(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041893
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】生体試料の染色システムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/31 20060101AFI20240319BHJP
G01N 35/10 20060101ALI20240319BHJP
G01N 35/04 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
G01N1/31
G01N35/10 A
G01N35/04 E
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024002261
(22)【出願日】2024-01-11
(62)【分割の表示】P 2022091692の分割
【原出願日】2017-10-18
(31)【優先権主張番号】62/410,317
(32)【優先日】2016-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(71)【出願人】
【識別番号】507179346
【氏名又は名称】ベンタナ メディカル システムズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100173565
【弁理士】
【氏名又は名称】末松 亮太
(72)【発明者】
【氏名】ドレクスラー,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】グットマン,オリバー
(72)【発明者】
【氏名】ヒュッサー,レト
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】シュタイナート,クリス
(72)【発明者】
【氏名】コジコウスキ,ザ・サード,レイモンド・ティー
(72)【発明者】
【氏名】ハザー,メリス
(57)【要約】 (修正有)
【課題】生体試料の処置のためのシステム及び方法を開示する。
【解決手段】自動化生体試料染色システムは、少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータと、少なくとも1つのバルク流体アプリケータと、少なくとも1つの流体アスピレータと、少なくとも1つの試料基板ホルダと、少なくとも1つの相対運動システムと、制御システムとを備える。制御システムは、少なくとも1つの試料基板ホルダに保持されている基板上に載せられた試料に対して、少なくとも1つの染色プロトコルを実行するようにプログラミングされる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動化生体試料染色システムであって、
a.少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータと、
b.少なくとも1つのバルク流体アプリケータと、
c.少なくとも1つの流体アスピレータと、
d.少なくとも1つの試料基板ホルダと、
e.少なくとも1つの相対運動システムと、
f.前記少なくとも1つの試料基板ホルダに保持された基板上に載せられた試料に対して少なくとも1つの染色プロトコルを実行するようにプログラミングされた制御システムと、
を備え、前記制御システムが、前記少なくとも1つの染色プロトコルの個々のステップを実行するために、前記少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータ、前記少なくとも1つのバルク流体アプリケータ、前記少なくと1つの流体アスピレータ、前記少なくとも1つの試料基板ホルダ、および前記少なくとも1つの相対運動システムを制御する、システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムであって、更に、少なくとも1つの試料撮像システムを含む、システム。
【請求項3】
請求項1記載のシステムであって、更に、少なくとも1つのエア・ナイフを含む、システム。
【請求項4】
請求項1記載のシステムであって、更に、少なくとも1つの廃棄物管理システムを含む、システム。
【請求項5】
請求項1記載のシステムであって、更に、前記制御システムに通信可能に結合された少なくとも1つの試料識別システムを含む、システム。
【請求項6】
請求項1記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つのバルク流体アプリケータおよび前記少なくとも1つの流体アスピレータが、少なくとも1つの第1タイプの試薬管理ユニットに組み合わせられる、システム。
【請求項7】
請求項6記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つのバルク流体アプリケータおよび前記少なくとも1つの流体アスピレータが、1対のニードルを備える、システム。
【請求項8】
請求項7記載のシステムにおいて、前記1対のニードルが、少なくとも0.1mmだけ分離される、システム。
【請求項9】
請求項1記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータ、前記少なくとも1つのバルク流体アプリケータ、および前記少なくとも1つの流体アスピレータが、少なくとも1つの第2タイプの試薬管理ユニットに組み合わせられる、システム。
【請求項10】
請求項2記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータ、前記少なくとも1つのバルク流体アプリケータ、および前記少なくとも1つのエア・ナイフが、少なくとも1つの第3タイプの試薬管理ユニットに組み合わせられる、システム。
【請求項11】
請求項2記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータ、前記少なくとも1つのバルク流体アプリケータ、前記少なくとも1つの流体アスピレータ
、および前記少なくとも1つのエア・ナイフが、少なくとも1つの第4タイプの試薬管理ユニットに組み合わせられる、システム。
【請求項12】
請求項6、9、10および11のいずれか1項記載のシステムにおいて、前記第1、第2、第3、および第4タイプの試薬管理ユニットの内任意のものの少なくとも1つが、前記少なくとも1つの相対運動システムに結合される、システム。
【請求項13】
請求項6、9、10および11のいずれか1項記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの試料基板ホルダが、前記少なくとも1つの相対運動システムに結合される、システム。
【請求項14】
請求項6、9、10および11のいずれか1項記載のシステムにおいて、前記第1、第2、第3、および第4タイプの試薬処理ユニットの内任意のものの少なくとも1つ、ならびに前記少なくとも1つの試料基板ホルダが双方共、前記少なくとも1つの相対運動システムに結合される、システム。
【請求項15】
請求項1記載のシステムにおいて、前記システムが2つ以上の微小流体試薬アプリケータを含む、システム。
【請求項16】
請求項1記載のシステムであって、更に、冷却された試薬貯蔵ユニットを備える、システム。
【請求項17】
請求項1記載のシステムであって、更に、試薬移送システムを備える、システム。
【請求項18】
請求項1記載のシステムにおいて、前記システムが、2つ以上のバルク流体アプリケータと、2つ以上の流体アスピレータとを含む、システム。
【請求項19】
請求項1記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータが、微細加工チップ・アプリケータを備える、システム。
【請求項20】
請求項1記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータが、液滴オンデマンド・アクチュエータを備える、システム。
【請求項21】
請求項20記載のシステムにおいて、前記液滴オンデマンド・アクチュエータが、圧電アクチュエータを備える、システム。
【請求項22】
請求項20記載のシステムにおいて、前記液滴オンデマンド・アクチュエータが、熱アクチュエータを備える、システム。
【請求項23】
請求項20記載のシステムであって、更に、少なくとも1つの圧電アクチュエータと少なくとも1つの熱アクチュエータとを備える、システム。
【請求項24】
請求項1記載のシステムにおいて、前記微小流体試薬アプリケータが、液滴オンデマンド・アクチュエータと流体接続された一体化試薬リザーバを備える、システム。
【請求項25】
請求項1記載のシステムにおいて、前記微小流体試薬アプリケータが、液滴オンデマンド・アクチュエータと流体接続された遠隔試薬リザーバを備える、システム。
【請求項26】
請求項1記載のシステムにおいて、前記微小流体試薬アプリケータが、液滴オンデマンド・アクチュエータと、交換可能な試薬リザーバとを備え、前記液滴オンデマンド・アク
チュエータおよび前記交換可能な試薬リザーバの結合時に、前記交換可能試薬リザーバが前記液滴オンデマンド・アクチュエータと流体接続される、システム。
【請求項27】
請求項1記載のシステムにおいて、前記微小流体試薬アプリケータが、中間試薬リザーバと一体化された液滴オンデマンド・アクチュエータを備え、前記微小流体試薬アプリケータ・ユニットが、遠隔試薬リザーバと流体接続する、システム。
【請求項28】
基板上に保持された試料の少なくとも一部の自動化処置のための方法であって、前記方法が、
a.前記基板上の前記試料の画像を得るステップと、
b.前記基板上の前記試料の位置を自動的に突き止めるステップと、
c.前記基板上の前記試料の前記位置に流体を注出するステップと、
を含む、方法。
【請求項29】
請求項28記載の方法において、前記基板上の前記試料の前記位置に流体を注出する前記ステップが、前記基板上の前記試料の実質的に前記位置にのみ前記流体を注出するステップを含む、方法。
【請求項30】
請求項28記載の方法であって、更に、前記基板上において前記試料が位置付けられている部位から前記流体を除去するステップを含む、方法。
【請求項31】
請求項28記載の方法において、前記試料がパラフィン埋め込み試料を含み、前記基板上の前記試料の位置を自動的に突き止めるステップが、前記パラフィン切片の内前記試料を含有する一部を自動的に検出するステップを含む、方法。
【請求項32】
請求項31記載の方法において、前記流体が脱パラフィン化流体を含み、前記流体を注出するステップが、前記パラフィン切片の内前記試料の小部分を含有する少なくとも1つの小部分に前記脱パラフィン化流体を注出するステップを含む、方法。
【請求項33】
請求項32記載の方法であって、更に、前記パラフィン切片の内前記試料の小部分を含有する前記少なくとも1つの小部分から前記脱パラフィン化流体を除去し、前記試料の前記小部分の周囲にあるパラフィン内にウェルを形成するステップを含む、方法。
【請求項34】
請求項31記載の方法において、前記流体が脱パラフィン化流体を含み、前記流体を注出するステップが、前記パラフィン切片の内前記試料を含有する前記部分に実質的に前記脱パラフィン化流体を注出するステップを含む、方法。
【請求項35】
請求項34記載の方法であって、更に、前記パラフィン切片の内前記試料を含有する前記部分から実質的に前記脱パラフィン化流体を除去し、前記試料を実質的に包囲する前記パラフィン内にウェルを形成するために、前記試料周囲の前記基板上にパラフィンを残すステップを含む、方法。
【請求項36】
請求項33または35のいずれか1項記載の方法において、前記脱パラフィン化流体を注出するステップおよび前記脱パラフィン化流体を除去するステップが、同時に実行される、方法。
【請求項37】
請求項33または35のいずれか1項記載の方法であって、更に、前記試料の前記小部分の周囲にある前記パラフィン内の前記ウェルに、または前記試料を実質的に包囲する前記パラフィン内の前記ウェルに、それぞれ、少なくとも1つの第2流体を分与するステップを含む、方法。
【請求項38】
請求項37記載の方法において、前記パラフィン内の前記ウェルに少なくとも1つの第2流体を分与するステップが、水、緩衝液、抗体溶液、染料液、核酸溶液、溶剤、界面活性剤、および保湿剤の内1つ以上の前記パラフィン内の前記ウェルに分与するステップを含む、方法。
【請求項39】
請求項28記載の方法であって、更に、前記基板上の前記試料の位置から、前記試料の2つ以上の別個の小部分を選択するステップと、前記試料の前記2つ以上の別個の選択された小部分上にあるパラフィンを溶解するために、前記試料の前記2つ以上の別個の選択された小部分に前記脱パラフィン化流体を注出するステップとを含む、方法。
【請求項40】
請求項39記載の方法であって、更に、前記試料の前記2つ以上の別個の小部分から前記脱パラフィン化流体を除去し、前記試料の前記2つ以上の別個の小部分周囲にあるパラフィン内に2つ以上の別個のウェルを形成するステップを含む、方法。
【請求項41】
請求項39記載の方法において、前記試料の2つ以上の別個の小部分を選択するステップが、前記試料が得られた同じ試料ブロックのH&E染色連続切片の画像から、2つ以上の別個の小部分を選択して、前記連続切片の形態学的特徴を明らかにするステップと、前記連続切片からの前記形態学的特徴を前記基板上の前記試料にマッピングするステップとを含む、方法。
【請求項42】
請求項41記載の方法において、前記連続切片からマッピングされた前記試料の前記2つ以上の別個の小部分が、前記試料の異なる形態学的特徴と一致するように選択される、方法。
【請求項43】
請求項41記載の方法において、前記連続切片からマッピングされた前記試料の前記2つ以上の別個の小部分が、陽性対照および陰性対照の内少なくとも1つを供給するため、更に、前記陽性対照および前記陰性対照の内前記少なくとも1つとの比較のために、前記試料の少なくとも1つの小部分を供給するために選択される、方法。
【請求項44】
請求項36記載の方法において、前記脱パラフィン化流体の注出および前記脱パラフィン化流体の除去を同時に行うステップが、第1ニードルから前記脱パラフィン化流体を注出するステップを含み、前記脱パラフィン化流体を除去するステップが、前記第1ニードルから少なくとも0.1mmに位置する第2ニードルに、前記脱パラフィン化流体を吸引するステップを含む、方法。
【請求項45】
請求項44記載の方法において、前記第1および第2ニードルが、前記試料全域にわたって、一緒に直線的に平行移動する、方法。
【請求項46】
請求項44記載の方法において、前記第1および第2ニードルが、共通軸を中心として回転する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互引用
[0001] 本開示は、2016年10月19日に出願された米国仮特許出願第62/410,317号の利益を主張する。この特許出願をここで引用したことにより、その内容は本願にも含まれるものとする。
【0002】
発明の分野
[0002] 本発明は、生体試料の自動染色システムおよび方法に関し、更に特定すれば、貴重な試料および試薬の双方を節約するのに役立つように、細胞および組織試料を正確に処理するシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003] 自動染色機器には、現在3つの主要なタイプが入手可能であり、ディップ・アンド・ダンク・ストレーナ(dip and dunk strainer)、パドル・ストレーナ(puddle strainer)、および薄膜ステイナ(thin-film stainer)を含む。これら3つのタイプのステイナ
の各々は、診断目的のための生体試料(以後「試料」)の検査に先立って、細胞構造(例えば、核および細胞メンブレーン)および/または特定の細胞成分(例えば、タンパク質および核酸マーカ)の局在確認を可能にしコントラストを与えるために使用される。通例、染色のためそしておそらくは試料保管の目的で試料を調製するために、一連の試薬が試料に注出される。顕微鏡検査では、細胞試料は顕微鏡スライドのような基板上に載せられ、その上で処理されるのが通例である。
【0004】
[0004] 「ディップ・アンド・ダンク」ステイナは、顕微鏡スライドまたはこのようなスライドのラックを一連の試薬量(または槽)内に連続的に浸漬することによって動作し、検査用スライドの高スループット生産に適している。染色プロセスに対する制御は、主に、浸漬時間長および槽内の染色試薬濃度に基づくが、ときの経過と共に、ディップ・アンド・ダンク槽における試薬濃度は、試料による試薬の取り込み(uptake)、および槽内において通例空気に露出されたまま放置される試薬の劣化のために変化する。更に、試薬を1つの槽から他の槽に移すことも、試薬間の希釈および相互汚染のために、試薬濃度の変化に寄与する。試薬濃度を制御することが難しいために、自動ディップ・アンド・ダンク・ステイナは、試料間における染色の一貫性に備えるためには濃度制御が非常に重要である、免疫組織化学(IHC)およびインサイチュー・ハイブリダイゼーション(ISH)プロトコルのような、先進の染色プロトコルには余り適していない。加えて、IHC用の抗体、およびISHプロトコル用の核酸プローブは、槽において一括大量に注出することがディップ・アンド・ダンク・ステイナの特徴であるが、そうするには余りにも高価でしかも貴重過ぎる。ディップ・アンド・ダンク・ステイナによって大量の廃棄物が生み出され、多くの場合厳しい環境規制にしたがってこのような廃棄物を取り扱い処理する実験室要員にとって、これらが魅力的でなくなる。
【0005】
[0005] パドル染色技術は、水平に配置された顕微鏡スライド上に載せられた細胞試料に十分な試薬を分与し(dispense)、試料が試薬の「パドル」によって覆われ、次いで、試薬パドルを圧縮空気の噴射によって渦巻かせることによってというような、試薬を混ぜる何らかの作業(effort)を用いてまたは用いずに、ある所定の時間期間培養のために放置されることによって動作する。一旦試薬が所定の時間量の間試料と接触したなら、通例、新たな試薬を注出できるようにスライドをすすぎ洗いして(rinse)試薬を除去する。場合に
