IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ パワー・インテグレーションズ・インコーポレーテッドの特許一覧

特開2024-42046エンハンスメント型金属-絶縁体-半導体高電子移動度トランジスタ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042046
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】エンハンスメント型金属-絶縁体-半導体高電子移動度トランジスタ
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20240319BHJP
   H01L 29/06 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L29/06 301F
【審査請求】有
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024011376
(22)【出願日】2024-01-29
(62)【分割の表示】P 2021568542の分割
【原出願日】2019-05-23
(71)【出願人】
【識別番号】501315784
【氏名又は名称】パワー・インテグレーションズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100125818
【弁理士】
【氏名又は名称】立原 聡
(72)【発明者】
【氏名】ラムダニ ジャマール
(57)【要約】      (修正有)
【課題】エンハンスメント型金属-絶縁体-半導体高電子移動度トランジスタ(HEMT)を提供する。
【解決手段】エンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTは、分極スタックを使用することにより、低シート抵抗二次元電子気体を有効にするために、より薄い障壁層108(例えばより薄いAlGaN層)が製造中に形成され得る。有益には、より薄い(すなわち10ナノメートル未満の)障壁層が反応性イオンエッチング(RIE)に誘起された表面損傷を軽減する。これは、ひいては、リセスゲートの形成を可能にする。更に、二重誘電体ゲートスタック121が、漏れ電流を更に減らすために、および閾値未満の傾きを改善するために堆積させられ得る。
【選択図】図1D
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ンハンスメント型半導体デバイスを製造する方法であって、
前記エンハンスメント型半導体デバイスが、
第1の活性層と、
二重誘電体ゲートスタックを含むリセスゲート領域と、
分極スタックと、
を備え、
前記二重誘電体ゲートスタックが、4ナノメートルから8ナノメートルの間の厚さをもった、および、原子層堆積工程を使用して前記第1の活性層上に堆積させられた窒化アルミニウム層を備え、
前記分極スタックが、
10ナノメートル未満の厚さをもった、および、前記第1の活性層上に位置する第2の活性層と、
前記第1の活性層と前記分極スタックとの間に形成される二次元電子気体のシート抵抗を減らす圧電分極を有効にするように前記第2の活性層上に位置する第1の誘電体層と、
を備え、
前記エンハンスメント型半導体デバイスが、
ソースオーミック接点を介して前記二次元電子気体に電気的に接続されたソース金属層を備えるソースと、
ドレインオーミック接点を介して前記二次元電子気体に電気的に接続されたドレイン金属層を備えるドレインと、
を更に備え、
前記方法が、
基材上に第1の活性層を形成することと、
分極スタックを形成することと、
を含み、
前記分極スタックを形成することが、
前記第1の活性層上に第2の活性層を成長させることであって、前記第2の活性層が、10ナノメートル未満の厚さをもつ、前記第2の活性層を成長させることと、
圧電分極を有効にするために前記第2の活性層上に第1の誘電体層を形成することであって、前記圧電分極により、二次元電子気体が前記第1の活性層と前記第2の活性層との間に形成される、前記第1の誘電体層を形成することと、
を含み、
前記方法が、
オーミック接点を形成することであって、前記オーミック接点が、ソースオーミック接点とドレインオーミック接点とを含む、前記オーミック接点を形成することと、
前記第1の誘電体層上にパッシベーション層を堆積させることと、
リセスゲートを形成することと、
を含み、
前記リセスゲートを形成することが、
前記第1の活性層を露出させるためにゲートビア開口を形成するように前記パッシベーション層と前記第1の誘電体層とをエッチングすることと、
原子層堆積工程を使用して二重誘電体を堆積させることであって、前記二重誘電体が、4ナノメートルから8ナノメートルの厚さの窒化アルミニウム層を備える、前記二重誘電体を堆積させることと、
ゲート接点を堆積させることと、
を含む、
方法。
【請求項2】
前記パッシベーション層を堆積させることが、窒化ケイ素パッシベーション層を堆積させることを含み、
前記第1の誘電体層が、前記二次元電子気体の目標シート抵抗値を提供するように形成される、
請求項に記載の前記方法。
【請求項3】
前記基材上に前記第1の活性層を形成することが、
窒化ガリウムバッファ層を形成することと、
前記窒化ガリウムバッファ層上に前記第1の活性層を形成することであって、前記第1の活性層が、窒化ガリウム(GaN)を含む、前記第1の活性層を形成することと、
を含む、
請求項に記載の前記方法。
【請求項4】
前記第1の活性層上に前記第2の活性層を成長させることが、
前記第2の活性層を成長させることであって、前記第2の活性層が、アルミニウムガリウム窒化物(AlGaN)を含む、前記第2の活性層を成長させること、
を含む、
請求項に記載の前記方法。
【請求項5】
前記第2の活性層の厚さが、4ナノメートルから6ナノメートルの間である、
請求項に記載の前記方法。
【請求項6】
前記第2の活性層上に前記第1の誘電体層を形成することが、
前記第2の活性層とインサイチュで前記第1の誘電体層を成長させることであって、前記第1の誘電体層が、窒化ケイ素を含む、前記第1の誘電体層を成長させること、
を含む、
請求項に記載の前記方法。
【請求項7】
前記分極スタックを成長させることが、
前記圧電分極を有効にするために前記第2の活性層とインサイチュで前記第1の誘電体層を成長させることであって、前記圧電分極による前記二次元電子気体に起因したシート抵抗が、600オーム/スクエア以下である、前記第1の誘電体層を成長させること、
を含む、
請求項に記載の前記方法。
【請求項8】
前記第2の活性層上に前記第1の誘電体層を形成することが、
前記第2の活性層とイクサイチュで前記第1の誘電体層を成長させることであって、前記第1の誘電体層が、窒化ケイ素を含む、前記第1の誘電体層を成長させること、
を含む、
請求項に記載の前記方法。
【請求項9】
前記ゲートビア開口をエッチングすることが、
フッ素ベースのプラズマを使用して窒化ケイ素を選択的にエッチングすることと、
後から、塩素ベースのプラズマを使用してAlGaNをエッチングすることと、
を含む、
請求項に記載の前記方法。
【請求項10】
前記塩素ベースのプラズマを使用してAlGaNをエッチングすることが、
10ナノメートル毎分以下の速度でエッチングすること、
を含む、
請求項に記載の前記方法。
