(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004194
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】判定プログラム、装置、及び方法
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20240109BHJP
A61B 5/117 20160101ALI20240109BHJP
G01N 33/98 20060101ALI20240109BHJP
G01N 33/497 20060101ALI20240109BHJP
【FI】
A61B5/00 C
A61B5/117
G01N33/98
G01N33/497 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103728
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000005223
【氏名又は名称】富士通株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村山 一徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 和之
(72)【発明者】
【氏名】清水 耕平
(72)【発明者】
【氏名】岡野 哲也
【テーマコード(参考)】
2G045
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
2G045AA40
2G045CB22
2G045DA74
2G045JA01
2G045JA07
4C038VA07
4C038VB05
4C038VC20
4C117XA01
4C117XB01
4C117XC40
4C117XD08
4C117XE20
4C117XE24
4C117XN04
4C117XQ19
(57)【要約】
【課題】アルコール検知器の異常又は不正使用を判定する。
【解決手段】アルコール検知器10に装着される吹込部20に設けられた、吹込部20の状態に応じて変化する物理量を検知するセンサ22で検知されたセンサ値を取得し、予め定めた基準値と、取得したセンサ値との比較結果に基づいて、アルコール検知器10の不正使用又は異常の有無を判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルコール検知器に装着される吹込部に設けられた、前記吹込部の状態に応じて変化する物理量を検知するセンサで検知されたセンサ値を取得し、
予め定めた基準値と、取得した前記センサ値との比較結果に基づいて、前記アルコール検知器の不正使用又は異常の有無を判定する
ことを含む処理をコンピュータに実行させるための判定プログラム。
【請求項2】
前記物理量は、抵抗値、静電容量、又はインピーダンスである請求項1に記載の判定プログラム。
【請求項3】
前記センサは、前記吹込部の全周を覆うように設けられたシート状のタッチセンサである請求項1又は請求項2に記載の判定プログラム。
【請求項4】
前記センサに生体が接触した場合の前記センサの各位置におけるセンサ値を取得し、
前記センサの各位置におけるセンサ値に基づいて特定される、前記生体と前記センサとが接触している部分の形状に基づいて、前記アルコール検知器の不正使用の有無を判定する
請求項3に記載の判定プログラム。
【請求項5】
前記生体が唇の場合、前記センサの各位置におけるセンサ値に基づいて特定される口唇紋と、予め登録しておいたユーザ毎の口唇紋との比較結果に基づいて、前記アルコール検知器を利用するユーザの個人認証を実行する請求項4に記載の判定プログラム。
【請求項6】
アルコール検知器に装着される吹込部に設けられた、前記吹込部の状態に応じて変化する物理量を検知するセンサで検知されたセンサ値を取得する取得部と、
予め定めた基準値と、取得した前記センサ値との比較結果に基づいて、前記アルコール検知器の不正使用又は異常の有無を判定する判定部と、
を含む判定装置。
【請求項7】
アルコール検知器に装着される吹込部に設けられた、前記吹込部の状態に応じて変化する物理量を検知するセンサで検知されたセンサ値を取得し、
予め定めた基準値と、取得した前記センサ値との比較結果に基づいて、前記アルコール検知器の不正使用又は異常の有無を判定する
