IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーシー プロジェクト マネージメント リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042000
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】液滴吐出器
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/14 20060101AFI20240319BHJP
   B41J 2/16 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B41J2/14 301
B41J2/14 501
B41J2/14 607
B41J2/14 611
B41J2/14 613
B41J2/16 301
B41J2/16 401
B41J2/16 517
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024007264
(22)【出願日】2024-01-22
(62)【分割の表示】P 2020567639の分割
【原出願日】2019-02-26
(31)【優先権主張番号】1803177.3
(32)【優先日】2018-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】520324628
【氏名又は名称】スリーシー プロジェクト マネージメント リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100131451
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 理
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【弁護士】
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】マカヴォイ,グレゴリー ジョン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】より多くのノズル数を達成することができるプリントヘッド用の改善された圧電液滴吐出器を提供することを目的とする。
【解決手段】プリントヘッド用の液滴吐出器は、取付面及び反対側のノズル面を有する基板と、基板のノズル面の少なくとも一部の上に形成されたノズル形成層と、少なくとも一部は基板により且つ少なくとも一部はノズル形成層により画定された流体チャンバであって、少なくとも一部は前記ノズル形成層のノズル部分によって画定された流体チャンバ出口を有し、前記ノズル部分が、流体チャンバ出口の方に近接して位置する内側部分と、ノズル部分の周縁部の方に近接して位置する外側部分とを備える、流体チャンバと、ノズル形成層のノズル部分の内側部分に形成された内側アクチュエータ機構、及びノズル形成層のノズル部分の外側部分に形成された外側アクチュエータ機構のうちのいずれか又は両方とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントヘッド用の液滴吐出器であって、取付面及び反対側のノズル面を有する基板と
、前記基板の前記ノズル面の少なくとも一部の上に形成されたノズル形成層と、少なくと
も一部は前記基板により且つ少なくとも一部は前記ノズル形成層により画定された流体チ
ャンバであって、少なくとも一部は前記ノズル形成層のノズル部分によって画定された流
体チャンバ出口を有し、前記ノズル部分が、前記流体チャンバ出口の方に近接して位置す
る内側部分と、前記ノズル部分の周縁部の方に近接して位置する外側部分とを備える、流
体チャンバと、前記ノズル形成層の前記ノズル部分の前記内側部分に形成された内側アク
チュエータ機構、及び前記ノズル形成層の前記ノズル部分の前記外側部分に形成された外
側アクチュエータ機構のうちのいずれか又は両方とを備える液滴吐出器。
【請求項2】
前記ノズル形成層の前記ノズル部分の前記外側部分は、前記ノズル形成層の前記ノズル
部分の前記内側部分を少なくとも部分的に包囲している、請求項1に記載の液滴吐出器。
【請求項3】
前記内側アクチュエータ機構は、前記流体チャンバ出口を少なくとも部分的に包囲して
いる、請求項1又は2に記載の液滴吐出器。
【請求項4】
前記内側アクチュエータ機構及び/又は前記外側アクチュエータ機構の両方が実質的に
環状である、前記請求項1~3のいずれか一項に記載の液滴吐出器。
【請求項5】
前記基板と一体化された少なくとも1つの電子部品をさらに備える、請求項1~4のい
ずれか一項に記載の液滴吐出器。
【請求項6】
1つ又は複数の内側圧電アクチュエータを備えた内側アクチュエータ機構を備え、前記
1つ又は複数の内側圧電アクチュエータのうちの少なくとも1つが、内側の駆動電極の対
の間に設けられた内側圧電体を備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の液滴吐出器
【請求項7】
前記内側アクチュエータ機構が、実質的に環状である単一の内側圧電アクチュエータか
らなる、請求項6に記載の液滴吐出器。
【請求項8】
1つ又は複数の外側圧電アクチュエータを備えた外側アクチュエータ機構を備え、前記
1つ又は複数の外側圧電アクチュエータのうちの少なくとも1つが、外側の駆動電極の対
の間に設けられた外側圧電体を備える、請求項1~7のいずれか一項に記載の液滴吐出器
【請求項9】
前記外側アクチュエータ機構が、実質的に環状である単一の外側圧電アクチュエータか
らなる、請求項8に記載の液滴吐出器。
【請求項10】
前記単一の外側圧電アクチュエータが、前記単一の内側圧電アクチュエータを包囲して
いる、請求項7に従属する請求項9に記載の液滴吐出器。
【請求項11】
前記内側の駆動電極の対及び前記外側の駆動電極の対の両方が、駆動回路に電気的に接
続され、前記駆動回路が、使用時に電源に接続されると、前記内側の電極の対の間に第1
電位差を印加して第1方向における前記内側圧電体のたわみをもたらし、前記外側の電極
の対の間に第2電位差を印加して前記第1方向とは反対の第2方向における前記外側圧電
体のたわみをもたらすように構成されている、請求項6に従属する請求項8~10のいず
れか一項に記載の液滴吐出器。
【請求項12】
1つ若しくは複数の前記内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の前記外側圧電体が、
450℃未満の温度で処理可能な1種又は複数種の圧電材料を含む、請求項6~11のい
ずれか一項に記載の液滴吐出器。
【請求項13】
1つ若しくは複数の前記内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の前記外側圧電体が、
450℃未満の温度で堆積可能な1種又は複数種の圧電材料を含む、請求項6~12のい
ずれか一項に記載の液滴吐出器。
【請求項14】
前記1種又は複数種の圧電材料が、PVD堆積した圧電材料である、請求項12又は1
3に記載の液滴吐出器。
【請求項15】
前記1種又は複数種の圧電材料が、窒化アルミニウム及び/又は酸化亜鉛を含む、請求
項12~14のいずれか一項に記載の液滴吐出器。
【請求項16】
窒化アルミニウムが、以下の元素:スカンジウム、イットリウム、チタン、マグネシウ
ム、ハフニウム、ジルコニウム、スズ、クロム、ホウ素のうちの1種又は複数種をさらに
含む、請求項15に記載の液滴吐出器。
【請求項17】
前記1種又は複数種の圧電材料が、アルミニウム及び窒素、並びに任意選択的に、スカ
ンジウム、イットリウム、チタン、マグネシウム、ハフニウム、ジルコニウム、スズ、ク
ロム、ホウ素から選択された1種又は複数種の元素を含むセラミック材料を含む、請求項
12~16のいずれか一項に記載の液滴吐出器。
【請求項18】
前記1種又は複数種の圧電材料が非強誘電性圧電材料である、請求項12~17のいず
れか一項に記載の液滴吐出器。
【請求項19】
1つ若しくは複数の前記内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の前記外側圧電体が、
20pC/N未満の大きさを有するd31圧電定数を有する、請求項6~18のいずれか一
項に記載の液滴吐出器。
【請求項20】
前記基板と一体化された少なくとも1つの電子部品をさらに備える、請求項1~19の
いずれか一項に記載の液滴吐出器。
【請求項21】
前記基板の前記取付面が、前記流体チャンバと流体連通する流体入口アパーチャを備え
る、請求項1~20のいずれか一項に記載の液滴吐出器。
【請求項22】
前記流体チャンバが実質的に円筒状であり、前記ノズル形成層の前記ノズル部分が実質
的に環状である、請求項1~21のいずれか一項に記載の液滴吐出器。
【請求項23】
前記内側アクチュエータ機構及び前記外側アクチュエータ機構並びに前記ノズル形成層
を覆う保護層をさらに備える、請求項1~22のいずれか一項に記載の液滴吐出器。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の複数の液滴吐出器を備えるプリントヘッド。
【請求項25】
前記複数の液滴吐出器が共通の基板を共有する、請求項24に記載のプリントヘッド。
【請求項26】
請求項24又は25に記載の1つ又は複数のプリントヘッドを備えるプリンタ。
【請求項27】
請求項1~20のいずれか一項に記載の液滴吐出器を作動させる方法であって、前記内
側アクチュエータ機構を作動させ且つ/又は前記外側アクチュエータ機構を作動させ、そ
れにより、前記ノズル形成層の前記ノズル部分の少なくとも一部の変位、及び結果として
前記流体チャンバから前記流体チャンバ出口を通る流体の吐出をもたらすステップを含む
方法。
【請求項28】
前記液滴吐出器が、内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構の両方を備え
、前記方法が、前記内側アクチュエータ機構及び前記外側アクチュエータ機構の両方を作
動させ、それにより、前記ノズル形成層の前記ノズル部分の少なくとも一部の変位、及び
結果として前記流体チャンバから前記流体チャンバ出口を通る流体の吐出をもたらすステ
ップを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記内側アクチュエータ機構を作動させる前記ステップ及び前記外側アクチュエータ機
構を作動させる前記ステップは、同時に行われる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記内側アクチュエータ機構を作動させるステップが、前記内側の駆動電極の対の間に
第1電位差を印加して、前記内側圧電体のたわみをもたらすことを含み、前記外側アクチ
ュエータ機構を作動させるステップが、前記外側の駆動電極の対の間に第2電位差を印加
して、前記外側圧電体のたわみをもたらすことを含む、請求項11に従属する請求項28
又は29に記載の方法。
【請求項31】
前記第1電位差及び前記第2電位差が、前記内側圧電体及び前記外側圧電体が反対方向
にたわむように、反対の極性を有する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記第1電位差及び前記第2電位差が同時に印加される、請求項30又は31に記載の
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリントヘッド用の液滴吐出器と、液滴吐出器を備えるプリントヘッドと、
液滴吐出器を備えるプリントヘッドを備えるプリンタと、プリントヘッドのために液滴吐
出器を作動させる方法とに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、印刷媒体(紙等)の上にインクの液滴を押し出すことによ
り、媒体上にデジタル画像を再現するために使用される。多くのインクジェットプリンタ
は、プリントヘッドのインクジェットノズルからの個々のインク液滴の一連の吐出が制御
される、「ドロップオンデマンド」技術を組み込んでいる。インク液滴は、媒体に付着す
るのに十分な運動量で吐出される。各液滴は、印加される駆動信号に従って吐出され、こ
れにより、ドロップオンデマンド型インクジェットプリンタが、インク液滴の連続した流
れが微細ノズルを通してインクを圧送することによって生成されるコンティニュアス型イ
ンクジェット装置から差異化される。
【0003】
最も商業的に成功した2つのドロップオンデマンド技術は、サーマルインクジェットプ
リンタ及びピエゾ(圧電)インクジェットプリンタである。サーマルインクジェットプリ
ンタでは、印刷流体が、水等の揮発成分を含む必要がある。加熱素子が、プリントヘッド
内で揮発性流体内に気泡の自発核生成をもたらし、流体の液滴が強制的にノズルを通して
吐出される。ピエゾインクジェットプリンタは、代わりに、流体チャンバの壁内に圧電ア
クチュエータを組み込んでいる。圧電素子の変形により圧電アクチュエータがたわみ、そ
れにより、流体チャンバ内に貯蔵された印刷流体に圧力変化が誘起され、それによりノズ
ルを通して液滴が吐出される。
【0004】
サーマルインクジェットプリンタは、非常に少量の印刷流体を噴射するためにしか使用
することができない(流体が適切な揮発性を呈していなければならないためである)。サ
ーマルインクジェットプリンタにはまた、乾燥したインク残留物が加熱素子の上に堆積す
るコゲーション(kogation)が起こることがあり、これにより、プリンタの使用
可能な寿命が短くなる。
【0005】
ピエゾインクジェットプリンタは、広範囲の流体で使用可能であり、コゲーションが起
こらないため、サーマルインクジェットプリンタより長い動作寿命を有する。しかしなが
ら、サーマルインクジェットプリントヘッドと比較して、既存の圧電技術では、通常、プ
リントヘッドごとに非常に少ないノズル数しか達成可能ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の態様は、より多くのノズル数を達成することができるプリントヘッド用の改善
された圧電液滴吐出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、プリントヘッド用の液滴吐出器を提供する。液滴吐出器は、取付
面及び反対側のノズル面を有する基板と、基板のノズル面の少なくとも一部の上に形成さ
れたノズル形成層と、少なくとも一部は基板により且つ少なくとも一部はノズル形成層に
より画定された流体チャンバとを備える。流体チャンバは、少なくとも一部は前記ノズル
形成層のノズル部分によって画定された流体チャンバ出口を有する。
【0008】
ノズル形成層のノズル部分は、典型的には、流体チャンバから流体チャンバ出口を通し
て流体を吐出するダイヤフラムとして機能する(たとえば、そうしたダイヤフラムを形成
するか又はそうしたダイヤフラムである)。ダイヤフラムは、典型的には、可動である。
ダイヤフラムは、典型的には、可撓性がある。ダイヤフラムが流体チャンバに向かって(
すなわち、流体チャンバ内に)移動する(たとえば、撓曲する)ことにより、典型的には
、流体チャンバ出口を通して流体が排出される。
【0009】
液滴吐出器は、典型的には、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の
少なくとも一部の上に形成された少なくとも1つのアクチュエータ機構(たとえば、1つ
又は複数のアクチュエータ)をさらに備える。少なくとも1つのアクチュエータ機構(た
とえば、1つ又は複数のアクチュエータ)は、典型的には、作動時にノズル形成層のノズ
ル部分(たとえば、ダイヤフラム)を移動させるか又は撓曲させるように構成され(たと
えば、位置決めされ)ている(すなわち、使用時にそのように移動させるか又は撓曲させ
る)。
【0010】
少なくとも1つのアクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数のアクチュエータ)は
