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特開2024-41846ゲル押出物品を製造するためのポリマー組成物及びそれから製造されるポリマー物品
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  • 特開-ゲル押出物品を製造するためのポリマー組成物及びそれから製造されるポリマー物品 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041846
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】ゲル押出物品を製造するためのポリマー組成物及びそれから製造されるポリマー物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/06 20060101AFI20240319BHJP
   C08L 91/00 20060101ALI20240319BHJP
   C08K 5/01 20060101ALI20240319BHJP
   C08K 5/05 20060101ALI20240319BHJP
   C08K 5/10 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C08L23/06
C08L91/00
C08K5/01
C08K5/05
C08K5/10
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000511
(22)【出願日】2024-01-05
(62)【分割の表示】P 2020509098の分割
【原出願日】2018-08-17
(31)【優先権主張番号】62/546,857
(32)【優先日】2017-08-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】516243353
【氏名又は名称】セラニーズ・セールス・ジャーマニー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100141265
【弁理士】
【氏名又は名称】小笠原 有紀
(72)【発明者】
【氏名】オーム,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】バルケンホルスト,ライナー
(72)【発明者】
【氏名】シャイベ,パトリック
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ゲル押出物品を製造するためのポリマー組成物を提供する。
【解決手段】ポリマー組成物は、可塑剤と混合されたポリエチレン粒子を含む。ポリエチレン粒子は、ゲル加工中に可塑剤と混合した際に粒子が迅速に均一なゲル状材料を形成するように特に選択される。一実施形態においては、粒子を製造するために使用されるポリエチレンは比較的低い嵩密度を有する。或いは、又は更には、粒子は、注意深く制御された粒径分布を有していてよい。欠陥を少ししか有しないか又は全く有しない繊維及びフィルムのようなポリマー物品を製造することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膜を含むゲル押出物品を製造するためのポリマー組成物であって、
可塑剤、及び
前記可塑剤と混合された高密度ポリエチレン粒子
を含み、
前記高密度ポリエチレンはチーグラー・ナッタ触媒超高分子量ポリエチレンであり、前記高密度ポリエチレン粒子は60μmから125μm未満までのメジアン粒径(d50)を有し、
前記高密度ポリエチレンはDIN-EN-ISO試験1628に従って測定された粘度数からMargolies式を使用して計算した際に1,000,000g/モルより高い平均分子量を有する、前記ポリマー組成物。
【請求項2】
前記高密度ポリエチレン粒子が0.28g/cm未満の嵩密度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記高密度ポリエチレン粒子が、0.26g/cm未満で0.15g/cmより高い嵩密度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記高密度ポリエチレン粒子が100μm未満のメジアン粒径(d50)を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記高密度ポリエチレン粒子が、70μm~100μmのメジアン粒径(d50)を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記高密度ポリエチレン粒子の90%が、170μm未満の粒径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
溶解度試験に従って試験した場合に、前記高密度ポリエチレン粒子が、3分未満の溶解度を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記高密度ポリエチレン粒子が50重量%以下の量で前記組成物中に存在する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記可塑剤が、鉱油、パラフィン油、炭化水素、アルコール、エーテル、エステル、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記高密度ポリエチレンが、2,500,000g/モルより大きい分子量を有する、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記可塑剤が、デカリン、キシレン、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、デシルアルコール、ノニルアルコール、ジフェニルエーテル、n-デカン、n-ドデカン、オクタン、ノナン、ケロセン、トルエン、ナフタレン、テトラリン、モノクロロベンゼン、カンフェン、メタン、ジペンテン、メチルシクロペンタジエン、トリシクロデカン、1,2,4,5-テトラメチル-1,4-シクロヘキサジエン、又はそれらの混合物を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
ポリマー物品の製造方法であって、
請求項1に記載のポリマー組成物をゲル状組成物に形成する工程、及び
ダイを通して前記ゲル状組成物を押出してポリマー物品を形成する工程
を含み、
前記ポリマー物品は繊維、フィルム、又は膜である、前記方法。
【請求項13】
前記ポリマー物品から前記可塑剤の少なくとも一部を除去する工程を更に含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
膜を含むポリマー物品であって、前記ポリマー物品は、
可塑剤と高密度ポリエチレン粒子を混合してゲル状組成物を形成し、そして
ダイを通して前記ゲル状組成物を押出して前記ポリマー物品を形成する
