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特開2024-41900尿素生成におけるビウレット生成の低減
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  • 特開-尿素生成におけるビウレット生成の低減 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041900
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】尿素生成におけるビウレット生成の低減
(51)【国際特許分類】
   C05C 9/00 20060101AFI20240319BHJP
   C05G 5/10 20200101ALI20240319BHJP
   C07C 273/16 20060101ALI20240319BHJP
   C07C 275/02 20060101ALI20240319BHJP
   B01J 2/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C05C9/00 A
C05G5/10
C07C273/16
C07C275/02
B01J2/00 C
B01J2/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024002576
(22)【出願日】2024-01-11
(62)【分割の表示】P 2022500697の分割
【原出願日】2020-06-08
(31)【優先権主張番号】102019118702.8
(32)【優先日】2019-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】514088943
【氏名又は名称】ティッセンクルップ インダストリアル ソリューションズ アクツィエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】ThyssenKrupp Industrial Solutions AG
(71)【出願人】
【識別番号】501186597
【氏名又は名称】ティッセンクルップ アクチェンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】ThyssenKrupp Allee 1 45143 Essen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】シュミッツ,マルティナ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ビウレットの形成が抑制された粒状尿素の生成装置、装置の使用および生成方法を提供する。
【解決手段】合成ユニット3と、蒸発器ユニット5と、供給ポンプと、造粒ユニット7と、尿素を蒸発器ユニットから造粒ユニットに導くことができる、異なる直径または異なるもしくは同一の断面積を有する複数のライン6とを備える、ビウレット含有量の低い粒状尿素を生成するための装置を提供する。ラインの直径または断面積は、全負荷および部分負荷の場合に1つまたは複数のラインを使用してライン内の尿素の最適な滞留時間が確保され得るように寸法決めされる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状尿素の生成のための装置であって、合成ユニット(3)と、蒸発器ユニット(5)
と、送達ポンプと、造粒ユニット(7)と、前記尿素を前記蒸発器ユニット(5)から前
記造粒ユニットに搬送することができる、異なる直径を有する複数のライン(6)とを本
質的に備え、前記ライン(6)の前記直径が、第1のラインが全負荷下で前記ライン内の
前記尿素の最適な滞留時間を確保し、第2のラインが前記装置の部分負荷下で前記ライン
内の前記尿素の最適な滞留時間を確保するように寸法決めされる装置。
【請求項2】
前記尿素を前記蒸発器ユニット(5)から前記造粒ユニット(7)に搬送することがで
きる前記複数のライン(6)の前記直径が、それぞれ20%の間隔を有する部分負荷下で
前記ライン内の前記尿素の最適な滞留時間を確保するように、重ならないように調整され
ることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記尿素を前記蒸発器ユニット(5)から前記造粒ユニット(7)に搬送することがで
きる少なくとも3つ、好ましくは3~5つのライン(6)を有することを特徴とする、請