ことを含む処理をコンピュータが実行する判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示の技術は、判定プログラム、判定装置、及び判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運送事業や旅客事業分野等において、運転者(被測定者)の飲酒運転を防止するために、アルコール検知器を用いて、被測定者の呼気からアルコール濃度を測定することで、被測定者のアルコール摂取の有無を確認する運行管理が行われている。アルコール摂取の有無を厳格に判断するためには、アルコール検知器の不正使用等を防止する必要がある。
【0003】
そこで、生体情報測定装置のダミー機及び被測定者以外の人物を使った不正な測定を防止する生体情報測定システムが提案されている。このシステムは、所定表示方法に従って識別表示手段が識別表示を実行している時に、被測定者の生体情報の測定を実行し、測定が実行されている時の被測定者及び識別表示手段を撮影する。そして、このシステムは、撮影された識別表示手段における識別表示が、所定表示方法に従っているか否かに応じて、撮影された識別表示手段を備える生体情報測定装置が、測定に使用された生体情報測定装置であるか否かを判別する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、アルコール検知器のすり替え防止や、アルコール濃度の測定時に動画撮影等を含めた個人認証を行うことはできる。しかしながら、アルコール検知器と被測定者との間に吹込部を装着する形式のアルコール検知器の場合、正規のアルコール検知器を使用し、個人認証に問題がなかったとしても、アルコール濃度の測定結果をごまかすことができる場合がある。例えば、ストロー形状の吹込部に穴を開けて、被測定者の呼気ではなく、外部からの空気等をその穴からアルコール検知器へ送り込む等の不正使用が考えられる。
【0006】
一つの側面として、開示の技術は、アルコール検知器の異常又は不正使用を判定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一つの態様として、開示の技術は、アルコール検知器に装着される吹込部に設けられた、前記吹込部の状態に応じて変化する物理量を検知するセンサで検知されたセンサ値を取得する。そして、開示の技術は、予め定めた基準値と、取得した前記センサ値との比較結果に基づいて、前記アルコール検知器の不正使用又は異常の有無を判定する。
【発明の効果】
【0008】
一つの側面として、アルコール検知器の異常又は不正使用を判定することができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1実施形態に係るアルコール検知器によるアルコール濃度の測定の様子を示す概略図である。
【
図3】第1実施形態に係るアルコール検知器の制御部の機能ブロック図である。
【
図4】アルコール検知器の不正使用を説明するための図である。
【
図7】センサ値と基準値との比較を説明するための図である。
【
図8】唇とセンサとの接触部分の形状を説明するための図である。
【
図9】アルコール検知器の制御部として機能するコンピュータの概略構成を示すブロック図である。
【
図10】第1実施形態に係るアルコール検知処理の一例を示すフローチャートである。
【
図11】第2実施形態に係るアルコール検知システムの構成を示す概略図である。
【
図12】第2実施形態に係るアルコール検知器の制御部の機能ブロック図である。
【
図13】第2実施形態に係るアルコール検知処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、開示の技術に係る実施形態の一例を説明する。
【0011】
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係るアルコール検知器10による、被測定者60の呼気におけるアルコール濃度の測定の様子を示す概略図である。
図1に示すように、アルコール検知器10には、吹込部20が装着される。被測定者60は、吹込部20を咥えて呼気を吹き込む。被測定者60の呼気は、吹込部20を介して、アルコール検知器10に送り込まれる。
【0012】
図2は、吹込部20の構成を示す概略図である。
図2に示すように、吹込部20は、例えばプラスチック等の部材をストロー形状に形成したものである。吹込部20の一端は、アルコール検知器10への装着側26であり、他端は、被測定者60により咥えられる吹込側28である。
【0013】