、内側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の内側アクチュエータ)を備え(た
とえば、内側アクチュエータ機構から構成され)得る。内側アクチュエータ機構(たとえ
ば、1つ又は複数の内側アクチュエータ)は、典型的には、流体チャンバ出口に隣接して
ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の少なくとも一部の上に形成され
たアクチュエータ機構である。すなわち、内側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は
複数の内側アクチュエータ)は、典型的には、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダ
イヤフラム)の周縁部(たとえば、外周部)より流体チャンバ出口に近接するノズル形成
層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の少なくとも一部の上に形成されたアクチュ
エータ機構である。
【0011】
少なくとも1つのアクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数のアクチュエータ)は
、外側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の外側アクチュエータ)を備え(た
とえば、外側アクチュエータ機構から構成され)得る。外側アクチュエータ機構(たとえ
ば、1つ又は複数の外側アクチュエータ)は、典型的には、ノズル形成層のノズル部分(
たとえば、ダイヤフラム)の周縁部(たとえば、外周部)に隣接してノズル形成層のノズ
ル部分(たとえば、ダイヤフラム)の少なくとも一部の上に形成されたアクチュエータ機
構である。すなわち、外側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の外側アクチュ
エータ)は、典型的には、流体チャンバ出口よりノズル形成層のノズル部分(たとえば、
ダイヤフラム)の周縁部(たとえば、外周部)に近接するノズル形成層のノズル部分(た
とえば、ダイヤフラム)の少なくとも一部の上に形成されたアクチュエータ機構である。
【0012】
液滴吐出器は、内側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の内側アクチュエー
タ)及び外側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の外側アクチュエータ)の両
方を備える場合がある。別法として、液滴吐出器は、内側アクチュエータ機構(たとえば
、1つ又は複数の内側アクチュエータ)又は外側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又
は複数の外側アクチュエータ)を備えるが、両方は備えていない場合がある。すなわち、
内側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の内側アクチュエータ)の存在は、必
ずしも外側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の外側アクチュエータ)の存在
を意味するものではなく、その逆も同様であり、外側アクチュエータ機構(たとえば、1
つ又は複数の外側アクチュエータ)の存在は、必ずしも内側アクチュエータ機構(たとえ
ば、1つ又は複数の内側アクチュエータ)の存在を意味するものではない。
【0013】
ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)は、典型的には、内側部分及び
外側部分を備える(たとえば、それらから構成される)。
【0014】
ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分は、典型的には、ノ
ズル部分の、流体チャンバ出口に隣接して位置する部分である。ノズル形成層のノズル部
分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分は、典型的には、ノズル部分の、ノズル形成層
のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の周縁部(たとえば、外周部)より流体チャン
バ出口に近接して位置する部分である。ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフ
ラム)の内側部分は、ノズル部分の、流体チャンバ出口に当接する(すなわち、流体チャ
ンバ出口まで延在する)部分であり得る。ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤ
フラム)の内側部分は、ノズル部分の、流体チャンバ出口を少なくとも部分的に包囲する
部分であり得る。ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分は、
ノズル部分の、流体チャンバ出口を完全に包囲する部分であり得る。ノズル形成層のノズ
ル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分は、ノズル部分の、流体チャンバ出口を含
む部分であり得る(すなわち、流体チャンバ出口は、ノズル形成層のノズル部分(たとえ
ば、ダイヤフラム)の内側部分を通って延在することができる)。
【0015】
ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の外側部分は、典型的には、ノ
ズル部分の、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の周縁部(たとえば
、外周部)に隣接して設けられた部分である。ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダ
イヤフラム)の外側部分は、典型的には、ノズル部分の、流体チャンバ出口よりノズル形
成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の周縁部(たとえば、外周部)に近接して
設けられた部分である。ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の外側部
分は、ノズル部分の、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分
に当接する(すなわち、内側部分まで延在する)部分であり得る。ノズル形成層のノズル
部分(たとえば、ダイヤフラム)の外側部分は、典型的には、ノズル部分の、少なくとも
部分的にノズル形成層の前記ノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分の周囲に
設けられた部分である。ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の外側部
分は、ノズル部分の、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分
を少なくとも部分的に包囲する部分であり得る。ノズル形成層のノズル部分(たとえば、
ダイヤフラム)の外側部分は、ノズル部分の、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダ
イヤフラム)の内側部分を完全に包囲する部分であり得る。ノズル形成層のノズル部分(
たとえば、ダイヤフラム)の外側部分は、ノズル部分の、ノズル形成層のノズル部分(た
とえば、ダイヤフラム)の周縁部(たとえば、外周部)に当接する(すなわち、周縁部ま
で延在する)部分であり得る。ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の
外側部分は、ノズル部分の、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内
側部分とノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の周縁部(たとえば、外
周部)との間に延在する部分であり得る。
【0016】
ノズル形成層のノズル部分の内側部分は、典型的には、ノズル形成層の、作動時に湾曲
する部分である。ノズル形成層のノズル部分の外側部分は、典型的には、ノズル形成層の
、作動時に湾曲する部分である。前記外側部分及び内側部分は、典型的には、作動時に湾
曲するとき、反対方向に湾曲する(すなわち、反対方向に面する)。したがって、1つの
方向から(たとえば、流体チャンバの外側の箇所から)見た場合、作動時、内側部分及び
外側部分の一方は、典型的には内側に湾曲して見え、内側部分及び外側部分の他方は、典
型的には外側に湾曲して見える。
【0017】
少なくとも1つのアクチュエータ機構(たとえば、少なくとも1つの内側及び/又は外
側アクチュエータ機構)とノズル形成層のノズル部分とは、ノズル部分の内側部分が第1
向き(sense)に湾曲し、ノズル部分の外側部分が前記第1向きとは反対の第2向き
に湾曲するように構成されている(すなわち、起動時にそのように湾曲する)場合がある
【0018】
ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分及び外側部分は、合
わせて、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)全体を形成することがで
きる。
【0019】
内側部分はノズル部分の内側半体であり、外側部分はノズル部分の外側半体である場合
がある。内側部分と外側部分との間の境界部は、流体チャンバ出口とノズル部分の外縁部
との間の距離の約50%、流体チャンバ出口の周囲に延在することができる。
【0020】
内側部分は、ノズル部分の表面積の約50%を含む場合がある。外側部分は、ノズル部
分の表面積の約50%を含む場合がある。内側部分は、ノズル部分の表面積の約50%未
満を含み、外側部分は、ノズル部分の表面積の50%を超える部分を含む(内側部分及び
外側部分の面積は合わせて、典型的には、ノズル部分の全表面積を構成する)場合がある
。内側部分は、ノズル部分の表面積の約25%を含み、外側部分は、ノズル部分の表面積
の約75%を含む(内側部分及び外側部分の面積は合わせて、典型的には、ノズル部分の
全表面積を構成する)場合がある。
【0021】
ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分及び外側部分は、同
軸上に配置され得る。ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分
及び外側部分は、同心円状に配置され得る。ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイ
ヤフラム)の内側部分及び外側部分は、幾何学的に互いに同様であり得る。ノズル形成層
のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分及び外側部分は、各々、ノズル形成
層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)と幾何学的に同様であり得る。ノズル形成層
のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分及び外側部分は、流体チャンバ出口
の周囲に同軸上に(たとえば、同心円状に)配置され得る。
【0022】
ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分及び外側部分は、各
々、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の(前記ノズル形成層(たと
えば、ダイヤフラム)の平面においてノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラ
ム)の主軸に沿った断面で測定される)幅の約50%に沿って延在している場合がある。
たとえば、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)は実質的に円形(たと
えば、環状)であり、ノズル形成層(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分及び外側部分
の各々は、実質的に環状であり且つ同心円状に配置され、外側部分は内側部分の周囲に延
在し、内側部分は、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の外側半径の
約50%の外側半径を有し、外側部分は、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤ
フラム)の外側半径の約50%の内側半径と、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダ
イヤフラム)の外側半径におよそ等しい外側半径とを有する場合がある。
【0023】
内側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の内側アクチュエータ)は、存在す
る場合、典型的には、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分
に形成されたアクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数のアクチュエータ)である。
外側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の外側アクチュエータ)は、存在する
場合、典型的には、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の外側部分に
形成されたアクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数のアクチュエータ)である。
【0024】
液滴吐出器は、内側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の内側アクチュエー
タ)のみを備え、液滴吐出器は、外側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の外
側アクチュエータ)を備えていない場合がある。すなわち、液滴吐出器は、ノズル形成層
のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分に形成された少なくとも1つのアク
チュエータ機構(たとえば、少なくとも1つのアクチュエータ)を備え、液滴吐出器は、
ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の外側部分に形成されたいかなる
アクチュエータ機構(たとえば、アクチュエータ)も備えていない場合がある。
【0025】
別法として、液滴吐出器は、外側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の外側
アクチュエータ)のみを備え、液滴吐出器は、内側アクチュエータ機構(たとえば、1つ
又は複数の内側アクチュエータ)を備えていない場合がある。すなわち、液滴吐出器は、
ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の外側部分に形成された少なくと
も1つのアクチュエータ機構(たとえば、少なくとも1つのアクチュエータ)を備え、液
滴吐出器は、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の内側部分に形成さ
れたいかなるアクチュエータ機構(たとえば、アクチュエータ)も備えていない場合があ
る。
【0026】