求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記尿素を前記蒸発器ユニット(5)から前記造粒ユニット(7)に搬送することがで
きる少なくとも3つのライン(6)を有し、そのうち前記第2のラインの前記直径が、約
80%という前記装置の部分負荷下での前記ライン内の前記尿素の最適な滞留時間を確保
し、第3のラインが、約60%という前記装置の部分負荷下での前記ライン内の前記尿素
の最適な滞留時間を確保することを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の
装置。
【請求項5】
粒状尿素の生成のための装置であって、合成ユニット(3)と、蒸発器ユニット(5)
と、送達ポンプと、造粒ユニット(7)と、前記尿素を前記蒸発器ユニット(5)から前
記造粒ユニット(7)に搬送することができる、異なるまたは等しい断面積を有する複数
のライン(6)とを本質的に備え、前記ライン(6)の前記断面積が、全負荷および/ま
たは部分負荷下で前記複数のラインのうちの2つ以上を通って前記尿素が流れる間に、前
記ライン内の前記尿素の最適な滞留時間が確保されるように寸法決めされる装置。
【請求項6】
前記ライン(6)の前記断面積が、全負荷下で前記複数のラインの全部を通って前記尿
素が流れる間に、前記ライン内の前記尿素の最適な滞留時間が確保されるように寸法決め
されることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記装置が、前記尿素を前記蒸発器ユニット(5)から前記造粒ユニット(7)に搬送
することができる3つのライン(6)を有し、前記第1、第2および第3のラインが、そ
れぞれ前記装置の約50%、約33%または約17%部分負荷下で前記ライン内の前記尿
素の最適な滞留時間を確保する断面積を有するように、前記ライン(6)の前記断面積が
適合されることを特徴とする、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記装置が、前記尿素を前記蒸発器ユニット(5)から前記造粒ユニット(7)に搬送
することができる3つのライン(6)を有し、前記第1、第2および第3のラインが、そ
れぞれ前記装置の約60%、約40%または約20%部分負荷下で前記ライン内の前記尿
素の最適な滞留時間を確保する断面積を有するように、前記ライン(6)の前記断面積が
適合されることを特徴とする、請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記尿素を前記蒸発器ユニット(5)から前記造粒ユニット(7)に搬送することがで
きる前記ライン(6)を前記蒸発器ユニット(7)の方向に閉じることができる、好まし
くは弁の形態の手段を有することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の
装置。
【請求項10】
前記装置がオフラインである際に、好適な作動媒体、好ましくは水または蒸気によって
前記ライン(6)を洗い流すことができる、好ましくは弁の形態の手段を有することを特
徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
ビウレット含有量が低い粒状尿素の生成のための、請求項1から4のいずれか一項、ま
たはこれらの請求項に従属する場合請求項9に記載の装置の使用であって、前記装置が部
分負荷下で運転され、前記尿素がラインを通って前記蒸発器ユニット(5)から前記造粒
ユニット(7)に搬送され、ラインの前記直径が生成物スループットに適合され、前記ラ
インの前記直径が前記装置内の前記複数のライン(6)の最大直径よりも小さい使用。
【請求項12】
ビウレット含有量が低い粒状尿素の生成のための、請求項5から9のいずれか一項に記
載の装置の使用であって、前記装置が部分負荷下で運転され、前記尿素が1つまたは複数
のライン(6)を通って前記蒸発器ユニット(5)から前記造粒ユニット(7)に搬送さ
れ、1つまたは複数のライン(6)の総断面積が生成物スループットに適合され、(1ま
たは複数の)前記ラインの総断面積が、全負荷下の1または複数の前記ライン内の前記尿
素の最適な滞留時間に必要となる断面積よりも小さい使用。
【請求項13】
粒状尿素の生成のための方法であって、請求項1から9のいずれか一項に記載の装置の
運転を含み、前記合成ユニット(3)からの生成物が、水溶液または溶融物として液体形
態の後者を残し、生成物流が、前記蒸発器ユニット(5)の下流で1つまたは複数のライ
ン(6)を通って前記造粒ユニット(7)に搬送され、1つまたは複数のライン(6)の
直径または総断面積が生成物スループットに適合される方法。
【請求項14】
