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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042062
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】インプラント
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/17 20060101AFI20240319BHJP
   A61B 17/15 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
A61B17/17
A61B17/15
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024014025
(22)【出願日】2024-02-01
(62)【分割の表示】P 2022040368の分割
【原出願日】2022-03-15
(31)【優先権主張番号】12/03393
(32)【優先日】2012-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】523095495
【氏名又は名称】マテリアライズ エヌヴイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】デュボワ,ギヨーム
(72)【発明者】
【氏名】グード,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】シューマン,トーマス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】顎顔面骨接合術用のインプラントとガイド、およびそれらを構成する方法を提供する。
【解決手段】取付位置を画定するために、術前/術後の生体構造の3次元モデルが使用され、これらの取付位置がインプラントとガイドの構造を画定するために使用される。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顎顔面サージカルガイドであって、
患者の前記第1の顎顔面骨部分に対して穿孔操作を導くための第1の複数の開口と、
前記患者の前記第2の顎顔面骨部分に対して前記穿孔操作を導くための第2の複数の開口と、
前記第1および第2の複数の開口を連結するモノリシック3次元構造と、を備え、
前記モノリシック3次元構造は、3次元の各次元で変化する内面を画定し、前記内面は、術前の状態で、前記第1および第2の顎顔面骨部分によって画定された外面と整合する形状を有し、前記モノリシック3次元構造は、3次元空間における1つの構成において前記内面が前記外面と整合するように構成され、
前記第1および第2の複数の開口のうちの少なくとも1つの開口は、画定された軸線を備える穴を有し、前記軸線は、前記少なくとも1つの開口の位置においてそれぞれのモノリシック構造の面に対して直交する軸線からオフセットしている配向角度を有する、
顎顔面サージカルガイド。
【請求項2】
前記第1および第2の複数の開口は、隣接する開口の第1のセットの間における構造の結合長さが隣接する開口の第2のセットの間における構造の結合長さとは異なるように、患者の1つ以上の解剖学的特徴の少なくとも1つの位置に基づいてサージカルガイド上に画定され、
隣接する開口の前記第1および第2のセットは、各セットが同じ顎顔面骨部分の隣接する開口を含む開口の2つのセット、または、各セットが第1の顎顔面骨部分の第1の開口および第2の顎顔面骨部分の隣接する第2の開口を含む開口の第2のセットを含む、
請求項1に記載の顎顔面サージカルガイド。
【請求項3】
前記第1および第2の複数の開口の1つの開口と組み合わされた少なくとも1つのドリルブッシュを備え、
前記少なくとも1つのドリルブッシュは、患者の1つ以上の解剖学的特徴の少なくとも1つの位置に関連して決定される高さを有する、
請求項1または2に記載の顎顔面サージカルガイド。
【請求項4】
前記顎顔面サージカルガイドのためのモノリシック3次元構造は、1つ以上の解剖学的ガイドを含み、
各解剖学的ガイドは、少なくとも1つの切断部の位置を表す、
請求項1~3のいずれか1項に記載の顎顔面サージカルガイド。
【請求項5】
前記顎顔面サージカルガイドのためのモノリシック3次元構造を、術前の第1および第2の骨部分に取り付けるための1つ以上の開口を備える、請求項1~4のいずれか1項に記載の顎顔面サージカルガイド。
【請求項6】
前記顎顔面サージカルガイドのためのモノリシック3次元構造を、前記顎顔面サージカルガイドにおける術前の第1および第2の骨部分に取り付けるための前記1つ以上の開口のうちの少なくとも1つは、画定された解剖学的切断部と一致する、請求項5に記載の顎顔面サージカルガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨の手術、特に顔の手術のために骨部分を再位置決めする技術に関し、この技術は、カスタマイズされたインプラントおよびガイドの使用に基づいている。
【背景技術】
【0002】
骨の変形、顔面の不調和やバランス上の欠陥の発生、または外傷後の後遺症の矯正を意図して外科的治療介入が行われる場合がある。このような治療介入では、外科医が事前に基部から分離させた骨の断片の一部を、理想的な位置に再位置決めする手段が用いられる。
【0003】
したがって、このような外科的治療介入には、位置が悪い1つ以上の骨片を取り外すために実施される骨切り術が含まれる。例えば、この1つまたは複数の骨片を動かすことは、つまり、この動きの後、理想的な位置に再位置決めできるように、並進および/または回転を経て、この1つまたは複数の骨片を動かすことである。
【0004】
全ての骨片が新たな理想的な位置に配置されると、外科医は、1つ以上のインプラントを使用して、骨片を患者の他の隣接した骨部分に固定する。インプラントには、穿孔されたインプラントが含まれ、これらは異なる形状、例えば、I型、L型、T型、X型、H型、またはZ型のプレート、あるいは更に複雑な形状を有している。インプラントは、その穿孔を貫通する骨接合スクリューを用いて、正しい相対位置に結合されるように骨の全ての部分に固定される。
【0005】
このようにして、顔の対称性や正常な身体的関係の回復を図ることが可能になる。
【0006】
米国特許第5690631号明細書および米国特許第6221075号明細書には、少なくとも2つの骨部分が互いに結合され固定されることを可能にする、プレートまたは格子の形状の、このようなインプラントが記載されている。
【0007】
顔面骨格に影響する様々な形式の手術の内、以下のものを挙げることができる。
‐ 歯科用ブリッジを比較的に快適な位置に再位置決めすることを目的とする顎矯正手術によって、歯の噛み合わせを良くすることができる。このような治療介入は、上側の歯科用ブリッジを動かす必要がある場合には上顎の骨切り術を伴い、下側の歯科用ブリッジを動かす必要がある場合には下顎の骨切り術を伴い、骨片を両顎で動かすことが、顔の正常なバランスを復元するためにも好適な場合には、両顎の骨切り術を伴う。