ことによって製造され、
前記高密度ポリエチレンはチーグラー・ナッタ触媒超高分子量ポリエチレンであり、前記高密度ポリエチレン粒子は60μmから125μm未満までのメジアン粒径(d50)を有し、
前記高密度ポリエチレンはDIN-EN-ISO試験1628に従って測定された粘度数からMargolies式を使用して計算した際に1,000,000g/モルより高い平均分子量を有する、前記ポリマー物品。
【請求項15】
前記高密度ポリエチレン粒子が、0.28g/cm未満の嵩密度を有する、請求項14に記載のポリマー物品。
【請求項16】
前記高密度ポリエチレン粒子が、70μm~100μmのメジアン粒径(d50)を有する、請求項14に記載のポリマー物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は、2017年8月17日の出願日を有する米国仮出願第62/546,857号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に基づき、それに対する優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
[0002]ポリエチレンポリマーは、多くの多様な使途及び用途を有する。例えば、高密度ポリエチレンは、耐摩耗性、表面潤滑性、耐化学薬品性、及び衝撃強さの独特の組合せを有する高価値なエンジニアリングプラスチックである。それらは、ロープ及び防弾成形品において使用するための高強度繊維の製造、並びにリチウム電池用の膜のような他の細長い物品の製造における用途が見出されている。しかしながら、これらの材料の溶融状態での流動性は分子量が増加するにつれて減少するので、溶融押出のような従来の技術による加工は常に可能であるとは限らない。
【0003】
[0003]ポリエチレンポリマーから繊維及び他の細長い部品を製造するための1つの別の方法は、ポリマーを溶媒と混合するゲル加工によるものである。得られるゲルは、繊維又は膜に押し出され、1つ又は2つの方向に延伸することができる。また、溶媒の一部又は全部を生成物から除去することができる。
【0004】
[0004]しかしながら、過去においては、ゲル加工ポリエチレンポリマーにおいて問題があった。例えば、ポリエチレンポリマーのゲル押出の間において、ゲルスペック(gel specks)の出現によって、得られる生成物の物理特性が損なわれることがある。ゲルスペックとは、一般に、押出プロセスの間に、完全に溶解していないか、又は他の形態で溶媒と密に混合していないポリエチレンポリマーを指す。例えば、膜を形成する場合、これらのゲルスペックは、電池セパレータ用途のような幾つかの用途に関して生成物を使用不能にする可能性がある。過去においては、ゲルスペックを除去するために、ゲル加工はより低分子量のポリマーを用いて行われており、これは得られる生成物の強度を低下させる可能性がある。或いは、押出前にゲルスペックを望ましく排除するために、加工時間を増加させることができる。しかしながら、加工時間の増加は、スループットを低下させ、プロセスのコストを増加させる。
【0005】
[0005]上記に鑑みて、ゲルスペック又は他の不純物を形成することなく、比較的速い速度でゲル紡糸又はゲル押出しすることができる改善されたポリエチレン組成物に対する必要性が存在する。また、ゲル加工を用いてポリエチレンポリマーから押出物品を製造するための改良された方法に対する必要性も存在する。
【発明の概要】
【0006】
[0006]概して、本発明は、ゲル加工用途によく適したポリエチレン組成物に関する。ポリエチレン組成物は、例えば、フィルム、膜、繊維などのような細長い物品を製造するために使用することができる。本発明によれば、高密度ポリエチレン樹脂のようなポリエチレンを可塑剤と混合してゲル状材料を形成する。本発明によれば、ポリエチレン樹脂は、注意深く制御された嵩密度及び/又は注意深く制御された粒径分布を有するように特に選択される。このポリエチレン樹脂の特徴は、組成物が押出された際に生成物の欠陥をもたらす可能性がある残留するゲルスペック又は不純物なしにゲル状材料の迅速な形成を劇的に改善することが見出された。
【0007】
[0007]例えば、一実施形態においては、本発明はゲル押出物品を製造するためのポリマー組成物に関する。ポリマー組成物は、ポリエチレン樹脂とブレンドされた可塑剤を含む。ポリエチレン樹脂は、高分子量ポリエチレンのような高密度ポリエチレンから形成することができる。一実施形態においては、例えば、樹脂は超高分子量ポリエチレンから形成される。ポリエチレン樹脂は、押出可能なゲル状組成物を製造するために可塑剤と混合される。本発明によれば、ポリエチレン樹脂は、以下の特徴:
(1)約0.35g/cm未満の嵩密度;及び/又は
(2)125ミクロン未満のメジアン粒径(d50)、ここで粒子の90%は約180ミクロン未満の粒径を有する;
の少なくとも1つを有する。一実施形態においては、ポリエチレン樹脂粒子は上記の特徴の両方を含む。上記のポリエチレン粒子は、ポリエチレンポリマーのゲル加工性を劇的に改善することが見出された。例えば、上記の特徴の少なくとも1つを有するポリエチレン粒子は、可塑剤と迅速に混合して均一なゲル状材料を生成することが見出された。従って、上記組成物を押出機中に配置して、ゲル状組成物を、非常に短時間で、且つ溶解していないか又は他の形態で可塑剤と均一にブレンドされていないゲルスペック又は他の小さい粒子を形成しないで製造することができる。
【0008】
[0008]上述のように、一実施形態においては、高密度ポリエチレン粒子は、可塑剤とのブレンドを改善するために比較的低い嵩密度を有していてよい。嵩密度は、例えば一実施形態においては、約0.3g/cm未満、例えば約0.28g/cm未満、例えば約0.26g/cm未満であってよい。嵩密度は、一般に約0.15g/cmより高い。
【0009】
[0009]或いは、又は低い嵩密度を有することに加えて、ポリエチレン粒子はまた、比較的小さいメジアンサイズ(d50)も有していてよい。例えば、ポリエチレン粒子は、約60ミクロンから125ミクロン未満まで、例えば約70ミクロン~約110ミクロンのメジアン粒径(d50)を有していてよい。更に、高密度ポリエチレン粒子の90%は、約170ミクロン未満、例えば約165ミクロン未満、例えば約160ミクロン未満、例えば約155ミクロン未満、例えば約150ミクロン未満、例えば約145ミクロン未満、例えば約140ミクロン未満の粒径を有していてよい。
【0010】
[0010]本発明の高密度ポリエチレン粒子は、加熱下で可塑剤と急速に混合して、均一なゲル状材料を形成することが見出された。例えば、下記においてより詳細に記載される溶解度試験に従って試験した場合に、高密度ポリエチレン粒子は、約3分未満、例えば約2.5分未満、例えば約2分未満の溶解度を有していてよい。
【0011】