よっては、第2の潜在的に相溶性のない試薬を試料に注出する前に第1試薬を完全に除去したことに確証を得るために、特定の染色プロトコルの間、スライドを複数回洗浄しなけ
ればならないこともある。パドル技術は、広範囲に及ぶ先進のIHCおよびISH染色プロトコルを自動化することを可能にした。しかしながら、典型的な組織試料をパドルで覆うのに十分な試薬の量は、大量であり、試薬の量の一部は、試料と反応しないまま残るので、無駄になる。更に、すすぎ剤の量も考慮に入れると、所与の染色プロトコルの間にパドル・ステイナによって生み出される可能性がある廃棄物の量は非常に多くなる可能性があり、その処理(disposal)が実験室要員の負担となって残る。
【0006】
[0006] 「薄膜」ステイナは、顕微鏡スライドの表面と、カバー・タイルまたはカバー・スリップのような第2の表面との間の毛管空間に試薬を拘束することによって、試薬量(reagent volume)を削減し、貴重な試薬を節約することを目指す。試料による試薬の取り込みが場所によって異なるために、毛管空間内で試薬の枯渇が生じ、そのために濃度勾配に至る可能性があり、次いで試料全域における一貫性のない染色となり、染色パターンの分析が不確実になる可能性がある。試薬の補充を枯渇領域に供給することによって、混合がある程度染色の勾配を軽減することができるが、この手法はステイナの構造(design)を複雑にすることが多い。
【0007】
[0007] 貴重な試薬の節約に対する更に最近の手法に、染色試薬を試料の小面積に注出するための微小流体アプリケータ(microfluidic applicator)の使用によるものがある。
例えば、Pepper et.al(Journal of Histology、34:
3、pp123~131、2011)は、組織学的染色のためのサーマル・インクジェット印刷の使用を開示する。微小流体アプリケータの他の例が、Lovchik et al.(15th Int.Conf.on Miniaturized Systems for Chemistry and Life Sciences(化学および生活科学のための微細加工システムに関する第15回国際会議)、Oct.2~6、201、pp368~370。ここで引用したことによりその内容は本願にも含まれるものとする)、deparaffinization(脱パラフィン化)によって開示されている。
【0008】
[0008] PCT出願第PCT/2016/EP058801は、試薬の試料への指向性微小流体試薬注出を利用し、このような統合システムの実現に向けた重要な一歩を提供するシステムおよび方法を開示する。この特許出願をここで引用したことにより、本開示と矛盾しない範囲で、その内容は本願にも含まれるものとする。端的に言うと、液滴オンデマンド注出(droplet on-demand application)のために、主染色組成物および巨大分子試
薬組成物が設けられる。また、液滴オンデマンド・プリント・ヘッド(例えば、インクジェット・プリント・ヘッドまたは他の液滴分与手段)を組織試料の一部に近接して位置付け、所定量の染色試薬をプリント・ヘッドから組織試料のその一部に所定の速度で分与することによって、組織試料を染色する方法も開示されており、この方法は、プロセスを監視しながら、多数回行うことができる。例えば、試料上における染色強度を測定することにより、測定された染色強度が所定の閾値に達しない場合、試薬の分与を繰り返すことができる。分与は、上に位置する流体層(overlying fluid layer)を用いて、または用いず
に行うことができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
[0009] 本明細書において開示するのは、基板(顕微鏡スライド等)上に載せられた多種多様の試料タイプ(例えば、冷凍組織切片、パラフィン埋め込み組織切片、血液学および細胞学試料)の完全自動化染色を可能にするシステムおよび方法であり、組織形態学を保存し、更に貴重な試薬を節約し、そして特定の実施形態では、追加の診断情報を試料から抽出するのに役立つように、微小流体試薬ディスペンサを最大限利用して、貴重な試薬を節約しつつ、染色プロセスに対する一層完全な制御も実現する。
【0010】
[0010] 以前の手法は、染色試薬の初期注出およびその後の注出のために殆どのまたは全ての試料を調製するために必要とされる、余り貴重でないバルク試薬(洗浄試薬、緩衝液、および脱パラフィン化試薬等)の注出に取り組んでおらず、処理中組織の保護に適切に対応しておらず、封入処理のために試料を自動的に調整するには適していないと考えられる。これに鑑みて、そして先に注記したように、本開示は、染色プロセス全体の自動化を推進しつつ、貴重な試薬を節約し(conserve)無駄を減らす、統合方法およびシステムを開示する。また、必要とされるのは、貴重な試薬を節約する(preserve)のに役立つだけでなく、追加の診断情報を得るにあたって貴重な生体試料を一層活用する方法およびシステムである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[0011] 本開示の1つの態様において、システムは、 微小流体試薬アプリケータと、
バルク流体アプリケータと、流体アスピレータと、試料基板ホルダと、少なくとも1つの相対運動システムと、制御システムとを含む。他の実施形態では、このシステムは、更に、試料撮像システムを含む。特定の実施形態では、バルク流体アプリケータおよび流体アスピレータがこのシステムの1つのユニットに組み合わせられる。更に特定的な実施形態では、微小流体試薬アプリケータ、バルク流体アプリケータ、および流体アスピレータが、このシステムの1つのユニットに組み合わせられる。他の更に一層特定的な実施形態では、第1バルク流体アプリケータを微小流体試薬アプリケータとすることができ、ある実施形態では、第2バルク流体アプリケータがこのシステムに含まれる。このような第2バルク流体アプリケータは、更に、流体アプリケータと共にこのシステムの1つのユニットに組み込むことができる。更に一層特定的な実施形態では、バルク流体アプリケータおよびバルク流体アスピレータが1つのユニットに組み込まれる場合、バルク流体アプリケータのアパーチャ、およびバルク流体アスピレータのアパーチャが、少なくとも0.1mmの距離だけ、例えば、少なくとも1.0mmの距離というような、少なくとも0.5mmの距離だけ分離される。
【0012】
[0012] 本開示の他の態様において、方法は、基板上の試料の画像を得るステップと、基板上で試料の位置を突き止めるステップと、微小流体試薬アプリケータ、バルク流体アプリケータ、または双方を、試料が位置付けられている基板上の部位(location)まで移動させるステップとを含む。一実施形態では、この方法は、試料が位置付けられている基板上の部位にバルク流体を分与するステップと、試料が位置付けられている基板上の部位からバルク流体を除去するステップとを含む。特定の実施形態では、試料はパラフィン埋め込み組織試料であり、基板上で試料の位置を突き止めるステップは、試料を含有するパラフィン切片の部分を検出するステップと、このパラフィン切片内において試料が位置するパラフィン切片の部分のみに実質的にバルク流体を分与するステップとを含む。更に特定的な実施形態では、バルク流体は脱パラフィン化試薬を含む。このように、試料を包囲する非極性パラフィン内にウェルを形成することができ、水、水性溶液(緩衝液、抗体溶液、または核酸溶液等)、および他の極性試薬(保湿剤等)を試料上に保持するために使用することができる。
【0013】
[0013] 更に特定的な実施形態では、試料は、パラフィン埋め込み組織または細胞試料であり、この方法は、更に、基板上で試料が位置する部位の2つ以上の別個の部分を選択するステップと、試料が位置する部位において選択した2つ以上の別個の部分に、バルク流体アプリケータを使用して脱パラフィン化流体を注出して、試料が位置する部位において選択した2つ以上の別個の部分上に位置するパラフィン内に2つ以上のウェルを形成する(produce)ステップとを含む。更に一層特定的な実施形態では、この方法は、更に、試
料が位置する部位の2つ以上の別個の部分から選択された1つに脱パラフィン化流体を注出し、流体アスピレータを使用して、試料から脱パラフィン化流体を同時に除去するステップとを含む。有利なこととして、バルク流体アプリケータおよび流体アスピレータが1
つのユニットに組み合わせられ、一緒に移動して脱パラフィン化流体を同時に分与および除去し、これによって、試料の選択された部分からパラフィンを素早く除去する。
【0014】
[0014] ある実施形態では、バルク流体アプリケータのアパーチャと流体アスピレータのアパーチャとの間の分離距離を、少なくとも1.0mm以上(10mmまで、約20mmまで、約30mmまで、またはそれ以上、例えば、約100mmまで、約200mmまで、約300mmまで、または約1cmまでというような、それ以上の距離))に広げ、しかもアプリケータ・アパーチャとアスピレータ・アパーチャとの間に接続流体流を維持することが可能である。特定の実施形態では、バルク流体アプリケータおよび流体アスピレータは、互いから離れた1対のニードル(例えば、約1mmから約100mm、約2mmから約50mm、または約3mmから約10mmだけ離れたというような1対のニードル)であることができ、接続流体流を2つのニードル間で維持し、「流体ナイフ」を形成することができる。このように、例えば、流体ナイフを試料全域にわたって移動させ、パラフィン埋め込み組織試料の全部または一部を選択的に脱パラフィン化することができる。更に特定的な実施形態では、このような流体ナイフは、一般には正方形または矩形のウェルを、試料の選択部分の上に作る(prepare)ために使用することができ、染色プロトコ
ルにしたがって、このウェルの中に更に他の試薬を沈積させ(deposit)、除去することが
できる。更に一層特定的な実施形態では、1対のニードルを中心軸を中心として回転させ、回転液体ナイフを形成することができ、脱パラフィン化流体を注出および除去するために使用する場合、試料の選択部分上に円形のウェルを作るために使用することができる。いずれの場合でも、個々のウェルを試料の選択部分上に形成することができ、異なる診断アッセイを1つの試料上で、これらの別個のウェル内において実行することができ、これによって1つの貴重な資料から追加の診断情報を得ることができる。
【0015】
[0015] 本開示の他の態様のシステムでは、1つの微小流体試薬ディスペンサの少なくとも2つの隣接する微小流体ディスペンサ・ポートが、微小流体試薬ディスペンサの少なくとも2つの別個の試薬リザーバと流体連通する。例えば、圧電インク・ジェット・プリンタ・ヘッドまたは熱インク・ジェット・プリンタ・ヘッドの微小流体ディスペンサ・ポートのマトリクスにおいて、このマトリクスの交互の行または交互の列が、微小流体試薬ディスペンサの少なくとも2つの別個の試薬リザーバに流体接続する。代替実施形態では、圧電インク・ジェット・プリンタ・ヘッドまたは熱インク・ジェット・プリンタ・ヘッドの微小ディスペンサ・ポートのマトリクスの1つ以上の行または列内における交互の微小流体ディスペンサ・ポートが、微小流体ディスペンサの少なくとも2つの別個の試薬リザーバと流体連通してもよい。ある実施形態では、圧電インク・ジェット・プリンタ・ヘッドまたは熱インク・ジェット・プリンタ・ヘッドの微小ディスペンサ・ポートのマトリクスの少なくとも2つ以上の異なる小集合(subsection)を、少なくとも2つ以上の別個の試薬リザーバと流体接続することも可能である。他の実施形態では、特に、試薬が互いに適合性がある場合(一次、二次、および検出システム抗体ならびに試薬のように)、所与の染色プロトコルにしたがって、どの試薬を微小流体ディスペンサ・ポートのマトリクスに連続して送達するか、バルブが制御することができる。
【0016】
[0016] 本開示の他の態様における方法では、少なくとも2つの染色試薬が同時に試料と接触するように、組織試料上の実質的に同じ位置に、少なくとも2つの染色試薬を順次または同時に沈積させる。通常では適合性がない試薬であっても、別個の微小流体試薬ディスペンサ(または、1つの微小流体試薬ディスペンサの別個の微小流体ディスペンサ・ポート)から、同時にまたは素早く連続的に試料に分与することができる。例えば、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)を試料上に一緒に沈積させ、H&E染色試料を調製するために必要とされる時間を大幅に短縮することができる。
【0017】
[0017] 本開示の他の態様は、基板上に保持された試料の少なくとも一部の自動化処置
のための非一時的コンピュータ読み取り可能媒体であり、メモリが、(a)基板上の試料の画像を得るための命令、(b)基板上の試料の位置を自動的に突き止めるための命令、および(c)基板上の試料の位置に流体を注出するための命令を含む。
【0018】
[0018] 纏めると、開示するシステムおよび方法は、組織学組織染色業界内に関与する開発、品質、患者に安全なプロセスに対する改善を表す。ある実施形態では、試薬沈積デバイス(reagent deposition device)は、分与された任意の試薬が、流体の薄い境界層を
貫通し、試料と連通する染色試薬を補充することを可能にするように構成される。いずれの特定の理論によっても拘束されることは望まないが、現在の染色技術は、組織試料内に濃度勾配を受動的に拡散する染色試薬のパドルに頼っていると考えられる。パドル-組織界面において試薬の能動的な混合を欠くと考えられるこれらの染色システムでは、組織内への染色の拡散(diffusion)は、界面における染色濃度枯渇層の積み上げによって影響を
受け、染色動力学が制限される。本開示は、(i)枯渇層の厚さに近い厚さの染色膜を作り、(ii)枯渇層において染色分子を補充することによって、受動的染色拡散の限界を克服することにより先行技術の染色技法に対して改善をもたらすことを確信する。
【0019】
[0019] 開示するシステムおよび方法の更に他の特徴ならびに利点は、以下に続く詳細な説明を、添付図面を参照しながら検討することによって明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、開示するシステムの実施形態の模式図である。
【
図2】
図2は、開示するシステムにおいて、コンベヤと、染色プロトコルにしたがって試料を処置するための複数のモジュールとを含む他の実施形態の模式図である。
【
図3】
図3は、開示するシステムにおいて、静止試料基板ホルダおよび可動試料処理モジュールのアレイを含む他の実施形態の模式図である。
【
図4】
図4Aは、複合バルク流体アプリケータおよび流体アスピレータ・モジュールの第1実施形態を示す図である。
図4Bは、更に、エア・ナイフを含む、複合バルク流体アプリケータおよび流体アスピレータ・モジュールの第2実施形態を示す図である。
【
図5】
図5Aは、パラフィン埋め込み組織切片のパラフィン内に正方形または矩形ウェルを作る(prepare)ように構成された複合バルク流体アプリケータおよび流体アスピレータ・モジュールの実施形態の図である。
図5Bは、パラフィン埋め込み組織切片のパラフィン内に円形ウェルを作る(prepare)ように構成された複合バルク流体アプリケータおよび流体アスピレータ・モジュールの実施形態の図である。
【
図6】
図6Aは、一体化された試薬リザーバを有する、液滴オンデマンド微小流体試薬アプリケータの実施形態を示す図である。
図6Bは、交換可能な試薬リザーバを有する、液滴オンデマンド微小流体試薬アプリケータの実施形態を示す図である。
図6Cは、遠隔試薬リザーバを有する、液滴オンデマンド微小流体試薬アプリケータの実施形態を示す図である。
図6Dは、遠隔試薬リザーバおよび一体化中間リザーバを有する、液滴オンデマンド微小流体試薬アプリケータの実施形態を示す図である。
【
図7】
図7は、開示するシステムの特定の実施形態にしたがって、使用されないときは、どのようにして試薬リザーバを冷たく保つことができるかを示す模式図である。
【
図8】
図8は、開示するシステムの特定の実施形態にしたがって、どのようにして複数の試薬リザーバを、1つの液滴オンデマンド・アクチュエータ・ヘッドと共に使用することができるかを示す模式図である。
【
図9】
図9Aは、微小流体液滴オンデマンド・アクチュエータ、バルク流体アプリケータ・スリット、および流体アスピレータ・スリットを含む統合システムの実施形態の正面を示す模式図である。
図9Bは、微小流体液滴オンデマンド・アクチュエータ、バルク流体アプリケータ・スリット、および流体アスピレータ・スリットを含む統合システムの実施形態の側面を示す模式図である。
図9Cは、微小流体液滴オンデマンド・アクチュエータ、バルク流体アプリケータ・スリット、および流体アスピレータ・スリットを含む統合システムの実施形態の底面を示す模式図である。
【
図10】
図10Aは、微小流体液滴オンデマンド・アクチュエータ、バルク流体アプリケータ・ニードル、および流体アスピレータ・ニードルを含む統合システムの実施形態の正面を示す模式図である。
図10Bは、微小流体液滴オンデマンド・アクチュエータ、バルク流体アプリケータ・ニードル、および流体アスピレータ・ニードルを含む統合システムの実施形態の側面を示す模式図である。
図10Cは、微小流体液滴オンデマンド・アクチュエータ、バルク流体アプリケータ・ニードル、および流体アスピレータ・ニードルを含む統合システムの実施形態の底面を示す模式図である。
【
図11】
図11は、開示するシステムにおいて、微小流体試薬アプリケータと、廃棄物分離のために構成された複合バルク流体アプリケータおよび流体アスピレータ・メカニズムとを含むサブシステムの実施形態の模式側面図である。
【
図12】
図12は、開示するシステムにおいて、微小流体試薬アプリケータと、複合バルク流体アプリケータおよび流体アスピレータ・メカニズムとを含む、サブシステムの実施形態の模式上面図である。
【
図13】
図13は、開示するシステムにおいて、微小流体試薬アプリケータと、複合バルク流体アプリケータ/流体アスピレータ/エア・ナイフ・メカニズムとを含む、サブシステムの実施形態の模式上面図である。
