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特開2024-41983合成樹脂組成物、耐火材料、シーリング材、接着剤及び目地構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041983
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】合成樹脂組成物、耐火材料、シーリング材、接着剤及び目地構造
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20240319BHJP
   C08K 3/00 20180101ALI20240319BHJP
   C08K 3/26 20060101ALI20240319BHJP
   C08K 3/24 20060101ALI20240319BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20240319BHJP
   C09K 21/02 20060101ALI20240319BHJP
   C09J 201/10 20060101ALI20240319BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/00
C08K3/26
C08K3/24
C09K3/10 Z
C09K21/02
C09J201/10
C09J11/04
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006538
(22)【出願日】2024-01-19
(62)【分割の表示】P 2020518326の分割
【原出願日】2019-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2018089675
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018089677
(32)【優先日】2018-05-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103975
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 拓也
(72)【発明者】
【氏名】池内 拓人
(72)【発明者】
【氏名】村山 之彦
(57)【要約】
【課題】 本発明は、燃焼により生成された燃焼残渣が強固である合成樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 本発明の合成樹脂組成物は、800℃の雰囲気下にて20分間燃焼させた後の燃焼残渣の強度が0.5N/mm2以上であるので、燃焼により生成された燃焼残渣が非常に強固である。燃焼残渣は、火災時においても目地部を充填し閉塞した状態を確実に保持して目地部などのシーリング部からの炎の回り込みを阻止し、建築構造物の壁部などに優れた耐火性能を付与することができる。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂を含有し、800℃の雰囲気下にて20分間燃焼させた後の燃焼残渣の強度が0.5N/mm2以上であることを特徴とする合成樹脂組成物。
【請求項2】
合成樹脂と、モース硬度が5以上である鉱物と、バインダー成分とを含有することを特徴とする請求項1に記載の合成樹脂組成物。
【請求項3】
合成樹脂が、硬化性樹脂であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の合成樹脂組成物。
【請求項4】
硬化性樹脂が、加水分解性シリル基を有する重合体であることを特徴とする請求項3に記載の合成樹脂組成物。
【請求項5】
モース硬度が5以上である鉱物が、長石類であることを特徴とする請求項2~4の何れか1項に記載の合成樹脂組成物。
【請求項6】
長石類が、ネフェリンサイアナイトを含むことを特徴とする請求項5に記載の合成樹脂組成物。
【請求項7】
バインダー成分が、ガラスフリット及びホウ酸化合物から選ばれた少なくとも一種の化合物を含むことを特徴とする請求項2~6の何れか1項に記載の合成樹脂組成物。
【請求項8】
膨張剤を含有することを特徴とする請求項2~7の何れか1項に記載の合成樹脂組成物。
【請求項9】
膨張剤が、炭酸カルシウム及び/又は珪酸マグネシウムを含むことを特徴とする請求項8に記載の合成樹脂組成物。
【請求項10】
NPO法人住宅外壁テクニカルセンター規格JTC S-0001に準拠したI型試験体を23℃及び相対湿度50%にて28日養生した後の50%モジュラスが0.05~0.40N/mm2であり且つ伸び率が400%以上であることを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の合成樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10の何れか1項に記載の合成樹脂組成物を含有することを特徴とする耐火材料。
【請求項12】
請求項1~10の何れか1項に記載の合成樹脂組成物を含有することを特徴とするシーリング材。
【請求項13】
請求項1~10の何れか1項に記載の合成樹脂組成物を含有することを特徴とする接着剤。
【請求項14】
せん断強度が1.0N/mm2以上であることを特徴とする請求項13に記載の接着剤。
【請求項15】
建築構造物の壁部を構成している壁部材と、
上記壁部材間に形成された目地部に充填された、請求項12に記載のシーリング材又はその硬化物とを含むことを特徴とする目地構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂組成物、耐火材料、シーリング材、接着剤及び目地構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建築構造物の目地構造は、壁部を構成している壁部材間に形成された目地部に、シーリング材を充填することによって構成されている。
【0003】
上記目地構造において、シーリング材は有機物であるため、燃焼に対して弱く、火災時にシーリング材が目地部から脱落し、目地部から炎が廻り込むことがあり、建築構造物の壁部の耐火性能が不十分となるという問題点を有している。
【0004】
特許文献1には、(A)末端に加水分解によってシラノール基を形成しうるケイ素含有官能基をもつポリアルキレンエーテル、(B)マイクロカプセル化ポリリン酸アンモニウム粉末、(C)炭酸カルシウム粉末及び(D)シラノール縮合触媒からなる防火性シーリング材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3848379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記防火性シーリング材は、火災時の熱によって発泡した後、炭化層膜を形成するが、発泡により燃焼残渣が脆くなるため、燃焼炎の風圧によって容易に破壊し、目地部からの脱落を生じ、建築構造物の壁部の耐火性能が依然として不十分であるという問題点を有する。
【0007】
本発明は、燃焼により生成された燃焼残渣が強固である合成樹脂組成物を提供する。本発明は、耐火材料、シーリング材及び接着剤として好適に用いることができる合成樹脂組成物を提供する。本発明は、火災時においても目地部などのシーリング部に充填された状態を確実に保持し、シーリング部からの炎の回り込みを阻止し、建築構造物の壁部に優れた耐火性能を付与することができるシーリング材を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の合成樹脂組成物は、合成樹脂を含有し、800℃の雰囲気下にて20分間燃焼させた後の燃焼残渣の強度が0.5N/mm2以上であることを特徴とする。
【0009】
合成樹脂組成物の燃焼残渣の強度は、0.5N/mm2以上であり、1.0N/mm2以上が好ましく、2.0N/mm2以上がより好ましく、5.0N/mm2以上がより好ましく、10N/mm2以上が特に好ましい。合成樹脂組成物の燃焼残渣の強度は、20N/mm2以下であることが好ましい。燃焼残渣の強度が0.5N/mm2以上であると、合成樹脂組成物又はその硬化物(以下、「合成樹脂組成物又はその硬化物」を総称して「固形物」ということがある)の燃焼残渣が風圧などによって破壊するのを抑制することができる。更に、火災時においても目地部などのシーリング部から脱落することなくシーリング部を充填した状態を保持し、建築構造物の壁部の耐火性能を維持することができる。更に、合成樹脂組成物を用いて壁部表面に貼着させたタイルなどの装飾品を火災時においても壁部表面に貼着させた状態に安定的に維持することができる。燃焼残渣の強度が20N/mm2以下であると、合成樹脂組成物の固形物の柔軟性が向上する。又、シーリング部の拡がりに追従してシーリング部の充填状態を確実に維持し、建築構造物の壁部の耐火性能を維持することができる。合成樹脂組成物を用いて壁部表面に貼着させたタイルなどの装飾品を火災時においても壁部表面に貼着させた状態に安定的に維持することができる。
【0010】
合成樹脂組成物において、800℃の雰囲気下にて20分間燃焼させた後の燃焼残渣の強度は下記の要領で測定された値をいう。
【0011】
合成樹脂組成物を溶融状態とした上で亜鉛鉱板上に厚さ10mm、幅10mm、長さ50mmとなるように塗布し、合成樹脂組成物を23℃及び相対湿度50%の環境下にて1ヶ月間養生し、合成樹脂組成物を硬化又は固化させて試験体を得る。
【0012】
試験体を800℃の恒温槽に20分間放置して燃焼させた後に恒温槽から取り出し、23℃及び相対湿度50%の雰囲気下にて3時間放置して燃焼残渣を生成する。
【0013】
万能試験機を用いて直径が1.5mmであるニードルによって燃焼残渣を50mm/分の圧縮スピードで圧縮することによって燃焼残渣の皮膜強度を測定し、皮膜強度を燃焼残渣の強度とする。
