(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041848
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】新規な抗炎症性ペプチド及びその用途
(51)【国際特許分類】
C12N 15/11 20060101AFI20240319BHJP
C07K 7/06 20060101ALI20240319BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240319BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20240319BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240319BHJP
A61K 47/42 20170101ALI20240319BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20240319BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20240319BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20240319BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20240319BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240319BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20240319BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240319BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240319BHJP
A61P 21/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240319BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240319BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20240319BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240319BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240319BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20240319BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240319BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240319BHJP
A61P 1/18 20060101ALI20240319BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240319BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C12N15/11 Z
C07K7/06 ZNA
C07K19/00
A61K38/08
A61P29/00
A61K47/42
A61P31/04
A61P11/06
A61P11/02
A61P37/08
A61P1/04
A61P13/12
A61P1/16
A61P25/04
A61P21/00
A61P31/12
A61P31/14
A61P31/10
A61P17/02
A61P9/10
A61P19/06
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P27/02
A61P1/18
A61P17/00
A61P37/02
A61P25/00
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024000657
(22)【出願日】2024-01-05
(62)【分割の表示】P 2022573221の分割
【原出願日】2021-05-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0064483
(32)【優先日】2020-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Witepsol
2.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522461309
【氏名又は名称】ミト クエスト カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【弁理士】
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】ユン,チャン ミン
(72)【発明者】
【氏名】バク,ピル ゼ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】抗炎症用ペプチド、これを含む抗炎症用組成物及び炎症疾患の予防又は治療用の薬学組成物を提供する。
【解決手段】特定のアミノ酸配列及びこれらの変形したアミノ酸配列により構成された群から選択された1つ以上を含む抗炎症用ペプチドを提供する。本願の一具現例に係る抗炎症用ペプチドは、細胞毒性がなく、Mitochondrial Antiviral Signaling Protein(MAVS)活性化、免疫/炎症活性化反応機転、炎症性サイトカイン及びインフラマソームの発現又は活性などを抑制する効果を有するので、上記ペプチドは、抗炎症又は炎症性疾患治療用組成物に応用することができる。
【選択図】
図1a
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X1LVLAX6ARWで表されるアミノ酸配列からなる、抗炎症用ペプチドであって、
前記アミノ酸X1がSであり、前記アミノ酸X6がD、A、F、G、H、I、L、M、Q、S、T、又はW;あるいは、
前記アミノ酸X6がAであり、前記アミノ酸X1がA、C、F、H、I、L、M、R、又はYである、抗炎症用ペプチド。
【請求項2】
前記ペプチドは、N末端又はC末端が変異したものであり、
前記変異は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基、及びポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)により構成された群から選択される保護基が結合されるか、
前記変異は、アセチル化又はアミン化である、請求項1に記載の抗炎症用ペプチド。
【請求項3】
前記ペプチドは、細胞透過性ペプチドをさらに含む、請求項1に記載の抗炎症用ペプチド。
【請求項4】
前記ペプチドは、MAVS(mitochondrial antiviral-signaling)タンパク質の凝集を抑制する、請求項1に記載の抗炎症用ペプチド。
【請求項5】
前記ペプチドは、炎症性サイトカイン又はインフラマソームの発現を抑制する、請求項1に記載の抗炎症用ペプチド。
【請求項6】
前記ペプチドは、細菌又はウイルスにより誘発される炎症を抑制する、請求項1に記載の抗炎症用ペプチド。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の抗炎症用ペプチドを暗号化する、ポリヌクレオチド。
【請求項8】
請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の抗炎症用ペプチドを有効成分として含む、抗炎症用組成物。
【請求項9】
請求項1乃至請求項6のうち何れか一項に記載の抗炎症用ペプチドを有効成分として含む、炎症性疾患予防又は治療用薬学組成物。
【請求項10】
前記炎症性疾患は、敗血症、敗血症性ショック、全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome)、急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome)、喘息、アレルギー性鼻炎、非アレルギー性鼻炎、慢性鼻炎、急性鼻炎、慢性胃炎、急性胃炎、慢性腸炎、急性腸炎、潰瘍性胃炎、急性腎臓炎、慢性腎臓炎、急性肝炎、慢性肝炎、慢性閉塞性肺疾患、特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis、IPF)、過敏性大腸症候群、炎症性痛症、頭痛、腰痛、線維筋痛、筋膜疾患、ウイルス感染、C型感染、バクテリア感染、カビ感染、火傷、外科的又は歯科的手術による傷、プロスタグランジンE過多症候群、アテローム性動脈硬化症、通風、関節炎、リウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、ホジキン病、膵臓炎、結膜炎、虹彩炎、強膜炎、ぶどう膜炎、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus、SLE)及び多発性硬化症により構成された群から選択された1つ以上である、請求項9に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、配列番号1乃至63のアミノ酸配列及びこれらの変形したアミノ酸配列により構成された群から選択された1つ以上を含む抗炎症用ペプチド、これを含む抗炎症用組成物及び炎症疾患の予防又は治療用の薬学組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、経済発展による医療技術の発達及び平均寿命延長によって高齢者の割合が増え続けており、環境汚染及びストレスの増加による免疫系の異常から炎症反応の慢性化が進められ、アトピー、喘息などの慢性炎症性疾患が増加している傾向にある(Chang et al.,1994,Korean J.Gastroentrol.,26:907-918.;Heinzemann and Daser,2002,Int.Arch.Allergy Immunol.127:170-180.;Song et al.,1998,Korean J.Intern.Med.,55:158-168.;Sung et al.,2012,J.Ethnopharmacol.144:94-100.)。
【0003】
一般的に、炎症反応は、細菌又はウイルス感染のような外部刺激(病原体関連分子パターン、pathogen-associated molecular pattern、PAMP)や組織損傷による生体内代謝産物のような内部刺激(ダメージ関連分子パターン、danger-associated molecular pattern、DAMP)に対する生体組織の防衛機転であって、細胞内の様々な炎症調節因子であるTNF-α(tumor necrosis factor-α)、IL-1β(interleukin-1β)、IL-6(interleukin-6)などのような数々のサイトカイン(cytokine)及び酸化窒素(nitric oxide、NO)が生成されながら発生する。内毒素として知られているリポ多糖(lipopolysaccharide、LPS)は代表的な病原体関連分子パターンの一例であり、グラム陰性菌の細胞外膜に存在し、大食細胞又は単核細胞において細胞内転写要素であるNF-κB(nuclear factor-κB)の活性化を誘導することによって炎症性サイトカイン、iNOS(inducible nitric oxide synthase)、COX-2(cyclooxygenase-2)の遺伝子発現を誘導し、炎症媒介物質を生成する。よって、病原体関連分子パターン又はダメージ関連分子パターンによる炎症反応(例えば、iNOS、COX-2、又はNF-κBの発現、及びサイトカインと酸化窒素の分泌など)を調節する物質が炎症疾患の予防及び治療剤として最近注目されている(Dela Cruz and Kang,2018,Mitochondrion,41:37-44;Kim et al,2013b,J.Korean Med.Ophthalmol.Otolaryngol.Dermatol.,26:54-64.)。
