使用することによって、ベータ細胞炎症が抑制され、かつ、ビタミンD(Vit D)強化されたDCが、T細胞に提示された自己抗原に由来するペプチドに対する耐性を誘発できるようになり、その結果、対象においてベータ細胞を保護できるようになる。
【0165】
CTLA4化合物
いくつかの態様において、本発明に係る方法、組成物、およびキットは、細胞毒性T-リンパ球関連抗原4免疫グロブリンなどの、CTLA-4化合物を使用する。
【0166】
さらなる具体的な実施形態によれば、CTLA-4化合物は、アバタセプトである。
【0167】
アバタセプト(Fcで改変されたCTLA4免疫グロブリン)は、ヒトCTLA4の細胞外部分とヒトIgG1の重鎖とからなる、T細胞障害性かつ免疫調節性の融合タンパク質である。ナイーブT細胞の活性化に関与する共刺激シグナルを遮断する。これがAPC上のCD80/86とライゲーションすると、CD80/86誘発性IL-6が妨害かつ低減される可能性があり、これによって、IL-1ベータ、IFNガンマ、およびIL-17などの炎症性サイトカインが下方調節され得る。さらに、アバタセプトのCD80/86とのライゲーションによって、APCにおいてインドールアミンジオキシゲナーゼ(IDO)が誘発される可能性があり、そして、これによって、T細胞におけるアネルギーが誘発され、かつ、活性化T細胞によるナイーブT細胞の傍分泌活性化が下方調節され得る。B細胞上に発現しているCD80/86は、さらに、アバタセプトが免疫調節機能を発揮するさらなる経路であり得る。
【0168】
TNFアルファ阻害剤
いくつかの態様において、本発明に係る方法、組成物、およびキットは、アダリムマブ、セルトリズマブ、エタネルセプト、ゴリムマブ、またはインフリキシマブなどの、TNFアルファ阻害剤を使用する。さらなる具体的な実施形態によれば、TNFアルファ阻害剤は、アダリムマブである。他のさらなる具体的な実施形態によれば、TNFアルファ阻害剤は、セルトリズマブである。他のさらなる具体的な実施形態によれば、TNFアルファ阻害剤は、エタネルセプトである。他のさらなる具体的な実施形態によれば、TNFアルファ阻害剤は、ゴリムマブである。他のさらなる具体的な実施形態によれば、TNFアルファ阻害剤は、インフリキシマブである。
【0169】
本発明は、分子生物学分野において通常の知識を有する者に周知されるポリヌクレオチド操作技術を含む従来の分子生物学的手法の理解を前提とする。こうした周知の技術の例は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual 2nd Edition,Sambrook et al.,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)中に見いだすことができる。従来の分子生物学的技術の例を、in vitroライゲーション、制限エンドヌクレアーゼ消化、PCR、細胞形質転換、ハイブリダイゼーション、電気泳動、DNAシーケンシングなどを含むが、これらに限定されない。
【0170】
本発明は、また、免疫学分野において通常の知識を有する者に周知される従来の免疫生物学的手法の理解を前提とする。基本的な情報および方法を、Current Protocols in Immunology,editors Bierer et al.,4 volumes,John Wiley&Sons,Inc.中に見いだすこと
ができ、これは、実験動物の管理と扱い、免疫応答の誘発、リンパ球機能のin vitroアッセイ、リンパ球機能のin vivoアッセイ、免疫蛍光および細胞選別、サイトカインおよびその細胞受容体、ヒトにおける免疫学的研究、タンパク質、ペプチドの単離および分析、細胞活性化の分子生物学、生化学、補体、自然免疫、自己免疫性および炎症性疾患の動物モデル(NODマウスモデル、SLEマウスモデル(ループスの)、および制御性T細胞の除去による自己免疫性疾患の誘発についてのチャプターを含む)、抗原のプロセシングおよび提示、免疫性分子および受容体の設計、免疫系におけるリガンド-受容体相互作用、顕微鏡法、ならびに、一般的な免疫系遺伝子およびタンパク質(白血球表面分子のCD分類を含む)についての省略形および専門用語に関する教示を含む。
【0171】
実験
以下に提供される実施例は、本発明のいくつかの態様および実施形態を例示することを意図する。これらは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではなく、本発明の範囲を限定するのは、付属の請求項である。
【実施例0172】
実施例1
方法
手順
パイロット試験(NCT02352974)に参加したT1D患者の群(n=6)に、4μgのGAD-alum(Diamyd Medical、ストックホルム)を、鼠蹊部のリンパ腺内に1回目注射し、続いて、追加免疫注射を2回、4μgずつ1か月間隔で注射した。平行して、ビタミンD 2000U/dを与えた。これとは別の患者のコントロール群(n=6)で、GAD-alum 各20μgを1か月間隔で2回皮下注射し、平行してビタミンD 2000U/dを与えた群を、暗号開示前の盲検条件下において、年齢および性別を調和させるために、かつ、他に記載される二重盲検プラセボ対照試験(NCT01785108)(
図1)の参加者から試料を入手できるか否かに応じて、選択した。
【0173】
臨床検査
臨床分析を、スウェーデンのLinkoeping大学(Linkoeping University)にて行なった。血液および血清試料を、ベースラインにて、ならびに、LN群では30、60、90、および180日後、SC群では15、45、90、および180日後に採取した。試料は午前中に採取し、24時間以内に、Leucosep(Greiner Bio One)を製造元の説明書の通りに使用して、PBMCを単離した。
【0174】
血清抗体およびIgGサブクラス
血清GAD自己抗体(GADA)およびIA-2Aを、全く同一に、放射性結合アッセイにより、以前に記載される35S標識組換えヒトGAD65を使用して、推定した。セファロースタンパク質Aを使用して、遊離体の抗体結合標識GAD65を分離した。この研究室が参加した糖尿病自己抗体標定プログラム(diabetes autoantibody standardization program)(IASP)によって、GADAアッセイの感受性は70%、特異性は100%であり、IA-2Aに対する感受性は99%、特異性は100%であったことが示された。
【0175】
総血清IgEを、ImmunoCap100E system(Phadia AB、ウプサラ、スウェーデン)を使用して定量した。このアッセイによる測定範囲は2~50000kU/Lであり、検量用試料を全く同様に流して、完全な検量線を得た。総IgEレベル≧85kU/Lであるものを、ポジティブとみなした。
【0176】
リンパ球増殖アッセイ
増殖アッセイ用に、PBMCを細胞106個/mlにてAIM-V培地中に再懸濁し、丸底96ウェルプレート中において、5μg/ml rhGAD65(Diamyd Medical、ストックホルム、スウェーデン)の存在下、ポジティブコントロールとしてCD3/C28ビーズ(Gibco、Life Technologies AS,オスロ、ノルウェイ)の存在下、および培地単独中にて、各3通りずつ(細胞2×105個/ウェル)、インキュベートした。3日後、細胞に、18時間かけて0.2μCiの[3H]チミジン/ウェル(Perkin Elmer)を瞬間適用して、その後回収した。増殖を、1450 Wallac MicroBeta counter(Perkin
Elmer、シェルトン、CT、米国)を使用して記録し、各培養条件について3通りの平均を培地単独の3通りの平均で除したものを計算して、刺激指標(SI)として表した。
【0177】
サイトカイン分泌アッセイ