【0014】
そして、合成樹脂組成物は、NPO法人住宅外壁テクニカルセンター規格JTC S-0001に準拠したI型試験体を23℃及び相対湿度50%にて28日養生した後の50%モジュラスが0.05~0.40N/mm2であることが好ましい。50%モジュラスが上記範囲内であると、合成樹脂組成物は優れた柔軟性を有する。シーリング部の隙間寸法の変動に円滑に追従してシーリング部に充填された状態を確実保持する。更に、合成樹脂組成物を用いて壁部表面に貼着させたタイルなどの装飾品を火災時においても壁部表面に貼着させた状態に安定的に維持することができる。
【0015】
合成樹脂組成物は、NPO法人住宅外壁テクニカルセンター規格JTC S-0001に準拠したI型試験体を23℃及び相対湿度50%にて28日養生した後の伸び率が400%以上であることが好ましい。合成樹脂組成物の固形物は、優れた柔軟性を有する。壁部を構成している壁部材間に形成された目地部などのシーリング部の寸法は、地震による振動及び温度変化による壁部材の膨張収縮などによって変化する。合成樹脂組成物の上記伸び率が400%以上であると、合成樹脂組成物の固形物は、シーリング部の寸法変化に対して破断することなく円滑に追従し、目地部の閉塞状態を維持して優れた防水性を発揮することができる。更に、合成樹脂組成物を用いて壁部表面に貼着させたタイルなどの装飾品を火災時においても壁部表面に貼着させた状態に安定的に維持することができる。
【0016】
NPO法人住宅外壁テクニカルセンター規格JTC S-0001に準拠したI型試験体を23℃にて28日養生した後の50%モジュラス及び伸び率は下記の要領で測定された値をいう。合成樹脂組成物を用いてNPO法人住宅外壁テクニカルセンター規格JTC S-0001に準拠したI型試験体を作製する。得られたI型試験体を23℃及び相対湿度50%にて28日間にわたって養生して必要に応じて硬化させて試験体を作製する。試験体の50%モジュラス及び伸び率をNPO法人住宅外壁テクニカルセンター規格JTC S-0001に準拠して測定する。
【0017】
合成樹脂組成物は、後述の通り、接着剤として好適に用いることができる。接着剤のせん断強度は、1.0N/mm2以上が好ましい。接着剤のせん断強度は、1.0N/mm2以上であると、接着剤の接着性が向上する。接着剤のせん断強度は、JIS K6850に準拠して測定された値をいう。
【0018】
合成樹脂組成物は、800℃の雰囲気下にて20分間燃焼させた後の燃焼残渣の強度が0.5N/mm2以上であることが好ましい。合成樹脂組成物は、特に限定されないが、合成樹脂と、モース硬度が5以上である鉱物と、バインダー成分とを含有することが好ましい。
【0019】
以下において、合成樹脂と、モース硬度が5以上である鉱物と、バインダー成分とを含有する合成樹脂組成物について説明する。
【0020】
[合成樹脂]
合成樹脂としては、特に限定されない。合成樹脂としては、非硬化性樹脂又は硬化性樹脂の何れであってもよいが、硬化性樹脂が好ましい。非硬化性樹脂は、23℃及び1.01×105Pa(1気圧)において固体であることが好ましい。硬化性樹脂は、硬化後において、23℃及び1.01×105Pa(1気圧)にて固体であることが好ましい。
【0021】
非硬化性樹脂の数平均分子量は、10000を超えることが好ましく、10100以上が好ましい。合成樹脂の数平均分子量は、100万以下が好ましい。1液硬化性樹脂の数平均分子量は、10000を超えることが好ましく、10100以上が好ましい。合成樹脂の数平均分子量は、100万以下が好ましい。なお、合成樹脂の数平均分子量は、後述する加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドの数平均分子量の測定方法と同様の要領で測定された値をいう。
【0022】
非硬化性樹脂としては、例えば、ゴム系重合体、ポリオレフィン系重合体(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂など)などが挙げられる。
【0023】
ゴム系重合体としては、例えば、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、エチレン-酢酸ビニル共重合体などが挙げられる。
【0024】
硬化性樹脂は、1液型硬化性樹脂及び2液型硬化性樹脂を含む。
【0025】
[1液硬化性樹脂]
1液型硬化性樹脂としては、加水分解性シリル基を有する重合体、加水分解性イソシアネート基を有する重合体などが挙げられ、加水分解性シリル基を有する重合体を含むことが好ましい。加水分解性シリル基を含有する重合体は、水の存在下にて、加水分解性シリル基の加水分解性基が加水分解してシラノール基(-SiOH)を生成する。そして、シラノール基同士が脱水縮合して架橋構造が形成される。加水分解性イソシアネート基を有する重合体は、加水分解性イソシアネート基が水の存在下にて、二酸化炭素を生成しながら尿素結合(-NHCONH-)を生成して架橋構造を形成する。
【0026】
加水分解性シリル基とは、珪素原子に1~3個の加水分解性基が結合してなる基である。加水分解性シリル基の加水分解性基としては、特に限定されず、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基、オキシム基などが挙げられる。
【0027】
なかでも、加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましい。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、トリイソプロポキシシリル基、及びトリフェノキシシリル基などのトリアルコキシシリル基;プロピルジメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、及びメチルジエトキシシリル基などのジアルコキシシリル基;並びに、ジメチルメトキシシリル基、及びジメチルエトキシシリル基などのモノアルコキシシリル基が挙げられる。
【0028】
加水分解性イソシアネート基とは、加水分解によって尿素結合(-NHCONH-)を形成し得るイソシアネート基をいう。
【0029】
[加水分解性シリル基を有する重合体]
加水分解性シリル基を有する重合体としては、特に限定されず、例えば、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体、加水分解性シリル基を有するシリコーン樹脂、加水分解性シリル基を有するウレタン樹脂、加水分解性シリル基を有するポリオレフィン系樹脂などが挙げられる。加水分解性シリル基を有する重合体としては、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドを含有していることが好ましく、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド及び加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体を含有していることがより好ましい。なお、加水分解性シリル基を有する重合体は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0030】
[加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド]
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドに含有されている加水分解性シリル基は、アルコキシシリル基が好ましく、ジアルコキシシリル基がより好ましく、ジメトキシシリル基がより好ましく、プロピルジメトキシシリル基が特に好ましい。
【0031】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドは、1分子中に平均して、1~4個の加水分解性シリル基を有していることが好ましい。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドにおける加水分解性シリル基の数が上記範囲内にあると、合成樹脂組成物の固形物の燃焼残渣を安定的に保持できる。例えば、目地部などのシーリング部に合成樹脂組成物の固形物の燃焼残渣を安定的に保持することができ、建築構造物の壁部の耐火性能を維持することができる。加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドは、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0032】
なお、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められるポリアルキレンオキサイド中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められるポリアルキレンオキサイドの数平均分子量に基づいて算出することができる。
【0033】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドを構成しているポリアルキレンオキサイドとしては、主鎖が、一般式:-(R-O)n-(式中、Rは炭素数が1~14のアルキレン基を表し、nは、繰り返し単位の数であって正の整数である。)で表される繰り返し単位を含有する重合体が好ましく挙げられる。ポリアルキレンオキサイドの主鎖骨格は一種のみの繰り返し単位からなっていてもよいし、二種以上の繰り返し単位からなっていてもよい。
【0034】
ポリアルキレンオキサイドの主鎖骨格としては、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリブチレンオキサイド、ポリテトラメチレンオキサイド、ポリエチレンオキサイド-ポリプロピレンオキサイド共重合体、及びポリプロピレンオキサイド-ポリブチレンオキサイド共重合体などが挙げられる。なかでも、ポリプロピレンオキサイドが好ましい。ポリプロピレンオキサイドによれば、合成樹脂組成物の固形物に優れたゴム弾性及び接着性を付与することができる。
