(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041966
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】リンパ球活性化遺伝子-3(LAG-3)へ結合する抗体の最適化およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240319BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240319BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240319BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240319BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240319BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240319BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240319BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240319BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240319BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240319BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20240319BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20240319BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P21/08
A61K39/395 N
A61K47/68
A61K45/00
A61P37/04
A61P35/00
A61P31/12
A61K39/395 U
A61K39/395 L
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024005837
(22)【出願日】2024-01-18
(62)【分割の表示】P 2022003192の分割
【原出願日】2013-07-02
(31)【優先権主張番号】61/667,058
(32)【優先日】2012-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ニルス・ロンバーグ
(72)【発明者】
【氏名】モハン・スリニバサン
(57)【要約】 (修正有)
【課題】LAG-3に特異的に結合し、以前に記載されている抗LAG-3抗体と比較して、最適化された機能特性を有する単離されたモノクローナル抗体を提供する。
【解決手段】本発明の抗体は、脱アミド部位の減少を含むが、ヒトLAG-3への高アフィニティー結合、および物理的(すなわち、熱的および化学的)安定性を維持している。本発明の抗体をコードする核酸分子、発現ベクター、宿主細胞および本発明の抗体を発現するための方法、ならびに該抗体を含む免疫複合体、二重特異性分子および医薬組成物も、提供する。本発明はまた、LAG-3を検出するための方法、ならびに本発明の抗LAG-3抗体を使用して、免疫応答を刺激して処置するための方法も提供する。抗体を少なくとも1つのさらなる免疫刺激抗体と共投与する併用療法も提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖および軽鎖可変領域を含む、ヒトLAG-3に結合する単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分であって、該重鎖可変領域は、配列番号:12の重鎖可変領域からのCDR1、CDR2およびCDR3領域を含む、単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項2】
重鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域が、それぞれ配列番号:15、16および17のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項3】
軽鎖可変領域が、配列番号:14の軽鎖可変領域からのCDR1、CDR2およびCDR3領域を含む、請求項1に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項4】
軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域が、それぞれ配列番号:18、19および20のアミノ酸配列を含む、請求項3に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項5】
重鎖可変領域が、配列番号:12のアミノ酸配列を含む、請求項1または3に記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項6】
軽鎖可変領域が、配列番号:14のアミノ酸配列を含む、請求項1から5のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項7】
それぞれ配列番号:15、16、17、および配列番号:18、19および20のアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖CDR1、CDR2およびCDR3領域を含む、ヒトLAG-3に結合する単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項8】
それぞれ配列番号:12および14のアミノ酸配列を含む重鎖および軽鎖可変領域を含む、ヒトLAG-3に結合する単離されたモノクローナル抗体またはその抗原結合部分。
【請求項9】
以下の特性の1つまたは組合せ:
(a)サルLAG-3へ結合する;
(b)マウスLAG-3へ結合しない;
(c)LAG-3の主要組織適合性(MHC)クラスII分子へ結合する;
(d)LAG-3の主要組織適合性(MHC)クラスII分子への結合を阻害する;または
(e)免疫応答を刺激する
を示す、請求項1から8のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項10】
抗原特異的T細胞応答においてインターロイキン-2(IL-2)生産を刺激する、請求項1から9のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項11】
抗腫瘍免疫応答を刺激する、請求項1から10のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項12】
アミノ酸配列PGHPLAPG(配列番号:21)を含むヒトLAG-3のエピトープに結合する、請求項1から11のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項13】
アミノ酸配列HPAAPSSW(配列番号:22)またはPAAPSSWG(配列番号:23)を含むヒトLAG-3のエピトープに結合する、請求項1から12のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項14】
0.27x10-9M以下のKDにてヒトLAG-3に結合する、請求項1から13のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項15】
ヒト、ヒト化またはキメラ抗体である、請求項1から14のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項16】
IgG1、IgG2またはIgG4アイソタイプである、請求項1から15のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項17】
抗体フラグメントまたは一本鎖抗体である、請求項1から16のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分。
【請求項18】
請求項1から17のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分、および第2の抗体またはその抗原結合部分を含む、二重特異性分子。
【請求項19】
治療剤に連結した、請求項1から17のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分を含む、免疫複合体。
【請求項20】
治療剤が、細胞毒素または放射性同位体である、請求項19に記載の免疫複合体。
【請求項21】
請求項1から17のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分、請求項18に記載の二重特異性分子、または請求項19または20に記載の免疫複合体、および薬学的に許容される担体を含む組成物。
【請求項22】
抗癌剤をさらに含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
該剤が抗体または化学療法剤である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
請求項1-8のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分の重鎖および/または軽鎖可変領域をコードする単離された核酸。
【請求項25】
請求項24に記載の核酸を含む発現ベクター。
【請求項26】
請求項25に記載の発現ベクターを含む宿主細胞。
【請求項27】
請求項26に記載の宿主細胞において抗体を発現させ、宿主細胞から抗体を単離することを含む、抗LAG-3抗体を製造するための方法。
【請求項28】
対象における免疫応答が刺激されるように、請求項1-17のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分、請求項18に記載の二重特異性分子、または請求項19または20に記載の免疫複合体を対象に投与することを含む、対象における免疫応答を刺激する方法。
【請求項29】
対象が腫瘍を有する対象であり、腫瘍に対する免疫応答が刺激される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
対象がウイルスを有する対象であり、ウイルスに対する免疫応答が刺激される、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
抗原特異的T細胞応答が刺激されるように、免疫応答が抗原特異的T細胞応答である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
抗原特異的T細胞によるインターロイキン-2生産が刺激される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
腫瘍の増殖が対象において阻害されるように、請求項1-17のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分、請求項18に記載の二重特異性分子、または請求項19または20に記載の免疫複合体を対象に投与することを含む、対象における腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法。
【請求項34】
ウイルス感染が対象において処置されるように、請求項1-17のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分、請求項18に記載の二重特異性分子、または請求項19または20に記載の免疫複合体を対象に投与することを含む、対象におけるウイルス感染を処置するための方法。
【請求項35】
少なくとも1つのさらなる免疫刺激抗体の投与をさらに含む、請求項30に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1つのさらなる免疫刺激抗体が抗PD-1抗体である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
少なくとも1つのさらなる免疫刺激抗体が抗PD-L1抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
少なくとも1つのさらなる免疫刺激抗体が抗-CTLA-4抗体である、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
対象における免疫応答、所望により抗原特異的T細胞応答を刺激するため、または腫瘍細胞の増殖を阻害するため、またはウイルス感染を処置するための、請求項1-17のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分、請求項18に記載の二重特異性分子、または請求項19または20に記載の免疫複合体の使用。
【請求項40】
対象における免疫応答、所望により抗原特異的T細胞応答を刺激するため、または腫瘍細胞の増殖を阻害するため、またはウイルス感染を処置するための薬物の製造のための、請求項1-17のいずれかに記載の抗体またはその抗原結合部分、請求項18に記載の二重特異性分子、または請求項19または20に記載の免疫複合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
治療抗体は、医薬産業の最も急速に成長している分野の一つである。効力(すなわち、活性)を維持するため、および免疫原性を最小限にするために、抗体および他のタンパク質薬物は、製造および保存中に、物理化学的分解から保護されなければならない。実際に、抗体治療薬の開発における主な困難の一つは、対象に投与するときの起こり得る免疫原性応答であり、これは、迅速なクリアランスを引き起こし得るか、またはアナフィラキシーショックを含む生命に関わる副作用を誘発さえし得る。種々の因子、例えば、その生理化学特性(例えば、純度、安定性または溶解性)、臨床的因子(例えば、用量、投与経路、疾患の不均一性、または患者特性)、および他の薬剤との同時処置が、抗体の免疫原性に影響する(Swannら (2008) Curr Opinion Immuol 20:493-499)。
【背景技術】
【0002】
抗体の免疫原性および/または抗体活性の喪失は、しばしば脱アミドによる。脱アミドは、タンパク質(例えば、抗体)において自発的に起こる化学的分解プロセスである。脱アミドは、アミノ酸残基、例えば、アスパラギンおよびグルタミンからアミド官能基を除去し、したがって、そのアミド含有側鎖を損傷する。これは、順に、タンパク質全体の構造的および生物学的変化を引き起こし、したがって抗体の異種形態を創造する。脱アミドは、組換え的に生産される治療抗体に起こる最も一般的な翻訳後修飾の1つである。
【0003】
例えば、細胞培養中、脱アミドによるモノクローナル抗体h1B4(ヒト化抗-CD18抗体)の重鎖における不均一性が、Tsaiら (Pharm Res 10(11):1580 (1993))により報告された。加えて、脱アミドによる生物学的活性の減少/喪失は、認識された問題となっている。例えば、Kroonらは、治療抗体OKT3におけるいくつかの脱アミド部位を特徴付け、OKT3生産ロットのサンプル(14月から3年もの)が75%活性を下回ったことを報告した(Pharm Res 9(11):1386 (1992)、1389頁、第2欄)。加えて、それらのマップにおいて多量の酸化ペプチドを示すOKT3のサンプルは、抗原結合効力アッセイにおいて有意に減少した活性を有した(1390頁、第1欄)。該著者らは、OKT3の保存時に起こる化学修飾の特定の部位が、ペプチドマッピングにより同定され、抗体の化学分析および生物学的アッセイにおいて観察される変化と相関していたと結論付けた(1392頁、第1欄)。生物学的活性の喪失は、組換えヒトDNase(Caciaら (1993) J. Chromatogr. 634:229-239)および組換え可溶性CD4(Teshimaら (1991) Biochemistry 30:3916-3922)を含む種々の他の脱アミド化治療タンパク質についても報告されている。
【0004】
全般的に、脱アミドは、医薬産業に重要な、予測不可能な問題である。抗体治療薬内の脱アミドにより引き起こされる変動のモニタリングと関連する取り組み、特に、ならびにこの変動と関連するFDAの関心(concerns)は、コストを増大させ、臨床試験を遅延させる。さらに、脱アミド(例えば、部位特異的突然変異誘発)を受けやすいアミノ酸の組換え生産および/または改変と関連するシフト条件(例えば、温度、pH、および細胞型)を含む、この問題に対処するための修飾は、とりわけ変化が抗体の相補性決定領域(CDR)内に作られるとき、安定性および活性にマイナスに影響し得る。したがって、治療抗体のより安定なバージョンの必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
要約
本発明は、LAG-3(例えば、ヒトLAG-3)に結合し、以前に記載されている抗LAG-3抗体と比較して、最適化された物理的安定性を有する単離されたモノクローナル抗体(例えば、ヒトモノクローナル抗体)を提供する。特に、本発明は、修飾されていない抗体と比較して、有意に改善された熱および化学安定性を示す抗体25F7(US 2011/0150892 A1)の修飾された形態に関する。具体的には、抗体25F7の重鎖CDR2ドメインの重要な結合領域を改変することにより、修飾された抗体は、有意に高い物理的および熱安定性、低下した脱アミド、高い熱可逆性、および低い凝集を示すことが示された。同時に、修飾された抗体が、ヒトLAG-3への修飾されていない抗体と同じ高い結合アフィニティーおよび修飾されていない抗体の機能活性を維持する、例えば、LAG-3の主要組織適合性(MHC)クラスII分子への結合を阻害する、および抗原特異的T細胞応答を刺激する能力を維持することが予想外に観察された。修飾された抗体の結合/生物学的活性の安定性および維持における組み合わせられた実質的な増加は、特に抗体機能に対するCDR領域の重要性(criticality)を考慮すると、驚くべきことであった。
【0006】
本発明の抗体は、LAG-3タンパク質の検出および腫瘍を有する対象またはウイルスを有する対象における抗原特異的T細胞応答の刺激を含む、種々の適用のために使用することができる。
【0007】
したがって、1つの局面において、本発明は、配列番号:12のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域を有する単離されたモノクローナル抗体(例えば、ヒト抗体)またはその抗原結合部分に関する。他の態様において、抗体は、配列番号:14のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域をさらに含む。他の態様において、抗体またはその抗原結合部分は、配列番号:12のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3領域(例えば、それぞれ配列番号:15、16および17)を含む。他の態様において、抗体は、配列番号:12のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3領域(例えば、それぞれ配列番号:18、19および20)をさらに含む。
【0008】
好ましい態様において、抗体は、抗体25F7と比較して、増加した物理的特性(すなわち、熱および化学安定性)を示すが、25F7と少なくとも同じヒトLAG-3に対する結合アフィニティーを維持している。例えば、抗体は、抗体25F7と比較して、脱アミドによって重鎖CDR2領域における減少した配列可変性、例えば、4℃で12週後、アミノ酸配列の約2.5%以下の修飾(すなわち、本明細書に記載されている「リアルタイム」安定性試験下)、および/または、40℃で12週後、アミノ酸配列の約12.0%以下の修飾(すなわち、本明細書に記載されている加速ストレス条件下)を示すが、少なくとも約1x10-7M以下のKD(さらに好ましくは、1x10-8M以下のKD、5x10-9M以下のKD、または1x10-9M以下のKD)のヒトLAG-3に対する結合アフィニティーを維持している。他の態様において、抗体は、pH8.0でPBSにおいて少なくとも約40%の熱可逆性を示す。
【0009】
他の態様において、抗体は、非修飾抗体(Krishnamurthy R and Manning MC (2002) Curr Pharm Biotechnol 3:361-71)と比較して、より高い融解温度(インビボにおいてより良い総合安定性を示す)を有する。1つの態様において、抗体は、60℃以上、例えば、65℃以上、または70℃以上のTM1(最初のアンフォールディングの温度)を示す。抗体の融点は、示差走査熱量測定(Chenら (2003) Pharm Res 20:1952-60; Ghirlandoら (1999) Immunol Lett 68:47-52)または円偏光二色性(Murrayら (2002) J. Chromatogr Sci 40:343-9)を使用して測定することができる。
【0010】
他の態様において、抗体は迅速な分解に対する耐性により特徴付けられる。抗体の分解は、毛細管電気泳動法(CE)およびMALDI-MSを使用して測定することができる(Alexander AJ and Hughes DE (1995) Anal Chem 67:3626-32)。
【0011】
他の態様において、抗体は、最小の凝集効果、例えば、25%以下、例えば、20%以下、15%以下、10%以下、5%以下、または4%以下の凝集を示す。凝集は、望ましくない免疫応答および/または変化した、もしくは好ましくない薬物動態学的特性を引き起こし得る。凝集は、サイズ排除カラム(SEC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および光散乱を含むいくつかの技術により測定することができる。
【0012】
他の態様において、抗体は、少なくとも1つの以下の特性:
(a)サルLAG-3へ結合する;
(b)マウスLAG-3へ結合しない;
(c)LAG-3の主要組織適合性(MHC)クラスII分子への結合を阻害する;および
(d)免疫応答、特に抗原特異的T細胞応答を刺激する
をさらに示す。
【0013】
好ましくは、抗体は、特性(a)、(b)、(c)および(d)の少なくとも2つを示す。さらに好ましくは、抗体は、特性(a)、(b)、(c)および(d)の少なくとも3つを示す。よりさらに好ましくは、抗体は、特性(a)、(b)、(c)および(d)の全4つを示す。
【0014】
他の態様において、抗体は、抗原特異的T細胞応答、例えば、抗原特異的T細胞応答におけるインターロイキン-2(IL-2)生産を刺激する。他の態様において、抗体は、免疫応答、例えば、抗腫瘍応答(例えば、腫瘍移植片モデルにおいてインビボにて腫瘍増殖の阻害)または自己免疫応答(例えば、NODマウスにおける糖尿病の発症)を刺激する。
【0015】