【0004】
現在、抗炎の目的で利用されている物質としては、非ステロイド系のフルフェナム酸(flufenamic acid)、イブプロフェン(ibuprofen)、ベンジダミン(benzydamine)、インドメタシン(indomethacin)など;ステロイド系としてプレドニゾロン(prednisolone)、デキサメタゾン(dexamethasone)、ベタメタゾン(betamethasone)、ヒドロコルチゾン(hydrocortisone)などがあるが、これらの物質は毒性が強く、肝臓損傷、癌、脳卒中のような数々の深刻な副作用をもたらし、使用時に制限が伴われる。また、炎症の原因物質に選択的に作用することができず、深刻な免疫抑制を誘発してしまう問題が生じることもある。そこで、生体に安全で且つ、従来の医薬品に比べて長期間摂取が容易という長所を有する天然物を利用した炎症治療剤の開発が行われているが、天然物から抽出した抗炎症物質の場合、効能を現わす有効濃度が弱く、農耕地などで栽培しなければならないので、生産費用が多く所要されるなどの問題がある。
【0005】
上記のような問題点を改善するために、既存の化学的炎症治療剤又は天然物を利用した炎症治療剤の代案として、新たな概念の抗炎症剤が開発されており、特に、抗炎症活性を有するペプチドの合成に多くの研究が行われている。
【0006】
しかし、一般的に合成されたペプチドは、試験管内(in vitro)実験において非常に良い抗炎症活性を有し、細胞毒性を示さないが、実際の生体内(in vivo)実験では抗炎症効果が微々たる場合が多い。
【0007】
それには様々な理由があるが、主に、生体内の生理及び解剖学的条件が試験管内の実験条件とは大いに異なっているためである。その一、生理条件である塩(salt)が存在すれば、正電荷が低いペプチドは活性が著しく阻害される。その二、ペプチドは小さい分子量とサイズを有するため、腎臓で殆ど吸収されて体外に排出される。その三、生体内の全ての組織や細胞、体液及び血液などに存在するタンパク質及びペプチド分解酵素(protease及びpeptidase)によって切られやすくなり、活性をなくしてしまう。
【0008】
そこで、本発明者らは、上記した問題を解決しつつ、優れた抗炎症活性を現わす物質を開発するために鋭意努力した結果、一般的なアミノ酸残基5~15個を使用して経済的に大量生産可能なペプチドを開発しており、上記ペプチドは、細胞毒性を示さず、優れた抗炎症活性を示すことを確認したことによって、本発明を完成した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願は、配列番号1乃至63のアミノ酸配列及びこれらの変形したアミノ酸配列により構成された群から選択された1つ以上を含む抗炎症用ペプチド、これを含む抗炎症用組成物及び炎症疾患の予防又は治療用の薬学組成物を提供する。
【0010】
だが、本願が解決しようとする課題は、以上で言及した課題に限定されず、言及されていないもう一つの課題は、下記の記載から当業者に明確に理解できるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本願の第1の側面は、配列番号1乃至63のアミノ酸配列及びこれらの変形したアミノ酸配列により構成された群から選択された1つ以上を含む、抗炎症用ペプチドを提供する。
【0012】
本願の第2の側面は、本願の抗炎症用ペプチドを暗号化する、ポリヌクレオチドを提供する。第1の側面と重複する内容は、第2の側面のポリヌクレオチドにも共に適用される。
【0013】
本願の第3の側面は、本願の抗炎症用ペプチドを有効成分として含む、抗炎症用組成物を提供する。第1の側面及び第2の側面と重複する内容は、第3の側面の組成物にも共に適用される。
【0014】
本願の第4の側面は、本願の抗炎症用ペプチドを有効成分として含む、炎症性疾患予防又は治療用薬学組成物を提供する。第1の側面乃至第3の側面と重複する内容は、第4の側面の組成物にも共に適用される。
【発明の効果】
【0015】
本願の一具現例に係る抗炎症用ペプチドは、細胞毒性がなく、Mitochondrial Antiviral Signaling Protein(MAVS)活性化、免疫/炎症活性化反応機転、炎症性サイトカイン及びインフラマソームの発現又は活性などを抑制する効果を有するので、上記ペプチドは、抗炎症又は炎症性疾患治療用組成物に応用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1a】本願において開発した新規な抗炎症性ペプチドの構造を示す図である。
【
図1b】本願において開発した新規な抗炎症性ペプチドの構造を示す図である。
【
図1c】本願において開発した新規な抗炎症性ペプチドの構造を示す図である。
【
図1d】本願において開発した新規な抗炎症性ペプチドの構造を示す図である。
【
図1e】本願において開発した新規な抗炎症性ペプチドの構造を示す図である。
【
図1f】本願において開発した新規な抗炎症性ペプチドの構造を示す図である。
【
図2】本願の抗炎症性ペプチドのMAVS凝集抑制効果を確認した実験結果を示す図である。
【
図3a】本願の抗炎症性ペプチドのpolyinosinic:polycytidylic acid(polyIC)によって誘導されたIFN-βに対する発現抑制効果を確認した実験結果を示す図である。
【
図3b】本願の抗炎症性ペプチドのpolyinosinic:polycytidylic acid(polyIC)によって誘導されたIFN-βに対する発現抑制効果を確認した実験結果を示す図である。
【
図4】本願の抗炎症性ペプチドの細胞毒性を確認した実験結果を示す図である。
【
図5a】本願の抗炎症性ペプチドのLPS又はbacterial outer membrane vesicle(OMV)によって誘導されたIL-1βに対する発現抑制効果を確認した実験結果を示す図である。
【
図5b】本願の抗炎症性ペプチドのLPS又はbacterial outer membrane vesicle(OMV)によって誘導されたIL-1βに対する発現抑制効果を確認した実験結果を示す図である。
【
図5c】本願の抗炎症性ペプチドのLPS又はbacterial outer membrane vesicle(OMV)によって誘導されたIL-1βに対する発現抑制効果を確認した実験結果を示す図である。
【
図6a】本願の抗炎症性ペプチドのLPSによって誘導されたIL-6及びTNF-αに対する発現抑制効果を確認した実験結果を示す図である。
【
図6b】本願の抗炎症性ペプチドのLPSによって誘導されたIL-6及びTNF-αに対する発現抑制効果を確認した実験結果を示す図である。
【
図7】本願の抗炎症性ペプチドのLPSによって誘導されたNF-κBのリン酸化抑制効果を確認した実験結果を示す図である。
【
図8】本願の抗炎症性ペプチドの変形によるタンパク質分解酵素の抵抗性増大効果を確認した実験結果を示す図である。
【
図9a】本願の抗炎症性ペプチドMQP-37及びMQP-Y9の各配列をアラニン(alanine)に置換したペプチドのLPS/ATP又はpolyICによって誘導されたIL-1b又はIFN-bの生成抑制効果を確認した実験結果を示す図である。
【
図9b】本願の抗炎症性ペプチドMQP-37及びMQP-Y9の各配列をアラニン(alanine)に置換したペプチドのLPS/ATP又はpolyICによって誘導されたIL-1b又はIFN-bの生成抑制効果を確認した実験結果を示す図である。
【
図9c】本願の抗炎症性ペプチドMQP-37及びMQP-Y9の各配列をアラニン(alanine)に置換したペプチドのLPS/ATP又はpolyICによって誘導されたIL-1b又はIFN-bの生成抑制効果を確認した実験結果を示す図である。
【
図10a】本願の抗炎症性ペプチドMQP-37の1番目又は6番目の配列を他の19個のアミノ酸に置換したペプチドのLPS/ATP又はpolyICによって誘導されたIL-1b又はIFN-bの生成抑制効果を確認した実験結果を示す図である。
【
図10b】本願の抗炎症性ペプチドMQP-37の1番目又は6番目の配列を他の19個のアミノ酸に置換したペプチドのLPS/ATP又はpolyICによって誘導されたIL-1b又はIFN-bの生成抑制効果を確認した実験結果を示す図である。
【
図11】本願の抗炎症性ペプチドMQP-37とMQP-37A6のMAVSタンパク質との結合力を比較確認した実験結果を示す図である。
【
図12a】本願の抗炎症性ペプチドMQP-37とMQP37-A6の生理活性(LPS又はLPS/nigericinによるIL-6及びIL-1bの生成量、LPSによるNF-kBのリン酸化)効果を比較確認した実験結果を示す図である。
【
図12b】本願の抗炎症性ペプチドMQP-37とMQP37-A6の生理活性(LPS又はLPS/nigericinによるIL-6及びIL-1bの生成量、LPSによるNF-kBのリン酸化)効果を比較確認した実験結果を示す図である。
【
図13a】本願の抗炎症性ペプチドMQP-37とMQP-37D6Y、MQP-36D6W及びQP-37D6Hの生理活性(polyICによるIFN-bの生成量及び細胞死滅)効果を比較確認した実験結果を示す図である。
【
図13b】本願の抗炎症性ペプチドMQP-37とMQP-37D6Y、MQP-36D6W及びQP-37D6Hの生理活性(polyICによるIFN-bの生成量及び細胞死滅)効果を比較確認した実験結果を示す図である。
【
図14】本願の抗炎症性ペプチドMQP-37及びMQP-37A6のLPSによって誘導されたマウス敗血症動物モデルにおける敗血症治療効果を確認した実験結果を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下では、添付した図面を参照して、本願の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に行えるよう、本願の実施例を詳細に説明する。しかし、本願は様々な異なる形態で具現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。そして図面で本願を明確に説明するために説明と関係のない部分は省略し、明細書全体を通じて類似の部分に対しては類似の図面符号を付けた。
【0018】
本願明細書全体で、どの部分が他の部分と"連結"になっているとすると、これは"直接的に連結"なっている場合だけでなく、その中間に他のリンカーなどの物質を挟んで"間接的に連結"なっている場合も含む。
【0019】
本願明細書全体で、ある部分がある構成要素を"含む"とするとき、これは特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含めることができることを意味する。本願明細書全体で使用される程度の用語「約」、「実質的に」等は、言及された意味に固有の製造および物質許容誤差が提示される時、その数値からまたはその数値に近接した意味で使われ、本願の理解を助けるために正確または絶対的な数値が言及された開始内容を非良心的な侵害者が不当に利用することを防止するために使われる。本願明細書全体で使用される程度の用語"~(する)段階"または"~の段階"は"~のための段階"を意味しない。