【0035】
加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドの数平均分子量は、3000~50000が好ましく、10000~30000がより好ましい。ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量が3000以上であると、合成樹脂組成物の固形物の機械的強度又は伸び性が向上する。ポリアルキレンオキサイドの数平均分子量が50000以下であると、合成樹脂組成物の塗工性が向上する。
【0036】
なお、本発明において、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドの数平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって測定されたポリスチレン換算した値を意味する。GPC法による測定においては、例えば、GPCカラムとして東ソー製Shodex KF800Dを用い、溶媒としてクロロホルムなどを用いることができる。
【0037】
加水分解性シリル基を有しているポリアルキレンオキサイドは、市販されているものを用いることができる。例えば、加水分解性シリル基を有しているポリアルキレンオキサイドとしては、カネカ社製 商品名「MSポリマー S-203」、「MSポリマー S-303」、「サイリルポリマー SAT-200」、「サイリルポリマー SAT-350」及び「サイリルポリマー SAT-400」などが挙げられる。加水分解性シリル基を有しているポリアルキレンオキサイドとしては、旭硝子社製 商品名「エクセスター ESS-3620」、「エクセスター ESS-2420」、「エクセスター ESS2410」及び「エクセスター ESS3430」などが挙げられる。
【0038】
主鎖がポリプロピレンオキサイドで且つポリプロピレンオキサイドの末端に(メトキシメチル)ジメトキシシリル基を有しているポリアルキレンオキサイドは、カネカ社から商品名「HS-2」にて市販されている。
【0039】
主鎖がポリプロピレンオキサイドで且つポリプロピレンオキサイドの末端にイソプロピルジメトキシメチルシリル基を有しているポリアルキレンオキサイドは、カネカ社から商品名「SAX720」にて市販されている。
【0040】
[加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体]
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体に含有されている加水分解性シリル基としては、加水分解反応が穏やかであることから、アルコキシシリル基が好ましく、トリアルコキシシリル基がより好ましく、トリメトキシシリル基が特に好ましい。
【0041】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体は、1分子中に平均して、1~2個の加水分解性シリル基を有しているのが好ましい。加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体は、1分子中に平均して、1~1.8個の加水分解性シリル基を有しているのがより好ましい。加水分解性シリル基の数が1個以上であると、合成樹脂組成物の硬化性が向上する。加水分解性シリル基の数が1.8個以下であると、合成樹脂組成物の固形物の機械的強度又は伸び率が向上する。加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体は、その主鎖の両末端のうち少なくとも一方に加水分解性シリル基を有していることが好ましい。
【0042】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体は、加水分解性シリル基を有さないアクリル系重合体と併用して使用してもよい。この場合、両者全体での1分子あたりの加水分解性シリル基の数は、0.3以上が好ましく、0.5以上がより好ましい。加水分解性シリル基の数が0.3以上であると、合成樹脂組成物の硬化性が向上する。一方、両者全体での1分子あたりの加水分解性シリル基の数は、2.0以下であることが好ましく、1.8以下であることがより好ましい。加水分解性シリル基の数が2.0以下であると、合成樹脂組成物の固形物の機械的強度又は伸び率が向上する。
【0043】
アクリル系重合体への加水分解性シリル基の導入方法としては、特に限定されず、例えば、主鎖骨格を構成する単量体の共重合体に不飽和基を導入した後、加水分解性シリル基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する方法などが挙げられる。
【0044】
なお、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体中における、1分子当たりの加水分解性シリル基の平均個数は、1H-NMRにより求められる加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体中の加水分解性シリル基の濃度、及びGPC法により求められる加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体の数平均分子量に基づいて算出する。
【0045】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体の主鎖骨格は、メチル(メタ)アクリレート及びブチル(メタ)アクリレートを含む単量体の共重合体が好ましく、メチルメタクリレート及びブチルアクリレートを含む単量体の共重合体がより好ましく、メチルメタクリレート及びn-ブチルアクリレートを含む単量体の共重合体が特に好ましい。主鎖骨格が上記共重合体である、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体によれば、合成樹脂組成物の耐候性が向上するため好ましい。なお、(メタ)アクリレートは、メタクリレート及び/又はアクリレートを意味する。
【0046】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体において、メチル(メタ)アクリレート成分の含有量は、3~70質量%が好ましく、5~50質量%がより好ましい。メチル(メタ)アクリレート成分の含有量が3質量%以上であることによって、合成樹脂組成物の接着性が向上する。メチル(メタ)アクリレート成分の含有量が70質量%以下であることによって、合成樹脂組成物の固形物の柔軟性が向上する。
【0047】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体において、ブチル(メタ)アクリレート成分の含有量は、30~97質量%が好ましく、50~95質量%がより好ましい。ブチル(メタ)アクリレート成分の含有量が30質量%以上であることによって、合成樹脂組成物の固形物が柔軟となり、目地部などのシーリング部に追従することができ好ましい。
【0048】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体において、主鎖骨格を構成している重合体に用いられる単量体は、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、及びブチルメタクリレートの他に、さらに他のモノマーを含んでいてもよい。他のモノマーとしては、例えば、スチレン、インデン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-クロロスチレン、p-クロロメチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-tert-ブトキシスチレン、ジビニルベンゼンなどのスチレン誘導体、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、カプロン酸ビニル、安息香酸ビニル、珪皮酸ビニルなどのビニルエステル基を持つ化合物、無水マレイン酸、N-ビニルピロリドン、N-ビニルモルフォリン、メタクリロニトリル、アクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-シクロヘキシルマレイミド、N-フェニルマレイミド、N-ラウリルマレイミド、N-ベンジルマレイミド、n-プロピルビニルエーテル、n-ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert-ブチルビニルエーテル、tert-アミルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、オクタデシルビニルエーテル、2-クロロエチルビニルエーテル、エチレングリコールブチルビニルエーテル、トリエチレングリコールメチルビニルエーテル、安息香酸(4-ビニロキシ)ブチル、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、テトラエチレングリコールジビニルエーテル、ブタン-1,4-ジオール-ジビニルエーテル、ヘキサン-1,6-ジオール-ジビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノール-ジビニルエーテル、イソフタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、グルタル酸ジ(4-ビニロキシ)ブチル、コハク酸ジ(4-ビニロキシ)ブチルトリメチロールプロパントリビニルエーテル、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、6-ヒドロキシヘキシルビニルエーテル、シクロヘキサン-1,4-ジメタノールモノビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、3-アミノプロピルビニルエーテル、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチルビニルエーテル、ウレタンビニルエーテル、ポリエステルビニルエーテルなどのビニロキシ基を持つ化合物などを挙げることができる。これらのモノマーは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0049】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体の重合方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができ、例えば、フリーラジカル重合法、アニオン重合法、カチオン重合法、UVラジカル重合法、リビングアニオン重合法、リビングカチオン重合法、リビングラジカル重合法などの各種重合法などが挙げられる。
