(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041945
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】A型インフルエンザを治療する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/145 20060101AFI20240319BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20240319BHJP
C12N 15/13 20060101ALN20240319BHJP
C07K 16/10 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
A61K39/145
A61P31/16 ZNA
C12N15/13
C07K16/10
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005057
(22)【出願日】2024-01-17
(62)【分割の表示】P 2021204540の分割
【原出願日】2017-01-12
(31)【優先権主張番号】62/278,068
(32)【優先日】2016-01-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504333972
【氏名又は名称】メディミューン,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カレウアード-レライ,ニコル
(72)【発明者】
【氏名】マロリー,レイバーン
(72)【発明者】
【氏名】ロビー,ガブリエル
(72)【発明者】
【氏名】レン,ソング
(57)【要約】 (修正有)
【課題】患者におけるA型インフルエンザウイルス感染を治療、低減又は予防するための方法、組成物及び製品を提供する。
【解決手段】方法は、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプのA型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに結合する能力がある、少なくとも約200mg及び最大約3500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を患者に投与するステップを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書及び/又は図面に記載の通りの発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
電子的に提出された配列表の参照
本願とともに提出される配列表の内容は、その全体が参照により本明細書中に援用される。本願は、2015年1月12日に作成され、5.21キロバイトのサイズを有するテキストファイル化したFLUA200P1_seq_listingとして、本願とともに提出される配列表を参照により援用する。
【0002】
発明の分野
本発明は、対象におけるA型インフルエンザウイルス感染を治療、低減又は予防するための方法、組成物及び製品に関する。
【背景技術】
【0003】
インフルエンザウイルス(influenza virus)は、毎年のインフルエンザ流行病や偶発的な世界的大流行を引き起こし、世界規模で公衆衛生に多大な脅威をもたらしている。季節性インフルエンザ感染は、毎年、特に幼児、易感染性患者及び高齢者における200,000~500,000人の死亡に関連している。死亡率は、典型的には、パンデミックインフルエンザの大流行に伴い、季節を通じてさらに増加する。特に十分なサービスを受けていない集団においてインフルエンザ感染を予防し、治療するための強力な抗ウイルス薬のために多くの満たされていない医学的需要が残っている。
【0004】
インフルエンザウイルス(influenza virus)には3つの型、すなわちA型、B型及びC型が存在する。A型インフルエンザウイルスは、ヒト、ブタ、ニワトリ及びフェレットを含む、多種多様な鳥類及び哺乳類に感染し得る。A型インフルエンザウイルスは、表面糖タンパク質のヘマグルチニン(HA)及びノイラミニダーゼ(NA)をコードする2つの遺伝子の抗原領域内の対立遺伝子バリエーションに基づくサブタイプに分類され得る。HAは、受容体結合性の膜融合糖タンパク質であり、ウイルスの標的細胞への付着及び侵入を媒介し、またHAは、保護的液性免疫応答の主要な標的である。HAタンパク質は、構造が三量体をなし、単一のポリペプチド前駆体HA0の3つのコピーを含み、タンパク質分解成熟時、球状頭部(HA1)及びストーク領域(HA2)を有するpH依存性の準安定な中間体に切断される。膜遠位「球状頭部」は、HA1構造の大部分を構成し、ウイルス侵入におけるシアル酸結合ポケット及び主要な抗原ドメインを有する。HA2及び一部のHA1残基から構築される膜近位「ストーク」構造は、融合機構を有し、後期エンドソームの低pH環境下で立体構造変化を受け、膜融合及び細胞への侵入を誘発する。A型インフルエンザサブタイプ間での配列相同性の程度は、HA1内(サブタイプ間の相同性が34%~59%)ではHA2領域内(相同性が51%~80%)と比べてより小さい。インフルエンザウイルス感染によって誘発される中和抗体は大抵、ウイルス受容体結合を阻止するように可変HA1の球状頭部に標的化され、また通常、株に特異的である。まれに、HAの球状頭部を標的にする広範な交差反応性モノクローナル抗体が同定されている(Krause et al.(2011)J.Virol.85;Whittle et al.,(2011)PNAS 108;Ekiert et al.,(2012)Nature 489;Lee et al.(2012)PNAS109)。それに対し、ストーク領域の構造は、比較的保存されており、ウイルス侵入におけるpH誘発性融合ステップを阻止するようにHAストークに結合する、一握りの広域中和抗体が近年同定されている(Ekiert et al.,(2009)Science 324;Sui et al.,(2009)Nat.Struct.Mol.Biol.16;Wrammert et al.,(2011)J Exp Med 208;Ekiert et al.,(2011)Science 333;Corti et al.,(2010)J.Clin.Invest.120;Throsby M.,(2008)PLoS One 3)。これらのストーク反応性の中和抗体の大部分は、A型インフルエンザグループ1ウイルスに特異的であるか又はグループ2ウイルスに特異的であるかのいずれかである。直近では、グループ1及び2ウイルスの双方に対して交差反応性を示す、ストークに結合する抗体が単離された(Corti et al.,(2011)Science 333(6044)850-856;Li et al.,(2012)PNAS 109:9047-9052及びDreyfus et al.,(2012)Science 337(6100):1343-1348;Nakamura et al.,(2013)Cell Host & Microbe 14:93-103)。
【0005】
ワクチン及び小分子抗ウイルス治療薬における進歩にもかかわらず、罹患率及び死亡率におけるリスクが高い集団では、インフルエンザのより効果的な治療に対する医学的需要は満たされないままである。これらの患者では、インフルエンザ感染は、重度の合併症をもたらす可能性があり、ヘルスケアシステム全体に対する多大な負担の原因である。インフルエンザ治療における現行の標準治療は、治療へのアクセス遅延(late presentation to care)、抵抗性についての可能性、及び制限された治療域(therapeutic window)に起因した、年配者における有効性低下の可能性を含む、多くの制限を有する。
【0006】
MEDI8852(例えば、配列番号1~10により表示される)は、強力な広範に中和するIgG1κモノクローナル抗体であり、全部で18のA型インフルエンザウイルスサブタイプからのウイルス中で共有される高度に保存されたヘマグルチニンストーク領域に結合し、且つA型インフルエンザサブタイプの季節型とパンデミック型の双方への適用範囲を示す。MEDI8852は、広範なウイルスパネル、例えば季節性H1N1及びH3N2ウイルス、並びにH2、H4、H5、H6、H7、及びH9などのパンデミック型を引き起こす可能性を有するA型インフルエンザサブタイプを強力に中和する。加えて、感染細胞がFcエフェクター機能(すなわち、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、及び補体依存性細胞傷害性(CDC))を介してMEDI8852を用いて排除され得、またMEDI8852が、ウイルス融合、HAプロテアーゼ切断(成熟)、及び細胞対細胞伝播を阻害することにより、A型インフルエンザウイルス感染を予防することが示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Krause et al.(2011)J.Virol.85;Whittle et al.,(2011)PNAS 108
【非特許文献2】Ekiert et al.,(2012)Nature 489
【非特許文献3】Lee et al.(2012)PNAS109
【非特許文献4】Ekiert et al.,(2009)Science 324
【非特許文献5】Sui et al.,(2009)Nat.Struct.Mol.Biol.16
【非特許文献6】Wrammert et al.,(2011)J Exp Med 208
【非特許文献7】Ekiert et al.,(2011)Science 333
【非特許文献8】Corti et al.,(2010)J.Clin.Invest.120
【非特許文献9】Throsby M.,(2008)PLoS One 3
【非特許文献10】Corti et al.,(2011)Science 333(6044)850-856
【非特許文献11】Li et al.,(2012)PNAS 109:9047-9052
【非特許文献12】Dreyfus et al.,(2012)Science 337(6100):1343-1348
【非特許文献13】Nakamura et al.,(2013)Cell Host & Microbe 14:93-103
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
今日まで、MEDI8852の薬理学的試験は制限されている。薬理学的に関連した動物種モデルが薬物動態及び薬力学試験に用いられたが、これらのモデルの薬理は、ヒトにおけるMEDI8852の薬理とは異なる。従って、ヒトへのMEDI8852投与における開始用量を見積もるための方法についての必要性、及びヒトでのA型インフルエンザ感染の治療におけるMEDI8852の有効であるが安全な用量についての必要性が残っている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
本明細書に提供されるのは、患者におけるA型インフルエンザウイルス感染を治療、低減又は予防するための方法、組成物及び製品である。
【0010】
一実施形態では、患者におけるA型インフルエンザウイルス感染を治療、低減又は予防する方法が提供される。別の実施形態では、本方法は、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプのA型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに結合する能力がある抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を少なくとも約200mg及び最大約3,500mgで患者に投与するステップを含む。
【0011】
一実施形態では、患者はヒトである。一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、非経口的に投与される。さらなる特定の実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、静脈内に投与される。一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、少なくとも約1mg/分及び最大約50mg/分、少なくとも約5mg/分及び最大約30mg/分、又は少なくとも約15mg/分及び最大約25mg/分の速度で投与される。
【0012】
一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、患者がA型インフルエンザウイルスに曝露されるか、A型インフルエンザウイルスに感染するか、A型インフルエンザウイルス感染の症状を呈するか、又はそれらの組み合わせが生じた後、投与される。別の実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、患者がA型インフルエンザウイルスに曝露されるか、A型インフルエンザウイルスに感染するか、又はA型インフルエンザウイルス感染の症状を呈する前、投与される。一実施形態では、患者は、A型インフルエンザウイルスに対して血清陰性である。別の実施形態では、患者は、A型インフルエンザウイルスに対して血清陽性である。別の実施形態では、患者の血清状態が未知である。一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、曝露、感染、症状発症、又はそれらの組み合わせから30日以内に対象に投与される。
【0013】
さらなる特定の実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列と少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDRを含む。別の実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、配列番号8、配列番号9及び配列番号10に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを含む。一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDR、並びに配列番号8、配列番号9及び配列番号10に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを含む。一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDRを含む。一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、配列番号8、配列番号9及び配列番号10から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを含む。別の実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDR、並びに配列番号8、配列番号9及び配列番号10から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを含む。
【0014】
一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVHを含む。一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVLを含む。一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVH、及び配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVLを含む。一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するVHを含む。一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するVLを含む。一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するVH、及び配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するVLを含む。
【0015】
さらなる特定の実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体は、MEDI8852を含む。
【0016】
別の実施形態では、患者におけるA型インフルエンザウイルス感染を治療、低減又は予防するための組成物が提供される。一実施形態では、組成物は、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプのA型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに結合する能力がある抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含み、また少なくとも約200mg及び最大約3,500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を投与するために調合される。一実施形態では、組成物は、A型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに結合し、且つA型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプを中和する能力がある抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含み、また少なくとも約200mg及び最大約3,500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を患者に投与するために調合される。一実施形態では、組成物は、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、H18、及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ;並びにH3、H4、H7、H10、H14及びH15及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ2サブタイプを中和する能力がある抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。
【0017】
一実施形態では、組成物は、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプのA型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに結合する能力がある抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含み、また少なくとも約200mg及び最大約3,500mgの量での静脈内注入のために調合される。一実施形態では、組成物は、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプに対して結合し、且つ中和する能力がある抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含み、また少なくとも約200mg及び最大約3,500mgの量での静脈内注入のために調合される。一実施形態では、組成物は、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、H18、及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ;並びにH3、H4、H7、H10、H14及びH15及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ2サブタイプを中和する能力がある抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。
【0018】
一実施形態では、組成物は、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、H18、及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ;並びにH3、H4、H7、H10、H14、H15及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ2サブタイプを排除する能力がある抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプを、ADCC、CDC、又はその組み合わせを含む機構を介して排除する能力がある。
【0019】
さらなる特定の実施形態では、組成物は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDRを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。別の実施形態では、組成物は、配列番号8、配列番号9及び配列番号10に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。一実施形態では、組成物は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDR、並びに配列番号8、配列番号9及び配列番号10に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。一実施形態では、組成物は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDRを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。一実施形態では、組成物は、配列番号8、配列番号9及び配列番号10から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。別の実施形態では、組成物は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDR並びに配列番号8、配列番号9及び配列番号10から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。
【0020】
一実施形態では、組成物は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVHを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。一実施形態では、組成物は、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVLを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。一実施形態では、組成物は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVH、及び配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVLを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。一実施形態では、組成物は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するVHを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。一実施形態では、組成物は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するVLを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。一実施形態では、組成物は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するVH、及び配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するVLを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。一実施形態では、組成物は、MEDI8852を含む。別の実施形態では、組成物は、MEDI8852及び薬学的に許容できる担体を含む。