生成物スループットが、全負荷下での前記システムの生成物スループットよりも小さい
ことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成ユニット、蒸発器ユニットおよび造粒ユニットを有する、粒状尿素の生
成装置であって、部分負荷運転下でのビウレットの形成を抑制するために、蒸発器ユニッ
トと造粒ユニットとの間の領域に異なる直径または断面を有する生成物ラインが使用され
る、粒状尿素の生成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
粒状肥料の生成方法は、技術文献および特許文献に広範囲に記載されており、これに関
して、米国特許第6,203,730号、ドイツ特許第2825039号または米国特許
第4,947,308号が例として挙げられ得る。従来、これらの方法の範囲では、合成
段階から来る溶融物または溶液の形態の生成物流は、含水量を調整するために蒸発器に供
給され、続いて造粒ユニットに送られる。従来技術のいくつかの方法では、一般に再利用
される粒状物である一定割合の固体微粒子との混合は、造粒機への導入前に行われる。
【0003】
尿素は現在、生物学的に使用可能な窒素含有量が約46%と高いため、世界中で最も頻
繁に使用される窒素肥料の1つである。尿素の追加の利点は、例えば、硝酸カリウムまた
は硝酸アンモニウムと比較してリスクの可能性が低いこと、ならびに尿素が経済的な出発
材料、すなわちアンモニアおよび二酸化炭素から工業的規模で生成され得るという事実か
らなる。
【0004】
尿素の生成は、高温および高圧で行われる2つの反応工程で行われる。迅速かつ発熱性
である第1の反応工程では、カルバミン酸アンモニウムへの2部のアンモニアおよび1部
の二酸化炭素の変換が起こる(2NH+CO→[NHCOO][NH])。この
ことから、緩徐かつ吸熱性の第2の工程では、水を除去することによって尿素が得られる
([NHCOO][NH]→HO+NH-CO-NH)。第2の工程は、緩徐
な反応であるため、最大限に完全な変換を確実にするために、比較的長い滞留時間を有す
る別個の容器内で大部分が行われる。
【0005】
さらに、固体生成物を得るためには、反応中に生成されたプロセス水を反応混合物から
実質的に(すなわち、通常約3%の残留含水量まで)除去する必要がある。この目的のた
めに、高温の反応混合物から水を抽出して、高濃度の尿素溶液を生成し、その後、これを
さらに処理して粒状生成物を形成することができる。処理の結果として、尿素凝縮物の形
成が高温の高濃度尿素溶液中でも起こることは、残念ながら避けられない。例えば、ドイ
ツ特許第19744404号から、生成物溶液中の温度および滞留時間に応じて、生体由
来効果を有さず、したがって微粒子中の活性成分濃度を低下させる、尿素のポリマーおよ
び凝縮物が形成されることが知られている。
【0006】
尿素の生成では、特に問題となる副生成物の1つがビウレットであり、ビウレットは、
2つの尿素分子からアンモニアを除去することによって形成され得る(2NH-CO-
NH→NH+NH-CO-NH-CO-NH)。ビウレットは、窒素送達剤とし
て活性が低いだけでなく、強い植物毒性作用も有する。例えば、相当量のビウレットが植
物の成長を低下させ、その結果、施肥の目的とは正確に反対の結果が得られることが観察
されている。ほとんどの植物では、尿素肥料中のビウレットの割合が約1%以下であるこ
とが許容されるが、一部の植物、例えば柑橘類の木は、わずか0.5%のビウレット含有
量を有する尿素を用いて施肥すると、ビウレットに曝露せず長時間経った後であっても元
の緑色に完全に戻らない黄色の葉の形成によって、目に見える損傷を受ける(R.L.M
ikkelsen,Better Crops 2007,Vol.91,No.3,p
.6/7を参照)。これらの確認された悪影響に加えて、ビウレットに関連する起こり得
る健康リスクに関して未解決の課題がさらに存在する。
【0007】
尿素溶液中のビウレットの発生に関連して、ビウレット形成が、生成システム内の濃縮
尿素の温度および滞留時間の増加とともに増大することが観察されている。ビウレット形
成の関係は、例えば、オーストリア特許第285621号、スイス特許第617672号
または英国特許第1404098号に記載されており、30年超にわたって知られている
【0008】
この場合、溶液を約110~150°の温度に加熱して、好適な時間内に生成物溶液か
ら必要量の水を除去しなければならないため、最初に形成された尿素溶液からの蒸発(す
なわち、水の除去)による濃縮中および直後にかなりの割合のビウレットが形成される。
