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  • 特開-呼吸ガスの加湿性が向上した呼吸装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042019
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】呼吸ガスの加湿性が向上した呼吸装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 16/16 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
A61M16/16 A
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024008739
(22)【出願日】2024-01-24
(62)【分割の表示】P 2021502458の分割
【原出願日】2019-08-26
(31)【優先権主張番号】102018214556.3
(32)【優先日】2018-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】515233591
【氏名又は名称】ハミルトン メディカル アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】デ-シュテファニ・ディノ
(57)【要約】      (修正有)
【課題】患者が正しく加湿された呼吸ガスで呼吸できる装置を提供する。
【解決手段】装置は、呼吸ガス源アセンブリ(15,62)、流量変更装置(16)、気化装置(76)を有し、呼吸ガス流(AF)絶対湿度値を増加させる加湿装置(38)、呼吸ガス導管の近位長手方向端部領域(30a)のガス流温度を検出する温度センサ(48)、ガス流絶対湿度を検出する湿度センサアセンブリ(66)、フローセンサ(44)、呼吸ガスの所定目標湿度およびセンサ(48)、湿度センサアセンブリ(66)、フローセンサ(44)からの信号に依存して気化装置(76)の作動電力を制御する制御装置(18)を含む。湿度センサアセンブリ(66)はガス流(AF)の吸気方向において加湿装置(38)上流に配置され、その上流湿度状態値を検出する。装置は周囲温度センサ(17)を有しその周囲(U)温度を検出し、周囲温度にも依存して装置(76)作動電力を制御する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者(12)を人工呼吸させるための人工呼吸装置(10)であって、
- 前記患者(12)を人工呼吸させるための吸気性呼吸ガスを提供する呼吸ガス源アセンブリ(15、62)と、
- 吸気性呼吸ガス流(AF)を生成し、その流量を変化させるように構成された流量変更装置(16)と、
- 前記吸気性呼吸ガス流(AF)の絶対湿度の値を増加させるように構成された加湿装置(38)であって、このために貯水部(40)と、電力可変性の気化装置(76)とを有する加湿装置(38)と、
- 前記加湿装置(38)から前記患者(12)へ前記吸気性呼吸ガス(AF)を送給するために、作動時に前記患者(12)に近いところに位置する近位長手方向端部(30a)と、作動時に前記患者(12)から離れたところに位置する遠位長手方向端部(30b)とを有する呼吸ガス導管アセンブリ(30)と、
- 前記呼吸ガス導管アセンブリ(30)の近位長手方向端部領域(30a)の前記呼吸ガス流(AF)の温度を検出するように構成された近位温度センサ(48)と、
- 直接的または間接的に前記吸気性呼吸ガス流(AF)の絶対湿度を表す、少なくとも1つの、吸気性呼吸ガス流の湿度状態値を検出するように構成された湿度センサアセンブリ(66)と、
- 前記呼吸ガス流(AF)の流量を検出するように構成されたフローセンサ(44)と、
- 前記近位温度センサ(48)、前記湿度センサアセンブリ(66)および前記フローセンサ(44)に信号伝送の点で接続され、前記呼吸ガスの所定の目標湿度に依存して、および前記近位温度センサ(48)、前記湿度センサアセンブリ(66)および前記フローセンサ(44)からの信号に依存して、前記気化装置(76)の作動電力を制御するように構成された制御装置(18)と、
を含み、
前記湿度センサアセンブリ(66)は、前記呼吸ガス流(AF)の吸気方向において前記加湿装置(38)の上流に追加的に配置され、前記加湿装置(38)の上流の湿度状態値を検出するように構成され、前記呼吸装置(10)は、前記呼吸装置(10)周囲(U)の温度を検出するように構成された少なくとも1つの周囲温度センサ(17)を有し、前記制御装置(18)は、前記少なくとも1つの周囲温度センサ(17)と信号伝送の点で接続されており、既に述べた依存関係に加えて、前記少なくとも1つの周囲温度センサ(17)からの信号にも依存して、前記気化装置(76)の作動電力を制御するように構成されている呼吸装置。
【請求項2】
前記呼吸装置(10)は、前記呼吸ガス導管アセンブリ(30)の近位長手方向端部領域(30a)における前記呼吸ガス流(AF)の目標温度を入力するための、および/または前記呼吸ガスの目標湿度を入力するための、および/または呼吸ガス流量を入力するための入力装置(24)を有することを特徴とする、請求項1に記載の呼吸装置(10)。
【請求項3】
前記呼吸装置(10)は、前記呼吸ガス導管アセンブリ(30)の前記近位長手方向端部領域(30a)における前記呼吸ガス流の目標温度を入力するための入力装置(24)を有し、前記制御装置(18)によって取得可能であるデータメモリ(19)であって、前記呼吸ガス導管アセンブリ(30)の前記近位長手方向端部領域(30a)における前記呼吸ガス流(AF)の温度値と、前記呼吸ガスの対応づけられた目標湿度値との間の相関関係が保存されたデータメモリ(19)を有することを特徴とする、請求項2に記載の呼吸装置(10)。
【請求項4】
前記呼吸ガス導管アセンブリ(30)の少なくとも1つの吸気導管部(36)は、導管ヒータ(37)を有し、前記導管ヒータ(37)により、前記吸気導管部(36)を加熱することができ、前記制御装置(18)は、好ましくは、前記呼吸ガス導管アセンブリ(30)の前記近位長手方向端部領域(30a)における前記呼吸ガス流(AF)の所定の目標温度に依存して、前記導管ヒータ(37)の作動電力を制御するように構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の呼吸装置(10)。
【請求項5】
前記湿度センサアセンブリ(66)は、前記呼吸ガス流(AF)の吸気方向において前記呼吸ガス源アセンブリ(15、62)の上流に配置されていることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の呼吸装置(10)。
【請求項6】
前記制御装置(18)は、前記気化装置(76)に、および/または前記気化装置(76)のエネルギー源に、および/または前記気化装置(76)に供給されるエネルギーを検出するように構成された少なくとも1つのエネルギーセンサに、前記気化装置(76)に現在供給されるエネルギーおよび/または電力を前記制御装置(18)によって信号から算出可能なように、信号伝送の点で接続されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の呼吸装置(10)。
【請求項7】
前記呼吸ガス導管アセンブリ(30)は、前記呼吸ガス導管アセンブリ(30)と前記患者(12)との間で呼吸ガスを伝送する、内気管チューブ、喉頭マスクまたはコンビチューブなどの患者インターフェース(31)に前記呼吸ガス導管アセンブリ(30)を連結するための連結構成体(44a)を、その近位端部(30a)に有し、前記制御装置(18)は、前記呼吸装置(10)の、特に前記呼吸ガス流(AF)の動作パラメータに依存して、吸入方向における前記連結構成体(44a)下流側の呼吸状況の後続状態を算出し、その算出結果に依存して前記気化装置(76)の作動電力を変更するように構成されていることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の呼吸装置(10)。