また、吹込部20の外周の全周を覆うように、センサ22が設けられている。センサ22は、吹込部20の状態に応じて変化する物理量として、例えば、抵抗値、静電容量、インピーダンス等のセンサ値を検知するセンサである。センサ22は、例えば、シート状のタッチセンサとしてよい。
【0014】
センサ22の、装着側26の一部には接点部24が設けられている。吹込部20がアルコール検知器10に装着された際に、接点部24がアルコール検知器10側の接点部と接続され、センサ22で検知されたセンサ値が接点部24を介してアルコール検知器10へ入力される。また、センサ22は、一部に記憶領域を有しており、その記憶領域には、そのセンサ22におけるセンサ値の基準値が記憶されている。基準値は、吹込部20に変形等が生じていない正常な状態、例えば、出荷時の状態におけるセンサ値としてよい。
【0015】
なお、吹込部20の形状は、
図1に示す例に限定されない。アルコール検知器10に装着可能であり、被測定者の呼気をアルコール検知器10へ導入可能な形状であればよい。また、センサ22は、吹込部20の外周の全周を覆うように設けられる場合に限定されず、少なくとも、吹込部20において変形可能な部分(詳細は後述)を覆うように設けられればよい。
【0016】
アルコール検知器10は、制御部、アルコール感知センサ等を含んで構成される。アルコール感知センサは、アルコール検知器10に送り込まれた呼気からアルコール濃度を測定するためのセンサであり、半導体式ガスセンサ、電気化学式(燃料電池式)センサ等としてよい。
【0017】
図3に、制御部12の機能ブロック図を示す。制御部12は、機能的には、判定部14と、測定部19とを含む。判定部14は、さらに、取得部15と、状態判定部16と、状況判定部17とを含む。なお、判定部14は、開示の技術の判定装置の一例である。
【0018】
取得部15は、アルコール検知器10に吹込部20が装着された状態において、センサ22で検知されたセンサ値を取得する。取得部15は、吹込部20が被測定者60に咥えられていない状態では、センサ22全体で1つのセンサ値を取得する。また、取得部15は、吹込部20に生体が接触した状態、すなわち、吹込部20が被測定者60に咥えられた状態では、センサ22の各位置において反応したセンサ値を取得する。また、取得部15は、センサ22から、センサ22の記憶領域に記憶されている基準値を取得する。取得部15は、吹込部20が被測定者60に咥えられていない状態で取得したセンサ値及び基準値を状態判定部16へ受け渡し、吹込部20が被測定者60に咥えられた状態で取得したセンサ22の各位置のセンサ値を状況判定部17へ受け渡す。
【0019】
ここで、例えば、
図4に示すように、吹込部20の途中を改造し、測定時において、被測定者60は息を止めて、被測定者60の呼気以外の空気をポンプ等で外からアルコール検知器10へ送り込むような不正使用が考えられる。このような不正使用によれば、正規のアルコール検知器10を使用しているか否かの機器認証、及び、指紋などの生体認証、顔認証等を利用した被測定者60の個人認証に問題がないとしても、被測定者60の呼気をごまかすことができてしまう。この例のような不正使用の場合、
図5に示すように、吹込部20の途中に穴を開ける等の改造が加えられることが想定される。
【0020】
また、アルコール検知器10の不正使用のために、吹込部20を意図的に改造する場合だけでなく、
図6に示すように、吹込部20に折れ曲がり等が生じている場合には、適正な測定を行うことができない場合がある。
【0021】
そこで、状態判定部16は、予め定めた基準値と、取得したセンサ値との比較結果に基づいて、アルコール検知器10の不正使用又は異常の有無を判定する。具体的には、状態判定部16は、
図7に示すように、取得部15から受け渡された基準値にマージンを設けた許容範囲を設定し、その許容範囲に、吹込部20が被測定者60に咥えられていない状態で取得されたセンサ値が含まれるか否かを判定する。
図7に示すように、吹込部20に折れ曲がりや穴開き等の変形がある場合、正常時のセンサ値とは異なるセンサ値を示す。したがって、状態判定部16は、取得したセンサ値が許容範囲に含まれない場合には、
図5や
図6に示すように、吹込部20に変形が生じている、すなわち、アルコール検知器10の不正使用又は吹込部20の異常のおそれ有りと判定する。
【0022】
また、吹込部20を改造することなく、アルコール検知器10を不正使用する場合も考えられる。例えば、被測定者60が吹込部20と共に、ストロー等の他の道具を咥え、被測定者60は息を止めて、ストロー等の道具から取り込んだ空気を、被測定者60の口腔内を介して吹込部20及びアルコール検知器10へ送り込むような不正使用が考えられる。この場合、例えば、