尿素が液体形態で造粒ユニットに導入されると、比較的少ないエネルギー消費で尿素の造
粒を行うことができるため、この高温は後続のパイプラインにも広がる。したがって、特
に、一般に蒸気によって加熱されるパイプラインがさらに加熱される場合、生成物の最終
品質に関連する量のビウレットが、蒸発器ユニットと造粒ユニットとの間のパイプライン
内で形成される可能性がある。
【0009】
ビウレット形成を抑制するために、ドイツ特許第19744404号は、ジシアンジア
ミドを加えることによって尿素の結晶化を阻害し、その結果、70~90℃の温度で行う
ことができる方法を開示している。これらの温度では、ビウレット形成は大幅に低減され
る。ただし、この方法の欠点は、ドイツ特許第19744404号に記載されている例に
よれば、5重量%を超えて加えなければならない生物学的に不活性なジシアンジアミドと
いう高い要件である。最終的な効果では活性でない添加剤を加えることは、対応してさら
に大きな構造容積をさらに必要とし、方法の運転コストをかなりの程度まで増加させる。
【0010】
蒸発器がビウレット形成の重大な供給源として特定されているため、日本特許第571
71956号では、蒸発器が噴霧タワーとして構成され、その結果、生成物溶液中に生成
される非常に大きな液体表面積によって非常に迅速かつ効果的な水抽出が可能である、溶
液の特別な濃縮が提案されている。ただし、この解決策の欠点は、著しく複雑性の高い制
御および調整技術を必要とする、著しく精巧度が高い蒸発器設計である。さらに、この方
法は、尿素粒状物の本質的な生成物特徴である、従来の尿素生成物では通常である2.0
~4.0mmの粒径を粒子の90~95%にもたらすことを保証しない。
【0011】
英国特許第1404098号では、造粒前にビウレットを分離するために、尿素溶液が
イオン交換器を通って送られる方法が提案されている。ただし、この方法は、追加のプロ
セス構成要素を必要とし、したがって、イオン交換材料の定期的に必要とされる再生のた
めに生じる比較的高い運転コストを伴う。
【0012】
欧州特許第1711447号では、ビウレットの形成を低減するために、蒸発器ユニッ
トの後かつ造粒ユニットの前に造粒ユニットの方向に生成物流が搬送される自動調整ポン
プの使用が提案されている。この手段は、蒸発器と粒状物との間のビウレット形成をある
程度低減することができるため、オフガス中の遊離アンモニアの割合を大幅に低減し得る
という結果を有する。
【0013】
上述の解決策手法の共通の特徴は、システムの通常運転中のビウレット形成の低減を目
的としていることである。ただし、運転中には、例えば、システムをその時点で立ち上げ
ているか立ち下げているため、必要な出発材料の1つがシステムに完全に負荷をかけるの
に十分な量で利用できないため、または尿素肥料の需要が低いために季節的に(例えば、
冬に)生成が減少するため、システムを全負荷で動作させることができない時間もある。
システムが全負荷下で運転されていない期間に生成される尿素は、多くの場合、システム
が全負荷下で動作している期間に生成される尿素よりも高いビウレット含有量を有するこ
とが観察されている。これにより、これらの時間中に生成された尿素はもはや肥料の仕様
要件を満たさず、したがって、生成者によって高い費用をかけて処分されなければならな
いことになる可能性がある。材料がもはや肥料として使用できない程度までビウレット含
有量が増加しない場合であっても、ビウレット含有量が、供給者によって保証された最大
含有量を超える可能性があるため、この材料は、異なる仕様で、したがって比較的低い価
格で販売されなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第6,203,730号
【特許文献2】ドイツ特許第2825039号
【特許文献3】米国特許第4,947,308号
【特許文献4】ドイツ特許第19744404号
【特許文献5】オーストリア特許第285621号
【特許文献6】スイス特許第617672号
【特許文献7】英国特許第1404098号
【特許文献8】日本特許第57171956号
【特許文献9】欧州特許第1711447号
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】R.L.Mikkelsen,Better Crops 2007,Vol.91,No.3,p.6/7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
この背景に対して、尿素生成システムがシステムのために意図された全負荷で運転され
ていなくても、一定した生成物品質を保証することができる装置および方法が必要とされ