‐ 美的な問題のため(過度に突出した頤や、これとは対照的に後退した頤を矯正するため)、あるいは機能的な問題、例えば患者が、上唇と下唇を楽に動かして互いに接触させることができるための患者の頤の手術を伴う頤形成術や、
‐ 例えば頬骨に関する不測の衝撃を受けた外傷後の後遺症の矯正。
【0008】
寸法に合わせて予め形成されたインプラントを作成する技術が、2011年11月3日公開の国際公開公報第WO2011/136898号に記載されている。その技術には、寸法に合わせたガイドの作成が含まれ、このガイドもまた予備成形され、骨接合スクリュー用の幾つかの穴の穿孔をガイドし、骨切り術のガイドとして役立つ。
【0009】
上記先行技術の欠点は、それが外科医が実施する骨切り術や切除手術の質に依存していることである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、このような欠点を克服することである。例えば、骨切り術および/または切除術が不完全であったり、不正確であったり、大まかであったとしても、骨の第1の部分と、骨の第2の部分との接続は良好であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の実施形態の1つは、骨接合用の顎顔面インプラントであって、
前記インプラントを患者の第1の顎顔面骨部分に連結する第1の複数の開口と、
前記インプラントを患者の第2の顎顔面骨部分に連結する第2の複数の開口と、
前記第1および第2の複数の開口を連結するモノリシック3次元構造と、を備え、
前記3次元構造が、所望の術後の配向に従って前記第2の顎顔面骨部分を前記第1の顎顔面骨部分に対して配置するために3次元の各次元で変化する形状を有し、
第1の顎顔面骨部分から分離される第2の顎顔面骨部分をもたらす少なくとも1つの切断部を画定する骨切り術に続いて、前記第2の顎顔面骨部分を前記第1の顎顔面骨部分に対して配置するために前記インプラントが配置され、
前記所望の術後の配向が、前記第1の顎顔面骨部分と関連付けた、前記第2の顎顔面骨部分の選択された配置に対応し、前記配置が、前記第1の顎顔面骨部分と関連付けた前記第2の顎顔面骨部分の並進および回転の少なくとも1つを含む、
顎顔面インプラントよりなるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、寸法に合わせたインプラントと穿孔ガイドの作成を可能にする方法を、実施例に従って示している。
図2図2は、寸法に合わせたインプラントと穿孔ガイドの作成を可能にする方法を、実施例に従って示している。
図3図3は、寸法に合わせたインプラントと穿孔ガイドの作成を可能にする方法を、実施例に従って示している。
図4図4は、寸法に合わせたインプラントと穿孔ガイドの作成を可能にする方法を、実施例に従って示している。
図5図5は、寸法に合わせたインプラントと穿孔ガイドの作成を可能にする方法を、実施例に従って示している。
図6図6は、寸法に合わせたインプラントと穿孔ガイドの作成を可能にする方法を、実施例に従って示している。
図7図7は、寸法に合わせたインプラントと穿孔ガイドの作成を可能にする方法を、実施例に従って示している。
図8図8は、寸法に合わせたインプラントと穿孔ガイドの作成を可能にする方法を、実施例に従って示している。
図9図9は、寸法に合わせたインプラントと穿孔ガイドの作成を可能にする方法を、実施例に従って示している。
図10a図10aは、例示的な穿孔ガイドの穿孔ガイド穴に関連付けられたドリルブッシュの縦断面図を示し、ドリルブッシュはストップビットと関連付けられている。
図10b図10bは、穿孔された穴の中に骨切り術固定具が配置された状態を示している。
図11図11は、図1図9に示した方法の実施によって得られた、穿孔ガイドとインプラントを用いて実施できる、顎矯正外科手術の異なるステップを示している。
図12図12は、図1図9に示した方法の実施によって得られた、穿孔ガイドとインプラントを用いて実施できる、顎矯正外科手術の異なるステップを示している。
図13図13は、図1図9に示した方法の実施によって得られた、穿孔ガイドとインプラントを用いて実施できる、顎矯正外科手術の異なるステップを示している。
図14図14は、図1図9に示した方法の実施によって得られた、穿孔ガイドとインプラントを用いて実施できる、顎矯正外科手術の異なるステップを示している。
図15図15は、図1図9に示した方法の実施によって得られた、穿孔ガイドとインプラントを用いて実施できる、顎矯正外科手術の異なるステップを示している。
図16図16は、図1図9に示した方法の実施によって得られた、穿孔ガイドとインプラントを用いて実施できる、顎矯正外科手術の異なるステップを示している。
図17図17は、図1図9に示した方法の実施によって得られた、穿孔ガイドとインプラントを用いて実施できる、顎矯正外科手術の異なるステップを示している。
図18図18は、図1図9に示した方法の実施によって得られた、穿孔ガイドとインプラントを用いて実施できる、顎矯正外科手術の異なるステップを示している。
図19図19は、図1図9に示した方法の実施によって得られた、穿孔ガイドとインプラントを用いて実施できる、顎矯正外科手術の異なるステップを示している。
図20図20は、頤の手術に適用される、第2の例示的な方法を示している。
図21図21は、頤の手術に適用される、第2の例示的な方法を示している。
図22図22は、頤の手術に適用される、第2の例示的な方法を示している。
図23図23は、頤の手術に適用される、第2の例示的な方法を示している。
図24図24は、頤の手術に適用される、第2の例示的な方法を示している。
図25図25は、頤の手術に適用される、第2の例示的な方法を示している。
図26図26は、下顎の復元に適用される、第3の例示的な方法を示している。
図27図27は、下顎の復元に適用される、第3の例示的な方法を示している。
図28図28は、下顎の復元に適用される、第3の例示的な方法を示している。
図29図29は、下顎の復元に適用される、第3の例示的な方法を示している。
図30図30は、下顎の復元に適用される、第3の例示的な方法を示している。
図31図31は、下顎の復元に適用される、第3の例示的な方法を示している。
図32図32は、複数のガイドおよびインプラントを有する、第4の実施例を示している。
図33図33は、複数のガイドおよびインプラントを有する、第4の実施例を示している。
図34a図34aは、複数の実施例の変形実施例を示している。
図34b図34bは、複数の実施例の変形実施例を示している。
図35a図35aは、高リスクな解剖学的領域の回避を示している。
図35b図35bは、高リスクな解剖学的領域の回避を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書に記載の幾つかの実施例で用いられた技術は、完全な骨の術前のモデルや、修正されたモデルを3次元で作成することを含んでいる。幾つかの事例で、これらのモデルは、デジタル化され、インプラントおよび/または穿孔ガイドの作成に使用される。インプラントおよび/または穿孔ガイドは患者用にあつらえられ、すなわち、寸法に合わせて作ったり、カスタマイズしたりすることができる。
