(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042076
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】マイクロカプセルの製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 13/16 20060101AFI20240319BHJP
【FI】
B01J13/16
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024015383
(22)【出願日】2024-02-05
(62)【分割の表示】P 2022539540の分割
【原出願日】2021-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2020130794
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000191755
【氏名又は名称】森下仁丹株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【弁理士】
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100088801
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 宗雄
(72)【発明者】
【氏名】西川 雄大
(72)【発明者】
【氏名】橋本 拓
(72)【発明者】
【氏名】杉本 英夫
(72)【発明者】
【氏名】西林 亜衣
(57)【要約】
【課題】 本発明は、皮膜形成する物質の溶液添加では界面重合法によるマイクロカプセルの製造が困難な場合であっても、より効率的で確実な界面重合法による製造方法を使って、容易にマイクロカプセルを提供すること。
【解決手段】 2種類の大きさの違うエマルション粒子を用いてマイクロカプセルを製造する方法であって、
連続相が共通する2種類のエマルション(1)および(2)を別々に形成し、互いに反応して皮膜を形成する2種のモノマーの一方をエマルション(1)のエマルション粒子(1)中に含め、他方のモノマーをエマルション(2)のエマルション粒子(2)に含めるエマルション形成工程、
エマルション(1)とエマルション(2)を混合して界面重合させるマイクロカプセル形成工程、
からなり、
エマルション(1)のエマルション粒子(1)の平均粒径(R)が0.1~300μmであり、エマルション(2)のエマルション粒子(2)の平均粒径(r)が0.01~30μmであり、かつr/R≦0.1であることを特徴とする、マイクロカプセルの製造方法を提供する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類の大きさの違うエマルション粒子を用いてマイクロカプセルを製造する方法であって、
連続相が共通する2種類のエマルション(1)および(2)を別々に形成し、互いに反応して皮膜を形成する2種のモノマーの一方をエマルション(1)のエマルション粒子(1)中に含め、他方のモノマーをエマルション(2)のエマルション粒子(2)に含めるエマルション形成工程、
エマルション(1)とエマルション(2)を混合して界面重合させるマイクロカプセル形成工程、
からなり、
エマルション(1)のエマルション粒子(1)の平均粒径(R)が0.1~300μmであり、エマルション(2)のエマルション粒子(2)の平均粒径(r)が0.01~30μmであり、かつr/R≦0.1であることを特徴とする、マイクロカプセルの製造方法。
【請求項2】
エマルション粒子(1)の平均粒径(R)が0.1~100μmであり、エマルション粒子(2)の平均粒径(r)が0.01~10μmであり、r/R≦0.1である請求項1記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項3】
エマルション形成工程後に、エマルション粒子(1)の平均粒径(R)またはエマルション粒子(2)の平均粒径(r)を所定範囲に調整する請求項1または2に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項4】
マイクロカプセル形成工程中の平均粒径(R)の増加率が1.3倍未満である請求項1~3のいずれか一項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項5】
連続相が、流動パラフィンもしくはシリコン油である請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項6】
互いに反応して皮膜を形成する2種のモノマーの一方が、1分子中にイソシアネート基を2官能基以上有するイソシアネート化合物であり、もう一方のモノマーが、1分子中にアミノ基を2官能基以上有するポリアミン化合物、1分子中に水酸基を2官能基以上有するポリヒドロキシ化合物およびそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーである、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項7】
マイクロカプセルのコア剤が、水、水溶性蓄熱材、熱膨張性炭化水素またはそのフッ化物、エポキシ樹脂硬化剤またはエポキシ樹脂硬化促進剤である請求項1~6のいずれか一項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項8】
前記エポキシ樹脂用硬化剤が、ポリイソシアネート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびイミダゾール化合物を含む請求項1~7のいずれか一項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項9】
前記エポキシ樹脂用硬化剤がポリイソシアネート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびイミダゾール化合物をあらかじめ混合後、加熱攪拌させた液状混合物である請求項1~8のいずれか一項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【請求項10】
上記マイクロカプセル形成工程の反応時間が6時間以内であることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のマイクロカプセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類の大きさの違うエマルション粒子を用いるマイクロカプセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コア剤をシェルで覆ったマイクロカプセルが様々な分野で用いられている。例えば、水を芯物質とする含水マイクロカプセルは、水が有する潜熱を利用して蓄冷熱用媒体として熱交換器等に利用される。炭化水素等を芯材とする熱膨張性マイクロカプセルは、意匠性付与剤や軽量化剤として幅広い用途に使用されている。また、壁紙をはじめとした材料中に熱膨張性マイクロカプセルを配合して、軽量化を目的とした塗料等にも利用されている。一方、接着剤、シール剤、コーティング剤等の用途に用いられるエポキシ樹脂組成物においては、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂の硬化を進行させるための硬化剤又は硬化促進剤とを安定な一液にするために、コア剤としての硬化剤又は硬化促進剤をシェルで被覆し、潜在性をもたせたマイクロカプセルが用いられている。
【0003】