他の態様において、抗体は、アミノ酸配列PGHPLAPG(配列番号:21)を含むヒトLAG-3のエピトープに結合する。他の態様において、抗体は、アミノ酸配列HPAAPSSW(配列番号:22)またはPAAPSSWG(配列番号:23)を含むヒトLAG-3のエピトープに結合する。
【0016】
他の態様において、抗体は、免疫組織化学により下垂体組織を染色するか、または、免疫組織化学により下垂体組織を染色しない。
【0017】
本発明の抗体は、重鎖中のジスルフィド架橋不均一性を減少させるか、または破壊するように、所望により重鎖定常領域ヒンジ領域(Angalら (1993) Mol. Immunol. 30:105-108に記載されている位置241に対応する位置)にてセリンからプロリンへの変異を有する、例えば、IgG1、IgG2またはIgG4アイソタイプの全長抗体であり得る。1つの局面において、定常領域アイソタイプは、アミノ酸残基228にて変異、例えば、S228Pを有するIgG4である。あるいは、抗体は、抗体フラグメント、例えば、Fab、Fab’ またはFab’2フラグメントまたは一本鎖抗体であり得る。
【0018】
本発明の別の局面において、抗体(またはその抗原結合部分)は、抗体に連結した治療剤、例えば、細胞毒素または放射性同位体を含む免疫複合体の一部である。他の局面において、抗体は、抗体、またはその抗原結合部分と異なる結合特異性を有する第2の機能性部分(例えば、第2の抗体)を含む二重特異性分子の一部である。
【0019】
所望により薬学的に許容される担体において製剤化される、本発明の抗体もしくはその抗原結合部分、免疫複合体または二重特異性分子を含む組成物も提供する。
【0020】
本発明の抗体またはその抗原結合部分(例えば、可変領域および/またはCDR)をコードする核酸分子ならびにこのような核酸を含む発現ベクターおよびこのような発現ベクターを含む宿主細胞も提供する。このような発現ベクターを含む宿主細胞を使用して抗LAG-3抗体を調製するための方法も提供し、該方法は(i)宿主細胞において抗体を発現させ、そして(ii)宿主細胞から抗体を単離する工程を含み得る。
【0021】
他の局面において、本発明は、本発明の抗LAG-3抗体を使用して免疫応答を刺激する方法を提供する。1つの態様において、該方法は、抗原特異的T細胞応答が刺激されるように、T細胞を本発明の抗体と接触させることにより抗原特異的T細胞応答を刺激することを含む。好ましい態様において、抗原特異的T細胞によるインターロイキン-2生産が刺激される。他の態様において、対象は腫瘍を有する対象であり、腫瘍に対する免疫応答が刺激される。他の態様において、対象はウイルスを有する対象であり、ウイルスに対する免疫応答が刺激される。
【0022】
さらに他の態様において、本発明は、腫瘍の増殖を対象において阻害するように、本発明の抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを含む、対象における腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法を提供する。さらに別の態様において、本発明は、ウイルス感染を対象において処置するように、本発明の抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを含む、対象におけるウイルス感染を処置するための方法を提供する。他の態様において、これらの方法は、本発明の組成物、二重特異性または免疫複合体を投与することを含む。
【0023】
さらに他の態様において、本発明は、例えば、腫瘍増殖を阻害するか、または抗-ウイルス応答を刺激するために対象における免疫応答を刺激するように、本発明の抗体またはその抗原結合部分および少なくとも1つのさらなる免疫刺激抗体、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体および/または抗-CTLA-4抗体を対象に投与することを含む、対象における免疫応答を刺激するための方法を提供する。1つの態様において、さらなる免疫刺激抗体は抗PD-1抗体である。他の態様において、さらなる免疫刺激剤は抗PD-L1抗体である。さらに他の態様において、さらなる免疫刺激剤は抗-CTLA-4抗体である。さらに他の態様において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は、サイトカイン(例えば、IL-2および/またはIL-21)、または共刺激抗体(例えば、抗-CD137および/または抗-GITR抗体)と共に投与される。抗体は、例えば、ヒト、キメラまたはヒト化抗体であり得る。
【0024】
他の局面において、本発明は、前記方法における使用のための、または(例えば、処置のため)前記方法における使用のための医薬の製造のための本発明の抗LAG-3抗体および組成物を提供する。
【0025】
本願の他の特徴および利点は本記載および実施例から明らかであるが、これらに限定すると解釈してはならない。本明細書において引用されているすべての文献、Genbank登録、特許および公開特許出願の内容を出典明示により明確に本明細書に包含させる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】
図1Aは25F7ヒトモノクローナル抗体の重鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:1)およびアミノ酸配列(配列番号:2)を示す。CDR1(配列番号:5)、CDR2(配列番号:6)およびCDR3(配列番号:7)領域が示されており、V、DおよびJ生殖細胞系列誘導体が示されている。CDR領域はKabatシステムを使用して示される(Kabatら (1991) Sequences of Proteins of Immunological Interest, Fifth Edition, U.S. Department of Health and Human Services, NIH Publication No. 91-3242)。
【0027】
【
図1B】
図1Bは25F7ヒトモノクローナル抗体のカッパ軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:3)およびアミノ酸配列(配列番号:4)を示す。CDR1(配列番号:8)、CDR2(配列番号:9)およびCDR3(配列番号:10)領域が示されており、VおよびJ生殖細胞系列誘導体が示されている。抗体25F7の全長重鎖および軽鎖アミノ酸配列は、それぞれ配列番号:32および34に示されている。
【0028】
【
図2A】
図2AはLAG3.5モノクローナル抗体の重鎖可変領域のアミノ酸配列(配列番号:12)を示す。CDR1(配列番号:15)、CDR2(配列番号:16)およびCDR3(配列番号:17)領域が示されている。抗体LAG3.5の全長重鎖および軽鎖アミノ酸配列は、それぞれ配列番号:35および37に示されている。
【0029】
【
図2B】
図2BはLAG3.5モノクローナル抗体のカッパ軽鎖可変領域のヌクレオチド配列(配列番号:13)およびアミノ酸配列(配列番号:14)を示す。CDR1(配列番号:18)、CDR2(配列番号:19)およびCDR3(配列番号:20)領域が示されている。
【0030】
【
図3】
図3は、抗体25F7(LAG3.1)のCDR2重鎖可変領域配列のアミノ酸配列(配列番号:41)および対応するヒト生殖細胞系列配列(配列番号:27)と比較しての、LAG-3変異体LAG3.5(配列番号:42)、LAG3.6(配列番号:43)、LAG3.7(配列番号:44)およびLAG3.8(配列番号:45)のCDR2重鎖可変領域配列のアミノ酸配列を示す。LAG3.5のCDR2重鎖可変領域は、25F7のCDR2重鎖可変領域から、(アスパラギン(N)に対して)位置54にてアルギニン(R)および(アスパラギン(N)に対して)位置56にてセリン(S)で異なる。LAG3.5および25F7の残りのCDRは同一である。
図3は、配列番号:40も記載している。
【0031】
【
図4】
図4Aおよび4Bは、活性化ヒトCD4+T細胞への抗体LAG3.1(25F7)、LAG3.2、LAG3.5、LAG3.6、LAG3.7およびLAG3.8の結合活性(それぞれEC
50およびアフィニティー)を示すグラフである。
図4Bは、配列番号:41、42、45、44および43をそれぞれ順に記載している。
【0032】
【
図5-1】
図5A、B、C、DおよびEは、それぞれ、抗体LAG3.1(25F7)、LAG3.5、LAG3.6、LAG3.7およびLAG3.8の熱融解曲線(すなわち、熱安定性)を示すグラフである。
【
図5-2】
図5A、B、C、DおよびEは、それぞれ、抗体LAG3.1(25F7)、LAG3.5、LAG3.6、LAG3.7およびLAG3.8の熱融解曲線(すなわち、熱安定性)を示すグラフである。
【0033】
【
図6-1】
図6A、B、C、DおよびEは、それぞれ、抗体LAG3.1(25F7)、LAG3.5、LAG3.6、LAG3.7およびLAG3.8の熱可逆性曲線(すなわち、熱安定性)を示すグラフである。
【
図6-2】
図6A、B、C、DおよびEは、それぞれ、抗体LAG3.1(25F7)、LAG3.5、LAG3.6、LAG3.7およびLAG3.8の熱可逆性曲線(すなわち、熱安定性)を示すグラフである。
【0034】
【
図7】
図7は、活性化ヒトCD4+T細胞および抗原結合(Biacore)への抗体LAG3.1(25F7)およびLAG3.5の結合活性を示すグラフである。
【0035】
【
図8】
図8は、本明細書に記載されている加速ストレス条件下で5日間インキュベート後に、脱アミドおよび異性化を反映する抗体LAG3.1(25F7)およびLAG3.5に対する質量分析(化学修飾/分子安定性)を使用するペプチドマッピングの結果を示す。
図8は、配列番号:46-52をそれぞれ順に記載している。
【0036】
【
図9】
図9は、抗体LAG3.1(25F7)およびLAG3.5の親水性プロフィールを比較するグラフである。
【0037】
【
図10】
図10A、B、CおよびDは、本明細書に記載されているとおり、4℃および40℃、すなわち、加速ストレス条件および「リアルタイム」安定性試験の両方での抗体LAG3.1およびLAG3.5のアフィニティーおよび物理的安定性(すなわち、熱および化学安定性)を比較するグラフである。
【0038】
【
図11】
図11AおよびBは、4℃および40℃での抗体LAG3.1およびLAG3.5のアミノ酸配列の修飾パーセントを比較するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
発明の詳細な説明
本明細書をさらに容易に理解するために、特定の用語を最初に定義する。さらなる定義は詳細な説明中に記載されている。
【0040】
「25F7」、「抗体25F7」、「抗体LAG3.1」および「LAG3.1」なる用語は、US2011/0150892 A1に記載されている抗-ヒトLAG-3抗体を示す。25F7(LAG3.1)の重鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号:1)および対応するアミノ酸配列(配列番号:2)は、
図1Aにおいて示される(それぞれ配列番号:4、5および7と表されるCDR配列を有する)。25F7(LAG3.1)の軽鎖可変領域をコードするヌクレオチド配列(配列番号:3)および対応するアミノ酸配列(配列番号:4)は、
図1Bにおいて示される(それぞれ配列番号:8、9および10と表されるCDR配列を有する)。
【0041】
「LAG-3」なる用語は、リンパ球活性化遺伝子-3を示す。「LAG-3」なる用語は、変異体、アイソフォーム、ホモログ、オルソログおよびパラログを含む。例えば、ヒトLAG-3タンパク質に対して特異的である抗体は、ある場合において、ヒト以外の種由来のLAG-3タンパク質と交差反応し得る。他の態様において、ヒトLAG-3タンパク質に対して特異的である抗体は、ヒトLAG-3タンパク質に対して完全に特異的であってよく、種または他の型の交差反応性を示さなくてもよく、または、全ての他の種ではなくある特定の他の種由来のLAG-3と交差反応してよい(例えば、マウスLAG-3ではなくサルLAG-3と交差反応する)。「ヒトLAG-3」なる用語は、ヒト配列LAG-3、例えば、Genbank 受入番号 NP_002277を有するヒトLAG-3の完全なアミノ酸配列を示す(配列番号:29)。「マウスLAG-3」なる用語は、マウス配列LAG-3、例えば、Genbank 受入番号 NP_032505を有するマウスLAG-3の完全なアミノ酸配列を示す。LAG-3はまた、当分野で、例えば、CD223として知られている。ヒトLAG-3配列は、例えば、保存されている変異または非保存領域における変異を有することにより、Genbank 受入番号 NP_002277のヒトLAG-3と異なっていてよく、LAG-3はGenbank 受入番号 NP_002277のヒトLAG-3と実質的に同じ生物学的機能を有する。例えば、ヒトLAG-3の生物学的機能は本明細書の抗体によって特異的に結合されるLAG-3の細胞外ドメインにおけるエピトープを有することであるか、またはヒトLAG-3の生物学的機能はMHCクラスII分子へ結合することである。
【0042】
「サルLAG-3」なる用語は、旧世界および新世界サルにより発現されるLAG-3タンパク質を含むことを意図し、カニクイザルLAG-3およびアカゲザルLAG-3に限定されない。サルLAG-3に対する典型的なアミノ酸配列は、Genbank 受入番号 XM_001108923としても寄託されている、アカゲザルLAG-3アミノ酸配列である。サルLAG-3に対する他の典型的なアミノ酸配列は、US 2011/0150892 A1に記載されているクローンpa23-5の別のアカゲザル配列である。この別のアカゲザル配列は、Genbank-寄託配列と比較して、位置419にて単一のアミノ酸の違いを示す。
【0043】
特定のヒトLAG-3配列は、一般的に、Genbank 受入番号 NP_002277のヒトLAG-3に対してアミノ酸配列において少なくとも90%同一であり、他の種(例えば、マウス)のLAG-3アミノ酸配列と比較したとき、ヒトであるアミノ酸配列と同定されるアミノ酸残基を含む。ある場合において、ヒトLAG-3は、Genbank 受入番号 NP_002277のLAG-3に対してアミノ酸配列において、少なくとも95%、またはさらに少なくとも96%、97%、98%もしくは99%同一であり得る。1つの態様において、ヒトLAG-3配列は、受入番号 NP_002277のLAG-3配列と最大10個のアミノ酸の違いを示し得る。1つの態様において、ヒトLAG-3は、Genbank 受入番号 NP_002277のLAG-3配列と最大5個、またはさらに最大4、3、2もしくは1個のアミノ酸の違いを示し得る。同一性パーセントは、本明細書に記載されているとおりに決定することができる。
【0044】
「免疫応答」なる用語は、侵入病原体、病原体に感染した細胞もしくは組織、癌細胞、または、自己免疫もしくは病的炎症の場合、正常ヒト細胞もしくは組織の人体からの破壊または除去に関する選択的障害を引き起こす、例えば、リンパ球、抗原提示細胞、食細胞、顆粒球および上記細胞または肝臓により生産される可溶性巨大分子(抗体、サイトカインおよび補体を含む)の活性を示す。
【0045】
「抗原特異的T細胞応答」は、T細胞に特異的である抗原でのT細胞の刺激によって生じるT細胞による応答を示す。抗原特異的刺激時のT細胞による応答の非限定的な例として、増殖およびサイトカイン生産(例えば、IL-2生産)を含む。
【0046】
本明細書において使用される「抗体」なる用語は、全抗体またはその抗原結合フラグメント(すなわち、「抗原結合部分」)または一本鎖を含む。全抗体はジスルフィド結合により相互連結された少なくとも2つの重(H)鎖および2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。それぞれの重鎖は重鎖可変領域(本明細書においてVHと省略する)および重鎖定常領域で構成される。重鎖定常領域は3つのドメイン、CH1、CH2およびCH3で構成される。それぞれの軽鎖は軽鎖可変領域(本明細書においてVLと省略する)および軽鎖定常領域で構成される。軽鎖定常領域は1つのドメインCLで構成される。VHおよびVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれるより保存されている領域により分断されている相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域にさらに分類できる。それぞれのVHおよびVLは、アミノ-末端からカルボキシ-末端へ次の順序:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4にて配置された3つのCDRおよび4つのFRから構成される。重鎖および軽鎖の可変領域は抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンの、免疫系の種々の細胞(例えば、エフェクター細胞)および古典的補体系の第一の成分(Clq)を含む宿主組織または因子への結合を介在し得る。
【0047】
本明細書において使用される抗体の「抗原結合部分」(または単に「抗体部分」)なる用語は、抗原(例えば、LAG-3タンパク質)に特異的に結合する能力を維持する抗体の1つ以上のフラグメントを示す。抗体の抗原結合機能は全長抗体のフラグメントにより行うことができることが示されている。抗体の「抗原結合部分」なる用語内に包含される結合フラグメントの例は、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CLおよびCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab’)2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド橋により連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VHおよびCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)VHおよびCH1ドメインからなるFvフラグメント;(v)抗体の単一のアームのVLおよびVHドメインからなるFvフラグメント、(vi)VHドメインからなるdAbフラグメント(Wardら, (1989) Nature 341:544-546);(vii)単離された相補性決定領域(CDR);および(viii)ナノボディ、単一可変ドメインおよび2つの定常ドメインを含む重鎖可変領域を含む。さらに、Fvフラグメントの2つのドメインVLおよびVHは別々の遺伝子によりコードされているが、それらは、組換え方法を使用して、VLおよびVH領域が対になって一価分子を形成する単一のタンパク質鎖として作製可能とする合成リンカーにより連結することができる(一本鎖Fv(scFv)としても既知;例えば、Birdら (1988) Science 242:423-426;およびHustonら (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883、参照)。このような一本鎖抗体はまた、抗体の「抗原結合部分」なる用語に包含されることを意図する。これらの抗体フラグメントは、当業者に既知の慣用の技術を使用して得られ、これらのフラグメントはインタクトな抗体と同じ手段において有用性についてスクリーニングされる。
【0048】
本明細書において使用される「単離された抗体」は、異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体を示すことを意図する(例えば、LAG-3タンパク質に特異的に結合する単離された抗体は特異的にLAG-3タンパク質以外の抗原に結合する抗体を実質的に含まない)。しかしながら、ヒトLAG-3タンパク質に特異的に結合する単離された抗体は、他の種の他の抗原、例えば、LAG-3タンパク質に対して交差反応性を有し得る。さらに、単離された抗体は実質的に他の細胞物質および/または化学物質を含まなくてもよい。
【0049】
本明細書において使用される「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」なる用語は、単一分子組成物の抗体分子の調製物を示す。モノクローナル抗体組成物は特定のエピトープに対して単一の結合特異性およびアフィニティーを示す。
【0050】
本明細書において使用される「ヒト抗体」なる用語は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来している可変領域を有する抗体を含むことを意図する。さらに、抗体が定常領域を含むとき、定常領域は、また、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来する。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでランダムまたは部位特異的突然変異またはインビボで体細胞変異により導入された変異)を含み得る。しかしながら、本明細書において使用される「ヒト抗体」なる用語は、別の哺乳動物種、例えば、マウスの生殖細胞系列に由来するCDR配列がヒトフレームワーク配列にグラフトされている抗体を含むことを意図しない。
【0051】
「ヒトモノクローナル抗体」なる用語は、フレームワークおよびCDR領域の両方がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来している可変領域を有する単一の結合特異性を示す抗体を示す。1つの態様において、ヒトモノクローナル抗体は、不死化細胞に融合させたトランスジェニック非ヒト動物、例えば、ヒト重鎖導入遺伝子および軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有するトランスジェニックマウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマにより生産される。
【0052】
本明細書において使用される「組換えヒト抗体」なる用語は、組換え手段により調製、発現、創造または単離されるすべてのヒト抗体、例えば、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子をトランスジェニックまたは染色体導入される動物(例えば、マウス)またはそれから調製されるハイブリドーマから単離される抗体(以下に記載されている)、(b)ヒト抗体を発現するように形質転換される宿主細胞、例えば、トランスフェクトーマから単離される抗体、(c)組換えコンビナトリアルヒト抗体ライブラリーから単離される抗体、および(d)ヒト免疫グロブリン遺伝子配列の他のDNA配列へのスプライシングを含む任意の他の手段により調製、発現、創造または単離される抗体を含む。このような組換えヒト抗体は、フレームワークおよびCDR領域がヒト生殖細胞系列の免疫グロブリン配列に由来している可変領域を有する。しかしながら、1つの態様において、このような組換えヒト抗体をインビトロ変異(または、ヒトIg配列に対して動物トランスジェニックが使用されるとき、インビボ体細胞変異)に付すことができ、したがって、組換え抗体のVHおよびVL領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖細胞系列のVHおよびVL配列に由来し、関連するが、天然にインビボにおいてヒト抗体生殖細胞系列のレパートリー内に存在しない可能性のある配列である。