【0021】
別の実施形態では、容器及び容器内部の組成物、並びに少なくとも約200mg及び最大約3,500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を患者に投与するための使用説明書を有するラベル又は添付文書を含む製品が提供され、ここで組成物は、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプのA型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに結合する能力がある抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。別の実施形態では、容器及び容器内部の組成物、並びに少なくとも約200mg及び最大約3,500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を患者に投与するための使用説明書を有するラベル又は添付文書を含む製品が提供され、ここで組成物は、A型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに結合し、且つA型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプを中和する能力がある抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。
【0022】
一実施形態では、製品は、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、H18、及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ;並びにH3、H4、H7、H10、H14、H15及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ2サブタイプを中和する能力がある抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む組成物を含む。
【0023】
さらなる特定の実施形態では、製品は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDRを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む組成物を含む。別の実施形態では、製品は、配列番号8、配列番号9及び配列番号10に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む組成物を含む。一実施形態では、製品は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDR、並びに配列番号8、配列番号9及び配列番号10に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む組成物を含む。一実施形態では、製品は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDRを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む組成物を含む。一実施形態では、製品は、配列番号8、配列番号9及び配列番号10から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む組成物を含む。別の実施形態では、製品は、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDR、並びに配列番号8、配列番号9及び配列番号10から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む組成物を含む。
【0024】
一実施形態では、製品は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVHを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む組成物を含む。一実施形態では、製品は、配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVLを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む組成物を含む。一実施形態では、製品は、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVH、及び配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVLを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む組成物を含む。一実施形態では、製品は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するVHを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む組成物を含む。一実施形態では、製品は、配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するVLを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む組成物を含む。一実施形態では、製品は、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するVH、及び配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するVLを有する抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む組成物を含む。
【0025】
一実施形態では、製品は、MEDI8852を含む組成物を含む。別の実施形態では、製品は、MEDI8852及び薬学的に許容できる担体を含む組成物を含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】静脈内、250mg、750mg、1,500mg及び3,000mgのMEDI8852で治療される対象(n=5~10名/群/時点)における平均(+/-標準偏差)濃度特性を示すグラフである。
【
図2】750mg又は3000mgのMEDI8852で治療された対象の集団(n=1000名の対象/群)におけるシミュレート濃度を示すグラフである。バンドは90%信頼区間を表す。実線及び点線は各々、750及び3000mg群における中央値を表す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
導入
本明細書に記載されるのは、対象におけるA型インフルエンザウイルス感染の治療、低減、及び/又は予防に関する方法、組成物、キット及び製品である。
【0028】
用語法
本発明を詳細に記載する前に、この発明が具体的な組成物又は方法ステップに限定されるものでなく、それ自体変わり得ることが理解されるべきである。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるとき、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形の指示対象を含むことに留意しなければならない。
【0029】
用語「約」は、例えば、化合物、組成物、濃縮物又は調合物を作製するために用いられる典型的な測定及びハンドリング手順を通じて;これらの手順における不注意なエラーを通じて;本方法を実施するために用いられる出発物質又は成分の製造、供給源、又は純度における差異、及び類似の検討事項を通じて生じ得る数量における変動を指す。用語「約」はまた、特定の初期濃度又は混合を有する化合物、組成物、濃縮物又は調合物の経年劣化に起因して異なる量、及び特定の初期濃度又は混合を有する化合物、組成物、濃縮物又は調合物の混合又は処理に起因して異なる量を包含する。用語「約」によって修飾される場合、本明細書に貼付される特許請求の範囲は、これらの量に対する等価物を含む。
【0030】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての科学技術用語は、本発明が関係する技術分野の当業者が一般に理解するのと同じ意味を有する。例えば、Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,(2002)2nd ed.,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.(1999)Academic Press;及びOxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised(2000)Oxford University Pressが、この発明において使用される用語の多くの一般的な辞書を当業者に提供する。
【0031】
アミノ酸は、本明細書中で、IUPAC-IUB生化学命名委員会(IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commission)により推奨される、その一般に公知の3文字記号又は1文字記号のいすれかによって指すことができる。同様に、ヌクレオチドは、その一般に認められた1文字コードによって指すことができる。
【0032】
抗体の可変ドメイン、相補性決定領域(CDR)及びフレームワーク領域(FR)におけるアミノ酸の付番は、別段の指示がない限り、Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD.に示されるKabat定義に従う。この付番システムを用いると、実際の線状のアミノ酸配列は、可変ドメインのFR又はCDRの短縮、又はそれへの挿入に対応する、より少ないか又は追加的なアミノ酸を含んでもよい。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52の後への単一のアミノ酸の挿入(Kabatによると残基52a)及び重鎖FR残基82の後に挿入された残基(例えば、Kabatによると残基82a、82b、及び82cなど)を含んでもよい。残基のKabat付番は、所与の抗体については、抗体の配列と「標準的な」Kabat付番配列とが相同な領域での整列によって判定してもよい。フレームワーク残基の最大の整列は、Fv領域において使用されるべきである付番システムにおける「スペーサー」残基の挿入が必要である場合が多い。さらに、任意の所与のKabat部位番号での特定の個別の残基の同一性は、種間又は対立遺伝子の相違により、抗体鎖から抗体鎖にかけて変化し得る。
【0033】
定義
用語「核酸」又は「ポリヌクレオチド」は、限定はされないが、ヌクレオチドのポリマー、例えばDNA及びRNAポリマー、及び修飾されたオリゴヌクレオチド、例えば溶液中の生物学的RNA又はDNAに典型的でない塩基を有するオリゴヌクレオチド、例えば2’-O-メチル化されたオリゴヌクレオチドを含むヌクレオチドのストリングに対応する単量体単位の任意の物理的ストリングを包含する。ポリヌクレオチドは、従来的なホスホジエステル結合又は非従来的な結合、例えばアミド結合、例えばペプチド核酸(PNA)中に見出されるものを含み得る。核酸は、一本鎖又は二本鎖であり得る。別段の指示がない限り、核酸配列は、明示される配列に加えて、相補的配列を包含する。
【0034】
用語「遺伝子」は、生物学的機能に関連した核酸を指すように広義に用いられる。従って、遺伝子は、その発現に要求されるコード配列及び/又は制御配列を含む。用語「遺伝子」は、特定のゲノム配列、並びにそのゲノム配列によってコードされるcDNA又はmRNAに適用される。遺伝子はまた、例えば他のタンパク質に対する認識配列を形成する、発現されない核酸配列を含む。発現されない制御配列は、隣接又は近隣配列の転写をもたらす、転写因子などの調節タンパク質が結合する対象の「プロモーター」及び「エンハンサー」を含む。例えば、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、1つ以上のコード領域に作動可能に結合されたプロモーター及び/又は他の転写若しくは翻訳調節エレメントを含み得る。「作動可能に結合された」は、遺伝子産物の発現を制御配列の影響下又は制御下に置くような方法で、1つ以上の制御配列に結合された遺伝子産物に対するコード領域を指す。「遺伝子の発現」又は「核酸の発現」は、文脈によって示されるように、DNAのRNAへの転写、RNAのポリペプチドへの翻訳、又は転写と翻訳の双方を指す。
【0035】
本明細書で用いられるとき、用語「コード領域」は、アミノ酸に翻訳され得るコドンを含む核酸の一部を指す。「停止コドン」(TAG、TGA、又はTAA)はアミノ酸に翻訳されないが、コード領域の一部であると一般に考えられる。しかし、隣接配列、例えば、プロモーター、リボソーム結合部位、転写ターミネーター、及びイントロンは、コード領域の一部であると一般に考えられない。ベクターは、単一のコード領域を含み得るか、又は2つ以上のコード領域を含み得る。加えて、ベクター、ポリヌクレオチド、又は核酸は、目的の遺伝子産物、例えば、抗体、又はその抗原結合断片、変異体、又は誘導体をコードする核酸に対して融合又は非融合のいずれかで、異種コード領域をコードし得る。異種コード領域は、限定はされないが、特定化されたエレメント又はモチーフ、例えば分泌型シグナルペプチド又は異種機能ドメインを含む。
【0036】
用語「ベクター」は、核酸が生物、細胞、又は細胞成分の間で増殖及び/又は移動され得る手段を指す。ベクターは、限定はされないが、プラスミド、ウイルス、バクテリオファージ、プロウイルス、ファージミド、トランスポゾン、及び人工染色体を含み、それらは自律的に複製するか又は宿主細胞の染色体に組み込む能力がある。ベクターはまた、限定はされないが、ネイキッドRNAポリヌクレオチド、ネイキッドDNAポリヌクレオチド、同じ鎖内にDNA及びRNAの双方を含むポリヌクレオチド、ポリリジンコンジュゲートDNA又はRNA、ペプチドコンジュゲートDNA又はRNA、リポソームコンジュゲートDNAを含み、それらは自律的に複製することがない。「発現ベクター」は、ベクター、例えばプラスミドであり、それはその中に組み込まれる核酸の発現及び複製を促進する能力がある。典型的には、発現されるべき核酸は、プロモーター及び/又はエンハンサーに「作動可能に連結され」、プロモーター及び/又はエンハンサーによる転写調節制御を受ける。
【0037】
用語「宿主細胞」は、異種核酸、例えばベクターを含む細胞を指し、核酸の複製及び/又は発現を支持する。宿主細胞は、原核細胞、例えば大腸菌(E.Coli)、又は真核細胞、例えば、酵母、昆虫、両生類、鳥類又は哺乳動物細胞、例えばヒト細胞、例えばHEp-2細胞及びベロ細胞であり得る。
【0038】
用語「導入される」は、異種又は単離核酸を参照するとき、核酸の真核又は原核細胞への導入を指し、ここでは核酸は、細胞のゲノム中に組み込まれるか、自律レプリコンに変換されるか、又は一時的に発現され得る。同用語は、「感染」、「遺伝子導入」、「形質転換」及び「形質導入」のような方法を含む。核酸を宿主細胞に導入するため、限定はされないが、電気穿孔、リン酸カルシウム沈殿、脂質媒介性トランスフェクション、及びリポフェクションを含む種々の方法を用いることができる。
【0039】
用語「発現」は、遺伝子からの情報が機能的遺伝子産物の合成において用いられるプロセスを指す。遺伝子産物は、タンパク質であることが多いが、機能的RNAでもあり得る。遺伝子発現は、対応するrRNA、tRNA、mRNA、snRNA及び/又は遺伝子産物のタンパク質レベルでの存在を測定することにより検出され得る。
【0040】
用語「ポリペプチド」は、アミド結合(ペプチド結合としても公知)により線状に連結された2つ以上のアミノ酸残基を含む分子、例えばペプチド又はタンパク質を指す。用語「ポリペプチド」は、2つ以上のアミノ酸の任意の1つ若しくは複数の鎖を指し、特定の長さの産物を指さない。従って、ペプチド、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド、「タンパク質」、「アミノ酸鎖」、又は2つ以上のアミノ酸の1つ若しくは複数の鎖を指すために用いられる任意の他の用語が「ポリペプチド」の定義内に含まれ、用語「ポリペプチド」は、これらの用語のいずれかに対して代わりに、又は交換可能に用いることができる。用語「ポリペプチド」はまた、限定はされないが、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、アミド化、公知の保護/遮断基による誘導体化、タンパク質分解切断、又は非天然アミノ酸による修飾を含むポリペプチドの発現後修飾の産物を指すように意図される。ポリペプチドは、天然生物学的供給源に由来するか又は組換え技術により生成され得、また必ずしも指定の核酸配列から翻訳されない。それは、任意の方法で、例えば化学合成により作製され得る。ポリペプチドのアミノ酸残基は、天然又は非天然であり得、非置換、非修飾、置換又は修飾であり得る。「アミノ酸配列」は、アミノ酸残基のポリマー、例えば、状況に応じて、タンパク質又はポリペプチド、又はアミノ酸ポリマーを表す文字列である。
【0041】
本明細書で用いられるとき、用語「抗体」は、抗原の抗原決定基の特徴に対して相補的な内部表面形状及び電荷分布を伴う三次元結合空間を有するポリペプチド鎖のフォールディングから形成される少なくとも1つの結合ドメインを含むポリペプチド又はポリペプチドの群を指す。抗体は、典型的には、2対のポリペプチド鎖を有する四量体形態を有し、ここで各対合は1つの「軽」鎖及び1つの「重」鎖を有し、ここで各軽鎖/重鎖対の可変領域は抗体結合部位を形成する。典型的には、各軽鎖は1つの共有結合性ジスルフィド結合により重鎖に連結される一方、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖間で変動する。重鎖及び軽鎖の各々はまた、規則的に隔てられた鎖間ジスルフィド架橋を有する。典型的には、各重鎖は、一末端に可変ドメイン(VH)とその後に幾つかの定常ドメイン(CH)を有し、各軽鎖は、一末端に可変ドメイン(VL)と他方末端に定常ドメイン(CL)を有し、ここで軽鎖の定常ドメインは重鎖の第1の定常ドメインと整列され、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列される。
【0042】
用語「抗体(antibody)」、「抗体(antibodies)」及び「免疫グロブリン」は、本明細書で用いられるとき、モノクローナル抗体(完全長モノクローナル抗体を含む)、ポリクローナル抗体、少なくとも2つの異なるエピトープ結合断片から形成される多選択性抗体(例えば二重特異性抗体)、CDR移植、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、キメラ抗体、一本鎖Fv(scFv)、一本鎖抗体、単一ドメイン抗体、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、所望される生物学的活性を示す抗体断片(例えば抗原結合部分)、ジスルフィド結合Fv(dsFv)、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、細胞内抗体、及び上記のいずれかのエピトープ結合断片又は誘導体を包含する。特に、抗体は、少なくとも1つの抗原結合部位を含む免疫グロブリン分子及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片を含む。免疫グロブリン分子は、任意のアイソタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA及びIgY)、サブアイソタイプ(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)又はアロタイプ(例えば、Gm、例えば、G1m(f、z、a又はx)、G2m(n)、G3m(g、b、又はc)、Am、Em、及びKm(1、2又は3))であり得る。抗体は、任意の哺乳動物種、例えば限定はされないが、ヒト、サル、ブタ、ウマ、ウサギ、イヌ、ネコ、及びマウス、又は他の動物、例えば限定はされないがニワトリを含む鳥類に由来してもよい。抗体は、異種ポリペプチド配列、例えば精製を促進するためのタグに融合されてもよい。
【0043】
所望されるエフェクター機能又は血清半減期を提供するため、抗体はFc領域内で修飾され得る。下記のセクションにてさらに詳細に考察されるように、適切なFc領域下で、細胞表面上に結合されるネイキッド抗体は、例えば抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を介してか、補体依存性細胞傷害性(CDC)における補体を動員することにより、又はA型インフルエンザウイルス上の結合された抗体を認識する1つ以上のエフェクターリガンドを発現し、その後に抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)における細胞の食作用を引き起こす非特異的細胞傷害性細胞を動員することにより、細胞傷害性、又はいくつかの他の機構を誘導し得る。或いは、例えば、副作用又は治療合併症を低減するようにエフェクター機能を排除又は低減することが望ましい場合、例えばFcRnに対する結合親和性を増加させ、血清半減期を増加させるため、修飾されたFc領域が用いられてもよい。或いは、血清半減期を増加させるため、Fc領域はPEG又はアルブミンなどの部分にコンジュゲートされ得る。
【0044】
本明細書で用いられるとき、用語「変異体」は、親抗体配列内の1つ以上のアミノ酸残基の付加、欠失及び/又は置換が理由で、「親」抗体のアミノ酸配列とアミノ酸配列が異なる抗体を指す。変異体抗体は、1つ以上の置換、内部欠失を含む欠失、融合タンパク質をもたらす付加を含む付加、又は例えばMEDI8852を含む親抗体のアミノ酸残基の又は配列番号2若しくは配列番号7で示されるアミノ酸配列における保存的置換を含んでもよい。
【0045】
本明細書で用いられるとき、用語「パーセント(%)配列同一性」、又は「相同性」は、最大のパーセント配列同一性を得るため、必要に応じて、配列を整列し、ギャップを導入した後の(ここでは配列同一性の一部としての任意の保存的置換を考慮しない)、参照配列、例えば親抗体配列内のアミノ酸残基又はヌクレオチドと同一である、候補配列内のアミノ酸残基又はヌクレオチドの百分率を指す。配列の整列は、手作業により、又はSmith and Waterman(1981) Ads App.Math.2,482の相同性アルゴリズム;Neddleman and Wunsch(1970) J.MoI.Biol.48,443のアルゴリズム;Pearson and Lipman(1988) Proc.Natl Acad.Sci.USA85:2444の方法を用いるか、又はこれらアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Drive,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N及びTFASTA)に基づく1つ以上のコンピュータープログラムを用いて、生成されてもよい。