サイトカイン定量およびフローサイトメトリー用に、百万個のPBMCを、20μM β-メルカプトエタノール(Sigma-Aldrich、セントルイス、MO、米国)を添加したAIM-V培地1ml中に希釈して、7日間、37℃にて、5%CO2中、5μg/ml rh-GAD65の存在下において培養した。さらなるウェルに培地単独およびCD3/CD28ビーズを入れたものを、各試料について、それぞれネガティブコントロールおよびポジティブコントロールとして使用した。7日後、PBMCを上清から分離して、上清は、マルチプレックス複数の蛍光色素分析に使用するまで-70において保存し、細胞は、フローサイトメトリーに直接使用した。
【0178】
サイトカインであるインターロイキン(IL)-2、IL-5、IL-10、IL-13、IL-17、腫瘍壊死因子(TNF)-α、およびインターフェロン(IFN)-γを、細胞培養上清中において、Bio-Plex Proサイトカインパネル(Bio-Rad、ハーキュリーズ、CA、米国)を製造元の説明書の通りに使用して、測定した。データを、Luminex 200(商標)(Luminex xMAP(商標)Corpolation、オースティン、TX、米国)を使用して収集した。検出下限は、IL-2について1.38pg/ml、IL-5について1.27pg/ml、IL-10について0.14pg/ml、IL-13について0.43pg/ml、IL-17について1.54pg/ml、IFN-γについて2.1pg/ml、TNF-αについて3.71pg/mlであった。特異的抗原誘発性サイトカイン分泌レベルを、自発性分泌(すなわち、培地単独中にて培養したPBMCからの分泌)をGAD65での刺激後の分泌から差し引くことによって、計算した。
【0179】
フローサイトメトリー
フローサイトメトリー解析用に、PBMCを、β-メルカプトエタノールと共に、AIM-V培地中、37℃にて、5%CO2で、7日間、5μg/ml組換えGAD65を添加してまたは添加せずに、インキュベートした。インキュベート後、細胞を、0.1%BSA含有PBS中において洗浄し、続いて、Alexa-700標識抗CD3(クローンUCHT1、BD Biosciences)、Pacific Blue標識抗CD4(クローンRPA-T4、BD Biosciences)、アロフィコシアニン(APC)-H7標識抗CD8(クローンSK1、BD Biosciences)、PerCP-Cy5.5標識抗CD45RA(クローンHI100、BD Biosciences)、フィコエリトリン(PE)標識抗CCR7(クローンG043H7、Biolegend)、FITC標識抗CD127(クローンeBioRDR5、eBioscience)、およびPE-Cy7標識抗CD25(クローンBC96、eBioscience)を用いて染色した。表面染色後、細胞を固着させて、FOXP3染色バッファーセッ
ト(eBioscience)を製造元の説明書の通りに使用して、透過処理した。次いで、細胞を、APC標識抗FOXP3(クローンPCH101、eBiosciences)を用いて染色し、FACS Aria III(Becton Dickinson)にて、FACS Diva v8ソフトウェア(Becton Dickinson)を実行して取得した。データを、Kaluza v1.3(Beckman Coulter)を使用して分析した。
【0180】
統計学的分析
データ分布を、コルモゴロフ-スミルノフ検定(Komolgorov-Smirnov test)を使用して試験した。正規分布に従う変数を平均として提示し、群間の差異を、Paired samples testによって計算した。群間の差異を、スチューデントT検定を使用して計算した。非正規分布の変数については、ノンパラメトリック検定を適用した(ウィルコクソン検定に関する試料およびマン・ホイットニー検定)。カテゴリー変数間の差異を、カイ二乗検定(χ2検定)によって計算した。確率レベルが<0.05であった場合に、統計学的に有意とみなした。計算を、IBM SPSS Statistics version 23(IBM SPSS、アーモンク、NY、米国)にて行ない、挿入グラフを、GraphPad Prism 5 for Windows(GraphPad Software、ラホヤ、CA、米国)を用いて作成した。
【0181】
結果
患者を、GAD-alum注射をリンパ節(LN)に行なった患者と皮下(SC)に行なった患者とに階層化した。性別分布は両群とも同じであったが、平均年齢は、SC群(14歳)よりもLN患者(22歳)の方が高かった(p<0.001)。ベースラインにおいて、両群のベースライン平均C-ペプチド(空腹時、最大刺激、およびAUC)は類似していた。治療前のHbA1c値はLN患者の方が高く、当該患者ではインスリン用量が低かった(p>0.05)。GADAおよびIA-2A自己抗体レベルについては、両群間に差はなかった(表1)。
【0182】
患者の追跡により、空腹時および刺激c-ペプチド(AUC)はLN群においては180日目で安定のままであったが、糖化ヘモグロビンレベルおよびインスリン取り込みは減少したことが示された。SC群の患者は、刺激c-ペプチドの低下がより大きく、かつ、糖化ヘモグロビンレベルがより高く、インスリン取り込みが増加した(表1)。
【0183】
GADAタイターおよびGADAサブクラスの分析
GADAレベルが、SCおよびLN共に、GAD-alumの2回目の注射後に増大した(
図2a)。しかしながら、低用量のGAD-alumのLN投与では、より高用量のSC注射よりも、GADAレベルが29倍高く誘発された。
【0184】
次に、GADA IgG1~IgG4サブクラス分布を見て、各試料中の全サブクラスの合計(すなわち、総IgG)に対する各サブクラスの頻度を計算した。ベースラインGADAサブクラス分布は2群で類似しており、IgG
1が最も頻度が高く、続いてIgG
3>IgG
2
~(一重波線、ほぼ等しいの意)IgG
4であった(
図2b)。IgG
1の割合は、LN群およびSC群の両方において、ベースラインから90日間で減少したが、他のサブクラスの割合は増加した。印象的であることに、SC群における180日目のGADAサブクラスの分布はベースラインで観察されるものと類似していたが、LN群におけるIgG
1の割合はさらに減少しており、IgG
2、IgG
3、およびIgG
4は劇的に増加した(
図2c)。
【0185】
GAD-alumに応答して生じ得るアレルギー関連作用を無視するために、総IgE
を、ベースラインおよび180日目に測定した。結果から、リンパ内注射した患者および皮下注射した患者におけるベースラインIgEレベルが類似しており、レベルが治療の影響を受けず、180日後も変化しなかったことが示された(データ表示なし)。
【0186】
サイトカイン分泌および相対的寄与
次に、培養7日後に採取したPBMC上清中のサイトカイン分泌を分析した。ベースラインサイトカイン分泌は2群で類似していた。
【0187】
IL-5、IL-13、IFN-γ、およびIL-17のGAD
65誘発性分泌が、90日目に、2回目のGAD-alumのSC投与およびLN投与のいずれの後でも増加し、SC群におけるIL-2も同様であった。LN内への3回目のGAD-alum注射の結果、IL-13分泌が支配的となり、IFNγの180日目(180 days months)におけるレベルが低くなった。一方、IFNγは、SC群において同時点において最も多く分泌されたサイトカインであった(
図3a)。
【0188】
さらに、各サイトカインによる総GAD
65誘発性サイトカイン分泌に対する相対的寄与を評価した。LN群において、GAD-alumの2回目の注射に続いて90日目に、広いサイトカインプロファイルが観察され、一方、3回目の注射の後の180日目におけるサイトカイン分泌は、Th2関連サイトカインIL-13が支配的であった。SC群におけるサイトカインプロファイルも、90日目における広いサイトカイン分泌とTh2サイトカインの支配的分泌とが特徴的であったが、サイトカイン分布は、180日目に、支配的なTh-1様応答にシフトした(
図3b)。
【0189】
in vitroにおけるGAD
