(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042026
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】治療薬による処置から利益を受けうる被験体を特定するためのサンドウィッチELISA
(51)【国際特許分類】
G01N 33/574 20060101AFI20240319BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240319BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240319BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240319BHJP
G01N 33/53 20060101ALI20240319BHJP
G01N 33/533 20060101ALI20240319BHJP
G01N 33/535 20060101ALI20240319BHJP
C07K 16/30 20060101ALN20240319BHJP
C07K 16/42 20060101ALN20240319BHJP
C12Q 1/04 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
G01N33/574 A
A61K39/395 N
A61K39/395 T
A61K39/395 U
A61P35/00
A61P37/02
G01N33/53 Y
G01N33/533
G01N33/535
C07K16/30
C07K16/42
C12Q1/04
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024009410
(22)【出願日】2024-01-25
(62)【分割の表示】P 2020551478の分割
【原出願日】2019-03-27
(31)【優先権主張番号】62/648,718
(32)【優先日】2018-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/657,288
(32)【優先日】2018-04-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Blu-ray
2.VISUAL BASIC
3.PYTHON
4.FIREWIRE
(71)【出願人】
【識別番号】511172461
【氏名又は名称】ラボラトリー コーポレイション オブ アメリカ ホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ジェフリー シュスター
(57)【要約】
【課題】治療薬による処置から利益を受けうる被験体を特定するためのサンドウィッチELISAの提供。
【解決手段】治療薬の使用から利益を受ける可能性がある被験体を特定するための、組成物および方法が開示される。本発明は、治療用モノクローナル抗体が、患者の/患者からの生物学的物質と相互作用するかどうかを決定するために、単一のエピトープに対する治療用モノクローナル抗体の特異性を利用する。標的化複合体は、1.抗体Aであって、(a)関心のあるエピトープに特異的な可変領域、および(b)ヒト定常領域を含む、潜在的な治療用モノクローナル抗体、またはそのフラグメントである、抗体A;ならびに、2.抗体Aのヒト定常領域を認識する、抗体Bを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体から得られたサンプル中で、精製された標的化複合体を、前記被験体が治療薬による処置に適しているかどうかの指標とするための方法であって、
(i)前記サンプルを、前記精製された標的化複合体とインキュベートするステップであって、前記精製された標的化複合体は、以下:
(A)潜在的な治療薬である抗体Aまたはそのフラグメントであって、以下:
(a)関心のあるエピトープに特異的な可変領域、および
(b)ヒト定常領域
を含む、潜在的な治療薬である抗体Aまたはそのフラグメント;ならびに
(B)抗体Aの前記ヒト定常領域を認識する、抗体B
を含み、抗原-抗体複合体を形成し、ここで、前記抗原-抗体複合体は、前記標的化複合体の抗体Aに結合した前記サンプル中の抗原を含む、ステップ;ならびに、
(ii)前記サンプルを洗浄するステップ;ならびに、
(iii)前記抗原-抗体複合体の発現を検出するステップであって、ここで、前記抗原-抗体複合体を発現する被験体は、前記治療薬による処置に適していると特定され、そして、前記標的の発現を欠く被験体は、前記治療薬による処置に適していないと特定される、ステップ
を含む、方法。
【請求項2】
前記治療薬が、モノクローナル抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記被験体が、がんと診断されている患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記被験体が、自己免疫疾患と診断されている患者である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記サンプルが、組織サンプルである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記組織サンプルが、腫瘍に由来する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記検出ステップが、免疫組織化学によって行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記検出ステップが、前記サンプルを、検出部分を含む二次抗体とインキュベートすることを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記検出部分が、フルオロフォア、蛍光タンパク質、粒子、または酵素のうちの少なくとも1つを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記酵素が、ルシフェラーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、またはグリコシダーゼのうちの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記サンプルがスコアを付けられるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記サンプルが、複数の異なる標的化複合体とインキュベートされる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の標的化複合体が、
i)各異なる番号のAbAが異なる潜在的な治療用モノクローナル抗体である、AbA1、AbA2、AbA3、またはそれらのフラグメントであって、以下:
(a)関心のあるエピトープに特異的な可変領域、および
(b)ヒト定常領域
を含む、各異なる番号のAbAが異なる潜在的な治療用モノクローナル抗体であるAbA1、AbA2、AbA3、またはそれらのフラグメント;ならびに
(ii)AbB1、AbB2、AbB3であって、ここで、各異なる番号のAbBは、対応する番号のAbAの前記ヒト定常領域に結合する、AbB1、AbB2、AbB3
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
治療薬による処置に適している被験体を特定するためのシステムであって、以下:
(i)サンプルを、精製された標的化複合体とインキュベートするためのコンポーネントであって、以下:
(A)潜在的な治療用モノクローナル抗体である抗体Aまたはそのフラグメントであって、以下:
(a)関心のあるエピトープに特異的な可変領域、および
(b)ヒト定常領域
を含む、潜在的な治療用モノクローナル抗体である抗体Aまたはそのフラグメント;ならびに
(B)抗体Aの前記ヒト定常領域を認識する、抗体B
を含み、抗原-抗体複合体標的を形成し、ここで、前記抗原-抗体複合体は、前記標的化複合体の抗体Aに結合した前記サンプル中の抗原を含む、コンポーネント;ならびに、
(ii)前記サンプルを洗浄するためのコンポーネント;ならびに、
(iii)前記抗原-抗体複合体標的の発現を検出するコンポーネントであって、ここで、前記標的を発現する被験体は、前記治療薬による処置に適していると特定され、そして、前記標的の発現を欠く被験体は、前記治療薬による処置に適していないと特定される、コンポーネント、
を含む、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年3月27日出願の米国仮出願第62/648,718号および2018年4月13日出願の米国仮出願第62/657,288号の利益を主張し、それらは、それぞれ参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0002】
本発明は、治療用モノクローナル抗体による処置から利益を受けうる被験体を特定するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
医薬開発中およびその後の患者管理において、モノクローナル抗体(mAb)が標的タンパク質と相互作用するように設計され、その標的タンパク質の存在およびまたは発現レベルについて臨床サンプルを試験することは有用である。mAbは特定の検体(通常、タンパク質またはタンパク質の部分)に対して惹起されるが、各mAbは標的検体の異なるエピトープと反応するであろう。異なるmAbが同じエピトープと反応することもありうるが、mAb生成の本質から、mAbは、異なる配列を有するであろうし、関心のある検体に対するアフィニティーも異なるであろう。
【0004】
各mAbは、それぞれ固有の物質を表すので、特定の治療用mAbが患者の/患者からの生物学的物質と相互作用するであろうかどうかを検討する最も有効なやり方は、同じ治療用mAbの検体結合領域を好ましいアッセイ試薬として含むアッセイを作ることであろう。もし別の種類のアッセイ試薬、例えば別の抗体試薬、を用いると、この後者のアッセイ試薬は、異なる検体エピトープに対するものであろう蓋然性が高く、したがって、患者の(in vivoまたはin vitroの)物質と治療用mAbとの間の、予期される相互作用を特定するのに特異的ではない蓋然性が高い。
【0005】