【0046】
用語「保存的アミノ酸置換」は、第1のアミノ酸の、第1のアミノ酸の場合と類似した化学及び/又は物理特性(例えば、電荷、構造、極性、疎水性/親水性)を有する第2のアミノ酸による置換を指す。保存的アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解度、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性における類似性に基づいて作製されてもよい。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸として、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンが挙げられ;極性中性アミノ酸として、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンが挙げられ;正電荷(塩基性)アミノ酸として、アルギニン、リジン、及びヒスチジンが挙げられ;また負電荷(酸性)アミノ酸として、アスパラギン酸及びグルタミン酸が挙げられる。加えて、グリシン及びプロリンは、鎖配向に影響を及ぼし得る残基である。非保存的置換は、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することを伴い得る。さらに、必要であれば、非古典的アミノ酸又は化学的アミノ酸類似体が、置換又は付加として抗体配列に導入され得る。非古典的アミノ酸として、限定はされないが、共通アミノ酸のD-異性体、α-アミノイソ酪酸、4-アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、γ-Abu、ε-Ahx、6-アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、β-アラニン、フルオロアミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えば、β-メチルアミノ酸、Cα-メチルアミノ酸、Nα-メチルアミノ酸、及び一般的アミノ酸類似体が挙げられる。
【0047】
抗体変異体は、例えば1つ以上の置換、欠失及び/又は付加を含む1つ以上のアミノ酸の改変が抗体の可変及び/又はフレームワーク領域の1つ以上に導入されることにより、作製され得る。フレームワーク領域残基の1つ以上の改変は、抗体の抗原に対する結合親和性における改善をもたらすことがある。これは特に、これらの変化がヒト化抗体に設けられるときに該当し得、ここでフレームワーク領域はCDR領域よりも異なる種に由来し得る。修飾され得るフレームワーク領域残基の例として、抗原に非共有結合的に直接結合するもの(Amit et al.,(1986) Science,233:747-753);CDRの立体構造に対して相互作用/影響するもの(Chothia et al.,(1987) J.Mol.Biol.,196:901-917);及び/又はVL-VH界面に関与するもの(米国特許第5,225,539号明細書及び米国特許第6,548,640号明細書)が挙げられる。一実施形態では、約1~約5のフレームワーク残基が改変されてもよい。
【0048】
改変抗体を作製するための1つの有用な手順は、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と称される(Cunningham and Wells,(1989) Science,244:1081-1085)。この方法では、アミノ酸と標的抗原との相互作用を改変するため、超可変領域残基の1つ以上がアラニン又はポリアラニン残基によって置換される。次に、置換に対して機能的感受性を示すそれらの1つ又は複数の超可変領域残基が、置換部位で又は置換部位用に追加的な又は他の突然変異を導入することにより精緻化される。従って、アミノ酸配列変異を導入するための部位は予め決定されるが、突然変異の性質それ自体は予め決定される必要はない。次に、このように産生されたAla突然変異体は、生物学的活性についてスクリーニングされ得る。
【0049】
用語「特異的に結合する」は、抗体又はその抗原結合断片、変異体、又は誘導体がエピトープにその抗原結合ドメインを介して、それがランダムな無関係のエピトープに結合する場合よりも容易に結合することを指す。用語「特異性」は、特定の抗体又はその断片が特定のエピトープに結合する場合の相対的親和性を定めるため、本明細書で用いられる。
【0050】
用語「エピトープ」は、本明細書で用いられるとき、抗体結合ドメインに結合する能力があるタンパク質決定基を指す。エピトープは通常、アミノ酸又は糖の側鎖など、分子の化学的活性表面群(groupings)を含み、また通常、特定の三次元構造特性、並びに特定の電荷特性を有する。立体構造エピトープと非立体構造(non-conformational)エピトープは、後者ではなく前者への結合が変性溶媒の存在下で失われるという点から区別される。用語「不連続エピトープ」は、本明細書で用いられるとき、タンパク質の一次配列内の少なくとも2つの分かれた領域から形成される、タンパク質抗原上の立体構造エピトープを指す。
【0051】
本明細書で用いられるとき、用語「親和性」は、個別のエピトープが免疫グロブリン分子の結合ドメインと結合する力の尺度を指す。
【0052】
用語「単離された」は、生物学的材料、例えば核酸又はタンパク質であって、通常随伴するか又はそれとその天然環境下で相互作用する成分から実質的に遊離されたものを指す。或いは、単離された材料は、その天然環境下でその材料とともに見出されない材料を含んでもよい。例えば、材料がその天然環境下、例えば細胞内に存在する場合、その材料は、その環境下で見出される材料にとって天然でない細胞内の位置に置かれていてもよい。例えば、天然に存在する核酸は、それがその核酸にとって天然でないゲノムの遺伝子座に天然に存在しない手段により導入される場合、単離されたと考えることができる。かかる核酸は、「異種」核酸とも称される。
【0053】
用語「組換え」は、ヒト介入により人工的又は合成的に改変されている材料を指す。改変は、その天然環境又は状態の内部の又はそれから除かれた材料に対して実施され得る。例えば、「組換え核酸」は、例えば、クローニング、DNAシャフリング又は他の方法を通して、又は化学的若しくは他の突然変異誘発により、核酸を組み換えることによって作製される核酸を指してもよく;「組換えポリペプチド」又は「組換えタンパク質」は、組換え核酸の発現により生成されるポリペプチド又はタンパク質を指し得る。
【0054】
本明細書で用いられるとき、用語「操作された」は、例えば、組換え技術、インビトロペプチド合成、ペプチドの酵素的又は化学的カップリング、又はその組み合わせを含む合成手段による核酸又はポリペプチド分子の操作を含む。
【0055】
本明細書で用いられるとき、用語「有効量」又は「治療有効量」は、所与の条件及び投与計画における所望される臨床成績を実現するのに必要又は十分な治療組成物の量、例えば、対象におけるインフルエンザ感染を予防、低減及び/又は治療する能力がある化合物の濃度を達成するのに十分な量を指す。かかる量及び濃度は当業者によって決定され得、典型的には、限定はされないが、治療されるべき状態、選択される投与経路、投与される実際の化合物、年齢、体重、及び個別患者の応答、及び患者の症状の重症度を含む関連する状況の観点で、医師によって決定されることになる。
【0056】
本明細書で用いられるとき、用語「治療組成物」は、治療用途を有する化合物又は組成物を指し、限定はされないが、生物学的化合物、例えば、抗体、タンパク質及び核酸、並びに化学的に合成される小有機分子化合物を含む。
【0057】
本明細書で用いられるとき、用語「医薬組成物」は、治療有効量の治療薬を、薬学的に許容できる担体、必要に応じて1つ以上の希釈剤又は賦形剤と一緒に含む組成物を指す。本明細書で用いられるとき、用語「薬学的に許容できる」は、連邦若しくは州政府の規制当局によって認可されるか、又は哺乳類、より詳細にはヒトにおいて用いられる米国薬局方(U.S.Pharmacopeia)、ヨーロッパ薬局方(European Pharmacopeia)又は他の一般に認識された薬局方に列挙されることを意味する。
【0058】
本明細書で用いられるとき、用語「治療」又は「治療する」は、治療的処置及び予防的(prophylactic)又は予防的(preventative)処置の双方を指し、その目的は、インフルエンザ感染の1つ以上の症状を安定化、予防、緩和若しくは低減するか、又はインフルエンザ感染の進行を遅延、予防、若しくは阻害することである。治療はまた、対象におけるA型インフルエンザウイルスなどの感染病原体のクリアランス又は低減を指し得、「治療」はまた、治療を受けてない場合に予想される生存と比べて、生存を延長することを意味し得る。治療は、感染が完全に治癒されることを意味する必要はない。
【0059】
本明細書で用いられるとき、用語「対象」又は「患者」は、脊索動物亜門(subphylum cordata)、例えば限定はされないが、ヒト及び他の霊長類、例えばチンパンジー及び他の類人猿及びサル種などの非ヒト霊長類;ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ及びウマなどの家畜;イヌ及びネコなどの家庭内哺乳類;マウス、ラット及びモルモットなどの齧歯類を含む実験動物;ニワトリ、シチメンチョウ及び他の大型家禽、アヒル、及びガチョウなどの飼い慣らされた鳥、野鳥及び狩猟鳥を含む鳥類の任意のメンバーを指す。用語「哺乳類」及び「動物」は、この定義に含まれる。成体及び新生児哺乳類は、包含されるように意図される。
【0060】
本明細書で用いられるとき、用語「中和する」は、抗体、又はその抗原結合断片が、感染病原体、例えばA型インフルエンザウイルスに結合し、且つ生物学的活性、例えば感染病原体の病原性を低減する能力を指す。一実施形態では、抗体又はその断片は、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つの特定エピトープ又は抗原決定基に免疫特異的に結合する。さらなる特定の実施形態では、抗体又はその断片は、A型インフルエンザウイルスのHAストークタンパク質の少なくとも1つの特定エピトープ又は抗原決定基に免疫特異的に結合する。
【0061】
抗体は、感染病原体、例えばA型インフルエンザウイルスの活性を、ウイルスの生活環の中での様々なポイントで中和することができる。例えば、抗体は、ウイルスと1つ以上の細胞表面受容体との相互作用に干渉することにより、ウイルスの標的細胞への結合に干渉し得る。或いは、抗体は、例えば、受容体介在性エンドサイトーシスによりウイルス内部移行に干渉することにより、ウイルスのその受容体との1つ以上の結合後の相互作用に干渉し得る。
【0062】
抗A型インフルエンザ抗体
本明細書に記載されるのは、A型インフルエンザウイルスに免疫特異的に結合する抗体又はその断片を含む方法、組成物及び製品である。一実施形態では、抗体又はその断片は、A型インフルエンザウイルスに特異的な少なくとも1つのエピトープに免疫特異的に結合する。さらなる特定の実施形態では、抗体又はその断片は、A型インフルエンザウイルスのHAストークタンパク質上のエピトープに免疫特異的に結合する。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に記載の通り、A型インフルエンザウイルスの1つ以上のグループ1サブタイプ及び1つ以上のグループ2サブタイプに対して結合し且つ/又は中和する能力がある。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、少なくともH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17、H18又は全てのA型インフルエンザのHAサブタイプの中で保存されるエピトープに結合する。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13及びH16から選択される1つ以上、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ、並びにH3、H4、H7、H10、H14及びH15から選択される1つ以上、又は少なくとも1、2、3、4、5、若しくは6つのグループ2サブタイプの中で保存されるエピトープに結合する。
【0063】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、少なくともH1、H2、H3、H4、H5、H6、H7、H8、H9、H10、H11、H12、H13、H14、H15、H16、H17若しくはH18又は全てのA型インフルエンザサブタイプに、約0.01ug/ml~約5ug/ml、又は約0.01ug/ml~約0.5ug/ml、又は約0.01ug/ml~約0.1ug/ml、又は約5ug/ml、1ug/ml、0.5ug/ml、0.1ug/ml、若しくは0.05ug/ml未満のEC50で結合する。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13及びH16から選択される1つ以上、又は少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、若しくは10のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ、並びにH3、H4、H7、H10、H14及びH15から選択される1つ以上、又は少なくとも1、2、3、4、5、又は6つのグループ2サブタイプに、約0.01ug/ml~約5ug/ml、又は約0.01ug/ml~約0.5ug/ml、又は約0.01ug/ml~約0.1ug/ml、又は約5ug/ml、1ug/ml、0.5ug/ml、0.1ug/ml、若しくは0.05ug/ml未満のEC50で結合する。一実施形態では、抗体は、約0.01ug/ml~約5ug/mlの間、又は約0.01ug/ml~約0.5ug/mlの間、又は約0.01ug/ml~約0.1ug/mlの間、又は約5ug/ml未満、1ug/ml、0.5ug/ml、0.1ug/ml、又は0.05ug/mlのEC50で、H2、H4、H5、H6、H7、及びH9などのパンデミックを引き起こす可能性を有する1つ以上のA型インフルエンザサブタイプに結合する。一実施形態では、抗体は、約0.01ug/ml~約5ug/mlの間、又は約0.01ug/ml~約0.5ug/mlの間、又は約0.01ug/ml~約0.1ug/mlの間、又は約5ug/ml未満、1ug/ml、0.5ug/ml、0.1ug/ml、又は0.05ug/mlのEC50で、季節性H1N1及びH3N2ウイルスに結合する。
【0064】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、HA2のストーク領域内に位置するエピトープを認識する。より特定の実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、HA2の保存されたストーク領域内の立体構造エピトープに結合する。一実施形態では、エピトープは、接触残基として、HA2のストーク領域内の位置18、19、42、45(位置は、Weiss et al.,(1990)J.Mol.Biol.212,737-761に記載のH3付番システムに従って付番される)から選択される1つ以上のアミノ酸を含む。より特定の実施形態では、エピトープは、接触残基として、HA2のストーク領域内の18、19、42及び45から選択される1つ以上のアミノ酸を含む。さらなる実施形態では、エピトープは、接触残基として、HA2のストーク領域内のアミノ酸18、19、42及び45を含む。さらなる実施形態では、エピトープは、接触残基として、HA2のストーク領域内のアミノ酸18、19、及び42を含む。
【0065】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、ウイルスとエンドソーム膜との間のHA媒介性融合にとって要求されるpH誘発性の立体構造変化を阻害することにより、A型インフルエンザの活性を中和する。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、HA0タンパク質のHA1及びHA2サブユニットへのプロテアーゼ切断を阻害し、それにより融合ペプチドの接近性に干渉することにより、A型インフルエンザの活性を中和する。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、A型インフルエンザウイルスの細胞-細胞間感染を阻害する。
【0066】
他の実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、A型インフルエンザウイルス感染の活性を、ウイルスを排除することにより低減し得る。一実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、例えば、ADCC、ADCP、及びCDCを含む、1つ以上のFcエフェクター機能を介して、ウイルスを排除し得る。
【0067】
一実施形態では、A型インフルエンザウイルスに特異的に結合する抗体は、2013年10月2日に出願された米国仮特許出願第61/885,808号明細書、及び2014年5月23日に出願された米国仮特許出願第62/002,414号明細書、及び2014年10月1日に出願された国際出願第PCT/US2014/058652号パンフレットに記載されている。これら開示の各々は、ここでその全体が参照により本明細書中に援用される。
【0068】
MEDI8852
一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体は、インフルエンザHAタンパク質の保存されたストーク領域に結合し、広範なインフルエンザウイルスパネルに対して結合及び/又は中和する能力があるヒトIgG1κモノクローナル抗体(mAb)のMEDI8852を含む。
【0069】
一実施形態では、抗体は、MEDI8852のVH及び/又はVL配列の少なくとも1つに対して少なくとも1つの列挙されるパーセント同一性を有するVH及び/又はVLを含む。一実施形態では、抗体は、配列番号2のVHアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は100%の同一性を有するVHアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号2のVHアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するVHアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号7のVLアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は100%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号7のVLアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む。一実施形態では、抗体は、配列番号2のVHアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は100%の同一性を有するVHアミノ酸配列及び配列番号7のVLアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は100%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、抗体は、配列番号2のVHアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するVHアミノ酸配列及び配列番号7のVLアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するVLアミノ酸配列を含む。
【0070】
相補性決定領域(CDR)
可変ドメイン(VH及びVL)が抗原結合領域を含む一方で、その可変性は、抗体の可変ドメインをわたり均等に分布しているわけではない。可変性は、軽鎖(VL又はVK)及び重鎖(VH)可変ドメインの双方で相補性決定領域(CDR)と称される区間に集中している。可変ドメインの中でより高度に保存されている部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然の重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、主としてβシート構成をとる、3つのCDRで接続された4つのFRを含み、CDRが形成するループがこのβシート構造を接続し、ある場合にはβシート構造の一部を形成する。各鎖のCDRは、FRによって近接して一体に保持され、他方の鎖のCDRとともに抗体の抗原結合部位の形成に寄与する。重鎖の3つのCDRは、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3と命名され、軽鎖の3つのCDRは、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3と命名される。Kabat付番システムを使用して、HCDR1は、大体アミノ酸31(すなわち、1番目のシステイン残基の後から約9残基目)で始まり、約5~7のアミノ酸を含み、且つ次のチロシン残基で終結する。HCDR2は、HCDR1の末端の後から15番目の残基で始まり、約16~19のアミノ酸を含み、且つ次のアルギニン又はリジン残基で終結する。HCDR3は、HCDR2の末端の後から約33番目のアミノ酸残基で始まり、3~25のアミノ酸を含み、且つ配列W-G-X-G(式中、Xは任意のアミノ酸である)で終結する。LCDR1は、大体残基24(すなわち、システイン残基の後)で始まり、約10~17の残基を含み、且つ次のチロシン残基で終結する。LCDR2は、LCDR1の末端の後から約16番目の残基で始まり、約7つの残基を含む。LCDR3は、LCDR2の末端の後から約33番目の残基で始まり;約7~11の残基を含み、且つ配列F-G-X-G(式中、Xは任意のアミノ酸である)で終結する。CDRが抗体と抗体の間でかなり異なり、また定義によると、Kabat共通配列との相同性を呈することはない。
【0071】
一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体は、HCDR1(配列番号3)、HCDR2(配列番号4)、及びHCDR3(配列番号5)から選択される重鎖CDRに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する1つ以上の重鎖CDRを含む。別の実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体は、LCDR1(配列番号8)、LCDR1(配列番号9)、及びLCDR1(配列番号10)から選択される軽鎖CDRに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する1つ以上の軽鎖CDRを含む。一実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体は、HCDR1(配列番号3)、HCDR2(配列番号4)、及びHCDR3(配列番号5)から選択される重鎖CDRに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する1つ以上の重鎖CDR、並びにLCDR1(配列番号8)、LCDR1(配列番号9)、及びLCDR1(配列番号10)から選択される軽鎖CDRに対して少なくとも75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する1つ以上の軽鎖CDRを含む。
【0072】
フレームワーク領域