【0053】
「アイソタイプ」なる用語は、重鎖定常領域遺伝子によってコードされる抗体クラス(例えば、IgMまたはIgGl)を示す。
【0054】
「抗原を認識する抗体」および「抗原に対して特異的な抗体」なる用語は、「抗原に特異的に結合する抗体」なる用語と互換的に使用される。
【0055】
「ヒト抗体誘導体」なる用語は、ヒト抗体の修飾された形態、例えば、抗体および別の薬物または抗体の複合体のすべてを示す。
【0056】
「ヒト化抗体」なる用語は、他の哺乳動物種、例えば、マウスの生殖細胞系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列上にグラフトされている抗体を示すことを意図する。さらなるフレームワーク領域修飾はヒトフレームワーク配列内に作られ得る。
【0057】
「キメラ抗体」なる用語は、可変領域配列が1つの種由来であり、定常領域配列が別の種由来である抗体、例えば、可変領域配列がマウス抗体由来であり、定常領域配列がヒト抗体由来である抗体を示すことを意図する。
【0058】
本明細書において使用される「ヒトLAG-3に特異的に結合する」抗体は、ヒトLAG-3タンパク質(あるいは1つ以上の非ヒト種由来のLAG-3タンパク質)に結合するが、非-LAG-3タンパク質に実質的に結合しない抗体を示すことを意図する。好ましくは、抗体は、「高アフィニティー」、すなわち1×10-7M以下、さらに好ましくは1×10-8M以下、さらに好ましくは5×10-9M以下、さらに好ましくは1×10-9M以下のKDにてヒトLAG-3タンパク質に結合する。
【0059】
本明細書において使用されるタンパク質または細胞に「実質的に結合しない」なる用語は、タンパク質または細胞に結合しないか、または高アフィニティーにて結合しない、すなわちタンパク質または細胞に1×10-6M以上、さらに好ましくは1×10-5M以上、さらに好ましくは1×10-4M以上、さらに好ましくは1×10-3M以上、より好ましくは1×10-2M以上のKDにて結合することを意味する。
【0060】
本明細書において使用される「Kassoc」または「Ka」なる用語は、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度を示すことを意図するが、本明細書において使用される「Kdis」または「Kd」なる用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度を示すことを意図する。本明細書において使用される「KD」なる用語は、Kd対Kaの比(すなわち、Kd/Ka)から得られ、モル濃度(M)として表される解離定数を示すことを意図する。抗体に対するKD値は当分野で確立している方法を使用して決定することができる。抗体のKDを決定するための好ましい方法は、表面プラズモン共鳴、好ましくはバイオセンサーシステム、例えば、Biacore(登録商標)システムを使用することによる。
【0061】
IgG抗体に対する「高アフィニティー」なる用語は、標的抗原に対して1×10-7M以下、より好ましくは5×10-8M以下、さらに好ましくは1×10-8M以下、さらに好ましくは5×10-9M以下およびさらに好ましくは1×10-9M以下のKDを有する抗体を示す。しかしながら、「高アフィニティー」結合は他の抗体アイソタイプに対して変化し得る。例えば、IgMアイソタイプに対する「高アフィニティー」結合は、10-6M以下、さらに好ましくは10-7M以下、さらに好ましくは10-8M以下のKDを有する抗体を示す。
【0062】
「脱アミド」なる用語は、タンパク質(例えば、抗体)において自発的に起こる化学的分解プロセスを示す。脱アミドは、アミノ酸残基、例えば、アスパラギンおよびグルタミンからアミド官能基を除去し、したがって、そのアミド含有側鎖を損傷する。具体的には、アスパラギンの側鎖は、隣接ペプチド基を攻撃し、対称スクシンイミド中間体を形成する。中間体の対称性は、アスパラギン酸またはイソアスパラギン酸のいずれかの2つの加水分解産物をもたらす。同様の反応がまた、アスパラギン酸側鎖においても起こり得、イソアスパラギン酸への部分変換を生じる。グルタミンの場合、脱アミドの割合は一般的にアスパラギンの10倍未満であるが、しかしながら、メカニズムは本質的に同じであり、進行するために水分子のみ必要である。
【0063】
「対象」なる用語は、ヒトまたは非ヒト動物のすべてを含む。「非ヒト動物」なる用語は、すべての脊椎動物、例えば、哺乳動物および非哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、鳥類、両生類およびは虫類を含むが、哺乳動物、例えば、非ヒト霊長類、ヒツジ、イヌ、ネコ、ウシおよびウマが好ましい。
【0064】
本発明の種々の局面は、以下のサブセクションにおいてさらに詳細に記載されている。
【0065】
増加した安定性および有利な機能特性を有する抗-LAG-3抗体
本発明の抗体は、ヒトLAG-3に特異的に結合し、以前に記載されている抗LAG-3抗体と比較して、特に抗体25F7(LAG3.1)と比較して、最適化された安定性を有する。この最適化は、減少した脱アミド(例えば、増加した化学安定性)および増加した熱リフォールディング(例えば、増加した物理的安定性)を含むが、ヒトLAG-3への高アフィニティー結合を維持している。
【0066】
脱アミド部位を同定するための方法は、当分野で知られている(例えば、イオン交換、逆相、および疎水性相互作用クロマトグラフィー、およびタンパク質分解消化物のペプチドマッピング(LC-MS)参照)。物理的安定性を測定するための適当なアッセイは、例えば、融点および/または変性後の抗体構造のリフォールディングの分析(例えば、例えば、実施例3、セクション3に記載されている可逆性パーセント)を含む。
【0067】
1つ以上の技術を使用して評価することができるヒトLAG-3への結合はまた、当分野で確立している。例えば、抗体は、ヒトLAG-3を発現する細胞系、例えば、細胞表面上にLAG-3(例えば、ヒトLAG-3またはサルLAG-3(例えば、アカゲザルまたはカニクイザル)またはマウスLAG-3)を発現するようにトランスフェクトされているCHO細胞と抗体を反応させるフローサイトメトリーアッセイにより試験することができる。フローサイトメトリーアッセイにおける使用のための他の適当な細胞は、天然のLAG-3を発現する抗CD3-刺激CD4+活性化T細胞を含む。さらに、またはあるいは、結合速度(例えば、KD値)を含む抗体の結合は、BIAcoreアッセイにおいて試験することができる。さらに他の適当な結合アッセイは、例えば、組換えLAG-3タンパク質を使用する、ELISAアッセイを含む。
【0068】
好ましくは、本発明の抗体は、1x10-7M以下、さらに好ましくは1x10-8M以下、5x10-9M以下、または1x10-9M以下のKDにてヒトLAG-3タンパク質に結合する。
【0069】
一般的に、抗体は、リンパ球組織、例えば、扁桃腺、脾臓または胸腺におけるLAG-3に結合し、免疫組織化学により検出することができる。1つの態様において、抗体は、免疫組織化学により測定されるとき、下垂体組織(例えば、下垂体において維持される)を染色する。他の態様において、抗体は、免疫組織化学により測定されるとき、下垂体組織を染色しない(すなわち、下垂体において維持されない)。
【0070】
さらなる機能特性は、他の種由来のLAG-3との交差反応性を含む。例えば、抗体は、サルLAG-3(例えば、カニクイザル、アカゲザル)に結合することができるが、マウス由来のLAG-3に実質的に結合しない。好ましくは、本発明の抗体は、高アフィニティーでヒトLAG-3に結合する。
【0071】
他の機能特性は、免疫応答、例えば、抗原特異的T細胞応答を刺激する抗体の能力を含む。これは、例えば、抗原特異的T細胞応答におけるインターロイキン-2(IL-2)生産を刺激する抗体の能力を評価することにより試験することができる。1つの態様において、抗体は、ヒトLAG-3に結合し、抗原特異的T細胞応答を刺激する。他の態様において、抗体は、ヒトLAG-3に結合するが、抗原特異的T細胞応答を刺激しない。免疫応答を刺激する抗体の能力を評価するための他の手段は、腫瘍増殖、例えば、インビボ腫瘍移植片モデル(例えば、実施例6、参照)を阻害する能力または自己免疫応答を刺激する能力、例えば、自己免疫性モデルにおける自己免疫疾患の発症を促進する能力、例えば、NODマウスモデルにおける糖尿病の発症を促進する能力を試験することをを含む。
【0072】
本発明の好ましい抗体はヒトモノクローナル抗体である。さらに、またはあるいは、抗体は、例えば、キメラまたはヒト化モノクローナル抗体であり得る。
【0073】
モノクローナル抗体LAG3.5
本発明の好ましい抗体は、以下および実施例に記載されるように構造的および化学的に特徴付けられるヒトモノクローナル抗体LAG3.5である。LAG3.5のV
Hアミノ酸配列は、配列番号:12(
図2A)に示される。LAG3.5のV
Lアミノ酸配列は、配列番号:14(
図2B)に示される。
【0074】
ヒトLAG-3に結合する他の抗LAG-3抗体のVHおよびVL配列(またはCDR配列)は、抗体LAG3.5のVHおよびVL配列(またはCDR配列)と「混合および適合させる」ことができる。好ましくは、VHおよびVL鎖(またはかかる鎖内のCDR)を混合および適合させるとき、特定のVH/VL対由来のVH配列を構造的に類似のVH配列と置き換える。同様に、好ましくは、特定のVH/VL対由来のVL配列を構造的に類似のVL配列と置き換える。
【0075】
したがって、1つの態様において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は:
(a)アミノ酸配列配列番号:12を含む重鎖可変領域(すなわち、LAG3.5のVH);および
(b)アミノ酸配列配列番号:14を含む軽鎖可変領域(すなわち、LAG3.5のVL)または別の抗-LAG3抗体のVL(すなわち、LAG3.5と異なる);
を含み、ヒトLAG-3に特異的に結合する。
【0076】
他の態様において、本発明の抗体またはその抗原結合部分は:
(a)アミノ酸配列配列番号:12を含む重鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3領域(すなわち、LAG3.5のCDR配列、それぞれ配列番号:15、16および17);および
(b)アミノ酸配列配列番号:14を含む軽鎖可変領域のCDR1、CDR2およびCDR3領域(すなわち、LAG3.5のCDR配列、それぞれ配列番号:18、19および20)または別の抗-LAG3抗体のCDR(すなわち、LAG3.5と異なる);
を含み、ヒトLAG-3に特異的に結合する。
【0077】
さらに他の態様において、抗体またはその抗原結合部分は、ヒトLAG-3に結合する他の抗体のCDRと組み合わせられたLAG3.5の重鎖可変CDR2領域、例えば、異なる抗LAG-3抗体の、重鎖可変領域からのCDR1および/またはCDR3、および/または軽鎖可変領域からのCDR1、CDR2および/またはCDR3を含む。
【0078】
加えて、CDR1および/またはCDR2ドメインと独立して、CDR3ドメインのみは、同種抗原に対する抗体の結合特異性を決定することができ、多数の抗体が予想通りに、共通のCDR3配列に基づいて、同じ結合特異性を有して産生することができることが当分野でよく知られている。例えば、Klimkaら, British J. of Cancer 83(2):252-260 (2000); Beiboerら, J. Mol. Biol. 296:833-849 (2000); Raderら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 95:8910-8915 (1998); Barbasら, J. Am. Chem. Soc. 116:2161-2162 (1994); Barbasら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 92:2529-2533 (1995); Ditzelら, J. Immunol. 157:739-749 (1996); Berezovら, BIAjournal 8:Scientific Review 8 (2001); Igarashiら, J. Biochem (Tokyo) 117:452-7 (1995); Bourgeoisら, J. Virol 72:807-10 (1998); Leviら, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 90:4374-8 (1993); Polymenis and Stoller, J. Immunol. 152:5218-5329 (1994)およびXu and Davis, Immunity 13:37-45 (2000)、参照。米国特許第6,951,646;6,914,128;6,090,382;6,818,216;6,156,313;6,827,925;5,833,943;5,762,905および5,760,185号も、参照。これらそれぞれの文献を出典明示によりそれらの全体を本明細書に包含させる。
【0079】
したがって、他の態様において、本発明の抗体は、LAG3.5の重鎖可変領域のCDR2およびLAG3.5(配列番号:17および/または20)の重鎖および/または軽鎖可変領域の少なくともCDR3、または別のLAG-3抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域のCDR3を含み、ヒトLAG-3に特異的に結合することができる。抗体は、好ましくは、(a)LAG3.5と結合に対して競合し;(b)LAG3.5の機能特性を維持し;(c)LAG3.5と同じエピトープに結合し;および/または(d)LAG3.5と同様の結合アフィニティーを有する。さらに他の態様において、該抗体は、さらに、LAG3.5(配列番号:17および/または20)の軽鎖可変領域のCDR2、または別のLAG-3抗体の軽鎖可変領域のCDR2を含んでもよく、ヒトLAG-3に特異的に結合することができる。他の態様において、本発明の抗体は、さらに、LAG3.5(配列番号:17および/または20)の重鎖および/または軽鎖可変領域のCDR1、または別のLAG-3抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域のCDR1を含んでもよく、ヒトLAG-3に特異的に結合することができる。
【0080】
保存的修飾
他の態様において、本発明の抗体は、1つ以上の保存的修飾により、LAG3.5のものと異なるCDR1、CDR2およびCDR3配列の重鎖および/または軽鎖可変領域配列を含む。好ましい態様において、しかしながら、VHCDR2の残基54および56は、それぞれ、アルギニンおよびセリンとして残る(すなわち、変異されない)。特定の保存的配列修飾は、抗原結合を取り除くことなく作ることができることが、当分野で理解されている。例えば、Brummellら (1993) Biochem 32:1180-8; de Wildtら (1997) Prot. Eng. 10:835-41; Komissarovら (1997) J. Biol. Chem. 272:26864-26870; Hallら (1992) J. Immunol. 149:1605-12; Kelley and O'Connell (1993) Biochem. 32:6862-35; Adib-Conquyら (1998) Int. Immunol. 10:341-6およびBeersら (2000) Clin. Can. Res. 6:2835-43、参照。したがって、1つの態様において、抗体は、CDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域および/またはCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域を含み:
(a)重鎖可変領域CDR1配列は、配列番号:15、および/または位置54および56以外でその保存的修飾を含み;そして/または
(b)重鎖可変領域CDR3配列は、配列番号:17、およびその保存的修飾を含み;および/または
(c)軽鎖可変領域CDR1、および/またはCDR2、および/またはCDR3配列は、配列番号:18、および/または、配列番号:19および/または配列番号:20、および/またはそれらの保存的修飾を含み;そして
(d)抗体はヒトLAG-3に特異的に結合する。
【0081】
さらに、またはあるいは、抗体は、上記されている以下の1つ以上の機能特性、例えば、ヒトLAG-3への高アフィニティー結合、サルLAG-3への結合、マウスLAG-3への非結合、LAG-3のMHCクラスII分子への結合を阻害する能力および/または抗原特異的T細胞応答を刺激する能力を有することができる。
【0082】
種々の態様において、抗体は、例えば、ヒト抗体、ヒト化抗体またはキメラ抗体であり得る。
【0083】
本明細書において使用される「保存的配列修飾」なる用語は、アミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意に影響しないか、または変化させないアミノ酸修飾を示すことを意図する。このような保存的修飾は、アミノ酸置換、付加および欠失を含む。修飾は、当分野で既知の標準技術、例えば、部位特異的突然変異およびPCR介在突然変異により本発明の抗体に導入され得る。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が同様の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されているものである。同様の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは当分野で定義されている。これらのファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、ベータ-分岐側鎖(例えば、スレオニン、バリン、イソロイシン)および芳香族性側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸を含む。したがって、本発明の抗体のCDR領域内の1つ以上のアミノ酸残基は、同じ側鎖ファミリーの他のアミノ酸残基と置換されていてもよく、改変された抗体を本明細書に記載されている機能アッセイを使用して、維持されている機能(すなわち、上記の機能)に関して試験することができる。
【0084】
操作および修飾された抗体
本発明の抗体は、修飾された抗体を操作するように、出発物質としてLAG3.5の1つ以上のVHおよび/またはVL配列を有する抗体を使用して調製することができる。抗体を、1つまたは両方の可変領域(すなわち、VHおよび/またはVL)内、例えば、1つ以上のCDR領域および/または1つ以上のフレームワーク領域内の1つ以上の残基を修飾することにより操作することができる。さらに、または、あるいは、抗体を、例えば、抗体のエフェクター機能を改変するために、定常領域内の残基を修飾することにより操作することができる。
【0085】
1つの態様において、CDRグラフティングは抗体の可変領域を操作するために使用することができる。抗体は、主として6つの重鎖および軽鎖相補性決定領域(CDR)に存在するアミノ酸残基を介して標的抗原と相互作用する。この理由のため、CDR内のアミノ酸配列はCDR外の配列よりも個々の抗体間でさらに異なっている。CDR配列がほとんどの抗体抗原相互作用に関与するため、異なる特性を有する異なる抗体のフレームワーク配列にグラフトされた特定の天然抗体のCDR配列を含む発現ベクターを構築することにより、特定の天然抗体の特性を模倣する組換え抗体を発現させることが可能である(例えば、Riechmannら (1998) Nature 332:323-327; Jonesら (1986) Nature 321:522-525; Queenら (1989) Proc. Natl. Acad. See. U.S.A. 86:10029-10033; 米国特許第5,225,539;5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370号、参照)。
【0086】
したがって、本発明の他の態様は、それぞれ配列番号:15、16、17を含むCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む重鎖可変領域、および/または、それぞれ配列番号:18、19、20を含むCDR1、CDR2およびCDR3配列を含む軽鎖可変領域(すなわち、LAG3.5のCDR)を含む単離されたモノクローナル抗体、またはその抗原結合部分に関する。これらの抗体はモノクローナル抗体LAG3.5のVHおよびVLのCDR配列を含むが、異なるフレームワーク配列を含み得る。
【0087】
このようなフレームワーク配列は、生殖細胞系列の抗体遺伝子配列を含む公開DNAデータベースまたは刊行されている文献から得ることができる。例えば、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子の生殖細胞系列のDNA配列は、「VBase」ヒト生殖細胞系列の配列データベース(インターネットwww.mrc-cpe.cam.ac.uk/vbaseで利用できる)、ならびにKabatら (1991), cited supra; Tomlinsonら (1992) “The Repertoire of Human Germline VH Sequence Reveals about Fifty Groups of VH Segments with Different Hypervariable Loops” J. Mol. Biol. 227:776-798;およびCoxら (1994) “A Directory of Human Germ-line VH Segments Reveals a Strong Bias in their Usage” Eur. J. Immunol. 24:827-836(これらのそれぞれの内容を出典明示により本明細書に包含させる)において見出すことができる。他の例として、ヒト重鎖および軽鎖可変領域遺伝子に関する生殖細胞系列のDNA配列は、Genbank データベースにおいて見出すことができる。例えば、HCo7 HuMAb マウスにおいて見出される以下の重鎖生殖細胞系列配列は、Genbank アクセッションナンバー:1-69(NG_0010109、NT_024637 & BC070333)、3-33(NG_0010109 & NT_024637)および3-7(NG_0010109 & NT_024637)において利用することができる。他の例として、HCo12 HuMAb マウスにおいて見出される以下の重鎖生殖細胞系列配列は、Genbank アクセッションナンバー:1-69(NG_0010109、NT_024637 & BC070333)、5-51(NG_0010109 & NT_024637)、4-34(NG_0010109 & NT_024637)、3-30.3(CAJ556644)&3-23(AJ406678)において利用することができる。
【0088】
