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特開2024-41914無線充電装置およびそれを含む移動手段
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041914
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】無線充電装置およびそれを含む移動手段
(51)【国際特許分類】
   H01F 38/14 20060101AFI20240319BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240319BHJP
   H02J 50/10 20160101ALI20240319BHJP
   H02J 50/70 20160101ALI20240319BHJP
   B60L 53/12 20190101ALI20240319BHJP
   B60M 7/00 20060101ALI20240319BHJP
   B60L 5/00 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H01F38/14
H02J7/00 P
H02J7/00 301D
H02J50/10
H02J50/70
B60L53/12
B60M7/00 X
B60L5/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024003415
(22)【出願日】2024-01-12
(62)【分割の表示】P 2022520632の分割
【原出願日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】10-2019-0136472
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0149598
(32)【優先日】2019-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0051252
(32)【優先日】2020-04-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】508148079
【氏名又は名称】エスケイシー・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SKC CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】102, Jeongja-ro, Jangan-gu Suwon-si Gyeonggi-do 16338 (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】キム、テキョン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ジョンハク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ナヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ、スンファン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】立体構造の磁性部を適用することにより、充電効率および放熱特性が改善した無線充電装置、およびそれを含む移動手段を提供する。
【解決手段】無線充電装置10は、導電性ワイヤを含むコイル部200と、コイル部200上に配置されるシールド部400と、コイル部200とシールド部400との間に配置される第1磁性部300とを含む。第1磁性部300は、コイル部200が配置される部分に対応する外郭部310と、外郭部310によって囲まれる中心部320とを含み、外郭部310の厚さが中心部320の厚さよりも大きくて良い。無線充電中に電磁エネルギーが集中するコイル部近傍の磁性部の厚さを厚くし、相対的に電磁エネルギー密度の低い中心の磁性部の厚さを減らすことにより、無線充電効率を高めながら磁性部で発生する熱を下げることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性ワイヤを含むコイル部と、
前記コイル部上に配置される第1磁性部とを含み、
前記第1磁性部は、
前記コイル部が配置される部分に対応する外郭部と、
前記外郭部によって囲まれる中心部とを含み、
前記外郭部の厚さが前記中心部の厚さよりも大きい、無線充電装置。
【請求項2】
前記第1磁性部が、バインダー樹脂と、前記バインダー樹脂内に分散された磁性粉末とを含む、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項3】
前記第1磁性部が、モールドにより立体構造に成形されたものである、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項4】
前記無線充電装置が、
前記第1磁性部上に配置されるシールド部をさらに含む、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項5】
前記第1磁性部の外郭部のうち少なくとも一部が前記シールド部に接触する、請求項4に記載の無線充電装置。
【請求項6】
前記無線充電装置が、
前記コイル部と前記シールド部との間に配置される第2磁性部をさらに含み、
前記第2磁性部は、前記第1磁性部に対して85kHzにおいて高い透磁率を有する、請求項4に記載の無線充電装置。
【請求項7】
前記第1磁性部が、85kHzの周波数において5~300の透磁率を有し、
前記第2磁性部が、85kHzの周波数において1000~5000の透磁率を有する、請求項6に記載の無線充電装置。
【請求項8】
前記第2磁性部が、前記第1磁性部の外郭部上に配置される、請求項6に記載の無線充電装置。
【請求項9】
前記第2磁性部が、前記シールド部と前記第1磁性部との間に配置される、請求項6に記載の無線充電装置。
【請求項10】
前記第1磁性部が、前記シールド部に向かう表面に溝を備え、
前記第2磁性部が、前記溝に挿入され配置される、請求項6に記載の無線充電装置。
【請求項11】
前記無線充電装置が、
前記第1磁性部上に配置され、前記第1磁性部とは異なる透磁率を有する第2磁性部と、
前記第2磁性部上に配置され、前記第2磁性部とは異なる透磁率を有する第3磁性部をさらに含む、請求項1に記載の無線充電装置。
【請求項12】
前記第1磁性部は、磁性粉末とバインダー樹脂とを含み、
前記第2磁性部は、フェライト系磁性体を含み、
前記第3磁性部は、ナノ結晶質磁性体を含む、請求項11に記載の無線充電装置。
【請求項13】
前記第3磁性部は、85kHzにおいて前記第1磁性部および前記第2磁性部よりも高い透磁率を有し、
前記第2磁性部は、85kHzで前記第1磁性部よりも高い透磁率を有する、請求項11に記載の無線充電装置。
【請求項14】
前記第3磁性部上に配置されるシールド部を更に含み、
前記第3磁性部は、前記シールド部と熱的に連結される、請求項11に記載の無線充電装置。
【請求項15】
無線充電装置を含む移動手段であって、
前記無線充電装置が、
導電性ワイヤを含むコイル部と、
前記コイル部上に配置される第1磁性部とを含み、
前記第1磁性部は、
前記コイル部が配置される部分に対応する外郭部と、
前記外郭部によって囲まれる中心部とを含み、
前記外郭部の厚さが前記中心部の厚さよりも大きい、移動手段。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、無線充電装置およびそれを含む移動手段に関するものである。より具体的に、実現例は、放熱構造を適用して充電効率の向上した無線充電装置およびそれを含む電気自動車のような移動手段に関するものである。
【背景技術】
【0002】
昨今、情報通信分野は極めて速い速度で発展しており、電気、電子、通信、半導体などが総合的に組み合わされた多様な技術が持続的に開発される。また、電子機器のモバイル化傾向が増大するにつれ、通信分野においても無線通信および無線電力伝送技術に関する研究が盛んに行われている。特に、電子機器などに無線で電力を伝送する方案に関する研究が活発に進んでいる。
【0003】
前記無線電力伝送は、電力を供給する送信機と、電力供給を受ける受信機との間に物理的な接触なく磁気結合(inductive coupling)、容量結合(capacitive coupling)またはアンテナなどの電磁場共振構造を利用して、空間を介して電力を無線で伝送するものである。前記無線電力伝送は、大容量のバッテリーが求められる携帯用通信機器、電気自動車などに適しており、接点が露出されないため漏電などの危険がほとんどなく、有線方式の充電不良現象を防ぐことができる。
【0004】
