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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041922
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】植物の調節エレメント及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/29 20060101AFI20240319BHJP
   A01H 1/00 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
C12N15/29
A01H1/00 A ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024003879
(22)【出願日】2024-01-15
(62)【分割の表示】P 2021513429の分割
【原出願日】2020-01-09
(31)【優先権主張番号】62/790,570
(32)【優先日】2019-01-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501231613
【氏名又は名称】モンサント テクノロジー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】フラジンスキー,スタニスロー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】植物内の遺伝子発現を調整するのに有用な組換えDNA分子及び構築物、ならびにこれらのヌクレオチド配列を提供する。また、異種の転写可能なDNA分子と作動可能に連結された組換えDNA分子を含むトランスジェニック植物、植物細胞、植物の部位、及び種子も提供し、これらの使用方法も提供する。
【解決手段】組換えDNA分子であって、a)特定のヌクレオチド配列に対し少なくとも85パーセントの配列同一性を有する配列、b)前記特定のヌクレオチド配列、ならびに、c)遺伝子調節活性を有する、前記特定のヌクレオチド配列のいずれかのフラグメント、からなる群より選択されるDNA配列を含み、前記配列が、異種の転写可能なDNA分子と作動可能に連結されている、前記組換えDNA分子を提供する。
【選択図】なし。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えDNA分子であって、
a)配列番号2~8、12~14及び16~19のいずれかに対し少なくとも85パー
セントの配列同一性を有する配列、
b)配列番号2~8、12~14及び16~19のいずれかを含む配列、ならびに
c)遺伝子調節活性を有する、配列番号2~8、12~14及び16~19のいずれか
のフラグメント、からなる群より選択されるDNA配列を含み、
前記配列が、異種の転写可能なDNA分子と作動可能に連結されている、前記組換えD
NA分子。
【請求項2】
前記配列が、配列番号2~8、12~14及び16~19のいずれかのDNA配列に対
し少なくとも90パーセントの配列同一性を有する、請求項1に記載の組換えDNA分子
【請求項3】
前記配列が、配列番号2~8、12~14及び16~19のいずれかのDNA配列に対
し少なくとも95パーセントの配列同一性を有する、請求項1に記載の組換えDNA分子
【請求項4】
前記DNA配列が遺伝子調節活性を含む、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項5】
前記異種の転写可能なDNA分子が農学的目的の遺伝子を含む、請求項1に記載の組換
えDNA分子。
【請求項6】
前記農学的目的の遺伝子が、植物における除草剤耐性を付与する、請求項5に記載の組
換えDNA分子。
【請求項7】
前記農学的目的の遺伝子が、植物における害虫抵抗性を付与する、請求項5に記載の組
換えDNA分子。
【請求項8】
前記異種の転写可能なDNA分子が、dsRNA、miRNA、またはsiRNAをコ
ードする、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項9】
請求項1に記載の組換えDNA分子を含むトランスジェニック植物細胞。
【請求項10】
前記トランスジェニック植物細胞が単子葉植物細胞である、請求項9に記載のトランス
ジェニック植物細胞。
【請求項11】
前記トランスジェニック植物細胞が双子葉植物細胞である、請求項9に記載のトランス
ジェニック植物細胞。
【請求項12】
請求項1に記載の組換えDNA分子を含む、トランスジェニック植物またはその部位。
【請求項13】
請求項12に記載のトランスジェニック植物の後代植物またはその部位であって、前記
組換えDNA分子を含む、前記後代植物またはその部位。
【請求項14】
トランスジェニック種子であって、請求項1に記載の組換えDNA分子を含む、前記ト
ランスジェニック種子。
【請求項15】
商品生産物を生産する方法であって、請求項12に記載のトランスジェニック植物また
はその部位を得ることと、そこから前記商品生産物を生産することとを含む、前記方法。
【請求項16】
前記商品生産物が、種子、加工種子、タンパク質濃縮物、タンパク質単離物、デンプン
、穀物、植物の部位、種子油、バイオマス、穀粉、及び粗粉である、請求項15に記載の
方法。
【請求項17】
転写可能なDNA分子を発現させる方法であって、請求項1に記載の組換えDNA分子
を含むトランスジェニック植物を得ることと、前記植物を栽培することとを含み、前記転
写可能なDNAが発現される、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、2019年1月10日に出願された米国特許仮出願第62/790,570
号による利益を主張し、当該出願の全体が参照により本明細書に援用される。
配列表の組み込み
【0002】
「MONS468WO_ST25.txt」という名称のファイルに含まれる配列表は
、33,896バイト(Microsoft Windows(登録商標)での計測)で
あり、2020年1月9日に作成されたものであり、電子申請により本明細書と共に提出
され、参照により本明細書に援用される。
【0003】
技術分野
本発明は、植物分子生物学及び植物遺伝子工学の分野に関する。より具体的には、本発
明は、植物内の遺伝子発現を調整するのに有用なDNA分子に関する。
【背景技術】
【0004】
調節エレメントは、作動可能に連結された転写可能なDNA分子の転写を調整すること
によって遺伝子活性を調節する遺伝子エレメントである。このようなエレメントとしては
、プロモーター、リーダー、イントロン、及び3’非翻訳領域を挙げることができ、これ
らは、植物分子生物学及び植物遺伝子工学の分野で有用である。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、植物で使用するための新規の遺伝子調節エレメントを提供する。本発明はま
た、調節エレメントを含む組換えDNA分子構築物も提供する。本発明は、調節エレメン
トを含むトランスジェニック植物細胞、植物、及び種子も提供する。1つの実施形態にお
いて、調節エレメントは、転写可能なDNA分子と作動可能に連結されている。ある特定
の実施形態において、転写可能なDNA分子は、調節配列に対し異種であってもよい。し
たがって、本発明によって提供される調節エレメント配列は、特定の実施形態においては
、異種の転写可能なDNA分子と作動可能に連結されていると定義され得る。本発明はま
た、調節エレメントを使用し、調節エレメントを含む組換えDNA分子、ならびに転写可
能なDNA分子と作動可能に連結された調節エレメントを含むトランスジェニック植物細
胞、植物、及び種子を作製及び使用する方法も提供する。
【0006】
したがって、1つの態様において、本発明は、組換えDNA分子であって、(a)配列
番号2~8、12~14及び16~19のいずれかに対し少なくとも約85パーセントの
配列同一性を有する配列、(b)配列番号2~8、12~14及び16~19のいずれか
を含む配列、ならびに(c)遺伝子調節活性を有する、配列番号2~8、12~14及び
16~19のいずれかのフラグメントからなる群より選択されるDNA配列を含み、当該
配列が、異種の転写可能なDNA分子と作動可能に連結されている、組換えDNA分子を
提供する。「異種の転写可能なDNA分子」とは、転写可能なDNA分子が、作動可能に
連結されたポリヌクレオチド配列に対し異種であることを意味する。特定の実施形態にお
いて、組換えDNA分子は、配列番号2~8、12~14及び16~19のいずれかのD
NA配列に対し、少なくとも約85パーセント、少なくとも約86パーセント、少なくと
も約87パーセント、少なくとも約88パーセント、少なくとも約89パーセント、少な
くとも約90パーセント、少なくとも91パーセント、少なくとも92パーセント、少な
くとも93パーセント、少なくとも94パーセント、少なくとも95パーセント、少なく
とも96パーセント、少なくとも97パーセント、少なくとも98パーセント、または少
なくとも99パーセントの配列同一性を有するDNA配列を含む。特定の実施形態におい
て、このDNA配列は調節エレメントを含む。いくつかの実施形態において、この調節エ
レメントは、イントロンに作動可能に連結されたプロモーターを含む。さらに他の実施形
態において、この調節エレメントは3’UTRを含む。さらに他の実施形態において、異
種の転写可能なDNA分子は、農学的目的の遺伝子、例えば、植物における除草剤抵抗性
を提供可能な遺伝子、または植物における植物害虫耐性を提供可能な遺伝子を含む。さら
に他の実施形態において、異種の転写可能なDNA分子は、低分子RNA(例えば、ds
RNA、miRNA、またはsiRNA)をコードする配列を含む。さらに他の実施形態
において、本発明は、本明細書で提供される組換えDNA分子を含む構築物を提供する。
【0007】
別の態様において、本明細書では、トランスジェニック植物細胞であって、(a)配列
番号2~8、12~14及び16~19のいずれかに対し少なくとも約85パーセントの
配列同一性を有する配列、(b)配列番号2~8、12~14及び16~19のいずれか
を含む配列、ならびに(c)遺伝子調節活性を有する、配列番号2~8、12~14及び
16~19のいずれかのフラグメントからなる群より選択されるDNA配列を含み、当該
DNA配列が、異種の転写可能なDNA分子と作動可能に連結されている、組換えDNA
分子を含む、トランスジェニック植物細胞を提供する。ある特定の実施形態において、ト
ランスジェニック植物細胞は単子葉植物細胞である。他の実施形態において、トランスジ
ェニック植物細胞は単子葉植物細胞または双子葉植物細胞である。
【0008】
さらにまた別の態様において、本明細書ではさらに、トランスジェニック植物またはそ
の部位であって、a)配列番号2~8、12~14及び16~19のいずれかに対し少な
くとも約85パーセントの配列同一性を有する配列、b)配列番号2~8、12~14及
び16~19のいずれかを含む配列、ならびにc)遺伝子調節活性を有しており、配列番
号2~8、12~14及び16~19のいずれかのフラグメント、からなる群より選択さ
れるDNA配列を含み、当該配列が、異種の転写可能なDNA分子と作動可能に連結され
ている、組換えDNA分子を含む、トランスジェニック植物またはその部位を提供する。
特定の実施形態において、このトランスジェニック植物は、組換えDNA分子を含む任意
の世代の後代植物である。また、トランスジェニック種子であって、成長したときにこの
ようなトランスジェニック植物を産生する組換えDNA分子を含む、トランスジェニック
種子も本明細書で提供される。
【0009】
別の態様において、本発明は、商品生産物を生産する方法であって、本発明の組換えD
NA分子を含むトランスジェニック植物またはその一部を得ることと、それから商品生産
物を生産することとを含む、方法を提供する。1つの実施形態において、商品生産物は、
種子、加工種子、タンパク質濃縮物、タンパク質単離物、デンプン、穀物、植物の部位、
種子油、バイオマス、穀粉、及び粗粉である。
【0010】
さらにまた別の態様において、本発明は、本発明の組換えDNA分子を含むトランスジ
ェニック植物を生産する方法であって、植物細胞を本発明の組換えDNA分子で形質転換
して形質転換植物細胞を生産することと、この形質転換植物細胞からトランスジェニック
植物を再生することとを含む、方法を提供する。
【0011】
配列の簡単な説明
配列番号1は、Setaria italica(アワ(Foxtail mille
t))のS-アデノシルメチオニンシンテターゼ1タンパク質遺伝子に由来する3’UT
R、T-SETit.Ams1:1のDNA配列である。
【0012】
配列番号2は、Coix lacryma-jobi(ジュズダマ(Job’s te