抗体タンパク質配列は、当業者によく知られている、Gapped BLAST(Altschulら (1997)、上記)と称される配列類似検索法の1つを使用して、コンパイルされたタンパク質配列データベースと比較される。
【0089】
本発明の抗体における使用に好ましいフレームワーク配列は、本発明の選択された抗体により使用されるフレームワーク配列と構造的に類似のもの、例えば、本発明の好ましいモノクローナル抗体により使用されるVH 4-34フレームワーク配列および/またはVK L6フレームワーク配列と類似のものである。VHのCDR1、CDR2およびCDR3配列ならびにVKのCDR1、CDR2およびCDR3配列を、フレームワーク配列が由来する生殖細胞系列の免疫グロブリン遺伝子において見出されたものと同一の配列を有するフレームワーク領域にグラフトすることができ、またはCDR配列を生殖細胞系列配列と比較して1つ以上の変異を含むフレームワーク領域にグラフトすることができる。例えば、ある場合において、抗体の抗原結合力を維持または強化するためにフレームワーク領域内の残基を変異させることが有益であることが見出されている(例えば、米国特許第5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370号、参照)。
【0090】
別種の可変領域修飾は、VHおよび/またはVLのCDR1、CDR2および/またはCDR3領域のアミノ酸残基の変異であり、それによって興味ある抗体の1つ以上の結合特性(例えば、アフィニティー)を改善する。部位特異的突然変異またはPCR介在突然変異を変異を導入するために実施することができ、抗体結合の作用または興味ある他の機能特性を本明細書および実施例に記載されているインビトロまたはインビボアッセイにおいて評価することができる。好ましくは保存的修飾(上記)を導入する。変異はアミノ酸の置換、付加または欠失であり得るが、好ましくは置換である。さらに、一般的にCDR領域内の最大1、2、3、4または5個の残基が改変される。
【0091】
したがって、他の態様において、本発明は、(a)配列番号:15、または配列番号:15と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むVHのCDR1領域;(b)配列番号:16、または配列番号:16と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むVHのCDR2領域(好ましくは、位置54および56は、配列番号:16と同じである);(c)配列番号:17、または配列番号:17と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むVHのCDR3領域;を含む重鎖可変領域;(d)配列番号:18、または配列番号:18と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むVLのCDR1領域;(e)配列番号:19、または配列番号:19と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むVLのCDR2領域;および(f)配列番号:20、または配列番号:20と比較して1、2、3、4または5個のアミノ酸置換、欠失または付加を有するアミノ酸配列を含むVLのCDR3領域を含む、単離された抗LAG-3モノクローナル抗体、またはその抗原結合部分を提供する。
【0092】
本発明の操作された抗体は、修飾が、例えば、抗体の特性を改善するために、VHおよび/またはVL内のフレームワーク残基に行われたものを含む。一般的にこのようなフレームワーク修飾は、抗体の免疫原性を軽減するために行われる。例えば、1つのアプローチは1つ以上のフレームワーク残基を対応する生殖細胞系列配列へと「復帰変異(backmutate)」させることである。さらに特に、体細胞変異がおこった抗体は、抗体が由来する生殖細胞系列配列と異なるフレームワーク残基を含み得る。このような残基は、抗体のフレームワーク配列と抗体が由来する生殖細胞系列配列を比較することにより同定することができる。
【0093】
別種のフレームワーク修飾は、T細胞エピトープを除去し、それによって抗体の潜在的な免疫原性を減少させるために、フレームワーク領域内の、さらには1つ以上のCDR領域内の1つ以上の残基の変異を含む。このアプローチは、また、「脱免疫化(deimmunization)」として称され、米国特許公報第20030153043号においてさらに詳細に記載されている。
【0094】
フレームワークまたはCDR領域内で行われる修飾に加え、または代替で、本発明の抗体は、一般的に1つ以上の抗体の機能特性、例えば、血清半減期、補体結合、Fc受容体結合および/または抗原依存細胞毒性を改変するために、Fc領域内に修飾を含むように操作することができる。さらに、本発明の抗体は、再び1つ以上の抗体の機能特性を改変するために、化学的に修飾させるか(例えば、1つ以上の化学部分を抗体に結合させることができる)、またはそのグリコシル化を改変するために修飾させることができる。これらそれぞれの態様はさらに以下に詳細に記載されている。Fc領域における残基の番号付けはKabatのEU indexのものである。
【0095】
好ましい態様において、抗体は、重鎖定常領域のヒンジ領域における位置228に対応する位置にてセリンからプロリンへの変異を含むIgG4アイソタイプ抗体である(S228P;EU index)。この変異は、ヒンジ領域における重鎖中のジスルフィド架橋の不均一性を破壊することが報告されている(Angalら, 上記;位置241はKabat番号制に基づく)。
【0096】
1つの態様において、CH1のヒンジ領域は、ヒンジ領域のシステイン残基の数が改変、例えば、増加または減少されるように修飾される。このアプローチは、米国特許第5,677,425号においてさらに記載されている。CH1のヒンジ領域のシステイン残基の数は、例えば、軽鎖および重鎖の組み立てを促進するか、または抗体の安定性を増強または低下させるように改変される。
【0097】
他の態様において、抗体の生体半減期を短縮するために、抗体のFcヒンジ領域を変異させる。さらに特に、1つ以上のアミノ酸変異は、抗体が天然Fc-ヒンジドメインSpA結合と比較してブドウ球菌タンパク質A(SpA)結合を損なうように、Fc-ヒンジフラグメントのCH2-CH3ドメイン境界領域に導入される。このアプローチは米国特許第6,165,745号においてさらに詳細に記載されている。
【0098】
他の態様において、生体半減期を延長するために、抗体を修飾する。種々のアプローチが可能である。例えば、米国特許第6,277,375号に記載されているとおり、1つ以上の以下の変異:T252L、T254S、T256Fを導入することができる。あるいは、生体半減期を延長するため、抗体は、米国特許第5,869,046および6,121,022号に記載されているとおり、IgGのFc領域のCH2ドメインの2つのループから取ったサルベージ受容体結合エピトープを含むように、CH1またはCL領域内で改変され得る。
【0099】
さらに他の態様において、抗体のエフェクター機能を改変するために、Fc領域は、少なくとも1つのアミノ酸残基を異なるアミノ酸残基で置き換えることにより改変される。例えば、アミノ酸残基234、235、236、237、297、318、320および322から選択される1つ以上のアミノ酸は、抗体がエフェクターリガンドに対する改変されたアフィニティーを有するが、親抗体の抗原結合力を維持するように、異なるアミノ酸残基で置き換えることができる。アフィニティーが改変されているエフェクターリガンドは、例えば、Fc受容体または補体のC1成分であり得る。このアプローチは米国特許第5,624,821および5,648,260においてさらに詳細に記載されている。
【0100】
他の態様において、抗体がC1q結合を改変され、そして/または補体依存性細胞毒性(CDC)を減少または排除するように、アミノ酸残基329、331および322から選択される1つ以上のアミノ酸を異なるアミノ酸残基により置き換えることができる。このアプローチは米国特許第6,194,551号においてさらに詳細に記載されている。
【0101】
他の態様において、アミノ酸位置231および239内の1つ以上のアミノ酸残基を改変し、それによって抗体が補体を固定する能力を改変する。このアプローチはPCT公開WO94/29351においてさらに詳細に記載されている。
【0102】
さらに他の態様において、Fc領域は、抗体が抗体依存細胞傷害性(ADCC)を介在する能力を増強するため、および/または抗体のFcγ受容体に対するアフィニティーを増強するために、以下の位置:238、239、248、249、252、254、255、256、258、265、267、268、269、270、272、276、278、280、283、285、286、289、290、292、293、294、295、296、298、301、303、305、307、309、312、315、320、322、324、326、327、329、330、331、333、334、335、337、338、340、360、373、376、378、382、388、389、398、414、416、419、430、434、435、437、438または439の1つ以上のアミノ酸を修飾することにより修飾される。このアプローチはPCT公開WO00/42072においてさらに詳細に記載されている。さらに、ヒトIgG1上のFcγR1、FcγRII、FcγRIIIおよびFcRnに対する結合部位がマッピングされており、改良された結合を有する変異体が記載されている(Shieldsら (2001) J. Biol. Chem. 276:6591-6604、参照)。位置256、290、298、333、334および339における特異的変異はFcγRIIIへの結合を改良するために示された。さらに、以下の組合せ変異:T256A/S298A、S298A/E333A、S298A/K224AおよびS298A/E333A/K334AがFcγRIII結合を改良することを示された。
【0103】
さらに別の態様において、抗体のグリコシル化は修飾される。例えば、非グリコシル化抗体を作製することができる(すなわち、抗体がグリコシル化を欠いている)。グリコシル化は、例えば、抗体の抗原に対するアフィニティーを増強するために改変することができる。このような炭水化物修飾は、例えば、抗体配列内でグリコシル化の1つ以上の部位を改変することにより達成することができる。例えば、1つ以上のアミノ酸置換は、1つ以上の可変領域フレームワークグリコシル化部位の排除をもたらし、それによってその部位のグリコシル化を排除するように行うことができる。このような非グリコシル化は抗体の抗原に対するアフィニティーを増強し得る。例えば、米国特許第5,714,350および6,350,861号、参照。
【0104】
さらに、またはあるいは、抗体は、改変された型のグリコシル化を有する抗体、例えば、少ない量のフコシル残基を有する低フコシル化抗体または増加したバイセクティングGlcNac構造を有する抗体を製造することができる。このような改変されたグリコシル化パターンは、抗体のADCC能力を増強することが証明されている。このような炭水化物修飾は、例えば、改変されたグリコシル化機構を有する宿主細胞において抗体を発現することにより達成することができる。改変されたグリコシル化機構を有する細胞は、当分野で報告されており、本発明の組換え抗体を発現する宿主細胞として使用し、それによって改変されたグリコシル化を有する抗体を生産することができる。例えば、細胞系Ms704、Ms705およびMs709はフコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8(α(1,6)-フコシルトランスフェラーゼ)を欠いており、Ms704、Ms705およびMs709細胞系において発現された抗体は炭水化物においてフコースを欠いている。Ms704、Ms705およびMs709 FUT8-/-細胞系は、2つの置換ベクターを使用して、CHO/DG44細胞におけるFUT8遺伝子の標的化破壊により創造した(米国特許公開第20040110704号およびYamane-Ohnukiら (2004) Biotechnol Bioeng 87:614-22、参照)。他の例として、EP1,176,195は、このような細胞系において発現した抗体がα-1,6結合-関連酵素を減少させるか、または除去することにより低フコシル化を示すような、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子を機能的に破壊されている細胞系を記載している。EP1,176,195は、また、抗体のFc領域に結合するか、または酵素活性を有さない、フコースのN-アセチルグルコサミンへの付加に関して低い酵素活性を有する細胞系、例えば、ラット骨髄腫細胞系YB2/0(ATCC CRL 1662)を記載している。PCT公開WO03/035835は、フコースがAsn(297)連結炭水化物に結合する能力を減少させ、また、宿主細胞において発現された抗体の低フコシル化を引き起こす、変異CHO細胞系であるLecl3細胞を記載している(Shieldsら (2002) J. Biol. Chem. 277:26733-26740も参照)。修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体は、また、PCT公開WO06/089231に記載されているとおり、ニワトリ卵において生産することができる。あるいは、修飾されたグリコシル化プロファイルを有する抗体は、植物細胞、例えば、Lemnaにおいて生産することができる。植物系における抗体の生産のための方法は、2006年8月11日に出願されたAlston & Bird LLP 代理人整理番号040989/314911に対応する米国特許出願に記載されている。PCT公開WO99/54342は、操作された細胞系において発現された抗体が、抗体のADCC活性の増強を引き起こすバイセクティングGlcNac構造の増加を示すように、糖タンパク質修飾グリコシルトランスフェラーゼ(例えば、β(1,4)-N-アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTIII))を発現するように操作された細胞系を記載している(Umanaら (1999) Nat. Biotech. 17:176-180も参照)。あるいは、フコシダーゼ酵素を使用して、抗体のフコース残基を開裂させることができる;例えば、フコシダーゼであるα-L-フコシダーゼは抗体からフコシル残基を除去する(Tarentinoら (1975) Biochem. 14:5516-23)。
【0105】
本発明により考慮される本明細書の抗体のさらなる修飾はペグ化である。抗体は、例えば、抗体の生体(例えば、血清)半減期を延長するためにペグ化することができる。抗体をペグ化するために、抗体またはそのフラグメントは、一般的にポリエチレングリコール(PEG)、例えば、PEGの反応性エステルまたはアルデヒド誘導体と、1つ以上のPEG部分が抗体または抗体フラグメントに結合するようになる条件下で反応させる。好ましくは、ペグ化は反応性PEG分子(または類似の反応性水溶性ポリマー)でのアシル化反応またはアルキル化反応により実施される。本明細書において使用される「ポリエチレングリコール」なる用語は、モノ(C1-C10)アルコキシ-またはアリールオキシ-ポリエチレングリコールまたはポリエチレングリコール-マレイミドなどの他のタンパク質を誘導体化するために使用されているPEGの全ての形態を包含することを意図する。1つの態様において、ペグ化される抗体は非グリコシル化抗体である。タンパク質をペグ化するための方法は当分野で既知であり、本発明の抗体に適用することができる。例えば、EP0154316およびEP0401384、参照。
【0106】
抗体の物理的特性
本発明の抗体は、異なるクラスを検出および/または区別するために、種々の物理的特性により特徴付けることができる。
【0107】
例えば、抗体は、軽鎖または重鎖可変領域のいずれかにおいて1つ以上のグリコシル化部位を含み得る。このようなグリコシル化部位は、抗体の免疫原性の増加または改変された抗原結合による抗体のpKの改変をもたらし得る(Marshallら (1972) Annu Rev Biochem 41:673-702; Gala and Morrison (2004) J Immunol 172:5489-94; Wallickら (1988) J Exp Med 168:1099-109; Spiro (2002) Glycobiology 12:43R-56R; Parekhら (1985) Nature 316:452-7; Mimuraら (2000) Mol Immunol 37:697-706)。グリコシル化はN-X-S/T配列を含むモチーフにおいて起こることが知られている。場合によっては、可変領域グリコシル化を含まない抗LAG-3抗体を有することが好ましい。これは、可変領域においてグリコシル化モチーフを含まない抗体を選択するか、またはグリコシル化領域内の残基を変異することのいずれかにより達成することができる。
【0108】
好ましい態様において、抗体はアスパラギン異性部位を含まない。アスパラギンの脱アミドは、N-GまたはD-G配列で起こり得、ポリペプチド鎖へねじれを導入し、安定性を減少させる(イソアスパラギン酸効果)イソアスパラギン酸残基の創造をもたらす。
【0109】
それぞれの抗体は、特有の等電点(pI)を有し、一般的に6から9.5のpH範囲内である。IgG1抗体におけるpIは一般的に7-9.5のpH範囲内であり、IgG4抗体におけるpIは一般的に6-8のpH範囲内である。正常範囲外のpIにて抗体がインビボ条件下においていくつかのアンフォールディングおよび不安定性を有し得ることが推測されている。したがって、正常範囲内であるpI値を含む抗LAG-3抗体を有することが好ましい。これは、正常範囲内のpIを有する抗体を選択すること、または荷電表面残基を変異させることのいずれかにより達成することができる。
【0110】
本発明の抗体をコードする核酸分子
他の局面において、本発明は、本発明の抗体の重鎖および/または軽鎖可変領域、またはCDRをコードする核酸分子を提供する。核酸は、完全な細胞で、細胞溶解物で、または部分的に精製された、もしくは実質的に純粋な形態で存在してよい。核酸は、アルカリ/SDS処理、CsCl結合、カラムクロマトグラフィー、アガロースゲル電気泳動およびその他当分野で既知の技術を含む標準技術により、他の細胞成分または他の汚染物質、例えば、他の細胞性核酸またはタンパク質から精製されたとき、「単離された」または「実質的に純粋」である。Ausubelら, ed. (1987) Current Protocols in Molecular Biology, Greene Publishing and Wiley Interscience, New York、参照。本発明の核酸は、例えば、DNAまたはRNAであってよく、イントロン配列を含んでいても含まなくてもよい。好ましい態様において、核酸はcDNA分子である。
【0111】
本発明の核酸は標準分子生物学技術を使用して得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、以下にさらに記載しているとおりのヒト免疫グロブリン遺伝子を有するトランスジェニックマウスから調製されたハイブリドーマ)により発現された抗体に関して、ハイブリドーマにより作製された抗体の軽鎖および重鎖をコードするcDNAは、標準PCR増幅またはcDNAクローニング技術により得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリーから(例えば、ファージディスプレイ技術を使用して)得られた抗体に関して、このような抗体をコードする核酸は遺伝子ライブラリーから回収することができる。
【0112】
好ましい本発明の核酸分子は、LAG3.5モノクローナル抗体のVHおよびVL配列(それぞれ配列番号:12および14)またはCDRをコードするものを含む。VHおよびVLセグメントをコードするDNAフラグメントが得られたとき、これらのDNAフラグメントは、例えば、可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fabフラグメント遺伝子またはscFv遺伝子に変換するために、標準組換えDNA技術によりさらに操作することができる。これらの操作において、VLまたはVHをコードするDNAフラグメントは、他のタンパク質、例えば、抗体定常領域もしくはフレキシブルなリンカーをコードする他のDNAフラグメントに作動可能に連結されている。この文脈において使用されるとき「作動可能に連結」なる用語は、2つのDNAフラグメントによってコードされるアミノ酸配列がフレーム内に残るように、2つのDNAフラグメントが連結されることを意味することを意図する。
【0113】
VH領域をコードする単離されたDNAは、VHをコードするDNAを重鎖定常領域(CH1、CH2およびCH3)をコードする他のDNA分子に作動可能に連結することにより全長重鎖遺伝子に変換することができる。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で既知であり(例えば、Kabatら (1991)、上記)、これらの領域を含むDNAフラグメントは標準PCR増幅により得ることができる。重鎖定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgMまたはIgD定常領域であり得るが、より好ましくはIgG1またはIgG4定常領域である。Fabフラグメント重鎖遺伝子に関して、VHをコードするDNAは、重鎖CH1定常領域のみをコードする他のDNA分子に作動可能に連結され得る。
【0114】
VL領域をコードする単離されたDNAは、VLをコードするDNAを軽鎖定常領域CLをコードする他のDNA分子に作動可能に連結することにより全長軽鎖遺伝子(ならびにFab軽鎖遺伝子)に変換することができる。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当分野で既知であり(例えば、Kabatら、上記)、これらの領域を含むDNAフラグメントは標準PCR増幅により得ることができる。好ましい態様において、軽鎖定常領域はカッパまたはラムダ定常領域であり得る。
【0115】
scFv遺伝子を創造するため、VHおよびVLをコードするDNAフラグメントは、フレキシブルなリンカーにより連結されたVLおよびVH領域を有するVHおよびVL配列が連続する一本鎖タンパク質として発現することができるように、フレキシブルリンカーをコードする、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3(配列番号:28)をコードする他のフラグメントに作動可能に連結される(例えば、Birdら (1988) Science 242:423-426; Hustonら (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:5879-5883; McCaffertyら, (1990) Nature 348:552-554、参照)。
【0116】
本発明のモノクローナル抗体の生産