重鎖及び軽鎖の可変ドメインは各々、可変ドメインの最も高度に保存された部分である4つのフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、FR4)を含む。重鎖の4つのFRは、FR-H1、FR-H2、FR-H3及びFR-H4と命名され、軽鎖の4つのFRは、FR-L1、FR-L2、FR-L3及びFR-L4と命名される。Kabat付番システムを使用して、FR-H1は、位置1で始まり、大体アミノ酸30で終結し、FR-H2は、大体アミノ酸36~49であり、FR-H3は大体アミノ酸66~94であり、FR-H4は、大体アミノ酸103~113である。FR-L1は、アミノ酸1で始まり、大体アミノ酸23で終結し、FR-L2は、大体アミノ酸35~49であり、FR-L3は、大体アミノ酸57~88であり、FR-L4は、大体アミノ酸98~107である。特定の実施形態では、フレームワーク領域は、Kabat付番システムに従う置換、例えば、FR-L1における106Aでの挿入を含んでもよい。
【0073】
抗体のA型インフルエンザウイルスに対する結合親和性を改善又は最適化するため、天然置換に加えて、1つ以上の改変、例えばFR残基の1つ以上の置換が抗体中にさらに導入されてもよい。修飾すべきフレームワーク領域残基の例として、抗原に非共有結合的に直接結合するもの(Amit et al.,(1986) Science,233:747-753);CDRの立体構造に対して相互作用/影響するもの(Chothia et al.,(1987) J.Mol.Biol.,196:901-917);及び/又はVL-VH界面に関与するもの(米国特許第5,225,539号明細書)が挙げられる。
【0074】
CDR領域内の突然変異が親和性及び機能を改善し得る一方で、フレームワーク領域内の突然変異は免疫原性のリスクを増加させ得る。このリスクは、抗体の活性に悪影響を及ぼすことなく、フレームワーク突然変異を生殖系列に戻すことにより低下され得る。一実施形態では、「生殖系列化(germlining)」を目的として、FRは1つ以上のアミノ酸変化を含んでもよい。生殖系列化では、選択された抗体の重鎖及び軽鎖のアミノ酸配列は、生殖系列の重鎖及び軽鎖アミノ酸配列と比較され、生殖系列の立体配置と異なる選択されたVL及び/又はVH鎖の特定のフレームワーク残基は、生殖系列の立体配置に「復帰突然変異」され、フレームワークアミノ酸配列は、生殖系列フレームワークアミノ酸配列と同じに戻るように変化される。フレームワーク残基のかかる「復帰突然変異」又は「生殖系列化」は、限定はされないが、部位特異的変異誘発及びPCR介在性突然変異誘発を含む、特定の突然変異を導入するための標準的な分子生物学的方法により達成され得る。
【0075】
ヌクレオチド配列
別の実施形態では、アミノ酸配列に対応し、本明細書に記載の抗体をコードするヌクレオチド配列が提供される。従って、本明細書に記載の抗体のCDR及びFRを含む、VH及びVL領域をコードするポリヌクレオチド配列、並びに細胞内でのその効率的発現のための発現ベクターが提供される。
【0076】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2のVHアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は100%の同一性を有するVHアミノ酸配列をコードする。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2のVHアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するVHアミノ酸配列を含む。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は100%の同一性を有する核酸配列を有する。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号1の核酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する核酸配列を有する。
【0077】
別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号7のVLアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は100%の同一性を有するVLアミノ酸配列をコードする。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号7のVLアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するVLアミノ酸配列をコードする。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号6の核酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は100%の同一性を有する核酸配列を有する。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号6の核酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有する核酸配列を有する。
【0078】
一実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2のVHアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は100%の同一性を有するVHアミノ酸配列及び配列番号7のVLアミノ酸配列に対して少なくとも75%、80%、85%、90%、95%又は100%の同一性を有するVLアミノ酸配列をコードする。別の実施形態では、ポリヌクレオチドは、配列番号2のVHアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を有するVHアミノ酸配列及び配列番号7のVLアミノ酸配列に対して少なくとも90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%の同一性を含む。
【0079】
本発明はまた、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドに対して、本明細書で定義される通り、ストリンジェントな又はより低いストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドを包含する。
【0080】
ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件としては、限定はされないが、6×塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム(SSC)中約45℃でのフィルタに結合したDNAとのハイブリダイゼーションと、続く0.2×SSC/0.1%SDS中約50~65℃での1回以上の洗浄、高度にストリンジェントな条件、例えば6×SSC中約45℃でのフィルタに結合したDNAとのハイブリダイゼーションと、続く0.1×SSC/0.2%SDS中約65℃での1回以上の洗浄、又は当業者に公知の任意の他のストリンジェントなハイブリダイゼーション条件(例えば、Ausubel,F.M.et al.,eds.(1989)Current Protocols in Molecular Biology,vol.1,Green Publishing Associates,Inc.and John Wiley and Sons,Inc.,NYの6.3.1~6.3.6頁及び2.10.3頁を参照のこと)が挙げられる。
【0081】
実質的に同一な配列は、多形配列(すなわち、集団内の代替配列又は対立遺伝子)を含む。対立遺伝子の差異は、1つの塩基対と同程度に小さくてもよい。実質的に同一な配列はまた、サイレント突然変異を含む配列を含む、変異誘発された配列を含んでもよい。突然変異は、1つ以上の残基の変化、1つ以上の残基の欠失、又は1つ以上のさらなる残基の挿入を含んでもよい。
【0082】
当該技術分野で公知の任意の方法により、ポリヌクレオチドを得て、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定してもよい。例えば、抗体のヌクレオチド配列が公知である場合、抗体をコードするポリヌクレオチドは、化学合成されたオリゴヌクレオチドから構築されてもよい(例えば、Kutmeier et al.,(1994) BioTechniques 17:242を参照)。簡潔に述べると、抗体をコードする配列の一部を含有するオーバーラップオリゴヌクレオチドは、合成、アニール、ライゲート、次いでPCRにより増幅される。
【0083】
抗体をコードするポリヌクレオチドはまた、好適な供給源由来の核酸から作成してもよい。特定の抗体をコードする核酸を含むクローンが入手できないが、抗体分子の配列が公知である場合、免疫グロブリンをコードする核酸は、化学的に合成するか、或いは、好適な供給源、例えば、抗体cDNAライブラリ、又は、抗体を発現する任意の組織若しくは細胞、例えば抗体を発現するために選択されるハイブリドーマ細胞から作成されるcDNAライブラリ、又はそれから単離される核酸、例えばポリA+RNAから、例えば、配列の3’及び5’末端にハイブリダイズ可能な合成プライマーを用いるPCR増幅により、又は特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いるクローニングし、抗体をコードするcDNAライブラリからcDNAクローンを同定することにより、入手してもよい。次に、PCRによって生成される増幅核酸は、当該技術分野で周知の任意の方法を用いて、複製可能なクローニングベクターにクローニングすることができる。
【0084】
一旦抗体のヌクレオチド配列及び対応するアミノ酸配列が決定されると、抗体のヌクレオチド配列は、限定はされないが、組換えDNA技術、部位特異的突然変異誘発、及びPCRを含む当該技術分野で公知の方法を用いて操作することで、異なるアミノ酸配列を有する抗体を作製し、例えばアミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を作出してもよい(例えば、Sambrook et al.,(1990)、Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.及びAusubel et al.,eds.,(1998) Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NYに記載される技術を参照)。
【0085】
結合特性
上記の通り、抗A型インフルエンザ抗体又はその抗原結合断片は、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つの特定のエピトープ又は抗原決定基に免疫特異的に結合する。さらなる特定の実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその抗原結合断片は、A型インフルエンザウイルスのHAストークタンパク質、ペプチド、サブユニット、断片、部分又はその任意の組み合わせの少なくとも1つの特定のエピトープ又は抗原決定基に、他のポリペプチドに関しては排他的又は優先的に結合する。
【0086】
結合アッセイは、抗体の結合特性を測定するために実施され得、限定はされないが、直接結合アッセイ又は競合結合アッセイを含む。一実施形態では、結合は、標準ELISA又はフローサイトメトリーアッセイを用いて検出され得る。直接結合アッセイでは、候補抗体がその同族抗原への結合について試験される。競合結合アッセイでは、候補抗体の、A型インフルエンザウイルスのHAストークに結合する公知の抗体又は他の化合物と競合する能力が評価される。一般に、抗体の検出可能なA型インフルエンザウイルスのHAストークとの結合を可能にする任意の方法は、抗体の結合特性を検出及び測定するために用いることができる。
【0087】
抗原と抗体との間の結合の親和性定数及び特異性を測定することは、抗体又はその断片を用いて、予防、治療、診断及び研究方法の有効性を確認するのに有益であり得る。「結合親和性」は、一般に、分子(例えば抗体)の単一の結合部位とのその結合パートナー(例えば抗原)との間の非共有的相互作用の合計の強さを指す。特に指定されない限り、本明細書で用いられるとき、「結合親和性」は、結合ペアのメンバー間(例えば、抗体と抗原)の1:1相互作用を反映する内因性結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、一般にkoff/kon比として計算される平衡解離定数(Kd)によって表すことができる(Chen et al.,(1999) J.Mol Biol 293:865-881を参照)。低親和性抗体は、一般に抗原に緩徐に結合し、容易に解離する傾向がある一方で、高親和性抗体は、一般に抗原により迅速に結合し、結合状態をより長く維持する傾向がある。本発明の抗体の結合特性の判定に適した方法及び試薬は、当該技術分野で公知であり、及び/又は市販されている(例えば、米国特許第6,849,425号明細書;同第6,632,926号明細書;同第6,294,391号明細書;同第6,143,574号明細書を参照のこと)。さらに、かかる動力学分析のために設計された機器及びソフトウェアは市販されている(例えば、Biacore(登録商標)A100、及びBiacore(登録商標)2000機器;Biacore International AB,Uppsala,Sweden)。
【0088】
一実施形態では、本発明の抗体(その結合断片又は変異体を含む)はまた、そのA型インフルエンザウイルスに対する結合親和性の観点から説明又は特定され得る。典型的には、高い親和性を有する抗体は、10-7M未満のKdを有する。一実施形態では、抗体又はその結合断片は、A型インフルエンザウイルス、又はその断片若しくは変異体に、5×10-7M以下、10-7M、5×10-8M、10-8M、5×10-9M、10-9M、5×10-10M、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M、10-12M、5×10-13M、10-13M、5×10-14M、10-14M、5×10-15M又は10-15Mの解離定数すなわちKdで結合する。さらなる特定の実施形態では、抗体又はその結合断片は、A型インフルエンザウイルス、又はその断片若しくは変異体に、5×10-10M以下、10-10M、5×10-11M、10-11M、5×10-12M又は10-12Mの解離定数すなわちKdで結合する。本発明は、A型インフルエンザウイルスに、個別の列挙された値のいずれかの間の範囲内に含まれる解離定数すなわちKdで結合する抗体を包含する。
【0089】
別の実施形態では、抗体又はその結合断片は、A型インフルエンザウイルス又はその断片若しくは変異体に、5×10-2秒-1、10-2秒-1、5×10-3秒-1又は10-3秒-1、5×10-4秒-1、10-4秒-1、5×10-5秒-1、又は10-5秒-1、5×10-6秒-1、10-6秒-1、5×10-7秒-1又は10-7秒-1以下のオフ速度(koff)で結合する。より特定の実施形態では、抗体又はその結合断片は、A型インフルエンザウイルス又はその断片若しくは変異体に、5×10-4秒-1、10-4秒-1、5×10-5秒-1、又は10-5秒-1、5×10-6秒-1、10-6秒-1、5×10-7秒-1又は10-7秒-1以下のオフ速度(koff)で結合する。本発明はまた、A型インフルエンザウイルスに、個別の列挙された値のいずれかの間の範囲内に含まれるオフ速度(koff)で結合する抗体を包含する。
【0090】
別の実施形態では、抗体又はその結合断片は、A型インフルエンザウイルス又はその断片若しくは変異体に、103M-1秒-1、5×103M-1秒-1、104M-1秒-1、5×104M-1秒-1、105M-1秒-1、5×105M-1秒-1、106M-1秒-1、5×106M-1秒-1、107M-1秒-1、又は5×107M-1秒-1以上のオン速度(kon)で結合する。より特定の実施形態では、抗体又はその結合断片は、A型インフルエンザウイルス又はその断片若しくは変異体に、105M-1秒-1、5×105M-1秒-1、106M-1秒-1、5×106M-1秒-1、107M-1秒-1又は5×107M-1秒-1以上のオン速度(kon)で結合する。本発明は、A型インフルエンザウイルスに、個別の列挙された値のいずれかの間の範囲内に含まれるオン速度(kon)で結合する抗体を包含する。
【0091】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、A型インフルエンザウイルスのHAストークに免疫特異的に結合し、A型インフルエンザウイルス感染を中和する能力がある。中和アッセイは、当該技術分野で公知の方法を用いて実施され得る。用語「阻害濃度50%」(「IC50」と略記される)は、A型インフルエンザウイルスの50%中和に要求される阻害剤(例えば抗体)の濃度を表す。より低いIC50値がより強力な阻害剤に対応することは当業者により理解されるであろう。
【0092】
一実施形態では、本発明に記載の抗体又はその抗原結合断片は、マイクロ中和アッセイでのA型インフルエンザウイルスの中和における、約0.01ug/ml~約50ug/mlの範囲内、又は抗体の約0.01ug/ml~約5ug/mlの範囲内、又は抗体の約0.01ug/ml~約0.1ug/mlの範囲内での50%阻害濃度(IC50ug/ml)として表される中和能力を有する。
【0093】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、細胞死を誘導し得る。「細胞死を誘導する」抗体又はその抗原結合断片は、生細胞が生育不能になる原因となるものである。一実施形態では、本明細書に記載の抗体又はその断片は、ADCC、CDC、及び/又はADCPを介して細胞死を誘導し得る。ADCC、CDC及びADCPを測定するためのアッセイは公知である。
【0094】
一実施形態では、抗体又はその断片は、アポトーシスを介して細胞死を誘導する。「アポトーシスを誘導する」抗体又はその断片は、アネキシンVの結合、DNAの断片化、細胞収縮、小胞体の拡大、細胞断片化、及び/又は膜小胞(アポトーシス体と称される)の形成によって判定されるようなプログラム細胞死を誘導するものである。アポトーシスに関連した細胞事象を評価するため、様々な方法が利用可能である。例えば、ホスファチジルセリン(PS)転座は、アネキシン結合によって測定され得;DNA断片化は、DNAラダリングを通じて評価され得;またDNA断片化に伴う核/クロマチン縮合は、低二倍体細胞における任意の増加により評価され得る。
【0095】
抗体の産生
以下に、本明細書に記載のような抗体及びその断片の産生のための技術を説明する。
【0096】
モノクローナル抗体
モノクローナル抗体は、ハイブリドーマの使用(Kohler et al.,(1975)Nature,256:495;Harlow et al.,(1988)Antibodies:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.);Hammerling,et al.,(1981):Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563-681(Elsevier,N.Y.)、組換え技術、及びファージディスプレイ技術、又はそれらの組み合わせを含めた、当該技術分野において公知の幅広い技術を用いて調製することができる。用語「モノクローナル抗体」は、本明細書で使用されるとき、実質的に同種の抗体又は単離抗体の集団から得られる抗体を指し、ここで、その集団を構成する個別の抗体が、少量存在し得る天然に存在する可能な突然変異を除いては同一である。モノクローナル抗体は高度に特異的であり、且つ単一の抗原部位を標的とする。さらに、異なる決定基(エピトープ)を標的とする異なる抗体を含むポリクローナル抗体製剤と対照的に、各モノクローナル抗体が抗原上の同じ決定基を標的とする。その特異性に加え、モノクローナル抗体は、他の抗体による汚染なしに合成され得る点で有利である。修飾語「モノクローナル」は、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするものと解釈されるべきではない。以下はモノクローナル抗体の代表的な産生方法の説明であり(この説明は限定することを意図するものではない)、例えばモノクローナル哺乳類抗体、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、ドメイン、ダイアボディ、ワクチボディ、線状抗体及び多重特異性抗体の産生に用いることができる。
【0097】
ハイブリドーマ技法
ハイブリドーマ技術を用いた特異的抗体の産生及びスクリーニング方法は、当該技術分野においてルーチンであり、周知されている。ハイブリドーマ法では、マウス又は他の適切な宿主動物、例えばハムスターを免疫して、免疫化に用いた抗原に特異的に結合し得る抗体を産生する又はその産生能を有するリンパ球を誘導する。或いは、インビトロでリンパ球を免疫してもよい。免疫後、リンパ球を単離し、次に好適な融剤又は融合パートナー、例えばポリエチレングリコールを使用して骨髄腫細胞株と融合することにより、ハイブリドーマ細胞を形成する(Goding,(1986)Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press))。特定の実施形態では、選択される骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による安定した高度な抗体産生を支持し、且つ融合しなかった親細胞を選択外にする選択培地に対して感受性を有するものである。一態様において、骨髄腫細胞株はマウス骨髄腫株、例えば、ソーク研究所細胞頒布センター(Salk Institute Cell Distribution Center),San Diego,Calif.USAから入手可能なMOPC-21及びMPC-11マウス腫瘍に由来するもの、並びにアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection),Rockville,Md.USAから入手可能なSP-2及び誘導体、例えばX63-Ag8-653細胞である。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている(Kozbor,J.(1984)Immunol.,133:3001;及びBrodeur et al.,(1987)Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York))。
【0098】
所望の特異性、親和性、及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定されると、クローンを限界希釈手順によりサブクローニングし、標準方法により成長させることができる。この目的に好適な培養培地としては、例えば、D-MEM又はRPMI-1640培地が挙げられる。加えて、ハイブリドーマ細胞は、例えば細胞をマウスに腹腔内注射することにより、動物において腹水腫瘍としてインビボで成長させてもよい。
【0099】
サブクローンにより選択されたモノクローナル抗体は、アフィニティークロマトグラフィー(例えば、プロテインA又はプロテインGセファロース)又はイオン交換クロマトグラフィー、アフィニティータグ、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、及び透析を含むがこれらに限定されない従来の抗体精製手順によって培養培地、腹水、又は血清と分離することができる。
【0100】
組換えDNA技法