ars))のHsp16.9(熱ショックタンパク質16.9)タンパク質遺伝子に由来
する3’UTR、T-Cl.Hsp16.9_2:1のDNA配列である。
【0013】
配列番号3は、Eragrostis tef(Tef)の推定熱ショックタンパク質
遺伝子に由来する3’UTR、T-ERIra.Hsp17.9_3:1のDNA配列で
ある。
【0014】
配列番号4は、Saccharum ravennae(ラベンナグラス(hardy
pampas grass))のHsp16.9(熱ショックタンパク質16.9)タ
ンパク質遺伝子に由来する3’UTR、T-ERIra.Hsp16.9_3:1のDN
A配列である。
【0015】
配列番号5は、Andropogon gerardii(ビッグブルーステム(bi
g bluestem))及びSorghum bicolor(ソルガム)の熱ショッ
クタンパク質遺伝子に由来する3’UTR、T-ANDge.Hsp/Sb.Hsp、キ
メラ3’UTRのDNA配列である。
【0016】
配列番号6は、プロモーター及びSetariaitalicaのアクチン4遺伝子に
由来するイントロンに対して5’側に作動可能に連結された、Zea mays由来の脂
質転移タンパク質様タンパク質遺伝子に由来する5’UTRを含む、EXP、EXP-Z
m.LTP-SETit.Act4のDNA配列である。
【0017】
配列番号7は、Zea maysの脂質転移タンパク質様タンパク質に由来するプロモ
ーター、P-Zm.Ltp-1:1:2のDNA配列である。
【0018】
配列番号8は、Zea maysの脂質転移タンパク質様タンパク質に由来する5’U
TR(リーダー)、L-Zm.Ltp-1:1:3のDNA配列である。
【0019】
配列番号9は、Setaria italicaのアクチン4遺伝子に由来するイント
ロンI-SETit.Act4:2のDNA配列である。
【0020】
配列番号10は、逆相補配向のカリフラワーモザイクウイルス35Sプロモーターに由
来するエンハンサー、E-CaMV.35S-RCのDNA配列である。
【0021】
配列番号11は、ジャガイモ光誘導性組織特異的ST-LS1遺伝子(GenBank
アクセッション:X04753)に由来するプロセシング可能なイントロンを有するβ-
グルクロニダーゼ(GUS)の植物発現に最適化された合成コード配列である。
【0022】
配列番号12は、Saccharum ravennae(ラベンナグラス(hard
y pampas grass))のHsp16.9(熱ショックタンパク質16.9)
タンパク質遺伝子に由来する3’UTR、T-Cl.Hsp16.9:2のDNA配列で
ある。
【0023】
配列番号13は、Coix lacryma-jobi(ジュズダマ(Job’s t
ears))のHsp16.9(熱ショックタンパク質16.9)タンパク質遺伝子に由
来する3’UTR、T-Cl.Hsp16.9:2のDNA配列である。
【0024】
配列番号14は、複数の公開ダリアモザイクウイルスプロモーターに由来する、キメラ
再構成エンハンサー、E-DaMV.H-Flt:1のDNA配列である。第1のフラグ
メントは、DaMV-Holland(DaMV-H)株のプロモーター、Genban
kアクセッションEU090957、ヌクレオチド1177-1494に由来する。この
フラグメントは、DaMV-Hプロモーターに由来する第2のフラグメントであるヌクレ
オチド1003-1176に作動可能に連結されている。ネイティブDaMVプロモータ
ー構成では、第2のフラグメントが第1のフラグメントに先行する。第1のフラグメント
内で、ヌクレオチド287~288、及びヌクレオチド319~322は、Genban
kアクセッションJX272320内のDaMVプロモーターの類似の位置にある配列に
変更された。
【0025】
配列番号15は、GenbankアクセッションEF513491、ヌクレオチド1~
322の、ダリアモザイクウイルスプロモーター由来のエンハンサー、E-DaMV.F
LT:2のDNA配列である。
【0026】
配列番号16は、プロモーターに対して5’側に作動可能に連結された、キメラ再構成
エンハンサー、E-DaMV.H-Flt:1(配列番号14)及びSetaria i
talica由来のアクチン4遺伝子に由来するイントロンに対して5’側に作動可能に
連結された、Zea mays由来の脂質輸送タンパク質様タンパク質遺伝子由来の5’
UTRから構成される、EXP、EXP-DaMV.H-Flt+Zm.Ltp+SET
it.Act4:1のDNA配列である。
【0027】
配列番号17は、プロモーターに対して5’側に作動可能に連結された、キメラ再構成
エンハンサー、E-DaMV.H-Flt:1(配列番号14)及びSetaria i
talica由来のアクチン4遺伝子に由来するイントロンに対して5’側に作動可能に
連結された、Zea mays由来の脂質輸送タンパク質様タンパク質遺伝子由来の5’
UTRから構成される、EXP、EXP-DaMV.H-Flt+Zm.Ltp+SET
it.Act4:1のDNA配列である。キメラ再構成E-DaMV.H-Flt:1エ
ンハンサーは、EXP-DaMV.H-Flt+Zm.Ltp+SETit.Act4:
1(配列番号16)に対して反対の方向でクローニングされる。
【0028】
配列番号18は、プロモーターに対して5’側に作動可能に連結された、エンハンサー
、E-DaMV.H-FLT:2及びSetaria italica由来の14-3-
3C遺伝子に由来するイントロンに対して5’側に作動可能に連結された、Trypsi
cum dactyloides由来のRCc3遺伝子由来の5’UTRから構成される
、EXP、EXP-DaMV.FLT+Td.RCc3_1+SETit.14-3-3
C-5:1のDNA配列である。
【0029】
配列番号19は、プロモーターに対して5’側に作動可能に連結された、エンハンサー
、E-DaMV.H-FLT:2及びSetaria italica由来の14-3-
3C遺伝子に由来するイントロンに対して5’側に作動可能に連結された、Trypsi
cum dactyloides由来のRCc3遺伝子由来の5’UTRから構成される
、EXP、EXP-DaMV.FLT+Td.RCc3_1+SETit.14-3-3
C-5:1のDNA配列である。E-DaMV.FLT:2エンハンサーは、EXP-D
aMV.FLT+Td.RCc3_1+SETit.14-3-3C-5:1(配列番号
18)に対して反対方向にクローニングされる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明は、植物における遺伝子調節活性を有する調節エレメントを提供する。これらの
調節エレメントのヌクレオチド配列は、配列番号2~8、12~14及び16~19とし
て示される。これらの調節エレメントは、植物組織内で、作動可能に連結された転写可能
なDNA分子の発現に影響を及ぼし得、そのため、トランスジェニック植物内で、作動可
能に連結された導入遺伝子の遺伝子発現を調節し得る。また、本発明は、提供される調節
エレメントを含む組換えDNA分子を修飾、産生、及び使用する方法も提供する。また、
本発明は、本発明の組換えDNA分子を含むトランスジェニック植物細胞、植物、植物の
部位、及び種子を含む組成物、ならびにこれらを調製し使用するための方法も提供する。
【0031】
以下の定義及び方法は、本発明をより良好に定義し、当業者が本発明を実施する指針と
するために提供される。別段の記載がない限り、用語は、関連技術分野の当業者による従
来的な使用法に従って理解するものとする。
【0032】
DNA分子
本明細書で使用する場合、「DNA」または「DNA分子」という用語は、5’(上流
)末端から3’(下流)末端に読み取られるゲノム起源または合成起源の2本鎖DNA分
子(すなわち、デオキシリボヌクレオチド塩基の多量体またはDNA分子)を指す。本明
細書で使用する場合、「DNA配列」という用語は、DNA分子のヌクレオチド配列を指
す。本明細書で使用される命名法は、米国連邦規則集37編1.822条の命名法に対応
し、WIPO標準ST.25(1998)附属書2の表、表1及び3に記載されている。
【0033】
本明細書で使用する場合、「組換えDNA分子」とは、ヒトの介入なしで天然に同時に
生じないであろうDNA分子の組合せを含むDNA分子である。例えば、組換えDNA分
子とは、互いに異種の少なくとも2つのDNA分子から構成されたDNA分子、自然界に
存在するDNA配列から逸脱するDNA配列を含むDNA分子、合成DNA配列を含むD
NA分子、または遺伝子形質転換もしくは遺伝子編集によって宿主細胞のDNA内に組み
込まれたDNA分子であってもよい。
【0034】
本出願における「単離されたDNA分子」、または等価の用語もしくは表現への言及は
、このDNA分子が、単独で、または他の組成物と組み合わせて存在するが、その自然環
境内には存在しないDNA分子であることを意味するものとする。例えば、コード配列、
イントロン配列、非翻訳リーダー配列、プロモーター配列、転写終結配列などのような、
生物のゲノムのDNA内で天然に見出される核酸エレメントは、当該エレメントが生物の
ゲノム内にあり、当該エレメントが天然に見出されるゲノム内の位置にある限りは、「単
離された」とは見なされない。ただし、これらのエレメントの各々、及びこれらのエレメ
ントの下位部分は、当該エレメントが生物のゲノム内になく、当該エレメントが天然に見
出されるゲノム内の位置にない限り、本開示の範囲内で「単離されている」ものである。
同様に、殺虫性タンパク質またはそのタンパク質の天然に生じる任意の殺虫性バリアント
をコードするヌクレオチド配列は、当該ヌクレオチド配列が、当該タンパク質をコードす
る配列が天然に見出される細菌のDNA内にない限り、単離されたヌクレオチド配列と考
えられる。天然に存在する殺虫性タンパク質のアミノ酸配列をコードする合成ヌクレオチ
ド配列は、本開示の目的において単離されていると見なされると考えられる。本開示の目
的において、任意のトランスジェニックヌクレオチド配列、すなわち、植物もしくは細菌
の細胞のゲノム内に挿入されるか、または染色体外ベクター内に存在するDNAのヌクレ
オチド配列は、それが、細胞の形質転換に使用されるプラスミドもしくは同様の構造内に
存在しても、植物もしくは細菌のゲノム内に存在しても、または植物もしくは細菌に由来
する組織、後代、生物学的試料、もしくは商品生産物の中に検出可能量で存在しても、単
離されたヌクレオチド配列であると見なされる。
【0035】
本明細書で使用する場合、「配列同一性」という用語は、2つの最適にアラインメント
したポリヌクレオチド配列または2つの最適にアラインメントしたポリペプチド配列が同
一である程度を指す。最適な配列アラインメントは、2つの配列、例えば、参照配列とも
う1つの配列とを手動でアラインメントして、適切な内部ヌクレオチド挿入、欠失、また
はギャップを伴った配列アラインメント内のヌクレオチドマッチ数を最大化することによ
って作成される。本明細書で使用する場合、「参照配列」という用語は、配列番号2~8
、12~14及び16~19として示されるDNA配列を指す。
【0036】
本明細書で使用する場合、「配列同一性パーセント」または「同一性パーセント」また
は「同一性%」という用語は、同一性の割合に100を掛けたものである。参照配列に対
し最適にアラインメントした配列における「同一性の割合」は、最適アラインメント内の
ヌクレオチドマッチ数を、参照配列内のヌクレオチド総数、例えば、全長の参照配列全体
のヌクレオチドの総数で割ったものである。したがって、本発明の1つの実施形態は、本
明細書で配列番号2~8、12~14及び16~19として示される参照配列に対し最適
にアラインメントした場合に、参照配列に対し、少なくとも約85パーセントの同一性、
少なくとも約86パーセントの同一性、少なくとも約87パーセントの同一性、少なくと
も約88パーセントの同一性、少なくとも約89パーセントの同一性、少なくとも約90
パーセントの同一性、少なくとも約91パーセントの同一性、少なくとも約92パーセン
トの同一性、少なくとも約93パーセントの同一性、少なくとも約94パーセントの同一
性、少なくとも約95パーセントの同一性、少なくとも約96パーセントの同一性、少な
くとも約97パーセントの同一性、少なくとも約98パーセントの同一性、少なくとも約
99パーセントの同一性、または少なくとも約100パーセントの同一性を有する配列を
含むDNA分子を提供する。参照分子に対し、あるパーセントの配列同一性を有するDN
A分子は、参照配列の活性を示し得る。
【0037】
調節エレメント
調節エレメント、例えば、プロモーター、リーダー(5’UTRとしても公知)、エン
ハンサー、イントロン、及び転写終結領域(または3’UTR)は、生細胞内での遺伝子
の全体的発現において不可欠な役割を担っている。本明細書で使用する場合、「調節エレ