一方、最近では電気自動車への関心が急増するにつれ、充電インフラ構築に対する関心が増大している。すでに、家庭用充電器を利用した電気自動車充電をはじめ、バッテリー交換、急速充電装置、無線充電装置などと、多様な充電方式が登場しており、新しい充電事業ビジネスモデルも登場し始めている(特許文献1参照)。また、欧州では試験運行中の電気自動車と充電所が目立ち始め、日本では自動車メーカーと電力会社が主導して電気自動車および充電所を試験的に運営している。
【0005】
電気自動車等に用いられる従来の無線充電装置は、無線充電効率向上のためにコイルに隣接して磁性体が配置され、遮蔽のための金属板が磁性体と一定間隔で離隔して配置される。
【0006】
無線充電装置は、無線充電動作中にコイルの抵抗と磁性体の磁気損失によって熱を発生する。特に、無線充電装置内の磁性体は、電磁波エネルギー密度の高いコイルに近い部分で熱を発生し、発生する熱は磁性体の磁気特性を変化させ、送信機と受信機間のインピーダンス不整合を引き起こして充電効率が低下し、これによって再び発熱現象が高じると言う問題があった。しかし、このような無線充電装置は、電気自動車の下部等に設置されるため、防塵や防水および衝撃吸収のために密閉構造を採用するので、放熱構造を実現することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】韓国公開特許第2011-0042403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の無線充電装置において、磁性体として主に焼結フェライトシートをコイルと金属板との間、特にコイルに近い一面上に配置しているが、焼結フェライトシートは比重が大きく、コイルと金属板との距離が近くなると(例えば10mm未満)、効率が急激に低下する問題がある。そこで、コイルと金属板との間の距離を維持し、焼結フェライトシートを安定して固定するためにスペーサのような別途の構造物が必要であり、これにより組立工程のコストが増加するという問題がある。また、充電中にコイルと焼結フェライトシートで熱が発生するが、特に、焼結フェライトシートで発生する熱は、熱伝導特性の低い空気またはスペーサへの伝達および放熱が難しい。これにより、温度が上昇した焼結フェライトシートは磁気特性が低下し、それによるコイルのインダクタンス値を変化させて充電効率を低下させ、さらに激しい発熱を誘発する。
【0009】
これを解決するために、磁性体を十分に厚くしてコイルと金属板との間の空きスペースを全て埋めれば放熱特性を改善し得るが、比重の大きい磁性体により重量全体が増加して自動車の軽量化に問題となり得、製造コストも大きく増大する。また、磁性体と金属板との間の空きスペースを放熱材料ですべて充填する方法も考えられているが、そうすると、放熱材料の導電性または絶縁性に起因して充電効率が低下し、製造コストが上昇し、または磁性体と金属板との間の空きスペースの一部のみを放熱材料で充填すると、放熱性能が不十分となる。
【0010】
そこで、本発明者らが研究した結果、無線充電に使用される磁性部に立体構造を適用することにより、充電効率および放熱特性が向上され得ることを見出した。
【0011】
したがって、実現例の課題は、立体構造の磁性部を適用することにより、充電効率および放熱特性が改善した無線充電装置、およびそれを含む移動手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
一実現例によると、コイル部と、前記コイル部上に配置される第1磁性部とを含み、前記第1磁性部は、前記コイル部が配置される部分に対応する外郭部と、前記外郭部によって囲まれる中心部とを含み、前記外郭部の厚さが前記中心部の厚さよりも大きい、無線充電装置が提供される。
【0013】
他の実現例によると、無線充電装置を含む移動手段であって、前記無線充電装置が、コイル部と、前記コイル部上に配置される第1磁性部とを含み、前記第1磁性部は、前記コイル部が配置される部分に対応する外郭部と、前記外郭部によって囲まれる中心部とを含み、前記外郭部の厚さが前記中心部の厚さよりも大きい、移動手段が提供される。
【発明の効果】
【0014】
前記実現例によると、無線充電装置に用いられる磁性部に立体構造を適用することにより、充電効率および放熱特性を向上させ得る。具体的に、無線充電中に電磁エネルギーが集中するコイル部近傍の磁性部の厚さを厚くし、相対的に電磁エネルギー密度の低い中心の磁性部の厚さを減らすことにより、無線充電効率を高めながら磁性部で発生する熱を下げ得る。
【0015】
また、好ましい実現例によると、互いに異なる2種または3種の磁性部を組み合わせ、磁束の配分によって無線充電中に発生する熱を効率よく分散させることにより、充電効率および放熱特性をともに向上させ得る。
【0016】
したがって、前記無線充電装置は、送信機と受信機との間の大容量の電力伝送を必要とする電気自動車のような移動手段などに有用に使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、一実現例による無線充電装置の分解斜視図を示すものである。
図2A図2Aは、様々な実現例による無線充電装置の断面図を示すものである。
図2B図2Bは、様々な実現例による無線充電装置の断面図を示すものである。
図2C図2Cは、様々な実現例による無線充電装置の断面図を示すものである。
図3図3は、また他の実現例による無線充電装置の分解斜視図を示すものである。
図4A図4Aは、様々な実現例による無線充電装置の断面図を示すものである。
図4B図4Bは、様々な実現例による無線充電装置の断面図を示すものである。
図4C図4Cは、様々な実現例による無線充電装置の断面図を示すものである。
図5図5は、また他の実現例による無線充電装置の分解斜視図を示すものである。
図6図6は、また他の実現例による無線充電装置の斜視図を示すものである。
図7A図7Aは、また他の実現例による無線充電装置の断面図を示すものである。
図7B図7Bは、また他の実現例による無線充電装置の断面図を示すものである。
図8A図8Aは、また他の実現例による無線充電装置の断面図を示すものである。
図8B図8Bは、また他の実現例による無線充電装置の断面図を示すものである。
図9図9は、無線充電装置が受信機として適用された電気自動車を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下の実現例の説明において、1つの構成要素が他の構成要素の上または下に形成されると記載されることは、1つの構成要素が他の構成要素の上または下に直接、またはさらに他の構成要素を介して間接的に形成されるものの全てを含む。
【0019】
また、各構成要素の上/下に関する基準は図面を基準にして説明する。図面における各構成要素の大きさは説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさとは異なり得る。
【0020】
本明細書において、ある構成要素を「含む」ということは、特に反する記載がない限り、その他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0021】
また、本明細書に記載された構成要素の物性値、寸法などを示す全ての数値範囲は、特に記載がない限り、全ての場合において「約」という用語で修飾されるものと理解すべきである。
【0022】
本明細書において単数表現は、特に説明がなければ文脈上解釈される単数または複数を含む意味として解釈されるべきである。
【0023】
[無線充電装置]
一実現例による無線充電装置は、コイル部と、前記コイル部上に配置される第1磁性部とを含み、前記第1磁性部は、前記コイル部が配置される部分に対応する外郭部と、前記外郭部によって囲まれる中心部とを含み、前記外郭部の厚さが前記中心部の厚さよりも大きい。
【0024】
また、前記無線充電装置は、前記第1磁性部上に配置されるシールド部をさらに含み得る。
【0025】
図1を参照すると、前記実現例による無線充電装置10は、導電性ワイヤを含むコイル部200と、前記コイル部200上に配置されるシールド部400と、前記コイル部200と前記シールド部400との間に配置される第1磁性部300とを含み、前記第1磁性部300は、前記コイル部200が配置される部分に対応する外郭部310と、前記外郭部310によって囲まれる中心部320とを含み、前記外郭部310の厚さが前記中心部320の厚さよりも大きくて良い。
【0026】
前記実現例によると、無線充電装置に用いられる磁性部に立体構造を適用することにより、充電効率および放熱特性を向上させ得る。具体的に、無線充電中に電磁エネルギーが集中するコイル部近傍の磁性部の厚さを厚くし、相対的に電磁エネルギー密度の低い中心の磁性部の厚さを減らすことにより、無線充電効率を高めながら磁性部で発生する熱を下げ得る。
【0027】
