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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024041990
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】溝形鋼の接合構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/58 20060101AFI20240319BHJP
   E04B 1/24 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
E04B1/58 503F
E04B1/58 508F
E04B1/24 N
E04B1/24 P
E04B1/24 Q
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024006879
(22)【出願日】2024-01-19
(62)【分割の表示】P 2020068083の分割
【原出願日】2020-04-06
(71)【出願人】
【識別番号】516152952
【氏名又は名称】構法開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100218062
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 悠樹
(72)【発明者】
【氏名】大西 克則
(57)【要約】      (修正有)
【課題】従来の溝形鋼の接合構造と同程度の接合強度を有するとともに、部品点数を少なくでき、接合施工が容易であり、さらにフランジの表面側をフラットにすることが可能な溝形鋼の接合構造を提供すること。
【解決手段】溝形鋼10とプレート部15を有する鋼材14を接合する溝形鋼の接合構造であって、溝形鋼のフランジ12とウエッブ13の厚みが実質的に同じ厚みであり、溝形鋼のウエッブ12と鋼材のプレート部15とを繋ぐ連結プレートが、ボルト6により接合される場合、又は溝形鋼のウエッブ13と鋼材のプレート部が、ボルト6により接合される場合に、溝形鋼のウエッブ13の長手方向に対する連結プレート、又は鋼材のプレート部15の拘束長さ(ls)を下記式(1)により求められる拘束長さ(ls)としたことを特徴とする。
ls≧b×√3・・・(1)
(式中、bはフランジ幅を表す)
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝形鋼とプレート部を有する鋼材を接合する溝形鋼の接合構造であって、
前記溝形鋼のフランジとウエッブの厚みが実質的に同じ厚みであり、
前記溝形鋼のウエッブと前記鋼材のプレート部とを繋ぐ連結プレートが、ボルトにより接合される場合、又は前記溝形鋼のウエッブと前記鋼材のプレート部が、ボルトにより接合される場合に、
前記溝形鋼の前記ウエッブの長手方向に対する前記連結プレート、又は前記鋼材のプレート部の拘束長さ(ls)を下記式(1)により求められる拘束長さ(ls)としたことを特徴とする溝形鋼の接合構造。
ls≧b×√3・・・(1)
(式中、bはフランジ幅を表す)
【請求項2】
前記鋼材のプレート部が、鋼管柱の側面から突出するブラケットプレートであることを特徴とする請求項1に記載の溝形鋼の接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溝形鋼の接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
ビル等の建築物では、その骨組に鉄骨等の構造材が使用されている。このような構造材としては、曲げ剛性や曲げ強度等の観点から一般的にH形鋼が多く用いられており、これらを建築物の設計に応じて組むことで建築用構造体としている。
【0003】
建築用構造体の施工においてH形鋼を接合する場合、隣り合うH形鋼の端部にかかる曲げモーメントが主にフランジ断面に軸力となって伝達するため、隣り合うH形鋼のフランジ同士を軸力方向に軸力が伝達するように、フランジの表裏面に各々添え板を当てて挟み込むとともに、隣り合うH形鋼のウエッブに剪断力が伝達するように、ウエッブの両面に各々添え板を当てて挟み込み、ボルトとナットで締付けて2面の摩擦面で摩擦接合している。さらに、H形鋼にかかる軸力はフランジ同士、ウエッブ同士の両方の接合で伝達している。
