(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041822
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】炎症性疾患評価のための調節マルチバイオマーカー疾患活性スコア
(51)【国際特許分類】
G01N 33/53 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
G01N33/53 D
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023222794
(22)【出願日】2023-12-28
(62)【分割の表示】P 2020505174の分割
【原出願日】2018-07-30
(31)【優先権主張番号】62/538,959
(32)【優先日】2017-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/558,413
(32)【優先日】2017-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】500086515
【氏名又は名称】ミリアド・ジェネティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100156122
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 剛
(72)【発明者】
【氏名】チン・チャン・ファン
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド・チェルノフ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・グティン
(72)【発明者】
【氏名】ダール・フレイク
(72)【発明者】
【氏名】ジェリー・ランチベリー
(72)【発明者】
【氏名】ポール・スコット・イーストマン
(72)【発明者】
【氏名】エリック・サッソ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】炎症性疾患セラピーに対する反応を評価する方法を提供する。
【解決手段】免疫アッセイを実行して、例えば、関節リウマチのような炎症性疾患における疾患活性を評価するための炎症性バイオマーカーに関連するバイオマーカーの発現についての定量的データに基づきスコアを生成することを含む方法および当該スコアに影響し得る変数を考慮して疾患活性スコアを調節する方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における炎症性疾患活性を評価する方法であって、前記方法は:
前記対象からの血液サンプルに免疫アッセイを行って、少なくとも2つのタンパク質マーカーについてのタンパク質レベルデータを含む試験表現スコアを発生し、ここに、前記少なくとも2つのタンパク質マーカーは、キチナーゼ3-様1 (軟骨グリコプロテイン-39) (CHI3L1);C-反応性プロテイン、ペントラキシン-関連 (CRP);表皮成長因子 (ベータ-ウロガストロン) (EGF);インターロイキン6 (インターフェロン、ベータ2) (IL6);レプチン (LEP);マトリクスメタロペプチダーゼ1 (間質コラゲナーゼ) (MMP1);マトリクスメタロペプチダーゼ3 (ストロメリシン1、プロゲラチナーゼ) (MMP3);レジスチン (RETN);血清アミロイドA1 (SAA1);腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー1A (TNFRSF1A);血管細胞接着分子1 (VCAM1);および血管内皮成長因子A (VEGFA)から選択される少なくとも2つのマーカーを含み;前記試験表現スコアは、前記試験表現スコアは、(1)各タンパク質マーカーの当該所定の表現を事前規定係数で重み付けし、次いで、(2)前記重み付けした表現を組み合せること;ならびに、
当該試験表現スコアと、少なくともひとつの臨床変数を表す少なくともひとつの試験臨床スコアとを合わせることによって疾患活性スコアを提供すること
を含む。
【請求項2】
当該少なくともひとつの臨床スコアは、年齢、社会学的性別、生物学的性別、喫煙状況、脂肪過多、ボディマス指数 (BMI)、血清レプチン、および種族/民族性から選ばれる少なくともひとつの臨床変数を包含する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくともひとつの臨床変数が血清レプチンである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記炎症性疾患活性が関節リウマチ (RA)疾患活性である、上記請求項いずれか1に記載の方法。
【請求項5】
当該疾患活性スコアは、当該対象における、RAのX線所見上の進行、突発、または関節損傷の可能性を予測する、上記請求項いずれか1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくともひとつの免疫アッセイの性能は:
第1の血液サンプルを取得し、ここに、第1の血液サンプルは前記タンパク質マーカーを含むこと;
前記第1の血液サンプルを複数の別個の試薬に接触させること;
前記試薬とマーカーとの間の複数の別個の複合体を生成すること;および、
前記複合体を検出して前記データを生成すること
を含む、上記請求項いずれか1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくともひとつの免疫アッセイは多重アッセイを含む、上記請求項いずれか1に記載の方法。
【請求項8】
前記解釈関数が予測モデルである、上記請求項いずれか1に記載の方法。
【請求項9】
前記疾患活性スコアは1~100のスケール上にあり;約1~29の疾患活性スコアは低度レベルの疾患活性を示し、約30~44の疾患活性スコアは中度レベルの疾患活性を示し、約45~100の疾患活性スコアは高度レベルの疾患活性を示す、上記請求項いずれか1に記載の方法。
【請求項10】
前記疾患活性スコアは、X線所見上の進行の予測であり;前記疾患活性スコアは1~100のスケール上にあり;約1~29の疾患活性スコアは低度可能性のX線所見上の進行を示し、約30~44の疾患活性スコアは中度可能性のX線所見上の進行を示し、約45~100の疾患活性スコアは高度可能性のX線所見上の進行を示す、上記請求項いずれか1に記載の方法。
【請求項11】
前記少なくとも2つのバイオマーカーは、IL6、EGF、VEGFA、LEP、SAA1、VCAM1、CRP、MMP1、MMP3、TNFRSF1A、RETN、およびCHI3L1を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
対象についての定量的データを生成する方法であって、
炎症性疾患を有するか、または、有すると疑われる対象からの第1のサンプルについて少なくともひとつの免疫アッセイを実行して、前記定量データを含む第1のデータセットを生成することを含み、前記定量的データは、キチナーゼ3-様1 (軟骨グリコプロテイン-39) (CHI3L1);C-反応性プロテイン、ペントラキシン-関連 (CRP);表皮成長因子 (ベータ-ウロガストロン) (EGF);インターロイキン6 (インターフェロン、ベータ2) (IL6);レプチン (LEP);マトリクスメタロペプチダーゼ1 (間質コラゲナーゼ) (MMP1);マトリクスメタロペプチダーゼ3 (ストロメリシン1、プロゲラチナーゼ) (MMP3);レジスチン (RETN);血清アミロイドA1 (SAA1);腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー1A (TNFRSF1A);血管細胞接着分子1 (VCAM1);および血管内皮成長因子A (VEGFA)から選択される少なくとも2つのマーカーを含む少なくとも2つのバイオマーカーを示し、前記第1のデータセットは、(1)各タンパク質マーカーの当該所定表現を事前規定係数で重み付けし、次いで、(2)前記重み付け表現を組み合せ;
少なくともひとつの臨床変数を示す少なくともひとつの試験臨床スコアを含む第2のデータセットを発生させ;次いで、
第1および第2のデータセットを組み合わせることによって前記定量的データを生成することによって生成する
方法。
【請求項13】
当該少なくともひとつの臨床スコアは、年齢、社会学的性別、生物学的性別、喫煙状況、脂肪過多、ボディマス指数 (BMI)、血清レプチン、および種族/民族性から選ばれる少なくともひとつの臨床変数を包含する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくともひとつの臨床変数が血清レプチンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記炎症性疾患活性が関節リウマチ (RA)疾患活性である、請求項12~14いずれか1に記載の方法。
【請求項16】
前記少なくともひとつの免疫アッセイの性能は:
第1の血液サンプルを取得し、ここに、第1の血液サンプルは前記タンパク質マーカーを含むこと;
前記第1の血液サンプルを複数の別個の試薬に接触させること;
前記試薬とマーカーとの間の複数の別個の複合体を生成すること;および、
前記複合体を検出して前記データを生成すること
を含む、上記請求項12~15いずれか1に記載の方法。
【請求項17】
前記少なくともひとつの免疫アッセイは多重アッセイを含む、請求項12~16いずれか1に記載の方法。
【請求項18】
炎症性障害を有する対象におけるセラピー計画を推奨する方法であって、前記方法は、
セラピー計画に前記対象を置くこと;
前記対象が前記セラピー計画に反応するか否かを決定すること;
前記対象からの血液サンプルについての免疫アッセイを実行して、少なくとも2つのタンパク質マーカーについてのタンパク質レベルデータを含む試験表現スコアを生成すること、ここに、前記少なくとも2つのタンパク質マーカーは、キチナーゼ3-様1 (軟骨グリコプロテイン-39) (CHI3L1);C-反応性プロテイン、ペントラキシン-関連 (CRP);表皮成長因子 (ベータ-ウロガストロン) (EGF);インターロイキン6 (インターフェロン、ベータ2) (IL6);レプチン (LEP);マトリクスメタロペプチダーゼ1 (間質コラゲナーゼ) (MMP1);マトリクスメタロペプチダーゼ3 (ストロメリシン1、プロゲラチナーゼ) (MMP3);レジスチン (RETN);血清アミロイドA1 (SAA1);腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー1A (TNFRSF1A);血管細胞接着分子1 (VCAM1);および血管内皮成長因子A (VEGFA)から選択される少なくとも2つのマーカーを含み、前記試験表現スコアは、(1)各タンパク質マーカーの前記所定表現を事前規定係数で重み付けし、(2)前記重み付け表現を組み合せ;
当該試験表現スコアと、少なくともひとつの臨床変数を示す少なくともひとつの試験臨床スコアとを組み合わせることによって第1の疾患活性スコアを提供すること;
前記対象からの第2の血液サンプルについて第2の免疫アッセイを実行して、当該試験表現スコアと少なくともひとつの臨床変数を湿す少なくともひとつの試験臨床スコアとを組み合わせることによって第2の疾患活性スコアを生成すること;
前記スコアの差に基づいて、前記第1および第2の疾患活性スコアの間の臨床的重要変化を決定すること;および
i)臨床的重要変化が決定されたとき、前記セラピー計画を低減すること;またはii)臨床的重要変化がないと決定されたとき、前記セラピー計画を変更しないことを、推奨すること
を含む、方法。
【請求項19】
当該少なくともひとつの臨床スコアは、年齢、社会学的性別、生物学的性別、喫煙状況、脂肪過多、ボディマス指数 (BMI)、血清レプチン、および種族/民族性から選ばれる少なくともひとつの臨床変数を包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記少なくともひとつの臨床変数が血清レプチンである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記炎症性疾患活性が関節リウマチ (RA)疾患活性である、請求項18~20いずれか1に記載の方法。
【請求項22】
当該疾患活性スコアは、当該対象における、RAのX線所見上の進行、突発、または関節損傷の可能性を予測する、請求項18~21いずれか1に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくともひとつの免疫アッセイの性能は:
第1の血液サンプルを取得し、ここに、第1の血液サンプルは前記タンパク質マーカーを含むこと;
前記第1の血液サンプルを複数の別個の試薬に接触させること;
前記試薬とマーカーとの間の複数の別個の複合体を生成すること;および、
前記複合体を検出して前記データを生成すること
を含む、請求項18~22いずれか1に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくともひとつの免疫アッセイは多重アッセイを含む、請求項18~23いずれか1に記載の方法。
【請求項25】
前記解釈関数が予測モデルである、請求項18~24いずれか1に記載の方法。
【請求項26】
前記疾患活性スコアは1~100のスケール上にあり;約1~29の疾患活性スコアは低度レベルの疾患活性を示し、約30~44の疾患活性スコアは中度レベルの疾患活性を示し、約45~100の疾患活性スコアは高度レベルの疾患活性を示す、請求項18~25いずれか1に記載の方法。
【請求項27】
前記疾患活性スコアは、X線所見上の進行の予測であり;前記疾患活性スコアは1~100のスケール上にあり;約1~29の疾患活性スコアは低度可能性のX線所見上の進行を示し、約30~44の疾患活性スコアは中度可能性のX線所見上の進行を示し、約45~100の疾患活性スコアは高度可能性のX線所見上の進行を示す、請求項18~26いずれか1に記載の方法。
【請求項28】
前記少なくとも2つのバイオマーカーは、IL6、EGF、VEGFA、LEP、SAA1、VCAM1、CRP、MMP1、MMP3、TNFRSF1A、RETN、およびCHI3L1を含む、請求項18~27いずれか1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、炎症性疾患セラピーに対する反応を評価する方法で、バイオインフォマティクスならびに炎症性および自己免疫疾患の分野に関する。関節リウマチ(「RA」)は、炎症性疾患の実例であり、慢性的、全身性の自己免疫障害である。それは、世界中で最もありふれた全身性自己免疫疾患である。RA対象の免疫システムは、前記対象の関節ならびに、肺、血管および心膜を含む他の器官を標的とし、関節の炎症 (関節炎)、広範囲の内皮炎症、ひいては関節組織の崩壊に至る。びらんおよび関節腔狭窄は、大部分が、不可逆的であり、累積的な障害をもたらす。
【背景技術】
【0002】
RAの正確な病因は確証ないが、基礎となる疾患病原論は多因子的であり、炎症および免疫調節異常を含む。関与する正確なメカニズムは個々の対象で異なり、それらの対象においても時間とともに変化し得る。年齢、種族、生物学的性別、遺伝学、ボディマス指数、ホルモン、および環境因子などの変数は、RA疾患の発症および重篤性に影響し得る。新たに発生したデータは、新しいRA対象サブグループの特徴および他の自己免疫障害との複雑に絡み合う関係も明らかにしつつある。疾患期間および炎症活性のレベルは、リンパ腫、関節外徴候、および心臓血管疾患の危険性のような他の併存症にも関連する。例えば、S. Banerjee et al., Am. J. Cardiol. 2008, 101(8):1201-1205; E. Baecklund et al., Arth. Rheum. 2006, 54(3):692-701; および, N. Goodson et al., Ann. Rheum. Dis. 2005, 64(11):1595-1601を参照せよ。
【0003】
RAを治療する古典的なモデルは、RA対象において疾患活性(例えば、炎症)を制御すれば、X線所見上の進行、組織破壊、軟骨減少および関節びらんの観点で、疾患進行を減速し、または、予防するという予測に基づいている。しかしながら、疾患活性および疾患進行は結びつけることができず、いつも完全に連携して機能するとは限らないという証拠がある。実際、異なる細胞シグナル伝達経路およびメディエータがこれら2つのプロセスに関与している。W. van den Berg et al., Arth. Rheum. 2005, 52:995-999を参照せよ。疾患進行および疾患活性を結びつけられないことは、数々のRA臨床試験および動物実験に記載されている。例えば、E Lipsky et al., N. Engl. J. Med. 2003, 343:1594-602.; AK Brown et al., Arth. Rheum. 2006, 54:3761-3773; および, AR Pettit et al., Am. J. Pathol. 2001, 159:1689-99を参照せよ。RA対象の研究は、臨床とX線所見上反応との間の限られた関連を示す。Zatarain and V. Strand, Nat. Clin. Pract. Rheum. 2006, 2(11):611-618 (Review)を参照せよ。RA対象は、インフリキシマブとメトトレキサート (MTX)の併用治療から放射線学的利点を示すものとして説明されているが、DAS (疾患活性スコア)およびCRP (C-反応性プロテイン)による測定で、何ら臨床効果は示されていない。S Smolen et al., Arth. Rheum. 2005, 52(4):1020-30を参照せよ。疾患活性と寛解が結びつけられないことを追求し、疾患活性、治療、および進行の間の関係を解析するために、RA対象は、セラピーの間、疾患活性および進行の両方について評価すべきである。炎症性疾患活性および進行評価における最近の進捗は、米国特許出願第2011/0137851号に記載され、それは、出典明示によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0004】
現行の臨床管理および治療目標は、RAの場合、前記対象の機能性能力を改善し、関節損傷の進行を遅らせることを目標に、疾患活性の抑制に焦点を当てている。RA疾患活性の臨床評価には、前記対象の活動の困難度、朝のこわばり、疼痛、炎症、ならびに圧痛および膨張の関節数の測定、医者による前記対象の総合評価、前記対象による全般的な気分の良好性の評価、ならびに、前記対象の赤血球沈降速度 (ESR)および、CRPのような急性期反応のレベルの測定が含まれる。疾患活動性をモニターする臨床的評価ツールとして、前述のような複数の変数からなる複合インデクスが開発されている。最も一般的に使用されるものは:American College of Rheumatology (ACR) criteria (DT Felson et al., Arth. Rheum. 1993, 36(6):729-740 および, DT Felson et al., Arth. Rheum. 1995, 38(6):727-735); Clinical Disease Activity Index (CDAI) (D. Aletaha et al., Arth. Rheum. 2005, 52(9):2625-2636); the DAS (MLL Prevoo et al., Arth. Rheum. 1995, 38(1):44-48 および, AM van Gestel et al., Arth. Rheum. 1998, 41(10):1845-1850); Rheumatoid Arthritis Disease Activity Index (RADAI) (G. Stucki et al., Arth. Rheum. 1995, 38(6):795-798); および, Simplified Disease Activity Index (SDAI) (JS Smolen et al., Rheumatology (Oxford) 2003, 42:244-257)である。
【0005】
CRPおよびESRのような、RA対象における疾患活性をモニターするのに日常的に用いられている現在の研究室試験は、比較的非特異的であり(例えば、RA-特異性でなく、RAの診断には使用できない)、治療に対する反応を決定するか、将来の転帰を予測するために使用できない。例えば、L. Gossec et al., Ann. Rheum. Dis. 2004, 63(6):675-680; EJA Kroot et al., Arth. Rheum. 2000, 43(8):1831-1835; H. Makinen et al., Ann. Rheum. Dis. 2005, 64(10):1410-1413; Z. Nadareishvili et al., Arth. Rheum. 2008, 59(8):1090-1096; NA Khan et al., Abstract, ACR/ARHP Scientific Meeting 2008; TA Pearson et al., Circulation 2003, 107(3):499-511; MJ Plant et al., Arth. Rheum. 2000, 43(7):1473-1477; T. Pincus et al., Clin. Exp. Rheum. 2004, 22(Suppl. 35):S50-S56; および, PM Ridker et al., NEJM 2000, 342(12):836-843を参照せよ。ESRおよびCRPの場合、RA対象は、臨床寛解(および非-RA対象は、上昇したESRまたはCRPレベルを呈するであろう)にあるにもかかわらず、上昇したESRまたはCRPレベルを持ち続けるであろう。臨床寛解にあるいくつかの対象は、DASによって決定するとき、びらんによって、X線所見上継続した疾患進行を示し続ける。さらには、臨床的有益性を示さないいくつかの対象は、依然として、治療によるX線所見上の有益性を示す。例えば、FC Breedveld et al., Arth. Rheum. 2006, 54(1):26-37を参照せよ。明らかに、将来の転帰を予測し、それに従ってRA対象を処理するために、RA対象の疾患活性レベルを正確に評価し、疾患の将来の経過の予測因子として作用する臨床評価ツールが必要である。