【0014】
場合によっては、骨片または骨部分の理想的な位置を画定するために、様々な骨片または骨部分に対して行われる再位置決め操作の術前計画が望ましい。
【0015】
この術前計画には、通常のX線調査やCTスキャナの断面図を使用する。このような画像データが、画像の3次元再構成を生成するために、特殊なアプリケーションを使用してコンピュータで処理される。例えば、この段階は、患者の術前の顎顔面骨格を示すデータにアクセスし、このデータを使用して骨格の3次元モデルを生成する工程を含んでもよい。
【0016】
この計画が完了したとき、頭蓋骨やその一部等の骨構造の3次元の術前モデルが作成される。これが骨の術前の形状を構成する。次いで、この形状は計画された術後の骨の形状に相当する、修正されたモデルを作成するために、3次元で修正される。
【0017】
これを達成する手段の内、外科医は、必要に応じて技術者と共同して手術ナビゲーションのシステムを使用することができ、これによって修正されたモデルで様々な切断面を画定できるようになる。次に骨片は、骨切り術によって仮想的に基部から分離され、正しい位置に再位置決めできるように決定された、1つ以上の方向に動かすために、並進させることが可能になる。
【0018】
このように、骨切り術が術前の顎顔面骨格の3次元モデルでシミュレーションされる。一事例として、前記シミュレーションされた骨切り術によって少なくとも1つの切断が画定され、その結果として、別の1つ以上の骨部分から分離された、1つ以上の骨部分がもたらされる。幾つかの事例では、前記少なくとも1つの切断によって骨部分同士を連結する骨が存在しなくなる。すなわち、この切断が、少なくとも1つの骨部分を1つ以上の他の骨部分から完全に分離する、完全な切断である。したがって、この切断により、骨部分同士を連結する連続的な骨がなくなる。
【0019】
この仮想の骨切り術の後、第2のステップでは、やはり仮想的に様々な骨片の理想的な再位置決めを実施することが含まれる。
【0020】
1つ以上の骨部分の、1つ以上の他の骨部分と関連付けた再位置決めまたは配置によって、修正された3次元モデルの生成が可能になる。このモデルは、骨部分の所望の術後の配向を示している。
【0021】
このために、外科医は通常、対称性や頭部測定法の基準を使用する。
【0022】
実施される再位置決め操作は、並進および/または回転の動きを組み合わせた変換である。一事例として、この配置は、1つ以上の骨部分の、1つ以上の他の骨部分と関連付けた並進と、1つ以上の骨部分の、軸線周りの回転の内、少なくとも1つ以上を含むことができ、この回転は、骨切り術の平面、例えば、当初の術前モデルで切断された、仮想骨切り術の少なくとも1つの平面に対して、非ゼロの角度で配向される。さらに複雑な操作において、骨切り術は、複数の平面にある複雑な形状に従うことができる。幾つかの事例では、仮想骨切り術に続く外科的処置において、切断が部分的なものであってもよく、外科医が付与した1つ以上の骨の破砕によって達成される完全な分離を伴う。
【0023】
また、この第2のステップにおいて、外科医は、幾つかの骨片が、一緒に並進させる際に互いに重なり合う可能性がある場合は、少なくとも外科医がそれらの骨片をコンピュータの画面上で見ながら、切除する任意の骨の区画も画定する。
【0024】
したがって、場合により、外科医と緊密に共同する技術者または技師は、第3のステップにおいて、1つ以上のインプラントを物理的に設計することができる。1つの事例として、技術者または技師は、仮想の骨切り術および/または再位置決めにも関与し、かつ/あるいは医学的に訓練された専門家と共同してこれを実行してもよい。設計に従った1つ以上のインプラントの製造に続いて、外科医は仮想の骨切り術ではなく実際の骨切り術を実施した後、前記インプラントを異なる骨片に固定することができる。この手術は、任意で切除手術を含んでもよい。この手術によって骨片が正しい位置に保持され、1つ以上のインプラントによって固定される。インプラントは復元や骨の強化に必要な期間、残してもよい。
【0025】
幾つかの実施例が、添付図面と共に、以下の説明で詳細に述べられている。これらの図面は、説明の文章を図示することのみを意図しており、それ自体を限定するものではないことに留意すべきである。
【0026】
幾つかの実施例に、以下の1つ以上を寸法に合わせて作成することを含む方法が記載されている。(a)予備成形されたインプラントと、(b)顎顔面骨切り術の後で固定的に結合される骨部分に、これからインプラントを固定するために必要な全てのスクリュー用の穴の穿孔を導くために使用される、予備成形されたガイドである。また、予備成形されたガイドは、幾つかの事例で、骨切りを導くための骨切り術テンプレートを備えてもよい。1つの例示的な方法について、図1図9を参照しながら説明する。
【0027】
その異なる準備段階が、第1の例として図1図9に示されている顎矯正手術は、非対称の発生を矯正を意図しており、この治療介入は、この場合、上顎の骨切り術を含んでいる。幾つかの実施例において、これは、図20図25に示されている種類の頤の手術と組み合わせられる場合がある。
【0028】
上述したように、頻繁に外科医と共同で取り組む技術者は、コンピュータを使用して最初に骨の術前のモデル40を3次元で作成し、骨の術前の形状を構成する(図1)。例えば、この事例で、術前のモデルは、頭蓋骨の一部である。この骨のモデルは、再位置決め操作に関わる、骨の完成した部分のモデルとすることができる。
【0029】
専用の計画ソフトウェア、例えば、ベルギーのMaterialise社がMimicsという名称で販売しているソフトウェアを使用して、通常は外科医等の医学的に訓練された専門家である利用者は、適宜技術者に補助されながら、仮想骨切り術3(図2)を実行することによって、術前のモデルを修正する。これに続いて、外科的治療介入によって所望された理想的な結果をもたらす、修正されたモデル50に到達し、その結果、計画されていた骨の形状に対応する(図3)。例えば、これは、第1および第2の骨部分の、所望の術後の配向とすることができる。このモデルは術前の段階で修正される。図3で、理想的な結果とは、頭蓋骨(1)に対する上顎部分(2)の配置である。これには例えば、上顎および下顎の所望の位置合わせ、骨の外傷や骨折を経た位置合わせ、および/または変形を修正するための位置合わせを反映することができる。
【0030】
上述のように、骨切り術を仮想的に実施すると同時に、外科医等の利用者は、分離された骨2の部分の、基礎となる骨部分1への完全な位置決めを達成するために、幾つかの骨片同士の間で干渉が起きた場合、1回以上の切除手術の実施を想定することができる。
【0031】
この説明において、基礎となる骨部分1は「骨の第1の部分」と呼ばれ、分離された部分2(または分離された複数の部分)は「骨の第2の部分」と呼ばれる。しかしながら、本明細書の他の部分で述べたように、この方法を複数の骨部分に適用してもよく、その結果、第1および第2の骨部分の1つ以上が複数の骨片を含み、かつ/または再位置決めされる他の骨部分に関わる。
【0032】