65による刺激
GAD
65誘発性の増殖が、LNおよびSCのいずれについても、GAD-alumの2回目の注射によって増加した。LN群への3回目の注射の結果、180日目において増殖が減少したが、SC群においては安定したままであった。CD3/CD28ビーズでの刺激により誘発された増殖は、GAD
65に誘発されたものと同じ分布を示した(
図4)。
【0190】
T細胞免疫表現型
T細胞の分化状態およびGAD
65誘発性活性化を監視した。CD8、CD4、および制御性T細胞の分析に続くゲート戦略の代表的な例が示される(
図5)。
【0191】
GAD-alumの2回目の注射後に、GAD
65刺激により、両群において活性化CD25
+CD127
+T細胞が誘発された。LNにおいて、患者3人において活性化CD4 T細胞がより高い頻度で検出されたが、CD8 T細胞の活性化は穏やかまたは検出不可能であった。一方、SC群においては、活性化CD8 T細胞の割合がより支配的であり、CD4細胞のGAD
65活性化の発現は弱かった(
図6a~6b)
【0192】
CD4
+FOXP3
+CD25
hiCD127
low/-Tregの分析から、安静時Tregは試験期間を通じて変動しなかったが、抗原呼び戻しによって、制御的表現型を有する細胞の増加が、両群において180日目に誘発されたことが示された(
図6c~6d)。CD45RAを添加したさらなる分析から、両群において非抑制性FOXP3
loCD45RA
-T細胞の増大が明らかになった(
図6e~6f)。
【0193】
CD4およびCD8 T細胞を、CD45RAおよびCCR7の発現に応じて、ナイーブ(T
N、CD45RA
+CCR7
+)、セントラルメモリー(T
CM、CD45RA
-CCR7
+)、エフェクターメモリー(T
EM、CD45RA
-CCR7
-)、および高分化エフェクターメモリー(T
EMRA、CD45RA
+CCR7
-)細胞としてさらに
分類した(
図7)。LNおよびSCの両群ともに、90日後のナイーブなCD4およびCD8 T細胞の割合が漸進的に減少したが、メモリー細胞およびエフェクター細胞の頻度は、GAD
65刺激PBMCにおいて増加した(
図7a~7h)。
【0194】
【0195】
【0196】
リンパ節内(LN、n=6)または皮下(SC、n=6)にGAD-alumを注射した患者の、ベースラインC-ペプチド、インスリン取り込み、およびHbA1c。各患者における、治療前のGADAおよびIA-2タイター(U/ml)、GADA IgGサブクラス相対的分布(%)、ならびにGAD65誘発性サイトカイン分泌レベル(pg/ml)。M:男性、F:女性、n.d:検出不可能なレベル。
【0197】
ベースラインから180日目のC-ペプチド、インスリン取り込み、およびHbA1cの変化の割合(%)。データは平均値で表し、LN群およびSC群の間の差異は、スチューデントT検定およびカテゴリー変数(性別)のためのχ2によって計算した。差異は、p<0.05である場合に有意であると考えた。
【0198】
実施例2
下記の実施例は、本発明の多様な態様の安全性および効力を確立するために実施できる研究を開示する。当該実施例において使用されるベータ細胞自己抗原は、グルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)であり、本明細書中において記載される任意の他のベータ細胞自己抗原で置き換えてもよい。
【0199】
GAD抗原(Diamyd(登録商標))療法をリンパ節内に投与することにより、1型糖尿病を発症して間もない成人における残存インスリン分泌を保存するための、パイロット試験(DIAGNODE)
1.1 背景および根拠
世界における子供の1型糖尿病(T1D)発病率は、フィンランドが最も高く、続いてスウェーデンが高く、急速に増加している。T1Dは、我が国の子供および青年にとって、圧倒的に最も一般的、慢性的、重篤、かつ命を脅かす疾患であり、1型糖尿病の発病率は若年成人においても高い。この疾患は、極めて深刻な世界規模の問題になる傾向がある。この疾患は、インスリンの不足または欠如を特徴とする。診断時の残存ベータ細胞機能が良好である患者も数人いるが(1)、すぐに欠損が非常に顕著となり、最終的には完全に欠損する(2、3)。残存インスリン分泌は非常に重要である。稀なケースとして、ベータ細胞の機能が診断後すぐに改善し、グルコース代謝が正常となって、しばらくインスリンが不要となる、すなわち、患者がいわゆる完全寛解に至る場合がある(4)。患者が完全寛解状態にある限り、恐らくは、運動および食事に関する健康的な生活習慣の推奨以外には、積極的な治療は不要である。症状はなく、急性の合併症もなく、完全寛解が続けば、この患者が遅発性合併症を発病する可能性は低い。グルコースまたは脂質代謝にわずかでも異常があると、化学的糖尿病または耐糖能異常の人の場合と同様に、大血管性合併症のリスクが上がる可能性がある。完全寛解は稀であるが、部分寛解は稀ではない(4)。この期間、患者は通常、血中グルコース値が正常に近く、軽度の低血糖さえ示さず、ケトアシドーシス症状も発現しない。生活の質は非常に良好であり、患者は気分良好であると感じ、子供は正常に発育し、制限はほぼ不要で(食事制限があるかもしれないが)、患者は様々な運動をしても低血糖になることはなく、家庭での血中グルコース検査も非常に良好となる。残存インスリン分泌がいくらかでもあれば、ケトアシドーシスのリスクの低減に十分である(5)。さらに、DCCT試験において、中程度の残存インスリン分泌(ベータ細胞刺激に対する応答、血清Cペプチド>0.20pmol/ml)であっても、合併症予防に重要な役割を果たすということが示されている(6)。この作用は、残存インスリン分泌があれば良好な血中グルコース平衡への到達が容易になると考えるのが妥当であろうという事実によるものであり得るが、Cペプチド自体が生理的機能を有する可能性もある。C-ペプチド自体の作用は依然として議論のあるところであるが、実際、Cペプチドが血管透過性に影響を及ぼし、網膜血管の漏れを低減し、特に、神経機能に対して好ましい作用を有することが報告されている(7)。
【0200】
1.1.1 自然の経過に影響を及ぼす因子
T1Dの診断時、膵臓のベータ細胞の80~90%が破壊された状態である、ということが言われている。しかしながら、その証拠は乏しく、主要な問題は機能の低下であろう。さらに、患者間の差異が大きく、残存インスリン分泌が非常に良好な患者もいれば、あまり良好でない患者もいる。診断後すぐに、特に積極的なインスリン治療が行なわれると、C-ペプチド産生が増加し、これと並行してインスリン感受性が改善する。良好な代謝調節によって、ベータ細胞にとっての環境および代謝が改善されるようであり、ベータ細胞機能が保存され、これが、良好な代謝調節に寄与する(逆の場合も同じである)。自己免疫プロセスの強度が一定の役割を果たし、1型糖尿病の子供の免疫プロセスは1型糖尿病の成人よりも活発であることが明らかであるようであるが、その過程を予測することは依然として困難である。いくつかの研究では、自己抗体が高濃度となるとこれに続いてインスリン分泌の低下または喪失がより急速になることが示唆されているが、他の研究では、このような関連も、ましてやその逆の関連でさえも、見いだされていない。ベータ細胞
の減少または喪失を予測できる細胞介在性免疫の特異的な兆候は現在のところ立証されていないが、本発明者らの研究で、疾患プロセスが、IFNgなどの特定のサイトカインの増加とIL-10、IL-13の減少とを伴う免疫系のT-ヘルパー-1(Th-1)の偏移に関連することを示した。
【0201】
インスリン治療がベータ細胞の機能に及ぼす作用