【請求項11】
前記塩素ベースのプラズマを使用してAlGaNをエッチングすることが、
前記第1の活性層を露出させるために前記第2の活性層をオーバーエッチングすること、
を含む、
請求項に記載の前記方法。
【請求項12】
前記二重誘電体を堆積させることが、
GaN表面と前記窒化アルミニウム層との界面における界面準位を低減するために前記第1の活性層上に前記窒化アルミニウム層を堆積させること、
を含む、
請求項11に記載の前記方法。
【請求項13】
前記二重誘電体を堆積させることが、
後から、前記窒化アルミニウム層上に酸化アルミニウム層をインサイチュで堆積させること、
を含む、
請求項12に記載の前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、高電子移動度トランジスタ(HEMT:high electron mobility transistor)の製造に関し、より具体的には、窒化ガリウム(GaN)ベースのエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体電界効果トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 窒化ガリウム(GaN)および他の広バンドギャップIII族窒化物ベースの直接遷移半導体材料は高破壊電界を示し、高電流密度に役立つ。この点について、GaNベースの半導体デバイスは電力および高周波用途においてシリコンベースの半導体デバイスの代わりとして活発に研究されている。例えば、GaN HEMTは、同一の面積のシリコンパワー電界効果トランジスタに比べて低いオン抵抗率および高い絶縁破壊電圧を提供し得る。
【0003】
[0003] パワー電界効果トランジスタ(FET:field effect transistor)は、エンハンスメント型またはデプレッション型であり得る。エンハンスメント型デバイスは、ゲートバイアスが印加されていないときに(すなわち、ゲート対ソースバイアスがゼロであるときに)電流を遮断する(すなわちオフである)トランジスタ(例えば電界効果トランジスタ)を表し得る。対照的に、デプレッション型デバイスは、ゲート対ソースバイアスがゼロであるときに電流を許容する(すなわちオンである)トランジスタを表し得る。
【0004】
[0004] 更に、電力デバイス(例えば電力FET)のオン抵抗率は、抵抗にデバイス面積を乗じたものを表し得る。この手法により、オン抵抗率は、所望のオン抵抗値を実現するためにどの程度の半導体面積が必要とされ得るかに関連した性能指数を提供する。
【発明の概要】
【0005】
[0005] エンハンスメント型金属-絶縁体-半導体高電子移動度トランジスタ(HEMT)に対する非限定的かつ非網羅的な実施形態が以下の図を参照しながら説明されており、異なる図の中の同様の参照符号は、別段の指定がない限り同様の部分を示す。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】[0006] 図1Aは、本明細書における教示によるエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTの製造中における第1のデバイス断面を示す。
図1B】[0007] 図1Bは、本明細書における教示によるエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTの製造中における第2のデバイス断面を示す。
図1C】[0008] 図1Cは、本明細書における教示によるエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTの製造中における第3のデバイス断面を示す。
図1D】[0009] 図1Dは、図1Cのエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTの製造中における第4のデバイス断面を示す。
図1E】[0010] 図1Eは、図1Cのエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTを示す第5のデバイス断面を示す。
図2A】[0011] 図2Aは、第1の実施形態によるエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTを製造するための工程フローを示す。
図2B】[0012] 図2Bは、第2の実施形態によるエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTを製造するための工程フローを示す。
図2C】[0013] 図2Cは、一実施形態による分極スタックを形成するための工程フローを示す。
図2D】[0014] 図2Dは、一実施形態によるリセスゲート(溝形ゲート、recessed gate)を形成するための工程フローを示す。
図2E】[0015] 図2Eは、一実施形態による二重誘電体を堆積させるための工程フローを示す。
図3】[0016] 図3は、本明細書における教示により製造されたHEMTに対するゲート対ソース電圧に対するドレイン・ソース電流の伝達特性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[0017] 図面中の複数の図にわたり、対応する参照符号が対応するコンポーネントを示す。当業者は、図中の要素が簡潔かつ明確であるように描かれること、および、一定の縮尺で描かれるとは限らないことを理解する。例えば、図中の要素および層のうちの幾つかの寸法は、本明細書における教示の様々な実施形態をより理解しやすくするために他の要素より誇張される場合がある。更に、市販に適した実施形態において有用なまたは必要な、一般的だが良く理解される要素、層、および/または工程ステップは、多くの場合、エンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTのこれらの様々な実施形態の図が見づらくならないように図示されていない。
【0008】
[0018] 以下の説明では、エンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTの十分な理解を提供するために多くの具体的な詳細事項が記載される。しかし、本明細書における教示を実施するために特定の詳細事項が使用されるとは限らないことが当業者に明らかである。他の例において、本開示を不明瞭にしないために、よく知られた材料または方法は詳細には説明されていない。
【0009】
[0019] 本明細書中での、「一実施形態」、「実施形態」、「一例」、または「例」についての言及は、実施形態または例と関連して説明される特定の特徴、構造物、方法、処理、および/または特徴がエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTの少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書中の様々な場所における「一実施形態において」、「実施形態において」、「一例」、または「例」といった表現の使用は、すべてが同じ実施形態または例に関連するとは限らない。更に、特定の特徴、構造物、方法、工程、および/または特徴は、1つまたは複数の実施形態または例において任意の適切な組み合わせ、および/または部分的組み合わせで組み合わされてもよい。加えて、本明細書とともに提供される図が当業者への説明を目的としていること、および図面が一定の縮尺で描かれるとは限らないことが理解される。