また、互いに異なる2種の磁性部を組み合わせて磁束の配分によって無線充電中に発生する熱を効率よく分散させることにより、充電効率および放熱特性を向上させ得る。
【0028】
図3を参照すると、前記実現例による無線充電装置10は、導電性ワイヤを含むコイル部200と、前記コイル部200上に配置されるシールド部400と、前記コイル部200と前記シールド部400との間に配置される第1磁性部300および第2磁性部500とを含み、前記第1磁性部300は、前記コイル部200が配置される部分に対応する外郭部310と、前記外郭部によって囲まれる中心部320とを含み、前記外郭部310の厚さが前記中心部320の厚さよりも大きく、前記第2磁性部500は、前記第1磁性部300に対して85kHzの周波数において高い透磁率を有し得る。
【0029】
前記実現例によると、無線充電装置に用いられる磁性部に立体構造を適用し、2種の磁性部を備えることにより、充電効率および放熱特性をともに向上させ得る。具体的に、前記第1磁性部に対して透磁率の高い前記第2磁性部の導入によって、磁束密度と放熱とを効果的に配分して無線充電効率を高めながら、前記第2磁性部で発生する熱を、シールド部を介して放出させ、放熱特性も向上させ得る。
【0030】
また、互いに異なる3種の磁性部を組み合わせ、磁束の配分によって無線充電中に発生する熱を効率よく分散させることにより、充電効率および放熱特性を向上させ得る。
【0031】
図5図6、および図7Aを参照すると、前記実現例による無線充電装置10は、コイル部200と、前記コイル部200上に配置される第1磁性部300と、前記第1磁性部300上に配置され、前記第1磁性部300とは異なる透磁率を有する第2磁性部500と、前記第2磁性部500上に配置され、前記第2磁性部500とは異なる透磁率を有する第3磁性部700とを含み得る。
【0032】
前記実現例によると、互いに異なる3種の磁性部を組み合わせ、磁束の配分によって無線充電中に発生する熱を効率よく分散させることにより、充電効率および放熱特性をともに向上させ得る。具体的に、前記3種の磁性部は透磁率のような磁性特性の面において有意な差を有するが、2つ以上の磁性部がある場合には透磁率の大きさ順に磁束密度が大きくなるので、これらを組み合わせて無線充電時に集束される磁束を所望の方向に配分し得る。また、無線充電時に磁性部に集束された磁束の量と透磁損失とに比例する大きさで熱が発生するので、3種の磁性部を適切に配置することにより、熱をシールド部に効果的に伝達して外部に放出させ得る。さらには、前記3種の磁性部の物理的特性と磁性特性とを考慮して各磁性部別にそれぞれ厚さと形状を調節することにより、充電効率を阻害しないながら耐衝撃性を向上させ、製造コストも低減し得る。
以下、前記無線充電装置の各構成要素別に具体的に説明する。
【0033】
<コイル部>
前記コイル部は、導電性ワイヤを含み得る。
【0034】
前記導電性ワイヤは導電性物質を含む。例えば、前記導電性ワイヤは導電性金属を含み得る。具体的に、前記導電性ワイヤは、銅、ニッケル、金、銀、亜鉛、および錫からなる群より選択される1種以上の金属を含み得る。
【0035】
また、前記導電性ワイヤは絶縁性外皮を備え得る。例えば、前記絶縁性外皮は絶縁性高分子樹脂を含み得る。具体的に、前記絶縁性外皮は、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、ポリエチレン(PE)樹脂、テフロン樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂などを含み得る。
【0036】
前記導電性ワイヤの直径は、例えば、1mm~10mmの範囲、1mm~5mmの範囲、または1mm~3mmの範囲であり得る。
【0037】
前記導電性ワイヤは、平面コイル状で巻き付けられ得る。具体的に、前記平面コイルは、平面螺旋コイル(planar spiral coil)を含み得る。また、前記コイルの平面形状は、円形、楕円形、多角形、または角の丸い多角形の形状であり得るが、特に限定されない。
【0038】
前記平面コイルの外径は、5cm~100cm、10cm~50cm、10cm~30cm、20cm~80cm、または50cm~100cmであり得る。具体的な一例として、前記平面コイルは、10cm~50cmの外径を有し得る。
【0039】
また、前記平面コイルの内径は、0.5cm~30cm、1cm~20cm、または2cm~15cmであり得る。
【0040】
前記平面コイルの巻回数は、5回~50回、10回~30回、5回~30回、15回~50回、または20回~50回であり得る。具体的な一例として、前記平面コイルは、前記導電性ワイヤを10回~30回巻いて形成されたものであり得る。
【0041】
また、前記平面コイル形状内において、前記導電性ワイヤ間の間隔は、0.1cm~1cm、0.1cm~0.5cm、または0.5cm~1cmであり得る。
【0042】
前記のような好ましい平面コイル寸法および仕様範囲内のとき、電気自動車のような大容量電力伝送を必要とする分野に好適であり得る。
【0043】
前記コイル部は、前記磁性部、例えば前記第1磁性部と一定間隔で離隔して配置され得る。例えば、前記コイル部と前記第1磁性部との離隔距離は、0.2mm以上、0.5mm以上、0.2mm~3mm、または0.5mm~1.5mmであり得る。
【0044】
<シールド部>
前記実現例による無線充電装置は、前記第1磁性部上に配置されるシールド部をさらに含み得る。また、前記無線充電装置が前記第1磁性部に加えて第2磁性部および第3磁性部をさらに含む場合、前記シールド部はこれらの上に配置され得る。
【0045】
前記シールド部は、電磁波遮蔽により外部に電磁波が漏れて発生し得る電磁干渉(EMI、electromagnetic interference)を抑制する。
【0046】
前記シールド部は、前記コイル部と一定間隔で離隔して配置され得る。例えば、前記シールド部と前記コイル部との離隔距離は、10mm以上または15mm以上であり、具体的に10mm~30mm、または10mm~20mmであり得る。
【0047】
また、シールド部は、前記磁性部、例えば前記第1磁性部と一定間隔で離隔して配置され得る。例えば、前記シールド部と前記第1磁性部との離隔距離は、3mm以上、5mm以上、3mm~10mm、または4mm~7mmであり得る。
【0048】
前記シールド部の素材は、例えば金属であっても良く、これにより前記シールド部は金属板であり得るが、特に限定されない。具体的な一例として、前記シールド部の素材はアルミニウムであり、その他電磁波遮蔽能を有する金属または合金素材が使用され得る。
【0049】
前記シールド部の厚さは、0.2mm~10mm、0.5mm~5mm、または1mm~3mmであり得る。また、前記シールド部の面積は、200cm以上、400cm以上、または600cm以上であり得る。
【0050】
または、前記第1磁性部の一部が前記シールド部に接触し得る。例えば、図2Aに示すように、前記第1磁性部300の外郭部310が前記シールド部400に接触し得る。具体的に、前記第1磁性部の外郭部のうち少なくとも一部が前記シールド部に接触し得る。具体的に、前記第1磁性部の外郭部の一面が前記シールド部に接触し得る。この際、前記第1磁性部の中心部は前記シールド部に接触しなくても良い。
【0051】
<第1磁性部の組成>
前記第1磁性部は、磁性粉末およびバインダー樹脂を含み得る。
具体的に、前記第1磁性部は、バインダー樹脂および前記バインダー樹脂内に分散された磁性粉末を含み得る。
【0052】
これにより、前記第1磁性部は、バインダー樹脂によって磁性粉末が互いに結合されることにより、広い面積において全体的に欠陥が少ないとともに衝撃による損傷が少ない。
【0053】
前記磁性粉末は、酸化物系磁性粉末、金属系磁性粉末、またはこれらの混合粉末であり得る。例えば、前記酸化物系磁性粉末は、フェライト系粉末、具体的にNi-Zn系、Mg-Zn系、Mn-Zn系フェライト粉末であり得る。また、前記金属系磁性粉末は、Fe-Si-Al合金磁性粉末、またはNi-Fe合金磁性粉末であり得る。より具体的に、サンダスト(sendust)粉末、またはパーマロイ(permalloy)粉末であり得る。
【0054】
一例として、前記磁性粉末は、下記化学式1の組成を有し得る。
[化1]
Fe1-a-b-cSi
前記式において、XはAl、Cr、Ni、Cu、またはこれらの組み合わせであり、YはMn、B、Co、Mo、またはこれらの組み合わせであり、0.01≦a≦0.2、0.01≦b≦0.1、および0≦c≦0.05である。
【0055】
また、前記磁性粉末は、ナノ結晶質(nanocrystalline)磁性粉末であってよく、例えば、Fe系ナノ結晶質磁性粉末であってよく、具体的に、Fe-Si-Al系ナノ結晶質磁性粉末、Fe-Si-Cr系ナノ結晶質磁性粉末、またはFe-Si-B-Cu-Nb系ナノ結晶質磁性粉末であり得る。
【0056】