内側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の内側アクチュエータ)は、作動時
に変形するノズル形成層のノズル部分の50%未満、又はより典型的には40%未満、又
はより典型的には30%未満に形成されている場合がある。
【0027】
外側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の外側アクチュエータ)は、作動時
に変形するノズル形成層のノズル部分の50%未満、又はより典型的には40%未満、又
はより典型的には30%未満に形成されている場合がある。
【0028】
本発明者は、意外なことに、内側アクチュエータ機構のみ又は外側アクチュエータ機構
のみを設けることにより、ノズル形成層のノズル部分の大部分(たとえば、すべて)にわ
たって(すなわち、ノズル形成層の前記ノズル部分の内側部分及び外側部分の両方にオー
バーラップする)単一のアクチュエータが設けられている既知の液滴吐出器と比較して、
液滴吐出効率を向上させることができることが分かった。
【0029】
たとえば、液滴吐出器が内側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の内側アク
チュエータ)のみを備える実施形態では、液滴吐出器は、典型的には、使用時、第1方向
(たとえば、第1向き)におけるノズル形成層のノズル部分の内側部分の直接的なたわみ
を駆動する前記内側アクチュエータ機構の作動によって機能する。ノズル形成層のノズル
部分は、典型的にはその周縁部(すなわち、外周部)において位置が固定されているため
、第1方向(たとえば、第1向き)におけるノズル形成層のノズル部分の内側部分のたわ
みにより、典型的には、第1方向とは反対側の第2方向(たとえば、第2向き)における
ノズル形成層のノズル部分の外側部分の補償的なたわみがもたらされる。流体チャンバに
向かう(すなわち、流体チャンバ内への)ノズル形成層のノズル部分のたわみにより、典
型的には、流体チャンバから流体チャンバ出口を通って印刷流体が吐出される。アクチュ
エータ機構が内側部分にのみ設けられているため、作動時、ノズル部分は、本技術分野に
おいて既知であるようにノズル形成層のノズル部分の大部分(たとえば、すべて)にわた
って単一のアクチュエータ機構が設けられている場合に達成されるより、大きい体積のた
わみで(たとえば、より複雑な形状を形成することにより)変形する。特に、本発明者は
、ノズル部分を、同様の材料を用いて既存の液滴吐出器で可能であるよりはるかに大きい
吐出力を及ぼすことができるようにする形状(及び特にS字状断面を有する形状)に変形
させることができることが分かった。この吐出力の増大により、アクチュエータのより効
率的な構成(並びに、たとえば、インクジェットプリンタで通常使用されているものより
個々により出力の小さいアクチュエータの使用、及び、圧電液滴吐出器の場合、異なる圧
電材料の使用)が可能になる。
【0030】
同様に、液滴吐出器が外側アクチュエータ機構(たとえば、1つ又は複数の外側アクチ
ュエータ)のみを備える実施形態では、幾何学的制約により、外側アクチュエータ機構の
作動時、ノズル形成層のノズル部分が(既存の装置を使用して可能であるより)より大き
い体積のたわみで(たとえば、より複雑な形状を形成することにより)変形することが確
実になる。
【0031】
代替実施形態では、液滴吐出器は、少なくとも1つの内側アクチュエータ機構(たとえ
ば、1つ又は複数の内側アクチュエータ)と少なくとも1つの外側アクチュエータ機構(
たとえば、1つ又は複数の外側アクチュエータ)とを備える場合がある。すなわち、液滴
吐出器は、ノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の少なくとも一部(た
とえば、内側部分)に形成された少なくとも1つの(すなわち、内側)アクチュエータ機
構(たとえば、1つ又は複数のアクチュエータ)と、内側アクチュエータ機構を少なくと
も部分的に包囲するノズル形成層のノズル部分(たとえば、ダイヤフラム)の少なくとも
一部(たとえば、外側部分)に形成された少なくとも1つの(すなわち、外側)アクチュ
エータ機構(たとえば、1つ又は複数のアクチュエータ)とを備える場合がある。
【0032】
内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構の両方を備える実施形態では、内
側アクチュエータ機構の作動により、典型的には、第1方向(たとえば、第1向き)にお
いてノズル形成層のノズル部分の内側部分がたわみ、外側アクチュエータ機構の作動によ
り、典型的には、典型的には前記第1方向(たとえば、第1向き)とは反対の第2方向(
たとえば、第2向き)においてノズル形成層のノズル部分の外側部分がたわむ。ノズル形
成層のノズル部分の内側部分及び外側部分の両方のたわみにより、典型的には、流体チャ
ンバから流体チャンバ出口を通って印刷流体が吐出される。液滴吐出器が内側アクチュエ
ータ機構及び外側アクチュエータ機構の両方を備えるため、ノズル形成層のノズル部分の
内側部分及び外側部分の両方のたわみを(たとえば、同じ時点で)駆動することができる
。この場合もまた、ノズル形成層のノズル部分に単一のアクチュエータ機構(及び、特に
、ノズル形成層のノズル部分の大部分にわたって延在する、たとえば前記ノズル部分の内
側部分及び外側部分の両方にオーバーラップする、単一のアクチュエータ機構)のみが設
けられている場合に達成可能であるより、大きい体積のたわみで(たとえば、より複雑な
形状を形成することにより)、ノズル部分を変形させることができる。特に、本発明者は
、内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構の同時作動を用いて、ノズル部分
を、印刷流体により大きい吐出力を及ぼすことができるようにする形状に変形させること
ができることが分かった。この場合もまた、これにより、アクチュエータのより効率的な
構成(並びに、たとえば、インクジェットプリンタで通常使用されているものより個々に
より出力の小さいアクチュエータの使用)が可能になる。
【0033】
液滴吐出器は、基板と一体化された少なくとも1つの電子部品を備える場合がある。少
なくとも1つの電子部品は、少なくとも1つの能動電子部品(たとえば、トランジスタ)
を含むことができる。さらに又は別法として、少なくとも1つの電子部品は、少なくとも
1つの受動電子部品(たとえば、抵抗器)を含むことができる。少なくとも1つの電子部
品は、基板と一体化された少なくとも1つのCMOS(すなわち、相補型金属酸化膜半導
体)電子部品を含むことができる。
【0034】
内側アクチュエータ機構を備える(すなわち、外側アクチュエータ機構の存在又は欠如
を問わない)実施形態では、内側アクチュエータ機構は、典型的には、流体チャンバ出口
を少なくとも部分的に包囲している。すなわち、内側アクチュエータ機構は、典型的には
、流体チャンバ出口を少なくとも部分的に包囲するノズル形成層のノズル部分の内側部分
に形成されている。内側アクチュエータ機構は流体チャンバ出口を包囲している場合があ
る。内側アクチュエータ機構は流体チャンバ出口を完全に包囲している場合がある。内側
アクチュエータ機構は、流体チャンバ出口の周囲に連続的に延在している場合がある。
【0035】
内側アクチュエータ機構は単一の内側アクチュエータから構成されている場合がある。
【0036】
内側アクチュエータ機構は2つ以上の内側アクチュエータを備え、それらの各々が流体
チャンバ出口を部分的に包囲している場合がある。2つ以上の内側アクチュエータは、典
型的には、互いに間隔を空けて配置されている。2つ以上の内側アクチュエータは、典型
的には、流体チャンバ出口の周囲に互いに間隔を空けて配置されている(すなわち、互い
に半径方向に間隔を空けて配置されるのではない)。したがって、内側アクチュエータ機
構は、流体チャンバ出口の周囲に不連続に延在している場合がある。
【0037】
内側アクチュエータ機構は実質的に環状(すなわち、リング形状)である場合がある。
内側アクチュエータ機構は、流体チャンバ出口を中心としている場合がある。内側アクチ
ュエータ機構は、2つ以上の実質的に環状の内側アクチュエータを備える場合がある。内
側アクチュエータ機構は、2つ以上の内側アクチュエータを備え、その各々は形状が部分
的に環状である(すなわち、各々は、環状体の一部(たとえば、セクタ)(すなわち、リ
ングの一部)を形成するような形状である)場合がある。2つ以上の部分的に環状の内側
アクチュエータは、流体チャンバ出口を中心としている(すなわち、流体チャンバ出口の
周囲に対称に配置されている)場合がある。
【0038】
実質的に環状のアクチュエータ機構が流体チャンバ出口を中心としている液滴吐出器を
提供することにより、ノズル形成層のノズル部分のたわみは、典型的には、流体チャンバ
出口の周囲で均一(すなわち、対称)であり、それにより、流体チャンバ出口からの液滴
の排出が平滑になる。
【0039】
内側アクチュエータ機構は、圧電アクチュエータ機構、たとえば内側圧電アクチュエー
タ機構である場合がある。
【0040】
内側アクチュエータ機構(すなわち、内側圧電アクチュエータ機構)は、1つ又は複数
の内側圧電アクチュエータを備える場合がある。
【0041】
1つ又は複数の内側圧電アクチュエータのうちの少なくとも1つは、典型的には、駆動
電極の対(すなわち、内側の駆動電極の対)の間に設けられた圧電体(すなわち、内側圧
電体)を備える。
【0042】
1つ又は複数の内側圧電アクチュエータの各々は、対応する駆動電極の対の間に設けら
れた圧電体(すなわち、対応する内側の駆動電極の対の間に設けられた内側圧電体)を備
える場合がある。
【0043】
内側圧電アクチュエータ機構は、実質的に環状(すなわち、リング形状)である場合が
ある。内側圧電アクチュエータ機構は、流体チャンバ出口を中心としている場合がある。
【0044】
内側アクチュエータ機構は単一の内側圧電アクチュエータから構成される場合がある。
単一の内側圧電アクチュエータは実質的に環状である場合がある。単一の圧電アクチュエ
ータは流体チャンバ出口を中心としている場合がある。
【0045】
内側アクチュエータ機構は、2つ以上の内側圧電アクチュエータを備える場合がある。
内側アクチュエータ機構は、2つ以上の実質的に環状の内側圧電アクチュエータを備える
場合がある。内側アクチュエータ機構は、2つ以上の内側圧電アクチュエータを備え、そ
の各々は形状が部分的に環状である(すなわち、各々は、環状体の一部(たとえば、セク
タ)(すなわち、リングの一部)を形成するような形状である)場合がある。2つ以上の
部分的に環状の内側圧電アクチュエータは、流体チャンバ出口を中心としている(すなわ
ち、流体チャンバ出口の周囲に対称に配置されている)場合がある。
【0046】
内側圧電アクチュエータは、同じ連続した内側圧電体のいくつかの部分から形成されて
いる場合がある。しかしながら、内側圧電アクチュエータの各々は、典型的には、それ自
体のそれぞれの内側駆動電極の対を備える。
【0047】
内側圧電体は、ノズル形成層のノズル部分の外側部分内には延在していない場合がある
【0048】
ノズル形成層のノズル部分は内側部分及び外側部分を備え、内側圧電アクチュエータ機
構は内側部分に形成され、外側部分はその上に圧電アクチュエータ機構が形成されておら
ず、内側圧電アクチュエータ機構の作動により、前記内側圧電アクチュエータ機構によっ
て前記内側部分に直接加えられる力により、内側部分が第1向き(すなわち、第1方向)
において変形し、外側部分は、内側部分に接続され且つ前記外側部分の周縁部の周囲で保
持されていることにより、反対の第2向き(すなわち、反対の第2方向)において変形す
る場合がある。
【0049】
内側圧電アクチュエータ機構は、典型的には、動作中に(すなわち、前記内側圧電アク
チュエータ機構の作動時に)変形するノズル部分の表面積の50%未満、又はより典型的
には40%未満、又はより典型的には30%未満に形成されている。
【0050】
内側の駆動電極の対は、駆動回路に電気的に接続されている場合がある。駆動回路は、
典型的には、内側の駆動電極の対の間に電位差を選択的に印加して(すなわち、作動した
とき(たとえば、使用時に、電源(たとえば、電圧信号ライン)に接続され且つ作動信号
に応答したとき))、内側圧電体をたわませるように構成されている。
【0051】
内側の駆動電極の対のうちの1つ又は複数の電極は、基板と一体化された少なくとも1
つ電子部品に電気的に接続されている場合がある。
【0052】
外側アクチュエータ機構を備える(すなわち、内側アクチュエータ機構の存在又は欠如
を問わない)実施形態では、外側アクチュエータ機構は、典型的には、流体チャンバ出口
を少なくとも部分的に包囲している。すなわち、外側アクチュエータ機構は、典型的には
、流体チャンバ出口を少なくとも部分的に包囲しているノズル形成層のノズル部分の外側
部分に形成されている。
【0053】
外側アクチュエータ機構は流体チャンバ出口を包囲している場合がある。外側アクチュ
エータ機構は流体チャンバ出口を完全に包囲している場合がある。外側アクチュエータ機
構は、流体チャンバ出口の周囲に連続的に延在している場合がある。
【0054】
外側アクチュエータ機構は単一の外側アクチュエータから構成されている場合がある。
【0055】
外側アクチュエータ機構は2つ以上の外側アクチュエータを備え、それらの各々が流体
チャンバ出口を部分的に包囲している場合がある。2つ以上の外側アクチュエータは、典
型的には、流体チャンバ出口の周囲で互いに間隔を空けて配置されている(すなわち、半
径方向に間隔を空けて配置されるのではない)。したがって、外側アクチュエータ機構は
、流体チャンバ出口の周囲に不連続に延在している場合がある。
【0056】
外側アクチュエータ機構は実質的に環状(すなわち、リング形状)である場合がある。
外側アクチュエータ機構は、流体チャンバ出口を中心としている場合がある。外側アクチ
ュエータ機構は、2つ以上の実質的に環状の外側アクチュエータを備える場合がある。外
側アクチュエータ機構は、2つ以上の外側アクチュエータを備え、その各々は形状が部分
的に環状である(すなわち、各々は、環状体の一部(たとえば、セクタ)(すなわち、リ
ングの一部)を形成するような形状である)場合がある。2つ以上の部分的に環状の外側
アクチュエータは、流体チャンバ出口を中心としている(すなわち、流体チャンバ出口の
周囲に対称に配置されている)場合がある。
【0057】
実質的に環状のアクチュエータ機構が流体チャンバ出口を中心としている液滴吐出器を
提供することにより、ノズル形成層のノズル部分のたわみは、典型的には、流体チャンバ
出口の周囲で均一(すなわち、対称)であり、それにより、流体チャンバ出口からの液滴
の排出が平滑になる。
【0058】
外側アクチュエータ機構は、圧電アクチュエータ機構、たとえば外側圧電アクチュエー
タ機構である場合がある。
【0059】
外側アクチュエータ機構(すなわち、外側圧電アクチュエータ機構)は、1つ又は複数
の外側圧電アクチュエータを備える場合がある。
【0060】
1つ又は複数の外側圧電アクチュエータのうちの少なくとも1つは、典型的には、駆動
電極の対(すなわち、外側の駆動電極の対)の間に設けられた圧電体(すなわち、外側圧
電体)を備える。
【0061】
1つ又は複数の外側圧電アクチュエータの各々は、対応する駆動電極の対の間に設けら
れた圧電体(すなわち、対応する外側の駆動電極の対の間に設けられた外側圧電体)を備
える場合がある。
【0062】
外側圧電アクチュエータ機構は、実質的に環状(すなわち、リング形状)である場合が
ある。外側圧電アクチュエータ機構は、流体チャンバ出口を中心としている場合がある。
【0063】
外側アクチュエータ機構は単一の外側圧電アクチュエータから構成されている場合があ
る。単一の外側圧電アクチュエータは実質的に環状である場合がある。単一の外側圧電ア
クチュエータは流体チャンバ出口を中心としている場合がある。
【0064】