組換えDNA技術を用いて特異的抗体を産生及びスクリーニングするための方法は、日常的で当該技術分野で周知である。モノクローナル抗体又はその断片をコードするDNAは、通常の手順を用いて容易に単離及び/又は配列決定され得る。一旦単離されると、DNAは発現ベクター中に挿入されてもよく、それは宿主細胞、例えば、大腸菌(E.Coli)細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、又は別の状況であれば抗体タンパク質を産生しない骨髄腫細胞に遺伝子導入され、組換え宿主細胞においてモノクローナル抗体の合成を得ることができる。
【0101】
抗体又はその変異体の組換え発現は、一般に、抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構築を必要とする。従って、本明細書に提供されるのは、プロモーターに作動可能に連結された、抗体分子、抗体の重鎖若しくは軽鎖、抗体の重鎖若しくは軽鎖可変ドメイン又はその一部、又は重鎖若しくは軽鎖CDRをコードするヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターである。かかるベクターは、抗体分子の定常領域をコードするヌクレオチド配列を含んでもよく、また抗体の可変ドメインは、全重鎖、全軽鎖、又は全重鎖及び全軽鎖の双方の発現のため、かかるベクターにクローン化されてもよい。
【0102】
一旦発現ベクターが通常の技術により宿主細胞に導入されると、抗体を産生するため、トランスフェクト細胞は通常の技術により培養され得る。従って、本明細書に提供されるのは、異種プロモーターに作動可能に連結された、本明細書に記載の抗体又はその断片、又はその重鎖若しくは軽鎖、又はその一部、又は一本鎖抗体をコードするポリヌクレオチドを含有する宿主細胞である。二重鎖抗体の発現についての特定の実施形態では、重鎖及び軽鎖の双方をコードするベクターは、全免疫グロブリン分子の発現のため、宿主細胞内で同時発現されてもよい。
【0103】
組換え抗体の発現用宿主として利用可能な哺乳類細胞株は、当該技術分野において周知されており、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(American Type Culture Collection:ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株、限定はされないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒーラー細胞、ベビーハムスター腎(BHK)細胞、サル腎細胞(COS)、ヒト肝細胞癌細胞(例えば、Hep G2)、ヒト上皮腎293細胞、及び数多くの他の細胞株が挙げられる。異なる宿主細胞は、タンパク質及び遺伝子産物の翻訳後プロセシング及び修飾について特徴的で特異的な機構を有する。発現させた抗体又はその一部分の正しい修飾及びプロセシングが確実となるように、適切な細胞株又は宿主系を選択することができる。このため、適切な一次転写物のプロセシング、遺伝子産物のグリコシル化及びリン酸化のための細胞機構を有する真核生物宿主細胞が用いられ得る。かかる哺乳類宿主細胞としては、限定はされないが、CHO、VERY、BHK、ヒーラー、COS、MDCK、293、3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT2O及びT47D、NS0(いかなる機能性免疫グロブリン鎖も内因的に産生しないマウス骨髄腫細胞株)、SP20、CRL7O3O及びHsS78Bst細胞が挙げられる。ヒトリンパ球を不死化することにより開発されたヒト細胞株を使用してモノクローナル抗体を組換え産生することができる。ヒト細胞株PER.C6.(Crucell,オランダ)を使用してモノクローナル抗体を組換え産生することができる。
【0104】
組換え抗体の発現用宿主として用いられ得るさらなる細胞株としては、限定はされないが、昆虫細胞(例えばSf21/Sf9、イラクサギンウワバ(Trichoplusia ni)Bti-Tn5b1-4)又は酵母細胞(例えばS.セレビシエ(S.cerevisiae)、ピキア属(Pichia)、米国特許第7326681号明細書;他)、植物細胞;及びニワトリ細胞が挙げられる。
【0105】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体及びその断片は、細胞株中で安定的に発現され得る。安定的発現は、組換えタンパク質の長期の高収率産生のために用いることができる。宿主細胞は、限定はされないが、プロモーター、エンハンサー、転写ターミネーター、及びポリアデニル化部位、及び選択可能マーカー遺伝子を含む発現制御エレメントを含む適切に設計されたベクターで形質転換され得る。外来DNAの導入後、細胞を1~2日間強化培地で成長させてもよく、次に選択培地に切り換える。組換えプラスミドにおける選択可能なマーカーが選択に対する耐性を付与し、プラスミドをその染色体に安定的に組み込んだ細胞の成長及びフォーカスの形成を可能にすることで、次にはそのフォーカスをクローニングし、細胞株へと拡大することができる。安定細胞株を高収率で作製する方法は当該技術分野において周知されており、概して試薬が市販されている。
【0106】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体及びその断片は、一時的に細胞株で発現させる。一過性トランスフェクションは、細胞に導入された核酸が当該細胞のゲノム又は染色体DNAに組み込まれないプロセスである。それは実際、染色体外要素、例えばエピソームとして細胞に維持される。エピソームの核酸の転写プロセスは影響を受けず、エピソームの核酸によりコードされるタンパク質が産生される。
【0107】
細胞株は、安定的にトランスフェクトされるものも、或いは一時的にトランスフェクトされるものも、モノクローナル抗体の発現及び産生のための当該技術分野において公知の細胞培養培地及び条件に維持される。特定の実施形態では、哺乳類細胞培養培地は、例えばDMEM又はHam F12を含む市販の培地製剤をベースとする。他の実施形態では、細胞培養培地は、細胞成長及び生物学的タンパク質発現の両方の増加を支援するように修飾される。本明細書で使用されるとき、用語「細胞培養培地」、「培養培地」、及び「培地製剤」は、多細胞生物又は組織の外部の人工インビトロ環境で細胞を維持し、成長させ、増殖させ、又は拡大するための栄養溶液を指す。細胞培養培地は、例えば、細胞の成長を促進するように配合された細胞培養成長培地、又は組換えタンパク質産生を促進するように配合された細胞培養産生培地を含め、特定の細胞培養用途に改変され得る。用語の栄養素、成分、及び構成成分は、本明細書では、細胞培養培地を構成する構成物を指して同義的に使用される。
【0108】
一実施形態では、細胞株は流加法を用いて維持される。本明細書で使用されるとき、「流加法」は、初めに基礎培地でインキュベートされた後、流加細胞培養物にさらなる栄養素が供給される方法を指す。例えば、流加法は、所与の時間内に所定の補給スケジュールに従い補足培地を添加することを含み得る。従って、「流加細胞培養物」は、細胞、典型的には哺乳類細胞、及び培養培地が培養槽に最初に供給され、且つ培養終了前の定期的な細胞及び/又は産物の回収を伴い、又は伴わずさらなる培養栄養素が培養中に培養物に対して連続的に、又は不連続に徐々に補給される細胞培養物を指す。
【0109】
好適な細胞培養培地及びそこに含まれる栄養素は、当業者に周知されている。一実施形態では、細胞培養培地は、基礎培地と、少なくとも1つの加水分解物、例えば、大豆ベースの加水分解物、酵母ベースの加水分解物、又はこれらの2種類の加水分解物の組み合わせとを含むことで、変法基礎培地をもたらす。別の実施形態では、さらなる栄養素は、濃縮基礎培地など、基礎培地のみを含んでもよく、又は加水分解物、若しくは濃縮加水分解物のみを含んでもよい。好適な基礎培地としては、限定はされないが、ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM)、DME/F12、最小必須培地(MEM)、イーグル基礎培地(BME)、RPMI 1640、F-10、F-12、α-最小必須培地(α-MEM)、グラスゴー最小必須培地(G-MEM)、PF CHO(例えば、CHOタンパク質不含培地(Sigma)又はCHO細胞用タンパク質不含EX-CELL(商標)325 PF CHO無血清培地(SAFC Bioscience)を参照のこと、及びイスコフ改変ダルベッコ培地が挙げられる。基礎培地の他の例としては、BME基礎培地(Gibco-Invitrogen;Eagle,H(1965)Proc.Soc.Exp.Biol.Med.89,36もまた参照のこと);ダルベッコ変法イーグル培地(DMEM、粉末)(Gibco-Invitrogen(#31600);Dulbecco and Freeman(1959)Virology 8:396;Smith et al.,(1960)Virology 12:185.Tissue Culture Standards Committee,In Vitro 6:2,93もまた参照のこと);CMRL 1066培地(Gibco-Invitrogen(#11530);Parker et al.,(1957)Special Publications,N.Y.Academy of Sciences,5:303もまた参照のこと)が挙げられる。
【0110】
基礎培地は無血清、つまり培地は血清(例えば、ウシ胎仔血清(FBS)、ウマ血清、ヤギ血清、又は当業者に公知の任意の他の動物由来血清)を含有しないか、又は動物性タンパク質不含培地又は化学限定培地であってもよい。
【0111】
基礎培地は、様々な無機及び有機緩衝剤、1つ又は複数の界面活性剤、及び塩化ナトリウムなどの、標準的な基礎培地に見られる特定の非栄養成分を除去するため、修飾され得る。基礎細胞培地からかかる構成成分を除去することにより、残りの栄養成分の濃度を高めることができ、細胞成長及びタンパク質発現が全体的に向上し得る。加えて、取り除いた構成成分を、細胞培養条件の要件に応じて、変法基礎細胞培地を含有する細胞培養培地に加え戻してもよい。特定の実施形態では、細胞培養培地は、変法基礎細胞培地と、以下の栄養素、すなわち、鉄源、組換え成長因子;緩衝剤;界面活性剤;容量オスモル濃度調節因子;エネルギー源;及び非動物性加水分解物の少なくとも1つとを含有する。加えて、変法基礎細胞培地は、任意選択的に、アミノ酸、ビタミン、又はアミノ酸とビタミンとの両方の組み合わせを含有し得る。別の実施形態では、変法基礎培地は、グルタミン、例えば、L-グルタミン、及び/又はメトトレキサートをさらに含有する。
【0112】
抗体産生は、当該技術分野において公知の流加、バッチ、潅流又は連続供給バイオリアクターを用いるバイオリアクタープロセスによって大量に行われ得る。大規模バイオリアクターは少なくとも1000リットルの容量、例えば、約1,000~100,000リットルの容量を有する。小規模バイオリアクターは、概して容積が約100リットル以下の細胞培養を指し、約1リットル~約100リットルの範囲であり得る。或いは、単回使用バイオリアクター(SUB)が、大規模培養又は小規模培養のいずれにも用いられ得る。
【0113】
温度、pH、撹拌、曝気及び接種密度は、使用する宿主細胞及び発現させる組換えタンパク質に応じて異なり得る。例えば、組換えタンパク質細胞培養物は、30~45℃の温度に維持され得る。培地のpHは、培養プロセスの間、pHが、6.0~8.0のpH範囲内(特定の宿主細胞用であり得る)の所望されるレベルで留まるように監視されてもよい。
【0114】
ファージディスプレイ技法
モノクローナル抗体又は抗体断片は、McCafferty et al.,(1990)Nature,348:552-554、Clackson et al.,(1991)Nature,352:624-628及びMarks et al.,(1991)J.Mol.Biol.,222:581-597に記載される技法を用いて作成される抗体ファージライブラリから単離することができる。かかる方法を使用して、抗体は、ヒトリンパ球に由来するmRNAから調製されたヒトVL及びVH cDNAを使用して調製される組換えコンビナトリアル抗体ライブラリ、例えば、scFvファージディスプレイライブラリをスクリーニングすることによって単離することができる。かかるライブラリの調製及びスクリーニング方法は、当該技術分野において公知である。
【0115】
ファージディスプレイ方法では、機能性抗体ドメインが、それをコードするポリヌクレオチド配列を有するファージ粒子の表面に提示される。詳細な実施形態において、ファージを利用して、レパートリー又はコンビナトリアル抗体ライブラリ(例えば、ヒト又はマウスのもの)から発現する抗原結合ドメインを提示することができる。目的の抗原を結合する抗原結合ドメインを発現するファージを、標識された抗原又は固体表面若しくはビーズに結合若しくは捕捉されている抗原を使用して、選択又は同定することができる。これらの方法で用いられるファージは、典型的には、ファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIタンパク質のいずれかと組換え融合されたFab、Fv又はジスルフィド安定化Fv抗体ドメインを有するファージから発現するfd及びM13結合ドメインを含む繊維状ファージである。
【0116】
ファージ選択後、ファージからの抗体コード領域は、ヒト抗体、ヒト化抗体、又は任意の他の所望される抗原結合断片を含む全抗体を作製するため、単離及び使用され得、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母、及び細菌を含む任意の所望される宿主内で発現され得る。
【0117】
抗体の精製及び単離
組換え発現又はハイブリドーマ発現による産生後、抗体分子は、当該技術分野において公知の免疫グロブリン分子を精製する任意の方法により、例えば、イオン交換、親和性、特にプロテインA又はプロテインG親和性に対する親和性によるもの、及びサイズ排除カラムクロマトグラフィーを含むがこれらに限定されないクロマトグラフィー;遠心;溶解度の差によるか;又は任意の他の標準的なタンパク質精製技法により精製され得る。さらに、抗体又はその断片は、精製を促進することが知られる異種ポリペプチド配列(本明細書において「タグ」と称される)に融合されてもよい。
【0118】
組換え技術を用いるとき、抗体は細胞内に産生されるか、細胞膜周辺腔に産生されるか、又は培地中に直接分泌され得る。抗体が細胞内に産生される場合、最初の工程として、宿主細胞又は溶解した断片のいずれかである粒子状デブリが、例えば遠心又は限外ろ過により除去される。Carter et al.,(1992)Bio/Technology,10:163-167は、大腸菌(E.coli)の細胞膜周辺腔に分泌される抗体の単離手順を記載している。抗体が培地中に分泌される場合、概して、初めにかかる発現系からの上清が、市販のタンパク質濃縮フィルタ、例えばAmicon又はMillipore Pellicon限外ろ過ユニットを使用して濃縮される。前述の工程のいずれかにPMSFなどのプロテアーゼ阻害薬を含めてタンパク質分解を阻害してもよく、抗生物質を含めて外来性汚染物の成長を防止してもよい。
【0119】
細胞から調製された抗体組成物は、例えば、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、及び/又はアフィニティークロマトグラフィーを、単独で、或いは他の精製工程との組み合わせで用いて精製することができる。
【0120】
ヒト抗体
ヒト抗体は、当該技術分野で周知の方法を用いて作製され得る。ヒト抗体は、抗体若しくはその断片の迅速なクリアランス又は抗体若しくはその断片に対する免疫応答の生成をもたらし得る、マウス又はラット可変及び/又は定常領域を有する抗体に関連した問題の一部を回避する。
【0121】
ヒト抗体は、インビトロ方法により誘導され得る。好例として、限定はされないが、ファージディスプレイ(MedImmune(以前はCAT)、Morphosys、Dyax、Biosite/Medarex、Xoma、Symphogen、Alexion(以前はProliferon)、Affimed)リボソームディスプレイ(MedImmune(以前はCAT))、酵母ディスプレイなどが挙げられる。未免疫ドナーからの免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、ヒト抗体及び抗体断片をインビトロで産生するため、ファージディスプレイ技術を用いることができる。この技術によると、抗体Vドメイン遺伝子は、糸状バクテリオファージ、例えばM13又はfdのメジャー又はマイナーコートタンパク質遺伝子のいずれかにインフレームでクローン化され、ファージ粒子の表面上に機能的抗体断片として提示される。糸状粒子がファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含有することから、抗体の機能的特性に基づく選択はまた、それら特性を呈する抗体をコードする遺伝子の選択をもたらす。従って、ファージは、B細胞の特性の一部を模倣する。未免疫ヒトドナーからのV遺伝子のレパートリーが構築され得、多様な抗原(自己抗原を含む)アレイに対する抗体が、Marks et al.,(1991) J.Mol.Biol.222:581-597、又はGriffith et al.,(1993) EMBO J.12:725-734により記載された技術に従い、本質的に単離され得る。ヒト抗体はまた、インビトロで活性化されたB細胞により作製されてもよい(米国特許第5,567,610号明細書及び米国特許第5,229,275号明細書を参照)。
【0122】
抗体断片
特定の実施形態では、本発明の抗体は、抗体断片又はかかる断片を含む抗体を含む。典型的には、抗体断片は、全長抗体の一部、典型的にはその抗原結合又は可変領域を含む。抗体断片の例として、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fd及びFv断片、二重特異性抗体、線状抗体並びに一本鎖抗体分子が挙げられる。一実施形態では、抗体断片は、抗原結合断片を含む。
【0123】
伝統的には、抗体の断片は、当該技術分野において公知の技法を用いたインタクトな抗体のタンパク質消化によって得られた。しかしながら、抗体の断片も、組換え宿主細胞が直接産生することができる。Fab、Fv及びscFv抗体断片は全て、大腸菌(E.coli)の細胞型で発現させて、そこから分泌させることができるため、これらの断片は大量産生が容易に可能である。一実施形態では、抗体断片は、抗体ファージライブラリから単離することができる。或いは、Fab’-SH断片を大腸菌(E.coli)から直接回収し、化学的にカップリングすることにより、F(ab’)2断片を形成することもできる(Carter et al.,(1992)Bio/Technology,10:163-167)。別の手法によれば、F(ab’)2断片を組換え宿主細胞培養物から直接単離することができる。抗体断片を産生する他の技術が、当業者には明らかであろう。他の実施形態では、抗体は単鎖Fv断片(scFv)である。
【0124】
抗体断片はまた、ヒト抗体の重(VH)鎖又は軽(VL)鎖の可変領域に対応する、ドメイン抗体、例えば抗体の小さい機能結合単位を含有する抗体、並びに抗原結合領域の対を形成する、タンデムFdセグメントの対(VH-CH1-VH-CH1)を含む直鎖抗体を含み得る(Zapata et al.,(1995) Protein Eng.,8(10):1057-1062を参照)。
【0125】
変異体Fc領域
Fc領域内の変異体は、抗体のエフェクター機能を増強又は減少させ得、抗体の薬物動態特性、例えば半減期を改変し得る。従って、特定の実施形態では、抗体は、抗体の機能及び/又は薬物動態特性を変更するため、1つ以上の改変がFc領域内でなされている、改変されたFc領域(本明細書で「変異体Fc領域」とも称される)を含む。かかる改変は、IgG、及びADCC、又はADCPに対して、Clq結合及びCDC又はFcγR結合の増強又は減弱をもたらすことがある。本発明は、本明細書に記載の抗体とともに、エフェクター機能を微調整し、所望されるエフェクター機能を増強若しくは減弱させるか、又は提供するように改変が設けられている変異体Fc領域を包含する。変異体Fc領域を含む抗体は、ここで「Fc変異体抗体」とも称される。本明細書で用いられるとき、天然は、非修飾親配列を指し、天然Fc領域を含む抗体は、本明細書で「天然Fc抗体」と称される。Fc変異体抗体は、当業者に周知の方法により作製され得る。非限定例として、抗体コード領域(例えばハイブリドーマ由来)を単離することや、Fc領域内に1つ以上の所望される置換を設けることが挙げられる。或いは、抗体の抗原結合部分又は可変領域は、変異体Fc領域をコードするベクター内にサブクローン化されてもよい。一実施形態では、変異体Fc領域は、天然Fc領域と比べて、類似レベルでのエフェクター機能の誘導を示す。別の実施形態では、変異体Fc領域は、天然Fcと比べて、より高いエフェクター機能の誘導を示す。エフェクター機能を測定するための方法は、当該技術分野で周知である。
【0126】
Fc領域の修飾は、限定はされないが、アミノ酸置換、アミノ酸付加、アミノ酸欠失及びFcアミノ酸への翻訳後修飾における変化(例えばグリコシル化)を含み、エフェクター機能を微調整するために用いられてもよい。
【0127】
Fc領域は、第1の定常領域免疫グロブリンドメイン以外の抗体の定常領域を含む。従ってFcは、IgA、IgD、及びIgGの最後の2つの定常領域免疫グロブリンドメイン、及びIgE及びIgMの最後の3つの定常領域免疫グロブリンドメイン、及びこれらのドメインに対する可動性ヒンジN末端を指す。IgA及びIgMに関しては、FcはJ鎖を含み得る。IgGに関しては、Fcは免疫グロブリンドメインCガンマ2及びCガンマ3(Cγ2及びCγ3)、及びCガンマ1(Cγ1)とCガンマ2(Cγ2)との間のヒンジを含み得る。Fc領域の境界は変わり得るが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、通常、残基C226又はP230からそのカルボキシル端を含むように定義され、ここで付番は、Kabatに示される通りのEUインデックスに基づく。Fcは、単離におけるこの領域を指してもよく、又は抗体、抗体断片、若しくはFc融合タンパク質の文脈におけるこの領域を指してもよい。限定はされないが、EUインデックスにより付番するときの270位、272位、312位、315位、356位、及び358位を含む複数の異なるFc位置で多型が観察されており、従って提示される配列と先行技術の配列との間には、僅かな違いが存在し得る。
【0128】
一実施形態では、Fc変異抗体は天然Fc抗体と比較したとき、限定はされないが、FcRn、アイソフォームFcγRIA、FcγRIB、及びFcγRICを含むFcγRI(CD64);FcγRII(CD32、アイソフォームFcγRIIA、FcγRIIB、及びFcγRIICを含む);及びFcγRIII(CD16、アイソフォームFcγRIIIA及びFcγRIIIBを含む)を含め、1つ以上のFc受容体に対して改変された結合親和性を呈する。
【0129】
抗体エフェクター機能は、特定の細胞傷害性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)上に提示されるFc受容体(FcR)上に結合した分泌Igが、これらの細胞傷害性エフェクター細胞が抗原保有細胞に特異的に結合し、その後に細胞を細胞毒で殺滅することを可能にする、細胞傷害性の一形成であるADCCを含む。細胞の表面に特異的な特定の高親和性IgG抗体は、細胞傷害性細胞に「備え」、かかる殺滅にとって必要とされる。細胞の溶解は、細胞外で生じ、直接的な細胞対細胞接触を必要とし、また補体を含まない。
【0130】
別の抗体エフェクター機能は、補体系による細胞破壊の生化学的事象を指すCDCである。補体系は、抗体と組み合わさり、病原菌及び他の外来細胞を破壊する、正常血漿中に見出されるタンパク質の複雑系である。
【0131】
抗体エフェクター機能という用語によって包含されるさらに別のプロセスは、1つ以上のエフェクターリガンドを発現する非特異的細胞傷害性細胞が、細胞上の結合抗体を認識し、その後に細胞の食作用を引き起こすような細胞媒介性反応を指すADCPである。