図8の上図に示すように、正常時には、呼気が漏れないように吹込部20を咥えることから、唇とセンサ22との接触部分の形状は、輪のような閉じた形状となる。一方、
図8の下図に示すように、ストロー等の道具を吹込部20と共に咥えた場合には、唇とセンサ22との間に隙間が生じる箇所があるため、唇とセンサ22との接触部分の形状は、輪のような閉じた形状とならない。
【0023】
そこで、状況判定部17は、センサ22の各位置におけるセンサ値に基づいて特定される、生体とセンサ22とが接触している部分の形状に基づいて、アルコール検知器10の不正使用の有無を判定する。具体的には、状況判定部17は、唇との接触によりセンサ値が変化しているセンサ22の位置を繋いで、唇とセンサ22との接触部分の形状を特定する。そして、状況判定部17は、特定した形状が、輪のような閉じた形状の場合には、使用状況は正常と判定し、輪のような閉じた形状になっていない場合には、使用状況に異常がある、すなわち不正使用の可能性があると判定する。
【0024】
測定部19は、状態判定部16及び状況判定部17の判定結果がいずれも正常である場合に、被測定者60の呼気からアルコール濃度を測定し、測定結果を出力する。アルコール濃度の測定方法は従来既知の手法を適用してよいため、ここでは詳細な説明を省略する。
【0025】
アルコール検知器10の制御部12は、例えば
図9に示すコンピュータ40で実現されてよい。コンピュータ40は、CPU(Central Processing Unit)41と、一時記憶領域としてのメモリ42と、不揮発性の記憶装置43とを備える。また、コンピュータ40は、入力装置、表示装置等の入出力装置44と、記憶媒体49に対するデータの読み込み及び書き込みを制御するR/W(Read/Write)装置45とを備える。また、コンピュータ40は、インターネット等のネットワークに接続される通信I/F(Interface)46を備える。CPU41、メモリ42、記憶装置43、入出力装置44、R/W装置45、及び通信I/F46は、バス47を介して互いに接続される。
【0026】
記憶装置43は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、フラッシュメモリ等である。記憶媒体としての記憶装置43には、コンピュータ40を、制御部12として機能させるためのアルコール検知プログラム50が記憶される。アルコール検知プログラム50は、取得プロセス制御命令55と、状態判定プロセス制御命令56と、状況判定プロセス制御命令57と、測定プロセス制御命令59とを有する。取得プロセス制御命令55、状態判定プロセス制御命令56、及び状況判定プロセス制御命令57を含む部分は、開示の技術の判定プログラムの一例である。
【0027】
CPU41は、アルコール検知プログラム50を記憶装置43から読み出してメモリ42に展開し、アルコール検知プログラム50が有する制御命令を順次実行する。CPU41は、取得プロセス制御命令55を実行することで、
図3に示す取得部15として動作する。また、CPU41は、状態判定プロセス制御命令56を実行することで、
図3に示す状態判定部16として動作する。また、CPU41は、状況判定プロセス制御命令57を実行することで、
図3に示す状況判定部17として動作する。また、CPU41は、測定プロセス制御命令59を実行することで、
図3に示す測定部19として動作する。これにより、アルコール検知プログラム50を実行したコンピュータ40が、アルコール検知器10の制御部12として機能することになる。なお、プログラムを実行するCPU41はハードウェアである。
【0028】
なお、アルコール検知プログラム50により実現される機能は、例えば半導体集積回路、より詳しくはASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等で実現されてもよい。
【0029】
次に、第1実施形態に係るアルコール検知器10の動作について説明する。アルコール検知器10において、アルコール濃度の測定開始が指示されると、制御部12が、
図10に示すアルコール検知処理を実行する。なお、アルコール検知処理は、開示の技術の判定方法の一例である。
【0030】