【請求項8】
前記呼吸状況の前記後続状態は、前記患者インターフェース(31)の導管壁の後続温度および/または前記呼吸ガス流(AF)の後続温度を含むことを特徴とする、請求項7に記載の呼吸装置(10)。
【請求項9】
前記呼吸装置(10)は、前記制御装置(18)によって取得可能なデータメモリ(19)を有し、前記データメモリ(19)では、前記呼吸ガス流(AF)の作動パラメータ値が、前記患者インターフェース(31)の前記導管壁の後続温度および/または前記呼吸ガス流(AF)の後続温度とリンクされていることを特徴とする、請求項8に記載の呼吸装置(10)。
【請求項10】
前記制御装置(18)は、前記呼吸ガス導管アセンブリ(30)の前記近位長手方向端部領域(30a)の前記近位温度センサ(48)によって検出された前記呼吸ガス流(AF)の温度、前記フローセンサ(44)によって検出された前記呼吸ガス流(AF)の流量、および前記呼吸ガスの所定の目標湿度に依存して、前記後続状態を算出することを特徴とする、請求項7から9のいずれか一項に記載の呼吸装置(10)。
【請求項11】
前記制御装置(18)は、前記周囲温度センサ(17)によって検出された周囲温度に依存して前記後続状態を算出することを特徴とする、請求項7から10のいずれか一項に記載の呼吸装置(10)。
【請求項12】
前記制御装置(18)は、前記患者インターフェース(31)の遠位端(31b)よりもその近位端(31a)の近くに位置する算出位置の前記後続状態を算出し、前記制御装置(18)は、好ましくは、前記患者インターフェース(31)の前記近位端(31a)の前記後続状態を算出することを特徴とする、請求項7から11のいずれか一項に記載の呼吸装置(10)。
【請求項13】
前記制御装置(18)は、前記連結構成体(44a)と前記患者インターフェース(31)の前記患者(12)体内への進入点(31c)との間に位置する前記患者インターフェース(31)の部分の前記後続状態を算出することを特徴とする、請求項7から11のいずれか一項に記載の呼吸装置(10)。
【請求項14】
前記制御装置は、算出結果に依存して、前記近位温度センサ(48)における前記呼吸ガスの温度およびこのために前記導管ヒータ(37)の作動電力を変化させるように構成されていることを特徴とする、請求項4を引用する場合の、請求項7から13のいずれか一項に記載の呼吸装置(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者を人工呼吸させるための人工呼吸装置であって、
- 患者を人工呼吸させるための吸気性呼吸ガスを提供する呼吸ガス源アセンブリと、
- 吸気性呼吸ガス流を生成し、その流量を変化させるように構成された流量変更装置と、
- 吸気性呼吸ガス流の絶対湿度の値を増加させるように構成された加湿装置であって、このために貯水部と、電力可変性の気化装置とを有する加湿装置と、
- 加湿装置から患者へ吸気性呼吸ガスを送給するために、作動時に患者に近いところに位置する近位長手方向端部と、作動時に患者から離れたところに位置する遠位長手方向端部とを有する呼吸ガス導管アセンブリと、
- 呼吸ガス導管アセンブリの近位長手方向端部領域の呼吸ガス流温度を検出するように構成された近位温度センサと、
- 直接的または間接的に吸気性呼吸ガス流の絶対湿度を表す、少なくとも1つの、吸気性呼吸ガス流の湿度状態値を検出するように構成された湿度センサアセンブリと、
- 呼吸ガス流量を検出するように構成されたフローセンサと、
- 近位温度センサ、湿度センサアセンブリおよびフローセンサに信号伝送の点で接続され、呼吸ガスの所定の目標湿度に依存して、および近位温度センサ、湿度センサアセンブリおよびフローセンサからの信号に依存して、気化装置の作動電力を制御するように構成された制御装置と、
を含む、人工呼吸装置に関する。
【背景技術】
【0002】
同様の呼吸装置は、特許文献1から公知である。公知の人工呼吸装置は、呼吸ガス源として周囲空気、および送風機と弁との組合せを使用して、人工呼吸装置内の呼吸ガス流の流量を変化させる。必要に応じて呼吸ガスを加湿するための気化器加湿装置が設けられている。気化器加湿装置内にある貯水部は、呼吸ガス流によってオーバーフローし、この際、貯水部の水位以上の水蒸気を取り込んでいる。
特許文献1から公知の人工呼吸装置は、呼吸ガス導管アセンブリに熱供給することにより、呼吸ガス中の水分の望ましくない結露を防止するための、加熱可能な呼吸ガス導管アセンブリをさらに含む。
【0003】
公知の呼吸装置の加湿装置の下流側であって、呼吸ガス導管アセンブリの加熱部が始まる前、すなわち呼吸ガス導管アセンブリの遠位端の領域において、呼吸ガス流量を算出するためのフローセンサと、呼吸ガスの温度を検出するための温度センサと、呼吸ガス湿度を検出するための湿度センサとが設けられている。また、周囲の温度や周囲の湿度を検出するためのセンサが設けられている。
【0004】
呼吸装置の動作パラメータは、入出力装置を介して医師または看護師が設定できる。
【0005】
公知の人工呼吸装置の制御装置は、不特定の方法で人工呼吸装置を制御する。制御装置は、検出された周囲温度および検出された周囲空気湿度、呼吸ガス流の検出された温度および呼吸ガス流の検出された湿度を想定して、さらに呼吸ガス導管アセンブリの動作データおよび設計データに依存して、呼吸ガス導管アセンブリの加熱動作のための目標温度を算出する。ここで、目標温度は、呼吸ガス導管アセンブリ内の温度がそれぞれの露点温度を超えるように選択される。制御装置は、呼吸ガス導管アセンブリの加熱を、選択された目標温度に依存して制御する。特許文献1の開示によれば、露点温度は、利用可能な湿度データ、すなわち、呼吸ガス流の検出された温度および検出された相対湿度から得られる。
【0006】
別の呼吸装置が、特許文献2から公知である。これもまた、呼吸ガス源と、流量変更装置としての送風機とを備えた呼吸ガス導管アセンブリを開示している。特許文献2から公知の呼吸装置は、同様に気化器加湿装置を備えている。これもまた、作動時に呼吸ガス流によってオーバーフローする貯水槽を有し、呼吸ガス流はオーバーフロー中に加湿される。
【0007】
公知の呼吸装置の呼吸ガス導管アセンブリのうち、加湿装置から呼吸ガス導管アセンブリの近位長手方向端部まで延びる部分を加熱することができる。この部分では、呼吸ガスの温度および流量を算出するためのフローセンサおよび温度センサが、加湿装置に近いところに位置する、呼吸ガス導管アセンブリの長手方向の端部領域に配置されている。同様に、呼吸ガス導管アセンブリを呼吸している患者に接続するための患者インターフェースが連結できる、呼吸ガス導管アセンブリの近位長手方向端部に、近位温度センサが配置されている。
【0008】
公知の人工呼吸装置の制御装置において、操作者は、人工呼吸装置によって供給される呼吸ガスの所望の呼吸ガス温度または所望の湿度レベルを設定することができる。制御装置は、データ伝送によって2つの温度センサおよびフローセンサに接続されており、したがって、それらの検出値を取得する。
【0009】
制御装置は、データメモリに格納されたテーブル、数式またはマップを使用して、要求される呼吸ガス湿度ならびにセンサによって算出された呼吸ガス流量およびセンサによって算出された呼吸ガス温度に応じて、加湿装置の加熱板へのエネルギー供給を制御して、所望の呼吸ガス温度および所望の呼吸ガス温度を有する呼吸ガス流を提供する。要求される呼吸ガス湿度は、操作者によって設定された湿度、またはデータメモリに予め格納された湿度のいずれかである。