【0132】
特定の実施形態では、Fc変異体を含む抗体は、天然Fc領域を含む抗体と比べて、細胞傷害性又は食作用活性(例えば、ADCC、CDC及びADCP)の増強を有する。
【0133】
特定の実施形態では、Fc変異体抗体は、天然Fc抗体と比べて、ADCC活性の低下を呈する。特定の実施形態では、Fc変異体抗体は、検出可能なADCC活性を有しない。具体的な実施形態では、ADCC活性の低下及び/又は低減は、Fc変異体抗体がFcリガンド及び/又は受容体に対して呈する親和性の低下に起因し得る。
【0134】
他の実施形態では、Fc変異体抗体は、天然Fc抗体と比べて、ADCC活性の増強を呈する。具体的な実施形態では、ADCC活性の増強は、Fc変異体抗体がFcリガンド及び/又は受容体に対して呈する親和性の増加に起因し得る。
【0135】
一実施形態では、Fc変異体抗体は、天然Fc抗体と比べて、Fc受容体FcγRIIIAへの結合の増強を有し、ADCC活性の増強を有する。
【0136】
特定の実施形態では、細胞傷害性は、CDCによって媒介され、Fc変異体抗体は、天然Fc抗体と比べて、CDC活性の増強又は低減のいずれかを有する。一実施形態では、本明細書に記載の抗体は、天然Fc抗体と比べて、CDC活性の増強を呈する。具体的な実施形態では、CDC活性の増強は、Fc変異体抗体がC1qに対して呈する親和性の増強に起因し得る。抗体は、抗体の主要な作用機序の1つ、CDCを増強するCOMPLEGENT(登録商標)技術(協和発酵キリン株式会社)のおかげで、天然Fc抗体と比べてCDC活性の増強を呈し得る。抗体のアイソタイプIgG3の一部が治療抗体の標準的なアイソタイプであるIgG1の対応する領域に導入される、アイソタイプキメラ化と称される手法を用いて、COMPLEGENT(登録商標)技術は、IgG1又はIgG3のいずれかの場合を上回るほどにCDC活性を著しく増強する一方で、IgG1の望ましい特徴、例えば、ADCC、PK特性及びプロテインA結合性を保持する。さらにそれは、増強されたADCC及びCDC活性を有するさらに優れた治療Mab(ACCRETAMAB(登録商標))を作出する、POTELLIGENT(登録商標)技術と一緒に用いることができる。
【0137】
別の実施形態では、Fc変異体抗体は、天然Fc抗体と比べて、ADCC活性の増強及び血清半減期の増加を有してもよい。一実施形態では、Fc変異体抗体は、天然Fc抗体と比べて、CDC活性の増強及び血清半減期の増加を呈してもよい。別の実施形態では、Fc変異体抗体は、天然Fc抗体と比べて、ADCC活性の増強、CDC活性の増強及び血清半減期の増加を有してもよい。
【0138】
Fc領域を含むタンパク質の血清半減期は、Fc領域のFcRnに対する結合親和性を増強することにより増加され得る。用語「抗体半減期」は、本明細書で用いられるとき、抗体分子のその投与後の平均生存時間の尺度としての抗体の薬物動態特性を意味する。抗体半減期は、例えば、血清中(すなわち循環半減期)、又は他の組織内での測定として、患者の身体又はその特定区画からの既知量の免疫グロブリンの50パーセントを除去するのに要求される時間として表すことができる。半減期は、1つの免疫グロブリン又は免疫グロブリンクラスから別のものにわたって変動してもよい。一般に、抗体半減期の増加が、投与される抗体の循環中の平均滞留時間(MRT)の増加をもたらす。
【0139】
半減期の減少は、患者に投与される薬物量の減少並びに投与頻度の減少を可能にする。抗体の血清半減期を増加させるため、サルベージ受容体結合エピトープが抗体又はその断片に組み込まれてもよい。本明細書で用いられるとき、用語「サルベージ受容体結合エピトープ」は、IgG分子のインビボ血清半減期の増加に関与するIgG分子(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4)のFc領域のエピトープを指す。
【0140】
或いは、半減期の増加を有する抗体は、Fc及びFcRn受容体間の相互作用に関与するものとして同定されたアミノ酸残基を修飾することにより作製されてもよい。さらに、本明細書に記載の抗体の半減期は、当該技術分野で広範に利用される技術によるPEG又はアルブミンへのコンジュゲーションにより増加され得る。
【0141】
一実施形態では、本発明は、Fc変異体を提供し、ここでFc領域は、Kabatで示される通り、EUインデックスによる付番として、221、225、228、234、235、236、237、238、239、240、241、243、244、245、247、250、251、252、254、255、256、257、262、263、264、265、266、267、268、269、279、280、284、292、296、297、298、299、305、308、313、316、318、320、322、325、326、327、328、329、330、331、332、333、334、339、341、343、370、373、378、392、416、419、421、428、433、434、435、436、440、及び443から選択される1つ以上の位置に、修飾(例えば、アミノ酸置換、アミノ酸挿入、アミノ酸欠失)を含む。任意選択的に、Fc領域は、当業者に公知の追加的及び/又は代替的位置に修飾を含んでもよい。
【0142】
具体的な実施形態において、本開示はFc変異体を提供し、ここではFc領域が、Kabatに示される通りのEUインデックスにより付番したときの221K、221Y、225E、225K、225W、228P、234D、234E、234N、234Q、234T、234H、234Y、234I、234V、234F、235A、235D、235R、235W、235P、235S、235N、235Q、235T、235H、235Y、235I、235V、235E、235F、236E、237L、237M、237P、239D、239E、239N、239Q、239F、239T、239H、239Y、240I、240A、240T、240M、241W、241L、241Y、241E、241R、243W、243L、243Y、243R、243Q、244H、245A、247L、247V、247G、250E、250Q、251F、252L、252Y、254S、254T、255L、256E、256F、256M、257C、257M、257N、262I、262A、262T、262E、263I、263A、263T、263M、264L、264I、264W、264T、264R、264F、264M、264Y、264E、265A、265G、265N、265Q、265Y、265F、265V、265I、265L、265H、265T、266I、266A、266T、266M、267Q、267L、268E、269H、269Y、269F、269R、270E、280A、284M、292P、292L、296E、296Q、296D、296N、296S、296T、296L、296I、296H、296G、297S、297D、297E、298A、298H、298I、298T、298F、299I、299L、299A、299S、299V、299H、299F、299E、305I、308F、313F、316D、318A、318S、320A、320S、322A、322S、325Q、325L、325I、325D、325E、325A、325T、325V、325H、326A、326D、326E、326G、326M、326V、327G、327W、327N、327L、328S、328M、328D、328E、328N、328Q、328F、328I、328V、328T、328H、328A、329F、329H、329Q、330K、330G、330T、330C、330L、330Y、330V、330I、330F、330R、330H、331G、331A、331L、331M、331F、331W、331K、331Q、331E、331S、331V、331I、331C、331Y、331H、331R、331N、331D、331T、332D、332S、332W、332F、332E、332N、332Q、332T、332H、332Y、332A、333A、333D、333G、333Q、333S、333V、334A、334E、334H、334L、334M、334Q、334V、334Y、339T、370E、370N、378D、392T、396L、416G、419H、421K、428L、428F、433K、433L、434A、424F、434W、434Y、436H、440Y及び443Wから選択される少なくとも1つの置換を含む。任意選択的に、Fc領域は、当業者に公知の追加的及び/又は代替的なアミノ酸置換を含み得る。
【0143】
具体的な実施形態において、本発明はFc変異抗体を提供し、ここではFc領域が、Kabatに示される通りのEUインデックスにより付番したときの228、234、235及び331から選択される1つ以上の位置に少なくとも1つの修飾(例えば、アミノ酸置換、アミノ酸挿入、アミノ酸欠失)を含む。一実施形態では、修飾は、Kabatに示される通りのEUインデックスにより付番したときの228P、234F、235E、235F、235Y、及び331Sから選択される少なくとも1つの置換である。
【0144】
別の具体的な実施形態において、本発明はFc変異抗体を提供し、ここではFc領域がIgG4 Fc領域であり、且つKabatに示される通りのEUインデックスにより付番したときの228及び235から選択される1つ以上の位置に少なくとも1つの修飾を含む。さらに別の具体的な実施形態において、Fc領域はIgG4 Fc領域であり、天然に存在しないアミノ酸は、Kabatに示される通りのEUインデックスにより付番したときの228P、235E及び235Yから選択される。
【0145】
別の具体的な実施形態において、本発明はFc変異体を提供し、ここではFc領域が、Kabatに示される通りのEUインデックスにより付番したときの239、330及び332から選択される1つ以上の位置に少なくとも1つの天然に存在しないアミノ酸を含む。一実施形態では、修飾は、Kabatに示される通りのEUインデックスにより付番したときの239D、330L、330Y、及び332Eから選択される少なくとも1つの置換である。
【0146】
具体的な実施形態において、本発明はFc変異抗体を提供し、ここではFc領域が、Kabatに示される通りのEUインデックスにより付番したときの252、254、及び256から選択される1つ以上の位置に少なくとも1つの天然に存在しないアミノ酸を含む。一実施形態では、修飾は、Kabatに示される通りのEUインデックスにより付番したときの252Y、254T及び256Eから選択される少なくとも1つの置換である。一実施形態では、修飾は、Kabatに示される通りのEUインデックスにより付番したときの3つの置換252Y、254T及び256E(「YTE」として公知)を含む。
【0147】
特定の実施形態では、IgG抗体により誘発されるエフェクター機能は、タンパク質のFc領域に連結した炭水化物部分に依存する(Claudia Ferrara et al.,(2006)Biotechnology and Bioengineering 93:851-861)。従って、エフェクター機能を増強又は低減するため、Fc領域のグリコシル化の修飾がなされ得る。従って、一実施形態では、抗体のFc領域は、アミノ酸残基の改変されたグリコシル化を含む。別の実施形態では、アミノ酸残基の改変されたグリコシル化の結果、エフェクター機能が低下される。別の実施形態では、アミノ酸残基の改変されたグリコシル化の結果、エフェクター機能が増強される。一実施形態では、Fc領域は、フコシル化の低減を有する。別の実施形態では、Fc領域は脱フコシル化される。
【0148】
シアル酸のIgG分子上のオリゴ糖への付加は、それらの抗炎症活性を増強し、細胞傷害性を改変し得る(Keneko et al.,Science (2006) 313:670-673;Scallon et al.,(2007) Mol.Immuno.44(7):1524-34)。特に、シアリル化の増強を有するIgG分子が抗炎症特性を有する一方で、シアリル化の低減を有するIgG分子は、免疫刺激特性の増強(例えば、ADCC活性の増強)を有する。従って、抗体は、特定の治療的用途のため、適切なシアリル化特性で修飾され得る。一実施形態では、抗体のFc領域は、天然Fc領域と比べて改変されたシアリル化特性を含む。一実施形態では、抗体のFc領域は、天然Fc領域と比べて、シアリル化特性の増強を含む。別の実施形態では、抗体のFc領域は、天然Fc領域と比べて、シアリル化特性の低下を含む。Fcドメインの他の修飾及び/又は置換及び/又は付加及び/又は欠失は、当業者に容易に理解されるであろう。
【0149】
グリコシル化
一実施形態では、本抗体の可変領域内のグリコシル化パターンは、抗体の抗原に対する親和性を改変するように修飾される。一実施形態では、抗体は、脱グリコシル化される(すなわち、抗体はグリコシル化が欠如する)。かかる炭水化物修飾は、例えば抗体配列内部の1つ以上のグリコシル化部位を改変することにより達成され得る。例えば、1つ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の排除をもたらし、それによりその部位でのグリコシル化を排除するような1つ以上のアミノ酸置換がなされ得る。かかる脱グリコシル化は、抗体の抗原に対する親和性を増強させ得る。さらに、脱グリコシル化抗体は、必要なグリコシル化機構が欠如した細菌細胞内で産生されてもよい。
【0150】
抗体コンジュゲート
別の実施形態では、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片は、ある部分に共有結合的に結合されることで、抗体コンジュゲートと称され得る。抗体への結合に適した部分は、限定はされないが、タンパク質、ペプチド、薬剤、標識、及び細胞毒を含み、また抗体又はその断片にコンジュゲートされることで、抗体又は断片の1つ以上の特性(例えば、生化学、結合及び/又は機能)を改変又は微調整し得る。コンジュゲートを形成し、アミノ酸及び/又はポリペプチド改変並びに翻訳後修飾を行うための方法は、当該技術分野で周知である。
【0151】
一実施形態では、結合される物質は、治療剤、検出可能標識(本明細書ではレポーター分子とも称される)又は固体支持体である。抗体との結合に好適な物質としては、限定はされないが、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、多糖、ヌクレオシド、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、核酸、ハプテン、薬物、ホルモン、脂質、脂質集合体、合成高分子、高分子マイクロパーティクル、生体細胞、ウイルス、フルオロフォア、発色団、色素、毒素、ハプテン、酵素、抗体、抗体断片、放射性同位元素、固体マトリックス、半固体マトリックス及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0152】
特定の実施形態では、抗体は固体支持体にコンジュゲートされる。抗体は、スクリーニング及び/又は精製及び/又は製造プロセスの一部として固体支持体にコンジュゲートされてもよい。或いは抗体は、診断方法又は組成物の一部として固体支持体にコンジュゲートされてもよい。好適な固体支持体は、典型的には液相に対して実質的に不溶性である。多数の支持体が利用可能であり、当業者には周知されており、固体及び半固体マトリックス、例えばエーロゲル及びハイドロゲル、樹脂、ビーズ、バイオチップ(薄膜被覆バイオチップを含む)、マイクロ流体チップ、シリコンチップ、マルチウェルプレート(マイクロタイタープレート又はマイクロプレートとも称される)、膜、導電性及び非導電性金属、ガラス(顕微鏡スライドを含む)及び磁気支持体が含まれる。固体支持体のより具体的な例には、シリカゲル、高分子膜、粒子、誘導体化プラスチックフィルム、ガラスビーズ、綿、プラスチックビーズ、アルミナゲル、多糖、例えばセファロース、ポリ(アクリレート)、ポリスチレン、ポリ(アクリルアミド)、ポリオール、アガロース、寒天、セルロース、デキストラン、デンプン、フィコール(FICOLL)、ヘパリン、グリコーゲン、アミロペクチン、マンナン、イヌリン、ニトロセルロース、ジアゾセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン(ポリ(エチレングリコール)を含む)、ナイロン、ラテックスビーズ、磁気ビーズ、常磁性ビーズ、超常磁性ビーズ、及びデンプンが含まれる。
【0153】
一部の実施形態では、固体支持体は、限定はされないが、ヒドロキシル、カルボキシル、アミノ、チオール、アルデヒド、ハロゲン、ニトロ、シアノ、アミド、尿素、カーボネート、カルバメート、イソシアネート、スルホン、スルホネート、スルホンアミド、及びスルホキシドを含めた、抗体を結合するための反応性官能基を含み得る。
【0154】
好適な固相支持体は、所望の最終用途及び様々な合成プロトコルの適合性を基準として選択することができる。例えば、抗体を固体支持体に結合するのにアミド結合形成が望ましい場合、ポリスチレン(例えば、Bachem Inc.、Peninsula Laboratories等から入手可能なPAM樹脂)、POLYHIPE(商標)樹脂(Aminotech,カナダから調達可能)、ポリアミド樹脂(Peninsula Laboratoriesから調達可能)、ポリエチレングリコールにグラフトされたポリスチレン樹脂(TentaGel(商標)、Rapp Polymere,Tubingen,ドイツ)、ポリジメチルアクリルアミド樹脂(Milligen/Biosearch,Californiaから入手可能)、又はPEGAビーズ(Polymer Laboratoriesから調達可能)などの、概してペプチド合成に有用な樹脂が用いられ得る。
【0155】
特定の実施形態では、診断又は他のアッセイのため、抗体又はその断片は標識にコンジュゲートされ、ここで抗体及び/又はその関連リガンドは検出され得る。標識は、限定はされないが、発色団、フルオロフォア、蛍光タンパク質、りん光色素、タンデム色素、粒子、ハプテン、酵素及び放射性同位元素を含む。
【0156】
特定の実施形態では、抗体は、限定はされないが、ピレン、アントラセン、ナフタレン、アクリジン、スチルベン、インドール又はベンズインドール、オキサゾール又はベンゾキサゾール、チアゾール又はベンゾチアゾール、4-アミノ-7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール(NBD)、シアニン、カルボシアニン、カルボスチリル、ポルフィリン、サリチル酸塩、アントラニル酸塩、アズレン、ペリレン、ピリジン、キノリン、ボラポリアザインダシン、キサンテン、オキサジン、ベンゾキサジン、カルバジン、フェナレノン、クマリン、ベンゾフラン、ベンズフェナレノン、及びそれらの誘導体を含むフルオロフォアにコンジュゲートされる。本明細書で用いられるとき、オキサジンは、レゾルフィン、アミノオキサジノン、ジアミノオキサジン、及びそれらのベンゾ置換類似体を含む。
【0157】
具体的な実施形態では、フルオロフォアは、キサンテン(ロードル、ローダミン、フルオレセイン及びそれらの誘導体)、クマリン、シアニン、ピレン、オキサジン及びボラポリアザインダシンを含む。他の実施形態では、かかるフルオロフォアは、スルホン化キサンテン、フッ素化キサンテン、スルホン化クマリン、フッ素化クマリン及びスルホン化シアニンである。さらに含まれるのは、ALEXA FLUOR(登録商標)、DyLight、CY(登録商標)Dyes、BODIPY(登録商標)、OREGON GREEN(登録商標)、PACIFIC BLUE(商標)、IRDYE(登録商標)、FAM、FITC、及びROX(商標)の商品名で販売され、またそれらとして一般に公知の色素である。
【0158】
抗体に結合するフルオロフォアの選択が、コンジュゲート抗体の吸収及び蛍光発光特性を決定し得る。抗体及び抗体結合リガンドに用いることのできるフルオロフォア標識の物理的特性としては、限定はされないが、スペクトル特性(吸収、発光及びストークスシフト)、蛍光強度、寿命、偏光及び光退色速度、又はそれらの組み合わせが挙げられる。これらの物理的特性は全て、あるフルオロフォアを別のフルオロフォアと区別するために用いることができ、従って多重化解析を可能にする。特定の実施形態では、フルオロフォアは480nmより大きい波長に吸収極大を有する。他の実施形態では、フルオロフォアは、488nm~514nm若しくはその近傍(アルゴンイオンレーザー励起源の出力による励起に特に好適)又は546nm近傍(水銀アークランプによる励起に特に好適)を吸収する。他の実施形態ではフルオロフォアは、組織又は全生物体適用にNIR(近赤外領域)で発光することができる。蛍光標識の他の望ましい特性としては、例えば抗体の標識が細胞又は生物体(例えば、生きている動物)で実施される場合に、細胞透過性及び低毒性を挙げることができる。
【0159】
特定の実施形態では、酵素が標識であり、本明細書に記載される抗体にコンジュゲートされる。酵素は、検出可能なシグナルの増幅を達成することができ、アッセイ感度の増加がもたらされるため、望ましい標識である。酵素それ自体は検出可能な反応を生じないが、適切な基質を接触させると基質を分解する働きをし、それにより変換された基質が蛍光、比色又は発光シグナルを生じる。標識試薬の一つの酵素が複数の基質についての検出可能なシグナルへの変換をもたらし得るため、酵素は検出可能なシグナルを増幅する。酵素基質は、好ましい計測可能な生成物、例えば比色、蛍光又は化学発光生成物が得られるように選択される。かかる基質は当該技術分野で広範に用いられており、当業者には周知されている。
【0160】
一実施形態では、比色基質又は蛍光発生基質及び酵素の組み合わせは、西洋ワサビペルオキシダーゼなどのオキシドレダクターゼと、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)及び3-アミノ-9-エチルカルバゾール(AEC)などの識別性のある色(それぞれ褐色及び赤色)を生じる基質とを使用する。検出可能な生成物を生じる他の比色オキシドレダクターゼ基質としては、限定はされないが、2,2-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS)、o-フェニレンジアミン(OPD)、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)、o-ジアニシジン、5-アミノサリチル酸、4-クロロ-1-ナフトールが挙げられる。蛍光発生基質としては、限定はされないが、ホモバニリン酸又は4-ヒドロキシ-3-メトキシフェニル酢酸、還元型フェノキサジン及び還元型ベンゾチアジン、例えばAmplex(登録商標)レッド試薬及びその変種及び還元型ジヒドロキサンテン、例えばジヒドロフルオレセイン及びジヒドロローダミン、例えばジヒドロローダミン123が挙げられる。チラミドであるペルオキシダーゼ基質は、酵素が作用する前に本質的に検出可能であり得るが、チラミドシグナル増幅(TSA)として記載される過程でペルオキシダーゼの作用によって「その場に固定」される点で、ペルオキシダーゼ基質のユニークなクラスに相当する。これらの基質は、細胞、組織又はアレイである試料中の抗原を、後に顕微鏡法、フローサイトメトリー、光学走査及び蛍光定量法によって検出するために標識するのに広範に利用されている。
【0161】
別の実施形態において、比色(及びある場合には蛍光発生)基質と酵素との組み合わせは、ホスファターゼ酵素、例えば酸性ホスファターゼ、アルカリホスファターゼ又はかかるホスファターゼの組換え型を、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリルリン酸(BCIP)、6-クロロ-3-インドリルリン酸、5-ブロモ-6-クロロ-3-インドリルリン酸、p-ニトロフェニルリン酸、又はo-ニトロフェニルリン酸などの比色基質と組み合わせて、又は4-メチルウンベリフェリルリン酸、6,8-ジフルオロ-7-ヒドロキシ-4-メチルクマリニルリン酸、フルオレセイン二リン酸、3-O-メチルフルオレセインリン酸、レゾルフィンリン酸、9H-(1,3-ジクロロ-9,9-ジメチルアクリジン-2-オン-7-イル)リン酸(DDAOリン酸)、又はELF 97、ELF 39若しくは関連するリン酸などの蛍光発生基質と組み合わせて用いる。