メント」という用語は、遺伝子調節活性を有するDNA分子を指す。本明細書で使用する
場合、「遺伝子調節活性」という用語は、例えば、作動可能に連結された転写可能なDN
A分子の転写及び/または翻訳に影響を及ぼすことにより、作動可能に連結された転写可
能なDNA分子の発現に影響を及ぼす能力を指す。植物内で機能する調節エレメント、例
えば、プロモーター、リーダー、エンハンサー、イントロン、及び3’UTRは、遺伝子
工学による植物の表現型の修飾に有用である。
【0038】
本明細書で使用する場合、「調節発現エレメント群」または「EXP」配列とは、作動
可能に連結された調節エレメント群、例えば、エンハンサー、プロモーター、リーダー、
及びイントロンの群を指し得る。例えば、調節発現エレメント群は、例えば、イントロン
配列に対して5’側に作動可能に連結された、リーダー配列と5’側に作動可能に連結さ
れたプロモーターから構成され得る。本発明を実施するのに有用なEXPは、配列番号6
、16、17、18、及び19として提示されている。
【0039】
調節エレメントは、その遺伝子発現パターンによって特徴付けられ得、例えば、正及び
/または負の効果、例えば、構成的発現または時間的、空間的、発達的、組織、環境的、
生理学的、病理学的、細胞周期、及び/または化学的応答性の発現、ならびにこれらの任
意の組合せ、加えて定量的または定性的指標によって特徴付けられ得る。本明細書で使用
する場合、「遺伝子発現パターン」とは、作動可能に連結されたDNA分子の転写RNA
分子への転写の任意のパターンである。転写RNA分子は、翻訳されてタンパク質分子を
生成する場合もあれば、アンチセンスまたは他の調節RNA分子、例えば、2本鎖RNA
(dsRNA)、転移RNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、マイクロR
NA(miRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)などをもたらす場合もある。
【0040】
本明細書で使用する場合、「タンパク質発現」という用語は、転写RNA分子のタンパ
ク質分子への翻訳の任意のパターンである。タンパク質の発現は、その時間的、空間的、
発達的、または形態学的な性質により、さらに定量的または定性的指標により、特徴付け
られ得る。
【0041】
プロモーターは、作動可能に連結された転写可能なDNA分子の発現を調整するための
調節エレメントとして有用である。本明細書で使用する場合、「プロモーター」という用
語は、概して、転写を開始するためにRNAポリメラーゼII及びその他のタンパク質(
例えば、トランス作用転写因子)の認識及び結合に関与するDNA分子を指す。プロモー
ターは、最初、遺伝子のゲノムコピーの5’非翻訳領域(5’UTR)から単離されても
よい。代替的に、プロモーターは、合成的に産生または操作されたDNA分子であっても
よい。また、プロモーターはキメラであってもよい。キメラプロモーターは、2つ以上の
異種DNA分子の融合によって産生される。本発明を実施する上で有用なプロモーターは
、配列番号7として示されるか、または配列番号18に含まれるプロモーターであるか、
またはこれらのフラグメントもしくはバリアントである。本発明の特定の実施形態におい
て、本明細書で説明される、特許請求の範囲のDNA分子及びその任意のバリアントまた
は誘導体はさらに、プロモーター活性を含むものとして定義され、すなわち、トランスジ
ェニック植物などの宿主細胞内でプロモーターとして作用し得る。なおさらなる特定の実
施形態において、フラグメントは、それが由来する開始プロモーター分子が有するプロモ
ーター活性を示すものとして定義される場合もあれば、フラグメントは、基礎レベルの転
写をもたらし、転写開始するためにRNAポリメラーゼII複合体が認識及び結合するた
めのTATAボックスまたは同等のDNA配列から構成された「最小プロモーター」を含
む場合もある。
【0042】
1つの実施形態において、本明細書で開示されるEXP配列またはプロモーター配列の
フラグメントが提供される。プロモーターフラグメントは、上記のようなプロモーター活
性を含み得、また、単独で、または(例えば、キメラプロモーターを構築する際の)他の
プロモーター及びプロモーターフラグメントとの組合せで、または他の発現エレメント及
び発現エレメントのフラグメントとの組合せで有用であり得る。特定の実施形態において
、少なくとも約50、少なくとも約75、少なくとも約95、少なくとも約100、少な
くとも約125、少なくとも約150、少なくとも約175、少なくとも約200、少な
くとも約225、少なくとも約250、少なくとも約275、少なくとも約300、少な
くとも約350、少なくとも約400、少なくとも約450、少なくとも約500、少な
くとも約550、少なくとも約600、少なくとも約650、少なくとも約700、少な
くとも約750、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、少
なくとも約1100、少なくとも約1200、少なくとも約1300、少なくとも約14
00、少なくとも約1500、少なくとも約1600、少なくとも約1700、少なくと
も約1800、少なくとも約1900、または少なくとも約2000の連続したヌクレオ
チド、またはそれ以上の、本明細書で開示されるプロモーター活性を有するDNA分子を
含む、プロモーターのフラグメントが提供される。出発プロモーター分子からこのような
フラグメントを産生するための方法は、当該技術分野で周知である。
【0043】
配列番号7として提供されるプロモーター、または配列番号18に含まれる(例えば、
内部もしくは5’欠失)プロモーターに由来する組成物は、例えば、発現を改善または改
変するために、当該技術分野で公知の方法を用いて、発現に正もしくは負いずれかの効果
を及ぼすエレメントの除去、発現に正もしくは負の効果を及ぼすエレメントの重複、及び
/または発現に組織特異的もしくは細胞特異的な効果を及ぼすエレメントの重複もしくは
除去を含む方法を用いて、産生され得る。配列番号7として提供されるプロモーター、ま
たは配列番号18に含まれるプロモーター(TATAボックスエレメントもしくはその同
等の配列及び下流配列が除去されている3’欠失から構成された)に由来する組成物を使
用して、例えば、エンハンサーエレメントを作製してもよい。さらなる欠失を行って、発
現に正または負の組織特異的、細胞特異的、または時間特異的な(例えば、限定されるも
のではないが、概日リズム)効果を及ぼすエレメントを除去してもよい。配列番号7で提
供されるプロモーター、または配列番号18に含まれるプロモーター、ならびにこれらに
由来するフラグメントもしくはエンハンサーを使用して、キメラ転写調節エレメント組成
物を作製してもよい。
【0044】
本発明によれば、プロモーターまたはプロモーターフラグメントは、公知のプロモータ
ーエレメント、すなわち、TATAボックス及び他の公知の転写因子結合部位モチーフな
どのDNA配列特徴の存在について解析され得る。このような公知のプロモーターエレメ
ントの識別情報は、当業者により、元のプロモーターと同様の発現パターンを有するプロ
モーターのバリアントを設計するために使用され得る。
【0045】
本明細書で使用する場合、「リーダー」という用語は、遺伝子の非翻訳5’領域(5’
UTR)から単離され、転写開始部位(TSS)とタンパク質コード配列開始部位との間
のヌクレオチドセグメントとして一般に定義されるDNA分子を指す。代替的に、リーダ
ーは、合成的に産生または操作されたDNAエレメントであってもよい。リーダーは、作
動可能に連結されている転写可能なDNA分子の発現を調整するための5’調節エレメン
トとして使用され得る。リーダー分子は、異種のプロモーターまたはそのネイティブプロ
モーターと共に使用してもよい。本発明を実施するのに有用なリーダーは、配列番号8と
して提供され、このリーダーは、配列番号18内に含まれる。特定の実施形態において、
このようなDNA配列は、宿主細胞(例えば、トランスジェニック植物細胞を含む)内で
リーダーとして作用し得ると定義され得る。1つの実施形態において、このような配列は
、リーダー活性を含むものとしてデコードされる。
【0046】
配列番号8として提示されるリーダー配列(5’UTRとも称される)、または配列番
号18に含まれるリーダーは、調節エレメントから構成される場合もあれば、または作動
可能に連結された転写可能なDNA分子の転写もしくは翻訳に効果を及ぼし得る二次構造
を採用する場合もある。配列番号8として提示されるリーダー配列、または配列番号18
に含まれるこのリーダーを本発明に従って使用して、作動可能に連結された転写可能なD
NA分子の転写または翻訳に影響を与えるキメラ調節エレメントを作製してもよい。
【0047】
本明細書で使用する場合、「イントロン」という用語は、遺伝子から単離または同定さ
れ得、翻訳前のメッセンジャーRNA(mRNA)プロセシング中にスプライシング除去
された領域として一般に定義され得る、DNA分子を指す。代替的に、イントロンは、合
成的に生成または操作されたDNAエレメントであってもよい。イントロンは、作動可能
に連結された遺伝子の転写をもたらすエンハンサーエレメントを含んでもよい。イントロ
ンは、作動可能に連結された転写可能なDNA分子の発現を調整するための調節エレメン
トとして使用することができる。構築物はイントロンを含むことができ、このイントロン
は、転写可能なDNA分子に対し異種であってもなくてもよい。当該技術分野におけるイ
ントロンの例としては、イネのアクチンイントロン及びトウモロコシHSP70イントロ
ンが挙げられる。
【0048】
植物において、遺伝子構築物にいくつかのイントロンを含めると、イントロンを含まな
い構築物に比べて、mRNA及びタンパク質の蓄積が増加する。この効果は、遺伝子発現
の「イントロン媒介増強」(IME)と称されている。植物内の発現を刺激することが公
知のイントロンは、トウモロコシ遺伝子(例えば、tubA1、Adh1、Sh1、及び
Ubi1)、イネ遺伝子(例えば、tpi)、ならびにペチュニア(例えば、rbcS)
、ジャガイモ(例えば、st-ls1)由来、及びArabidopsis thali
ana(例えば、ubq3及びpat1)由来の遺伝子のような双子葉植物遺伝子で同定
されている。イントロンのスプライス部位内の欠失または変異によって遺伝子発現が低減
することが示されており、このことは、IMEにはスプライシングが必要であり得ること
を示すものである。ただし、双子葉植物におけるIMEは、A.thalianaのpa
t1遺伝子のスプライス部位内の点変異によって示されている。1つの植物における同じ
イントロンの複数回使用は、デメリットを呈することが示されている。このような場合、
適切な組換えDNAエレメントを構築するための基本的な制御エレメントの集合を有する
ことが必要になる。本発明を実施する上で有用な例示的なイントロンは、配列番号9、及
び配列決定18内に含まれるリーダーとして提示されている。
【0049】
1つの実施形態において、本明細書で開示されるイントロン配列のフラグメントが提供
される。イントロンフラグメントは、上記のようにイントロン活性を含み得、そして単独
で、または他の発現エレメント及び発現エレメントのフラグメントと組み合わせて有用で
あり得る。特定の実施形態において、少なくとも約50、少なくとも約75、少なくとも
約95、少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、少なくとも約
175、少なくとも約200、少なくとも約225、少なくとも約250、少なくとも約
275、少なくとも約300、少なくとも約350、少なくとも約400、少なくとも約
450、少なくとも約500、少なくとも約550、少なくとも約600、少なくとも約
650、少なくとも約700、少なくとも約750、少なくとも約800、少なくとも約
900、少なくとも約1000、少なくとも約1100、少なくとも約1200、少なく
とも約1300、少なくとも約1400、少なくとも約1500、少なくとも約1600
、少なくとも約1700、少なくとも約1800、少なくとも約1900、または少なく
とも約2000の連続したヌクレオチド、またはそれ以上の、本明細書で開示されるイン
トロン活性を有するDNA分子を含む、イントロンのフラグメントが提供される。出発イ
ントロン分子からこのようなフラグメントを産生するための方法は、当該技術分野で周知
である。
【0050】
本明細書で使用する場合、「3’転写終結分子」、「3’非翻訳領域」、または「3’
UTR」という用語は、mRNA分子の3’部分の非翻訳領域への転写の間に使用される
DNA分子を指す。mRNA分子の3’非翻訳領域は、特異的切断及び3’ポリアデニル
化(ポリAテールとしても公知)によって生成され得る。3’UTRは、転写可能なDN
A分子に作動可能に連結され、その下流に位置し得、転写、mRNAプロセシング、また