【0020】
本願明細書全体、マクシ形式の表現に含まれる「これらの組み合わせ」の用語は、マクシ形式の表現に記載された構成要素からなる群から選択される1つ以上の混合または組み合わせを意味するもので、上記構成要素からなる群から選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0021】
本願明細書全体で、"A及び/又はB"の記載は"A又はB,又はA及びB"を意味する。
【0022】
以下、添付された図面を参照して、本願の具現例および実施例を詳しく説明する。しかし、本願がこのような具現例および実施例と図面に制限されないことがありえる。
【0023】
本願の第1の側面は、配列番号1乃至63のアミノ酸配列及びこれらの変形したアミノ酸配列により構成された群から選択された1つ以上を含む、抗炎症用ペプチドを提供する。
【0024】
本願の明細書全体において使用される用語「ペプチド(peptide)」は、ペプチド結合(-CO-NH-)によりアミノ酸残基が互いに結合して形成された線状の分子を意味する。本願のペプチドは、当業界において公知の化学的合成方法、特に固相合成技術(solid-phase synthesis techniques;Merrifield,J.Amer.Chem.Soc.85:2149-54(1963);Stewart,et al.,Solid Phase Peptide Synthesis,2nd.ed.,Pierce Chem.Co.:Rockford,111(1984))又は液状合成技術(US登録特許第5,516,891号)によって製造されても良く、本願のペプチドを構成するアミノ酸残基は、天然又は非天然アミノ酸残基であっても良い。
【0025】
本願の一具現例において、上記ペプチドは、配列番号1乃至63のアミノ酸配列及びこれらの変形したアミノ酸配列により構成された群から選択された1つ以上を含んでいても良く、具体的に、配列番号1のアミノ酸配列を含んでいても良い。
【0026】
本願の一具現例において、上記変形したアミノ酸配列は、主要活性に変化を与えずに維持するか、向上した活性を現わすものであっても良く、自然変異又は人工変異によって上記アミノ酸配列の一部が変異されるか、上記アミノ酸配列を構成するアミノ酸のうち1つ以上が他の種類のアミノ酸に置換されたものを含んでいても良い。具体的に、上記変形したアミノ酸配列は、配列番号1乃至63のアミノ酸配列を構成するアミノ酸のうち1つ以上がガンマアミノ酪酸、グルタミン(Gln、Q)、グルタミン酸(Glu、E)、グリシン(Gly、G)、リシン(Lys、K)、ロイシン(Leu、L)、メチオニン(Met、M)、バリン(Val、V)、セリン(Ser、S)、セレノメチオニン、セレノシステイン(Sec、U)、システイン(Cys、C)、シトルリン、アルギニン(Arg、R)、アスパラギン(Asn、N)、アスパラギン酸(Asp、D)、アラニン(Ala、A)、オルニチン、イソロイシン(Ile、I)、タウリン、トレオニン(Thr、T)、トリプトファン(Trp、W)、チロシン(Tyr、Y)、フェニルアラニン(Phe、F)、プロリン(Pro、P)、ピロリシン(Pyr、O)、ヒスチジン(His、H)、及び非天然アミノ酸により構成された群から選択された1つ以上に置換されても良い。本願の一具現例に係るペプチドは、各々のペプチドと同一あるいは相応する生物学的活性を有する限り、記載された配列番号だけでなく、上記アミノ酸配列と80%以上、85%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、又は99%以上の相同性を示すペプチドを含んでいても良い。上記配列と相同性を有する配列として実質的に記載された配列番号のペプチドと同一あるいは相応する生物学的活性を有するアミノ酸配列であれば、一部配列が欠失、変形、置換又は付加されたアミノ酸配列を有する場合も本願の範疇に含まれることは自明である。
【0027】
本願の明細書全体において使用される用語「相同性」は、与えられたアミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列と一致する程度を意味し、百分率で表示しても良い。本明細書において、与えられたアミノ酸配列又はポリヌクレオチド配列と同一あるいは類似した活性を有するその相同性配列が「%相同性」で表示される。例えば、点数(score)、同一性(identity)、及び類似度(similarity)などの媒介変数(parameter)を計算する標準ソフトウェア、具体的に、BLAST 2.0を利用するか、定義された厳格な条件(stringent condition)下において使用したハイブリダイゼーション実験により配列を比較することで確認しても良く、定義される適切なハイブリダイゼーション条件は、当該技術範囲内であって、通常の技術者に良く知られている方法[例えば、J.Sambrook et al.,Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2nd Edition,Cold Spring Harbor Laboratory press,Cold Spring Harbor,New York,1989;F.M.Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,Inc.,New York]により決定しても良い。本願の明細書全体において使用される用語「厳格な条件」とは、ポリヌクレオチド間の特異的なハイブリダイゼーションを可能にする条件を意味する。例えば、このような条件は、文献[例えば、J.Sambrook et al.、同上]に具体的に記載されている。
【0028】
本願の明細書全体において使用される用語「抗炎症」は、炎症を抑制あるいは減少させる作用を意味し、上記用語「炎症」は、生体組織が損傷を被った際に体内で起こる防御反応であって、炎症性疾患を誘発する原因である。よって、本願の抗炎症用ペプチドは、炎症を抑制あるいは減少させる活性を現わすことにより、炎症性疾患の予防、治療又は改善(症状の軽減)に利用されることができる。
【0029】
本願の一具現例において、上記ペプチドは、細胞透過性ペプチドをさらに含んでいても良いが、これに限定されるものではない。
【0030】
本願の明細書全体において使用される用語「細胞透過性ペプチド」は、細胞膜を透過して細胞の内部へ浸透できる能力又は性質を有するペプチドであり、細胞透過性及び/又は皮膚透過性を示すものであっても良い。
【0031】
本願の一具現例において、上記細胞透過性ペプチドは、従来公知の細胞透過性ペプチド又は皮膚透過性ペプチドから由来した配列の一部又はその全部をさらに含んでいても良く、例えば、dNP2、penetratin、Tat、transpotan、MAP、KALA、P1、MPG、Pep-1、Arg(7、8、9、10、11)、hCT、pVEC、SPEH、YARA、WLR、VP22、MTS、FHV coat、及びこれらの組み合わせからなる群から選択されたものであっても良く、具体的に、Arg(8)ペプチド(R8ペプチド)であっても良いが、これに限定されるものではない。
【0032】
本願の一具現例において、上記細胞透過性ペプチドは、上記抗炎症用ペプチドに2回以上含まれいても良く、具体的に、上記細胞透過性ペプチドは、2回、3回、5回、7回又は10回含まれていても良いが、これに限定されるものではない。
【0033】
本願の一具現例において、上記細胞透過性ペプチドは、上記抗炎症用ペプチドのN末端又はC末端に連結されても良く、具体的に、N末端に連結されても良いが、上記ペプチドの薬理活性を阻害することなく、細胞透過性又は皮膚透過性を向上させることができる限り、これに限定されるものではない。
【0034】
本願の一具現例において、上記細胞透過性ペプチドは、上記抗炎症用ペプチドとリンカーを介して結合されても良く、あるいは直接的に連結されても良い。また、上記リンカーは、細胞内又は皮膚内において酵素作用などの様々な生物学的、化学的作用により切断又は分解されるものであっても良く、上記リンカーの切断又は分解により、上記細胞透過性ペプチドと上記抗炎症用ペプチドは、目的とする細胞内又は皮膚内において互いに分離されても良い。
【0035】
本願の一具現例において、上記抗炎症用ペプチドを構成するアミノ酸は、L型又はD型であっても良く、具体的には、D型であっても良いが、上記ペプチドの活性に影響を与えない限り、これに限定されるものではない。
【0036】
本願の一具現例において、上記抗炎症用ペプチドのN末端又はC末端は、アセチル基、フルオレニルメトキシカルボニル基、ホルミル基、パルミトイル基、ミリスチル基、ステアリル基、及びポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)により構成された群から選択される保護基が結合されても良く、上記保護基は、上記ペプチドの活性に影響を与えない限り、これに限定されるものではない。
【0037】
本願の一具現例において、上記ペプチド又はこれを構成するアミノ酸は、上記の保護基結合だけでなく、アセチル化(acetylation)又はアミン化(amidation)されても良く、上記した変形は、ペプチドの安定性を大きく改善するものであり、上記安定性は、生体内安定性だけでなく、保存安定性(例えば、常温保存安定性)も意味し、上述した保護基は、生体内のタンパク質分解酵素の攻撃から本願のペプチドを保護する作用をするものであっても良い。
【0038】
本願の一具現例において、上記ペプチドは、MAVS(mitochondrial antiviral-signaling)タンパク質の凝集(aggregation)及び/又は上記タンパク質の機能を抑制しても良い。
【0039】
本願の明細書全体において使用される用語「MAVS(mitochondrial antiviral-signaling)タンパク質」は、抗ウイルス自然免疫に必須なシグナル伝達タンパク質であり、ミトコンドリアの外膜、過酸化小体(peroxisome)、小胞体(endoplasmic reticulum、ER)に存在すると知られている。上記MAVSタンパク質は、ウイルス感染の際、ウイルスの存在を感知する細胞質タンパク質群によって凝集体(集合体)をなしつつ活性化され、活性化したMAVSは、インターフェロン及びサイトカインを分泌するように誘導する方式で免疫反応を誘導する。しかし、MAVSタンパク質が活性化し続けてインターフェロンとサイトカインの生産が過度に増加されれば、むしろ体内の細胞を攻撃して様々な病理学的異常と免疫疾患を誘発し得る。よって、MAVSタンパク質の活性化を適切に調節する作用が必要となる。
【0040】
本願の一具現例において、上記抗炎症性ペプチドは、MAVSの凝集又は活性化の抑制を通じて、MAVS活性化により誘導される炎症/免疫活性化反応機転及び炎症/免疫反応を抑制できるだけでなく、MAVSの凝集により発病し得る症状又は疾患を治療、予防又は改善することができる。
【0041】
本願の一実施例において、本願の抗炎症性ペプチドは、細菌及びウイルスから由来した病原体関連分子パターン(PAMP)によって誘導されるMAVSの凝集を効果的に抑制することが確認されたところ、それを基に、本願の抗炎症性ペプチドは、MAVS活性抑制を通じて効果的に炎症反応を抑制できることが分かる。
【0042】