ずっと以前に、この疾患の初期における積極的なインスリン治療が部分寛解を延長させたという知見があり、この知見は、残存インスリン分泌の改善によって確認および実証し得た(2)。高強度の治療によって、残存ベータ細胞機能が少なくともある程度の期間にわたって改善されるようであるが(8)、さらに長期にわたって好ましい作用を有する可能性もある(9)。積極的な治療は、実験動物において糖尿病を予防するまたは遅らせることが示されているだけでなく、研究により、こうした治療が高リスクの個体において糖尿病を予防できることが示されている(10)。しかしながら、糖尿病予防試験(Diabetes Prevention Trial)において大規模に試験された際には、非経口インスリン治療では糖尿病が予防されなかった(11)。インスリンでの経口治療は一定の作用を有するかもしれず(12)、したがって、さらなる研究が必要である。
【0202】
1.1.2 介入
1970年代に、T1Dが自己免疫性疾患であることが明らかとなり、その結果、免疫介入が試みられた。本発明者らは、糖尿病の子供に対して世界で最初に免疫介入研究を行なったが、その時すでに、30年前であるが、新たに診断された子供および青年において血漿交換を使用して、いくらかの好ましい作用を得た(13)。この治療の結果、予想外にも、重量64kDの新たなタンパク質を血漿中に発見し(14)、後に、これがグルタミン酸デカルボキシラーゼ(GAD)であることを示した。飛躍的な前進(免疫介入の概念の証拠とみなした)はシクロスポリンであり、これが、自己免疫による破壊的プロセスを減速して残存インスリン分泌を改善したことは疑いなく、一方、他の免疫抑制試験では、特に子供において、作用は非常に小さかった(15、16、17)、または、重篤過ぎる有害事象もしくはリスクを示した(18、19)。免疫系を調節する試みとして、本発明者らはフォトフェレーシスを使用した。二重盲検プラセボ対照試験において免疫系に対する作用が明らかに示されたが(20)、臨床作用は非常に小さく、残存ベータ細胞機能の改善はほとんど見られなかった(21)。その結果、免疫介入が成功しないことを受けて、本発明者らは、作用がないかまたは作用が一過性であるニコチン酸アミドおよびジアゾキシドなどの保護剤に関心を向けた(22、23、24)。
【0203】
ベータ細胞破壊に至る免疫プロセスについての認識が高まるにつれて、免疫介入をより正確に方向づけて、重要なT細胞を標的とすることができるようになった。破壊的免疫プロセスを遮断する試みとして、抗CD3抗体を使用する有望な研究が行なわれている。北アメリカおよびフランスにおける、抗CD3抗体を使用した試験の結果から、破壊的自己免疫プロセスを遮断でき、その結果、ベータ細胞機能の低下を少なくとも遅らせ得ることが示された(25、26)。残存インスリン分泌の低下は有意に減速したが、残念なことに、この低下は単に1年遅延されたのみであるようであり、その後、C-ペプチド曲線の低下は、プラセボ群における低下曲線と平行になった。さらに、患者の大多数は、ある程度のサイトカイン放出症候群(CRS)を経験し、これは非常に重篤となる場合があり、これに加えて、ほとんどの患者において複数の副作用が見られた。本発明者らは、最近実施された2つの第III相試験のうち1つ(Protege trial)に参加したが(一次エンドポイントには到達できなかった)、最も強力な治療を実施した部門(arm)が、実際、ある程度の残存インスリン分泌の保存、およびインスリン要求の低下を示し、HbA1cが良好となった(27;Sherry,Hagopian,Ludvigsson et al Lancet 2011)。新たな研究が必要であるが、この型の治療が単独で全般的臨床使用に向けた解決策として受け入れられるとは考えにくい。そし
て、この治療が、糖尿病を発病しないであろう個体を多く含む健康な個体における予防的治療として受け入れられる可能性は、さらに低い。
【0204】
1.1.3 自己抗原による免疫療法
アレルギー性疾患の治療において、少量の疾患特異的抗原による免疫療法が、長年にわたって効率的に使用されてきた。この治療の機序はよく分かっていないが、免疫応答の免疫調節および制御性細胞の誘発が示唆された。自己免疫性疾患において、こうした治療が成功したことはないが、試みられるべきである(28)。糖尿病易発性の動物における実験から、熱ショックタンパク質での治療によって糖尿病の発病を遅延できるまたは遅らせ得ることが示された。成人での研究におけるDiapep277ペプチドの使用によって、有害事象をほとんど生じることなく、インスリン分泌の顕著な保存が示された(29)。しかしながら、後に実施された、T1Dを有する子供および青年における試験では(30)、作用は示されなかった。いわゆるLADA(成人の潜伏自己免疫性糖尿病)におけるDiapep277治療での研究が進行中であり、予備試験での結果(2011年12月のドバイでのIDFの報告、および2012年6月のADAでの報告)から、Diapep277での治療によって軽度1型糖尿病の成人におけるベータ細胞機能を保存できることが示唆される。しかしながら、この結果はやや不確かである、というのは、弱いC-ペプチド保存がグルカゴン刺激後にのみ見られたが、混合食負荷試験後には全く作用が見られず、積極的に治療した群とプラセボとの間に免疫マーカーの差異は全く見られなかったためである。インスリンでの積極的治療が実験動物において糖尿病を予防するまたは遅らせるということだけでなく、予備的な非盲検研究によって、こうした治療により、高リスクの個体において糖尿病を予防できることが示された(10)。インスリン(ベータ細胞特異的自己抗原であることが明らかである)が、高リスクの個体における糖尿病の予防を目的として非経口(parentally)投与されたが(DPT)、作用はなく、同じ目的での経口インスリン投与はわずかな作用を有し得る(12)。
【0205】
1.1.4 GAD-Alumでの以前の臨床研究
1.1.4.1 GADワクチン接種
GAD(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)は自己抗原とみなされ得る、というのは、ベータ細胞刺激に対する応答として、島において産生されて、放出が増加するためである。このタンパク質は、自己免疫の免疫プロセスに重大な影響を及ぼすことが示されている(31、32、33、34)。いくつかの研究によって、実際にGADが実験動物において糖尿病を予防できることが示されている(35~42)。GADとウイルスタンパク質との相似点は、治療的作用にとって重要であり得る。観察される作用(免疫プロセスの開始後であっても)から、ヒトにおいても免疫プロセス開始後に同様の作用を予期できる可能性のあることが示唆される。LADA患者における第II相研究において、低用量(Diamyd 20μg)の1回投与によって、プラセボ治療群と比較して、ベータ細胞機能が最長2年間にわたり改善され、副作用はなかった。これ以外の用量も試みられ、4μgは作用を示さず、100μgは20μgと類似する作用を示したが、500μgは作用を示さなかった。これらの用量はいずれも、何年間かの追跡後にも、有害事象を全く示さなかった(43)。CD4+CD25+/CD4- CD25-細胞における比率の変化との関係が見られ、このことから、この作用の機序が示された。こうした有望な背景から、本発明者らは、発症して間もない10~18歳の1型糖尿病患者における第II相研究を開始した。以前に、この治療が緩徐進行LADA患者において作用を有したという考えに基づいて、本発明者らは、介入時にT1D糖尿病持続期間が最長で18か月間である患者を含めた。当該患者らを、1日目および30日目に20μg GAD-alum(Diamyd)をsc投与するものと、プラセボとに、無作為に分けた。作用は30か月後にも著しく、統計学的にも臨床的にも明らかに有意であり(44)、プラセボ群と比較してGAD治療群ではC-ペプチド低下がおよそ半分であった。糖尿病持続期間が<3か月である患者は、追跡初期の15か月間、顕著に良好な作用を有し、ベータ細胞機能の低下は