現在の実施上、mAb医薬を開発する企業は、そのmAb医薬が標的とするものと同じタンパク質に対して作製された抗体に基づく、免疫組織化学(IHC)試験を同時研究および/または同時開発することが多い。これは、多くの場合、試薬(例えば、モノクローナルまたはポリクローナル抗体)ベンダーのカタログを検索することによって行われる。もし、(1または複数の)試薬がカタログで見つかれば、その企業は、製品の特性を評価するために、その試薬をIHCで試験するであろう。上記の技術的な問題(異なるエピトープ)に加えて、臨床試験の開発で使用するには、多くの要因、例えば、原料となる物質が不安定である(例えば、不安定なハイブリドーマなど)、低品質な製造、知的財産権上の問題、および/または商品化する権利などのために、このような市販品による供給では適切ではないことがある。これらの理由から、現在のスクリーニング技術および特定技術は、偽陽性と偽陰性のどちらも生じさる傾向がある。もし適切な試薬が見つからなければ、企業は、当該技術分野の標準的方法によって、新たなAb試薬を作製することを選ぶかもしれない。これには、同じ技術的な欠点の多くが存在し、さらに、開発には6~12か月かかる可能性があり、それによって医薬開発プロジェクトの遅延を招きうる。したがって、治療薬から利益を受けることが最も期待できそうなのはどの患者であるかを特定する方法が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態は、治療薬から利益を受けうる被験体を特定するための組成物および方法を含む。本発明は、様々なやり方で具体化されうる。
【0007】
いくつかの態様において、本発明は、治療薬から利益を受けうる被験体を特定するための標的化複合体の組成物を含む。いくつかの実施形態において、標的化複合体は、抗体Aと抗体Bを含む。抗体Aは、さらに、潜在的な治療用モノクローナル抗体またはそのフラグメントを含む。ある特定の例において、前記モノクローナル抗体は、関心のあるエピトープに特異的な可変領域、およびヒト定常領域を含んでいてもよい。抗体Bは、さらに、抗体Aのヒト定常領域を認識する抗体を含む。抗体Aと抗体Bは、互いに結合して、標的化複合体を形成してもよい。
【0008】
別の態様において、本発明は、標的化複合体を作製する方法を含む。抗体Aは、抗体Bと反応して、標的化複合体を生成しうる。抗体Aが抗体Bと結合体を形成したら、標的化複合体を精製し、結合していないあらゆる試薬を除去する。
【0009】
別の態様において、本発明は、治療薬による処置から利益を受けうる被験体を特定するための方法を含む。治療薬は、モノクローナル抗体またはその部分を含んでいてもよい。治療薬による処置から利益を受けうる被験体を特定するためのステップは、以下:(i)サンプルを得ること、(ii)前記サンプルを標的化複合体とインキュベートすること、(iii)抗原-抗体複合体を検出すること、および(iv)被験体が治療薬に反応性でありうるかどうかを予測すること、を含む。標的化複合体は、抗体Aおよび抗体Bを含みうる。抗体Aは、さらに、潜在的な治療用モノクローナル抗体またはそのフラグメントを含む。ある特定の例において、前記モノクローナル抗体は、関心のあるエピトープに特異的な可変領域、およびヒト定常領域を含んでいてもよい。抗体Bは、さらに、抗体Aのヒト定常領域を認識する抗体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、治療用モノクローナル抗体(AbA)の標的エピトープ(エピトープA)によって、腫瘍タンパク質の発現を検出するための好ましい態様を示す。
【0011】
【
図2】
図2は、治療用モノクローナル抗体(AbA)と、腫瘍タンパク質の特定のエピトープ(エピトープA)との間の相互作用を示す。
【0012】
【
図3】
図3は、治療用モノクローナル抗体の標的ではないエピトープ(エピトープC)による、腫瘍タンパク質発現の検出を示す。
【0013】
【
図4】
図4は、治療用モノクローナル抗体から利益を受けうる被験体を特定するための、抗原結合アッセイの好ましい態様を示す。
【0014】
【
図5】
図5は、複数の異なる治療用モノクローナル抗体から利益を受けうる被験体を特定するための、抗原結合アッセイの好ましい態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
定義
本明細書に別段の定めがない限り、本発明に関連して使用されている科学用語および技術用語は、当業者が一般に理解している意味を有するであろう。さらに、文脈から特にその必要がない限り、単数形の用語は複数形の意味を含むであろうし、複数形の用語は単数形の意味を含むであろう。一般に、本明細書に記載されている細胞および組織培養、分子生物学、免疫学、微生物学、遺伝学およびタンパク質および核酸化学およびハイブリダイゼーションに関連して用いられている名称、およびそれらの技術は、当該技術分野で周知であり、通常用いられている通りである。公知の方法および技術は、一般に、当該技術分野で周知の、常法に従って実施され、また、別段の指示がない限り、本明細書全体を通して論じられている、種々の一般的またはより具体的な参照文献に記載されているように実施される。酵素的反応および精製技術は、製造者による指示に従って、当該技術分野で一般的に行われるように、または本明細書に記載されているように実施される。本明細書に記載されている実験手順および技術に関連して使用されている名称は、当該技術分野で周知であり、通常用いられている通りである。
【0016】
以下の用語は、別段の指示がない限り、以下の意味を有するものと理解すべきである。
【0017】
本明細書で用いられる場合、用語「a」、「an」、および「the」は、具体的に別段の指示がない限り、1またはそれを超えることを指し得る。
【0018】
使用されている用語「または」は、本開示は、択一のみ、および、「および/または」を指す定義をサポートするが、択一のみを指すことが明示的に示されているか、選択肢が相互に排他的でない限り、「および/または」を意味するために用いられる。本明細書で用いられる場合、「別の」は、少なくとも2番目の、またはそれを超えるものを意味しうる。
【0019】
本出願全体を通して、用語「約」は、値が、デバイスによる誤差に固有の変動、値を決定するために使用された方法による誤差に固有の変動、またはサンプル間に存在する変動を含むことを示すために用いられる。
【0020】
用語「生体サンプル」は、例えば、これらに限定されないが、血液、血漿、血清、糞便、尿、骨髄、胆汁、脊髄液、リンパ液、皮膚のサンプル、身体(例えば、皮膚、呼吸器、腸管および泌尿生殖路)からの外分泌物、涙、唾液、乳、血液細胞、器官、バイオプシーを含む、被験体から単離された組織または体液のサンプルを指し、さらにin vitro細胞培養成分のサンプル、例えば培養培地中で細胞および組織を増殖させて得られる馴化培地、例えば組換え細胞および細胞成分も指す。
【0021】
用語「インジケーター」または「インジケーター部分」または「検出可能部分」または「検出可能な生体分子」または「レポーター」または「標識」は、定性的アッセイまたは定量的アッセイにおいて測定可能なシグナルを生じさせる分子を指す。例えば、インジケーター部分は、基質を測定可能な産物に変換するために用いられうる酵素を含み得る。インジケーター部分は、生物発光放射(例えば、ルシフェラーゼ、HRP、またはAP)を生じさせる反応を触媒する酵素でありうる。または、インジケーター部分は、定量可能な放射性同位体でありうる。または、インジケーター部分は、フルオロフォアでありうる。または、他の検出可能な分子を使用してもよい。
【0022】
用語「抗原」は、細胞表面の分子もしくは分子のセット、またはそのような分子もしくは分子のセットを含む複合体を指し、その抗原と、本目的のために有用なモノクローナル抗体の抗原結合部位が結合する。
【0023】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、または「タンパク質」は、隣接するアミノ酸残基のα-アミノ基とカルボキシ基との間のペプチド結合によって互いに結びついた、アミノ酸残基の直鎖状の連続を指す。
【0024】
用語「抗体」は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子のフラグメントによって実質的にコードされる、1またはそれを超えるポリペプチドからなるタンパク質を指す。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、κ、λ、α、γ、δ、ε、およびμ定常領域遺伝子、ならびに、無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、κまたはλのいずれかとしてクラス分けされる。重鎖は、γ、μ、α、δ、またはεとしてクラス分けされ、それらがひいては、それぞれ、免疫グロブリンクラスであるIgG、IgM、IgA、IgD、およびIgEを規定する。
【0025】
用語「治療薬」または「潜在的治療薬」は、疾病状態において治療効果を生じさせる能力がある物質を指す。
【0026】
本発明は、単一のエピトープに対する治療用モノクローナル抗体の特異性を、その同じ治療用モノクローナル抗体から利益を受けうる被験体を特定するために利用する。抗体は、タンパク質レベルでの特定に利用できる。しかしながら、各タンパク質は多くの種類のエピトープを有するであろう。特定のモノクローナル抗体は、単一の種類のエピトープのみに特異的でありうる。企業は、タンパク質に対する数多くの抗体を販売しているが、それらの抗体の特異性は大きく異なる。タンパク質の異なる部分(エピトープ)を標的にする抗体は、反対の効果を有しうる。特定の治療薬の標的タンパク質を過剰に発現している個体を特定することは、その治療薬による処置の適切な候補の特定に役立ちうる。しかしながら、ある特定の例において、前記標的タンパク質を過剰に発現している個体は、もし特定の治療薬の標的となっているタンパク質の特異的なエピトープをその個体が発現していない場合、その特定の治療薬による処置の適切な候補ではないことがありうる。
【0027】
本発明の組成物、方法、およびシステムの実施形態は、それぞれ、特定の治療薬が患者の/患者からの生物学的物質と相互作用するであろうかどうかを決定するために使用できる。本発明による方法は、より高い特異性および一致で、より短時間に実施できる。
【0028】
I.標的化複合体
本明細書に記載されているように、本発明の組成物、方法、およびシステムは、治療薬から利益を受けうる被験体の特定に使用するための標的化複合体を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、標的化複合体は、2つの抗体、すなわち抗体Aと抗体Bを含む。抗体Aは、さらに、潜在的な治療用モノクローナル抗体またはそのフラグメントを含む。ある特定の例において、前記モノクローナル抗体は、関心のあるエピトープに特異的な可変領域、およびヒト定常領域を含んでいてもよい。抗体Bは、さらに、抗体Aのヒト定常領域を認識する抗体を含む。
【0029】
多くの異なる抗体アイソタイプが存在し、その最も一般的なものは免疫グロブリンG(IgG)である。IgG抗体は、2つのポリペプチド鎖、すなわち重鎖と軽鎖から構成されている。各重鎖は、2つの領域、すなわち定常領域と可変領域を有する。同一のアイソタイプの全ての抗体は、同一の定常領域から構成されている。抗原結合フラグメント(Fab)は、前記重鎖と前記軽鎖それぞれの、1つの定常ドメインと1つの可変ドメインから構成されており、IgG分子の結晶化可能フラグメント(Fc)部分から切り離されうる。IgG分子のFc部分は、リンパ球表面の受容体、および二次抗体のための結合部位として機能する。Fabフラグメントは、可変ドメインを含み、可変ドメインは抗体超可変ドメインからなる。超可変ドメインは、抗体の特異性、および結合能を決定する。Fc領域は、全てが定常ドメインからなる。