本願の一具現例において、上記ペプチドは、炎症性サイトカイン又はインフラマソーム(inflammasome)の発現、生成、活性などを抑制するか、炎症細胞の増殖を抑制しても良く、具体的に、上記炎症性サイトカインは、IFN-β、IL-1β、IL-6、及びTNF-αにより構成された群から選択された1つ以上であっても良いが、当業界における技術常識上、炎症反応を起こすものと知られている物質であれば、これに限定されるものではない。
【0043】
本願の明細書全体において使用される用語「インフラマソーム(inflammasome)」は、細胞の感染やストレスなど自然免疫防御体系(innate immune defenses)と係わるIL-1のような炎症性サイトカインの成熟を誘導する物質であり、カスパーゼ(caspase)-1-活性化タンパク質複合体として、1)センサータンパク質(sensor protein)であるNLRP3(NOD-like receptor family,pyrin domain-containing 3)、2)アダプタータンパク質(adaptor protein)であるASC(adaptor protein apoptosis-associated spec-like protein containing a caspase-recruitment domain)、及び3)エフェクタータンパク質である非活性化状態のカスパーゼ-1(inactive caspase-1)により構成される。上記インフラマソームの構成成分は、細菌又はウイルスなどの微生物の感染や組織に傷害が発生した場合に組み立てられるが、細胞質において組み立てにより活性化されたインフラマソームは、非活性化状態のカスパーゼ-1を活性化状態のカスパーゼ-1(active caspase-1)に変換させる。変換された活性化状態のカスパーゼ-1は、前駆体形態のIL-1β又はIL-18を切断して活性化されたIL-1β又はIL-18を作り、細胞外に分泌することで宿主の自然免疫防御機能を行うものと知られている。
【0044】
本願の一実施例において、本願の抗炎症性ペプチドは、様々な炎症性サイトカイン及びインフラマソームの発現水準を抑制することが確認されたところ、それを基に、本願の抗炎症性ペプチドは、効果的に炎症反応を抑制できることが分かる。
【0045】
本願の一具現例において、上記ペプチドは、炎症/免疫活性化反応の機転を抑制しても良く、上記機転は、カスパーゼ-1(caspase-1)、インターフェロン調節因子3(interferon regulatory factor 3、IRF3)、又は核因子カッパB(nuclear factor kappa-light-chain-enhancer of activated B cells、NF-κB)であっても良いが、当業界における技術常識上、炎症/免疫反応を起こすものと知られている機転であれば、これに限定されるものではない。
【0046】
本願の一実施例において、本願の抗炎症性ペプチドは、NF-κBのリン酸化を抑制することによりNF-κBシグナル伝達機転の活性を阻害することが確認されたところ、それを基に、本願の抗炎症性ペプチドは、効果的に炎症反応を抑制できることが分かる。
【0047】
本願の一具現例において、上記ペプチドは、細菌又はウイルスにより誘発された炎症を抑制しても良く、具体的に、細菌又はウイルスから由来した病原体関連分子パターン(PAMP)により誘発される炎症を抑制しても良い。また、細菌又はウイルス感染により発生する細胞の損傷によって、細胞外に分泌されるダメージ関連分子パターン(DAMP)により誘発される炎症を抑制しても良い。
【0048】
本願の明細書全体において使用される用語「病原体関連分子パターン(pathogen-associated molecular pattern、PAMP)」は、病原体から由来して免疫反応を起こす分子であり、免疫系が有しているパターン認識受容体は、特定の分子パターンに反応して食作用により感染源を無くすか、抗体を形成するように誘導するので、パターン認識受容体が反応する感染源共通の分子パターンが病原体関連分子パターンであると言える。上記病原体関連分子パターンは、内毒素(endotoxin)、外毒素(exotoxin)、LPS(lipopolysaccharide)、LTA(lipoteichoic Acid)、MDP(muramyl dipeptide)、ニゲリシン(nigericin)、dsRNA(polyICなど)、dsDNA(polydAdTなど)、OMV(outer membrane vesicle)、及びフラジェリン(flagellin)などであっても良いが、当業界における技術常識上、病原体から由来して炎症/免疫反応を起こし得ると知られている物質であれば、これに限定されるものではない。
【0049】
本願の明細書全体において使用される用語「ダメージ関連分子パターン(danger-associated molecular pattern、DAMP)」は、細胞内代謝産物又はタンパク質であり、細胞の損傷によって細胞外に分泌され、周辺細胞において免疫反応を起こす分子である。上記ダメージ関連分子パターンは、ATP、histoneタンパク質、HMGB1(high mobility group box 1)、mtDNA(mitochondrial DNA)、uric acidなどであっても良いが、当業界における技術常識上、細胞内から由来して炎症/免疫反応を起こし得ると知られている物質であれば、これに限定されるものではない。
【0050】
本願の一具現例において、上記ペプチドは、炎症反応を抑制するか、炎症反応により誘発される疾患の症状を治療又は緩和することができ、具体的に、上記ペプチドは、抗炎症用薬学組成物、食品組成物、化粧料組成物、健康機能食品組成物、飼料組成物など、様々な組成物に含まれても良い。
【0051】
本願の第2の側面は、本願の抗炎症用ペプチドを暗号化する、ポリヌクレオチドを提供する。第1の側面と重複する内容は、第2の側面のポリヌクレオチドにも共に適用される。
【0052】
本願の明細書全体において使用される用語「ポリヌクレオチド」とは、ヌクレオチドが結合された高分子物質であり、遺伝情報をコードしているDNAを意味する。
【0053】
本願の一具現例において、上記ポリヌクレオチドは、配列番号1乃至配列番号63のアミノ酸配列のうち1つ以上を暗号化する塩基配列を含んでいても良い。
【0054】
本願の一具現例において、上記抗炎症用ペプチドをコードする塩基配列は、各配列番号で記載したアミノ酸をコードする塩基配列だけでなく、上記配列と80%以上、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、さらに具体的には98%以上、最も具体的には99%以上の相同性を示す塩基配列であって、実質的に上記各ペプチドと同一あるいは相応する効能を現わすタンパク質をコードする塩基配列であれば制限なく含む。また、上記配列と相同性を有する配列として実質的に記載された配列番号のペプチドと同一あるいは相応する生物学的活性を有するアミノ酸配列であれば、一部配列が欠失、変形、置換又は付加されたアミノ酸配列を有する場合も本発明の範疇に含まれることは自明である。また、上記ペプチドをコードするポリヌクレオチドは、コドンの縮退性(degeneracy)により、上記ペプチドを発現させたい生物において好まれるコドンを考慮して、コード領域から発現されるペプチドのアミノ酸配列を変化させない範囲内でコード領域に様々な変形が行われても良い。よって、上記ポリヌクレオチドは、各ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列であれば制限なく含まれても良い。また、公知の配列から調剤され得るプローブ、例えば、上記ポリヌクレオチド配列の全体又は一部に対する相補配列と厳格な条件下においてハイブリッド化し、上記ペプチドの活性を有するタンパク質を暗号化する配列であれば制限なく含まれても良い。
【0055】
本願の明細書において使用される用語「厳格な条件」とは、ポリヌクレオチド間の特異的なハイブリダイゼーションを可能にする条件を意味する。このような条件は、文献(例えば、Sambrook et al.,supra,9.50-9.51,11.7-11.8を参照)に具体的に記載されている。例えば、相同性の高い遺伝子同士、40%以上、具体的には90%以上、より具体的には95%以上、さらに具体的には97%以上、特に具体的には99%以上の相同性を有する遺伝子同士をハイブリッド化し、それよりも相同性の低い遺伝子同士をハイブリッド化しない条件、又は通常のサザン(southern)ハイブリッド化の洗浄条件である60℃、1×SSC、0.1%SDS、具体的には60℃、0.1×SSC、0.1%SDS、より具体的には68℃、0.1×SSC、0.1%SDSに相当する塩濃度及び温度で、1回、具体的には2回~3回洗浄する条件を並べても良い。ハイブリダイゼーションは、たとえハイブリダイゼーションの厳格度に応じて塩基間のミスマッチ(mismatch)が可能であるとしても、2つのポリヌクレオチドが相補的配列を有することを求める。「相補的」という用語は、互いにハイブリダイゼーション可能なヌクレオチド塩基との関係を記述するのに使用される。例えば、DNAに関し、アデノシンはチミンに相補的であり、シトシンはグアニンに相補的である。よって、本願は、実質的に類似しているポリヌクレオチド配列だけでなく、全配列に相補的な単離されたポリヌクレオチド断片をさらに含んでいても良い。
【0056】
具体的に、相同性を有するポリヌクレオチドは、55℃のTm値においてハイブリダイゼーション段階を含むハイブリダイゼーション条件を使用し、上述した条件を使用して探知しても良い。また、上記Tm値は、60℃、63℃又は65℃であっても良いが、これに限定されるものではなく、その目的に応じて当業者により適宜調節されても良い。ポリヌクレオチドをハイブリダイゼーションする適切な厳格度は、ポリヌクレオチドの長さ及び相補性の程度に依存し、変数は該当技術分野において良く知られている(Sambrook et al.,supra,9.50-9.51,11.7-11.8を参照)。
【0057】
本願の第2の側面における他の態様として、上記ポリヌクレオチドを含む発現ベクターを提供する。
【0058】
本願の明細書全体において使用される用語「発現ベクター」は、適当な宿主細胞に導入されて目的タンパク質を発現することのできる組換えベクターであり、遺伝子挿入物が発現されるよう作動可能に連結された必須の調節要素を含む遺伝子作製物のことを言う。
【0059】
本願の明細書全体において使用される用語「作動可能に連結された(operably linked)」は、一般的な機能を実行するよう、核酸の発現調節配列と目的するタンパク質をコードする核酸配列が機能的に連結されていることを意味する。組換えベクターとの作動的連結は、当該技術分野において良く知られている遺伝子組換え技術を利用して製造しても良く、部位特異的DNA切断及び連結は、当該技術分野において一般的に知られている酵素などを使用して容易に行うことができる。
【0060】
本願において適した発現ベクターは、プロモーター、開始コドン、終止コドン、ポリアデニル化シグナル及びエンハンサーのような発現調節エレメントの他にも、膜標的化又は分泌のためのシグナル配列を含んでいても良い。開始コドン及び終止コドンは、一般的に、免疫原性標的タンパク質をコードするヌクレオチド配列の一部と見なされ、遺伝子作製物が投与された際に個体において必ず作用が現われなければならず、コード配列とインフレーム(in frame)になければならない。一般のプロモーターは、構成的又は誘導性であっても良く、原核細胞の場合はlac、tac、T3及びT7プロモーター、真核細胞の場合はサルウイルス40(SV40)、マウス乳房腫瘍ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、例えばHIVの長い末端反復(LTR)プロモーター、モロニーウイルス、サイトメガロウイルス(CMV)、エプスタインバールウイルス(EBV)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターだけでなく、β-アクチンプロモーター、ヒトヘモグロビン、ヒト筋クレアチン、ヒトメタロチオネイン由来のプロモーターなどがあるが、これに限定されるものではない。