[0011]一般に、ポリマー組成物は、約50重量%以下の量の高密度ポリエチレン樹脂を含む。可塑剤は、例えば、約50重量%より多い量、例えば約60重量%より多い量、例えば約70重量%より多い量、例えば約80重量%より多い量、例えば約90重量%より多い量で組成物中に存在させることができる。種々の異なる材料を可塑剤として使用することができる。例えば、可塑剤には、鉱油、パラフィン油、炭化水素油、アルコールなどを含ませることができる。例えば、可塑剤には、デカリン、キシレン、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、デシルアルコール、ノニルアルコール、ジフェニルエーテル、n-デカン、n-ドデカン、又はそれらの混合物を含ませることができる。一実施形態においては、可塑剤に、C~C12飽和炭化水素のようなC~C12炭化水素を含ませることができる。例えば、可塑剤に、ヘプタン、ヘキサンなどを含ませることができる。
【0012】
[0012]一実施形態においては、粒子を製造するために使用するポリエチレンは、比較的高い分子量を有していてよい。実際に、本発明の利点の1つは、ゲルスペックを形成する
ことなく、比較的高分子量のポリエチレン粒子を可塑剤と迅速にブレンドする能力である。一実施形態においては、より高分子量のポリエチレン粒子の使用は、特により高い強度特性が必要とされるか又は所望される用途において有益であり得る。例えば、粒子を製造するために使用するポリエチレンは、約500,000g/モルより高く、例えば約1,000,000g/モルより高く、例えば約1,500,000g/モルより高く、例えば約2,000,000g/モルより高く、例えば約2,500,000g/モルより高く、例えば約3,000,000g/モルより高く、例えば約3,500,000g/モルより高く、例えば約4,000,000g/モルより高い分子量を有していてよい。一実施形態においては、粒子を製造するために使用するポリエチレンは、チーグラー・ナッタ触媒超高分子量ポリエチレンを含む。
【0013】
[0013]本発明はまた、上記ポリマー組成物から形成されるポリマー物品にも関する。ポリマー物品は、ゲル押出又はゲル紡糸プロセスによって製造することができる。本発明に従って製造されるポリマー物品としては、繊維、フィルム、膜などを挙げることができる。
【0014】
[0014]本発明はまた、ポリマー物品を製造する方法にも関する。この方法は、上記のポリマー組成物からゲル状組成物を形成する工程を含む。次に、ダイを通してゲル状組成物を押出してポリマー物品を形成する。ポリマー物品は、例えば、繊維、フィルム、又は膜を含んでいてよい。ポリマー物品の形成中に、可塑剤の少なくとも一部を分離して、ポリエチレン粒子から除去する。例えば、一実施形態においては、80%より多く、例えば90%より多く、例えば95%より多く、例えば98%より多い可塑剤をポリマー物品の形成中に除去する。
【0015】
[0015]本発明の他の特徴及び態様を下記においてより詳細に議論する。
[0016]添付の図面への言及を含む明細書の残りにおいて、本発明の完全且つ実施可能な程度の開示をより詳しく示す。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、下記の実施例1で得られた幾つかの結果のグラフ表示である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[0017]本明細書及び図面における参照記号の繰り返しの使用は、本発明の同一又は類似の特徴又は構成要素を表すことを意図している。
[0018]本議論は例示的な実施形態の説明にすぎず、本発明のより広い態様を限定するものとしては意図しないことが当業者によって理解される。
【0018】
[0019]一般に、本発明は、繊維、フィルム及び膜のようなゲル押出物品を製造するのによく適したポリマー組成物に関する。ポリマー組成物は、可塑剤と混合された高密度ポリエチレン粒子のようなポリエチレン樹脂を含む。本発明によれば、ポリエチレン粒子は、粒子が、可塑剤と混合して加熱した際に均一なゲル状材料を迅速に形成するように特に構成される。
【0019】
[0020]過去において、ポリエチレンポリマーのゲル加工において種々の問題があった。例えば、種々のポリエチレンポリマーは、押出中に加工溶媒中に溶解するために相当な時間を必要とする可能性がある。押出機内の滞留時間がポリマー樹脂の完全な溶解を可能にするのに十分に長くない場合には、形成されるポリマー物品中に欠陥が形成される可能性がある。ゲルスペックの存在に起因して生じ得る欠陥は、物品の製造の困難性又は低下した生成物品質をもたらす可能性がある。最終的に、より長い溶解時間又は不完全な溶解は、生成物の能力を制限する可能性がある。更に、これらの問題は、ゲル加工製造ラインの
より低い能力をもたらす可能性がある。
【0020】
[0021]しかしながら、本発明は、可塑剤と迅速にブレンドして均一なゲル状材料を形成するのにより適した特定のポリエチレン樹脂を選択することに関連する。特に、本発明のポリエチレン粒子は、可塑剤とポリマーの間のより大きな相互作用面積を与え、溶解時間を低下させ、それによってゲルスペックを排除し、押出ポリマー物品中に欠陥が生じるのを阻止すると考えられる。一実施形態においては、本発明方法によって、強度特性のような改善された物理特性を有するポリマー物品をもたらすことができる比較的高分子量のポリマーの使用が可能になる。
【0021】
[0022]本発明によれば、可塑剤と混合するように選択されるポリエチレン樹脂は、2つの物理的特徴の少なくとも1つを有していてよい。一実施形態においては、例えば、樹脂は比較的低い嵩密度を有するポリエチレンポリマーから形成される。より低い嵩密度は、ポリマーが可塑剤中に溶解するか、又は他の形態で均一なゲル状材料を形成するのに必要な時間を予想外にかつ劇的に短縮することが見出された。他の実施形態においては、又は比較的低い嵩密度を有することに加えて、ポリエチレン樹脂粒子は独特の粒径分布を有していてよい(これも、溶解時間を劇的に改善することが見出された)。
【0022】
[0023]本発明によれば、ポリマー組成物はポリエチレンポリマーを含む。本明細書で使用されるポリエチレンポリマーとは、90%より多いエチレン誘導単位、例えば95%より多いエチレン誘導単位、又は100%のエチレン誘導単位から形成されるポリマーを指す。ポリエチレンは、ホモポリマー、又は他のモノマー単位を有するコポリマー(ターポリマーを含む)であってよい。一実施形態においては、ポリエチレン粒子は高密度ポリエチレンから形成される。高密度ポリエチレンは、約0.93g/cm以上の密度を有する。粒子を製造するために使用するポリエチレンには、高分子量ポリエチレン、極高分子量ポリエチレン、及び/又は超高分子量ポリエチレンを含めることができる。「高分子量ポリエチレン」とは、少なくとも約3×10g/モルの重量平均分子量を有するポリエチレン組成物を指し、本明細書で使用する場合には、極高分子量ポリエチレン及び超高分子量ポリエチレンを含むと意図される。本明細書の目的のためには、本明細書で言及する分子量はMargolies式に従って求められる(Margolies分子量)。