は遺伝子発現に影響を及ぼし得るポリアデニル化シグナル及びその他の調節シグナルを含
んでもよい。ポリAテールは、mRNAの安定性及び翻訳の開始において機能すると考え
られている。当該技術分野における3’転写終結分子の例は、ノパリンシンターゼ3’領
域、コムギhsp17 3’領域、エンドウルビスコ小サブユニット3’領域、ワタE6
3’領域、及びコイクシン(coixin)3’UTRである。
【0051】
3’UTRは、典型的には、特定のDNA分子の組換え発現に有益な用途が見出される
。弱い3’UTRはリードスルーを生じる可能性を有し、このリードスルーにより、隣接
する発現カセット内にあるDNA分子の発現に影響が及ぶ恐れがある。転写終結を適切に
制御することにより、下流に局在するDNA配列(例えば、他の発現カセット)へのリー
ドスルーを防止し、さらに、遺伝子発現を改善するためのRNAポリメラーゼの効率的な
リサイクルを可能にし得る。効率的な転写終結(DNAからのRNAポリメラーゼIIの
遊離)は、転写の再開の前提条件であり、これによって全体的な転写レベルに直接影響が
及ぶ。転写終結に続いて、成熟mRNAが合成部位から遊離され、鋳型が細胞質に輸送さ
れる。真核生物のmRNAは、in vivoでポリ(A)形態として蓄積され、従来の
方法で転写終結部位を検出することが困難になる。
【0052】
3’UTRを通じた遺伝子機能の調節は、比較的新しい分野であるのは、最近の配列決
定技術だけが、種及び細胞タイプ全体にわたる3’UTRの全体像を提供してくれたから
である。配列決定技術が利用可能になる前は、詳細な機能的及び機構的研究は、いくつか
のモデル3’UTRでしか実行されなかった。これらのモデル3’UTRは、3’UTR
生物学の理解に大きく貢献しているが、それらの調節機能について導き出された結論は限
られており、mRNAの安定性に重点が置かれた。(Mayr,Christine(2
017)Regulation by 3’-Untranslated Region
s.Annual Review of Genetics,51:171-194)ゲ
ノム全体のインシリコ分析により、3’UTRのモチーフは主に、転写後レベルで遺伝子
発現を調節するように作用する3’UTRと一致する、1本の鎖に保存されていることが
明らかになった(Xie,X.et.al.,(2005)Systematic di
scovery of regulatory motifs in human pr
omoters and 3’ UTRs by comparison of sev
eral mammals,Nature 434:338-345)。3’UTRは、
主にAUに富むエレメント及びmiRNAによって媒介されるmRNAの安定性及び翻訳
の調節を通じてタンパク質レベルを決定する。3’UTRはまた、mRNA局在化の調節
を通じて局所翻訳も可能にする。3’UTRの長さは、代替の切断及びポリアデニル化に
よって調節され得る。3’UTRは、タンパク質間相互作用(PPI)を媒介し、これは
、タンパク質複合体の形成、タンパク質の局在化、及びタンパク質の機能に広範な影響を
及ぼす。3’UTRは、RNA結合タンパク質(RBP)の結合を通じて遺伝子発現を調
節する。RBPは3’UTR cis-エレメントに結合し、エフェクタータンパク質の
動員を通じて3’UTR機能を媒介する。RBPは、in vivoで機能的な特異性を
可能にするために、他の結合したRBPと協力する。特定の瞬間に3’UTRに結合する
RBPの組成は動的であり、例えば、翻訳後修飾の追加、他のRBPの局所発現、ならび
に膜及び細胞骨格フィラメントとの相互作用など、局所環境に応じて変化し得る。RBP
結合はまた、3’UTRのアクセス可能性を調節する二次及び三次RNA構造形成によっ
ても影響を受ける(Mayr,Christine(2017)Regulation
by 3’-Untranslated Regions.Annual Review
of Genetics,51:171-194)。
【0053】
ポリ(A)テールは、RNA分子の3’末端に対する一連のアデノシン塩基の付加の結
果である。これにより、mRNAの輸出、安定性及び崩壊、ならびに翻訳など、遺伝子発
現の調節に役割を果たすポリ(A)結合タンパク質(PABP)と呼ばれる調節因子のク
ラスの結合部位がmRNAに提供される。mRNAの5’キャップ構造及びポリAテール
は、相乗的に機能してmRNAの翻訳を制御する。PABPとポリ(A)テールとの結合
は、5’キャップ構造に結合したeIF4Fとの相互作用を促進し、結果として翻訳開始
を促進し、リボソームのリサイクル及び効率的な翻訳を保証するmRNAの環状化を生じ
る。この相互作用によりまた、3’UTRに結合した阻害剤タンパク質による翻訳の阻害
も可能になる(Barret,L et.al.(2012)Regulation o
f eukaryotic gene expression by the untr
anslated regions and other non-coding el
ements.Cell.Mol.Life Sci.69:3613-3634)。
【0054】
実際的な観点から、典型的には、発現カセットで使用される3’UTRが以下の特徴を
有することは有益である。第1に、3’UTRは、導入遺伝子の転写を効率的かつ有効に
終結し得るべきであり、かつ、1つの転移DNA(T-DNA)内に存在する複数の発現
カセットの場合のように別の発現カセットから構成され得る、任意の隣接するDNA配列
、またはT-DNAを挿入した隣接する染色体DNAへの転写物のリードスルーを防止し
得るべきである。第2に、3’UTRは、DNA分子の発現を駆動するために使用される
プロモーター、リーダー、エンハンサー、及びイントロンが付与する転写活性の低減を(
これが望ましい転帰でない限り)引き起こすべきではない。以下の実施例では、同じエン
ハンサー、プロモーター、リーダー、及びイントロン配列を使用して発現を駆動すること
を示すデータが提供されており、配列番号1~5として示される3’UTRは、発現を互
いに示差的に調節し、タンパク質発現に対して組織特異的な効果を示す。最後に、植物の
バイオテクノロジーにおいて、3’UTRは、形質転換植物から抽出された逆転写RNA
の増幅反応のプライミングに使用されることが多く、そして、(1)植物染色体に一旦組
み込まれた発現カセットの転写活性または発現を評価すること、(2)植物DNA内の挿
入物のコピー数を評価すること、及び(3)育種後に得られた種子の接合性を評価するこ
とに使用される。また、3’UTRは、挿入されたカセットのインタクト性を特徴付ける
ために、形質転換植物から抽出されたDNAの増幅反応にも使用される。本発明を実施す
る上で有用な3’UTRは、配列番号1~5、及び12~13として提示されている。
【0055】
一実施形態では、本明細書に開示される3’UTR配列のフラグメントが提供される。
3’UTRフラグメントは、上記のように3’UTR活性を含んでもよく、そして単独で
、または他の発現エレメント及び発現エレメントのフラグメントと組み合わせて有用であ
り得る。特定の実施形態において、少なくとも約50、少なくとも約75、少なくとも約
95、少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、少なくとも約1
75、少なくとも約200、少なくとも約225、少なくとも約250、少なくとも約2
75、少なくとも約300、少なくとも約350、少なくとも約400、少なくとも約4
50、少なくとも約500、少なくとも約550、少なくとも約600、または少なくと
も約650、またはそれ以上の、本明細書で開示される3’UTR活性を有するDNA分
子を含む、3’UTRのフラグメントが提供される。出発3’UTR分子からこのような
フラグメントを産生するための方法は、当該技術分野で周知である。
【0056】
本明細書で使用する場合、「エンハンサー」または「エンハンサーエレメント」という
用語は、cis作用性調節エレメント(別名cis-エレメント)を意味し、これは、作
動可能に連結された転写可能なDNA分子の全体的発現パターン(ただし通常、単独では
転写の駆動に不十分である)の一態様をもたらす。プロモーターとは異なり、通常、エン
ハンサーエレメントには、転写開始部位(TSS)もしくはTATAボックス、または同
等のDNA配列は含まれていない。プロモーターまたはプロモーターフラグメントは、天
然に、作動可能に連結されたDNA配列の転写に影響を及ぼす1つ以上のエンハンサーエ
レメントを含んでもよい。また、エンハンサーエレメントをプロモーターと融合させて、
キメラプロモーターcis-エレメントを産生してもよく、これにより遺伝子発現の全体
的調整の一態様がもたらされる。
【0057】
多くのプロモーターエンハンサーエレメントは、DNA結合タンパク質に結合するか、
及び/またはDNAトポロジーに影響を及ぼして、RNAポリメラーゼのDNA鋳型への
アクセスを選択的に許可もしくは制限する局所的立体構造、または転写開始部位での二重
らせんの選択的開放を促進する局所的立体構造を生成すると考えられている。エンハンサ
ーエレメントは、転写を調節する転写因子に結合するように機能し得る。いくつかのエン
ハンサーエレメントは2つ以上の転写因子に結合し、転写因子は、異なる親和性で2つ以
上のエンハンサードメインと相互作用し得る。エンハンサーエレメントの同定は、欠失解
析(すなわち、プロモーターに対する5’末端もしくは内部から1つ以上のヌクレオチド
を欠失させる)や、DNaseIフットプリンティングを用いたDNA結合タンパク質解
析、メチル化干渉、電気泳動移動度シフトアッセイ、ライゲーション媒介ポリメラーゼ連
鎖反応(PCR)によるin vivoゲノムフットプリンティング、及びその他の従来
的なアッセイを含めた複数の技法によって行っても、または、BLASTなどの従来のD
NA配列比較法と共に標的配列もしくは標的モチーフとして、公知のsis-エレメント
モチーフもしくはエンハンサーエレメントを用いたDNA配列類似性解析によって行って
もよい。エンハンサードメインの微細構造は、1つ以上のヌクレオチドの変異誘発(もし
くは置換)により、または当該技術分野で公知の他の従来的な方法により、さらに研究さ
れ得る。エンハンサーエレメントは、化学合成により、またはこのようなエレメントを含
む調節エレメントからの単離により得ることができ、これらは、部分配列の操作を容易に
するための有用な制限酵素部位を含む追加の隣接ヌクレオチドと共に合成され得る。した
がって、作動可能に連結された転写可能なDNA分子の発現を調整するための、本明細書
で開示される方法に従ったエンハンサーエレメントの設計、構築、及び使用は、本発明に
包含される。本発明を実施するのに有用なエンハンサーは、配列番号10、14、及び1
5として提供される。
【0058】
1つの実施形態において、本明細書で開示されるエンハンサー配列のフラグメントが提
供される。エンハンサーフラグメントは、上記のようにエンハンサー活性を含んでもよく
、そして単独で、または他の発現エレメント及び発現エレメントのフラグメントと組み合
わせて有用であり得る。特定の実施形態において、少なくとも約50、少なくとも約75
、少なくとも約95、少なくとも約100、少なくとも約125、少なくとも約150、
少なくとも約175、少なくとも約200、少なくとも約225、少なくとも約250、
少なくとも約275、少なくとも約300、少なくとも約350、少なくとも約400、
または少なくとも約450、またはそれ以上の、本明細書で開示されるエンハンサー活性
を有するDNA分子を含む、エンハンサーのフラグメントが提供される。出発エンハンサ
ー分子からこのようなフラグメントを産生するための方法は、当該技術分野で周知である
【0059】
本明細書で使用する場合、「キメラ」という用語は、第1のDNA分子を第2のDNA
分子と融合させることによって産生される単一のDNA分子を指し、第1のDNA分子も
第2のDNA分子も、通常はこの構成(すなわち、他方と融合した構成)では見出されな
い。したがって、キメラDNA分子は、他の方法では通常は自然界に見出されない新規の
DNA分子である。本明細書で使用する場合、「キメラプロモーター」という用語は、こ
のようなDNA分子の操作によって産生されたプロモーターを指す。「キメラエンハンサ
ー」とは、DNA分子の操作によって生成されるエンハンサーを指す。「キメライントロ
ン」とは、DNA分子の操作によって生成されるイントロンを指す。「キメラ3’UTR
」とは、DNA分子の操作によって生成される3’UTRを指す。キメラプロモーター、
エンハンサー、イントロンまたは3’UTRは、2つ以上のDNAフラグメントを組み合
わせてもよい(例えば、プロモーターのエンハンサーエレメントに対する融合)。したが
って、作動可能に連結された転写可能なDNA分子の発現を調整するための、本明細書で