【0061】
また、上記発現ベクターは、ベクターを含有する宿主細胞を選択するための選択性マーカーを含んでいても良い。選択マーカーは、ベクターに形質転換された細胞を選別するためのものであり、薬剤耐性、栄養要求性、細胞毒性剤に対する耐性又は表面タンパク質の発現のような選択可能表現型を与えるマーカーが使用されても良い。選択剤(selective agent)が処理された環境においては、選択マーカーを発現する細胞のみが生存するので、形質転換された細胞が選別可能である。また、ベクターが複製可能な発現ベクターである場合、複製が開始される特定の核酸配列である複製原点(replication origin)を含んでいても良い。
【0062】
外来遺伝子を挿入するための組換え発現ベクターとしては、プラスミド、ウイルス、コスミドなど様々な形態のベクターを使用しても良い。組換えベクターの種類は、原核細胞及び真核細胞の各種の宿主細胞において所望の遺伝子を発現し、所望のタンパク質を生産する機能をする限り、特に限定されるものではないが、具体的に、強力な活性を現わすプロモーターと強い発現力を保有しつつ、自然状態と類似した形態の外来タンパク質を大量に生産できるベクターが利用されても良い。
【0063】
本願に係る抗炎症性ペプチドを発現させるために、様々な宿主とベクターの組み合わせが利用されても良い。真核宿主に適した発現ベクターとしては、これに限定されるものではないが、SV40、牛乳頭腫ウイルス、アデノウイルス、アデノ随伴ウイルス(adeno-associated virus)、サイトメガロウイルス及びレトロウイルスから由来した発現調節配列などが含まれても良い。細菌宿主に使用できる発現ベクターとしては、これに限定されるものではないが、pET、pRSET、pBluescript、pGEX2T、pUC、col E1、pCR1、pBR322、pMB9又はこれらの誘導体などを含む大腸菌(Escherichia coli)から得られる細菌性プラスミド、RP4のようにより広い宿主範囲を有するプラスミド、λgt10、λgt11又はNM989などのファージラムダ(phage lambda)誘導体に例示され得るファージDNA、及びM13とフィラメント性一本鎖のDNAファージのようなその他のDNAファージなどが含まれても良い。酵母細胞には2℃のプラスミド又はその誘導体などが使用されても良く、昆虫細胞にはpVL941などが使用されても良い。
【0064】
本願の第2の側面における他の態様として、上記発現ベクターを含むヒトを除いた形質転換体を提供する。
【0065】
本願の明細書全体において使用される用語「形質転換体」は、上記発現ベクターが導入され得る宿主の細胞であっても良い。具体的に、本願の形質転換体は、ヒトを除いた形質転換体であっても良いが、これに限定されるものではない。
【0066】
上記ベクターの導入に適した宿主細胞は、大腸菌、バチルスサブティリス(Bacillus subtilis)、ストレプトマイセス属(Streptomyces sp.)、シュードモナス属(Pseudomonas sp.)、プロテウスミラビリス(Proteus mirabilis)又はスタフィロコッカス属(Staphylococcus sp.)のような原核細胞であっても良い。また、アスペルギルス属(Aspergillus sp.)のような真菌、ピキアパストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミケス属(Schizosaccharomyces sp.)又はニューロスポラクラッサ(Neurospora crassa)のような酵母、その他の下等真核細胞、植物又は昆虫の細胞のような高等真核生物の細胞であっても良い。また、哺乳動物の細胞であっても良く、具体的に、サル腎臓細胞7(COS7:monkey kidney cells)、NSO細胞、SP2/0、チャイニーズハムスター卵巣(CHO:Chinese hamster ovary)細胞、W138、ベビーハムスター腎臓(BHK:baby hamster kidney)細胞、MDCK、骨髄腫細胞株、HuT78細胞又はHEK293細胞などを利用しても良いが、これに限定されるものではない。
【0067】
本願の形質転換方法は、核酸を有機体、細胞、組織又は機関に導入する如何なる方法も含み、当分野において公知の宿主細胞に応じて適した標準技術を選択し実行しても良い。具体的に、エレクトロポレーション法(electroporation)、原形質融合、リン酸カルシウム(CaPO4)沈殿、塩化カルシウム(CaCl2)沈殿、シリコンカーバイド繊維を利用した撹拌、アグロバクテリウム媒介形質転換、PEG、デキストラン硫酸、リポフェクタミン及び乾燥/抑制を媒介とした形質転換法などが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0068】
本願の第2の側面における他の態様として、上記形質転換体を培養するステップを含む抗炎症性ペプチドの製造方法を提供する。
【0069】
上記抗炎症性ペプチドの製造方法は、本願の形質転換体を培養するステップを含み、具体的に、上記抗炎症性ペプチドをコードするポリヌクレオチド配列をベクターに挿入することで発現ベクターを製造するステップと、上記発現ベクターを宿主細胞に導入することで形質転換体を製造するステップと、上記形質転換体を培養するステップと、上記培養された形質転換体から抗炎症性ペプチドを分離及び精製するステップとを含んでいても良い。
【0070】
さらに具体的に、上記形質転換体を栄養培地で培養することにより、ペプチドを大量に生産することができ、培地と培養条件は、宿主細胞に応じて慣用されるものを適宜選択し利用しても良い。培養の際、細胞の生育とタンパク質の大量生産に適切なように、温度、培地のpH及び培養時間などの条件を適宜調節しても良い。
【0071】
上記のように組換えにより生産されたペプチド又はタンパク質は、培地又は細胞分解物から回収されても良い。膜結合型の場合、適した界面活性剤溶液(例えば、トリトン-X100)を使用するか、あるいは酵素的切断により膜から遊離されても良い。抗-オスカー抗体又はその断片発現に使用された細胞は、凍結-解凍順化、音波処理、機械的破壊又は細胞分解剤のような様々な物質的又は化学的手段によって破壊されることができ、通常の生化学分離技術によって分離、精製が可能である(Sambrook et al.,Molecular Cloning:A laborarory Manual,2nd Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989);Deuscher,M.,Guide to Protein Purification Methods Enzymology,Vol.182.Academic Press.Inc.,San Diego,CA(1990))。電気泳動、遠心分離、ゲル濾過、沈殿、透析、クロマトグラフィ(イオン交換クロマトグラフィ、親和性クロマトグラフィ、免疫吸着クロマトグラフィ、サイズ排除クロマトグラフィなど)、等電点フォーカシング及びその様々な変化並びに複合方法などが利用可能であるが、これに限定されるものではない。
【0072】
本願の第3の側面は、本願の抗炎症用ペプチドを有効成分として含む、抗炎症用組成物を提供する。第1の側面及び第2の側面と重複する内容は、第3の側面の組成物にも共に適用される。
【0073】
本願の一具現例において、上記抗炎症用組成物は、薬学、医薬部外品、化粧料、食品及び飼料組成物に使用されても良い。
【0074】
本願の一具現例において、上記組成物は、薬学的に許容可能な塩をさらに含んでいても良く、具体的に、上記薬学的に許容可能な塩は、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、スズ酸塩、コハク酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、メタンスルホン酸塩、又はパラトルエンスルホン酸塩などが挙げられる。
【0075】
本願の一具現例において、上記薬学組成物は、有効成分の他に薬学的に許容される担体を含み、当業界において公知の通常の方法により投与経路に応じて経口用剤形又は非経口用剤形に製造されても良い。ここで、「薬学的に許容される」とは、有効成分の活性を抑制することなく、適用(処方)対象が適応可能なもの以上の毒性を有しないという意味である。
【0076】
本願の一具現例において、上記薬学組成物は、それぞれ通常の方法により散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ、エアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤又は滅菌注射溶液の形態に製剤化して使用されても良いが、これに限定されるものではない。
【0077】
本願の一具現例において、上記薬学組成物を製剤化する場合、一般的に使用する充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、又は界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を使用して調剤されても良いか、これに限定されるものではない。
【0078】
本願の一具現例において、上記薬学組成物が経口用剤形に製造される場合、適した担体と共に当業界において公知の方法により粉末、顆粒、錠剤、丸剤、糖衣錠剤、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、懸濁液、ウェハなどの剤形に製造されても良い。このとき、薬学的に許容される適した担体の例としては、ラクトース、グルコース、スクロース、デキストロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトールなどの糖類、トウモロコシ澱粉、ジャガイモ澱粉、小麦澱粉などの澱粉類、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースなどのセルロース類、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、マグネシウムステアレート、鉱物油、麦芽、ゼラチン、タルク、ポリオール、植物性油などが挙げられる。製剤化する場合、必要に応じて充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩解剤、界面活性剤などの希釈剤及び/又は賦形剤を含めて製剤化しても良い。
【0079】
本願の一具現例において、上記薬学組成物が非経口用剤形に製造される場合、適した担体と共に当業界において公知の方法により注射剤、経皮投与剤、鼻腔吸入剤及び坐剤の形態に製剤化されても良い。注射剤に製剤化する場合、適した担体としては、滅菌水、エタノール、グリセロールやプロピレングリコールなどのポリオール又はこれらの混合物が挙げられ、好ましくは、点滴溶液、トリエタノールアミンが含有されたPBS(phosphate buffered saline)や注射用滅菌水、5%デキストロースのような等張液などを使用しても良い。経皮投与剤に製剤化する場合、軟膏剤、クリーム剤、ローション剤、ゲル剤、外用液剤、パスタ剤、リニメント剤、エアロゾルなどの形態に製剤化しても良い。鼻腔吸入剤の場合、ジクロロフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素などの適した推進剤を使用し、エアロゾルスプレー形態に製剤化しても良く、坐剤に製剤化する場合、その基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、ツイーン(tween)61、ポリエチレングリコール類、カカオ脂、ラウリン脂、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレンステアレート類、ソルビタン脂肪酸エステル類などを使用しても良い。