修正されたモデルの仮想3次元空間で、骨の第2の部分2を第1の部分1に対して理想的に再位置決めした後、利用者は、1つ以上のインプラントを使用する、骨の2つの部分の今後の固定位置を画定する。この事例で、固定位置は、骨接合スクリューの軸線に関連付けられ、これにより、利用者が、骨部分が所望の正しい相対位置に固定的に保持されるように、1つ以上のインプラントを骨部分に完全に固定することが確実になる。
【0033】
(例えば、骨の第1の部分1で8個と、骨の第2の部分2でも8個)のこのような固定位置4は、骨の第2の部分2の、第1の部分1への固定を確実にするのに十分な数が設けられる(図4参照)。
【0034】
この例では、取付位置と呼ばれる今後の固定位置はインプラントの第1の複数の取付位置を第1の骨部分に、インプラントの第2の複数の取付位置を第2の骨部分に有している。例えば、図4で、各骨部分に8個の取付位置がある。
【0035】
上述して図4に示したように、第1および第2の複数の取付位置は、患者の1つ以上の解剖学的特徴の少なくとも1つの位置に基づいて、3次元モデル上で画定される。例えば、固定位置すなわち取付位置は、骨部分の内部の歯根、神経、および/または血管等の内、少なくとも1つ以上の、多くの解剖学的障害物を回避するように画定することができる。同様に、例えばこれは特に上顎の領域に当てはまるが、骨部分の一部は非常に薄く、このために安定した骨接合を得るのが困難になる。
【0036】
固定位置を画定することによって、複雑化を伴わずに再位置決めを良好に完了できるように、スクリューを最も好ましい位置に個別に置くことができる。例えば、重要な解剖学的構造を損傷するリスクを大幅に削減し、骨質が最良の領域にスクリューを配置する。
【0037】
実際には、図4に示すように、この結果、比較例と比較したときに、少なくとも第1の組の隣接する取付位置同士の離間距離が、第2の組の隣接する取付位置同士の離間距離とは異なる。この場合、第1および第2の組の隣接する取付位置は、各組が、隣接する取付位置を同一の骨部分に有する2組の取付位置、または各組が、第1の骨部分に第1の取付位置を、第2の骨部分に、第2の隣接する取付位置を有する2組の取付位置の、何れかを含んでいる。つまり、取付位置は、通常は、標準的な正方形または長方形の関係では画定されず、個々の配置は、取付位置間の相対間隔に変化をもたらす。全ての固定位置を個別に置く必要はないが、少なくとも1つは、解剖学上の高リスク領域を回避するように置かれる。
【0038】
本明細書で説明されている幾つかの実施例によれば、固定位置すなわち取付位置を画定した後、インプラントのモノリシック3次元構造が画定される。この構造により、修正された3次元モデルで第1、第2の複数の取付位置が連結される。画定された構造は、所望の術後の配向に従って、第2の骨部分を第1の骨部分に対して配置または位置合わせするために、3次元の各次元で変化する形状を有している。この場合、インプラントの前記構造で、少なくとも1つの取付位置が骨固定具用の開口に対応している。例えば、各固定位置は、骨接合スクリューがインプラントを骨部分に固定する穴に対応している。
【0039】
例えば、利用者は、続いて図9に見ることができるインプラント5を描くことができる。骨の第1、第2の部分へのインプラントの固定を確実にする16個の骨接合スクリューが位置6によって指定される。これらのスクリューは、図4で見ることができる固定位置すなわち取付位置4に正確に対応している。
【0040】
上記実施例では、固定位置すなわち取付位置がインプラントの構造よりも前に画定される。実際には、インプラントの構造は、固定位置の配置を中心にして設計される。例えば、図9で、インプラントは、取付けスクリュー用の幾つかの隣接する開口を連結する部材の形で、部分を有している。
【0041】
したがって、インプラント5は、術前の段階で、所望の骨格の計画された術後の形状に対応するように配置される。個別に置かれたスクリューの開口間で、特にあつらえた連結具の形状にカスタマイズされると共に、インプラント5は、その内輪の表面が一致することによって、外科手術の最後に結合される骨の2つの部分の、固有で正確な位置決めが可能になるように予備成形される。言い換えれば、インプラントは、所望の術後の配向に従って第2の骨部分を第1の骨部分に対して配置するために、3次元で変化する形状を有し、インプラントは第1および第2の骨部分の両方の骨格に適合する形状を有している。「内輪」という用語はアーチの下側を意味し、インプラントの湾曲のことを言うために使用される。特に、この例では、骨部分の外側湾曲に対応する内側湾曲のことを言う。このような湾曲は、各患者用にあつらえられ、この例のインプラント5の内面は、患者の骨格を反映して、複数の起伏を伴って非一様に変化することができる。この事例で、インプラント構造の第1の部分は3次元の形状を有し、画定された内面または平面を含み、骨の第1の部分の骨格、すなわち上側の頭蓋骨で画定されている外面または平面に適合する。そして、インプラント構造の第2の部分は、3次元の形状を有し、画定された内面または平面を含み、骨の第2の部分の骨格で画定されている外面または平面、すなわち、上側の頭蓋骨に対して再度位置合わせされる上顎部分に適合する。
【0042】
インプラント5は、1つ以上の骨切り線7の両側で延びている。1つ以上の骨切り線7は、骨1、2の2つの部分を分離する線を含む、切断部を夫々画定する。インプラント5の構造は、骨の第2の部分2に対して、修正されたモデル上で画定された通りの、スクリュー用の穿孔ガイド穴または取付位置に対応する、スクリュー用の貫通穴を有する。
【0043】
インプラント5は、画定された構造に基づいて、例えば図9に示すような3次元モデルに基づいて、製造または作成することができる。インプラントは、付加製造(Additive Manufacturing)によって製造することができ、例えば3次元プリント、すなわち選択的なレーザー焼結でプリントすることができる。
【0044】
比較例とは対照的に、インプラントを骨の第1の部分に固定できるようにするために、スクリューを通すためのインプラント5の貫通穴は、完全に無作為で無計画な方法で設けられたわけではない。その代わりに、本明細書に記載の幾つかの実施例で、このような穴は、骨の第1の部分1に対して、修正されたモデルで画定された通りに、取付位置すなわち固定位置に対応するように設けられる。
【0045】
ここで説明された実施例において、利用者、例えば、場合によっては外科医に補助される技術者は、コンピュータアプリケーションを用いて実施した理想的な再位置決めの逆変換を実施する。言い換えれば、骨の術前の形状を構成する、骨の術前のモデルに戻す。この事例で、第1、第2の複数の取付位置は、術前の顎顔面骨格の、3次元モデルに対応する位置に位置付け(mapping)される。
【0046】