本発明のモノクローナル抗体(mAb)は、Kohler and Milstein (1975) Nature 256: 495の標準体細胞ハイブリダイゼーション(ハイブリドーマ)技術を使用して、生産することができる。モノクローナル抗体を生産するための他の態様は、Bリンパ球のウイルスまたは発癌性形質転換およびファージディスプレイ技術を含む。キメラまたはヒト化抗体も当分野で知られている。例えば、米国特許第4,816,567;5,225,539;5,530,101;5,585,089;5,693,762および6,180,370、参照(これらの内容を出典明示によりその全体を明確に本明細書に包含させる)。
【0117】
好ましい態様において、本発明の抗体はヒトモノクローナル抗体である。ヒトLAG-3に対するこのようなヒトモノクローナル抗体は、マウス系よりむしろヒト免疫系の一部を有するトランスジェニックされた、または染色体導入されたマウスを使用して産生することができる。これらのトランスジェニックされた、または染色体導入されたマウスは、本明細書において各々HuMAbマウス(登録商標)およびKMマウス(登録商標)と称されるマウスを含み、本明細書において「ヒトIgマウス」と総称される。
【0118】
HuMAbマウス(登録商標)(Medarex(登録商標), Inc.)は、内因性μおよびκ鎖座を不活性化する標的変異とともに、非再配置ヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ遺伝子座(miniloci)を含む(例えば、Lonbergら (1994) Nature 368(6474): 856-859、参照)。したがって、マウスはマウスIgMまたはκの発現低下を示し、免疫化に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子がクラス切り換えと体細胞変異を受け、高アフィニティーヒトIgGκモノクローナルを産生する(Lonbergら (1994)、上記; Lonberg (1994) Handbook of Experimental Pharmacology 113:49-101; Lonberg, N. and Huszar, D. (1995) Intern. Rev. Immunol. 13: 65-93およびHarding and Lonberg (1995) Ann. N.Y. Acad. Sci. 764:536-546)。HuMAbマウス(登録商標)の調製および使用ならびにこのようなマウスによって運ばれるゲノム修飾は、さらにTaylorら (1992) Nucleic Acids Research 20:6287-6295; Chenら (1993) International Immunology 5: 647-656; Tuaillonら (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:3720-3724; Choiら (1993) Nature Genetics 4:117-123; Chenら (1993) EMBO J. 12: 821-830; Tuaillonら (1994) J. Immunol. 152:2912-2920; Taylorら (1994) International Immunology 6: 579-591;およびFishwildら (1996) Nature Biotechnology 14: 845-851に記載されている(これらの全ての内容を出典明示によりその全体を明確に本明細書に包含させる)。さらに、米国特許第5,545,806;5,569,825;5,625,126;5,633,425;5,789,650;5,877,397;5,661,016;5,814,318;5,874,299;5,770,429;および5,545,807号;PCT公開番号WO92/03918;WO93/12227;WO94/25585;WO97/13852;WO98/24884;WO99/45962およびWO01/14424(これらの内容を出典明示によりその全体を本明細書に包含させる)。
【0119】
他の態様において、本発明のヒト抗体は、導入遺伝子および導入染色体上にヒト免疫グロブリン配列を有するマウス、例えば、ヒト重鎖導入遺伝子およびヒト軽鎖導入染色体を有するマウスを使用して調製することができる。「KMマウス(登録商標)」として本明細書で称されるこのマウスは、PCT公開WO02/43478において詳細に記載されている。内因性FcγRIIB受容体遺伝子のホモ接合体の破壊をさらに含むこのマウスの修飾された形態も、PCT公開WO02/43478に記載されており、「KM/FCGR2Dマウス(登録商標)」と称されている。加えて、HCo7もしくはHCo12重鎖導入遺伝子のいずれか、またはその両方を有するマウスを使用することができる。
【0120】
さらなるトランスジェニック動物の態様は、Xenomouseを含む(Abgenix, Inc.、米国特許第5,939,598;6,075,181;6,114,598;6,150,584および6,162,963号)。さらなる態様は、「TCマウス」(Tomizukaら (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:722-727)およびヒト重鎖および軽鎖導入染色体を有するウシ(Kuroiwaら (2002) Nature Biotechnology 20:889-894;PCT公開WO02/092812)を含む。これらの特許および刊行物の内容を出典明示によりその全体を明確に本明細書に包含させる。
【0121】
1つの態様において、本発明のヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリン遺伝子のライブラリーをスクリーニングするためのファージディスプレイ方法を使用して調製される。例えば、米国特許第5,223,409;5,403,484;5,571,698;5,427,908;5,580,717;5,969,108;6,172,197;5,885,793;6,521,404;6,544,731;6,555,313;6,582,915;および6,593,081号、参照(これらの内容を出典明示によりその全体を本明細書に包含させる)。
【0122】
本発明のヒトモノクローナル抗体は、ヒト抗体応答が免疫化で産生され得るように、ヒト免疫細胞を再構成したSCIDマウスを使用して調製することもできる。例えば、米国特許第5,476,996および5,698,767号、参照(これらの内容を出典明示によりその全体を本明細書に包含させる)。
【0123】
他の態様において、ヒト抗LAG-3抗体は、ファージがLAG-3であらかじめ免疫化されたトランスジェニック動物において産生される抗体をコードする核酸を含む、ファージディスプレイを使用して調製される。好ましい態様において、トランスジェニック動物はHuMab、KMまたはKirinマウスである。例えば、米国特許第6,794,132号、参照(この内容を出典明示によりその全体を本明細書に包含させる)。
【0124】
ヒトIgマウスの免疫化
本発明の1つの態様において、ヒトIgマウスは、LAG-3抗原、組換えLAG-3タンパク質またはLAG-3タンパク質を発現する細胞の精製または濃縮された調製物にて免疫化される。例えば、Lonbergら (1994)、上記; Fishwildら (1996)、上記;PCT公開WO98/24884またはWO01/14424、参照(これらの内容を出典明示によりその全体を本明細書に包含させる)。好ましい態様において、6-16週齢マウスを5-50μgのLAG-3タンパク質にて免疫化する。あるいは、非-LAG-3ポリペプチドに融合したLAG-3の部分を使用する。
【0125】
1つの態様において、トランスジェニックマウスを、完全フロイントアジュバント中のLAG-3抗原を腹腔内(IP)または静脈内(IV)投与により免疫化させ、次に、不完全フロイントアジュバント中の抗原をIPまたはIV免疫化させる。他の態様において、フロイント以外のアジュバントまたはアジュバントの非存在下で全細胞を使用する。血漿をELISAによりスクリーニングし、十分な力価の抗LAG-3ヒト免疫グロブリンを有するマウス由来の細胞を融合のために使用することができる。
【0126】
本発明のヒトモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマの調製
本発明のヒトモノクローナル抗体を生産するハイブリドーマを調製するため、免疫マウスから脾細胞および/またはリンパ節細胞を単離し、適当な不死化細胞系、例えば、マウス骨髄腫細胞系に融合することができる。得られたハイブリドーマを抗原特異的抗体の生成に関してスクリーニングすることができる。ハイブリドーマの作製は当分野で知られている。例えば、Harlow and Lane (1988) Antibodies, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Publications, New York、参照。
【0127】
本発明のモノクローナル抗体を生産するトランスフェクトーマの調製
本発明の抗体はまた、例えば、当分野で既知である組換えDNA技術および遺伝子トランスフェクション法の組合せを使用して、宿主細胞トランスフェクトーマにおいて調製することができる(例えば、Morrison, S. (1985) Science 229:1202)。1つの態様において、標準分子生物学技術により得られる部分的または全長軽鎖および重鎖をコードするDNAは、遺伝子が転写および翻訳調節配列に作動可能に連結されるように、1つ以上の発現ベクターに挿入される。これに関して、「作動可能に連結」なる用語は、抗体遺伝子が、ベクター内の転写および翻訳コントロール配列が抗体遺伝子の転写および翻訳を調節する意図された機能を果たすように、ベクターに結合されることを意味することを意図する。
【0128】
「調節配列」なる用語は、抗体鎖遺伝子の転写または翻訳をコントロールするプロモーター、エンハンサーおよび他の発現コントロールエレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)を含むことを意図する。このような調節配列は、例えば、Goeddel(Gene Expression Technology. Methods in Enzymology 185, Academic Press, San Diego, CA (1990))に記載されている。哺乳動物宿主細胞発現のための好ましい調節配列は、哺乳動物細胞における高レベルタンパク質発現を指示するウイルスエレメント、例えば、サイトメガロウイルス(CMV)、シミアンウイルス40(SV40)、アデノウイルス(例えば、アデノウイルス主要後期プロモーター(AdMLP))およびパピローマに由来するプロモーターおよび/またはエンハンサーを含む。あるいは、非ウイルス調節配列は、例えば、ユビキチンプロモーターまたはβ-グロビンプロモーターを使用され得る。なおさらに、調節エレメントは、SV40初期プロモーターおよびヒト1型T細胞白血病ウイルスの長い末端反復配列からの配列を含む異なる源からの配列、例えば、SRαプロモーター系を含む(Takebeら (1988) Mol. Cell. Biol. 8:466-472)。発現ベクターおよび発現コントロール配列は、使用される発現宿主細胞と適合するように選択される。
【0129】
抗体軽鎖遺伝子および抗体重鎖遺伝子は、同じ、または異なる発現ベクターに挿入することができる。好ましい態様において、可変領域は、VHセグメントがベクター内のCHセグメントと作動可能に連結し、VLセグメントがベクター内のCLセグメントと作動可能に連結するように、所望のアイソタイプの重鎖定常領域および軽鎖定常領域をすでにコードする発現ベクターに可変領域を挿入することにより、任意の抗体アイソタイプの全長抗体遺伝子を創造するために使用される。さらに、またはあるいは、組換え発現ベクターは、宿主細胞から抗体鎖の分泌を促進するシグナルペプチドをコードし得る。抗体鎖遺伝子は、シグナルペプチドがインフレームにおいて抗体鎖遺伝子のアミノ末端に連結するように、ベクターにクローニングすることができる。シグナルペプチドは、免疫グロブリンシグナルペプチドまたは異種シグナルペプチド(すなわち、非免疫グロブリンタンパク質由来のシグナルペプチド)であり得る。
【0130】
抗体鎖遺伝子および調節配列に加えて、本発明の組換え発現ベクターは、さらなる配列、例えば、宿主細胞においてベクターの複製を調節する配列(例えば、複製開始点)および選択マーカー遺伝子を有し得る。選択マーカー遺伝子は、ベクターが挿入されている宿主細胞の選択を容易にする(例えば、米国特許第4,399,216;4,634,665および5,179,017号、参照)。例えば、一般的に、選択マーカー遺伝子は、ベクターが挿入されている宿主細胞において薬物、例えば、G418、ハイグロマイシンまたはメトトレキサートに対する耐性を付与する。好ましい選択マーカー遺伝子は、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)遺伝子(メトトレキサート選択/増幅とともにdhfr-宿主細胞中で使用するため)およびneo遺伝子(G418の選択のため)を含む。
【0131】
軽鎖および重鎖の発現のため、重鎖および軽鎖をコードする発現ベクターを、標準技術により宿主細胞にトランスフェクトする。「トランスフェクション」なる用語の種々の形態は、外来DNAを原核生物または真核生物宿主細胞に導入するために一般的に使用されている広範な技術、例えば、エレクトロポレーション、リン酸カルシウム沈殿、DEAE-デキストラントランスフェクションなどを含むことを意図する。原核生物または真核生物宿主細胞のいずれにおいても本発明の抗体を発現させることは理論上可能であるが、真核細胞、特に哺乳動物細胞が、原核細胞よりも適当に折りたたまれた免疫学的に活性な抗体をアッセンブルおよび分泌しやすいため、真核細胞、より好ましくは哺乳動物宿主細胞における抗体の発現が非常に好ましい。
【0132】
本発明の組換え抗体を発現させるための好ましい哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)(例えば、R. J. Kaufman and P. A. Sharp (1982) J. Mol. Biol. 159:601-621に記載されているようなDHFR選択可能マーカーと使用されるUrlaub and Chasin, (1980) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:4216-4220に記載されているdhfr- CHO細胞を含む)、NSO骨髄腫細胞、COS細胞およびSP2細胞を含む。特に、NSO骨髄腫細胞の使用に関して、さらなる好ましい発現系はWO87/04462、WO89/01036およびEP338,841に記載されているGS遺伝子発現系である。抗体遺伝子をコードする組換え発現ベクターを哺乳動物宿主細胞に導入するとき、宿主細胞中で抗体の発現、または、より好ましくは、宿主細胞を増殖させる培養培地中への抗体の分泌を可能にする十分な時間、宿主細胞を培養することにより抗体を生産する。抗体は標準タンパク質精製法を使用して培養培地から回収することができる。
【0133】
免疫複合体
本発明の抗体は、免疫複合体、例えば、抗体-薬物複合体(ADC)を形成するために治療剤とコンジュゲートさせることができる。適当な治療剤は、代謝拮抗剤、アルキル化剤、DNA副溝結合剤、DNA挿入剤、DNA架橋剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、核外輸送阻害剤、プロテアソーム阻害剤、トポイソメラーゼIもしくはII阻害剤、熱ショックタンパク質阻害剤、チロシンキナーゼ阻害剤、抗生物質および抗有糸分裂剤を含む。ADCにおいて、抗体および治療剤は、好ましくは、開裂可能なリンカー、例えば、ペプチジル、ジスルフィドまたはヒドラゾンリンカーを介してコンジュゲートされる。さらに好ましくは、リンカーは、ペプチジルリンカー、例えば、Val-Cit、Ala-Val、Val-Ala-Val、Lys-Lys、Pro-Val-Gly-Val-Val(配列番号:39)、Ala-Asn-Val、Val-Leu-Lys、Ala-Ala-Asn、Cit-Cit、Val-Lys、Lys、Cit、SerまたはGluである。ADCは、米国特許第7,087,600;6,989,452;および7,129,261号;PCT公開WO02/096910;WO07/038658;WO07/051081;WO07/059404;WO08/083312;およびWO08/103693;米国特許公開20060024317;20060004081;および20060247295に記載されているとおりに製造することができる(これらの記載を出典明示により本明細書に包含させる)。
【0134】
二重特異性分子
他の局面において、本発明は、少なくとも1つの他の機能分子、例えば、他のペプチドまたはタンパク質(例えば、受容体に対する他の抗体またはリガンド)と連結している本発明の1つ以上の抗体を含む二重特異性分子を特徴とし、少なくとも2つの異なる結合部位または標的分子に結合する二重特異性分子を産生する。したがって、本明細書において使用される「二重特異性分子」は3つ以上の特異性を有する分子を含む。好ましい態様において、二重特異性分子は、LAG-3に対する第1の結合特異性およびLAG-3を発現する標的細胞を殺すことができる細胞毒性エフェクター細胞を補充するトリガー分子に対する第2の結合特異性を含む。適当なトリガー分子の例はCD64、CD89、CD16およびCD3である。例えば、Kuferら, TRENDS in Biotechnology, 22 (5), 238-244 (2004)、参照。
【0135】
1つの態様において、二重特異性分子は、抗-Fc結合特異性および抗-LAG-3結合特異性に加えて、第3の特異性を有する。第3の特異性は、抗増強因子(anti-enhancement factor)(EF)、例えば、細胞毒性活性に関与する表面タンパク質に結合し、それにより標的細胞に対する免疫応答を増加させる分子に対してであり得る。例えば、抗増強因子は、細胞毒性T細胞(例えば、CD2、CD3、CD8、CD28、CD4、CD40またはICAM-1を介して)または他の免疫細胞に結合し、標的細胞に対する免疫応答を増加させることができる。
【0136】
二重特異性分子は多数の異なる形式およびサイズであり得る。粒径スペクトルの一方において、二重特異性分子は、同一の特異性の2つの結合アームを有する代わりに、それぞれ異なる特異性を有する2つの結合アームを有することを除いては伝統的な抗体形式を維持している。他方において、ペプチド鎖により連結した2つの一本鎖抗体フラグメント(scFv’s)、いわゆるBs(scFv)2構築物からなる二重特異性分子である。中間サイズの二重特異性分子は、ペプチジルリンカーにより連結した2つの異なるF(ab)フラグメントを含む。これらの二重特異性分子および他の形式は、遺伝子工学、体細胞ハイブリダイゼーションまたは化学的手法により調製することができる。例えば、Kuferら, 上記; Cao and Suresh, Bioconjugate Chemistry, 9 (6), 635-644 (1998);およびvan Sprielら, Immunology Today, 21 (8), 391-397 (2000)、参照(本明細書に記載されている)。
【0137】
医薬組成物
他の局面において、本明細書は、製剤化された1つ以上の本発明の抗体を薬学的に許容される担体と共に含む医薬組成物を提供する。該組成物は、所望により1つ以上のさらなる薬学的に活性な成分、例えば、別の抗体または薬物を含んでもよい。本発明の医薬組成物はまた、抗LAG-3抗体がワクチンに対する免疫応答を増強するように、例えば、他の免疫刺激剤、抗癌剤、抗ウイルス剤またはワクチンと併用療法において投与することができる。
【0138】
医薬組成物はあらゆる賦形剤を含み得る。使用することができる賦形剤は、担体、界面活性剤、増粘剤または乳化剤、固体結合剤、分散もしくは懸濁補助剤、可溶化剤、着色剤、香味剤、コーティング剤、崩壊剤、滑剤、甘味剤、防腐剤、等張剤およびそれらの組合せを含む。適当な賦形剤の選択および使用は、Gennaro, ed., Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed. (Lippincott Williams & Wilkins 2003)(この記載は出典明示により本明細書に包含させる)に教示されている。
【0139】
好ましくは、該医薬組成物は、静脈内、筋肉内、皮下、非経口、脊髄または表皮投与(例えば、注射または注入による)に適当である。投与経路に依存して、活性な化合物は、不活性にし得る酸の作用および他の天然条件から保護するために物質に覆われていてもよい。本明細書において使用されるフレーズ「非経口投与」は、経腸および局所投与以外の通常注射による投与方式を意味し、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、髄腔内、硬膜外および胸骨内注射および注入を含むが、これらに限定されない。あるいは、本発明の抗体は、非経口以外(non-parenteral)の経路、例えば、局所、表皮または粘膜投与経路により、例えば、鼻腔内、経口、膣、直腸、舌下または局所的に投与され得る。
【0140】
本発明の医薬組成物は薬学的に許容される塩を含み得る。「薬学的に許容される塩」は、親化合物の所望の生物学的活性を維持するが、望ましくない毒性作用を付与しない塩を示す。このような塩の例は酸付加塩および塩基付加塩を含む。酸付加塩は、無毒性の無機酸、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、リン酸など、ならびに無毒性の有機酸、例えば、脂肪族モノカルボン酸およびジカルボン酸、フェニル置換アルカン酸、ヒドロキシアルカン酸、芳香酸、脂肪族および芳香族スルホン酸などに由来するものを含む。塩基付加塩は、アルカリ土類金属、例えば、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウムなど、ならびに無毒性の有機アミン、例えば、N,N’-ジベンジルエチレンジアミン、N-メチルグルカミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、プロカインなどに由来するものを含む。
【0141】
医薬組成物は滅菌水溶液または分散媒の形態であり得る。それらは、また、マイクロエマルジョン、リポソームまたはその他の高濃度の薬物に適した秩序構造において製剤化され得る。
【0142】
単一投与形態を製造するために担体物質と組み合わせることができる活性成分の量は、処置される対象および特定の投与様式に依存して変化し、一般的に治療効果を引き起こす組成物の量である。一般的に、100%のうち、この量は薬学的に許容される担体と組み合わせて、活性成分の約0.01%から約99%、好ましくは約0.1%から約70%、さらに好ましくは約1%から約30%の範囲である。
【0143】
投与レジメンは所望の最適応答(例えば、治療応答)を提供するために調節される。例えば、単回ボーラスで投与してもよく、経時的に数回の分割投与で投与してもよく、または治療状況の緊急性により指示されるとき、比例的に用量を減少または増加してもよい。とりわけ、投与の容易性および投与量の均一性のため、非経口組成物を投与単位形態で製剤化することが有利である。本明細書において使用される投与単位形態は、処置される対象に対する単位用量として適した物理的に分離した単位を示し;それぞれの単位は必要な医薬担体と一緒に所望の治療効果を引き起こすように計算されたあらかじめ決められた量の活性化合物を含む。あるいは、頻繁な投与があまり必要でない場合、抗体は持続放出製剤として投与することができる。