ステップS10で、取得部15が、例えば、「アルコール検知器に吹込部を装着してください」等のメッセージを表示装置に表示することにより、被測定者60に吹込部20の装着を指示する。次に、ステップS12で、取得部15が、アルコール検知器10に吹込部20が装着された状態において、センサ22で検知されたセンサ値と、センサ22の記憶領域に記憶されている基準値とを取得する。
【0031】
次に、ステップS14で、状態判定部16が、基準値にマージンを設けた許容範囲を設定し、その許容範囲にセンサ値が含まれるか否かを判定する。センサ値が許容範囲内の場合には、ステップS18へ移行し、センサ値が許容範囲を超えている場合には、状態判定部16は、吹込部20の状態に異常があると判定し、ステップS16へ移行する。ステップS16では、状態判定部16が、例えば、「吹込部を変形のない正規品に交換してください」等のメッセージを表示装置に表示することにより、被測定者60に吹込部20の交換を指示し、ステップS12に戻る。
【0032】
ステップS18では、測定部19が、例えば、「吹込部を咥えて息を吹き込んでください」等のメッセージを表示装置に表示することにより、被測定者60に測定開始を指示する。次に、ステップS20で、取得部15が、吹込部20に生体が接触した状態、すなわち、吹込部20が被測定者60に咥えられた状態における、センサ22の各位置におけるセンサ値を取得する。
【0033】
次に、ステップS22で、状況判定部17が、唇との接触によりセンサ値が変化しているセンサ22の位置を繋いで、唇とセンサ22との接触部分の形状を特定し、特定した形状が、輪のような閉じた形状か否かを判定する。接触部分の形状が輪のような閉じた形状の場合には、状況判定部17は、使用状況は正常であると判定し、ステップS26へ移行する。一方、接触部分の形状が輪のような閉じた形状ではない場合には、状況判定部17は、使用状況に異常がある判定し、ステップS24へ移行する。
【0034】
ステップS24では、状況判定部17が、例えば、「吹込部が正しく咥えられていません。呼気が漏れないように正しく咥えてください」等のメッセージを表示装置に表示することにより、被測定者60に再測定を指示し、ステップS20に戻る。ステップS26では、測定部19が、吹き込まれた被測定者60の呼気についての酸素濃度をアルコール感知センサから取得し、取得した酸素濃度からアルコール濃度を測定する。そして、測定部19が、測定結果を表示装置に表示して、アルコール検知処理は終了する。
【0035】
なお、ステップS16(吹込部20の交換を指示)を複数回実行しても、ステップS14においてセンサ値が許容範囲内であると判定されない場合には、測定を中止し、アルコール検知処理を終了するようにしてもよい。また、同様に、ステップS24(再測定を指示)を複数回実行しても、ステップS22において、唇とセンサ22との接触部分の形状が正常と判定されない場合には、測定を中止し、アルコール検知処理を終了するようにしてもよい。
【0036】
以上説明したように、第1実施形態に係るアルコール検知器の制御部は、アルコール検知器に装着される吹込部に設けられた、吹込部の状態に応じて変化する物理量を検知するセンサで検知されたセンサ値を取得する。そして、制御部は、予め定めた基準値と、取得したセンサ値との比較結果に基づいて、アルコール検知器の不正使用又は異常の有無を判定する。これにより、第1実施形態に係るアルコール検知器の制御部は、アルコール検知器の機器認証や被測定者の個人認証に問題がない場合でも、アルコール検知器の異常又は不正使用を判定することができる。
【0037】
また、センサは、吹込部の全周を覆うように設けられたシート状のタッチセンサとしてよい。そして、制御部は、吹込部に生体が接触した場合のセンサの各位置におけるセンサ値を取得し、センサの各位置におけるセンサ値に基づいて特定される、生体と吹込部とが接触している部分の形状に基づいて、アルコール検知器の不正使用の有無を判定してもよい。これにより、吹込部に改造を加えないような不正使用も判定することができる。
【0038】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同様の構成については、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0039】
図11は、第2実施形態に係るアルコール検知システム200の構成を示す概略図である。
図11に示すように、アルコール検知システム200には、アルコール検知器210と、アルコール検知器210に装着されると共に、センサ22が取り付けられた吹込部20と、管理装置30とが含まれる。アルコール検知器210と管理装置30とは、無線又は有線で接続され、相互に通信される。