【0050】
加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体の重量平均分子量は、1000~50000が好ましく、2000~30000がより好ましく、3000~15000が特に好ましい。重量平均分子量が上記範囲内である加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体によれば、合成樹脂組成物の固形物の柔軟性及び伸び性が向上する。
【0051】
[加水分解性シリル基を有するシリコーン樹脂]
シリコーン樹脂は、シロキサン結合(Si-O-Si)が繰り返して形成されてなる主鎖を有する重合体をいう。加水分解性シリル基を有するシリコーン樹脂は、シリコーン樹脂の主鎖に複数個の加水分解性シリル基を有している。加水分解性シリル基を有するシリコーン樹脂は、シリコーン樹脂の主鎖の両末端に加水分解性シリル基を有することが好ましい。加水分解性シリル基を有するシリコーン樹脂に含有されている加水分解性シリル基としては、オキシムシリル基が好ましく、ケトオキシムシリル基がより好ましい。
【0052】
[加水分解性シリル基を有するウレタン樹脂]
ウレタン樹脂は、ウレタン結合(-NHCOO-)が繰り返して形成されてなる主鎖を有する重合体をいう。加水分解性シリル基を有するウレタン樹脂は、ウレタン樹脂の主鎖に複数個の加水分解性シリル基を有している。加水分解性シリル基を有するウレタン樹脂は、ウレタン樹脂の主鎖の両末端に加水分解性シリル基を有することが好ましい。
【0053】
[加水分解性シリル基を有するポリオレフィン系樹脂]
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などが挙げられる。加水分解性シリル基を有するポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂の主鎖に複数個の加水分解性シリル基を有している。加水分解性シリル基を有するポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂の主鎖の両末端に加水分解性シリル基を有することが好ましい。
【0054】
[加水分解性イソシアネート基を有する重合体]
加水分解性イソシアネート基を有する重合体としては、例えば、加水分解性イソシアネート基を有するウレタン樹脂などが挙げられる。ウレタン樹脂は、ウレタン結合(-NHCOO-)が繰り返して形成されてなる主鎖を有する重合体をいう。加水分解性イソシアネート基を有するウレタン樹脂は、ウレタン樹脂の主鎖に複数個の加水分解性イソシアネート基を有している。加水分解性イソシアネート基を有するウレタン樹脂は、ウレタン樹脂の主鎖の両末端に加水分解性イソシアネート基を有することが好ましい。ウレタン樹脂は、ポリエーテルポリオールを原料とするポリエーテル系ウレタン樹脂、ポリエステルポリオールを原料とするポリエステル系ウレタン樹脂を含むが、これらの何れであってもよい。
【0055】
[2液硬化性樹脂]
2液硬化性樹脂としては、特に限定されず、例えば、イソシアネート系重合体、グリシジル系重合体などが挙げられる。
【0056】
イソシアネート系重合体は、ポリイソシアネートを含有する主剤と、ポリオールを含有する硬化剤とからなる2液型の硬化性樹脂である。主剤と硬化剤とを混合してポリイソシアネートとポリオールとを反応させることによってウレタン結合を形成して架橋し、硬化する。
【0057】
ポリイソシアネートとしては、例えば、芳香脂肪族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートなどが挙げられる。芳香脂肪族ジイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシリレンジイソシアネート、1,3-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、1,4-ビス(1-イソシアナト-1-メチルエチル)ベンゼン、ω,ω′-ジイソシアナト-1,4-ジエチルベンゼン、両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーなどが挙げられる。
【0058】
脂肪族ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、2-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチル-ペンタン-1,5-ジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリオキシエチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0059】
脂環族ジイソシアネートとしては、例えば、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加キシレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0060】
ポリオールとしては、例えば、ポリウレタンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、ポリオレフィンポリオール、ひまし油系ポリオールなどが挙げられる。
【0061】
グリシジル系重合体は、エポキシ樹脂を含有する主剤と、硬化剤とからなる2液型の硬化性樹脂である。エポキシ樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンとを反応させて得られるビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び、これらの水添物、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、ウレタン変性エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレートなどの含窒素エポキシ樹脂、ポリブタジエン又はNBRを含有するゴム変性エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0062】
硬化剤としては、特に限定されず、例えば、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、ポリアミド系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、ポリメルカプラン系硬化剤などが挙げられる。
【0063】
アミン系硬化剤としては、例えば、ポリオキシプロピレントリアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどの脂肪族ポリアミン、メタフェニレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの芳香族ポリアミンなどが挙げられる。
【0064】
酸無水物系硬化剤としては、例えば、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、無水ピロメリット酸、無水ヘット酸、ドデセニル無水コハク酸などが挙げられる。ポリアミド系硬化剤としては、例えば、ダイマー酸などが挙げられる。
【0065】
合成樹脂は、加水分解性シリル基を有する重合体と、グリシジル系重合体を含有していることが好ましく、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドと、グリシジル系重合体を含有していることがより好ましく、加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイドと、グリシジル系重合体と、加水分解性シリル基を有するアクリル系重合体を含有していることが特に好ましい。合成樹脂が、加水分解性シリル基を有する重合体と、グリシジル系重合体を含有していると、合成樹脂組成物の固形物の燃焼残渣を安定的に保持できる。例えば、目地部などのシーリング部に合成樹脂組成物の固形物の燃焼残渣を安定的に保持することができ、建築構造物の壁部の耐火性能を維持することができる。更に、合成樹脂組成物を用いて壁部表面に貼着させたタイルなどの装飾品を火災時においても壁部表面に貼着させた状態に安定的に維持することができる。
【0066】
合成樹脂が、加水分解性シリル基を有する重合体とグリシジル系重合体とを含有している場合、グリシジル系重合体の含有量は、加水分解性シリル基を有する重合体100質量部に対して1~100質量部が好ましく、5~60質量部がより好ましく、7~50質量部がより好ましく、8~40質量部が特に好ましい。グリシジル系重合体が1質量部以上であると、合成樹脂組成物の固形物の燃焼残渣を安定的に保持できる。グリシジル系重合体が100質量部以下であると、合成樹脂組成物の固形物が、加水分解性シリル基を有する重合体の柔軟性と、グリシジル系重合体の強靱性を両立することができ好ましい。