しかしながら、コア剤が疎水性である場合に比べて、コア剤が水をはじめとする水溶性物質であるマイクロカプセル又はその製造方法については比較的開発が遅れている。また、コア剤が疎水性である場合においても、水相と反応して安定に内容物を保持できるマイクロカプセルが得られないといった問題が生じている。
【0004】
コア剤が水溶性であるマイクロカプセルの製造方法としては、特開平2-258052号公報(特許文献1)のように、コア剤に有機溶媒であるヘキサンを用い、O/W乳化物を形成し、その後、皮膜形成のためのヘキサメチレンジアミンを含有する水溶液を加え、加熱することでヘキサンを揮発させ粒子表面上で膜を形成させることで水分率の高いマイクロカプセルを得ることが知られている。これは、はじめからコア剤に水溶性物質を用いると保存安定性が保持できないことによるものであるが、有機溶媒を揮発させる工程が必要になるなど、不安全で煩雑な作業を必要とする製造工程となっていた。
【0005】
これに対し、特開2012-140600号公報(特許文献2)にはコア剤に水溶性ラジカル重合開始剤を含んだ水溶性物質を用い、ラジカル重合でコアを形成後、コアの表面に更に界面重合で皮膜を形成させることでマイクロカプセルを得ている。しかしながら、この製造過程では、目的のマイクロカプセルを得るのに2段階の反応を要しており、必ずしも簡便な製造工程とはいえない。
【0006】
また、特公平6-018636号公報(特許文献3)には、第一の油溶性反応物質であるポリイソシアネートを含む溶液を油相とし、界面活性剤を含む溶液を水相とする第一のO/W型水中有機エマルジョンと第二の油溶性反応物質であるアミンを含む溶液を油相とし、界面活性剤を含む溶液を水相とする第二のO/W型水中有機エマルジョンを混合し、マイクロカプセルを調製する方法が記載されている。しかしながら、このような方法では、ポリイソシアネートと水相のエマルジョン作成において、水とイソシアネートとの反応により皮膜形成以外の副反応を生じさせてしまう懸念があること、更に液滴同士の衝突により、どのようにして反応成分がやりとりできるようになるかということについては不明である。また反応時間として4時間~24時間を費やす必要があり、高品質なマイクロカプセルを簡便に得られる製造方法が求められていた。
【0007】
種々の有益物を内包することのできる強靭で漏れが抑えられた緻密なマイクロカプセルを、効率的に得られるようにすることが望まれている。また、エポキシ樹脂硬化剤を内包することのできる強靭で貯蔵安定性に優れたマイクロカプセルを得ることも望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平2-258052号公報
【特許文献2】特開2012-140600号公報
【特許文献3】特公平6-018636号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、皮膜形成する物質の溶液添加では界面重合法によるマイクロカプセルの製造が困難な場合であっても、より効率的で確実な界面重合法による製造方法を使って、容易にマイクロカプセルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の態様を提供する:
[1]2種類の大きさの違うエマルション粒子を用いてマイクロカプセルを製造する方法であって、
連続相が共通する2種類のエマルション(1)および(2)を別々に形成し、互いに反応して皮膜を形成する2種のモノマーの一方をエマルション(1)のエマルション粒子(1)中に含め、他方のモノマーをエマルション(2)のエマルション粒子(2)に含めるエマルション形成工程、
エマルション(1)とエマルション(2)を混合して界面重合させるマイクロカプセル形成工程、
からなり、
エマルション(1)のエマルション粒子(1)の平均粒径(R)が0.1~300μmであり、エマルション(2)のエマルション粒子(2)の平均粒径(r)が0.01~30μmであり、かつr/R≦0.1であることを特徴とする、マイクロカプセルの製造方法。
[2]エマルション粒子(1)の平均粒径(R)が0.1~100μmであり、エマルション粒子(2)の平均粒径(r)が0.01~10μmであり、r/R≦0.1である[1]記載のマイクロカプセルの製造方法。
[3]エマルション形成工程後に、エマルション粒子(1)の平均粒径(R)またはエマルション粒子(2)の平均粒径(r)を所定範囲に調整する[1]または[2]に記載のマイクロカプセルの製造方法。
[4]マイクロカプセル形成工程中の平均粒径(R)の増加率が1.3倍未満である[1]~[3]のいずれかに記載のマイクロカプセルの製造方法。
[5]連続相が、流動パラフィンもしくはシリコン油である[1]~[4]のいずれかに記載のマイクロカプセルの製造方法。
[6]互いに反応して皮膜を形成する2種のモノマーの一方が、1分子中にイソシアネート基を2官能基以上有するイソシアネート化合物であり、もう一方のモノマーが、1分子中にアミノ基を2官能基以上有するポリアミン化合物、1分子中に水酸基を2官能基以上有するポリヒドロキシ化合物およびそれらの組合せからなる群から選択されるモノマーである、[1]~[5]のいずれかに記載のマイクロカプセルの製造方法。
[7]マイクロカプセルのコア剤が、水、水溶性蓄熱材、熱膨張性炭化水素またはそのフッ化物、エポキシ樹脂硬化剤またはエポキシ樹脂硬化促進剤である[1]~[6]のいずれかに記載のマイクロカプセルの製造方法。
[8]前記エポキシ樹脂用硬化剤が、ポリイソシアネート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびイミダゾール化合物を含む[1]~[7]のいずれかに記載のマイクロカプセルの製造方法。
[9]前記エポキシ樹脂用硬化剤がポリイソシアネート、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびイミダゾール化合物をあらかじめ混合後、加熱攪拌させた液状混合物である[1]~[8]のいずれかに記載のマイクロカプセルの製造方法。
[10]上記マイクロカプセル形成工程の反応時間が6時間以内であることを特徴とする[1]~[9]のいずれかに記載のマイクロカプセルの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、皮膜形成材や重合反応材を有する物質の溶液添加を介した界面重合法では、安定なマイクロカプセルの製造が困難な場合であっても、本発明のエマルションを用いた界面重合法によって、任意の粒径のマイクロカプセルが高効率で容易に得られる。また、コア物質に水性物質を内包させたものについては、高い含水率を保持し、一方コア物質に疎水性物質を内包させたものについては、圧力耐性に優れたカプセルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<用語の定義>
本明細書中において、「連続相が共通する」とは、エマルションを形成する「連続相が同一または互いに溶液化し得る」場合を意味し、全く同じ連続相を用いる場合と、連続相は組成的に異なるが互いに溶液化する場合も含む概念とする。
【0013】
本発明では、2種類の大きさの違うエマルション粒子を用いてマイクロカプセルを製造する方法であって、
連続相が共通する2種類のエマルション(1)および(2)を別々に形成し、互いに反応して皮膜を形成する2種のモノマーの一方をエマルション(1)のエマルション粒子(1)中に含め、他方のモノマーをエマルション(2)のエマルション粒子(2)に含めるエマルション形成工程、
エマルション(1)とエマルション(2)を混合して界面重合させるマイクロカプセル形成工程、
からなり、