前記磁性粉末の平均粒径は、約3nm~約1mm、約1μm~300μm、約1μm~50μm、または約1μm~10μmの範囲であり得る。
【0057】
前記第1磁性部は、前記磁性粉末を10重量%以上、50重量%以上、70重量%以上、または85重量%以上の量で含み得る。
【0058】
例えば、前記第1磁性部は、前記磁性粉末を10重量%~99重量%、10重量%~95重量%、50重量%~95重量%、50重量%~92重量%、70重量%~95重量%、80重量%~95重量%、または80重量%~90重量%の量で含み得る。
【0059】
前記バインダー樹脂として、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニルスルフィド(PSS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、エポキシ樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
例えば、前記バインダー樹脂は硬化性樹脂であり得る。具体的に、前記バインダー樹脂は、光硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂であり、特に、硬化して接着性を示し得る樹脂であり得る。より具体的に、前記バインダー樹脂は、グリシジル基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、またはアミド基などのような、熱による硬化が可能な官能基または部位を1つ以上含むか、または、エポキシド(epoxide)基、環状エーテル(cyclic ether)基、スルフィド(sulfide)基、アセタール(acetal)基、またはラクトン(lactone)基などのような、活性エネルギーによって硬化可能な官能基または部位を1つ以上含む樹脂を使用し得る。このような官能基または部位は、例えばイソシアネート基(-NCO)、ヒドロキシ基(-OH)、またはカルボキシル基(-COOH)であり得る。
【0061】
前記第1磁性部は、前記バインダー樹脂を5重量%~40重量%、5重量%~20重量%、5重量%~15重量%、または7重量%~15重量%の量で含有し得る。
【0062】
また、前記第1磁性部は、その重量を基準に、前記バインダー樹脂として、6重量%~12重量%のポリウレタン系樹脂、0.5重量%~2重量%のイソシアネート系硬化剤、および0.3重量%~1.5重量%のエポキシ系樹脂を含み得る。
【0063】
<第1磁性部の磁性特性>
前記第1磁性部は、電気自動車の無線充電標準周波数近傍で一定範囲の磁性特性を有し得る。
【0064】
前記電気自動車の無線充電標準周波数は100kHz未満であり、例えば、79kHz~90kHz、具体的に81kHz~90kHz、より具体的に約85kHzであり得るが、これは携帯電話のようなモバイル電子機器に適用する周波数とは区別される帯域である。
【0065】
前記第1磁性部の85kHzの周波数における透磁率は素材によって異なり得るが5以上、例えば5~150000であり、具体的な素材によって5~300、500~3500、または10000~150000であり得る。また、前記第1磁性部の85kHzの周波数における透磁損失は素材によって異なり得るが0以上、例えば0~50000であり、具体的な素材によって0~1000、1~100、100~1000、または5000~50000であり得る。
【0066】
具体的な一例として、前記第1磁性部が磁性粉末およびバインダー樹脂を含む高分子型磁性体の場合、前記第1磁性部の85kHzの周波数における透磁率は、例えば5~130、15~80、または10~50であり、透磁損失は0~20、0~15、または0~5であり得る。
【0067】
<第1磁性部の物理的特性>
前記第1磁性部は一定の比で伸長され得る。例えば、前記第1磁性部の伸び率は0.5%以上であり得る。前記伸長特性は、高分子を適用しないセラミック系磁性体では得られ難いものであり、大面積の磁性部が衝撃により歪み等が発生しても損傷を減らし得る。具体的に、前記第1磁性部の伸び率は、0.5%以上、1%以上、または2.5%以上であり得る。前記伸び率の上限には特に制限はないが、伸び率向上のために高分子樹脂の含有量が多くなると、磁性部のインダクタンス等の特性が低下し得るので、前記伸び率は10%以内であることが好ましい。
【0068】
前記第1磁性部は、衝撃前後の特性変化率が少なく、一般的なフェライト磁性シートに比べて格段に優れる。本明細書において、ある特性の衝撃前後の特性変化率(%)は、次の式により算出し得る。特性変化率(%)=|衝撃前特性値-衝撃後特性値|/衝撃前特性値×100
【0069】
例えば、前記第1磁性部は、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後のインダクタンス変化率が5%未満、または3%以下であり得る。より具体的に、前記インダクタンス変化率は、0%~3%、0.001%~2%、または0.01%~1.5%であり得る。前記範囲内であるとき、衝撃前後のインダクタンス変化率が相対的に少ないので、磁性部の安定性がより向上し得る。
【0070】
また、前記第1磁性部は、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後の品質係数(Qファクタ;Ls/Rs)変化率が、0~5%、0.001%~4%、または0.01%~2.5%であり得る。前記範囲内であるとき、衝撃前後の特性変化が少ないので、磁性部の安定性と耐衝撃性とがより向上し得る。
【0071】
また、前記第1磁性部は、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後の抵抗変化率が、0~2.8%、0.001%~1.8%、または0.1%~1.0%であり得る。前記範囲内であるとき、実際の衝撃と振動が加わる環境において繰り返し適用しても、抵抗値が一定レベル以下に良好に維持され得る。
【0072】
また、前記第1磁性部は、1mの高さから自由落下させて印加した衝撃前後の充電効率変化率が、0~6.8%、0.001%~5.8%、または0.01%~3.4%であり得る。前記範囲内であるとき、大面積の磁性部が衝撃や歪みが繰り返し発生しても特性をより安定して維持し得る。
【0073】
<第1磁性部の立体構造>
前記実現例によると、前記第1磁性部に立体構造を適用することにより、充電効率および放熱特性を向上させ得る。図1および図2Aを参照すると、前記第1磁性部300は、前記コイル部200が配置される部分に対応する外郭部310と、前記外郭部310によって囲まれる中心部320とを含み、前記外郭部310の厚さが前記中心部320の厚さよりも大きくて良い。すなわち、前記第1磁性部の外郭部は、前記コイル部において導電性ワイヤの密度が高い部分に対応し、前記第1磁性部の中心部は、前記コイル部において導電性ワイヤの密度が低い部分に対応し得る。この際、前記第1磁性部において外郭部と中心部とは互いに一体型で形成され得る。
【0074】
このように、無線充電中に電磁エネルギーが集中するコイル近傍の磁性部の厚さを厚くし、コイルがないため相対的に電磁エネルギー密度の低い中心の磁性部の厚さを減らすことにより、コイル周辺に集中する電磁波を効率よく集束させ、充電効率を向上させるだけでなく、別途のスペーサがなくとも堅固にコイル部とシールド部との距離を維持し得るので、スペーサ等の使用に伴う材料費および工程費を低減し得る。
【0075】
前記第1磁性部において、前記外郭部が前記中心部に比べて1.5倍以上厚い厚さを有し得る。前記厚さ比であるとき、コイル周辺に集中する電磁波をより効果的に集束して充電効率を向上させることができ、発熱および軽量化にも有利である。具体的に、前記第1磁性部における外郭部/中心部の厚さ比は、2以上、3以上、または5以上であり得る。また、前記厚さ比は、100以下、50以下、30以下、または10以下であり得る。より具体的に、前記厚さ比は、1.5~100、2~50、3~30、または5~10であり得る。
【0076】
前記第1磁性部の外郭部の厚さは、1mm以上、3mm以上、または5mm以上であり、また30mm以下、20mm以下、または11mm以下であり得る。さらに、前記第1磁性部の中心部の厚さは、10mm以下、7mm以下、または5mm以下であり、また、0mmか0.1mm以上または1mm以上であり得る。具体的に、前記第1磁性部の外郭部が5mm~11mmの厚さを有し、前記中心部が0~5mmの厚さを有し得る。
【0077】
図2Bを参照すると、前記第1磁性部300の中心部320の厚さが0の場合、前記第1磁性部300は、中心部320に中空の形状を有し得る(例えばドーナツ形状)。この場合、前記第1磁性部は、より小さい面積でも充電効率を効果的に向上させ得る。
【0078】
<第1磁性部の面積および厚さ>
前記第1磁性部は大面積を有してよく、具体的に200cm以上、400cm以上、または600cm以上の面積を有し得る。また、前記第1磁性部は、10000cm以下の面積を有し得る。