【0067】
[鉱物]
合成樹脂組成物は、モース硬度が5以上である鉱物を含有している。モース硬度が5以上である鉱物としては、例えば、長石類、酸化鉄、酸化チタン、シリカ(SiO2)、石英、α-アルミナ、炭化珪素、炭化ホウ素などが挙げられ、長石類、酸化チタン、α-アルミナが好ましく、長石類、α-アルミナがより好ましく、長石類が特に好ましい。
【0068】
鉱物のモース硬度は下記の要領で測定される。硬さの異なる10種類の標準鉱物[モース硬度が1~10(整数)の標準鉱物]を用意する。測定対象となる鉱物の表面にモース硬度の低い標準鉱物を順にこすりつける。測定対象となる鉱物の表面に傷が付かなかった標準鉱物のうち、モース硬度が最も大きい標準鉱物のモース硬度を鉱物のモース硬度とする。
【0069】
長石類は、長石及び準長石を含有しており、準長石が好ましい。なお、長石類は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0070】
長石としては、例えば、正長石、サニディン、微斜長石、アノーソクレースなどのアルカリ長石;曹長石、灰曹長石、中性長石、曹灰長石、亜灰長石、灰長石などの斜長石などが挙げられる。
【0071】
準長石としては、例えば、カリ霞石(カルシライト)、灰霞石(カンクリナイト)などの霞石(ネフェリン)、霞石閃長石(ネフェリンサイアナイト)、白榴石(リューサイト)、方ソーダ石(ソーダライト)、藍方石(アウイン)、青金石(ラズライト)、黝方石(ノゼアン)、黄長石(メリライト)などが挙げられ、霞石閃長石(ネフェリンサイアナイト)が好ましい。なお、霞石閃長石は、閃長石と記載されることもある。
【0072】
鉱物の平均粒子径は、0.01~100μmであり、0.1~50μmが好ましく、1~25μmがより好ましく、2~15μmが特に好ましく、3~10μmが特に好ましい。鉱物の平均粒子径が0.01μm以上であると、合成樹脂組成物の固形物の燃焼残渣が優れた強度を有し好ましい。鉱物の平均粒子径が100μm以下であると、合成樹脂組成物中に均一に分散させることができ、合成樹脂組成物の固形物の燃焼残渣は優れた強度を有する。
【0073】
なお、鉱物の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡による画像解析によって測定された値をいう。具体的には、鉱物を透過型電子顕微鏡を用いて倍率100倍の拡大写真を撮影し、任意の50個の鉱物を抽出し、各鉱物の直径を測定し、各鉱物の直径の相加平均値を鉱物の平均粒子径とする。なお、鉱物の直径は、鉱物を包囲し得る最小径の真円の直径をいう。
【0074】
合成樹脂組成物中における鉱物の含有量は、合成樹脂100質量部に対して1~800質量部が好ましく、30~600質量部が好ましく、50~450質量部がより好ましく、80~300質量部が特に好ましく、120~200質量部が最も好ましい。鉱物の含有量が上記範囲内であると、合成樹脂組成物の固形物の燃焼残渣が優れた強度を有し、燃焼残渣は硬くなりすぎず亀裂を生じることがない。従って、目地部などのシーリング部を充填した状態を確実に維持し、建築構造物の壁部の耐火性能を維持することができる。更に、合成樹脂組成物を用いて壁部表面に貼着させたタイルなどの装飾品を火災時においても壁部表面に貼着させた状態に安定的に維持することができる。
【0075】
[バインダー成分]
合成樹脂組成物は、合成樹脂組成物の固形物の燃焼残渣において、鉱物同士を結合させるためにバインダー成分を含有している。
【0076】
バインダー成分としては、特に限定されないが、ガラスフリット(ガラス粉末)及びホウ酸化合物が好ましく、ガラスフリットが好ましい。なお、バインダー成分は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0077】
[ガラスフリット]
ガラスフリットを構成しているガラスとしては、たとえば、リン酸系ガラス、ホウ酸系ガラス、酸化ビスマス系ガラス、珪酸系ガラス、酸化ナトリウム系ガラスなどが挙げられ、リン酸系ガラス、ホウ酸系ガラスが好ましく、リン酸系ガラスがより好ましい。これらのガラスフリットは、B23、P25、ZnO、SiO2、Bi23、Al23、BaO、CaO、MgO、MnO2、ZrO2、TiO2、CeO2、SrO、V25、SnO2、Li2O、Na2O、K2O、CuO、Fe23などを所定の成分割合で調整して得ることができる。なお、ガラスフリットは、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0078】
ガラスフリットを構成しているガラスの軟化点は350~650℃が好ましく、360~560℃がより好ましく、370~540℃が特に好ましく、380~520℃が最も好ましい。なお、ガラスフリットを構成しているガラスの軟化点は、ガラスの粘度が107.6dPa・s(logη=7.6)となる温度である。
【0079】
[ホウ酸化合物]
ホウ酸化合物としては、特に限定されず、例えば、ホウ酸亜鉛、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、ホウ酸カルシウムなどが挙げられ、ホウ酸亜鉛が好ましい。
【0080】
合成樹脂組成物中におけるバインダー成分の含有量は、合成樹脂100質量部に対して2~120質量部が好ましく、5~100質量部がより好ましく、8~90質量部がより好ましく、25~90質量部が特に好ましく、30~60質量部が最も好ましい。バインダー成分の含有量が上記範囲内にあると、合成樹脂組成物の固形物の燃焼残渣が優れた強度を有し、燃焼残渣は硬くなりすぎず亀裂を生じることがない。従って、目地部などのシーリング部を充填した状態を確実に維持し、建築構造物の壁部の耐火性能を維持することができる。更に、合成樹脂組成物を用いて壁部表面に貼着させたタイルなどの装飾品を火災時においても壁部表面に貼着させた状態に安定的に維持することができる。
【0081】
合成樹脂組成物中において、鉱物の含有量とバインダー成分の含有量との比(鉱物の含有量/バインダー成分の含有量)は、1~20が好ましく、2~15がより好ましく、2.5~12がより好ましく、3~10が特に好ましく、3.5~7が最も好ましい。鉱物の含有量とバインダー成分の含有量との比(鉱物の含有量/バインダー成分の含有量)が上記範囲内であると、合成樹脂組成物の固形物の燃焼残渣が優れた強度を有し、燃焼残渣は硬くなりすぎず亀裂を生じることがない。従って、目地部などのシーリング部を充填した状態を確実に維持し、建築構造物の壁部の耐火性能を維持することができる。更に、合成樹脂組成物を用いて壁部表面に貼着させたタイルなどの装飾品を火災時においても壁部表面に貼着させた状態に安定的に維持することができる。
【0082】
[膨張剤]
合成樹脂組成物は膨張剤を含有していてもよい。合成樹脂組成物の固形物は、建築構造物の壁部に形成された目地部などのシーリング部に充填されているが、例えば、壁部を構成している壁部材は火災時の熱によって収縮し、その結果、壁部材間に形成されている目地部が拡張する。
【0083】
そこで、合成樹脂組成物に膨張剤を含有させることによって、合成樹脂組成物の固形物の燃焼時に固形物を膨張させることができ好ましい。特に、合成樹脂組成物の固形物の燃焼時に固形物をシーリング部の拡張に円滑に追従させてシーリング部の閉塞を確実に維持することができる。
【0084】
膨張剤としては、特に限定されないが、炭酸カルシウム(モース硬度:3)、珪酸マグネシウムを含む化合物(モース硬度:1)、膨張黒鉛(モース硬度:1)、水酸化アルミニウム(モース硬度:3)及び水酸化マグネシウム(モース硬度:3)が好ましく、合成樹脂組成物の固形物の燃焼残渣の強度が高くなるので、炭酸カルシウム、及び、珪酸マグネシウムを含む化合物がより好ましく、珪酸マグネシウムを含む化合物が特に好ましい。なお、膨張剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。膨張剤のモース硬度は、3以下であることが好ましい。膨張剤のモース硬度が3以下であると、合成樹脂組成物の固形物の燃焼時に固形物を円滑に膨張させることができる。なお、膨張剤のモース硬度は、鉱物のモース硬度を測定する場合と同様の要領で測定される。
【0085】
[珪酸マグネシウムを含む化合物]
珪酸マグネシウムを含む化合物としては、特に限定されず、珪酸マグネシウムを含む天然化合物が挙げられ、例えば、セピオライト、アタパルジャイト、タルク、フォルステライト、ヒューマイト、エンスタタイト、クリノエンスタタイト、クリソタイルなどの珪酸マグネシウムを含む化合物、オルルマナイト、マグネシアアクシナイト、ディオプサイト、トレモライトなどの珪酸マグネシウムカルシウム類が挙げられ、セピオライト、アタパルジャイト、及びタルクが、燃焼残渣の強度を向上できる点でより好ましく、セピオライトがより好ましい。
【0086】
[炭酸カルシウム]
炭酸カルシウムとしては、特に限定されず、例えば、コロイダル炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウムなどが挙げられ、コロイダル炭酸カルシウム及び重質炭酸カルシウムが好ましく、コロイダル炭酸カルシウムがより好ましい。
【0087】
炭酸カルシウムの平均粒子径は、0.01~5μmが好ましく、0.05~2.5μmがより好ましい。このような平均粒子径を有している炭酸カルシウムによれば、合成樹脂組成物の固形物の燃焼残渣が優れた強度を有し、燃焼残渣は硬くなりすぎず亀裂を生じることがない。従って、目地部などのシーリング部を充填した状態を確実に維持し、建築構造物の壁部の耐火性能を維持することができる。なお、炭酸カルシウムの平均粒子径は、SEMによる観察でスケール測定し10個の平均によって測定された値をいう。
【0088】