【0004】
このような従来の接合構造で、隣り合うH形鋼の高い接合強度を保持させるためには、多数の添え板と、各々の添え板を固定するための多くのボルト及びナットが必要となる。そして、このようなボルトとナットによる接合では、必然的にフランジの表面側にボルトの頭やナット、添え板が突出する。ここで、このような接合構造において、接合部のフランジ表面側に床など他の部材の配設施工を行う場合には、突出したボルトの頭やナット、添え板が邪魔になり、これらを避けるための設計が必要となる。そのため、フランジの表面側はフラットであることが望まれていた。
【0005】
そこで、フランジ表面側からの突起を無くすための方法として、上フランジの先端に厚く、ボルト頭を沈める凹みを加工した部品を完全溶け込み溶接でフランジと一体に形成し、現地でフランジの力を伝達する相応の添板をフランジ内側に配置して貫通ボルトで接合する提案がなされている(特許文献1を参照)。しかしながら、特許文献1の提案では、厚く凹加工した部品が高価であること、部品とH形鋼フランジの完全溶け込み溶接が高コストであること、また、添板との摩擦面が1面剪断摩擦接合であるため、従来の2面剪断摩擦接合にくらべてボルトの本数が2倍近く必要であること等の問題があった。
【0006】
一方、近年の建築用構造体の施工においては、上記のH形鋼とともに、或いはH形鋼に代えて溝形鋼(Cチャンネル)が用いられている。例えば、2本の溝形鋼を長手方向に接続する場合には、上記従来のH形鋼の接合と同様に、各々のフランジとウエッブの端部同士を連結プレートで両面から挟み込みボルト及びナットにより接合している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6-173340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、通常、溝形鋼のウエッブは薄く、添板を用いてボルト接合する。また、フランジ同士の接続には、ウエッブと同様にフランジの両面を添板で挟み込んでボルト接合する必要があり、溝形鋼のフランジは断面が台形のため、その勾配に配慮する必要があるため接合に手間がかかった。また、従来のH鋼の接合構造と同様に、フランジ表面側にボルトの頭やナット、添え板が突出してフラットにならないという問題があった。
【0009】
本発明は以上のような事情に鑑みてなされたものであり、従来の溝形鋼の接合構造と同程度の接合強度を有するとともに、部品点数を少なくでき、接合施工が容易であり、さらにフランジの表面側をフラットにすることが可能な溝形鋼の接合構造を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の溝形鋼の接合構造は、上記の技術的課題を解決するためになされたものであって、以下のことを特徴としている。
【0011】
第1に、本発明の溝形鋼の接合構造は、溝形鋼とプレート部を有する鋼材を接合する溝形鋼の接合構造であって、前記溝形鋼のフランジとウエッブの厚みが実質的に同じ厚みであり、前記溝形鋼のウエッブと前記鋼材のプレート部とを繋ぐ連結プレートが、ボルトにより接合される場合、又は前記溝形鋼のウエッブと前記鋼材のプレート部が、ボルトにより接合される場合に、前記溝形鋼の前記ウエッブの長手方向に対する前記連結プレート、又は前記鋼材のプレート部の拘束長さ(ls)を下記式(1)により求められる拘束長さ(ls)としたことを特徴とする。
ls≧b×√3・・・(1)
(式中、bはフランジ幅を表す)
【0012】
第2に、上記第1の発明の溝形鋼の接合構造において、前記鋼材のプレート部が、鋼管柱の側面から突出するブラケットプレートであることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明の溝形鋼の接合構造によれば、従来の溝形鋼の接合構造と同程度の接合強度を有するとともに、部品点数を少なくでき、接合施工が容易であり、さらにフランジの表面側をフラットにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の溝形鋼の接合構造の第1実施形態を示す分解斜視図である。
図2図1の第1実施形態の接合後のA-A断面図である。
図3図2の一部拡大図である。
図4】本発明の溝形鋼の接合構造の第2実施形態を示す分解斜視図である。
図5】溝形鋼の接合部における引っ張り力の伝達メカニズムを確認するための説明斜視図である。