【
図14】
図14は、開示するシステムにおいて、試料を高温および/または高圧で処置することができるチェンバを形成するために、微小流体試薬アプリケータと密閉状に嵌合するように構成された試料基板ホルダを含むサブシステムの実施形態の模式正面図である。
【
図16】
図16は、インク・ジェット・プリンタにおけるプリント動作の制御についての総合的な機能フローチャートを明示する模式図を示す。
【
図17】
図17は、インクジェット染色システム制御方式の実施形態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[0046] 本明細書において使用する場合、単数形の用語「a」、「an」、および「the」には、文脈が別の意味を明らかに示さない限り、複数形の参照対象が含まれるものとする。同様に、「または」(or)という単語は、文脈が別の意味を明らかに示さない限り、「および」(and)を含むことを意図している。
【0022】
[0047] 「備えている」(comprising)、「含んでいる」(including)、「有している」(having)等という用語は、交換可能に使用され、同じ意味を有するものとする。同様に、
「備える」(comprises)、「含む」(includes)、「有する」(has)等という用語も、相互交換可能に使用され、同じ意味を有するものとする。具体的には、これらの用語の各々は、「備えている」(comprising)の一般的な米国特許法の定義と一致して定義され、したがって、「少なくとも以下のもの」を意味する開放用語であると解釈され、更に、追加の特徴、限定、態様等を除外しないように解釈されるものとする。したがって、 例えば、「構
成要素a、b、およびcを有するデバイス」は、デバイスが、少なくとも構成要素a、bおよびcを含むことを意味する。同様に、「ステップa、b、およびcを含む方法」(a method involving steps a, b, and c)という語句は、この方法が少なくともステップa、b、およびcを含むことを意味する。更に、本明細書では、ステップおよびプロセスが特定の順序で概説されることもあるが、特定の順序が文脈によって明確に示されなければ、ステップおよびプロセスの順序は変化してもよいことは、当業者には認められよう。
【0023】
[0048] 本明細書において使用する場合、「約」(about)という用語は、引用される数
値の±1~10%、例えば、引用される数値の±1~2%というような、引用される数値の±1~5%を指す。
【0024】
[0049] 本明細書において使用する場合、「実質的に」(substantially)という用語は
、少なくとも90%を指し、例えば、この用語によって引用される目的の少なくとも99%というような、少なくとも95%を指す。
【0025】
[0050] 本明細書において使用する場合、「抗体」(antibody)という用語は、免疫グロブリンまたは免疫グロブリン様分子を指し、一例としてそして限定ではなく、対象の分子(または対象の非常に類似の分子群)に特異的に結合して、他の分子への結合を実質的に排除する、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgM、その組み合わせ、および任意の脊椎動物において(例えば、ヒト、ヤギ、ウサギ、およびマウスのような哺乳動物において)免疫反応中に産生される類似の分子、ならびに抗体断片(例えば、当該技術分野に知られるようなF(ab’)2断片、Fab’断片、Fab’-SH断片、およびFab断片)、組換え抗体断片(例えば、sFv断片、dsFv断片、二重特異性sFv断片、二重特異性dsFv断片、F(ab)’2断片、一本鎖Fvタンパク質(「scFv」)、ジスルフィド安定化Fvタンパク質(「dsFv」)、ディアボディ、およびトリアボディ、およびラクダ科(camelid)抗体が含まれる。抗体は、更に、抗原のエピトープを
特異的に認識して、そしてこれに結合する、少なくとも軽鎖または重鎖免疫グロブリン可変領域を含む、ポリペプチドリガンドを指す。抗体は、各々、可変領域を有する、可変重鎖(VH)領域および可変軽鎖(VL)領域と称される重鎖および軽鎖で構成されてもよい。VH領域およびVL領域は、一緒に、抗体によって認識される抗原への結合に関与する。また、抗体という用語には、完全なままの免疫グロブリン、ならびにその変異体および部分も含まれる。
【0026】
[0051] 本明細書において使用する場合、「抗原」(antigen)という用語は、抗体分子
またはT細胞受容体等の、特異的体液性または細胞性免疫の産物によって特異的に結合可能である化合物、組成物、または物質を指す。抗原は、例えば、ハプテン、単純中間代謝産物、糖(例えば、オリゴ糖)、脂質、およびホルモン、ならびに複合炭水化物(例えば、多糖)、リン脂質、核酸、およびタンパク質のような、巨大分子を含む任意のタイプの分子が可能である。
【0027】
[0052] 本明細書において使用する場合、「生体試料」(biological sample)または「
試料」(sample)という用語は、とりわけ、細菌、酵母、原生動物、およびアメーバのような単細胞生物、多細胞生物(健康なまたは見かけ上健康なヒト被験体、あるいは、癌のような、診断または研究しようとする状態または疾患に罹患しているヒト患者からの試料を含む、植物または動物等)を含むがこれらに限定されない、任意の生存生物から得られるか、これらによって排出されるか、またはこれらによって分泌される、任意の固体または流体試料を指す。具体的には、試料は、分析しようとする細胞および/または組織の形態学的特性を保持する試料のように、組織化学的または細胞化学的分析に適したものであることができる。例えば、生体試料は、例えば、血液、血漿、血清、尿、胆汁、腹水、唾液、脳脊髄液、眼房水または硝子体液、あるいは任意の体性分泌物、漏出液、滲出液(例えば、膿瘍あるいは感染または炎症の任意の他の部位から得られる流体)から得られる体液、あるいは関節(例えば正常関節または疾患に罹患した関節)から得られる流体であってもよい。生体試料はまた、任意の臓器または組織(生検、または腫瘍生検のような検屍標本を含む)から得られる試料であってもよく、あるいは細胞(初代細胞または培養細胞いずれであってもよい)、または任意の細胞、組織もしくは臓器によって馴化された培地を含んでもよい。ある例では、生体試料は核抽出物である。特定の例では、試料は品質管理試料である。特定の例では、試料は試験試料である。例えば、試験試料は、被験体から得られた生体試料から調製された、細胞、組織または細胞ペレット切片である。一例では、被験体は、疾病の危険性があるかまたは罹患している被験者である。試料は、一般の当業者によって知られる任意の方法を使用して調製することができる。試料は、ルーチンのス
クリーニングのため、被験体から得ることができ、あるいは遺伝子異常、感染、または新生物のような障害を有すると推測される被験体から得ることもできる。また、開示する方法を説明する実施形態は、「正常」試料と称される、遺伝子異常、疾患、障害等を持たない試料に適用することもできる。試料は、1つ以上の検出プローブによって特異的に結合することができる複数のターゲットを含むことができる。特定例では、試料は、顕微鏡スライド上に載せられ(そしておそらくはその上で焼き固められた)パラフィン埋め込み組織のブロックから切除された組織切片である。他の特定例では、試料は、細胞を顕微鏡スライド上に堆積することによって(細胞が収集されたフィルタと接触してスミア(smear)
を形成することによって、または顕微鏡スライドの表面にわたるパターンに細胞をプリントすることによってというようにして)調製された、細胞学または血液学試料である。
【0028】
[0053] 本明細書において使用する場合、「滴量オンデマンド」(drop-on-demand)、「液滴オンデマンド」(droplet-on-demand)、または「液滴に基づく」(droplet-based)(および他の同様の用語または句)は、試薬でスライドまたはその上の試料を「水浸しにする(flooding)」のとは対照的に、ターゲット試料上に試薬の別個の液滴を沈着させる染色技術を指す。ある実施形態では、液滴オンデマンド技術は、インクジェット技術または圧電技術を利用する。本明細書に開示するいくつかの実施形態では、液滴分与技術は、インクジェット・プリント・ヘッドまたは類似の技術を使用すると容易になる。
【0029】
[0054] 本明細書において使用する場合、「保水剤」(humectant)という用語は、物質
、例えば、組織試料を湿らせておくために使用される吸湿性物質を指し、乾燥剤とは反対である。これは、多くの場合、様々な親水性基、殆どの場合、ヒドロキシル基を含む分子であるが、アミンおよびカルボキシル基、時にはエステル化されたものも、遭遇する可能性がある(水分子と水素結合を形成する親和性が必須の特質である)。保水剤は、吸収によって近くの空気中の水分を誘引し、そして保持し、水蒸気を生物/対象の表面内におよび/またはその下に引き入れると考えられる。対照的に、乾燥剤も周囲の水分を誘引するが、水蒸気を塗膜層としての表面上に凝集させることによって、吸収するのではなく吸着させる。インクジェット沈着または類似の技術の関連において、保水剤は、存続可能なノズルを維持するために重要であるのはもっともである。ある実施形態では、組織試料または生体試料を、薄膜処理中に水和させておくことが重要である。
【0030】
[0055] 本開示における「インクジェット」(inkjet)という用語は、分配マニホールドから液滴を作動させるために圧電(または熱)素子を使用する、滴オンデマンド技術の一群を指す。これには、商業的プリント産業に一般的である直接および非接触法、または商業的プリント産業外で使用されるものが含まれてもよい。
【0031】
[0056] 本明細書において使用する場合、「免疫組織化学」(immunohistochemistry)という用語は、 抗原の、抗体のような特異的結合剤と相互作用を検出することによって、
試料における抗原の存在または分布を判定する方法を指す。抗体-抗原結合を可能にする条件下で、試料を抗体と接触させる。抗体-抗原結合は、抗体にコンジュゲートされた検出可能な標識によって(直接検出)、または一次抗体に特異的に結合する二次抗体にコンジュゲートされた検出可能な標識によって(間接的検出)、検出可能である。
【0032】
[0057] 本明細書において使用する場合、「一次抗体」(primary antibody)という用語は、組織試料中のターゲットタンパク質抗原に特異的に結合する抗体を指す。一次抗体は、一般的に、免疫組織化学法において使用される第一の抗体である。また、一次抗体には、別の分子(例えば、標識、ハプテン等)にコンジュゲートされた抗体も含まれる。一次抗体は、組織試料内のターゲットを検出するための「検出プローブ」として役割を果たすこともできる。
【0033】
[0058] 本明細書において使用する場合、「一次染色剤」(primary stain)という用語
は、 組織試料において、コントラストを増進する色素または類似の分子である。ある実
施形態では、一次染色剤は、細胞内または細胞上の生物学的構造を、抗体のような特定の結合剤の使用を伴わずに直接「標識する」ものである。一次染色剤のいくつかの例には、ヘマトキシリンおよびエオジンが含まれる。一次染色剤の他の例には、アクリジンオレンジ、ビスマルクブラウン、カーミン、クーマシーブルー、クレシルバイオレット、クリスタルバイオレット、DAPI(「2-(4-アミジノフェニル)-1H-インドール-6-カルボキサミジン」)、エチジウムブロミド、酸性フクシン、ヘキスト染色剤(ビス-ベンズイミダゾール誘導体であるヘキスト33342およびヘキスト33258)、ヨウ素、マラカイトグリーン、メチルグリーン、メチレンブルー、ニュートラルレッド、ナイルブルー、ナイルレッド、四酸化オスミウム、ローダミン、およびサフラニンが含まれる。一次染色剤の他の例には、細菌を染色するために使用される染色剤(グラム陽性またはグラム陰性染色剤)、内性胞子を同定するために使用される染色剤(内性胞子染色剤)、結核菌(Mycobacterium tuberculosis)の種の同定を補助す
るために使用される染色剤(チール・ネールゼン染色剤)、パパニコロー染色キット(ヘマトキシリン、オレンジG、エオジンY、ライトグリーンSFイエローイッシュ、および時によってビスマルクブラウンYの組み合わせを使用する)、過ヨウ素酸シッフ染色剤(「PAS染色剤」)、銀染色剤等が含まれる。さらに他の限定されない一次染色剤には、(i)マイコバクテリウム属(Mycobacterium)および他の抗酸生物または構成要素を選択的に示すための組織学的染色剤(例えば、Ventana Medica
l Systems Inc.(以後、Ventana、アメリカ合衆国アリゾナ州ツーソン)A)より入手可能な、AFB III染色キット)、(ii)酸性ムチンを中性多糖
と区別するための組織学的染色(例えば、同様にVentanaより入手可能なPAS用のアルシアンブルー)、(iii)弱酸性ムコ多糖を示すための組織学的染色剤(例えば、同様にVentanaより入手可能なアルシアンブルー染色キット)、(iv)ヘリコバクター・ピロリ(Helicobacter pylori)に関する組織学的染色剤
(例えば、同様にVentanaより入手可能なアルシアンイエロー染色キット)、(v)アミロイドを選択的に示すための組織学的染色剤(例えば、同様にVentanaより入手可能な、コンゴ・レッド染色キット)、(vi)中性多糖から酸性ムチンを区別するための組織学的染色剤(例えば、同様にVentanaより入手可能な、ジアスターゼキット)、(vii)組織切片における弾性線維を示すための組織学的染色剤(例えば、同様にVentanaより入手可能な、弾性染色キット)、(viii)骨髄および他の造血組織(リンパ節)中の白血球を区別するための組織学的染色(例えば、同様にVentanaより入手可能なギムザ染色キット)、(ix)限定されるわけではないが、アスペルギルス属(Aspergillus)およびブラストミセス属(Blastomyces1)等の病原性真菌、ならびにニューモシスチス・カリニ(Pneumosystis carinii)等の他の日和見感染生物を区別可能な染色剤を含む、真菌および他の日和見感染生物の細胞壁中の多糖を示すための組織学的染色剤(例えば、同様にVentanaより入手可能なGMS II染色キット)、(x)グラム陰性およびグラム陽性細菌を示すための組織学的染色剤(例えば、同様にVentanaより入手可能なグラム染色キット)、(xi)結合組織、筋肉およびコラーゲン線維を研究するために使用する組織学的染色剤(例えば、同様にVentanaより入手可能なトリクローム用グリーン)、(xii)骨髄、ヘモクロマトーシス組織、およびヘモジデリン沈着症における鉄色素を検出するための組織学的染色剤(例えば、同様にVentanaより入手可能な鉄染色キット)、(xiii)毛細血管基底膜を示すための組織学的染色剤(例えば、どちらも同様にVentanaより入手可能なJones H&E染色キットまたはJonesライ
トグリーン染色キット)、(xiv)真菌検出用の組織学的染色剤(例えば、同様にVentanaより入手可能なPAS用ライトグリーン)、(xv)酸性ムコ多糖(ムチン)を検出するための組織学的染色剤(例えば、同様にVentanaより入手可能なムチアルミン(Muciarmine)染色キット)、(xvi)陽性細網線維、基底膜、真菌
、および中性ムコ多糖の同定を補助可能な染色剤、または未分化PAS陰性扁平上皮癌から、PAS陽性分泌性腺癌を区別する際に補助可能な染色剤を含む、グリコーゲンの存在を示すために使用される組織学的染色剤(例えば、同様にVentanaより入手可能なPAS染色キット)、(xvii)細網線維を示すための組織学的染色剤(例えば、同様にVentanaより入手可能な細網II染色キット)、(xviii)特定の好銀性微生物を研究するために使用される組織学的染色剤(例えば、同様にVentanaより入手可能なSteiner II染色キット)、(xix)ある種の胃潰瘍(H.ピロリ(H. pylori))、ライム病、レジオネラ病、ネコひっかき熱等の疾患の原因生物の同定を補助するための組織学的銀染色剤(例えば、同様にVentanaより入手可能なSteiner染色キット)、(xx)結合組織、筋肉およびコラーゲン線維を研究するための組織学的染色剤(例えば、同様にVentanaより入手可能なトリクロームIIブルー染色キット)、(xxi)結合組織、筋肉およびコラーゲン線維を研究するための組織学的染色剤(例えば、各々、同様にVentanaより入手可能なトリクローム染色キット、トリクロームIIIブルー染色キット、またはトリクロームIIIグリーン染色キット)が含まれる。また、当業者には、本開示のキット、方法、および組成物(例えば一次染色組成物、試薬組成物)と組み合わせて使用可能な他の一次染色剤、またはそれに関しては色素が存在することが認められよう。
【0034】
[0059] 本明細書において使用する場合、「試薬」(reagent)という用語は、形態学的
(例えばヘマトキシリンおよびエオジン)、免疫組織化学的、または特殊染色の関連で使用される、組織切片または細胞学試料上に沈着される任意の流体を指すこともある。これには、ワックスを除去する(すなわち脱パラフィン化)ための油、有機物、および架橋試薬、洗浄剤(washes)、すすぎ剤(rinses)、希釈剤、または反応条件を設定するために使用される緩衝剤、適切な濃度にする、反応を停止する、または過剰な反応物質を洗い流すための希釈試薬、形態学的染色および特殊染色に使用される小分子色素、IHCまたはICC染色に使用される抗体、抗体コンジュゲート、酵素、マルチマー、増幅剤、発色原基質、蛍光検出化学物質、化学発光基質、および酵素反応補因子が含まれるが、これらに限定されるのではない。
【0035】