【0030】
ポリクローナルとモノクローナル抗体のいずれも、動物を用いて産生させることができる。哺乳動物を特定の免疫原(抗原)で免疫化した場合、ポリクローナル抗体が産生される。抗体産生分子(抗原)は、免疫応答(抗体の産生)を惹起するタンパク質分子である。ポリクローナル抗体は、多数の異なるIgGを含み、各IgGは、同一の免疫原性タンパク質上の異なるエピトープを認識することができる。これらのIgGタンパク質は、免疫化された動物の血液から単離することができる。ポリクローナル抗体は、これらに限定されないが、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ロバ、ヤギ、またはヒツジを含む、種々の動物で惹起されうる。いくつかの実施形態においてマウスまたはウサギで惹起された抗体を使用することが好ましい。
【0031】
ポリクローナル抗体の産生と同様に、mAbは、特定の抗原で免役化した動物によって産生される。モノクローナル抗体を単離するために、脾臓を取り出し、脾臓から、抗体を産生するリンパ球を単離する。各リンパ球(各リンパ球は、固有の抗体を産生する)を、腫瘍細胞と融合させることによって不死化し、各々特異的な抗体を産生することができるクローン系統(ハイブリドーマ)を作製することができる。各ハイブリドーマは、単一の免疫原性エピトープのみに特異的なモノクローナル抗体を産生することができる。mAbは、関心のある特異的な抗原(例えば、腫瘍表面に見いだされる抗原)に対して惹起される。固有のエピトープを有するタンパク質を提示する腫瘍細胞は、そのエピトープに特異的なモノクローナル抗体によって標的化されうる。免疫系は、免疫原上の特定のエピトープに対する抗体を生成するが、免疫原(Ag)全体に対する抗体を生成しない。同一のタンパク質を認識するが、認識するエピトープが異なる、別個の抗体が生成されうる。mAbは、1つの物質(例えば、特定のエピトープ)だけに結合するように同一である。エピトープは、そこに抗体が結合する、抗原の特定の領域である。治療用mAbが有効である可能性があるかどうかを決定する上で、特定の治療用mAbが、患者の/患者からの生物学的物質と相互作用するであろうかどうかを決定することが重要である。いくつかの例において、治療用モノクローナル抗体(AbA)は、特定の種類のエピトープ(エピトープA)と相互作用することができる。しかしながら、AbAは、エピトープAのみに特異的であり、そのタンパク質上の他のエピトープ(例えば、エピトープC)には特異的ではない。治療用のAbAから利益を受ける可能性がある患者を特定するためには、その治療薬との反応性がある生物学的物質(エピトープA)を有する被験体を特定することが重要である。
【0032】
いくつかの実施形態において、抗体Aは、mAbまたはそのフラグメントである。ある特定の実施形態において、前記フラグメントは、Fabである。いくつかの例において、前記モノクローナル抗体、またはそのフラグメントは、治療効果を有しうる。治療用モノクローナル抗体は、マウス抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、または完全ヒト抗体でありうる。好ましい実施形態において、mAbは、ヒト配列の定常領域を含む。抗体の前記定常領域は、抗原を除去するために使用されるメカニズムを決定した。
【0033】
いくつかの実施形態において、ヒト定常領域を含む治療用mAbは、キメラ抗体である。キメラmAbは、ヒト定常領域に融合させた非ヒト動物可変領域から構成される。この融合は、キメラmAbが、特異的な抗原に対する特異性および親和性を保持することを可能にする。キメラmAbは、完全なヒト定常領域を備えているため、ヒトにおいて、低い免疫原性作用を示す。いくつかの実施形態において、キメラmAbの可変領域は、これらに限定されないが、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ロバ、ヤギ、またはヒツジを含む、哺乳動物中で産生される。好ましい実施形態において、可変領域は、マウス可変領域である。
【0034】
他の実施形態において、ヒト定常領域を含む治療用モノクローナル抗体は、ヒト化mAbである。いくつかの例において、治療用mAbは、抗体の非ヒト部分を低減するために、ヒト化してもよい。mAbは、ヒト抗体の超可変ループを、非ヒト動物抗体の超可変ループで置きかえることによってヒト化される。キメラmAbと同様に、mAbの非ヒト動物部分は、標的抗原の結合のために重要である。キメラ抗体とは異なり、(エピトープへの結合に重要な)超可変領域のみが非ヒトであるため、ヒトにおいて、さらに免疫原性作用が低下している。いくつかの実施形態において、ヒト化mAbの超可変領域は、これらに限定されないが、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ロバ、ヤギ、またはヒツジを含む、哺乳動物中で産生される。好ましい実施形態において、超可変領域は、マウス超可変領域である。
【0035】
他の実施形態において、ヒト定常領域を含む治療用モノクローナル抗体は、完全ヒト抗体である。トランスジェニックマウスまたはファージディスプレイライブラリーを、完全ヒトモノクローナル抗体を作製するために使用することができる。ヒトIg遺伝子のセグメントを、マウス抗体産生を欠くマウスのゲノムに導入することができる。トランスジェニックマウスに特定の免疫原を導入すると、マウスは大量の完全ヒト抗体を産生する。完全ヒト抗体は、非ヒト部分を含まないという点で有利である。また、それによって、ヒト被験体において治療薬として使用した場合、免疫原性作用を生じない。
【0036】
本発明のいくつかの実施形態において、モノクローナル抗体は、治療薬として使用するために、FDAによって承認されている。本発明の他の態様において、モノクローナル抗体は、治療薬として使用するために試験中であるか、または治療薬として使用するための能力を有する抗体である。これらに限定されないが、アブシキシマブ、アダリムマブ、アドトラスツズマブエムタンシン、アレムツズマブ、アリロクマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブロダルマブ(broadalumab)、カナキヌマブ、カプロマブペンデチド、セルトリズマブペゴル、セツキシマブ、ダクリズマブ、ダラツムマブ、デノスマブ(densosumab)、ジヌツキシマブ、デュルバルマブ、エロツズマブ、エボロクマブ、ゴリムマブ、インフリキシマブ、イピリムマブ、イキセキズマブ、メポリズマブ、ナタリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、ペルツズマブ、ラムシルマブ、リツキシマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、トラスツズマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、サリルマブ、およびベンラリズマブを含む、多数のモノクローナル抗体が、治療上の使用のためにFDAによって承認されている。今日までにFDAに承認された治療用mAbは、マウス可変領域、ラット可変領域、またはヒト可変領域を含んでいる。
【0037】
いくつかの実施形態において、標的化複合体は、第二の抗体、すなわち抗体Bをさらに含む。抗体Bは、抗体Aのヒト定常領域を認識する。抗体Bは、抗体Aのヒト領域に対して惹起された、モノクローナルまたはポリクローナル抗体である。好ましい実施形態において、抗体Bは、モノクローナル抗体である。抗体Bは、これらに限定されないが、マウス、ウサギ、ラット、モルモット、ロバ、ヤギ、またはヒツジを含む、哺乳動物で惹起されうる。好ましい実施形態において、抗体Bは、マウスまたはウサギで惹起される。
【0038】
いくつかの実施形態において、抗体Bは、抗体Aに対して特異的な二次抗体である。二次抗体は、ポリクローナルであっても、モノクローナルであってもよい。また、二次抗体は、Ig分子全体に対して、またはIg分子のフラグメント(例えば、Fc領域またはFab領域など)に対して特異的でありうる。ある特定の例において、二次抗体は、前記標的化薬剤のヒト定常領域に対して惹起される。二次抗体は、一次抗体を作製するために使用される、宿主種に対して惹起される。例えば、マウスで惹起された一次抗体は、マウス以外の宿主種で惹起された、抗マウス二次抗体(secondary anti-mouse secondary antibodies)(例えば、ウサギ抗マウス二次抗体)を必要とする。二次抗体の検出は、様々なやり方で実現することができる。最も一般的には、二次抗体は、酵素または蛍光タンパク質または色素と結合体化させてもよい。したがって、いくつかの実施形態において、標的化複合体は、検出部分を含む。
【0039】
代替的な実施形態において、標的化複合体は、検出部分を含まない。そのようなケースでは、標的化複合体は、一次抗体として機能し、それが、その後の段階において、第三の抗体、すなわち抗体Cで検出されうる。
【0040】
図1は、抗体B(AbB)150と結合した抗体A(AbA)140を含む、標的化複合体180を示す。抗体B150は、抗体A140のヒト定常領域を認識する。抗体Aを介して、標的化複合体は、腫瘍110上の腫瘍表面タンパク質120の、1つの特定の種類のエピトープ(エピトープA)130と結合することができる。しかしながら、この標的化複合体は、この表面タンパク質上にある他のいずれの種類のエピトープ(例えば、エピトープC)160とも結合できない。AbAの場合と同じタンパク質(ただし異なるエピトープ)に対して特異的な他のモノクローナル抗体は、他の種類のエピトープと結合することができる。例えば、
図1は、同じ表面タンパク質120と結合するが、異なる種類のエピトープ(エピトープC)160と結合するAbC170を示す。
【0041】
図2は、治療用モノクローナル抗体(AbA)240が、特定の種類のエピトープ(エピトープA)230と相互作用し得ることを示す。しかしながら、AbA240は、エピトープA230のみに特異的であり、このタンパク質上の他のエピトープ(例えば、エピトープC)260には特異的ではない。治療用のAbA240から利益を受ける可能性がある患者を特定するためには、その治療薬との反応性がある生物学的物質(エピトープA)230を有する被験体を特定することが重要である。
【0042】