開示される方法に従ったキメラプロモーター、エンハンサー、イントロンまたは3’UT
Rの設計、構築、及び使用は、本発明に包含される。
【0060】
キメラ調節エレメントは、当該技術分野で公知の様々な方法、例えば、制限酵素消化及
びライゲーション、ライゲーション非依存的クローニング、増幅中のPCR産物のモジュ
ラーアセンブリ、または調節エレメントの直接化学合成、ならびに当該技術分野で公知の
その他の方法によって、作動可能に連結され得る様々な構成エレメントを含むように設計
され得る。得られる様々なキメラ調節エレメントは、同じ構成エレメントまたは同じ構成
エレメントのバリアントから構成されてもよいが、構成部分が作動可能に連結するのを可
能にする連結DNA配列(複数可)を含むDNA配列(複数可)が異なる。本発明におい
て、配列番号2~8、12~14及び16~19として提供されるDNA配列は、調節エ
レメント参照配列を提供する場合があり、このとき、参照配列を構成する構成エレメント
は、当該技術分野で公知の方法によって連結されてもよく、また、細菌及び植物細胞の形
質転換で天然に生じる1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失、及び/または挿入、あるい
は変異を含んでもよい。
【0061】
本明細書で使用する場合、「バリアント」という用語は、組成が第1のDNA分子と類
似しているが同一ではない第2のDNA分子、例えば、調節エレメントを指し、このとき
、第2のDNA分子は、例えば、第1のDNA分子とおおよそ同等の転写活性によって、
そのDNA分子の一般的な機能性、すなわち、同じまたは同様の発現パターンを依然とし
て維持する。バリアントは、第1のDNA分子のより短いもしくは短縮バージョン、また
は第1のDNA分子の配列の改変バージョン、例えば、制限酵素部位が異なるか、及び/
または内部の欠失、置換、もしくは挿入を有するバージョンであり得る。また、「バリア
ント」は、参照配列の1つ以上のヌクレオチドの置換、欠失、または挿入を含むヌクレオ
チド配列を有する調節エレメントも包含し得、このとき、誘導体調節エレメントは、対応
する親調節分子よりも大きいかもしくは小さいかまたは同等の転写もしくは翻訳活性を有
する。また、調節エレメント「バリアント」は、細菌及び植物細胞の形質転換で天然に生
じる変異から生じるバリアントも包含する。本発明において、配列番号2~8、12~1
4及び16~19として提供されるポリヌクレオチド配列を使用して、元の調節エレメン
トのDNA配列と組成が類似するが同一ではなく、一方で元の調節エレメントの一般的な
機能性、すなわち、同じまたは同様の発現パターンを依然として維持する、バリアントを
創出し得る。本発明のこのようなバリアントの産生は、本開示に照らして当業者の通常の
技量範囲内であり、本発明の範囲内に包含される。
【0062】
本明細書で説明される修飾、重複、または欠失における、特定の導入遺伝子の所望の発
現態様に対する有効性は、安定した一過性の植物アッセイ、例えば、本明細書の作業実施
例で説明されるアッセイで、経験的に試験して結果を検証し得、この結果は、出発DNA
分子に行う変更、及び変更の目的に応じて異なり得る。
【0063】
構築物
本明細書で使用する場合、「構築物」という用語は、任意の供給源に由来し、ゲノム統
合または自己複製が可能であり、少なくとも1つのDNA分子が別のDNA分子と機能的
に作動する方式で連結された、すなわち作動可能に連結されたDNA分子を含む、任意の
組換えDNA分子、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス、ファージ、または線状も
しくは環状のDNAもしくはRNA分子を意味する。本明細書で使用する場合、「ベクタ
ー」という用語は、形質転換、すなわち、宿主細胞内に異種のDNAまたはRNAを導入
する目的で使用することができる任意の構築物を意味する。構築物は、典型的には、1つ
以上の発現カセットを含む。本明細書で使用する場合、「発現カセット」とは、1つ以上
の調節エレメント、典型的には少なくともプロモーター及び3’UTRと作動可能に連結
された、少なくとも1つの転写可能なDNA分子を含むDNA分子を指す。
【0064】
本明細書で使用する場合、「作動可能に連結された」という用語は、第1のDNA分子
が第2のDNA分子と連結し、この第1のDNA分子が第2のDNA分子の機能に影響を
及ぼすようにこの第1及び第2のDNA分子が配置されていることを指す。2つのDNA
分子は、単一の連続したDNA分子の一部である場合もそうでない場合もあり、隣接する
場合もそうでない場合もある。例えば、プロモーターが細胞内の目的の転写可能なDNA
分子の転写を調整する場合、このプロモーターは転写可能なDNA分子と作動可能に連結
されている。例えば、リーダーは、DNA配列の転写または翻訳に影響を及ぼし得る、D
NA配列と作動可能に連結されている。
【0065】
本発明の構築物は、1つの実施形態において、A.tumefaciens細胞がもた
らす転移分子と共に、T-DNAの植物細胞のゲノム内への統合を可能にするT-DNA
を含む、Agrobacterium tumefaciensから単離されたTiプラ
スミドの右側境界(RBまたはAGRtu.RB)及び左側境界(LBまたはAGRtu
.LB)領域を有する二重腫瘍誘導(Ti)プラスミド境界構築物として提供され得る(
例えば、米国特許第6,603,061号を参照)。また、構築物は、細菌細胞における
複製機能及び抗生物質選択をもたらすプラスミド骨格DNAセグメント、例えば、ori
322などのEscherichia coli複製開始点、oriVまたはoriRi
などの広宿主域複製開始点、及びスペクチノマイシンもしくはストレプトマイシンに対す
る抵抗性を付与するTn7アミノグリコシドアデニルトランスフェラーゼ(aadA)を
コードするSpec/Strpなどの選択マーカー、またはゲンタミシン(Gm、Gen
t)選択マーカー遺伝子についてのコード領域も含んでもよい。植物形質転換については
、宿主細菌株は、多くの場合A.tumefaciens ABI、C58、またはLB
A4404であるが、植物形質転換の技術分野において当業者に公知のその他の株も、本
発明では機能し得る。
【0066】
転写可能なDNA分子が、タンパク質として翻訳及び発現される機能的mRNA分子に
転写されるような方式で、構築物を集成し細胞内に導入するための方法が、当該技術分野
で公知である。本発明の実施については、構築物及び宿主細胞を調製及び使用するための
従来的な組成物及び方法は、当業者に周知である。より高等な植物内での核酸の発現に有
用である典型的なベクターは当該技術分野で周知であり、これにはAgrobacter
ium tumefaciensのTiプラスミドに由来するベクター及びpCaMVC
N転移制御ベクターが含まれる。
【0067】
本明細書で提供される任意の調節エレメントを含めた様々な調節エレメントを構築物に
含んでもよい。任意のこのような調節エレメントは、他の調節エレメントと組み合わせて
提供され得る。このような組合せは、望ましい調節機能をもたらすように設計または修飾
され得る。1つの実施形態において、本発明の構築物は、3’UTRと作動可能に連結さ
れた転写可能なDNA分子と作動可能に連結された、少なくとも1つの調節エレメントを
含む。
【0068】
本発明の構築物は、本明細書で提供されるか、または当該技術分野で公知である任意の
プロモーターまたはリーダーを含んでもよい。例えば、本発明のプロモーターは、異種の
非翻訳5’リーダー(例えば、熱ショックタンパク質遺伝子に由来するもの)と作動可能
に連結されてもよい。代替的に、本発明のリーダーは、異種のプロモーター、例えば、カ
リフラワーモザイクウイルス35S転写物プロモーターと作動可能に連結され得る。
【0069】
発現カセットはまた、作動可能に連結されたタンパク質が、特に葉緑体、白色体、もし
くは他の色素体細胞小器官、ミトコンドリア、ペルオキシソーム、液胞、または細胞外の
位置に対し、細胞レベル以下で標的化するのに有用なペプチドをコードする、輸送ペプチ
ドコード配列も含んでもよい。多くの葉緑体局在化タンパク質は、核遺伝子から前駆体と
して発現され、葉緑体輸送ペプチド(CTP)によって葉緑体に標的化される。このよう
な単離された葉緑体タンパク質の例としては、限定されるものではないが、リブロース-
1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼの小サブユニット(SSU)、フェレドキシン、フ
ェレドキシンオキシドレダクターゼ、集光性複合タンパク質I及びタンパク質II、チオ
レドキシンF、ならびにエノールピルビルシキミ酸リン酸シンターゼ(EPSPS)に関
連するものが挙げられる。葉緑体輸送ペプチドは、例えば、米国特許第7,193,13
3号で説明されている。非葉緑体タンパク質は、非葉緑体タンパク質をコードする導入遺
伝子と作動可能に連結された異種CTPを発現させることにより、葉緑体を標的化させ得
ることが実証されている。
【0070】
転写可能なDNA分子
本明細書で使用する場合、「転写可能なDNA分子」という用語は、RNA分子への転
写が可能な任意のDNA分子を指し、これには、限定されるものではないが、タンパク質
コード配列を有するDNA分子、及び遺伝子抑制に有用な配列を有するRNA分子を産生
するDNA分子が挙げられる。DNA分子のタイプとしては、限定されるものではないが
、同じ植物からのDNA分子、別の植物からのDNA分子、異なる生物からのDNA分子
、あるいは合成DNA分子、例えば、遺伝子のアンチセンスメッセージを含むDNA分子
、または人工、合成、もしくは別の方法で修飾されたバージョンの導入遺伝子をコードす
るDNA分子を挙げることができる。本発明の構築物に組み込むための例示的な転写可能
なDNA分子としては、例えば、DNA分子を組み込む種以外の種由来のDNA分子もし
くは遺伝子、または同じ種から生じるか、もしくは同じ種に存在するが、古典的な育種技
法ではなく遺伝子工学の方法によってレシピエント細胞に組み込まれる遺伝子が挙げられ
る。
【0071】
「導入遺伝子」とは、少なくとも宿主細胞ゲノム内の位置に関して宿主細胞に対し異種
である転写可能なDNA分子、及び/または細胞の現行世代もしくは任意の過去の世代に
人工的に宿主細胞のゲノムに組み込まれた転写可能なDNA分子を指す。
【0072】
調節エレメント、例えば、本発明のプロモーター、エンハンサー、イントロンまたは3
’UTRは、調節エレメントに対し異種である転写可能なDNA分子と作動可能に連結さ
れていてもよい。本明細書で使用する場合、「異種」という用語は、2つ以上のDNA分
子の組合せであって、このような組み合わせが自然界で通常は見出されないときの組合せ
を指す。例えば、2つのDNA分子は異なる種に由来してもよく、及び/または2つのD
NA分子は異なる遺伝子に由来してもよい(例えば、同じ種由来の異なる遺伝子、または
異なる種由来の同じ遺伝子)。したがって、調節エレメントは、作動可能に連結された転
写可能なDNA分子に対して、このような組合せが自然界で通常は見出されない場合、す
なわち、転写可能なDNA分子が、調節エレメントと作動可能に連結して天然に生じない
場合、異種である。
【0073】
転写可能なDNA分子は、概して、転写物の発現が所望される任意のDNA分子であり
得る。このような転写物の発現により、結果として生じるmRNA分子の翻訳、したがっ
てタンパク質発現がもたらされ得る。代替的に、例えば、転写可能なDNA分子は、最終
的に、特定の遺伝子またはタンパク質の発現低下を引き起こすように設計され得る。1つ
の実施形態において、これは、アンチセンス方向に配向した転写可能なDNA分子を使用
することによって達成され得る。当業者は、このようなアンチセンス技術の使用に精通し
ている。この方式で任意の遺伝子を負に調節し得、1つの実施形態においては、転写可能
なDNA分子は、dsRNA、siRNAまたはmiRNA分子の発現を通じて特定の遺
伝子を抑制するように設計し得る。
【0074】
したがって、本発明の1つの実施形態は、構築物がトランスジェニック植物細胞のゲノ
ムに統合されたときに、転写可能なDNA分子の転写を所望のレベルまたは所望のパター
ンで調整するように異種の転写可能なDNA分子と作動可能に連結されている、配列番号
2~8、12~14及び16~19として提供されるものなど、本発明の調節エレメント
を含む組換えDNA分子である。1つの実施形態において、転写可能なDNA分子は遺伝
子のタンパク質コード領域を含み、別の実施形態において、転写可能なDNA分子は遺伝
子のアンチセンス領域を含む。
【0075】
農学的目的の遺伝子
転写可能なDNA分子は、農学的目的の遺伝子であり得る。本明細書で使用する場合、
「農学的目的の遺伝子」という用語は、特定の植物組織、細胞、または細胞タイプで発現
したときに、望ましい特性を付与する転写可能なDNA分子を指す。農学的目的の遺伝子