【0144】
抗体の投与に関して、用量は約0.0001から100mg/kg、さらに通常、0.01から5mg/kg宿主体重の範囲である。例えば、用量は0.3mg/kg体重、1mg/kg体重、3mg/kg体重、5mg/kg体重または10mg/kg体重または1-10mg/kgの範囲内であり得る。典型的な処置レジメンは1週間に1回、2週間に1回、3週間に1回、4週間に1回、1月に1回、3月に1回または3から6月に1回の投与を必要とする。本発明の抗LAG-3抗体のための好ましい投与レジメンは、静脈内投与による1mg/kg体重または3mg/kg体重を含み、抗体を下記投与スケジュール:(i)4週間ごとに6回投与、次に3月ごと;(ii)3週間ごと;(iii)3mg/kg体重を1回、次に3週間ごとに1mg/kg体重の1つを使用して与える。いくつかの方法において、用量は約1-1000μg/mlの血漿抗体濃度を達成するように調節され、いくつかの方法において約25-300μg/mlである。
【0145】
本発明の抗LAG-3抗体の「治療有効量」は、好ましくは疾患症状の重症度の減少、疾患症状の無症状期間の頻度および持続時間の増加、または病気の苦痛に起因する欠陥または障害の阻止をもたらすものである。例えば、腫瘍を有する対象の処置に関して、「治療有効量」は、未処置の対象と比較して、好ましくは腫瘍増殖を少なくとも約20%、さらに好ましくは少なくとも約40%、さらに好ましくは少なくとも約60%、さらに好ましくは少なくとも約80%阻害する。治療有効量の治療化合物は、腫瘍サイズを減少させるか、または一般的にヒトもしくは他の哺乳動物である対象における症状を改善することができる。
【0146】
医薬組成物は、インプラント、経皮パッチおよびマイクロカプセル化送達系を含む制御放出製剤であり得る。生分解性、生体適合性ポリマー、例えば、エチレンビニルアセテート、ポリ無水物、ポリグリコール酸、コラーゲン、ポリオルトエステルおよびポリ乳酸を使用することができる。例えば、Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems, J.R. Robinson, ed., Marcel Dekker, Inc., New York, 1978、参照。
【0147】
治療組成物は、医療デバイス、例えば、(1)無針皮下注射デバイス(例えば、US5,399,163;5,383,851;5,312,335;5,064,413;4,941,880;4,790,824;および4,596,556);(2)微小注入ポンプ(US4,487,603);(3)経皮デバイス(US4,486,194);(4)注入装置(US4,447,233および4,447,224);および(5)浸透デバイス(US4,439,196および4,475,196);(これらの文献は出典明示により本明細書に包含される)を介して投与することができる。
【0148】
1つの態様において、本発明のヒトモノクローナル抗体は、インビボで適切な分布を確実にするため製剤化することができる。例えば、本発明の治療化合物が血液脳関門を通過することを確実にするため、それらはリポソーム中で製剤化することができ、これはさらに特定の細胞または臓器への選択的輸送を増強するための標的分子を含み得る。例えばUS4,522,811;5,374,548;5,416,016;および5,399,331;V.V. Ranade (1989) J. Clin. Pharmacol. 29:685; Umezawaら, (1988) Biochem. Biophys. Res. Commun. 153:1038; Bloemanら (1995) FEBS Lett. 357:140; M. Owaisら (1995) Antimicrob. Agents Chemother. 39:180; Briscoeら (1995) Am. J. Physiol. 1233:134; Schreierら (1994) J. Biol. Chem. 269:9090; Keinanen and Laukkanen (1994) FEBS Lett. 346:123; およびKillion and Fidler (1994) Immunomethods 4:273、参照。
【0149】
本発明の使用および方法
本発明の抗体(組成物、二重特異性および免疫複合体)は、例えば、LAG-3の検出またはLAG-3の遮断(Blockade)による免疫応答の増強に関する、多数のインビトロおよびインビボにおける有用性を有する。好ましい態様において、抗体はヒト抗体である。このような抗体は、種々の状態における免疫を増強するために、インビトロまたはエキソビボにおいて培養中の細胞、または、例えば、インビボにおいてヒト対象に投与することができる。したがって、1つの局面において、本発明は、対象における免疫応答が修飾されるように、本発明の抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを含む、対象における免疫応答を修飾する方法を提供する。好ましくは、応答は増強されるか、刺激されるか、または上方制御される。
【0150】
好ましい対象は、免疫応答の増強の必要なヒト患者を含む。方法は、免疫応答(例えば、T細胞介在免疫応答)を増加させることにより処置することができる障害を有するヒト患者を処置するために特に適当である。特定の態様において、方法はインビボにおける癌の処置に特に適当である。免疫の抗原特異的増強を達成するために、抗LAG-3抗体を興味ある抗原と共に投与するか、または抗原がすでに処置される対象(例えば、腫瘍を有するか、またはウイルスを有する対象)に存在する。LAG-3に対する抗体を別の薬剤と共に投与するとき、その2つは順にまたは同時にのいずれかで投与することができる。
【0151】
本発明は、さらに、抗体またはその部分とヒトLAG-3の複合体の形成を可能にする条件下で、ヒトLAG-3に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体またはその抗原結合部分とサンプルおよびコントロールサンプルを接触させることを含む、サンプルにおけるヒトLAG-3抗原の存在を検出するか、またはヒトLAG-3抗原の量を測定するための方法を提供する。次に複合体の形成を検出する(コントロールサンプルと比較して、サンプル間の複合体形成の違いがサンプルにおけるヒトLAG-3抗原の存在を示す)。さらに、本発明の抗LAG-3抗体は、イムノアフィニティー精製を介して、ヒトLAG-3を精製するために使用することができる。
【0152】
LAG-3のMHCクラスII分子への結合を阻害し、抗原特異的T細胞応答を刺激する、本発明の抗LAG-3抗体の能力を考慮すると、本発明は、また、抗原特異的T細胞応答を刺激するか、増強するか、または上方制御するために、インビトロまたはインビボにて本発明の抗体を使用する方法を提供する。例えば、本発明は、抗原特異的T細胞応答が刺激されるように、該T細胞を本発明の抗体と接触させることを含む、抗原特異的T細胞応答を刺激する方法を提供する。抗原特異的T細胞応答の適当なあらゆる指標が、抗原特異的T細胞応答を測定するために使用することができる。このような適当な指標の非限定的な例は、抗体の存在下におけるT細胞増殖の増加および/または抗体の存在下におけるサイトカイン生産の増加を含む。好ましい態様において、抗原特異的T細胞によるインターロイキン-2生産が刺激される。
【0153】
本発明はまた、対象における免疫応答(例えば、抗原特異的T細胞応答)が刺激されるように、本発明の抗体を対象に投与することを含む、対象における免疫応答(例えば、抗原特異的T細胞応答)を刺激するための方法を提供する。好ましい態様において、対象は腫瘍を有する対象であり、腫瘍に対する免疫応答が刺激される。他の好ましい態様において、対象はウイルスを有する対象であり、ウイルスに対する免疫応答が刺激される。
【0154】
他の態様において、本発明は、腫瘍の増殖を対象において阻害するように、本発明の抗体を対象に投与することを含む、対象における腫瘍細胞の増殖を阻害するための方法を提供する。さらに他の態様において、本発明は、ウイルス感染を対象において処置するように、本発明の抗体を対象に投与することを含む、対象におけるウイルス感染を処置するための方法を提供する。
【0155】
本発明のこれらの方法および他の方法は、以下にさらに詳細に記載されている。
【0156】
癌
抗体によるLAG-3の遮断は、患者における癌細胞に対する免疫応答を増強することができる。1つの局面において、本発明は、癌性腫瘍の増殖が阻害されるように、抗LAG-3抗体を使用するインビボにおける対象の処置に関する。抗LAG-3抗体は、癌性腫瘍の増殖を阻害するために単独で使用することができる。あるいは、抗LAG-3抗体は、以下に記載されているように、他の免疫原、標準癌処置または他の抗体と共に使用することができる。
【0157】
したがって、1つの態様において、本発明は、治療有効量の抗LAG-3抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを含む、対象における腫瘍細胞の増殖を阻害する方法を提供する。好ましくは、抗体はヒト抗LAG-3抗体(本明細書に記載されているヒト抗-ヒトLAG-3抗体のいずれかのような)である。さらに、またはあるいは、抗体はキメラまたはヒト化抗LAG-3抗体であり得る。
【0158】
本発明の抗体を使用して増殖が阻害され得る好ましい癌は、一般的に免疫療法に応答する癌を含む。処置のために好ましい癌の非限定的な例は、黒色腫(例えば、転移性悪性黒色腫)、腎臓癌(例えば、明細胞癌腫)、前立腺癌(例えば、ホルモン抵抗性前立腺癌)、乳癌、大腸癌および肺癌(例えば、非小細胞性肺癌)を含む。さらに、本発明は、本発明の抗体を使用して増殖が阻害され得る難治性または再発性悪性腫瘍を含む。
【0159】
本発明の方法を使用して処置することができる他の癌の例は、骨癌、膵臓癌、皮膚癌、頭部または頸部の癌、皮膚または眼内の悪性黒色腫、子宮癌、卵巣癌、直腸癌、肛門領域の癌、胃癌、精巣癌、卵管の癌腫、子宮内膜の癌腫、子宮頸の癌腫、腟の癌腫、外陰の癌腫、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、食道の癌、小腸の癌、内分泌系の癌、甲状腺の癌、副甲状腺の癌、副腎の癌、軟組織の肉腫、尿道の癌、陰茎の癌、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病を含む慢性または急性白血病、小児固形腫瘍、リンパ球性リンパ腫、膀胱の癌、腎臓または尿管の癌、腎盂の癌腫、中枢神経系(CNS)の新生物、原発性CNSリンパ腫、腫瘍血管形成、脊椎腫瘍、脳幹神経膠腫、下垂体腺腫、カポジ肉腫、類表皮癌、扁平上皮癌、T細胞リンパ腫、アスベストにより誘導される癌を含む環境的に誘導される癌、および前記癌の組合せを含む。本発明はまた、転移性癌、とりわけPD-L1を発現する転移性癌の処置に有用である(Iwaiら (2005) Int. Immunol. 17:133-144)。
【0160】
所望により、LAG-3に対する抗体は、免疫原、例えば、癌細胞、精製された腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチドおよび炭水化物分子を含む)、細胞および免疫刺激サイトカインをコードする遺伝子でトランスフェクトされた細胞(Heら (2004) J. Immunol. 173:4919-28)と組み合わせることができる。使用することができる腫瘍ワクチンの非限定的な例は、黒色腫抗原のペプチド、例えば、gp100、MAGE抗原、Trp-2、MART1および/またはチロシナーゼのペプチド、またはサイトカインGM-CSFを発現するようにトランスフェクトされた腫瘍細胞(以下にさらに記載されている)を含む。
【0161】
ヒトにおいて、いくつかの腫瘍、例えば、黒色腫は免疫原性であることが示されている。LAG-3遮断によるT細胞活性化の閾値を上げることにより、宿主における腫瘍応答を活性化させることができる。
【0162】
LAG-3遮断は、ワクチンプロトコールと組み合わされたとき、さらに有効である可能性がある。腫瘍に対するワクチン接種のための多くの実験的戦略が考案されている(Rosenberg, S., 2000, Development of Cancer Vaccines, ASCO Educational Book Spring: 60-62; Logothetis, C., 2000, ASCO Educational Book Spring: 300-302; Khayat, D. 2000, ASCO Educational Book Spring: 414-428; Foon, K. 2000, ASCO Educational Book Spring: 730-738、参照;Restifo, N. and Sznol, M., Cancer Vaccines, Ch. 61, pp. 3023-3043 in DeVitaら (eds.), 1997, Cancer: Principles and Practice of Oncology, Fifth Editionも参照。)。これらの戦略の1つにおいて、ワクチンは自己または同種異系の腫瘍細胞を使用して調製される。これらの細胞ワクチンは、GM-CSFを発現するように腫瘍細胞に形質導入されるとき、さらに有効であることが示されている。GM-CSFは、腫瘍ワクチン接種に対する抗原提示の強力な活性化因子であることが示されている(Dranoffら (1993) Proc. Natl. Acad. Sci U.S.A. 90: 3539-43)。
【0163】
種々の腫瘍における遺伝子発現および大規模な遺伝子発現パターンの研究により、いわゆる腫瘍特異的抗原が定義された(Rosenberg, SA (1999) Immunity 10: 281-7)。多数の場合、これらの腫瘍特異的抗原は、腫瘍および腫瘍が発生した細胞において発現される分化抗原、例えば、メラノサイト抗原gp100、MAGE抗原およびTrp-2である。より重要なことには、これらの多数の抗原は、宿主において見られる腫瘍特異的T細胞の標的であることを示すことができる。LAG-3遮断は、これらのタンパク質に対する免疫応答を発生させるために、腫瘍において発現される組換えタンパク質および/またはペプチドの回収物と共に使用することができる。これらのタンパク質は、通常、免疫系により自己抗原として見られ、したがって、それらに対して寛容性である。腫瘍抗原は、染色体のテロメアの合成のために必要であり、ヒトの癌の85%以上および非常に限定された体細胞組織において発現される、タンパク質テロメラーゼを含むことができる(Kimら (1994) Science 266: 2011-2013)。(これらの体細胞組織は、種々の手段により免疫攻撃から保護され得る)。腫瘍抗原はまた、タンパク質配列を改変するか、または2つの無関係な配列(すなわち、フィラデルフィア染色体におけるbcr-abl)間の融合タンパク質を創造する体細胞変異による癌細胞において発現される「新(neo)抗原」、またはB細胞腫瘍由来のイディオタイプであり得る。
【0164】
他の腫瘍ワクチンは、ヒト癌に関与するウイルス、例えば、ヒトパピローマウイルス(HPV)、肝炎ウイルス(HBVおよびHCV)およびカポジヘルペス肉腫ウイルス(KHSV)由来のタンパク質を含み得る。LAG-3遮断と共に使用され得る腫瘍特異的抗原の他の形態は、腫瘍組織それ自体から単離された精製された熱ショックタンパク質(HSP)である。これらの熱ショックタンパク質は腫瘍細胞由来のタンパク質のフラグメントを含み、これらのHSPは腫瘍免疫を誘発するための抗原提示細胞への送達において非常に効率的である(Suot & Srivastava (1995) Science 269:1585-1588; Tamuraら (1997) Science 278:117-120)。
【0165】
樹状細胞(DC)は、抗原特異的応答を起こすために使用され得る強力な抗原提示細胞である。DCを、エキソビボにおいて生産し、種々のタンパク質およびペプチド抗原ならびに腫瘍細胞抽出物で充填することができる(Nestleら (1998) Nature Medicine 4: 328-332)。DCは、また、遺伝的手段により形質導入され、これらの腫瘍抗原を同様に発現することができる。DCは、また、免疫化の目的のために、腫瘍細胞に直接融合されている(Kuglerら (2000) Nature Medicine 6:332-336)。ワクチン接種の方法として、DC免疫化は、LAG-3遮断と有効に組み合わせて、さらに強力な抗腫瘍応答を活性化することができる。
【0166】
LAG-3遮断はまた、標準癌処置と組み合わせられ得る。LAG-3遮断は、化学療法レジメンと有効に組み合わせられ得る。これらの場合、投与される化学療法剤の用量を減少させることができる可能性がある(Mokyrら (1998) Cancer Research 58: 5301-5304)。このような組合せの例は、黒色腫の処置のためにデカルバジンと組み合わせられた抗LAG-3抗体である。このような組合せの他の例は、黒色腫の処置のためにインターロイキン-2(IL-2)と組み合わせられた抗LAG-3抗体である。LAG-3遮断および化学療法の組合せ使用を支持する科学的論拠は、多数の化学療法化合物の細胞毒性作用の結果である細胞死が、抗原提示経路における腫瘍抗原のレベルの増加をもたらすはずであるというものである。細胞死を介してLAG-3遮断と相乗効果をもたらし得る他の組合せ治療は、放射線、外科手術およびホルモン遮断である。これらのそれぞれのプロトコールは、宿主における腫瘍抗原の源を創造する。血管形成阻害剤はまた、LAG-3遮断と組み合わせられ得る。血管形成の阻害は腫瘍細胞死を誘導し、腫瘍抗原を宿主の抗原提示経路に提供し得る。
【0167】
LAG-3を遮断する抗体はまた、FcαまたはFcγ受容体を発現するエフェクター細胞を腫瘍細胞に標的化する二重特異性抗体と組み合わせて使用することができる(例えば、米国特許第5,922,845および5,837,243号、参照)。二重特異性抗体は、2つの別々の抗原を標的化するために使用することができる。例えば、抗-Fc受容体/抗腫瘍抗原(例えば、Her-2/neu)二重特異性抗体は、マクロファージを腫瘍部位に標的化するために使用されている。この標的化は腫瘍特異的応答をさらに有効に活性化し得る。T細胞群のこれらの応答はLAG-3遮断の使用により増加し得る。あるいは、抗原は、腫瘍抗原および樹状細胞特異的細胞表面マーカーに結合する二重特異性抗体の使用によりDCに直接送達され得る。
【0168】
腫瘍は、多種多様のメカニズムにより宿主の免疫監視から逃れる。多数のこれらのメカニズムは、腫瘍により発現され、免疫抑制性であるタンパク質の不活性化により克服され得る。これらは、数ある中でTGF-β(Kehrlら (1986) J. Exp. Med. 163: 1037-1050)、IL-10(Howard & O’Garra (1992) Immunology Today 13: 198-200)およびFasリガンド(Hahneら (1996) Science 274: 1363-1365)を含む。これらの存在物それぞれに対する抗体は、免疫抑制剤の効果を中和し、宿主による腫瘍免疫応答を支持するために、抗-LAG-3と組み合わせて使用することができる。
【0169】
宿主の免疫応答性を活性化する他の抗体は、抗-LAG-3と組み合わせて使用することができる。これらは、DC機能および抗原提示を活性化する、樹状細胞の表面上の分子を含む。抗-CD40抗体は、有効にT細胞ヘルパー活性と置き換えることができ(Ridgeら (1998) Nature 393: 474-478)、LAG-3抗体と共に使用することができる(Itoら (2000) Immunobiology 201 (5) 527-40)。例えば、CTLA-4(例えば、米国特許第5,811,097号)、OX-40(Weinbergら (2000) Immunol 164: 2160-2169)、4-1BB(Meleroら (1997) Nature Medicine 3: 682-685 (1997)およびICOS(Hutloffら (1999) Nature 397: 262-266)のようなT細胞共刺激分子に対する抗体の活性化は、また、T細胞活性化のレベルを増加させるために提供され得る。
【0170】
骨髄移植は、現在、造血起源の種々の腫瘍を処置するために使用されている。移植片対宿主病はこの処置の結果であるが、治療利益は移植片対腫瘍応答から得ることができる。LAG-3遮断は、ドナー移植腫瘍特異的T細胞の有効性を増加させるために使用することができる。
【0171】
腫瘍に対する抗原特異的T細胞を刺激するために、エキソビボにおける抗原特異的T細胞の活性化および増殖ならびにこれらの細胞のレシピエントへの適合移植(adoptive transfer)に関連する、いくつかの実験的処置プロトコールもある(Greenberg & Riddell (1999) Science 285: 546-51)。これらの方法はまた、感染因子、例えば、CMVに対するT細胞応答を活性化するために使用することができる。抗LAG-3抗体の存在下におけるエキソビボ活性化は、適合移植されたT細胞の頻度および活性を増加させることができる。
【0172】
感染症
本発明の他の方法は、特定の毒素または病原体に暴露されている患者を処置するために使用される。したがって、本発明の他の局面は、対象が感染病を処置されるように、抗LAG-3抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを含む対象における感染病を処置する方法を提供する。好ましくは、抗体はヒト抗-ヒトLAG-3抗体(本明細書に記載されているヒト抗LAG-3抗体のいずれかのような)である。さらに、またはあるいは、抗体はキメラまたはヒト化抗体であり得る。
【0173】
上記の腫瘍に対する適用と同様に、抗体介在LAG-3遮断は、病原体、毒素および自己抗原に対する免疫応答を刺激するために、単独またはアジュバントとして、ワクチンと組み合わせて使用することができる。この治療アプローチが特に有用であり得る病原体の例は、現在、有効であるワクチンがない病原体、または慣用のワクチンが十分に有効でない病原体を含む。これらは、HIV、肝炎(A、B&C)、インフルエンザ、ヘルペス、ジアルジア、マラリア、リーシュマニア、黄色ブドウ球菌、緑膿菌を含むが、これらに限定されない。LAG-3遮断は、感染因子、例えば、感染の経過にわたって改変した抗原が存在するHIVにより確立されている感染に対して特に有用である。これらの新規エピトープは、抗-ヒトLAG-3投与時に外来物として認識され、したがって、LAG-3を介する負のシグナルにより抑制されない強いT細胞応答を刺激する。
【0174】
本発明の方法により治療可能な感染症を引き起こす病原性ウイルスのいくつかの例は、HIV、肝炎(A、BまたはC)、ヘルペスウイルス(例えば、VZV、HSV-1、HAV-6、HSV-IIおよびCMV、エプスタイン・バーウイルス)、アデノウイルス、インフルエンザウイルス、フラビウイルス、エコーウイルス、ライノウイルス、コクサッキーウイルス、コルノウイルス、呼吸器合胞体ウイルス、ムンプスウイルス、ロタウイルス、麻疹ウイルス、風疹ウイルス、パルボウイルス、ワクシニアウイルス、HTLVウイルス、デングウイルス、パピローマウイルス、軟属腫ウイルス、ポリウイルス、狂犬病ウイルス、JCウイルスおよびアルボウイルス脳炎ウイルスを含む。