例えば、術前の顎顔面骨格の原型(図5)で、利用者は、例えばドリルブッシュまたはドリルビット8の仮想モデルを使用して、穴の位置を画定する。この事例で、これらの位置は、修正されたモデルに対して事前に計画された、固定位置4から得られる。すなわち、固定位置4に対応する(図4)。図1図9に示す例で、第1の部分1の固定位置4は、修正されたモデルと未修正のモデルとの間で直接位置付けることができる。3次元空間における骨1の第1の部分の位置は、修正されたモデルと未修正のモデルとの間で変化しない。同じ例で、第2の部分2の固定位置4は、第2の部分2に対するその相対位置に基づいて位置付けされる。後者の事例で、第2の部分の位置、配置、および/または配向は、仮想骨切り術の結果、修正されたモデルと未修正のモデルとの間で、第1の部分に対して変化する。したがって、固定位置4は、仮想骨切り術から生じる並進および/または回転を画定する関数とは逆の関数を適用することによって、位置付けすることができる。両方の事例で、この位置付けは、3次元座標またはモデル要素に関数を適用することによって実現することができる。
【0047】
位置付けの段階に続いて、サージカルガイドのモノリシック3次元構造が決定され、術前の顎顔面骨格の3次元モデル内の、対応する位置同士を連結する。例えば、1つの事例で、利用者は、骨の術前の形状に対応し、固定スクリュー用の穿孔ガイド穴を有するサージカルガイドを、仮想モデル内で「描く」か、または画定することができる。好ましい事例で、実施される1回または複数回の骨切りの位置は、サージカルガイド構造によっても画定される。3次元モデルとして画定された例示的なサージカルガイドが、図6に示されている。
【0048】
このように画定され、図6に見ることができる穿孔ガイド9は、結果として以下のものを含んでいる。
‐ 分離される必要がある骨の第2の部分2において、第2の部分に対して設けられた、修正されたモデルのスクリュー用の穿孔ガイド穴に対応する、スクリュー用の穿孔ガイド穴と、
‐ 以後の骨切り術のテンプレートに対応する2つのノッチ10、11である。
【0049】
ノッチは、1回以上の骨切り術を夫々実行するために、骨鋸等の切断具を通すことができるように配置された、3次元のガイド構造を伴う細長い開口部を有することができる。
【0050】
インプラント同様、穿孔ガイドは、その内輪の表面と、患者の骨の支持具または骨格との間に、優れた対応性が存在するように構成される。このようにして、患者の骨格に対するこのようなガイドのために考えられる位置は、1つのみ存在する。例えば、このガイドは、患者の骨部分に、1つの固有の空間位置または構成でのみ、ぴったり重なって位置することができる。この事例で、ガイドが骨部分に対して正しくない配向で置かれている場合、ガイドは適切に位置せず、すなわち、不安定な構成にあることになり、したがって、ガイドを正しい構成に組み入れるように動かすことによって、ガイドによって画定された内面と、骨部分によって画定された外面とが安定して合致することになる。これによって、後の段階で、外科手術をより簡単に、かつ、より正確に実施することが可能になる。
【0051】
この実施例のガイド9は、骨の第1の部分(さらには骨の第2の部分)のためのスクリュー用の穿孔ガイド穴を有し、これらの穴の正確な位置は、図4で見られる操作中に画定されている。
【0052】
図7は術前もしくは未修正のモデルを示し、後でインプラント5を固定するスクリューを通すための複数の穴が、このモデルの第1および第2の骨部分に画定されている。図7に示した段階では仮想骨切り術や再位置決め操作がまだ実施されていないため、この事例では、穴の相対的空間配置が図4に見られる固定位置4の相対的空間配置とは異なっている。これらの穴は、予め画定された固定位置すなわち取付位置のために穿孔される穴を表している。
【0053】
図8は、骨切り後ではあるが再位置決めする前の、骨の第1の部分1と骨の第2の部分2における複数のドリルビット8(または少なくともドリルビットの端部)の異なる位置を示している。この事例では、ドリルビット8は仮想の3次元モデルでモデル化されている。さらに詳しくは、図10a、10bに示されている。ドリルビット8のモデル化によって、後述するように、1つ以上のドリルブッシュ15の高さの画定を容易にすることができる。
【0054】
最後に、図9は、骨切り術および再位置決め操作の後で結合された、骨の2つの部分のシミュレーションを示している。仮想3次元空間でインプラント5とガイド9が決定され、すなわち設計されると、骨切り術および再位置決め操作に使用するために、製造することができる。したがって、図9は、外科手術後のインプラント5の使用を示している。骨の2つの部分の結合はインプラント5を使用して確実に保持されている。インプラントは無期限または医師が骨の2つの部分を固定し強化するのに必要とみなす期間、体内に残すことができる。例えば、図9と同様の事例で、骨が成長して、第1の部分と第2の部分との両方を、インプラント5によって設定された構成に結合する場合がある。
【0055】
図1~9は、予備成形されたインプラント5と予備成形されたガイド9のカスタマイズされた作成の異なる準備段階を示している。これに続いて、製造されたインプラントとガイドを使用できる顎矯正外科手術について、図11~19を参照して以下に説明する。
【0056】
修復される顔面骨格40が図11に示され、これは図1の仮想モデルに類似している。
【0057】
外科医は、寸法に合わせて作成されたガイド9を患者の顔の上に置く。一つの事例として、例えば、この手術が簡単かつ簡潔に行われる場合、ガイド9は図12に示す位置に手で保持されてもよい。別の事例では、例えば、この手術が比較的長くなる場合、ガイドは、例えば図13に示すような骨切り術または切断テンプレート3の1つ以上の側面で、1つ以上の骨切り術スクリューを用いて、一時的に固定されてもよい。幾つかの事例では、サージカルガイド9を取り付けるための前記1つ以上の開口の内、少なくとも1つが画定された骨切り術切断部と完全に一致する。
【0058】
上記の事例の両方、すなわち図12または図13に関連、穿孔ガイド9は、安定した状態で保持されている。この事例で、外科医は、次に、ガイドの穿孔ガイド穴に応じて設けられた位置に、(この例では16個の)穴を開ける。例えば、図14は、穴を開けるためにガイド9のガイド穴の1つに挿入される、ドリルビット8の少なくとも一部を示している。
【0059】
ガイド9が、1つ以上の骨切り術スクリューによって安定している場合は、これらのスクリューによって生成された穴は、指定された位置、つまり固定位置すなわち取付位置に設けられる1つ以上の穴の夫々に、それに相当する数で、代わることができる。
【0060】
幾つかの事例で、固定位置を画定する段階の一部として、1つ以上の穴に関連付けられる軸線の配向角度もまた、患者の1つ以上の解剖学的特徴の少なくとも1つの位置に基づいて画定することができる。この軸線は、標準からオフセット、すなわち骨部分の表面に直交する軸線からオフセットすることができる。
【0061】
次に、外科医の選好によって、鉛筆や医療用フェルトペンを用いてノッチ10、11で区切られた骨切りを描くか、または骨切り術をすぐに開始するために、これらのノッチをすぐに使用することができる。これについては図15に示されている。
【0062】
次に、外科医は、もし配置していた場合は、一時安定スクリューを除去してから、ガイドを除去する。1つの事例で、例えば、鋸、ミーリングカッター、レーザー等のツール20を使用して、骨切り術12、13を完成または実施し、これによって、上顎を離し、動かすことができるようになる。これについては、図16に示されている。