【0040】
アルコール検知器210は、制御部、アルコール感知センサ等を含んで構成される。
図12に、制御部212の機能ブロック図を示す。制御部212は、機能的には、判定部214と、測定部219とを含む。判定部214は、さらに、取得部15と、状態判定部16と、状況判定部17と、認証部218とを含む。なお、判定部214は、開示の技術の判定装置の一例である。
【0041】
認証部218は、取得部15で取得された、センサ22の各位置におけるセンサ値に基づいて、被測定者60の口唇紋を特定する。例えば、認証部218は、センサ22の各位置におけるセンサ値を画素値に変換して、口唇紋を示す画像データを生成する。認証部218は、生成した口唇紋を示す画像データを管理装置30へ送信する。また、アルコール検知システム200が、指紋を検知するセンサ、被測定者60の顔画像を撮影するカメラ等を備え、口唇紋以外の他の認証情報を利用可能な場合、認証部218は、他の認証情報を取得する。他の認証情報を取得した場合、認証部218は、口唇紋を示す画像データと共に、他の認証情報を管理装置30へ送信する。認証部218は、管理装置30から認証結果を受信し、測定部219へ受け渡す。
【0042】
測定部219は、状態判定部16及び状況判定部17の判定結果がいずれも正常であり、かつ、口唇紋、又は口唇紋及び他の生体情報に基づく個人認証が許可された場合に、被測定者60の呼気からアルコール濃度を測定し、測定結果を出力する。
【0043】
管理装置30は、例えば、サーバ装置、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。管理装置30は、ユーザ毎の口唇紋を示す画像データが登録されたデータベースを保持する。管理装置30は、アルコール検知器210から口唇紋を示す画像データを受信すると、受信した画像データと、データベースに登録された画像データとを照合して、個人認証を実行する。管理装置30は、個人認証の結果(許可又は拒否)をアルコール検知器210へ送信する。
【0044】
また、管理装置30は、指紋情報、顔画像等の、口唇紋を示す画像データ以外の認証情報がユーザ毎に登録されたデータベースを保持する。管理装置30は、アルコール検知器210から他の認証情報を取得した場合には、取得した認証情報を用いた個人認証も実行する。管理装置30は、他の認証情報を用いた個人認証も実行した場合、口唇紋による個人認証の結果と、他の認証情報による個人認証の結果とを統合した結果をアルコール検知器210へ送信する。統合した結果は、例えば、いずれの個人認証の結果も許可の場合には許可、少なくとも一方が拒否の場合には拒否としてよい。
【0045】
アルコール検知器210の制御部212は、例えば
図9に示すコンピュータ40で実現されてよい。コンピュータ40の記憶装置43には、コンピュータ40を、制御部212として機能させるためのアルコール検知プログラム250が記憶される。アルコール検知プログラム250は、取得プロセス制御命令55と、状態判定プロセス制御命令56と、状況判定プロセス制御命令57と、認証プロセス制御命令258と、測定プロセス制御命令259とを有する。取得プロセス制御命令55、状態判定プロセス制御命令56、状況判定プロセス制御命令57、及び認証プロセス制御命令258を含む部分は、開示の技術の判定プログラムの一例である。
【0046】
CPU41は、アルコール検知プログラム250を記憶装置43から読み出してメモリ42に展開し、アルコール検知プログラム250が有する制御命令を順次実行する。CPU41は、認証プロセス制御命令258を実行することで、
図12に示す認証部218として動作する。また、CPU41は、測定プロセス制御命令259を実行することで、
図12に示す測定部219として動作する。他のプロセス制御命令については第1実施形態に係るアルコール検知プログラム50と同様である。これにより、アルコール検知プログラム250を実行したコンピュータ40が、アルコール検知器210の制御部212として機能することになる。
【0047】
なお、アルコール検知プログラム250により実現される機能は、例えば半導体集積回路、より詳しくはASIC、FPGA等で実現されてもよい。
【0048】
次に、第2実施形態に係るアルコール検知器210の動作について説明する。アルコール検知器210において、アルコール濃度の測定開始が指示されると、制御部212が、