【0006】
疾患活性の臨床評価は、兆候や症状などのRAの主観的測定、および対象が報告する転帰を含み、全て矛盾なく定量するのは困難なものである。臨床試験において、DASは、RA疾患活性の評価に一般的に用いられる。DASは、これら主観的パラメータに部分的に基づいた疾患活性のインデクススコアである。その主観的な要素に加えて、DASをRA疾患活性の臨床評価として用いるに際してもう一つの欠点は、その侵襲性である。対象のDASを得るために要求される身体審査は疼痛を伴うものである。なぜならば、対象の関節に圧力を加えたときに対象が感じる不快感のレベルによって測定される、対象の関節の圧痛および腫脹の量を評価することを必要とするからである。DASスコアリングに関与する因子の評価も時間がかかる。さらに、対象のDASを正確に決定するには、熟練した評価者が必要である。疾患活性を臨床的に評価する方法に必要なのは、DASよりも侵襲性が低く時間がかからず、より一貫性があり、客観的かつ定量的でありつつも、評価される疾患(RAなど)に特異的なことである。
【0007】
例えば、RAの前記臨床評価に特異的なバイオマーカーベースの試験(例えば、サイトカインの測定)の開発は、RA生物学の複雑さ-関与する種々の分子経路および自己免疫調節不全と炎症反応の交差-のため、実際には困難であることが判明している。RA-特異性バイオマーカーベースの試験を開発する困難に加えて、関連する技術的な課題:例えば、RAの場合のリウマチ因子 (RF)などの、血清または血漿サンプル中の非特異的マトリックス結合をブロックする必要がある。例えば、ビーズベースの免疫アッセイを用いるサイトカインの検出は、RFによる干渉のため信頼性がない;それゆえRF陽性対象は、この技術を用いてRA-関連サイトカインを試験することはできない(および、試したRF除去法は結果を有意には改善しなかった)。S. Churchman et al., Ann. Rheum. Dis. 2009, 68:A1-A56, Abstract A77を参照せよ。およそ70%のRA対象がRF陽性であり、それで、RF陽性患者を評価できないいかなるバイオマーカーに基づく試験は明らかに使用が制限される。
【0008】
MBDAスコアは、関節リウマチ (RA)の成人対象における疾患活性を評価するために、12の血清タンパク質バイオマーカーを定量化する検証されたツールである (Curtis JR, et al. , Arthritis Care Res. 64:1794-803 (2012))。これら12のバイオマーカーの誘導は、米国特許第9,200,324号に完全に記載され、それは、出典明示によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0009】
バイオマーカーは、種族、生物学的性別、遺伝学、ボディマス指数、ホルモン、および環境因子を含む変数によって影響を受ける。特に、年齢、社会学的性別および脂肪過多における多様性がMBDAスコアに影響する可能性がある。炎症のレベルは、一般的に、いかなる特別の臨床学的状態の存在にかかわらず、年齢とともに増加し、社会学的性差がMBDAスコアの解釈に影響する可能性がある。脂肪過多は、IL-6およびレプチンなどのMBDAスコアのいくつかの成分、または、TNFRIなどの経路パートナーを分泌するか、または、それに反応する脂肪組織を伴う、低度炎症に関連する。かくして、脂肪過多は、MBDAスコアと、疾患活性およびRAにおけるX線所見上の進行の双方との間の関係の可能性のある交絡因子である。本教示の具体例は、MBDAスコアに影響し得る変数を説明する方法を提供する。
【発明の概要】
【0010】
本教示は、RAを含む、炎症性疾患および自己免疫疾患に関連するバイオマーカーならびに対象における疾患活性を測定するためのそのようなバイオマーカーを調節する方法に関する。
【0011】
ひとつの具体例において、対象における炎症性疾患活性を評価する方法が提供される。前記方法は、前記対象からの血液サンプルに対して免疫アッセイを行って、少なくとも2つのタンパク質マーカーについてのタンパク質レベルデータを含む試験表現スコアを生成する方法含み、前記少なくとも2つのタンパク質マーカーは、キチナーゼ3-様1 (軟骨グリコプロテイン-39) (CHI3L1);C-反応性プロテイン、ペントラキシン-関連 (CRP);表皮成長因子 (ベータ-ウロガストロン) (EGF);インターロイキン6 (インターフェロン、ベータ2) (IL6);レプチン (LEP);マトリクスメタロペプチダーゼ1 (間質コラゲナーゼ) (MMP1);マトリクスメタロペプチダーゼ3 (ストロメリシン1、プロゲラチナーゼ) (MMP3);レジスチン (RETN);血清アミロイドA1 (SAA1);腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー1A (TNFRSF1A);血管細胞接着分子1 (VCAM1);および血管内皮成長因子A (VEGFA)から選択される少なくとも2つのマーカーを含み、ならびに、前記試験表現スコアは、(1)各タンパク質マーカーの当該所定の表現を事前規定係数で重み付けし、次いで、(2)前記重み付けした表現を組み合せ;当該試験表現スコアと、少なくともひとつの臨床変数を示す少なくともひとつの試験臨床スコアとを組み合わせることによって疾患活性スコアを提供することによって生成される。具体例において、当該少なくともひとつの臨床スコアは、年齢、社会学的性別、生物学的性別、喫煙状況、脂肪過多、ボディマス指数 (BMI)、血清レプチン、および種族/民族性から選ばれる少なくともひとつの臨床変数を包含する。具体例において、前記臨床変数は血清レプチンである。具体例において、前記炎症性疾患活性は関節リウマチ (RA)疾患活性である。具体例において、当該疾患活性スコアは、当該対象における、RAのX線所見上の進行、突発、または関節損傷の可能性を予測する。具体例において、前記少なくともひとつの免疫アッセイの性能は:第1の血液サンプルを取得すること、ここに、第1の血液サンプルは前記タンパク質マーカーを含むこと;前記第1の血液サンプルを複数の別個の試薬に接触させること;前記試薬とマーカーとの間の複数の別個の複合体を生成すること;および、前記複合体を検出して前記データを生成することを含む。具体例において、前記少なくともひとつの免疫アッセイは、多重アッセイを含む。具体例において、前記解釈関数は予測モデルである。具体例において、前記疾患活性スコアは1~100のスケール上にあり;約1~29の疾患活性スコアは低度レベルの疾患活性を示し、約30~44の疾患活性スコアは中度レベルの疾患活性を示し、約45~100の疾患活性スコアは高度レベルの疾患活性を示す。具体例において、前記疾患活性スコアは、X線所見上の進行の予測であり;前記疾患活性スコアは1~100のスケール上にあり;約1~29の疾患活性スコアは低度可能性のX線所見上の進行を示し、約30~44の疾患活性スコアは中度可能性のX線所見上の進行を示し、約45~100の疾患活性スコアは高度可能性のX線所見上の進行を示す。具体例において、前記少なくとも2つのバイオマーカーは、IL6、EGF、VEGFA、LEP、SAA1、VCAM1、CRP、MMP1、MMP3、TNFRSF1A、RETN、およびCHI3L1を含む。
【0012】
別の具体例において、対象についての定量的データを生成する方法が提供される。前記方法は、炎症性疾患を有するか、または、有すると疑われる対象からの第1のサンプルについて少なくともひとつの免疫アッセイを実行して、前記定量データを含む第1のデータセットを生成することを含み、前記定量的データは、キチナーゼ3-様1 (軟骨グリコプロテイン-39) (CHI3L1);C-反応性プロテイン、ペントラキシン-関連 (CRP);表皮成長因子 (ベータ-ウロガストロン) (EGF);インターロイキン6 (インターフェロン、ベータ2) (IL6);レプチン (LEP);マトリクスメタロペプチダーゼ1 (間質コラゲナーゼ) (MMP1);マトリクスメタロペプチダーゼ3 (ストロメリシン1、プロゲラチナーゼ) (MMP3);レジスチン (RETN);血清アミロイドA1 (SAA1);腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー1A (TNFRSF1A);血管細胞接着分子1 (VCAM1);および血管内皮成長因子A (VEGFA)から選択される少なくとも2つのマーカーを含む少なくとも2つのバイオマーカーを示し、前記第1のデータセットは、(1)各タンパク質マーカーの当該所定表現を事前規定係数で重み付けし、次いで、(2)前記重み付け表現を組み合せ;少なくともひとつの臨床変数を示す少なくともひとつの試験臨床スコアを含む第2のデータセットを発生させ;次いで、第1および第2のデータセットを組み合わせることによって前記定量的データを生成することによって生成する。具体例において、当該少なくともひとつの臨床スコアは、年齢、社会学的性別、生物学的性別、喫煙状況、脂肪過多、ボディマス指数 (BMI)、血清レプチン、および種族/民族性から選ばれる少なくともひとつの臨床変数を包含する。具体例において、前記臨床変数は血清レプチンである。具体例において、前記炎症性疾患活性は関節リウマチ (RA)疾患活性である。具体例において、前記少なくともひとつの免疫アッセイの性能は:前記第1の血液サンプルを取得すること、ここに、前記第1の血液サンプルは前記タンパク質マーカーを含み;前記第1の血液サンプルを複数の別個の試薬に接触させること;前記試薬とマーカーとの間の複数の別個の複合体を生成すること;および、前記複合体を検出して前記データを生成することを含む。具体例において、前記少なくともひとつの免疫アッセイは多重アッセイを含む。
【0013】
別の具体例において、炎症性障害を有する対象におけるセラピー計画を推奨する方法が提供される。前記方法は、セラピー計画に前記対象を置くこと;前記対象が前記セラピー計画に反応するか否かを決定すること;前記対象からの血液サンプルについての免疫アッセイを実行して、少なくとも2つのタンパク質マーカーについてのタンパク質レベルデータを含む試験表現スコアを生成すること、ここに、前記少なくとも2つのタンパク質マーカーは、キチナーゼ3-様1 (軟骨グリコプロテイン-39) (CHI3L1);C-反応性プロテイン、ペントラキシン-関連 (CRP);表皮成長因子 (ベータ-ウロガストロン) (EGF);インターロイキン6 (インターフェロン、ベータ2) (IL6);レプチン (LEP);マトリクスメタロペプチダーゼ1 (間質コラゲナーゼ) (MMP1);マトリクスメタロペプチダーゼ3 (ストロメリシン1、プロゲラチナーゼ) (MMP3);レジスチン (RETN);血清アミロイドA1 (SAA1);腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー1A (TNFRSF1A);血管細胞接着分子1 (VCAM1);および血管内皮成長因子A (VEGFA)から選択される少なくとも2つのマーカーを含み、前記試験表現スコアは、(1)各タンパク質マーカーの前記所定表現を事前規定係数で重み付けし、(2)前記重み付け表現を組み合せ;当該試験表現スコアと、少なくともひとつの臨床変数を示す少なくともひとつの試験臨床スコアとを組み合わせることによって第1の疾患活性スコアを提供すること;前記対象からの第2の血液サンプルについて第2の免疫アッセイを実行して、当該試験表現スコアと少なくともひとつの臨床変数を湿す少なくともひとつの試験臨床スコアとを組み合わせることによって第2の疾患活性スコアを生成すること;前記スコアの差に基づいて、前記第1および第2の疾患活性スコアの間の臨床的重要変化を決定すること;およびi)臨床的重要変化が決定されたとき、前記セラピー計画を低減すること;またはii)臨床的重要変化がないと決定されたとき、前記セラピー計画を変更しないことを、推奨することを含む。具体例において、当該少なくともひとつの臨床スコアは、年齢、社会学的性別、生物学的性別、喫煙状況、脂肪過多、ボディマス指数 (BMI)、血清レプチン、および種族/民族性から選ばれる少なくともひとつの臨床変数を包含する。具体例において、前記臨床変数は血清レプチンである。具体例において、前記炎症性疾患活性は関節リウマチ (RA)疾患活性である。具体例において、当該疾患活性スコアは、当該対象における、RAX線所見上の進行、突発、または関節損傷の可能性を予測する。具体例において、前記少なくともひとつの免疫アッセイの性能は:前記第1の血液サンプルを取得すること、ここに、前記第1の血液サンプルは前記タンパク質マーカーを含み;前記第1の血液サンプルを複数の別個の試薬に接触させること;前記試薬とマーカーとの間の複数の別個の複合体を生成すること;および前記複合体を検出して前記データを生成することを含む。具体例において、前記少なくともひとつの免疫アッセイは多重アッセイを含む。具体例において、前記解釈関数は予測モデルである。具体例において、前記疾患活性スコアは1~100のスケール上にあり;約1~29の疾患活性スコアは低度レベルの疾患活性を示し、約30~44の疾患活性スコアは中度レベルの疾患活性を示し、約45~100の疾患活性スコアは高度レベルの疾患活性を示す。具体例において、
前記疾患活性スコアは、X線所見上の進行の予測であり;前記疾患活性スコアは1~100のスケール上にあり;約1~29の疾患活性スコアは低度可能性のX線所見上の進行を示し、約30~44の疾患活性スコアは中度可能性のX線所見上の進行を示し、約45~100の疾患活性スコアは高度可能性のX線所見上の進行を示す。具体例において、前記少なくとも2つのバイオマーカーは、IL6、EGF、VEGFA、LEP、SAA1、VCAM1、CRP、MMP1、MMP3、TNFRSF1A、RETN、およびCHI3L1を含む。
【0014】
当業者は、下記の図面は例示目的のみであることを理解するであろう。当該図面は、いかなるようにも、本教示の範囲を制限する意図はない。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、RA(N=1411; 1098人の女性, 313人の男性)を有するまたはRAを有さない(N=318; 203人の女性, 115人の男性)男性および女性についての、BMIと血清レプチンレベルとの関係を図示する。
【0016】
【
図2】
図2は、MBDAと血清レプチンと間の関係を図示する。Y軸はMBDAスコアであり、X軸上の値はレプチン濃度 (pg/mL)である。年齢は5つのことなる年齢群で例示され、年齢カテゴリーは、左から右に、5つの年齢群の各々:(15, 30); (30, 45); (45, 60); (60, 75); および (75, 90)である。
【0017】
【
図3】
図3は、MBDAと、年齢および社会学的性別との間の関係を図示する。棒は、各代表対につき、左が女性で右が男性の対を表す。Y軸はMBDAスコアであり、X軸上の数字は試験時の年齢である。
【0018】
【
図4】
図4は、元来のおよびレプチン調節MBDA (Vectra DA)スコアにおける、OPERAおよびBRASSのコホートのΔmTSSの単変量解析を図示する。
【0019】
【
図5】
図5は、レプチン調節MBDAスコアにおけるX線所見上の進行の確率を図示する。Y軸は1年後のX線所見上の進行の確率であり (ΔmTSS>3)、X軸はMBDAX線所見上の進行スコアである。上側実線はΔmTSS>3であり、下側実線はΔmTSS>5である。
【0020】
【
図6】
図6は、実施例2に記載した、年齢(10歳ごと)によるMBDA分布およびボディマス指数を例示する。
【0021】
【
図7】
図7は、女性および男性について、患者の年齢およびレプチン濃度に基づき、レプチン調節MBDAスコア、対、元来のMBDAスコアによる調節の度合いの三次元表記を図示する。
【0022】
【
図8】
図8は、コンピュータ (1600)の概略ブロック図を例示する。チップセット (1604)に連結した少なくともひとつのプロセッサー (1602)を図示する。メモリー (1606)、ストレージデバイス (1608)、キーボード (1610)、グラフィックアダプター (1612)、ポインティングデバイス (1614)、およびネットワークアダプター (1616)もチップセット (1604)に連結されている。ディスプレイ (1618)は、グラフィックアダプター (1612)に連結される。ひとつの具体例において、チップセット (1604)の機能性は、メモリーコントローラーハブ (1620)およびI/O コントローラーハブ (1622)によって付与される。別の具体例において、前記メモリー (1606)は、チップセット (1604)の代わりに、前記プロセッサー (1602)に直接連結される。ストレージデバイス (1608)は、ハードドライブ、コンパクトディスクリードオンリーメモリー (CD-ROM)、DVD、またはソリッドステイトメモリーデバイスデバイスのようなデータを保持することができるいかなるデバイスである。メモリー (1606)はプロセッサー (1602)によって使用されるインストラクションおよびデータを保持する。ポインティングデバイス (1614)は、マウス、トラックボール、またはその他のタイプのポインティングデバイスであってよく、キーボード (1610)と組み合わせて用いて、データをコンピュータシステム (1600)に入力することができる。グラフィックアダプター (1612)は、画像その他の情報をディスプレイ (1618)に表示する。ネットワークアダプター (1616)は、コンピュータシステム (1600)をローカルまたはワイドエリアネットワークに連結する。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本教示のこれらおよび他の特徴は、本明細書からより明確になるであろう。本教示は種々の具体例と関連して説明されるが、本教示がそれらの具体例に限定される意図はない。それどころか、本教示は、当業者が認識する、種々の代替物、変形物および等価物を包含する。
【0024】
本教示は、概略、炎症性および/または自己免疫疾患、例えば、RAを有する対象に関連し、かつ、最適セラピーを推奨するための炎症性疾患セラピーへの反応における疾患活性を決定し、評価するのに有用なバイオマーカーに関する。
【0025】
本明細書で用いられるほとんどの用語は当業者がそれらの用語に起因すると考える意味を有する。本明細書で特別に定義される用語は、本教示全体の文脈において提供される意味を有し、当業者によって典型的に理解されるものである。当該分野で理解される語句の定義と、本明細書において特別に教示される語句の定義との間に齟齬が生じる場合、本明細書が支配する。留意すべきことは、本明細書および付随する特許請求の範囲で用いられるとき、単数形「a(不定冠詞)」、「an(不定冠詞)」、および「the(定冠詞)」は、特段の定めなければ、複数指示も含む。
【0026】
定義
「確度」は、測定または計算した値がその実際の値に一致する度合いをいう。臨床試験における「確度」は、実際の転帰(真陽性または真陰性、ここに、対象は、それぞれ、疾患を有するとして、または、健康/正常であるとして正しく分類されている。)対間違って分類された転帰(偽陽性または偽陰性、ここに、対象は、それぞれ、疾患を有するとして、または、健康/正常であるとして間違って分類されている。)の比率に関する。「確度」に対する他のおよび/または同等の用語は、例えば、「感度」、「特異度」、「陽性的中率 (PPV)」、「AUC」、「陰性的中率 (NPV)」、「尤度」、および「オッズ比」を含む。本教示の文脈において「分析確度」は、測定法の再現性および予測可能性をいう。分析確度は、そのような測定、例えば、変動係数 (CV)、および、異なる時間に、または異なる評価者、使用者、装置および/または試薬を用いて、同じ試料または対照の一致と較正の試験においてまとめられる。新たなバイオマーカーの評価における考慮のまとめについて、例えば、R. Vasan, Circulation 2006, 113(19):2335-2362を参照せよ。
【0027】
ここで使用するとき、用語「投与する」は、所望の効果が生じるような所望の部位にて当該組成物の少なくとも部分的な局所化をもたらす方法またはルートによる、対象への組成物の配置をいう。投与のルートは、局所的および全身投与の双方である。一般に、局所投与は、前記対象の全身と比して、より多くの組成物が特定の部位に送達され、一方、全身投与は、本質的に前記対象の全身に送達される。
【0028】
用語「アルゴリズム」は、連続的かカテゴリー的かにかかわらず、1以上の入力またはパラメータを取る、いかなる公式、モデル、数式、アルゴリズム、解析もしくはプログラム化プロセス、または統計技術もしくは分類解析をも包含し、出力値、インデクス、インデクス値またはスコアを算出する。アルゴリズムの例示は、限定されないが、比率、合計、指数または係数などの回帰演算子、バイオマーカー値変換および正規化(制限なく、年齢、社会学的性別、民族性などの臨床パラメータに基づく正規化スキームを含む)、規則およびガイドライン、統計的分類モデル、ならびに集団について訓練されたニューラルネットワークを含む。バイオマーカーに関連して、(a)対象サンプル中で検出されたバイオマーカーのレベルと、(b)各対象の疾患活性のレベルとの間の関係を決定するための一次および非一次方程式ならびに統計的分類解析である。
【0029】
本教示の文脈において用語「分析物」は、測定されるいかなる物質をも意味し、バイオマーカー、マーカー、核酸、電解質、代謝物、タンパク質、糖類、炭化水素、脂肪、脂質、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、タンパク、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、代謝物、変異体、多様体、多型、変形、フラグメント、サブユニット、分解産物その他のエレメントを包含し得る。簡便のため、標準遺伝子シンボルは、遺伝子のみならず、標準タンパク質シンボルではなくむしろ、遺伝子産物/タンパク質に言及するために、全体を通して用いることができ;例えば、ここで用いるとき、APOA1は、遺伝子APOA1およびプロテインApoAIもいう。通常、ハイフンは、ここでは、分析物の名称およびシンボルから省略される(IL-6 = IL6)。