図6】本発明の溝形鋼の接合構造の第3実施形態を示す分解斜視図である。
図7】本発明の溝形鋼の接合構造の第4実施形態を示す分解斜視図である。
図8】ボルトの配置のバリエーションを示す概略説明図である。
図9】第3実施形態の接合構造において、鋼管柱の側面から突出させたブラケットプレートに接合した実施形態を示す概略断面図である。
図10】第4実施形態の接合構造において、鋼管柱の側面から突出させたブラケットプレートに接合した実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の溝形鋼の接合構造について図面に基づいて以下に詳述する。図1は、本発明の溝形鋼の接合構造の第1実施形態を示す分解斜視図であり、図2図1のA-A断面図、図3図2の一部拡大図である。
【0016】
<第1実施形態>
図1に示す第1実施形態の溝形鋼の接合構造は、溝形鋼10と、被接合部材としてのプレート部を有する鋼材である、溝形鋼10と同形状の溝形鋼11を接合する溝形鋼の接合構造である。溝形鋼10、11は、上下のフランジ12と、各フランジ12の断面端部を垂直に繋ぐ1本のウエッブ13から構成された断面コの字型の形状を有する鋼材であり、各々の溝形鋼10、11には、ウエッブ13の片側表面に密着し、かつフランジ12の裏面に溶接された伝達プレート2が設けられている。そして、溝形鋼10と隣り合う溝形鋼11は、溝形鋼10のウエッブ13及び伝達プレート2と、溝形鋼11のウエッブ13及び伝達プレート2とを繋ぐ連結プレート3を介してボルト6とナット7により接合されている。
【0017】
溝形鋼10、11に設けられる伝達プレート2の断面形状は、図2に示すように、フランジ12とウエッブ13の接合部に密着する形状となっており、フランジ12とウエッブ13の接合部が断面円弧形状に形成されている場合には、伝達プレート2の対応縁部の形状もこれに密着する断面円弧形状又は面取り形状に形成されている。
【0018】
伝達プレート2とフランジ12の溶接は、伝達プレート2の縁部とフランジ12の相互に力が伝わるように溶接されている。なお、伝達プレート2とフランジ12の溶接強度は、フランジ12断面の許容強度からウエッブ13への伝達強度を差し引いた値以上の強度となるように溶接するのが好ましい。
【0019】
また、本第1実施形態の溝形鋼の接合構造では、伝達プレート2の表面に連結プレート3を密着して設ける構成であるため、伝達プレート2とフランジ12の溶接部21が伝達プレート2の縁に沿って盛り上がる所謂ビードが突出しないように溶接されていることが望ましい。このような溶接状態とするために、例えば、図3に示すように、予め伝達プレート2の溶接部21の縁に面取り部22を形成させておくことが考慮される。溶接は、通常、面取り部22内を埋めるように部分溶け込み溶接するが、余盛り部分はカットすることで伝達プレート2と連結プレート3を密着して設けることが可能となる。また、密着させる連結プレート3の縁に面取り部22を形成してビードの盛り上がりとの接触を逃がすこともできる。フランジ12と伝達プレート2の当接部の溶接形態は特に限定されるものではないが、上記のことを考慮した場合、部分溶け込み溶接で余盛りカットが望ましい。なお、連結プレート3を伝達プレート2が取り付けられていないウエッブ13表面に取付けることもできるが、溝形鋼10、11の図芯と連結プレート3の芯のずれが大きくなるため望ましくはないが、この場合には溶接部21が突出してもよい。
【0020】
連結プレート3は、隣り合う溝形鋼10、11の各々の対応する伝達プレート2を介してウエッブ13同士を繋ぐ部材であり、伝達プレート2を介しての連結プレート3によるウエッブ13同士の接合は、ボルト6による摩擦接合又は剪断接合により行われる。具体的には、伝達プレート2と連結プレート3が重なる部分の所定の位置に、連結プレート3、伝達プレート2及びウエッブ13を同軸に貫通する貫通孔5を設け、その貫通孔5にボルト6を挿通してナット7で締め付けて接合させる。このとき、連結プレート3の強度とボルト接合の強度は、溝形鋼10、11の許容曲げモーメントをボルト軸間距離で除した大きさ、又は溝形鋼の許容軸力の1/2のいずれか大きい方の強度が必要になる。なお、このとき接合部に剪断力がかかっている場合はその作用力分を差し引く必要がある。
【0021】