【0175】
本発明の方法により治療可能な感染症を引き起こす病原性細菌のいくつかの例は、クラミジア、リケッチア細菌、ミコバクテリア、ブドウ球菌、連鎖球菌、肺炎球菌(pneumonococci)、髄膜炎菌および淋菌、クレブシエラ、プロテウス、セラチア、シュードモナス、レジオネラ、ジフテリア、サルモネラ、桿菌、コレラ、破傷風菌、ボツリヌス、炭疽菌、ペスト、レプトスピラおよびライム病菌を含む。
【0176】
本発明の方法により治療可能な感染症を引き起こす病原性真菌のいくつかの例は、カンジダ(アルビカンス、クルセイ、グラブラタ、トロピカリスなど)、クリプトコックス・ネオフォルマンス、アスペルギルス(フミガーツス、ニガー(niger)など)、ケカビ(ケカビ、アブシディア、クモノスカビ)、スポロトリックス・シェンキー、ブラストマイセス・デルマチチジス、パラコクシジオイデス・ブラジリエンシス、コクシジオイデス・イミティスおよびヒストプラスマ・カプスラーツムを含む。
【0177】
本発明の方法により治療可能な感染症を引き起こす病原寄生虫のいくつかの例は、赤痢アメーバ、大腸バランチジウム、フォーラーネグレリア、アカントアメーバ属、ランブル鞭毛虫、クリプトスポリジウム属、ニューモシスティス・カリニ、三日熱マラリア原虫、ネズミバベシア、トリパノソーマ・ブルーセイ、クルーズ・トリパノソーマ、ドノバン・リーシュマニア、トキソプラズマ原虫、ニッポストロンギルス・ブラジリエンシス(Nippostrongylus brasiliensis)を含む。
【0178】
上記方法のすべてにおいて、LAG-3遮断は、免疫療法の他の形態、例えば、サイトカイン処置(例えば、インターフェロン、GM-CSF、G-CSF、IL-2)、または腫瘍抗原の提示の増強を提供する二重特異性抗体治療と組み合わせることができる(例えば、Holliger (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448; Poljak (1994) Structure 2:1121-1123、参照)。
【0179】
自己免疫反応
抗-LAG-3抗体は自己免疫応答を誘導および増幅し得る。実際に、腫瘍細胞およびペプチドワクチンを使用する抗腫瘍応答の誘導は、多数の抗腫瘍応答が抗-自己反応性に関連することを示す(van Elsasら (2001) J. Exp. Med. 194:481-489; Overwijkら (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 96: 2982-2987; Hurwitz, (2000) supra; Rosenberg & White (1996) J. Immunother Emphasis Tumor Immunol 19 (1): 81-4)。したがって、疾患処置に関するこれらの自己タンパク質に対する免疫応答を効率的に発生させるようにワクチンプロトコールを考案するために、種々の自己タンパク質と共に抗-LAG-3遮断を使用することを考えることができる。例えば、アルツハイマー病は脳においてアミロイド沈着におけるAβペプチドの不適当な蓄積に関する;アミロイドに対する抗体反応は、これらのアミロイド沈着を明らかにすることができる(Schenkら, (1999) Nature 400: 173-177)。
【0180】
他の自己タンパク質、例えば、アレルギーおよび喘息の処置に関するIgEならびにリウマチ性関節炎に関するTNFαも、標的として使用することができる。最後に、種々のホルモンに対する抗体反応が、抗LAG-3抗体の使用により誘導され得る。生殖ホルモンに関する抗体反応を中和することは、避妊のために使用することができる。特定の腫瘍の増殖のために必要であるホルモンおよび他の可溶性因子に関する抗体反応を中和することも、可能なワクチン標的として考えることができる。
【0181】
抗LAG-3抗体の使用に関する上記の類似の方法は、他の自己-抗原、例えば、アルツハイマー病におけるAβを含むアミロイド沈着、サイトカイン、例えば、TNFαおよびIgEの不適当な蓄積を有する患者を処置するために、治療的自己免疫応答の誘導のために使用することができる。
【0182】
ワクチン
抗-LAG-3抗体は、抗LAG-3抗体と興味ある抗原(例えば、ワクチン)の共投与により、抗原特異的免疫応答を刺激するために使用することができる。したがって、別の局面において、本発明は、対象における抗原に対する免疫応答が増強されるように、(i)抗原;および(ii)抗LAG-3抗体またはその抗原結合部分を対象に投与することを含む、対象における抗原に対する免疫応答を増強する方法を提供する。好ましくは、抗体はヒト抗-ヒトLAG-3抗体(本明細書に記載されているヒト抗LAG-3抗体のいずれかのような)である。さらに、またはあるいは、抗体はキメラまたはヒト化抗体であり得る。抗原は、例えば、腫瘍抗原、ウイルス抗原、細菌抗原または病原体由来の抗原であり得る。このような抗原の非限定的な例は、上記のセクションにおいて記載されているもの、例えば、上記腫瘍抗原(または腫瘍ワクチン)、または上記ウイルス、細菌もしくは他の病原体由来の抗原を含む。
【0183】
インビボおよびインビトロにおいて本発明の抗体組成物(例えば、ヒトモノクローナル抗体、多重特異性および二重特異性分子ならびに免疫複合体)を投与する適当な経路は、当分野で既知であり、当業者により選択することができる。例えば、抗体組成物は注射により(例えば、静脈内または皮下に)投与され得る。使用される分子の適当な用量は、対象の年齢および体重ならびに抗体組成物の濃度および/または製剤化に依存している。
【0184】
前記のとおり、本発明のヒト抗LAG-3抗体は、1つ以上の他の治療剤、例えば、細胞毒性剤、放射毒性物質または免疫抑制剤と共投与することができる。抗体は、薬物と組み合せられてよく(免疫複合体として)、また薬物と別々に投与されてもよい。後者の場合(別々の投与)において、抗体は薬物の前、後もしくは同時に投与されてよく、また、他の既知の治療、例えば、抗癌療法、例えば、放射線療法と共投与されてもよい。このような治療剤は、数ある中の抗腫瘍剤、例えば、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、シスプラスチン硫酸ブレオマイシン、カルムスチン、クロラムブシル、ダカルバジンおよびシクロホスファミドヒドロキシウレア(これらはそれら自体、患者に対して毒性または準毒性であるレベルでのみ有効である)を含む。シスプラスチンは4週間毎に1回100mg/ml用量として静脈内に投与され、アドリアマイシンは21日ごとに1回60-75mg/ml用量として静脈内に投与される。本発明のヒト抗LAG-3抗体またはその抗原結合フラグメントと化学療法剤との共投与は、ヒト腫瘍細胞に細胞毒性作用をもたらす異なるメカニズムを介して機能する2つの抗癌剤を提供する。このような共投与は、抗体に非反応性にする、薬物耐性の発生または腫瘍細胞の抗原性の変化による問題を解決することができる。
【0185】
本発明の抗体組成物(例えば、ヒト抗体、二重特異性もしくは多重特異性分子または免疫複合体)および使用のための指示書を含むキットも本発明の範囲内である。キットは、少なくとも1つのさらなる試薬または1つ以上のさらなる本発明のヒト抗体(例えば、第1のヒト抗体と異なるLAG-3抗原におけるエピトープに結合する相補的な活性を有するヒト抗体)をさらに含むことができる。キットは、一般的にキットの内容物の意図される使用を指示するラベルを含む。ラベルなる用語は、キット上もしくはキットと共に提供されている、または別な方法でキットに添付されている、あらゆる文書または記録媒体を含む。
【0186】
併用療法
他の局面において、本発明は、本発明の抗LAG-3抗体(またはその抗原結合部分)を、免疫応答を刺激し、それによりさらに対象における免疫応答を増強、刺激または上方制御するために有効である1つ以上のさらなる抗体と共投与する、併用療法の方法を提供する。1つの態様において、本発明は、例えば、腫瘍増殖を阻害するか、または抗-ウイルス応答を刺激するために、対象における免疫応答を刺激するように、抗LAG-3抗体および1つ以上のさらなる免疫刺激抗体、例えば、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体および/または抗CTLA-4抗体を対象に投与することを含む、対象における免疫応答を刺激する方法を提供する。他の態様において、対象は抗LAG-3抗体および抗PD-1抗体を投与される。さらに別の態様において、対象は抗LAG-3抗体および抗PD-L1抗体を投与される。さらに他の態様において、対象は抗LAG-3抗体および抗CTLA-4抗体を投与される。1つの態様において、抗LAG-3抗体はヒト抗体、例えば、本明細書の抗体である。あるいは、抗LAG-3抗体は、例えば、キメラまたはヒト化抗体(例えば、マウス抗-LAG-3mAbから調製される)であり得る。他の態様において、少なくとも1つのさらなる免疫刺激抗体(例えば、抗PD-1、抗PD-L1および/または抗CTLA-4抗体)はヒト抗体である。あるいは、少なくとも1つのさらなる免疫刺激抗体は、例えば、キメラまたはヒト化抗体(例えば、マウス抗PD-1、抗PD-L1および/または抗CTLA-4抗体から調製される)であり得る。
【0187】
他の態様において、本発明は、LAG-3抗体およびCTLA-4抗体を対象に投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)を処置するための方法を提供する。さらなる態様において、抗LAG-3抗体は治療量以下の用量で投与されるか、抗CTLA-4抗体は治療量以下の用量で投与されるか、または両方が治療量以下の用量で投与される。他の態様において、本発明は、抗LAG-3抗体および治療量以下の用量の抗CTLA-4抗体を対象に投与することを含む、免疫刺激剤にて過増殖性疾患の処置と関連する有害事象を改変するための方法を提供する。1つの態様において、対象はヒトである。他の態様において、抗CTLA-4抗体はヒト配列モノクローナル抗体10D1(PCT公開WO01/14424に記載されている)であり、抗LAG-3抗体はヒト配列モノクローナル抗体、例えば、本明細書に記載されているLAG3.5である。本発明の方法に包含される他の抗CTLA-4抗体は、例えば、WO98/42752;WO00/37504;米国特許第6,207,156号;Hurwitzら (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95(17):10067-10071; Camachoら (2004) J. Clin. Oncology 22(145): Abstract No. 2505 (antibody CP-675206);およびMokyrら (1998) Cancer Res. 58:5301-5304に記載されているものを含む。1つの態様において、抗CTLA-4抗体は、5×10-8M以下のKDにてヒトCTLA-4に結合するか、1×10-8M以下のKDにてヒトCTLA-4に結合するか、5×10-9M以下のKDにてヒトCTLA-4に結合するか、または1×10-8Mから1×10-10M以下のKDにてヒトCTLA-4に結合する。
【0188】
他の態様において、本発明は、LAG-3抗体およびPD-1抗体を対象に投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)を処置するための方法を提供する。さらなる態様において、抗LAG-3抗体は治療量以下の用量で投与されるか、抗PD-1抗体は治療量以下の用量で投与されるか、または両方が治療量以下の用量で投与される。他の態様において、本発明は、抗LAG-3抗体および治療量以下の用量の抗PD-1抗体を対象に投与することを含む、免疫刺激剤にて過増殖性疾患の処置と関連する有害事象を改変するための方法を提供する。1つの態様において、対象はヒトである。1つの態様において、抗PD-1抗体はヒト配列モノクローナル抗体であり、抗LAG-3抗体はヒト配列モノクローナル抗体、例えば、本明細書に記載されているLAG3.5である。ヒト配列抗PD-1抗体の例は、PCT公開WO06/121168に記載されている、17D8、2D3、4H1、5C4および4A11を含む。他の抗PD-1抗体は、例えば、ラムブロリズマブ(WO2008/156712)、およびAMP514(WO2010/027423、WO2010/027827、WO2010/027828、WO2010/098788)を含む。1つの態様において、抗PD-1抗体は、5×10-8M以下のKDにてヒトPD-1に結合するか、1×10-8M以下のKDにてヒトPD-1に結合するか、5×10-9M以下のKDにてヒトPD-1に結合するか、1×10-8Mから1×10-10M以下のKDにてヒトPD-1に結合する。
【0189】
他の態様において、本発明は、LAG-3抗体およびPD-L1抗体を対象に投与することを含む、過増殖性疾患(例えば、癌)を処置するための方法を提供する。さらなる態様において、抗LAG-3抗体は治療量以下の用量で投与されるか、抗PD-L1抗体は治療量以下の用量で投与されるか、または両方が治療量以下の用量で投与される。他の態様において、本発明は、抗LAG-3抗体および治療量以下の用量の抗PD-L1抗体を対象に投与することを含む、免疫刺激剤にて過増殖性疾患の処置と関連する有害事象を改変するための方法を提供する。1つの態様において、対象はヒトである。他の態様において、抗PD-L1抗体はヒト配列モノクローナル抗体であり、抗LAG-3抗体はヒト配列モノクローナル抗体、例えば、本明細書に記載されているLAG3.5である。ヒト配列抗PD-L1抗体の例は、PCT公開WO07/005874に記載されている、3G10、12A4、10A5、5F8、10H10、1B12、7H1、11E6、12B7および13G4を含む。他の抗PD-L1抗体は、例えば、MPDL3280A(RG7446)(WO2010/077634)、MEDI4736(WO2011/066389)、およびMDX1105(WO2007/005874)を含む。1つの態様において、抗PD-L1抗体は、5×10-8M以下のKDにてヒトPD-L1に結合するか、1×10-8M以下のKDにてヒトPD-L1に結合するか、5×10-9M以下のKDにてヒトPD-L1に結合するか、または、1×10-8Mから1×10-10M以下のKDにてヒトPD-L1に結合する。
【0190】
抗体によるLAG-3ならびに1つ以上の第2の標的抗原、例えば、CTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1の遮断は、患者における癌細胞に対する免疫応答を増強することができる。本明細書の抗体を使用して増殖が阻害され得る癌は、一般的に免疫療法に応答する癌を含む。本明細書の併用療法における処置のための典型的な癌の例は、抗LAG-3抗体での単剤療法の議論において特に上記されている癌を含む。
【0191】
1つの態様において、本明細書に記載されている治療抗体の組合せは、薬学的に許容される担体中で単一の組成物として同時に、または薬学的に許容される担体中でそれぞれの抗体を有する別々の組成物として同時に投与され得る。他の態様において、治療抗体の組合せは連続して投与され得る。例えば、抗CTLA-4抗体および抗LAG-3抗体は、連続して投与され得る、例えば、抗CTLA-4抗体が第1に、そして抗LAG-3抗体が第2に投与されるか、または抗LAG-3抗体が第1に、そして抗CTLA-4抗体が第2に投与される。さらに、またはあるいは、抗PD-1抗体および抗LAG-3抗体は、連続して投与され得る、例えば、抗PD-1抗体が第1に、そして抗LAG-3抗体が第2に投与されるか、または抗LAG-3抗体が第1に、そして抗PD-1抗体が第2に投与される。さらに、またはあるいは、抗PD-L1抗体および抗LAG-3抗体は、連続して投与され得る、例えば、抗PD-L1抗体が第1に、そして抗LAG-3抗体が第2に投与されるか、または抗LAG-3抗体が第1に、そして抗PD-L1抗体が第2に投与される。
【0192】
さらに、併用療法の2つ以上の投与が連続して投与されるとき、連続投与の順番は投与のそれぞれの時点で順番が逆転もしくは維持されていてよく、連続投与は同時投与と組み合わせられていてよく、またそれらが組み合わされていてよい。例えば、組合せ抗CTLA-4抗体および抗LAG-3抗体の第1の投与は同時であり、第2の投与は第1に抗CTLA-4および第2に抗-LAG-3で連続であり、そして第3の投与は第1に抗-LAG-3および第2に抗CTLA-4で連続などであってよい。さらに、またはあるいは、組合せ抗PD-1抗体および抗LAG-3抗体の第1の投与は同時であり、第2の投与は第1に抗PD-1および第2に抗-LAG-3で連続であり、そして第3の投与は第1に抗-LAG-3および第2に抗PD-1で連続などであってよい。さらに、またはあるいは、組合せ抗PD-L1抗体および抗LAG-3抗体の第1の投与は同時であり、第2の投与は第1に抗PD-L1および第2に抗-LAG-3で連続であり、そして第3の投与は第1に抗-LAG-3および第2に抗PD-L1で連続などであってよい。他の典型的な投与スキームは、第1の投与は第1に抗-LAG-3および第2に抗CTLA-4(および/または抗PD-1および/または抗PD-L1)で連続であり、そして後の投与は同時であることを含み得る。
【0193】
所望により、抗-LAG-3ならびに1つ以上のさらなる抗体(例えば、抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1抗体)の組合せは、さらに免疫原、例えば、癌細胞、精製された腫瘍抗原(組換えタンパク質、ペプチドおよび炭水化物分子を含む)、細胞および免疫刺激サイトカインをコードする遺伝子をトランスフェクトされた細胞(Heら (2004) J. Immunol. 173:4919-28)と組み合わされ得る。使用することができる腫瘍ワクチンの非限定的な例は、黒色腫抗原のペプチド、例えば、gp100、MAGE抗原、Trp-2、MART1および/またはチロシナーゼのペプチド、またはサイトカインGM-CSFを発現するようにトランスフェクトされた腫瘍細胞(以下でさらに記載されている)を含む。組合せLAG-3およびCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1遮断は、さらに、ワクチンプロトコール、例えば、抗LAG-3抗体での単剤療法に対して詳細に上記されているあらゆるワクチンプロトコールと組み合わせることができる。
【0194】
組合せLAG-3およびCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1遮断はまたさらに、標準癌処置と組み合わせられ得る。例えば、組合せLAG-3およびCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1遮断は、化学療法レジメンと有効に組み合わせられ得る。こうした場合において、本明細書の組合せにて投与される他の化学療法剤の用量を減少させることができる可能性がある(Mokyrら (1998) Cancer Research 58: 5301-5304)。このような組合せの例は、黒色腫の処置のためにさらにデカルバジンと組み合わせられた抗-LAG-3および抗CTLA-4抗体および/または抗PD-1抗体および/または抗PD-L1抗体の組合せである。他の例は、黒色腫の処置のためにさらにインターロイキン-2(IL-2)と組み合わせられた抗-LAG-3および抗CTLA-4抗体および/または抗PD-1抗体および/または抗PD-L1抗体の組合せである。LAG-3およびCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1遮断と化学療法の組合せ使用を支持する科学的論拠は、多数の化学治療化合物の細胞毒性作用の結果である細胞死が、抗原提示経路における腫瘍抗原のレベルの増加をもたらすはずであるというものである。細胞死を介して組合せLAG-3およびCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1遮断と相乗効果をもたらし得る他の組合せ治療は、放射線、外科手術およびホルモン遮断である。これらのそれぞれのプロトコールは、宿主における腫瘍抗原の源を創造する。血管形成阻害剤はまた、組合せLAG-3およびCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1遮断と組み合わせられ得る。血管形成の阻害は腫瘍細胞死を誘導し、腫瘍抗原を宿主の抗原提示経路に提供し得る。
【0195】
LAG-3およびCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1を遮断する抗体の組合せはまた、FcαまたはFcγ受容体を発現するエフェクター細胞を腫瘍細胞に標的化する二重特異性抗体と組み合わせて使用することができる(例えば、米国特許第5,922,845および5,837,243号、参照)。二重特異性抗体は、2つの別々の抗原を標的化するために使用することができる。T細胞群のこれらの応答は組合せLAG-3およびCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1遮断の使用により増加し得る。
【0196】
他の例において、抗-LAG-3および抗CTLA-4および/または抗PD-1抗体および/または抗PD-L1抗体の組合せは、抗-腫瘍性抗体、例えば、Rituxan(登録商標)(リツキシマブ)、Herceptin(登録商標)(トラスツマブ)、Bexxar(登録商標)(トシツモマブ)、Zevalin(登録商標)(イブリツモマブ)、Campath(登録商標)(アレムツズマブ)、Lymphocide(登録商標)(エプラツズマブ)、Avastin(登録商標)(ベバシズマブ)およびTarceva(登録商標)(エルロチニブ)などと組み合わせて使用することができる。一例として、理論により束縛されている願望なく、抗癌抗体または毒素とコンジュゲートされた抗癌抗体での処置が、CTLA-4、PD-1、PD-L1またはLAG-3が介在する免疫応答を増強する、癌細胞(例えば、腫瘍細胞)死を引き起こし得る。典型的な態様において、過増殖性疾患(例えば、癌腫瘍)の処置は、宿主による抗腫瘍免疫応答を増強することができる、同時にもしくは連続してまたはそれらの組合せにおいて、抗-LAG-3および抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1抗体と組み合わせられた抗癌抗体を含むことができる。
【0197】
腫瘍は、多種多様のメカニズムにより宿主の免疫監視から逃れる。多数のこれらのメカニズムは、腫瘍により発現され、免疫抑制性であるタンパク質の不活性化により克服され得る。これらは、数ある中でTGF-β(Kehrlら (1986) J. Exp. Med. 163: 1037-1050), IL-10 (Howard & O'Garra (1992) Immunology Today 13: 198-200)およびFasリガンド(Hahneら (1996) Science 274: 1363-1365)を含む。他の態様において、これらの存在物それぞれに対する抗体は、免疫抑制剤の効果を中和し、宿主による腫瘍免疫応答を支持するために、さらに抗-LAG-3および抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1抗体の組合せと組み合わせて使用することができる。