【0162】
グリコシダーゼ、特にβ-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ及びβ-グルコシダーゼが、さらなる好適な酵素である。適切な比色基質としては、限定はされないが、5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルβ-D-ガラクトピラノシド(X-gal)及び同様のインドリルガラクトシド、グルコシド、及びグルクロニド、o-ニトロフェニルβ-D-ガラクトピラノシド(ONPG)及びp-ニトロフェニルβ-D-ガラクトピラノシドが挙げられる。一実施形態では、蛍光発生基質には、レゾルフィンβ-D-ガラクトピラノシド、フルオレセインジガラクトシド(FDG)、フルオレセインジグルクロニド及びこれらの構造的変種、4-メチルウンベリフェリルβ-D-ガラクトピラノシド、カルボキシウンベリフェリルβ-D-ガラクトピラノシド及びフッ素化クマリンβ-D-ガラクトピラノシドが含まれる。
【0163】
さらなる酵素としては、限定はされないが、コリンエステラーゼ及びペプチダーゼなどのヒドロラーゼ、グルコースオキシダーゼ及びシトクロムオキシダーゼなどのオキシダーゼ、及びそれに対する好適な基質が知られるレダクターゼが挙げられる。
【0164】
一部のアッセイには、化学発光を生じる酵素及びその適切な基質が好ましい。それらとしては、限定はされないが、天然及び組換え形態のルシフェラーゼ及びエクオリンが挙げられる。ホスファターゼ、グリコシダーゼ及びオキシダーゼに対する化学発光生成基質、例えば、安定ジオキセタン、ルミノール、イソルミノール及びアクリジニウムエステルを含有するものが、さらに有用である。
【0165】
別の実施形態では、ビオチンなどのハプテンが標識として利用され得る。ビオチンは、酵素系において検出可能なシグナルをさらに増幅するよう機能することができ、且つ単離目的でアフィニティークロマトグラフィーにおいて使用するタグとして機能することができるため、有用である。検出目的では、アビジン-HRPなどの、ビオチンに対して親和性を有する酵素コンジュゲートが用いられる。続いてペルオキシダーゼ基質を添加すると、検出可能なシグナルが生成される。
【0166】
ハプテンにはまた、ホルモン、天然に存在する及び合成の薬物、汚染物、アレルゲン、作用因子分子、成長因子、ケモカイン、サイトカイン、リンホカイン、アミノ酸、ペプチド、化学的中間体、ヌクレオチドなども含まれる。
【0167】
特定の実施形態では、蛍光タンパク質が標識として抗体にコンジュゲートされてもよい。蛍光タンパク質の例には、緑色蛍光タンパク質(GFP)及びフィコビリタンパク質及びこれらの誘導体が含まれる。蛍光タンパク質、特にフィコビリタンパク質は、タンデム色素で標識された標識試薬を作り出すのに特に有用である。このようなタンデム色素は、より大きいストークスシフトの達成を目的として蛍光タンパク質及びフルオロフォアを含み、ここでは発光スペクトルが蛍光タンパク質の吸収スペクトルの波長からさらに遠くにシフトする。これは、試料中の低量の抗原を検出するのに特に有利であり、ここでは放たれる蛍光の光が最大限最適化され、換言すれば、放たれる光がほとんど乃至全く蛍光タンパク質に再吸収されない。これが機能するには、蛍光タンパク質とフルオロフォアとがエネルギー伝達対として働き、ここで蛍光タンパク質はフルオロフォアが吸収する波長で発光し、次にそのフルオロフォア(fluorphore)が、その蛍光タンパク質のみで達成され得たより蛍光タンパク質からさらに遠い波長を発光する。或いは、フルオロフォアがエネルギー供与体として働き、且つ蛍光タンパク質がエネルギー受容体である。
【0168】
医学的処置及び利用
本明細書に記載の抗A型インフルエンザ抗体並びにその結合断片及び変異体は、A型インフルエンザウイルス感染の治療、低減、予防のため、及び/又は検出、診断及び/若しくは予後のため、用いられてもよい。
【0169】
診断の方法は、抗体又は抗体断片を試料に接触させることを含んでもよい。かかる試料は、例えば、鼻道、洞腔(sinus cavities)、唾液腺、肺、肝臓、膵臓、腎臓、耳、目、胎盤、消化管、心臓、卵巣、下垂体、副腎、甲状腺、脳又は皮膚から採取された組織試料であってもよい。検出、診断、及び/又は予後の方法もまた、抗原/抗体複合体の検出を含んでもよい。
【0170】
一実施形態では、本発明は、抗体又はその抗原結合断片、又は抗体又はその抗原結合断片を含む医薬組成物を有効量で対象に投与することにより対象を治療する方法を提供する。一実施形態では、本方法は、被験体におけるA型インフルエンザウイルス感染を低下させる。別の実施形態では、本方法は、被験体において、A型インフルエンザウイルス感染に対して、予防し、そのリスクを低下させるか又は遅延させる。一実施形態では、被験体は、哺乳類である。より特定の実施形態では、被験体は、ヒトである。一実施形態では、被験体は、限定はされないが、例えば易感染性被験体を含む、A型インフルエンザウイルス感染に対して特にリスクがあるか又は感受性が高い被験体を含む。
【0171】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、実質的に精製される(すなわち、その効果を制限するか又は望まれない副作用をもたらす物質から実質的に遊離される)。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、曝露後、すなわち対象がA型インフルエンザウイルスに曝露されているか又はA型インフルエンザウイルスに感染されてから投与される。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、曝露前、すなわちA型インフルエンザウイルスにまだ曝露されていないか又はA型インフルエンザウイルスにまだ感染されていない対象に投与される。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、1つ以上のA型インフルエンザサブタイプに対して血清陰性である対象に投与される。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、1つ以上のA型インフルエンザサブタイプに対して血清陽性である対象に投与される。別の実施形態では、患者の血清状態は未知である。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、曝露、感染又は症状発現から1、2、3、4、5、6又は7日以内に対象に投与される。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、曝露、感染又は症状発現から1、2、3、4、5、6、7、10、15、20、25、30日後又は任意の日数後に対象に投与され得る。
【0172】
治療は、単回用量スケジュール又は複数回用量スケジュールであり得、抗体又はその抗原結合断片は受動免疫で用いることができる。
【0173】
一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、別の抗ウイルス薬の投与なしに対象に投与される。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、1つ以上の抗ウイルス薬と組み合わせて対象に投与される。一実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、1つ以上の小分子抗ウイルス薬と組み合わせて対象に投与される。小分子抗ウイルス薬は、ノイラミニダーゼ阻害剤、例えばオセルタミビル(TAMIFLU(登録商標))、ザナミビル(RELENZA(登録商標))及びアダマンタン、例えばアマンタジン及びリマンタジンを含む。
【0174】
別の実施形態では、本発明は、A型インフルエンザウイルス感染の予防又は治療のための薬剤として用いられる組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、本明細書に記載のような抗体又はその抗原結合断片を含む。一実施形態では、組成物は、唯一の抗ウイルス薬としての本明細書に記載のような抗体又はその抗原結合断片を含む。別の実施形態では、組成物は、1つ以上の追加的な抗ウイルス薬と組み合わせた本明細書に記載のような抗体又はその抗原結合断片を含む。
【0175】
本発明はまた、医薬組成物を調製する方法であって、モノクローナル抗体であるモノクローナル抗体を、1つ以上の薬学的に許容できる担体と混合するステップを含む、方法を提供する。
【0176】
本発明はまた、医薬組成物を提供する。かかる組成物は、抗体又はその抗原結合断片、及び薬学的に許容できる担体を治療有効量で含む。用語「薬学的に許容できる」は、本明細書で使用されるとき、動物、より詳細にはヒトで使用するため、連邦政府若しくは州政府の規制機関によって認可されている、又は米国薬局方若しくは他の一般に認められている薬局方において収載されていることを意味する。用語「担体」は、治療薬とともに投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、又は媒体を指す。一実施形態では、医薬組成物は、治療有効量の抗体又はその抗原結合断片を、適切な投与のための形態を患者に提供するため、例えば、精製形態で、適量の担体と一緒に含有する。調合物は、投与様式に適する必要がある。
【0177】
投薬及び投与
本明細書で用いられるとき、用語「用量」は、特定時間に又は特定間隔で服用される抗体治療薬の特定量を指す。用語「投与」は、本明細書で用いられるとき、治療目的を達成するための組成物、例えば本明細書に記載の抗体又は抗体断片を含む医薬組成物の投与を指す。
【0178】
「投与スケジュール」は、用量及び用量が投与される時間間隔の双方を指す。一実施形態では、投与スケジュールは、治療サイクルの一部である。用語「治療サイクル」は、本明細書で用いられるとき、抗体が投与される期間とその後の抗体の投与がない期間とを指し、ここで後続サイクルの開始は、治療サイクルが抗体の投与日間の休薬期間を可能にする上で、抗体の投与の再開によって示される。治療サイクルは、日数が、例えば、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、又は30日に変動してもよい。
【0179】
一実施形態では、抗体は、1日を超えて投与される。例えば、抗体は、1日1回で1日、又は1日1回で2日以上の連続日投与されてもよく、例えば、抗体は、1日1回で1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10日間投与されてもよい。一実施形態では、同じ用量の抗体が毎日投与される。別の実施形態では、異なる用量の抗体が1日以上投与される。例えば、患者は、前日に受けた用量と比べてより高用量の抗体をある投与日に受けてもよい。或いは、患者は、前日に受けた用量と比べてより低用量の抗体をある投与日に受けてもよい。別の実施形態では、抗体の投与は、1回以上の治療サイクルにわたり行ってもよい。一実施形態では、同じ投与スケジュールは、後続する治療サイクルにて、すなわち初回治療サイクルの完了後、反復されてもよい。
【0180】
一実施形態では、少なくとも約200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1,000mg、1,250mg、1,500mg、1,750mg、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、3,250mg、又は3,500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその抗原結合断片が患者に投与される。
【0181】
一実施形態では、最大200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1,000mg、1,250mg、1,500mg、1,750mg、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、3,250mg又は3,500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその抗原結合断片が患者に投与される。
【0182】
別の実施形態では、約200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1,000mg、1,250mg、1,500mg、1,750mg、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、3,250mg又は3,500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその抗原結合断片が患者に投与される。
【0183】
別の実施形態では、200mg、225mg、250mg、275mg、300mg、325mg、350mg、375mg、400mg、425mg、450mg、475mg、500mg、525mg、550mg、575mg、600mg、625mg、650mg、675mg、700mg、725mg、750mg、775mg、800mg、825mg、850mg、875mg、900mg、925mg、950mg、975mg、1,000mg、1,250mg、1,500mg、1,750mg、2,000mg、2,250mg、2,500mg、2,750mg、3,000mg、3,250mg又は3,500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその抗原結合断片が患者に投与される。
【0184】
一実施形態では、本明細書に提供される用量は、平均体重及び他の関連する生物学的特性を伴う成体への投与が意図される。別の実施形態では、平均体重又は他の関連する生物学的特性を伴わない(例えば、肥満又は小児患者を含む)成体への投与が意図され、ここで用量は、体重又は他の関連する生物学的特性などの事柄を補うように調整される。別の実施形態では、本明細書に提供される用量は、幼児又は小児への投与が意図され、ここで用量は、体重や他の関連する生物学的特性などの事柄を補うように調整される。
【0185】
抗体は、任意の便宜的経路により投与されてもよく、他の生物活性剤と一緒に、例えば、オセルタミビル(TAMIFLU(登録商標))、ザナミビル(RELENZA(登録商標))及びアダマンタン、例えばアマンタジン及びリマンタジンなどの1つ以上の抗ウイルス薬と組み合わせて投与されてもよい。
【0186】
投与は、全身又は局所であり得、単回用量又は複数回用量として投与され得る。
【0187】
様々な送達系は公知であり、抗A型インフルエンザ抗体を投与するため、用いることができる。投与方法は、限定はされないが、非経口投与、例えば、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内及び皮下投与;硬膜外、及び粘膜経路、例えば、鼻腔内、吸入及び経口経路などを含む。さらなる特定の実施形態では、抗体は、非経口的に、例えば、筋肉内、静脈内又は皮下に投与される。
【0188】
一実施形態では、抗体は、静脈内に投与される。さらなる特定の実施形態では、抗体は、静脈内(IV)注入ポンプを用いて投与される。一実施形態では、抗体は、少なくとも約1mg/分、5mg/分、10mg/分、15mg/分又は20mg/分、25mg/分、30mg/分、35mg/分、40mg/分、45mg/分又は50mg/分の注入速度で静脈内に投与される。別の実施形態では、注入速度は、約10mg/分、15mg/分又は20mg/分、25mg/分、30mg/分、40mg/分、又は50mg/分である。一実施形態では、抗体は、長時間にわたり、例えば、少なくとも約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間又は6時間、及び最大で約3時間、4時間、5時間又は6時間の期間にわたり、静脈内注入により投与される。別の実施形態では、抗体は、長時間、例えば、約1時間、2時間、3時間、4時間、5時間又は6時間にわたり、静脈内注入により投与される。
【0189】
キット及び製品
別の実施形態では、A型インフルエンザウイルス感染の治療及び/又は予防にとって有用な材料を含有する製品が提供される。一実施形態では、製品は、容器と、容器上部の又は容器に伴うラベル又は添付文書を含む。好適な容器は、例えば、ボトルバイアル、及びシリンジを含み、例えばガラス又はプラスチックを含む種々の材料から形成されてもよい。一実施形態では、容器は、A型インフルエンザウイルス感染を治療及び/又は予防するのに有効な組成物を保持する。一実施形態では、組成物は、本明細書に記載のような抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む。
【0190】
一実施形態では、製品は、組成物がA型インフルエンザウイルス感染を治療及び/又は予防するために用いられることを示すラベル又は添付文書を含む。一実施形態では、ラベル又は添付文書は、抗体又は抗原結合断片が、曝露後、すなわち対象がA型インフルエンザウイルスに曝露されているか又はA型インフルエンザウイルスに感染されてから投与され得ることを示す。別の実施形態では、ラベル又は添付文書は、抗体又はその抗原結合断片が、曝露前、すなわちA型インフルエンザウイルスにまだ曝露されていないか又はA型インフルエンザウイルスにまだ感染されていない対象に投与され得ることを示す。一実施形態では、ラベル又は添付文書は、抗体又はその抗原結合断片が、1つ以上のA型インフルエンザサブタイプについて血清陰性である対象に投与され得ることを示す。別の実施形態では、ラベル又は添付文書は、抗体又はその抗原結合断片が、1つ以上のA型インフルエンザサブタイプについて血清陽性である対象に投与され得ることを示す。別の実施形態では、組成物は、血清状態が未知である患者に投与される。一実施形態では、ラベル又は添付文書は、抗体又はその抗原結合断片が、曝露、感染又は症状発現から1、2、3、4、5、6又は7日以内に対象に投与され得ることを示す。別の実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、曝露、感染又は症状発現から1、2、3、4、5、6、7、10、15、20、25、30日後又は任意の日数後に対象に投与され得る。
【0191】
一実施形態では、製品は、抗A型インフルエンザ抗体又は断片、例えば限定はされないが、ノイラミニダーゼ阻害剤、例えばオセルタミビル(TAMIFLU(登録商標))、ザナミビル(RELENZA(登録商標))及びアダマンタン、例えばアマンタジン及びリマンタジンに加えて、1つ以上の小分子抗ウイルス薬を含む。
【0192】
本発明に記載の通りの抗体及びその断片はまた、A型インフルエンザウイルス感染の診断用キット中又はワクチン免疫原性を監視するためのキット中に含まれてもよい。
本発明は、例えば以下の実施形態を包含する:
[実施形態1]患者におけるA型インフルエンザウイルス感染を治療する方法であって、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプのA型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに結合する能力がある、少なくとも約200mg及び最大約3500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を前記患者に投与するステップを含む、方法。
[実施形態2]患者におけるA型インフルエンザウイルス感染を低減する方法であって、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプのA型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに結合する能力がある、少なくとも約200mg及び最大約3500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を前記患者に投与するステップを含む、方法。
[実施形態3]患者におけるA型インフルエンザウイルス感染を予防する方法であって、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプのA型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに結合する能力がある、少なくとも約200mg及び最大約3500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を前記患者に投与するステップを含む、方法。
[実施形態4]前記抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、少なくとも約250mg及び最大約3000mgの用量で投与される、実施形態1~3のいずれかに記載の方法。
[実施形態5]前記抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプを中和する能力がある、実施形態1~4のいずれかに記載の方法。
[実施形態6]投与するステップが非経口投与を含む、実施形態1~5のいずれかに記載の方法。
[実施形態7]投与するステップが静脈内投与を含む、実施形態1~6のいずれかに記載の方法。
[実施形態8]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が単回用量として投与される、実施形態7に記載の方法。
[実施形態9]前記患者がA型インフルエンザウイルスに曝露されるか、A型インフルエンザウイルスに感染するか、A型インフルエンザウイルス感染の症状を呈するか、又はその組み合わせが生じた後、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が投与される、実施形態1~8のいずれかに記載の方法。
[実施形態10]前記患者が、A型インフルエンザウイルスに曝露されるか、A型インフルエンザウイルスに感染するか、A型インフルエンザウイルス感染の症状を呈するか、又はその組み合わせの前、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が投与される、実施形態1~8のいずれかに記載の方法。
[実施形態11]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、曝露、感染、症状発現、又はその組み合わせから30日以内に対象に投与される、実施形態1~8のいずれかに記載の方法。
[実施形態12]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、H18、及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ;並びにH3、H4、H7、H10、H14及びH15及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ2サブタイプを中和する能力がある、実施形態1~11のいずれかに記載の方法。
[実施形態13]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDR、並びに配列番号8、配列番号9及び配列番号10に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを含む、実施形態1~12のいずれかに記載の方法。
[実施形態14]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDR、並びに配列番号8、配列番号9及び配列番号10から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを含む、実施形態1~13のいずれかに記載の方法。