【0079】
前記大面積の第1磁性部は、多数の磁性単位体が組み合わされて構成され、この際、前記磁性単位体の面積は、60cm以上、90cm以上、または95cm~900cmであり得る。
【0080】
または、前記第1磁性部は中心部に中空の形状を有してよく、この場合外郭部の面積、すなわちコイル部に対応する面積を有し得る。
【0081】
前記第1磁性部は、モールドによる成形等の方法で製造された磁性ブロックであり得る。例えば、前記第1磁性部は、モールドにより立体構造に成形されたものであり得る。このような磁性シートは、磁性粉末とバインダー樹脂とを混合し、射出成形などによってモールドに注入して立体構造に成形され得る。
【0082】
または、前記第1磁性部は磁性シートの積層体であってよく、例えば、磁性シートが20枚以上、または50枚以上積層されたものであり得る。
【0083】
具体的に、前記磁性シートの積層体は、第1磁性部の外郭部にのみ追加の磁性シートが1枚以上さらに積層されたものであり得る。この際、それぞれの磁性シートの厚さは80μm以上、または85μm~150μmであり得る。このような磁性シートは、磁性粉末とバインダー樹脂とを混合してスラリー化した後、シート状に成形して硬化するなどと、通常のシート成形工程により製造され得る。
【0084】
<第2磁性部の磁性特性>
前記実現例による無線充電装置は、前記第1磁性部に加えて第2磁性部をさらに含み得る。これにより、前記無線充電装置の充電効率が向上されるとともに、放熱特性を改善し得る。具体的に、図3に示すように、前記第1磁性部300の外郭部310上に配置される第2磁性部500をさらに含み得る。
【0085】
具体的に、前記無線充電装置が、前記第1磁性部と前記シールド部との間に配置される第2磁性部をさらに含み、前記第2磁性部は、前記第1磁性部に対して85kHzにおいて高い透磁率を有し得る。
【0086】
前記第2磁性部は、電気自動車の無線充電標準周波数近傍で特定範囲の磁性特性を有し得る。
【0087】
例えば、前記第2磁性部の85kHzの周波数における透磁率は素材によって異なり、広くは5~150000であり、具体的な素材によって5~300、500~3500、または10000~150000であり得る。また、前記第2磁性部の85kHzの周波数における透磁損失は素材によって異なり、広くは0~50000であり、具体的な素材によって0~1000、1~100、100~1000、または5000~50000であり得る。
【0088】
具体的な一例として、前記第2磁性部がフェライト系素材の場合、85kHzの周波数における透磁率は、1000~5000、または2000~4000であり、透磁損失は0~1000、0~100、または0~50であり得る。
【0089】
前記第2磁性部は、前記第1磁性部に対して85kHzにおいて高い透磁率を有し得る。例えば、前記第2磁性部と前記第1磁性部との間の85kHzにおける透磁率の差は、100以上、500以上、または1000以上であり、具体的に100~5000、500~4000、または1000~4000であり得る。
【0090】
具体的に、前記第1磁性部が85kHzの周波数において5~300の透磁率を有し、前記第2磁性部が85kHzの周波数において1000~5000の透磁率を有し得る。
【0091】
無線充電時に磁束密度はコイルと近接するほど高いが、磁性体がコイル周りにある場合に磁性体に磁束が集束し、1つ以上の磁性体がある場合には磁性体の透磁率の大きさ順に磁束密度が大きくなる。したがって、第1磁性部に対して高い透磁率を有する第2磁性部を適切に配置すれば、磁束を効率よく配分し得る。
【0092】
また、前記第2磁性部の水平熱伝導率は1W/m・K以上であり、例えば、1W/m・K~30W/m・K、または10W/m・K~20W/m・Kであり得る。また、前記第2磁性部の垂直熱伝導率は0.1W/m・K以上であり、例えば、0.1W/m・K~2W/m・K、または0.5W/m・K~1.5W/m・Kであり得る。具体的に、前記第2磁性部は、1W/m・K~30W/m・Kの水平熱伝導率および0.1W/m・K~2W/m・Kの垂直熱伝導率を有し得る。
【0093】
従って、前記第2磁性部において透磁損失によって無線充電中に発生した熱は、前記第2磁性部に隣接するシールド部を介して排出され得る。
【0094】
<第2磁性部の組成および形状>
前記第2磁性部は、酸化物系磁性体、金属系磁性体、またはこれらの複合素材を含み得る。
【0095】
例えば、前記酸化物系磁性体はフェライト系磁性体であって良く、具体的な化学式はMOFe(ここで、MはMn、Zn、Cu、Niなどの1種以上の2価金属元素である)で表され得る。前記フェライト系素材は、焼結体のものが透磁率のような磁性特性の点から有利である。前記フェライト系焼結体は、原料成分を混合してか焼した後粉砕し、これをバインダー樹脂と混合して成形し焼成して、シート状またはブロック状に製造され得る。
【0096】
より具体的に、前記酸化物系磁性体は、Ni-Zn系、Mg-Zn系、またはMn-Zn系フェライトであり、特に、Mn-Zn系フェライトは、85kHzの周波数において室温~100℃以上の温度範囲にわたって高い透磁率、低い透磁損失、および高い飽和磁束密度を示し得る。
【0097】
前記Mn-Zn系フェライトは主成分として、Feを66mol%~70mol%、ZnOを10mol%~20mol%、MnOを8mol%~24mol%、およびNiOを0.4mol%~2mol%で含み、その他の副成分としてSiO、CaO、Nb、ZrO、SnOなどを含有し得る。前記Mn-Zn系フェライトは、主成分を所定のモル比で混合し、空気中で800℃~1100℃の温度で1時間~3時間のか焼後、副成分を添加して粉砕し、これにポリビニルアルコール(PVA)等のバインダー樹脂を適量混合して、プレスにより加圧成形した後、1200℃~1300℃まで昇温して2時間以上焼成することにより、シート状またはブロック状に製造され得る。その後、必要に応じてワイヤーソー(wire saw)やウォータージェット(water jet)などにより加工して、必要な大きさに切断される。
【0098】
また、前記金属系磁性体は、Fe-Si-Al合金磁性体、またはNi-Fe合金磁性体であってよく、より具体的にサンダスト(sendust)、またはパーマロイ(permalloy)であり得る。また、前記第2磁性部は、ナノ結晶質(nanocrystalline)磁性体を含んで良く、例えば、Fe系ナノ結晶質磁性体、具体的に、Fe-Si-Al系ナノ結晶質磁性体、Fe-Si-Cr系ナノ結晶質磁性体、またはFe-Si-B-Cu-Nb系ナノ結晶質磁性体を含み得る。前記第2磁性部としてナノ結晶質磁性体を適用する際、コイル部と距離が離れるほどコイルのインダクタンス(Ls)が低くなっても、抵抗(Rs)はさらに低くなることによりコイルの品質係数(Qファクタ:Ls/Rs)が高くなり、充電効率が向上し、発熱が減少し得る。
【0099】
前記第2磁性部は、前記第1磁性部とは異なる磁性体を含み得る。具体的な一例として、前記第1磁性部がFe-Si-Al系合金磁性体を含み、前記第2磁性部がMn-Zn系フェライトを含み得る。これらの素材の組み合わせは、前記第2磁性部が前記第1磁性部に対して85kHzにおいて高い透磁率を有するのに有利である。
【0100】
前記第2磁性部は、シート状またはブロック状を有し得る。
前記第2磁性部の厚さは0.5mm~5mmであり、具体的に0.5mm~3mm、0.5mm~2mm、または1mm~2mmであり得る。前記第1磁性部の外郭部の厚さは、前記第2磁性部の厚さよりもさらに大きくて良い。例えば、前記外郭部の厚さが5mm~11mmであり、前記第2磁性部の厚さが0.5mm~3mmであり得る。
【0101】
前記第2磁性部は、前記第1磁性部と同じ面積を有するか、または異なる面積を有し得る。
【0102】
例えば、前記第2磁性部は、前記第1磁性部と同様に大面積を有し得る。具体的に、前記第2磁性部の面積は、200cm以上、400cm以上、または600cm以上であり得る。また、前記第2磁性部の面積は10000cm以下であり得る。また、前記大面積の第2磁性部は、多数の磁性単位体が組み合わされ構成されて良く、この際、前記磁性単位体の面積は、60cm以上、90cm以上、または95cm~900cmであり得る。
【0103】
または、前記第2磁性部は、前記第1磁性部より小さい面積を有し得る。例えば、前記第2磁性部が前記第1磁性部の外郭部上にのみ配置される場合、前記第2磁性部は前記外郭部の面積に対応する面積を有し得る。また、これにより、前記第2磁性部は前記コイル部に対応する位置に配置され、前記コイル部の面積に対応する面積を有し得る。この場合、前記第2磁性部は、小さい面積でも充電効率と放熱特性とを効果的に向上させ得る。
【0104】
<第2磁性部の配置>
前記第2磁性部は、前記第1磁性部の外郭部、中心部、またはこれらの少なくとも一部上に配置され得る。