[0060] 本明細書において使用する場合、「界面活性剤」(surfactant)は、化学作用の様式に応じて、陰イオン性、陽イオン性、または非イオン性と分類される。一般的に、界面活性剤は、2つの液体の間の界面張力を減少させる。界面活性剤分子は、通例、極性またはイオン性「ヘッド」および非極性炭化水素「テール」を有する。水への溶解に際して、界面活性剤分子は凝集し、そしてミセルを形成し、その中で、非極性テールは内側に向き、そして極性またはイオン性ヘッドは水性環境に向かって外側に向く。非極性テールは、ミセル内に非極性「ポケット」を生成する。溶液中の非極性化合物は、界面活性剤分子によって形成されたポケット中に隔離され、したがって、非極性化合物が水溶液内で混合されたまま残留することを可能にする。ある実施形態では、界面活性剤を使用すると、組織切片に渡る試薬の均一な拡散を生じるとともに、バックグラウンド染色を減少させることもできる。
【0036】
[0061] 本明細書において使用する場合、「ターゲット」(target)は、生体試料における特定の組織、あるいは生体試料における特定の分子またはマーカであることも可能である。ターゲットの例には、抗原(ハプテンを含む)、抗体、および酵素が含まれる。ターゲットの更に他の例には、通常、タンパク質、ペプチド、核酸、糖、および脂質が含まれる。本開示において使用するための試薬は、生体試料中に存在するターゲット物質を、ターゲットの局在を検出することができるように(視覚的にというように)、検出可能な形態に変換することが可能なものであってもよい。
【0037】
[0062] 本開示の一態様は、自動化生体試料染色システムであって、少なくとも1つの
微小流体試薬アプリケータと、少なくとも1つのバルク流体アプリケータと、少なくとも1つの流体アスピレータと、少なくとも1つの試料基板ホルダとを含む。ある実施形態では、自動化生体試料染色システムは、更に、試料基板ホルダ(1つまたは複数)、微小流体試薬アプリケータ(1つまたは複数)、バルク流体アプリケータ(1つまたは複数)、および流体アスピレータ(1つまたは複数)の内1つ以上を一緒にまたは別個に、任意の組み合わせで移動させるための少なくとも1つの相対運動システムを含む。ある実施形態では、自動化生体試料染色システムは、更に、試料基板ホルダ内に保持された基板上に載せられた試料に対して少なくとも1つの染色プロトコルを実行するようにプログラミングされた制御システムを含む。ある実施形態では、このシステムは2つ以上の微小流体試薬アプリケータを含む。
【0038】
[0063] ある実施形態では、制御システムは、少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータ、少なくとも1つのバルク流体アプリケータ、少なくとも1つの流体アスピレータ、少なくとも1つの試料基板ホルダ、および少なくとも1つの相対運動システムの内1つ以上を、少なくとも1つの染色プロトコルの個々のステップを実行するように制御する。ある実施形態では、制御システムは、更に、以上のコンポーネントと組み合わせて動作して、特定の染色プロトコルにしたがって試料を処置する1つ以上の補助サブシステムを制御することもできる。制御システムのメモリ(例えば、非一時的メモリ)内に格納される染色プロトコルの数、ならびに特定の染色プロトコルの個々のステップを実行するために測定および/または適用される命令およびパラメータの数は限定されず、逆に、システム全体の複雑さにしたがって規模調整(scaled)されるのが通例である。つまり、1つの特定の染色プロトコル(手術室における凍結組織切片の急速H&E染色のための小規模システム等)による個々のスライド染色のための実施形態では、制御システム・メモリに格納される命令およびパラメータの数を最少にすることができる。しかしながら、別個の基板ホルダ上において大多数の染色プロトコルにしたがって処置される種々の異なるタイプの試料を受ける複雑なシステムでは、プロトコル、命令、格納されるパラメータ、測定されるパラメータ、処理アルゴリズム等の数は、任意の数の染色プロトコルを信頼性高くそして繰り返し実行するために必要とされるだけ多くすることができる。
【0039】
[0064] 制御システムと通信しこれによって制御することができ、および/または少なくとも1つの相対運動システムによって移動させることができる追加のサブシステムの例には、少なくとも1つの試料撮像システム、少なくとも1つのエア・ナイフ、少なくとも1つの廃棄物管理システム、および少なくとも1つの試料識別システムの内1つ以上が含まれる。追加のサブシステムの他の例には、1つ以上の試薬貯蔵ユニット(冷却することができる)、1つ以上の試薬移送システム、および1つ以上の基板移送システムが含まれる。制御システムと通信しその制御下に置くことができる追加のサブシステムの更に他の例については、
図1を参照しながら以下で説明する。
【0040】
[0065] 他の実施形態では、少なくとも1つの流体アスピレータが、少なくとも1つのエア・ナイフと置き換えられる。エア・ナイフは、圧縮空気または窒素のような、圧縮気体を使用して試料からの流体の移動を促進するために使用される。例えば、試料から流体を吸引しこれらを廃棄物に向かわせる代わりに、流体を廃棄物コンテナまたは廃棄物コンテナに至る廃棄物受容器(waste receiver)に移動させる、または「吹き込む」(blown off
into)ことができる。
【0041】
[0066] ある実施形態では、種々のシステム・コンポーネント(例えば、
図1において識別されるもの)を組み合わせて、1つ以上の試薬管理ユニットを形成してもよい。各試薬管理ユニットは、同じまたは異なる構成を有する(例えば、構成とは、システム・コンポーネントのタイプ、システム・コンポーネントの数、または任意の1つのシステム・コンポーネントの品質を意味する)。これに鑑み、本明細書において開示するシステムは、
1つ以上の試薬管理ユニット、例えば、1つ以上の試薬管理ユニット、2つ以上の試薬管理ユニット、3つ以上の試薬管理ユニット、または4つ以上の試薬管理ユニットを備えてもよい。
【0042】
[0067] ある実施形態では、少なくとも1つのバルク流体アプリケータおよび少なくとも1つの流体アスピレータが、少なくとも1つの第1タイプの試薬管理ユニットに組み合わせられる。他の特定の実施形態では、少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータ、少なくとも1つのバルク流体アプリケータ、および少なくとも1つの流体アスピレータが、少なくとも1つの第2タイプの試薬管理ユニットに組み合わせられる。他の特定の実施形態では、少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータ、少なくとも1つのバルク流体アプリケータ、および少なくとも1つのエア・ナイフが、少なくとも1つの第3タイプの試薬管理ユニットに組み合わせられる。更に別の特定の実施形態では、少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータ、少なくとも1つのバルク流体アプリケータ、少なくとも1つの流体アスピレータ、および少なくとも1つのエア・ナイフが、少なくとも1つの第4タイプの試薬管理ユニットに組み合わせられる。システム構成に応じて、本システムは、第1タイプ、第2タイプ、第3タイプ、および第4タイプの試薬管理ユニットの内2つ以上の任意の組み合わせを含むことができる。ある実施形態では、試薬管理ユニットは、例えば、ポンプ、リザーバ、バルブ等を含むことができ、更に、所定量の所定流体を送達するためにこれらを制御するコントローラを含むことができる。ある実施形態では、試薬管理ユニットは、更に、1つ以上の試薬を送達するための他の手段も含むことができ、これらの試薬は固体または液体でも可能である。例えば、試薬管理ユニットは、試料への注出のために固体試薬を液体に溶解させるための再構成ユニットを含むこともできる。あるいは、試薬管理ユニットは、更に、ブリスタ・パック(blister pack)およびブリスタの内容物を管理し試料と接触させるために分与するための関連メカニズムというような、1つ以上の単回投与試薬アプリケータ(single-dose reagent applicator)を含むこともできる。
【0043】
[0068] ある実施形態では、少なくとも1つのバルク流体アプリケータおよび少なくとも1つの流体アスピレータは、1対のニードルを備える。更に別の特定例では、この対のニードルは、少なくとも0.1mmの距離、例えば、少なくとも1.0mmの距離というような、少なくとも0.5mmの距離だけ分離される。
【0044】
[0069] 少なくとも1つの試薬管理ユニットのタイプ(即ち、システム・コンポーネントの選択および/または数)には関係なく、試薬管理ユニットを少なくとも1つの相対運動システムに結合することができ、または少なくとも1つの試料基板ホルダを少なくとも1つの相対運動システムに結合することができ、または少なくとも1つの試薬処置ユニットおよび少なくとも1つの試料基板ホルダの双方が、少なくとも1つの相対運動システムに結合される。システム構成に応じて、本システムは、異なるタイプの試薬管理ユニット、異なる試料基板ホルダ、および異なる相対運動システム間において任意の結合の組み合わせを含み、それぞれのコンポーネント間において相対的な運動を行うことができる。
【0045】
[0070] ある実施形態では、バルク流体アプリケータのアパーチャとバルク流体アスピレータのアパーチャとの間の距離は、少なくとも1.0mm以上(約10mmまで、約20mmまで、約30mmまで、またはそれ以上、例えば、約1cmまでというように、約100mmまで、約200mmまで、約300mmまで、またはそれ以上)とすることができ、それでもなおアプリケータ・アパーチャとアスピレータ・アパーチャとの間に流体流の接続を維持することができる。前述のような特定の実施形態では、バルク流体アプリケータおよびバルク流体アスピレータは、互いに分離された(例えば、約2mmから約50mmまで、または約3mmから約10mmまでというように、約1mmから約100mmまでだけ)1対のニードルとすることができ、「流体ナイフ」を形成するために2つのニードル間に接続流体流を維持することができる。
【0046】
[0071] 例えば、そしてある実施形態では、パラフィン埋め込み組織試料の全部または一部を選択的に脱パラフィン化するために、相対的運動によって試料全域にわたって流体ナイフを移動させることができる。更に特定的な実施形態では、このような流体ナイフは、試料の選択された部分の上方に正方形または矩形のウェルを作る(prepare)ために使用
することができ、このウェルの中に、染色プロトコルにしたがって他の試薬を沈積させるまたは除去することができる。更に一層特定的な実施形態では、回転液体ナイフを形成するために、中心軸を中心として1対のニードルを回転させることができ、脱パラフィン化流体を注出および除去するために使用される場合、サンプルの選択された部分にわたって円形のウェルを作るために使用することができる。
【0047】
[0072] 開示するシステムの特定の実施形態では、少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータは、 Lovchik et al.(15th Int.Conf.on Min
iaturized Systems for Chemistry and Life Science、Oct.2~6、201、pp368~370)に開示されているような、少なくとも1つの微細加工チップ・アプリケータ(micro-fabricated chip applicator)を備える。この文献をここで引用したことにより、その内容は本願にも含まれるものとする。他の特定の実施形態では、少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータは、液滴オンデマンド・アクチュエータを備え、この液滴オンデマンド・アクチュエータは、例えば、圧電アクチュエータまたは熱アクチュエータとすることができる。更に特定的な実施形態では、開示するシステムは、微細加工チップ・アプリケータ、圧電アプリケータ、および熱アプリケータの内2つ以上の任意の組み合わせを含むことができる。例えば、圧電アクチュエータは、純粋な力(sheer force)による劣化を受け易い試薬または熱的に不安定な試
薬を含有する流体を分与するために選択されるとよく、一方、微細加工チップ・アプリケータまたは熱アクチュエータは、純粋な力(sheer force)による劣化を受け易くない試薬
または熱的に不安定でない試薬を含有する流体を分与するために、それぞれ、選択されるとよい。特定の試薬の劣化は、パドル上におけるその特定の試薬の染色性能との比較によって、または先の背景において説明したような薄膜染色システムによって判定することができる。
【0048】
[0073] 他の特定の実施形態では、微小流体試薬アプリケータは、液滴オンデマンド・アクチュエータと流体接続するものというような、一体化された試薬リザーバを備える。ある実施形態では、微小流体試薬アプリケータは、遠隔試薬リザーバ、例えば、液滴オンデマンド・アクチュエータと流体接続する遠隔試薬リザーバを備える。更に他の特定の実施形態では、微小流体試薬アプリケータは交換可能なリザーバを備えることができる。液滴オンデマンド・アクチュエータおよび交換可能な試薬リザーバの結合時における、液滴オンデマンド・アクチュエータおよびこの液滴オンデマンド・アクチュエータと流体接続される交換可能な試薬リザーバのように、この交換可能なリザーバは、これら2つの結合時に、微小流体試薬アプリケータと流体接続される。また、微小流体試薬アプリケータは、中間試薬リザーバを備えることも可能である。中間試薬リザーバは、遠隔試薬リザーバに流体接続され、遠隔試薬リザーバによって供給される。例えば、更に特定的な実施形態では、微小試薬アプリケータは、遠隔試薬リザーバと流体接続する中間試薬リザーバと一体化された液滴オンデマンド・アクチュエータを備える。
【0049】
[0074] 開示するシステムは、本明細書において説明するようなリザーバ構成の任意の組み合わせおよび/またはバルク流体アプリケータの任意の組み合わせを含むことができることは、当業者には認められよう。例えば、貴重な一次抗体および核酸プローブは、一体化リザーバを含む微小流体アプリケータにおいて供給することができ、この微小流体アプリケータを冷却試薬貯蔵システムに出入りするように移動させ、特定の染色プロトコルにおいて必要とされるときに、特定の試料基板ホルダに搬送することができる。あるいは
、このような貴重な試薬は、交換可能なリザーバ内に保持することができ、この交換可能なリザーバを、冷却試薬貯蔵システムに出入りするように移動させ、液滴オンデマンド・アクチュエータのような微小流体試薬アプリケータに結合する。一方、洗浄溶液を含むバルク流体、脱パラフィン化流体等のような、さほど貴重でない試薬は、容易に再充填することができる遠隔試薬リザーバに保持し、微小流体試薬アプリケータまたはバルク流体アプリケータと流体接続することができる(配管を通じて、そして恐らくは中間リザーバを介してというようにして)。同様に、複数の染色プロトコルにおいて使用される試薬(例えば、二次抗体、三次抗体、酵素に結合された抗体、酵素基質等のような検出試薬)は、1つ以上の試料基板ホルダに近接するリザーバ内に保持することができる。これらのリザーバは、検出化学反応(detection chemistries)を実行するために使用され、直接または
配管(そしておそらくは中間リザーバ)を通じて1つ以上の微小流体試薬アプリケータに流体接続される。特定の実施形態では、特定の検出化学反応(一次抗体結合のジアミノベンジジン検出(di-aminobenzidine detection)等)のために使用される全ての異なる試薬
は、1つの微小流体試薬アプリケータに流体接続されたリザーバ内に保持され(直接、または配管を通じて、あるいは配管および中間リザーバを介して)、順次または同時に、任意の組み合わせで1つの微小流体試薬アプリケータを通って試料上に導かれる。更に特定的な実施形態では、1つの微小流体試薬ディスペンサの少なくとも2つの隣接する微小流体ディスペンサ・ポートが、微小流体試薬ディスペンサの少なくとも2つの別個の試薬リザーバに流体接続される。既に説明したように、例えば、圧電インク・ジェット・プリンタ・ヘッドまたは熱インク・ジェット・プリンタ・ヘッドの微小流体ディスペンサ・ポートのマトリクスでは、このマトリクスの交互の行または交互の列が、微小流体試薬ディスペンサの少なくとも2つの別個の試薬リザーバに流体接続する。他の代替実施形態では、圧電インク・ジェット・プリンタ・ヘッドまたは熱インク・ジェット・プリンタ・ヘッドの微小流体ディスペンサ・ポートのマトリクスの1つ以上の行または列内にある交互の微小流体ディスペンサ・ポートが、微小流体ディスペンサの少なくとも2つの別個の試薬リザーバに流体接続する。ある実施形態では、圧電インク・ジェット・プリンタ・ヘッドまたは熱インク・ジェット・プリンタ・ヘッドの微小流体ディスペンサ・ポートのマトリクスの少なくとも2つ以上の異なるサブセクションが、少なくとも2つ以上の別個の試薬リザーバに流体接続する。更に他の実施形態では、特に、試薬が互いに適合性がある場合(一次、二次、および検出システム抗体ならびに試薬のような場合)、所与の染色プロトコルにしたがってどの試薬を微小流体ディスペンサ・ポートのマトリクスに連続的に送達するか、バルブによって制御することができる。
【0050】
[0075] また、本明細書において開示するのは、基板上に保持された試料の少なくとも一部の自動処置方法である。この方法は、基板上の試料の画像を得るステップと、基板上の試料の位置を自動的に判定するステップと、基板上の試料の位置に流体を注出するステップとを含む。一実施形態では、基板上の試料の位置に流体を注出するステップは、実質的に基板上の試料の位置のみに流体を注出するステップを含む。特定の実施形態では、この方法は、更に、試料が位置する基板上の部位から流体を除去するステップも含むことができる。更に特定的な実施形態では、試料は、パラフィン埋め込み試料を含み、基板上の試料の位置を判定するステップは、試料を含有するパラフィン切片の部分を自動的に検出するステップを含む。更に一層特定的な実施形態では、流体は脱パラフィン化流体を含み、流体を注出するステップは、試料の小部分(sub-portion)を含有するパラフィン切片の