いくつかの実施形態において、二次抗体は、検出部分と結合体化されうる。標識は、適用および所望の抗体検出方法に応じて選択される。いくつかの実施形態において、検出方法は、ウエスタンブロット、ELISA、免疫組織化学、免疫細胞化学、免疫蛍光法、またはフローサイトメトリーでありうる。いくつかの実施形態において、検出部分は、光を発してもよく、および/または変色によって検出が可能であってもよい。検出シグナルは、アルカリホスファターゼ(AP)もしくは西洋ワサビペルキシダーゼ(HRP)などの酵素、または蛍光分子(フルオロフォア)、または生物発光分子(NANOLUC(登録商標))を使用して生成されうる。いくつかの実施形態において、ポジティブ検出は、色または蛍光の変化によって示されうる。蛍光タンパク質は、電子を含む蛍光部分が光子を吸収すると、光子としてエネルギーを放出することによって、自然に蛍光を発する(内因性蛍光または自家蛍光)。
【0043】
検出部分として使用するための種々の適切な酵素、例えばアルカリホスファターゼ(AP)、西洋ワサビペルキシダーゼ(HRP)、またはルシフェラーゼ(Luc)など、が市販されている。インジケーター部分は、基質と反応し、検出可能なシグナルを発しうる。1またはそれを超えるシグナル発生成分が指示部分と反応して、検出可能なシグナルを発してもよい。インジケーター部分が酵素である場合、酵素を、1またはそれを超える基質、またはさらなる酵素および基質と反応させ、検出可能な反応生成物を生成させることによって、検出が行われる。代替的なシグナル生成システムにおいて、標識は、検出可能なシグナルを生成するために標識に対する酵素的な操作を必要としない、蛍光化合物でありうる。例えば、フルオレセインおよびローダミンを含む蛍光分子、ならびにその誘導体またはアナログが、このようなシステムにおける標識として用いるために適切である。さらに別の代替的な実施形態において、インジケーター部分は、補助因子であってもよく、その場合、その補助因子を、前記酵素および1またはそれを超える基質、またはさらなる酵素および基質と反応させ、検出可能な反応生成物を生成させることによって、検出可能なシグナルの増幅が行われる。
【0044】
例えば、トラスツズマブは、マウス由来のヒト化mAbである。トラスツズマブは、HER2陽性乳がんの処置のために、FDAに承認された治療用モノクローナル抗体である。トラスツズマブは、HER2タンパク質(HER2タンパク質は、いくつかの乳がん細胞で発現されている)に結合し、それによって、この受容体による増殖シグナルの受容を阻害する。トラスツズマブは、単一のHER2エピトープ(Her2細胞外ドメインIVの膜近傍エピトープ)に対して反応性がある。HER2受容体タンパク質は、トラスツズマブが相互作用しない、多数の異なるエピトープを有する。トラスツズマブの定常領域はヒト定常領域であり、HER2の結合に重要な超可変領域はマウス超可変領域である。本発明の一実施形態において、トラスツズマブの定常領域に対して惹起されたマウス抗ヒトmAb(検出抗体)をトラスツズマブ(治療薬)と反応させて、トラスツズマブによる処置から利益を受ける可能性がある被験体を特定するための標的化複合体を生成させてもよい。いくつかの実施形態において、上記したように、検出抗体を、検出部分と結合体化させてもよい。
【0045】
II.標的化複合体の作製方法
本発明の別の態様は、特定のタンパク質エピトープを検出することができる標的化複合体を作製するための方法を含む。いくつかの実施形態において、標的化複合体は、抗体Aを抗体Bと反応させることによって作製される。抗体Aが抗体Bと結合体を形成したら、標的化複合体を精製し、結合していないあらゆる試薬を除去する。
【0046】
治療標的を検出抗体と反応させること
いくつかの実施形態において、標的化複合体を作製するための方法は、抗体Aを抗体Bと反応させることを含む。抗体Aおよび抗体B。抗体Aは、さらに、潜在的な治療用モノクローナル抗体またはそのフラグメントを含む。ある特定の例において、前記モノクローナル抗体は、関心のあるエピトープに特異的な可変領域、およびヒト定常領域を含んでいてもよい。抗体Bは、さらに、抗体Aのヒト定常領域を認識する抗体を含む。ある特定の実施形態において、抗体Bは、モノクローナルまたはポリクローナル抗体である。
【0047】
いくつかの実施形態において、抗体Bは、二次抗体である。二次抗体は、これらに限定されないが、液体の形態、凍結乾燥した形態、および添加物(例えば、グリセロール)を含む形態を含む、様々な形態で入手が可能である。液体の二次抗体は、一般に濃縮されており、製造者による指示に従って希釈することが必要であろう。乾燥状態の凍結乾燥二次抗体は、希釈剤で再構成しうる。二次抗体は、安定化および貯蔵期限延長のための添加物(例えば、グリセロールおよびBSA)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、ブロッキング剤が、希釈剤として用いられる(例えば、1%BSAのPBST溶液)。
【0048】
いくつかの実施形態において、二次抗体は、標識と結合体化されていてもよい。代替的な実施形態において、二次抗体は、結合体化されていない形態であってもよい。
【0049】
当該技術分野で一般に知られている、または広く使用されている任意の方法または技術が、抗体Aと抗体Bとの複合体を形成するために使用できる。一般に、抗体Aは、抗体Bと、少なくとも15、20、25、30、35、40、45分間、またはそれより長い時間、インキュベートされる。いくつかの実施形態において、抗体Aを、抗体Bと、ほぼ室温(15~25℃)でインキュベートする。いくつかの実施形態において、抗体Aと抗体B(Antibody and Antibody B)は、約4℃で、終夜インキュベートされる。
【0050】
標的化複合体の精製
いくつかの実施形態において、標的化複合体は、全ての結合していない抗体Aおよび結合していない抗体Bを除去するために、当該技術分野で一般に知られている標準的方法を用いて精製される。例えば、標的化複合体は、これらに限定されないが、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、プロテインL、またはMelon Gelを含む、抗体精製樹脂を用いて精製しうる。いくつかの実施形態において、小スケールのアフィニティー精製のために、免疫沈降を使用してもよい。また、標的化複合体を精製するために、大スケールのプロセスクロマトグラフィーを使用することができる。
【0051】
III.抗原結合アッセイ
抗原結合アッセイは、被験体が治療薬による処置から利益を受けうるかどうかを決定するために使用しうる。治療薬から利益を受けうる被験体を特定するための理想的なアッセイは、特定の治療薬と相互作用することができる生物学的物質を含む患者を特定することができる。現在のアッセイでは、被験体を特定するために治療用mAbを使用せず、代わりに、関心のあるタンパク質と相互作用することができる市販の抗体を使用する。しかしながら、この代替的なmAbは、異なる検体エピトープに特異的でありえ、したがって、患者の(in vivoまたはin vitroの)物質と治療用mAbとの間の、予期される相互作用を特定する[だけの]特異性を有さないであろう。偽陰性および偽陽性は、どちらも、薬学的mAbによる処置のための被験体を特定するために用いられる、現在の方法の特徴である。偽陰性は、特定の治療薬の使用から利益を受けうる被験体が、処置を受けられないことをもたらしうる。一方、偽陽性は、いかなる利益を受けることも期待できない被験体が、処置を受けることをもたらしうる。したがって、治療薬に反応を示す可能性がある被験体を正確に特定することができるアッセイを開発することが重要である。
【0052】
図3は、治療薬から利益を受けうる被験体を特定するための典型的なアッセイを示す。治療薬の場合と同じ表面タンパク質320に特異的な(治療薬とは異なる)抗体(AbC)370が、被験体における表面タンパク質320の発現を決定するために使用される。しかしながら、AbC370は異なるエピトープ(エピトープC)360に結合するので、これらのアッセイは、被験体の/被験体からの生体サンプルが、その治療薬との反応性を有するであろうかどうかを示すものではない。
【0053】
例えば、多くの診断薬が、トラスツズマブによる処置から利益を受ける可能性がある被験体を特定するために使用される。トラスツズマブ処置のためのいくつかの診断薬は、HER2タンパク質に対して特異的なポリクローナル抗体を用いる。組織サンプルをポリクローナル抗体とインキュベートし、結合を可視化してHER2過剰発現のレベルを決定する。しかしながら、トラスツズマブとは異なり、これらのポリクローナル抗体は、トラスツズマブが標的とする固有のエピトープに特異的ではない。ポリクローナル抗体を使用すると、治療薬から利益を受ける可能性がある患者の特定において、そのような患者に含めすぎてしまう恐れがある。ポリクローナル抗体は、タンパク質上の種々のエピトープに結合することができ、したがって、被験体の生物学的物質がトラスツズマブとは相互作用しそうにない場合であっても、被験体がHER2を過剰発現しているものとして特定してしまう可能性がより高い。
【0054】
あるいは、HER2タンパク質に特異的なモノクローナル抗体は、HER2を過剰発現している患者を特定するために使用しうる。しかしながら、このようなmAbは、トラスツズマブが標的とするエピトープとは異なるHER2エピトープに対して特異的である。したがって、HER2を過剰発現しているものとして特定された被験体が、トラスツズマブが相互作用する特定のエピトープを欠いていることがありうる。
【0055】
本明細書に開示されている方法は、特定の治療薬による処置から利益を受けうる被験体の選択または特定に関する。本発明の組成物、方法、およびシステムの各実施形態は、特定の治療薬から利益を受ける可能性がある個体の特定および/または選択を可能にする。いくつかの実施形態において、治療薬による処置から利益を受ける可能性がある被験体を特定するための方法は、(i)サンプルを得ること;(ii)前記サンプルを標的化複合体とインキュベートして抗原-抗体複合体を形成させること;(iii)前記抗原-抗体複合体を検出すること;および(iv)治療薬に対する被験体の反応性を予測すること、を含む。いくつかの実施形態において、標的化複合体は、2つの抗体、すなわち抗体Aと抗体Bを含む。抗体Aは、さらに、潜在的な治療用モノクローナル抗体またはそのフラグメントを含む。ある特定の例において、前記モノクローナル抗体は、関心のあるエピトープに特異的な可変領域、およびヒト定常領域を含んでいてもよい。抗体Bは、さらに、抗体Aのヒト定常領域を認識する抗体を含む。いくつかの実施形態において、複数の治療薬に対する被験体の反応性を1回のアッセイで予測するために、複数の異なる標的化複合体を使用してもよい。いくつかの実施形態において、前記複数の標的化複合体は、AbA1、AbA2、AbA3、などを含む。各抗体Aは、異なる潜在的な治療用モノクローナル抗体、またはそのフラグメントを含んでいてもよく、また、固有のヒト定常領域をさらに含んでいてもよい。前記複数の標的化複合体は、AbB1、AbB2、AbB3、などをさらに含んでいてもよい。異なる抗体Bは、それぞれ、対応する抗体Aのヒト定常領域を認識しうる。例えば、AbB1は、AbA1のヒト定常領域に結合しうる。