の産物は、植物の形態、生理学、成長、発達、収量、穀粒組成、栄養プロファイル、病害
もしくは害虫抵抗性、及び/または環境的もしくは化学的耐性に対する効果を引き起こす
ために植物内で作用する場合もあれば、植物を常食とする害虫の餌で殺虫剤として作用す
る場合もある。本発明の1つの実施形態において、本発明の調節エレメントは、この調節
エレメントが、農学的目的の遺伝子である転写可能なDNA分子と作動可能に連結するよ
うに、構築物内に組み込まれる。このような構築物を含むトランスジェニック植物におい
て、農学的目的の遺伝子の発現は、有益な農学的形質を付与し得る。有益な農学的形質と
しては、例えば、限定されるものではないが、除草剤耐性、昆虫防除、改変された収量、
疾患抵抗性、病原体抵抗性、改変された植物成長及び発達、改変されたデンプン含量、改
変された油含量、改変された脂肪酸含量、改変されたタンパク質含量、改変された果実成
熟、動物及びヒトの栄養強化、生体高分子産生、環境ストレス抵抗性、医薬品ペプチド、
加工品質の改善、風味の改善、ハイブリッド種子産生有用性、繊維産生の改善、ならびに
望ましいバイオ燃料産生を挙げることができる。
【0076】
当該技術分野で公知の農学的目的の遺伝子の例としては、除草剤抵抗性(米国特許第6
,803,501号;第6,448,476号;第6,248,876号;第6,225
,114号;第6,107,549号;第5,866,775号;第5,804,425
号;第5,633,435号;及び第5,463,175号)、収量増加(米国特許第U
SRE38,446号;第6,716,474号;第6,663,906号;第6,47
6,295号;第6,441,277号;第6,423,828号;第6,399,33
0号;第6,372,211号;第6,235,971号;第6,222,098号;及
び第5,716,837号)、昆虫防除(米国特許第6,809,078号;第6,71
3,063号;第6,686,452号;第6,657,046号;第6,645,49
7号;第6,642,030号;第6,639,054号;第6,620,988号;第
6,593,293号;第6,555,655号;第6,538,109号;第6,53
7,756号;第6,521,442号;第6,501,009号;第6,468,52
3号;第6,326,351号;第6,313,378号;第6,284,949号;第
6,281,016号;第6,248,536号;第6,242,241号;第6,22
1,649号;第6,177,615号;第6,156,573号;第6,153,81
4号;第6,110,464号;第6,093,695号;第6,063,756号;第
6,063,597号;第6,023,013号;第5,959,091号;第5,94
2,664号;第5,942,658号;5,880,275号;第5,763,245
号;及び第5,763,241号)、真菌病害抵抗性(米国特許第6,653,280号
;第6,573,361号;第6,506,962号;第6,316,407号;第6,
215,048号;第5,516,671号;第5,773,696号;第6,121,
436号;第6,316,407号;及び第6,506,962号)、ウイルス抵抗性(
米国特許第6,617,496号;第6,608,241号;第6,015,940号;
第6,013,864号;第5,850,023号;及び第5,304,730号)、線
虫抵抗性(米国特許第6,228,992号)、細菌病害抵抗性(米国特許第5,516
,671号)、植物成長及び発達(米国特許第6,723,897及び第6,518,4
88号)、デンプン産生(米国特許第6,538,181号;第6,538,179号;
第6,538,178号;第5,750,876号;及び第6,476,295号)、改
変された油産生(米国特許第6,444,876号;第6,426,447号;第6,3
80,462号)、高い油産生(米国特許第6,495,739号;第5,608,14
9号;第6,483,008号;第6,476,295号)、改変された脂肪酸含量(米
国特許第6,828,475号;第6,822,141号;第6,770,465号;第
6,706,950号;第6,660,849号;第6,596,538号;第6,58
9,767号;第6,537,750号;第6,489,461号;第6,459,01
8号)、高いタンパク質産生(米国特許第6,380,466号)、果実成熟(米国特許
第5,512,466号)、動物及びヒトの栄養強化(米国特許第6,723,837号
;第6,653,530号;第6,5412,59号;第5,985,605号;第6,
171,640号)、生体高分子(米国特許第USRE37,543号;第6,228,
623号;第5,958,745号、及び第6,946,588号)、環境ストレス抵抗
性(米国特許第6,072,103号)、医薬ペプチド及び分泌性ペプチド(米国特許第
6,812,379号;第6,774,283号;第6,140,075号;及び第6,
080,560号)、プロセシング形質の改善(米国特許第6,476,295号)、消
化率の改善(米国特許第6,531,648号)、低いラフィノース(米国特許第6,1
66,292号)、工業用酵素産生(米国特許第5,543,576号)、風味の改善(
米国特許第6,011,199号)、窒素固定(米国特許第5,229,114号)、ハ
イブリッド種子産生(米国特許第5,689,041号)、繊維産生(米国特許第6,5
76,818号;第6,271,443号;第5,981,834号;及び第5,869
,720号)、ならびにバイオ燃料産生(米国特許第5,998,700号)が挙げられ
る。
【0077】
代替的に、農学的目的の遺伝子は、内在的遺伝子の遺伝子発現の標的化された調整を引
き起こすRNA分子をコードすることにより、例えば、アンチセンス(例えば、米国特許
5,107,065号を参照)、阻害RNA(「RNAi」;例えば、米国特許出願公開
第2006/0200878及び同第2008/0066206、ならびに米国特許出願
第11/974,469号で説明されているように、miRNA、siRNA、トランス
作用siRNA、及びフェーズsRNAが媒介する機構による遺伝子発現の調整が含まれ
る)により、または共抑制が媒介する機構により、上記の植物の特性または表現型に影響
を及ぼし得る。また、RNAは、所望の内在的mRNA産物を切断するように操作された
触媒RNA分子(例えば、リボザイムまたはリボスイッチ;例えば、米国特許出願公開第
2006/0200878を参照)であってもよいと考えられる。転写可能なDNA分子
が遺伝子抑制を引き起こし得る分子に転写されるような方式で、構築物を構築し細胞内に
導入するための方法が、当該技術分野で公知である。
【0078】
選択マーカー
選択マーカー導入遺伝子を本発明の調節エレメントと共に使用してもよい。本明細書で
使用する場合、「選択マーカー導入遺伝子」という用語は、トランスジェニック植物、組
織、もしくは細胞内の発現、または発現の欠如が何らかの方法でスクリーニングまたはス
コアリングされ得る、任意の転写可能なDNA分子を指す。本発明を実施する上で使用す
るための選択マーカー遺伝子、ならびにその関連する選択及びスクリーニング技法は当該
技術分野で公知であり、これには、限定されるものではないが、β-グルクロニダーゼ(
GUS)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、抗生物質抵抗性を付与するタンパク質、及び
除草剤耐性を付与するタンパク質をコードする転写可能なDNA分子が挙げられる。選択
マーカー導入遺伝子の例は、配列番号11として提供される。
【0079】
細胞形質転換
本発明は、形質転換された細胞及び植物を産生する方法であって、転写可能なDNA分
子と作動可能に連結された1つ以上の調節エレメントを含む、方法も対象とする。
【0080】
「形質転換」という用語は、DNA分子をレシピエント宿主内に導入することを指す。
本明細書で使用する場合、「宿主」という用語は細菌、真菌、または植物を意味し、これ
には、任意の細胞、組織、器官、または細菌、真菌、もしくは植物の後代が含まれる。特
に目的となる植物組織及び細胞としては、プロトプラスト、カルス、根、塊茎、種子、茎
、葉、実生、胚、及び花粉が挙げられる。
【0081】
本明細書で使用する場合、「形質転換された」という用語は、外来DNA分子(例えば
、構築物)が導入された細胞、組織、器官、または生物体を指す。導入されたDNA分子
をレシピエント細胞、組織、器官、または生物体のゲノムDNAに組み込んで、導入され
たDNA分子が次の後代に受け継がれるようにしてもよい。「トランスジェニック」また
は「形質転換された」細胞または生物体としては、細胞または生物の後代、及び交配でこ
のようなトランスジェニック生物を親として用いた育種プログラムから産生され、外来D
NA分子の存在によって生じる表現型の改変を示す後代も含まれ得る。また、導入された
DNA分子をレシピエント細胞内に一過性に導入して、導入されたDNA分子が次の後代
に受け継がれないようにしてもよい。「トランスジェニック」という用語は、1つ以上の
異種のDNA分子を含む細菌、真菌、または植物を指す。
【0082】
DNA分子を植物細胞内に導入するための方法は多数存在し、当業者に周知である。こ
のプロセスは、概して、好適な宿主細胞を選択するステップと、宿主細胞をベクターで形
質転換するステップと、形質転換宿主細胞を得るステップとを含む。本発明を実施する上
で、植物構築物を植物ゲノム内に導入することにより植物細胞を形質転換するための方法
及び材料としては、任意の周知でありかつ実証された方法が含まれ得る。好適な方法とし
ては、限定されるものではないが、中でも細菌感染(例えば、Agrobacteriu
m)、バイナリーBACベクター、DNAの直接送達(例えば、PEG媒介の形質転換、
乾燥/阻害媒介のDNA取込み、エレクトロポレーション、炭化ケイ素繊維による撹拌、
及びDNAコーティング粒子の加速)、遺伝子編集(例えば、CRISPR-Casシス
テム)が挙げられる。
【0083】
宿主細胞は、任意の細胞または生物、例えば、植物細胞、藻類細胞、藻類、真菌細胞、
真菌、細菌細胞、または昆虫細胞であってもよい。特定の実施形態において、宿主細胞及
び形質転換細胞としては、作物植物からの細胞が含まれ得る。
【0084】
トランスジェニック植物は、その後、本発明のトランスジェニック植物細胞から再生さ
れ得る。従来の育種技法または自家受粉を用いて、このトランスジェニック植物から種子
が産生され得る。このような種子、及びこのような種子から成長した結果生じる後代植物
は、本発明の組換えDNA分子を含み、そのためトランスジェニックとなる。
【0085】
本発明のトランスジェニック植物は、自家受粉して(組換えDNA分子に対してホモ接
合性の)本発明のホモ接合性トランスジェニック植物の種子を提供し得るか、または非ト
ランスジェニック植物もしくは異なるトランスジェニック植物と交配して、(組換えDN
A分子に対しヘテロ接合性の)本発明のヘテロ接合性トランスジェニック植物の種子を提
供し得る。このようなホモ接合性及びヘテロ接合性のトランスジェニック植物は共に、本
明細書では「後代植物」と称される。後代植物とは、元のトランスジェニック植物に由来
し本発明の組換えDNA分子を含むトランスジェニック植物である。本発明のトランスジ
ェニック植物を用いて産生した種子を、収穫し、本発明の構築物を含みかつ農学的目的の
遺伝子を発現するトランスジェニック植物、すなわち本発明の後代植物の世代を成長させ
るために使用してもよい。種々の作物に一般に使用されている育種の方法についての説明
は、いくつかの参考文献の1つから見出すことができる。例えば、Allard,Pri
nciples of Plant Breeding,John Wiley & S
ons,NY,U.of CA,Davis,CA,50-98(1960);Simm
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man,Inc.,NY,369-399(1979);Sneep and Hend
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ingen(ed),Center for Agricultural Publis
hing and Documentation(1979);Fehr,Soybea
ns:Improvement,Production and Uses,2nd E
dition,Monograph,16:249(1987);Fehr,Princ
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Technique,(Vol.1)and Crop Species Soybea
n(Vol.2),Iowa State Univ.,Macmillan Pub.