【0063】
外科医は、その結果、骨の第2の部分2を以後自由に動かして、図17に示すような所望の相対位置で、骨の第1の部分1に接触させることができる。インプラント5の構造のカスタマイズされた特徴によって、外科医は、インプラント5を使用して、2つの部分1および2を、1つの所望の位置または構成に固定することのみが可能になる。例えば、インプラント5の構築のために設けられた、骨接合スクリュー6用の開口の軸線が、図14に示す施術中に、2つの骨部分に作られた穴に対応するのは、3次元空間において、1つの位置または構成のみである。これについては、図18に示されている。
【0064】
最後に、外科医は、固定位置4で骨接合スクリュー6を骨部分に作られた16個の穴に挿入し、ねじ込み、インプラント5を用いて2つの骨部分1、2を最終的に固定すればこと足りる。これについては、図19に示されている。
【0065】
インプラント5の予定のスクリューを受けるための穴の正確な位置が、修正されたモデルに示されていることは前に述べた。したがって、1つの事例において、全ての穴の位置は、骨切り術が実施される前に計画的に作成される。このことはつまり、手術時に、ガイド9とインプラント5によって穴と固定位置が完全に画定されていることを意味している。これによって、後の外科手術の精度の必要性を低減する。
【0066】
1つの特定の実施例において、患者の解剖学的構造を知ることによって、骨切り術スクリュー用の穴が、深部にあるいかなる主要組織にも接触しないことを確実にすることができる。例えば、サージカルガイド9は、幾つかの解剖学的領域を回避するため、穴が穿孔中に引き続き導かれるように、画定することができる。
【0067】
このため、図10a、10bに示すように、1つ以上のドリルブッシュ15が画定され、ガイドの穿孔ガイド穴の挿入可能であるか、または穴を画定しているガイド構造の一部を形成する。この特定の例によれば、ドリルブッシュ15は、患者の高リスクな解剖学的特徴部を回避するように、予め決められた高さを有する。さらに、またはこれに代えて、ドリルブッシュ15は、引き続き穿孔された穴14が、やはり患者の高リスクな解剖学的特徴部を回避する、方位軸を有するように構成することができる。
【0068】
図10aは、穴14の穿孔に使用されるドリルビット8を示している。次に、穴14は、図10bに示すように、インプラント5および/またはガイド9を患者の骨部分にしっかり留めるために、骨切り術ねじ6を受ける。図10aで、ドリルブッシュ15は、停止部16を備えている。停止部16を使用して、ドリルビット8の骨部分への侵入を止める。さらに詳細には、1つの事例として、停止部16がドリルブッシュ15の円筒形の上部で形成され、その上部の縁は、穴14およびドリルブッシュ15の軸線にほぼ直交して延びる出っ張りを有している。この出っ張り(幾つかの例で、縁、つば、または突縁を含むことができる)は、ドリルビット8が、穴およびドリルブッシュ15の軸線に沿って、さらに動くのを防止するために、対応するドリルビット8のつばと接触する。
【0069】
これに加えて、またこれに代えて、このような穴14の正確な位置については、幾つかの例示的な方法によって、穴の軸線および深さが、確実な精度で導かれる。例えば、図6に示すように、ドリルブッシュ15は、ガイド構造のカスタマイズされた部分を形成することができ、各ガイド開口は、カスタマイズされた高さを有するドリルブッシュを含むことができる。これらのドリルブッシュは、その後、完全な製造時のガイド構造の一部を形成する。
【0070】
したがって、その1つが図10bに示された骨接合スクリュー6は、患者の骨片にねじ込まれるとき、神経、歯根、または血管(すなわち解剖学上の高リスク領域)に接触するリスクがない。
【0071】
本明細書で説明したように、インプラントの固定に使用されるスクリュー(screw)を通すための複数の穴の相対的な空間配置は、複数の穿孔ガイド位置の相対的な空間的配置と対応する。顔の手術の分野において、例えば、下顎、頤、または2つの頬骨のうちの少なくとも1つの障害の修復のために、説明した方法の複数の適用を設定できる。
【0072】
このように、図20図25は、第2の実施例において、この方法の頤の手術への適用を示している。
【0073】
図20は、修復する頤21を示している。
【0074】
図21は、仮想的に画定された骨切り術の線分22を概略的に示している。また、所望され、仮想的に画定された、切除術の基準点である線分23を概略的に示している。
【0075】
図22は、骨切り術と切除術の2つの手術後の、あるべき頤の状態を示している。この後、骨の第1の部分25に対する第2の部分24の再位置決めが行われる。
【0076】
図25に示す最終結果に基づいて、以下の事柄が前もって決定されることが分かる。
a) 骨24、25の部分を、理想的な相対位置に固定結合するインプラントの固定位置26
b) インプラント27
c) 穿孔ガイド28
図23は、修復する頤23の仮想モデルを示している。モデルに示された頤に関して、後の使用時に、外科医は、寸法に合わせて作られた穿孔ガイド28を押えてもよい。図23のモデルは切除の結果も示している。図23のガイド28には4つの穿孔ガイド穴が設けられている。使用時に、この穿孔ガイド穴がドリルビットを導き、インプラント27の4本の固定スクリューを受け入れる複数の固定位置26を形成する。
【0077】
このようにして穿孔された4つの穴26を図24に見ることができる。頤は、理想的な最終位置、つまり、ガイド28が撤去された後、骨切り術および切除術後の2つの骨部分24、25が再位置決めされた後の理想的な最終位置でなければならない。
【0078】
最後に、図25は、4本の骨接合スクリューが設けられたインプラント27を使用して同様に修復された、頤の2つの骨部分の固定を示している。
【0079】
第3の変形例として、図26図31は、前述の方法の下顎の復元への適用を示している。
【0080】
図26は修復する下顎40を示している。図27は仮想的に画定された骨切り術の切断部29を示し、図28は仮想骨切り術によって分離された2つの骨部分30、31に望ましいと考えられる理想的な相対的再位置決めを仮想的に示している。
【0081】
したがって、図28は完全な骨の術後の形状50を示している。
【0082】
したがって、この修正されたモデルに基づいて、予定のインプラント33の固定位置32が、上述したように正確に画定される。これが図29に示されている。結果として、コンピュータアプリケーションによって適用された逆変換で術前のモデルに戻すことによって、予定の穿孔ガイド34の穿孔ガイド穴の位置が画定される。
【0083】
図29に示されている通り、この実施例では、インプラント33は、ほぼI字型のプレートである。骨の第1の部分30に対して位置合わせされた骨接合スクリュー用の3つの固定位置32と、骨の第2の部分31に対して位置合わせされた骨接合スクリュー用の3つの固定位置32がある。この実施例では、6つの固定位置32がほぼ同一直線上に配置されている。
【0084】
固定位置すなわち取付位置が画定され、インプラント33が描かれたら、図26の術前のモデルに戻され、下記要素を含むように穿孔ガイド34が決定される。