ている。本発明は、この必要性に対処する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の文脈では、用語「全負荷」は、システムにおける尿素の平均スループットを指
し、システムは、尿素の平均スループットについて設計されている。例えば、「1000
t/日」システムは、通常の運転条件下で1日当たり1000tの尿素を生成するように
設計されている。したがって、そのようなシステムでは、全負荷運転下で1日当たり10
00tの尿素が生成される。
【0019】
「部分負荷」運転中には、通常の運転条件下で可能であるよりも少ない尿素が同じシス
テム内で生成される。例えば、システム内の50%部分負荷の下では、通常の運転条件(
「全負荷」)下での1日生成量の50%が達成されるに過ぎない。「1000t/日」シ
ステムでは、これは、500t/日の量に相当する。
【0020】
ライン6に関連する用語「直径」は、「平均直径」として理解されるべきである。した
がって、例えば、楕円形の断面を有するラインの直径は、このラインの平均直径に相当す
る。
【0021】
ラインの「断面積」は、それぞれの流れ方向に対して垂直な断面積である。
【0022】
本発明は、蒸発器ユニットと造粒ユニットとの間に異なる直径を有する複数のラインを
有する装置を使用すると、既存のシステム内で均一性の高い生成物品質の尿素を生成する
ことができるという驚くべき発見に基づいている。システムが全負荷で運転されない場合
、そのような構造は、全負荷運転よりも細いラインを通して尿素溶液または尿素溶融物を
送ることを可能にする。その結果、全負荷運転用に設計されたラインにおける生成物スル
ープットの低下のために生じる滞留時間の延長が回避され、ビウレット発生の増加が抑制
される。
【0023】
第1の態様によれば、本発明は、合成ユニット3と、蒸発器ユニット5と、送達ポンプ
と、造粒ユニット7と、尿素を蒸発器ユニットから造粒ユニットに搬送することができる
、異なる直径を有する複数のライン6とを本質的に備える、粒状尿素の生成のための装置
に関する。この場合、ラインの直径は、第1のラインが全負荷下でライン内の尿素の最適
な滞留時間を確保し、第2のラインが装置の部分負荷下でライン内の尿素の最適な滞留時
間を確保するように寸法決めされる。ライン内の尿素の「最適な滞留時間」は、ラインを
通って搬送される尿素の量に基づいており、全負荷下の尿素の量は部分負荷下よりも大き
いため、全負荷下で使用されるラインの直径は、部分負荷下のライン内の尿素の最適な滞
留時間を確保することが意図されたラインの直径よりも大きい。
【0024】
尿素の「最適な滞留時間」は、(例えば、システムの構造、および添加剤の必要な滞留
時間のために)技術的なプロセス上の理由のために必要な、ライン内の尿素の滞留時間と
して理解されるべきである。最小値よりも長い滞留時間は、一般に、熱条件のためにアン
モニアおよびビウレットの形成を増加させる。
【0025】
合成ユニット3と、蒸発器ユニット5と、送達ポンプと、造粒ユニット7と、異なる直
径を有する複数のライン6とを備えることが意図されている、尿素の生成装置に関連する
用語「本質的に」は、尿素の生成が行われるシステムの領域が、この粒状物の生成を本質
的に妨げるいかなる構成部分も有しないという点で理解されるべきである。ただし、これ
は、例えば、尿素生成の副生成物を洗浄もしくは処理するために提供される構成部品もし
くは装置、またはそれを用いて、使用可能な中間生成物をプロセスに再利用することがで
きるラインを除外するものではない。
【0026】
複数のライン6は、装置内で互いに平行に配置されるのが好都合である。以下に説明す
る装置の実施形態についても同様である。
【0027】
本発明による装置は図1Aに概略的に示されており、図1Aでは、1および2は、合成
ユニット3へのアンモニアおよび二酸化炭素の供給ラインを表し、4は、合成ユニット3
と蒸発器ユニット5との間のラインを表し、8は、装置からの粒状尿素の取出しを示す。
図1Bは、全負荷下でのシステムの運転を概略的に表しており、全負荷下でのシステムの
運転中、尿素は、大きい方の直径を有する供給ラインを通って蒸発器ユニットから造粒ユ
ニット内に搬送されるのに対して、小さい方の直径を有する供給ラインは閉じられている
。それに対応して、図1Cは、部分負荷下でのシステムの運転を表しており、部分負荷下
でのシステムの運転中、尿素は、小さい方の直径を有する供給ラインを通って蒸発器ユニ
ットから造粒ユニットに搬送されるのに対して、大きい方の直径を有する供給ラインは閉
じられている。
【0028】
上述の実施形態による装置は、尿素を蒸発器ユニットから造粒ユニットに搬送すること