【0030】
「分析する」ことは、当該サンプル内の分析物レベルの測定によってサンプルに関連する値または一組の値を決定することを含む。「分析する」は、さらに、同一対象または他の対象からのサンプルまたは一組のサンプルにおける構成成分レベルに対してレベルを比較することを含む。本教示のバイオマーカーは、分野公知の種々の従来方法のいずかによって分析し得る。いくつかのそのような方法は、限定されないが:血清タンパク質または糖または代謝物その他の分析物のレベルを測定すること、酵素活性を測定すること、および遺伝子発現を測定すること、を含む。
【0031】
用語「抗体」は、いかなる免疫グロブリン様分子であって、要求される選択性でもう一つのものに可逆的に結合するものをいう。かくして、前記用語は、分子本教示のバイオマーカーに選択的に結合できるいかなるそのような分子を含む。前記用語は、抗原上に存在するエピトープに結合できる免疫グロブリン分子を含む。前記用語は、モノクローナルおよびポリクローナル抗体などの無傷の免疫グロブリン分子のみならず、抗体アイソタイプ、リコンビナント抗体、二重特異性抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、抗-特発性(抗-ID)抗体、一本鎖抗体、Fabフラグメント、F(ab')フラグメント、融合タンパク質抗体フラグメント、免疫グロブリンフラグメント、Fvフラグメント、一本鎖Fvフラグメント、ならびに、免疫グロブリン配列および要求される選択性の抗原認識部位を含む前記のいかなる変形を含む、
キメラも含むことを意図する。
【0032】
「自己免疫疾患」は、ここで定義するとき、体内に正常に存在する物質および組織に対する免疫反応を原因とするいかなる疾患も含む。疑われるまたは既知の自己免疫疾患の例示は、関節リウマチ、早期関節リウマチ、軸性脊椎関節炎、若年性特発性関節炎、血清学的陰性 脊椎関節症、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性肝炎、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、セリアック病、クローン病、皮膚筋炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、橋本病、特発性血小板減少性紫斑病、IgA腎症、川崎病、全身性エリテマトーデス、混合性結合組織病、多発性硬化症、重症筋無力症、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、強皮症、シェーグレン症候群、潰瘍性大腸炎、血管炎、多発性血管炎性肉芽腫症、側頭動脈炎、高安動脈炎、ヘノッホ・シェーンライン紫斑病、破砕性血管炎、結節性多発動脈炎、チャーグ・ストラウス症候群、および混合性クリオグロブリン血管炎を含む。
【0033】
「バイオ製剤」または「バイオセラピー」または「バイオ医薬」は、生体物質から製造または抽出された医薬セラピー産物である。バイオ製剤は、ワクチン、血液もしくは血液成分、アレルギー、体細胞、遺伝子セラピー、組織、リコンビナントタンパク質、および生存細胞を含み得;糖類、タンパク、核酸、生存細胞もしくは組織、またはそれらの組合せからなり得る。バイオ薬物の例示は、限定されないが、インフリキシマブ、アダリブマブ、エタネルセプトおよびゴリムマブなどの、腫瘍壊死因子 (TNF)-アルファ分子およびTNF阻害剤を標的とするバイオ剤を含み得る。バイオ薬物の他の分類は、アナキンラのようなIL1阻害剤、アバタセプトのようなT-細胞調節剤、リツキシマブのようなB-細胞調節剤、およびトシリズマブのようなIL6阻害剤を含む。
【0034】
「バイオマーカー」、「(複数の)バイオマーカー」、「マーカー」または「(複数のマーカー」は、本教示の文脈において、制限なく、サイトカイン、ケモカイン、成長因子、タンパク、ペプチド、核酸、オリゴヌクレオチド、および代謝物と共に、それらに関連する代謝物、変異体、アイソフォーム、多様体、多型、変形、フラグメント、サブユニット、分解産物、エレメント、およびその他の分析物またはサンプル由来尺度も包含する。バイオマーカーは、突然変異タンパク質、突然変異核酸、コピー数における多様体および/または転写変異体も含み得る。バイオマーカーは、健康状態の非-血液由来因子および非-分析物生理的マーカー、および/または他の因子もしくは、臨床評価に関する臨床パラメータおよび古典的因子などの、サンプル(例えば、体液などの生物学的サンプル)から測定されないマーカーも包含する。バイオマーカーは、計算され、および/または数学的に生起されたいかなるインデクスも含み得る。バイオマーカーは、時間経過動向と差異を含む、いかなる1以上の前記測定の組合せも含み得る。本教示のある種の具体例のバイオマーカーがタンパク質であるとき、ここで使用する前記遺伝子のシンボルおよび名称は、これらの遺伝子のタンパク質産物をいうと理解されるべきであり、これらの遺伝子の前記タンパク質産物は、当該アイソフォーム配列がここで特別に記載されているか否かにかかわらず、これらの遺伝子のいかなるタンパク質アイソフォームも含むことを意図する。バイオマーカーが核酸であるとき、ここで使用する前記遺伝子のシンボルおよび名称は、これらの遺伝子の核酸(DNAまたはRNA)をいうと理解されるべきであり、これらの遺伝子の核前記酸は、当該転写変異体がここで特別に記載されているか否かにかかわらず、これらの遺伝子のいかなる転写変異体も含むことを意図する。
【0035】
「臨床評価」、または「臨床データポイント」または「臨床エンドポイント」は、本教示の文脈において、疾患活性または重篤性の尺度をいうことができる。臨床評価は、所定状態下の対象または(複数の)対象に由来するサンプル(またはサンプルの集団)の査定から入手できるスコア、値、または一組の値を含み得る。臨床評価は、対象によって完成される質問票であり得る。臨床評価は、バイオマーカーおよび/またはその他のパラメータによって予測し得る。当業者は、RAについての前記臨床評価は、一例として、制限なく、次の1以上:DAS(ここで定義する)、DAS28、DAS28-ESR、DAS28-CRP、健康評価質問票 (HAQ)、修正HAQ (mHAQ)、多次元HAQ (MDHAQ)、視覚的アナログ尺度 (VAS)、医師総合評価VAS、患者総合評価VAS、疼痛VAS、疲労VAS、総合VAS、睡眠VAS、簡略化疾患活性インデクス (SDAI)、臨床疾患活性インデクス (CDAI)、患者インデクスデータの日常評価 (RAPID)、RAPID3、RAPID4、RAPID5、米国リウマチ学会 (American College of Rheumatology; ACR)、ACR20、ACR50、ACR70、SF-36(十分に検証された全体的健康感状態の尺度)、RA MRIスコア(RAMRIS; またはRA MRIスコアリングシステム)、全シャープ (Sharp)スコア (TSS)、ファン・デル・ハイデ (van der Heijde)-修正TSS、ファン・デル・ハイデ-修正シャープスコア (すなわちシャープ-ファン・デル・ハイデスコア (SHS))、ラーセン (Larsen)スコア、TJC、膨張関節数 (SJC)、CRP力価(またはレベル)、および赤血球沈降速度 (ESR)を含み得ることを理解するであろう。
【0036】
用語「臨床変数」または「臨床パラメータ」は、本教示の文脈において、前記対象の健康状態の全ての尺度を包含する。臨床パラメータを用いて、対象の疾患活性の臨床評価を導出し得る。臨床パラメータは、制限なく:セラピー計画(限定されないが、DMARD、従来かバイオ製剤かに関わらず、ステロイドなどを含む)、TJC、SJC、朝のこわばり、3以上の関節領域の関節炎、手関節の関節炎、対称性関節炎、リウマチ結節、X線所見上の変化および他のイメージング、社会学的性別/生物学的性別、喫煙状況、年齢、種族/民族性、疾患期間、拡張期および収縮期血圧、安静時心拍数、身長、体重、脂肪過多、ボディマス指数、血清レプチン、家族履歴、CCP状況(すなわち、対象が抗-CCP抗体について陽性か陰性か)、CCP力価、RF状況、RF力価、ESR、CRP力価、閉経状態、ならびに、喫煙者/非-喫煙者か否かを含み得る。
【0037】
「臨床評価」および「臨床パラメータ」は、相互排他的用語ではない。2つのカテゴリーのメンバーには重なりがあるであろう。例えば、CRP濃度を、疾患活性の臨床評価として用いることができ;または、それを、前記対象の健康状態の尺度として用いることができ、かくして臨床パラメータとして機能する。
【0038】
ここで用いるとき、「臨床的重要変化」は、臨床評価と比較した、RAにおける臨床効果に関連する臨床的重要変化をいう。「最小臨床的重要変化」は最小臨床的重要変化である。
【0039】
用語「コンピュータ」は、一般的に分野公知の意味を持ち;すなわち、一組のインストラクションに従ってデータを操作する機械である。例示目的のみで、
図2は、コンピュータ (1600)の概略ブロック図である。分野公知のように、「コンピュータ」は、
図2に示されるものと異なる/およびまたはそれ以外の部品を有し得る。さらに、コンピュータ1600は、描写された特定の部品を欠いてもよい。さらに、ストレージデバイス (1608)は、コンピュータ (1600)からローカルおよび/またはリモートであり得る(記憶領域ネットワーク (SAN)内に埋め込まれているなど)。分野公知のように、コンピュータ (1600)は、ここに記載する機能性を提供するためのコンピュータプログラムモジュールを実行するように構成される。ここで用いられるとき、用語「モジュール」は、特別の機能性を提供するために利用されるコンピュータプログラムロジックをいう。かくして、モジュールは、ハードウェア、ファームウェア、および/またはソフトウェアに実装することができる。ひとつの具体例において、プログラムモジュールは、ストレージデバイス (1608)に記憶され、前記メモリー (1606)にロードされ、前記プロセッサー (1602)によって実行される。ここに記載される部分の具体例は、ここに記載するもの以外および/または異なるモジュールを含み得る。さらに、前記モジュールに起因する機能性は、他の具体例において、他のまたは異なるモジュールによって実行され得る。しかも、この明細書では、明確性および利便性のため、用語「モジュール」を省略することがある。
【0040】
本教示における用語「サイトカイン」は、細胞間でシグナルを伝達し、かくして、他の細胞への影響を有する免疫システムであり得る特別の細胞によって分泌されるいかなる物質をもいう。用語「サイトカイン」は、「成長因子」を包含する。「ケモカイン」は、サイトカインでもあり得る。それらは、細胞内で走化性を誘発するサイトカインのサブセットであり;かくして、それらは「走化性サイトカイン」としても知られる。
【0041】
「DAS」は、前記疾患活性スコアをいい、対象におけるRAの活性の尺度であり、当業者に周知である。D. van der Heijde et al., Ann. Rheum. Dis. 1990, 49(11):916-920を参照せよ。「DAS」は、ここで用いるとき、この特定の疾患活性スコアをいう。「DAS28」は、28の特定関節の査定に関与する。それは、研究と臨床診療でよく認識されている現在の標準である。DAS28はよく認識された標準であるため、「DAS」といわれることがある。「DAS」は、特に明記されない限り、66/68または44の関節数に基づく計算をいうことができるが、「DAS」は、ここでは、DAS28を包含する。ここで、特に明記されない限り、本教示で用いられるとき、用語「DAS28」は、上記の4つの公式のいずれかによって得られるDAS28-ESRまたはDAS28-CRPをいうことができ;または、DAS28は、分野公知の別の信頼できるDAS28公式をいうことができる。
【0042】
DAS28は、オランダのナイメーヘンにある大学医療センターのリウマチ学科により管理されているdas-score.nlウェブサイトに概略される標準に従ってRA対象について計算される。各対象において、全部で28からの膨張関節の個数または膨張関節数 (SJC28)、および全部で28からの圧痛関節の個数または圧痛関節数(TJC28)を評価する。いくつかのDAS28計算において、前記対象の全体的健康感 (GH)も因子であり、100mm視覚化アナログスケール (VAS)上で測定できる。GHは、ここでは、「患者総合健康評価」(または単に「患者総合評価」)の略称でPGまたはPGAということもできる。そして、「患者総合健康評価VAS」は、視覚化アナログスケール上でのGH測定である。
【0043】
「DAS28-CRP」(または「DAS28CRP」)は、ESRの代わりにCRPを用いて算出したDAS28評価である(下記)。CRPは肝臓で産生される。通常、個体の血清中を循環するCRPはわずかか全くない-CRPは、一般に、急性炎症または感染の状況の間、体内に存在し、そして、血清内でCRPの高い、または、増大した量が急性感染または炎症に関連する。1 mg/dLを超えるCRPの血清レベル、普通、高いとみなされる。ほとんどの炎症および感染は、10 mg/dLを超えるCRPレベルをもたらす。対象血清におけるCRPの量は、例えば、Diagnostics Systems Laboratories, Inc. (Webster, TX)によって開発されたDSL-10-42100 ACTIVE(R) US C-反応性プロテイン酵素結合免疫吸着アッセイ (ELISA)を用いて定量化できる。CRP産生は、RAにおけるX線所見上の進行に関連する。R. Mallya et al., J. Rheum. 1982, 9(2):224-228, および F. Wolfe, J. Rheum. 1997, 24:1477-1485を参照せよ。CRPは、かくして、測定するRA疾患活性の測定において、ESRの適当な代替と考えられた。R. Mallya et al., J. Rheum. 1982, 9(2):224-228, および F. Wolfe, J. Rheum. 1997, 24:1477-1485を参照せよ。
【0044】
DAS28-CRPは、GH因子のありなしで、下式のいずれかに基づいて計算することができ、式中、「CRP」は対象の血清中に存在するこのタンパク質の量をmg/Lで表し、「sqrt」は平方根を表し、「ln」は自然対数を表す:
【0045】
【0046】
【0047】
「DAS28-ESR」はDAS28評価であり、各対象についてのESRも測定される(mm/時間)。DAS28-ESRは、下式で計算することができる:
【0048】
【0049】
【0050】
「データセット」は、所望の状態下でのサンプル(またはサンプルの集団)の査定に由来する一組の数値である。前記データセットの値は、例えば、サンプルから実験的に尺度を獲得し、次いで、これらの測定からデータセットを構築することによって;あるいは、研究室などのサービスプロバイダーから、または、データセットが格納されているデータベースもしくはサーバーから獲得することによって獲得することができる。
【0051】
ここで用いられるとき、「差」は、バイオマーカーまたはバイオマーカーのパネルの測定表記を同一のバイオマーカーまたは第2のサンプルのバイオマーカーのパネルと比較したときの増減をいう。
【0052】
用語「疾患」は、本教示の文脈において、例えば、身体の器官、部分、構造、またはシステムの無秩序なまたは不正確な機能発現において現れ、例えば、遺伝子もしくは発達エラー、感染、毒、栄養の失調もしくは不均衡、毒性、または不都合な環境因子から生じる、いかなる障害、状態、病気、病なども包含する。
【0053】
DMARDは、従来品またはバイオ製剤であり得る。従来から一般的に考慮されているDMARDの例示は、限定されないが、MTX、アザチオプリン (AZA)、ブシラミン (BUC)、クロロキン (CQ)、シクロスポリン(CSA、またはサイクロスポリン、またはサイクロスポリン)、ドキシサイクリン (DOXY)、ヒドロキシクロロキン (HCQ)、筋肉内ゴールド (intramuscular gold; IM ゴールド)、レフルノミド (LEF)、レボフロキサンシン (LEV)、およびスルファサラジン (SSZ)を含む。他の従来のDMARDの例示は、限定されないが、フォリン酸、D-ペンシラミン、金オーラノフィン、金オーロチオグルコース、金チオリンゴ酸、シクロホスファミド、およびクロラムブシルを含む。バイオDMARD(またはバイオ薬物)の例示は、限定されないが、インフリキシマブ、アダリブマブ、エタネルセプトおよびゴリムマブなどの腫瘍壊死因子 (TNF)-アルファ分子を標的とするバイオ剤を含む。バイオDMARDの他の分類は、アナキンラのようなIL1阻害剤、アバタセプトのようなT-細胞調節剤、リツキシマブのようなB-細胞調節剤、およびトシリズマブのようなIL6阻害剤を含む。
【0054】
ここで用いるとき、用語「突発」は、発症および臨床徴候における突然かつ重篤な増加をいい、限定されないが、SJCにおける増加、TJCにおける増加、炎症の血清学的マーカー(例えば、CRPおよびESR)における増加、対象機能(例えば、基本的日常行動を実行する能力)における低下、朝のこわばりにおける増加、および、通常、セラピー介入につながり、潜在的にはセラピー強化につながる疼痛における低下を含む。
【0055】
ここで用いるとき、「免疫アッセイ」は、1以上の抗体を用いて、生物学的サンプル内の分析物またはバイオマーカーの存在または濃度を測定する生化学的アッセイである。
【0056】
「炎症性疾患」は、本教示の文脈において、制限なく、ここで規定するように、限定されないが、病因としての刺激、損傷細胞、刺激物、抗原を含む、有害刺激に対する血管組織の生物学的反応、および、自己免疫疾患の場合、身体に正常に存在する物質および組織から生じるいかなる疾患も包含する。炎症性疾患の非制限的例示は、関節リウマチ (RA)、eRA、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎、アテローム性動脈硬化、ぜんそく、自己免疫疾患、慢性炎症、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、再潅流損傷、移植拒絶、および血管炎を含む。
【0057】
ここで用いるとき、「解釈関数」は、一組の実測データを特別関心のある意味ある決定に変換することを意味する;例えば、解釈関数は、1以上の統計学的アルゴリズムを利用して、実測バイオマーカーデータのデータセットを対象の疾患活性または疾患状況の意味ある決定に転換することによって作成される予測モデルである。
【0058】
「測定する」または「測定」は、本教示の文脈において、当該物質の濃度レベルを含む、臨床もしくは対象由来サンプル中の物質の存在、不在、分量、量、もしくは有効量を決定すること、または、対象の臨床パラメータの値もしくは分類を評価することをいう。
【0059】
「マルチバイオマーカー疾患活性インデクススコア」、「MBDAスコア」、または単に「MBDA」は、本教示の文脈において、対象における炎症性疾患活性または炎症性疾患の状態の定量尺度を付与するスコアである。開示されたバイオマーカーの組からのように、特別に選択されたバイオマーカーからの一組のデータを、本教示による解釈関数に入力して、MBDAスコアを導出する。解釈関数は、いくつかの具体例において、統計学的アルゴリズムに基づく、予測または多変量モデリングから作成することができる。解釈関数への入力は、ここに記載するように、2以上の開示された一組のバイオマーカーを、単独で、または、臨床パラメータおよび/または臨床評価と組合せて試験した結果を含む。本教示のいくつかの具体例において、MBDAスコアは自己免疫疾患活性の定量尺度である。いくつかの具体例において、MBDAスコアはRA疾患活性の定量尺度である。MBDAは、ここで用いるとき、VECTRA(R) DAスコアをいうことができる。
【0060】
「多重アッセイ」は、ここで用いるとき、多数の分析物、例えば、タンパク質分析物を、一回の試行で、または、アッセイのサイクルで、同時に測定するアッセイをいう。
【0061】
「性能」は、本教示の文脈において、例えば、モデル、アルゴリズム、または診断もしくは予後試験の質および総合的な有用性に関係する。モデルまたは試験性能において考慮すべき因子は、限定されないが、試験の臨床的および分析的確度、試薬および種々の成分の安定性のような使用特性、モデルまたは試験の使用の容易さ、健康または経済的価値、ならびに試験の種々の試薬および成分の相対コストを含む。実行は、関数を行う作用を意味し得る。
【0062】
「集団」は、特定の特性の対象をグループ分けしたものである。グループ分けは、例えば、制限ないが、臨床パラメータ、臨床評価、セラピー計画、疾患状況(例えば、疾患か健康であるか)、疾患活性のレベルなどに従う。集団間の疾患活性を比較する際にMBDAスコアを使用する文脈において、集約値は、例えば、縦断研究における特定時点での集団の前記対象の観測MBDAスコアに基づいて決定することができる。集約値は、例えば、個々のデータポイントの集合から意味のある集約値に到達するために当技術分野で有用かつ公知の任意の数学的または統計学的公式に基づくことができる。例えば、平均値 (mean)、中央値 (median)、平均値の中央値 (median of the mean)などである。
【0063】
「予測モデル」は、「多変量モデル」または単に「モデル」と同義で用いることができ、数組のデータを分類する統計的アルゴリズムまたはアルゴリズムを用いて開発された数学的構成体である。用語「予想する」は、用語「予測」は、データポイントを生成するために通常または他の方法で必要とされる臨床診断手順を実際に実行することなく、データポイントの値を生成することをいい;「予測する」は、この文脈で用いられるとき、特定の転帰を予測するためのモデルの力だけをいうと理解されるべきではない。予測モデルは、解釈関数を与えることができ;例えば、予測モデルは、1以上の統計学的アルゴリズムまたは方法を利用して、実測データのデータセットを、対象の疾患活性または疾患状況の意味ある決定に転換することができる。
【0064】
「予後」は、疾患の可能性のある転帰としての予想である。予後推定は、例えば、対象の適切なセラピー計画を決定することにいおいて有用である。