【0023】
[0024]「極高分子量ポリエチレン」とは、約3×10g/モル未満で約1×10g/モルより高い重量平均分子量を有するポリエチレン組成物を指す。幾つかの実施形態においては、極高分子量ポリエチレン組成物の分子量は、約2×10g/モルと約3×10g/モル未満との間である。
【0024】
[0025]「超高分子量ポリエチレン」とは、少なくとも約3×10g/モルの重量平均分子量を有するポリエチレン組成物を指す。幾つかの実施形態においては、超高分子量ポリエチレン組成物の分子量は、約3×10g/モルと約30×10g/モルとの間、又は約3×10g/モルと約20×10g/モルとの間、又は約3×10g/モルと約10×10g/モルとの間、又は約3×10g/モルと約6×10g/モルとの間である。
【0025】
[0026]上述のように、一実施形態においては、ポリエチレンはエチレンのホモポリマーである。他の実施形態においては、ポリエチレンはコポリマーであってよい。例えば、ポリエチレンは、エチレンと、3~16個の炭素原子、例えば3~10個の炭素原子、例えば3~8個の炭素原子を含む別のオレフィンとのコポリマーであってよい。これらの他のオレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、4-メチルペント-1-エン、1-デセン、1-ドデセン、1-ヘキサデセンなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明においては、1,3-ヘ
キサジエン、1,4-ヘキサジエン、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、4-ビニルシクロヘクス-1-エン、1,5-シクロオクタジエン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、及び5-ビニル-2-ノルボルネンのようなポリエンコモノマーも利用可能である。しかしながら、存在する場合、コポリマー中の1種類又は複数の非エチレンモノ
マーの量は、約10モル%未満、例えば約5モル%未満、例えば約2.5モル%未満、例えば約1モル%未満であってよく、ここでモル%はポリマー中のモノマーの総モル数を基準とする。
【0026】
[0027]一実施形態においては、ポリエチレンは単峰性の分子量分布を有していてよい。或いは、ポリエチレンは二峰性の分子量分布を示してよい。例えば、二峰性分布は、一般に、サイズ排除クロマトグラフィー又はゲル浸透クロマトグラフィー曲線上で別個のより高い分子量及び別個のより低い分子量(例えば2つの別個のピーク)を有するポリマーを指す。他の実施形態においては、ポリエチレンは、2つより多い分子量分布ピークを示して、ポリエチレンが多峰性(例えば、三峰性、四峰性など)分布を示すようになっていてよい。或いは、ポリエチレンはブロードな分子量分布を示していてよく、ここではポリエチレンはより高分子量の成分及びより低分子量の成分のブレンドから構成されていて、サイズ排除クロマトグラフィー又はゲル浸透クロマトグラフィー曲線が少なくとも2つの別個のピークを示さず、代わりに個々の成分ピークよりも広い1つの別個のピークを示すようになっている。
【0027】
[0028]一実施形態においては、組成物は、各々が異なる分子量及び/又は分子量分布を有する1種類より多いポリエチレンから構成されていてよい。例えば、分子量分布は、上記で与えた平均分子量の規定の範囲内であってよい。
【0028】
[0029]更に、組成物は、1種類以上のポリエチレンポリマー又はコポリマーと、ポリプロピレン、ポリブチレン、ポリメチルペンテン、線状低密度ポリエチレン、又はそれらの混合物のような他の熱可塑性ポリマーとのブレンドから構成されていてもよい。しかしながら、組成物中の1種類又は複数の非ポリエチレンポリマーの量は、約10重量%未満、
例えば約5重量%未満、例えば約2.5重量%未満、例えば約1重量%未満であってよく、ここで重量%は組成物の全重量を基準とする。
【0029】
[0030]当該技術において公知の任意の方法を利用してポリエチレンを合成することができる。ポリエチレン粉末は、通常は、不均一触媒、及び助触媒として有機アルミニウム又はマグネシウム化合物を用いる、エチレンモノマーの接触重合、又は場合によって1種類以上の他の1-オレフィンコモノマーとの接触重合(最終ポリマー中の1-オレフィン含量はエチレン含量の10%以下である)によって製造される。エチレンは、通常は比較的低い温度及び圧力において、気相又はスラリー相中で重合される。重合反応は、50℃と100℃との間の温度、及び0.02~2MPaの範囲の圧力で行うことができる。
【0030】
[0031]ポリエチレンの分子量は、水素を加えることによって調節することができる。また、温度及び/又は共触媒のタイプ及び濃度の変化を用いて、分子量を微調整することができる。更に、この反応は、ファウリング及び生成物の汚染を回避するために静電防止剤の存在下で行うことができる。
【0031】
[0032]好適な触媒系としてはチーグラー・ナッタタイプの触媒が挙げられるが、これらに限定されない。通常は、チーグラー-ナッタタイプの触媒は、周期律表の第4~8族の遷移金属化合物と、周期律表の第1~3族の金属のアルキル又は水素化物誘導体を組合せることによって誘導される。通常使用される遷移金属誘導体は、金属ハロゲン化物又はエステル或いはそれらの組み合わせを含む。代表的なチーグラー-ナッタ触媒としては、例えばアルミニウム又はマグネシウムアルキルなど(しかしながらこれらに限定されない)
の有機アルミニウム又はマグネシウム化合物と、チタン、バナジウム、又はクロムハロゲン化物若しくはエステルの反応生成物に基づくものが挙げられる。不均一触媒は、非担持であるか、又はシリカ若しくは塩化マグネシウムのような多孔質微粒子材料上に担持することができる。このような担体は、触媒の合成中に加えることができ、又はそれ自体触媒合成の化学反応生成物として得ることができる。
【0032】
[0033]下記においてより詳細に説明するように、特に有利なことには、本発明に従って製造されるポリエチレン粒子は、ポリエチレンポリマーがチーグラー-ナッタ触媒を使用して製造される場合であっても、可塑剤と迅速にブレンド又は溶解することができる。過去においては、例えば、チーグラー-ナッタ触媒ポリエチレンポリマー、特に高分子量ポリマーを使用してゲル加工のための均一なゲル状材料を迅速に形成するのには問題があった。
【0033】
[0034]一実施形態において、好適な触媒系は、チタン(IV)化合物とトリアルキルアルミニウム化合物を、不活性有機溶媒中、-40℃~100℃、好ましくは-20℃~50℃の範囲の温度で反応させることによって得ることができる。出発物質の濃度は、チタン(IV)化合物については0.1~9モル/L、好ましくは0.2~5モル/Lの範囲であり、トリアルキルアルミニウム化合物については0.01~1モル/L、好ましくは0.02~0.2モル/Lの範囲である。チタン成分は、0.1分~60分、好ましくは1分~30分かけてアルミニウム成分に加え、最終混合物中のチタンとアルミニウムとのモル比は1:0.01~1:4の範囲である。