【0056】
サンプル
mAbは、種々の疾患、最も一般的には、がんまたは自己免疫疾患を処置するために使用することができる。処置に適しているとみなされる被験体は、処置から利益を受けること、または処置に反応を示すことが期待されるような被験体である。いくつかの実施形態において、サンプルは、がんまたは自己免疫疾患に罹患しているか、罹患していると疑われるか、罹患するリスクがある被験体から取得される。がんは、乳がん、B細胞慢性リンパ球性白血病、尿路上皮癌、非小細胞肺がん、メルケル細胞癌、マントル細胞リンパ腫、結腸直腸がん、前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、前立腺がん、多発性骨髄腫、メラノーマ、慢性リンパ球性白血病、急性骨髄性白血病、神経芽細胞腫、軟部組織肉腫、胃がん、子宮頸がん、腎細胞癌、または治療薬が利用可能な、任意の他のがんでありうる。自己免疫疾患は、関節リウマチ、若年性特発性関節炎、乾癬性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、尋常性乾癬、全身性エリテマトーデス、もしくは多発性硬化症、または治療薬が利用可能な、任意の他の自己免疫疾患でありうる。他の実施形態において、サンプルは、治療用モノクローナル抗体が利用可能または試験中である、任意の疾患に罹患している被験体から取得される。
【0057】
いくつかの実施形態において、サンプルは、個体から単離した血液、血清、組織、バイオプシー、または細胞を含みうる、または、それらに由来しうる。好ましい実施形態において、組織サンプルは、がん性腫瘍組織から取得してもよい。サンプルは、バイオプシー、擦過、または外科的除去によって取得してもよい。サンプルは、組織切片全体であってもよい。ある特定の実施形態において、サンプルは、原発性、転移性、ステージIII、およびステージIV疾患の標本でありうる。いくつかの実施形態において、腫瘍組織は、コアバイオプシーまたは細針吸引によって採取してもよい。または、本明細書に記載されている他のサンプルも使用できる。
【0058】
サンプル調製
組織サンプルの固定方法は、当該技術分野で一般に知られている。固定に必要な時間は、サンプルの大きさ、および使用する固定剤(例えば、中性緩衝ホルマリン、グルタルアルデヒド、ブアン液、またはパラホルムアルデヒド)に依存する。好ましい実施形態において、組織サンプルは、ホルマリンで固定する。いくつかの実施形態において、固定したサンプルは、次いでパラフィンに包埋し、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)サンプルを調製する。他の実施形態において、組織サンプルは、その他の薄切媒体中に包埋する。いくつかの実施形態において、組織サンプルの厚さは、少なくとも1、2、3、または4mmである。好ましい実施形態において、組織サンプルの厚さは、3mmである。
【0059】
いくつかの実施形態において、FFPEサンプルを、薄切し、顕微鏡用スライド上にマウントし、乾燥させる。薄切したFFPEサンプルの厚さは、少なくとも2、3、4、または5μmである。好ましい実施形態において、薄切したサンプルの厚さは、約3μmである。薄切したFFPEサンプルは、スライド上にマウントし、乾燥させてもよい。好ましい実施形態において、薄切したサンプルは、Superfrost Plus(登録商標)スライド上にマウントし、少なくとも60、65、70、75、80、または85℃で、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、4、または3分間未満乾燥させる。または、当該技術分野で知られている他の方法も使用できる。
【0060】
抗原-抗体複合体を検出すること
治療薬による処置から利益を受けうる被験体を特定するための方法は、抗原-抗体複合体を検出することを含む。いくつかの実施形態において、免疫組織化学(IHC)が、サンプル中の標的エピトープの存在を検出するために使用できる。標的エピトープは、治療薬の標的である。一次抗体は、組織切片中のタンパク質を検出するために使用することができる。いくつかの例において、タンパク質は、検出部分と結合体化させた一次抗体を用いて、直接的に検出される。別の例において、タンパク質は、前記一次抗体に対する結合体化した二次抗体によって、間接的に検出される。
【0061】
治療薬による処置から利益を受けうる被験体を特定するための方法は、サンプルを標的化複合体とインキュベートして抗原-抗体複合体を形成させることを含む。いくつかの実施形態において、標的化複合体は、2つの抗体、すなわち抗体Aと抗体Bを含む。抗体Aは、さらに、潜在的な治療用モノクローナル抗体またはそのフラグメントを含む。ある特定の例において、前記モノクローナル抗体は、関心のあるエピトープに特異的な可変領域、およびヒト定常領域を含んでいてもよい。抗体Bは、さらに、抗体Aのヒト定常領域を認識する抗体を含む。
【0062】
いくつかの実施形態において、標的化複合体とインキュベートする前に、抗原賦活化を行う。固定は、組織の形態を保存するために重要ではあるが、タンパク質のエピトープをマスキングし、抗体の相互作用を妨げうる。エピトープのマスキングは、エピトープ内の架橋、またはエピトープ近傍のペプチドの架橋の結果として起こりうる。抗原賦活化は、抗原を露出させ、エピトープ-抗体結合を可能にするために用いられる技術である。当該技術分野で一般に知られている抗原賦活化のための任意の方法を使用しうる。いくつかの実施形態において、抗原賦活化は、熱媒介性である。他の実施形態において、抗原賦活化は、酵素による。抗原賦活化プロセスは、抗原を露出させるために、サンプルの加熱、加圧調理、および/またはプロテアーゼ処理を必要としうる。
【0063】
抗原賦活化に続き、組織学的サンプルは、標的化複合体とインキュベートしてもよい。いくつかの実施形態において、標的化複合体は、まず希釈される。標的化複合体の希釈は、治療薬および検出抗体に依存するであろう。サンプル中に治療薬の標的が存在すれば、標的化複合体は抗原-抗体複合体を形成するであろう。
【0064】
例えば、治療薬は、トラスツズマブでありうる。この例において、標的化複合体は、上述のように、トラスツズマブのヒト定常領域を認識する抗体(抗体B)と結合したトラスツズマブを含むであろう。トラスツズマブ標的化複合体は、HER2タンパク質を検出するために組織学的サンプルとインキュベートする前に、特異的な結合を検出するために、必要に応じて希釈してもよい。
【0065】
標的化複合体の標的抗原への結合は、直接的または間接的に決定しうる。いくつかの実施形態において、標的化複合体は、上述のように、検出部分と結合体化させた検出抗体を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、検出部分は、蛍光タグまたは酵素を含む。標的化複合体(検出部分と結合体化させた抗体Bを含む)は抗原と結合し、検出部分は、さらなる抗体との相互作用なしで可視化されうる。
【0066】
他の実施形態において、抗体Bは、検出部分と結合体化させていない。間接IHCアッセイを、タンパク質検出のために使用することができる。間接IHCアッセイは、結合体化されていない一次抗体を抗原に結合させること、および、それに続いて、標識二次抗体を使用して一次抗体に結合させること、を含む。二次抗体を酵素標識と結合体化させた場合、抗原を可視化するために、発色性(chromagenic)基質または蛍光性基質を加えてもよい。いくつかの実施形態において、タンパク質は、標的化複合体の検出抗体に対する二次抗体を用いて、直接的に検出される。二次抗体は、検出部分と結合体化させてもよい。いくつかの実施形態において、各AbBは、異なる検出部分と結合体化させてもよい。例えば、AbB1を第1の検出部分と結合体化させてもよく、AbB2を第2の検出部分と結合体化させてもよい。
【0067】
図4は、抗体A(AbA)440と抗体B(AbB)450からなる標的化複合体を用いた、標的抗原(エピトープA)430の検出を示す。AbB450は、検出部分とは結合体化していない。しかしながら、二次抗体(2°Ab)490は、検出部分495と結合体化させることができ、一次抗体440(標的化複合体)の抗原(エピトープA)430への結合を検出するために使用できる。
【0068】
図5は、2つの異なる抗体A(AbA1 540およびAbA2 545)と、2つの対応する抗体B(AbB1 550およびAbB2 555)からなる複数の異なる標的化複合体を用いた、2つの異なる標的抗原(エピトープA1 530およびエピトープA2 535)の検出を示す。2つの異なる二次抗体(2°Ab1 590および2°Ab2 565)は、2つの対応する検出部分(第1検出部分595および第2検出部分575)と結合体化させることができ、各一次抗体540および545(標的化複合体)の各抗原(エピトープA1 530またはA2 535)への結合を検出するために使用できる。
【0069】
多くの検出部分が、当該技術分野で一般に知られており、直接または間接IHCアッセイのいずれかに使用するために利用できる。検出部分としては、これらに限定されないが、放射性同位体、蛍光または化学発光標識、および酵素-基質標識があげられる。酵素-基質標識としては、例えば、ルシフェラーゼ(luc)、西洋ワサビペルキシダーゼ(HRP)、およびアルカリホスファターゼ(AP)があげられる。当該技術分野で知られている、検出部分を抗体と結合体化させるための任意の方法が使用できる。
【0070】
間接IHCアッセイのために、検出可能部分を含む二次抗体を、組織学的サンプルに、25℃または 37℃で30~120分間適用し、免疫複合体を形成させる。いくつかの実施形態において、可視化の前に、洗浄ステップを使用して、結合していない二次抗体を除去する。いくつかの実施形態において、ブロッキングステップを、非特異的結合を制限するために使用する。当該技術分野で知られている、任意の洗浄方法またはブロッキング方法が使用できる。
【0071】
IHCアッセイ条件の最適化は、当該技術分野で周知である。いくつかの実施形態において、抗原結合アッセイは、非特異的結合を防ぐための種々の技術を含みうる。いくつかの実施形態において、抗原結合アッセイは、治療標的タンパク質を含まないバックグラウンドタンパク質への結合を減少させるために、タンパク質ブロッキング試薬で、サンプルを処置することを含む。ブロッキング試薬としては、これに限定されないが、BSA、カゼインHiBlock(Perkin Elmer、Waltham、MA)、またはprotein block(Dako、Carpinteria、CA)があげられる。いくつかの実施形態において、サンプルは、組織のペルオキシダーゼをブロックするために、ペルオキシドとインキュベートされる。
【0072】
直接または間接IHCを使用しうる。直接IHCアッセイは、インジケーター部分を含む試薬を使用することを含み、この試薬が、標的に直接結合する。例えば、一次抗体は、酵素または蛍光分子で標識されていてもよい。