少なくとも1つの小部分に脱パラフィン化流体を注出するステップを含み、更に、試料の小部分の周囲にあるパラフィン内にウェルを形成するために、試料の小部分を含有するパラフィン切片の少なくとも1つの小部分から、脱パラフィン化流体を除去するステップも含むことができる。あるいは、流体は脱パラフィン化流体を含み、流体を注出するステップは、試料を含むパラフィン切片の実質的な部分(substantially the portion)に脱パラ
フィン化流体を注出するステップを含み、更に、試料を含むパラフィン切片の実質的な部分から脱パラフィン化液体を除去し、試料を実質的に包囲するパラフィン内にウェルを形
成するために、試料周囲の基板上にパラフィンを残すステップを含むことができる。脱パラフィン化流体の注出、および脱パラフィン化流体の除去は、ある実施形態では、同時に行われてもよい。
【0051】
[0076] 一旦ウェル(または複数のウェル)が試料(または試料の1つ以上の小部分)周囲に形成されたなら、この方法は、更に、少なくとも1つの第2流体をパラフィン内のウェル(または複数のウェル)に分与するステップを含むことができる。いずれの特定の理論にも拘束されることは望まないが、パラフィン内のウェルは、疎水性パラフィンが極性溶液の移行(migration)に対する障壁を形成するので、極性(水性のような)溶液をウ
ェルに閉じ込めるという利点を得ることができると確信する。例えば、第2流体は、パラフィン内のウェルに入る、水、緩衝液、抗体溶液、染料溶液、核酸溶液、溶剤、界面活性剤、および保水剤の内1つ以上とすることができる。
【0052】
[0077] 更に特定的な実施形態では、開示する方法は、基板上の試料の場所から、2つ以上の別個の試料の小部分を選択するステップと、この試料の選択された2つ以上の別個の小部分上のパラフィンを溶解するために、脱パラフィン化流体を、この試料の選択された2つ以上の別個の小部分に注出するステップとを含む。ある実施形態では、この方法は、更に、試料の2つ以上の別個の小部分の周囲にあるパラフィン内に2つ以上の別個のウェルを形成するために、試料の2つ以上の別個の小部分から脱パラフィン化流体を除去するステップを含むことができる。更に一層特定的な実施形態では、開示する方法は、試料が得られた同じ試料ブロックのH&E染色連続切片の画像から、2つ以上の別個の小部分を選択するステップを含む。連続切片(2つ以上の別個の小部分が選択された試料の数個の内の1つにおいてミクロトームまたは他の手段によってスライスされた切片を意味する)のH&E染色切片は、2つ以上の別個の小部分が選択された試料と大まかに同じ全体形状を有するので、H&E染色連続切片の画像において識別された特定の形態学的特徴を識別し、試料の同様の小部分にマッピングし(当技術分野では周知の画像分析技法によって)、試料の更なる処置を案内するために使用することができる。例えば、連続切片からマッピングされた試料の2つ以上の別個の小部分は、試料の異なる形態学的特徴と一致するように選択される。ある実施形態では、連続H&E切片からマッピングされた試料の2つ以上の別個の小部分は、陽性対照(positive control)または陰性対照(negative control)の内少なくとも1つを供給するように、そして陽性対照および陰性対照の内少なくとも1つとの比較のために、試料の少なくとも1つの小部分を供給するように選択される。
【0053】
[0078] 他の実施形態では、組織試料上の実質的に同じ場所に少なくとも2つの染色試薬を順次または同時に沈積させる方法を開示する。本開示の実施形態によれば、ヘマトキシリンおよびエオシンのように、互いに適合性がないと考えられる試薬であっても、1つ以上の微小流体試薬ディスペンサから、例えば、隣接する微小流体ディスペンサ・ポートまたは別個の微小流体試薬ディスペンサから、試料上に一緒に沈積させることもできるという利点がある。
【0054】
[0079] ある実施形態では、リアル・タイム分与量測定データを格納し、スライド検体の識別子と照合してもよく、各ディスペンサの識別子を前記検体への試薬の送達と関連付けてもよい(affiliate)。このメタデータは、組織学研究における追跡および報告の目的
のために、機器またはホスト・コンピュータ上に格納してもよい。分与量メタデータは、スライド染色プロセス履歴全体について追跡することができる。加えて、ディスペンサの識別子毎に連続性能追跡を、その寿命の間照合することもできる。所与の「劣る分与」(poor dispense)に対して、「故障した」ディスペンサおよび影響を受けた検体に、例えば
、ソフトウェアによってフラグを立て、様々な電子的方法(即ち、LEDインディケータ、作動報告(run report)等)によって組織学者に報告し、患者の安全性を高めることができる。分与量メタデータは、研究および開発の目的のために、外部データ・バンクに収集
してもよい。このデータは、新たな染色キット、または個々の染色製品を認可(qualify)
するためおよびふるい分けるために使用することができる。加えて、新たに開発される試薬は、経時的に成果が異なるおそれがあり、更に試薬の検体スライドへの分与送達に影響を及ぼすおそれがあるので(即ち、試薬およびディスペンサとの材料適合性)、この新たに開発される試薬において、分与検証追跡を使用することもできる。
【0055】
[0080] ある実施形態では、試薬、またはその試薬を含む組成物が、微小流体試薬ディスペンサから非混和性流体を通じて十分な速度で分与され、試薬の液滴を、組織保存流動媒体(tissue-preserving fluid medium)の薄膜を通して送り込む。薄膜流体の例には、ドラクソル(draksol)、リンパル、鉱物油、またはシリコーン油が含まれるが、これらに限
定されるのではない。一般に、好ましい属性には、室温(例えば、摂氏20~30度)において液体状態であること、表面張力が低いこと、および蒸気圧が低いことが含まれる。ある実施形態では、非混和性バリア層が、試料表面へのこのバリアを通じた水性液体の再供給を可能にすると考えられる。 低い表面張力によって、バリアを比較的薄い膜(約1
00μm以下の高さ)として試料上にコーティングすることが可能になる。更に、低い蒸気圧によって、バリア層が試料から緩慢に蒸発することを確保すると考えられる。 これ
によって、非混和性流体の下で試料に連通する層内に試薬が送り込まれると考えられる。この実施形態では、液滴の動力学エネルギー(液滴の質量および液滴が膜に衝突する際の衝撃速度の積)は、保護層の表面張力/エネルギーより大きくなければならず(それに加えて、置換された流体に相当する十分な追加エネルギーを供給しなけれならない)、例えば、約9.52x10-10Jより大きくなければならない。ある実施形態では、動力学エネルギーは、約6.23x10-10Jである。更に、衝撃に際して液滴破壊が起こらないことを確保するため、液滴のウェーバー数は、約18未満でなければならない。ある実施形態では、一旦表面が破壊されたら、液滴が保護層を通じて試料に直接接触し続けることを確保するために、液滴は保護膜より高い密度を有さなければならない。
【0056】
[0081] 他の実施形態では、局所的に層を通じて染色剤を流体-組織染色剤枯渇層に搬送する薄膜内に試薬液滴を送り込むのに十分な速度で、あらかじめ存在する流体「層」内に、試薬を分与する。これは、試料と連通する界面接触点において、試薬の補充を促進すると考えられる。一方、これによって染色剤枯渇境界層を排除し、場合によっては枯渇層をわたる染色試薬の拡散による影響を受ける、染色反応動力学を改善すると考えられる。実際、抗体のような巨大生体分子では、ターゲットへの分子の結合は、時間および濃度が決定要因となる。本明細書に開示するデバイス(および付随する固有の混合)による分与によって、追加の試薬材料で薄膜を連続的に破壊することにより組織表面での有効濃度が増進し、取り込み速度を高めることができると考えられる。この実施形態では、速度は、一般に、約5m/s~約15m/sの範囲である。
【0057】
[0082] 本開示のある実施形態にしたがって開示する自動化生体染色システムの一実施形態を
図1に示す。システム100は、制御システム102を含む。制御システム102は、種々のサブシステムと通信し、ネットワーク104と通信することができる。ネットワーク104は、更に、追加の自動化生体染色システム、病理実験室ワークフロー制御および追跡システム、ならびに実験室情報システム(LIS)および/または病院情報システム(HIS)の制御システムとも通信することができる。病理実験室において調製された特定の試料に対する指令(order)は、制御システム102に送られ、試料がシステム1
00に到達するまで、制御システムのメモリ(図示せず)に格納することができる。例えば、顕微鏡スライド上に配置された特定の試料を、基板移送/基板移動システム106(例えば、コンベア・ベルトまたは磁気移送システムのような、1-Dまたは2-D移送システムとすることができる)によって、システム100に向けて誘導することができる。試料がシステム100に到達すると(手動または自動のどちらかで)、基板識別システム108が、顕微鏡スライドに付随する識別子(一意の試料識別子等)(例えば、バーコー
ド・ラベル、数値識別子、またはRFIDタグ)に基づいて、試料を識別し、制御システム102が、この特定の試料を、処理ステップ(制御システム102のメモリに格納するか、または指令と共にネットワーク104を通じて制御システムに送ることができる)を指定する指令と関連付ける。画像取得システム110は、基板識別システム108の一部として機能することもでき、試料(パラフィン埋め込み組織試料等)を撮像し、試料のマップを生成する。このマップは、特定のプロトコルにしたがって試料を処理するために使用することができる。画像は、例えば、GUI114上に表示することができ、ユーザは制御システム102と対話処理して(タッチ・スクリーンを介してというようにして)移動および/または処理ステップを制御することができる。また、GUI114は、例えば、システム100によって処理される試料の進展を監視し、警告を表示し、品質管理チェックを実行するために使用することもできる。
【0058】
[0083] 制御システム102は、プロセッサ、オペレーティング・システム、システム・メモリ、メモリ記憶デバイス、入力/出力コントローラ、入力/出力デバイス、およびディスプレイ・デバイスというような、既知のコンポーネントを含むことができる。また、キャッシュ・メモリ、データ・バックアップ・ユニット、および多くの他のデバイスも含んでもよい。入力デバイスの例には、キーボード、カーソル制御デバイス(例えば、マウス)、マイクロフォン、スキャナ等が含まれる。出力デバイスの例には、ディスプレイ・デバイス(例えば、GUI114のようなモニタまたはプロジェクタ)、スピーカ、プリンタ、ネットワーク・カード等が含まれる。ディスプレイ・デバイスは、視覚情報を提供するディスプレイ・デバイスを含んでもよく、この情報は、通例、論理的および/または物理的に画素のアレイとして編成することができる。また、インターフェース・コントローラも含めることができ、インターフェース・コントローラは、入力および出力インターフェースを設けるための種々の既知のソフトウェア・プログラムまたは今後のソフトウェア・プログラムの内任意のものを備えることができる。通例、インターフェースは、関連技術の当業者には知られている選択または入力手段を使用して、ユーザ入力を受け入れるために使用可能である。また、インターフェースはタッチ・スクリーン・デバイスであってもよい。同じまたは代替実施形態では、コンピュータ上のアプリケーションが、「コマンド・ライン・インターフェース」(CLIと呼ばれることも多い)と呼ばれるものを含むインターフェースを採用してもよい。CLIは、通例、アプリケーションとユーザとの間において、テキストに基づく対話処理を行わせる(provide)。通例、コマンド・ライ
ン・インターフェースは、ディスプレイ・デバイスを通じて、出力を提示し、テキストの行として入力を受け入れる。例えば、一部の実施態様では、関連技術の当業者には知られているUnix Shells、またはMicrosoft.NETフレームワークのよ
うな、オブジェクト指向型プログラミング・アーキテクチャを採用するMicrosoft Windows Powershellのような、「シェル」と呼ばれるものを含んでもよい。
【0059】
[0084] 尚、インターフェースが1つ以上のGUI、CLI、またはこれらの組み合わせを含んでもよいことは、関連技術の当業者には認められよう。プロセッサは、Intel Corporationが製造するCeleron、Core、またはPentiu
mプロセッサ、Sun Microsystemsが製造するSPARCプロセッサ、A
MD Corporationが製造するAthlon、Sempron、Phenom
、またはOpteronプロセッサのような、市販のプロセッサを含むことができ、あるいは現在入手可能なまたは今後入手可能になる他のプロセッサの内の1つであってもよい。プロセッサの実施形態の中には、マルチコア・プロセッサと呼ばれるものを含んでもよく、および/または単一もしくはマルチコア構成の並列処理技術を採用することを可能にするものが含まれてもよい。例えば、マルチコア・アーキテクチャは、通例、2つ以上のプロセッサ「実行コア」を備える。本例では、各実行コアは、複数のスレッドの並行実行を可能にする独立したプロセッサとして実行することができる。加えて、プロセッサは、
32または64ビット・アーキテクチャと一般に呼ばれるもの、あるいは現在知られているまたは今後開発されるかもしれない他のアーキテクチャ構成で構成されてもよいことは、関連技術の当業者には認められよう。
【0060】
[0085] プロセッサは、通例、オペレーティング・システムを実行する。例えば、オペレーティング・システムは、Microsoft CorporationからのWin
dows型オペレーティング・システム、Apple Computer Corp.からのMac OSXオペレーティング・システム、多くの販売業者から入手可能なUnix
またはLinux(登録商標)型オペレーティング・システム、あるいはオープン・ソースと呼ばれるもの、他のまたは今後のオペレーティング・システム、もしくはこれらの何らかの組み合わせであってもよい。オペレーティング・システムは、周知の方法でファームウェアおよびハードウェアとインターフェースし、種々のプログラミング言語で書くことができる種々のコンピュータ・プログラムの機能を調整および実行するときに、プロセッサを補助する。オペレーティング・システムは、通例、プロセッサと協働して、コンピュータの他のコンポーネントの機能を調整および実行する。また、オペレーティング・システムは、スケジューリング、入力/出力制御、ファイルおよびデータ管理、メモリ管理、および通信制御、ならびに関連サービスにも、全て既知の技術にしたがって、対応する(provide)。
【0061】
[0086] システム・メモリは、所望の情報を格納するために使用することができ、コンピュータによってアクセスすることができる種々の既知のメモリ記憶デバイスまたは今後のメモリ記憶デバイスの内任意のものを含むことができる。コンピュータ読み取り可能記憶媒体は、揮発性および不揮発性、リムーバブルおよび非リムーバブル媒体を含むことができ、コンピュータ読み取り可能命令、データ構造、プログラム・モジュール、またはその他のデータというような情報の格納のための任意の方法または技術で実現される。その例には、任意の一般に入手可能なランダム・アクセス・メモリ(RAM)、リード・オンリ・メモリ(ROM)、電子的消去可能プログラム可能リード・オンリ・メモリ(EEPROM)、ディジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)、内在するハード・ディスクまたはテープのような磁気媒体、読み取りおよび書き込みコンパクト・ディスクのような光媒体、あるいはその他のメモリ記憶デバイスが含まれる。メモリ記憶デバイスは、種々の既知のデバイスまたは今後のデバイスの内任意のものを含むことができ、コンパクト・ディスク・ドライブ、テープ・ドライブ、リムーバブル・ハード・ディスク・ドライブ、USBまたはフラッシュ・ドライブ、あるいはディスケット・ドライブを含む。このようなタイプのメモリ記憶デバイスは、通例、コンパクト・ディスク、磁気テープ、リムーバブル・ハード・ディスク、USBまたはフラッシュ・ドライブ、あるいはフロッピ・ディスケットのような、プログラム記憶媒体からそれぞれ読み取り、および/またはプログラム記憶媒体に書き込む。これらのプログラム記憶媒体、または現在使用中のその他のもの、または今後開発されるかもしれないものはいずれも、コンピュータ・プログラム製品と見なされてもよい。認められるであろうが、これらのプログラム記憶媒体は、通例、コンピュータ・ソフトウェア・プログラムおよび/またはデータを格納する。コンピュータ・ソフトウェア・プログラムは、コンピュータ制御ロジックとも呼ばれ、通例、システム・メモリ、および/またはメモリ記憶デバイスと関連付けて使用されるプログラム記憶デバイスに格納される。ある実施形態では、制御ロジック(プログラム・コードを含むコンピュータ・ソフトウェア・プログラム)が格納されているコンピュータ使用可能媒体を構成するコンピュータ・プログラム製品について記載する。制御ロジックは、プロセッサによって実行されると、このプロセッサに、本明細書において説明する機能を実行させる。他の実施形態では、機能によっては、例えば、ハードウェア状態機械を使用して、主にハードウェアで実装されるものもある。本明細書において説明する機能を実行するようにハードウェア状態機械を実装することは、関連技術の当業者には明白である。入力/出力コントローラは、人であれ機械であれ、ローカルであれリモートであれ、ユーザからの情報を