エマルション(1)のエマルション粒子(1)の平均粒径(R)が0.1~300μmであり、エマルション(2)のエマルション粒子(2)の平均粒径(r)が0.01~30μmであり、かつr/R≦0.1であることを特徴とする、マイクロカプセルの製造方法を提供する。本発明では、大きさの違う2種類のエマルション粒子を用いてマイクロカプセルを製造する。上記2種類のエマルションは、それぞれ別々に形成され、エマルション(1)のエマルション粒子(分散相)(1)の平均粒径(R)が0.1~300μmであり、エマルション(2)のエマルション粒子(分散相)(2)の平均粒径(r)が0.01~20μmであり、かつr/R≦0.1である必要がある。即ち、エマルション(1)のエマルション粒子(1)の平均粒径(R)の方が大きく、エマルション(2)のエマルション粒子(2)の平均粒径(r)が1/10倍小さいことを要件としている。そして、マイクロカプセルの形成工程では、両方のエマルションを混合して、界面重合させる、即ち重合反応をさせて、カプセルを形成する。大きなエマルション粒子(1)の周りに小さなエマルション粒子(2)が付着して、界面で重合反応が起こって、皮膜を形成し、マイクロカプセルを形作ると思われる。
【0014】
エマルション(1)がマイクロカプセルのコア剤を含むので、コア剤としては、水を内包させる場合には水、蓄熱材用途としてのマイクロカプセルを生成する場合には、相変化により蓄熱又は放熱する水溶性蓄熱材が用いられる。水溶性蓄熱材は、具体的には、糖、糖アルコール、無機塩、及び無機塩水和物よりなる群から選ばれる一種または二種以上が用いられる。
【0015】
上記コア剤を効果的にエマルション化するための添加剤としては、コア剤が水性の場合には、水性溶媒に溶解しゲル化するゲル化剤やコア剤を安定化のため分散安定剤等が適宜選択される。ゲル化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルフェノール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリエチレングリコール、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、寒天、ゼラチン、アルギン酸ナトリウム等が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。分散安定剤としては、例えば、シリカ、リン酸カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化第二鉄、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、シュウ酸カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。
【0016】
また、熱膨張剤用途としてマイクロカプセルを生成する場合には、コア剤は炭素数3~8の直鎖状の脂肪族炭化水素、炭素数3~8の分岐状の脂肪族炭化水素、炭素数3~8の環状の脂肪族炭化水素、炭素数が2~8の炭化水素基を有するエーテル化合物、またはそれらの炭化水素基の水素原子の1部がフッ素原子によって置換されたフッ化物などがある。より具体的にはプロパン、シクロプロパン、ブタン、シクロブタン、イソブタン、ペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン、イソペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、2-メチルペンタン、2,2-ジメチルブタン、ヘプタン、シクロヘプタン、オクタン、シクロオクタン、メチルヘプタン類、トリメチルペンタン類、C3F7OCH3、C4F9OCH3、C4F9OC2H5などのハイドロフルオロエーテル類を挙げることができる。これらは1種あるいはそれ以上の混合物として用いられる。さらに、過酸化物である過酸化ジアルキル、過酸化ジアシル、ペルオキシ酸エステル、ペルオキシジカーボネートおよびアゾ化合物も膨張剤として選択することができる。
【0017】
本発明のマイクロカプセルのコア剤としては、エポキシ樹脂の硬化を進行させるための硬化剤又は硬化促進剤を用いることも可能である。上記エポキシ樹脂の硬化剤または硬化促進剤としては、具体的には例えば、イミダゾール化合物、アミン化合物等が挙げられる。イミダゾール化合物としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,2-ジメチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-シアノエチル-2-エチル-4-メチルイミダゾール、1-ドデシル-2-メチル-3-ベンジルイミダゾリウムクロライド、2-ウンデシルイミダゾール、2-ヘプタデシルイミダゾール、1-シアノエチルイミダゾール等が挙げられる。アミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ブタンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、オクタンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンジアミン、トリエチレントリアミン、マロン酸ジヒドラジド、1,3-ビス(ヒドラジノカルボノエチル)-5-イソプロピルヒダントイン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデカ-7-エン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノ)フェノール、2-ジメチルアミノフェノール等が挙げられる。これらのイミダゾール化合物、アミン化合物は単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0018】
また、上記イミダゾール化合物またはアミン化合物はエポキシ樹脂のイミダゾールアダクト、エポキシ樹脂のアミンアダクトとしても用いることもできる。アダクト体としては、例えば、エポキシ樹脂とイミダゾール化合物、もしくはアミン化合物との反応により得られる化合物等が挙げられるが、好ましくはイミダゾール化合物とエポキシ樹脂からなるエポキシ樹脂のイミダゾールアダクトである。イミダゾールアダクトの製造において、必要に応じて用いられる溶剤としては、特別に制限するものではないが、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、ミネラルスピリット、ナフサ等の炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸-n-ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類、等であり、これらの溶剤は併用しても構わない。イミダゾール化合物に対するエポキシ樹脂の添加量としては、イミダゾール化合物の活性水素化当量(アミン価)に対し、1:0.2~1:5の範囲であることが好ましい。当量比が1:0.2よりも小さい、すなわち、エポキシ樹脂の添加量が少ないと、イミダゾール化合物の流動性が上がるため、長期の貯蔵安定性には不向きとなる。一方、当量比が1:5よりも大きい、すなわちエポキシ樹脂の添加量が増えると粘度が高くなり、以下の乳化工程での小液滴化が困難となるため、小粒径のマイクロカプセルが得られ難くなる。したがって、イミダゾール化合物に対するエポキシ樹脂の添加量としては、イミダゾール化合物の活性水素化当量(アミン価)に対し、1:0.3~1:1が好ましい。
【0019】
本発明で製造されるマイクロカプセルのシェル(皮膜)は、互いに反応して皮膜を形成する2種のモノマーから形成される。本発明では、好ましくは、ポリイソシアネートとそれと反応して皮膜を形成するポリヒドロキシ化合物(ポリウレタン皮膜を形成)またはポリアミン化合物(ポリアミド皮膜を形成)が例示される。