【0073】
好ましい実施形態において、IHCアッセイは、市販の自動染色装置を用いて行われる。サンプルは、Ventana(商標)BenchMark ULTRA(商標)プラットフォーム、Ventana(商標)Discovery(商標)、Dako(商標)Omnis(商標)、Dako(商標)Autostainerl_ink48(商標)、Leica(商標)BOND RX(商標)、Leica(商標)BOND-IN(商標)、またはLeica(商標)BOND MAX(商標)を使用して、標的化複合体を用いて調製され、また、標的化複合体によって染色される。例えば、Ventana(商標)BenchMark ULTRA(商標)プラットフォームは、標的化複合体、検出可能部分を含む二次抗体、および対比染色剤でサンプルを染色するために使用することができる。
【0074】
被験体の反応性を予測すること
いくつかの実施形態において、被験体は、サンプル中に標的が発現していることから、処置に適していると決定される。逆に、発現を欠く被験体は、治療薬による処置に適していないとみなされうる。
【0075】
いくつかの実施形態において、サンプル中の全ての細胞のうち、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、またはそれを超える細胞が、治療薬の標的を発現している場合、患者は、処置に適していると決定される。
【0076】
いくつかの実施形態において、結果は、光学顕微鏡によって解釈されうる。いくつかの実施形態において、サンプルには、0~10(0は陰性であり、10は強い陽性である)のスケールでスコアが付けられるであろう。他の実施形態において、サンプルには、0~5(0は陰性であり、5は強い陽性である)のスケールでスコアが付けられるであろう。スコア付けのためのシステムは、治療薬に応じて適合させる。
【0077】
本発明のシステムおよびキット
いくつかの実施形態において、本発明は、本明細書に開示されている方法を実施するためのコンポーネントを含んだシステム(例えば、自動化システム)またはキットを含む。いくつかの実施形態において、標的化複合体は、本発明によるシステムまたはキットに含まれている。本明細書に記載されている方法は、そのような標的化複合体システムまたはキットも利用しうる。本明細書に記載されているいくつかの実施形態は、この方法を実施するために必要とされる試薬および材料の量がごく少ないことを考慮すると、自動化および/またはキットに特に適している。ある特定の実施形態において、キットの各コンポーネントは、1つめの部位から2つめの部位に送達可能な、独立式ユニットを含みうる。
【0078】
いくつかの実施形態において、本発明は、治療薬から利益を受けうる個体を特定するためのシステムまたはキットを含みうる。システムまたはキットは、ある特定の実施形態において、サンプルを関心のあるエピトープに特異的な標的化複合体とインキュベートするためのコンポーネントを含み、ここで、前記標的化複合体は、2つの抗体、すなわち抗体Aと抗体Bを含む。抗体Aは、さらに、潜在的な治療用モノクローナル抗体またはそのフラグメントを含む。ある特定の例において、前記モノクローナル抗体は、関心のあるエピトープに特異的な可変領域、およびヒト定常領域を含んでいてもよい。抗体Bは、さらに、抗体Aのヒト定常領域を認識する抗体を含む。本発明のシステムとキットの両方のいくつかの実施形態において、抗体Bは、マウスまたはウサギに惹起させたポリクローナルまたはモノクローナル抗体のいずれかである。
【0079】
ある特定の実施形態において、システムおよび/またはキットは、サンプルを調製するためのコンポーネントをさらに含みうる。サンプルは、染色前に、ホルマリン固定およびパラフィン包埋してもよい。システムおよび/またはキットは、FFPEサンプルを薄切し、スライド上でサンプルを乾燥するためのコンポーネントをさらに含んでいてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態において、システムは、サンプルを染色し、特定のエピトープの存在を検出するための自動化方法を含みうる。例えば、いくつかの実施形態において、市販の自動染色装置を、標的化複合体、標識化二次抗体、および対比染色剤でサンプルを染色するために使用しうる。
【0081】
さらに、システムおよび/またはキットは、検出部分の量を決定するためのコンポーネントをさらに含んでいてもよく、この検出部分の量が、特定の治療薬による処置を受ける上での被験体の適切さを決定する。例えば、ある特定の実施形態において、システムまたはキットは、ルミノメーターまたはルシフェラーゼ酵素活性を測定するための他のデバイスを含んでいてもよく、および/または必要としてもよい。
【0082】
本発明のこれらのシステムおよびキットは、種々のコンポーネントを含む。本明細書で用いられる場合、用語「コンポーネント」は、広く定義され、ここに記載された方法を実施するために適切な、任意の機器または機器の集まりを含む。各コンポーネントは、一体的に結合または何らかの特定の様式で相互に配置されている必要はない。本発明は、各コンポーネント相互の任意の適切な配置を含む。例えば、各コンポーネントは、同じ部屋にある必要はない。しかしながら、いくつかの実施形態において、各コンポーネントは、一体型ユニット中で、互いに接続されている。いくつかの実施形態において、同種のコンポーネントが、複数の機能を果たしてもよい。
【0083】
コンピュータシステムおよびコンピュータ可読媒体
ある特定の実施形態において、本発明は、システムを含みうる。システムは、少なくともいくつかの、本発明組成物を含みうる。また、システムは、少なくともいくつかの、本方法を実施するためのコンポーネントを含みうる。ある特定の実施形態において、システムは、キットとして配合される。よって、ある特定の実施形態において、本発明は、(i)サンプルを得ること;(ii)請求項1~13のいずれか1項に記載されるように、前記サンプルを標的化複合体とインキュベートして抗原-抗体複合体を形成させること;(iii)前記抗原-抗体複合体を検出すること;および(iv)治療薬に対する被験体の反応性を予測すること、を含む、治療薬による処置から利益を受けうる被験体を特定するためのシステムを含みうる。さらに別の実施形態において、本発明は、前記方法またはシステムと共に使用するためにソフトウェアを含む。
【0084】
システムまたはその任意のコンポーネントは、本技術に記載されているように、コンピュータシステムの形態で実現されうる。コンピュータシステムの典型的な例としては、例えば、汎用コンピュータ、プログラムされたマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、周辺集積回路素子、および、本技術の方法を構成するステップを実行することができる、他のデバイスまたはデバイスの配列があげられる。
【0085】
コンピュータシステムは、コンピュータ、入力デバイス、ディスプレイユニット、および/またはインターネットを含みうる。コンピュータは、マイクロプロセッサをさらに含んでいてもよい。マイクロプロセッサは、通信バスと接続されていてもよい。コンピュータは、メモリーも含んでいてもよい。メモリーは、ランダムアクセスメモリー(RAM)および読み出し専用メモリー(ROM)を含みうる。コンピュータシステムは、記憶デバイスをさらに含みうる。記憶デバイスは、ハードディスクドライブ、または、フロッピー(登録商標)ディスクドライブ、光学ディスクドライブなどのリムーバブル記憶ドライブを含みうる。記憶デバイスは、コンピュータプログラムまたはその他の命令をコンピュータシステムにロードするための、他の類似の手段でもありうる。コンピュータシステムは、通信ユニットも含みうる。通信ユニットは、コンピュータが、I/Oインターフェースを介して、他のデータベースおよびインターネットと接続することを可能にする。通信ユニットは、他のデータベースへのデータの送信、ならびに他のデータベースからのデータの受信を可能にする。通信ユニットは、モデム、イーサネット(登録商標)カード、または、コンピュータシステムがデータベースならびにLAN、MAN、WAN、およびインターネットなどのネットワークに接続することを可能にする任意の類似のデバイスを含みうる。よって、コンピュータシステムは、I/Oインターフェースを介してシステムへのアクセスが可能な入力デバイスによって、ユーザーからの入力を容易にすることができる。
【0086】
コンピューティングデバイスは、典型的には、コンピューティングデバイスの全般的な管理および操作のための、実行可能なプログラム命令を提供するオペレーティングシステムを含むであろう。また、コンピューティングデバイスは、典型的には、サーバーのプロセッサによって実行されたときにコンピューティングデバイスが意図した機能を果たすことを可能にする命令を記憶する、コンピュータ可読記憶媒体(例えば、ハードディスク、ランダムアクセスメモリー、読み出し専用メモリーなど)を含むであろう。オペレーティングシステムの適切な実装およびコンピューティングデバイスの一般的な機能は、知られているか、商業的に利用可能であり、また、特に本開示を考慮すれば、当業者によって容易に実施される。
【0087】
コンピュータシステムは、入力データを処理するために、1またはそれを超える記憶素子に記憶された命令セットを実行する。記憶素子は、所望により、データまたはその他の情報も保持しうる。記憶素子は、情報源の形態であってもよく、演算処理装置内に存在する物理記憶素子の形態であってもよい。
【0088】
環境は、上述のように、種々のデータ保存装置、ならびにその他のメモリーおよび記憶媒体を含みうる。これらは、例えば、1またはそれを超えるコンピュータのローカルな(および/またはその中に常設された)記憶媒体上、またはネットワーク全域にわたる任意のまたは全てのコンピュータからリモートな記憶媒体上など、種々の場所に存在しうる。特定のセットの実施形態において、情報は、当業者によく知られている、ストレージエリアネットワーク(「SAN」)中に存在しうる。同様に、コンピュータ、サーバー、またはその他のネットワークデバイスが持つ機能を発揮させるために必要な任意のファイルは、適宜、ローカルおよび/またはリモートに保存しうる。システムがコンピューティングデバイスを含む場合、それらの各デバイスは、バスを介して電気的に結合されているハードウェアエレメントを含んでいてもよく、ハードウェアエレメントとしては、例えば、少なくとも1つの中央演算処理装置(CPU)、少なくとも1つの入力デバイス(例えば、マウス、キーボード、コントローラ、タッチスクリーン、またはキーパッド)、および少なくとも1つの出力デバイス(例えば、ディスプレイデバイス、プリンター、またはスピーカー)があげられる。このようなシステムは、例えば、ディスクドライブ、光学記憶デバイス、およびソリッドステート記憶デバイス(例えば、ランダムアクセスメモリー(「RAM」)または読み出し専用メモリー(「ROM」)、ならびにリムーバブルメディアデバイス、メモリーカード、フラッシュカードなど)などの、1またはそれを超える記憶デバイスも含んでいてもよい。