【0065】
「定量的データセット」または「定量的データ」は、本教示で用いるとき、例えば、対象サンプルにおける複数(すなわち、2以上)のバイオマーカーにおける発現の検出および複合測定から導出される前記データをいう。前記定量的データセットを用いて、疾患状況の同定、モニタリングおよび治療についてならびに、対象の生物学的状態を特徴付ける際のスコアを生成することができる。様々なバイオマーカーが、関心のある疾患状況または生理的状態に応じて検出される可能性がある。
【0066】
「推奨する」は、ここで用いるとき、対象について、セラピー計画の推奨をすること、または、特定のセラピー計画を排除する(すなわち、推奨しない)ことをいう。そのような推奨は、臨床医が個々の対象に特定のセラピー計画を適用するための基礎として、他の情報と共に任意に機能するべきである。
【0067】
用語「寛解」は、普通、治癒しない持病を有することが分かっている患者において疾患活性が不在である状態をいう。用語「持続性臨床寛解」または「SC-REM」は、ここで用いるとき、臨床評価、例えば、少なくとも6月間のDAS28に基づいて評価したときに持続している臨床寛解の状態をいう。用語「機能的寛解」は、ここで用いるとき、限定されないがHAQのような機能評価尺度を用いて評価して寛解の状態をいう。持続性寛解は、維持寛解と交換可能に用いることができる。
【0068】
「サンプル」は、本教示の文脈において、対象から単離されたいかなる生物学的サンプルをもいう。サンプルは、制限なく、単一細胞または多数細胞、細胞の断片、体液アリコートの、全血、血小板、血清、血漿、赤血球、白血球またはロイコサイト、内皮細胞、組織バイオプシー、滑液、リンパ液、腹水、および間質または細胞外液を含み得る。用語「サンプル」は、滑液、歯肉溝滲出液、骨髄、脳脊髄液 (CSF)、唾液、粘液、喀痰、精液、汗、尿、その他のいかなる体液を含む、細胞間の空間にある液体も包含する。「血液サンプル」は、血液細胞、赤血球、白血球またはロイコサイト、血小板、血清および血漿を含む、全血またはそのいかなる断片をいう。サンプルは、限定されないが、静脈穿刺、排泄、射精、マッサージ、バイオプシー、針吸引、洗浄、削り落とし、外科切開、または介入またはその他の分野公知の手段を含む方法によって対象から獲得することができる。
【0069】
「スコア」は、対象の状態の変数または特徴の定量尺度を提供し、および/または、対象の状態を識別し、区別し、またはその他特徴付けるように、選択される値または一組の値である。そのスコアを含む値は、例えば、前記対象から、または、臨床パラメータから、または、臨床評価から、または、それらのいかなる組合せから獲得した1以上のサンプル構成体の測定量を生じる定量的データに基づく。ある種の具体例において、前記スコアは、単一の構成要素、パラメータまたは評価から導出され、他の具体例においては、前記スコアは、複数の構成要素、パラメータおよび/または評価から導出される。前記スコアは、解釈関数;例えば、分野公知の種々の統計学的アルゴリズムのいずれかを用いて特定の予測モデルから導出される解釈関数、に基づきまたはそれから導出される「スコアにおける変化」は、前記スコアにおける絶対変化、例えば、ひとつの時点から次まで、または、スコアにおけるパーセント変化、または、スコアの単位時間あたり変化(例えば、スコア変化の速度)をいう。「試験表現スコア」は、タンパク質レベルデータを含むスコアをいい、「試験臨床スコア」は、臨床データを含むスコアをいい、「疾患活性スコア」は、試験発現および疾患活性スコアの組合せをいう。
【0070】
「多重アッセイ」は、ここで用いるとき、多数の分析物、例えば、タンパク質分析物を、一回の試行でまたはアッセイのサイクルで同時に測定するアッセイをいう。
【0071】
「統計学的有意」は、本教示の文脈において、観察された変化が、偶然だけで発生すると予測されたものよりも大きい(例えば、「偽陽性」)ことを意味する。統計学的有意性は、種々の分野周知の方法のいずれかによって決定できる。統計学的有意性に通常用いられる尺度の例示はp-値である。p-値は、特定のデータポイントに等価な所定の結果を得る確率を表し、前記データポイントは、無秩序の偶然だけの結果である。結果は、しばしば、p-値が0.05以下で高度に有意である(無秩序偶然ではない)とみなされる。
【0072】
「対象」は、本教示の文脈において、一般的に、哺乳類である。前記対象は患者であり得る。用語「哺乳類」は、ここで用いるとき、限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、イヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、およびブタである。ヒト以外の哺乳類は、炎症の動物モデルを代表する対象として有利に用いることができる。対象は雄か雌であり得る。対象は、炎症性疾患を有すると以前診断されたか、同定されたものであり得る。対象は、炎症性疾患についてのセラピー的介入をすでに受けたか、受けているものであり得る。対象は、炎症性疾患を有すると以前診断されていないものでもあり得;例えば、対象は、炎症性状態につき1以上の症状または危険因子を示したもの、または、炎症性状態につき症状または危険因子を呈しない対象、または炎症性疾患について無症状である対象であり得る。
【0073】
、
「セラピー計画」、「セラピー」または「治療」は、ここで用いるとき、生物学的、化学的、物理学的、またはそれらの組合せにかかわらず、対象の状態を維持し、軽減し、改善し、または、そうでなければ変化させることを意図する、対象および介入の全ての臨床管理を含む。これらの用語は、ここでは、同義で用いることができる。治療は、限定されないが、予防またはセラピー化合物(従来のDMARD、バイオDMARD、COX-2選択的阻害剤のような非ステロイド系抗炎症剤 (NSAID’s)、およびコルチコステロイドを含む)の投与、運動療法、理学療法、食事改善および/または補給、肥満外科的介入、(処方または店頭での)医薬および/または抗-炎症剤の投与、ならびに、疾患を予防し、発症を遅延し、または軽減する分野公知のいかなる他の治療を含む。「治療への反応」は、生物学的、化学的、物理的、または前記の組合せにかかわらず、上記した治療のいずれかに対する対象の反応を含む。「治療方針」は、特定の治療またはセラピー計画の容量、期間、程度などに関連する。初期セラピー計画は、ここで用いるとき、セラピーの第1の選択である。
【0074】
「時点」は、ここで用いるとき、実質的に単一の点で記述できる時間を記載する方法をいう。時点は、検出できる最小単位の時間範囲として記載することもできる。時点は、時間の側面の状態または特定の時間を記述する方法といえる。そのような時点または範囲は、例えば、秒、分から時間または日の単位を含む。
【0075】
「重み付け」または「重み付けされた」は、ここで用いるとき、いくつかの要素が同一の組内の他の要素よりも結果に対してより大きな影響を及ぼすように、和、積、平均を実行する数学関数をいう。
【0076】
疾患の診断、予後、および評価における本教示の使用
MBDAスコアは、関節リウマチ (RA)の成人患者における疾患活性を評価する12の血清タンパク質バイオマーカーを定量する検証されたツールである(Curtis JR, et al., Arthritis Care Res. 64:1794-803 (2012))。これら12のバイオマーカーの誘導、およびMBDAスコアを生成するように開発されたアルゴリズムは、出典明示によりその全体が完全に組み込まれる米国特許第9,200,324号に記載されている。
【0077】
本教示のいくつかの具体例において、バイオマーカーは、ここに記載するように、MBDAスコアの導出に用いることができ、ここに、MBDAスコアを用いて炎症性疾患および自己免疫疾患における疾患状況および/または疾患活性の診断、予後およびモニタリングを提供することができる。ある種の具体例において、MBDAスコアを用いて、セラピーに対する反応におけるRAまたは早期RAの疾患状況および/または疾患活性の診断、予後およびモニタリングを提供することができる。ある種の具体例において、MBDAスコアを用いて、セラピー計画の中止を推奨することができ、または、MBDAスコアを用いて、セラピー計画の変更を推奨することができる。
【0078】
MBDAスコアを導出するのに有用なバイオマーカーは、キチナーゼ3-様1 (軟骨グリコプロテイン-39) (CHI3L1); C-反応性プロテイン、ペントラキシン-関連 (CRP);表皮成長因子 (ベータ-ウロガストロン) (EGF);インターロイキン6 (インターフェロン、ベータ 2)(IL6);レプチン (LEP);マトリクスメタロペプチダーゼ1 (間質コラゲナーゼ) (MMP1);マトリクスメタロペプチダーゼ3 (ストロメリシン1、プロゲラチナーゼ) (MMP3);レジスチン (RETN);血清アミロイドA1 (SAA1);腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー1A (TNFRSF1A);血管細胞接着分子1 (VCAM1);および、血管内皮成長因子 A (VEGFA)、血清アミロイドP-成分 (SAP)、カテプシンD (CPSD)、ケメリン (TIG2)、アルファ-1-ミクログロブリン (A1M)、ハプトグロブリン (Hp)、色素上皮由来因子 (PEDF)、クラステリン (CLU)、組織型プラスミノーゲンアクチベータ (tPA)、C-反応性プロテイン (CRP)、単球走化性プロテイン4 (MCP-4)、アルファ-1-酸グリコプロテイン1 (AGP-1)、架橋ペプチド (C-ペプチド)、補体因子H (CFH)、肺および活性化制御ケモカイン (PARC)、成長調節アルファプロテイン (GRO-アルファ)、性ホルモン結合グロブリン (SHBG)、マトリクスメタロプロテイナーゼ-7 (MMP-7)、増殖/分化因子15 (GDF-15)、線維芽細胞成長因子21 (FGF-21)、アンジオポエチン関連プロテイン3 (ANGPTL3)、ヘモペキシン (HPX)、FASLGレセプター (FAS)、終末糖化産物 (RAGE)に対するレセプター、CD5抗原-様 (CD5L)、エンドグリン (ENG)、フォン・ヴィレブランド因子 (vWF)、アポリポプロテインC-III (Apo C-III)、インターロイキン-1レセプターアンタゴニスト (IL-1ra)、フィコリン-3 (FCN3)、ペルオキシレドキシン-4 (Prx-IV)、ST2心臓バイオマーカー (ST2)、ソルチリン (SORT1)、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー 12 (Tweak)、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ (PSAT)、ヘパリン結合EGF-様成長因子 (HB-EGF)、インターロイキン-8 (IL-8)、ベータ-2-ミクログロブリン (B2M)、アポリポプロテインE (Apo E)、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ (uPA)、アドレノメデュリン (ADM)、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータレセプター (uPAR)、テトラネクチン (TN)、E-セレクチン (ESEL)、ガンマインターフェロン (MIG)によって誘発されるモノカイン、グルカゴン様ペプチド1トータル (GLP-1トータル)、インターロイキン-12サブユニットp40 (IL-12p40)、軟骨オリゴマー基質タンパク質 (COMP)、アポリポプロテインH (Apo H)、因子VII (F7)、インターフェロン-誘導性T-細胞-アルファ走化性因子 (ITAC)、抗白血球プロテイナーゼ (ALP)、胸腺および活性化調節ケモカイン (TARC)、プラスミノーゲン活性化阻害剤1 (PAI-1)、インターロイキン-15 (IL-15)、セルロプラスミン (CP)、補体因子H-関連プロテイン1 (CFHR1)、プロテインDJ-1 (DJ-1)、アルファ-フェトプロテイン (AFP)、ケモカインCC-4 (HCC-4)、フェリチン (FRTN)、インターロイキン-15 (IL-15)、免疫グロブリンA (IgA)、トロンビン-活性化繊維素溶解 (TAFI)、シスタチン-B、アルファ-1-アンチキモトリプシンン (AACT)、膵臓ポリペプチド (PPP)、ヒートショックプロテイン70 (HSP-70)、トランスフェリンレセプタープロテイン (TFR1)、タム・ホースフォール尿グリコプロテイン (THP)テネイシン-C (TN-C)、ペプシノゲン1 (PG1)、肝細胞成長因子 (HGF)、T-細胞-特異性プロテインRANTES (RANTES)、腫瘍壊死因子レセプター2 (TNFR2)、マクロファージコロニー刺激因子1 (M-CSF)、ベータアミロイド1-40 (AB-40)、シスタチン-C、メタロプロテイナーゼ3 (TIMP-3)の組織阻害剤、インスリン様成長因子結合プロテイン4 (IGFBP4)、消化管抑制ポリペプチド (GIP)、ミドカイン (MDK)、アンジオゲニン (ANG)、幹細胞因子 (SCF)、骨髄前駆阻害因子1 (MPIF-1)、オステオプロテゲリン (OPG)、CD 40抗原 (CD40)、単球走化性プロテイン2 (MCP-2)、インスリン様成長因子結合プロテイン1 (IGFBP-1)、ビタミンK-依存性プロテイン (VKDPS)、肝細胞成長因子レセプター (HGFR)、脳由来神経栄養因子 (BDNF)、マクロファージ刺激プロテイン (MSP)、または単球走化性プロテイン1 (MCP-1)を含む。
【0079】
対象における炎症性疾患の状態を同定することは、その疾患の予後を可能にし、かくして、より進んだ疾患状況への対象の進行を遅延し、低減し、または、防止するための種々のセラピー計画の情報に基づく選択、開始、調節または増強を可能にする。いくつかの具体例において、それゆえ、対象は、それらのMBDAスコアの決定に基づいて、特定のレベルの炎症性疾患活性を有している、および/または、特定の状態の疾患、または突発にあると同定でき、そして、ここで規定される治療を開始または加速して、炎症性疾患のさらなる進行を防止し、または遅延させるよう選択する。他の具体例において、MBDAスコアにより特定のレベルの炎症性疾患活性を有している、および/または、特定の状態の炎症性疾患にあると同定された対象は、それらの治療を低減または中断すると選択され、前記対象における改善または寛解が認められる。他の具体例において、MBDAスコアにより特定のレベルの炎症性疾患活性を有している、および/または、特定の状態の炎症性疾患にあると同定された対象は、疾患活性レベルに基づいて、セラピーが選択される。
【0080】
RAの早期かつ正確な診断の必要性に関し、RA治療の最近の進歩は、発症の最初の月間以内のRAのより深い疾患管理と最適治療の手段を提供し、ひいては、著しく向上した転帰をもたらした。F. Wolfe, Arth. Rheum. 2000, 43(12):2751-2761; M. Matucci-Cerinic, Clin. Exp. Rheum. 2002, 20(4):443-444; および, V. Nell et. al., Lancet 2005, 365(9455):199-200を参照せよ。残念ながら、ほとんどの対象は、この狭い範囲の機会内で最適治療を受けておらず、一部は、現在の診断臨床検査のために、転帰不良と不可逆的関節損傷を生じた。RA対象の診断には多数の困難が存在する。これは、一部分、初期段階では、症状が完全に識別されないからである。RAの診断試験が、疾患の生物学的基礎ではなく、現象論的知見に基づいて開発されたためでもある。本教示の種々の具体例において、マルチバイオマーカーアルゴリズムは、開示された組のバイオマーカーから導出できる。
【0081】
疾患活性の評定
本教示のいくつかの具体例において、MBDAスコアは、ここに記載するように導出され、炎症性疾患活性を;例えば、高度、中度または低度に評定するために用いることができる。前記スコアは、開業医によって選択される一組の値に基づいて変化し得る。例えば、スコアは、値が0~100の範囲になるように設定され、2つのスコア間の差は少なくとも1点の値である。開業医は、次いで、それらの値に基づいて、疾患活性を割り当てる。例えば、いくつかの具体例において、約1~29のスコアは低レベルの疾患活性を表し、約30~44のスコアは中レベルの疾患活性を表し、約45~100のスコアは高レベルの疾患活性を表す。いくつかの具体例において、1~100の目盛り上、≦38のスコアが低度または低目のスコアを表し、>38のスコアが高度または高めのスコアを表す。いくつかの具体例において、1~100の目盛り上、≦30のスコアが低度または低目のスコアを表し、>30のスコアが高度または高めのスコアを表す。いくつかの具体例において、約≦25のBDSスコアが寛解であり、約26~29が低度、約30~44が中度および約>44が高度である。カットオフ値は変えられる。例えば、いくつかの具体例において、低度スコアは<30のスコアであり得るが、他の利用では、低度スコアは、<29または<31である。
【0082】
前記疾患活性スコアは、前記スコアの範囲に基づいて変えることができる。例えば、1~58のスコアは、0~200の範囲を用いるとき、低レベルの疾患活性を表し得る。差は、スコアの範囲の可能性に基づいて決定することができる。例えば、0~100のスコア範囲を用いるとき、スコアにおける小差は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10点であり:スコアにおける中差は、約4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、または30点であり;大差は、約14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、または50点である。かくして、例示として、開業医は、スコアにおける小差を約6点、スコアにおける中差を約7~20点、スコアにおける大差を約>20点と規定できる。差は、いかなる単位、例えば、パーセントポイントで表現できる。例えば、開業医は、小差を約<6パーセントポイント、中差を約7~20パーセントポイント、大差を約>20パーセントポイントと規定できる。
【0083】
前記疾患活性スコアにおける最小臨床的重要変化は、臨床効果に関連するスコア変化の最適閾値に基づく。例えば、2、3、4、5、6、7、8、9、10、15、20、25、30点以上のスコアの差は臨床学的に重要であると考えられる。好ましい具体例において、≧8のスコアが疾患活性における最小臨床的重要変化、すなわち、MBDAスコアである。
【0084】
本教示のいくつかの具体例において、自己免疫疾患活性をそのように評定できる。他の具体例において、RA疾患活性をそのように評定できる。MBDAスコアは、例えば、RAにおける、炎症性疾患活性の伝統的臨床評価とよく相関するので、本教示の他の具体例において、対象または集団の骨損傷、そして、疾患進行は、MBDAスコアの使用および適用により追跡できる。
【0085】
MBDAスコアは、いくつもの目的で使用できる。対象に特異的に基づいて、疾患活性の相対レベルを理解するための事情を示す。疾患活性のMBDA評定は、例えば、臨床医が治療を決定する際、治療進路を設定する際、および/または、臨床医に対象が寛解したことを通知するために用いることができる。さらに、対象における疾患活性の定量レベルをより正確に評価し、文書化する手段を提供する。診療内の対象の集団間での臨床差異を評価する観点からも有用である。例えば、このツールを用いて、異なるセラピー法の相対効率を評価できる。さらに、異なる診療間の臨床差異を評価する観点からも有用である。これにより、医師は、どの疾患対象の総合レベルが同僚によって達成されているか、および/または、費用および相対有効性につき異なる診療間の結果を比較するための医療管理群を決定できるようにする。MBDAスコアは、DAS28のような、確立された疾患活性評価と強い関連性を示すので、MBDAスコアは、対象疾患活性の低度、および治療に対する反応をモニターする定量的尺度を提供する。
【0086】
対象スクリーニング
本教示のある種の具体例を用いて、いかなる数の設定においても対象集団をスクリーニングすることができる。例えば、健康管理組織、公共健康団体または学校健康プログラムは、対象の群をスクリーニングして、上記したように、介入を要求するものを同定することができる。これらの教示の他の具体例を用いて、例えば、集団の臨床管理の有効性を決定するために、または、臨床管理におけるギャップを決定するために、対象の1以上の集団について疾患活性データを収集して、総計的に対象疾患状況を同定することができる。保険会社(例えば、健康、生命、または障害)は、潜在的な介入の保証範囲を決定する過程において申請者のスクリーニングを要求することができる。当該集団において収集されたデータは、特に、炎症性疾患およびRAのような状態に対するいかなる臨床経過と結びつくとき、スクリーングができ、例えば、健康管理機関、公共健康プログラムおよび保険会社の業務において価値がある。
【0087】
そのようなデータアレイまたは収集は、機械読取り可能媒体に記憶し、いかなる数の健康関連データ管理システムにおいても用いて、向上した医療サービス、費用対効果のある医療、および向上した保険業務その他を提供する。例えば、米国特許出願第2002/0038227号;米国特許出願第2004/0122296号;米国特許出願第2004/0122297号および米国特許第5,018,067号を参照せよ。そのようなシステムは、さらにここに記載するように、前記データを内部データ記憶から直接、または、1以上のデータ記憶サイトからリモートでアクセスすることができる。かくして、健康関連データ管理システムにおいて、疾患関連雇用生産性損失、障害および手術を低減し、ひいては、総計的に医療費を削減するために、集団の炎症性疾患進行を管理することが重要であり、本教示の種々の具体例は、ここに定義するバイオマーカー測定および/または、それらのバイオマーカー測定から得られた疾患の状況および活性の結果を包含するデータアレイの使用を含む向上を提供する。
【0088】
スコアの計算