ができる複数のライン6の直径によって好都合に改良され得、複数のライン6の直径は、
それぞれ約20%の間隔を有する部分負荷下でライン内の尿素の最適な滞留時間を確保す
るように、重ならないように調整される。加えて、または代替として、そのような装置は
、尿素を蒸発器ユニット5から造粒ユニット7に搬送することができる少なくとも3つ、
好ましくは3~5つのライン6を有する。1つの特に好都合な構成では、装置は、尿素を
蒸発器ユニットから造粒ユニットに搬送することができる少なくとも3つのライン6を有
し、そのうち第2のラインの直径は、約80%という装置の部分負荷下でのライン内の尿
素の最適な滞留時間を確保し、第3のラインは、約60%という装置の部分負荷下でのラ
イン内の尿素の最適な滞留時間を確保する。さらに好ましい構成では、装置は、尿素を蒸
発器ユニットから造粒ユニットに搬送することができる少なくとも3つのライン6を有し
、そのうち第2のラインの直径は、約60%という装置の部分負荷下でのライン内の尿素
の最適な滞留時間を確保し、第3のラインは、約20%という装置の部分負荷下でのライ
ン内の尿素の最適な滞留時間を確保する。この設計により、100%、80%、60%お
よび20%の負荷下で最適な滞留時間が確保され得る。
【0029】
これに加えて、装置は、100%を超える、例えば110%の負荷下でのライン内の尿
素の最適な滞留時間を確保するように構成されたライン直径を有する追加のライン6を有
することが可能である。このような比較的高い負荷は、例えば、造粒機を洗浄した後に尿
素溶液を処理する際に発生し得る。
【0030】
本発明による装置の合成ユニット3において、第1段階では、アンモニアおよび二酸化
炭素から炭酸アンモニウムが生成され、これらがそれぞれの供給ライン1および2を通っ
て合成ユニット3に搬送される。合成ユニットの第2段階では、カルバミン酸アンモニウ
ムは、その後、尿素および水に変換される。第1段階および第2段階では、120~20
0バール、特に140~175バールの範囲の圧力が設定されることが好ましい。第2段
階中の温度は、一般に、170~200℃、特に185~190℃の範囲である。
【0031】
合成段階から得られた反応混合物は、尿素および水から本質的になるが、少量の炭酸ア
ンモニウムと、過剰なアンモニアの少量の残留物とによって汚染されている可能性がある
。合成ユニットから得られる典型的な組成物は、約54重量%の尿素と、26重量%の水
と、カルバミン酸アンモニウム、二酸化炭素およびアンモニアの残留部分とを含有する。
【0032】
蒸発器ユニット5では、反応中に生じる水の大部分が除去される。この目的のために、
合成段階から取り出された溶液は、(液体)濃縮尿素溶融物およびガス流に好都合に変換
され、これらは蒸発器ユニットから排出される。典型的には、尿素溶融物は、この領域内
で、約0.2~5重量%の残留水分含有量まで濃縮される。
【0033】
蒸発器ユニット5は、真空条件下で運転され、直列の1つまたは複数の蒸発器を有し得
る。蒸発した流れに含有され得る少量の過剰のカルバミン酸アンモニウムは、プロセス条
件下でアンモニアおよび二酸化炭素に変換される。真空条件下では、このアンモニアおよ
び二酸化炭素は、その後、蒸発器ユニットから排出されるガス流に主に移送される。この
ガス流はまた、真空条件下で放出される少量の過剰アンモニアを含有し得る。
【0034】
蒸発器ユニットが複数の蒸発器を含む場合、尿素が1つの蒸発器ユニットから次の蒸発
器ユニットに搬送されるラインが、同様に、異なる直径を有する複数のラインの形態であ
ることが好都合であり得る(ライン6について上述したのと同様)。
【0035】
造粒ユニット7は、流動床造粒、ドラム造粒もしくはパン造粒、または同様の公知の造
粒装置を含み得る。造粒ユニットの主な機能は、尿素溶融物を固化した粒子の流れに変換
することにある。粒状物とも呼ばれるこれらの固化した粒子は、尿素生成システムの主要
な生成物である。
【0036】
尿素の固化の範囲では、尿素が液相から固相に変化する際に放出される結晶化熱を除去
する必要がある。さらに、一般に、固化した尿素粒子から追加の熱が抽出されて、固化し
た尿素粒子を最終生成物の安全な貯蔵および輸送を可能にする温度まで冷却する。造粒の
範囲内の熱の除去は、通常、以下の2つの方法で達成される:
(i)水の蒸発によって。この水は、尿素溶融物の一部として造粒ユニットに到達し、
造粒プロセスの範囲内の好適な位置に噴霧されて、空気入口温度を低下させてもよい;
(ii)空気による冷却によって。通常、結晶化熱および冷却熱の大部分は、空気によ