受け入れて処理する種々の既知のデバイスの内任意のものを含むことができる。このようなデバイスには、例えば、モデム・カード、ワイヤレス・カード、ネットワーク・インターフェース・カード、サウンド・カード、または種々の既知の入力デバイスの内任意のもののためのその他のタイプのコントローラが含まれる。出力コントローラは、人であれ機械であれ、ローカルであれリモートであれ、ユーザに情報を提示するための種々の既知のディスプレイ・デバイスの内任意のもののためのコントローラを含むことができる。現在説明している実施形態では、コンピュータの機能的エレメントが、システム・バスを通じて、互いに通信する。コンピュータの実施形態の中には、ネットワークまたは他のタイプの遠隔通信を使用して、幾つかの機能的エレメントと通信できるものもある。関連技術の当業者には明白であろうが、機器制御および/またはデータ処理アプリケーションは、ソフトウェアで実装される場合、システム・メモリおよび/またはメモリ記憶デバイスからロードして実行することができる。機器制御および/またはデータ処理アプリケーションの全部または一部は、リード・オンリ・メモリまたはメモリ記憶デバイスの同様のデバイスに内在してもよく、このようなデバイスは、機器制御および/またはデータ処理アプリケーションが最初に入力/出力コントローラを介してロードされることを必要としない。尚、実行に有利になるように、機器制御および/またはデータ処理アプリケーション、またはその一部が、既知の方法でプロセッサによってシステム・メモリ、またはキャッシュ・メモリ、あるいは双方にロードされてもよいことは、関連技術の当業者には理解されよう。また、コンピュータは、1つ以上のライブラリ・ファイル、実験データ・ファイル、およびインターネット・クライアントを含み、システム・メモリに格納してもよい。例えば、実験データは、検出された信号値、あるいは合成(SBS)実験またはプロセスによる1つ以上の配列決定(sequencing)に関連付けられた他の値というような、1つ以上の実験またはアッセイに関するデータを含むことができる。加えて、インターネット・クライアントは、ネットワークを使用して他のコンピュータ上における遠隔サービスにアクセスするために使用可能なアプリケーションを含んでもよく、更に、例えば、「ウェブ・ブラウザ」と一般に呼ばれているものを備えてもよい。本例では、一般に採用されているウェブ・ブラウザをいくつかあげると、Microsoft Corporationから入
手可能なMicrosoft Internet Explorer、Mozilla C
orporationからのMozilla Firefox、Apple Computer CorpからのSafari、Google CorporationからのGoogle Chrome、あるいは当技術分野において現在知られているまたは今後開発さ
れる他のタイプのウェブ・ブラウザが含まれる。また、同じまたは他の実施形態において、インターネット・クライアントは、生物学的用途のためのデータ処理アプリケーションのように、ネットワークを通じて離れた情報にアクセスするために使用可能な特殊ソフトウェア・アプリケーションを含んでもよく、またはそのエレメントであることもできる。
【0062】
[0087] ネットワークは、当技術分野の当業者には周知である多くの種々のタイプのネットワークの内1つ以上を含むことができる。例えば、ネットワークは、通信するためにTCP/IPプロトコル・スイートと一般に呼ばれるものを採用することができるローカルまたはワイド・エリア・ネットワークを含んでもよい。ネットワークは、一般にインターネットと呼ばれる、相互接続されたコンピュータ・ネットワークの世界規模のシステムを構成するネットワークを含んでもよく、または種々のイントラネット・アーキテクチャも含むことができる。また、ネットワーク接続環境におけるユーザの中には、ハードウェアおよび/またはソフトウェア・システムへおよびからの情報トラフィックを制御するために、通常「ファイアウォール」と呼ばれるもの(ときとして、パケット・フィルタ、または境界保護デバイスとも呼ばれる)を採用することを好むものもいることも、関連技術の当業者には認められよう。例えば、ファイアウォールは、ハードウェアまたはソフトウェア・エレメントあるいはこれらの何らかの組み合わせを含んでもよく、通例、例えば、ネットワーク・アドミニストレータ等に対してというように、ユーザによって導入されたセキュリティ・ポリシーを施行するように設計される。
【0063】
[0088]
図1のシステム100の一実施形態では、試料を基板ホルダ(
図1には示されていない。システム100の一部となることができる試料基板ホルダの例には、ヒータ・バス(heater bas)、ペルチエ加熱および冷却槽、および複数の試料を保持するトレイが含まれる。ある実施形態では、試料のトレイ全体をユーザによってシステム100に装填する) に取り付け、試料を顕微鏡スライドに固着するために、基板移送/基板移動システ
ム106によってベーキング/乾燥炉112に向けて導く。他の実施形態では、システム100の外部で試料のベーキング/乾燥を行い、システム100のユーザによって直接試料基板ホルダ上に装填される。あるいは、後続の図に関して更に詳しく説明するが、試料を試料基板ホルダ上に載せることができ、特定の染色プロトコルを実行するために必要とされる全てのシステムが、例えば、バルク流体アプリケータ・システム116または微小流体アプリケータ・システム118と関連付けられたアクチュエータを使用して、試料に向けて移動させられる。流体アプリケータ・システム116または微小流体アプリケータ・システム118において使用される試薬は、ある実施形態では、試薬移送システム122を使用して試薬貯蔵ユニット120から移動させることができ、流体アプリケータ・システム116または微小流体アプリケータ・システム118に流体接続することができる。
【0064】
[0089] ある染色プロトコルでは、更に別の処理ステップを遂行できるようになる前に、試料上で抗原賦活化またはターゲット賦活化を実行することが望ましい場合もある。一実施形態では、基板移送/基板移動システム106を使用して、試料を抗原/ターゲット賦活化システム124に向けて導く。抗原/ターゲット賦活化システム124は、例えば、加圧し通常の水の沸点よりも高い温度に加熱することができる密閉チェンバ(enclosed chamber)とすることができる。随意に、流体/空気供給モジュール126によってバルク抗原賦活化溶液を抗原/ターゲット賦活化システム124に供給することができる。ある実施形態では、抗原/ターゲット賦活化システムは、抗原賦活化(IHCに先立つ抗原組織の露呈(unmasking))またはターゲット賦活化(ISHに先立つ核酸シーケンスの露呈
)に最適化されるように構成することができる。他の実施形態では、開示する抗原/ターゲット賦活化システム124は、1つ以上の専用抗原賦活化サブシステムおよび1つ以上の専用ターゲット賦活化サブシステムを含むことができる。
【0065】
[0090] あるいは、抗原賦活化溶液および揮発性が低い有機溶剤の上位層(overlying layer)をバルク流体アプリケータ・システム116によって試料に注出することができ、
気体噴射または振動のようなかきまぜ(agitation)を使用する攪拌(stirring)/混合を行
ってまたは行わずに、試料基板ホルダの一部であるヒータ・ベース(heater base)によっ
て試料を加熱する。低揮発性有機溶剤の上位層の代用として、抗原賦活化溶液上に対向可能な表面(opposable surface)を配置することができ、この対向可能な表面は、蒸発を減
少させるのに役立つことができ、ある実施形態では、試料を覆う流体を混合するために移動させることができる。
【0066】
[0091] バルク流体による処置に続いて、ある実施形態では、エア・ナイフ・システム128を使用してバルク流体を試料から除去し、この流体を廃棄物管理システム130に誘導することが望ましい場合もある。廃棄物管理システム130は、所与の染色プロトコルの異なるプロトコル・ステップによって生成された廃棄流体を捕獲するための1つ以上のリザーバを含むことができる。また、廃棄物管理システム130は、廃棄流体を処置し、分離し、および/または濾過するためのメカニズムも含むことができる。
【0067】
[0092]
図1に示すように、微小流体アプリケータ管理システム132が、微小流体アプリケータ118が機能する状態を維持することを確保するために設けられる。例えば、微小流体アプリケータ管理システム132は、洗浄所(washing station)を備えることが
でき、または微小流体アプリケータ・システム118の微小流体試薬アプリケータ(
図1には示されていない)が使用していない間に乾燥して目詰まりを起こさないことを確保するために、微小流体アプリケータ・システム118を使用しないときに単にこれを移動させることができる場所とすることができる。
【0068】
[0093] 更に、カバースリッパ・モジュール134も、一旦それらの処理プロトコルが完了したなら、カバー・スリップを試料の上方に配置するためのシステム100の一部とすることができる。
【0069】
[0094]
図2は、開示するシステム200の実施形態を示し、ここでは、試料支持基板202が連続的に移動させられ、コンベア204上の処理モジュール206、208、210、212、214、および216を通過する。モジュール206、208、210、212、214、および216は、試料を処理するために使用され、即ち、これらのモジュールは、特定の染色プロトコルに必要とされる1つ以上のプロセス・ステップを実行するために使用されるとしてよい。ある実施形態では、処理モジュール206、208、210、212、214、および216の内少なくとも1つが、微小流体試薬アプリケータを含み、処理モジュール206、208、210、212、214、および216の内少なくとも1つが、バルク流体アプリケータを含む。一実施形態では、処理モジュール206、208、210、212、214、および216の内少なくとも1つが、静止されて保持され、コンベア204がこの少なくとも1つの処理モジュールを通過する試料の相対的な運動を与えるようにする(一定速度で連続的に、可変速度で、または停止-開始式で)。他の実施形態では、 処理モジュール206、208、210、212、214、お
よび216の内少なくとも1つが、x、y、およびz座標方向の任意の組み合わせで相対運動を与えることができるアクチュエータ(図示せず)に接続される。例えば、特定の実施形態では、コンベア204が、制御システム102の制御下で停止-開始式に動作して、試料支持基板202を処理モジュール206、208、210、212、214、および216の近傍に連続的に搬送し、一旦試料支持基板が近傍に位置付けられたなら、アクチュエータが処理モジュールを基板に対して移動させて、1つ以上の流体を試料に注出する。他の特定の実施形態では、処理モジュール206、208、210、212、214、および216の内少なくとも1つが流体アスピレータを含み、他の特定の実施形態では、処理モジュールの内少なくとも1つがエア・ナイフを含み、更に他の特定の実施形態では、処理モジュールの内少なくとも1つが、バルク流体アプリケータ、微小流体試薬アプリケータ、流体アスピレータ、およびエア・ナイフの内2つ以上を含む。処理モジュール206、208、210、212、214、および216はいずれも、使用されないときには、試薬貯蔵ユニット220に移動させることができる。
【0070】
[0095]
図3は、開示するシステム300の実施形態の模式図を示し、静止試料基板ホルダ302のアレイと、複数の処理モジュール304/306、308、および310とを含む。また、試薬貯蔵モジュール312および微小流体アプリケータ管理システム34も示されている。この実施形態では、処理モジュール304/306は、バルク流体注出システムを備えており、バルク流体アプリケータ・モジュール306が、1つ以上の可撓性流体接続316、318、および320を介して、流体/空気/真空供給モジュール304に流体接続されている。特定の実施形態では、可撓性流体接続316、318、および320は、それぞれ、バルク流体、空気、および真空をバルク流体アプリケータ・モジュール306に供給する。更に特定的な実施形態では、流体/空気/真空供給モジュール304は、異なる流体をバルク流体アプリケータ・モジュール306に供給するために切り替えることができる複数のバルク流体リザーバを含む。他の更に特定的な実施形態では、可撓性流体接続316および320は、バルク流体アプリケータ・モジュール306上に取り付けられたエア・ナイフに圧縮エアを供給し、バルク流体アプリケータ・モジュール306上に取り付けられた流体アスピレータに真空を供給する。
【0071】
[0096] ある実施形態では、そして再度
図3を参照して、処理モジュール308は、アレイ302内部にある試料基板ホルダ上に載せられた試料に検出化学反応試薬を供給することを専用にする微小流体試薬アプリケータを備えており、処理モジュール310は、試薬、例えば、一次抗体を供給する。この実施形態では、処理モジュール310は試薬貯蔵モジュール312(冷却および/または加湿することができる)まで移動して、予定されている染色プロトコルにしたがって、アレイにおける特定の試料に注出されることになっている一次抗体に対応する一体化試薬リザーバを含む微小流体試薬アプリケータを引き出す。一旦一次抗体の分与が完了したなら、このアプリケータは試薬貯蔵モジュール312に戻されるが、恐らくは、清浄化/吸い取りまたは加湿(保湿剤の適用によるというような)のために微小流体アプリケータ管理システム314に送られた後である。この実施形態における処理モジュール308は、
図8に示すように、複数の一体化試薬リザーバに流体接続された1つの微小流体試薬アプリケータを含むことができる。
【0072】
[0097] 他の実施形態では、そして再度
図3を参照して、試料基板ホルダ・アレイ302は、1×n、2×n、3×n、n×nアレイまでというようなアレイ、例えば、1×20アレイ、2×15アレイ、または合計で30台の試料基板ホルダに供給するために、3×10アレイとすることができる。このシステムは、5から200台の基板ホルダというように、他の数の試料基板ホルダを有することもでき、これらは、試料基板ホルダの総数に達するために、任意の可能なアレイ状に配列することができる。これらの基板ホルダの一部または全部が、ヒータ・ベースまたはペルチエ加熱/冷却ベースを備えることができる。
【0073】
[0098]
図4は、バルク流体アプリケータ・モジュール400の実施形態を示す。バルク流体アプリケータ・モジュール400は、本体402(リザーバ、および中間リザーバを含むことができ、または単にバルク流体/真空供給モジュール(図示せず)に流体結合を付与することもできる)、バルク流体アプリケータ・ニードル404、および流体アスピレータ・ニードル406を含み、これらが一緒に使用されると、ニードル間に流体ナイフ408を形成することができる。開示する方法にしたがって、試料の全部または一部を処置するために、試料支持基板410全域にわたってバルク流体アプリケータ・モジュール全体を移動させることができる。
【0074】
[0099]
図4Bは、バルク流体アプリケータ・モジュール420の第2実施形態を示す。バルク流体アプリケータ・モジュール420は、本体422、真空ノズル424、バルク流体アプリケータ・ノズル426、およびエア・ナイフ・ノズル428を含む。アクチュエータ430を使用して、試料支持基板410の全部または一部にわたってモジュール420全体を移動させることができる。
【0075】
[00100]
図5Aは、基板上に配置された試料の処置のために構成されたバルク流体ア
プリケータ・モジュール500の他の実施形態を示す。この実施形態では、このモジュールは、本体510、バルク分与ニードル502、流体吸引ニードル504、バルク流体入口508、および試料から廃棄物流体を遠ざける(
図1の廃棄物管理システム130へというように)吸引のための真空ポート506を含む。
図5Aの実施形態は、例えば、パラフィン埋め込み組織試料のパラフィン内に正方形ウェルまたは矩形ウェルを形成するためというように、スライド全体または試料の一部を処置する(ニードル間の分離に左右される)ように構成される。
【0076】
[00101]
図5Bは、バルク流体アプリケータ・モジュール520の更に他の実施形態
を示す。バルク流体アプリケータ・モジュール520は、本体522、バルク分与ニードル524、流体吸引ニードル526、バルク流体入口528、および試料から廃棄物流体
を遠ざける(
図1の廃棄物管理システム130へというように)吸引のための真空ポート530を含む。
図5Bの実施形態は、図示するように、アクチュエータによって移動されることに加えて、x、y、およびz座標方向の内任意の1つまたは任意の組み合わせの方向に回転させることができる。また、この実施形態のバルク流体アプリケータ・モジュールは、例えば、
図5Aのバルク流体アプリケータ・モジュール500のように、 パラフ
ィン埋め込み組織試料のパラフィン内に正方形ウェルまたは矩形ウェルを形成するためというように、スライド全体または試料の一部を処置する(ニードル間の分離に左右される)ように構成される。しかしながら、モジュール全体を回転させることもできるので、例えば、試料の一部を円パターンで処置することが可能である。例えば、バルク流体アプリケータ・モジュール520は、パラフィン埋め込み組織試料のパラフィン内に円形ウェルまたは同様の形状をしたウェルを形成するために使用することがでかきる。
【0077】
[00102]
図6Aは、本開示による微小流体試薬アプリケータ600の一実施形態を示
す。この実施形態では、試薬リザーバ602a、602b、602c、および602dが、対応する液滴オンデマンド微小流体アクチュエータ604a、604b、604c、および604dと一体化されている。微小流体試薬アプリケータ600は、使い捨てでも再充填可能でも可能であり、4つの個々のアプリケータの集合体として示すが、1つまたはより多く(many more)(染色プロトコルのステップの各々に対応するというように。この
数は5以上、10以上、または20以上であっても可能である)を1つのユニットに組み合わせて、例えば、
図2の基板移送/基板移動システム204と共に使用することができる。あるいは、個々のアプリケータの集合体を、複数の試料を同時に処置するために使用することができ、例えば、5つ以上、10個以上、または20個以上であっても、このような基板載置試料を保持するトレイ内に保持された基板載置試料の集合体の内一部または全部を同時に処置するために使用することができる。この実施形態による微小流体試薬アプリケータは、全体的に手動のプロセスにおいて自動化染色システムに追加すること、および自動化染色システムから除去することができ、あるいは染色システムを覆うエンクロージャにおいてアクセス・ポートを通じて装填および搬出するための試薬移送システムと組み合わせて使用することができる。