本教示のいくつかの具体例において、対象における炎症性疾患活性は:2以上バイオマーカーの炎症性疾患対象血清中レベルを決定し、次いで、解釈関数を適用して前記バイオマーカーレベルを単一MBDAスコアに転換することによって測定され、それは、前記対象におおける炎症性疾患活性の定量的尺度を提供し、以下の実施例で実証するように、炎症性疾患活性の伝統的臨床評価(例えば、RAにおけるDAS28またはCDAIスコア)とよく相関する。いくつかの具体例において、そのように測定された疾患活性は自己免疫疾患に関連する。いくつかの具体例において、そのように測定された疾患活性はRAに関連する。前記バイオマーカーは、キチナーゼ3-様1 (軟骨グリコプロテイン-39) (CHI3L1); C-反応性プロテイン、ペントラキシン-関連 (CRP);表皮成長因子 (ベータ-ウロガストロン) (EGF);インターロイキン6 (インターフェロン、ベータ 2)(IL6);レプチン (LEP);マトリクスメタロペプチダーゼ1 (間質コラゲナーゼ) (MMP1);マトリクスメタロペプチダーゼ3 (ストロメリシン1、プロゲラチナーゼ) (MMP3);レジスチン (RETN);血清アミロイドA1 (SAA1);腫瘍壊死因子レセプタースーパーファミリー、メンバー1A (TNFRSF1A);血管細胞接着分子1 (VCAM1);および、血管内皮成長因子 A (VEGFA)、血清アミロイドP-成分 (SAP)、カテプシンD (CPSD)、ケメリン (TIG2)、アルファ-1-ミクログロブリン (A1M)、ハプトグロブリン (Hp)、色素上皮由来因子 (PEDF)、クラステリン (CLU)、組織型プラスミノーゲンアクチベータ (tPA)、C-反応性プロテイン (CRP)、単球走化性プロテイン4 (MCP-4)、アルファ-1-酸グリコプロテイン1 (AGP-1)、架橋ペプチド (C-ペプチド)、補体因子H (CFH)、肺および活性化制御ケモカイン (PARC)、成長調節アルファプロテイン (GRO-アルファ)、性ホルモン結合グロブリン (SHBG)、マトリクスメタロプロテイナーゼ-7 (MMP-7)、増殖/分化因子15 (GDF-15)、線維芽細胞成長因子21 (FGF-21)、アンジオポエチン関連プロテイン3 (ANGPTL3)、ヘモペキシン (HPX)、FASLGレセプター (FAS)、終末糖化産物 (RAGE)に対するレセプター、CD5抗原-様 (CD5L)、エンドグリン (ENG)、フォン・ヴィレブランド因子 (vWF)、アポリポプロテインC-III (Apo C-III)、インターロイキン-1レセプターアンタゴニスト (IL-1ra)、フィコリン-3 (FCN3)、ペルオキシレドキシン-4 (Prx-IV)、ST2心臓バイオマーカー (ST2)、ソルチリン (SORT1)、腫瘍壊死因子リガンドスーパーファミリーメンバー 12 (Tweak)、ホスホセリンアミノトランスフェラーゼ (PSAT)、ヘパリン結合EGF-様成長因子 (HB-EGF)、インターロイキン-8 (IL-8)、ベータ-2-ミクログロブリン (B2M)、アポリポプロテインE (Apo E)、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータ (uPA)、アドレノメデュリン (ADM)、ウロキナーゼ型プラスミノゲンアクチベータレセプター (uPAR)、テトラネクチン (TN)、E-セレクチン (ESEL)、ガンマインターフェロン (MIG)によって誘発されるモノカイン、グルカゴン様ペプチド1トータル (GLP-1トータル)、インターロイキン-12サブユニットp40 (IL-12p40)、軟骨オリゴマー基質タンパク質 (COMP)、アポリポプロテインH (Apo H)、因子VII (F7)、インターフェロン-誘導性T-細胞-アルファ走化性因子 (ITAC)、抗白血球プロテイナーゼ (ALP)、胸腺および活性化調節ケモカイン (TARC)、プラスミノーゲン活性化阻害剤1 (PAI-1)、インターロイキン-15 (IL-15)、セルロプラスミン (CP)、補体因子H-関連プロテイン1 (CFHR1)、プロテインDJ-1 (DJ-1)、アルファ-フェトプロテイン (AFP)、ケモカインCC-4 (HCC-4)、フェリチン (FRTN)、インターロイキン-15 (IL-15)、免疫グロブリンA (IgA)、トロンビン-活性化繊維素溶解 (TAFI)、シスタチン-B、アルファ-1-アンチキモトリプシンン (AACT)、膵臓ポリペプチド (PPP)、ヒートショックプロテイン70 (HSP-70)、トランスフェリンレセプタープロテイン (TFR1)、タム・ホースフォール尿グリコプロテイン (THP)テネイシン-C (TN-C)、ペプシノゲン1 (PG1)、肝細胞成長因子 (HGF)、T-細胞-特異性プロテインRANTES (RANTES)、腫瘍壊死因子レセプター2 (TNFR2)、マクロファージコロニー刺激因子1 (M-CSF)、ベータアミロイド1-40 (AB-40)、シスタチン-C、メタロプロテイナーゼ3 (TIMP-3)の組織阻害剤、インスリン様成長因子結合プロテイン4 (IGFBP4)、消化管抑制ポリペプチド (GIP)、ミドカイン (MDK)、アンジオゲニン (ANG)、幹細胞因子 (SCF)、骨髄前駆阻害因子1 (MPIF-1)、オステオプロテゲリン (OPG)、CD 40抗原 (CD40)、単球走化性プロテイン2 (MCP-2)、インスリン様成長因子結合プロテイン1 (IGFBP-1)、ビタミンK-依存性プロテイン (VKDPS)、肝細胞成長因子レセプター (HGFR)、脳由来神経栄養因子 (BDNF)、マクロファージ刺激プロテイン (MSP)、または単球走化性プロテイン1 (MCP-1)を含む。
【0089】
いくつかの具体例において、解釈関数予測モデルに基づく。確立された統計学的アルゴリズムおよび分野周知の方法は、モデルとして有用であるか、または、予測モデルの設計に有用であり、限定されないが:多様体 (ANOVA)の分析;ベイジアンネットワーク;ブースティングおよびアダブースティング;ブーストラップ・アグリゲーティング(またはバギング)アルゴリズム;分類および回帰木 (CART)、ブーストCART、ランダム・フォレスト(RF)、再帰分割木 (RPART)などのような決定木分類技術;カーズ・アンド・ホウェイ (CW);カーズ・アンド・ホウェイ-ラッソ;主成分解析 (PCA)および因子回転または因子分析のような次元削減法;線形判別分析 (LDA)、アイゲンジーン線形判別分析 (ELDA)、および二次判別分析を含む、判別関数分析 (DFA);因子回転または因子分析;遺伝的アルゴリズム;隠れマルコフモデル;カーネル密度推定、カーネル部分的最小二乗アルゴリズム、カーネルマッチング追跡アルゴリズム、カーネルフィッシャーズ判別分析アルゴリズム、およびカーネル主成分解析アルゴリズムのようなカーネル型の機械アルゴリズム;順方向線形ステップワイズ回帰、ラッソ(またはLASSO)収縮および選択法、およびエラスティックネット正規化および選択法を含むか、利用する、線形回帰および一般化線形モデル;glmnet(ラッソおよびエラスティックネット-正規化一般化線形モデル);ロジスティック回帰 (LogReg);メタ学習アルゴリズム;分類または回帰のための近傍法、例えば、K番目-近傍 (KNN);非線形回帰または分類アルゴリズム;ニューラルネットワーク;部分的最小二乗;ルール型分類器;収縮セントロイド (SC);層別逆回帰;製品モデルデータの交換のための標準、アプリケーション解釈構成 (StepAIC);スーパー主成分 (SPC)回帰;ならびに、サポートベクターマシーン (SVM)および再帰的サポートベクターママシーン (RSVM)その他を含み得る。さらに、分野公知であるクラステリングアルゴリズムは、対象サブグループを決定するのに有用であり得る。
【0090】
ロジスティック回帰は、2値応答変数;例えば、治療1対治療2、に対する選択枝となる伝統的な予測モデリング方法である。それを用いて、前記データ変数の線形および非線形局面の双方をモデル化することができ、容易に解釈可能なオッズ比を提供する。
【0091】
判別機関数分析 (DFA)は、一組の分析物を変数(根)として用いて、2以上の自然発生群を判別する。DFAを用いて、群間で有意に異なる分析物を試験する。順方向ステップワイズDFAを用いて、検討した群を最大に判別した一組の分析物を選択することができる。具体的に、各ステップで、全ての変数を再検討して、どれが群間で最大に判別するかを決定することができる。この情報は、次に、根と呼ばれる判別関数に含まれ、それは、群帰属性の予測に対する分析物濃度の線形結合からなる方程式である。最終方程式の判別能力は、各群で得られた根値の線プロットとして観察できる。この手法は、その濃度レベルの変化を用いて、プロファイルを描写し、診断し、セラピー効率を評価できる、分析物の群を特定しする。DFAモデルは、新たな対象を「健康」または「罹患」のいずれかとして分類できることで、任意スコアを作成できる。医学会でこのスコアの使用を容易にするために、0の値が健康な個体を示し、0より大きなスコアが疾患活性の増大を示すように、前記スコアを再スケールすることができる。
【0092】
分類および回帰木 (CART)は、データの論理分割(if/then)を実行して、決定木を作成する。特定ノードに入る全ての観察は、そのノード中で最もありふれた転帰に従って分類する。CART結果は、容易に解釈することができ、分類結果までの一連のif/then木の枝に従う。
【0093】
サポートベクターマシーン (SVM)は、オブジェクトを2以上のクラスに分類する。クラスの例示は、一連のセラピー選択枝、一連の診断選択枝、または一連の予後選択枝を含む。各オブジェクトの正しいクラス割り当てが既知の訓練用データセットのオブジェクトに対する類似性(またはそこからの距離)に基づき、各オブジェクトをクラスに割り当てる。既知オブジェクトに対する新たなオブジェクトの類似性の尺度は、サポートベクターを用いて決定され、それは、潜在的に高い次元空間(>R6)内の領域を規定する。
【0094】
ブーストラップ・アグリゲーティング、または「バギング」のプロセスは計算上単純である。前記第1のステップにおいて、所定のデータセットは、特定回数(例えば、数千回)、ランダムに再サンプリングされ、その数の新しいデータセットが提供される。それは、データの「ブートストラップされた再サンプルと呼ばれ、次に、それらの各々を用いてモデルを構築する。次いで、分類モデルの例では、前記第1のステップで作成された分類モデルの数によって、新しい観察毎のクラスが予測される。最終クラス決定は、分類モデルの「多数決」に基づく;すなわち、最終分類指令は、新しい観測が所定の群に分類される回数を数え、多数分類(三分類系では33%+)を取ることによって決定される。ロジスティック回帰モデルでは、ロジスティカル回帰が1000回バッグされたとき、1000個のロジスティカルモデルが存在し、各々が、クラス1または2に属するサンプルの確率を与える。
【0095】
最小二乗法 (OLS)を用いるカーズ・アンド・ホウェイ (CW)はもう一つの予測モデリング法である。L. Breiman and JH Friedman, J. Royal. Stat. Soc. B 1997, 59(1):3-54を参照せよ。この方法は、応答変数間の相関を考慮して、予測変数Xの共通セットの各応答変数の個別回帰を実行する通常の手順と比較して、予測確度を向上する。CWでは、Y = XB * S、式中、Y = (ykj)であり、kはk番目の患者であり、jはj番目の応答(TJCにつきj =1、SJCにつきj = 2など)であり、Bは、OLSを用いて獲得し、Sは、正準座標系から計算された収縮行列である。もうひとつの方法は、カーズ・アンド・ホウェイとラッソの組合せ (CW-Lasso)である。CWのようにOLSを用いてBを獲得する代わりに、ここでは、ラッソを用い、ラッソ手法につき適宜パラメータを調節する。
【0096】
これら技術の多くは、バイオマーカー選択技術(例えば、前方選択、後方選択あるいはステップワイズ選択など)と組み合わせて、もしくは、所定のサイズの全ての可能性のあるパネルの完全列挙、もしくは、遺伝的アルゴリズムのいずれかで有用であり、または、それら自身で、自己の技術にバイオマーカー選択方法論を含み得る。これらの技術は、赤池情報量基準 (AIC)、ベイズ情報量基準 (BIC)、または交差検証のような情報量基準と結合して、さらなるバイオマーカーの加入とモデル改善との間のトレードオフを定量し、過剰適合を最小限化する。得られた予測モデルは他の実験でも有効であり、または、当該技術、例えば、リーブ-ワン-アウト (LOO)および10倍交差検証(10倍CV)を用いて、元々訓練され実験で交差検証する。
【0097】
記の統計学的モデリング法から導出されたMBDAスコアを提供する解釈関数の一例は、以下の関数で与えられる:
【0098】
【0099】
公知の臨床評価(例えば、DAS28スコア)でRA対象につき獲得されたMBDAスコアは、次いで、それらの公知評価と比較して、当該2つの評価の間の相関レベルを決定し、それゆえ、MBDAスコアの確度およびその基礎となる予測モデルの確度を決定できる。以下の特定の公式および定数を参照せよ。
【0100】
本発明の具体例は、臨床変数を用いてMBDAスコアを調節する。MBDAスコアを調節するのに用いられる前記臨床変数は、限定されないが、年齢、社会学的性別、生物学的性別、喫煙状況、脂肪過多、ボディマス指数 (BMI)、血清レプチン、および種族/民族性を含む得る。例として、血清レプチンを用いて、以下のアルゴリズムを用いるMBDAスコアを調節できる:
【0101】
【0102】
本教示のいくつかの具体例において、MBDAスコアが前記対象における炎症性疾患活性の定量尺度を提供するために、予備決定された「参照」、「正常」、「対照」、「標準」、「健康」、「未病」その他のインデクスのいずれかとMBDAスコアを比較することは要求されない。
【0103】
本教示他の具体例において、バイオマーカーの量をサンプルにおいて測定し、それを用いてMBDAスコアを導出することができ、炎症性疾患についてのカットオフ点および/または異常値を規定するために、例えば、参照もしくは判別限界またはリスク画定閾値などの技術を用いて、そのMBDAスコアを、次いで、「正常」または「対照」レベルまたは値と比較する。そして、前記正常レベルは、査定下で前記炎症性疾患に罹患していない対象に典型的に見い出される、1以上のバイオマーカーまたは組み合わせたバイオマーカーインデクスのレベルである。「正常」または「対照」に関する他の用語は、例えば、「参照」、「インデクス」、「ベースライン」、「標準」、「健康」、「未病」などである。そのような正常レベルは、バイオマーカーを単独で用いるか、または、スコアを出力するために他のバイオマーカーと組み合わせた公式で用いるかに基づいて変化し得る。あるいは、正常レベルは、臨床的に適切な期間にわたる査定下で前記炎症性疾患に転換しなかった以前試験された対象からのバイオマーカーのデータベースであり得る。前記参照(正常、対照)値も、例えば、炎症性疾患活性のレベルまたは状態が既知の対照対象または集団から導出され得る。本教示のいくつかの具体例において、前記参照値は、炎症性疾患の治療が施された1以上の対象または炎症性疾患を発症するリスクが低い1以上の対象または治療を施した結果、炎症性疾患活性因子(例えば、上で定義した臨床パラメータなど)に改善が見られた対象から導出できる。いくつかの具体例において、前記参照値は、治療が施されたことがない1以上の対象から導出し得る;例えば、サンプルは、(a)炎症性疾患に対する初期治療を受けた対象、および(b)炎症性疾患に対する次なる治療を受けた対象から収集して、治療の進行をモニターすることができる。参照値は、疾患活性アルゴリズムまたは集団試験からの計算インデクスからも導出できる。
【0104】
バイオマーカーの測定
本教示の1以上のバイオマーカーの分量は、値として示される。その値は、サンプルの査定から得られた1以上の数値であり得、例えば、研究室で実行されたアッセイにより、サンプル中のバイオマーカーのレベルを測定することによって、または、研究室のようなプロバイダーから入手したデータセットから、または、サーバーに記憶されたデータセットから、導出できる。バイオマーカーレベルは、いくつかの分野公知技術のいずれかを用いて測定できる。本教示は、そのような技術を包含し、さらに、バイオマーカーを測定する、全ての対象絶食型および/または経時型サンプリング手順を含む。
【0105】
バイオマーカーのレベルの実際の測定は、分野公知のいずれかの方法を用いて、前記タンパク質または核酸レベルにて決定できる。「タンパク質」検出は、完全長タンパク質、成熟タンパク質、プレタンパク質、ポリペプチド、アイソフォーム、変異体、多様体、翻訳後変性タンパク質およびそれらの多様体の検出を含み、いずれかの適当な様式で検出できる。バイオマーカーのレベルは、前記タンパク質レベルにて、例えば、ここに記載する遺伝子産物によってコードされるペプチドの血清レベルを測定することによって、または、これらタンパク質バイオマーカーの酵素活性を測定することによって、決定できる。そのような方法は分野公知であり、例えば、当該遺伝子によってコードされるタンパク質、アプタマーまたは分子インプリントに対する抗体に基づく免疫アッセイを含む。いかなる生体材料も、前記タンパク質またはその活性の検出/定量に使用できる。あるいは、適当な方法を選択して、分析された各タンパク質の活性に従って、前記バイオマーカー遺伝子によってコードされるタンパク質の活性を決定できる。酵素活性を有するとして知られている、バイオマーカータンパク、ポリペプチド、アイソフォーム、変異体、およびそれらの多様体につき、活性は、分野公知の酵素アッセイを用いてイン・ビトロで決定できる。そのようなアッセイは、制限なく、プロテアーゼアッセイ、キナーゼアッセイ、ホスファターゼアッセイ、リダクターゼアッセイ、その他多くを含む。酵素活性のキネティクスの調節は、ヒルプロット、ミカエリス・メンテン式、ラインウィーバー・バーク解析のような線形回帰プロット、およびスキャチャードプロットなどの公知のアルゴリズムを用いて速度定数KMを測定することによって決定できる。
【0106】
当該バイオマーカーについての公共データベース登録によって提供された配列情報を用いて、前記バイオマーカーの発現を検出でき、当業者に周知な技術を用いて測定できる。例えば、バイオマーカーの核酸に対応する配列データベース中の核酸配列を用いて、バイオマーカー核酸を検出し、および/または、測定するプライマーおよびプローブを構築できる。これらのプローブは、例えば、ノーザンもしくはサザンブロットハイブリダイゼーション分析、リボヌクレアーゼ保護アッセイ、および/または、特定の核酸配列を定量的に増幅する方法において使用できる。もうひとつの例として、増幅型検出および逆転写型ポリメラーゼ連鎖反応 (RT-PCR)およびPCRのような定量法において、バイオマーカー配列を特異的に増幅するプライマーを構築できる。遺伝子増幅、ヌクレオチド欠失、多型、翻訳後修飾および/または変異体に関連する場合、試験および参照集団における配列比較は、前記試験および参照集団における調査したDNA配列の相対量を比較することによって行うことができる。
【0107】
一例として、1以上のこれらの配列を特異的に認識するプローブを用いるノーザンハイブリダイゼーション分析を用いて遺伝子発現を決定できる。あるいは、発現は、RT-PCRを用いて測定できる;例えば、差次的発現バイオマーカーmRNA配列に特異的なポリヌクレオチドプライマーは、そのmRNAをDNAに逆転写し、次に、それをPCRで増幅し、可視化および定量化できる。バイオマーカーRNAも、例えば、TMA、SDA、および NASBA、またはシグナル増幅法(例えば、bDNA)などのような他の標的増幅法を用いて、定量できる。リボヌクレアーゼ保護アッセイも、1以上のバイオマーカーmRNA配列を特異的に認識するプローブを用いて遺伝子発現を決定するのに使用できる。
【0108】
あるいは、バイオマーカータンパク質および核酸代謝物を測定できる。用語「代謝物」は、生体分子(例えば、タンパク質、核酸、炭化水素、または脂質)の処理、切断または消費により産生されたいかなる化合物のような、代謝過程のいかなる化学的または生化学的産物をも含む。代謝物は、屈折率分光法 (RI)、紫外分光法 (UV)、蛍光分析、放射化学的分析、近赤外分光分析 (Near-IR)、核磁気共鳴分光分析 (NMR)、光散乱分析 (LS)、質量分析、熱分解 質量分析、比濁法、ラマン散乱分光分析、質量分析と組み合わせたガスクロマトグラフィー、質量分析と組み合わせた液体クロマトグラフィー、質量分析と組み合わせたマトリクス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間 (MALDI-TOF)、質量分析と組み合わせたイオンスプレー分光分析、キャピラリー電気泳動法、NMRおよびIR検出を含む、当業者に公知の様々なやり方で検出できる。出典明示によりその全体が組み込まれる国際公開第04/056456号および国際公開第04/088309号を参照せよ。これに関して、他のバイオマーカー分析物は、上記検出法、またはその他の当業者に公知の方法を用いて測定できる。例えば、循環カルシウムイオン (Ca2+)は、Fluoシリーズ、Fura-2A、Rhod-2などのような蛍光染料を用いてサンプルにおいて検出できる。他のバイオマーカー代謝物は、同様に、そのような代謝物を検出するように特異的に設計され、または、仕立てられた試薬を用いて検出できる。
【0109】
いくつかの具体例において、バイオマーカーは、対象サンプルを、試薬および分析物の生成複合体と接触させ、次いで、前記複合体を検出することによって検出する。「試薬」の例示は、限定されないが、核酸プライマーおよび抗体を含む。
【0110】
本教示のいくつかの具体例において、抗体結合アッセイを用いてバイオマーカーを検出する;例えば、対象からのサンプルを当該バイオマーカー分析物に結合する抗体試薬に接触させ、前記抗体試薬および分析物を含む反応生成物(または複合体)を生成し、その複合体の存在(もしくは不在)または量を決定する。バイオマーカー分析物の検出に有用な抗体試薬は、上で議論したように、モノクローナル、ポリクローナル、キメラ性、リコンビナント、または前記したもののフラグメントであり得、当該反応生成物を検出するステップはいずれかの適切な免疫アッセイで実行できる。前記対象からのサンプルは、典型的に、上記した生体体液であり、前記した方法を行うのに用いたその生体体液と同一サンプルであり得る。