【0080】
本願の一具現例において、上記薬学組成物は、薬学的に有効な量で投与されても良いが、上記用語「薬学的に有効な量」とは、医学的治療又は予防に適用可能な合理的な受恵/危険率で疾患を治療又は予防するのに十分な量を意味し、有効用量の水準は、疾患の重症度、薬物の活性、患者の年齢、体重、健康、性別、患者の薬物感受性、使用された本発明の組成物の投与時間、投与経路及び排出割合、治療期間、使用された本願の組成物と配合又は同時に使用される薬物を含む要素及びその他の医学分野において良く知られている要素によって決定しても良い。本願の薬学組成物は、単独で投与するか、公知の腸疾患に対して治療効果を現わすと知られている成分と併用して投与しても良い。上記要素を全て考慮し、副作用なく最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要である。
【0081】
本願の一具現例において、上記薬学組成物の投与量は、使用目的、疾患の中毒度、患者の年齢、体重、性別、既往歴、又は有効成分として使用される物質の種類などを考慮して当業者が決定しても良い。例えば、本発明の薬学組成物は、成人1人当たり約0.1ng~約1,000mg/kg、好ましくは1ng~約100mg/kgで投与しても良く、本願の組成物の投与頻度は、特にこれに限定されるものではないが、1日1回投与するか、あるいは用量を分割して数回投与しても良い。上記投与量又は投与回数は、どのような面からも本願の範囲を限定するものではない。
【0082】
本願の第4の側面は、本願の抗炎症用ペプチドを有効成分として含む、炎症性疾患予防又は治療用薬学組成物を提供する。第1の側面乃至第3の側面と重複する内容は、第4の側面の組成物にも共に適用される。
【0083】
本願の明細書全体において使用される用語「治療」は、本願の組成物の投与によって炎症性疾患の症状を好転させるか、良く変える全ての行為を意味する。
【0084】
本願の明細書全体において使用される用語「予防」は、本願の組成物の投与によって炎症性疾患又はその発病可能性を抑制するか、遅延させる全ての行為を意味する。
【0085】
本願の明細書全体において使用される用語「炎症性疾患」は、外部からの物理的・化学的刺激又は細菌、バクテリア、カビ、ウイルス、各種アレルギー誘発物質などの外部感染源による感染又は自己免疫に対する局所的又は全身的な生体防御反応として特定される炎症反応が引き起こす病理的症状に定義されても良い。このような炎症反応は、各種炎症媒介因子と兔疫細胞に係わる酵素(例えば、iNOS、COX-2など)の活性化、炎症媒介物質の分泌(例えば、NO、TNF-α、IL-6などの分泌)、体液浸潤、細胞移動、組織破壊などの一連の複合的な生理的反応を伴い、紅斑、痛症、浮腫、発熱、身体の特定機能の低下又は喪失などの症状により外的に表れる。上記炎症性疾患は、急性、慢性、潰瘍性、アレルギー性又は壊死性を帯び得るので、ある疾患が上記のような炎症性疾患の定義に含まれる限り、それが急性か、慢性か、潰瘍性か、アレルギー性か、あるいは壊死性かを問わない。
【0086】
本願の一具現例において、上記炎症性疾患は、敗血症、敗血症性ショック、全身性炎症反応症候群(systemic inflammatory response syndrome)、急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome)、喘息、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎、慢性及び急性鼻炎、慢性及び急性胃炎又は腸炎、潰瘍性胃炎、急性及び慢性腎臓炎、急性及び慢性肝炎、慢性閉塞性肺疾患、特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis、IPF)、過敏性大腸症候群、炎症性痛症、片頭痛、頭痛、腰痛、線維筋痛、筋膜疾患、ウイルス感染(例えば、C型感染)、バクテリア感染、カビ感染、火傷、外科的又は歯科的手術による傷、プロスタグランジンE過多症候群、アテローム性動脈硬化症、通風、関節炎、リウマチ性関節炎、強直性脊椎炎、ホジキン病、膵臓炎、結膜炎、虹彩炎、強膜炎、ぶどう膜炎、皮膚炎、アトピー性皮膚炎、湿疹、全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus、SLE)及び多発性硬化症などにより構成された群から選択された1つ以上であっても良く、炎症反応により誘発される疾患、具体的に、細菌又はウイルス感染による炎症反応により誘発される疾患であれば、これに限定されるものではない。
【0087】
本願の第5の側面は、本願の抗炎症用組成物又は炎症性疾患の予防又は治療用の薬学組成物を個体に投与することを含む、炎症又は炎症性疾患の予防又は治療方法を提供する。第1の側面乃至第4の側面と重複する内容は、第5の側面の方法にも共に適用される。
【0088】
本願の明細書全体において使用される用語「個体」は、炎症反応又は炎症性疾患が発病するか、発病の危険性があるマウス、家畜、ヒトなどを含む哺乳動物、養殖魚類などを制限なく含んでいても良い。
【0089】
本願の一具現例において、上記個体は、ヒトを除くものであっても良い。
【0090】
本願の一具現例において、上記方法は、炎症又は炎症性疾患を予防又は治療するために薬学的に効果的な量の組成物が投与されても良く、炎症反応又は炎症性疾患の進行程度、患者の年齢、体重、症状の特性及び程度、現在の治療法の種類、治療回収、投与形態及び経路など、様々な要因によって変わっても良く、当該分野の専門家によって容易に決定されても良い。本願の組成物は、上記した薬理学的又は生理学的成分を共に投与するか、順次に投与しても良く、また、追加の従来の治療剤と併用して投与しても良く、従来の治療剤とは順次又は同時に投与されても良い。このような投与は、単一又は多重投与であっても良い。上記要素を全て考慮し、副作用なく最小限の量で最大の効果が得られる量を投与することが重要であり、通常の技術者によって容易に決定されることができる。
【0091】
本願の明細書全体において使用される用語「投与」とは、適切な方法で個体に所定の物質を導入することを意味し、本願の組成物の投与経路は、目的組織に到逹さえできれば、如何なる一般的な経路を介して投与されても良い。腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、経口投与、局所投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与されても良いが、これに限定されるものではない。しかし、経口投与の際にタンパク質は消化されてしまうため、経口用組成物は、活性薬剤をコーティングするか、胃での分解から保護されるように剤形化することが好ましい。また、上記組成物は、活性物質が標的細胞に移動できる任意の装置によって投与されても良い。
【0092】
以下、本願の実施例を通じて本発明をより詳しく説明するが、下記の実施例は本願の理解を助けるために例示するだけであり、本願の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0093】
[実施例]
実施例1:抗炎症効果を有する新規ペプチドの合成
自然免疫(innate immune)反応機転に主要ハブ(hub)タンパク質として知られているMAVS(mitochondrial anti-viral signaling)タンパク質の凝集現象を抑制して炎症反応を緩和することのできる抗炎症用ペプチドを開発するために、下記のような方式でMAVSシグナル伝達抑制抗炎症用ペプチド配列を導出した。
【0094】
具体的に、タンパク質の生体内合成は、二重らせん構造からなるDNAの5’-3’方向の一方のDNAから転写RNA(mRNA)が作られ、これによりタンパク質が合成される。しかし、別の方向(3’-5’)の相補的なDNA配列を原タンパク質が合成される方向に転写して新たなタンパク質を合成する場合、原タンパク質が有する静電気的性質とは反対の性質を有すると示され、相互間の結合が特異的に行われる現象が知られている(hydropathic complementarity)。また、MAVSタンパク質が外部刺激を受けて活性化される段階で凝集現象が起こるが、この段階で核心的な役割をすると見えるMAVSタンパク質のドメインの一部配列を上述したhydropathic complementarity理論に立脚して当該アミノ酸配列に相補的な新たなペプチドを合成した(配列番号1~4、48~52)。
【0095】
実施例2:新規ペプチドにおけるMAVS凝集抑制効能の確認
上記実施例1で製作した新規ペプチドにMAVSタンパク質の凝集現象を抑制する効能があるか否かを確認するために、下記のような実験を行った。
【0096】
具体的に、MAVSタンパク質の凝集現象を誘導するために、病原体関連分子パターン(pathogen-associated molecular patterns、PAMPs)を利用して刺激し、上記病原体関連分子パターンの一例として内毒素(lipopolysaccharide、LPS)及びニゲリシン(nigericin)を使用した。先ず、内毒素1mg/mlを含む無血清(serum-free)細胞培養液にMQP-15、MQP-23、MQP-31又はMQP-37を5mM添加し、マウス腹腔由来のマクロファージ細胞株(mouse peritoneal macrophage cell line、IC21)1×105細胞に4時間処理した。その後、ニゲリシン5mMを含む無血清細胞培養液にMQP-15、MQP-23、MQP-31又はMQP-37を5mM添加し、さらに1時間マウス腹腔由来のマクロファージ細胞株に処理した。次いで、低浸透圧バッファ(hypotonic buffer)及び遠心分離などを通じてマクロファージ細胞株内のミトコンドリアを分離した。次いで、MAVSの凝集結果をウエスタンブロット(western blot)法で確認するために、上記分離されたミトコンドリアに半変性洗剤(semi-denaturating detergent)を利用してサンプルを製造し、電気泳動を実施した。電気泳動により分離されたミトコンドリアタンパク質をポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene difluoride、PVDF)薄膜(membrane)に移した後、MAVSタンパク質を認識する一次抗体及び上記一次抗体を認識する二次抗体をさらに処理した。その後、二次抗体に対する化学発光(chemiluminescence)反応誘導によりMAVSタンパク質の凝集現象を確認した。
【0097】
その結果、内毒素とニゲリシンを処理した対照群において現われたMAVSタンパク質の凝集現象が、MQP-15、MQP-23、MQP-31又はMQP-37を処理した実験群では減少していることが確認されたので(
図2)、本願で製作したMQP-15、MQP-23、MQP-31又はMQP-37は、効果的にMAVSタンパク質の凝集現象を抑制することが分かる。
【0098】
実施例3:新規ペプチドにおける抗ウイルス反応抑制効能の確認