【0020】
ポリイソシアネートは、脂肪族ポリイソシアネートと芳香族ポリイソシアネートとがある。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、プロピレン-1,2-ジイソシアネート、ブチレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,2-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン及び1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、イソホロンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、水素化キシリレンジイソシアネート等が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,4-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、3,3’-ジメトキシ-ビフェニルジイソシアネート、3,3’-ジメチルジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、キシリレン-1,4-ジイソシアネート、キシリレン-1,3-ジイソシアネート、4-クロロキシリレン-1,3-ジイソシアネート、2-メチルキシリレン-1,3-ジイソシアネート、4,4’-ジフェニルプロパンジイソシアネート、2,2-ビス(4-イソシアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。以上では2官能であるジイソシアネート化合物を例示したが、これらから類推される3官能のトリイソシアネート化合物、4官能のテトライソシアネート化合物であってもよい。
【0021】
イソシアネート化合物を用いた縮合体、重合体又は付加体の例としては、上記の2官能イソシアネート化合物の3量体であるビウレット体もしくはイソシアヌレート体、トリメチロールプロパン等のポリオールと2官能イソシアネート化合物の付加体として多官能とした化合物、ベンゼンイソシアネートのホルマリン縮合物、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート等の重合性基を有するイソシアネート化合物の重合体、リジントリイソシアネート等が挙げられる。
【0022】
ポリイソシアネート化合物については「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社発行(1987))に記載されている。
【0023】
上記の中でも、マイクロカプセルのシェルは、3官能以上のイソシアネートの重合物を含む態様が好ましい。3官能以上のイソシアネートとしては、例えば、3官能以上の芳香族イソシアネート化合物、3官能以上の脂肪族イソシアネート化合物等が挙げられる。3官能以上のイソシアネート化合物の例としては、2官能のイソシアネート化合物(分子中に2つのイソシアネート基を有する化合物)と分子中に3つ以上の活性水素基を有する化合物(3官能以上の例えばポリオール、ポリアミン、又はポリチオール等)とのアダクト体(付加物)として3官能以上としたイソシアネート化合物(アダクト型)、2官能のイソシアネート化合物の3量体(ビウレット型又はイソシアヌレート型)も好ましい。3官能以上のイソシアネート化合物の具体的な例としては、2,6-トリレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートとトリメチロールプロパンとの付加物、ビウレット体、イソシアヌレート体等であってもよい。
【0024】
アダクト型の3官能以上のイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の例としては、タケネート(登録商標)D-102、D-103、D-103H、D-103M2、P49-75S、D-110N、D-120N、D-140N、D-160N(以上、三井化学株式会社製)、デスモジュール(登録商標)L75、UL57SP(住化バイエルウレタン株式会社製)、コロネート(登録商標)HL、HX、L(日本ポリウレタン株式会社製)、P301-75E(旭化成株式会社製)、バーノック(登録商標)D-750(DIC株式会社製)等が挙げられる。イソシアヌレート型の3官能以上のイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、タケネート(登録商標)D-127N、D-131N、D-132N、D-170N、D-170HN、D-172N、D-177N、D-204、D-262、スタビオ(登録商標)D-370N(三井化学株式会社製)、スミジュールN3300、デスモジュール(登録商標)N3600、N3900、Z4470BA(住化バイエルウレタン)、コロネート(登録商標)HX、HK(日本ポリウレタン株式会社製)、デュラネート(登録商標)TPA-100、TKA-100、TSA-100、TSS-100、TLA-100、TSE-100(旭化成株式会社製)などが挙げられる。ビウレット型の3官能以上のイソシアネート化合物は、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、タケネート(登録商標)D-165N、NP1100(三井化学株式会社製)、デスモジュール(登録商標)N3200(住化バイエルウレタン)、デュラネート(登録商標)24A-100(旭化成株式会社製)などが挙げられる。
【0025】
本発明におけるポリイソシアネートは単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
前記ポリヒドロキシ化合物は、イソシアネート基又はアミノ基を有しないものが好ましく、イソシアネート基及びアミノ基をともに有しないものがより好ましい。前記ヒドロキシ化合物が、その1分子中に有する水酸基の数は、2個以上であれば特に限定されないが、2~6個であることが好ましく、2~5個であることがより好ましく、2~4個であることがさらに好ましく、2又は3個であることが特に好ましい。
【0027】
前記ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、有機ポリヒドロキシ化合物等が挙げられ、前記有機ポリヒドロキシ化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール等のアルキレングリコール等が挙げられる。重縮合によるポリウレタンの形成時に用いる前記ヒドロキシ化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は、任意に選択できる。
【0028】
また、ポリウレタンの形成時の反応を促進させるために、触媒を添加することが出来る。例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)などの触媒を1種のみであってもよいし、2種以上を混合して用いても良い。
【0029】