【0111】
本教示に従って実施される免疫アッセイは、均一アッセイまたは不均一アッセイであり得る。本教示に従って実施される免疫アッセイは、多重化できる。均一アッセイにおいて、免疫反応は、特異的抗体(例えば、抗-バイオマーカータンパク質抗体)、標識分析物、および目的のサンプルを含む。その標識はシグナルを発生し、前記標識に由来するシグナルは、前記標識分析物の前記抗体への結合の際、直接または間接的に変更される。結合の免疫反応および結合程度の検出は、いずれも、均一溶液中で実施できる。採用できる免疫化学標識は、限定されないが、フリーラジカル、ラジオアイソトープ、蛍光染料、酵素、バクテリオファージ、およびコエンザイムを含む。免疫アッセイは競合アッセイを含む。
【0112】
不均一アッセイ法において、試薬は、目的のサンプル、抗体、および検出可能シグナルを発生させる試薬であり得る。上記のサンプルを使用できる。前記抗体は、ビーズ(プロテインAおよびプロテインGアガロースビーズなど)、プレートまたはスライドのような支持体に固定し、液相中で、バイオマーカーを含有する疑いのあるサンプルと接触させることができる。前記サポートは液相から分離され、サポート相または液相のいずれかを、シグナルを検出する分野公知の方法を用いて調査する。前記シグナルは、サンプル中の分析物の存在に関連する。検出可能シグナルを発生させる方法は、限定されないが、放射標識、蛍光標識、または酵素標識の使用である。例えば、検出される抗原が第2の結合部位を含有するとき、その部位に結合する抗体を検出可能(シグナル発生)基に結合し、分離工程前に液相反応溶液に添加する。固体サポート上の検出可能基の存在は、試験サンプル中のバイオマーカーの存在を示す。適当な免疫アッセイの例示は、限定されないが、オリゴヌクレオチド、免疫ブロッティング、免疫沈降法、免疫蛍光法、化学ルミネッセンス法、電気化学ルミネッセンス法 (ECL)、および/または酵素結合免疫アッセイ (ELISA)を含む。
【0113】
当業者は、数々の特異的免疫アッセイフォーマットおよび、ここに開示する前記方法を実施するのに有用であり得るその変形になれている。例えば、E. Maggio, Enzyme-Immunoassay (1980), CRC Press, Inc., Boca Raton, FLを参照せよ。“Novel Methods for Modulating Ligand-Receptor Interactions and their Application”と題する、C. Skoldらに対する米国特許第4,727,022号;“Immunoassay of Antigens”と題する、GC Forrestらに対する米国特許第4,659,678号;“Immunometric Assays Using Monoclonal Antibodies”と題する、GS Davidらに対する米国特許第4,376,110号;“Macromolecular Environment Control in Specific Receptor Assays”と題する、D. Litmanらに対する米国特許第4,275,149号;“Reagents and Method Employing Channeling”と題する、E. Maggioらに対する米国特許第4,233,402号;および“Heterogenous Specific Binding Assay Employing a Coenzyme as Label”と題する、R. Boguslaskiらに対する米国特許第4,230,797号も参照せよ。
【0114】
抗体は、受動的結合のような公知技術に従って、診断アッセイに適した固体サポート(例えば、プロテインAまたはプロテインGアガロース、ラテックスまたはポリスチレンのような材料で作成されたマイクロスフェアー、プレート、スライドまたはウェルのようなビーズ)に結合させることができる。ここに記載されたような抗体は、公知技術に従って、放射標識(例えば、35S、125I、131I)、酵素標識(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ)、および蛍光標識(例えば、フルオレッセイン、Alexa、緑色蛍光タンパク質、ローダミン)のような検出可能な標識または基に結合する。
【0115】
抗体は、バイオマーカーの翻訳後修飾を検出するのにも有用である。翻訳後修飾の例は、限定されないが、チロシンリン酸化、トレオニンリン酸化、セリンリン酸化、シトルリン化およびグリコシル化(例えば、O-GlcNAc)を含む。そのような抗体は、目的のタンパク質または(複数の)タンパク質においてリン酸化アミノ酸を特異的に検出し、ここに記載する免疫ブロッティング、免疫蛍光法、およびELISAアッセイに使用できる。これらの抗体は、当業者に周知であり、商業的に入手可能である。翻訳後修飾は、リフレクタマトリクス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間質量分析 (MALDI-TOF)において準安定イオンを使用しても検出できる。U. Wirth et al., Proteomics 2002, 2(10):1445-1451を参照せよ。
【0116】
セラピー計画
本発明は、ここに記載するバイオマーカーの発現における差を決定した後、セラピー計画を取りやめることを含む、セラピー計画を推奨する方法を提供する。バイオマーカーの発現レベルから導出されるスコアを一定期間測定することは、臨床医に、対象の生物学的状態の動態画像を提供し得る。本教示のこれらの具体例は、かくして、対象特異的生体情報を提供し、それは、セラピー決定の情報となり、セラピー反応モニタリングを容易にし、疾患活性のより良い管理、寛解を達成する対象の比率の増大をもたらすであろう。
【0117】
自己免疫障害に対する治療方針は、RAのようないくつかの自己免疫障害が、突発するか、または、寛解に移行するかの関連症状の多様な並びで対象群に付与される分類であるとの事実によって混乱する。これは、ある種のRAのサブタイプが特定の細胞型またはサイトカインによって決定されることを示唆している。そのような結果、治療に最適であったと証明された単一セラピーはない。RAに利用可能なセラピーオプション数が増加していることを考慮すると、治療転帰の免疫学的予後因子によって方向付けられた、別個に仕立てた治療の必要性が必要不可欠である。本教示の種々の具体例において、バイオマーカー導出アルゴリズムを用いて、RA対象におけるセラピー反応を定量化できる。早期RA (eRA)の患者に関して、メトトレキサート (MTX)が一次治療として時々推奨され、非反応者では、従来 非生物学的疾患修飾抗リウマチ薬セラピー(3剤併用DMARDセラピー)の追加および生物学的(抗-TNF)セラピーの追加の双方が、データによって支持される。これらのオプションのひとつまたは他に反応する高い可能性を持つ患者の同定は、この発明の最初の目的である、より個別化した医薬およびセラピーの増大した有効性をもたらすであろう。
【0118】
いくつかの具体例において、自己免疫疾患患者、特に、首尾良くセラピーの中止または中断できるRA患者の予想は、MBDAスコアに基づく。いくつかの具体例において、ここに記載するベースラインで高度MBDAスコアは、セラピーの中止後のある期間内での疾患進行の独立した予測因子であり得る。いくつかの具体例において、ここに記載するベースラインで中度MBDAスコアは、セラピーの中止後のある期間内での疾患進行の独立した予測因子であり得る。いくつかの具体例において、ここに記載するベースラインで低度MBDAスコアは、セラピーの中止後のある期間内での疾患進行、または寛解の予測因子であり得る。
【0119】
治療についての参照標準
多くの具体例において、サンプル中の1以上の分析物バイオマーカーの平均レベルまたは分析物バイオマーカーの特定のパネルのレベルは、治療決定を方向付けるため、参照標準(「参照標準」または「参照レベル」)と比較される。1以上のバイオマーカーの発現レベルは、スコアと結びつけられ、それは疾患活性を表し得る。ここに開示されるいずれかの具体例に用いられる参照標準は、1以上の分析物バイオマーカーのレベルの平均的な値 (average)、平均値 (mean)、または中央値 (median)または対照集団中の分析物バイオマーカーの特定のパネルのレベルを含む。参照標準は、早期時点の同一対象をさらに含むことができる。例えば、参照標準は第1の時点を含み、1以上の分析物バイオマーカーのレベルは、第2、第3、第4、第5、第6時点などで調査できる。いかなる特定時点よりも早期のいかなる時点も、参照標準とみなせる。参照標準は、さらに、1以上の分析物バイオマーカーの平均レベルからの標準偏差または分析物バイオマーカーの特定パネルのレベルのような、対照集団のカットオフ値もしくはいずれかの他の統計学的属性、または、同一対象の早期時点を含んでもよい。いくつかの具体例において、前記対照集団は、健康な個体またはいかなるセラピーの施術前の同一対象を含むことができる。
【0120】
いくつかの具体例において、スコアは参照時点から獲得することができ、異なるスコアは後の時点で獲得することができる。第1の時点は、初期セラピー計画が開始されたときであり得る。第1の時点は、最初の免疫アッセイが実行されたときでもあり得る。時点は、時、日、月、年などであり得る。いくつかの具体例において、時点は1ヶ月である。いくつかの具体例において、時点は2ヶ月である。いくつかの具体例において、時点は3ヶ月である。いくつかの具体例において、時点は4ヶ月である。いくつかの具体例において、時点は5ヶ月である。いくつかの具体例において、時点は6ヶ月である。いくつかの具体例において、時点は7ヶ月である。いくつかの具体例において、時点は8ヶ月である。いくつかの具体例において、時点は9ヶ月である。いくつかの具体例において、時点は10ヶ月である。いくつかの具体例において、時点は11ヶ月である。いくつかの具体例において、時点は12ヶ月である。は1ヶ月である。いくつかの具体例において、時点は2年である。いくつかの具体例において、時点は3年である。いくつかの具体例において、時点は4年である。いくつかの具体例において、時点は5年である。いくつかの具体例において、時点は10年である。
【0121】
前記スコアの差は、疾患活性の増大と解釈される。例えば、低めのスコアは、低めのレベルの疾患活性、または寛解を表し得る。これらの状況において、参照スコア、または第1のスコアよりも低いスコアを有する第2のスコアは、前記対象の疾患活性が前記第1の時点と第2の時点との間で低下した(改善した)ことまたは寛解にあることを意味する。あるいは、高めのスコアがより低いレベルの疾患活性、または寛解を示し得る。これらの状況において、参照スコア、または第1のスコアよりも高いスコアを有する第2のスコアも、前記対象の疾患活性が前記第1の時点と第2の時点との間で改善されたことまたは寛解にあることを意味する。
【0122】
前記スコアの差は、疾患活性の増大として解釈することもできる。例えば、低めのスコアは、高めのレベルの疾患活性、または突発を意味し得る。これらの状況において、参照スコア、または第1のスコアよりも低いスコアを有する第2のスコアは、前記対象の疾患活性が前記第1の時点と第2の時点との間で上昇した(悪化した)ことを意味する。あるいは、高めのスコアがより高いレベルの疾患活性、または突発を示し得る。これらの状況において、参照スコア、または第1のスコアよりも高いスコアを有する第2のスコアも、前記対象の疾患活性が前記第1の時点と第2の時点との間で悪化したことまたは突発していることを意味する。
【0123】
前記差は変化し得る。例えば、前記スコアの差が疾患活性の低下として解釈されるとき、大差は、中度の差または低度の差よりも疾患活性の大きな低下を意味する。あるいは、前記スコアの差が疾患活性の上昇として解釈されるとき、大差は、中度の差または程度の差よりも疾患活性の大きな上昇を意味する。
【0124】
治療のための参照セラピー
いくつかの具体例において、患者は、スコアの差に基づき、参照セラピーよりも高いまたは低い積極性で治療される。参照セラピーは、自己免疫障害の標準医療であるいずれかのセラピーである。標準医療は経時的または地理的に変化し得、当業者は、関連医学文献を参考とすることで適切な標準医療を、容易に決定することができる。
【0125】
いくつかの具体例において、標準セラピーよりも高い積極性のセラピーは、標準セラピーよりも早期に治療を開始することを含む。いくつかの具体例において、標準セラピーよりも高い積極性のセラピーは、標準セラピーよりもさらなる治療を施すことを含む。いくつかの具体例において、標準セラピーよりも高い積極性のセラピーは、標準セラピーと比較して加速スケジュールで治療することを含む。いくつかの具体例において、標準セラピーよりも高い積極性のセラピーは、標準セラピーにはふさわしくないさらなる治療を施すことを含む。
【0126】
いくつかの具体例において、標準セラピーよりも低い積極性のセラピーは、標準セラピーに対して治療を遅延させることを含む。いくつかの具体例において、標準セラピーよりも低い積極性のセラピーは、標準セラピーよりも少ない治療を施すことを含む。いくつかの具体例において、標準セラピーよりも低い積極性のセラピーは、標準セラピーと比較した減速したスケジュールで治療することを含む。いくつかの具体例において、標準セラピーよりも低い積極性のセラピーは、治療を施さないことを含む。
【0127】
自己免疫障害の治療
ひとつの具体例において、開業医は、スコアが低度であれば、セラピー計画を中断する。ひとつの具体例において、開業医は、前記スコアが高ければ、セラピー計画を変更しない。ひとつの具体例において、開業医は、差スコア間の比較に基づき、または、初期予測スコアに基づき、セラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、異なる薬剤を選択し、投与することによってセラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、薬剤の異なる組合せを選択し、投与することによってセラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、薬剤用量を調節することによってセラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、投薬スケジュールを調節することによってセラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、セラピーの長さを調節することによってセラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、異なる薬剤組合せを選択し、投与し、かつ、薬剤用量を調節することによってセラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、異なる薬剤組合せを選択し、投与し、かつ、投薬スケジュールを調節することによってセラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、異なる薬剤組合せを選択し、投与し、かつ、セラピーの長さを調節することによってセラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、薬剤用量および投薬スケジュールを調節することによってセラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、薬剤用量およびセラピーの長さを調節することによってセラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、投薬スケジュールおよびセラピーの長さを調節することによってセラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、異なる薬剤を選択し、投与し、薬剤用量を調節し、かつ、投薬スケジュールを調節することによってセラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、異なる薬剤を選択し、投与し、薬剤用量を調節し、かつ、セラピーの長さを調節することによってセラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、異なる薬剤を選択し、投与し、投薬スケジュールを調節し、かつ、セラピーの長さを調節することによってセラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、薬剤用量を調節し、投薬スケジュールを調節し、かつ、セラピーの長さを調節することによってセラピーを調節する。ひとつの具体例において、開業医は、異なる薬剤を選択し、投与し、薬剤用量を調節し、投薬スケジュールを調節し、かつ、セラピーの長さを調節することによってセラピーを調節する。
【0128】
ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、セラピー計画に変化がないことを含む。ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、治療を遅延することを含む。ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、薬効のより低い薬剤を選択し、投与することを含む。ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、頻繁な治療を低減することを含む。ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、セラピーの長さを短縮することを含む。ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、薬効のより低い薬剤を選択し、投与し、かつ、薬剤用量を減少することを含む。ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、薬効のより低い薬剤を選択し、投与し、かつ、投薬スケジュールを減速することを含む。ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、薬効のより低い薬剤を選択し、投与し、かつ、セラピーの長さを短縮することを含む。ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、薬剤用量を減少し、かつ、投薬スケジュールを減速することを含む。ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、薬剤用量を減少し、かつ、セラピーの長さを短縮することを含む。ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、投薬スケジュールを減速し、かつ、セラピーの長さを短縮することを含む。ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、薬効のより低い薬剤を選択し、投与し、薬剤用量を減少し、かつ、投薬スケジュールを減速することを含む。ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、薬効のより低い薬剤を選択し、投与し、薬剤用量を減少し、かつ、セラピーの長さを短縮することを含む。ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、薬効のより低い薬剤を選択し、投与し、投薬スケジュールを減速し、かつ、セラピーの長さを短縮することを含む。ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、薬剤用量を減少し、投薬スケジュールを減速し、かつ、セラピーの長さを短縮することを含む。ひとつの具体例において、低い積極性のセラピーは、薬効のより低い薬剤を選択し、投与し、薬剤用量を減少する、投薬スケジュールを減速し、かつ、セラピーの長さを短縮することを含む。いくつかの具体例において、低い積極性のセラピーは、非-薬剤に基づくセラピーのみを施すことを含む。
【0129】
本願の別の局面において、治療は、参照セラピーよりも高い積極性のセラピーを含む。ひとつの具体例において、高い積極性のセラピーは、セラピーの長さを延長することを含む。ひとつの具体例において、高い積極性のセラピーは、投薬スケジュールの頻度を増加することを含む。ひとつの具体例において、高い積極性のセラピーは、薬効のより高い薬剤を選択し、投与し、かつ、薬剤用量を増加することを含む。ひとつの具体例において、高い積極性のセラピーは、薬効のより高い薬剤を選択し、投与し、かつ、投薬スケジュールを加速することを含む。ひとつの具体例において、高い積極性のセラピーは、薬効のより高い薬剤を選択し、投与し、かつ、セラピーの長さを延長することを含む。ひとつの具体例において、高い積極性のセラピーは、薬剤用量を増加し、かつ、投薬スケジュールを加速することを含む。ひとつの具体例において、高い積極性のセラピーは、薬剤用量を増加し、かつ、セラピーの長さを延長することを含む。ひとつの具体例において、高い積極性のセラピーは、投薬スケジュールを加速し、かつ、セラピーの長さを延長することを含む。ひとつの具体例において、高い積極性のセラピーは、薬効のより高い薬剤を選択し、投与し、薬剤用量を増加し、かつ、投薬スケジュールを加速することを含む。ひとつの具体例において、高い積極性のセラピーは、薬効のより高い薬剤を選択し、投与し、薬剤用量を増加し、かつ、セラピーの長さを延長することを含む。ひとつの具体例において、高い積極性のセラピーは、薬効のより高い薬剤を選択し、投与し、投薬スケジュールを加速し、かつ、セラピーの長さを延長することを含む。ひとつの具体例において、高い積極性のセラピーは、薬剤用量を増加し、投薬スケジュールを加速し、かつ、セラピーの長さを延長することを含む。ひとつの具体例において、高い積極性のセラピーは、薬効のより高い薬剤を選択し、投与し、薬剤用量を増加し、投薬スケジュールを加速し、かつ、セラピーの長さを延長することを含む。いくつかの具体例において、高い積極性のセラピーは、薬剤に基づくセラピー、非-薬剤に基づくセラピー、またはいくつかのクラスの薬剤の組合せに基づくセラピーの組合せを施すことを含む。
【0130】