ないか、または非常に小さかった。ワクチン接種時に持続期間が<6か月間であった患者において、ほぼすべての作用が見られた。さらに、他の介入治療とは異なり、この作用は有害事象を全く伴わなかったため、この治療は非常に有望なものとなった。48か月後でも、持続期間が<6か月間である治療患者は、C-ペプチドが顕著に保存されており、その時点でも有害事象はなかった(45)。ここまで、GAD治療は非常に期待のもてるものであった。2つの第III相試験が実施され、その一方は、欧州での試験でJohnny Ludvigsson(JL)が主任研究員(PI)を務めたものであり、もう一方は、米国での試験でJerry Palmerが主任研究員(PI)を務めJLが共同研究者を務めたものであった。欧州での試験では、334人の患者を募集して3つの部門に分け、1つ目の部門は1、30、90、および270日目にGAD-alum(Diamyd)20μg、2つ目の部門は1日目および30日目にGADalum 20μgと90日目および270日目にプラセボ、3つ目の部門は1、30、90、および270日目にプラセボとした。一次エンドポイントである、混合食負荷試験(MMTT)後の15か月目における血清C-ペプチドAUCは、達成できなかった(C-ペプチドAUC p=0.1;空腹時C-ペプチド p=0.07)(46)。このことがきっかけとなり、参加企業(Diamyd MedicalおよびJohnson&Johnson)は、第III相試験を早々に打ち切った。しかしながら、この第III相試験によって、いくつかの好ましい作用が示された。それは、いくつかのあらかじめ指定されたサブグループにおいて、統計学的に有意な効力が見られたことであった。さらに、スウェーデン人患者45人は、研究停止の時点で、30か月間目の来診を済ませており、GAD-alum(Diamyd)20μgを2回投与した患者15人は、30か月後に、プラセボと比較して、顕著なC-ペプチド保存を示した。このことは特に注目すべきである、というのは、非北欧国では15か月後に効力が見られていたが、スウェーデン人患者では15か月後には効力が見られていなかったからである。
【0206】
1.1.4.2 第II相と第III相とで結果が異なった理由として想定されるもの
第III相の無作為化において、活性薬剤を投与した患者は、16~18歳年齢群よりも10~11歳年齢群に多く、一方、年齢が高い方の群においては、活性薬剤よりもプラセボの人数の方が多かった。このことが結果に影響を及ぼした可能性がある。第II相の患者は3月~4月に治療を受けており、3月~4月に治療を受けた第III相の患者も、GAD治療によって顕著な作用を示した。第II相試験においては、ワクチン接種は許可されなかったが、第III相においては、インフルエンザワクチン接種が許可された。残念なことに、H1N1-fluの流行のために、患者のほぼ全員がワクチン接種を受け、そのうちの多くはGADワクチン接種に関連があった。
【0207】
スウェーデンおよびフィンランドにおいて、このワクチンはスクワレンを含有するため、免疫系に影響を及ぼして自己免疫の方に偏らせる恐れがあると推測されており、GAD治療は当該2か国では効力を示さなかったが、他の欧州国では顕著な効力が見られた。GAD治療に近い時期にインフルエンザワクチン接種を受けていないスウェーデンの患者での方が、GAD治療の効力が良好であった(46)。
【0208】
1.1.4.3 進行中のDIABGAD-1試験
2013年1月から、第II相DIABGAD-1試験がスウェーデンにおいて進行中である。これは、1型糖尿病を発症して間もない10~18歳の患者60人を、二重盲検プラセボ対照無作為化試験において、GAD-alumを30日間隔で2回各20μg(40μg)投与して治療し、これと組み合わせて、ビタミンD 2000単位を450日間毎日、およびイブプロフェン400mgを90日間毎日投与する試験である。募集は完了しており、打ち切られている。患者60人が無作為化され、それ以外に患者4人がスクリーニング中で、スクリーニング結果を待っている。現時点で、試験している薬物に関連すると判断される重篤な有害事象はなく、GAD-alum注射部位における軽度かつ一
過性の反応以外には、当該治療に関係のない有害事象がごくわずかにあるのみである。全患者について6か月間追跡した後に仮分析することが既に予定されており、さらに長期の分析を15および30か月後に行なう予定である。
【0209】
1.1.5.リンパ節内免疫療法
抗原療法は、リンパ節内のT細胞に抗原を提示して、抗原に対する免疫系と耐性との新たな平衡をつくりだすことを目的とする。これまでの自己免疫性疾患の治療においては、抗原提示/樹状細胞に抗原を提示する(その結果、この抗原提示/樹状細胞が、免疫系のT細胞に抗原を提示することが予期される)目的で、抗原を、経口、鼻腔内、または皮下のいずれかに投与するものであった。しかしながら、動物実験により、リンパ内注射が、強くかつ関連のあるT細胞応答を誘発することが示され(47、48)、アレルギー分野での臨床研究により、リンパ節内への直接の抗原/アレルゲン提示の方が、慣習的な投与よりも有効なようであることが示された(49)。使用するアレルゲンの用量をより少なくすることができ、治療回数を大幅に少なくでき、かつ、これまで治療に関連する有害事象は示されていない。患者の鼠蹊部のリンパ節は容易に到達でき、注射に関連する疼痛は、静脈穿刺よりも小さいとされる(50)。この背景から、本発明者らは、自己免疫形態の1型糖尿病の患者にも同じアプローチを使用できるか否かを調べることを目的としている。倫理的な理由から、本発明者らは、1回目のパイロット試験を成人において行う。
【0210】
1.2 仮説
第II相GAD試験の有望な結果と、欧州での第III相試験の一部前向きな結果は、GAD-alum(Diamyd)の投与により自己免疫プロセスを低下させることができ、残存インスリン分泌の保存に寄与し得るという概念を裏付けるものである。以前の研究により、Diamydの用量範囲は20~100μgとするべきであると示されているとおり、リンパ節内への直接投与の場合には、3μgという低用量の3回投与が十分とされるべきである。リンパ節内へのGAD-alum(Diamyd)の直接の注射によって、重篤な有害事象は生じず、所望の免疫学的作用が得られ、かつ効力が改善される(後続の研究で示される)と考えられる。
【0211】
2.リスクと利益の分析
1型糖尿病の発病率は、世界中の他のどの国よりもフィンランドにおいて高く、続いてスウェーデンにおいて高い。発病率は数十年間上昇し続けている。この疾患は、治癒不可能であり、予防も不可能である。非常に激しく強力で高価な治療を受けても、多くの患者は、命にかかわる重篤な急性および遅発性合併症を生じ、死亡率が大幅に上昇する。診断時、多くの患者は、わずかな残存インスリン分泌を有している。そうである限り、血中グルコースを安定に維持するのは大幅に容易となり、低血糖の発病率およびケトアシドーシスのリスクも低下する。糖尿病患者および糖尿病の子供の親にとっての生活の質は、残存インスリン分泌がある場合の方が良好である。
【0212】
成人における1型糖尿病は、子供および青年における当該疾患とは異なり、多くの場合、疾患プロセスが軽度で、残存インスリン分泌の低下が遅く、血中グルコースの制御が容易である。しかしながら、類似点も多く、治療および合併症が類似しており、ベータ細胞機能の保存は成人にとっても非常に重要である。
【0213】
残存インスリン分泌を保存することが非常に有利であることは明らかであり、したがって、この機能の保存を目的とする療法にあっては、非常に激しく、さらには危険かつ高価でさえある治療も正当であると認められる。したがって、CD3受容体は、主に全患者において有害事象を引き起こし、非常に重篤な有害事象およびリスクをも引き起こす場合があるが、このCD3受容体に対するモノクローナル抗体といった薬剤での1型糖尿病の発症時の治療が正当であると認められている。純粋な細胞増殖抑制剤でさえ、使用されてい
る。
【0214】