ポリアミン化合物はアミノ基が2つ以上含有する物質を挙げることができる。例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、1,4-ジアミノブタン、1,5-ジアミノペンタン、ヘキサメチレンジアミン、1.8-ジアミノオクタン、ビス(2-アミノエチル)アミン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(3-アミノプロピル)アミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、N,N’-ビス(3-アミノプロピル)エチレンジアミン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、1,4-ブタンジオールビス(3-アミノプロピル)エーテル、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル等が挙げられる。中でもトリス(2-アミノエチル)アミン、ビス(2-アミノエチル)アミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ヘキサメチレンジアミンから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。ポリアミン化合物は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0030】
本発明のエマルションの連続相が水相の場合には、水性媒体及び乳化剤を含む組成とすることができる。上述の水性媒体は、好ましくは水である。水性媒体は、油相と水相との混合物であるエマルションの全質量に対し、好ましくは20質量%~80質量%、より好ましくは30質量%~70質量%、更により好ましくは40質量%~60質量%である。
【0031】
上記の乳化剤には、分散剤若しくは界面活性剤またはこれらの組み合わせが含まれる。分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール及びその変性物(例えば、アニオン変性ポリビニルアルコール)、ポリアクリル酸アミド及びその誘導体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、エチレン-無水マレイン酸共重合体、イソブチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリビニルピロリドン、エチレン-アクリル酸共重合体、酢酸ビニル-アクリル酸共重合体、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、アラビアゴム及びアルギン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0032】
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
ノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル系化合物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル系化合物、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル系化合物、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル系化合物、グリセリン脂肪酸部分エステル系化合物、ソルビタン脂肪酸部分エステル系化合物、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル系化合物、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル系化合物、ショ糖脂肪酸部分エステル系化合物、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル系化合物、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル系化合物、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル系化合物、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル系化合物、ポリオキシエチレン化ひまし油系化合物、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル系化合物、脂肪酸ジエタノールアミド系化合物、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)アルキルアミン系化合物、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0034】
アニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩、アビエチン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩、N-メチル-N-オレイルタウリンナトリウム塩、N-アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩、スチレン-無水マレイン酸共重合物の部分けん化物、オレフィン-無水マレイン酸共重合物の部分けん化物、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキルポリオキシアルキレンスルホアルキルエーテルの塩、アルケニルポリオキシアルキレンスルホアルキルエーテルの塩などが挙げられる。
【0035】
カチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩(例えば、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムクロライド)、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0036】
両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン、アミノカルボン酸、スルホベタイン、アミノ硫酸エステル、イミタゾリンが挙げられる。
【0037】
乳化剤の濃度は、油相と水相との混合物であるエマルションの全質量に対し、0質量%超20質量%以下が好ましく、0.005質量%以上15質量%以下がより好ましく、0.01質量%以上12質量%以下が更により好ましく、1質量%以上10質量%以下が最も好ましい。
【0038】
水相は、必要に応じて、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤などの他の成分を含有してもよい。
【0039】
本発明の連続相が油相の場合には、溶媒および/または添加剤などの成分が更に含まれてもよい。
【0040】
溶媒の例としては、トリ(カプリル・カプリン酸)グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル等の脂肪酸エステル系化合物、ジイソプロピルナフタレン等のアルキルナフタレン系化合物、1-フェニル-1-キシリルエタン等のジアリールアルカン系化合物、イソプロピルビフェニル等のアルキルビフェニル系化合物、トリアリールメタン系化合物、アルキルベンゼン系化合物、ベンジルナフタレン系化合物、ジアリールアルキレン系化合物、アリールインダン系化合物等の芳香族炭化水素;フタル酸ジブチル、パラフィン、イソパラフィン等の脂肪族炭化水素;シリコン油、ツバキ油、大豆油、コーン油、綿実油、菜種油、オリーブ油、ヤシ油、ひまし油、魚油等の天然動植物油;鉱物油等の天然物高沸点留分などが挙げられる。
【0041】
溶媒には、上述の界面活性剤を含めることができる。また、紫外線吸収剤、光安定化剤、酸化防止剤、ワックス、臭気抑制剤などの添加剤を必要に応じて、マイクロカプセルに内包することができる。
【0042】
添加剤は、コア材の全質量に対し、例えば、0質量%~20質量%、好ましくは1質量%~15質量%、より好ましくは5質量%~10質量%含有することができる。
【0043】
<エマルション形成工程>