る冷却によって放出される。この目的のために、完成した固化した生成物1kg当たり3
~30kgの空気に相当する量の空気が一般に必要とされる。
【0037】
空気は、造粒ユニット内の尿素溶融物および固化した尿素粒子と直接接触するため、必
然的に一定の割合の尿素ダストによって汚染される。造粒を行う方法に応じて、空気中の
ダストの量は、0.05~10%(最終生成物の生成物流に関して表される)である。尿
素を回収し、冷却に使用される空気を浄化するために、本発明による装置には、例えば、
国際公開第2013/165245号に記載されているような好適な回収装置および浄化
装置を好都合に設けてもよい。
【0038】
送達ポンプは、好都合には、欧州特許第1711447号に記載されているような自動
調整回転ポンプであってよい。好適な回転ポンプは、例えば、オーストリア特許第281
609号またはオーストリア特許第291003号に記載されている。本発明の範囲では
、蒸発器が造粒機と同じ平面内に設置され、回転ポンプがわずかに下方に配置されること
は、このような構成によって供給ラインが短くなり得るため、さらに有利である。その結
果、ライン経路内の尿素の滞留時間も相応に短縮される。対応する構造は、同様に欧州特
許第1711447号に詳細に記載されている。
【0039】
本発明の第2の好都合な態様は、合成ユニット3と、蒸発器ユニット5と、送達ポンプ
と、造粒ユニット7と、尿素を蒸発器ユニットから造粒ユニットに搬送することができる
、異なるまたは等しい断面積を有する複数のライン6とを有する装置に関する。ライン6
の断面積は、この場合、ライン内の尿素の最適な滞留時間が、全負荷下で複数のラインの
うちの2つ以上を通って尿素が流れる間に確保されるように寸法決めされる。換言すれば
、この記載された装置は、尿素を蒸発器ユニットから造粒ユニットに搬送する2つ以上の
ラインを使用することによる通常運転用に設計されているが、本発明の第1の態様の実施
形態によれば、尿素を蒸発器ユニットから造粒ユニットに搬送する1つのラインのみが使
用される。
【0040】
「最適な滞留時間」の定義については上記の解説が参照され、上記の解説は断面積にも
同様に適用され得る。用語「本質的に」については、第1の態様の文脈内の対応する解説
も有効である。
【0041】
2つ以上のラインの断面積について、ラインの最小断面積が、ラインの最大断面積の少
なくとも10%、特に少なくとも20%であることが好ましい。
【0042】
第2の態様による実施形態では、ラインの断面積は、ライン内の尿素の最適な滞留時間
が、全負荷下で複数のラインの全部を通って尿素が流れる間に確保されるように寸法決め
されることが有利であり得る。例えば、装置は2つのラインを有することが考えられ、そ
のうち第1のラインは、システムの60%負荷下での尿素の最適な滞留時間を確保し、第
2のラインは、システムの40%負荷下での尿素の最適な滞留時間を確保する。全負荷下
では両ラインが開かれるため、ラインはともに、装置の全負荷下でのライン内の尿素の最
適な滞留時間を確保する輸送能力を有する。
【0043】
上記の実施形態の特に有利な一実施形態では、この装置は、尿素を蒸発器ユニットから
造粒ユニットに搬送することができる3つのラインを有する。これらのラインの断面積は
、第1、第2および第3のラインが、それぞれ装置の約50%、約33%または約17%
部分負荷下でライン内の尿素の最適な滞留時間を確保する断面積を有するように適合され
ることが特に好ましい。この実施形態では、ライン全部が開いている場合、ライン内の尿
素の通常の滞留時間は、装置の全負荷下で確保され得る。さらに、第1および第2のライ
ン、または第1および第3のラインの組合せによって、第3または第2のラインが同時に
閉じられた場合、それぞれ装置の83%または67%部分負荷下で尿素の最適な滞留時間
を確保することができる。全体として、3つのラインのみを有するこの装置では、装置の
100%、83%、77%、50%、33%および17%部分負荷下で最適な滞留時間を
確保することができる。
【0044】
これに代わる好ましい実施形態では、装置は、尿素を蒸発器ユニットから造粒ユニット
に搬送することができる3つのラインを有し、これらの3つのラインの断面積は、第1、
第2および第3のラインが、それぞれ装置の約60%、約40%または約20%部分負荷
下でライン内の尿素の最適な滞留時間を確保する断面積を有するように適合される。この
実施形態は、全負荷下で開く必要があるのは2つのラインのみであるが、それにもかかわ
らず、3つのラインのみによって約20%の段階での適合が可能であるという、上述の実
施形態を超える利点を有する。
【0045】