【0089】
このようなデバイスは、上述のように、コンピュータ可読記憶媒体リーダー、通信デバイス(例えば、モデム、ネットワークカード(無線または有線)、赤外線通信デバイスなど)、およびワーキングメモリーを含みうる。コンピュータ可読記憶媒体リーダーは、一時的および/またはより永続的にコンピュータ可読情報を格納、保存、送信、および検索するためのコンピュータ可読記憶媒体(リモート、ローカル、固定および/またはリムーバブルな記憶デバイスならびに記憶媒体を表す)と接続されていてもよく、または、そのようなコンピュータ可読記憶媒体を受け入れるように構成されていてもよい。システムおよび種々のデバイスは、典型的には、少なくとも1つのワーキングメモリーデバイス内に置かれた、多くのソフトウェアアプリケーション、モジュール、サービス、またはその他の要素(例えば、オペレーティングシステム、およびクライアントアプリケーションまたはウェブブラウザなどのアプリケーションプログラムが含まれる)も含むであろう。代替的な実施形態は、上述した実施形態の数多くのバリエーションを含みうることを理解すべきである。例えば、カスタム化したハードウェアも使用できるであろうし、および/または特定のエレメントが、ハードウェア、ソフトウェア(アプレットなどのポータブルソフトウェアを含む)、またはその両方で実装できるであろう。さらに、ネットワーク入力/出力デバイスなどの、その他のコンピューティングデバイスとの接続も利用することができる。
【0090】
コードまたはコードの一部分を格納するための非一時的記憶媒体およびコンピュータ可読媒体は、当該技術分野で知られ、または使用されている、任意の適切な媒体を含みうる。このような媒体としては、記憶媒体および通信媒体(例えば、これらに限定されないが、情報(例えば、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、またはその他のデータなど)の記憶および/または伝達のための任意の方法または技術で実装されている、RAM、ROM、EEPROM、フラッシュメモリー、またはその他のメモリー技術、CD-ROM、デジタル汎用ディスク(DVD)、またはその他の光学記憶、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶、またはその他の磁気記憶デバイスを含む、揮発性および不揮発性のリムーバブルおよび固定メディア)、または、所望の情報を保存するために使用することができ、かつ、システムデバイスがアクセスすることができる任意のその他の媒体があげられる。本明細書で提供された開示または教示に基づいて、当業者は、種々の実施形態を実装するための他のやり方および/または方法を理解するであろう。
【0091】
コンピュータ可読媒体は、これらに限定されないが、プロセッサにコンピュータ可読命令を提供することができる、電子的デバイス、光学デバイス、磁気デバイス、またはその他の記憶デバイスを含みうる。他の例としては、これらに限定されないが、フロッピー(登録商標)ディスク、CD-ROM、DVD、磁気ディスク、メモリーチップ、ROM、RAM、SRAM、DRAM、連想メモリー(「CAM」)、DDR、NANDフラッシュもしくはNORフラッシュなどのフラッシュメモリー、ASIC、構成済みプロセッサ、光学記憶装置、磁気テープもしくはその他の磁気記憶装置、または、コンピュータプロセッサが命令を読み取ることができるその他の任意の媒体があげられる。一実施形態において、コンピューティングデバイスは、ランダムアクセスメモリー(RAM)などの、単一の種類のコンピュータ可読媒体を含んでいてもよい。他の実施形態において、コンピューティングデバイスは、ランダムアクセスメモリー(RAM)、ディスクドライブ、およびキャッシュなどの、2またはそれを超える種類のコンピュータ可読媒体を含んでいてもよい。コンピューティングデバイスは、外付けハードディスクドライブ、または外付けDVDもしくはBlu-Rayドライブなどの、1またはそれを超える外付けコンピュータ可読媒体と通信していてもよい。
【0092】
上述のように、前記実施形態は、コンピュータが実行可能なプログラム命令を実行することができるように、および/またはメモリーに保存された情報にアクセスすることができるように構成されたプロセッサを含む。命令は、任意の適切なコンピュータプログラム言語(例えば、C、C++、C#、Visual Basic、Java(登録商標)、Python、Perl、JavaScript(登録商標)、およびActionScript(Adobe Systems、Mountain View、カリフォルニア)があげられる)で書かれたコードからコンパイラおよび/またはインタープリタによって生成された、プロセッサに固有の命令を含みうる。ある実施形態において、コンピューティングデバイスは、単一のプロセッサを含む。他の実施形態において、デバイスは、2またはそれを超えるプロセッサを含む。このようなプロセッサは、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および状態機械を含みうる。このようなプロセッサは、PLC、プログラマブル割り込みコントローラ(PIC)、プログラマブル論理デバイス(PLD)、プログラマブル読出し専用メモリー(PROM)、電気的プログラム可能読出し専用メモリー(EPROMまたはEEPROM)、またはその他の類似のデバイスなどの、プログラマブル電子的デバイスをさらに含みうる。
【0093】
コンピューティングデバイスは、ネットワークインターフェースを含む。いくつかの実施形態において、ネットワークインターフェースは、有線または無線の通信リンクを介して通信するように構成されている。例えば、ネットワークインターフェースは、イーサネット(登録商標)、IEEE802.11(Wi-Fi)、802.16(Wi-Max)、Bluetooth(登録商標)、赤外線などを介して、ネットワークで通信することを可能にしうる。別の例として、ネットワークインターフェースは、CDMA、GSM(登録商標)、UMTS、またはその他の携帯電話通信ネットワークなどのネットワークで通信することを可能にしうる。いくつかの実施形態において、ネットワークインターフェースは、別のデバイスで(例えば、ユニバーサルシリアルバス(USB)、1394 FireWire、シリアルまたはパラレル接続、または類似のインターフェースを介して)、ポイントツーポイント接続を可能にしうる。適切なコンピューティングデバイスのいくつかの実施形態は、1またはそれを超えるネットワークで通信するための、2またはそれを超えるネットワークインターフェースを含みうる。いくつかの実施形態において、コンピューティングデバイスは、ネットワークインターフェースに加えて、またはネットワークインターフェースに代えて、データ保存装置を含みうる。
【0094】
適切なコンピューティングデバイスのいくつかの実施形態は、多くの外付けまたは内蔵デバイス(例えば、マウス、CD-ROM、DVD、キーボード、ディスプレイ、オーディオスピーカー、1またはそれを超えるマイクロホン、または任意の他の入力または出力デバイスなど)を含んでいてもよく、またはそれらと通信していてもよい。例えば、コンピューティングデバイスは、種々のユーザーインターフェースデバイスおよびディスプレイと通信していてもよい。ディスプレイは、これらに限定されないが、LCD、LED、CRTなどを含む、任意の適切な技術を利用していてもよい。
【0095】
コンピュータシステムによって実行するための命令セットは、演算処理装置に特定のタスク(例えば、本技術の方法を構成するステップ)を実行させるように命令する、種々のコマンドを含みうる。命令セットは、ソフトウェアプログラムの形態であってもよい。さらに、ソフトウェアは、本技術の場合、独立のプログラムの集まり、より大きいプログラムについてのプログラムモジュール、またはプログラムモジュールの一部の形態であってもよい。ソフトウェアは、オブジェクト指向プログラミングの形態のモジューラプログラミングも含みうる。演算処理装置による入力データの処理は、ユーザーコマンド、前の処理の結果、または別の演算処理装置による要求に対する応答によるものでありうる。
【0096】
本発明は、ある特定の実施形態に関連して開示されているが、添付の特許請求の範囲に規定されているように、本発明の範囲および趣旨を逸脱することなく、記載された実施形態に対する数多くの変形、改変、および変更が可能である。よって、本発明は、記載された実施形態に限定されることは意図されておらず、下記の特許請求の範囲の文言によって規定される全ての範囲、およびその同等物を含むことが意図されている。
【実施例0097】
実施例1 トラスツズマブによる処置から利益を受けうる被験体を特定するための免疫組織化学的アッセイ
乳房から、がん性腫瘍組織に由来する組織の3mmまたはそれより小さい切片を得る。組織を、体積で組織の15~20倍量の10%中性緩衝ホルマリン(NBF)中で、室温(15~25℃)で4時間以上8時間以下固定する。次いで、固定された組織を、パラフィン中に包埋する。パラフィン包埋固定組織は、少なくとも2年間安定であり、15~25℃で保管すべきである。各FFPEサンプルからミクロトーム(micrometer)を用いて5μm厚の連続切片を切り出し、切片をプラススライド(例えば、Superfrost Plusスライド)上にマウントする。サンプルを、60℃に加熱して、1時間脱パラフィン化(deparaffenize)する。クエン酸緩衝液を用いて、pH6で、スチーマー中でサンプルを60分間調理し、熱による抗原賦活化を行う。スライドをスチーマーから取り出し、5分間冷却する。サンプルを、PBS緩衝液で3回、各回3分間洗浄する。内在性のタンパク質を、カゼイン溶液を用いて、室温で10分間ブロッキングする。サンプルを、PBS緩衝液で3回、各回3分間洗浄する。サンプルを、PBS緩衝液(PB buffer)中、5%FCSにより、室温で30分間ブロッキングする。トラスツズマブ標的化複合体を、5%FCS含有PBSで、1:20~1:40に希釈する。この標的化複合体は、トラスツズマブのヒト定常領域を認識するマウス抗ヒトIgGと結合したトラスツズマブである。サンプルを、標的化複合体と、4℃で終夜インキュベートする。サンプルを、PBS緩衝液で3回、各回3分間洗浄する。
【0098】
サンプルを、抗マウスHRP標識二次抗体で覆い、室温で30分間インキュベートする。サンプルを、PBS緩衝液で3回、各回3分間洗浄する。DAB基質緩衝液1mlにつき、2滴のDAB色素原を加え、これらを混ぜ合わせてDABを調製する。サンプルを、調製したDAB色素原溶液で覆い、10分間インキュベートする。スライドを水で洗浄し、hemalaunで2分間対比染色する。スライドを水で洗浄し、脱水し、永久封入剤(例えば、Pertex)中にマウントする。スライドを光学顕微鏡で観察し、染色を評価してサンプルにスコアを付ける。
【0099】