【0105】
一例として、前記第2磁性部は、前記第1磁性部の外郭部に配置され得る。これにより、コイル部周囲の高い磁束密度を効率よく分散させ得るので、前記第1磁性部単独で使用する場合に比べて充電効率を高め得る。
【0106】
または、前記第2磁性部は、前記外郭部および中心部の少なくとも一部上にわたって配置され得る。
【0107】
また、前記第2磁性部は、前記第1磁性部と結合または分離して配置され得る。図4Aに示すように、前記第2磁性部500は、前記シールド部400と前記第1磁性部300との間に配置され得る。このように、前記第1磁性部に対して高い透磁率を有する前記第2磁性部を前記シールド部に近いところに配置することにより、コイル周りの高い磁束密度を効率よく分散させ得るので、前記第1磁性部単独で使用する場合に比べ、充電効率を高めるだけでなく、第1磁性部のコイル近接部に集中する発熱を効率よく分散させ得る。
【0108】
この際、前記第2磁性部の少なくとも一部が前記シールド部に接触し得る。これにより、前記第2磁性部で発生する熱が、シールド部を介して効率よく排出され得る。例えば、前記第2磁性部がシート状の場合、その一面全部が前記シールド部に接触し得る。具体的に、前記第2磁性部は、前記シールド部の前記第1磁性部に向かう一面上に付着され得る。前記第2磁性部は、前記シールド部の一面に熱伝導性接着剤で付着されることにより、放熱効果をさらに高め得る。前記熱伝導性接着剤は、金属系、カーボン系、セラミック系などの熱伝導性素材を含み、例えば、熱伝導性粒子が分散された接着剤樹脂であり得る。
【0109】
この際、前記第2磁性部は、前記第1磁性部とも接触し得る。例えば、前記第2磁性部は、前記第1磁性部の外郭部上に付着され得る。
【0110】
または、前記第2磁性部は、前記第1磁性部と一定距離で離隔されて配置され得る。例えば、前記第1磁性部と前記第2磁性部との離隔距離は、1mm以上、2mm以上、1mm~10mm、2mm~7mm、3mm~5mm、または5mm~10mmであり得る。
【0111】
図4Bに示すように、前記第1磁性部300が前記シールド部400に向かう表面に溝を備え、前記第2磁性部500が前記溝に挿入され配置され得る。
【0112】
この場合、前記第1磁性部は前記第2磁性部のハウジングとして役割をし得るので、前記第2磁性部を固定するための別途の接着剤や構造物が不要となり得る。特に、前記第1磁性部は、磁性粉末とバインダー樹脂を用いた高分子型磁性部を用いてモールドにより立体構造に成形可能なので、第2磁性部を入れるための溝を容易に形成し得る。
【0113】
この際、前記第1磁性部および前記第2磁性部のうち少なくとも一部が前記シールド部400に接触し得る。これにより、前記第1磁性部および/または前記第2磁性部で発生する熱が前記シールド部を介して効率よく排出され得る。
【0114】
前記第1磁性部に形成された溝の深さは、前記第2磁性部の厚さ(高さ)と同一かまたは異なり得る。前記溝の深さと前記第2磁性部の厚さが同一の場合、前記第1磁性部および前記第2磁性部は、前記シールド部に同時に接触し得る。または、前記溝の深さが前記第2磁性部の厚さよりも小さい場合、前記第2磁性部のみが前記シールド部に接触し得る。逆に、前記溝の深さが前記第2磁性部の厚さよりも大きい場合、前記第1磁性部のみが前記シールド部に接触し得る。
【0115】
図4Cに示すように、前記第2磁性部500が前記第1磁性部300の内部に埋め込まれて配置され得る。
【0116】
この場合も、前記第1磁性部は前記第2磁性部のハウジングとして役割をし得るので、前記第2磁性部を固定するための別途の接着剤や構造物が不要となり得る。特に、前記第1磁性部は、磁性粉末とバインダー樹脂を用いた高分子型磁性部を用いてモールドにより立体構造に成形可能なので、第2磁性部を埋め込むための構造を容易に形成し得る。
【0117】
この際、前記第1磁性部の少なくとも一部が前記シールド部に接触し得る。これにより、前記第1磁性部で発生する熱が前記シールド部を介して効率よく排出され得る。
【0118】
<3種の磁性部の組み合わせ>
前記実現例による無線充電装置は、前記第1磁性部および前記第2磁性部の他に第3磁性部をさらに含み得る。
【0119】
具体的に、前記無線充電装置は、前記第1磁性部上に配置され、前記第1磁性部とは異なる透磁率を有する第2磁性部と、前記第2磁性部上に配置され、前記第2磁性部とは異なる透磁率を有する第3磁性部とをさらに含み得る。
【0120】
また、前記第1磁性部、前記第2磁性部および前記第3磁性部は、前記コイル部と前記シールド部との間に配置され得る。
【0121】
具体的な一例として、前記第1磁性部は磁性粉末とバインダー樹脂とを含み、前記第2磁性部はフェライト系磁性体を含み、前記第3磁性部はナノ結晶質磁性体を含み得る。
【0122】
従来の無線充電装置において、磁性部として主に使用されていた焼結フェライトシートは磁性特性に優れる一方、脆性(brittleness)が高いため歪みなどに対する耐性が低く重量がやや大きい。また、焼結過程で発生する気孔(pore)などの欠陥によって熱衝撃に破壊され易いため破片を発生させることにより、2次的な問題を引き起こし得る。このような焼結フェライトシートの欠点を補うために、磁性粉末をバインダー樹脂と配合して耐衝撃性を向上させた高分子型磁性体を適用し得るが、高分子型磁性体のみを用いると、透磁率が高くないため、一定レベル以上の無線充電性能を達成するには大量が必要となり、装置の小型化が難しい。また、前記高分子型磁性体のみに磁束が集束すると、高分子成分が熱を蓄積するため、時間の経過とともに温度が上昇し続け得る。一方、Fe系合金のような金属成分を高温熱処理によって透磁率を向上させたナノ結晶質磁性体は、従来の磁性体に比べ透磁率面で著しく高いので、非常に少ない量でも無線充電性能を向上させ得るが、同時に透磁損失も大きいため、発熱が激しく製作コストもやや高い。しかし、このような互いに異なる特性を有する前記3種の磁性部を適宜組み合わせると、磁束の配分により無線充電中に発生する熱を効率よく分散させることにより、充電効率および放熱特性をともに向上させ得る。
【0123】
前記3種の磁性部は、これらを構成する成分によって、透磁率や透磁損失のような磁性特性の面で有意な差を有する。
【0124】
例えば、前記第3磁性部は、85kHzにおいて前記第1磁性部および前記第2磁性部よりもさらに高い透磁率を有し、前記第2磁性部は85kHzにおいて前記第1磁性部よりも高い透磁率を有し得る。また、前記第3磁性部が85kHzにおいて前記第1磁性部および前記第2磁性部に対して高い透磁損失を有し、前記第2磁性部が85kHzにおいて前記第1磁性部に対して高い透磁損失を有し得る。
【0125】
例えば、前記第2磁性部と前記第1磁性部との間の85kHzにおける透磁率差は、100以上、500以上、または1000以上であり、具体的に100~5000、500~4000、または1000~3000であり得る。また、前記第3磁性部と前記第2磁性部との間の85kHzにおける透磁率差は、1000以上、5000以上、または10000以上であり、具体的に1000~50000、5000~100000、または10000~150000であり得る。
【0126】
より具体的な一例として、前記第1磁性部が85kHzにおいて5~300の透磁率および0~30の透磁損失を有し、前記第2磁性部が85kHzにおいて1000~5000の透磁率および0~300の透磁損失を有し、前記第3磁性部が85kHzにおいて10000~150000の透磁率および1000~10000の透磁損失を有し得る。
【0127】
また、無線充電時に磁性部に集束した磁束の量と透磁損失に比例する大きさで熱が発生するので、前記3種の磁性部は、無線充電時の発熱量の面でも有意な差を有する。例えば無線充電時に、具体的に外部から無線電力が前記コイル部に受信されるとき、前記第3磁性部の発熱量は、前記第1磁性部の発熱量または前記第2磁性部の発熱量よりも大きくても良い。
【0128】
具体的な例として、外部から無線電力が前記コイル部に受信されるとき、前記第3磁性部の発熱量は前記第2磁性部の発熱量よりも大きく、前記第2磁性部の発熱量は前記第1磁性部の発熱量よりも大きくても良い。
【0129】
このように、前記3種の磁性部は、互いに異なる磁性特性と発熱量を有するので、これらを配置して組み合わせる方式に応じて、透磁率の大きさ順に磁束密度が大きくなる傾向を利用して、無線充電時に集束される磁束を所望の方向に配分することができ、また磁束の量と透磁損失の大きさに比例して発熱量が増加する傾向を利用して、効率よく熱を外部に放出させ得る。
【0130】
図7Aおよび図7Bを参照して、前記第1磁性部300、前記第2磁性部500および前記第3磁性部700のうち、前記第1磁性部300が前記コイル部200に最も近く配置され、前記第3磁性部700が前記シールド部400に最も近く配置され得る。この際、前記第3磁性部は前記シールド部と熱的に連結され得る。それにより、前記第3磁性部で発生する多量の熱が前記シールド部を介して外部に容易に排出され得る。