【0034】
[0035]他の実施形態においては、好適な触媒系は、不活性有機溶媒中、-40℃~200℃、好ましくは-20℃~150℃の範囲の温度におけるチタン(IV)化合物とトリアルキルアルミニウム化合物の1段階又は2段階反応によって得られる。第1段階におい
ては、チタン(IV)化合物を、-40℃~100℃、好ましくは-20℃~50℃の範囲の温度において、1:0.1~1:0.8の範囲のチタンとアルミニウムとのモル比を使用して、トリアルキルアルミニウム化合物と反応させる。出発物質の濃度は、チタン(IV)化合物については0.1~9.1モル/L、好ましくは5~9.1モル/Lの範囲であり、トリアルキルアルミニウム化合物については0.05~1モル/L、好ましくは0.1~0.9モル/Lの範囲である。チタン成分は、0.1分~800分、好ましくは30分~600分かけてアルミニウム化合物に加える。用いる場合には、第2段階において、第1段階で得られた反応生成物を、-10℃~150℃、好ましくは10℃~130℃の範囲の温度において、1:0.01~1:5の範囲のチタンとアルミニウムとのモル比を使用して、トリアルキルアルミニウム化合物で処理する。
【0035】
[0036]更に他の実施形態においては、好適な触媒系は、第1反応段階においてマグネシウムアルコラートを不活性炭化水素中で50℃~100℃の温度において塩化チタンと反応させる手順によって得られる。第2反応段階においては、形成された反応混合物を、110℃~200℃の温度において約10~100時間熱処理にかけ(付随して更なる塩化アルキルが放出されなくなるまで塩化アルキルを発生させる)、次に炭化水素で数回洗浄することによって固体から可溶性反応生成物を除去する。
【0036】
[0037]更なる実施形態においては、シリカ上に担持された触媒、例えば商業的に入手できる触媒系のSylopol 5917を使用することもできる。
[0038]このような触媒系を使用すると、重合は、通常は、懸濁液中、低圧及び低温において、1つ又は複数の工程で、連続的又はバッチ式で行われる。重合温度は、通常は30℃~130℃の範囲であり、好ましくは50℃~90℃の範囲であり、エチレン分圧は、通常は10MPa未満、好ましくは0.05~5MPaである。例えばイソプレニルアルミニウム及びトリイソブチルアルミニウムなど(しかしながらこれらに限定されない)の
トリアルキルアルミニウムを、Al:Ti(助触媒:触媒)の比が0.01~100:1の範囲、より好ましくは0.03~50:1の範囲になるように共触媒として使用する。溶媒は、チーグラータイプの重合に関して通常使用されるような不活性有機溶媒である。例は、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキセン、オクタン、ノナン、デカン、それらの異性体及びそれらの混合物である。ポリマーの分子量は、水素を供給することによって制御される。エチレン分圧に対する水素分圧の比は、0~50の範囲、好ましくは0~10の範囲である。ポリマーを単離し、流動床乾燥機内において窒素下で乾燥させる。溶媒は、高沸点溶媒を使用する場合には水蒸気蒸留によって除去することができる。長鎖脂肪酸の塩を安定剤として加えることができる。典型例は、カルシウム、マグネシウム、及び亜鉛のステアレートである。
【0037】
[0039]場合によっては、フィリップス触媒、メタロセン、及びポストメタロセンのような他の触媒を使用することができる。一般に、アルモキサン又はアルキルアルミニウム或いはアルキルマグネシウム化合物のような共触媒を使用することもできる。他の好適な触媒系には、フェノラートエーテルリガンドの第4族金属錯体が含まれる。
【0038】
[0040]本発明によれば、ポリエチレンポリマーを粒子に成形して可塑剤と混合する。可塑剤中への溶解速度を劇的にかつ予想外に増加させるため、及び/又は均一なゲル状材料を迅速に形成するために、ポリエチレンは、2つの物理的特徴の少なくとも1つを有するように特に選択される。一実施形態においては、例えば、ポリエチレン粒子は、DIN-53466に従って測定して比較的低い嵩密度を有するポリエチレンポリマーから形成される。例えば、一実施形態においては、嵩密度は、一般に約0.4g/cm未満、例えば約0.35g/cm未満、例えば約0.33g/cm未満、例えば約0.3g/cm未満、例えば約0.28g/cm未満、例えば約0.26g/cm未満である。嵩密度は、一般に約0.1g/cmより大きく、例えば約0.15g/cmより大きい。一実施形態においては、ポリマーは、約0.2g/cm~約0.27g/cmの嵩密度を有する。
【0039】
[0041]或いは、又は比較的低い嵩密度を有することに加えて、ポリエチレン粒子は、制御された粒径分布を有していてよい(これも、加熱された際に可塑剤中への溶解時間を劇的に改善することが見出された)。一実施形態においては、例えば、ポリエチレン粒子は自由流動性粉末であってよい。本発明によれば、粒子は、125ミクロン未満のメジアン粒径(d50)を有していてよい。例えば、ポリエチレン粒子のメジアン粒径(d50)は、約110ミクロン未満、例えば約105ミクロン未満、例えば約100ミクロン未満、例えば約95ミクロン未満であってよい。メジアン粒径(d50)は、一般に約60ミクロンより大きい。例えば、メジアン粒径(d50)は、約60ミクロンから125ミクロン未満まで、例えば約70ミクロン~約110ミクロンであってよい。粉末の粒径は、ISO-13320にしたがってレーザー回折法を用いて測定することができる。
【0040】
[0042]上記の範囲内のメジアン粒径を有することに加えて、ポリエチレンポリマー粒子の粒径分布は、より大きな粒子を比較的少ししか含まないか又は全く含まないように制御することもできる。例えば、一実施形態においては、ポリエチレン粒子の90%は約180ミクロン未満の粒径を有していてよい。他の実施形態においては、ポリエチレン粒子の90%は、約170ミクロン未満、例えば約165ミクロン未満、例えば約160ミクロン未満、例えば約155ミクロン未満、例えば約150ミクロン未満、例えば約145ミクロン未満、例えば約140ミクロン未満、例えば約135ミクロン未満、例えば約130ミクロン未満、例えば約125ミクロン未満、例えば約120ミクロン未満の粒径を有していてよい。
【0041】
[0043]上記の物理的特徴は、可塑剤とブレンドし、ゲル加工中に均一な溶液を形成する
ポリマー粒子の能力を劇的に改善することが見出された。一実施形態においては、ポリマー組成物中において使用するために選択されるポリエチレンポリマーは、比較的高い分子量を有していてよい。例えば、分子量は、ポリマーの嵩密度に対して比較的高くてよい。特に有利なことには、比較的高分子量のポリマーであっても可塑剤と迅速にブレンドすることができ、極めて短い溶解時間を有し得ることが見出された。例えば幾つかの用途においては、比較的高分子量のポリマーの使用が好ましい場合がある。高分子量ポリマーの使用は例えば、得られる生成物の強度特性のような得られる生成物の種々の物理特性を改善することができる。