外側アクチュエータ機構は、2つ以上の外側圧電アクチュエータを備える場合がある。
外側アクチュエータ機構は、2つ以上の実質的に環状の外側圧電アクチュエータを備える
場合がある。外側アクチュエータ機構は、2つ以上の外側圧電アクチュエータを備え、そ
の各々は形状が部分的に環状である(すなわち、各々は、環状体の一部(たとえば、セク
タ)(すなわち、リングの一部)を形成するような形状である)場合がある。2つ以上の
部分的に環状の外側圧電アクチュエータは、流体チャンバ出口を中心としている(すなわ
ち、流体チャンバ出口の周囲に対称に配置されている)場合がある。
【0065】
外側圧電アクチュエータは、同じ連続した外側圧電体のいくつかの部分から形成されて
いる場合がある。しかしながら、外側圧電アクチュエータの各々は、典型的には、それ自
体のそれぞれの外側駆動電極を備える。
【0066】
外側圧電体は、ノズル形成層のノズル部分の内側部分内には延在していない場合がある
【0067】
ノズル形成層のノズル部分は外側部分及び内側部分を備え、外側圧電アクチュエータ機
構は外側部分に形成され、内側部分はその上に圧電アクチュエータ機構が形成されておら
ず、外側圧電アクチュエータ機構の作動により、前記外側圧電アクチュエータ機構によっ
て前記外側部分に直接加えられる力により、外側部分が第1向き(すなわち、第1方向)
において変形し、内側部分は、外側部分に接続され且つ外側部分内に保持されていること
により、反対の第2向き(すなわち、反対の第2方向)において変形する場合がある。
【0068】
外側圧電アクチュエータ機構は、典型的には、動作中に(すなわち、前記外側圧電アク
チュエータ機構の作動時に)変形するノズル部分の表面積の50%未満、又はより典型的
には40%未満、又はより典型的には30%未満に形成されている。
【0069】
外側の駆動電極の対は、駆動回路(たとえば、存在する場合は、内側の駆動電極の対が
接続されている駆動回路)に電気的に接続されている場合がある。駆動回路は、典型的に
は、外側の駆動電極の対の間に電位差を選択的に印加して(すなわち、作動したとき(た
とえば、使用時に、電源(たとえば、電圧信号ライン)に接続され且つ作動信号に応答し
たとき))、外側圧電体をたわませるように構成されている。
【0070】
外側の駆動電極の対のうちの1つ又は複数の電極は、基板と一体化された少なくとも1
つ電子部品に電気的に接続される場合がある。
【0071】
内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構の両方を備える実施形態では、外
側アクチュエータ機構は、典型的には、内側アクチュエータ機構を少なくとも部分的に包
囲している。すなわち、外側アクチュエータ機構は、典型的には、ノズル形成層のノズル
部分の内側部分に形成された内側アクチュエータ機構を少なくとも部分的に包囲している
ノズル形成層のノズル部分の外側部分に形成されている。
【0072】
外側アクチュエータ機構は、内側アクチュエータ機構を包囲している場合がある。外側
アクチュエータ機構は、内側アクチュエータ機構を完全に包囲している場合がある。外側
アクチュエータ機構は、内側アクチュエータ機構の周囲に連続的に延在している場合があ
る。
【0073】
外側アクチュエータ機構は2つ以上の外側アクチュエータを備え、それらの各々が内側
アクチュエータ機構を部分的に包囲している場合がある。2つ以上の外側アクチュエータ
は、典型的には、内側アクチュエータ機構の周囲で互いに間隔を空けて配置されている。
したがって、外側アクチュエータ機構は、内側アクチュエータ機構の周囲に不連続に延在
している場合がある。
【0074】
内側アクチュエータ機構は、典型的には、流体チャンバ出口に(たとえば、流体チャン
バ出口の周縁部に)より近接して(すなわち、外側アクチュエータ機構より近接して)設
けられ、外側アクチュエータ機構は、典型的には、流体チャンバ出口から(たとえば、流
体チャンバ出口の周縁部から)より離れて(すなわち、内側アクチュエータ機構より離れ
て)設けられている。
【0075】
外側アクチュエータ機構は、典型的には、内側アクチュエータ機構から間隔を空けて(
すなわち、半径方向に)配置されている。
【0076】
内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構の両方が、流体チャンバ出口を中
心としている場合がある。内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構は、同軸
上に配置されている場合がある。内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構は
、同心円状である場合がある。内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構の両
方が、流体チャンバ出口の周囲に対称に形成されている場合がある。内側アクチュエータ
機構及び外側アクチュエータ機構の両方が、同心円状に配置されている場合がある。
【0077】
実質的に環状のアクチュエータ機構が流体チャンバ出口を中心としている液滴吐出器を
提供することにより、ノズル形成層のノズル部分のたわみは、典型的には、流体チャンバ
出口の周囲で均一(すなわち、対称)であり、それにより、流体チャンバ出口からの液滴
の排出が平滑になる。
【0078】
内側アクチュエータ機構は、圧電アクチュエータ機構、たとえば内側圧電アクチュエー
タ機構であり、且つ/又は、外側アクチュエータ機構は、圧電アクチュエータ機構、たと
えば外側圧電アクチュエータ機構である場合がある。内側アクチュエータ機構を内側圧電
アクチュエータ機構と呼ぶことにより、外側アクチュエータ機構が必然的に圧電アクチュ
エータ機構(すなわち、外側圧電アクチュエータ機構)であるという意味はないことが理
解されよう。同様に、外側アクチュエータ機構を外側圧電アクチュエータ機構と呼ぶこと
により、内側アクチュエータ機構が必然的に圧電アクチュエータ機構(すなわち、内側圧
電アクチュエータ機構)であるという意味はないことが理解されよう。たとえば、内側ア
クチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構のうちの一方が圧電アクチュエータ機構(
すなわち、内側圧電アクチュエータ機構又は外側圧電アクチュエータ機構のいずれか)で
あり、内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構のうちの他方が非圧電アクチ
ュエータ機構(すなわち、外側非圧電アクチュエータ機構又は内側非圧電アクチュエータ
機構のいずれか)である場合がある。別法として、内側アクチュエータ機構及び外側アク
チュエータ機構の両方が圧電アクチュエータ機構(すなわち、内側圧電アクチュエータ機
構及び外側圧電アクチュエータ機構)である場合がある。
【0079】
内側アクチュエータ機構(たとえば、内側圧電アクチュエータ機構)は、1つ又は複数
の内側圧電アクチュエータを備え、外側アクチュエータ機構(たとえば、外側圧電アクチ
ュエータ機構)は、1つ又は複数の外側圧電アクチュエータを備える場合がある。典型的
には、1つ又は複数の外側圧電アクチュエータは、1つ又は複数の内側圧電アクチュエー
タを少なくとも部分的に包囲している。
【0080】
1つ又は複数の内側圧電アクチュエータの各々は、対応する駆動電極の対の間に設けら
れた圧電体(すなわち、対応する内側の駆動電極の対の間に設けられた内側圧電体)を備
える場合がある。1つ又は複数の外側圧電アクチュエータの各々は、対応する駆動電極の
対の間に設けられた圧電体(すなわち、対応する外側の駆動電極の対の間に設けられた外
側圧電体)を備える場合がある。しかしながら、内側アクチュエータ機構の圧電体を内側
圧電体と呼ぶことにより、外側アクチュエータ機構が必然的に外側圧電体を備えるという
意味はない(たとえば、外側アクチュエータ機構が非圧電性であり得る)ことが理解され
よう。同様に、外側アクチュエータ機構の圧電体を外側圧電体と呼ぶことにより、内側ア
クチュエータ機構が必然的に内側圧電体を備えるという意味はない(たとえば、内側アク
チュエータ機構が非圧電性であり得る)ことが理解されよう。
【0081】
内側圧電体及び外側圧電体の両方が、同じ連続した圧電体のいくつかの部分から形成さ
れている場合がある。別法として、内側圧電体及び外側圧電体は、別個の(すなわち、連
続していない)圧電体である場合がある。内側圧電体及び外側圧電体は互いに間隔を空け
て配置されている場合がある。
【0082】
内側の駆動電極の対及び外側の駆動電極の対の両方が駆動回路に電気的に接続されてい
る場合がある。駆動回路は、典型的には、内側の駆動電極の対の間に第1電位差を選択的
に印加して(すなわち、作動したとき(たとえば、使用時に、電源(たとえば、電圧信号
ライン)に接続され且つ作動信号に応答したとき))、第1方向において内側圧電体をた
わませ、且つ、外側の駆動電極の対の間に第2電位差を印加して、前記第1方向と反対の
第2方向において外側圧電体をたわませるように構成されている。
【0083】
駆動回路は、液滴吐出器が使用中であり且つ電源(たとえば、電圧信号ライン)に接続
されると、内側の駆動電極の対の間に第1電位差を印加して、第1向きにおいて内側圧電
体を湾曲させ、且つ、外側の駆動電極の対の間に第2電位差を印加して、前記第1向きと
反対の第2向きにおいて外側圧電体を湾曲させるように構成することができる。
【0084】
第1電位差及び第2電位差は、典型的には、同様の(たとえば、同じ)大きさを有する
。第1電位差及び第2電位差は、典型的には、反対の極性を有する。
【0085】
内側の駆動電極の対及び外側の駆動電極の対のうちの1つ又は複数の電極は、基板と一
体化された少なくとも1つの電子部品に電気的に接続されている場合がある。
【0086】
1つ若しくは複数の内側圧電体(存在する場合)及び/又は1つ若しくは複数の外側圧
電体(存在する場合)は、450℃未満の温度で処理可能な1種又は複数種の圧電材料を
含む(たとえば、そうした圧電材料から形成されている)場合がある。
【0087】
300℃を超えると、集積された電子部品(たとえば、CMOS電子部品)は、典型的
には、劣化し始め、デバイスの動作を損ない、効率を低下させる。450℃を超えると、
集積された電子部品(たとえば、CMOS電子部品)は、典型的には、さらにより実質的
に劣化する。したがって、450℃未満の温度で処理可能な圧電材料を使用することによ
り、前記電子部品に実質的な損傷を与えることなく圧電アクチュエータを処理し、(たと
えば、駆動回路の)電子部品と一体化することができる。
【0088】
1つ若しくは複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の外側圧電体は、300℃
未満の温度で処理可能な1種又は複数種の圧電材料を含む(たとえば、そうした圧電材料
から形成される)場合がある。300℃未満の温度で処理可能な圧電材料を使用すること
により、前記電子部品への損傷をさらに低減して圧電アクチュエータを処理し、(たとえ
ば、駆動回路の)電子部品と一体化することができる。300℃未満の温度で処理可能な
圧電材料を使用することにより、典型的には、単一の基板での(たとえば、単一の基板ウ
エハからの)複数の流体吐出器の大量生産から機能デバイスのより高い歩留まりを達成す
ることができる。
【0089】
圧電アクチュエータを電子部品(たとえば駆動電子装置)と一体化することにより、(
典型的には、既存のデバイスにおいては、任意の圧電プリントヘッドマイクロチップとは
別個に設けられる)別個の液滴吐出器駆動電子装置を設ける必要性が低減するか又はなく
なる。したがって、1つのチップ上で多数の液滴吐出器を近接して集積することができ、
それにより、チップ当たりのノズル数が増加し、プリントヘッドの全体的なサイズが低減
し、既存の圧電プリントヘッドで達成可能であるより高いプリントヘッドノズルの密度が
可能になる。単一のプリントヘッドチップ上での集積化に関連する他の利点としては、最
終的な製造コストの削減、プリンタシステムのコストの削減、モジュール化、デバイスの
信頼性、並びに冗長性及びスループットの改善等、プリンタシステムの改善が挙げられる
【0090】
450℃未満(又は300℃未満)で処理可能な圧電材料は、典型的には、より高い温
度での処理を必要とする圧電材料より不十分な圧電特性(たとえば、より低い圧電定数)
を有する。たとえば、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)等の高温処理可能な圧電材料から
形成された圧電アクチュエータは、窒化アルミニウム(AlN)等の低温処理可能な圧電
材料から形成された圧電アクチュエータより、他のすべての要素が等しい場合、一桁大き
い力を及ぼすことができる。
【0091】
しかしながら、本発明者は、内側圧電アクチュエータ機構及び/又は外側圧電アクチュ
エータ機構を設けることにより、(特に、既存の圧電液滴吐出器に見られるように、圧電
アクチュエータが流体チャンバ出口からより遠くに離れて流体チャンバの壁に設けられる
ことと比較した場合)、低温処理可能な圧電材料の使用が可能になるのに十分に、液滴吐
出器の液滴吐出効率を向上させることができることが分かった。低温処理可能な圧電材料
の使用を可能にするのは本発明における液滴吐出器の特定の構造であり、その構造自体に
より、駆動電子装置との液滴吐出器の一体化が可能になる。
【0092】
特に、内側の駆動電極の1つ又は複数の対の間の電界(すなわち、電位差)の印加によ
り、典型的には、1つ又は複数の内側圧電アクチュエータの変形が誘起され、外側の駆動
電極の1つ又は複数の対の間の電界(すなわち、電位差)の印加により、典型的には、1
つ又は複数の外側圧電アクチュエータの変形が誘起され、これらの各変形により、ノズル
形成層のノズル部分の非常に減衰した振動がもたらされる。ノズル形成層のノズル部分の
振動により、流体チャンバ内の振動圧力場がもたらされ、流体チャンバ出口を通る液滴の
吐出が駆動される。(流体チャンバ出口からより遠くに離れて設けられる流体チャンバの
壁を変位させるのではなく)ノズル形成層のノズル部分を変位させることにより、流体の
液滴の吐出のために必要な流体圧力が比較的小さくなり、したがって作動力が比較的小さ
くなり、それにより、より低い圧電定数を有する低温処理可能な圧電材料の使用が容易に
なる。
【0093】
低温処理可能な圧電材料を含む圧電アクチュエータが及ぼす力は(高温処理可能な圧電
材料を含む圧電アクチュエータを使用するデバイスと比較して)比較的小さいため、した
がって、達成される流体圧力が比較的小さいため、プリントヘッド上の隣接する流体チャ
ンバの間での(プリントヘッドを通って伝播する音波による)音響クロストークは低減す
る。圧力の低下により、流体圧縮率が低下し、音響クロストークの発生する可能性が低く
なる。音響クロストークのレベルの低下により、印刷品質が低下することなく、プリント
ヘッド上の隣接する液滴吐出器のさらに近接した集積化が可能になる。
【0094】
圧電材料の処理は、典型的には、前記圧電材料の堆積を含む。圧電材料の処理は、堆積
後に圧電材料のさらなる処理(すなわち、堆積した圧電材料の堆積後処理、又は「後処理
」)も含むことができる。圧電材料の処理は、圧電材料の(すなわち、堆積後の)焼きな
ましを含むことができる。
【0095】
450℃未満(又は300℃未満)の温度で処理可能な圧電材料は、典型的には、45
0℃未満(又は300℃未満)の温度で堆積可能な圧電材料である。450℃未満(又は
300℃未満)の温度で処理可能な圧電材料は、典型的には、450℃以上(又は300
℃以上)の温度でのいかなる堆積後処理(堆積後焼きなまし等)も必要としない。したが
って、450℃未満(又は300℃未満)の温度で処理可能な圧電材料は、典型的には、
450℃未満(又は300℃未満)の温度で(堆積の後に)焼きなまし可能な(すなわち
、圧電体を圧電性にするために圧電材料の焼きなましが必要である場合)圧電材料である
【0096】