【0131】
さらには、前記3種の磁性部の物理的特性と磁性特性とを考慮して、各磁性部別に使用される量を調節することにより、充電効率を阻害しないながら耐衝撃性を向上させ、製造コストも低減し得る。例えば、前記第1磁性部は前記第2磁性部より大きい体積を有し、前記第2磁性部は前記第3磁性部より大きい体積を有し得る。
【0132】
前記第2磁性部はフェライト系磁性体を含むことができ、その具体的な成分および製法は前述の通りである。
【0133】
前記第2磁性部は、シート状またはブロック状を有し得る。
前記第2磁性部の厚さは0.5mm~5mmであり、具体的に0.5mm~3mm、0.5mm~2mm、または1mm~2mmであり得る。
【0134】
前記第2磁性部は、前記第1磁性部と同じ面積を有するか、またはこれとは異なる面積を有し得る。
【0135】
例えば、前記第2磁性部は、前記第1磁性部と同様に大面積を有し得る。具体的に、前記第2磁性部の面積は、200cm以上、400cm以上、または600cm以上であり得る。また、前記第2磁性部の面積は10000cm以下であり得る。また、前記大面積の第1磁性部は、多数の磁性単位体が組み合わされ構成されて良く、この際、前記磁性単位体の面積は、60cm以上、90cm以上、または95cm~900cmであり得る。
【0136】
または、前記第2磁性部は、前記第1磁性部よりも小さい面積を有し得る。例えば、前記第2磁性部が前記第1磁性部の外郭部にのみ配置される場合、前記第2磁性部は前記外郭部の面積に対応する面積を有し得る。また、これにより、前記第2磁性部は前記コイル部に対応する位置に配置され、前記コイル部の面積に対応する面積を有し得る。この場合、前記第2磁性部は、小さい面積でも充電効率と放熱特性とを効果的に向上させ得る。
【0137】
前記第2磁性部は、電気自動車の無線充電標準周波数近傍で特定範囲の磁性特性を有し得る。例えば、前記第2磁性部の85kHzの周波数における透磁率は1000~5000、または2000~4000であり、透磁損失は0~1000、0~100、または0~50であり得る。
【0138】
前記第3磁性部は、ナノ結晶質(nanocrystalline)磁性体を含み得る。前記第3磁性部としてナノ結晶質磁性体を適用する際に、コイル部と距離が離れるほどコイルのインダクタンス(Ls)が低くなっても、抵抗(Rs)がさらに低くなることによって、コイルの品質係数(Qファクタ:Ls/Rs)が高くなり、充電効率が向上し発熱が減少し得る。
【0139】
例えば、前記第3磁性部は、Fe系ナノ結晶質磁性体であって良く、具体的に、Fe-Si-Al系ナノ結晶質磁性体、Fe-Si-Cr系ナノ結晶質磁性体、またはFe-Si-B-Cu-Nb系ナノ結晶質磁性体であり得る。
【0140】
より具体的に、前記第3磁性部は、Fe-Si-B-Cu-Nb系ナノ結晶質磁性体であり、この場合、Feが70元素%~85元素%、SiおよびBの和が10元素%~29元素%、CuとNbの和が1元素%~5元素%のものが好ましい(ここで元素%とは、磁性部をなす総元素の個数に対する特定元素の個数の百分率のことを意味する)。前記組成範囲において、Fe-Si-B-Cu-Nb系合金が熱処理によってナノ結晶質磁性体に容易に形成され得る。
【0141】
前記ナノ結晶質磁性体は、例えば、Fe系合金をメルトスピニングによる急冷凝固法(RSP)で製造し、所望の透磁率が得られるよう300℃~700℃の温度範囲で30分~2時間の無磁場熱処理を行って製造され得る。
【0142】
もし、熱処理温度が300℃未満であると、ナノ結晶が十分に生成されないため所望の透磁率が得られず、熱処理時間が長くかかることがあり、700℃を超えると、過熱処理によって透磁率が著しく低くなり得る。そこで、前記範囲内で、熱処理温度が低い場合は熱処理時間を長くし、熱処理温度が高い場合は熱処理時間を短くして、所望の透磁率に調節し得る。
【0143】
前記第3磁性部の厚さは15μm~150μmであり得る。一方、ナノ結晶質磁性体は、製造工程上厚い厚さに作ることが困難であり、例えば15μm~35μmの厚さの薄膜シートで形成され得る。したがって、このような薄膜シートを複数枚積層して第3磁性部を形成し得る。この際、前記薄膜シートの間には、接着テープのような接着剤層が挿入され得る。また、前記第3磁性部は、製造工程の後段に加圧ロール等によって破砕して薄膜シートに多数のクラックを形成することにより、複数のナノ結晶質微細片を含むように製造し得る。
【0144】
また、前記第1磁性部の外郭部を、前記第2磁性部および前記第3磁性部の厚さと差を有するように形成して、充電効率を阻害しないながら耐衝撃性を向上させ、製造コストも低減し得る。例えば、前記第1磁性部の外郭部が前記第2磁性部および前記第3磁性部に対して厚い厚さを有し、前記第2磁性部が前記第3磁性部に対して厚い厚さを有し得る。具体的な一例として、前記第1磁性部の外郭部の厚さが5mm~11mmであり、前記第2磁性部の厚さが0.5mm~3mmであり、前記第3磁性部の厚さが15μm~150μmであり得る。
【0145】
前記第3磁性部は、電気自動車の無線充電標準周波数近傍で特定範囲の磁性特性を有し得る。例えば、前記第3磁性部は、85kHzの周波数において500~150000の透磁率および100~50000の透磁損失を有し得る。一例として、前記第3磁性部が破砕型のナノ結晶質磁性体を含む場合、85kHzの周波数において500~3000の透磁率および100~1000の透磁損失を有し得る。他の例として、前記第3磁性部が非破砕型のナノ結晶質磁性体を含む場合、85kHzの周波数において10000~150000の透磁率および1000~10000の透磁損失を有し得る。
【0146】
<放熱部>
前記実現例による無線充電装置は、効果的な熱伝達のために放熱部をさらに含み得る。
【0147】
無線充電の際、磁性部には集束された磁束の量と透磁損失に比例して多くの熱が発生するが、前記放熱部は前記磁性部で発生する熱を効率よく外部に伝達し得る。
【0148】
前記放熱部はシート状であってよく、すなわち前記放熱部は放熱シートであり得る。
【0149】
前記放熱部は、バインダー樹脂と、前記バインダー樹脂内に分散された放熱フィラーとを含み得る。
【0150】
このように、前記放熱部は、高分子成分を含んで前記シールド部と前記磁性シートとの間の接着力を発揮することができ、また外部の衝撃から前記磁性部が破壊されることを防止し得る。
【0151】
前記バインダー樹脂として、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリフェニルスルフィド(PSS)樹脂、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、イソシアネート樹脂、エポキシ樹脂などを例示し得るが、これらに限定されるものではない。
【0152】
例えば、前記バインダー樹脂は硬化性樹脂であり得る。具体的に、前記バインダー樹脂は光硬化性樹脂および/または熱硬化性樹脂であってよく、特に硬化して接着性を示し得る樹脂であり得る。より具体的に、前記バインダー樹脂は、グリシジル基、イソシアネート基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、またはアミド基などのような、熱による硬化が可能な官能基または部位を1つ以上含むか、または、エポキシド基、環状エーテル基、スルフィド基、アセタール基、またはラクトン基などのような、活性エネルギーによって硬化可能な官能基または部位を1つ以上含む樹脂を使用し得る。このような官能基または部位は、例えば、イソシアネート基(-NCO)、ヒドロキシ基(-OH)、またはカルボキシル基(-COOH)であり得る。
【0153】
具体的な一例として、前記バインダー樹脂は、シリコーン系樹脂およびアクリル系樹脂のうちの1種以上であり得る。
【0154】
また、前記放熱フィラーは、セラミック粒子、カーボン粒子および金属粒子のうちの1種以上であり得る。前記セラミック粒子は金属の酸化物または窒化物を含んで良く、具体的にシリカ、アルミナ、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウムなどを含み得る。前記カーボン粒子は、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブなどを含み得る。前記金属粒子は、銅、銀、鉄、ニッケルなどを含み得る。
【0155】
前記放熱部内の前記放熱フィラーの含有量は、70重量%~90重量%、70重量%~85重量%、または75重量%~90重量%であり得る。
【0156】
前記放熱部の熱伝導率は、0.5W/m・K~30W/m・Kであり、具体的に2W/m・K~5W/m・Kであり得る。
【0157】
