IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ フジモリ産業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-建物用煙突 図1
  • 特開-建物用煙突 図2
  • 特開-建物用煙突 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004188
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】建物用煙突
(51)【国際特許分類】
   E04F 17/02 20060101AFI20240109BHJP
   F23J 13/04 20060101ALI20240109BHJP
   E04H 12/28 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
E04F17/02 B
F23J13/04 Z
E04H12/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103710
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】591029921
【氏名又は名称】フジモリ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003340
【氏名又は名称】弁理士法人湧泉特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栃下 裕也
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 芳宜
(72)【発明者】
【氏名】中本 淳一郎
【テーマコード(参考)】
3K070
【Fターム(参考)】
3K070CA03
3K070CA12
3K070CA29
3K070CA31
3K070CA34
(57)【要約】
【課題】フランジジョイントを有する建物用煙突において、雨水や結露水等の水が煙突内部から煙突ユニットどうしのジョイント部に入り込んだとしても、その水が煙突外へ漏れるのを抑制又は防止する。
【解決手段】建物用煙突1の複数の煙突ユニット10を上下に積み重ねる。上下に隣接する2つの煙突ユニット10のうち上側煙突ユニット16の下端部から外方へ上フランジ21を突出させる。前記2つの煙突ユニット10のうち下側煙突ユニット17の上端部から連結手段40を介して外方へ下フランジ22を突出させる。フランジ21,22どうしを重ねて、接合ボルト30で連結する。連結手段40の連結板41を下側煙突ユニット17より上へ突出させ、連結板41の上端部に下フランジ22を接合することで、下フランジ22の上面を下側煙突ユニット17の外側面の上端より高所に配置する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物に付設されて、上下に積み重ねられた複数の煙突ユニットを含む建物用煙突であって、
上下に隣接する2つの煙突ユニットのうち上側煙突ユニットの下端部から外方へ突出された上フランジと、
前記2つの煙突ユニットのうち下側煙突ユニットの上端部から連結手段を介して外方へ突出されるとともに前記上フランジの下面に重ねられる下フランジと、
前記上フランジ及び前記下フランジを接合する接合ボルトと、
を備え、前記連結手段によって、前記下フランジの上面が、前記下側煙突ユニットの外側面の上端より高所に配置されていることを特徴とする建物用煙突。
【請求項2】
前記連結手段が、前記下側煙突ユニットの外側面に接合された連結板を有し、前記連結板が、前記下側煙突ユニットの外側面の上端より上へ突出され、前記連結板の上端部に前記下フランジが接合されていることを特徴とする請求項1に記載の建物用煙突。
【請求項3】
前記連結板における前記下側煙突ユニットより上へ突出された部分が、前記上側煙突ユニットの平面視外側に離れて配置されていることを特徴とする請求項2に記載の建物用煙突。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物に付設される煙突に関し、特に、上下の煙突ユニットどうしの連結構造としてフランジジョイントを有する建物用煙突に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ボイラーや発電機等が有る建物の内部や外壁には、排ガスを放出するための煙突が備えられている。この種の建物用煙突は、複数の筒形状の煙突ユニットに分割されている。これら煙突ユニットが鉛直に一列に積層されている。各煙突ユニットは、建物躯体の支持部に吊支持されている。上下の煙突ユニットどうしは、地震時の建物の層間変位に追従するために、相対変位可能になっている(特許文献1等参照)。
【0003】
一方、建物躯体の上下の支持部間の距離が、1の煙突ユニットの長さの数倍となることがある。これら支持部間においては、隣接する2つの煙突ユニットどうしが、次のようなフランジジョイントによって連結されている。前記2つの煙突ユニットのうち、上側煙突ユニットの下端部には、上フランジが外方へ突出するように設けられている。下側煙突ユニットの上端部には、下フランジが外方へ突出するように設けられている。これら上下のフランジどうしが、ボルトによって接合されている(特許文献2等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-056633号公報