実施例2 トラスツズマブによる処置から利益を受けうる被験体を特定するための、Ventana BenchMark XT XT ultraView DABを用いた免疫組織化学的アッセイ
乳房から、がん性腫瘍組織に由来する組織の3mmまたはそれより小さい切片を得る。組織を、体積で組織の15~20倍量の10%中性緩衝ホルマリン(NBF)中で、室温(15~25℃)で4時間以上8時間以下固定する。次いで、固定された組織を、パラフィン中に包埋する。パラフィン包埋固定組織は、少なくとも2年間安定であり、15~25℃で保管すべきである。各FFPEサンプルからミクロトーム(micrometer)を用いて4μm厚の連続切片を切り出し、切片をプラススライド(例えば、Superfrost Plusスライド)上にマウントする。サンプルを、スライド上で、80℃で15分間乾燥させる。
【0100】
トラスツズマブ標的化複合体を、Ventanaから入手した抗体希釈剤で、1:20-1:5-に希釈する。Ventana抗体ディスペンサーを、希釈したトラスツズマブ標的化複合体で満たす。Ventana染色手順には、Cell Conditioner 2(pH6)で60分間の前処理と、それに続く1:20~1:50トラスツズマブ標的化複合体との37℃での32分間のインキュベーションが含まれる。抗体インキュベーションに続き、Ventana標準信号増幅、ultraWash、ならびに、1滴のヘマトキシリンで4分間および1滴のブルーイング試薬で4分間による対比染色を行う。
【0101】
発色検出のために、UltraView Universal DAB検出キット(Ventana)を使用する。スライドを染色液から取り出し、1滴の界面活性剤を加えた水で洗浄し、マウントする。スライドを光学顕微鏡で観察し、染色を評価してサンプルにスコアを付ける。
【0102】
実施例3 トラスツズマブおよびドセタキセルによる処置から利益を受けうる被験体を特定するための、Ventana BenchMark XT XT ultraView DABを用いた免疫組織化学的アッセイ
乳房から、がん性腫瘍組織に由来する組織の3mmまたはそれより小さい切片を得る。組織を、体積で組織の15~20倍量の10%中性緩衝ホルマリン(NBF)中で、室温(15~25℃)で4時間以上8時間以下固定する。次いで、固定された組織を、パラフィン中に包埋する。パラフィン包埋固定組織は、少なくとも2年間安定であり、15~25℃で保管すべきである。各FFPEサンプルからミクロトーム(micrometer)を用いて4μm厚の連続切片を切り出し、切片をプラススライド(例えば、Superfrost Plusスライド)上にマウントする。サンプルを、スライド上で、80℃で15分間乾燥させる。
【0103】
トラスツズマブ標的化複合体を、Ventanaから入手した抗体希釈剤で、1:20-1:5-に希釈する。ドセタキセル標的化複合体を、Ventanaから入手した抗体希釈剤で、1:20-1:5-に希釈する。Ventana抗体ディスペンサーを、希釈したトラスツズマブ標的化複合体および希釈したドセタキセル標的化複合体で満たす。Ventana染色手順には、Cell Conditioner 2(pH6)で60分間の前処理と、それに続く1:20~1:50トラスツズマブ標的化複合体および1:20~1:50ドセタキセル標的化複合体との37℃での32分間のインキュベーションが含まれる。抗体インキュベーションに続き、Ventana標準信号増幅、ultraWash、ならびに、1滴のヘマトキシリンで4分間および1滴のブルーイング試薬で4分間による対比染色を行う。
【0104】
発色検出のために、UltraView Universal DAB検出キット(Ventana)およびUltraView Universal AP検出キット(Ventana)を使用する。スライドを染色液から取り出し、1滴の界面活性剤を加えた水で洗浄し、マウントする。スライドを光学顕微鏡で観察し、染色を評価してサンプルにスコアを付ける。
本発明は、例えば以下の項目を提供する。
(項目1)
以下:
(i)抗体Aであって、以下:
(a)関心のあるエピトープに特異的な可変領域、および
(b)ヒト定常領域
を含む、潜在的な治療用モノクローナル抗体、またはそのフラグメントである、抗体A;ならびに
(ii)抗体Aの前記ヒト定常領域を認識する、抗体B
を含む、標的化複合体。
(項目2)
前記モノクローナル抗体が、IgGである、項目1に記載の標的化複合体。
(項目3)
前記モノクローナル抗体フラグメントが、Fabフラグメントである、項目1に記載の標的化複合体。
(項目4)
前記可変領域が、マウス可変領域である、項目1に記載の標的化複合体。
(項目5)
前記モノクローナル抗体が、完全ヒト抗体である、項目1に記載の標的化複合体。
(項目6)
前記モノクローナル抗体が、キメラ抗体である、項目1に記載の標的化複合体。
(項目7)
前記モノクローナル抗体が、ヒト化抗体である、項目1に記載の標的化複合体。
(項目8)
抗体Bが、モノクローナルまたはポリクローナル抗体である、項目1に記載の標的化複合体。
(項目9)
抗体Bが、抗体Aの前記ヒト定常領域に対して、動物で惹起される、項目1に記載の標的化複合体。
(項目10)
前記動物が、マウスまたはウサギである、項目9に記載の標的化複合体。
(項目11)
抗体Bが、検出部分と結合体化されている、項目1に記載の標的化複合体。
(項目12)
前記検出部分が、フルオロフォア、蛍光タンパク質、粒子、または酵素のうちの少なくとも1つを含む、項目11に記載の標的化複合体。
(項目13)
前記酵素が、ルシフェラーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、またはグリコシダーゼのうちの少なくとも1つを含む、項目12に記載の標的化複合体。
(項目14)
標的化複合体を作製するための方法であって、
(i)抗体Aであって、以下:
(a)関心のあるエピトープに特異的な可変領域、および
(b)ヒト定常領域
を含む、潜在的な治療用モノクローナル抗体、またはそのフラグメントである抗体Aを、抗体Aの前記ヒト定常領域を認識する抗体Bと反応させるステップ;ならびに
(ii)前記標的化複合体を精製するステップ
を含む、方法。
(項目15)
前記モノクローナル抗体が、IgGである、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記モノクローナル抗体フラグメントが、Fabフラグメントである、項目14に記載の方法。
(項目17)
前記可変領域が、マウス可変領域である、項目14に記載の方法。
(項目18)
前記モノクローナル抗体が、完全ヒト抗体である、項目14に記載の方法。
(項目19)
前記モノクローナル抗体が、キメラ抗体である、項目14に記載の方法。
(項目20)
前記モノクローナル抗体が、ヒト化抗体である、項目14に記載の方法。
(項目21)
抗体Bが、モノクローナルまたはポリクローナル抗体である、項目14に記載の方法。
(項目22)
抗体Bが、抗体Aの前記ヒト定常領域に対して、動物で惹起される、項目14に記載の方法。
(項目23)
前記動物が、マウスまたはウサギである、項目22に記載の方法。
(項目24)
抗体Bが、検出部分と結合体化されている、項目14に記載の方法。
(項目25)
前記検出部分が、フルオロフォア、蛍光タンパク質、粒子、または酵素のうちの少なくとも1つを含む、項目24に記載の方法。
(項目26)
前記酵素が、ルシフェラーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、またはグリコシダーゼのうちの少なくとも1つを含む、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記標的化複合体が、全ての結合していない抗体Aおよび結合していない抗体Bを除去するために、濾過、遠心分離、および洗浄のうちの少なくとも1つを用いて精製される、項目14に記載の方法。
(項目28)
治療薬による処置から利益を受ける可能性がある被験体を特定するための方法であって、
(i)サンプルを得るステップ;
(ii)前記サンプルを、項目1に記載した標的化複合体とインキュベートして、抗原-抗体複合体を形成させるステップ;
(iii)前記抗原-抗体複合体を検出するステップ;および
(iv)前記被験体が、前記治療薬に反応性でありうるかどうかを予測するステップ
を含む、方法。
(項目29)
前記治療薬が、モノクローナル抗体である、項目28に記載の方法。
(項目30)
前記標的化複合体が、
(i)抗体Aであって、以下:
(a)関心のあるエピトープに特異的な可変領域、および
(b)ヒト定常領域
を含む、潜在的な治療用モノクローナル抗体、またはそのフラグメントである、抗体A;ならびに
(ii)抗体Aの前記ヒト定常領域を認識する、抗体B
を含む、項目28に記載の方法。
(項目31)
前記被験体が、がんと診断されている患者である、項目28に記載の方法。
(項目32)
前記被験体が、自己免疫疾患と診断されている患者である、項目28に記載の方法。
(項目33)
前記サンプルが、組織サンプルである、項目28に記載の方法。
(項目34)
前記組織サンプルが、腫瘍に由来する、項目33に記載の方法。
(項目35)
前記検出ステップが、免疫組織化学によって行われる、項目28に記載の方法。
(項目36)
前記検出ステップが、前記サンプルを、検出部分を含む二次抗体とインキュベートすることを含む、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記検出部分が、フルオロフォア、蛍光タンパク質、粒子、または酵素のうちの少なくとも1つを含む、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記酵素が、ルシフェラーゼ、ホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、またはグリコシダーゼのうちの少なくとも1つを含む、項目37に記載の方法。
(項目39)
前記予測ステップが、前記サンプルにスコアを付けることを含む、項目28に記載の方法。
(項目40)
前記サンプルが、複数の異なる標的化複合体とインキュベートされる、項目28に記載の方法。
(項目41)
前記複数の標的化複合体が、
i)AbA1、AbA2、AbA3などであって、ここで、各抗体Aは、以下:
(a)関心のあるエピトープに特異的な可変領域、および
(b)ヒト定常領域
を含む異なる潜在的な治療用モノクローナル抗体、またはそれらのフラグメントである、AbA1、AbA2、AbA3など;ならびに
(ii)AbB1、AbB2、AbB2などであって、ここで、各異なる抗体Bは、対応する抗体Aの前記ヒト定常領域を認識する、AbB1、AbB2、AbB2など
を含む、項目40に記載の方法。
(項目42)
項目1~13のいずれかに記載の標的化複合体を含む、治療薬から利益を受けうる被験体を特定するための、キット。
(項目43)
項目1~13のいずれかに記載の標的化複合体を含む、治療薬から利益を受けうる被験体を特定するための、システム。