本発明者らが提案する研究においては、GAD-alum(Diamyd) 4μg×3を使用するが、この治療は、子供および成人に対してこれより大幅に高い用量で使用されていて、数千人の患者を何年間も追跡した結果、有害事象がほとんど見られていない。本発明者らは、当該研究において、非常に低用量で使用することを計画しており、これは、全般的なリスクのさらなる低下を予期できることを意味するが、その投与は、リンパ節内に直接行なうため、局所的反応が生じる可能性はある。免疫系に対する作用はより顕著となる可能性があるが、有害作用を引き起こすものではないと考える。アレルギーにおける以前の研究では(共同研究者の1人であるHelene Zachrissonが、alum配合アレルゲンをリンパ節内に注射した)、全身性か局所的かを問わず、有害作用は全く見られていない。この試験は、リンパ節内へのこの型の自己抗原治療を伴う全く最初のパイロット試験であるため、安全性の理由から、本発明者らは、まず、インフォームドコンセントを自由に提供できる成人において試みる。成人における1型糖尿病は若年患者の場合よりもやや軽度ではあるが、ベータ細胞機能の保存は非常に大きな価値があり、したがって、ここで提案される治療は、成人患者にとっても治療的価値が大きなものであり得る。
【0215】
利点と欠点とについて概要を示すとき、参加した患者にとっても、将来的な研究における患者にとっても、非常に重要な治療的利益を有する可能性が明らかであり、リスクは非常に小さい。こうした研究が、良い治療の開発に寄与すれば、多くの患者にとって非常に大きな価値があると考えられる。
【0216】
3.提示する研究の目的
本発明者らが提示するパイロット研究の目的は、治療に関連した重篤な有害事象を伴わずにGAD-alumをリンパ節内に投与できるか否かについて情報を得ること、および、同じ技術による将来的な第II相試験において1型糖尿病における残存インスリン分泌の保存における効力を改善できるようにすること、である。したがって、本発明者らは、この治療が有害事象を伴うか否か、および、治療レジメンがどのように免疫系に影響するのか、所望のTh-2偏移、T制御性細胞の増加をどのように引き起こすのか、および、望ましくは、残存ベータ細胞機能の保存の指標について知りたいと考える。このパイロット研究において短期間で得られた結果に基づいて(追跡6か月)、本発明者らは、次いで、より大規模の第II相試験を設計して、若年患者を含めて、さらに確かな情報を得たいと考える可能性がある。次いで、主要な長期的目標は、患者にとって許容可能で、安全で、残存インスリン分泌を保存でき、患者の生活の質を改善でき、急性の合併症が少なく、長期的に見て遅発性合併症のリスクが少ない、若年患者における1型糖尿病の発症時の治療を見い出すことである。
【0217】
4.目的
目的:
Diamydをリンパ腺内に直接投与することにおける安全性の評価、ならびに、免疫応答(51~54)、および内因性インスリン分泌の保存に対する作用の評価(ベースライン、ならびに6、15、および30か月後において測定)。
【0218】
5.集団
Linkoeping大学病院において1型糖尿病を発症して間もない成人患者に、当該研究についての情報を提供し、試験への参加を依頼する。
【0219】
5.1 含める基準
1.患者および保護者/親より提供されるインフォームドコンセント
2.ADA分類法に準ずる1型糖尿病、糖尿病持続期間<6か月間
3.1型糖尿病診断時に年齢18.00~29.99歳
4.空腹時C-ペプチド≧0.12nmol/ml
5.Pos GADAであるが<50000無作為の単位
6.女性については、妊娠回避に対する合意、および尿妊娠検査で陰性であることが必要
7.GAD-Alum/プラセボの最後の投与後1年間にわたり適切に避妊することについての患者の合意が必要
【0220】
5.2 除外する基準
1.免疫抑制剤療法による治療を以前にまたは現時点で受けている(ただし、局所的または吸入型ステロイドは許容される)
2.あらゆる炎症薬(inflammatory drug)での連続的治療(たとえば、頭痛のため、または発熱に関連して、2~3日間実施される散発的な治療は許容され得る)
3.インスリン以外のあらゆる経口または注入型の抗糖尿病薬物による治療
4.貧血の病歴、またはスクリーニング時における顕著かつ異常な血液検査結果
5.癲癇、頭部外傷、もしくは脳血管事故の病歴、または近位の筋肉における連続的な運動単位活動の臨床的特徴
6.過去のワクチンまたは他の薬剤に対する急性反応の臨床的に顕著な病歴
7.予定された1回目の研究薬剤投与または予定された任意のワクチンでの治療の4か月前から、研究薬剤の最後の注射から最長4か月後までの間の、インフルエンザワクチンを含むあらゆるワクチンによる治療
8.過去3か月間の、新しい化学物質を用いた他の臨床試験への参加
9.本プロトコールの規定に従えない、または従う意思がない
10.アルコールまたは薬物乱用の病歴
11.1回目投与前の2週間以内における糖尿病以外の顕著な疾病
12.既知のヒト免疫不全ウイルス(HIV)または肝炎
13.授乳中または妊娠中の女性(妊娠の可能性は、GAD-alum治療前24時間以内における施設での尿βHCGによって除外されなければならない)
14.GAD-alum治療の最後の投与後1年間にわたり適切に避妊する意思のない男性または女性
15.皮膚感染症に罹患中で皮下注射不可能であるケースを含む、関連する重篤な疾患または状態が存在し、研究者が、当該患者は当該研究に参加資格がないと判断した場合
16.説明書に従えない、および/または研究プロトコールに従えないと研究者がみなした場合
【0221】
5.3 募集およびスクリーニング
有資格である対象は、当該研究についての説明を受け、患者情報を書面で受け取る。当該対象は、研究の性質について確認した後、研究チームに質問する機会を与えられる。その後、対象が参加に同意したら、対象は個人としてサインして、インフォームドコンセント書の書面に日付けを記入する。次いで、患者は、このサインと日付を記入した患者情報/インフォームドコンセント書のコピーを受け取る。
【0222】
5.4 患者の離脱
ヘルシンキ宣言に従って、研究者は、患者に、研究からいつでも離脱できる権利があること、および、離脱しても当該患者の将来的な治療に損害が及ばないことを説明しなければならない。しかしながら、安全性の問題が生じない限り、本発明者らは、研究を離脱した患者についても、効力および安全性変数を分析する目的で、当該研究の全期間にわたって追跡する予定である。いかなる種類の離脱についても、その理由を適切なCRFに記録
しなければならない。
【0223】
研究からの離脱には様々な分類があり得る。完全な離脱(すなわち、研究薬品を停止し、効力および安全性の評価は継続)
【0224】
当該研究へのさらなる参加から、および追跡来診(および、たとえば、血液検査)から離脱する標準的な理由には、以下があり得る。
・患者の決断(参加同意の撤回)
・患者を追跡不能
・研究薬品のさらなる投与からは離脱するが、追跡来診および安全性評価は継続する標準的な理由には、以下があり得る。
・許容できない有害事象
・患者の希望
・研究者の判断
・患者を追跡不能/患者が現れない
・介入性の疾病
・患者の妊娠
【0225】
したがって、患者が、当該研究に含められた後に以下に該当した場合は、当該患者にリンパ節内GAD-alum投与を行なうべきではない。
・脳損傷、癲癇、頭部外傷、神経疾患
・1型糖尿病以外の、あらゆる活性型かつ重篤なホルモン疾患
・他の重症の自己免疫性疾患(セリアック病は除く、当該研究に含めることが許容されるため)
・免疫抑制治療
・がん、がん治療
・インスリン以外のあらゆる他の糖尿病薬剤
・あらゆるワクチン接種
・薬物/アルコール乱用
または、患者が、
・当該研究の間に、妊娠した場合、もしくは、安全な避妊薬を使用する意思がなくなった場合。
【0226】
しかしながら、患者が研究から離脱する際にはいつでも、または、さらなる来診に来ない理由が何であっても、当該研究からの離脱理由を提示して、その患者(来診<>)についての最終的な研究評価を完了しなければならない。当該患者に関するすべての書類は、できる限り完全なものでなければならない。現れないというのが理由で離脱した場合には、研究者は、現れない理由を知るために追跡しなければならない。介入性の疾病または有害事象が理由で離脱した場合には、症例記録の形態で十分な記録を取らなければならず、補助的な情報が入手できれば、および/またはそうした情報が適切であれば、それを追加する。