【0010】
一般的に公知であるように、正確な湿度レベルの呼吸ガス流を患者に供給することが、人工呼吸において特に重要である。供給された呼吸ガスが乾燥しすぎていると、患者は人工呼吸の際に脱水症状を起こす。供給された呼吸ガスが湿りすぎていると、水が呼吸ガスから結露して液状で患者の肺に入り込み、所望の代謝ガス交換を阻害する。
【0011】
呼吸ガスからの結露水が患者の肺に達していなくても、呼吸ガス導管アセンブリおよび/または、例えば近位フローセンサなどのセンサの壁で結露して、センサの測定精度を低下させることがある。
【0012】
ここで、呼吸ガスの相対湿度は、その絶対湿度よりも重要である。絶対湿度とは、空気の基準体積に溶けた水の量を示す。相対湿度は、空気の所定の基準体積がどれだけの水分を吸収できるか、例えば患者からどれだけの水分を取り込むことができるか、または呼吸ガスがその水分飽和度にどれだけ近いかを示す指標である。水分でほぼ飽和した呼吸ガスは、呼吸ガス温度のわずかな変化でさえも、呼吸ガスからの水分の非常に望ましくない結露(専門分野では「レインアウト」とも呼ばれる)を引き起こす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/0073013号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2143459号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の課題は、患者が長い呼吸期間にわたって可能な限り正確かつ可能な限り安定的に、正しく加湿された呼吸ガスで呼吸できるように、冒頭で述べたタイプの呼吸装置を開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、本発明によれば、本願の冒頭に記載の呼吸装置によって解決され、ここで、湿度センサアセンブリが、呼吸ガス流の吸気方向において加湿装置の上流に追加的に配置され、加湿装置の上流の少なくとも1つの湿度状態値を検出するように構成され、ここで、呼吸装置は、呼吸装置周囲の温度を検出するように構成された少なくとも1つの周囲温度センサを有し、制御装置は、少なくとも1つの周囲温度センサと信号伝送の点で接続されており、既に述べた依存関係に加えて、少なくとも1つの周囲温度センサからの信号にも依存して、気化装置の作動電力を制御するように構成されている。
【0016】
湿度センサアセンブリを吸気方向において加湿装置の上流に配置することにより、湿度センサアセンブリは、初期状態、すなわちいずれかの加湿手段が実行される前の呼吸ガス湿度を検出できる。したがって、制御装置は、呼吸ガスの加湿要求を特に正確に算出することができる。
【0017】
これは、米国特許出願公開第2013/0073013号から公知である、加湿装置の下流側に湿度センサアセンブリを配置し、湿度センサアセンブリの検出値に基づいて呼吸ガス湿度のフィードバック制御を可能にすることが期待される場合よりも、驚くべきことに有利である。しかし、実際には、加湿装置の加熱板へのエネルギー供給量を変更して呼吸ガス湿度を変化させることは、非常に遅く緩慢であり、したがって、目標湿度と実湿度との間の距離が減少すると、制御回路を十分な精度で実施することがますます困難になる。
【0018】
したがって、呼吸ガス湿度を制御するためには、呼吸ガスが加湿装置に到達する前に呼吸ガス湿度を検出し、実際の加湿要求を算出し、この要求に応じて加湿装置を動作させることがより有利であるとわかった。これは、加湿装置より後の呼吸ガス湿度の検出に基づく場合によって生じる制御よりも、実際の呼吸ガス湿度を所望の目標湿度に強くかつ迅速に近づけることをもたらす。
【0019】
周囲温度センサで周囲温度を検出することにより、制御装置は、加湿装置および/または呼吸ガスの、周囲への熱損失の尺度である量を使用可能である。これにより、制御装置は、呼吸ガス流量、近位温度センサにおける呼吸ガスの温度、呼吸ガス湿度などの直接的な動作パラメータを用いて気化装置の作動電力を算出するだけでなく、この作動電力を算出するために、生じ得る周囲への損失量を考慮することができる。
【0020】
したがって、制御装置は、周囲温度センサによって検出された周囲温度を、生じ得る外部環境への熱周囲損失に関して、算出された気化装置の作動電力を補正するための補正量として使用するように構成される。
【0021】
熱周囲損失に対して制御装置によって気化装置に供給される作動電力を補正することは、救急医療や応急処置のために特に重要である。ここで議論されているような呼吸装置は、パラメトリックに予測可能な臨床環境に使用されるだけでなく、搬送ヘリコプターに至るまで、環境条件が全く一定ではなく予測不能な緊急搬送車両にも使用されている。ここで、例えば、冬場に標高3000~4800mの高山環境下で重傷を負った事故被害者を救助し、直ちに救命処置を行うべき山岳救助用の搬送ヘリコプターに配備された救急医のような極端なケースが考えられる。
【0022】
制御装置は、多数のパラメータの組合せについて実験室で予め算出された、実証的に算出された相関関係に基づいた上記パラメータ想定して気化装置の作動電力を制御することができる。相関関係は、式相関、マップ、または/およびテーブルとして、制御装置によって取得可能なデータメモリに格納することができる。
【0023】
ここで、制御装置による呼吸ガス湿度の調整は、複数のステップで行うことができる。まず、制御装置は、近位温度センサの測定地における所望の呼吸ガス温度(以下、「近位呼吸ガス温度」ともいう)に基づいて、さらに、量的に所望の呼吸ガス流量に基づいて、目標呼吸ガス湿度を算出することができる。この算出は、実証的に決定された、かつ制御装置によって取得可能なデータメモリに格納されたデータ相関関係に基づいて行うことができる。このようにして決定された目標呼吸ガス湿度を目標値として出発し、実証的に決定されてデータメモリに格納された相関関係に基づいて、気化装置の上流で検出された実際の呼吸ガス湿度および上記パラメータの他のパラメータを用いて、気化装置の作動電力を算出することができる。
【0024】
損失補正量としての周囲温度は、作動電力を算出する際に直接考慮することができ、または作動電力は、冒頭で述べたパラメータを用いて算出でき、続いて検出された周囲温度に応じて補正できる。
【0025】
上述したように、呼吸ガスの相対湿度は、絶対湿度よりも呼吸の生理的適合性に対して重要である。しかし、その後所定の呼吸ガス量に含まれる水の質量はそれ自体が既知であるため、気化装置の作動電力の算出には呼吸ガスの絶対湿度がより適切である。このことから、呼吸ガスを正しく加湿するために、呼吸ガスにどれほどの差分水質量を供給する必要があるかを容易に算出できる。所定の時間内に既知の水質量を蒸発させるために算出される必要電力は、その後、周囲損失に関してまだ補正されていない作動電力である。これに対し、呼吸ガスの相対湿度のみが意味するのは、現在の呼吸ガス湿度と飽和呼吸ガス湿度との比率のみであり、ここから欠落している差分水量は算出できない。
【0026】
しかし、一方では呼吸ガスの温度が、他方では蒸発する液体、通常は水の露点曲線が同時に既知であれば、その相対湿度は呼吸ガスの絶対湿度に等しい。したがって、蒸発する液体の露点曲線または露点曲線に対応するデータ相関関係が制御装置に格納されている限り、湿度センサアセンブリは絶対呼吸ガス湿度を算出するためのセンサを有するか、または相対呼吸ガス湿度を算出するためのセンサと温度センサとを有することができる。
である。
【0027】
記載したパラメータ以外の量の直接的な算出は、この他の量が既知の相関関係、例えば校正関係に基づいて記載したパラメータを表す場合には、本出願の意味において、記載したパラメータのセンサによる算出に等しい。
【0028】
本願では、「水分」および「湿度」という用語は同義語として使用されている。