Co.,NY,360-376(1987)を参照のこと。
【0086】
形質転換植物は、目的の遺伝子(複数可)の存在、ならびに本発明の調節エレメントが
付与する発現レベル及び/またはプロファイルについて解析され得る。当業者は、形質転
換植物の解析に利用できる多数の方法を認識している。例えば、植物解析の方法としては
、限定されるものではないが、サザンブロットまたはノーザンブロット、PCRベースの
アプローチ、生化学的解析、表現型スクリーニング法、現地評価、及び免疫診断アッセイ
が挙げられる。転写可能なDNA分子の発現は、TaqMan(登録商標)(Appli
ed Biosystems(Foster City,CA))の試薬及び製造業者が
説明する方法、ならびにTaqMan(登録商標)Testing Matrixを用い
て決定したPCRサイクル時間を用いて測定され得る。代替的に、Invader(登録
商標)(Third Wave Technologies(Madison,WI))
の試薬及び製造業者が説明する方法を使用して、導入遺伝子の発現を評価してもよい。
【0087】
本発明はまた、本発明の植物の部位も提供する。植物の部位としては、限定されるもの
ではないが、葉、茎、根、塊茎、種子、胚乳、胚珠、及び花粉が挙げられる。本発明の植
物の部位は、生存可能、生存不能、再生可能、及び/または再生不可能であり得る。また
、本発明は、本発明のDNA分子を含む形質転換植物細胞も含み、これを提供する。本発
明の形質転換またはトランスジェニック植物細胞としては、再生可能及び/または再生不
可能な植物細胞が含まれる。
【0088】
また、本発明は、本発明の組換えDNA分子を含むトランスジェニック植物またはその
一部から産生される商品生産物も提供する。本発明の商品生産物は、配列番号2~8、1
2~14及び16~19からなる群より選択されるDNA配列を含む、ある検出可能量の
DNAを含む。本明細書で使用する場合、「商品生産物」とは、本発明の組換えDNA分
子を含むトランスジェニック植物、種子、植物細胞、または植物の部位に由来する材料か
ら構成される任意の組成物または産物を指す。商品生産物としては、限定されるものでは
ないが、加工された種子、穀物、植物の部位、及び粗粉が挙げられる。本発明の商品生産
物は、本発明の組換えDNA分子に対応する、ある検出可能量のDNAを含むことになる
。商品生産物の含量または供給源を決定するために、試料中での1つ以上のこのDNAの
検出を使用してもよい。本明細書で開示される検出方法を含めて、任意の標準的なDNA
分子の検出方法を使用してもよい。
【0089】
本発明は、以下の実施例を参照することによって、より容易に理解され得、この実施例
は、明記されない限り、例示として示されるものであり、本発明を限定するとは意図され
ていない。当業者は、以下の実施例で開示される技法が、発明者によって発見された、本
発明を実施する上で十分に機能するための技法に相当することを、理解するはずである。
ただし、当業者は、本開示に照らして、開示される特定の実施形態に多くの変更を行って
もよく、それでもなお、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、類似のまたは同様
の結果が得られることを理解するはずであり、そのため、示された全ての内容は例示的な
ものとして解釈するものとし、限定的な意味では解釈しないものとする。
【実施例0090】
実施例1
調節エレメントの同定及びクローニング
新規の転写調節エレメント及び調節発現エレメント群(EXP)を同定し、いくつかの
単子葉植物種のゲノムDNAからクローニングした。
【0091】
新規の3つの主要な非翻訳領域(3’UTR)配列を、いくつかの単子葉植物種の独自
の配列で同定した。以下の表1は、様々な3’UTR及びそれらが由来する単子葉植物の
種を示している。3’UTR、T-SETit.Ams1:1(配列番号1)は、米国特
許出願US20130031672で 配列番号270として以前に提示されている。
【0092】
さらに、Zea maysのゲノムDNAから単離されたプロモーター(P-Zm.L
tp-1:1:2)及びリーダー(L-Zm.Ltp-1:1:3)、ならびにSeta
ria italicのゲノムDNAから単離されたイントロンを含むEXP配列を作成
して、クローニングした。EXP、EXP-Zm.LTP-SETit.Act4(配列
番号6)は、5’UTRの5’に作動可能に連結されているプロモーターであるP-Zm
.Ltp-1:1:2(配列番号7)、イントロンの5’に作動可能に連結されているL
-Zm.Ltp-1:1:3(配列番号8)、I-SETit.Act4:2(配列番号
9;以前は米国特許出願US20130031672の配列番号627として提示)から
構成される。
【0093】
これらの3’UTR及びEXP-Zm.LTP-SETit.Act4は、当該技術分
野で公知の方法を使用して、バイナリー植物形質転換ベクターにクローニングされた。
【0094】
実施例2
3’UTRの分析、及び安定的に形質転換されたトウモロコシ植物における導入遺伝子
の発現に対するそれらの影響
トウモロコシ植物をベクター、具体的には、β-グルクロニダーゼ(GUS)導入遺伝
子の発現を駆動する転写調節エレメント及び実施例1に提示された七(7)つの3’UT
R調節エレメントのそれぞれの1つを含む植物発現ベクターで形質転換した。発現に対す
る3’UTR調節エレメントの効果を評価するために、GUSタンパク質発現について、
得られた植物を分析した。
【0095】
トウモロコシ植物を植物GUS発現構築物で形質転換した。当該技術分野で公知である
方法を用いて、3’UTR調節エレメントをベースの植物発現ベクターにクローニングし
た。得られた植物発現ベクターは、Agrobacterium tumefacien
s由来の左側の境界領域と、除草剤グリホサートに対する抵抗性を付与する形質転換植物
細胞の選択に使用する第1の導入遺伝子選択カセットと、3’UTR調節エレメントの活
性を評価するための第2の導入遺伝子カセットであって、実施例1に示される七(7)つ
の3’UTR調節エレメントの各々のうちの1つに対して5’側で作動可能に連結された
、ジャガイモ光誘導性組織特異的ST-LS1遺伝子(Genbankアクセッション:
X04753)に由来するプロセシング可能なイントロンを含むβ-グルクロニダーゼを
コードする植物細胞内での発現用に設計された合成コード配列(GUS、GOI-Ec.
uidA+St.LS1.nno:1、配列番号11)に対して5’側に作動可能に連結
されたEXP,EXP-Zm.LTP-SETit.Act4(配列番号6)に対して5
’側に作動可能に連結された、逆相補性方向でカリフラワーモザイクウイルス35Sプロ
モーター由来のエンハンサー(E-CaMV.35S-RC、配列番号10)を含む第2
の導入遺伝子カセット、続いて、Agrobacterium tumefaciens
由来の右側境界領域を含んでいた。
【0096】
トウモロコシ変種01DKD2由来のトウモロコシ植物細胞を、当該技術分野で周知で
あるように、Agrobacterium媒介の形質転換により、これらのバイナリー形
質転換ベクター構築物を用いて形質転換した。得られた形質転換植物細胞を、全トウモロ
コシ植物を形成するように誘導した。
【0097】
組織化学的GUS分析は、形質転換植物の定性的及び定量的発現分析に使用した。組織
切片全体をGUS染色液X-Gluc(5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリル-b-
グルクロニド)(1ミリグラム/ミリリットル)と適切な時間インキュベートし、すすい
で、青色の着色を視覚的に検査した。GUSの活性は、直接の目視検査または選択した植
物器官及び組織を使用した顕微鏡下での検査によって定性的に決定した。
【0098】
GUS発現の定量的解析のために、形質転換したトウモロコシ植物の選択組織から全タ
ンパク質を抽出した。1マイクログラムの全タンパク質を、50マイクロリットルの総反
応体積中の蛍光発生基質4-メチルウンベリフェリル-β-D-グルクロニド(MUG)
と共に用いた。反応産物4-メチルウンベリフェロン(4-MU)は高pHで最大限に蛍
光性となり、このときヒドロキシル基がイオン化される。炭酸ナトリウムの塩基性溶液を
添加すると、同時に、アッセイが停止し、蛍光産物を定量化するためのpHが調整される
。蛍光は、FLUOstar(登録商標)オメガマイクロプレートリーダーを用い、36
5nmでの励起と445nmでの発光によって測定した。値は、全タンパク質1mgあた
り1時間あたりのGUSのnmol(nmol GUS/時間/mg)という単位で示す
【0099】
以下の組織を、R世代における実施例1で示される3’UTR調節エレメントのうち
五(5)つのGUS発現のために試料採取した:V4段階の葉及び根;V7段階の葉及び
根;VT段階の花/葯、葉、及び根;R1段階の穂軸/毛(silk);受粉から21日
後(DAP)のR3段階の種子胚及び種子胚乳。以下の表2及び3は、GUSの発現に対
する3’UTR調節エレメントのそれぞれの影響を示している。
【0100】
表2及び3に見られるように、各3’UTR調節エレメントは、同じエンハンサー/プ
ロモーター/イントロン構築物の組み合わせに作動可能に連結されている場合、サンプリ
ングされた各組織で独自に発現に影響を及ぼした。プロモーターP-Zm.Ltp-1:
1:2は、根で優先的に発現することが実験的に確認されている。エンハンサーE-Ca
MV.35S-RCを追加すると、構成的発現成分が追加される。3’UTR調節エレメ
ントのそれぞれが、エンハンサー/プロモーター/イントロン構築物の組み合わせによっ
て与えられる発現を調節する。例えば、3’UTR、T-SETit.Ams1:1は、
T-ERAte.Hsp17.9:1及びT-ANDge.Hsp/Sb.Hspと比較
して、構築物の根の発現を強化した。T-SETit.Ams1:1を使用した葉の発現
は、根の発現よりもはるかに低かった。T-Cl.Hsp16.9_2:1を使用した根
での発現は、T-SETit.Ams1:1を含むトウモロコシ植物と同様に高かったが
、葉の発現は、T-SETit.Ams1:1を含むトウモロコシ植物と比較した場合、
T-Cl.Hsp16.9_2:1を含む植物で高かった。根の発現は、V4段階でT-
ERIra.Hsp16.9_3:1を含むトウモロコシ植物で低かったが、V7からV
T段階まで徐々に増加した。VTの花及び葯、R1の穂軸及び毛、及び21 DAP胚に
関しては、他の4つの3’UTR調節エレメントと比較して、T-Cl.Hsp16.9
_2:1を含むトウモロコシ植物で発現が最も高かった。21 DAP胚乳での発現は、
他の4つの3’UTR調節エレメントと比較して、T-SETit.Ams1:1を含む
トウモロコシ植物で最も高かった。
【0101】
トウモロコシ植物はまた、実施例1に提示された3’UTR調節エレメントのうちの2
つ、T-SACra.Hsp16.9:2(配列番号12)及びT-Cl.Hsp16.