【0227】
6.治療手順
6.1 研究設計および治療
試験は、男性または女性で、18.00~29.99歳で、スクリーニング(来診1回目)時にT1D診断から6か月以内であり、かつ、空腹時C-ペプチドレベルが0.12nmol/L以上である、GADAポジティブT1D患者における、単施設非盲検パイロット研究である。合計約5人の患者を、スウェーデンのLinkoepingの一施設にて募集する。当該患者が資格を有するか否かを、治療開始の10~21日前に、スクリーニング来診(来診1回目)時に評価する。スクリーニングした患者に、連続するスクリー
ニング番号を割り当て、このスクリーニング番号を、研究期間全体を通して、患者確認用に使用する。
【0228】
当該研究に含められた有資格患者は、次いで、研究に登録して、その後の来診時に下記表1の研究用薬剤の投与を受ける。当該患者を、施設への来診8回を含む30か月間の研究期間全体にわたって追跡する。
【0229】
研究来診の全体像については、下記表1を参照のこと。
【0230】
【0231】
本発明によれば、GAD-alumのさらなる投与を、上述されるように、来診7回目、任意に8回目に実施してよい。
【0232】
6.2 評価および手順
1.新たに診断された1型糖尿病患者に対する、標準的なインスリン治療、教育、および心理社会的サポート。
2.体液、電解質、および酸塩基バランスの正常化。
3.当該研究についてのその後の情報。
4.患者がインフォームドコンセントを提供した場合、診断から遅くとも120日後に、C-ペプチドおよびGADA濃度以外の基準により有資格となった患者からの空腹時静脈試料を用いて、スクリーニングを行なう(来診1回目)。
5.ベースライン(来診2回目)、6、15、および30か月目において、MMTTによって残存内因性インスリン分泌を評価する。研究来診時に毎回、HbA1c、安全性(血液学的および化学的)、自己抗体タイター(GAD65、IA-2)、免疫学に続いて、血液試料を採取する。研究来診時に毎回、外因性インスリン用量/24時間、Ae、および併用薬物を記録する。
6.研究来診時に毎回、自己申告による低血糖(他者の補助を必要とすること、および/または発作、および/または意識消失として定義される)を記録する。
7.他の医学上の問題のあらゆる症状または兆候は、臨床医の判断によって治療されるべきである。
【0233】
検査を、下記のセクション7の表2に従い、症例報告書(CRF)に記載された順序で行なう。
【0234】
6.2.1 全来診、来診1回目~7回目
注意すべきは、患者は、すべての研究来診に、一晩絶食(>10時間、水は許容される)後の翌朝に参加すべきであるということである。感染(発熱を含む)のエビデンスのあ
る患者については、完全な来診は、5日間、または患者が回復するまで、延期されるべきである。
【0235】
6.2.2 GAD-Alumの投与、来診2、3、および4回目
投与後、患者は、研究施設付近に1時間留まるものとし、注射して1時間後に、研究者/研究看護師が投与部位を検査する。
【0236】
6.2.3 混合食負荷試験(MMTT)、来診2、5、6、および7回目
・MMTTは、CRFに記載される説明に従って行なわなければならない。患者は、
・一晩絶食後(>10時間)(すなわち、患者は、食事を摂ってはならないが、水を飲むことは許容される)、研究施設に来る。
・MMTT前の6時間は短時間作用型/直接作用型インスリンの投与を受けてはならない。患者は、前日/前夜の基礎インスリンの投与が許容されるが、MMTT前の朝にはこれが許容されない。
・CSII(インスリンポンプ)を用いる患者は、基礎用量インスリンを継続しなければならないが、MMTT直前の6時間にはボーラス用量を追加してはならない。
・試験当日朝に患者の家庭用血中グルコース計で計測した空腹時血漿グルコースレベルが、4~12mmol/Lの範囲内でなければならない。患者が、上記の基準のうちいずれかを満たさない場合には、MMTTの日程を変更するべきであり、患者は可能であれば5日以内に研究施設に戻るべきである。
【0237】
安全性の理由から、対象が食事またはインスリンを必要とする場合には、来診の日程を変更するべきである。
【0238】
6.3 臨床検査および検査:
1.免疫学的試験:
a.自己抗体(抗GAD65、抗インスリン、抗IA-2、ZnT8)
b.関連するサイトカインおよびケモカインの決定(下記を参照のこと)
c.T細胞の分類および研究(下記を参照のこと)
2.遺伝学:
a.HLAの決定を実施、および、糖尿病の発病に関する遺伝子
b.糖尿病関連遺伝子の重要性を解明するためのアレイ研究
3.ウイルスアッセイ:
a.遺伝学的、免疫学的、および微生物学的な試験を使用してよい。
4.糖尿病の状態:
a.HbA1c
b.空腹時血糖および空腹時C-ペプチド
c.食事刺激性グルコースおよびC-ペプチド
5.安全性を調べるための血液試料採取:
a.血液学
b.化学
【0239】
6.4 既往歴
対象の過去の既往歴を、研究者がすべて確認し、既往歴CRFに記録する。
【0240】
スクリーニング来診(来診1回目)時、すべての既往症/疾患を既往歴CRFページにて報告する。
【0241】
対象の1型糖尿病診断日および1型糖尿病の家族歴についても記録する。
【0242】
6.5 神経学的検査を含む身体検査
スクリーニング来診(来診1回目)時、患者は全身の身体検査および神経学的検査を受け、所見があれば、既往歴CRFページにて既往症として報告する。
【0243】
以降の研究来診では、患者は、新たな医学的状態があるかどうか、または既往症が悪化していないかについて、検査を受ける。既往症に変化がある場合、または新たな状態がある場合には、これをCRFのAEページに記入しなければならず、薬物が投与されていれば、それを併用薬物のページに記入しなければならない。
【0244】
医師による身体検査には限界があるため、患者は、標準臨床神経学的検査を、スクリーニング時、0、6、15、および30か月目に受ける。この神経学的検査は、力、バランス、および協調の乱れといった、神経筋疾患の軽度の兆候の可能性を検出するために行なう。
【0245】
神経学的検査は以下を含む。
・四肢の反射
・ロンベルク(バランスおよび協調)
・まっすぐな歩行、2メートル(バランスおよび協調)
・片脚で立つ、左および右、片足につき15秒間(バランスおよび協調)
・指鼻(協調)
・模倣(脳神経)
・バビンスキー反射(中枢機能)
・筋力(握手)、二頭筋、三頭筋、遠位伸筋、および屈筋
【0246】
こうした検査は、予定された来診時に、研究者の判断によって、繰り返し実施してよい。脳波(EEG)による神経疾患のスクリーニングは、感受性および特異性が低いため、含まれない。しかしながら、神経機能不全の兆候が検出された場合には、患者は、さらなる評価のために、神経内科医への紹介を受けるべきである。
【0247】
6.7 併用薬物
当該研究の間に使用されたすべての併用薬物は、それが当該研究に関連するものであると研究者が考えるか否かにかかわらず、CRFの併用薬物の記録上に報告されなければならない。下記セクション8.5も参照のこと。
【0248】
【0249】
本発明において、上述されるとおり、GAD-alumのさらなる投与を、来診7回目、任意に8回目に、行なってよい。
【0250】
7.1 来診
1回目の来診であるスクリーニング来診(来診1回目)を、予定された来診2回目(ベースライン)の10~21日前に行なうべきである。次いで、来診3回目および4回目(2回目および3回目のGAD-Alumの投与)を来診ウィンドウ±3日にて予定し、来診5回目、6回目を±14日にて、来診7回目を±30日にて予定するべきである。すべての来診は、来診スケジュールに従って、ベースライン来診(来診2回目)を起点として計算しなければならないことにも注意する。研究プロトコールに従うためには、来診を来診ウィンドウの範囲内にて行なわなければならないことについても注意する。