エマルションの形成は、本発明の連続相の溶媒に溶解しない、液相(分散相)をエマルション粒子として本発明の連続相に分散させることをいう。乳化は、分散相と連続相との分散に通常用いられる手段、例えば、汎用撹拌機、ホモジナイザー、マントンゴーリー、超音波分散機、ディゾルバー、ケディーミルまたはその他の公知の分散装置を用いて行なうことができる。エマルション(1)の形成では、エマルション粒子(1)になる分散相の材料を連続相中に分散させて、エマルション(1)を形成する。また、エマルション(1)中のエマルション粒子(1)との界面で重合可能な化合物(皮膜形成物質)を含有する本発明のエマルション(2)についても上記エマルション形成工程を適用することができる。
【0044】
本発明のエマルション(2)は、互いに反応して皮膜を形成する皮膜形成性モノマーを分散相(エマルション粒子(2))として、連続相中にエマルション化してもよく、上記連続相の溶媒に溶解せず、皮膜形成モノマーを溶解することができる補助溶媒を分散相として用いてエマルション化してもよい。補助溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン等のケトン系化合物、酢酸エチル等のエステル系化合物、イソプロピルアルコール等のアルコール系化合物等が挙げられる。
【0045】
上記エマルション(2)中のエマルション粒子(2)は、エマルション(1)のエマルション粒子(1)に対して溶解度が5重量%以上であることが好ましい。溶解度は、エマルション粒子(2)のエマルション粒子(1)中への溶解度であって、溶解性が高いと次の重合反応(界面重合反応)時に皮膜(マイクロカプセルのシェル)を形成しやすい。溶解度は、12重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは5重量%以上であればよいが、上限は88重量%、好ましくは90重量%、より好ましくは95重量%である。
【0046】
具体例としては、エチレンジアミンを分散相とした場合、分散安定剤としてポリビニルピロリドンを用い、それをパラフィン系溶剤からなる連続相に、所定の撹拌速度で分散することにより、エマルションを形成する。これがエマルション(1)となる。一方、これに対するエマルション(2)は、ポリイソシアネートと同じパラフィン系溶剤に所定の撹拌速度で分散することにより、形成される。撹拌速度を変えることにより、あるいは使用する撹拌翼を変えることにより、分散相の粒径を制御することができる。別の例では、ポリイソシアネートを分散相とし、疎水性物質のイミダゾールを配合して、パラフィン系溶剤に所定の撹拌速度で分散して、エマルション(1)を形成する。一方、これに対するエマルション(2)は、ヘキサメチレンジアミンを分散相として、パラフィン系溶剤を連続相として、所定の撹拌速度で分散することにより、エマルション(2)を形成する。例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂のアダクト体(エポキシ樹脂の硬化剤または硬化促進剤)をエマルション(1)のエマルション粒子(1)のコア剤とする場合には、まずビスフェノールA型エポキシ樹脂にイミダゾールとメチルエチルケトンを混合して、アダクト体を形成し、それをパラフィン系溶剤に所定の撹拌速度で分散することにより、エマルション(1)として使用することができ、これを上記ポリイソシアネートとイミダゾールを用いるエマルション(1)のイミダゾールの代わりに用いて、ヘキサメチレンジアミンから形成したエマルション(2)と組み合わせると、エポキシ樹脂硬化剤または硬化促進剤をマイクロカプセルのコアに内包するマイクロカプセルが形成できる。
【0047】
<マイクロカプセル形成工程>
マイクロカプセル形成工程は、上記で形成したエマルション(1)および(2)を混合して、重合反応(界面重合反応)して、マイクロカプセルのシェル(皮膜)を形成する工程である。重合反応は、エマルション(1)中のエマルション粒子(1)とエマルション(2)中に含まれる皮膜形成物質を含むエマルション粒子(2)との衝突により、その界面で合体して重合が開始する工程であり、これによりマイクロカプセルのシェル(皮膜)が形成される。重合反応は、好ましくは加熱下で行われる。重合反応の温度は、通常は40℃~100℃であり、50℃~80℃がより好ましい。重合反応温度が高い程、重合時間は短くなるが、反応が速くなると凝集を生じやすくなる恐れがある。その場合には、比較的低温で反応を開始させたのち、昇温させることが望ましい。
【0048】
本発明者らの検討によると、エマルション粒子(2)のエマルション粒子(1)に対する溶解度が5重量%以上であると、マイクロカプセルを製造する際のエマルション(2)に含まれるエマルション粒子(2)がエマルション(1)に含まれるエマルション粒子(1)に衝突し、合一することでシェル(皮膜)の形成を助長させる傾向が高いことが分かった。溶解度が5重量%以上である組み合わせであれば特に限定されず、例えば、コア剤が水溶物である場合、エマルション(2)に補助溶媒を用いる場合には、水に対する溶解度が6.9%であるジエチルエーテル、該溶解度が8.3%である酢酸エチル、該溶解度が27.5%であるメチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフランを用いることができ、エマルション粒子(1)がイミダゾール化合物である場合には、エマルション(2)にはエチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のイミダゾールに高溶解度のアミンを単独で用いることができる。
【0049】
本発明のカプセルの性能を安定に維持するためには、カプセルのサイズが揃っていることが望ましく、そのためには、本発明のエマルション(2)の添加前後でのエマルション(1)のエマルション粒子(1)の平均粒径が均一であるのが好ましく、その平均粒径の分布が平均粒径の1.3倍未満であることが好ましい。
【0050】
本発明のマイクロカプセルの平均粒径を揃える手段として、エマルション(1)の乳化後、エマルション(1)のエマルション粒子(1)のサイズを所望のサイズに成長させたのち、エマルション(2)を添加することができる。上述のエマルション粒子の平均粒径を所望の大きさに成長させるとは、エマルション(1)のエマルション粒子(1)同士による合一による液滴径の増大であり、連続相の粘度、攪拌速度の変更に伴う、せん断力、せん断時間を調整することで、エマルション粒子(1)の所望の大きさを得ることが出来る。
【0051】
本発明者らは、エマルション(1)を形成後、一定の攪拌速度を維持させることによって、エマルション粒子(1)の平均粒径の分布における分散値(標準偏差)が、平均液滴径が成長しても一定以上に広がらないことを見出した。その結果、エマルション(2)とエマルション(1)からなる両方のエマルション粒子が合一後も、その径の大きさは1.3倍未満になることが分かった。即ち、マイクロカプセル形成工程中の平均粒径(R)の増加率が1.3倍未満であることになる。
【0052】
好ましいエマルション(2)の添加のタイミングは、エマルション(1)の撹拌によるエマルション粒子の平均粒径の分散値の増大が頭打ちになった時点で、エマルション(2)を添加して、合一を開始すれば、添加前後の径の大きさの差異が小さくなるので好ましい。
【0053】
本発明のエマルション(1)からなるエマルション粒子(1)の平均粒径(R)は、0.1~300μmであることが好ましい。エマルション粒子(1)の平均粒径が0.1μm未満であると、エマルション粒子(1)の凝集が生じ、反応を阻害することがある。エマルション粒子(1)の平均粒径が300μmを超えると、小粒子径のマイクロカプセルを製造できないことがある。エマルション粒子(1)の平均粒径の好ましい上限は100μm、より好ましい上限は50μmである。尚、エマルション(1)およびエマルション(2)のエマルション粒子の平均粒径は、マイクロスコープ等により測定した液滴の平均粒径を意味する。但し、エマルション粒子の平均粒径が1μm未満の場合には、粒子径分布測定装置等により液滴の平均粒径を求めることを意味する。