9:2(配列番号13)を含む上記のような植物GUS発現構築物で形質転換された。G
US発現は上記のように決定された。V2段階の葉及び根のみをサンプリングした。以下
の表4は、2つの3’UTR調節エレメントを含む構築物で安定的に形質転換されたトウ
モロコシ植物の平均GUS発現を示している。
【0102】
上記の表4に見られるように、T-SACra.Hsp16.9:2(配列番号12)
は、T-Cl.Hsp16.9:2(配列番号13)と比較した場合、根及び葉で全体的
に高レベルのGUS発現を示した。T-SACra.Hsp16.9:2に関して発現は
、葉よりも根で約6.3倍高かった。比較すると、T-Cl.Hsp16.9:2に関す
る根と葉の発現の比率は、T-SACra.Hsp16.9:2のそれよりも約4.2倍
低かった。
上記の七(7)つの3’UTR調節エレメントのそれぞれが、GUS導入遺伝子の発現を
調節して、様々な組織での遺伝子発現の独自のパターンを提供し得た。これらの固有の発
現パターンを使用して、目的の特定の導入遺伝子の発現を微調整して、特定の好ましい組
織での発現プロファイルを提供する一方で、他のあまり好ましくない組織での発現を減ら
してもよい。7つの3’UTR調節エレメントのそれぞれによって、トランスジェニック
植物の特定の形質を駆動するための大きな柔軟性が得られる。
【0103】
実施例3
安定的に形質転換されたトウモロコシ植物における導入遺伝子の発現に関するEXP-
Zm.LTP-SETit.Act4の分析
トウモロコシ植物をベクターで、具体的には、β-グルクロニダーゼ(GUS)導入遺
伝子の発現を駆動する転写調節エレメントを含む植物発現ベクターで、形質転換した。得
られた植物を、GUSタンパク質発現について分析して、EXP、EXP-Zm.LTP
-SETit.Act4(配列番号6)の発現特性を評価した。
【0104】
トウモロコシ植物を、植物GUS発現構築物で形質転換した。当該技術分野で公知の方
法を用いて、EXP,EXP-Zm.LTP-SETit.Act4(配列番号6)を、
ベースの植物発現ベクターにクローニングした。得られた植物発現ベクターは、Agro
bacterium tumefaciensからの左側の境界領域と、除草剤グリホサ
ートに対する抵抗性を付与する形質転換植物細胞の選択に使用する第1の導入遺伝子選択
カセットと、3’UTR調節エレメント T-SETit.Ams1:1に対して5’側
に作動可能に連結された β-グルクロニダーゼをコードする植物細胞中の発現のために
設計された合成コード配列(GUS、GOI-Ec.uidA+St.LS1.nno:
1)と5’側に作動可能に連結されたEXP,EXP-Zm.LTP-SETit.Ac
t4を含むEXP-Zm.LTP-SETit.Act4の活性を評価するための第2の
導入遺伝子カセットと、続いてAgrobacterium tumefaciens由
来の右側境界領域とを含んでいた。
【0105】
トウモロコシ変種01DKD2由来のトウモロコシ植物細胞を、当該技術分野で周知で
あるように、Agrobacterium媒介の形質転換により、上記のバイナリー形質
転換ベクター構築物を用いて形質転換した。得られた形質転換植物細胞を、トウモロコシ
植物全体を形成するように誘導した。GUS発現の定量的及び定性的測定は、V2段階の
葉及び根を使用して前の実施例で説明したように決定した。表5は、安定して形質転換さ
れたV2の葉及び根の平均GUS発現と、葉と比較した根のGUS発現の比率を示してい
る。
【0106】
表5に見られるように、EXP-Zm.LTP-SETit.Act4によって駆動さ
れるGUS発現は、葉よりも根ではるかに高い。根の発現は葉で測定された発現の三十五
(35)倍超である。この発現パターンは、地上での発現よりも根の発現がより好ましい
特定の導入遺伝子を駆動するのに有利であり得る。
【0107】
実施例4
エンハンサーの配向は、安定して形質転換されたトウモロコシ植物の根と葉との間の発
現の比率に影響を与える
この実施例は、異なる方向のダリアモザイクウイルスエンハンサーをプロモーターに作
動可能に連結し、葉及び根の導入遺伝子の相対的な発現を変化させることの影響を示して
いる。トウモロコシ植物は、エンハンサー配列を含む天然プロモーターに対して順方向ま
たは逆方向のエンハンサーを含むEXPを含む植物発現ベクターで形質転換された。得ら
れた植物を分析して、根及び葉におけるGUSタンパク質発現に対するエンハンサーの配
向の影響を決定した。
【0108】
トウモロコシ植物を、植物GUS発現構築物で形質転換した。EXP類である、EXP
-DaMV.H-Flt+Zm.Ltp+SETit.Act4:1(配列番号16)、
EXP-DaMV.H-Flt+Zm.Ltp+Zm.Ltp+SETit.Act4:
4(配列番号17)、EXP-DaMV.FLT+Td.RCc3_1+SETit.1
4-3-3C-5:1(配列番号18)、及びEXP-DaMV.FLT+Td.RCc
3_1+Td.RCc3_1+SETit.14-3-3C-5:5(配列番号19)を
、当該技術分野で公知の方法を使用して、ベースの植物発現ベクターにクローニングした
。得られた植物発現ベクターは、除草剤グリホサートに対する耐性を付与する形質転換植
物細胞の選択に使用される第1の導入遺伝子選択カセットである、Agrobacter
ium tumefaciens(アグロバクテリウム・ツメファシエンス)由来の左境
界領域と、3’UTR調節エレメント、T-SETit.Ams1:1に5’に作動可能
に連結された、β-グルクロニダーゼをコードする植物細胞での発現用に設計された合成
コード配列(GUS、GOI-Ec.uidA+St.LS1.nno:1)に5’側に
作動可能に連結されている、上記のEXPの活性を評価するための第2の導入遺伝子カセ
ットと、その後に続くAgrobacterium tumefaciensの右境界領
域とを含んだ。
【0109】
各EXPは、ダリアモザイクウイルスプロモーターに由来するエンハンサーを含んだ。
エンハンサーは、順方向(ダリアモザイクウイルスゲノムのネイティブプロモーター内の
エンハンサーの方向)または逆方向(ダリアモザイクウイルスゲノムのネイティブプロモ
ーター内のエンハンサーの反対方向)のいずれかで、各EXPのそれぞれのプロモーター
に5’側に作動可能に連結されていた。EXP類である、EXP-DaMV.H-Flt
+Zm.Ltp+SETit.Act4:1(配列番号16)及びEXP-DaMV.H
-Flt+Zm.Ltp+Zm.Ltp+SETit.Act4:4(配列番号17)は
、複数の公開ダリアモザイクウイルスプロモーターに由来する、キメラ再構成エンハンサ
ー、E-DaMV.H-Flt:1(配列番号14)を含んでいた。第1のフラグメント
は、DaMV-Holland(DaMV-H)株のプロモーター、Genbankアク
セッションEU090957、ヌクレオチド1177-1494に由来した。このフラグ
メントは、DaMV-Hプロモーターに由来する第2のフラグメントであるヌクレオチド
1003-1176に作動可能に連結されていた。ネイティブDaMVプロモーターの構
成では、第2のフラグメントが第1のフラグメントに先行する。第1のフラグメント内で
、配列番号14と比較して、ヌクレオチド287~288、及びヌクレオチド319~3
22は、GenbankアクセッションJX272320内のDaMVプロモーターの類
似の位置の配列に変更された。EXP類である、EXP-DaMV.FLT+Td.RC
c3_1+SETit.14-3-3C-5:1(配列番号18)及びEXP-DaMV
.FLT+Td.RCc3_1+Td.RCc3_1+SETit.14-3-3C-5
:5(配列番号19)は、ダリアモザイクウイルスプロモーター、Genbankアクセ
ッションEF513491、ヌクレオチド1~322に由来するエンハンサー、E-Da
MV.FLT:2(配列番号15)を含んでいた。
【0110】
EXP類である、EXP-DaMV.H-Flt+Zm.Ltp+SETit.Act
4:1(配列番号16)及びEXP-DaMV.H-Flt+Zm.Ltp+Zm.Lt
p+SETit.Act4:4(配列番号17)は、キメラ再構成エンハンサー、プロモ
ーターに5’側に作動可能に連結されたE-DaMV.H-Flt:1(配列番号14)
、及びSetaria italica由来のアクチン4遺伝子に由来するイントロンに
5’側で作動可能に連結されている、Zea mays由来の脂質転移タンパク質様タン
パク質遺伝子に由来する5’UTRを含む。EXP類である、EXP-DaMV.FLT
+Td.RCc3_1+SETit.14-3-3C-5:1(配列番号18)及びEX
P-DaMV.FLT+Td.RCc3_1+Td.RCc3_1+SETit.14-
3-3C-5:5(配列番号19)は、プロモーターに5’側で作動可能に連結されたエ
ンハンサーE-DaMV.FLT:2(配列番号15)及びSetaria itali
ca由来の14-3-3C遺伝子由来のイントロンに作動可能に連結されたTrypsi
cum dactyloides由来のRCc3遺伝子に由来する5’UTRを含む。
【0111】
トウモロコシ変種01DKD2由来のトウモロコシ植物細胞を、当該技術分野で周知で
あるように、Agrobacterium媒介の形質転換によって、上記のバイナリー形
質転換ベクター構築物を用いて形質転換した。得られた形質転換植物細胞を、トウモロコ
シ植物全体を形成するように誘導した。GUS発現の定量的及び定性的測定は、V2段階
の葉及び根を使用して、実施例2に記載されるように決定した。表6は、四(4)つのE
XPのそれぞれについて、安定して形質転換されたV2の葉及び根の平均GUS発現を示
している。エンハンサーの方向及び根と葉の発現の比率も表6に示されている。
【0112】
実施例3、表5において、EXP、EXP-Zm.LTP-SETit.Act4(配
列番号6)は、三十五(35)倍を超えて根では葉よりもはるかに高いGUSの発現を駆
動した。表6に示すように、EXP-DaMV.H-Flt+Zm.Ltp+SETit
.Act4:1(配列番号16)及びEXP-DaMV.H-Flt+Zm.Ltp+Z
m.Ltp+SETit.Act4:4(配列番号:17)内に含まれる、EXP-Zm
.LTP-SETit.Act4内のプロモーターに、キメラ再構成エンハンサーである
E-DaMV.H-Flt:1(配列番号14)5’を作動可能に連結することにより、
GUS発現は根に比べて葉で増大した。ただし、これら2つのEXP内のエンハンサーの
向きは、根及び葉のGUS発現の相対レベルに影響を与えた。E-DaMV.H-Flt
:1が順方向と比較して逆方向に配向された場合、根と葉の発現の比率は高かった。同様
に、EXP-DaMV.FLT+Td.RCc3_1+SETit.14-3-3C-5
:1(配列番号18)内で逆方向に、E-DaMV.FLT:2(配列番号15)エンハ
ンサーを、作動可能に連結することによって、EXP-DaMV.FLT+Td.RCc
3_1+Td.RCc3_1+SETit.14-3-3C-5:5(配列番号19)内
の順方向と比較した場合、葉に対する根のGUS発現の比率が高くなった。2つのエンハ
ンサーを逆方向に作動可能に連結することにより、エンハンサーが順方向に作動可能に連
結されている場合よりも高い根対葉の発現比率をもたらす発現プロファイルを得ることが
できる。この特徴は、ウイルスエンハンサーを使用して発現を増強したいが、可能な限り
高い根対葉の発現比を提供することを好む場合に望ましい。
【0113】
本発明の原理を例示及び説明したが、このような原理から逸脱することなく、本発明を
配置及び詳細において変更し得ることは、当業者には明らかであるはずである。発明者ら
は、特許請求の範囲の趣旨及び範囲内にある全ての変更を特許請求する。本明細書で引用
される全ての刊行物及び公表された特許文献は、各々の個々の刊行物または特許出願が、
参照により援用されているように具体的かつ個別に示されている場合と同じ程度まで、参
照により援用される。
【配列表】
2024041922000001.app
【手続補正書】
【提出日】2024-01-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えDNA分子であって、
a)配列番号16、14、及び7のいずれかに対し少なくとも85パーセントの配列同一性を有する配列、
b)配列番号16、14、及び7のいずれかを含む配列、ならびに
c)遺伝子調節活性を有する、配列番号16、14、及び7のいずれかのフラグメント、からなる群より選択されるDNA配列を含み、
前記配列が、異種の転写可能なDNA分子と作動可能に連結されている、前記組換えDNA分子。
【請求項2】
前記配列が、配列番号16、14、及び7のいずれかのDNA配列に対し少なくとも90パーセントの配列同一性を有する、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項3】
前記配列が、配列番号16、14、及び7のいずれかのDNA配列に対し少なくとも95パーセントの配列同一性を有する、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項4】
前記DNA配列が遺伝子調節活性を含む、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項5】
前記異種の転写可能なDNA分子が農学的目的の遺伝子を含む、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項6】
前記農学的目的の遺伝子が、植物における除草剤耐性を付与する、請求項5に記載の組換えDNA分子。
【請求項7】
前記農学的目的の遺伝子が、植物における害虫抵抗性を付与する、請求項5に記載の組換えDNA分子。
【請求項8】
前記異種の転写可能なDNA分子が、dsRNA、miRNA、またはsiRNAをコードする、請求項1に記載の組換えDNA分子。
【請求項9】
請求項1に記載の組換えDNA分子を含むトランスジェニック植物細胞。
【請求項10】
前記トランスジェニック植物細胞が単子葉植物細胞である、請求項9に記載のトランスジェニック植物細胞。
【請求項11】
前記トランスジェニック植物細胞が双子葉植物細胞である、請求項9に記載のトランスジェニック植物細胞。
【請求項12】
請求項1に記載の組換えDNA分子を含む、トランスジェニック植物またはその部位。
【請求項13】
請求項12に記載のトランスジェニック植物の後代植物またはその部位であって、前記組換えDNA分子を含む、前記後代植物またはその部位。
【請求項14】
トランスジェニック種子であって、請求項1に記載の組換えDNA分子を含む、前記トランスジェニック種子。
【請求項15】
商品生産物を生産する方法であって、請求項12に記載のトランスジェニック植物またはその部位を得ることと、そこから前記商品生産物を生産することとを含む、前記方法。
【請求項16】
前記商品生産物が、種子、加工種子、タンパク質濃縮物、タンパク質単離物、デンプン、穀物、植物の部位、種子油、バイオマス、穀粉、及び粗粉である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
転写可能なDNA分子を発現させる方法であって、請求項1に記載の組換えDNA分子を含むトランスジェニック植物を得ることと、前記植物を栽培することとを含み、前記転写可能なDNAが発現される、前記方法。
【外国語明細書】