【0010】
[0020] 本出願に関する文脈において、トランジスタが「オフ状態」または「オフ」であるとき、トランジスタは電流を遮断する、および/または実質的に電流を流さない。逆に、トランジスタが「オン状態」または「オン」であるとき、トランジスタは実質的に電流を流すことができる。例示として、トランジスタは、第1の端子であるドレインと第2の端子であるソースとの間において高電圧がサポートされるNチャネル金属-酸化物-半導体(NMOS:N-channel metal-oxide-semiconductor)電界効果トランジスタ(FET)を包含し得る。
【0011】
[0021] 更に、本明細書全体において幾つかの専門用語が使用される。これらの用語は、本明細書で特に規定されない限り、または、それらの使用される文脈がそうではないと明示的に示唆しない限り、それらが属する技術分野におけるそれらの通常の意味をもつ。例えば、当業者は、シート抵抗(すなわち、シートロー(sheet-rho))を認識し、抵抗率と区別し得る。更に、元素名および元素記号が本明細書を通して相互に置き換えて使用され得る(例えば、Si対シリコン)が、両方が同じ意味をもつことに留意されなければならない。
【0012】
[0022] 上述のように、エンハンスメント型デバイスは、制御電圧(例えばゲート対ソース電圧)が低い(例えば0ボルトである)とき電流を遮断するトランジスタを表し得る。多くの回路およびスイッチング用途において、回路機能を実現するためにエンハンスメント型トランジスタ(すなわちエンハンスメント型デバイス)を使用することが望ましい場合がある。例えば、電力用途では、多くの場合、スイッチ(すなわち電力スイッチ)としてパワートランジスタを使用することが望ましい。理想的には、パワートランジスタが、1つの状態(例えばゼロ制御電圧の状態)において電流を遮断し、および、第2の状態(例えば非ゼロの制御電圧の状態)において低いオン抵抗および低電力損失を伴って電流を提供する場合、パワートランジスタはスイッチとして動作し得る。
【0013】
[0023] 更に、上述のように、GaNベースのHEMT(すなわち、GaN HEMT)は、同一の面積のシリコンパワー電界効果トランジスタに比べて高い絶縁破壊電圧を伴う、より低いオン抵抗率を提供し得る。したがって、GaN HEMTは、シリコンパワーFETに対する望ましい代用物であり得る。
【0014】
[0024] GaN HEMTの一態様は、GaN層と障壁層との間の二次元電子気体の形成である。障壁層は、GaN層のバンドギャップより広いバンドギャップをもつ例えばアルミニウムガリウム窒化物(AlGaN)といった材料であり得、二次元電子気体の形成に対する1つの理由は固体物理学により説明され得、すなわち、障壁層(例えばAlGaN層)とGaN層との間に拡散接触電位差(すなわち接触電位差)が存在する。形成に対する別の理由は、結晶非対称性に起因した分極誘起電荷に関連し得る。
【0015】
[0025] 現在の最新のGaN HEMTは、低損失低オン抵抗電力デバイスを実現するために10ナノメートルより大きい厚さの障壁層(例えばAlGaNの障壁層)を必要とし得ることを研究が示している。10ナノメートルより大きい厚さをもつ障壁層を使用することは、電力デバイス用途のために十分に低いシート抵抗をもつ二次元電子気体の形成を可能にし得る。
【0016】
[0026] 現在の最新のエンハンスメント型GaN HEMTはp-GaN HEMTおよびリセスゲート金属-絶縁体-半導体HEMT(MISHEMT:metal insulator semiconductor HEMT)を包含する。p-GaN HEMTは、閾値電圧をシフトさせるためにゲート領域にp-GaN層(すなわちp型層)を提供することにより製造され得る。リセスゲートMISHEMTはリセスゲート領域における二次元電子気体の形成を防ぐために、アルミニウムガリウム窒化物(AlGaN)の障壁層を除去する(すなわち、窪ませる)。
【0017】
[0027] 残念ながら、p-GaN HEMTおよびリセスゲートMISHEMTは、デプレッション型GaN HEMTのシート抵抗に比べて比較的高いシート抵抗に悩まされる。更に、リセスゲートMISHEMTの製造は、ゲート領域においてGaN表面を露出させるために、少なくとも10ナノメートルの必要な障壁層を通した(例えば、少なくとも10ナノメートルのAlGaN層を通した)反応性イオンエッチング(RIE:reactive ion etching)を必要とし得る。RIE中における長期の露出は、表面損傷をもたらし、および信頼できないデバイス挙動をもたらし得る。例えば、表面損傷は、大きい漏れ電流をもたらし、悪い閾値未満の傾き特性(poor subthreshold slope characteristics)をもたらし得る。
【0018】
[0028] したがって、p-GaN HEMTおよびリセスゲートMISHEMTの欠点を解消するための、改善されたエンハンスメント型HEMTおよびエンハンスメント型HEMT工程が必要とされる。
【0019】
[0029] エンハンスメント型金属-絶縁体-半導体高電子移動度トランジスタ(HEMT)が本明細書において提示されている。従来の障壁層に代えて分極スタックを使用することにより、より薄い障壁層(例えばより薄いAlGaN層)が、低シート抵抗二次元電子気体を有効にするために製造中に形成され得る。有益には、より薄い(すなわち、10ナノメートル未満の)障壁層は、反応性イオンエッチング(RIE)に誘起された表面損傷を軽減する。これは、ひいては、リセスゲートの形成を可能にする。更に、二重誘電体ゲートスタックが、漏れ電流を更に減らすために、および、閾値未満の傾きを改善するために堆積させられ得る。
【0020】
[0030] 図1Aは、本明細書における教示によるエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTの製造中における第1のデバイス断面100aを示す。第1のデバイス断面100aは、基材102、バッファ層104、窒化ガリウム(GaN)活性層106、および分極スタック115を示す。分極スタック115は、アルミニウムガリウム窒化物(AlGaN)障壁層108および窒化ケイ素層110を含む。
【0021】
[0031] 基材102のために利用可能な材料は、GaN、サファイア、炭化ケイ素(SiC)、およびシリコン(Si)を包含し得るがこれらに限定されない。基材102のための材料の選択は、材料コスト、材料の入手可能性、GaNとの格子不整合、および/または熱伝導率に部分的に依存し得る。バッファ層104は、材料不整合(例えば格子不整合)に関連した問題のうちの幾つか(例えば転位および亀裂)を軽減するために基材102上に成長させられ得る。例えば、基材102は、<111>Si(すなわち、結晶方位<111>をもつシリコンウエハ)を含み得、バッファ層104は、後続のGaN活性層106と基材102との間をバッファリングするための、および後続のGaN活性層106と基材102との間の材料品質を改善するためのGaN、AlGaN、および/または窒化アルミニウム(AlN)を含む層であり得る。更に、バッファ層104とGaN活性層106とのうちの1つまたは複数は、エピタキシャル工程、例えば有機金属化学気相成長法(MOCVD:metal organic chemical vapor deposition)を使用して基材102から始まって成長させられ得る。