[実施形態15]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVH、及び配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVLを含む、実施形態1~14のいずれかに記載の方法。
[実施形態16]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するVH、及び配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するVLを含む、実施形態1~15のいずれかに記載の方法。
[実施形態17]抗A型インフルエンザ抗体がMEDI8852を含む、実施形態1~16のいずれかに記載の方法。
[実施形態18]前記抗体又はその断片が、1つ以上の小分子抗ウイルス薬と組み合わせて投与される、実施形態1~17のいずれかに記載の方法。
[実施形態19]前記小分子抗ウイルス薬が、オセルタミビル(TAMIFLU(登録商標))、ザナミビル(RELENZA(登録商標))、アマンタジン及びリマンタジンから選択される、実施形態18に記載の方法。
[実施形態20]患者におけるA型インフルエンザウイルス感染を治療するための組成物であって、少なくとも約200mg及び最大約3500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を患者に投与するために調合される、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプのA型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに結合する能力がある抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む、組成物。
[実施形態21]患者におけるA型インフルエンザウイルス感染を低減するための組成物であって、少なくとも約200mg及び最大約3500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を患者に投与するために調合される、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプのA型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに結合する能力がある抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む、組成物。
[実施形態22]患者におけるA型インフルエンザウイルス感染を予防するための組成物であって、少なくとも約200mg及び最大約3500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を患者に投与するために調合される、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプのA型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに結合する能力がある抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む、組成物。
[実施形態23]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、H18、及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ;並びにH3、H4、H7、H10、H14及びH15及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ2サブタイプを中和する能力がある、実施形態20~22のいずれかに記載の組成物。
[実施形態24]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDR、並びに配列番号8、配列番号9及び配列番号10に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを含む、実施形態20~23のいずれかに記載の組成物。
[実施形態25]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDR、並びに配列番号8、配列番号9及び配列番号10から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを含む、実施形態20~24のいずれかに記載の組成物。
[実施形態26]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVH、及び配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVLを含む、実施形態20~25のいずれかに記載の組成物。
[実施形態27]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するVH、及び配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するVLを含む、実施形態20~26のいずれかに記載の組成物。
[実施形態28]抗A型インフルエンザ抗A型インフルエンザ抗体がMEDI8852を含む、実施形態20~27のいずれかに記載の組成物。
[実施形態29]薬学的に許容できる担体をさらに含む、実施形態20~28のいずれかに記載の組成物。
[実施形態30]1つ以上の小分子抗ウイルス薬をさらに含む、実施形態20~29のいずれかに記載の組成物。
[実施形態31]前記小分子抗ウイルス薬が、オセルタミビル(TAMIFLU(登録商標))、ザナミビル(RELENZA(登録商標))、アマンタジン及びリマンタジンから選択される、実施形態30に記載の組成物。
[実施形態32]容器及び前記容器内部の組成物、並びに少なくとも約200mg及び最大約3500mgの抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を患者に投与するための使用説明書を含む製品であって、前記組成物が、A型インフルエンザウイルスの少なくとも1つのグループ1サブタイプ及び少なくとも1つのグループ2サブタイプのA型インフルエンザウイルスヘマグルチニンに結合する能力がある抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を含む、製品。
[実施形態33]前記ラベル又は添付文書が、抗A型インフルエンザ抗体又はその断片を少なくとも約200mg及び最大約3500mgの用量で投与するための使用説明書を含む、実施形態32に記載の製品。
[実施形態34]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、H1、H2、H5、H6、H8、H9、H11、H12、H13、H16、H17、H18、及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ1サブタイプ;並びにH3、H4、H7、H10、H14及びH15及びそれらの変異体から選択される1つ以上のA型インフルエンザウイルスのグループ2サブタイプを中和する能力がある、実施形態32又は33に記載の製品。
[実施形態35]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDR、並びに配列番号8、配列番号9及び配列番号10に示されるアミノ酸配列から選択されるアミノ酸配列に対して少なくとも75%同一のアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを含む、実施形態32~34のいずれかに記載の製品。
[実施形態36]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、配列番号3、配列番号4、及び配列番号5から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の重鎖CDR、並びに配列番号8、配列番号9及び配列番号10から選択されるアミノ酸配列を有する1つ以上の軽鎖CDRを含む、実施形態32~35のいずれかに記載の製品。
[実施形態37]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、配列番号2のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVH、及び配列番号7のアミノ酸配列に対して少なくとも75%の同一性を有するアミノ酸配列を有するVLを含む、実施形態32~36のいずれかに記載の製品。
[実施形態38]抗A型インフルエンザ抗体又はその断片が、配列番号2に示されるアミノ酸配列を有するVH、及び配列番号7に示されるアミノ酸配列を有するVLを含む、実施形態32~37のいずれかに記載の製品。
[実施形態39]抗A型インフルエンザ抗体がMEDI8852を含む、実施形態32~38のいずれかに記載の製品。
[実施形態40]1つ以上の小分子抗ウイルス薬をさらに含む、実施形態32~39のいずれかに記載の製品。
[実施形態41]前記小分子抗ウイルス薬が、オセルタミビル(TAMIFLU(登録商標))、ザナミビル(RELENZA(登録商標))、アマンタジン及びリマンタジンから選択される、実施形態40に記載の製品。
[実施形態42]前記組成物が、薬学的に許容できる担体をさらに含む、実施形態32~41のいずれかに記載の製品。
【実施例0193】
実施例1
健常成人における二重盲検、単回用量、プラセボ対照、用量漸増試験において、MEDI8852の安全性及び薬物動態を評価した。
【0194】
A.対象
以下の組み入れ基準:健常男性又は女性、18~65歳、45kg~110kgの間の体重、140mmHg未満の収縮期血圧(BP)及び90mmHg未満の拡張期血圧を用いて、対象40名を評価した。
【0195】
B.用量
対象40名は、コホートにより無作為化し、4つの一定用量コホートを通じて1日目(投与の1日目)にMEDI8852又はプラセボのいずれかの単回静脈内用量を受けた。MEDI8852は、50mg/mLの濃度で無菌液体製剤として供給し、2℃~8℃(36°F~46°F)で貯蔵した。投与前、MEDI8852は、静脈内バッグ中の0.9%(w/v)生理食塩水で希釈し、静脈内注入として投与した。プラセボ/希釈液は、注射用の0.9%(w/v)生理食塩水であった。静脈内注入ポンプを用いて、20mg/分の一定注入速度を伴う0.2μm又は0.22μmの低タンパク質結合フィルタを通して静脈内注入を施した。
【0196】
対象40名は、以下の4つのコホートに無作為化した。
・コホート1:単回静脈内注入として、250mgのMEDI8852(n=6)又はプラセボ(n=2)
・コホート2:単回静脈内注入として、750mgのMEDI8852(n=10)又はプラセボ(n=2)
・コホート3:単回静脈内注入として、1,500mgのMEDI8852(n=10)又はプラセボ(n=2)
・コホート4:単回静脈内注入として、3,000mgのMEDI8852(n=6)又はプラセボ(n=2)
【0197】
C.薬物動態
検証されたサンドイッチ酵素結合免疫吸着測定法を用いてMEDI8852の薬物動態(PK)を評価するため、血液試料を収集した。血液試料は、予め特定された時点で採取した。
【0198】
図1に示す平均±標準偏差プロットは、MEDI8852濃度特性が一般に、初期の迅速な低下、その後のより緩徐な低下を示すことを示す。
【0199】
以下のPKパラメータ:最大血清濃度(Cmax)、最大血清濃度到達時間(Tmax)、半減期(t1/2)、時間0~tの濃度対時間曲線下面積(AUC0-t)、時間0~無限大の濃度対時間曲線下面積(AUC0-inf)、定常状態容積(Vss)、分布容積(Vz)、及びクリアランス(CL)を見積もるため、Phenix WinNonlin(Pharsight Corporation,St.Louis,MO)を用いる非コンパートメント分析(NCA)を実行した。表1に示す結果は、単回静脈内投与後の半減期が約19.4~22.6日であったことを示す。さらに、投与群中の半減期、クリアランス(CL)、及び定常状態分布容積(Vss)における一貫したPK値は、MEDI8852PKが用量線形であることを示す。
【0200】
【0201】
D.集団モデリング及びシミュレーション
集団分析は、NONMEM(バージョン7.2)(ICON Development Solutions,Dublin,Irelandから市販)を用いて実施した。データを説明するため、一次除去を伴う2区画モデルを用いた。次に、MEDI8852集団PKをシミュレートするため、NONMEM集団モデルを用いた(
図2)。結果は、750mg群と3,000mg群との間の十分な濃度分離を示す。
【0202】
E.抗薬剤抗体
抗薬剤抗体(ADA)の血清中のMEDI8852に対する応答を電気化学発光、溶液相、架橋イムノアッセイを用いて評価するため、血液試料を15日目(±1)、29日目(±2)及び101日目(±5)に収集した。全てのADA結果は陰性であった(すなわち抗薬剤抗体は見出されなかった)。
【0203】
実施例2
MEDI8852を用いる第1b/2a相臨床試験は次のように実施する。A型インフルエンザウイルス感染を有する外来個体に、MEDI8852を750mg又は3000mgの用量で静脈内投与により投与する。一部の個体には、MEDI8852の投与前、投与時、又は投与後に、現行の標準治療であるオセルタミビルも投与する。感染は、迅速抗原試験陽性で確認するか、又は試験部位での培養、PCR又は抗原試験で確認することができる。治療計画を下の表2に示す。
【0204】
【0205】
一般に、抗体の1回限りの投与計画を検討するが、後続用量を投与してもよい。
【0206】
MEDI8852の有効性は、1日2回で10日目にかけて、7つのインフルエンザ症状(咳、鼻閉、咽頭炎、疲労、頭痛、筋肉痛、及び発熱状態)についての4ポイントスケール(0、不在;1、軽度;2、中等度;3、重度)を用いて;また毎日で10日目にかけて、11ポイントの視覚的アナログスケール(0、正常の活動を遂行できない;10、正常の活動を完全に遂行できる)を用いて評価することができる。
【0207】
インフルエンザ症状の持続時間及び重症度並びに通常の活動を遂行する能力を取り戻すまでの時間は、記述統計学を用いて要約することができる。インフルエンザ症状の消散までの時間は、カプラン・マイヤー曲線により要約することができる。
【0208】
MEDI8852+オセルタミビルの安全性特性は、オセルタミビル単独の場合と類似し、MEDI8852+オセルタミビルの消散までの時間は、オセルタミビル単独の場合よりも迅速である。
【0209】
実施例3
MEDI8852を用いる第2b相臨床試験は、次のように実施する。A型インフルエンザウイルス感染を有する入院個体に、MEDI8852を250mg、750mg、1500mg、又は3000mgの用量で静脈内に投与する。感染は、迅速抗原試験陽性で確認され得るか、又は試験部位での培養、PCR又は抗原試験で確認され得る。一部の個体には、MEDI8852の投与前、投与時、又は投与後に、現行の標準治療であるオセルタミビルも投与してもよい。投与計画は、局所処方情報に従う必要があり、経口的に(PO)1日2回(BID)5日間の75mgでのオセルタミビルを含み得る。一部の対象は、PO、BID、最大10日間の最大150mgの用量でのオセルタミビルを受けてもよく、他の対象はまた、吸入ザナミビルを受けてもよい。一般に、抗体の1回限りの投与計画を検討するが、後続用量を投与してもよい。
【0210】
安全性特性はオセルタミビルと類似し、有効性はオセルタミビル単独よりも良好である。有効性は、呼吸機能の正常化までの時間(主要エンドポイント)により、また他の二次エンドポイントにより評価することができる。
【0211】
参照による援用
本明細書に引用される全ての参考文献、例えば、特許、特許出願、論文、教科書などやそれらに引用される参考文献は、それらについてまだ言及していない範囲内で、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0212】
配列情報
配列番号1(VHヌクレオチド配列)
【化1】
配列番号2(VHアミノ酸配列)
【化2】
配列番号3 HCDR1 SYNAVWN
配列番号4 HCDR2 RTYYRSGWYNDYAESVKS
配列番号5 HCDR3 SGHITVFGVNVDAFDM
配列番号6(VLヌクレオチド配列)
【化3】
配列番号7(VLアミノ酸配列)
【化4】
配列番号8 LCDR1 RTSQSLSSYTH
配列番号9 LCDR2 AASSRGS
配列番号10 LCDR3 QQSRT
【0213】
[配列表]
SEQUENCE LISTING
<110> MedImmune, LLC
<120> METHOD OF TREATING INFLUENZA A
<130> PA24-030
<150> US62/278068
<151> 2016-01-13
<160> 10
<170> PatentIn version 3.5
<210> 1
<211> 384
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polynucleotide
<400> 1
caggtccagc tgcagcagag cggccccgga ctggtcaagc cttcacagac actgagcctg 60
acatgcgcca ttagcggaga tagcgtgagc tcctacaatg ccgtgtggaa ctggatcagg 120
cagtctccaa gtcgaggact ggagtggctg ggacgaacat actatagatc cgggtggtac 180
aatgactatg ctgaatcagt gaaaagccga attactatca accccgatac ctccaagaat 240
cagttctctc tgcagctgaa cagtgtgacc cctgaggaca cagccgtgta ctactgcgcc 300
agaagcggcc atatcaccgt ctttggcgtc aatgtggatg ctttcgatat gtgggggcag 360
gggactatgg tcaccgtgtc aagc 384
<210> 2
<211> 128
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polypeptide
<400> 2
Gln Val Gln Leu Gln Gln Ser Gly Pro Gly Leu Val Lys Pro Ser Gln
1 5 10 15
Thr Leu Ser Leu Thr Cys Ala Ile Ser Gly Asp Ser Val Ser Ser Tyr
20 25 30
Asn Ala Val Trp Asn Trp Ile Arg Gln Ser Pro Ser Arg Gly Leu Glu
35 40 45
Trp Leu Gly Arg Thr Tyr Tyr Arg Ser Gly Trp Tyr Asn Asp Tyr Ala
50 55 60
Glu Ser Val Lys Ser Arg Ile Thr Ile Asn Pro Asp Thr Ser Lys Asn
65 70 75 80
Gln Phe Ser Leu Gln Leu Asn Ser Val Thr Pro Glu Asp Thr Ala Val
85 90 95
Tyr Tyr Cys Ala Arg Ser Gly His Ile Thr Val Phe Gly Val Asn Val
100 105 110
Asp Ala Phe Asp Met Trp Gly Gln Gly Thr Met Val Thr Val Ser Ser
115 120 125
<210> 3
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 3
Ser Tyr Asn Ala Val Trp Asn
1 5
<210> 4
<211> 18
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 4
Arg Thr Tyr Tyr Arg Ser Gly Trp Tyr Asn Asp Tyr Ala Glu Ser Val
1 5 10 15
Lys Ser
<210> 5
<211> 16
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 5
Ser Gly His Ile Thr Val Phe Gly Val Asn Val Asp Ala Phe Asp Met
1 5 10 15
<210> 6
<211> 309
<212> DNA
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polynucleotide
<400> 6
gatattcaga tgacccagag cccttccagc ctgtccgctt cagtggggga tcgagtgacc 60
attacctgcc gaaccagcca gagcctgagc tcctacacgc actggtatca gcagaagccc 120
ggcaaagccc ctaagctgct gatctacgcc gcttctagtc gggggtccgg agtgccaagc 180
cggttctccg gatctgggag tggaaccgac tttaccctga caatttcaag cctgcagccc 240
gaggatttcg ctacatacta ctgtcagcag agcagaactt tcgggcaggg cactaaggtg 300
gagatcaaa 309
<210> 7
<211> 103
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
polypeptide
<400> 7
Asp Ile Gln Met Thr Gln Ser Pro Ser Ser Leu Ser Ala Ser Val Gly
1 5 10 15
Asp Arg Val Thr Ile Thr Cys Arg Thr Ser Gln Ser Leu Ser Ser Tyr
20 25 30
Thr His Trp Tyr Gln Gln Lys Pro Gly Lys Ala Pro Lys Leu Leu Ile
35 40 45
Tyr Ala Ala Ser Ser Arg Gly Ser Gly Val Pro Ser Arg Phe Ser Gly
50 55 60
Ser Gly Ser Gly Thr Asp Phe Thr Leu Thr Ile Ser Ser Leu Gln Pro
65 70 75 80
Glu Asp Phe Ala Thr Tyr Tyr Cys Gln Gln Ser Arg Thr Phe Gly Gln
85 90 95
Gly Thr Lys Val Glu Ile Lys
100
<210> 8
<211> 11
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 8
Arg Thr Ser Gln Ser Leu Ser Ser Tyr Thr His
1 5 10
<210> 9
<211> 7
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 9
Ala Ala Ser Ser Arg Gly Ser
1 5
<210> 10
<211> 5
<212> PRT
<213> Artificial Sequence
<220>
<223> Description of Artificial Sequence: Synthetic
peptide
<400> 10
Gln Gln Ser Arg Thr
1 5