1種又は複数種の圧電材料は、典型的には、圧電アクチュエータが450℃未満(又は
300℃未満)の温度で製造可能であるように、450℃未満(又は300℃未満)の温
度で処理可能(たとえば、堆積可能、及び必要な場合は焼きなまし可能)である。450
℃未満(又は300℃未満)の温度での圧電アクチュエータの製造により、典型的には、
基板と一体化された少なくとも1つの電子部品との圧電アクチュエータの一体化が可能に
なる。
【0097】
したがって、1つ若しくは複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の外側圧電体
は、典型的には、450℃未満(又は300℃未満)の温度で、(たとえば、1種又は複
数種の圧電材料の堆積、及び必要な場合は焼きなましによって)形成可能である。
【0098】
1種又は複数種の圧電材料は、典型的には、450℃未満(又は300℃未満)の基板
温度で処理可能(たとえば、堆積可能、及び必要な場合は焼きなまし可能)である。言い
換えれば、基板の温度は、典型的には、1種又は複数種の圧電材料の処理(たとえば、堆
積、及び必要な場合は焼きなまし)中に、450℃(又は300℃)に達することも超え
ることもない。基板の温度は、典型的には、圧電体の形成中に、450℃(又は300℃
)に達することも超えることもない。基板の温度は、典型的には、圧電アクチュエータの
製造中に、450℃(又は300℃)に達することも超えることもない。基板の温度は、
液滴吐出器(たとえば、液滴吐出器全体)の製造中に、450℃(又は300℃)に達す
ることも超えることもない場合がある。
【0099】
1つ若しくは複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の外側圧電体は、典型的に
は、1つ又は複数の(たとえば、低温)物理気相成長(PVD)法によって堆積可能であ
る(たとえば、堆積する)。1つ若しくは複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数
の外側圧電体は、典型的には、450℃未満(又は、より好ましくは300℃未満)の温
度で(すなわち、基板温度で)、1つ又は複数の(たとえば、低温)物理気相成長法によ
って堆積可能である(たとえば、堆積する)。
【0100】
1つ若しくは複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の外側圧電体は、1種又は
複数種の(たとえば、低温)PVD堆積可能な圧電材料を含む(たとえば、そうした材料
から形成される)場合がある。1つ若しくは複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複
数の外側圧電体は、1種又は複数種の(たとえば、低温)PVD堆積した圧電材料を含む
(たとえば、そうした材料から形成される)場合がある。
【0101】
物理気相成長法(たとえば、低温物理気相成長法)は、以下の堆積方法:陰極アーク蒸
着、電子ビーム物理気相成長、蒸発堆積、パルスレーザー堆積、スパッタ堆積のうちの1
つ又は複数を含むことができる。スパッタ堆積は、単一の又は複数のスパッタリングター
ゲットからの材料のスパッタリングを含むことができる。
【0102】
1種又は複数種の圧電材料は、典型的には、450℃未満(又は300℃未満)の堆積
温度を有する。1種又は複数種の圧電材料は、450℃未満(又は300℃未満)のPV
D堆積温度を有することができる。1種又は複数種の圧電材料は、450℃未満(又は3
00℃未満)のスパッタリング温度を有することができる。1種又は複数種の圧電材料は
、450℃未満(又は300℃未満)の堆積後焼きなまし温度を有することができる。堆
積温度、PVD堆積温度、スパッタリング温度又は焼きなまし温度は、典型的には、それ
ぞれのプロセス中の基板の温度であることが理解されよう。
【0103】
1つ若しくは複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の外側圧電体は、1種の圧
電材料を含み(たとえば、そうした材料から形成され)得る。別法として、1つ若しくは
複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の外側圧電体は、2種以上の圧電材料を含
み(たとえば、そうした材料から形成され)得る。
【0104】
1つ若しくは複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の外側圧電体は、アルミニ
ウム及び窒素、並びに、任意選択的に、スカンジウム、イットリウム、チタン、マグネシ
ウム、ハフニウム、ジルコニウム、スズ、クロム、ホウ素から選択された1種又は複数種
の元素を含むセラミック材料を含み(たとえば、そうした材料から形成され)得る。
【0105】
1つ若しくは複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の外側圧電体は、窒化アル
ミニウム(AlN)を含み(たとえば、窒化アルミニウム(AlN)から形成され)得る
【0106】
1つ若しくは複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の外側圧電体は、酸化亜鉛
(ZnO)を含み(たとえば、酸化亜鉛(ZnO)から形成され)得る。
【0107】
1種又は複数種の圧電材料は、窒化アルミニウム及び/又は酸化亜鉛を含み(たとえば
、窒化アルミニウム及び/又は酸化亜鉛から形成され)得る。
【0108】
窒化アルミニウムは、高純度窒化アルミニウムからなり得る。別法として、窒化アルミ
ニウムは、1種又は複数種の他の元素を含むことができる(すなわち、窒化アルミニウム
は、窒化アルミニウム化合物を含むことができる)。窒化アルミニウムは、以下の元素、
すなわち、スカンジウム、イットリウム、チタン、マグネシウム、ハフニウム、ジルコニ
ウム、スズ、クロム、ホウ素のうちの1種又は複数種を含むことができる。
【0109】
1つ若しくは複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の外側圧電体は、窒化スカ
ンジウムアルミニウム(ScAlN)を含み(たとえば、窒化スカンジウムアルミニウム
(ScAlN)から形成され)得る。窒化スカンジウムアルミニウムにおけるスカンジウ
ムのパーセンテージは、典型的には、製造性の限界内でd31圧電定数を最適化するように
選択される。たとえば、ScxAl1-xNにおけるxの値は、典型的には、0<x≦0.5
の範囲から選択される。スカンジウムの割合が大きくなると、典型的には、d31の値が大
きくなる(すなわち圧電効果が強くなる)。窒化スカンジウムアルミニウムにおけるスカ
ンジウムの質量パーセント(すなわち、重量パーセント)は、典型的には、5%より大き
い。窒化スカンジウムアルミニウムにおけるスカンジウムの質量パーセント(すなわち、
重量パーセント)は、典型的には、10%より大きい。窒化スカンジウムアルミニウムに
おけるスカンジウムの質量パーセント(すなわち、重量パーセント)は、典型的には、2
0%より大きい。窒化スカンジウムアルミニウムにおけるスカンジウムの質量パーセント
(すなわち、重量パーセント)は、典型的には、30%より大きい。窒化スカンジウムア
ルミニウムにおけるスカンジウムの質量パーセント(すなわち、重量パーセント)は、典
型的には、40%より大きい。窒化スカンジウムアルミニウムにおけるスカンジウムの質
量パーセント(すなわち、重量パーセント)は、50%以下であり得る。
【0110】
窒化アルミニウム化合物(及び、特に、窒化スカンジウムアルミニウム)を含む窒化ア
ルミニウム並びに酸化亜鉛は、450℃未満、又はより好ましくは300℃未満の温度で
堆積させることができる圧電材料である。窒化アルミニウム化合物(及び、特に、窒化ス
カンジウムアルミニウム)を含む窒化アルミニウム並びに酸化亜鉛は、450℃未満、又
はより好ましくは300℃未満の温度で、物理気相成長(たとえば、スパッタリング)に
よって堆積させることができる圧電材料である。窒化アルミニウム化合物(及び、特に、
窒化スカンジウムアルミニウム)を含む窒化アルミニウム並びに酸化亜鉛は、典型的には
堆積後の焼きなましを必要としない圧電材料である。
【0111】
1つ若しくは複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の外側圧電体は、450℃
未満、又はより好ましくは300℃未満の温度での物理気相成長によって堆積した窒化ア
ルミニウム(たとえば、窒化アルミニウム化合物、たとえば、窒化スカンジウムアルミニ
ウム)及び/又は酸化亜鉛を含み(たとえば、そうしたものから形成され)得る。
【0112】
1つ若しくは複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の外側圧電体は、1種又は
複数種のIII-V族及び/又はII-VI族半導体(すなわち、周期表のIII族及び
V族並びに/又はII族及びVI族からの元素を含む化合物半導体)を含み(たとえば、
それらから形成され)得る。こうしたIII-V族及びII-VI族半導体は、典型的に
は、六角ウルツ鉱結晶構造(hexagonal wurtzite crystal
structure)に結晶化する。六角ウルツ鉱結晶構造に結晶化したIII-V族及
びII-VI族半導体は、典型的には、それらの非中心対称性の結晶構造に起因して圧電
性である。
【0113】
1つ若しくは複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の外側圧電体は、非強誘電
性圧電材料を含み(たとえば、非強誘電性圧電材料から形成又は構成され)得る。1種又
は複数種の圧電材料は、1種又は複数種の非強誘電性圧電材料であり得る。強誘電性材料
は、典型的には、印加された強い電界の下で(すなわち、堆積後)極性調整を必要とする
。非強誘電性圧電材料は、典型的には、極性調整を必要としない。
【0114】
1つ若しくは複数の内側圧電体及び/又は1つ若しくは複数の外側圧電体は、典型的に
は30pC/N未満、又はより典型的には20pC/N未満、又はさらにより典型的には
10pC/N未満の大きさを有する圧電定数d31を有する。1種又は複数種の圧電材料は
、典型的には、30pC/N未満、又はより典型的には20pC/N未満、又はさらによ
り典型的には10pC/N未満の大きさを有する圧電定数d31を有する。
【0115】
1種又は複数種の圧電材料は、典型的には、CMOS適合性がある。これにより、1種
又は複数種の圧電材料は、典型的には、CMOS電子構造に損傷を与える物質を含まず、
又は、典型的には、そうした物質を使用することなく処理可能(たとえば、堆積可能、及
び必要な場合は焼きなまし可能)であることが理解されよう。たとえば、1種又は複数種
の圧電材料の処理(たとえば、堆積、及び必要な場合は焼きなまし)は、典型的には、(
塩酸等の)酸(たとえば、強酸)及び/又は(水酸化カリウム等の)アルカリ(たとえば
、強アルカリ)の使用を含まない。
【0116】
ノズル形成層は、ノズルプレートを備える場合がある。ノズルプレートは、材料の単一
の層から構成され得る。別法として、ノズルプレートは、(たとえば、異なる)材料の2
つ以上の層の積層構造から構成され得る。ノズルプレートは、典型的には、各々、70G
Pa~300GPaのヤング率(すなわち、引張弾性率)を有する1種又は複数種の材料
から形成される。ノズルプレートは、二酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(Si34)、
炭化珪素(SiC)、酸窒化珪素(SiOxy)のうちの1種又は複数種から形成され得
る。
【0117】
ノズル形成層は、電気相互接続層を備える場合がある。電気相互接続層は、典型的には
、典型的には電気絶縁体によって包囲された1つ又は複数の電気接続部(たとえば、電気
配線)を備える。1つ又は複数の電気接続部(たとえば、電気配線)は、典型的には、金
属又は金属合金から形成されている。適切な金属としては、アルミニウム、銅及びタング
ステン、並びにそれらの合金が挙げられる。電気絶縁体は、典型的には、二酸化珪素(S
iO2)、窒化珪素(Si34)又は酸窒化珪素(SiOxy)等の誘電材料から形成さ
れている。
【0118】
電気相互接続層は、基板とノズルプレートとの間に設けられている(たとえば、形成さ
れている)場合がある。電気相互接続層は、基板の第2面の上に設けられ(たとえば、形
成され)、ノズルプレートは、電気相互接続層の上に設けられている(たとえば、形成さ
れている)場合がある。ノズルプレートは、1つ又は複数のアパーチャを備えることがで
き、そこを通して、電気相互接続層への電気接続部を形成することができる。
【0119】
電気相互接続層のノズル部分は、ノズル形成層のノズル部分の少なくとも一部を形成し
ている場合がある。電気相互接続層のノズル部分は誘電材料から構成されている場合があ
る。別法として、電気相互接続層は、ノズル形成層のノズル部分の一部を形成していない
場合がある。
【0120】
内側の駆動電極の対及び外側の駆動電極の対は、典型的には、金属(チタン、白金、ア
ルミニウム、タングステン又はそれらの合金等)の1つ又は複数の層を備える。内側の駆
動電極の対及び外側の駆動電極の対は、積層することができる。たとえば、内側の駆動電
極の対及び外側の駆動電極の対は、アルミニウム-モリブデン(Al/Mb)積層スタッ
クから形成することができる。内側の駆動電極の対及び外側の駆動電極の対は、典型的に
は、450℃未満(又は、より典型的には、300℃未満)の温度で(すなわち、基板温
度で)、(たとえば、低温)PVDによって堆積する。
【0121】
内側の駆動電極の対及び外側の駆動電極の対のうちの1つ又は複数は、少なくとも1つ
の電子部品に電気的に接続されている場合がある。内側の駆動電極の対及び外側の駆動電
極の対の各々は、少なくとも1つの電子部品に電気的に接続されている場合がある。
【0122】
液滴吐出器は、駆動回路を備えることができる。別法として、駆動回路は、液滴吐出器
を備えるプリントヘッドの一部を形成することができる。駆動回路は、典型的には、内側
アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構を動作させるために必要な電位差を発生
させる。
【0123】
液滴吐出器は、制御回路を備えることができる。別法として、制御回路は、液滴吐出器
を備えるプリントヘッドの一部を形成することができる。制御回路は、典型的には、駆動
回路を動作させるときを決定する。
【0124】
液滴吐出器が駆動回路を備える実施形態では、前記駆動回路は、典型的には、基板と一
体化される。少なくとも1つの電子部品は、典型的には、駆動回路の一部を形成する。内
側の駆動電極の対及び外側の駆動電極の対のうちの1つ又は複数は、駆動回路に電気的に
接続されている場合がある。内側の駆動電極の対及び外側の駆動電極の対の各々は、駆動
回路に電気的に接続されている場合がある。
【0125】
少なくとも1つの電子部品は、存在する場合、内側の駆動電極の1つ又は複数の対の間
に、(たとえば、可変)電位差(すなわち、電圧)を提供するように構成されている(す
なわち、使用中に提供する)場合がある。少なくとも1つの電子部品は、内側の駆動電極
の1つ又は複数の対の間の電位差(すなわち、電圧)を変化させるように構成されている
(すなわち、使用中に変化させる)場合がある。
【0126】
少なくとも1つの電子部品は、存在する場合、外側の駆動電極の1つ又は複数の対の間
に、(たとえば、可変)電位差(すなわち、電圧)を提供するように構成されている(す
なわち、使用中に提供する)場合がある。少なくとも1つの電子部品は、外側の駆動電極
の1つ又は複数の対の間の電位差(すなわち、電圧)を変化させるように構成されている
(すなわち、使用中に変化させる)場合がある。
【0127】
少なくとも1つの電子部品は、内側の駆動電極の1つ又は複数の対の間に第1電位差を