また、炭酸カルシウムは、脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されているのが好ましい。脂肪酸や脂肪酸エステルなどにより表面処理されている炭酸カルシウムによれば、合成樹脂組成物にチキソトロピー性を付与できると共に炭酸カルシウムが凝集することを抑制することができる。
【0089】
[膨張黒鉛]
膨張黒鉛とは、天然黒鉛又は合成黒鉛を酸、酸化体、ハロゲン化物などのインターカラント材で処理して、層間化合物を作り、その粉体を急速加熱(1000~1200℃)することによって黒鉛のc軸方向を約150~700倍に膨張させて製造されたものである。
【0090】
インターカラント材としては、硫酸、硝酸、クロム酸、ホウ酸、SO3、またはFeCl3、ZnCl2、およびSbCl5などのハロゲン化物が挙げられる。
【0091】
合成樹脂組成物中における膨張剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して1~100質量部が好ましく、2~50質量部がより好ましく、2~30質量部が特に好ましい。膨張剤の含有量が上記範囲内にあると、合成樹脂組成物の固形物を燃焼時に膨張させてシーリング部の拡張などのサイズ変化に円滑に追従させることができ、シーリング部の閉塞状態を確実に維持することができる。膨張剤として珪酸マグネシウムを含有する天然鉱物を用いる場合は、天然鉱物中の珪酸マグネシウムが上記範囲となるように調整すればよい。
【0092】
合成樹脂組成物中において、鉱物の含有量と膨張剤の含有量との比(鉱物の含有量/膨張剤の含有量)は、合成樹脂組成物の燃焼残渣の強度を向上させ、合成樹脂組成物の固形物に亀裂が発生するのを抑制することができるので、1以上が好ましく、3以上がより好ましく、10以上がより好ましく、20以上が特に好ましい。合成樹脂組成物中において、鉱物の含有量と膨張剤の含有量との比(鉱物の含有量/膨張剤の含有量)は、シーリング部を効果的に閉塞することができるので、350以下が好ましく、200以下がより好ましく、100以下がより好ましく、80以下がより好ましく、60以下が特に好ましい。膨張剤として珪酸マグネシウムを含有する天然鉱物を用いる場合は、天然鉱物中の珪酸マグネシウムが上記範囲となるように調整すればよい。
【0093】
[可塑剤]
合成樹脂組成物は可塑剤を含有していることが好ましい。可塑剤としては、例えば、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジノルマルヘキシル、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)、フタル酸ジノルマルオクチル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジノニル、フタル酸ジイソデシル、フタル酸ジイソウンデシル、及びフタル酸ビスブチルベンジルなどのフタル酸エステル;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラプロピレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコールが挙げられる。なかでも、ポリアルキレングリコールが好ましく、ポリプロピレングリコールがより好ましい。可塑剤は、23℃及び1.01×105Pa(1気圧)において液状であることが好ましい。
【0094】
可塑剤がポリマーである場合、可塑剤の数平均分子量は、1000~10000が好ましく、2000~5000がより好ましい。可塑剤の数平均分子量が上記範囲内である場合、合成樹脂組成物の固形物の燃焼残渣が目地部などのシーリング部に安定的に保持され、建築構造物の壁部に優れた耐火性能を付与することができる。
【0095】
なお、本発明において、可塑剤がポリマーである場合、可塑剤の数平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によって、ポリスチレン換算されて測定された値である。具体的な測定方法や測定条件は、上述したポリアルキレンオキサイドと同様である。
【0096】
合成樹脂組成物中における可塑剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して1~50質量部が好ましく、10~40質量部がより好ましい。
【0097】
[脱水剤]
合成樹脂組成物は、脱水剤をさらに含んでいるのが好ましい。脱水剤によれば、合成樹脂組成物を保存している際に、空気中などに含まれている水分によって合成樹脂組成物が硬化することを抑制することができる。
【0098】
脱水剤としては、ビニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、及びジフェニルジメトキシシランなどのシラン化合物;並びにオルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル、オルト酢酸メチル、及びオルト酢酸エチル等のエステル化合物などを挙げることができる。これらの脱水剤は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。なかでも、ビニルトリメトキシシランが好ましい。
【0099】
合成樹脂組成物中における脱水剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して0.5~20質量部が好ましく、1~15質量部がより好ましい。合成樹脂組成物中における脱水剤の含有量が0.5質量部以上であると、脱水剤により得られる効果が十分に得られる。また、合成樹脂組成物中における脱水剤の含有量が20質量部以下であると、合成樹脂組成物が優れた硬化性を有する。
【0100】
[シラノール縮合触媒]
合成樹脂組成物は、シラノール縮合触媒を含有していることが好ましい。シラノール縮合触媒とは、合成樹脂が含有する加水分解性シリル基などが加水分解することにより形成されたシラノール基同士の脱水縮合反応を促進させるための触媒である。
【0101】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫フタレート、ビス(ジブチル錫ラウリン酸)オキサイド、ジブチル錫ビス(アセチルアセトナート)、ジブチル錫ビス(モノエステルマレート)、オクチル酸錫、ジブチル錫オクトエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫ビス(トリエトキシシリケート)、ビス(ジブチル錫ビストリエトキシシリケート)オキサイド、及びジブチル錫オキシビスエトキシシリケートなどの有機錫系化合物;テトラ-n-ブトキシチタネート、及びテトライソプロポキシチタネートなどの有機チタン系化合物などが挙げられる。これらのシラノール縮合触媒は、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
【0102】
シラノール縮合触媒としては、1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサンが好ましい。このようなシラノール縮合触媒によれば、合成樹脂組成物の硬化速度を容易に調整することができる。
【0103】
合成樹脂組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量は、合成樹脂100質量部に対して1~10質量部が好ましく、1~5質量部がより好ましい。合成樹脂組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量が1質量部以上であると、合成樹脂組成物の硬化速度を速くして、合成樹脂組成物の硬化に要する時間の短縮化を図ることができる。また、合成樹脂組成物中におけるシラノール縮合触媒の含有量が10質量部以下であると、合成樹脂組成物が適度な硬化速度を有し、合成樹脂組成物の貯蔵安定性及び取扱性を向上させることができる。
【0104】
[他の添加剤]
合成樹脂組成物は、チキソ性付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料、沈降防止剤、アミノシランカップリング剤、揺変剤及び溶剤など他の添加剤を含んでいてもよい。なかでも、チキソ性付与剤、紫外線吸収剤、及び酸化防止剤が好ましく挙げられる。
【0105】
チキソ性付与剤は、合成樹脂組成物にチキソトロピー性を発現せることができるものであればよい。チキソ性付与剤としては、水添ひまし油、脂肪酸ビスアマイド、ヒュームドシリカなどが好ましく挙げられる。
【0106】
合成樹脂組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して0.1~200質量部が好ましく、1~150質量部がより好ましい。合成樹脂組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量が0.1質量部以上であると、合成樹脂組成物にチキソトロピー性を効果的に付与することができる。また、合成樹脂組成物中におけるチキソ性付与剤の含有量が200質量部以下であると、合成樹脂組成物が適度な粘度を有し、合成樹脂組成物の取扱性が向上する。
【0107】
紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤などが挙げられ、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が好ましい。合成樹脂組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0108】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、及びポリフェノール系酸化防止剤などが挙げられ、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が好ましく挙げられる。合成樹脂組成物中における酸化防止剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して0.1~20質量部が好ましく、0.3~10質量部がより好ましい。