セラピーは、従来のものまたはバイオ製剤であり得る。従来から通常考慮される疾患修飾性抗リウマチ薬 (DMARD)のようなセラピーの例示は、限定されないが、MTX、アザチオプリン (AZA)、ブシラミン (BUC)、クロロキン (CQ)、シクロスポリン (CSA、またはサイクロスポリン、またはサイクロスポリン)、ドキシサイクリン (DOXY)、ヒドロキシクロロキン (HCQ)、イントラマスキュラーゴールド (IM ゴールド)、レフルノミド (LEF)、レボフロキサンシン (LEV)、およびスルファサラジン (SSZ)を含む。他の従来セラピーの例示は、限定されないが、フォリン酸、D-ペンシラミン、金オーラノフィン、金オーロチオグルコース、金チオリンゴ酸、シクロホスファミド、およびクロラムブシルを含む。バイオ薬物の例示は、限定されないが、インフリキシマブ、アダリブマブ、エタネルセプトおよびゴリムマブのような、腫瘍壊死因子 (TNF)-アルファ分子およびTNF阻害剤を標的するバイオ剤を含み得る。他のクラスのバイオ薬物は、アナキンラのようなIL1阻害剤、アバタセプトのようなT-細胞調節剤、リツキシマブのようなB-細胞調節剤、およびトシリズマブのようなIL6阻害剤を含む。
【0131】
特定の対象に適したさらなるセラピー薬または薬剤を同定するために、前記対象からの試験サンプルも、セラピー剤または薬剤に暴露して、1以上のバイオマーカーのレベルを決定する。1以上のバイオマーカーのレベルは、治療、すなわち、セラピー剤または薬剤への暴露の前後に前記対象に由来するサンプルと比較し、または、当該治療すなわち暴露の結果、炎症性疾患状況もしくは活性(例えば、臨床パラメータまたは伝統的研究室危険因子)に改善を示した1以上の対象に由来するサンプルと比較することができる。
【0132】
本教示の臨床評価
本教示のいくつかの具体例において、MBDAスコアを集団、エンドポイントまたは臨床評価、および/または意図する使用に向けて仕立てる。例えば、MBDAスコアを用いて、一次予防および診断のため、および、二次予防および管理のため、対象を評価できる。一次評価に関して、MBDAスコアは、将来の状態または疾患後遺症に対する予測および重症度分類のため、炎症性疾患の診断のため、疾患活性の予後および変化速度のため、ならびに、将来の診断およびセラピー計画の指示のために用いることができる。二次予防および臨床管理に関して、MBDAスコアは、予後および重症度分類のために用いることができる。MBDAスコアは、介入または治療を延期するかどうか、リスクある患者に対して予防的検診を勧めるかどうか、受診頻度の増加を勧めるかどうか、検査の増加を勧めるかどうか、および、介入を勧めるかどうかの決定などの臨床決定のサポートに使用できる。MBDAスコアは、セラピー薬選択、治療に対する反応の決定、治療の調節および施術、施術中の治療効果のモニタリング、セラピー中止のモニタリング、およびセラピー計画の健康の指示にも有用である。
【0133】
本教示のいくつかの具体例において、MBDAスコアを用いて、炎症性疾患の診断、および、炎症性疾患の重篤性の決定を支援できる。MBDAスコアは、例えば、RAにおける介入の将来の状況を決定し、治療の有無で将来の関節びらんの予後の決定にも使用できる。本教示のある種の具体例は、特定の治療または治療の組合せに向けて仕立てることができる。X線は、現在、疾患進行の評価のゴールドスタンダードであると考えられるが、能力がかぎられている。なぜならば、X線所見が正常を保っている、または、わずかに非特異的な変化を示すのみであるが、対象は長期間の活性症候性疾患を有しているかもしれないからである。逆に、静止期疾患(不顕性疾患)であると思われる対象は、時間をかけてゆっくりと進行することがあり、著しいX線所見上の進行が発生するまで臨床的には検出されない。疾患進行の可能性が高い対象が、予め同定できれば、早期の積極的治療の機会がさらに有効な疾患転帰をもたらすであろう。M. Weinblatt et al., N. Engl. J. Med. 1999, 340:253-259を参照せよ。
【0134】
MBDAスコアを調節するに使用できる臨床変数は、例えば、社会学的性別/生物学的性別、喫煙状況、年齢、種族/民族性、疾患期間、拡張期および収縮期血圧、安静時心拍数、身長、体重、脂肪過多、ボディマス指数、血清レプチン、家族履歴、CCP状況(すなわち、対象が、抗-CCP抗体に対して陽性か陰性か)、CCP力価、RF状況、RF力価、ESR、CRP力価、閉経状態、ならびに喫煙者/非-喫煙者であるか、を含む。
【0135】
本教示のいくつかの具体例において、MBDAスコアにおける最小臨床的重要変化は、受信者動作特性 (ROC)分析によって決定できる。MBDAスコアにおける変化の最適閾値は、ここに記載される前記臨床評価のいずれか、例えば、限定されないが、DAS28-ESRまたはDAS28-CRPの臨床的改善に関連し得る。
【0136】
疾患活性試験を実行するためのシステム
本教示の種々の具体例による疾患活性を測定する試験は、免疫学的または核酸検出アッセイからの結果のような、試験結果を得るために典型的に用いられる様々なシステム上で実施できる。そのようなシステムは、サンプル準備を自動化し、バイオマーカーレベルを測定するなどの試験を自動化し、複数サンプルの試験を容易にし、および/または、プログラム化して、各サンプルについて同一試験または異なる試験でアッセイするモジュールを含んでいてもよい。いくつかの具体例において、試験システムは、サンプル準備モジュール、臨床化学モジュール、および免疫アッセイモジュールの1以上をワンプラットフォームで含む。試験システムは、典型的に、ハードウェア上に存在するデータベースに接続し、利用することによって、結果を収集し、記憶し、追跡するためのモジュールも含むように設計される。これらモジュールの例示は、ハードドライブ、フラッシュメモリー、および磁気テープのような、分野周知の物理的および電気的データ記憶装置を含む。試験システムは、通常、結果を報告し、および/または可視化するモジュールも含む。報告モジュールのいくつかの例示は、可視ディスプレイ、すなわち、データベース、プリンターなどに連結するグラフィカルユーザーインターフェースを含む。以下の機械読取り可能記憶媒体の節を参照せよ。
【0137】
本発明のひとつの具体例は、対象の前記炎症性疾患活性を決定するシステムを含む。いくつかの具体例において、前記システムは、上記のように、公式をパネルにおけるバイオマーカーの測定レベルを含む入力に適用し、スコアをアウトプットするモジュールを含む。いくつかの具体例において、測定されたバイオマーカーレベルが試験結果であり、それは前記公式を適用するためにプログラムされたコンピュータへの入力として機能する。前記システムは、アウトプットスコアを導出するために、他の入力を追加で、または、バイオマーカー結果;例えば、セラピー計画、TJC、SJC、朝のこわばり、3以上の関節領域の関節炎、手関節の関節炎、対称性関節炎、リウマチ結節、X線所見上の変化およびその他の撮像、社会学的性別/生物学的性別、年齢、種族/民族性、疾患期間、身長、体重、ボディマス指数、家族履歴、CCP状況、RF状況、ESR、喫煙者/非-喫煙者などのような1以上の臨床パラメータと組合せ含むことができる。いくつかの具体例において、前記システムは、公式をバイオマーカーレベル入力に適用し、次いで、他の臨床パラメータのような他の入力とともに分析できる疾患活性スコアをアウトプットすることができる。他の具体例において、前記システムは、公式を、バイオマーカーおよび非-バイオマーカー入力(臨床パラメータなど)に共に適用し、複合アウトプット疾患活性インデクスを報告するように設計される。
【0138】
現在、本教示の種々の具体例の実施に、多くの試験を用いることができる。例えば、統合免疫化学システムのARCHITECTシリーズ-ハイスループット、自動化、臨床化学アナライザー(ARCHITECTはAbbott Laboratories, Abbott Park, Ill. 60064の登録商標である)。C. Wilson et al., “Clinical Chemistry Analyzer Sub-System Level Performance,” American Association for Clinical Chemistry Annual Meeting, Chicago, Ill., Jul. 23-27, 2006; および, HJ Kisner, “Product development: the making of the Abbott ARCHITECT,” Clin. Lab. Manage. Rev. 1997 Nov.-Dec., 11(6):419-21; A. Ognibene et al., “A new modular chemiluminescence immunoassay analyzer evaluated,” Clin. Chem. Lab. Med. 2000 March, 38(3):251-60; JW Park et al., “Three-year experience in using total laboratory automation system,” Southeast Asian J. Trop. Med. Public Health 2002, 33 Suppl 2:68-73; D. Pauli et al., “The Abbott Architect c8000: analytical performance and productivity characteristics of a new analyzer applied to general chemistry testing,” Clin. Lab. 2005, 51(1-2):31-41を参照せよ。
【0139】
本教示の具体例に有用なもうひとつの試験システムは、VITROSシステム (VITROSはJohnson & Johnson Corp., New Brunswick, NJの登録商標である)である-研究室および診療所のために血液その他の体液から試験結果を生成するために用いられる化学分析の装置である。もうひとつの試験システムは、DIMENSIONシステム(DIMENSIONはDade Behring Inc., Deerfield Ill.の登録商標である)である-前記アナライザーを操作し、前記アナライザーによって発生したデータを分析するコンピュータのソフトウェアおよびハードウェアを含む、対英を分析するシステムである。
【0140】
本教示の種々の具体例に要求される試験、例えば、バイオマーカーレベルを測定することは、臨床検査室改善法(42 U.S.C. Section 263(a))で承認されたもののような研究所によって、または、臨床目的のためのサンプルを分析する研究所の運転を統治する、いずれかの他の連邦法または州法、または、いずれかの、国家、州または郡の法律で承認された研究所によって実行され得る。そのような研究所は、例えば、Laboratory Corporation of America, 358 South Main Street, Burlington, NC 27215 (本社); Quest Diagnostics, 3 Giralda Farms, Madison, NJ 07940 (本社);その他の参照および臨床化学研究所を含む。
【0141】
キット
本教示の他の具体例は、本教示のアッセイのいずれかを実行するためのキットの形態で一緒にパッケージされたバイオマーカー検出試薬を含む。ある種の具体例において、前記キットは、バイオマーカー核酸との相同性および/または相補性に基づき、1以上のバイオマーカー核酸を特異的に同定するオリゴヌクレオチドを含む。前記オリゴヌクレオチド配列は前記バイオマーカー核酸のフラグメントに対応することができる。例えば、前記オリゴヌクレオチドは、長さにおいて、200、200、150、100、50、25、10ヌクレオチドより長いか、10ヌクレオチドより短い。他の具体例において、前記キットは、前記バイオマーカー核酸にコードされるタンパク質に対する抗体を含む。本教示の前記キットは、アプタマーも含み得る。前記キットは、個別容器に、核酸または抗体(固体マトリクスに結合されるか、または、マトリクスに結合するための試薬と別個にパッケージされるかのいずれかの前記抗体)、対照配合物(陽性および/もしくは陰性)、および/または、限定されないが、フルオレッセイン、緑色蛍光タンパク質、ローダミン、シアニン染料、Alexa染料、ルシフェラーゼ、および放射標識のような、検出可能標識などを含有し得る。そのアッセイを実行するためのインストラクションは、任意でMBDAスコアを生成するためのインストラクションを含み、前記キットに含まれ得る;例えば、文書、テープ、VCR、またはCD-ROMである。前記アッセイは、例えば、分野公知のノーザンハイブリダイゼーションまたはサンドイッチELISAの形態であり得る。
【0142】
本教示のいくつかの具体例において、バイオマーカー検出試薬は、多孔質ストリップのような固体マトリクス上に固定されて、少なくともひとつのバイオマーカー検出部位を形成する。いくつかの具体例において、前記多孔質ストリップの測定または検出領域は、核酸を含有する複数の部位を含む。いくつかの具体例において、試験ストリップは、陰性および/または陽性の対照のための部位も含有する。あるいは、対照部位は、試験ストリップから離れたストリップに配置できる。所望により、異なる検出部位は異なる量の固定核酸を含有し得る。例えば、最初の検出部位に高い量、次の部位に少ない量。試験サンプルの添加により、検出可能シグナルを表示する部位の数が、サンプル中に存在するバイオマーカーの量を定量表示する。検出部位は、いずれか適当な検出可能な形状に構成することができ、例えば、棒状または試験ストリップの幅に広がるドットの形状であり得る。
【0143】
本教示の他の具体例において、前記キットは1以上の核酸配列を含む核酸基板アレイを含有し得る。前記アレイ上の核酸は、特異的に、MBDAマーカーを表す1以上の核酸配列を同定する。様々な具体例において、MBDAマーカーによって表される1以上のこれらの配列の発現は、アレイに結合することによって同定できる。いくつかの具体例において、前記基板アレイは、「チップ」として知られるような固体基板上にあり得る。例えば、米国特許第5,744,305号を参照せよ。いくつかの具体例において、基板アレイは溶液アレイであり得る;例えば、xMAP (Luminex, Austin, TX), Cyvera (Illumina, San Diego, CA), RayBio Antibody Arrays (RayBiotech, Inc., Norcross, GA), CellCard (Vitra Bioscience, Mountain View, CA) and Quantum Dots' Mosaic (Invitrogen, Carlsbad, CA)を参照せよ。
【0144】
機械読取り可能記憶媒体
機械読取り可能記憶媒体は、例えば、機械読取り可能データまたはデータアレイでコートされるデータ記憶材料を含み得る。当該データを用いるためのインストラクションでプロブラム化された期間を用いる場合、前記データおよび機械読取り可能記憶媒体は、様々な目的で使用することができる。そのような目的は、制限なく、経時的な対象または集団の前記炎症性疾患活性、または、炎症性疾患治療に反応する疾患活性、または、炎症性疾患に対するドラッグデリバリーなどに関する、記憶、アクセスおよび操作を含む。本教示のバイオマーカーの測定を含むデータ、および/またはこれらのバイオマーカーからの患活性もしくは疾患状況の査定は、プロセッサー、データ記憶システム、1以上の入力デバイス、1以上の出力デバイスなどを含む、プロブラムかコンピュータ上で実行するコンピュータプログラムで実施され得る。プログラムコードを入力データに適用して、ここに記載される機能を実行し、出力情報を発生させる。この出力情報を、次いで、分野周知の方法に従って、1以上の出力デバイスに適用できる。コンピュータは、例えば、従来設計のパーソナルコンピュータ、マイクロコンピュータ、またはワークステーションであり得る。
【0145】
コンピュータプログラムは、例えば、
図2に図示するコンピュータシステムのようなコンピュータシステムと通信するための手続き型またはオブジェクト指向プログラミング高級言語で実行できる。プログラムは、機械またはアッセンブリー言語においても実行できる。プログラミング言語は、コンパイルまたはインタープリータ言語でもあり得る。各コンピュータプログラムは、ROM、磁気ディスクなどの記憶媒体またはデバイスに記憶することができ、前記記憶媒体またはデバイスがコンピュータによって読み取られ、記載された手順を実行すると、コンピュータを構成し、操作するためのプログラム化コンピュータによって読取可能であり得る。本教示のいずれの健康関連データ管理システムは、コンピュータ読取り可能記憶媒体として実行され、コンピュータプログラムで構成され、記憶媒体は、ここに記載したように、コンピュータに特定様式で種々の機能を実行させると考えられる。
【0146】
ここに開示されたバイオマーカーを用いて、炎症性疾患を有する対象から採取した「対象バイオマーカープロファイル」を生成することができる。前記対象バイオマーカープロファイルを、次いで、炎症性疾患の対象を診断するか同定するために、参照バイオマーカープロファイルと比較し、炎症性疾患の進行または進行の速度をモニターするか、炎症性疾患の治療の有効性をモニターすることができる。本教示の具体例の前記バイオマーカープロファイル、参照および対象は、CD-ROMまたはUSBフラッシュ媒体などによって読み取り可能なアナログテープのような機械読取り可能媒体に含有され得る。そのような機械読取り可能媒体は、臨床パラメータおよび臨床評価の測定のようなさらなる試験結果も含有し得る。機械読取り可能媒体は、対象情報;例えば、前記対象の病歴または家族歴も含む。機械読取り可能媒体は、ここに記載したもののように、他の疾患活性アルゴリズムおよび計算されたスコアまたはインデクスに関連する情報も含有する。
【実施例0147】
本教示の局面は、以下の実施例に照らしてさらに理解することができるが、いかなるようにも、本教示の葉にを制限するものと捉えるべきではない。
【0148】
本教示の実施は、特段の記載がなければ、当該分野内で、従来方法であるタンパク質化学、生化学、リコンビナントDNA技術および薬理学を採用する。そのような技術は、文献に完全に説明されている。例えば、T. Creighton, Proteins: Structures and Molecular Properties, 1993, W. Freeman and Co.; A. Lehninger, Biochemistry, Worth Publishers, Inc. (current addition); J. Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd Edition, 1989; Methods In Enzymology, S. Colowick and N. Kaplan, eds., Academic Press, Inc.; Remington's Pharmaceutical Sciences, 18th Edition, 1990, Mack Publishing Company, Easton, PA; Carey and Sundberg, Advanced Organic Chemistry, Vols. A and B, 3rd Edition, 1992, Plenum Pressを参照せよ。
【0149】
本教示の実施は、特段の記載がなければ、当該分野内で、従来の方法である統計分析を採用する。そのような技術は、文献に完全に説明されている。例えば、J. Little and D. Rubin, Statistical Analysis with Missing Data, 2nd Edition 2002, John Wiley and Sons, Inc., NJ; M. Pepe, The Statistical Evaluation of Medical Tests for Classification and Prediction (Oxford Statistical Science Series) 2003, Oxford University Press, Oxford, UK; X. Zhoue et al., Statistical Methods in Diagnostic Medicine 2002, John Wiley and Sons, Inc., NJ; T. Hastie et. al, The Elements of Statistical Learning: Data Mining, Inference, and Prediction, Second Edition 2009, Springer, NY; W. Cooley and P. Lohnes, Multivariate procedures for the behavioral science 1962, John Wiley and Sons, Inc. NY; E. Jackson, A User’s Guide to Principal Components 2003, John Wiley and Sons, Inc., NYを参照せよ。
【0150】
実施例1:MBDAスコアの調節
この実施例は、X線所見上損傷のリスクの改善された予測子として年齢、生物学的性別、および脂肪過多を説明する、関節リウマチ (RA)に対する調節されたマルチバイオマーカー疾患活性 (MBDA)スコアの開発を実証する。
【0151】
背景
MBDAスコアは、12の血清タンパク質バイオマーカーを定量して、関節リウマチ (RA)の成人患者における疾患活性を評価する検証されたツールである(Curtis JR, et al., Arthritis Care Res. 64:1794-803 (2012))。前記12のMBDA血清タンパク質バイオマーカーは、VCAM-1、EGF、VEGF-A、IL-6、TNFRI、MMP-1、MMP-3、YKL-40、レプチン、レジスチン、SAA、およびCRPである。これら12のバイオマーカーの誘導は、出典明示によりその全体が組み込まれる米国特許第9,200,324号に完全に記載されている。
【0152】
この実施例は年齢、社会学的性別、および全身脂肪の影響を考慮した調節MBDAスコアの開発と検証を実証する。ボディマス指数 (BMI)または血清レプチンを全身脂肪の代用として用いた。