【0022】
[0032] 分極スタック115は、厚さd1のAlGaN障壁層108と厚さd2の窒化ケイ素層110とを備えるエピタキシャルフィルムであり得る。AlGaN障壁層108が従来の値未満の(例えば10ナノメートル未満の)厚さd1をもつように、エピタキシャルフィルムが調節され得る。AlGaN障壁層108は、例えば、4ナノメートルから6ナノメートルの間の層厚d1をもつ制御されたエピタキシャル成長速度(例えば1時間当たり200ナノメートルの速度)を使用して成長させられ得る。組み合わせ(すなわち分極スタック115)がAlGaN障壁層108とGaN活性層106との間の界面において低シート抵抗二次元電子気体109の形成をもたらすように、窒化ケイ素層110がAlGaN障壁層108上に形成され(例えば成長させられ)得る。例えば、窒化ケイ素層110は、AlGaN障壁層108とGaN活性層106との間の圧電分極を有効にすることに適した厚さd2(例えば40ナノメートル)をもつように、AlGaN障壁層108の成長の後にインサイチュ(in-situ)で成長させられ得る。圧電分極は、低シート抵抗二次元電子気体109を有益に有効にし得る。更に、図1Cに関連して以下で説明されるように、AlGaN障壁層108は、反応性イオンエッチング(RIE)に誘起された表面損傷を有益に軽減し得る厚さd1をもつ(例えば図1Cの表面界面122を参照されたい)。
【0023】
[0033] 図1Bは、本明細書における教示によるエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTの製造中における第2のデバイス断面100bを示す。第2のデバイス断面100bは、ソースオーミック接点109S、ドレインオーミック接点109D、およびパッシベーション層112の形成後の更なる層を示す。ソースオーミック接点109Sおよびドレインオーミック接点109Dは、例えば、チタン、アルミニウム、窒化チタン、アルミニウム銅(Ti/Al/TiN/AlCu)多層体といった多層合金を使用して形成され得る。後に、厚さd3のパッシベーション層112(例えば、100および50ナノメートル)が、プラズマエンハンスト化学蒸着(PECVD:plasma enhanced chemical vapor deposition)を使用して形成され得る。1つの実施形態において、パッシベーション層112は、下方にある分極スタック115を有益に強化し得る窒化ケイ素を含み得る。例えば、パッシベーション層112がPECVD窒化ケイ素層である場合、パッシベーション層112は、窒化ケイ素層110に起因してその上方における圧電分極を強化し(例えば増加させ)得る。それに応答して、二次元電子気体109のシート抵抗は、有益に低下し(すなわち改善し)得る。
【0024】
[0034] 図1Cは、本明細書における教示によるエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTの製造中における第3のデバイス断面100cを示す。第3のデバイス断面100cは、リセスゲート領域123、ソース金属層111S、およびドレイン金属層111Dの形成の後の更なる層を示す。ソース金属層111Sおよびドレイン金属層111Dは、ソースオーミック接点109Sおよびドレインオーミック接点109Dとの低抵抗電気接続体をそれぞれ形成するために、アルミニウムおよび/またはチタンを包含するがこれらに限定されない合金を含み得る。
【0025】
[0035] 更に、第3のデバイス断面100cは、窒化アルミニウム(AlN)層113および酸化アルミニウム層(Al)層114を示す。リセスゲート領域123を形成することにおいて、AlN層113は、GaN窒化物層106とAlN層113との間の表面界面122におけるダングリングボンドを減らすことにより、デバイス特性を有益に改善し得る(例えば、界面トラップを小さくし得る)。図1Dに関連して以下で更に詳しく説明されるように、後続の酸化アルミニウム層114は、エンハンスメント型動作に適したゲート誘電体を有益に提供し得る。
【0026】
[0036] 図1Dは、図1Cのエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTの製造中における第4のデバイス断面100dを示す。第4のデバイス断面100dは、第3のデバイス断面100cのリセスゲート領域123を示し、二重誘電体121を更に示す。ソース金属層111S、ドレイン金属層111D、ソースオーミック接点109S、ドレインオーミック接点109D、バッファ層104、および基材102を含む近接した層およびデバイス領域は、リセスゲート領域123および二重誘電体121の説明を円滑化するために第4のデバイス断面100dから省略されている。
【0027】
[0037] リセスゲート領域123は、二重誘電体121、表面界面122、およびゲート接点116を含む。幾つかの実施形態において、ゲート接点116は、ソース金属層111Sおよびドレイン金属層111Dと同時に堆積させられ得、更に、ゲート接点116は、アルミニウムおよび/またはチタンを包含する金属合金であり得る。
【0028】
[0038] 動作中、ゲート接点116は、ドレイン金属層111Dとソース金属層111Sとの間のドレイン・ソース電流を制御し得るゲート電圧(例えばゲート対ソース電圧)を受信し得る。ゼロゲート電圧状態および/または平衡状態のもとで、リセスゲート領域123は、表面界面122の近傍において二次元電子気体109の空乏化(depletion)(すなわち除去)をもたらし得る。この手法により、リセスゲート領域123は、ゲート電圧(例えばゲート対ソース電圧)がゼロであるとき、電流(すなわちドレイン・ソース電流)の流れを遮断するように構成され得る。この概念の更なる例として、図1Dは、表面界面122の近傍における二次元電子気体109の空乏化(例えば欠如)を示す。
【0029】
[0039] 更に、図1Dに示されているように、二重誘電体121は、AlN層113と酸化アルミニウム層114とを備え得る。AlN層113は、表面界面122における界面トラップおよび表面準位を低減することにより低欠陥表面界面122を生成することに適した厚さd4(例えば4から8ナノメートル)をもち得る。酸化アルミニウム層114は、少なくとも3ボルトのゲート電圧に信頼性高く耐えることに適した誘電体強度(例えば10メガボルト毎センチメートルから12メガボルト毎センチメートル)を伴って厚さd5(例えば5ナノメートルから15ナノメートル)をもち得る。したがって、二重誘電体121は、ゲート接点116(例えば金属)とGaN活性層106(例えば半導体)との間の「絶縁体」として機能し得、二重誘電体121は、金属-絶縁体-半導体HEMTがエンハンスメント型として動作するような合計の厚さ(例えば、合計の厚さd4+d5)をもち得る。
【0030】