【0029】
実験室では、前述の影響を与えるパラメータは、所期の動作値領域の範囲内で制御されて変動し、目標パラメータへのその影響を検出する必要があるため、データの相関関係を実証的に算出することは手間がかかる。しかし、この手間は、同一の呼吸装置に対してただ一度かけるだけでよいと考えられる。呼吸装置の設計構成のためにこのように算出されたデータ相関関係は、その後、同一構造の多数の呼吸装置に使用することができる。その後、既に算出されたデータ相関関係が具体的な呼吸装置に対して適切か否かをランダムにチェックすれば十分である。
【0030】
呼吸ガスの加湿が患者に可能な限り近いパラメータを用いて行われるように、近位温度センサが温度を検出するのと同様に、フローセンサは呼吸ガス導管アセンブリの近位長手方向端部領域において、少なくとも吸気性呼吸ガス流の流量を検出することができる。
【0031】
所望の呼吸状況を定義するために、呼吸装置は、呼吸ガス導管アセンブリの近位長手方向端部領域における呼吸ガス流の少なくとも1つの目標温度を入力するための、および/または呼吸ガスの少なくとも1つの目標湿度を入力するための、および/または少なくとも1つの呼吸ガス流量を入力するための入力装置を有することができる。また、上記パラメータの一部のみを入力装置で入力することも可能であり、一方で、上記パラメータの他のパラメータは、入力されたパラメータおよび/または他のパラメータに応じて実証的に算出されたデータ相関関係を用いて算出することができる。
【0032】
例えば、動作を単純化するために、呼吸装置は、呼吸ガス導管アセンブリの近位長手方向端部領域における呼吸ガス流の目標温度を入力するための入力装置を有してもよく、さらに、制御装置によって取得可能なデータメモリであって、呼吸ガス導管アセンブリの近位長手方向端部領域における呼吸ガス流の温度値と、呼吸ガスの対応づけられた目標湿度値との間の、好ましくは実証的に算出された相関関係が保存されたデータメモリを有してもよい。その後、制御装置が呼吸ガスの対応づけられた目標湿度を決定できるように、近位呼吸ガス流温度のみを入力すれば十分である。
【0033】
呼吸ガス導管アセンブリの壁上での水分の望ましくない結露を回避するために、呼吸ガス導管アセンブリの少なくとも1つの吸気導管部は、導管ヒータを有していてもよい。この導管ヒータにより、吸気導管部を加熱することができる。これにより、吸気導管部の壁の温度が、導管部を流れる呼吸ガスの露点温度以下に低下することを回避できる。そして、制御装置は、呼吸ガス導管アセンブリの近位長手方向端部領域における呼吸ガス流の所定の目標温度に依存して、導管ヒータの作動電力を制御するように構成することができる。また、導管ヒータに供給されるエネルギーまたは電力を算出する際、制御装置は検出された周囲温度を考慮できる。これにより、呼吸ガス導管アセンブリは、通常、周囲温度を有する周囲空気によってその外側が湿潤されるため、導管部を加熱するための制御回路が大幅に簡素化される。導管部を加熱する際に周囲温度が考慮されると、吸気導管部の加熱された壁の望ましくない温度変動を回避することができる。そのため、加熱された導管部の温度をより良好な不変性で維持することができる。
【0034】
呼吸ガス源アセンブリは、呼吸ガス源として吸入口を有してもよく、この吸入口を通じて、周囲空気または所定のガス貯蔵部からのガスを取り入れることができる。呼吸ガス源アセンブリは、例えば、貯蔵容器として、または診療所でしばしば見られるように、呼吸装置を局所的に設置されたガス貯蔵部に接続するための供給管を接続するための接続構成体として、追加的または代替的に、呼吸ガス源としてのガス貯蔵部を有することができる。異なるガスを1つの呼吸ガスに混合する手段を提供するために、呼吸ガス源アセンブリは、上述のような複数の個別の呼吸ガス源を有することができる。この時、混合される異なるガスは、供給および緩和のために異なる温度および/または湿度を有することができる。湿度センサアセンブリが患者に実際に供給される呼吸ガスの湿度を確実に検出するために、湿度センサアセンブリは、好ましくは、呼吸ガス流の吸気方向において呼吸ガス源アセンブリの下流側に配置される。上述した理由から、吸気方向において加湿装置の下流側では、加湿装置から出てくる呼吸ガス流には、呼吸ガス成分が添加されないことが特に好ましい。
【0035】
気化装置に供給されるエネルギーまたは電力を検出して制御するために、制御装置を気化装置に信号伝送の点で接続してもよい。追加的に、または代替的に、制御装置を信号伝送の点で気化装置の電源に接続してもよい。例えば、制御装置は、気化装置に供給される電流と、印加される電圧とを直接検出するように構成されていてもよい。エネルギー、特に電気エネルギーを検出するための制御装置の直接的な構成があまりに多くの手間を必要とする場合、制御装置は、気化装置に供給されるエネルギーを検出するように構成された少なくとも1つのエネルギーセンサに信号伝送の点で接続してもよい。次に、気化装置に現在供給されているエネルギーまたは/および電力は、信号伝送による接続を介して制御装置に伝送される信号から、制御装置によって算出することができる。ここで、エネルギーと電力の算出は、電力が時間に関連したエネルギー検出を表すという点でのみ異なる。
【0036】
呼吸装置からそれぞれ呼吸する患者への呼吸ガスの移送を患者の需要に適合させるために、呼吸ガス導管アセンブリは、呼吸ガス導管アセンブリと患者との間で呼吸ガスを伝送する患者インターフェースに呼吸ガス導管アセンブリを連結するための連結構成体を、その近位端部に有することができる。そのような患者インターフェースは、内気管チューブ、喉頭マスクまたはコンビチューブ等であってもよい。連結構成体は、呼吸ガス導管アセンブリの長手方向端部に設けられ、呼吸ガス流の流量を検出するための近位フローセンサに構成されていてもよい。
【0037】
呼吸ガス導管アセンブリが部分的にまたは完全に加熱可能であっても、呼吸ガス導管アセンブリに連結可能な患者インターフェースは、一般的に加熱可能ではない。したがって、患者インターフェースの温度および患者インターフェース内の呼吸ガス流の温度は、呼吸ガス導管アセンブリの温度およびそこでの呼吸ガス流の温度よりも大幅に変動する可能性がある。
【0038】
患者インターフェースがチューブであるかマスクであるかにかかわらず、呼吸ガス導管アセンブリの連結構成体に直接接続する患者インターフェースの部分は、常に周囲空気に囲まれ、したがって周囲温度の影響を受ける。
【0039】
特に、上述した緊急搬送状況では、周囲温度は、患者の体温および呼吸ガス流の所望の温度よりもかなり低い可能性がある。したがって、例えば、周囲空気によって冷却された患者インターフェースの壁において、呼吸ガス流の露点温度が下回っているために、呼吸ガスからの水分の結露が患者インターフェースで発生し得る。患者インターフェースは、患者に特に近接して配置され、気管チューブの場合には、患者の体に挿入さえされているため、患者インターフェースの領域での水分の結露は、呼吸している患者にとって特に危険である。
【0040】
結露は、周囲空気によって強く冷却された患者インターフェースの壁で発生する可能性がある。追加的に、または代替的に、結露は、呼吸ガス流の中で直接ミスト形成として発生する可能性がある。
【0041】
患者インターフェースは通常非加熱であるだけでなく、ワンウェイまたは使い捨て品であるため、通常センサが搭載されていない。これにより、患者インターフェース内の結露の検出および対策が困難になる。
【0042】
患者インターフェース内の呼吸ガス流における水分の望ましくない結露を回避するために、制御装置は、温度、質量または体積流量および/または相対湿度などの呼吸ガス流の動作パラメータに依存して、吸入方向における連結構成体下流側の呼吸状況の後続状態を算出し、その算出結果に依存して気化装置の作動電力を変更するように構成することができる。制御装置が患者インターフェース内の結露に関して危機的な後続状態を検知した場合、気化装置の作動電力は変更され、通常は減少し、したがって、患者インターフェース内の結露のリスクは低減されるか、または除去される。