提供し、外側の駆動電極の1つ又は複数の対の間に第2電位差を提供するように構成され
ている場合がある。少なくとも1つの電子部品は、前記第1電位差及び第2電位差を同時
に提供するように構成されている場合がある。第1電位差及び第2電位差は、典型的には
、大きさが同様(たとえば、同じ)である。第1電位差及び第2電位差は、典型的には、
反対の極性を有する。
【0128】
駆動回路は、基板と一体化されたCMOS回路(たとえば、CMOS電子回路)を備え
ることができる。CMOS電子部品(たとえば、CMOS回路の一部を形成するCMOS
電子部品、すなわちCMOS電子回路)は、典型的には、標準的なCMOS製造方法によ
って基板上に形成される(たとえば、基板上で成長する)。たとえば、集積されたCMO
S電子部品は、以下の方法:物理気相成長、化学気相成長、電気化学堆積、分子線エピタ
キシー、原子層堆積、イオン注入、フォトパターニング、反応性イオンエッチング、プラ
ズマ照射のうちの1つ又は複数を用いて堆積させることができる。
【0129】
液滴吐出器は、内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構並びにノズル形成
層を覆う保護層をさらに備える場合がある。保護層は、典型的には、化学的に不活性であ
り、不浸透性であり、且つ/又は流体撥水性(fluid-repellent)である
。保護層は、低いヤング率(すなわち、引張弾性率)を有するべきである。保護層は、ノ
ズル形成層(及び、特に、ノズルプレート)及び/又は圧電体のヤング率より実質的に小
さいヤング率を有するべきである。保護層は、典型的には、50GPa未満のヤング率を
有する。保護層は、ポリイミド又はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の1種又
は複数種の高分子材料、ダイヤモンド状炭素(DLC)、ネガ型若しくはポジ型フォトレ
ジスト、又はエポキシ系フォトレジスト(Su-8、BCB等)、又はそれらの任意の組
合せから形成することができる。保護層は、異なる流体湿潤特性を有するこうした異なる
材料の2つ以上の層を含むことができる。
【0130】
液滴吐出器は、典型的には、モノリシックである。液滴吐出器は、典型的には、一体化
されている(すなわち、一体型液滴吐出器である)。基板、ノズル形成層、アクチュエー
タ機構、流体チャンバ、(たとえば、駆動電子装置の)少なくとも1つの電子部品、及び
保護層は、典型的には、一体化されている(すなわち、互いに統合されている)。液滴吐
出器は、典型的には、基板、ノズル形成層、アクチュエータ機構、(たとえば、駆動電子
装置の)少なくとも1つの電子部品及び保護層を、1つ又は複数の堆積プロセスを通して
一体的に形成することによって製造される。液滴吐出器は、典型的には、1つ又は複数の
個々に形成された構成要素(たとえば、個々に形成された基板、ノズル形成層、アクチュ
エータ機構、電子部品及び/又は保護層)を合わせて接合することによって製造されるも
のではない。
【0131】
基板の取付面は、流体チャンバと流体連通している流体入口アパーチャを備える場合が
ある。
【0132】
流体チャンバは、実質的に長尺状であり得る。流体チャンバは、典型的には、基板の取
付面からノズル面まで延在している。流体チャンバは、典型的には、取付面及び/又はノ
ズル面に対して実質的に垂直な方向に沿って延在している。流体チャンバは、典型的には
、流体入口アパーチャと流体チャンバ出口との間に延在している。
【0133】
流体チャンバは、基板の平面を通る断面が実質的に円形状であり得る。流体チャンバは
、基板の平面を通る断面が実質的に多角形であり得る(たとえば、流体チャンバは断面が
実質的に正方形であり得る)。流体チャンバは、基板の平面を通る断面が多面であり得る
【0134】
流体チャンバは、形状が実質的に角柱状であり得る。実質的に角柱状の流体チャンバの
長手方向軸は、典型的には、取付面及び/又はノズル面に対して実質的に垂直な方向に沿
って延在している。
【0135】
流体チャンバは、形状が実質的に円筒状であり得る。実質的に円筒状のチャンバの長手
方向軸は、典型的には、取付面及び/又はノズル面に対して実質的に垂直な方向に沿って
延在している。
【0136】
ノズル形成層のノズル部分は、典型的には、ノズル形成層の、流体チャンバを横切って
延在し、それにより流体チャンバの少なくとも1つの壁を形成する部分である。
【0137】
ノズル形成層のノズル部分は、典型的には、基板を越えて突出し、したがって、基板と
は独立して屈曲可能である。
【0138】
ノズル形成層のノズル部分は、実質的に環状である場合がある。
【0139】
流体チャンバは実質的に円筒状であり、ノズル形成層のノズル部分は実質的に環状であ
る場合がある。
【0140】
流体チャンバは、典型的には、1つ又は複数の流体チャンバ壁によって境界が定められ
ている。1つ又は複数の流体チャンバ壁のうちの少なくとも1つは、典型的には、基板の
一部によって形成されている。1つ又は複数の流体チャンバ壁のうちの少なくとも1つは
、典型的には、前記基板の取付面及び/又はノズル面に対して実質的に垂直に(すなわち
、直交して)延在している。垂直な(すなわち、直交する)流体チャンバ壁により、典型
的には、単一のプリントヘッド上に複数の隣接する流体チャンバ(及び、したがって、液
滴吐出器)をより近接して詰め込むことができ、それによりノズル密度が上昇する。垂直
な(すなわち、直交する)流体チャンバ壁は、典型的には、ボッシュ法等を使用する深掘
反応性イオンエッチング(DRIE)法によって形成される。
【0141】
ノズル形成層のノズル部分の外周部は、実質的に多角形である場合がある。ノズル形成
層のノズル部分の外周部は、多面である場合がある。ノズル形成層のノズル部分は菱形状
であり得る。ノズル形成層のノズル部分は正方形状であり得る。しかしながら、ノズル形
成層のノズル部分(たとえば、ノズル形成層の多角形、多面菱形状、及び/又は正方形状
のノズル部分)は丸みを帯びた角部を有する場合がある。ノズル形成層のノズル部分は、
典型的には、アパーチャを備える。アパーチャは実質的に円形であり得る。アパーチャは
実質的に多角形であり得る。アパーチャは多面であり得る。
【0142】
流体チャンバは、基板の平面において断面がノズル形成層のノズル部分の形状と実質的
に同様の形状である場合がある。たとえば、ノズル形成層のノズル部分が、角部が丸みを
帯びた正方形状である場合、流体チャンバは、断面が、角部が丸みを帯びた正方形状であ
り得る場合がある。
【0143】
ノズル形成層のノズル部分(すなわち、流体チャンバを横切って延在し、それにより流
体チャンバの少なくとも1つの壁を形成するノズル形成層の部分)は、基板の平面におけ
る断面が流体チャンバの形状と実質的に同様な形状である場合がある。たとえば、流体チ
ャンバが実質的に円筒状(すなわち、断面が実質的に円形)である場合、ノズル形成層の
ノズル部分の周辺部は、実質的に円形である。
【0144】
プリントヘッドは、インクジェットプリントヘッドであり得る。液滴吐出器は、インク
ジェットプリントヘッド用の(たとえば、インクジェットプリントヘッドで使用されるよ
うに構成された)液滴吐出器であり得る。液滴吐出器は、インクジェット液滴吐出器であ
り得る。
【0145】
プリントヘッドは、プリンテッドエレクトロニクスの製造において使用される機能性流
体等の流体(すなわち、液体)を印刷するように構成され得る。
【0146】
プリントヘッドは、生物学的流体を印刷するように構成され得る。生物学的流体は、典
型的には、生物学的巨大分子、たとえば、DNA若しくはRNA等のポリヌクレオチド、
微生物及び/又は酵素を含む。プリントヘッドは、希釈液又は試薬等、生物学又は生物工
学の用途において使用される他の流体を印刷するように構成され得る。
【0147】
プリントヘッドは、ボクセルプリントヘッド(すなわち、3D印刷、たとえば、積層印
刷(additive printing)において使用されるように構成されたプリン
トヘッド)であり得る。
【0148】
本発明の第2態様は、本発明の第1の態様による複数の液滴吐出器を備えるプリントヘ
ッドを提供する。複数の液滴吐出器(たとえば、そのうちのいくつか又は各々)は、共通
基板を共有する場合がある。たとえば、複数の液滴吐出器が前記共通基板上に集積化され
る場合がある。
【0149】
プリントヘッドは、インクジェットプリントヘッドであり得る。複数の液滴吐出器の各
々は、インクジェット液滴吐出器であり得る。
【0150】
プリントヘッドは、プリンテッドエレクトロニクスの製造に使用されるため等、機能性
流体を印刷するように構成され得る。
【0151】
プリントヘッドは、生物学的流体を印刷するように構成され得る。生物学的流体は、典
型的には、生物学的巨大分子、たとえば、DNA若しくはRNA等のポリヌクレオチド、
微生物及び/又は酵素を含む。プリントヘッドは、希釈液又は試薬等、生物学又は生物工
学の用途において使用される他の流体を印刷するように構成され得る。
【0152】
プリントヘッドは、ボクセルプリントヘッド(すなわち、3D印刷、たとえば、積層印
刷に使用されるように構成されたプリントヘッド)であり得る。
【0153】
本発明の第3態様は、本発明の第2態様による1つ又は複数のプリントヘッドを備える
プリンタを提供する。
【0154】
本発明の第4の態様は、本発明の第1態様による液滴吐出器を作動させる方法を提供す
る。本方法は、典型的には、内側アクチュエータ機構を作動させ且つ/又は外側アクチュ
エータ機構を作動させ、それにより、ノズル形成層のノズル部分の少なくとも一部の変位
、及び結果として流体チャンバから流体チャンバ出口を通る流体の吐出をもたらすステッ
プを含む。
【0155】
液滴吐出器は内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構を備える場合がある
(すなわち、本方法は、取付面及び反対側のノズル面を有する基板と、基板のノズル面の
少なくとも一部の上に形成されたノズル形成層と、少なくとも一部は基板により且つ少な
くとも一部はノズル形成層により画定された流体チャンバであって、少なくとも一部はノ
ズル形成層のノズル部分によって画定された流体チャンバ出口を有る流体チャンバと、ノ
ズル形成層のノズル部分の少なくとも一部に形成された内側アクチュエータ機構と、内側
アクチュエータ機構を少なくとも部分的に包囲するノズル形成層のノズル部分の少なくと
も一部に形成された外側アクチュエータ機構とを備える液滴吐出器を作動させる方法であ
る)。
【0156】
本方法は、内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構の両方を作動させるス
テップを含む場合がある。内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構の両方の
作動により、典型的には、ノズル形成層のノズル部分の少なくとも一部の変位と、結果と
して流体チャンバから流体チャンバ出口を通る流体の吐出(すなわち、流体が流体チャン
バに貯蔵されている場合)とがもたらされる。したがって、本方法は、典型的には、流体
チャンバン内に流体(すなわち、液体)を提供するステップを含む。
【0157】
内側アクチュエータ機構を作動させるステップ及び外側アクチュエータ機構を作動させ
るステップは、典型的には、同時に(すなわち、同じ時点で)行われる。
【0158】
駆動回路は、典型的には、内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構の両方
を作動させる。
【0159】
内側アクチュエータ機構が1つ又は複数の内側圧電アクチュエータを備える実施形態で
は、本方法は、内側の駆動電極の1つ又は複数の対の間に第1電位差(すなわち、電圧)
を印加して1つ又は複数の内側圧電体のたわみをもたらすステップを含む場合がある。外
側アクチュエータ機構が1つ又は複数の外内側圧電アクチュエータを備える実施形態では
、本方法は、外側の駆動電極の1つ又は複数の対の間に第2電位差(すなわち、電圧)を
印加して1つ又は複数の外側圧電体のたわみをもたらすステップを含む場合がある。本方
法は、第1電位差及び第2電位差を同時に(すなわち、同じ時点で)印加するステップを
含む場合がある。駆動回路が、典型的には、第1電位差及び第2電位差を印加する。
【0160】
第1電位差及び第2電位差は同様の(たとえば、同じ)大きさを有する場合がある。第
1電位差及び第2電位差は反対の極性を有する場合がある。反対の極性を有する第1電位
差及び第2電位差の印加により、典型的には、内側圧電体及び外側圧電体が反対方向にた
わむことになる。
【0161】
本方法は、第1に、内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構を作動させて
、第1方向におけるノズル形成層のノズル部分の少なくとも一部のたわみをもたらすステ
ップと、第2に、内側アクチュエータ機構及び外側アクチュエータ機構を作動させて、前
記第1方向とは反対の第2方向におけるノズル形成層のノズル部分の少なくとも一部のた
わみをもたらすステップとを含む場合がある。ノズル形成層の第1方向におけるたわみに
より、典型的には、流体が流体チャンバ内に引き込まれ、ノズル形成層の第2方向におけ
るたわみにより、典型的には、流体チャンバから流体チャンバ出口を通って流体が吐出さ
れる。ノズル形成層が第2方向におけるたわみの前に第1方向にたわむことにより、典型
的には、吐出時により大きい距離を通るノズル部分の変位により、流体に対してより大き
い吐出力を及ぼすことも可能になる。
【0162】
本発明の任意の1つの態様の任意選択的な又は好ましい特徴は、本発明の任意の他の態
様の任意選択的な又は好ましい特徴であり得る。
【0163】
ここで、以下の図面を参照して本発明の実施形態例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0164】
図1】第1実施形態による一体された流体素子(fluidics)、電子回路、ノズル及びアクチュエータを含むモノリシック流体液滴吐出器デバイスの図である。
図2図1に示す線F2に沿ったモノリシック液滴吐出器デバイスの断面図である。
図3】保護コーティングが取り除かれた状態にある図1に示すモノリシック液滴吐出器の特徴を示すノズルの平面図である。
図4(a)-(b)】図1の液滴吐出器デバイスに対する駆動パルスの実施態様の概略図である。
図5図1の液滴吐出器デバイスを製造する製造プロセスフローの概略図である。
図6】本発明の第2実施形態例による電極構造の代替実施態様を示す断面図である。
図7図6の液滴吐出器デバイスに対する代替的な駆動パルスの実施態様を示す概略図である。
図8】本発明の第3実施形態例によるノズル構造の代替実施態様の断面を示す概略図である。
図9】本発明の第4実施形態例によるボンドパッド構造の代替実施態様を示す断面図である。
図10図1図6図8又は図9の液滴吐出器デバイスのうちの任意のものの作動時のノズル構造を通る断面図である。
図11】本発明の第5実施形態例による内側アクチュエータ機構のみを有する代替的なモノリシック液滴吐出器を示す断面図及び平面図の両方を提供する。
図12図11の液滴吐出器デバイスの作動時のノズル構造を通る断面図である。
図13】本発明の第6実施形態例による外側アクチュエータ機構のみを有する代替的なモノリシック液滴吐出器を示す断面図及び平面図両方を提供する。
図14図13の液滴吐出器デバイスの作動時のノズル構造を通る断面図である。
図15】アクチュエータ機構の位置に応じた液滴吐出器デバイスダイヤフラムによって掃引された容積を示すプロットである。
図16】作動時の図1図6図8図9図11及び図13による液滴吐出器デバイスのダイヤフラムがとる形状を3Dで示す。
図17】4つの異なる作動実施態様に対する液滴吐出器ダイヤフラムのたわみを示すプロットである。
図18】ダイヤフラム上のアクチュエータ機構の位置に応じた2つの異なるアクチュエータ構成に対する液滴吐出器ダイヤフラムのたわみを示すプロットである。