【0078】
[00103]
図6Bは、本開示による微小流体試薬アプリケータ610の他の実施形態を
示す。この実施形態では、交換可能な試薬リザーバ612a、612b、612c、および612dが、対応する液滴オンデマンド微小流体アクチュエータ614a、614b、614c、および614dと流体結合されている。微小流体試薬アプリケータ・リザーバ612a、612b、612c、および612dは、 使い捨てでも再充填可能でも可能
であり、
図6Bでは4つの個々のアプリケータの集合体として示すが、1つ以上(染色プロトコルのステップの各々に対応するというように。この数は5以上、10以上、または20以上であっても可能である)を1つのユニットに組み合わせて、例えば、
図2に示すように、基板移送/基板移動システム204と共に使用することができる。あるいは、個々のアプリケータの集合体を、複数の試料を同時に処置するために使用することができ、例えば、5つ以上、10個以上、または20個以上であっても、このような基板載置試料を保持するトレイ内に保持された基板載置試料の集合体の内一部または全部を同時に処置するために使用することができる。交換可能な試薬リザーバ612a、612b、612c、および612dは、全体的に手動のプロセスにおいて自動化染色システムに追加すること、および自動化染色システムから除去することができ、あるいは染色システムを覆うエンクロージャにおいてアクセス・ポートを通じて装填および搬出するための試薬移送システムと組み合わせて使用することができる。
【0079】
[00104]
図6Cは、本開示による微小流体試薬アプリケータ620の更に他の実施形態を示す。この実施形態では、遠隔試薬リザーバ622a、622b、622c、および622dが、流体管線626a、626b、626c、および626dを通じて、対応する
液滴オンデマンド微小流体アクチュエータ624a、624b、624c、および624dに流体結合されている。微小流体試薬アプリケータ・リザーバ622a、622b、622c、および622dは、使い捨てでも再充填可能でも可能であり、
図6Cでは4つの個々のアプリケータの集合体として示すが、1つまたはより多く(染色プロトコルのステップの各々に対応するというように。この数は5以上、10以上、または20以上であっても可能である)を1つのユニットに組み合わせて、例えば、
図2の基板移送/基板移動システム204と共に使用することができる。あるいは、個々のアプリケータの集合体を、複数の試料を同時に処置するために使用することができ、例えば、5つ以上、10個以上、または20個以上であっても、このような基板載置試料を保持するトレイ内に保持された基板載置試料の集合体の内一部または全部を同時に処置するために使用することができる。流体管線626a、626b、626c、および626dは、管線間および1本の管線内の双方で、剛性、可撓性、または剛性および可撓性双方の組み合わせであることも可能である。また、
図6Cの実施形態は、管線が可撓性である場合、
図3に示したように、試料のアレイの全部または一部を同時に処理するのにも適している。また、このような構成は、機器の外部の場所からリザーバを再充填する機会も与えるので、したがって、バルク流体の分与にも特に適していると言うことができる。
【0080】
[00105]
図6Dは、本開示による微小流体試薬アプリケータ630の更に他の実施形
態を示す。この実施形態では、遠隔試薬リザーバ632a、632b、632c、および632dが、流体管線636a、636b、636c、および636dを通じて、対応する液滴オンデマンド微小流体アクチュエータ634a、634b、634c、および634dに流体結合されている。また、この実施形態には、中間リザーバ638a、638b、638c、および638dも含まれる。微小流体試薬アプリケータ・リザーバ632a、632b、632c、および632dは、 使い捨てでも再充填可能でも可能であり、
図6Dでは4つの個々のアプリケータの集合体として示すが、1つ以上(染色プロトコルのステップの各々に対応するというように。この数は5以上、10以上、または20以上であっても可能である)を1つのユニットに組み合わせて、例えば、
図2の基板移送/基板移動システム204と共に使用することができる。あるいは、個々のアプリケータの集合体を、複数の試料を同時に処置するために使用することができ、例えば、5つ以上、10個以上、または20個以上であっても、このような基板載置試料を保持するトレイ内に保持された基板載置試料の集合体の内一部または全部を同時に処置するために使用することができる。流体管線636a、636b、636c、および636dは、管線間および1本の管線内の双方で、剛性、可撓性、または剛性および可撓性双方の組み合わせであることも可能である。また、
図6Cの実施形態は、管線が可撓性である場合、
図3に示したように、試料のアレイの全部または一部を同時に処理するにも適している。また、このような構成は、機器の外部の場所からリザーバを再充填する機会も与えるので、したがって、バルク流体の分与にも特に適していると言うことができる。更に、中間リザーバ638a、638b、638c、および638dのために、自動化染色システム内における試料の処理を中断することなく、遠隔試薬リザーバ632a、632b、632c、および632dを容易に稼働中に交換することができる。
【0081】
[00106]
図6A~
図6Dに関して示し説明した微小流体試薬アプリケータの任意の組
み合わせも、本開示による1つの自動化生体試料染色システムに採用することができる。
【0082】
[00107]
図7は、交換可能な流体リザーバ704(
図6Bに示し
図6Bを参照して説
明したような)が一旦微小流体アクチュエータ702から切断されたときに、試薬貯蔵ユニット720におよびから移動させるために使用することができる試薬移送システム700を模式的に示す。試薬貯蔵ユニット720は、使用されていない間試薬の寿命を延ばすために冷却することができる。また、一体化リザーバ706を含む微小流体試薬アプリケータ(
図6Aに示し
図6Aを参照して説明したような)をどのようにして試薬移送システ
ム700によって試薬貯蔵ユニット720におよび試薬貯蔵ユニット720から往復運動させることができるかについても例示する。更に、
図7は、どのようにして、遠隔試薬リザーバ708を貯蔵状態に保持し、必要に応じて、管線712および随意の中間リザーバ(
図6Cおよび
図6Dに示し、
図6Cおよび
図6Dを参照して説明したような)を通って微小流体試薬アプリケータ710に供給するために使用できるかについても例示する。
【0083】
[00108]
図8は、複数の試薬リザーバ804a、804b、804c、および804
dに流体接続された1つの液滴オンデマンド・アクチュエータ・ヘッド802を含む微小流体試薬アプリケータ・システム800を示す。また、
図8には、試料基板ホルダ806の実施形態も示され、この試料基板ホルダ806において、試料810を支持する基板808がベース812上に載せられる。このベースは、ヒータ・ベースまたはペルチエ加熱/冷却ベースとすることができる。適合性がある場合、試料810に対して染色プロトコ
ルを実行するために、複数の試薬リザーバ804a、804b、804c、および804dに収容されている試薬を、順次注出することができる。このような単純な構成は、手術室において凍結組織試料を染色するシステムのような、ポイント・オブ・ケア・システム(point-of-care system)に適している。このようなポイント・オブ・ケア・システムは、例えば、外科医によって、彼/彼女が患者から腫瘍を、その切除縁(margins)を超えて、
除去するのに成功したか否か判定するために使用することができる。試薬リザーバ804a、804b、804c、および804dは、液滴オンデマンド・アクチュエータ・ヘッド802と一体化することができ、液滴オンデマンド・アクチュエータ・ヘッド802と交換可能にすることができ、または離れて位置し管線を通じて流体接続することもできる。
【0084】
[00109]
図9Aは、統合システムの実施形態の正面図を示し、この統合システムは、
微小流体液滴オンデマンド・アクチュエータ、バルク流体アプリケータ・スリット、および流体アスピレータ・スリットを含む。
図9Bにも示すように、試薬リザーバ902が
、微小流体試薬アプリケータ・ヘッド906に流体結合されている。
図9Aの正面図および
図9Bの側面図に示すように、二重スリット複合(dual slit combination)バルク流体
アプリケータおよび流体アスピレータ904が、微小流体試薬アプリケータ・ヘッド906に機械的に結合されている。
図9Aの正面図に示すように、この統合システムは、バルク流体入口908および流体吸引ポート910を含み、流体吸引ポート910は、
図9Bの側面図にも示されている。
図9Cは、この統合システムの底面図であり、バルク流体アプリケータ・スリット912および流体アスピレータ・スリット914を含む二重スリット複合バルク流体アプリケータおよび流体アスピレータ904を示す。また、
図9Cには、微小流体試薬アプリケータ・ヘッド906の微小流体液滴オンデマンド・アレイ916も示されている。
【0085】
[00110]
図10Aは、統合システムの実施形態の正面図を示し、この実施形態は、微
小流体液滴オンデマンド・アクチュエータ、バルク流体アプリケータ・ニードル、および流体アスピレータ・ニードルを含む。
図10Bにも示すように、試薬リザーバ1002が、微小流体試薬アプリケータ・ヘッド1006に流体結合されている。
図10Aの正面図および
図10Bの側面図に示すように、二重ニードル複合バルク流体アプリケータおよび流体アスピレータ1004が、微小流体試薬アプリケータ・ヘッド1006に機械的に結合されている。
図10Aの正面図に示すように、この統合システムは、バルク流体入口1008および流体吸引ポート1010を含み、流体吸引ポート1010は
図10Bの側面図にも示されている。
図10Aの正面図に示すように、この統合システムは、バルク流体アプリケータ・ニードル1012および流体吸引ニードル1014を含み、流体吸引ニードル1010は
図10Bの側面図にも示されている。
図10Cは、この統合システムの底面図を示し、バルク流体アプリケータ・ニードル1012および流体アスピレータ・ニードル1014を含む、二重ニードル複合バルク流体アプリケータおよび流体アスピレータ
1004を示す。また、
図10Cには、微小流体試薬アプリケータ・ヘッド906の微小流体液滴オンデマンド・アレイ1016も示されている。
【0086】
[00111]
図11は、単独で使用するため、または追加のこのような同じものおよび本
開示による他のサブシステムとの組み合わせで使用するための1つの染色サブシステム1000を示す。この実施形態では、微小流体試薬アプリケータ1102がアクチュエータ1104に機械的に結合されている。ある実施形態では、試料支持基板1110を保持する基板ホルダ1108も含まれる。基板ホルダ1108もアクチュエータ1112に機械的に結合されている。ある実施形態では、複合バルク流体アプリケータおよびエア・ナイフ・モジュール1106も含まれる。1つ以上の廃棄物収集ユニット1114(廃棄物管理システムに流体接続することができる)も示されている。装填位置において、基板ホルダ1108aは試料支持基板1110aを水平位置に保持し、次いでアクチュエータ1104が、流体を試料に注出するために、微小流体試薬アプリケータ1102を定位置に導く(bring)。試料上にどの試薬を分与するかに応じて、アクチュエータ1112は基板ホ
ルダおよび基板を、少なくとも2つの異なる位置1108b、1110b、または1110cの内1つに移動させて、複合バルク流体アプリケータおよびエア・ナイフ(位置1106a、1106b、または1106cにおけるというような、あるいは図示しない任意の中間位置における)が、例えば、すすぎ液を注ぎ、次いでこのすすぎ液およびあらゆる試薬残渣を移動させまたは「吹き飛ばし」、試料からそれぞれの廃棄物収集ユニット1114a、1114bに除去することができるようにする。尚、ある実施形態では、バルク流体アプリケータおよびエア・ナイフが基板ホルダと一緒に移動するが、他の実施形態では、バルク流体アプリケータおよびエア・ナイフは別個のユニットであり基板ホルダには接続されない(したがって、出入りすることができる)ことは当業者には認められよう。代替実施形態では、追加の試薬を試料に対して分与/装填位置に導くことができるように、微小流体試薬アプリケータの1行全体が、アクチュエータ1104の回転軸に沿って後ろに平行移動することができる。
図11では、分与位置が水平に示されているが、試料支持基板が、水平から約1度および約90度の間というような、水平以外の位置に保持される代替構成、または微小流体試薬アプリケータからの流体の注出の間逆さまに保持される代替構成も可能である。
【0087】
[00112]
図12は、
図11の実施形態の上面図を示し、ここでは、複合バルク流体ア
プリケータ/エア・ナイフ・モジュールが1206として示されている。基板ホルダ1208は、試料支持基板1210を保持し、モジュール1206は、モータ1228によって動力を得るねじ駆動機構(screw drive)1224によって、試料支持基板1210の全
域にわたって移動する。また、モジュール1206は、レール1226によって案内され、支柱1230によって適所に保持される。空気がモジュール1206にポート1220を通って供給され、バルク流体がポート1222を通ってモジュール1206に供給される。
【0088】
[00113]
図13は、
図11の実施形態の上面図を示すが、この実施形態1300では
、バルク流体アプリケータ/流体アスピレータ/エア・ナイフ・モジュール1306の追加機能がある。微小流体試薬アプリケータ1302には、この実施形態では、少なくとも2つの異なる試薬1346および1348が供給される。複合バルク流体アプリケータ/流体アスピレータ/エア・ナイフ・モジュールには、真空1340、圧縮空気1342、および少なくとも1つのバルク試薬1344が供給される。アクチュエータ1312は、
図11の実施形態において、
図13の構成(arrangement)の使用を可能にする。
【0089】
[00114]
図14は、基板上に保持されている試料の上方にチェンバを形成するために
、微小流体試薬ディスペンサと組み合わせて使用することができる基板ホルダ・システム1400の特定の実施形態を示す。ここでは、微小流体試薬アクチュエータ1404は、
基板ホルダ1406と嵌合し、更に封印材(seal)1412a、1412bと嵌合する。内部に示すのは、基板ホルダ1408および試料支持基板1410である。ある実施形態では、微小流体試薬アクチュエータは熱液滴オンデマンド・システム(thermal droplet-on-demand system)である。特定の実施形態では、流体リザーバ1402が抗原賦活化溶液を収容し、抗原賦活化溶液はチェンバ内において試料上に分与される。ある実施形態では、そしてベントが含まれることを前提にして、試料上に分与される内容物(contents)を加熱し、次いで追加の流体によって補充してもよい。他の実施形態では、チェンバは予め加圧されるか、または熱が加えられるに連れて、チェンバ内部において圧力が上昇することが可能である。
【0090】
[00115] 出願人は、 本開示のシステムおよび方法を使用すると、一般に溶液において適合性がないヘマトキシリンおよびエオシンを同時分与(co-dispense)できるという驚く
べきことを発見した。線形アッセイと比較すると、本明細書において開示したシステムおよび方法を利用する同時分与は、アッセイ・ステップ数の著しい削減(例えば、10ステップから5ステップ)、および付随するアッセイの総量の削減(例えば、約2.44mL/スライドから約1.26mL/スライド)を可能にしつつ、同様の結果が得られる。
【0091】
[00116]
図15Aおよび
図15Bは、本開示による脱パラフィン化の2つの実施形態
を示し、これらの双方共、培養時間および体積(volume)に関して標準的な方法と遜色がなかった。図は、プリント脱パラフィン化(printed deparaffinization)を示す。即ち、有
機物および転移流体のパラフィン切片上へのプリント、これに続く溶液による一括洗浄(bulk washing)を示す。同時プリント(co-printing)または順次モードが可能であることが
発見された。アッセイは、少ない体積(約100uL/in^2)および僅かな培養時間(プリントするために約2分)だけで済み、または培養時間は必要でなかった。二重ニードルおよび二重スリット(本明細書において説明したような)を使用して、1回の微小流体脱パラフィン化過程を利用することもでき、この場合も少ない体積および僅かな培養時間(プリントするために約2分)だけで済み、または培養時間は必要でない。
【0092】
[00117] 以上、バルク流体アプリケータ、流体アプリケータ、およびエア・ナイフの
特定の構成について開示したが、他の構成も可能である。例えば、US8883509に記載されているシステムを、例えば、本明細書において開示した他の特徴と組み合わせて使用することができる。同様に、WO2015/086534に開示されている特定のバルク流体処理および試薬分与メカニズムも、本明細書において開示した他の特徴と組み合わせて使用することができる。
【0093】
[00118] 追加の実施形態
【0094】
[00119]
図16に示す種々のコンポーネントについて述べる。ある実施形態では、制
御システムまたは制御方式は、「プリント命令およびマップ生成器」を含む。これは、液滴ターゲット上に所望の画像を得るための液滴の誘導送達(directed delivery)を念頭に