第1および第2の態様による上述の装置は、尿素を蒸発器ユニットから造粒ユニットに
搬送することができるライン6を蒸発器ユニットの方向に閉じることができる、好ましく
は弁の形態の手段を有することによって、好都合に改良され得る。好ましくは、ラインの
各々は、対応する手段を有する。装置は、装置がオフラインである際に好適な作動媒体に
よってライン6を洗い流すことができる、好ましくは弁の形態の手段を有することによっ
て、さらに好都合に改良され得る。特に、水または蒸気が、好適な作動媒体として想定さ
れ得る。洗い流すことによって、ライン内の尿素の結晶化が回避され得るか、例えば、尿
素の結晶化によって引き起こされるライン内の閉塞が除去され得る。
【0046】
本発明はまた、上述の実施形態のハイブリッドであって、ライン6のうちの1つが、ラ
イン内の尿素の最適な滞留時間が全負荷下でこのラインを通って尿素が流れる間に確保さ
れるように寸法決めされた断面積を有し、ライン6のうちの複数の追加のラインの断面積
が、ライン内の尿素の最適な滞留時間が部分負荷下で追加のラインのうちの2つ以上を通
って尿素がさらに流れる間に確保されるように寸法決めされるハイブリッドを含む。した
がって、対応する装置は、例えば、全負荷下でライン内の尿素の最適な滞留時間を確保す
る1つのライン6と、40%部分負荷下でライン内の尿素の最適な滞留時間を確保する2
つのライン6とを有してもよい。「全負荷」ラインが閉じている間にこれらの2つのライ
ンが開かれる場合、80%部分負荷下で2つのライン内の尿素の最適な滞留時間が確保さ
れ得る。
【0047】
本発明の第3の態様は、ビウレット含有量が低い粒状尿素の生成のための上記の第1の
態様による装置の使用であって、装置が部分負荷下で運転され、尿素がライン6を通って
蒸発器ユニット5から造粒ユニット7に搬送され、ライン6の直径が生成物スループット
に適合され、ラインの直径が装置内の複数のラインの最大直径よりも小さい使用に関する
。上記から分かるように、全負荷下では複数のラインのうち最大直径を有するラインが使
用される必要があるため、装置が全負荷下で運転されていない場合、この使用が作用し始
める。
【0048】
本発明の第4の態様によれば、本発明は、ビウレット含有量が低い粒状尿素の生成のた
めの上記の第2の態様による装置の使用であって、装置が部分負荷下で運転され、尿素が
1つまたは複数のライン6を通って蒸発器ユニット5から造粒ユニット7に搬送され、1
つまたは複数のライン6の総断面積が生成物スループットに適合され、ラインの総断面積
が、全負荷下の1または複数のライン内の尿素の最適な滞留時間に必要となる断面積より
も小さい使用に関する。したがって、この使用は、装置が全負荷下で運転されていない際
にのみ作用し始める。
【0049】
最後に、本発明の第5の態様は、粒状尿素の生成のための方法であって、上述の第1お
よび第2の態様による装置の運転を含み、生成物が、合成ユニット3から水溶液または溶
融物として液体形態で取り出され、生成物流が、蒸発器ユニット5の下流で1つまたは複
数のライン6を通って造粒ユニット7に搬送され、ラインの直径または総断面積が生成物
スループットに適合される方法に関する。記載された方法の範囲では、生成物スループッ
トは、全負荷下のシステムの生成物スループット未満であることが好ましい。
【0050】
以下の表は、例として、複数のラインの本発明による使用による、60%部分負荷下で
の尿素システムの運転中のビウレットの回避を説明し、ここで、約60%のスループット
用に設計されたラインが使用される。この場合は、135℃で155メートルトン/時の
尿素溶融物の質量流量に基づいた。
【表1】
【0051】
蒸発器ユニットと造粒ユニットとの間に、全負荷用に設計されたラインの代わりに60
%部分負荷用に設計されたラインを使用すると、比較的小さいライン直径のため、ライン
内の尿素の滞留時間が短くなる。したがって、ビウレット形成の割合は、全負荷に対して
指定された107kg/hのビウレット含有量に対応した。
【符号の説明】
【0052】
1 アンモニア用の供給ライン
2 二酸化炭素用の供給ライン
3 合成ユニット
4 蒸発器ユニットへの原料尿素の供給ライン
5 蒸発器ユニット
6 造粒ユニットへの尿素溶液/溶融物のライン
7 造粒ユニット
8 造粒ユニットからの尿素の取出し
図1
【手続補正書】
【提出日】2024-02-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
図1図1Aは、本発明による装置を概略的に示す。図1Bは、全付荷下でのシステムの運転を概略的に表す。図1Cは、部分負荷下でのシステムの運転を表す。
【外国語明細書】