[0040] 図1Eは、図1Cのエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTを示す第5のデバイス断面100eを示す。第5のデバイス断面100eがソース金属層111S、ゲート接点116、およびドレイン金属層111Dによりソース、ゲート、およびドレインの形成を示すことを除いて、第5のデバイス断面100eは第4のデバイス断面100dと同様である。更に、第5のデバイス断面100eは、チャネル長LCH、ソース・ゲート接点距離LS、およびドレイン・ゲート接点距離LDを示す。半導体デバイス物理学によると、エンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTの「オン」状態および「オフ」状態は、チャネル長LCH(例えば2マイクロメートル)、ソース・ゲート接点距離LS、およびドレイン・ゲート接点距離LDを包含するパラメータに依存し得る。当業者が理解し得るように、チャネル長LCH、ソース・ゲート接点距離LS、およびドレイン・ゲート接点距離LDの値は、リソグラフィー(すなわち臨界寸法(critical dimension))により、および更には、所望の電気的特性(例えばドレイン対ソース絶縁破壊電圧)により少なくとも部分的に決定され得る。
【0031】
[0041] したがって、断面100eにより、および更には断面100a~dにより示されたデバイス構造は限定するものとみなされてはならない。例えば、断面100eは、電力デバイスの製造のために繰り返され得る単位セルの一部を示し得る。当業者が理解し得るように、断面100eは、電力デバイスのオン抵抗率を部分的に決定し得るピッチおよび関連する「セル」エリアをもち得る。更に、断面100e、および断面100a~dは、より多くの層またはより少ない層を含み得る。例えば、更なるパッシベーションおよび/または金属化層(例えばフィールドプレート)が存在し得る。
【0032】
[0042] 断面100a~eに従って形成された金属-絶縁体-半導体HEMTの特性は、デバイス特性の測定を含み得る。デバイス特性は、例えばゲート電圧の関数としてのドレイン・ソース電流といった伝達関連性を包含してもよいがこれらに限定されない。時間および温度の関数としてのデバイスロバスト性および安定性(例えば繰り返し可能性)を分類するために、信頼性パラメータが測定されてもよい。例えば、デバイスロバスト性の尺度は、時間依存絶縁破壊(TDDB:time-dependent dielectric breakdown)を包含し得る。
【0033】
[0043] 上述のように、リセスゲート領域123およびゲート接点116(すなわちゲート)は、ゲート電圧を受信するように構成された制御端子として機能し得る。デバイス動作中、表面界面122の近傍におけるチャネルを調節するために、ゲート電圧がゲート接点116に印加され得、この手法により、ゲート電圧は、ドレイン(すなわちドレイン金属層111D)とソース(すなわちソース金属層111S)との間のドレイン・ソース電流を制御し得る。図2Aから図2Eの説明において以下で説明されるように、(例えば、第1の断面100a~第5の断面100eにより示される)エンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTを製造するための工程ステップは、デプレッション型(すなわちノーマリー「オン」)金属-絶縁体-半導体HEMTのデバイス特性にふさわしいデバイス特性(例えばオン抵抗率)のために役立ち得る。
【0034】
[0044] 図2Aは、第1の実施形態によるエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTを製造するための工程フロー200を示す。ステップ202は、GaNを成長させることによりGaN活性層106を形成することに対応し得る。例えば、GaN活性層106が、有機金属化学気相成長法(MOCVD)とも呼ばれる化学蒸着(CVD:chemical vapor deposition)エピタキシーを使用して成長させられ得る。代替的に、GaN活性層106は、分子線エピタキシー(MBE:molecular beam epitaxy)を使用して成長させられてもよい。幾つかの実施形態において、GaN活性層106は、1マイクロメートルから5マイクロメートルの間の厚さをもつように形成され得る。
【0035】
[0045] ステップ204は、GaN活性層106に厚さd1のAlGaN障壁層108を形成することに対応し得る。AlGaN障壁層108は活性層とも呼ばれ得、本明細書における教示によると、AlGaN障壁層106は、従来の厚さ未満(例えば10ナノメートル未満)の厚さd1をもつように成長させられ得る。例えば、ステップ204において、層厚d1が4ナノメートルから6ナノメートルの間である(例えば5ナノメートルである)ように、AlGaN障壁層108がMOCVDおよび/またはMBEを使用して成長させられ得る。化合物半導体製造原理によると、4ナノメートルから6ナノメートルの間の層厚は、低シート抵抗二次元電子気体の形成を妨げ得、および/または、適さない値(例えば、1000オーム/スクエアより大きい値)にシート抵抗を高める。本明細書における教示によると、次のステップ206が、厚さd2(例えば40ナノメートル)をもつ窒化ケイ素層110を形成することにより、高シート抵抗の上述の問題を軽減し得る。
【0036】
[0046] ステップ206において、窒化ケイ素層110が更にMOCVDを使用して堆積させられ得る。例えば、窒化ケイ素層110は、ステップ204の後にインサイチュで堆積させられ得る。代替的に、窒化ケイ素層110は、イクサイチュ(ex-situ)で堆積させられ得る。ステップ204とステップ206との組み合わせは、圧電分極のおかげによる低シート抵抗二次元電子気体109の形成に役立ち得る分極スタック115の形成をもたらし得る。例えば、実験データが、ステップ204およびステップ206により形成された分極スタック115が、約600オーム/スクエアのシートロー(すなわちシート抵抗)をもつ二次元電子気体109の形成をもたらし得ることを示している。
【0037】
[0047] 1つの実施形態において、目標値のシート抵抗が測定されるまで、ステップ206が実施され得る。例えば、ステップ206における窒化ケイ素層110の成長中、二次元電子気体109に起因したシート抵抗がインサイチュで測定され得、したがって、目標シート抵抗値(例えば600オーム/スクエア)に到達したとき、ステップ206が終了とされ得る。
【0038】
[0048] 代替的に、厚さd1および厚さd2を変えた実験計画法に基づく実験データが、ステップ204およびステップ206に対する工程レシピを特定するために使用され得る。例えば、層厚に対する二次元電子気体109のシート抵抗の実験データが、目標厚さ値(すなわち、厚さd1および厚さd2の目標値)に関するガイダンスを提供するために使用されてもよい。実験は工程レシピを示し得、この工程レシピにより、ステップ204中に、5ナノメートルに対して許容値をプラスまたはマイナスしたものに等しい厚さd1をもつAlGaN障壁層108が成長させられ、更に、ステップ204中に、レシピは、1200オーム/スクエアから1500オーム/スクエアの間のステップ204の目標シート抵抗(すなわち二次元電子気体シート抵抗)を示し得る。次に、ステップ206の目標シート抵抗が600オーム/スクエアに許容値をプラスまたはマイナスしたものまで小さくなるように、窒化ケイ素層110が厚さd2(例えば40ナノメートルに対して許容値をプラスまたはマイナスしたもの)までインサイチュで堆積させられるように、ステップ206中に工程レシピが調整され得る。
【0039】