ボルト6は、必要な締付け強度に応じて太さと強度及び本数を決める。このとき、ボルト6のピッチや本数を変えることで伝達プレート2の長さと厚さを設定することができる。また、伝達プレート2が長い方がウエッブ13とフランジ12の接合部から伝達される強度が大きくなるとともにフランジ12との溶接長が多くとれるので溶接サイズが小さく伝達プレート2を薄くすることができ、ボルト6の長さを短くすることができるため経済的である。
【0022】
また、連結プレート3は、必要な強度に応じて材料強度と断面積を決定する。この際、上記のとおり連結プレート3の厚さを薄くすることによりボルト6の長さを短くすることができて経済的ではあるが、必要な断面積を得るために幅を広くとる必要があり、ボルトの軸間距離が小さくなって接合強度が低下する場合があるので注意が必要である。また、摩擦接合の場合、連結プレート3と伝達プレート2との接合面は、摩擦接合の強度を大きくする観点から赤錆処理又はブラスト処理を施しておくことが望ましい。
【0023】
いずれも設計における選択肢であるが、接合する溝形鋼10、11の大きさに応じて、適切に設計するのが望ましい。図1に示す第1実施形態の溝形鋼の接合構造では、伝達プレート1枚に付き2本のボルト6が用いられており、伝達プレート2と連結プレート3の剪断面をウエッブ13の片側からボルト6で接合しているので、溝形鋼10と溝形鋼11のボルト接合は1面剪断接合になる。
【0024】
ウエッブ13の片側かつ上下のフランジ12の裏面2カ所に溶接した伝達プレート2に伝わった力は、溶接部21からフランジ12に伝わるが、伝達プレート2とウエッブ13はボルト6で共締めしているのでウエッブ13にも伝達されて、ウエッブ13とフランジ12の接合部からフランジ12に伝わる。
【0025】
また、溝形鋼10と溝形鋼11の接合において、連結プレート3から伝達プレート2に伝わった力は、ウエッブ13と伝達プレート2の溶接部21を経由してフランジ12に伝わる。よって、フランジ12の裏側とウエッブ13で囲まれたエリア内のみで、溝形鋼10、11にかかる曲げモーメント、軸力、剪断力を伝達できる接合とすることができ、少ない部品点数で従来と同程度の強度を有する接合が可能となる。これは、伝達プレート2とフランジ12との溶接部21による接合と、ウエッブ13、伝達プレート2及び連結プレート3をボルト6で共締めする総合的な結合力によるものである。また、第1実施形態の溝形鋼の接合機構では、フランジ12の裏面に伝達プレート2を溶接しているため、ボルト6による突起や添え板等による段差のないフラットな面とすることができ、フランジ12の表面側への施工性を向上させることができる。
【0026】
<第2実施形態>
本発明に係る第2実施形態の溝形鋼の接合構造は、図4に示すように、第1実施形態の溝形鋼の接合構造と同様に、溝形鋼10のウエッブ13の片側表面に密着し、かつフランジ12の裏面に溶接された伝達プレート2が設けられている。そして、溝形鋼10のウエッブ13及び伝達プレート2と鋼材14のプレート部15がボルト6により接合されている。
【0027】
即ち、本第2実施形態の溝形鋼の接合構造は、第1実施形態における連結プレート3を用いず、直接溝形鋼10のウエッブ13及び伝達プレート2と鋼材14のプレート部15を重ねた状態でボルト接合する構成となっている。なお、第2実施形態における鋼材14のプレート部15は単なる板状であるが、鋼材14を溝形形状にしてプレート部15を薄くすることもでき断面を小さくすることができる。このような接合構造においても、溝形鋼10に設けた伝達プレート2の作用により、プレート部15を有する鋼材14と溝形鋼10とを十分な強度で接合することが可能となる。
【0028】
本発明の溝形鋼の接合構造においては、上記第1実施形態及び第2実施形態のように、溝形鋼10のウエッブ13に伝達プレート2を設ける構造のほか、溝形鋼10のフランジ12とウエッブ13の厚みが実質的に同じ厚みであることを条件として、溝形鋼10のウエッブ13と鋼材14のプレート部15とを接合する場合に、溝形鋼10のウエッブ13の長手方向に対するプレート部15の拘束長さ(ls)を下記式(1)により求められる拘束長さ(ls)とする条件を満たすときには、伝達プレート2を設けない接合構造とすることができる。
ls≧b×√3・・・(1)
なお、式(1)中、bは溝形鋼10のフランジ12の幅寸法を表している。
【0029】
フランジの応力はフランジと繋がっているウエッブとの断面からウエッブ側に伝達されるので、フランジ断面積にかかる軸方向応力と、繋がっているウエッブとの断面積にかかる剪断応力が同等以上あればよい。