【0042】
[0044]ポリエチレンポリマーは、例えばMargolies式に従って求められる平均分子量を
有していてよい。分子量は、最初にDIN-EN-ISO試験1628に従って粘度数を測定することによって求めることができる。25mmのノズルを用いて乾燥粉末流量を測定する。次に、粘度数から、Margolies式を使用して、少なくとも約500,000g/
モル、又はそれより大きく、例えば約1,000,000g/モルより大きく、例えば約1,500,000g/モルより大きく、例えば約2,000,000g/モルより大きく、例えば約2,500,000g/モルより大きく、例えば約3,000,000g/モルより大きく、例えば約3,500,000g/モルより大きく、例えば約4,000,000g/モルより大きい分子量が算出される。平均分子量は、一般に約12,000,000g/モル未満、例えば約10,000,000g/モル未満である。
【0043】
[0045]ポリエチレンは、ISO-1628第3部に従って0.0002g/mLのデカヒドロナフタレン中の濃度を使用して求めて、少なくとも100mL/g、例えば少なくとも500mL/g、例えば少なくとも1,500mL/g、例えば少なくとも2,000mL/g、例えば少なくとも4,000mL/gであり約6,000mL/g未満、例えば約5,000mL/g未満、例えば約4,000mL/g未満、例えば約3,000mL/g未満、例えば約1,000mL/g未満の粘度数を有していてよい。
【0044】
[0046]ポリエチレンは、少なくとも約40%~85%、例えば45%~80%の結晶化度を有していてよい。
[0047]ゲル紡糸又は押出プロセスによってポリマー物品を形成するために、上記のポリエチレン粒子を可塑剤と混合してポリマー組成物を形成する。一般に、ポリエチレン粒子は、約50重量%以下の量でポリマー組成物中に存在させる。例えば、ポリエチレン粒子は、約45重量%未満の量、例えば約40重量%未満の量、例えば約35重量%未満の量、例えば約30重量%未満の量、例えば約25重量%未満の量、例えば約20重量%未満の量、例えば約15重量%未満の量、例えば約10重量%未満の量、例えば約5重量%未満の量でポリマー組成物中に存在させることができる。ポリエチレン粒子は、約1重量%より多い量、例えば約3重量%より多い量、例えば約5重量%より多い量、例えば約10重量%より多い量、例えば約15重量%より多い量、例えば約20重量%より多い量、例えば約25重量%より多い量で組成物中に存在させることができる。ゲル加工の間において、可塑剤は、ポリマー物品を形成する際に実質的か又は完全に除去することができる。例えば、一実施形態においては、得られるポリマー物品には、約70重量%より多い量、例えば約80重量%より多い量、例えば約85重量%より多い量、例えば約90重量%より多い量、例えば約95重量%より多い量、例えば約98重量%より多い量、例えば約99重量%より多い量のポリエチレンポリマーを含ませることができる。
【0045】
[0048]一般に、可塑剤がゲル紡糸又は押出に適したゲル状材料を形成することができる限りにおいて任意の好適な可塑剤をポリエチレン粒子と混合することができる。可塑剤は、例えば、炭化水素油、アルコール、エーテル、ジエステルのようなエステル、又はそれらの混合物を含んでいてよい。例えば、好適な可塑剤としては、鉱油、パラフィン油、デカリンなどが挙げられる。他の可塑剤としては、キシレン、ジオクチルフタレート、ジブ
チルフタレート、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、デシルアルコール、ノニルアルコール、ジフェニルエーテル、n-デカン、n-ドデカン、オクタン、ノナン、ケロセン、トルエン、ナフタレン、テトラリンなどが挙げられる。一実施形態においては、可塑剤はモノクロロベンゼンのようなハロゲン化炭化水素を含んでいてよい。カンフェン、メタン、ジペンテン、メチルシクロペンタジエン、トリシクロデカン、1,2,4,5-テトラメチル-1,4-シクロヘキサジエンなどのようなシクロアルカン及びシクロアルケンも使用することができる。可塑剤は、更に上記のいずれかの混合物及び組み合わせを含んでいてもよい。
【0046】
[0049]可塑剤は、一般に、ポリマー物品を形成するために使用される組成物中に、約50重量%より多い量、例えば約55重量%より多い量、例えば約60重量%より多い量、例えば約65重量%より多い量、例えば約70重量%より多い量、例えば約75重量%より多い量、例えば約80重量%より多い量、例えば約85重量%より多い量、例えば約90重量%より多い量、例えば約95重量%より多い量、例えば約98重量%より多い量で存在する。実際に、可塑剤は、約99.5重量%以下の量で存在させることができる。
【0047】
[0050]本発明に従って製造されるポリエチレン粒子を可塑剤と混合すると、粒子は可塑剤と急速にブレンドして均一なゲル状材料を形成する。例えば、本発明に従って製造されるポリエチレン粒子は、下記の実施例において記載される溶解度試験に従って試験した場合に、約3分未満、例えば約2.5分未満、例えば約2分未満、例えば更には約1.8分未満の溶解度を有し得る。溶解度は、一般に約0.1分より大きい。
【0048】
[0051]本発明によるポリマー物品を形成するために、ポリエチレン粒子を可塑剤と混合し、所望の形状のダイを通して押出す。一実施形態においては、組成物を押出機内で加熱することができる。例えば、可塑剤をポリエチレン粒子と混合し、押出機中に供給することができる。本発明によれば、可塑剤及びポリエチレン粒子は、不純物を少ししか有しないか又は全く有しないポリマー物品を形成するために、押出機から排出される前に均一なゲル状材料を形成する。
【0049】
[0052]一実施形態においては、ゲル紡糸又は押出プロセス中に細長い物品が形成される。ポリマー物品は、例えば、繊維、フィルム、又は膜の形態であってよい。
[0053]このプロセスの間に、可塑剤の少なくとも一部が最終生成物から除去される。可塑剤除去プロセスは、比較的揮発性の可塑剤が使用される場合には蒸発によって行うことができる。別の形態では、抽出液を使用して可塑剤を除去することができる。一実施形態においては、蒸発及び抽出の両方が使用される。
【0050】
[0054]所望であれば、得られるポリマー物品をポリエチレンポリマーの融点より低い昇温温度において延伸して、強度及び弾性率を増大させることができる。延伸のために好適な温度は、ほぼ周囲温度から約155℃までの範囲である。延伸比は、一般に約4より大きく、例えば約6より大きく、例えば約8より大きく、例えば約10より大きく、例えば約15より大きく、例えば約20より大きく、例えば約25より大きく、例えば約30より大きくすることができる。幾つかの実施形態においては、延伸比は、約50より大きく、例えば約100より大きく、例えば約110より大きく、例えば約120より大きく、例えば約130より大きく、例えば約140より大きく、例えば約150より大きくすることができる。延伸比は、一般に約1,000未満、例えば約800未満、例えば約600未満、例えば約400未満である。一実施形態においては、約4~約10のようなより低い延伸比を使用する。ポリマー物品は、一軸延伸又は二軸延伸することができる。