‐ 切り術前に2つの骨部分30、31が占めていた位置に戻された後、6つの固定位置32に対応するように設けられる、6つの穿孔ガイド穴35
‐ 骨切り線の描画、または骨切り術を開始するための何れかの基準点として作用するために、ガイド34の中央部で切断されているノッチ36。
【0085】
したがって、外科医に必要とされるのは、図30に示されているように、ガイド34を患者の下顎に置くことと、ガイド34の6つの穿孔ガイド穴35をこの目的のために使用して、骨部分30、31に6つの固定位置32を穿孔することと、ガイド34を除去することと、骨切り術を完全に実施するか、または少なくとも骨切り術を終わらせることのみである。その後に、図27に示す患者の下顎は、この治療介入の最後に6本の固定スクリューを受け入れること目的とした6つの位置32で捕捉される。
【0086】
2つの骨部分を、図29に示されている、当初に所望した理想的な相対位置に再位置決めした後に、外科医は、6本の骨接合スクリュー6を6つの予備成形された穴35にねじ入れて、インプラント33を位置決めすればよい。したがって、図31は外科手術が完了した状態を表している。
【0087】
一例として、複数の実施例を用いて説明した方法を適用するため、各インプラントおよび/または各穿孔ガイドはチタニウムで作られる。
【0088】
図32は一実施例を示し、複数のサージカルガイド44のための複数のモノリシック3次元構造を決定するために、上記方法が繰り返されている。図32の事例の場合、複数の第1の骨部分1および共通する第2の骨部分2のために、この方法が繰り返される。図33では、複数のインプラント45のための複数のモノリシック3次元構造を決定するために、上述の方法が繰り返される。この実施例から分かるように、サージカルガイドの1つの構造は、インプラントの複数の構造と対応している。このような適応を他の例では逆に適用することができ、例えば、サージカルガイドの複数の構造が、インプラントの1つの構造に対応することができる。図32、33で、第2の骨部分2は頬骨(すなわち頬)の一部であり、図の右側に上顎が見られ、図の左上四分の一に眼窩があり、鼻腔は各図の上部に向いている。
【0089】
図34a、34bは、第1のインプラントと第1のサージカルガイドの第1の構造の一部をどのように画定し、製造できるかを示している。この第1の構造の一部は、前記第1の構造を、第2のインプラント、または第2のサージカルガイドの第2の構造と区別する。例えば、図34aの突出部47aは、顎の片方で使用するための上側のインプラントを、顎の他方で使用するための、図34bに示す異なる突出部47bを有する、もう1つの類似の下側のインプラントと区別している。
【0090】
図35a、35bは神経51と歯根53を示している。図35aで、スクリュー6用に提案された穴は、距離52によって、どのように神経51を回避するように画定されているかが分かる。これは、穴の1つ以上の深さおよび配向を画定することによって実現でき、これはその後、ガイド構造の画定に用いられる。前記穴と同様に、図35bにおいて、使用時はインプラントのスクリュー6が入っており、歯根53も回避している。
【0091】
比較例では、骨切り術および/または切除術は、外科医がコンピュータ上で仮想的にプレビューしたものに厳密に従う必要がある。これは、外科医は、分離された骨部分にインプラントを固定するときに、完全に無作為で未プログラムのまま設けられた数個のスクリュー通過穴を使用して、このインプラントを骨の第1の部分に固定する必要が生じるからである。例えば、これらのスクリュー通過穴は、無作為に予め穿孔された固定穴に基づいている場合がある。この場合、骨切り術および/または切除術の不備を修正することが難しい。しかしながら、本明細書で説明した方法によれば、カスタムな穿孔ガイドに導かれて、予め決められた取付位置および関連する穴によって、骨部分の正確な位置合わせが保証され、骨切り術の不備による影響が低減される。
【0092】
一例として、インプラントおよびガイドを寸法に合わせた状態で共に作成する方法がある。予備成形されたインプラントは、骨切り術によって分離される必要がある骨の第2の部分に、スクリューを使用して骨の第1の部分を固定するために配置される。ガイドは、スクリュー用の穴の穿孔を導くため、および骨切り術を導くために予め形成される。このような方法では、骨切り術前に以下のステップがある。
【0093】
a)コンピュータを用い、完全な骨の術前のモデルを3次元で作成し、完全な骨の術前の形状を構築し、以下の事柄によって修正されたモデルを作成するために、術前のモデルを修正する。その事柄とは、
)完全な骨の、計画された術後の形状と、
)分離される必要がある骨の第2の部分の、スクリュー用の穿孔ガイド穴および骨切り術テンプレート用の少なくとも1つの基準点、である。
【0094】
b)次に、寸法に合わせた状態で、以下のb1)、b2)を作成する。
)予備成形された骨固定インプラントである。これは、完全な骨の計画された術後の形状に対応するように、術前の態様で配置される。このインプラントは、骨の第1の部分および第2の部分を互いに固定できるように、予備成形された部品を有し、予備成形されたインプラント上に、分離される必要がある骨の第2の部分用に、スクリュー用の貫通穴を作成することによって、修正されたモデルのスクリュー用の穿孔ガイド穴に対応し、インプラントを骨の第1の部分に固定できるようにするために、スクリューを通すための穴を、予備成形されたインプラントに、無作為、無計画に設けることによって、骨の第1の部分に固定できるようにする。
)予備成形された穿孔ガイドである。これは、完全な骨の術前の形状に対応するように、術前の態様で配置される。
【0095】
このガイド上に、分離される必要がある骨の第2の部分用に、スクリュー用の穿孔ガイド穴を作成することによって、修正されたモデルのスクリュー用の穿孔ガイド穴に対応する。
【0096】
ステップa)に見られる、モデルを修正するための操作中に更に以下のステップが含まれる。分離される必要がある骨の第2の部分用に設けられた、スクリュー用の穿孔ガイド穴および骨切り術テンプレートの基準点に加えて、骨の第1の部分のスクリュー用の追加の穿孔ガイド穴を修正されたモデル上で作成するステップと、ステップb)に見られる寸法に合わせた作成のための操作中に、予備成形された穿孔ガイド上に、骨の第1の部分のスクリュー用の追加の穿孔ガイド穴を作成するステップと、インプラントを骨の第1の部分に固定できるようにするためのスクリューを通すように、インプラントに設けられた穴が、修正されたモデルに作成された追加の穿孔ガイド穴に対応することを確実にするステップ、である。
【0097】
修正されたモデル上に穿孔ガイドを用いて作られた、スクリューの全ての通路の位置の完成した相対的空間配置は、インプラントに作られた、スクリューを通すための全ての穴の完成した相対的空間配置に対応する。
【0098】