[0049] 次のステップ208において、ソースオーミック接点109Sおよびドレインオーミック接点109Dが形成され得る。例えば、上述のように、ソースオーミック接点109Sおよびドレインオーミック接点109Dが、例えば、チタン、アルミニウム、窒化チタン、アルミニウム銅(Ti/Al/TiN/AlCu)多層体といった多層合金を使用して形成され得る。
【0040】
[0050] ステップ210において、厚さd3のパッシベーション層112が形成される。パッシベーション層112は、プラズマエンハンスト化学蒸着(PECVD)工程レシピを使用して堆積させられた窒化ケイ素パッシベーション層であり得る。窒化ケイ素を含むパッシベーション層112を使用することは、二次元電子気体109のシート抵抗を有益に改善し得る。例えば、実験データによると、パッシベーション層112が窒化ケイ素を含み、150ナノメートルの厚さをもつ場合、シート抵抗は、その初期値(例えば600オーム/スクエア)から、(例えば400オーム/スクエアから500オーム/スクエアの間の)改善された値まで有益に低下し得る。当業者が理解し得るように、500オーム/スクエア未満の値は、デプレッション型金属-絶縁体-半導体HEMTにおいて測定されるシート抵抗にふさわしいものであり得る。
【0041】
[0051] 後続のステップ212およびステップ214は、ゲートビア(すなわちリセスゲート領域123)のエッチングに関連したエッチングステップに対応し得る。パッシベーション層112が窒化ケイ素を含む場合、ステップ212は、界面122の上方における窒化ケイ素(すなわちパッシベーション層112および窒化ケイ素層110)をエッチングするためにRIE工程を使用することを表し得る。例えば、ステップ212に対するレシピは、マスキングするステップ(例えば、リセスゲート領域を規定するためのリソグラフィーステップ)と、次に、フッ素ベースのプラズマ化学作用を使用して窒化ケイ素を選択的にエッチングすることとを含み得る。ステップ214に対するレシピは、界面122の上方における残りのAlGaN障壁層108を選択的にエッチングすることを含み得る。界面122の上方におけるAlGaN障壁層108は、塩素ベースのプラズマ化学作用を使用してRIEを使用することによりエッチングされ得る。したがって、ステップ212からステップ214までの遷移は、フッ素ベースのプラズマを使用することから、例えば三塩化ホウ素(BCL3)といった塩素ベースのプラズマを使用することへの切り替えを含み得る。
【0042】
[0052] ステップ214に対するレシピは、AlGaN障壁層の完全な除去を確実なものとするためにAlGaN障壁層108をオーバーエッチングすることを更に含み得る。したがって、ステップ214は、塩素ベースのプラズマを使用して厚さd1(すなわちAlGaN障壁層108の厚さd1)より大きくオーバーエッチングすることを含み得る。例えば、厚さd1が4ナノメートルから6ナノメートルである場合、ステップ214は、少なくとも10ナノメートルぶんエッチングすることを必要とし得る。本明細書における教示によると、ステップ214は、より小さい反応性イオンエッチング(RIE)パワーおよびより小さいエッチング速度(例えば10ナノメートル毎分以下の速度)を使用して、AlGaN障壁層108を通してエッチングするように調整され得る。有益には、より小さいRIEパワーを使用することは、表面界面122におけるエッチング/イオンに誘起された損傷を軽減し得る。
【0043】
[0053] 次のステップ216およびステップ208は、二重誘電体ゲートスタック(すなわち二重誘電体121)を形成することに対応し得る。ステップ216は、厚さd4の窒化アルミニウム層113を形成するための窒化アルミニウム(AlN)の堆積に対応し得る。例えば、窒化アルミニウムは、GaN活性層106との界面122を生成するために、原子層堆積(ALD:atomic layer deposition)工程を使用して堆積させられ得る。したがって、窒化アルミニウム層113は、4ナノメートルから8ナノメートルの間の厚さd4をもつように堆積させられ得る。窒化アルミニウム層113は、連続的な非ダングリングボンドを確実なものとすることにより界面122における界面準位を有益に低減し得る。ステップ218は、厚さd5(例えば5ナノメートルから15ナノメートル)の酸化アルミニウム層114を形成するための後続の酸化アルミニウムの堆積に対応し得る。酸化アルミニウム層114は、ステップ218において窒素前駆体から酸素前駆体に切り替えることによりインサイチュでALD工程を使用して堆積させられてもよい。厚さd5は、閾値電圧(例えばゲート対ソース閾値電圧)を確実なものとするように、および、最大ゲート電圧(例えば5ボルトの最大値)を確実なものとするように選択され得る。
【0044】
[0054] 次に、ステップ220は、ゲート接点116を形成することに対応し得る。上述のように、ゲート接点116は、アルミニウムおよび/またはチタンを包含するがこれらに限定されない金属合金であってもよい。当業者が理解し得るように、リソグラフィーに関連したものを含む更なる工程ステップ、および更なるパッシベーションおよび/または金属化体をパターン形成することに関連した後続のステップが存在してもよい。例えば、高電圧動作のためのフィールドプレートをパターン形成するための、および/または堆積させるための後続の工程ステップが存在してもよい。
【0045】
[0055] 図2Bは、第2の実施形態によるエンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTを製造するための工程フロー220を示す。ステップ222は、第1の活性層(例えばGaN活性層106)を形成することを表し得る。第1の活性層は、MOCVDを使用して形成された(例えば成長させられた)エピタキシャル層であり得る。本明細書における教示によると、次のステップ224は、低パワーエッチング(例えば反応性イオンエッチング)に適した、および低抵抗二次元電子気体(例えば二次元電子気体109)を生成するために調整された分極スタック(例えば分極スタック115)を形成することを表し得る。ステップ227は、オーミック接点(例えばソースオーミック接点109Sおよびドレインオーミック接点109D)を形成することを表し得る。ステップ228は、厚さd3(例えば150ナノメートル)のパッシベーション層(例えばパッシベーション層112)を形成することを表し得る。パッシベーション層112は窒化ケイ素を含み得、PECVDにより形成され得る。ステップ230は、リセスゲート(例えばリセスゲート領域123)を形成することを表し得る。
【0046】
[0056] 図2Cは、ステップ224の実施形態による分極スタック115を形成するための工程フローを示す。ステップ225は、第1の活性層上に厚さd1の第2の活性層(例えばAlGaN障壁層108)を形成することを表し得る。本明細書における教示によると、第2の活性層は、従来の値より薄い(例えば10ナノメートルより薄い)ものであり得、第2の活性層は、更に、MOCVDを使用して形成された(例えば成長させられた)エピタキシャル層であり得る。例えば、1つの実施形態において第2の活性層は、4ナノメートルから6ナノメートルの厚さd1をもつAlGaN障壁層108であり得、このことが、1000オーム/スクエアより大きい、高い測定されたシート抵抗をもたらし得る。