【0051】
[0055]本発明に従って製造されるポリマー物品は、数多くの使途及び用途を有する。例えば、一実施形態においては、本方法を使用して膜を製造する。膜は、例えば電池セパレ
ータとして使用することができる。或いは、膜はマイクロフィルターとして使用することができる。繊維を製造する場合には、繊維を用いて、不織布、ロープ、ネットなどを製造することができる。一実施形態においては、繊維は防弾衣における充填材料として使用することができる。
【0052】
[0056]本発明に従って製造されるポリマー組成物及びポリマー物品には、熱安定剤、光安定剤、UV吸収剤、難燃剤、潤滑剤、着色剤、酸スカベンジャーなどのような種々の他の添加剤を含ませることができる。
【0053】
[0057]一実施形態においては、熱安定剤を組成物中に存在させることができる。熱安定剤としては、ホスファイト、アミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0054】
[0058]一実施形態においては、酸化防止剤を組成物中に存在させることができる。酸化防止剤としては、第二級芳香族アミン、ベンゾフラノン、立体障害フェノール、又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0055】
[0059]一実施形態においては、光安定剤を組成物中に存在させることができる。光安定剤としては、2-(2’-ヒドロキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-ヒドロキシ-4-アルコキシベンゾフェノン、ニッケル含有光安定剤、3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンゾエート、立体障害アミン(HALS)、又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0056】
[0060]一実施形態においては、光安定剤の代わりか、又はそれに加えて、UV吸収剤を組成物中に存在させることができる。UV吸収剤としては、ベンゾトリアゾール、ベンゾエート、又はそれらの組み合わせ、或いはそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0057】
[0061]一実施形態においては、ハロゲン化難燃剤を組成物中に存在させることができる。ハロゲン化難燃剤としては、テトラブロモビスフェノールA(TBBA)、テトラブロモフタル酸無水物、ドデカクロロペンタシクロオクタデカジエン(デクロラン)、ヘキサブロモシクロドデカン、塩素化パラフィン、又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0058】
[0062]一実施形態においては、非ハロゲン化難燃剤を組成物中に存在させることができる。非ハロゲン化難燃剤としては、レゾルシノール二リン酸テトラフェニルエステル(RDP)、アンモニウムポリホスフェート(APP)、ホスフィン酸誘導体、トリアリールホスフェート、トリクロロプロピルホスフェート(TCPP)、水酸化マグネシウム、アルミニウムトリヒドロキシド、三酸化アンチモンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0059】
[0063]一実施形態においては、潤滑剤を組成物中に存在させることができる。潤滑剤としては、シリコーン油、ワックス、二硫化モリブデン、又はそれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0060】
[0064]一実施形態においては、着色剤を組成物中に存在させることができる。着色剤として、無機及び有機系の着色顔料を挙げることができるが、これらに限定されない。
[0065]一実施形態においては、酸スカベンジャーを組成物中に存在させることができる。酸スカベンジャーの一例は、例えばステアリン酸カルシウムである。
【0061】
[0066]これらの添加剤は、単独か、又はそれらの任意の組み合わせで使用することができる。一般に、他に示していない限りにおいて、添加剤を使用する場合には、それらは少なくとも約0.05重量%、例えば少なくとも約0.1重量%、例えば少なくとも約0.25重量%、例えば少なくとも約0.5重量%、例えば少なくとも約1重量%で、一般に約20重量%未満、例えば約10重量%未満、例えば約5重量%未満、例えば約4重量%未満、例えば約2重量%未満の量で存在させることができる。ポリマー組成物中において使用される全ての成分(存在する場合には添加剤を含む)の重量%の合計は、100重量%である。
【実施例0062】
[0067]本発明は、下記の実施例を参照してより良く理解することができる。下記の実施例は、限定の目的ではなく、例示の目的で下記に与える。本発明の幾つかの利点及び有利性を示すために、以下の実験を行った。
【0063】
実施例1
[0068]同等の分子量(400~450万グラム/モル)及び異なる嵩密度を有する3つのグレードの高密度ポリエチレンを選択した。試料は、100~125マイクロメートルの粒径の中間画分が得られるように篩別した。従って、異なる値の嵩密度を有する同等の値の分子量及び粒径のものが得られた。嵩密度は、国際標準規格ISO-60によって求めた。
【0064】
[0069]溶解度試験を行って、鉱油中での溶解時間を求めた。
溶解度試験
[0070]下記の溶解度試験を使用して、異なる試料に関する溶解時間を求めた。ポリマー粒子を、規定された条件下で、スクリュー上にかかるトルクをモニターしながら、油と混合した。
【0065】
[0071]樹脂が油中に溶解すると、ポリマー鎖によって流体の粘度が増加し(VN試験と同じ原理)、トルクの増加をもたらす。全ての樹脂が油中に溶解すると、トルクは平衡レベルに達する。平衡トルクに達するのに必要な時間が、樹脂の溶解時間に関する尺度である。
【0066】
[0072]使用した装置:スクリュー状撹拌機を備えたHaake RheoStress 600。
[0073]試料の調製
1.80gの加工油、450mgのIrganox B215、及び225mgの樹脂粉末を計量ボウル中に秤量する。
【0067】
2.ボウルをRheostressに取り付け、測定プログラムを開始する。
[0074]試験プログラム
1.ボウルを180℃に加熱する。
【0068】
2.温度に達したら、スクリューのrpmを130rpmに設定する。
3.トルクの読み値を記録しながら、150分攪拌し続ける。
[0075]データ評価
1.トルク(粘度)が一定である領域を特定する。
【0069】
2.この領域(通常は140~160分)内で線形フィット(水平線)を作成する。