前記放熱部の厚さは0.1mm~5mmであり、具体的に0.1mm~3mm、または0.2mm~1mmであり得る。
【0158】
前記放熱部は、前記第1磁性部、前記第2磁性部または前記第3磁性部と同一面積を有するか、これとは異なる面積を有し得る。例えば、前記放熱部が前記第1磁性部の外郭部上に配置される場合、前記放熱部は前記外郭部の面積に対応する面積を有し得る。また、前記放熱部が前記第3磁性部と前記シールド部との間に配置される場合、前記放熱部は前記第3磁性部の面積に対応する面積を有し得る。これにより、前記放熱部は、小さな面積でも優れた放熱特性と接着性および耐衝撃性を発揮し得る。
【0159】
<磁性部および放熱部の配置>
前記放熱部は、前記第3磁性部と前記シールド部との間に配置される。
前記放熱部は、前記第3磁性部と前記シールド部との間のより効果的な熱の移動のための熱伝導性媒体として機能し得る。具体的に前記第3磁性部は、前記放熱部を介して前記シールド部に熱的に連結され得る。
【0160】
そのために、前記放熱部は、前記第3磁性部と前記シールド部とに同時に接触し得る。より具体的に、前記放熱部は、前記第3磁性部と前記シールド部とを接着し得る。これにより、前記第3磁性部で発生する熱が前記放熱部を介して前記シールド部に伝達され、外部に放出されるのに容易となり得る。
【0161】
さらには、前記第3磁性部は前記第2磁性部と接触し、前記第2磁性部は前記第1磁性部と接触し得る。この際、前記第1磁性部、前記第2磁性部、および前記第3磁性部は熱的に連結され得る。そのために、前記第1磁性部と前記第2磁性部との間および/または前記第2磁性部と前記第3磁性部との間に追加の放熱部が備えられても良く、それにより前記第1磁性部および/または第2磁性部で発生する熱が前記追加の放熱部を介してより効果的にシールド部に最終的に伝達され得る。
【0162】
前記第2磁性部および前記第3磁性部は、それぞれ前記第1磁性部の外郭部、前記中心部、またはこれらのうち少なくとも一部に配置され得る。一例として、前記第2磁性部は、前記第1磁性部の外郭部上に配置され得る。具体的な一例として、前記第2磁性部および前記第3磁性部は、前記外郭部上に配置され得る。これにより、コイル周りの高い磁束密度を効率よく分散させることができ、前記第1磁性部単独で使用する場合に比べて充電効率を高め得る。または、前記第2磁性部および前記第3磁性部は、前記外郭部および前記中心部の少なくとも一部にわたって配置され得る。
【0163】
また、前記第2磁性部は、前記第1磁性部と結合または分離して配置され得る。
また、前記第2磁性部が、前記シールド部と前記第1磁性部との間に配置され得る。
【0164】
図8Aに示すように、前記第2磁性部500および前記第3磁性部700は、前記シールド部400と前記第1磁性部300との間に配置され、前記放熱部810は、前記第3磁性部700と前記シールド部400に同時に接触し得る。このように、前記第1磁性部に対して高い透磁率を有する前記第2磁性部および第3磁性部を前記シールド部に近いところに配置することにより、コイル周りの高い磁束密度を効率よく分散させ得るため、前記第1磁性部単独で使用する場合に比べて充電効率を高めるだけでなく、第1磁性部のコイル近接部に集中する発熱を効率よく分散させ得る。また、この際、前記第3磁性部で発生する熱が前記放熱部を介して前記シールド部に効果的に伝達され得る。例えば、前記第3磁性部がシート状である場合、その一面全部が前記放熱部を介して前記シールド部に付着され得る。具体的に、前記第3磁性部は、前記シールド部の一面上に前記放熱部を介して付着され得る。
【0165】
また、前記第2磁性部500と前記第3磁性部700との間に追加の放熱部820が備えられ、それによって前記第1磁性部および/または前記第2磁性部で発生する熱が、前記追加の放熱部を介してより効果的にシールド部に最終的に伝達され得る。
【0166】
また、前記第1磁性部が前記シールド部に向かう表面に溝を備え、前記第2磁性部が前記溝に挿入され配置され得る。
【0167】
図8Bに示すように、前記第1磁性部300が前記シールド部400に向かう表面に溝を備え、前記第2磁性部500が前記溝に挿入配置され、前記第3磁性部700が前記シールド部400と前記第2磁性部500との間に配置され、前記放熱部810が前記第3磁性部700と前記シールド部400とに同時に接触し得る。
【0168】
この場合、前記第1磁性部は前記第2磁性部のハウジングとして役割を果たし得るので、前記第2磁性部を固定するための別途の接着剤や構造物が不要となり得る。特に、前記第1磁性部は、磁性粉末とバインダー樹脂とを用いる高分子型磁性体を用いてモールドによって立体構造に成形可能なので、第2磁性部を入れるための溝を容易に形成し得る。また、この際、前記第3磁性部で発生する熱が、前記放熱部を介して前記シールド部に効果的に伝達され得る。
【0169】
前記第1磁性部に形成された溝の深さは、前記第2磁性部の厚さ(高さ)よりも大きいかまたは小さくても良い。
【0170】
または、前記第1磁性部に形成された溝の深さは、前記第2磁性部の厚さ(高さ)と同一でも良い。この場合、前記第3磁性部は、前記第1磁性部および前記第2磁性部と接触し得る。
【0171】
また、前記無線充電装置が前記第3磁性部700と前記第1磁性部300および第2磁性部500との間に配置された放熱部820をさらに含み、前記放熱部820が前記第1磁性部300、前記第2磁性部500および前記第3磁性部700に同時に接触することにより、熱をより効果的に伝達し得る。
【0172】
<支持部>
図5に示すように、前記無線充電装置10は、前記コイル部200を支持する支持部100をさらに含み得る。前記支持部の材質および構造は、無線充電装置に使用される通常の支持部の材質および構造を採用し得る。前記支持部は、平板構造またはコイル部を固定できるように、コイル部形状に沿って溝が掘られた構造を有し得る。
【0173】
<ハウジング>
図5図6および図7Aに示すように、前記実現例による無線充電装置10は、前述の構成要素を収容するハウジング600をさらに含み得る。
【0174】
前記ハウジングは、前記コイル部、シールド部、磁性部などの構成要素が適切に配置され組み立てられ得るようにする。前記ハウジングの材質および構造は、無線充電装置に使用される通常のハウジングの材質および構造を採用することができ、その内部に含まれる構成要素に応じて適切に設計され得る。
【0175】
<スペーサ>
また、前記実現例による前記無線充電装置は、前記シールド部と前記磁性部との間の空間を確保するためのスペーサをさらに含み得る。前記スペーサの材質および構造は、無線充電装置に使用される通常のハウジングの材質および構造を採用し得る。
【0176】
[移動手段]
前記無線充電装置は、送信機と受信機との間の大容量の電力伝送を必要とする電気自動車のような移動手段などに有用に使用され得る。
【0177】
図9は、無線充電装置が適用された移動手段、具体的に電気自動車を示すものであり、下部に無線充電装置を備え、電気自動車用無線充電システムが設けられた駐車区域において無線で充電され得る。
【0178】
図9を参照すると、一実現例による移動手段1は、前記実現例による無線充電装置を受信機21として含む。前記無線充電装置は、移動手段1の無線充電の受信機21として機能し、無線充電システムの送信機22から電力供給を受け得る。
【0179】
このように、前記移動手段は無線充電装置を含み、前記無線充電装置は前述のような構成を有する。
【0180】
具体的に、前記移動手段に含まれる無線充電装置は、コイル部と、前記コイル部上に配置される第1磁性部とを含み、前記第1磁性部は、前記コイル部が配置される部分に対応する外郭部と、前記外郭部によって囲まれる中心部とを含み、前記外郭部の厚さが前記中心部の厚さよりも大きい。
【0181】
前記移動手段に含まれる無線充電装置の各構成要素の構成および特徴は、前述の通りである。
【0182】
前記移動手段は、前記無線充電装置から電力伝送を受けるバッテリーをさらに含み得る。前記無線充電装置は、無線で電力伝送を受けて前記バッテリーに伝達し、前記バッテリーは前記電気自動車の駆動系に電力を供給し得る。前記バッテリーは、前記無線充電装置またはその他追加の有線充電装置から伝達される電力によって充電され得る。
【0183】
また、前記移動手段は、充電に関する情報を無線充電システムの送信機に伝達する信号伝送機をさらに含み得る。このような充電に関する情報は、充電速度のような充電効率、充電状態などであり得る。
【符号の説明】
【0184】
1:移動手段(電気自動車)
10:無線充電装置
21:受信機
22:送信機
100:支持部
200:コイル部
300:第1磁性部
310:外郭部
320:中心部
400:シールド部
500:第2磁性部
600:ハウジング
700:第3磁性部
810、820:放熱部
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9