図19】原文には記載なし。
【発明を実施するための形態】
【0165】
第1実施形態例
図1図5並びに図10及び図11を参照して、第1実施形態例について説明する。
【0166】
図1は、本発明の第1実施形態例による一体された流体素子、電子回路、ノズル及びア
クチュエータを含むモノリシック流体液滴吐出器デバイス1を示す。図2は、図1に示す
線F2に沿ったモノリシック液滴吐出器デバイス1の断面図である。
【0167】
図1及び図2に示すように、流体液滴吐出器デバイスは、基板100、流体入口チャネ
ル101、電子回路200、配線を備える相互接続層300、内側圧電アクチュエータ4
00、外側圧電アクチュエータ450、ノズルプレート500、保護前面600、ノズル
601及びボンドパッド700を含むモノリシックチップである。図1は、ボンドパッド
領域102及びノズル領域103を示す。
【0168】
基板100は、厚さが、典型的には、20~1000マイクロメートルの間である。相
互接続層300、内側圧電アクチュエータ400、外側圧電アクチュエータ450、ノズ
ルプレート500及び保護前面600は、厚さが、典型的には、0.5~5マイクロメー
トルである。ノズル601は、直径が、典型的には、3~50マイクロメートルの間であ
る。流体入口チャネル103は、50~800マイクロメートルの特徴的な寸法を有する
【0169】
図1に示すモノリシックチップは、4列のノズルを備える。各列は、交互パターンで隣
の列に対してずれている。異なる構成において任意の数のノズル列が可能である。チップ
上でのノズルの配置は、目標印刷密度(すなわち、1インチ当たりのドット数(dpi:
dots per inch))、目標噴射頻度(target firing fre
quency)及び/又は目標印刷速度を達成するように構成されている。特定の印刷要
件を満たす広範囲の異なるノズル構成が可能である。異なるプリントヘッドノズル構成は
、個々のノズル並びにノズルに固有の駆動電子回路201及び202を配置することによ
ってもたらされる。
【0170】
基板100は、シリコンウエハから形成され、支持体102、流体入口チャネル101
及び電子回路200を備える。
【0171】
流体入口チャネル101は、1つの面において流体入口103に開口部があるように基
板100の厚さを通して形成され、他方の端部において、ノズルプレート500及びノズ
ル601によって終端している。流体入口チャネル101の壁は、基板100及び相互接
続層300を通して同様の断面を有している。流体入口チャネル101は、実質的に円筒
状(すなわち、基板の平面における断面が実質的に円形)である。ノズルプレートとの境
界面及び流体入口境界面における流体入口チャネル101の角部は、応力集中を最小化す
るように丸みを帯びている。
【0172】
電子回路200は、基板100の、流体入口103を含む面とは反対側の面の上に形成
されている。電子回路200は、デジタル及び/又はアナログ回路を含むことができる。
電子回路の部分201及び202は、相互接続層300を貫通する配線301及び302
によって、内側圧電アクチュエータ400及び外側圧電アクチュエータ450に直接接続
され、駆動波形の印加を最適化するためにアクチュエータ400及び450に近接して位
置している。電極アクチュエータ配線相互接続部301及び302は、連続的な単一の構
築物であり得るか、又は配線の複数の層から構築され得る。駆動電子装置は、圧電アクチ
ュエータに設定電圧又は整形電圧を、設定期間、印加するように構成することができる。
【0173】
電子回路の部分203は、モノリシック液滴吐出器デバイス全体の全体的な動作に関連
し、アクチュエータ駆動回路201及び202とは別個に位置することができる。チップ
の全般的な動作に関連する回路203は、データルーティング、認証、チップ監視(たと
えば、チップ温度監視)、使用年数管理、歩留まり情報処理及び/又は不良ノズル監視等
の広範囲の機能を行うことができる。回路203は、相互接続層300を通してボンドパ
ッド700並びに所定の電極駆動回路201及び202に接続されている。チップ駆動電
子装置203は、データキャッシング、データルーティング、バス管理、汎用ロジック、
同期、セキュリティ、認証、電力ルーティング及び/又は入出力等の異なる機能を実施す
るように構成されたアナログ及び/又はデジタル回路を含むことができる。チップ駆動電
子装置203は、タイミング回路、インタフェース回路、センサ及び/又は時計等の回路
部品を備えることができる。
【0174】
チップの異なるセクション、たとえば、ノズル列の間又はチップの周辺部の辺りに位置
する、いくつかの汎用駆動電子装置エリアがあり得る。
【0175】
電子駆動回路は、200CMOS駆動回路を含む。
【0176】
相互接続層300は、電子回路200及び基板100の上に直接形成され、電気絶縁体
及び配線を備える。相互接続層300における配線は、チップ電子回路203をボンドパ
ッド700とアクチュエータ電極駆動回路201及び202との両方に接続する。相互接
続層300は、ノズルの間、チップの周辺部の辺り及び/又は駆動電子装置の上にルーテ
ィングされる電力及びデータのルーティング配線を含む。相互接続層300は、典型的に
は、異なる配線路を有する複数の層を備える。
【0177】
ノズルプレート500は、相互接続層300の上に形成されている。ノズルプレート5
00は、単一の材料又は複数の材料の積層体のいずれかから形成されている。ノズルプレ
ート500は、チップの前面にわたって連続的であり、下方の相互接続層300と上方の
アクチュエータ電極401との間の配線のための電気的開口部を有する。
【0178】
ノズルプレート500は、堆積温度、組成、化学的処理ステップに関してCMOS電子
駆動回路200とともに製造可能でなければならない1種又は複数種の材料から形成され
ている。ノズルプレート材料はまた、化学的に安定しているとともに、噴射される流体に
対して不浸透性でなければならない。ノズルプレート材料はまた、圧電アクチュエータの
機能に適合していなければならない。たとえば、好適な材料のヤング率は、70GPa~
300GPaの範囲にある。しかしながら、ヤング率のばらつきは、ノズルプレート50
0の厚さを変更することによって適応することができる。ノズルプレート材料例としては
、二酸化珪素(SiO2)、窒化珪素(Si34)、炭化珪素(SiC)及び酸窒化珪素
(SiOxy)のうちの(たとえば、それらの組合せ及び/又は積層体を含む)1種又は
複数種を含む。
【0179】
各外側圧電アクチュエータ450は、第1電極451、圧電層452及び第2電極45
3の積層体を備える。第1電極451は、ノズルプレート500に取り付けられている。
圧電層452は、第1電極451に取り付けられている。第2電極403は、第1電極取
付面とは反対側の圧電層表面に取り付けられている。第1電極451は、相互接続層30
0における配線接続部301に電気的に接続されている。第2電極453は、相互接続層
300における配線接続部302に電気的に接続されている。第1電極451及び第2電
極453は、互いから電気的に絶縁されている。
【0180】
各内側圧電アクチュエータ400は、第1電極401、圧電層402及び第2電極40
3の積層体を備える。第1電極401は、ノズルプレート500に取り付けられている。
圧電層402は、第1電極401に取り付けられている。第2電極403は、第1電極取
付面とは反対側の圧電層表面に取り付けられている。第1電極401は、外側圧電アクチ
ュエータの第2電極453に電気的に接続されている。第2電極403は、外側圧電アク
チュエータの第1電極451に電気的に接続されている。内側圧電アクチュエータの第1
電極401及び第2電極403は、互いから電気的に絶縁されている。
【0181】
電極材料は、導電性であり、典型的には、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、チ
タン-アルミナイド(TiAL)、タングステン(W)若しくは白金(Pt)、又はそれ
らの合金等の金属又は金属間化合物から形成されている。これらの材料は、(堆積温度及
び化学プロセス適合性に関して)CMOS駆動回路及び圧電層とともに製造可能である。
【0182】
圧電層402及び452は、CMOS及び相互接続回路の製造と適合性があるように選
択された材料から形成されている。CMOS駆動回路は、典型的には、最大約450℃の
温度に耐えることができる。しかしながら、歩留まりの高い製造には、はるかに低いピー
ク製造温度、典型的には300℃の温度が必要である。CMOS駆動電子装置をある期間
にわたり複数の温度にさらす堆積方法は、性能を劣化させる可能性があり、典型的には、
ドーパント可動性及び相互接続層内の配線の劣化に影響を与える。温度限界により、圧電
層の堆積方法が制限される。好適な圧電材料としては、窒化アルミニウム(AlN)、窒
化アルミニウム化合物(特に、窒化スカンジウムアルミニウム(ScAlN))及び酸化
亜鉛(ZnO)が挙げられ、これらはCMOS電子回路に適合性がある。圧電材料の組成
は、圧電特性を最適化するように選択される。たとえば、窒化アルミニウム化合物におけ
る任意の添加元素の濃度(窒化スカンジウムアルミニウムにおけるスカンジウムの濃度等
)は、典型的には、d31圧電定数の大きさを最適化するように選択される。窒化スカンジ
ウムアルミニウムにおけるスカンジウムの濃度が高いほど、通常、d31の値は大きくなる
。窒化スカンジウムアルミニウムにおけるスカンジウムの質量パーセントは、50%程度
に高い可能性がある。
【0183】
圧電アクチュエータ材料は、ノズルプレート500の表面にわたって連続的ではない。
圧電材料は、主にノズルプレートの上に位置し、電極開口部404及びノズルの周囲の領
域405を含む複数の開口部を含む。
【0184】
保護前面600は、液滴吐出器デバイス100の外面に形成され、圧電層402及び4
52、電極401、403、451及び453並びにノズルプレート500を覆う。保護
前面は、ノズル601のための開口部及びボンドパッド700のための開口部を有する。
保護前面材料は、化学的に不活性であり、不浸透性である。保護前面材料はまた、吐出さ
れる流体に対して撥水性であり得る。保護前面材料の機械的特性は、圧電アクチュエータ
400及び450並びにノズルプレート500の押出し作用に対する影響を最小限するよ
うに注意深く選択される。保護前面材料は、たとえば処理温度及び化学プロセス適合性に
関して、CMOS適合性プロセスフローによって製造可能であるように選択される。保護
前面600は、電極又は圧電層のいずれとの流体の接触も防止する。好適な保護前面材料
としては、ポリイミド、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ダイヤモンド状炭素
(DLC)又は関連する材料が挙げられる。
【0185】
図3は、第1実施形態による、保護コーティング600が取り除かれた状態にあるモノ
リシック液滴吐出器構造1の特徴を示すノズルの平面図である。破線は、圧電内側アクチ
ュエータ400及び外側圧電アクチュエータ450に関する流体入口103の下にある位
置を示す。
【0186】
使用時、流体液滴吐出器デバイス1は、流体入口103に流体を供給することができる
基板の上に取り付けられる。流体圧は、典型的には、流体入口103においてわずかに負
圧であり、流体入口チャネル101は、典型的には、表面張力によって駆動される毛細管
現象によって「プライミングされ」又は流体で充填される。流体入口103がプライミン
グされると、ノズル601は、毛細管現象によって保護前面600の外面までプライミン
グされる。流体は、負の流体圧とノズル601の幾何学的形状との組合せにより、ノズル
601を通過して保護面600の外面の上まで移動することはない。
【0187】
アクチュエータ駆動回路201及び202は、駆動回路203全体からのタイミング信
号に従って、駆動電極401、403、451及び453への電圧パルスの印加を制御す
る。圧電材料層402及び452にわたる電極電圧の印加により2つの電界が生じる。こ
の電界により、圧電材料層402及び452が変形する。この変形は、材料における極性
の局所方向に対する電界の向きに応じて引張ひずみ又は圧縮ひずみのいずれかであり得る
。圧電材料402及び452の伸張又は収縮よってもたらされる誘起されたひずみは、典
型的には、ノズルプレート500、圧電アクチュエータ400及び450並びに保護前層
600の厚さを通してひずみ勾配を誘起し、中立位置に対してノズルプレートを移動又は
変位させる。
【0188】
圧電材料の圧電特性は、一部には横圧電定数d31によって特徴付けることができる。d
31は、第1方向において圧電材料にわたって印加される電界を、前記第1方向に対して垂
直な第2方向に沿って圧電材料において誘起されたひずみに関連付ける、圧電係数テンソ
ルの特定の成分である。図示する圧電アクチュエータ400及び450は、印加された電
界が、電界が印加された方向に対して垂直な方向において材料層にひずみを誘起するよう
に構成され、したがって、d31定数によって特徴付けられる。
【0189】
圧電材料層402及び452の両方の均一な厚さ及び組成により、且つ、電極403及
び451と電極401及び453との間の電気交差接続により、定電圧又は電圧パルスの
印加によって、内側アクチュエータ層にわたって第1電位差が印加され、外側アクチュエ
ータ層にわたって第2電位差が印加されることになり、第1電位差及び第2電位差は、大
きさは等しいが極性が反対である。言い換えれば、内側アクチュエータ圧電層にわたって
電界E1が引き起こされ、外側アクチュエータ圧電層にわたって電界E2が引き起こされ、
1及びE2は、大きさは等しいが反対方向に作用する。E1及びE2が反対方向に作用する
ため、内側アクチュエータ層及び外側アクチュエータ層は反対の向きに変形する。E1
びE2の極性に応じて、ノズルプレート500の変位Xは、中立位置(すなわち、電界が
印加されてないとき)に対して正又は負のいずれかである。図4(a)の上部に、ノズル
プレートの正の変位を示し、その図の下部に、ノズルプレートの負の変位を示す。
【0190】
パルス状の電界の印加により、ノズルプレート500の振動をもたらすことができる。
ノズルプレートのこの振動により、典型的には、ノズルプレート500の下の流体入口1
03に圧力が誘起され、ノズル601から液滴が吐出される。ノズルプレートの振動の振
動数及び振幅は、主に、ノズルプレート500、圧電アクチュエータ400及び450、
保護層600の質量及び剛性、流体特性(たとえば、流体密度、流体粘度(ニュートン粘
度又は非ニュートン粘度のいずれか)及び表面張力)、ノズル及び流体入口の幾何学的形
状、並びに両駆動パルスの構成の関数である。
【0191】
図4(a)及び図4(b)は、2つの駆動パルスの実施態様を示す。図には、内側アク
チュエータ電極401及び403にわたる電圧パルスを示す。大きさは等しいが極性が反
対である電圧パルスが、外側アクチュエータ電極451及び453にわたって同時に印加
されていることが理解されよう。
【0192】
第1実施態様では、図4(a)の上部に示すように、電極対にわたる定常電界又はDC
電界の印加により、圧電層402及び452における歪みと、流体入口から離れる方向の
ノズルプレートの定常たわみとがもたらされる。ノズルプレートの下の流体圧は、流体入
口供給圧力と同じである。ひずみエネルギーは、ノズルプレート500、圧電アクチュエ
ータ400及び450並びに保護層600に蓄積される。
【0193】
そして、図4(a)の下部に示すように、電界が除去され、逆向きの電界パルスが印加
される。これにより、蓄積されたひずみエネルギーの解放と、反対方向における圧電材料
のさらなる歪みとの両方がもたらされる。ノズルプレートは、流体入口に向かって移動し
、これにより、流体入口及びノズル領域における正圧と、ノズル601からの液滴吐出と
がもたらされる。逆向きの電界パルスは、DC電界の除去の直後に、又はわずかに遅延し