図13に示すアルコール検知処理を実行する。なお、アルコール検知処理は、開示の技術の判定方法の一例である。
【0049】
ステップS100で、状態状況判定処理が実行される。状態状況判定処理は、第1実施形態におけるアルコール検知処理(
図10)のステップS10~S24の処理と同様である。
【0050】
次に、ステップS30で、認証部218が、取得部15で取得された、センサ22の各位置におけるセンサ値に基づいて、口唇紋を示す画像データを生成する。次に、ステップS32で、認証部218が、口唇紋以外に利用可能な他の認証情報があるか否かを判定する。他の認証情報がある場合には、ステップS34へ移行し、他の認証情報がない場合には、ステップS38へ移行する。
【0051】
ステップS34では、認証部218が、他の認証情報を取得する。次に、ステップS36で、認証部218が、口唇紋を示す画像データ、及び他の認証情報を管理装置30へ送信する。一方、ステップS38では、認証部218が、口唇紋を示す画像データを管理装置30へ送信する。
【0052】
次に、ステップS40で、認証部218が、管理装置30から認証結果を受信し、測定部219へ受け渡す。測定部219は、認証結果が許可か否かを判定する。認証結果が許可の場合には、ステップS42へ移行し、認証結果が拒否の場合には、ステップS44へ移行する。
【0053】
ステップS42では、測定部219が、アルコール濃度の測定を実行し、測定結果を表示装置に表示して、アルコール検知処理は終了する。一方、ステップS44では、測定部219が、例えば、「測定を中止します。はじめからやり直してください」等のメッセージを表示装置に表示するなどして、測定を中止し、アルコール検知処理は終了する。
【0054】
以上説明したように、第2実施形態に係るアルコール検知器の制御部は、吹込部に設けられたセンサで検知されるセンサ値に基づいて、被測定者の口唇紋を特定し、個人認証に利用する。これにより、第1実施形態に係るアルコール検知器の制御部は、第1実施形態の効果に加え、個人認証のために別途機構を設けることなく、個人認証を実行することができる。
【0055】
なお、上記各実施形態では、アルコール検知器でアルコール検知処理を実行する場合について説明したが、これに限定されない。例えば、第2実施形態のように、アルコール検知器と接続される管理装置を設け、管理装置においてアルコール検知処理を実行するようにしてもよい。この場合、アルコール検知器で取得されたセンサ値、基準値、アルコール感知センサで測定された酸素濃度等を管理装置へ送信し、管理装置において、アルコール検知器の不正使用又は異常の判定、及びアルコール濃度の測定を実行するようにしてもよい。
【0056】
また、上記各実施形態では、センサに基準値を記憶しておく場合について説明したが、これに限定されない。例えば、センサに、そのセンサが取り付けられる吹込部の識別番号を記憶しておき、アルコール検知器又は管理装置に、吹込部の識別番号と、その吹込部に取り付けられるセンサの基準値との対応関係を示すテーブルを記憶しておくようにしてもよい。この場合、アルコール検知器でセンサから識別番号を取得し、アルコール検知器又は管理装置において、テーブルを参照して、対応する吹込部の基準値を特定すればよい。
【0057】
また、上記各実施形態では、ストロー状の吹込部を例に説明したが、例えば、ガスマスク形状の吹込部にも開示の技術は適用可能である。この場合、例えば、ガスマスクの内面又は外面の全面にセンサを取り付けるようにすればよい。
【0058】
また、上記各実施形態では、判定プログラムが記憶装置に予め記憶(インストール)されているが、これに限定されない。開示の技術に係るプログラムは、CD-ROM、DVD-ROM、USBメモリ等の記憶媒体に記憶された形態で提供されてもよい。
【0059】
以上の各実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
【0060】
(付記1)
アルコール検知器に装着される吹込部に設けられた、前記吹込部の状態に応じて変化する物理量を検知するセンサで検知されたセンサ値を取得し、
予め定めた基準値と、取得した前記センサ値との比較結果に基づいて、前記アルコール検知器の不正使用又は異常の有無を判定する
ことを含む処理をコンピュータに実行させるための判定プログラム。
【0061】
(付記2)
前記物理量は、抵抗値、静電容量、又はインピーダンスである付記1に記載の判定プログラム。
【0062】
(付記3)