【0030】
【表1】
【0031】
溝形鋼の許容強度(F)は以下の式により求められる。
F=√3×Fs
溝形鋼の許容剪断強度(Fs)は以下の式により求められる。
Af=b×t
フランジとウエッブの拘束部の断面(A)は以下の式により求められる。
A=ls×t
【0032】
そして、拘束部の剪断強度による伝達力はフランジ断面の許容強度より大きければよいので以下の式が成り立つ。
A×Fs≧Af×F
そして、上記式から、
ls×t×Fs≧b×t×√3×Fs
と表され、
ls≧b×√3・・・(1)
が導き出される。
【0033】
なお、本発明における溝形鋼のウエッブの長手方向に対する連結プレートの拘束長さ(ls)は、ボルト両端距離(db)とボルト径(d)の合計の長さとしている。
【0034】
上記式(1)より、フランジとウエッブの厚さが同じ溝形鋼において、少なくともフランジ幅bを√3倍した長さ以上でウエッブを拘束することにより、フランジの応力をウエッブに伝達することができ、十分な強度で接合できることがわかった。以下に、上記条件を前提とした接合構造の実施形態について詳述する。
【0035】
<第3実施形態>
第3実施形態の溝形鋼の接合構造は、図6に示すように、溝形鋼10のフランジ12とは反対側のウエッブ13表面と、被接合部材である鋼材14のプレート部15を重ね合わせてボルト6により接合している。そして、溝形鋼10のウエッブ13の長手方向に対する連結プレート3の拘束長さ(ls)はフランジ幅bを√3倍した長さ以上として、プレート部15と溝形鋼10のウエッブ13を重ね合わせてボルト6で強固に接合している。なお、本発明において拘束長さ(ls)とは、例えば、図5に示すように、溝形鋼10のウエッブ13と鋼材14のプレート部15を固定するボルト6の長手方向両端の最も長い間隔の距離を意味している。
【0036】
<第4実施形態>
第4実施形態の溝形鋼の接合構造は、図7に示すように、一対の溝形鋼10のウエッブ13で鋼材14のプレート部15の両側を挟み込むように配設してボルト6により接合している。即ち、実施形態4の溝形鋼の接合構造においても第3実施形態と同様に、連結プレート3を用いずに直接鋼材14のプレート部15と接合する構成となっている。そして、この構成においても溝形鋼10のウエッブ13の長手方向に対するプレート部15の拘束長さ(ls)はフランジ幅bを√3倍した長さ以上に設定している。そのため伝達プレートは不要となる。
【0037】
なお、上記第2実施形態~第4実施形態の構成では、鋼材14のプレート部15は一体の板状であるため、ボルトの配置については種々のバリエーションが考えられる。例えば、図8に示すボルトの配置図はG点を点対象としたボルト配置であり、G点からの距離にボルト接合反力を掛けた曲げ応力の総和になる方法の原理である。なお、図8に示す各記号は以下の表2の意味を表している。
【0038】
【表2】
【0039】
そして、Gからボルトまでの距離riが大きくなるように、図8の四角形の線L上にボルトを配置することにより、効率のよい曲げ応力対応が可能となる。
【0040】
また、本発明の溝形鋼の接続構造における被接合部材としては、単なる長尺の溝形鋼11や鋼材14のプレート部15のほか、鋼管柱等の柱状の鋼材14の側面から水平又は所定の角度をもって突出する短尺の溝形鋼11やプレート部15であってもよい。このような溝形鋼11やプレート部15に対する溝形鋼10の接合は、例えば梁や柱、また、筋交い等の直線的な接合に用いることができる。また、接合対象である上記の何れの部材においても接合強度を考慮して、これらに対する伝達プレート2の配設が考慮される。
【0041】
柱状の鋼材14の側面に設けられたプレート部15としては、例えば、図9に示すような鋼管柱4の側面から突出するように設けられたブラケットプレート41を例示することができる。なお、このようなブラケットプレート41は、梁としての溝形鋼10を固定して支持する部材であるため、鋼管柱4に対して強固に固定されている必要がある。
【0042】
<ブラケットプレートの構成>
ブラケットプレート41の固定構造としては、図9に示すように、鋼管柱4の側面にブラケットプレート41の厚みと同等の幅のスリット42を設けて、該スリット42にブラケットプレート41を嵌合、溶接するとともに、鋼管柱4の内部に設けられた内ダイヤフラム8に溶接して固定させる構成とすることができる。これにより、強度を有するプレート部15としてのブラケットプレート41の一端が鋼管柱4の側面から突出するように設けることができる。