【0047】
[0057] ステップ226は、第2の活性層上に厚さd2の第1の誘電体層(例えば窒化ケイ素層110)を形成することを表し得る。更に、本明細書における教示によると、第1の誘電体層は、第2の活性層と組み合わされて、低シート抵抗二次元電子気体109を生成することに適した分極スタック115を形成し得る。ステップ226において、第1の誘電体層はステップ225の後にインサイチュで成長させられてもよく、代替的に、第1の誘電体層はイクサイチュで成長させられてもよい。例えば、1つの実施形態において第1の誘電体層は、40ナノメートルに実質的に等しい厚さd2の窒化ケイ素層110であり得る。第2の活性層を伴う第1の誘電体層は圧電分極を生み出し得、以て、650オーム/スクエア未満の値または650オーム/スクエアに実質的に等しい値までシート抵抗(すなわち二次元電子気体109のシート抵抗)を下げる。
【0048】
[0058] 図2Dは、ステップ230の実施形態によるリセスゲート(例えばリセスゲート領域123)を形成するための工程フローを示す。ステップ232は、ゲートビア開口をエッチングすることを表し得る。マスキングするステップおよびフォトリソグラフィーに加えて、ステップ232は、反応性イオンエッチング(RIE)工程を使用することを含み得る。例えば、パッシベーション層112および第1の誘電体層(例えば窒化ケイ素層110)が窒化ケイ素を含む場合、ステップ232は、まず、窒化ケイ素を通してエッチングするためにフッ素ベースのプラズマ化学作用を使用することを表し得る。更に、第2の活性層がAlGaN(例えばAlGaN障壁層108)を含む場合、ステップ232は、AlGaNをエッチングする、および/またはオーバーエッチングするために、フッ素ベースのプラズマ化学作用から塩素ベースの化学作用に切り替えることを更に表し得る。本明細書における教示によると、より薄い第2の活性層(例えば厚さd1のAlGaN障壁層108)に対するエッチング工程(例えばRIE工程)は、より小さいパワー(例えば、より小さいエッチング速度)を有益に可能にし得る。これは、ひいては、第1の活性層(例えばGaN活性層106)の、エッチングに誘起された表面損傷を減らし得る。ステップ234は、二重誘電体を堆積させることを表し、本明細書における教示によると、二重誘電体は、界面(例えば表面界面122)における連続的な非ダングリングボンドを確実なものとするために堆積させられ得る。ステップ237は、ゲート接点(例えばゲート接点116)を堆積させることを表し得る。
【0049】
[0059] 図2Eは、ステップ234の実施形態による二重誘電体を堆積させるための工程フローを示す。ステップ235は、原子層堆積(ALD)を使用して厚さd3の窒化アルミニウム層113を堆積させることに対応し得る。ステップ236は、次にALDを使用して厚さd4の窒化アルミニウム層114を堆積させることを表し得る。
【0050】
[0060] 図3は、本明細書における教示により製造されたHEMTに対する、ゲート対ソース電圧VGSに対するドレイン・ソース電流IDSの伝達特性301~305を示す。伝達特性301~305は、ウエハ平面に対するウエハ中心、ウエハイースト(wafer east)、ウエハノース(wafer north)、ウエハサウス(wafer south)、およびウエハウェスト(wafer west)に対応したウエハ位置において、サンプルHEMTにおいて測定されている。更に、測定結果は、1ボルトという印加されたドレイン・ソース電圧VDSに対応しており、ドレイン・ソース電流IDSは、負の3ボルトから正の3ボルトまでのゲート対ソース電圧VGSに対して、対数目盛りにプロットされている。
【0051】
[0061] 伝達特性301~305の各々に示されているように、サンプルHEMTセルは、低い漏れを伴ってエンハンスメント型として動作する。例えば、ゲート対ソース電圧VGSがゼロである場合、ドレイン・ソース電流IDSは、ナノアンペア(すなわち、1E-09アンペア)程度またはナノアンペア未満の大きさをもつ。更に、ドレイン・ソース電流IDSが1マイクロアンペア(すなわち、1E-06アンペア)に等しいときに測定されたゲート対ソース電圧VGSとして規定された1マイクロアンペア閾値電圧は、1ボルトより大きい。
【0052】
[0062] 本明細書において提示されているように、本教示の一態様は、エンハンスメント型半導体デバイス(すなわち、エンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMT)である。エンハンスメント型半導体デバイスは、第1の活性層(例えばGaN活性層106)、ゲートスタック(例えば二重誘電体121)、および分極スタック(例えば分極スタック115)を備える。ゲートスタックは、第1の活性層上に位置する窒化アルミニウム(AlN)層(例えば窒化アルミニウム層113)を備える。分極スタックは、第2の活性層(例えばAlGaN障壁層108)と第1の誘電体層(例えば窒化ケイ素層110)とを備える。第2の活性層は10ナノメートル未満の厚さ(例えば厚さd1)をもち、第1の活性層上に位置している。第1の誘電体層は、圧電分極を有効にするために第2の活性層上に位置している。二次元電子気体(例えば二次元電子気体109)は、圧電分極により第1の活性層と分極スタックとの間に形成される。
【0053】
[0063] 別の一態様において、半導体デバイスを製造する方法は、基材(例えば基材102)上に第1の活性層(例えば、ステップ222に従ったGaN活性層106)を形成することと、分極スタック(例えば、ステップ224に従った分極スタック115)を形成することと、第1の活性層に対するオーミック接点(例えば、ステップ227に従ったソースオーミック接点109Sおよびドレインオーミック接点109D)を形成することと、パッシベーション層(例えばステップ228に従ったパッシベーション層112)を堆積させることと、リセスゲート(例えば、ステップ230に従ったリセスゲート領域123)を形成することとを含む。分極スタックは、第1の活性層上に第2の活性層(例えば、ステップ225に従ったAlGaN障壁層108)を形成することにより、および、第2の活性層上に第1の誘電体層(例えば、ステップ226に従った窒化ケイ素層110)を形成することにより形成される。第2の活性層は、10ナノメートル未満(例えば、4ナノメートルから6ナノメートル)の厚さをもち、第1の誘電体層は、圧電分極を有効にするために形成される。二次元電子気体は、第1の活性層と第2の活性層との間に形成される。オーミック接点は、ソースオーミック接点(例えばソースオーミック接点109S)とドレインオーミック接点(例えばドレインオーミック接点109D)とを備える。リセスゲートはゲートビア開口をエッチングすること(例えばステップ232)と、二重誘電体を堆積させること(例えばステップ234)と、ゲート接点を堆積させること(例えばステップ237)とにより形成される。ゲートビア開口は、第1の活性層を露出させるためにエッチング(例えばオーバーエッチング)され得、二重誘電体は、窒化アルミニウム(AlN)(例えば窒化アルミニウム層113)を含み得る。
【0054】