【特許文献2】実開昭55-108147号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述のフランジジョイントを有する煙突においては、煙突内部に侵入した雨水や煙突内部で発生した結露水が、フランジジョイントを構成する煙突ユニットどうしのジョイント部(上側煙突ユニットの下端面と下側煙突ユニットの上端面との間)を浸透し、フランジのボルト穴や上下のフランジ間を通過して、煙突外へ漏れることがある。
本発明は、かかる事情に鑑み、フランジジョイントを有する建物用煙突において、雨水や結露水等の水が煙突内部から煙突ユニットどうしのジョイント部に入り込んだとしても、その水が煙突外へ漏れるのを抑制又は防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明は、建物に付設されて、上下に積み重ねられた複数の煙突ユニットを含む建物用煙突であって、
上下に隣接する2つの煙突ユニットのうち上側煙突ユニットの下端部から外方へ突出された上フランジと、
前記2つの煙突ユニットのうち下側煙突ユニットの上端部から連結手段を介して外方へ突出されるとともに前記上フランジの下面に重ねられる下フランジと、
前記上フランジ及び前記下フランジを接合する接合ボルトと、
を備え、前記連結手段によって、前記下フランジの上面が、前記下側煙突ユニットの外側面の上端より高所に配置されていることを特徴とする。
【0007】
好ましくは、前記連結手段が、前記下側煙突ユニットの外側面に接合された連結板を有し、前記連結板が、前記下側煙突ユニットの外側面の上端より上へ突出され、前記連結板の上端部に前記下フランジが接合されている。
【0008】
好ましくは、前記連結板における前記下側煙突ユニットより上へ突出された部分が、前記上側煙突ユニットの平面視外側に離れて配置されている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、雨水や結露水等の水が煙突内部から煙突ユニットどうしのジョイント部に入り込んだとしても、その水が煙突外へ漏れるのを抑制又は防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る建物用煙突の一部分を示す正面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う平面断面図である。
図3図3は、図1の円部IIIを拡大して示す正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態を図面にしたがって説明する。
図1に示すように、建物1には、ボイラーや発電機等の排ガス発生設備からの排ガスを放出するための建物用煙突3が備えられている。建物用煙突3は、建物1の吹き抜けシャフト1b内に鉛直に設置されている。
【0012】
図1に示すように、建物用煙突3は、複数の筒形状の煙突ユニット10に分割されている。図2に示すように、各煙突ユニット10の周壁は、断熱層11と、該断熱層11の外周面を覆う外面層12と、断熱層11の内周面を覆う内面層13を含む。断熱層11は、例えばケイ酸カルシウムなどの硬質断熱材によって構成されている。外面層12及び内面層13は、例えば鋼板によって構成されている。煙突ユニット10の平面断面形状は、四角形であるが、これに限らず、円形であってもよく、四角形以外の多角形であってもよい。
【0013】
図1に示すように、建物用煙突3の複数の煙突ユニット10が鉛直に一列に積層されている。上下に隣接する2つの煙突ユニット10どうしは、固定方式のフランジジョイント4を介して剛結合(固定)されるか、又は非固定方式の差し込みジョイント5を介して相対変位可能に連結されている。互いに剛結合された煙突ユニット10どうしによって、一体化煙突ピース14が構成されている。建物用煙突3が、一体化煙突ピース14ごとに、アーム15を介して、建物躯体1aの支持部2に吊支持されている。
【0014】
図1に示すように、フランジジョイント4は、一体化煙突ピース14を構成する上下に隣接する2つの煙突ユニット10の間にも設けられている。以下、前記2つの煙突ユニット10のうち、上側のものを「上側煙突ユニット16」と称し、下側のものを「下側煙突ユニット17」と称す。
【0015】
図3に示すように、フランジジョイント4は、上フランジ21と、下フランジ22と、接合ボルト30と、連結手段40を含む。上フランジ21は、上側煙突ユニット16の全周にわたる四角形の環状に形成されている。該上フランジ21が、上側煙突ユニット16の下端部から外方へ水平に突出されている。上フランジ21の内周面が、上側煙突ユニット16の側面に突き当てられて溶接によって接合されている。上フランジ21は、上側煙突ユニット16の下端面より上方に配置されている。
【0016】
上側煙突ユニット16における上フランジ21より上方の側面には、上側縦リブ23が設けられている。上側縦リブ23の下端面が上フランジ21と溶接にて接合されることによって、上フランジ21が補強されている。
【0017】
図2に示すように、下フランジ22は、下側煙突ユニット17の全周にわたる四角形の環状に形成されている。該下フランジ22が、下側煙突ユニット17の上端部から外方へ水平に突出されている。
【0018】
図3に示すように、下フランジ22の上面が上フランジ21の下面と重ねられている。これら上フランジ21及び下フランジ22どうしが、接合ボルト30及びナット31によって接合されている。上フランジ21と下フランジ22との間には、耐熱パッキン51が介在されている。