た時間で印加することができる。
【0194】
圧電材料にわたる電界の最終的な除去により、ノズルプレート500はひずみが誘起さ
れていない中立位置に戻る。
【0195】
内側アクチュエータ及び外側アクチュエータにわたる反対の極性の電界の印加により、
ノズルプレートが図10に示す形状に変形する。内側アクチュエータの領域におけるノズ
ルプレートは、外側アクチュエータの領域におけるノズルプレートの湾曲に対して反対の
向きに湾曲し、それにより、S字状断面がもたらされる。この特定の形状により、ノズル
プレートが1つの向きのみの湾曲をもたらす1つのアクチュエータのみによって提供され
る場合に達成可能な変位と比較した場合、中立位置からのノズルプレートのノズル部分の
最大変位が著しく増大する。中立位置から離れる方向のノズルプレートの最大変位を増大
させることにより、印加された電界が除去されるか又はその極性が反転したとき、はるか
に大きい吐出力を及ぼすことができる。これにより、発生させることができる力が低いこ
とに起因してインクジェットプリンタでの使用には好適でないと通常みなされる、低いd
31定数を有する圧電材料の使用が可能になる。これらの低d31材料は、通常、より低い温
度で処理可能であり、液滴吐出器のCMOS部品とのより近接した一体を可能にする。よ
り大きい吐出力が達成可能であることにより、吐出器サイズ全体を縮小することも可能で
あり、それにより、プリントヘッドノズル密度の増大が可能になる。
【0196】
第2実施態様では、図4(b)に示すようなパルス電界構成とともに、図4(a)に記
載したDC電界構成。これには、より長い期間にわたって、任意の印加されたひずみ効果
を最小化するという利点がある。電界パルスの切換え印加のタイミングにより、2重パル
ス化手法のさらなる利点が可能になる。第1パルスの印加は、図4(b)の上部に示すよ
うに、流体入口から離れる方向のノズルプレートの初期移動を伴う振動が誘起される。こ
の振動により、ノズルプレートの下に負の流体圧が生じ、これにより、ノズルに向かう正
味の流体流が生じ、これが、ノズルを通る流体吐出流をさらに増大させることができる。
【0197】
図5は、液滴吐出器デバイスの製造プロセスフローを示す概略図である。図5(a)に
示すように、第1製造ステップは、シリコンウエハ基板の表面上に駆動回路及び相互接続
層300、たとえば、CMOS駆動回路及び相互接続部を作成することである。CMOS
駆動回路は、標準的なプロセス、たとえば、p型又はn型基板上へのイオン注入、及び、
それに続く、標準的なCMOS製造プロセス(たとえば、イオン注入、化学気相成長(C
VD)、物理気相成長(PVD)、エッチング、化学機械平坦化(CMP)及び/又は電
気めっき)による配線相互接続層の作成によって形成される。
【0198】
後続する製造ステップは、モノリシック液滴吐出器デバイスの特徴及び構造を規定する
ように実施される。後続するステップは、先行するステップで形成された構造に損傷を与
えないように選択される。重要な製造パラメータは、ピーク処理温度である。高温でのC
MOSの処理に関する問題としては、ドーパント可動性及び相互接続配線機構の劣化が挙
げられる。CMOS電子回路は、450℃の温度に耐えることが知られている。しかしな
がら、高い歩留まりのためには、はるかに低い(すなわち、300℃未満の)温度が望ま
しい。
【0199】
図5(b)に示すように、ノズルプレート500、圧電アクチュエータ400及び45
0、保護層600並びにボンドパッド700は、相互接続層の上に形成される。
【0200】
ノズルプレート500は、CVD又はPVD処理を使用して堆積させる。
【0201】
CMOS適合性圧電材料402及び452の形成は、これはアクチュエータの重要な駆
動要素であるため、特に重要である。表1は、いくつかの一般的な圧電材料及びそれらに
関連する製造方法を、典型的なd31値とともに列挙している。最も高いd31値を有する材
料は、モノリシックCMOS構造の製造に適合しないことが分かる。CMOS構造に適合
する材料は低いd31値を有し、このため、はるかに低い押出し能力を有する。
【0202】
表から分かるように、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)は、PVD(スパッタリングを
含む)によって低温で堆積させることができるが、それに続いて、CMOSに対して許容
可能な温度を超える温度で後処理の焼きなましを必要とする。PZTはまた、ゾルゲル法
によって堆積させることも可能であるが、この場合もまたCMOSの限界を超える高温焼
きなましが必要である。PZTはまた、非常に低速に堆積し、商業的に実行可能ではない
。PZTはさらに鉛を含有し、これは環境的に望ましくない。
【0203】
ZnO、AlN及びAlN化合物(ScAlN等)材料は、焼きなまし等の後処理を必
要としない低温PVD(たとえば、スパッタリング)処理を使用して堆積させることがで
きる。これらの材料はまた、極性調整も必要としない。極性調整ステップは、PZTでは
必要であり、その場合、材料は、すべての電気双極子を電界の方向に向ける非常に強い電
界に晒される。
【0204】
したがって、ZnO、AlN及びAlN化合物(たとえば、ScAlN)材料は、モノ
リシック液滴吐出器デバイスの製造のために商業的に実行可能な材料である。しかしなが
ら、これらの材料のd31の値は、PZTのものよりも著しく低い。吐出効率を向上させる
ノズルの特定の構成(すなわち、作動可能なノズルプレート)と、作動効率を向上させる
2つの対の制御電極の使用とが、これらの材料に関連するより低いd31値を相殺する。
【0205】
アクチュエータ電極材料は、PVD(低温スパッタリングを含む)等のCMOS適合性
プロセスを使用して堆積させる。典型的な電極材料としては、チタン(Ti)、白金(P
t)、アルミニウム(Al)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)又はそれらの合
金を挙げることができる。電極は、標準的なパターニング及びエッチング方法によって画
定される。
【0206】
保護材料は、(ポリイミド又は他の高分子材料に好適な)スピンオン及びキュア法(s
pin on and cure method)を使用して堆積させ、パターニングす
ることができる。PTFE等のいくつかの材料は、より固有の堆積及びパターニング手法
を必要とする場合がある。
【0207】
ボンドパッドは、CVD又はPVD(たとえば、スパッタリング)等の方法を使用して
堆積させる。
【0208】
図5(c)に示すように、流体入口チャネルは、高アスペクト比の深掘反応性イオンエ
ッチング(DRIE)法を使用して画定される。流体入口は、ウエハ表裏面位置合わせ器
具を使用してノズル構造と位置合わせされる。表裏面位置合わせ及びエッチングステップ
中、ウエハをハンドルウエハの上に取り付けることができる。
【0209】
ダイを個片化するためにもDRIE手法を使用することができるが、ウエハソー等の他
の手法も使用することができる。
【0210】
第2実施形態例
図6は、電極構造の代替実施態様を示す断面図である。この実施形態では、電極403
及び453は、配線302によって、駆動回路ではなく接地ライン204に接続されてい
る。接地ライン204は、相互接続層300内に位置し、駆動回路領域203に接続され
、又は接地されたボンドパッド700に直接に接続されている。
【0211】
第3実施形態例
図7は、この液滴吐出器デバイスに適合する代替的な駆動パルス実施態様を示す概略図
である。図7に示すような電圧パルスが、各電極対の一方の電極のみ、たとえば401及
び453に印加される、これにより、圧電アクチュエータ400及び450を通る電界が
生じ、この電界によって、ノズルプレート500が全体的に下向きに変位する。駆動パル
スが電極403及び451に印加され、接地電圧が電極401及び453に印加されるよ
うにデバイスを構成することも可能である。
【0212】
第4実施形態例
図8は、ノズル構造の代替実施態様の断面を示す概略図であり、流体入口101の近傍
でノズルプレート層500に取り付けられた相互接続層304の拡張を示す。相互接続層
の拡張部304は、いかなる配線もなしに、誘電材料のみを含むことができる。別の変形
では、デバイスはノズルプレート層を有しておらず、圧電アクチュエータに取り付けられ
た相互接続層のみを有する。
【0213】
第5実施形態例
図9は、ボンドパッド構造の代替実施態様を示す断面図である。保護前面は、ボンドパ
ッド701の近傍で取り除かれている。この幾何学的形状により、外部配線機構のアクセ
ス性が向上し、チップの高さより上方のワイヤボンディングの全体的な高さが低減する。
【0214】
第6及び第7実施形態例
図11は、流体出口601に隣接する内側圧電アクチュエータ400のみを含むノズル
構造の代替実施態様の断面図及び平面図を示す概略図である。この実施形態では、圧電材
料は、電極401及び402の間にのみ延在し、ノズルプレート層500の残りの部分の
上の電極を越えて延在していない(すなわち、外側圧電アクチュエータが位置すると予期
され得る領域450内には延在していない)。
【0215】
内側アクチュエータにわたる電界の印加により、ノズルプレートは、図12に示す形状
に変形する。内側アクチュエータの作動により、ノズルプレートの内側部分は第1向きに
湾曲する。それに応じてノズルプレートの外側部分は反対の向きに湾曲し、その結果S字
状断面となる。この特定の形状により、ノズルプレートに、通常1つの向きにのみ湾曲を
もたらす、ノズルプレートの大部分にわたって延在する1つのアクチュエータのみが設け
られる場合に達成可能な変位と比較した場合、中立位置からのノズルプレートのノズル部
分の最大変位が著しく増大する。
【0216】
さらに、図13は、流体出口601に隣接する外側圧電アクチュエータ450のみを含
むノズル構造の代替実施態様の断面図及び平面図を示す概略図である。この実施形態では
、圧電材料は、電極401及び402の間にのみ延在し、ノズルプレート層500の残り
の部分の上の電極を越えて延在していない(すなわち、内側圧電アクチュエータが位置す
ると予期され得る領域400内には延在していない)。
【0217】
外側アクチュエータにわたる電界の印加により、ノズルプレートは、図12に示す形状
に変形する。外側アクチュエータの作動により、ノズルプレートの外側部分は第1向きに
湾曲する。それに応じてノズルプレートの内側部分は反対の向きに湾曲し、その結果S字
状断面となる。この特定の形状により、ノズルプレートに、通常1つの向きにのみ湾曲を
もたらす、ノズルプレートの大部分にわたって延在する1つのアクチュエータのみが設け
られる場合に達成可能な変位と比較した場合、中立位置からのノズルプレートのノズル部
分の最大変位が著しく増大する。
【0218】
図15は、流体出口を中心に対称に位置決めされた単一の環状アクチュエータの半径方
向の位置に応じた、作動時にノズルプレートによって掃引された容積を示す。この場合、
圧電材料の層は、ノズルプレート全体にわたって延在し、アクチュエータの位置は、第1
アクチュエータ電極及び第2アクチュエータ電極の位置によって画定される。ノズルプレ
ートは、125ミクロンの外側半径を有する。この図から、最大掃引容積(したがって、
流体吐出)が、ノズルプレートの外縁部に近接して(中心から105ミクロンの位置に)
位置するアクチュエータに対して達成可能であることが分かる。図16は、外縁部により
近接して位置する単一の環状アクチュエータの作動時にノズルプレートがとる3D形状を
示す。ノズルプレートの内側部分が、ノズルプレートの外側部分から反対の向きに湾曲し
ていることが分かる。
【0219】
図17は、内側圧電アクチュエータ及び外側圧電アクチュエータの両方を備える実施形
態において、中立位置(すなわち、すべてのアクチュエータの作動の前)からのノズルプ
レートのたわみが、ノズルプレートにわたる半径方向位置に応じていかに変化するかを示
す。この図は、「逆極性」(内側環状アクチュエータ及び外側環状アクチュエータの両方
が設けられ、各々が、反対の極性を有する電界によって同時に作動する)、「同様の極性
」(内側環状アクチュエータ及び外側環状アクチュエータの両方が設けられ、各々が、同
じ極性を有する電界によって同時に作動する)、「内部のみ」(内側環状アクチュエータ
及び外側環状アクチュエータの両方が設けられるが、内側アクチュエータのみが作動する
)、及び「外部のみ」(内側環状アクチュエータ及び外側環状アクチュエータの両方が設
けられるが、外側アクチュエータのみが作動する)に対するデータセットを示す。こうし
た実施形態では、反対の極性を有する電界が内側アクチュエータ及び外側アクチュエータ
に印加されたときに最大のたわみが達成される。
【0220】
図18もまた、単一の圧電アクチュエータのみを備え、圧電材料が前記圧電アクチュエ
ータを越えて延在しない実施形態に対して、中立位置からのノズルプレートのたわみが、
ノズルプレートにわたる半径方向位置に応じていかに変化するかを示す。こうした実施形
態では、最大のたわみは、内側アクチュエータが設けられたときに達成される。アクチュ
エータを含まない領域に圧電材料がないことにより、可撓性が増大し、したがって、内側
圧電アクチュエータ及び外側圧電アクチュエータの両方を組み込んでいる吐出器と比較し
て、(内側であっても外側であっても)単一の環状圧電アクチュエータを組み込んでいる
吐出器によって、より大きいたわみを達成することができる可能性がある。
【0221】
本明細書に開示した本発明の範囲内で、さらなる変形及び変更を行うことができる。
【0222】
デバイスは、シリコンウエハ基板上に形成することができる。別法として、基板は、シ
リコンオンインシュレータ(silicon-on-insulator)ウエハ又はI
II-V族半導体ウエハを含むことができる。
【0223】
流体入口チャネルは、実質的に円筒状であり、したがって、基板の平面において実質的
に円形の断面を有することができる。別法として、流体入口チャネルは、多面の、規則的
な形状又は不規則的な形状を含む種々の他の断面をとることができる。流体入口チャネル
の形状は、典型的には、ノズルのレイアウト、駆動電子装置の配置、及び相互接続層30
0における配線ルーティング等、モノリシックチップ設計の他の態様によって決まる。
【0224】
断面形状は、故障メカニズムを引き起こすことなくプリントヘッドチップの幅を最小化
するようにも選択することができる。故障メカニズムは、構造的である場合があり(たと
えば、流体入口が多すぎることによりチップの頑強性が低下する可能性がある)、又は、
動作的である場合がある(たとえば、相互接続ワイヤが適切な電流を伝送するためには不
十分である場合がある)。プリントヘッドの幅の低減は、単一のウエハ上に製造すること
ができるチップの数を増加させるため、望ましい。
【0225】
本明細書に開示した本発明の範囲内でさらなる変形及び変更を行うことができる。
図1
図2
図3
図4(a)】
図4(b)】
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2024-02-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリントヘッド用の液滴吐出器であって、取付面及び反対側のノズル面を有する基板と、前記基板の前記ノズル面の少なくとも一部の上に形成されたノズル形成層と、少なくとも一部は前記基板により且つ少なくとも一部は前記ノズル形成層により画定された流体チャンバであって、少なくとも一部は前記ノズル形成層のノズル部分によって画定された流体チャンバ出口を有し、前記ノズル部分が、前記流体チャンバ出口の方に近接して位置する内側部分と、前記ノズル部分の周縁部の方に近接して位置する外側部分とを備える、流体チャンバと、前記ノズル形成層の前記ノズル部分の前記内側部分に形成された内側アクチュエータ機構、及び前記ノズル形成層の前記ノズル部分の前記外側部分に形成された外側アクチュエータ機構のうちのいずれか又は両方とを備える液滴吐出器。