【0054】
上記エマルション(2)からなるエマルション粒子(2)の平均粒径(r)は、上記エマルション(1)からなるエマルション粒子(1)の平均粒径(R)の10%以下(即ち、r/R≦0.1)であることが好ましく、具体的には0.01~30μm、好ましくは0.01~10μmであることが好ましい。平均粒径比(r/R)が0.1を超えると、エマルション粒子(2)がエマルション粒子(1)との合一による重合反応が優先されず、エマルション粒子(1)同士あるいはエマルション粒子(2)同士が合一してしまい、マイクロカプセル自体の性能に影響を及ぼすことになり好ましくない。
【0055】
本発明のエマルション(2)のエマルション粒子(2)は一般的なインクジェット方式を利用することもできる。例えばピエゾ方式によるインクジェットノズルより本発明のエマルション粒子(2)を吐出して上記エマルション粒子(1)と合一させることができる。
【0056】
本発明のエマルション形成工程は、O/W型でもW/O型の何れにおいても適しているが、エマルション(2)のエマルション粒子(2)を安定に保つためにはO/O’が好ましく、O’は水よりも粘度が高いこと望ましい。粘度が高いことにより、エマルション粒子(2)の合一を抑制することができ、エマルション粒子(1)との合一が促進される。また、エマルション(2)の界面張力は高いほど、変形が受けにくく、エマルション(1)のエマルション粒子(1)との合一が促進されるので好ましい。
【0057】
油相の溶媒については、脂肪族炭化水素系を使用する場合には炭素数が多いほど、液滴が安定化するので好ましい。
【0058】
本発明におけるマイクロカプセルの皮膜(シェル)は、好ましくはポリイソシアネートの構造に由来するポリウレタンまたはポリウレアを含む。
【0059】
本発明のマイクロカプセルの平均シェル(皮膜)厚みは、好ましい下限が0.01μm、好ましい上限が5.0μmである。平均シェル厚みが0.01μm未満であると、コア剤の保持性が低下することがある。平均シェル厚みが5.0μmを超えると、水溶性コア剤の放出性が低下することがある。平均シェル厚みのより好ましい下限は0.08μm、より好ましい上限は1.0μmである。
【0060】
平均シェル厚みは、10個のマイクロカプセルの個々の壁厚(μm)を走査型電子顕微鏡(SEM)により求めて平均した平均値をいう。具体的には、マイクロカプセル液を任意の支持体上に塗布し、乾燥させて塗布膜を形成する。得られた塗布膜の断面切片を作製し、その断面をSEMを用いて観察し、任意の10個のマイクロカプセルを選択して、それら個々のマイクロカプセルの断面を観察して壁厚を測定して平均値を算出することにより求められる。
【0061】
本発明のマイクロカプセルを生成するための重合反応時間は、通常は0.5時間~10時間程度が好ましく、1時間~6時間程度がより好ましい。上記のようにr/Rをより小さくすることによって、反応時間を4時間以内にすることが可能であり、生産性の面から好ましい。なお、ここでいう重合反応時間とは、エマルション(1)にエマルション(2)を添加後、後述の洗浄を開始するまでの時間をいう。
【0062】
また、短すぎる重合反応時間は、未反応成分の残存、もしくは十分な皮膜強度が得られない状態での反応終了を意味する。一方、長すぎる反応時間は、界面以外の余計な反応が付加されたりして、ときにマイクロカプセル間の不均一化や、マイクロカプセル同士の凝集に繋がったりする。
【0063】
得られたマイクロカプセルは、必要に応じて被覆されてもよい。マイクロカプセルを被覆する方法は特に限定されず、例えば、当該カプセルの皮膜形成物と反応する物質等による界面重合が挙げられる。上述の皮膜形成物が粒子表面に局在している場合には、該皮膜形成物と反応する物質を本発明のエマルション(2)の添加と同様、一旦、当該連続相と皮膜形成物と反応する物質の乳化を行ったのち、当該皮膜形成物と反応する物質を含む液滴からなる当該乳化液を反応液に添加することで、当該カプセルの表面を被覆することが可能となる。マイクロカプセルを被覆することは、マイクロカプセルのコア剤の漏出を防ぐ観点から好ましい。皮膜形成物と反応する物質量としては、エマルション(2)に含まれる皮膜形成物の当量以下であり、好ましくは1/10以下である。例えば、皮膜形成物であるアミンに対し、反応する物質としてはエポキシ化合物が挙げられ、アミンの水素当量に対し、当量以下、好ましくは1/10当量以下、更に好ましくは1/50当量以下である。上述のエポキシ化合物は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。皮膜形成物と反応する物質を含む液滴からなるエマルションを反応液に添加するタイミングとしては、本発明のエマルション(2)の添加終了後から反応終了までの間で任意に添加することができる。好ましい添加のタイミングとしては反応終了の1時間前、更に好ましくは30分前に添加することが、皮膜が形成されている観点から望ましい。
【0064】
また、得られたマイクロカプセルは、水、ヘキサン、トルエン、酢酸エチル等の溶媒を用いて繰り返して洗浄された後、真空乾燥等により乾燥されてもよい。
【0065】
本発明のマイクロカプセルは、その最終のマイクロカプセルの平均粒径は、0.1~4000μm、好ましくは0.1~350μm、より好ましくは0.1~310μmである。0.1μmより小さなカプセルの製造はコア剤の量が少なくなってしまう。400μmを超えるマイクロカプセルも作成できるが、本発明の製造方法を使用するメリットが少なくなる。本発明のマイクロカプセルは、多くのコア剤に利用することができ、様々な用途に供することができる。
【実施例0066】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0067】
<水溶液を内包するマイクロカプセルの調製>
(実施例1)
皮膜を形成するモノマーとしてエチレンジアミン(富士フイルム和光純薬工業社製)2重量部と、水溶性コア剤としてポリビニルピロリドン10%水溶液30重量部とを混合溶解させて、溶液(1)を得た。この溶液(1)をパラフィン系溶剤(MORESCO社製モレスコホワイトP-100)120重量部(乳化剤としてサンソフト818R(太陽化学社製)を5重量%含む)に加え、撹拌機を用いて550rpmで攪拌してエマルション粒子(1)が分散したエマルション(1)を調製した。エマルション粒子(1)の液滴径(平均粒径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、101.5μmであった。
【0068】
一方、エチレンジアミンと反応して皮膜を形成するポリイソシアネートとしてスタビオD-370N(三井化学社製)30重量部を、酢酸エチル30重量部に溶解させて、パラフィン系溶剤(MORESCO社製モレスコホワイトP-100)600重量部(乳化剤としてサンソフト818R(太陽化学社製)を7重量%含む)に加え、ホモミキサー(PRIMIX社製MARKII)を用いて10000rpmで攪拌して、エマルション粒子(2)が分散したエマルション(2)を調製した。エマルション粒子(2)の液滴径(平均粒径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、10.1μmであった。
【0069】