【0043】
例えば、後続状態の算出に関連する呼吸装置の動作パラメータは、近位温度センサによって検出されて制御装置に伝送される呼吸ガス導管アセンブリの近位長手方向端部領域の呼吸ガス流の温度と、周囲温度センサによって検出されて制御装置に伝送される周囲温度とを含んでもよい。追加的に、または代替的に、フローセンサによって算出された呼吸ガス流量を用いて、後続状態を算出することができる。別の関連する動作パラメータは、患者インターフェースの種類とその設計構成とすることができる。
【0044】
他方で、制御装置によって取得可能なデータメモリには、少なくとも1つの、好ましくは実証的に算出された後続のデータ相関関係が保存されており、これは、呼吸装置の動作パラメータのセット(これは、上述した動作パラメータのうち複数または全てであり得る)を、患者インターフェースにおける呼吸ガス水分の結露の発生を示す後続パラメータとリンクさせることができる。
【0045】
後続パラメータは、患者インターフェースで結露が発生しないことを示す第1の値、またはその反対を示す、すなわち患者インターフェースで結露が発生していることを示す第2の値のいずれかを取ることができるバイナリパラメータであり得る。
【0046】
データメモリに格納された後続のデータ相関関係に依存して、例えば患者インターフェースにおける呼吸状況の解析的または数値的に管理可能なモデルを使用することによって、後続パラメータは、呼吸ガス流からの水分の結露が患者インターフェースにおいて起こり得る確率を示すことができる。
【0047】
現在の呼吸状況に関連している動作パラメータ間のデータ相関関係を実証的に確定する際に、実証的に調査したパラメータに類似したケースの割合でしか結露が発生していないという事実によって、あるいは、データ相関関係が支持点を用いて表形式で定義されているために、現在の呼吸状況を表す全ての動作パラメータ値に対してデータ相関関係が存在しないという事実によって、このような確率値は追加的にあるいは代替的に成立することが可能である。この場合、欠落している値を既存の値について補間または/および、外挿することができる。ここで、動作パラメータと後続パラメータとの間の相関関係が複雑で多次元的である場合、後続パラメータの算出において不確定さが発生し得るが、これは、確率として適切に再現することができるか、または解釈することができる。
【0048】
このように、制御装置は、患者インターフェースにおける差し迫った結露を避けるために、後続パラメータに応じて気化装置の作動電力を変更することができる、特に、減少させることができる。例えば、上述した単純なバイナリ後続パラメータの場合、一方の値は気化装置の作動電力の低下につながり、他方の値はそうでない可能性がある。確率値、すなわち0から1の間の値、または0%から100%の間の値の形の上述した後続パラメータの場合、患者インターフェースで結露する確率が約40%以上である閾値確率値が予め定められていてもよく、後続パラメータがこれを超えると制御装置による気化装置の作動電力の低下をもたらす。この場合作動電力の低下量は、閾値確率値の有無にかかわらず、後続パラメータが患者インターフェース内の結露を見込む確率値に依存してもよい。作動電力の低下量の後続パラメータの確率値への依存性は、線形であってもよく、進行性であってもよいため、既存の作動電力から出発して、作動電力の低下量は、後続パラメータに従った結露の確率の増加に伴って、結露の確率よりも大幅に増加する。
【0049】
計算的に取り扱いが容易で、なおかつ非常に効果的な好ましい適用ケースにおいて、呼吸状況の後続状態または後続パラメータは、患者インターフェースの導管壁の後続温度および/または患者インターフェースの呼吸ガス流の後続温度を含むことができる。
【0050】
後続状態を表すために後続温度を使用することの第1の利点は、患者インターフェースを製造するために使用される材料を含む患者インターフェースの公知な設計において、および公知な周囲および動作条件下で、センサによって検出された最後の動作状態、例えば呼吸ガス導管アセンブリの近位長手方向端部における連結構成体の領域から出発して、吸気方向における連結構成体下流側の後続温度を、熱力学モデルを用いて良好な精度で計算することができることである。したがって、患者インターフェースにおける後続温度は、測定技術によって検出されたパラメータ、特に患者インターフェースに最も近いところに位置するパラメータを想定して、熱力学モデルに基づいて計算することができるか、または、後続温度は、上記パラメータを想定して実証的に取得されたマップに基づいて読み出すことができるか、または、モデル予測と実証的データ相関関係の読み出しとの組合せを用いて後続温度を算出することができる。
【0051】
後続状態を表すために後続温度を使用することの第2の利点は、呼吸ガス流からの水分の結露を予測するために後続温度だけで十分である点である。呼吸ガス流の絶対湿度が、直接測定によって、または呼吸ガス流の相対湿度および温度を測定することによって知られている場合には、呼吸ガス流の露点温度が知られているか、または格納されている露点曲線から算出することができる。後続温度がそれぞれの呼吸ガス流に対して算出された露点温度を下回る場合、結露、すなわち、患者インターフェースでの呼吸ガス中の水分の望ましくない「レインアウト」が生じる可能性が高い。
【0052】
上で既に示されているように、患者インターフェースにおける後続温度を予測するために、呼吸装置は、制御装置によって取得可能なデータメモリを有することができ、このデータメモリでは、呼吸装置によって検出可能な周囲温度などの動作パラメータ値、および/または呼吸ガス導管アセンブリにおいて検出可能な呼吸ガス流の動作パラメータ値が、患者インターフェースの導管壁および/または呼吸ガス流の後続温度値にリンクされている。完全性と明瞭性のために、測定技術によって検出された動作パラメータ値を想定した補間値または外挿値も、本願の意味では測定技術によって検出されたものとみなされることに留意されたい。
【0053】
データメモリに格納されているデータ相関関係により、それが実証的に算出されたデータテーブルまたはデータマップであろうと、または分析モデルまたは数値計算モデルであろうと、制御装置は、呼吸ガス導管アセンブリの近位長手方向端部領域の近位温度センサによって検出された呼吸ガス流の温度、フローセンサによって検出された呼吸ガス流の流量、および呼吸ガスの所定の目標湿度に依存して、良好な精度で後続状態を算出することができる。このように、患者インターフェースにおける望ましくない結露の確率は、概観可能な数の公知または測定可能なパラメータ値によって、非常に迅速かつ高い精度で予測することができる。
【0054】
患者インターフェースにおける呼吸ガス中の水分の望ましくない結露は、制御装置が周囲温度センサによって検出された周囲温度に依存して後続状態を算出する場合に、特に正確に予測することができる。患者インターフェースの少なくとも一部分に外部から作用する周囲温度は、患者インターフェース内を流れる呼吸ガスの温度に、ひいては患者インターフェース内で生じ得る結露に強く影響する要素である。
【0055】
さらなる下流、すなわち患者に近いほど、患者にとってより不利な作用が得られ、呼吸ガス中の結露が患者インターフェースで起こり、したがって患者インターフェースでの水分が懸念されるため、本発明の有利な改善構成では、制御装置が、遠位端よりも患者インターフェースの近位端の近くに位置する算出位置の後続状態を算出し、制御装置は、好ましくは、患者インターフェースの近位端の後続状態を算出する。
【0056】