【0019】
図3に示すように、下側煙突ユニット17と下フランジ22との間には連結手段40が設けられている。連結手段40を介して、下フランジ22が、下側煙突ユニット17と連結されている。
【0020】
図2及び図3に示すように、連結手段40は、スペーサ42と、連結板41を有している。スペーサ42は、板状に形成され、かつ下側煙突ユニット17の全周を囲む環状になっている。該スペーサ42が、下側煙突ユニット17の外側面に添えられて溶接にて固定されている。スペーサ42の上端面の溶接部は、水密溶接部43を構成している。水密溶接部43によって、スペーサ42の上端面と下側煙突ユニット17の外側面との間が水密に封止されている。水密溶接部43の上面ひいてはスペーサ42の上端面は、下側煙突ユニット17の上端面より少しだけ低所に配置されている。水密溶接部43の上面が、下側煙突ユニット17の上端面と面一であってもよい。
【0021】
図2に示すように、連結板41は、スペーサ42の全周ひいては下側煙突ユニット17の全周を囲む環状になっている。図3に示すように、該連結板41が、スペーサ42の外側面に添えられて溶接にて固定されている。前記水密溶接部43が連結板41の内側面とも溶接されている。水密溶接部43によって、スペーサ42の上端面と連結板41の内側面との間が水密に封止されている。
【0022】
スペーサ42を介して、連結板41が、下側煙突ユニット17の外側面に接合されている。スペーサ42の厚み分だけ連結板41が下側煙突ユニット17の平面視外側へ離れている。
【0023】
図3に示すように、連結板41は、スペーサ42より上へ突出され、さらには下側煙突ユニット17より上へ突出されている。少なくとも連結板41は、下側煙突ユニット17の外側面の上端より上へ突出されている。連結板41における下側煙突ユニット17より上へ突出された立ち上がり部分41aは、上側煙突ユニット16の平面視外側に離れている。
【0024】
連結板41の上端部に下フランジ22の内周部が溶接にて接合されている。
連結手段40によって、下フランジ22が、下側煙突ユニット17より高所に配置されるように支持されている。少なくとも、下フランジ22の上面が、下側煙突ユニット17の外側面の上端より高所に配置されている。
【0025】
連結板41及び下側煙突ユニット17の外側面には、下側縦リブ24が設けられている。下側縦リブ24の上端面が下フランジ22と溶接にて接合されることによって、下フランジ22が補強されている。
【0026】
図3に示すように、上側煙突ユニット16の外側面と、連結板41の立ち上がり部分41aとが離れて対向されることによって、これらの間に立ち上がり隙間44が画成されている。立ち上がり隙間44は、下側煙突ユニット17より上へ延びるとともに、上側煙突ユニット16の全周にわたる環状になっている。立ち上がり隙間44の上端には、上フランジ21が被さっている。立ち上がり隙間44の下端は、水密溶接部43と面している。
【0027】
立ち上がり隙間44の下端部の側方には、上側煙突ユニット16の下端面と下側煙突ユニット17の上端面との間の部分が面している。詳しくは、上下の煙突ユニット16,17の間には、耐熱パッキン50が介在されている。耐熱パッキン50の端面50eが、立ち上がり隙間44の下端部の側方に面している。
【0028】
建物用煙突3において、雨水が煙突内部に侵入して煙突内面に付着したり、煙突内面に結露水が発生したりした場合、これらの水が、耐熱パッキン50と上下の煙突ユニット16,17との境界面56,57を毛細管現象によって浸透することがある。該浸透水が、境界面56,57を通り抜けると、立ち上がり隙間44に入り込み、そこに溜まる。したがって、境界面56,57を通過後の水が、直ちに煙突外に漏れ出ることはない。
立ち上がり隙間44は、前記浸透の流量に対して十分に大きな容量を有しており、蒸発することもあるため、立ち上がり隙間44に溜まった水が、立ち上がり隙間44の上端部まで達することはほとんどない。また、立ち上がり隙間44に水が溜まると、圧力の関係で、水が、立ち上がり隙間44から境界面56,57を伝って逆流して、煙突内へ戻される。
この結果、雨水や結露水等の水が、煙突内部からフランジジョイント4を通して、煙突外へ漏れるのを抑制又は防止することができる。
【0029】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、下フランジ22の少なくとも上面が、下側煙突ユニット17の少なくとも外側面の上端より高所に配置されていればよく、下フランジ22の下面は、下側煙突ユニット17の外側面の上端と同一高さないしはそれより低所に配置されていてもよい。
煙突ユニット16,17どうしの間に段差が形成され、段差より煙突内側における下側煙突ユニット17の上端が、段差より煙突外側における下側煙突ユニット17の上端より上へ突出されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、建物に設備された煙突に適用可能である。
【符号の説明】
【0031】
1 建物
3 建物用煙突
4 フランジジョイント
5 差し込みジョイント
10 煙突ユニット
14 一体化煙突ピース
16 上側煙突ユニット
17 下側煙突ユニット
21 上フランジ
22 下フランジ
30 接合ボルト
31 ナット
40 連結手段
41 連結板
41a 立ち上がり部分
42 スペーサ
43 水密溶接部
44 立ち上がり隙間
50 煙突ユニットの耐熱パッキン
51 フランジ間の耐熱パッキン
図1
図2
図3