上記実施例1で製作した新規ペプチドにウイルス感染による抗ウイルス反応を抑制する効能があるか否かを確認するために、下記のような実験を行った。
【0099】
具体的に、ウイルス感染反応を誘導するために、病原体関連分子パターンのうちウイルス感染と係わるものと知られている、合成リボ核酸であってインターフェロン(interferon)の生産を促進し、RNAウイルス遺伝子類似体であるポリIC(polyinosinic:polycytidylic acid、polyIC)を使用した。先ず、ポリIC5mg/mlとMQP-15、MQP-23、MQP-31、MQP-37、MQP-Y9又はMQP-T234を添加した無血清細胞培養液をマウス肺上皮細胞株(mouse lung epithelial cell line、MLE-12)1×105個の細胞に16時間処理した。その後、上層液を収得し、酵素結合免疫吸着検査法(enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)を利用してインターフェロン-ベータ(interferon-beta、IFN-b)の発現水準を確認した。
【0100】
その結果、ポリICのみを処理した対照群に比べて、MQP-15、MQP-23、MQP-31、MQP-37、MQP-Y9又はMQP-T234を処理した場合のIFN-bの発現水準が減少していることが確認され、特に、MQP-37の場合、他のペプチドよりも著しくIFN-bの発現水準を減少させたことが確認された(
図3aのA)。また、優れた効果があったMQP-37を様々な濃度にして上記と同じ実験を行った結果、IFN-bの発現水準が濃度依存的に減少していることが確認された(
図3aのB)。MQP-Y9ペプチドを様々な濃度にして上記と同じ実験を行った結果、IFN-bの発現水準が濃度依存的に減少していることが確認され(
図3bのC)、MQP-T234ペプチドを処理した同じ実験でもIFN-bの発現量が減少した(
図3bのD)。上記結果を基に、本願で製作したMQP-15、MQP-23、MQP-31、MQP-37、MQP-Y9又はMQP-T234は、効果的にウイルス感染による抗ウイルス反応を抑制することが分かる。
【0101】
実施例4:新規ペプチドにおける細胞毒性の確認
上記実施例1で製作した新規ペプチドの炎症阻害活性がペプチド自体の細胞毒性による結果であるか否かを確認するために、下記のような実験を行った。
【0102】
具体的に、上記ペプチドの細胞毒性を確認するために、細胞内のミトコンドリアの活性を測定するXTT実験法を使用した。先ず、MQP-15、MQP-23、MQP-31又はMQP-37を5mM添加した無血清細胞培養液をマウス腹腔由来のマクロファージ細胞株に16時間処理した。その後、XTTを1時間処理し、ミトコンドリア内の脱水素酵素(dehydrogenase)により還元されて生成される水溶性formazanの量を測定した。
【0103】
その結果、本願の新規ペプチドによる細胞毒性は、細胞実験に使用した濃度範囲では現われないことが確認され(
図4のA)、特に、polyICによる炎症反応を非常に効果的に抑制するペプチドと判明したMQP-37及びMQP-Y9の場合、10mMの濃度でも細胞毒性が現われないことが確認された(
図4のB及びC)。よって、上記のような炎症反応抑制効果はそれ自体の細胞毒性によるものではなく、上記ペプチドを医薬品として利用する場合も個体に有害ではないことが分かる。
【0104】
実施例5:新規ペプチドにおけるインフラマソーム反応抑制効能の確認
上記実施例1で製作した新規ペプチドにおける細菌感染によるインフラマソーム(inflammasome)反応抑制効果を確認するために、下記のような実験を行った。
【0105】
具体的に、細菌感染によるインフラマソーム反応を誘導するために、内毒素としてLPS(lipopolysaccharide)及びグラム陰性菌由来の細胞外小胞体(outer membrane vesicle、OMV)を使用した。先ず、LPS又はOMV0.1mg/mlをそれぞれ含む無血清細胞培養液にMQP-15、MQP-23、MQP-31又はMQP-37を5mM添加し、マウス腹腔由来のマクロファージ細胞株1×105個の細胞に6時間処理した。また、LPS1mg/mlとnigericin5mMを含む無血清細胞培養液にMQP-37又はMQP-Y9を添加し、マウス腹腔由来のマクロファージ細胞株に5時間処理(LPS処理-4時間;nigericin処理-1時間)した。その後、上層液を収得し、ELISAを利用してインターロイキン-1ベータ(interleukin-1beta、IL-1b)の発現水準を確認し、細胞を溶解してSDS-PAGEを進行し、インフラマソーム因子に対してウエスタンブロット(western blot)を進行した。
【0106】
その結果、LPS又はOMVのみを処理した対照群に比べて、本願の新規ペプチドを処理した場合のIL-1bの発現水準が減少していることが確認され、特に、MQP-37の場合、他のペプチドよりも著しくIL-1bの発現水準を減少させたことが確認された(
図5aのA及び
図5bのC)。また、優れた効果があったMQP-37を様々な濃度にして上記と同じ実験を行った結果、LPS処理によるIL-1bの発現水準が濃度依存的に減少していることが確認された(
図5aのB)。LPS及びnigericin処理によるIL-1bの生成は、MQP-Y9濃度に依存して抑制されたことが確認され(
図5bのD)、また、MQP-37処理によるcaspase-1の活性化抑制が確認された(
図5cのE)。上記結果を基に、本願で製作した新規ペプチドは、効果的に細菌感染によるインフラマソーム反応を抑制することが分かる。
【0107】
実施例6:新規ペプチドにおける炎症反応抑制効能の確認
上記実施例1で製作した新規ペプチドの炎症反応抑制効果を確認するために、下記のような実験を行った。
【0108】
具体的に、細菌感染による炎症反応を誘導するために、LPSを使用した。先ず、LPSを0.1mg/ml含む無血清細胞培養液にMQP-15、MQP-23、MQP-31、MQP-37又はMQP-Y9を添加し、マウス腹腔由来のマクロファージ細胞株1×105個の細胞に6時間処理した。その後、上層液を収得し、ELISAを利用してインターロイキン-6(interleukin-6、IL-6)及び腫瘍壊死因子アルファ(tumor necrosis factor-alpha、TNF-a)の発現水準を確認した。
【0109】
その結果、LPSのみを処理した対照群に比べて、本願の新規ペプチドのうちMQP-37の場合、著しくIL-6及びTNF-aの発現水準を減少させたことが確認された(
図6aのA及び
図6bのC)。また、優れた効果があったMQP-37を様々な濃度にして上記と同じ実験を行った結果、LPS処理によるIL-6の発現水準が濃度依存的に減少していることが確認された(
図6aのB)。様々な濃度のMQP-Y9にて上記と同じ実験を行った結果、LPS処理によるIL-6の発現水準が濃度依存的に減少していることが確認された(
図6bのD)。上記結果を基に、本願で製作した新規ペプチドは、効果的に炎症反応を抑制することが分かる。
【0110】
実施例7:新規ペプチドにおける免疫活性化反応機転の抑制効能の確認
上記実施例1で製作した新規ペプチドの免疫活性化反応機転抑制効果を確認するために、下記のような実験を行った。
【0111】
具体的に、細菌感染による免疫活性化反応を誘導するために、LPSを使用し、免疫活性化反応の機転を確認するために、核因子カッパB(Nuclear factor kappa-light-chain-enhancer of activated B cells、NF-kB)リン酸化を確認した。先ず、内毒素を10ng/ml含む無血清細胞培養液にMQP-15、MQP-23、MQP-31、MQP-37、MQP-Y9、MQP-91、MQP-T234又はMQP-341を5mM添加し、マウス腹腔由来のマクロファージ細胞株1×106個の細胞に6時間処理した。その後、PBS溶液で細胞を洗浄した後、リパバッファ(RIPA buffer)により細胞を溶解して上層液を分離した。分離した上層液で核因子カッパBタンパク質のリン酸化量の変化を測定するために、上記実施例2のようにウエスタンブロットを行った。
【0112】
その結果、LPSのみを処理した対照群に比べて、本願の新規ペプチドのうちMQP-37及びMQP-Y9の場合、著しくNF-kBのリン酸化水準を減少させたことが確認された(
図7)。上記結果を基に、本願で製作した新規ペプチドは、効果的に免疫活性化反応の機転を抑制することが分かる。
【0113】
実施例8:D型新規ペプチドにおけるタンパク質分解酵素の抵抗性向上の確認
上記実施例2乃至7までの実験を通じて抗炎症活性が確認された新規ペプチドMQP-37のタンパク質分解酵素に対する抵抗性を高めるためにD型アミノ酸で合成し、タンパク質分解酵素に対する抵抗性を確認するために、下記のような実験を行った。
【0114】
具体的に、細菌感染による炎症反応を誘導するために、LPSを使用した。先ず、LPS0.1mg/mlを無血清細胞培養液又は10%の血清(fetal bovine serum、FBS)細胞培養液に混合した。次いで、LPSを含むそれぞれの細胞培養液にL型MQP-37ペプチド5mMとD型MQP-37ペプチド5mMを添加し、マウス腹腔由来のマクロファージ細胞株1×105個の細胞に6時間処理した。その後、上層液を収得し、ELISAを利用してインターロイキン-6(IL-6)及び腫瘍壊死因子アルファ(TNF-a)の発現水準を確認した。
【0115】
その結果、LPSのみを処理した対照群に比べて、本願の新規ペプチドL型とD型の何れも、タンパク質分解酵素のない条件である無血清細胞培養液条件において同じ炎症抑制反応を現わすことが確認された。しかし、タンパク質分解酵素が存在する条件である10%の血清が含まれた細胞培養液条件においては、本願の新規ペプチドL型では抗炎症活性が現われないのに対し、D型新規ペプチドでは抗炎症活性が依然として残っていることが確認された(
図8)。上記結果を基に、本願で製作したD型新規ペプチドは、タンパク質分解酵素の存在有無に関係なく効果的に炎症反応を抑制することが分かる。
【0116】
実施例9:アラニン置換新規ペプチドにおける抗炎症効果向上の確認
上記実施例2乃至8までの実験を通じて抗炎症活性が確認された新規ペプチドMQP-37及びMQP-Y9の核心アミノ酸を確認するために、各配列を順次にアラニンに置換したペプチドを合成し(MQP-37アラニン置換ペプチド[MQP-37 derivatives]-配列番号5~11;MQP-Y9アラニン置換ペプチド[MQP-Y9 derivatives]-配列番号53~62)、抗炎症効果を確認するために、下記のような実験を行った。
【0117】
具体的に、細菌感染によるインフラマソーム反応を誘導するために、LPSとATPを使用し、ウイルス感染による炎症反応を誘導するために、polyICを使用した。先ず、LPS1mg/mlとアラニン置換新規ペプチド5mM又は1mMを無血清細胞培養液に混合した後、1×105cellsのマウス腹腔由来のマクロファージ細胞株に処理した。その後、ATP5mMとアラニン置換新規ペプチド5mM又は1mMを無血清細胞培養液に混合し、30分間処理した。その後、上層液を収得し、ELISAを利用してインターロイキン-1ベータ(interleukin-1beta、IL-1b)の発現水準を確認した。また、polyIC5mg/mlとアラニン置換新規ペプチド25mM又は2mMを無血清細胞培養液に混合し、マウス肺上皮細胞株(mouse lung epithelial cell line、MLE-12)1×105個の細胞に16時間処理した。その後、上層液を収得し、ELISAを利用してインターフェロン-ベータ(interferon-beta、IFN-b)の発現水準を確認した。