【0109】
[光安定剤]
合成樹脂組成物は、ヒンダードアミン系光安定剤を含んでいることが好ましい。ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に優れたゴム弾性をより長期間に亘って維持することができる合成樹脂組成物を提供することができる。
【0110】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート及びメチル1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートの混合物、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ[{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}]、コハク酸ジメチルと4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノールとの重縮合物などが挙げられる。
【0111】
ヒンダードアミン系光安定剤としては、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤が好ましく挙げられる。NOR型ヒンダードアミン系光安定剤によれば、硬化後に経時的なゴム弾性の低下が抑制されている合成樹脂組成物を提供することができる。
【0112】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤は、ピペリジン環骨格に含まれている窒素原子(N)に酸素原子(O)を介してアルキル基(R)が結合しているNOR構造を有している。NOR構造におけるアルキル基の炭素数は、1~20が好ましく、1~18がより好ましく、18が特に好ましい。アルキル基としては、直鎖状のアルキル基、分岐鎖状のアルキル基、及び、環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)が挙げられる。
【0113】
直鎖状のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基などが挙げられる。分岐鎖状のアルキル基としては、例えば、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルなどが挙げられる。環状のアルキル基(飽和脂環式炭化水素基)としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基などが挙げられる。また、アルキル基を構成している水素原子が、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)又はヒドロキシル基などで置換されていてもよい。
【0114】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤としては、下記式(I)で示されるヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。
【0115】
【化1】
【0116】
NOR型ヒンダードアミン系光安定剤を用いる場合、NOR型ヒンダードアミン系光安定剤と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤又はトリアジン系紫外線吸収剤とを組み合わせて用いることが好ましい。これにより、硬化後に経時的なゴム弾性の低下がより高く抑制されている合成樹脂組成物を提供することができる。
【0117】
合成樹脂組成物中におけるヒンダードアミン系光安定剤の含有量は、合成樹脂100質量部に対して0.01~20質量部が好ましく、0.1~10質量部がより好ましい。
【0118】
上記合成樹脂組成物は、合成樹脂と、鉱物と、バインダー成分と、必要に応じて添加される添加剤とを混合することによって製造することができる。なお、合成樹脂組成物は、水系溶媒に懸濁又は乳化させて懸濁液又は乳化液の形態であってもよい。合成樹脂組成物は、溶媒に溶解させた溶解液の形態であってもよい。なお、水溶媒としては、例えば、エチルアルコール、メチルアルコール、イソプロピルアルコールなどのアルコール、水などが挙げられる。溶媒としては、例えば、キシレン、トルエン、アセトンなどが挙げられる。
【0119】
合成樹脂組成物は、耐火材料、シーリング材及び接着剤として好適に用いることができる。
【0120】
合成樹脂組成物をシーリング材として用いて目地構造を構築することができる。合成樹脂組成物を目地部に施工して目地構造を得る方法としては、合成樹脂組成物を目地部に充填した後に養生させて硬化又は冷却固化させる方法が用いられる。得られる目地構造は、建築構造物の壁部を構成している壁部材と、互いに隣接する壁部材間に形成された目地部に充填された、合成樹脂組成物の固形物とを含む。建築構造物の壁部としては、例えば、外壁、内壁、天井部などが挙げられる。壁部材としては、例えば、外壁部材、内壁部材、天井部材などが挙げられる。
【0121】
目地部は、特に制限されないが、建築構造物の外壁、内壁、及び天井における目地部などが挙げられる。合成樹脂組成物は、硬化後に優れたゴム弾性を長期間に亘って維持することができることから、気温や日照等の温度変化による部材の膨張や収縮による、或いは振動や風圧などの作用による目地部の幅の変化に対して優れた追随性を呈し、部材の損傷や建築構造物内への漏水を防止することができる。したがって、建築構造物の外壁における目地部など、所謂、「ワーキングジョイント」とも呼ばれる幅の変化が大きい目地部をシーリングするために好適に用いられる。
【0122】
建築構造物の外壁における目地部としては、例えば、モルタル板、コンクリート板、窯業系サイディングボード、金属系サイディングボード、ALC板、及び金属板などの外壁部材同士の接合部にできる目地部が挙げられる。
【0123】
そして、合成樹脂組成物の固形物は、燃焼によって強固な燃焼残渣を生成し、この燃焼残渣は、火災時においても建築構造物の目地部を充填して閉塞した状態を確実に保持して目地部を通じた炎の回り込みを阻止し、建築構造物の壁部に優れた耐火性能を付与することができる。
【0124】
更に、合成樹脂組成物に膨張剤が含有されている場合、合成樹脂組成物の固形物は、燃焼時に膨張しながら燃焼残渣を生成する。従って、合成樹脂組成物を充填している目地部などのシーリング部が拡張した場合にあっても、シーリング部の拡張に円滑に追従してシーリング部の充填、閉塞状態を安定的に維持し、建築構造物の壁部に優れた耐火性能を付与することができる。
【0125】
又、合成樹脂組成物の使用要領の他の例について説明する。具体的には、合成樹脂組成物は、接着剤として好適に用いることができる。合成樹脂組成物を用いて装飾品であるタイルを壁部表面に貼着一体化させる要領を例に挙げて説明する。
【0126】
合成樹脂組成物を溶融状態とする。次に、溶融状態の合成樹脂組成物をタイルの裏面に塗工し、壁部表面の所定場所に合成樹脂組成物を介してタイルを貼着させた後、合成樹脂組成物を冷却固化させ又は硬化させて、壁面の所定位置に合成樹脂組成物によってタイルを貼着一体化する。なお、建築構造物の壁部としては、例えば、外壁、内壁、天井部などが挙げられる。
【0127】
そして、合成樹脂組成物の硬化物は、燃焼によって強固な燃焼残渣を生成し、この燃焼残渣は、火災時においても建築構造物の壁部表面に貼着一体化させたタイルなどの装飾品を強固に保持し、火災時において、装飾品が壁部表面から脱落することを防止する。
【0128】
合成樹脂組成物を用いて耐火材料を形成することができる。有機材料又は無機材料から形成された成型品に合成樹脂組成物を含有させることによって、成型品を耐火材料とすることができる。成型品は、燃焼して燃焼残渣となった場合であっても、その形状を保持し、燃焼残渣の崩落を防止することができる。成型品としては、特に限定されず、例えば、壁紙、化粧シート、基材(例えば、壁パネル、床パネルなど)、紙などの建築部材などが挙げられる。
【発明の効果】
【0129】
本発明の合成樹脂組成物は、燃焼により生成された燃焼残渣が非常に強固であり、この燃焼残渣は、火災時においても目地部を充填し閉塞した状態を確実に保持して目地部などのシーリング部からの炎の回り込みを阻止し、建築構造物の壁部などに優れた耐火性能を付与することができる。
【0130】
本発明の合成樹脂組成物は、燃焼により生成された燃焼残渣が非常に強固である。従って、燃焼残渣は、例えば、火災時においても壁部表面に貼着一体化させたタイルなどの装飾品を確実に保持し、装飾品が壁部から脱落するのを効果的に防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0131】
以下に、本発明を実施例を用いてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【実施例0132】
実施例及び比較例の合成樹脂組成物の製造において下記の原料を使用した。
【0133】
[合成樹脂]
・加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド1(主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドからなり且つ主鎖の末端にプロピルジメトキシシリル基を有するポリアルキレンオキサイド、1分子あたりのプロピルジメトキシシリル基の平均個数:2.1個、数平均分子量:20000、カネカ社製 商品名「MSポリマー S-303」)
・加水分解性シリル基を有するポリアルキレンオキサイド2(主鎖骨格がポリプロピレンオキサイドからなり且つ主鎖の末端にメチルジメトキシシシリル基を有するポリアルキレンオキサイド、1分子あたりのプロピルジメトキシシリル基の平均個数:2.1個、数平均分子量:15000、カネカ社製 商品名「カネカサイリルEST280」)