【0153】
方法
MBDAスコアを調節して、開業医が規定医療の一部としてMBDA 試験を指示した325,781人のRA患者由来のデータを用いて、年齢および生物学的性別を考慮した。匿名化した血清検体を、Crescendo Bioscience, Inc. (South San Francisco, CA, USA)の研究室で、主に試験した。多重化サンドイッチ免疫アッセイ(Mesoscale Discovery, Rockville, MD, USA)を用いて、VCAM-1、EGF、VEGF-A、IL-6、TNFRI、MMP-1、MMP-3、YKL-40、レプチン、レジスチン、血清アミロイドAおよびCRPを含む12のMBDAタンパク質バイオマーカーの濃度を測定した。次いで、1~100のスケール上に整数スコアを発生させる既に検証したアルゴリズムを用いて、濃度値を合わせた。種々のサンプルを、2012年から2016年の期間に渡って測定する間、免疫アッセイ機器、試薬およびアルゴリズムは、Crescendo Bioscience, Inc. (South San Francisco, CA, USA)によって製造されたVectraDA(R)商業的試験で使用したものに対応した。結果を、5つの研究/登録(CERTAIN, InFoRM, RACER, BRASS, およびOPERA)からの1411人の患者の別個のコホートに適用して、BMIの効果を定量化し、別個のモデルでは、血清レプチンが2つの調節MBDAスコアをもたらした。双方のタイプの調節MBDAスコアは、同一の低度、中度、および高度の疾患活性カットポイントを元のMBDAスコアとして用いる。
【0154】
コホート
INFORM(関節リウマチ測定に関するインデクス)コホート:北米のRA患者を対象とした多施設縦断観察研究からの459人の患者。臨床的特徴および研究室の詳細はすでに説明している。
【0155】
RACER(関節リウマチ比較有効性調査)コホート:この実験コホートは、University of Pittsburgh Medical Center (UPMC)登録由来の登録対象を含む。2010年2月の開始以来、RACERはリウマチ専門家からRAであると診断され、UPMCのリウマチ専門家によって追跡された18歳以上の患者が登録された。
【0156】
CERTAINコホート:中度疾患活性をもつRAに対するACR基準 (CDAI>10)を満たす105人の患者を、個人および大学病院のネットワークを通して募った。募集は、バイオ製剤での治療のために患者を選択する規定の患者受診の間に行った。
【0157】
OPERA(早期関節炎の患者に対する最適治療)コホート:180人の治療履歴のない早期関節炎患者は、デンマークのコペンハーゲン、ヘルレフ、グローステン、オーフ、オーデンセ、シルケボー、バイレ、ヒョーリング、オールボーおよびビボルグにあるリウマチ科を通して募集した。患者は、経口MTXおよび、アダリムマブ (n=89)またはプラセボ (n=91)のいずれかによる段階的治療にランダム化した。グルココルチコイドを受診ごとに4つまでの膨張関節に注入する。0および12ヶ月での手足のX線 (n=164)は、修正シャープ-ファン・デル・ハイデ全シャープスコア (TSS)で評価した。最小検出可能変化 (1.8 TSS単位)は、X線所見上の進行(すなわち、ΔTSS≧2)を規定する。
【0158】
BRASS (ブリガム関節リウマチ逐次試験;Brigham Rheumatoid Arthritis Sequential Study)コホート:424人のRA患者は、マサチューセッツ州ボストンのBrigham and Women’s Arthritis Centerにて前向き観察コホートから研究した。臨床的特徴および研究室詳細は、すでに説明した。
【0159】
健康対照からの血清サンプル (n=318)は、市販源 (BioreclamationIVT)およびFox Chase Cancer Centerに入院したがんと診断された患者の家族から入手した。年齢幅は20~80歳で、平均年齢は53歳であり、63%が女性であった。対照の対象は、急性または慢性疾患の履歴はなく、ビタミンサプリメントや間欠的な非ステロイド系抗炎症剤以外の投薬を受けていない。全ての血清サンプルを、瀉血の4時間以内に処理し、-70℃で保存した。
【0160】
Crescendo Bioscience Inc.臨床試験コホート:米国リウマチ専門医による日常医療の一部として2017年6月以前に市販のVectra(R) DAテストで試験されたRAと確認された325,781人の患者。血清検体は、臨床検査改善修正条項 (CLIA)、ニューヨーク州および米国病理学会 (CAP)-認定試験場であり、調査研究に含めるため匿名化された。89歳を超える患者は、90歳を超える年齢は個人情報であると考えられるので、排除した。一回以上試験を受けた患者については、最初の試験を含めた。
【0161】
種々の健康およびRA研究コホートの臨床的および人口統計学的特徴を表1にまとめた。
【0162】
【0163】
臨床エンドポイント
「DAS28*」と記載される尺度を用いて、疾患活性を測定した。DAS28*は、計算赤血球沈降速度 (ESR)またはCRP分子成分を持たないDAS28-CRPとして計算された。DAS28*は、a)MBDAスコアと、血液試験成分を欠く疾患活性の臨床ベースの複合尺度との間の比較を可能とし;b)成分の重なりを回避し;および、c)前記5つ全ての臨床研究/登録からは入手できない医師総合評価を必要としないために考え出された。以前は、アナログ的な手法が用いられていた (Bakker et al., 2012; Curtis et al., 2012)。
【0164】
OPERAおよびBRASS研究は、X線写真データを収集した。X線所見上の進行は、1年ごとのmTSSの変化として測定した。ベースラインおよび1年でX線撮像されたOPERAコホートからの全ての患者が、この分析に含まれた。BRASSコホートは、ベースライン受診の6ヶ月以内でのX線撮像および、前記第1のX線撮像後9ヶ月から3年の間での第2のX線撮像された全ての患者が含まれた。BRASSは、手首のみにX線を受けたので、BRASSからのmTSS値は、この分析につき、448/280の因子でスケーリングした。1年ごとのmTSSの変化 (ΔmTSS)は、追跡時とベースライン時との間のmTSSの差を、追跡時までの時間で割って計算した。
【0165】
レプチン調節MBDAスコア
商業的コホート (n = 325,781)を用いて、年齢、生物学的性別、および血清レプチン濃度のMBDAスコアに対する影響を推定した。MBDAスコアを応答変数として、年齢、生物学的性別、および血清レプチン濃度ならびにそれらの有意な (α=0.01)相互作用を予測子として、線形モデルのフィッティングをした。MBDAスコアと血清レプチン濃度との間の関係は、レプチンレベルを変換せずに残すか、または、対数を用いて変換すると、視覚的に非線形であると観察された。その結果、べき変換血清レプチン濃度を線形モデルに含ませ、べき変換の指数を線形フィッティングの尤度を最大限化することによって決定した。年齢、生物学的性別、およびレプチンの推定効果を商業的コホートにおけるMBDAスコアから差し引き、調節スコアを元来のMBDAスコアと同じ平均有するようにした定数を計算したこの定数と、年齢、生物学的性別、およびレプチンとの組合せを用いて、レプチン調節MBDAスコアを規定した。
【0166】
BMI調節MBDAスコア
BMIは、商業的コホートの患者には利用できないので2つの別個のデータセットにおける連続モデルを用いて、年齢、生物学的性別、およびBMIの効果を推定した。最初に、商業的コホートを用いて、年齢および生物学的性別の効果を推定した。線形モデルを、MBDAスコアを応答変数として、年齢、生物学的性別、および、年齢と生物学的性別との間の相関を予測子として、フィッティングした。CERTAIN、InFoRM、RACER、OPERA、およびBRASSコホートからのMBDAスコアを、年齢、生物学的性別およびそれらの相関の線形組合せを元来のMBDAスコアから差し引くことによって、年齢および生物学的性別の効果について調節して、中間MBDAスコアを作成した。前記中間MBDAスコアに対するBMIの効果を、次に、推定した。各生物学をフィティングした。
【0167】
前記臨床コホートのMBDAスコアから年齢、生物学的性別、およびBMIの効果を差し引いた後、調節スコアの平均と各生物学的性別についての元来のVectraスコアの平均とが適合するように定数を計算した。これらの定数と、年齢、生物学的性別、およびBMIの推定効果との組合せを用いて、BMI調節MBDAスコアを規定した。
【0168】
BMI調節MBDAスコア
調節MBDAスコアの検証
元来のならびにBMI-およびレプチン調節MBDAスコアを、疾患化性を予測する能力の観点で比較した。単変量回帰モデルを、DAS28*を応答として、MBDAスコアの各々を予測子としてフィッティングした。さらに、DAS28*の多重線形回帰モデルを、対になるMBDAスコアを同時予測子としてフィッティングした。同様に、X線所見上の進行とMBDAスコアの各々との関連を、単変量線形回帰モデルを用いて評価した。MBDAスコアを直接比較するために、ΔmTSSの多重線形回帰分析における対として組み合わせた。
【0169】
結果
RAにおけるBMIの代替としてレプチン
脂肪過多についての適切な代替を調べるために、血清レプチンレベルおよびBMIを、RAに罹患していない健康な患者のコホートおよびRAに罹患している健患者のコホートで測定した(
図1)。レプチンは、健康な男性 (r=0.69)および女性(r=0.66)ならびにRA患者(男性および女性につき、それぞれ、r=0.69および0.69)におけるBMIと有意な正の相関性を示した。したがって、血清レプチンをRAにおける体脂肪率すなわちBMIの代替として用いた。
【0170】
レプチン調節MBDAスコア
年齢、生物学的性別、および脂肪過多はMBDAスコアの交絡因子であり得るので、これら変数とMBDAスコアとの間の関係を、値の広がりを示すRA患者の十分に検出力のあるコホートにおいて調べた。すでに記載したように、脂肪量または脂肪過多の代理として、血清レプチンレベルを測定した。年齢、生物学的性別、血清レプチン、およびMBDAスコアは、商業的試験を受けた325,781人の患者に利用可能であった。MBDAスコアは、より高い血清レプチン濃度の患者、特に、より若い患者(例えば、年齢が15~30歳)において、より高い傾向にあった。この関連性は、高齢者群では優勢ではなく、最も高齢者の群(年齢75~90歳)ではほとんどなかった(
図2)。MBDAスコアは、また、女性および男性の双方において、年齢とともに増加した。しかしながら、平均的MBDAスコアは、より若い年齢の男性につきより低くく、女性よりも年齢とともに若干早く増加し、スコアの分布が高齢で同様である(
図3)。
【0171】
MBDAスコアとレプチンとの間の関係は非線形であり、指数的に最もよく表された;MBDAスコアを予測する能力を最大限にするレプチンの指数は0.58であった。このモデルにおいて、年齢、生物学的性別、および血清レプチン濃度の間の3つ全ての双方向相互作用は有意であった。表2に効果をまとめた。
【0172】
【0173】
レプチン調節MBDAスコアのモデルは、MBDAスコアと、年齢、社会学的性別およびレプチン濃度との間の直接相互作用、およびそれらの双方向相互作用について調節することによって構築した。それは、これらの相互作用についての調節と、商業的コホートにおける元来のMBDAスコアと同じ平均値を維持するための定数値 (33.9)と組み合わせることによって導出し、以下の公式で与えられる:
【0174】
【0175】
このアルゴリズムにおいて、1男性 (生物学的性別)は、その患者の生物学的性別が男性ならば1であり、そうでなければ0である。
【0176】
BMI調節MBDAスコア
ボディマス指数 (BMI)は、脂肪過多と有意な関係を持つありふれた生体識別パラメータである。BMIデータは、商業的試験コホートに対して利用可能ではなかった。BMIに対する補正がレプチン調節に匹敵する代替であるかどうかを試験するために、年齢および社会学的性別についてのMBDAを、商業的コホートについて一次調節した。血清レプチン濃度を考慮から排除して、商業データにおいて、年齢、生物学的性別、およびそれらの相互作用のみの関数でMBDAスコアの最適線形フィットは、以下の公式で与えられる:
【0177】
【0178】
次に、前記5つの臨床コホート(BRASS、CERTAIN、InFoRM、OPERAおよびRACER)からのMBDAスコア、年齢、生物学的性別、およびBMIを持つ1,411人の患者がいる。年齢および生物学的性別の効果をこれらの患者のMBDAスコアから取り除いて、中間MBDAスコアを作成した。BMIの中間MBDAスコアに対する効果は、生物学的性別間で有意差があった (相互作用p-値 = 0.0043)。BMIの効果は、男性において単位あたり-0.203 (-0.575, 0.170)、女性において単位あたり0.384 (0.233, 0.535)であった。
【0179】
商業的患者コホートからの年齢および生物学的性別の調節と、前記臨床研究からのBMIの調節を組合せ、一方、各生物学的性別についてどういつ平均的スコアに維持して、調節MBDAスコアを得る:
【0180】
【0181】
このアルゴリズムにおいて、1男性(生物学的性別)は、その患者の生物学的性別が男性ならば1であり、そうでなければ0である。
【0182】
調節MBDAスコアの検証
どのバイオマーカーが最も強くDAS28*と相関するかを調査するために、MBDAスコアの各々と、および、CRP表現とのDAS28*の関連を、同一組の1,411人の患者において評価し、そこで、BMI調節を行った。CRP、元来のMBDAスコア、および調節MBDAスコアの双方は、別個に、DAS28*で補正した。補正は、CRP (対数スケール)につき0.34 (p-値 = 1.3×10-39)、元来のMBDAスコアにつき0.38 (p-値 = 2.7×10-48)、BMI調節MBDAスコアにつき0.39 (p-値 = 2.3×10-52)、レプチン調節MBDAスコアにつき0.40 (p-値 = 4.6×10-54)であった。
【0183】
DAS28*が応答変数であり、レプチン調節MBDAスコアおよびCRPまたは元来のMBDAスコアの底が10の対数のいずれかが予測子である線形回帰モデルにおいて、レプチン調節MBDAスコアは統計学的有意 (それぞれ、p=1.6×10-16 および2.3×10-7)であり、CRP (p=0.18)も元来のMBDAスコア (p=0.60)のいずれもそうではなかった。BMI調節MBDAスコア(それぞれ、p=9.2×10-15および1.6×10-5)がCRP (p=0.21)または元来のMBDAスコア(p=0.93)と共に含まれるときも、これは真であった。しかしながら、2つの調節MBDAスコアを同一モデルにおいて組み合わせたとき、レプチン調節スコア (p=0.0048)はDAS28*の有意予測子であったがBMI調節スコア (p=0.71)が違った。
【0184】
多変量モデルを元来のスコアと共に用いてDAS28およびX線所見上の進行を予測するレプチン調節MBDAスコアの能力の検証を表3に示す。
【0185】
【0186】
多変量モデルをBMI調節スコアと共に用いてDAS28およびX線所見上の進行を予測するレプチン調節MBDAスコアの能力の検証を表4に示す。
【0187】
【0188】
組み合わせたOPERAおよびBRASSコホートの単変量分析において(n = 555)、ΔmTSSを予測する有意変数は、レプチン調節MBDAスコア(
図4)、RFまたは抗-CCPの血清陽性、BMI調節MBDAスコア、MBDAスコア、BMI、CRP、ベースラインTSS、疾患期間、DAS28-CRP、およびDAS28*(表5)であった。
【0189】
【0190】
X線所見上の進行と最も高度に相関するバイオマーカーはレプチン調節MBDAであり、注目すべき2番目に高度に相関する変数はリウマチ因子および/または抗-環状シトルリン化ペプチド陽性で表される血清学的状況である。3つのMBDAスコアおよびDAS28-CRPは、ΔmTSSを予測する回帰モデルにおける対として含まれる。BMI調節(p = 0.0027)およびレプチン調節(p = 0.00066)MBDAスコアはDAS28-CRP(それぞれ、p = 0.87および0.74)についての調節後、有意であり、レプチン調節MBDAスコアは、(それぞれ、p = 0.027および0.025)MBDA(p = 0.34)またはBMI調節MBDAスコア(p = 0.11)いずれかの調節後、有意であった。このようなMBDAスコアバージョンのうち、レプチン調節MBDAスコアがRAにおけるX線所見上の進行とより相関している。レプチン調節スコアでのX線所見上の進行の確率を
図5に示す。DAS28*は、CRPまたはESR成分がないDAS28である。
【0191】
ΔmTSSの多変量線形回帰を表6に示す。全ての変数(BMIを除く)をΔmTSSの多変量線形回帰に含み、最下位変数から初めて繰り返し除外して、有意変数のみ残るように後退的選択を与えた。
【0192】
【0193】
レプチン調節MBDAの関連性
所与の患者につきレプチン調節MBDAスコアが元来のスコアから異なる程度、および、実際の患者の前記スコアが数値的に変化し、MBDAスコア カテゴリー間で再分類される程度の尺度として、3種の分析を行った。
図7は、広範囲の年齢および血清レプチンの組合せについて、元来のMBDAスコアからレプチン調節MBDAスコアの偏差を示す。これらの関係のトポグラフィーは男性と女性で異なり、その理由により、生物学的性別を別々に表示している。若年齢または低レプチン濃度はMBDAスコアの有意な上方加重をもたらし、老年齢または過度の脂肪過多はMBDAスコアの有意な下方加重をもたらす。
【0194】
商業的コホートにおいて、レプチン調節スコアは元来のMBDAスコアから、90%の患者に対して-9から+11ポイント異なっていた(
図2)。表7はレプチン調節MBDAスコアの適用が商業的コホートを用いる元来のMBDAカテゴリーからRA患者の再分類をもたらす程度を示す。元来低度カテゴリーは、レプチン調節MBDAスコアの使用により、24%のRA患者が中度群に移行し、中度群は、9%が低度群に、12%が高度群に移行し、高度群は、21%が中度カテゴリーに再振り分けされた。
【0195】
【0196】
結論
年齢、生物学的性別、および脂肪過多を考慮して、分子生物学と生体識別変数とを組み合わせた調節MBDAスコアが開発され、それは、X線所見上の関節損傷進行の速度の予測において、DAS28-CRPを有意に凌駕し、さらに、元来のMBDAスコアを凌駕した。BMIの代わりにレプチンについてMBDAスコアを調節することは、疾患活性およびX線所見上の進行のより良い予測子をもたらした。結果は、レプチン調節MBDAスコアはRAを持つ患者の個人管理について改善された臨床ユーティリティーを提供するであろうことを示唆する。
【0197】
実施例2:RAを持つ患者におけるMBDAスコアに対する年齢およびBMIの効果
この実施例は、関節リウマチ (RA)を持つ患者における、マルチバイオマーカー疾患活性 (MBDA)スコアと年齢との間、およびMBDAスコアとボディマス指数 (BMI)との間の関連を実証する。
【0198】
方法
この後向き研究のデータは、40州で>625人の米国リウマチ専門医から構成される長期RA登録である、CORRONAからのものである。含まれる患者は、CORRONA来訪から1ヶ月前から7日後までの間にMBDA試験を行っていなければならなず、それが患者特徴および臨床データの出典であった。MBDAスコアは、低度 (<30)、中度 (30-44)、および高度 (>44)に分類された。年齢は、10歳ごとに分類された(<40、40-49、50-59、60-69、70-79、および>80 歳)。BMIは、≦25、>25-30、>30-<35、≧35 kg/m2に分類された。年齢またはBMIとMBDAスコアとの間の関連性は、カイ二乗および傾向検定を用いて評価した。
【0199】
結果
患者数は878人であり:77.9%が、平均年齢60.9歳、平均体重177.6ポンド、および平均RA疾患期間10.7年の女性であった。およそ半分の患者 (54%)が、メトトレキサートその他の従来DMARD (21%)を使用しており、半分近く (45%)がバイオ製剤を使用していた(表7)。平均MBDAスコアは42.6であり、18%の低度、38%の中度および44%の高度MBDAカテゴリーであった。低度、中度および高度MBDAカテゴリーを横断する患者の分布は、カイ二乗検定 (p=0.001)および傾向検定 (p<0.0001)の双方で、10歳ごとの年齢と有意に関連した(
図6)。MBDAカテゴリーも、BMI(カイ二乗 p=0.001; 傾向検定 p<0.0001)と有意に関連した(表7)。低度MBDAスコアは545人中135人 (24.8%)のBMI ≦30を持つ患者で、142人中6人 (4.2%)のMBDAスコア ≧35を持つ患者で、観察された(表7)。逆に、高度MBDAスコアは、545人中196人 (36.0%)のBMI ≦ 30を持つ患者で、142人中91人 (64.1%)のBMI ≧35を持つの患者で、観察された(表8)。
【0200】
【0201】
表8は患者の総合特徴を示し、MBDA分類に従っている。報告されたパーセンテージは、列のパーセンテージが年齢およびBMI分類についてのもの(各年齢およびBMI分類内の低度、中度、または高度MBDAスコアのパーセント)であり;行のパーセンテージがそれ以外(各MBDA分類)である。
【0202】
結論
年齢およびBMIは、各々、MBDAスコアと有意な関連性を有することが分かった。これらのデータは、RAにおける炎症性バイオマーカーが、非-RA-関連因子に影響されることを示唆する。
【0203】
本明細書で引用される全ての刊行物および特許出願は、出典明示により、あたかも、それぞれの刊行物または特許出願が特別におよび別個に本明細書に含まれるとして示される。
【0204】
上記の発明は、理解を明確にする目的で、実例および例示として幾分詳細に記載したが、当業者は、この発明の教示に照らして、ある種の変更および変形がそれに対してなされても、添付の特許請求の範囲に示すように、本発明の精神および範囲を逸脱しないことを理解するであろう。