置いて、ノズルの作動と連動する組み合わせ2-(または3-)軸運動を生み出すように機能する。一般に、これは二進(または単色)ビットマップ・ファイル間のマッピングであり、ファイルにおける各画素の1つの状態(即ち、論理的な真)が特定の位置における1つのノズルから分与される1つの液滴に対応する。逆に、論理的な偽状態は、プリント・ルーチンの間その位置における不作動(not firing)に対応する。この関数の出力は、運動システムに対する命令となり、更にプリント・システムに対する命令となる。
【0095】
[00120] ある実施形態では、制御システムまたは制御方式は、「ディジタル発射パル
ス生成器」(Digital Firing Pulse Generator)を含む。その機能は、相対運動システム、および対応するノズルへの個々の液滴分与動作の割り当て双方のコンテキストにおいてプ
リント・マップを分解することである。
【0096】
[00121] ある実施形態では、制御システムまたは制御方式は、「相対運動システム」
を含む。これは、プリント命令およびマップ生成器から送られる1組のコマンド(即ち、プリント命令)によってプリント・ヘッドに関するターゲットの運動を容易にする。画像の物理プリントへのマッピングにおける進展を監視するため、そして対応してそのプリント中液滴ターゲット上に沈積させる液滴をいつ送り出すか監視するために、 基準位置に
対するシステムの運動についての情報が、ステップ・カウンタを介してディジタル発射パルス生成器に中継される。
【0097】
[00122] ある実施形態では、制御システムまたは制御方式は、「ステップ・カウンタ
」を含む。ステップ・カウンタは、相対運動システムによる液滴の沈積を訓練するために、ターゲットおよびプリント・ヘッドの運動および相対位置をディジタル発射パルス生成器に理解させる機能を提供する。
【0098】
[00123] ある実施形態では、制御システムまたは制御方式は、「波形生成器」を含む
。特定のノズル・アドレスに対して論理真が発行されたとき、液滴分与のアクトが開始される。この機能は、その信号を、液滴の射出成功のために、ノズルを準備し、分与し、再び満たすために必要とされるアナログ信号に変換する。
【0099】
[00124] ある実施形態では、制御システムまたは制御方式は、「増幅器」を含む。生
成された波形は、液滴の射出を誘発するために、しかるべき範囲の励起電位(即ち、電圧またはエネルギ)に増幅される。
【0100】
[00125] ある実施形態では、制御システムまたは制御方式は、「流体液滴ディスペン
サ」を含む。増幅された信号は対応するノズルに渡され、そのノズルから、液滴ターゲット上に、相対運動システムと歩調を合わせて液滴が発射される(fire)。
【0101】
[00126] ある実施形態では、制御システムまたは制御方式は、「液滴ターゲット」を
含む。流体液滴ディスペンサから液滴を受ける最終的なターゲットは、プリント・マップをこのターゲットにマッピングするために、相対運動システムによって調和して移動させられる。
【0102】
[00127]
図17において概要を示す物理制御方式の多様性(the various)について述べる。ある実施形態では、制御システムまたは制御方式はCPUを含む。この場合、CPUとはデスクトップ・コンピュータである。CPUの役割は、プリント命令およびプリント・マップを通じて物理システムへのコマンドの発行を調整することである。これらは、単色ビットマップ・ファイルから得られ、所望の液滴プリント密度が、xおよびy軸方向について得られる。x軸プリント密度は、物理的に、プリント・マネージャ・ボード(Print
Manager Board)に対してエンコーダ・ステップ・サイズを設定することによって決定さ
れ、y軸印刷密度は、プリント・ヘッドのサーベル角(saber angle)を調節することによ
って設定される。例えば、1000×1000dpiでプリントされる1000×1000画素の画像は、1in2のプリントを生成する。同様に、同じ画像を500×500dpiで印刷すると、2in2のプリントが生成される。最後に、同じ画像を2000×2000dpiで印刷すると、0.5in2のプリントが生成される。プリント命令の一部として、CPUは速度情報を相対運動システムに提供し、更にプリント・ジョブに対するy-ステップおよび開始位置を付与する。プリント・システム(printing is system)を「ラスタ・プリント」構成に固定し、こうすることにより、x方向における次のプリント・パスに先立つ、x方向への連続的なプリント移動、およびこれに続く増分y-ステップ移動によって、画像をプリント・ターゲット上のプリントに変換する。
【0103】
[00128] ある実施形態では、制御システムまたは制御方式は、プリント命令、相対運
動システムおよびプリント・マネージャ・ボードを調整するためのプリント・ジョブについての情報を含む。
【0104】
[00129] ある実施形態では、制御システムまたは制御方式は、プリント・マップ、論
理的な真が液滴の分与に対応し、論理的な偽が液滴分与の不実行(lack)に対応する単色(即ち、二進)ビットマップ・ファイルを含む。プリント・マップは、画素マップから実際のプリントに変換されるときに、xおよびyプリント密度を使用して、倍率調整される(CPUの章で先に説明した通り)。
【0105】
[00130] ある実施形態では、制御システムまたは制御方式は、プリント・マネージャ
・ボードを含み、以前の章におけるディジタル発射パルス生成器機能の役割を実行する。ボードは、プリント・マップを分解し、マップにおける特定の画素に対して発射するためにノズルを割り当てる。エンコーダ・ステップ・サイズについての情報が与えられると、プリント・マップにおける各画素間でどの位エンコーダ・パルスを待つべきか決定する。一般に、このボードと駆動カードとの間には1対多数の関係があり、駆動カードは、事実上、プリント・マネージャ・ボード上で実行される上位機能に対してドーター・ボードとして作用する。
【0106】
[00131] ある実施形態では、制御システムまたは制御方式は、以前の章において以上
で説明したように、相対運動システムを含む。
【0107】
[00132] ある実施形態では、制御システムまたは制御方式は、ディジタル発射信号を
含む。プリント・マネージャ・ボードは、液滴分与動作が行われなければならないことを確認したとき(プリント・マップを分解し、エンコーダ・ステップ・パルスをフィードバックとして使用してプリント・ヘッド位置を監視することによって)、発射信号を対応するデータ・パスの下流に向けてノズル駆動カードに発行することによって、ノズルに対して(または複数のノズルに対して同時に)コマンドを発行する。
【0108】
[00133] ある実施形態では、制御システムまたは制御方式は、駆動カードを含み、以
前の章において説明した波形生成器および増幅器の機能を実行する。電力管理、ファイアリング・ノズルの電気パス間のクロストークを排除すること、再度発射するためにプリント・ノズルをレディ状態(ready state)に戻すことを役割とする。一般に、プリント・ヘ
ッドと1対1でマッピングし、駆動カードは、プリント・ヘッド上のノズル毎に専用信号線を設ける。しかしながら、実際のアーキテクチャは、プリント・ヘッドに対して1対多数の関連(association)をサポートすることもできる。何故なら、各信号線はノズルにマ
ッピングされており、これらのノズルが同じプリント・ヘッド上に一緒に配置される(co-located)か否かにはとらわれないからである。
【0109】
[00134] ある実施形態では、制御システムまたは制御方式は、ベクトル・グラフィク
スを含む。他の実施形態では、プロッタ手法(plotter approach)およびプリント動作を記述するためのベクトル・グラフィクス(例えば、PostScript)言語が、何らかの利点を提供することができる。ベクトル・グラフィクスは、画素の代わりに、プリントのための線および円弧を記述する。これによって、解像度を損なうことなく、プリント画像の無限の倍率調整および変換が可能になる。また、これによって、プリント・システムの複雑な座標に基づく移動(coordinated movement)も可能になる。プリント動作は、画像ファイルによって静的に定めるのではなく、プログラミングによって定めることもできる(関数、ループ、変数等)。この環境では、例えば、特定の長さ、速度、発射頻度、およびプリント幅(print swath)の広さ(width)について、プリント・ベクトルを定めることが
できる。
【0110】
[00135] 利点(
図17において示すような)は、ステイナが実行しなければならない
あらゆる動作(洗浄、乾燥等)に対する全ての運動成分を記述するための共通フレームワークに言及する。複雑な2-または3-軸プリント動作に対応する。x方向に順次プリント動作を実行し、それに続いてy方向のステップを実行する必要はない。組織の画像をプリント・エリアに拡張および変換することが容易であり、1つのスライドからの画像を、同じ組織のカットによって、他のスライド上に他の染色をプリントするために再利用することが容易である。
【0111】
[00136] マルチカラー・ビットマップ。プリント・ヘッド毎およびプリント画像毎に
個々の単色ビットマップが試料に適用される代わりに、この情報を更に複雑な画像データ・ファイルにエンコードする。例えば、プリント動作は64ビット・ビットマップとしてエンコードされてもよく、これによって、8つの時間経過順のプリント・パターンを8つの一意のプリント・ヘッドにマッピングすることが可能になる。複雑なアッセイ全体を非常に緻密なフォーマットでエンコードするための非常に効率的な方法と言ってもよい。これは、多数のプリントされた試薬、同時プリント動作、供給電圧に比例したプリント動作(ratiometric printing operations)、勾配プリント動作(gradient printing operations)にも対応することができる。
【0112】
[00137] 利点(
図17において示すような)は、複数のプリント・ヘッドの同時使用
を定めるため、またはプリントによる試薬の時間的再注出を記述するための緻密な方式に言及する。JPEG、TIFF、JPEG-2000等のような共通の画像記憶言語を使用することによって、ビットマップ・ファイル・フォーマットとは対照的に、圧縮することができる。
【0113】
[00138] 開示したシステムおよび方法の種々の他の変更は、本明細書において説明し
たものに加えて、当業者には以上の説明から明白であろう。また、このような変更は、添付した請求項の範囲に該当することを意図している。例えば、以上の開示は顕微鏡スライド上に載せられた細胞および組織試料の処置を中心に据えたが、開示するシステムおよび方法は、その種々の実施形態において、他のタイプの基板上における他のタイプの生体試料の調製にも、等しく適用することができ、例えば、質量分光分析のための核酸または抗体あるいはターゲット生体試料の微小アレイの調製、もしくは血液学的試料の調製にも適用することができる。本願において引用した各引用文献は、本明細書において引用したことにより、本開示と矛盾しない範囲において、その内容は本願に含まれるものとする。
【手続補正書】
【提出日】2024-02-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動化生体試料染色システムであって、
少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータであって、該微小流体試薬アプリケータ内で一体化される少なくとも1つの試薬リザーバに流体接続される、少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータと、
1つ以上の再充填可能な遠隔試薬リザーバに流体接続される少なくとも1つのバルク流体アプリケータと、
前記バルク流体アプリケータのモジュールに取り付けられた少なくとも1つの流体アスピレータであって、前記少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータ、前記少なくとも1つのバルク流体アプリケータ、および前記少なくとも1つの流体アスピレータが、少なくとも1つの第1タイプの試薬管理ユニットに組み合わせられる、少なくとも1つの流体アスピレータと、
少なくとも1つの試料基板ホルダと、
前記少なくとも1つの第1タイプの試薬管理ユニットに結合されるように構成される少なくとも1つの相対運動システムであって、前記試薬管理ユニットが、相対運動を与えることによって、所定量の試薬を試薬移送システムに送達させることができる、少なくとも1つの相対運動システムと、
前記少なくとも1つの試料基板ホルダに保持された基板上に載せられた試料に対して少なくとも1つの染色プロトコルを実行するようにプログラミングされた制御システムであって、前記少なくとも1つの第1タイプの試薬管理ユニット、前記少なくとも1つの試料基板ホルダ、および前記少なくとも1つの相対運動システムを制御して、前記少なくとも1つの染色プロトコルの個々のステップを実行する、制御システムと、
を備える、システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムであって、更に、少なくとも1つの試料撮像システムを含む、システム。
【請求項3】
請求項1記載のシステムであって、更に、少なくとも1つのエア・ナイフを含む、システム。
【請求項4】
請求項3記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータ、前記少なくとも1つのバルク流体アプリケータ、および前記少なくとも1つのエア・ナイフが、少なくとも1つの第2タイプの試薬管理ユニットに組み合わせられる、システム。
【請求項5】
請求項3記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータ、前記少なくとも1つのバルク流体アプリケータ、前記少なくとも1つの流体アスピレータ、および前記少なくとも1つのエア・ナイフが、少なくとも1つの第3タイプの試薬管理ユニットに組み合わせられる、システム。
【請求項6】
請求項5記載のシステムにおいて、前記第2および第3タイプの試薬管理ユニットの内の少なくとも1つがまた、前記少なくとも1つの相対運動システムに結合される、システム。
【請求項7】
請求項1記載のシステムであって、更に、少なくとも1つの廃棄物管理システムを含む、システム。
【請求項8】
請求項1記載のシステムであって、更に、前記制御システムに通信可能に結合された少なくとも1つの試料識別システムを含む、システム。
【請求項9】
請求項1記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つのバルク流体アプリケータおよび前記少なくとも1つの流体アスピレータが、1対のニードルを備える、システム。
【請求項10】
請求項9記載のシステムにおいて、前記1対のニードルが、少なくとも0.1mmだけ分離される、システム。
【請求項11】
請求項1記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの試料基板ホルダが、前記少なくとも1つの相対運動システムに結合される、システム。
【請求項12】
請求項5または11記載のシステムにおいて、前記第1、第2、および第3タイプの試薬管理ユニットの内の少なくとも1つ、ならびに前記少なくとも1つの試料基板ホルダが、双方共、前記少なくとも1つの相対運動システムに結合される、システム。
【請求項13】
請求項1記載のシステムであって、更に、冷却された試薬貯蔵ユニットを備える、システム。
【請求項14】
請求項1記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータが、微細加工チップ・アプリケータを備える、システム。
【請求項15】
請求項1記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータが、圧電アクチュエータを備える、液滴オンデマンド・アクチュエータを備える、システム。
【請求項16】
請求項1記載のシステムにおいて、前記少なくとも1つの微小流体試薬アプリケータが、熱アクチュエータを備える液滴オンデマンド・アクチュエータを備える、システム。
【請求項17】
請求項1記載のシステムであって、更に、
少なくとも1つの圧電アクチュエータおよび少なくとも1つの熱アクチュエータを備える液滴オンデマンド・アクチュエータを備える、システム。
【請求項18】
基板上に保持された試料の少なくとも一部の自動化処置のための方法であって、前記方法が、
前記基板上の前記試料の画像を得るステップと、
前記基板上の前記試料の位置を自動的に突き止めるステップであって、前記試料がパラフィン埋め込み試料を含み、前記基板上の前記試料の位置を自動的に突き止めるステップが、パラフィン切片の内、前記パラフィン埋め込み試料を含有する一部を自動的に検出することを含む、ステップと、
前記基板上の前記試料の前記位置に脱パラフィン化流体を注出するステップと、
前記基板上の前記試料の前記位置から、前記試料の2つ以上の別個の小部分を選択するステップと、
前記試料の前記2つ以上の別個の選択された小部分に、第1ニードルから前記脱パラフィン化流体を注出して、前記試料の前記2つ以上の別個の選択された小部分上にあるパラフィンを溶解するステップと、
前記パラフィン切片の内前記試料の小部分を含有する前記少なくとも1つの小部分から前記脱パラフィン化流体を除去して、前記試料の前記小部分の周囲にあるパラフィン内にウェルを形成するステップであって、
前記脱パラフィン化流体の除去が、前記第1ニードルから少なくとも0.1mmに位置する第2ニードルに、前記脱パラフィン化流体を吸引することを含み、
前記脱パラフィン化流体の注出および前記脱パラフィン化流体の除去が、同時に実行される、
ステップと、
を含む、方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、前記第1および第2ニードルが、前記試料全域にわたって、一緒に直線的に平行移動する、方法。
【請求項20】
請求項18記載の方法において、前記第1および第2ニードルが、共通軸を中心として回転する、方法。