【0251】
患者来診、来診ウィンドウ、および研究薬剤投与のスケジュールについては、上記表1および2を参照のこと。
【0252】
8.研究薬物
8.1 研究薬物
以下の薬物品目を当該研究において使用する。
研究薬物:GAD-Alum(Diamyd)、4μg×3(1か月間隔で3回投与)
IMP供給元:Diamyd Medical AB、ストックホルム、スウェーデン。
【0253】
8.2 供給
GAD-alum(Diamyd)配合、Diamyd Medicalより供給。これは、あらかじめ包装された薬物として、Diamyd Medicalから地元の薬局に供給される。すべての投与は、病院で行ない、訓練を受けて承認された研究員のみが扱う。この研究薬物には、地域の規制に従った情報が表示される。GAD-alumは、安全な場所(たとえば、施錠されたキャビネットまたは薬剤保管室)の冷蔵庫内で2~8℃において保存し、意図されない使用から保護する。すべての研究薬物には、地域の規制に従った情報が表示される。
【0254】
8.3 投薬量および投与
GAD-Alum:4μg、鼠蹊部分のリンパ節内に投与(超音波技術を用いて)、1か月間隔で3回
【0255】
8.4 治療の持続期間
8.3を参照のこと。
【0256】
8.5 併用薬物
全身免疫調節薬物、およびインスリン以外の糖尿病薬(市販されているか否かにかかわらず)は、一切許容されない。
【0257】
9.応答変数および転帰
9.1 効力の探索的評価
9.1.1.効力変数
この研究はパイロット第I相試験であるため、一次効力エンドポイントはないが、本発明者らは以下のことを追跡する。
・空腹時C-ペプチドおよびMMTT中のC-ペプチド(90分値およびAUC平均0~120分)の、ベースラインからの変化(それぞれ6か月目、15か月目から、30か月目まで)。
・たとえば、IFN-ガンマ、TNF-アルファ、IL-1ベータ、IL-17と比較したIL-5、10、13の比率の増加、およびT-制御性細胞の増加として見られる、
細胞介在免疫応答のTh2-偏差。ベースラインとその後の来診との間の変化。
・炎症マーカー、たとえば、TNF-アルファ、IL-1ベータ、IL-2、IL-17。ベースラインとその後の来診との間の変化。
・ヘモグロビンA1c(HbA1c)、ベースラインとその後の来診との間の変化
・体重1kgあたりかつ24時間あたりの外因性インスリン用量、ベースラインとその後の来診との間の変化
【0258】
10.統計学的方法論およびデータ管理
10.1 研究設計
このDIAGNODE-1研究は、非盲検のパイロット第I相介入試験である。
【0259】
研究参加者:新たに診断された古典的な1型糖尿病の患者:N=5。年齢18~29.99歳。スウェーデンの内分泌科診療所1か所から募集。
【0260】
10.2 試料サイズの推定
検出力分析:このパイロット研究について、正式な検出力分析は実施されていない。
【0261】
10.3 統計学的分析計画
簡潔には、下記の分析を計画している。
すべての連続型変数は、下記に表示された記述統計学を有する:観察回数(n)、平均値、標準偏差、最小値、中央値、および最大値。すべてのカテゴリー型の変数を、頻度および割合と共に表示する。記述統計学の図表化を、来診毎に分割する。必要に応じて、ベースライン(スクリーニング)の記述統計学をさらに含める。
【0262】
人口統計的および他のベースライン特徴
人口統計学およびベースライン特徴を、記述統計学(要約表)を使用して提示する。
【0263】
安全性変数および効力データ
AE/SAEデータを、観察されたすべてのAE/SAEの頻度および発病率を標準的に図表化したものを使用して提示する。頻度および発病率を、患者1人あたりで計算する。有害事象は、その概要を、身体組織(body system)、因果関係、および重症度によって示す。他の安全性データは、記述統計学によって提示する。
【0264】
C-ペプチドおよび免疫系に関する効力データ、ならびに有害事象、ならびに他の安全性データは、その概要を記述する。
【0265】
安全性データを6か月間分析した後。(結果を、第II相DIAGNODE試験の設計に使用する)。
【0266】
10.4 研究集団
治療企図集団
患者を、効力分析を目的とした一次治療企図集団に含める(当該患者が、その部門におけるすべての研究薬剤を少なくとも1回用量投与されていて、後の来診時に評価を受ける場合)。
【0267】
パープロトコール集団
厳密なパープロトコール集団に有資格となるためには、対象は、大きな違反をすることなく研究プロトコールに準じていなければならない。検査に欠席した場合には、最後に観測された値で補完することによって置き換えられるが、検査を欠席する来診回数は1回を超えてはならない。
【0268】
総集団
少なくとも1回の治療(来診2回目)を受けた後で離脱した患者を、安全性分析(有害事象および安全性パラメータ)に含める。全患者についてのデータを列記し、離脱患者の一覧に、すべての離脱理由を添えて提供する。
【0269】
10.5 データ収集/症例報告書
各患者からのデータを記録するために、症例報告書(CRF)を提供する。適時かつ適切なデータ収集が重要であるため、研究者、または任命かつ指名された者は、CRFを迅速に完成させるものとする。監視者が、CRFのためにさらなるデータまたはデータの説明を要求した場合には、しかるべき時に十分に当該要求に応じなければならない。
【0270】
こうした症例報告書を確実に適切に完成させることは、研究者の責任である。研究者は、症例報告書が正確かつ完全であることを認めるという意味で、明示されたサインページにサインする。
【0271】
読みやすさのために、CRFは、すべて、黒または青色のボールペン(鉛筆、フェルトペン、万年筆は不可)を使ってブロック体の大文字で記入されるべきである。CRFを修正する場合には、研究者または指定代理人が修正しなければならない。元の記載に線を1本引かなければならない。修正には、日付とイニシャルを記入しなければならない。誤りの記載を修正液で隠してはならず、消したり、いかなる方法で判読不能としたりしてもいけない。前回検査から全く変化がない場合でも、データ取得の完全性を期す目的で、CRFの各セクションで繰り返される質問事項には完全に回答するべきである。データが欠落しているすべての箇所について、研究者は妥当な説明を提供しなければならない。
【0272】
10.6 データ管理
データを暗号化して、コンピュータデータベースに入力する。データ品質管理を含むデータの取り扱いは、規制ガイドライン(たとえば、International Conference on Harmonization[ICH]および良き臨床上の基準(Good Clinical Practice)[GCP])に従う。
【0273】
11.規制および行政上の手順
規制上の要求があれば、研究開始前にそれを満たさなければならない。スポンサーは、適切な当局に申請して規制当局の承認を受ける。研究施設、設備、研究所、ならびにすべてのデータ(原始データを含む)および書類は、当局による調査に応じることが可能でなければならない。
【0274】
11.2 患者情報/インフォームドコンセント
研究者は、研究の性質、目的、生じ得るリスク、および利益に関する完全かつ適切な情報を口頭および書面にて患者に提供する責任がある。さらに、患者に、研究からいつでも自由に離脱できることを通知しなければならない。患者は、サインする前に、当該情報を読んで理解するのに十分な時間を与えられるべきである。研究者は、いかなる研究関連手順に患者を含める場合にも、その前に、すべての患者からサイン済のインフォームドコンセントを入手する責任がある。患者情報のコピーおよびインフォームドコンセント書のコピーを、患者に提供する。
【0275】
11.4 患者治療計画
すべての患者は、研究の間も、1型糖尿病の標準的なケアを継続して受ける。各々の研究の完了後、患者は、研究参加前に受けていた標準的な治療に戻る。