追加的に、または代替的に、制御装置は、連結構成体と患者インターフェースの患者体内への進入点との間に位置する患者インターフェースの部分の後続状態を算出することができる。その後、後続状態、特に後続温度は、周囲の影響、ひいては周囲温度に直接さらされている患者インターフェースの部分について正確に算出され、周囲の温度は、極端な動作状況では、呼吸ガス流の所望の温度から大幅に逸脱する可能性がある。
【0057】
さらに、呼吸ガス導管アセンブリの吸気導管部を導管ヒータによって加熱することができる場合、制御装置は、算出結果に依存して、導管ヒータの作動電力を変化させることができる、特に、増加させることができる。わずかに暖かすぎる、または液相成分を有する呼吸ガスが患者に短時間に供給されるかどうかを考量すると、呼吸ガス温度を上昇させる選択肢が好ましい。
【0058】
連結構成体は、好ましくは、呼吸ガス導管アセンブリのY導管部の近位長手方向端部に構成され、Y導管部の2つの遠位長手方向端部に、それぞれ吸気ホースと呼気ホースとが接続されている。
【0059】
フローセンサは、呼吸装置の操作ハウジング内に収容される遠位フローセンサであってもよい。追加的に、または代替的に、フローセンサは、呼吸ガス導管アセンブリの近位長手方向端部に好ましくは交換可能に配置された近位フローセンサであり得る。近位フローセンサは、連結構成体と患者インターフェースとの間に配置されてもよい。このような近位フローセンサは、差圧式流量センサとして構成された場合には、高い測定精度を提供することができ、なおかつ低コストである。近位フローセンサは、連結構成体の一部であってよく、それ自体は、患者インターフェースを連結するために構成することができる。
【0060】
気化装置は、好ましくは、貯水部を加熱して気化させる加熱装置を有する。上記の算出結果が、患者インターフェースにおける水分の結露が確実であるか、または高確率であるか、または所定の確率閾値以上であるか、または後続温度が所定の後続温度閾値以上であるかを示している場合に、制御装置は、加熱装置の加熱力を低減するように構成されることが好ましい。
【0061】
代替的または追加的に、気化装置は超音波ネブライザを有していてもよい。このような状況下では、算出結果に依存して制御装置が変更可能な作動電力は、超音波ネブライザの作動電力である。霧化力を低減するための条件は、加熱力を低減するための上記の条件である。
【0062】
以下に、本発明を添付の図面を用いて詳述する。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明にかかる患者の人工呼吸に適応した呼吸装置の概略図。
図2図1の呼吸装置の吸気性呼吸ガス導管部の概略図。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1では、本発明にかかる呼吸装置の実施形態が一般的に10と示されている。図示の例では、呼吸装置10は、人間の患者12の人工呼吸に使用される。
【0065】
呼吸装置10は、吸入口15(不透明なハウジング材料のため外部からは見えない)が構成され、流量変更装置16および制御装置18が収容されているハウジング14を有する。吸入口15は、流量変更装置16が呼吸装置の外部環境Uから周囲空気を吸引し、フィルタを介したそれ自体公知な洗浄後、呼吸ガスとして患者12に供給することを可能にする。したがって、吸入口15は、本願の意味での呼吸ガス源アセンブリである。
【0066】
吸引口15には、環境Uの空気の温度を測定して制御装置18に伝送する周囲温度センサ17がある。
【0067】
流量変更装置16は、それ自体公知の方法で構成されており、ポンプ、圧縮機、送風機52、圧力容器、還元弁54(図2参照)等を含んでいてもよい。さらに、呼吸装置10は、それ自体公知の方法で、吸気弁20および呼気弁22を有する。
【0068】
制御装置18は、通常、コンピュータまたはマイクロプロセッサとして実現されている。制御装置18は、図1において19と示されたデータメモリを含み、呼吸装置10の作動に必要なデータを保存し、必要に応じてこれらのデータを呼び出すことができる。また、データメモリ19は、ネットワークで作動する場合には、ハウジング14外部にも置くことができ、データ伝送接続によって制御装置18に接続することができる。データ伝送接続は、ケーブルまたは無線によって形成することができる。しかしながら、データ伝送接続の干渉が呼吸装置10の作動に影響を与えないように、データメモリ19は制御装置18に統合されているか、または少なくともこれと同じハウジング14内に収容されていることが好ましい。
【0069】
呼吸装置10、より正確には制御装置18へのデータ入力のために、呼吸装置10は、図1に示す例ではキーボードで表される入力装置24を有する。以下に引き続いて説明するように、キーボードは制御装置18の唯一のデータ入力部ではない。実際には、制御装置18は、ネットワーク回線、無線、またはセンサ端子26などの様々なデータ入力部を介してデータを取得することができ、これは以下に引き続いて詳述される。
【0070】
治療者にデータを出力するために、呼吸装置10は、図示の例では画面である出力装置28を有することができる。
【0071】
人工呼吸のために、患者12は、呼吸ガス導管アセンブリ30を介して、呼吸装置10に、より正確にはハウジング14内の流量変更装置16に接続されている。患者12は、患者インターフェース31としての内気管チューブを用いて挿管される。患者インターフェース31の近位長手方向端部31aは、患者12の肺に吸気性呼吸ガス流AFを放出する。呼気性呼吸ガス流はまた、近位長手方向端部31aを通って呼吸ガス導管アセンブリに流入する。
【0072】
患者インターフェース31の遠位長手方向端部31bは、呼吸ガス導管アセンブリ30に接続するように構成されている。患者インターフェースは、吸気方向下流側の位置31cから近位長手方向端部31aに向かって、患者12の体によって取り囲まれている。逆に言えば、これは、患者インターフェース31が、その遠位長手方向端部31bから位置31cまで外部環境Uに露出しており、外部環境Uと主に対流熱伝達接続状態にあることを意味する。
【0073】
呼吸ガス導管アセンブリ30は、吸気チューブ32を有し、これにより、流量変更装置16からの新鮮な呼吸ガスを患者12の肺に送達することができる。吸気チューブ32は、中断可能であり、第1の吸気チューブ34と第2の吸気チューブ36とを有しており、これらの間には、加湿装置38を設けて、目標とする加湿を行い、場合によって、患者12に供給される吸気性呼吸ガスの温度制御も行うことができる。加湿装置38は、外部貯水部40に接続することができ、この貯水部40を介して、加湿のための水、または、例えば、炎症を抑制するためや気道を広げるための薬剤を加湿装置38に供給できる。本実施形態の呼吸装置10を麻酔用呼吸装置として使用する場合には、揮発性の麻酔薬を、呼吸装置10を介して患者12にコントロールされた方法で送達することができる。加湿装置38は、新鮮な呼吸ガスを所定の湿度で、場合によって薬用エアゾールを添加して、かつ所定の温度で患者12に供給することを確実にする。
【0074】
本例の第2の吸気チューブ36は、導管ヒータ37によって電気的に加熱可能である。導管ヒータ37は、制御装置18によって動作を駆動制御することができる。上記から逸脱して、第1の吸気チューブ34はまた加熱可能であってもよく、および/または少なくとも1つの吸気チューブ34および/または36は、電気導管ヒータ37以外の装置、例えば熱交換媒体でフラッシング洗浄することによって加熱可能であってもよい。
【0075】
呼吸ガス導管アセンブリ30は、既に述べた吸気弁20および呼気弁22に加えて、患者12の肺からの代謝された呼吸ガスが外部環境Uに排出される呼気チューブ42をさらに有する。
【0076】