[0064] 本開示の示される例の上述の説明は、要約で説明される事項を含め、網羅的であることを意図したものではなく、開示される形態そのものへの限定であることを意図したものでもない。エンハンスメント型金属-絶縁体-半導体HEMTの特定の実施形態および製造ステップが本明細書において例示を目的として説明されているが、本開示のより広い趣旨および範囲から逸脱することなく様々な同等な変更が可能である。実際、特定の例示的な工程レシピおよびデバイス断面が説明のために提示されており、より多くのステップまたはより少ないステップを含む他の工程レシピが、本明細書の教示に従って他の実施形態および例において他の値も使用され得ることが理解される。
【0055】
(付記項1)
エンハンスメント型半導体デバイスであって、前記エンハンスメント型半導体デバイスが、
第1の活性層と、
二重誘電体ゲートスタックを含むリセスゲート領域と、
分極スタックと、
を備え、
前記二重誘電体ゲートスタックが、4ナノメートルから8ナノメートルの間の厚さをもった、および、原子層堆積工程を使用して前記第1の活性層上に堆積させられた窒化アルミニウム層を備え、
前記分極スタックが、
10ナノメートル未満の厚さをもった、および、前記第1の活性層上に位置する第2の活性層と、
前記第1の活性層と前記分極スタックとの間に形成される二次元電子気体(109)のシート抵抗を減らす圧電分極を有効にするように前記第2の活性層上に位置する第1の誘電体層と、
を備え、
前記エンハンスメント型半導体デバイスが、
ソースオーミック接点を介して前記二次元電子気体に電気的に接続されたソース金属層を備えるソースと、
ドレインオーミック接点を介して前記二次元電子気体に電気的に接続されたドレイン金属層を備えるドレインと、
を更に備える、
エンハンスメント型半導体デバイス。
(付記項2)
前記第2の活性層の厚さが、4ナノメートルから6ナノメートルの間である、
付記項1に記載のエンハンスメント型半導体デバイス。
(付記項3)
前記第1の活性層が、窒化ガリウム(GaN)を含む、
付記項1に記載のエンハンスメント型半導体デバイス。
(付記項4)
前記第2の活性層が、アルミニウムガリウム窒化物(AlGaN)を含む、
付記項1に記載のエンハンスメント型半導体デバイス。
(付記項5)
前記第1の誘電体層が、窒化ケイ素を含む、
付記項1に記載のエンハンスメント型半導体デバイス。
(付記項6)
前記第1の誘電体層上に位置するパッシベーション層を備える、
付記項1に記載のエンハンスメント型半導体デバイス。
(付記項7)
前記パッシベーション層が、窒化ケイ素を含む、
付記項6に記載のエンハンスメント型半導体デバイス。
(付記項8)
前記二重誘電体ゲートスタックが、前記窒化アルミニウム層上に位置する酸化アルミニウム層を備える、
付記項1に記載のエンハンスメント型半導体デバイス。
(付記項9)
付記項1に記載のエンハンスメント型半導体デバイスを製造する方法であって、前記方法が、
基材上に第1の活性層を形成することと、
分極スタックを形成することと、
を含み、
前記分極スタックを形成することが、
前記第1の活性層上に第2の活性層を成長させることであって、前記第2の活性層が、10ナノメートル未満の厚さをもつ、前記第2の活性層を成長させることと、
圧電分極を有効にするために前記第2の活性層上に第1の誘電体層を形成することであって、前記圧電分極により、二次元電子気体が前記第1の活性層と前記第2の活性層との間に形成される、前記第1の誘電体層を形成することと、
を含み、
前記方法が、
オーミック接点を形成することであって、前記オーミック接点が、ソースオーミック接点とドレインオーミック接点とを含む、前記オーミック接点を形成することと、
前記第1の誘電体層上にパッシベーション層を堆積させることと、
リセスゲートを形成することと、
を含み、
前記リセスゲートを形成することが、
前記第1の活性層を露出させるためにゲートビア開口を形成するように前記パッシベーション層と前記第1の誘電体層とをエッチングすることと、
原子層堆積工程を使用して二重誘電体を堆積させることであって、前記二重誘電体が、4ナノメートルから8ナノメートルの厚さの窒化アルミニウム層を備える、前記二重誘電体を堆積させることと、
ゲート接点を堆積させることと、
を含む、
方法。
(付記項10)
前記パッシベーション層を堆積させることが、窒化ケイ素パッシベーション層を堆積させることを含み、
前記第1の誘電体層が、前記二次元電子気体の目標シート抵抗値を提供するように形成される、
付記項9に記載の前記方法。
(付記項11)
前記基材上に前記第1の活性層を形成することが、
窒化ガリウムバッファ層を形成することと、
前記窒化ガリウムバッファ層上に前記第1の活性層を形成することであって、前記第1の活性層が、窒化ガリウム(GaN)を含む、前記第1の活性層を形成することと、
を含む、
付記項10に記載の前記方法。
(付記項12)
前記第1の活性層上に前記第2の活性層を成長させることが、
前記第2の活性層を成長させることであって、前記第2の活性層が、アルミニウムガリウム窒化物(AlGaN)を含む、前記第2の活性層を成長させること、
を含む、
付記項11に記載の前記方法。
(付記項13)
前記第2の活性層の厚さが、4ナノメートルから6ナノメートルの間である、
付記項12に記載の前記方法。
(付記項14)
前記第2の活性層上に前記第1の誘電体層を形成することが、
前記第2の活性層とインサイチュで前記第1の誘電体層を成長させることであって、前記第1の誘電体層が、窒化ケイ素を含む、前記第1の誘電体層を成長させること、
を含む、
付記項12に記載の前記方法。
(付記項15)
前記分極スタックを成長させることが、
前記圧電分極を有効にするために前記第2の活性層とインサイチュで前記第1の誘電体層を成長させることであって、前記圧電分極による前記二次元電子気体に起因したシート抵抗が、600オーム/スクエア以下である、前記第1の誘電体層を成長させること、
を含む、
付記項14に記載の前記方法。
(付記項16)
前記第2の活性層上に前記第1の誘電体層を形成することが、
前記第2の活性層とイクサイチュで前記第1の誘電体層を成長させることであって、前記第1の誘電体層が、窒化ケイ素を含む、前記第1の誘電体層を成長させること、
を含む、
付記項14に記載の前記方法。
(付記項17)
前記ゲートビア開口をエッチングすることが、
フッ素ベースのプラズマを使用して窒化ケイ素を選択的にエッチングすることと、
後から、塩素ベースのプラズマを使用してAlGaNをエッチングすることと、
を含む、
付記項14に記載の前記方法。
(付記項18)
前記塩素ベースのプラズマを使用してAlGaNをエッチングすることが、
10ナノメートル毎分以下の速度でエッチングすること、
を含む、
付記項17に記載の前記方法。
(付記項19)
前記塩素ベースのプラズマを使用してAlGaNをエッチングすることが、
前記第1の活性層を露出させるために前記第2の活性層をオーバーエッチングすること、
を含む、
付記項17に記載の前記方法。
(付記項20)
前記二重誘電体を堆積させることが、
GaN表面と前記窒化アルミニウム層との界面における界面準位を低減するために前記第1の活性層上に前記窒化アルミニウム層を堆積させること、
を含む、
付記項19に記載の前記方法。
(付記項21)
前記二重誘電体を堆積させることが、
後から、前記窒化アルミニウム層上に酸化アルミニウム層をインサイチュで堆積させること、
を含む、
付記項20に記載の前記方法。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3