【0043】
なお、ブラケットプレート41を内ダイヤフラム8に固定する本実施形態では、ブラケットプレート41を予め内ダイヤフラム8に強固に溶接することができるため、溝形鋼10からの曲げ応力は鋼管柱4の内側に内接する内ダイヤフラム8に伝達するだけに必要な溶接強度があればよく、また、内ダイヤフラム8との溶接だけで不足する場合は交差するブラケットプレート41に溶接して、交差するブラケットプレート41と内ダイヤフラム8の溶接強度を加算できるので、設計では隅肉溶接や部分溶け込み溶接で十分であり完全溶け込み溶接は不要となる。
【0044】
また、鋼管柱4の側面から突出するブラケットプレート41との接合においては、上記構成のほか、図10に示すように第4実施形態の溝形鋼の接合構造のように、ブラケットプレート41の両側を一対の溝形鋼10のウエッブ13で挟み込むように配設してボルト6とナット7により接合する構成とすることもできる。
【0045】
本接合構造におけるブラケットプレート41の取付構造は、上記実施形態と同様に、スリット42にブラケットプレート41を嵌合、溶接するとともに、ブラケットプレート41を溶接した内ダイヤフラム8を鋼管柱4内に溶接して固定させる構造とすることができる。なお、本実施形態のように柱芯と梁芯を合わせる場合、一対の溝形鋼10のウエッブ13でブラケットプレート41の両側を挟み込んで配設するため、ブラケットプレート41の突出位置、即ち、鋼管柱4のスリット42の形成位置は鋼管柱4の幅中央部となる。
【0046】
以上、本発明の溝形鋼の接合構造について実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内において各種の変更が可能である。
【0047】
例えば、溝形鋼10をブラケットプレート41に接続する構成においては、図9に示す第3実施形態の接合、図10に示す第4実施形態の接合のように、伝達プレート2を設けない構成のほか、図1に示す第1実施形態の接合、図4に示す第2実施形態の接合のように、伝達プレート2を設けたり連結プレート3を用いて接合することもできる。
【0048】
また、上記ブラケットプレート41への接合では、所定の強度を得るためにブラケットプレート41を内ダイヤフラム8に溶接して配設しているが、内ダイヤフラム8を用いずにブラケットプレート41を鋼管柱4の側面に配設する構成とすることもできる。
【0049】
具体的には、少なくとも2つ以上のブラケットプレート41を鋼管柱4の側面に設けたスリット42に嵌合して突出するように設け、スリット42とブラケットプレート41との嵌合部で溶接するとともに、上記複数のブラケットプレート41の各々を鋼管柱4内で溶接する構成を例示することができる。
【0050】
上記の構成とすることにより、内ダイヤフラム8を設けることなくブラケットプレート41を所定の強度で鋼管柱4の側面から突出するように配設することができる。
【0051】
また、上記ブラケットプレート41に対する溝形鋼の接合構造では、ブラケットプレート41を角型鋼管柱4の側面から突出するように設けているが、角型鋼管柱4のほか、丸形鋼管柱4に対しても適用することができる。さらに、角型鋼管柱4のスリット42の位置をずらして設けることにより、ブラケットプレート41を角側部から突出するように配設することもできる。
【0052】
さらに、上記実施形態では高力ボルト6とナット7により摩擦接合しているが、通常のボルトやリベットなどの締結具により剪断接合にすることもできる。
【0053】
上記の構成を有する本発明の溝形鋼の接合構造によれば、従来の溝形鋼の接合構造と比べて同等以上の接合強度を有するとともに、部品点数を少なくでき、接合施工が容易であり、さらに、フランジ表面側をフラットにすることが可能となる。さらに、本発明に用いる鋼管柱は、運搬の際にトラックへの積載効率を良好とすることが可能となる。
【符号の説明】
【0054】
10、11 溝形鋼
12 フランジ
13 ウエッブ
14 鋼材
15 プレート部
2 伝達プレート
21 溶接部
22 面取り部
3 連結プレート
4 鋼管柱
41 ブラケットプレート
42 スリット
5 貫通孔
6 ボルト(高力ボルト)
7 ナット
8 内ダイヤフラム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10