呼吸ガス導管アセンブリ30の遠位長手方向端部30bでは、吸気チューブ32が吸気弁20に接続され、呼気チューブ42が呼気弁22に接続されている。好ましくは、2つの弁のうちの1つだけが、ガス流の通過と同時に、そのつど開かれる。また、弁20、22の操作制御は、同様に制御装置18によって行われる。
【0077】
呼吸サイクルの間、呼気弁22は、まず吸気相の間は閉じられ、吸気弁20は開いており、これにより、新鮮な吸気性ガスをハウジング14から患者12に導入することができる。流量変更装置16を介して呼吸ガスの圧力を意図的に上昇させることにより、新鮮な呼吸ガス流が実現される。圧力の上昇により、新鮮な呼吸ガスは患者12の肺に流入し、肺の近くの身体部分、すなわち特に胸部を、肺の近くの身体部分の個々の弾性に抗して膨張させる。これにより、患者12の肺内のガス圧も上昇する。
【0078】
吸気相の終了時には、吸気弁20が閉じられ、呼気弁22が開かれる。呼気相が開始される。患者12の肺内の呼吸ガスのガス圧が、吸気相の終了時まで上昇しているため、呼気弁22を開いた後、このガスは外部環境Uに流れ、それにより、患者12の肺内のガス圧は、流出の持続時間が長くなるにつれて低下する。肺12内のガス圧が呼吸装置10に設定された正の呼気終末圧(PEEP)、すなわち気圧よりもわずかに高い圧力に達すると、呼気弁22が閉じた時点で呼気相が終了し、さらなる呼吸サイクルが続く。
【0079】
吸気相の間、患者12には、いわゆる一回呼吸気量、すなわち1呼吸あたりの呼吸ガス量が供給される。一回呼吸気量に1分間の呼吸サイクル数を乗算したもの、すなわち呼吸回数を乗算したものが、ここで実行された人工呼吸の1分間あたりの容量を与える。
【0080】
呼吸装置10、特に制御装置18は、呼吸動作がそのつど呼吸される患者12にできるだけ最適にあらゆる時点で適合されることを確実にするために、呼吸動作中に呼吸装置10の呼吸動作を特徴付ける呼吸動作パラメータを繰り返し更新または算出するように構成されることが好ましい。各呼吸サイクルについて、患者12に最適に適合する現在の呼吸動作パラメータが提供することができるように、呼吸回数とともに1つ以上の呼吸動作パラメータを特定することが特に有利である。
【0081】
このために、呼吸装置10は、患者の状態および/または呼吸装置10の動作を監視する1つ以上のセンサにデータ伝送の点で接続することができる。単に一連の可能なセンサの例示として、図1には、呼吸ガス導管アセンブリ30内で支配的である呼吸ガス流量を検出する近位フローセンサ44が示されている。好ましくは差圧センサとして構成された近位フローセンサ44は、センサ線アセンブリ46によって制御装置18のデータ入力部26と連結することができる。センサ線アセンブリ46は、電気信号伝送線を含むことができるが、必須ではない。また、フローセンサ44の流れ方向の両側に支配的なガス圧をデータ入力部26に伝送するチューブ線を有してもよく、ここでは、このチューブ線は、図2にのみ示されている圧力センサ27によって数値化される。
【0082】
より詳細には、好ましい実施例における呼吸ガス導管アセンブリ30は、例えば、その近位長手方向端部領域30aにおいて、その遠位端部領域で第2の吸気チューブ36および呼気チューブ42に接続され、その近位端部領域で近位フローセンサ44に接続された、別個に構成されたY導管部47を有している。
【0083】
近位フローセンサ44は、その近位端領域に連結構成体44aを有し、これにより、チューブの代わりにマスクであってもよい患者インターフェース31が、近位フローセンサ44と連結され、結果的に呼吸ガス導管アセンブリ30と連結することができる。
【0084】
第2の吸気チューブ36は、その近位長手方向端部領域に近位温度センサ48を有しており、この近位温度センサ48は、第2の吸気チューブ36内の呼吸ガス流AFの温度を患者12に可能な限り近づけて測定し、制御装置18に伝達するようになっている。
【0085】
なお、完全性のためだけに、本発明にかかる呼吸装置10は、移動可能な呼吸装置10として、回転可能な台座50に収容できることを指摘する。
【0086】
図2には、図1の呼吸装置10の吸気性呼吸ガス導管部の概略図が示されている。
【0087】
流量変更装置16は、送風機52と、吸気方向における流量変更装置16の下流側に位置する減圧弁54とを含む。送風機52のみを設けてもよい。制御装置18は、送風機52および還元弁54をそれぞれ回線56および58を介して動作させるように制御することができる。
【0088】
送風機52は、吸入口15を介して外気環境Uから外気を取り込むことができる。また、これに加えて、またはこれに代えて、純粋な酸素などのガスを、弁60を介して貯蔵タンク62からの呼吸ガスとして使用してもよいし、吸い込まれた周囲空気と混合して使用してもよい。したがって、図示された実施例では、吸入口15と貯蔵タンク62が一緒になって呼吸ガス源アセンブリを形成する。
【0089】
吸引された周囲空気は、図示しないフィルタで、呼吸装置10内で周知の方法で洗浄される。
【0090】
吸気弁20は、吸気方向における流量変更装置16の下流側にあり、回線64を介して制御装置18によって開閉制御できる。
【0091】
吸気方向のさらに下流では、第1の吸気チューブ34が吸気弁20に接続されている。
【0092】
呼吸装置10は、狭義には吸気方向における呼吸装置38の上流側の湿度センサアセンブリ66を含み、この湿度センサアセンブリ66は、図示された経済的に好ましい実施例では、吸気性呼吸ガス流AFの相対湿度を算出するためのセンサ68と、センサ68による湿度検出領域内の呼吸ガス温度を算出するための温度センサ70を含む。代替的に、湿度センサアセンブリ66は、呼吸ガスの絶対湿度を検出するためのセンサを1つだけ含んでもよいが、これは費用の理由から好ましくない。
【0093】
湿度センサアセンブリ66は、加湿装置38の上流の呼吸ガスの相対湿度および温度を用いて、呼吸ガス源15および62の後であって、呼吸装置10による加湿が開始される前の呼吸ガスの相対湿度および温度を検出する。湿度センサアセンブリ66は、図1に示された加湿装置38のハウジング内に配置されてもよいが、ホットプレートの形態で熱気化装置76を介して水分を気化させるための熱エネルギーを供給できる貯水部74を有する加湿チャンバ72によって形成された加湿装置38の上流側に配置されてもよい。
【0094】
センサ68、70の検出値は、回線78、80を介して制御装置18に伝送することができる。
【0095】
制御装置18は、加湿装置38に到達する前に、このようにして得られた、呼吸ガスの相対湿度および温度についての検出値から呼吸ガスの絶対湿度を算出し、それらを呼吸ガスの所望の目標湿度と比較することができる。
【0096】
呼吸ガスの目標湿度は、例えば、近位温度センサ48の信号による、および場合によって、近位フローセンサ44によって検出された近位呼吸ガス流量の信号による、データメモリ19に保存されたデータ相関関係から、結果として得ることができる。あるいは、呼吸ガスの所望の目標湿度を、入力装置24を介して手動で入力することもできる。
【0097】
呼吸ガスの目標湿度から出発して、さらに、回線82を介して制御装置18、湿度センサアセンブリ66および近位フローセンサ44に伝送される近位温度センサ48の信号に依存して、制御装置18は、加熱プレートの形態で気化装置76に供給される作動電力を算出する。回線84を介して、制御装置18は、算出された作動電力に応じて気化装置76のエネルギー供給装置86を制御する。回線84を介して、制御装置18は、気化装置76に供給される作動電力に関する情報を、例えば、気化装置76に印加される電圧および気化装置に流れる電流の形態で受信する。エネルギー供給装置86は、例えばパルス幅変調によって、可変電力を気化装置76に供給することができる。パルス幅変調では、気化装置76に印加される電圧は、時間の経過とともに平均化された電圧となる。