本明細書で説明する幾つかの実施例では、少なくとも1つのガイドおよび少なくとも1つのインプラントの特定の特徴は、寸法に合わせて決定および/または作成される。この事例で、ガイドは、ある程度まで、修正されるべき最初の状況に対応するように構成され、インプラントは、ある程度まで、理想的な計画された状況に対応するように構成される。この事例で、骨の第1の部分の固定スクリュー用の穿孔ガイド穴と、インプラントに作成された、骨の第1の部分のスクリュー用の貫通穴との間に、対応付けが作成される。この結果、インプラントは、その構成によって、骨切り術または切除術が、不完全または大まかであっても、骨の第1の部分が、骨の(複数の)第2の部分に対して正確に結合する。
【0099】
その結果、本明細書で説明したようにガイドおよび/またはインプラントを使用することによって、外科医は、最高精度を有する必要のために、骨切り術と任意の切除術の実施を遅らせなくてもよい。固定スクリューのガイド穴が、骨の第1の部分と骨の第2の部分の両方で、全て画定された位置を有しているので、インプラントが骨の全ての部分を、処置している患者の顔の領域に理想的に結合することが事前に分かる。
【0100】
深部にある主要組織、例えば神経、血管、歯根に接触するリスクを低減するために、本明細書で説明する方法は、固定スクリューを受けるための各穴の正確な位置に加えて、穿孔の軸線および/または深さも正確に決定されるべきである。
【0101】
このように、本明細書で説明した穿孔ガイドは、それに設けられている少なくとも1つの穿孔ガイド穴に対して、ドリルブッシュを備えている。ドリルブッシュは、その軸線が穿孔の軸線に対応し、その高さが、穿孔の深さを制限することによって、ドリルビットを主要組織に接触させるリスクを排除するよう穿孔を固定する。
【0102】
本明細書で説明した幾つかの方法は、骨切り術によって、第1の部分から分離される必要がある骨の第2の部分に対して、それ自体を幾つかの断片に分離できるように規定する。
【0103】
また、本明細書で説明した実施例は、上述した幾つかの方法の実施によって得られる、予備成形されたインプラントにも関する。このインプラントは、スクリューを用いて、骨の第1の部分を、骨切り術によって第1の部分から分離される必要がある骨の第2の部分に固定することを意図している。このインプラントは、完全な骨の計画された術後の形状を構築する、修正されたモデルに対応するように、寸法に合わせて作成される。このインプラントは、分離される必要がある骨の第2の部分に対して、修正されたモデルのスクリュー用の穿孔ガイド穴に対応する、スクリュー用の貫通穴を備えている。このインプラントは、骨の第1の部分がスクリューを通すための穴を更に有するように決定され、これらの穴は、骨の第1の部分を対象としたスクリュー用に、修正されたモデルで作成された穿孔ガイド穴に対応している。
【0104】
したがって、上記実施例で説明したインプラントは、骨の第1の部分に対して、計画された固定スクリューを通すための穴を有し、この穴は、同一の骨の第1の部分を対象としたスクリュー用に、修正されたモデルで作成された穿孔ガイド穴に対応している。
【0105】
言い換えれば、インプラントに作成された、固定スクリューを通すための穴の一部または全ての、完成した相対的空間配置は、修正されたモデルに作成された、スクリュー用の穿孔ガイド穴の一部または全ての、完成した相対的空間配置に対応している。したがって、インプラントは、骨切り術の後および任意の切除術の後に、患者の顔の1箇所のみに位置する。したがって、骨切り術および/または切除術が不完全または大まかであっても、それは重大なことではない。
【0106】
重要な要素は、骨接合スクリューを用いてインプラントを固定した後に、1つまたは複数の骨の第2の部分が、骨の第1の部分に対して良好に位置決めされることである。したがって、骨を復元し、施術した区域を全て結合した後、患者の骨の第1および第2の部分は当初に所望した通りに結合されている。
【0107】
同じ文脈で、本明細書で説明した実施例は、予備成形された穿孔ガイドに関し、上述の方法の実施によって得られる。このガイドの目的は、骨切り術を導くこと、および/または上述したようにインプラントを用いて骨の第1の部分を骨の第2の部分に固定するために用いられる、スクリュー用の穴の穿孔を導くことである。ガイドは寸法に合わせて作成され、分離される必要がある骨の第2の部分に対して、修正されたモデルのスクリュー用の穿孔ガイド穴に対応する、スクリュー用の穿孔ガイド穴を有する。穿孔ガイドは、骨の第1の部分に対して、スクリュー用の穿孔ガイド穴をさらに有するように構成され、これらの穴は、骨の第1の部分を対象とするスクリューのために、修正されたモデルで作成された穿孔ガイド穴に対応する。
【0108】
幾つかの実施例において、比較例の穿孔ガイドとは対照的に、穿孔ガイドは実施予定の骨切りに沿ったラインの両側から延びている。この線を越えて突出することによって、骨の第1の部分に固定されることを意図したスクリューの穿孔を導くための、多数の穴を設けることができる。
【0109】
また、これらの穴の位置は、骨の第1の部分に対して、修正されたモデルで画定された穴に対応するように作成するため、予め決定される。
【0110】
この構成により、ガイドを用いて、骨の第1および第2の部分で全ての計画された穴が穿孔された後、骨切り術が任意の切除術によって補助された後、および最終的に、当初想定されていたことに従った、骨部分の計画された再位置決めの後で、穿孔ガイドを用いて作成された、スクリューの一部または全ての通過位置の完成した相対的空間配置は、骨の再位置決めされた部分で、インプラントに作成された、スクリューを通すための一部または全ての穴の完成した相対的空間配置と正確に一致する。
【0111】
本明細書で説明した例の幾つかの穿孔ガイドは、骨の第1および第2の部分の骨切り術の前に穿孔された、一部または全ての穴が、骨切り術の後、または外科医が実施した骨の一部の理想的な再位置決めの後、予備成形されたインプラントに穿孔された穴と位置が合うことを確実にする。
【0112】
最終的に、複数の実施例は、寸法に合わせて作成されるインプラントおよび穿孔ガイドによって構成された、キットまたはアセンブリに関する。この事例で、修正されたモデルで穿孔ガイドを用いて作成された、スクリューの一部または全ての通過位置の完成した相対的空間配置は、インプラントに作成された、スクリューを通すための一部または全ての穴の完成した相対的空間配置に対応している。例えば、顎顔面サージカルガイドの第1および第2の複数の開口の位置は、顎顔面インプラントの第1および第2の複数の開口の位置付けされた位置に対応し、顎顔面サージカルガイドの第1および第2の複数の開口の位置は、術前の顎顔面骨格に対応し、顎顔面インプラントの第1および第2の複数の開口の位置は、所望の術後の顎顔面骨格に対応する。
【0113】
上記実施例は本発明を限定するものではなく、何れの実施例にも変形や組合せが存在する。本発明を定義する添付の特許請求の範囲によって定められた範囲から逸脱しない限り、可能な変形例を全て網羅している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10a
図10b
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34a
図34b
図35a
図35b