前記センサは、前記吹込部の全周を覆うように設けられたシート状のタッチセンサである付記1又は付記2に記載の判定プログラム。
【0063】
(付記4)
前記センサに生体が接触した場合の前記センサの各位置におけるセンサ値を取得し、
前記センサの各位置におけるセンサ値に基づいて特定される、前記生体と前記センサとが接触している部分の形状に基づいて、前記アルコール検知器の不正使用の有無を判定する
付記3に記載の判定プログラム。
【0064】
(付記5)
前記生体が唇の場合、前記センサの各位置におけるセンサ値に基づいて特定される口唇紋と、予め登録しておいたユーザ毎の口唇紋との比較結果に基づいて、前記アルコール検知器を利用するユーザの個人認証を実行する付記4に記載の判定プログラム。
【0065】
(付記6)
アルコール検知器に装着される吹込部に設けられた、前記吹込部の状態に応じて変化する物理量を検知するセンサで検知されたセンサ値を取得する取得部と、
予め定めた基準値と、取得した前記センサ値との比較結果に基づいて、前記アルコール検知器の不正使用又は異常の有無を判定する判定部と、
を含む判定装置。
【0066】
(付記7)
前記物理量は、抵抗値、静電容量、又はインピーダンスである付記6に記載の判定装置。
【0067】
(付記8)
前記センサは、前記吹込部の全周を覆うように設けられたシート状のタッチセンサである付記6又は付記7に記載の判定装置。
【0068】
(付記9)
前記取得部は、前記センサに生体が接触した場合の前記センサの各位置におけるセンサ値を取得し、
前記判定部は、前記センサの各位置におけるセンサ値に基づいて特定される、前記生体と前記センサとが接触している部分の形状に基づいて、前記アルコール検知器の不正使用の有無を判定する
付記8に記載の判定装置。
【0069】
(付記10)
前記生体が唇の場合、前記センサの各位置におけるセンサ値に基づいて特定される口唇紋と、予め登録しておいたユーザ毎の口唇紋との比較結果に基づいて、前記アルコール検知器を利用するユーザの個人認証を実行する認証部を含む付記9に記載の判定装置。
【0070】
(付記11)
アルコール検知器に装着される吹込部に設けられた、前記吹込部の状態に応じて変化する物理量を検知するセンサで検知されたセンサ値を取得し、
予め定めた基準値と、取得した前記センサ値との比較結果に基づいて、前記アルコール検知器の不正使用又は異常の有無を判定する
ことを含む処理をコンピュータが実行する判定方法。
【0071】
(付記12)
前記物理量は、抵抗値、静電容量、又はインピーダンスである付記11に記載の判定方法。
【0072】
(付記13)
前記センサは、前記吹込部の全周を覆うように設けられたシート状のタッチセンサである付記11又は付記12に記載の判定方法。
【0073】
(付記14)
前記センサに生体が接触した場合の前記センサの各位置におけるセンサ値を取得し、
前記センサの各位置におけるセンサ値に基づいて特定される、前記生体と前記センサとが接触している部分の形状に基づいて、前記アルコール検知器の不正使用の有無を判定する
付記13に記載の判定方法。
【0074】
(付記15)
前記生体が唇の場合、前記センサの各位置におけるセンサ値に基づいて特定される口唇紋と、予め登録しておいたユーザ毎の口唇紋との比較結果に基づいて、前記アルコール検知器を利用するユーザの個人認証を実行する付記14に記載の判定方法。
【0075】
(付記16)
アルコール検知器に装着される吹込部に設けられた、前記吹込部の状態に応じて変化する物理量を検知するセンサで検知されたセンサ値を取得し、
予め定めた基準値と、取得した前記センサ値との比較結果に基づいて、前記アルコール検知器の不正使用又は異常の有無を判定する
ことを含む処理をコンピュータに実行させるための判定プログラムを記憶した非一時的記憶媒体。
【符号の説明】
【0076】
10、210 アルコール検知器
12、212 制御部
14、214 判定部
15 取得部
16 状態判定部
17 状況判定部
218 認証部
19、219 測定部
20 吹込部
22 センサ
24 接点部
26 装着側
28 吹込側
200 アルコール検知システム
30 管理装置
40 コンピュータ
41 CPU
42 メモリ
43 記憶装置
44 入出力装置
45 R/W装置
46 通信I/F
47 バス
49 記憶媒体
50、250 アルコール検知プログラム
55 取得プロセス制御命令
56 状態判定プロセス制御命令
57 状況判定プロセス制御命令
258 認証プロセス制御命令
59、259 測定プロセス制御命令
60 被測定者