・加水分解性シリル基を有するアクリル系樹脂(主鎖骨格がメチルメタクリレート-ブチルアクリレート共重合体からなり且つ主鎖の一部にトリメトキシシリル基を有するアクリル系樹脂、1分子あたりのトリメトキシシリル基の平均個数:0.3個、重量平均分子量:4000、東亞合成社製 商品名「US-6150」)
・加水分解性シリル基を有するシリコーン樹脂(ケトオキシムシリル基を有するシリコーン樹脂、積水フーラー社製 商品名「セキスイシリコーンシーラント」)
・グリシジル系重合体1(エポキシ樹脂を含有する主剤(積水フーラー社製 商品名「ジョイナーW A剤」と、ポリオキシプロピレントリアミンを含有する硬化剤(積水フーラー社製 商品名「ジョイナーW B剤」とからなる2液型の硬化性樹脂)
・グリシジル系重合体2(エポキシ樹脂を含有する主剤(東亜合成社製 商品名「JER828」と、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールを含有するアミン系硬化剤とからなる2液型の硬化性樹脂)
・グリシジル系重合体3(エポキシ樹脂を含有する主剤(東亜合成社製 商品名「JER828」と、ケチミン化合物を含有する硬化剤(日東化成社製 商品名「エポニットK-100」)とからなる2液型の硬化性樹脂)
・イソシアネート系重合体(ジフェニルメタンジイソシアネートを含有する主剤(積水フーラー社製 商品名「#558」と、ひまし油系ポリオールを含有する硬化剤(積水フーラー社製 商品名「UX-B」とからなる2液型の硬化性樹脂)
・加水分解性イソシアネート基を有するウレタン樹脂1(ポリエステル系ポリウレタン樹脂、積水フーラー社製 商品名「#9611B」)
・加水分解性イソシアネート基を有するウレタン樹脂2(イソシアネート基を有するポリエーテル系ウレタン樹脂、積水フーラー社製 商品名「#500G」)
・ポリオレフィン系樹脂(ホットメルト接着剤、積水フーラー社製 商品名「JM-1733」)
・エマルジョン系重合体(モノマー単位として酢酸ビニルを主体とする水系接着剤(積水フーラー社製 商品名「エスダイン#5406」、固形分:45質量%)
【0134】
[鉱物]
・長石(モース硬度:6、平均粒子径:5μm、ネフェリンサイアナイト 白石カルシウム社製 商品名「ネスパー」)
・酸化チタン(モース硬度:7、平均粒子径:0.3μm、石原産業社製 商品名「CR-90」)
・α-アルミナ(モース硬度:9、平均粒子径:0.5μm、和光純薬工業社製 商品名「α-アルミナ」)
【0135】
[バインダー成分]
・ガラスフリット(リン酸系ガラス、日本フリット社製 「VY0144」、主成分:P25、AI23及びR2O、Rはアルカリ金属原子、軟化点:404℃)
・ホウ酸亜鉛(Rio Tinto Minerals Asia Pte Ltd社製 商品名「Fire brake 500」)
【0136】
[膨張剤]
・コロイダル炭酸カルシウム(白石工業社製 商品名「CCR」、平均粒子径:80nm、モース硬度:3)
・珪酸マグネシウム水和物(セピオライト、昭和KDE製 商品名「ミルコンE-2」、平均粒子径:1μm、珪酸マグネシウム:97質量%、モース硬度:1)
・珪酸マグネシウム・アルミニウム(アタパルジャイト、サンオーシャン製 製品名「アタゲル#50」、平均粒子径:0.1μm、珪酸マグネシウム:97質量%、モース硬度:1)
・膨張黒鉛(エアーウォーター社製 商品名「TEG」、モース硬度:1)
・水酸化アルミニウム(NabaiTec社製 商品名「APYRAL AG」、モース硬度:3)
・水酸化マグネシウム(神島化学工業社製 商品名「マグシーズN-6」、モース硬度:3)
【0137】
[その他の添加剤]
・シラノール縮合触媒(1,1,3,3-テトラブチル-1,3-ジラウリルオキシカルボニル-ジスタノキサン、日東化成社製 商品名「ネオスタンU-130」)
・脱水剤(ビニルトリメトキシシラン、日本ユニカ社製 商品名「NUCシリコーンA171」)
・アミノシランカップリング剤(N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学社製 商品名 KBM-603」)
・エポキシシランカップリング剤(信越化学社製 商品名「KBM-403」)
・ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(BASFジャパン社製 製品名「チヌビン326」
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASFジャパン社製 製品名「イルガノックス1010」)
・NH型ヒンダードアミン系光安定剤(BASFジャパン社製 製品名「チヌビン770」
・揺変剤(脂肪酸アマイドワックス、楠本化成社製 製品名「ディスパロン#6500」)
・脂肪族アミン(ステアリルアミン)
・可塑剤(ポリプロピレングリコール、数平均分子量:3000)
・溶剤(イソプロピルアルコール)
【0138】
(実施例1~38、比較例1~10)
合成樹脂、鉱物、バインダー成分、膨張剤及びその他の添加剤を表1~6に示した配合量となるようにして、プラネタリーミキサーを用いて真空雰囲気下にて60分間に亘って均一になるまで混合することによって合成樹脂組成物を得た。なお、合成樹脂が2液硬化性樹脂である場合、主剤、鉱物、バインダー成分、膨張剤及び添加剤を混合して第1液とし、硬化剤を第2液とした。合成樹脂組成物は、第1液と第2液の2液型であった。合成樹脂組成物の第1液と第2液は使用直前に混合し、2液硬化性樹脂を硬化させた。なお、エマルジョン系重合体については、固形分の質量を記載した。
【0139】
合成樹脂組成物について、800℃の雰囲気下にて20分間燃焼させた後の燃焼残渣の強度を上述した要領で測定し、その結果を表1~6に示した。
【0140】
実施例1~21、25及び27、並びに比較例1~4の合成樹脂組成物について、NPO法人住宅外壁テクニカルセンター規格JTC S-0001に準拠したI型試験体を23℃及び相対湿度50%にて28日養生した後の50%モジュラス及び伸び率を上述の要領で測定し、その結果を表1、2、4及び6に示した。
【0141】
実施例1~26及び比較例1~4の合成樹脂組成物について、800℃の雰囲気下にて20分間燃焼させた後の燃焼残渣の目地追従性を下記の要領で測定し、その結果を表1~4及び6に示した。
【0142】
実施例22~24、27~38及び比較例5~10の合成樹脂組成物のせん断強度を上述の要領で測定し、その結果を表3、5及び6に示した。
【0143】
実施例22~24、27~38及び比較例5~10の合成樹脂組成物について、タイル保持性を下記の要領で測定し、その結果を表3、5及び6に示した。
【0144】
(燃焼残渣の目地追従性)
外壁材(旭化成社製 商品名「ALC」)を2枚用意した。2枚の外壁材をこれらの外壁材の対向面間の距離が10mmとなるように配設した。外壁材同士の隙間によってシーリング部を形成した。このシーリング部に合成樹脂組成物を充填し、23℃及び相対湿度50%にて28日間に亘って養生して試験体を形成した。試験体を800℃の雰囲気下にて20分間燃焼させた。隙間ゲージを用いて外壁材と合成樹脂組成物の燃焼残渣との隙間の寸法を測定した。隙間の寸法に基づいて下記基準に従って評価した。
A(0.5mm未満であった。)
B(0.5mm以上で且つ1.0mm未満であった。)
C(1.0mm以上であった。)
【0145】
(タイル保持性)
一辺が15cmの平面正方形状で且つ表面が平坦なタイルを4枚用意した。合成樹脂組成物を溶融状態とした上で、各タイルの裏面全面に合成樹脂組成物を100g/m2の塗布量で塗工した。
【0146】
次に、モルタル製の外壁材を用意し、この外壁材の表面に4枚のタイルを合成樹脂組成物が外壁材側となるように載置した後、合成樹脂組成物を冷却固化させ又は硬化させてタイルを外壁材の表面に貼着一体化させて試験体を作製した。互いに隣接するタイルの間隔を0.5cmとした。
【0147】
なお、合成樹脂組成物を冷却固化させる場合、合成樹脂組成物を23℃の環境下にて60間放置した。合成樹脂組成物を硬化させる場合、合成樹脂組成物を23℃及び相対湿度50%の環境下にて1カ月間養生した。
【0148】
得られた試験体を600℃の恒温槽に30分間放置して燃焼させた後、試験体を恒温槽から取り出し、23℃の雰囲気下にて3時間放置した後、外壁材を垂直に起立させた状態において、4枚のタイルの脱落の有無を観察した。
A(4枚のタイルは脱落せず且つ非常に強固に接着している状態であった。)
B(4枚のタイルは脱落していないが、手で触れると比較的容易に脱落する状態であった。)
C(1~3枚のタイルが脱落した状態であった。)
D(4枚のタイルの全てが脱落した状態であった。)
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
【表3】
【0152】
【表4】
【0153】
【表5】
【0154】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明の合成樹脂組成物は、燃焼により生成された燃焼残渣が非常に強固である。合成樹脂組成物は、シーリング材として好適に用いることができる。燃焼残渣は、火災時においても目地部を充填し閉塞した状態を確実に保持して目地部などのシーリング部からの炎の回り込みを阻止し、建築構造物の壁部などに優れた耐火性能を付与することができる。
【0156】
又、合成樹脂組成物は、接着剤としても好適に用いることができる。燃焼残渣は、例えば、火災時においても壁部表面に貼着一体化させたタイルなどの装飾品を確実に保持し、装飾品が壁部から脱落するのを効果的に防止することができる。
【0157】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年5月8日に出願された日本国特許出願第2018-089675号、及び、2018年5月8日に出願された日本国特許出願第2018-089677号に基づく優先権を主張し、この出願の開示はその全体を参照することにより本明細書に組み込まれる。