【0118】
その結果、1番目及び6番目に位置するアミノ酸をアラニンに置換したMQP-37(A1及びA6)は、細菌感染によるインフラマソーム反応及びウイルス感染による炎症反応をMQP-37の原型のペプチドに比べて遥かに改善させる効果が確認された(
図9aのA及びB)。また、2番目、7番目、9番目のアミノ酸をアラニンに置換したMQP-Y9(A2、A7及びA9)の場合、細菌感染によるインフラマソーム反応に対し、原型に比べて優れた炎症抑制反応を現わすことが確認され(
図9bのC)、10番目のアミノ酸をアラニンに置換したMQP-Y9(A10)の場合、ウイルス感染による炎症反応を原型に比べてより効果的に抑制することが確認された(
図9cのD)。上記結果を基に、本願で製作したアラニン置換新規ペプチドは、効果的に細菌感染によるインフラマソーム反応及びウイルス感染による炎症反応を抑制することが分かる(配列番号5~11;53~62)。
【0119】
実施例10:1番目及び6番目のアミノ酸配列を他のアミノ酸に置換した新規ペプチドにおける抗炎症効果の確認
実施例9の実験を通じて抗炎症活性改善効果が確認された新規ペプチドMQP-37A6(配列番号9)の1番目の位置を、セリン(serine)ではなく他の19個のアミノ酸に置換して合成した(MQP-37A1 derivatives-配列番号12~29、63)。また、MQP-37A6の6番目の位置をアスパラギン酸(aspartic acid)を除いた18個のアミノ酸に置換して合成し(MQP-37A6 derivatives-配列番号30~47)、上記ペプチドの抗炎症改善効果を確認するために、下記のような実験を行った。
【0120】
具体的に、細菌感染によるインフラマソーム反応を誘導するために、LPSとATPを使用し、ウイルス感染による炎症反応を誘導するために、polyICを使用した。先ず、LPS1mg/mlとアミノ酸置換新規ペプチド2mMを無血清細胞培養液に混合した後、1×105cellsのマウス腹腔由来のマクロファージ細胞株に処理した。その後、ATP5mMとアミノ酸置換新規ペプチド2mMを無血清細胞培養液に混合し、30分間処理した。その後、上層液を収得し、ELISAを利用してインターロイキン-1ベータ(interleukin-1beta、IL-1b)の発現水準を確認した。また、polyIC5mg/mlとアミノ酸置換新規ペプチド2mMを無血清細胞培養液に混合し、マウス肺上皮細胞株(mouse lung epithelial cell line、MLE-12)1×105個の細胞に16時間処理した。その後、上層液を収得し、ELISAを利用してインターフェロン-ベータ(interferon-beta、IFN-b)の発現水準を確認した。
【0121】
その結果、MQP-37A6の1番目のアミノ酸をアラニンに置換したMQP-37A1の方が、細菌感染によるインフラマソーム反応を最も効果的に阻害し、フェニルアラニン(phenylalanine、F)、ロイシン(leucin、L)、アルギニン(arginine、R)、チロシン(tyrosine、Y)に置換した場合も、細菌感染によるインフラマソーム反応を効果的に抑制することが確認された(
図10aのA)。また、MQP-37の6番目のアミノ酸を他のアミノ酸に置換した場合、
図10aのBのようにアラニン(alanine、A)、フェニルアラニン(phenylalanine、F)、ヒスチジン(histidine、H)、ロイシン(leucin、L)、メチオニン(methionine、M)などが細菌感染によるインフラマソーム反応を効果的に抑制し、その中でもアラニンに置換した新規ペプチドが最も効果的に阻害したことが確認された。ウイルス感染による炎症反応は、MQP-37の6番目のアミノ酸をトリプトファン(tryptophan、W)又はチロシン(tyrosine、Y)に置換した場合、低いペプチド濃度においても原型のペプチドに比べてウイルス感染による炎症反応を効果的に抑制することが確認された(
図10bのC)。上記結果を基に、本願で製作したアミノ酸置換新規ペプチドは、効果的に細菌感染によるインフラマソーム反応及びウイルス感染による炎症反応を抑制することが分かる。
【0122】
実施例11:新規ペプチドMQP-37とアラニン置換新規ペプチドMQP-37A6の結合力の比較確認
上記実施例9乃至10までの実験を通じて抗炎症活性が確認されたアラニン置換新規ペプチドMQP-37A6のMAVSタンパク質との結合力を原型のペプチドであるMQP-37と比較するために、下記のような実験を行った。
【0123】
具体的に、MAVSタンパク質との結合力を確認するために、組換えMAVSタンパク質と蛍光標識されたMQP-37及びMQP-37A6ペプチドを使用した。先ず、組換えMAVSタンパク質250ngをELISA用の96-well plateにコーティングした後、1%のBSA/PBS溶液でblockingした。その後、様々な濃度の蛍光標識されたペプチドを入れて2時間反応させてからMAVSタンパク質と結合したペプチドの量を蛍光測定を通じて確認した。
【0124】
その結果、MQP-37を濃度別に処理してMAVSタンパク質との結合力を測定した場合、結合力(binding affinity、K
d)は約16mMと測定されたのに対し、MQP-37A6の場合、結合力が約0.75mMと測定されて約20倍の強い結合力を有することが確認された(
図11)。上記結果を基に、本願で製作した新規ペプチドMQP-37A6は、MAVSタンパク質との結合力が改善していることが分かる。
【0125】
実施例12:新規ペプチドMQP-37とアラニン置換新規ペプチドMQP-37A6の生理活性の比較確認
上記実施例9乃至10までの実験を通じて抗炎症活性が確認されたアラニン置換新規ペプチドMQP-37A6の生理活性を原型のペプチドであるMQP-37と比較するために、下記のような実験を行った。
【0126】
具体的に、細菌感染による炎症反応を誘導するために、LPSを使用した。先ず、LPSを0.1mg/ml含む無血清細胞培養液にMQP-37又はMQP-37A6を添加し、マウス腹腔由来のマクロファージ細胞株1×105個の細胞に6時間処理した。その後、上層液を収得し、ELISAを利用してインターロイキン-6(interleukin-6、IL-6)の発現水準を確認した。また、免疫活性化反応の機転を確認するために、ウエスタンブロットを行い、核因子カッパB(Nuclear factor kappa-light-chain-enhancer of activated B cells、NF-kB)リン酸化を確認した。次いで、細菌感染によるインフラマソーム反応を誘導するために、LPSとATPを使用した。先ず、LPS1mg/mlとL型又はD型のMQP-37及びMQP-37A6を無血清細胞培養液に混合し、1×105cellsのマウス腹腔由来のマクロファージ細胞株に処理した。その後、ATP5mMとMQP-37又はMQP-37A6を無血清細胞培養液に混合し、30分間処理した。上層液を収得し、ELISAを利用してインターロイキン-1ベータ(interleukin-1beta、IL-1b)の発現水準を確認した。
【0127】
その結果、L型及びD型の何れも、6番目のアミノ酸がアラニンに置換されたMQP-37A6の方が、原型のMQP-37に比べて、細菌感染による炎症反応(
図12aのA)及びインフラマソーム反応(
図12aのB及びC)、並びに免疫活性化反応(NF-kBリン酸化、
図12bのD乃至F)をより効果的に抑制していることが確認された。上記結果を基に、本願で製作したアラニン置換新規ペプチド(MQP-37A6)は、効果的に炎症反応を抑制することが分かる。
【0128】
実施例13:新規ペプチドMQP-37とアミノ酸置換新規ペプチドMQP-37D6Y、MQP-37D6W、MQP-37D6Hにおけるウイルス炎症反応の比較確認
上記実施例10の実験を通じてウイルス炎症反応抑制活性が確認されたアミノ酸置換新規ペプチドMQP-37D6Y、MQP-37D6Wの活性を原型のペプチドであるMQP-37と比較するために、下記のような実験を行った。
【0129】
具体的に、ウイルス感染反応を誘導するために、polyICを使用した。先ず、polyIC5mg/mlとMQP-37、MQP-37A6、MQP-37D6W、MQP-37D6Y、MQP-37D6H、MQP-37D6K、MQP-37D6R又はMQP-37D6Vを添加した無血清細胞培養液をマウス肺上皮細胞株(mouse lung epithelial cell line、MLE-12)1×105個の細胞に16時間処理した。その後、上層液を収得し、酵素結合免疫吸着検査法(enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)を利用してインターフェロン-ベータ(interferon-beta、IFN-b)の発現水準を確認した。
【0130】
その結果、MQP-37D6W及びMQP-37D6Yの場合、MQP-37及びMQP-37A6と比べて優れたウイルス感染による炎症反応抑制効果を濃度依存的に現わすことが確認され(
図13aのA及びB)。また、MQP-37D6Yの場合、polyICによる細胞死滅効果を効果的に抑制していることが確認され(
図13bのE)、実験に使用したMQP-37D6Yの最大濃度において細胞毒性を示さないことが確認された(
図13bのF)。そして、MQP-37D6Hの場合も、ウイルス感染による炎症反応を濃度依存的に抑制していることが確認された(
図13aのC及びD)。上記結果を基に、本願で製作したMQP-37D6Yを含むアミノ酸置換新規ペプチドは、ウイルス感染による炎症反応を効果的に阻害していることが分かる。
【0131】
実施例14:新規ペプチドのマウス敗血症動物モデルにおける効果の確認
上記実施例2乃至12までの実験を通じて細菌感染による炎症反応を抑制する活性が確認されたD型又はL型のMQP-37及びMQP-37A6のマウス敗血症動物モデルにおける効果を確認するために、下記のような実験を行った。
【0132】
具体的に、7週齢のC57BL/6野生型マウスの腹腔に2mg/kg及び5mg/kgのLPSを6時間間隔で投与し、1時間後、マウスの腹腔に0.4mg/kg、2mg/kg、及び10mg/kgの新規ペプチドを追加投与した。その後、4日間マウスの生存有無を確認した。
【0133】
その結果、0.4mg/kgを投与した場合の生存率が40~80%であったのに対し、2mg/kg及び10mg/kgを投与した場合は100%のマウスが生存していることが確認された(
図14のA乃至C)。また、血液中の炎症性サイトカインであるIL-6の量が、新規ペプチドを処理した群において対照群に比べて減少していることが確認された(
図14のD)。上記結果を基に、D型又はL型のMQP-37及びMQP-37A6は、炎症性疾患である敗血症の治療効果があることが分かる。
【0134】
前述の本願の説明は例示のためのものであり、本願の属する技術分野の通常の知識を有する者は、本願の技術的思想や必須的な特徴を変更することなく、他の具体的な形態に簡単に変形が可能であることが理解できるだろう。したがって、以上に述べた実施例は、あらゆる面で例示的なものであり、限定的でないものと理解しなければならない。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散して実施することもでき、同様に分散されたものと説明されている構成要素も結合された形態で実施することができる。
【0135】
本願の範囲は上記詳細な説明よりは後述する特許請求範囲によって表され、特許請求範囲の意味および範囲、そしてその均等概念から導出されるすべての変更または変形された形態が本願の範囲に含まれるものと解釈されなければならない。
【配列表】