3.フィットラインに関する信頼区間を計算する。
4.信頼区間内の最初のデータ点を特定して溶解時間を求める。
【0070】
5.最終粘度については、線形フィット領域における平均粘度を求める。
[0076]4つの試料の粘度試験を図1に示す。溶解時間を下表に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
[0077]上記に示したように、より低い嵩密度の試料は、予想外に且つ劇的に溶解時間を減少させた。
【0073】
実施例2
[0078]下記の実施例は、粒径分布が溶解時間に対して劇的な効果を与え得ることを実証するために行った。
【0074】
[0079]高密度ポリエチレン粉末の2つの異なる試料を選択した。試料No.1は98ミクロンの平均粒径(d50)を有し、試料No.2は135ミクロンの平均粒径(d50)を有していた。粒径分布を除いて、試料中において使用されたポリエチレンポリマーは比較的同等であった。
【0075】
[0080]異なる試料を上記の溶解度試験にかけた。更に、ポリエチレン粒子をゲル押出し、得られたポリマー物品を種々の特性について試験した。以下の結果が得られた。
【0076】
【表2】
【0077】
[0081]上記に示したように、異なる粒径分布の試料No.1は、試料No.2に対して溶解時間を50%より多く短縮した。
[0082]本発明に対するこれら及び他の修正及び変更は、添付の特許請求の範囲においてより詳しく示す本発明の精神及び範囲から逸脱することなく当業者によって実施することができる。更に、種々の態様の複数の形態は、全体的又は部分的の両方で置き換えることができることを理解すべきである。更に、当業者であれば、上記の記載は例のみの目的であり、添付の特許請求の範囲において記載されている発明を更に限定することは意図しないことを認識するであろう。本願の原出願の出願時の特許請求の範囲の記載を以下に転記する。
[態様1]
ゲル押出物品を製造するためのポリマー組成物であって、
可塑剤;及び
前記可塑剤と混合された高密度ポリエチレン粒子;
を含み;
前記高密度ポリエチレン粒子は、以下の特徴:
(a)約0.35g/cm未満の嵩密度;及び/又は
(b)125ミクロン未満のメジアン粒径(d50)、ここで前記粒子の90%は約180ミクロン未満の粒径を有する;
の少なくとも1つを有し、前記高密度ポリエチレンは約1,500,000g/モルより高い平均分子量を有する、前記ポリマー組成物。
[態様2]
前記高密度ポリエチレン粒子が約0.33g/cm未満の嵩密度を有する、態様1に記載のポリマー組成物。
[態様3]
前記高密度ポリエチレン粒子が、約0.3g/cm未満、例えば約0.28g/cm未満、例えば約0.26g/cm未満で、約0.15g/cmより高い嵩密度を有する、態様1に記載のポリマー組成物。
[態様4]
前記高密度ポリエチレン粒子が約100ミクロン未満のメジアン粒径(d50)を有する、態様1に記載のポリマー組成物。
[態様5]
前記高密度ポリエチレン粒子が、約60ミクロンから110ミクロン未満まで、例えば約70ミクロン~約100ミクロンのメジアン粒径(d50)を有する、態様1に記載のポリマー組成物。
[態様6]
前記高密度ポリエチレン粒子の90%が、約170ミクロン未満、例えば約165ミクロン未満の粒径を有する、態様1~5のいずれかに記載のポリマー組成物。
[態様7]
溶解度試験に従って試験した場合に、前記高密度ポリエチレン粒子が、約3分未満、例えば約2.5分未満、例えば約2分未満の溶解度を有する、態様1~6のいずれかに記載のポリマー組成物。
[態様8]
前記高密度ポリエチレン粒子が前記特徴(a)及び(b)の両方を有する、態様1に記載のポリマー組成物。
[態様9]
前記高密度ポリエチレン粒子が約50重量%以下の量で前記組成物中に存在する、態様1~8のいずれかに記載のポリマー組成物。
[態様10]
前記可塑剤が、鉱油、パラフィン油、炭化水素、アルコール、エーテル、エステル、又はそれらの混合物を含む、態様1~9のいずれかに記載のポリマー組成物。
[態様11]
前記高密度ポリエチレンが、約2,000,000g/モルより大きく、例えば約2,500,000g/モルより大きく、例えば約3,000,000g/モルより大きく、例えば約3,500,000g/モルより大きく、例えば約4,000,000g/モルより大きい分子量を有する、態様1~10のいずれかに記載のポリマー組成物。
[態様12]
前記高密度ポリエチレンがチーグラー・ナッタ触媒超高分子量ポリエチレンである、態様1~11のいずれかに記載のポリマー組成物。
[態様13]
前記可塑剤が、デカリン、キシレン、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、デシルアルコール、ノニルアルコール、ジフェニルエーテル、n-デカン、n-ドデカン、オクタン、ノナン、ケロセン、トルエン、ナフタレン、テトラリン、モノクロロベンゼン、カンフェン、メタン、ジペンテン、メチルシクロペンタジエン、トリシクロデカン、1,2,4,5-テトラメチル-1,4-シクロヘキサジエン、又はそれらの混合物を含む、態様1~12のいずれかに記載のポリマー組成物。
[態様14]
ポリマー物品の製造方法であって、
態様1~13のいずれかに記載のポリマー組成物をゲル状組成物に形成する工程;
ダイを通して前記ゲル状組成物を押出してポリマー物品を形成する工程であって、ここで前記ポリマー物品は、繊維、フィルム、又は膜を含む、前記工程;
を含む、前記方法。
[態様15]
前記ポリマー物品から前記可塑剤の少なくとも一部を除去する工程を更に含む、態様14に記載の方法。
[態様16]
繊維、フィルム、又は膜を含むポリマー物品であって、前記ポリマー物品は、
可塑剤と高密度ポリエチレン粒子を混合してゲル状組成物を形成し、ここで前記高密度ポリエチレン粒子は、以下の特徴:
(a)約0.35g/cm未満の嵩密度;及び/又は
(b)125ミクロン未満のメジアン粒径(d50)、ここで前記粒子の90%は約180ミクロン未満の粒径を有する;
の少なくとも1つを有し、前記高密度ポリエチレンは約1,500,000g/モルより高い平均分子量を有する;そして
ダイを通して前記ゲル状組成物を押出して前記ポリマー物品を形成する;
ことによって製造される、前記ポリマー物品。
[態様17]
前記高密度ポリエチレン粒子が、約0.3g/cm未満、例えば約0.28g/cm未満、例えば約0.26g/cm3未満で、約0.15g/cm3より高い嵩密度を有する、態様16に記載のポリマー物品。
[態様18]
前記高密度ポリエチレン粒子が、約60ミクロンから110ミクロン未満まで、例えば約70ミクロン~約100ミクロンのメジアン粒径(d50)を有する、態様16に記載のポリマー物品。
[態様19]
前記高密度ポリエチレン粒子が前記特徴(a)及び(b)の両方を有する、態様16に記載のポリマー物品。
[態様20]
前記ポリマー物品が膜を含む、態様16に記載のポリマー物品。
[態様21]
前記ポリマー物品が繊維を含む、態様16に記載のポリマー物品。
図1