【0098】
気化装置76によって貯水部74からの水分が気化され、貯水部74をオーバーフローする呼吸ガス流AFによって運ばれる。
【0099】
また、制御装置18は、気化装置76の環境Uに対する熱損失を考慮して、周囲温度センサ17によって算出された周囲温度も考慮して、エネルギー供給装置86を介して気化装置76に供給するエネルギーを時間毎に算出する。
【0100】
呼吸ガスの目標湿度に依存して、さらに近位呼吸ガス温度、湿度センサアセンブリ66によって間接的に検出される絶対湿度、近位フローセンサ44によって検出された近位呼吸ガス流量、さらに周囲温度に依存して、気化装置76に供給されるべき作動電力を算出するために、同一構造の呼吸装置10に対して制御された条件下でのパラメータ変動によって実験室内で事前に算出された、対応するデータ相関関係がデータメモリ19に保存されている。
【0101】
したがって、制御装置18によって制御される気化装置76を上述のパラメータにしたがって作動させることによって、吸気性呼吸ガス流AFが目標水分量で加湿装置38から離れることを想定することができる。続いて、吸気性呼吸ガス流は、第2の吸気チューブ36に入り、導管ヒータ37によって加熱することができる。導管ヒータ37の動作は、近位温度センサ48によって検出された近位呼吸ガス温度が加湿された呼吸ガス流AFの露点温度以上となるように、近位温度センサ48によって検出された温度に応じて回線88を用いて制御装置18によって制御することができる。
【0102】
露点温度は、呼吸ガスが加湿装置38を通過した後に目標湿度を有すると仮定して、近位温度センサ48によって検出された近位呼吸ガス温度に基づいて算出することができ、さらにデータメモリ19に保存された露点温度曲線に基づいて算出することができる。したがって、露点温度曲線は、近位温度センサ48において下回るべきではなく、好ましくは、一定の安全距離があっても下回るべきではない目標温度をもたらす。
【0103】
なお、露点温度曲線をデータメモリ19に格納することは、必ずしも連続的に微分可能な曲線を格納することを意味するものではない。露点温度曲線は、十分な数の支持点を用いて、例えば表として近似的に保存すれば十分である。露点温度については、既知の絶対湿度または、相対湿度と対応づけられた温度からの既知の値の組に基づいて露点温度を算出するための近似数学関数を格納することもできる。
【0104】
十分に加湿されているが過湿ではない呼吸ガスを患者に正しく供給することの一つの問題点は、患者インターフェース31であ。患者インターフェース31は、第2の吸気チューブ36のように加熱可能なものでもなく、患者インターフェース31の呼吸状態を検出し得る何らかのセンサも備えていない。これは、患者インターフェース31がワンウェイまたは使い捨てのインターフェースであるという通常の性質に起因する。
【0105】
特に、周囲温度が非常に低い場合、例えば緊急時の操作中には、少なくとも患者インターフェース31の遠位長手方向端部31bと、位置31cにおける患者12への患者インターフェース31の入口との間で外部環境Uに露出している部分は、周囲温度の影響を強く受ける。この部分の患者インターフェース31は、患者インターフェース31に「レインアウト」が発生するほど周囲の温度によって強く冷却され得る。吸気性呼吸ガス流AFからのこの望ましくない水分の結露は、通常、周囲空気によって冷却された、患者インターフェース31の管壁上で最も起こりやすい。しかし、患者インターフェース31内の吸入流AFが周囲温度の影響を受けて冷却され、吸入流AF内にミストが形成される程度に冷却される可能性もある。
【0106】
このような患者インターフェース31内の水分の望ましくない結露を避けるために、制御装置18は、利用可能なセンサによってそれに伝送された、呼吸装置の特に吸気性呼吸ガス流量AFの動作パラメータに基づいて、周囲温度の影響下で生じる、連結構成体44aの下流側の吸気方向における患者インターフェース31の呼吸状況の後続状態を算出し、これによって算出された後続状態に基づいて患者インターフェース31内で結露が予想されるかどうかを算出するために構成されている。
【0107】
このために、実証的に算出されたデータ相関関係または解析的にもしくは数値的に解決可能な方程式系のいずれかを、呼吸装置10およびその環境Uの動作データに依存する動作中の患者インターフェース31の熱状態のモデル記述としてデータメモリ19に格納することができる。
【0108】
特に単純で迅速に算出可能な計算モデルにおいて、患者インターフェース31の後続状態は、患者インターフェース31の後続温度であり、これは、例えば、温度センサ48における近位呼吸ガス温度を想定して、そこに使用される材料を含む患者インターフェース31の設計構成をさらに考慮して、周囲温度センサ17によって測定される周囲温度をさらに考慮に入れて算出することができる。近位フローセンサ44によって検出された吸気性呼吸ガス流AF、および所望であれば、同じく近位フローセンサ44によって検出された呼気性呼吸ガス流さえも、後続温度を算出するために使用することができる。
【0109】
例えば、制御装置18は、上述した呼吸装置10の制御により、既に吸気性呼吸ガス流AFの露点温度を有しており、その後、実証的に算出されたデータ相関関係に基づいておよび/または熱力学モデルに基づいて算出された患者インターフェース31の後続温度が、吸気方向における遠位長手方向端部31bの上流側に位置する点で露点温度を下回る場合、制御装置18は、患者インターフェース31に結露の危険性が差し迫っていることを想定することができる。また、患者の安全性のために、露点温度を直接使用するのではなく、露点温度を所定の安全幅で上昇させた閾値温度使用するのが好ましい。
【0110】
このようにして、制御装置18が、患者インターフェース31内で確実に、またはかなりの確率で、または所定の限界確率を超えて結露が発生したと判定した場合には、制御装置18は、気化装置76に供給される作動電力を減少させるように構成されている。気化装置76の作動電力の低減量は、この場合、算出結果に基づいて結露の危険性が高いほど、例えば、患者インターフェース31の後続温度が閾値温度を下回る量、または、さらには露点温度を下回る量が大幅であるほど、増えるように選択することができる。
【0111】
さらに、制御装置18は、呼吸ガス導管アセンブリ30の近位長手方向端部30aに向かう途中の吸気性呼吸ガス流AFの温度を上昇させるために、回線加熱アセンブリ37の作動電力を増加させることもできる。しかしながら、本実施形態の制御装置18は、加熱不可である吸気チューブの患者インターフェース31における吸気ガスの結露も回避することが望ましいので、気化装置76の作動電力の低減は、いずれにしても実施される。
【符号の説明】
【0112】
3 呼吸ガス導管アセンブリ
5 送風機
10 呼吸装置
12 患者
14 ハウジング
15 吸入口
16 流量変更装置
17 周囲温度センサ
18 制御装置
19 データメモリ
20 吸気弁
22 呼気弁
24 入力装置
26 データ入力部
28 出力装置
31 患者インターフェース
31a 近位長手方向端部
31b 遠位長手方向端部
31c 位置
32 吸気チューブ
34 第1の吸気チューブ
36 第2の吸気チューブ
37 導管ヒータ
38 加湿装置
42 呼気チューブ
44 近位フローセンサ
44a 連結構成体
46 センサ線アセンブリ
47 Y導管部
48 近位温度センサ
50 台座
52 送風機
54 減圧弁
56、58 回線
60 弁
62 貯蔵タンク
64 回線
66 湿度センサアセンブリ
68 センサ
70 温度センサ
72 加湿チャンバ
74 貯水部
76 熱気化装置
78、80 回線
82 回線
86 エネルギー供給装置
U 環境
AF 呼吸ガス流AF
図1
図2
【外国語明細書】