【0198】
宿主の免疫応答性を活性化するために使用することができる他の抗体は、さらに抗-LAG-3および抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1抗体の組合せと組み合わせて使用することができる。これらは、DC機能および抗原提示を活性化する、樹状細胞の表面上の分子を含む。抗-CD40抗体(Ridgeら, 上記)は、抗-LAG-3および抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1の組合せ(Itoら, 上記)と共に使用することができる。T細胞共刺激分子に対して活性化する他の抗体(Weinbergら, 上記, Meleroら 上記, Hutloffら, 上記)もまた、T細胞活性化のレベルを増加させるために提供され得る。
【0199】
上記のとおり、骨髄移植は、現在、造血起源の種々の腫瘍を処置するために使用されている。組合せLAG-3およびCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1遮断は、ドナー移植腫瘍特異的T細胞の有効性を増加させるために使用することができる。
【0200】
腫瘍に対する抗原特異的T細胞を刺激するために、エキソビボにおける抗原特異的T細胞の活性化およびこれらの細胞のレシピエントへの適合移植に関連する、いくつかの実験的処置プロトコールがある(Greenberg & Riddell、上記)。これらの方法はまた、感染因子、例えば、CMVに対するT細胞応答を活性化するために使用することができる。抗-LAG-3および抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1抗体の存在下におけるエキソビボ活性化は、適合移植されたT細胞の頻度および活性を増加させることが予期され得る。
【0201】
1つの態様において、本発明は、抗LAG-3抗体ならびに治療量以下の用量の抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1抗体を対象に投与することを含む、免疫刺激剤にて過増殖性疾患(例えば、癌)の処置と関連する有害事象を改変するための方法を提供する。例えば、本発明の方法は、非吸収性ステロイドを患者に投与することにより、免疫刺激治療抗体-誘導大腸炎または下痢の発症を減少させるための方法を提供する。免疫刺激治療抗体を受けるすべての患者がこのような抗体により誘発される大腸炎または下痢を発症する危険性があるため、全患者集団は本発明の方法にしたがう治療が適当である。ステロイドは炎症性腸疾患(IBD)を処置およびIBDの増悪を予防するために投与されているが、それらは、IBDと診断されていない患者におけるIBDは予防する(発症率を低下させる)ために使用されていない。ステロイド、とりわけ非吸収性ステロイドと関連する有意な副作用は、予防使用を阻止させている。
【0202】
さらなる態様において、組合せLAG-3およびCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1遮断(すなわち、免疫刺激治療抗体、抗-LAG-3および抗CTLA-4および/または抗PD-1抗体および/または抗PD-L1抗体)は、さらに、何らかの非吸収性ステロイドの使用と組み合わせることができる。本明細書において使用される「非吸収性ステロイド」は、肝臓の代謝後、ステロイドのバイオアベイラビリティが低くなるように、すなわち、約20%未満であるように、大規模な初回通過代謝を示すグルココルチコイドである。本発明の1つの態様において、非吸収性ステロイドはブデソニドである。ブデソニドは、経口投与後、主に肝臓により大規模に代謝される局所作用性糖質コルチコステロイドである。ENTOCORT EC(登録商標)(Astra-Zeneca)は、開発されたブデソニドのpH-および時間-依存性経口製剤であり、回腸および大腸への薬物送達に最適化されている。ENTOCORT EC(登録商標)は、回腸および/または上行結腸に関与するクローン病を抑えるための穏やかな処置のために米国において承認されている。クローン病の処置のためのENTOCORT EC(登録商標)の通常の経口用量は、6から9mg/日である。ENTOCORT EC(登録商標)は、腸粘膜において吸収され維持される前に腸に放出される。腸粘膜標的組織を通過すると、ENTOCORT EC(登録商標)は、肝臓におけるシトクロムP450系によりごくわずかなグルココルチコイド活性を有する代謝産物に大規模に代謝される。したがって、バイオアベイラビリティは低い(約10%)。ブデソニドの低いバイオアベイラビリティは、大規模な初回通過代謝が小さい他のグルココルチコイドと比較して、改善された治療可能比をもたらす。ブデソニドは、全身作用性コルチコステロイドよりも少ない視床下部-下垂体抑制を含む小さい副作用をもたらす。しかしながら、ENTOCORT EC(登録商標)の慢性投与は、全身性グルココルチコイド作用、例えば、副腎皮質機能亢進症および副腎抑制をもたらし得る。PDR 58th ed. 2004; 608-610、参照。
【0203】
さらなる態様において、非吸収性ステロイドと組み合わせられた組合せLAG-3およびCTLA-4および/またはPD-1および/またはPD-L1遮断(すなわち、免疫刺激治療抗体 抗-LAG-3および抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1抗体)は、さらに、サリチル酸塩と組み合わせることができる。サリチル酸塩は5-ASA剤、例えば:スルファサラジン(AZULFIDINE(登録商標)、Pharmacia & UpJohn);オルサラジン(DIPENTUM(登録商標)、Pharmacia & UpJohn);バルサラジド(COLAZAL(登録商標)、Salix Pharmaceuticals, Inc.);およびメサラミン(ASACOL(登録商標)、Procter & Gamble Pharmaceuticals;PENTASA(登録商標)、Shire US;CANASA(登録商標)、Axcan Scandipharm, Inc.;ROWASA(登録商標)、Solvay)を含む。
【0204】
本発明の方法において、抗-LAG-3および抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1抗体および非吸収性ステロイドと組み合わせて投与されるサリチル酸塩は、免疫刺激抗体により誘導される大腸炎の発症を減少する目的のために、サリチル酸塩および非吸収性ステロイドの任意の重複もしくは連続投与を含み得る。したがって、例えば、本発明の免疫刺激抗体により誘導される大腸炎の発症を減少させるための方法は、サリチル酸塩および非吸収性のものを同時にまたは連続して(例えば、サリチル酸塩を非吸収性ステロイドの6時間後に投与する)、またはそれらの任意の組合せを投与することを含む。さらに、本発明において、サリチル酸塩および非吸収性ステロイドは、同じ経路(例えば、両方が経口的に投与される)または異なる経路(例えば、サリチル酸塩が経口的に投与され、非吸収性ステロイドが経直腸的に投与される)(抗-LAG-3および抗CTLA-4および/または抗PD-1および/または抗PD-L1抗体を投与するために使用される経路と異なっていてよい)により投与され得る。
【0205】
本明細書は、さらに以下の実施例により説明されるが、さらなる限定と解釈してはならない。本出願のすべての図およびすべての文献、本出願において引用されているGenbank配列、特許および公開された特許出願の内容は、出典明示により明確に本明細書に包含される。特に、PCT公開WO09/045957、WO09/073533、WO09/073546およびWO09/054863の記載は出典明示により明確に本明細書に包含される。
【実施例0206】
実施例1:LAG3.1(抗体25F7)の変異体の設計
LAG3.1と本明細書において称される以前に記載されている抗LAG-3抗体である25F7抗体変異体を、分解の起こり得る部位に対する抗体のアミノ酸配列を最初に分析することにより、作製した。LAG3.1 VH領域の部位特異的突然変異誘発の発現を、QuikChange II XL(登録商標)部位特異的突然変異誘発キット(Agilent Technologies)を使用して行った。次に、改変されたVH領域を、ヒトIgG4-S228P定常領域を含むUCOE(登録商標)(EMD Millipore)ベクターにサブクローニングした。種々の重鎖ベクターを、CHO-S細胞にLAG3.1カッパ鎖を発現するベクターとそれぞれ共トランスフェクトし、安定なプールを発現のために選択した。
【0207】
5つの起こり得る脱アミドモチーフを、可変領域重鎖CDR2内で同定した。これらの部位は、LAG3.1の重鎖可変領域(配列番号:2)の位置52、54、56、58および60に位置した(
図1A参照)。特に、VH CDR2(配列番号:6)内の「NG」配列の脱アミドならびに配列のさらなる異性化を、全ての条件下で観察した。出発物質の脱アミドは約10%であった。さらに、この「NG」配列が生殖細胞系列配列に対応しないことを見出した(
図3参照)。しかしながら、コンセンサス生殖細胞系列配列は、起こり得るグリコシル化部位であり、したがって、抗体変異体中に含まれなかった。
【0208】
図3に示されるとおり、4つの変異体(本明細書においてLAG3.5、LAG3.6、LAG3.7およびLAG3.8と称される)を設計し、起こり得る脱アミドモチーフの2つ(位置54および56)に対処した。これらの変異体を、以下の表1において要約される条件に付し、以下の特性:(a)化学および熱安定性(物理的安定性);(b)サイズ排除クロマトグラフィー(凝集);(c)等電点電気泳動ゲル(IEF)(電荷不均一性);(d)Biacore分析による活性(結合および機能活性);および(e)質量分析によるペプチドマッピング(化学修飾/分子安定性)を分析した。
【0209】
【0210】
実施例2:LAG-3変異体の特性化
1.活性化ヒトCD4
+
T細胞結合
抗体変異体が活性化ヒトT細胞の表面上で天然ヒトLAG-3に結合する能力を試験するために、正常健常ドナー末梢血単核細胞を、溶液中でそれぞれ5μg/mLおよび3μg/mLで存在する抗-CD3(eBioscience、Cat #16-0037-85)および抗-CD28(BD Bioscience、Cat # 555725)抗体の組合せで、2x10e6細胞/mLの密度で15cm組織培養プレートにおいて刺激した。刺激の3日後に、細胞を回収し、1xPFAEバッファー(1xPBS+2% FBS、0.02% アジ化ナトリウム、2mM Na EDTA)で1X洗浄し、染色のために1xPFAEバッファーに再懸濁した。
【0211】
結合反応のために、LAG3.1変異体を冷1xPFAEバッファーで連続希釈し、次に、50μlの希釈抗体溶液を1xPFAEバッファーにおいて1:16希釈された50μlのFitc-標識化抗-ヒトCD4(BD Bioscience、Cat # 555346)と混合した。結合反応のために、100μlの該希釈抗体混合物を2x105細胞に加え、混合物を4℃で30分間インキュベートした。次に、細胞を、1xPFAEバッファーで2回洗浄した。PE-標識化ヤギ抗-ヒトFcγ-特異的抗体(Jackson ImmunoResearch、Cat. # 109-116-170)の1:200希釈物を加え、混合物を4℃で30分間インキュベートし、次に、冷1xPFAEバッファーで2回洗浄した。最後の洗浄後、150μlの冷1xPFAEをそれぞれの溶液に加え、抗体結合の分析を、FACSCanto フローサイトメーター(BD Bioscience)を使用するフローサイトメトリーにより実施した。
【0212】
フローサイトメトリー分析の結果は、活性化ヒトCD4+T細胞への抗体結合に対するEC
50を示すグラフである
図4Aにおいて要約されている。
図4Bは、BIACOREによる可溶性ヒトLAG-3/Fc抗原への抗体結合を示すグラフである。示されているとおり、LAG3.5およびLAG3.8の結合アフィニティーは、LAG3.1と比較して、わずかに低いが、それらのオフ速度(off-rate)定数は、LAG3.1と比較してわずかに高い。
【0213】
2.物理的安定性
変異体の熱安定性および熱変性を、Microcal VP-DSCを使用して試験した。具体的には、それぞれの変異体をPBS(Mediatech cat # 21-040-CV lot # 21040139)に希釈した。サンプルの最終濃度は、PBSへの希釈後に250μg/mLであった。サンプルを74℃に合わせ(scanned)、25℃に冷却し、74℃に再加熱した。PBSバッファーをブランクコントロールとして使用した。データをNon-2-状態モデルに合わせ、曲線適合をOriginソフトウェアにより実施した。
【0214】
表2において要約されており、
図5において示されているとおり、LAG3.5は、LAG3.1よりも高い融解温度TM2を有し、より良い総合安定性を示した。
【0215】
【0216】
変性後の抗体リフォールディングは、長期の凝集の可能性の反対の測定である。したがって、LAG-3変異体もまた、熱可逆性に関して試験し、比較した。具体的には、抗体を74℃に加熱し、室温に冷却し、74℃に再加熱した。第1のサーモグラムに対する第2の曲線下面積の比率は、熱可逆性の推定(estimate)を提供し、これは構造可逆性の直接的尺度である。
【0217】
表3において要約されており、
図6において示されているとおり、LAG3.5は、全ての他の変異体よりも実質的により高い熱可逆性を有した。特に、LAG3.5の可逆性パーセント(47%)は、LAG3.1のもの(20%)の2倍以上であった。熱可逆性は、長期の凝集の可能性と強く相関している。より低い可逆性は、より高い凝集の可能性に対応する。この観察に基づいて、LAG3.1は、LAG3.5と比較して時間とともに実質的により高い凝集の可能性を示し得る。同様に、全ての他の変異体は、LAG3.5と比較して時間とともに実質的により高い凝集の可能性を示し得る。
【0218】
【0219】
3.凝集
変異体もまた、以下のプロトコールにしたがって、標準サイズ排除HPLC(SEC-HPLC)を使用してタンパク質凝集の尺度として安定性について試験した:抗体試験サンプルをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で1.0mg/mlに希釈し、10uLをHPLC(Waters、model 2795)に適用した。0.1M リン酸ナトリウム、0.15M 塩化ナトリウム、0.1M 硫酸ナトリウム、pH7.2の移動相を使用するゲル濾過カラム(TOSOH Bioscience、TSKgel G3000 SWxl、7.8mmx300mm、product #08541)において、分離を成し遂げた。分析物を、280nmでのUV吸光度をモニタリングすることにより検出し、抗体ピーク面積パーセント組成をEmpowerソフトウェアを使用して決定した。表4に示されるとおり、LAG3.5は、LAG3.1と比較して、実質的に減少した凝集を示した。
【0220】
【0221】
実施例3:変異体選択
上記試験に基づいて、その修飾されていない形態(LAG3.1)と比較して、その有意に改善された物理化学的安定性、特に、構造リフォールディング(熱可逆性)に対するその高い能力を考慮して、抗体変異体LAG3.5をさらなる分析のために選択した。この分析は、(a)加速ストレス、(b)次に、12週リアルタイム安定性評価の2工程アプローチを含んだ。具体的には、LAG3.5を、40℃で5日間pH8.0、50mM 重炭酸アンモニウムにおいて1.0mg/mlでインキュベートした。5日後に、修飾の程度、ならびに活性および安定性に対する効果を分析した。次に、LAG3.5変異体を、12週間PBSにおけるリアルタイム安定性に付し、次に分析した。これらの試験の結果は、以下に記載される。
【0222】
1.抗原結合
図7(および表5)に示されるとおり、抗原結合における変化は、5日後に観察されなかった。
図10AおよびBにおいても示されるとおり、LAG3.5は、12週後に抗原結合または物理的安定性における変化を示さなかった。特に、LAG3.5は、4℃および40℃の両方で全12週にわたって、LAG3.8よりも高いアフィニティーを維持する。
【0223】
【0224】
2.化学修飾/分子安定性
質量分析によるペプチドマッピングを、LAG3.1と比較してのLAG3.5の化学/分子安定性を分析するために使用した。具体的には、精製された抗体を還元し、アルキル化し、透析し、トリプシン(Promega Cat. V5111)およびGluC(Roche Cat. 11047817001)で消化した。消化物を、ナノ-LC MSMS質量分析(Thermo Fisher LTQ Orbitrap)により分析した。
【0225】
図8に示されるとおり、LAG3.1は、アスパラギン残基が脱アミド化するより高いpHで、促進された安定性に付したとき、LAG3.5と比較して、V
Hにおける増加した不均一性を示した(工程1)。異性化による質量の変化は、現在の実験条件下で検出することができなかった。変化パーセントは、親ピークと組み合わせた全ての変化の割合として示される。
【0226】
加えて、
図11に示されるとおり、LAG3.1は、12週の長期リアルタイム安定性に付されたとき、4℃および40℃の両方で、LAG3.5と比較して、V
Hにおける増加した不均一性を示した(工程2)。
【0227】
3.物理的安定性
熱可逆性は、PBSおよびpH8.0で測定した。両方の条件下で、LAG3.5は、再び、LAG3.1と比較して、約2倍のリフォールディングのレベルを示した。具体的には、表6-8に示されるとおり、LAG3.5は、PBSにおいてLAG3.1に対する18%と比較して、43%のリフォールディングを示した。LAG3.5もまた、pH8.0でLAG3.1に対する29%リフォールディングと比較して、48%リフォールディングを示した。
【0228】
【0229】
【0230】
【0231】
4.電荷不均一性
電荷不均一性を評価するために、変異体は、LAG3.1と比較して、pI5.5およびpI10.0の標準マーカーで等電点分画電気泳動(IEF)を使用して分析した。簡潔には、抗体溶液を、pI3-10マーカー(SERVA、Cat# 39212)と共に、1mmの厚さのIEF pI3-7の予め作られたゲル(Invitrogen、Cat# EC6648BOX)上に付した。電気泳動法を、IEF 3-7 Cathodeバッファー(Invitrogen、Cat# LC5370)およびIEF Anodeバッファー(Invitrogen、Cat# LC5300)を使用して行い、1時間100V定数、1時間200V定数、および30分間500V定数の順に電流を加えた。IEFゲルをCoomassieブルーで染色し、タンパク質バンドを検出し、メタノール-酢酸溶液で脱染色した。次に、IEFゲルを、ImageQuant TLソフトウェアにより分析した。この分析に基づいて(データは示していない)、LAG3.5は、LAG3.1と比較して、有意に低い不均一性を示した。
【0232】
5.
HIC-HPLC
溶解性を評価するために、変異体は、以下のプロトコールにしたがって標準疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC-HPLC)を使用して分析した:50uLの2M 硫酸アンモニウムを1mg/mlで50uLの抗体試験サンプルに加えた。次に、80uLの試験サンプルを、HICカラム(TOSOH Bioscience、Ether-5PW TSK-gel、7.5mm x 75mm、product #07573)に一列に接続されたHPLC(Waters、model 2795)に適用した。50分にわたって100% バッファーA(2M 硫酸アンモニウム、0.1M リン酸ナトリウム、pH7.0)から100% バッファーB(0.1M リン酸ナトリウム、pH7.0)の勾配で1.0ml/分の流速で、サンプルを溶離した。抗体を280nmでのUV吸光度をモニタリングすることにより検出し、データをEmpowerソフトウェアを使用して分析した。
図9に示されるとおり、LAG3.5の親水性は、硫酸アンモニウムの高い濃度で溶解性を示した。
【0233】
実施例4:T細胞介在免疫応答阻害の逆転
LAG3.5の活性を、抗原特異的マウスT細胞ハイブリドーマ(3A9)を利用した機能アッセイの手段により決定した。ハイブリドーマ3A9は、ニワトリ卵白リゾチーム(HEL48-62)からのペプチドに特異的なT細胞受容体を発現し、ペプチドパルスMHC適合抗原提示細胞(LK35.2)と共培養したとき、IL-2を分泌する。huLAG-3-FcがMHCクラスII-ポジティブマウスB細胞系に結合することができるため、3A9系におけるhuLAG-3の発現は、マウス提示系上のクラスIIとの関与を介して阻害効果を発揮することができた。3A9親のペプチド応答プロフィールとMHC適合抗原提示細胞と共培養されたヒトLAG-3-形質導入3A9細胞のものとの比較は、ヒトLAG-3の発現がコントロール3A9細胞と比較してペプチド応答性を阻害することを証明した。この阻害は、LAG3.5を使用するLAG-3遮断により逆転された。したがって、LAG-3介在阻害の遮断は、LAG3.5について証明された。
【0234】
実施例5:LAG3.5によるT細胞活性化
初代T細胞におけるLAG3.5の機能活性を、スーパー抗原SEBによって刺激されたヒトPBMC培養物を使用して評価した。全PBMCを18人のヒトドナーの血液から単離し、2つのアッセイフォーマット:(i)固定された量の抗体(20μg/mL)およびSEBの連続希釈物、または(ii)固定された量のSEB(85ng/mL)および抗体の連続希釈物のいずれかにおいて72時間刺激した。分泌されたIL-2を、T細胞活性の測定のために、ELISAによりモニタリングした。抗体抗PD-1抗体およびIpilimumabをポジティブコントロールとして使用し、抗-PD-1または抗-CTLA-4と組み合わせてのLAG3.5の活性もドナーのサブセットに対して評価した。
【0235】
増強されたIL-2分泌は、アイソタイプコントロール抗体処理と比較して、LAG3.5単独で処理された18個のドナーの15個からSEB濃度の範囲にわたって観察された。ほとんどの場合、刺激は、抗-PD-1またはIpilimumabでの処理に対して観察されたもの未満であった。LAG3.5について、2つのアッセイフォーマット(上記)の結果は、お互いに一致した。さらに、試験された6つのドナーの5つにおいて、LAG3.5と抗-PD-1またはIpilimumabとの組合せは、抗-PD-1またはIpilimumabと組み合わせたアイソタイプコントロール抗体において観察されたものよりも高いレベルの刺激を引き起こした。これらのデータは、LAG3.5が正常ヒトT細胞アッセイにおいて機能することができ、PD-1およびCTLA-4機能の阻害によって介在される応答をさらに活性化することができることを示した。
【0236】
【0237】
【0238】
【0239】
【0240】