得られたエマルション(1)をジャケット付き攪拌反応容器に投入後、250rpmでの攪拌中にエマルション(2)を添加したのち、室温で60分攪拌後、反応溶液が50℃になるように温水を通水し、50℃で240分反応させた。反応終了後、反応溶液の2倍量のトルエン中に反応溶液を投入後、吸引ろ過によりマイクロカプセルを得た。このマイクロカプセルの粒子径(平均粒子径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、103.8μmであった。
【0070】
なお、エマルション粒子(2)のエマルション粒子(1)中への溶解度は、8.3であった。
【0071】
赤外線水分計(FD-720、ケツト科学研究所社製)によりマイクロカプセルの水分量を測定し、マイクロカプセルの含水率を求めたところ、62.0%であった。
【0072】
(実施例2)
エマルション粒子(2)が分散したエマルション(2)の調製において、ホモミキサー(PRIMIX社製MARKII)を用いた回転数を15000rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様に作成した。エマルション粒子(2)の液滴径(平均粒径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、4.8μmであった。
【0073】
実施例1と同様にエマルション(1)にエマルション(2)を添加したのち、室温で60分攪拌後、反応溶液が50℃になるように温水を通水し、50℃で150分反応させたこと以外は実施例1と同様にしてマイクロカプセルを得た。このマイクロカプセルの粒子径(平均粒子径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、102.8μmであった。
【0074】
なお、エマルション粒子(2)のエマルション粒子(1)中への溶解度は、8.3であった。
【0075】
赤外線水分計(ケツト科学研究所社製FD-720)によりマイクロカプセルの水分量を測定し、マイクロカプセルの含水率を求めたところ、63.0%であった。
【0076】
(実施例3)
エマルション(1)の調製において、撹拌の回転数を250rpmに変更したこと以外は、実施例1と同様に調製した。エマルション粒子(1)の液滴径(平均粒径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、200.7μmであった。
【0077】
実施例1と同様にエマルション(1)をジャケット付き攪拌反応容器に投入後、150rpmでの攪拌中に実施例1のエマルション(2)を添加したのち、室温で60分攪拌後、反応溶液が50℃になるように温水を通水し、50℃で180分反応させたこと以外は実施例1と同様にしてマイクロカプセルを得た。このマイクロカプセルの粒子径(平均粒子径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、205.3μmであった。
【0078】
エマルション粒子(2)のエマルション粒子(1)中への溶解度は、8.3であった。
【0079】
赤外線水分計(ケツト科学研究所社製FD-720)によりマイクロカプセルの水分量を測定し、マイクロカプセルの含水率を求めたところ、61.0%であった。
【0080】
(実施例4)
実施例3と同様にして、エマルション(2)の調製において、ホモミキサー(PRIMIX社製MARKII)を用いた回転数を5000rpmに変更し、エマルション粒子(2)が分散したエマルション(2)を調製した。エマルション粒子(2)の液滴径(平均粒径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、20.0μmであった。
【0081】
実施例3と同様にエマルション(1)にエマルション(2)を添加したのち、室温で60分攪拌後、反応溶液が50℃になるように温水を通水し、50℃で300分反応させた以外は実施例3と同様にしてマイクロカプセルを得た。このマイクロカプセルの粒子径(平均粒子径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、210.0μmであった。
【0082】
エマルション粒子(2)のエマルション粒子(1)中への溶解度は、8.3であった。
【0083】
赤外線水分計(ケツト科学研究所社製FD-720)によりマイクロカプセルの水分量を測定し、マイクロカプセルの含水率を求めたところ、60.0%であった。
【0084】
(実施例5)
実施例1と同様にして、溶液(1)の調製において、エチレンジアミンの代わりに1,4-ブタンジオール(富士フイルム和光純薬工業社製)2重量部に変更し、溶液(2)の調製において、スタビオD-370N(三井化学社製)30重量部と酢酸エチル30重量部の溶解液に、触媒として、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(富士フイルム和光純薬工業社製)を1.5重量部加えた以外は実施例1と同様にしてエマルション(2)を調製した。
【0085】
溶液(1)からなる液滴の液滴径(平均液滴径)をマイクロスコープ(VHX-6000、キーエンス社製)により測定したところ、103.0μmであった。一方、溶液(2)からなる液滴の液滴径(平均液滴径)をマイクロスコープ(VHX-6000、キーエンス社製)により測定したところ、10.2μmであった。得られたマイクロカプセルの粒子径(平均粒子径)をマイクロスコープ(VHX-6000、キーエンス社製)により測定したところ、105.4μmであった。
【0086】
赤外線水分計(FD-720、ケツト科学研究所社製)によりマイクロカプセルの水分量を測定し、マイクロカプセルの含水率を求めたところ、65.0%であった。
【0087】
(比較例1)
実施例1と同様にして、エマルション(2)の調製において、スタビオD-370N(三井化学社製)30重量部をエマルション(1)が投入されたジャケット付き攪拌反応器に直接添加した。室温での攪拌と50℃での攪拌で合計8時間反応させたものの、エマルション(2)が形成されないので、皮膜が形成されず、マイクロカプセルを得ることはできなかった。
【0088】
(比較例2)
実施例1と同様にして、エマルション(2)の調製において、スタビオD-370N(三井化学社製)30重量部を、酢酸エチルに溶解させずに、パラフィン系溶剤(MORESCO社製モレスコホワイトP-100)600重量部(乳化剤としてサンソフト818R(太陽化学社製)を7重量%含む)に加え、ホモミキサー(PRIMIX社製MARKII)を用いて10000rpmで攪拌して、エマルション粒子(2)が分散したエマルション(2)を調製した。エマルション粒子(2)の液滴径(平均粒径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、27.3μmであった。r/Rが0.269であった。
【0089】
得られたエマルション(1)をジャケット付き攪拌反応容器に投入後、250rpmでの攪拌中にエマルション(2)を添加後、反応中に粒子が凝集し、分散をすることが出来ず、マイクロカプセルを得ることが出来なかった。
【0090】
(比較例3)
実施例1と同様にして、エマルション(2)の調製において、スタビオD-370N(三井化学社製)30重量部を、酢酸エチルに溶解させずに、パラフィン系溶剤(MORESCO製モレスコホワイトP-100)600重量部(乳化剤としてサンソフト818R(太陽化学社製)を7重量%含む)に加え、ホモミキサー(PRIMIX社製MARKII)を用いて15000rpmで攪拌して、エマルション粒子(2)が分散したエマルション(2)を調製した。エマルション粒子(2)の液滴径(平均粒径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、9.8μmであった。
【0091】
得られたエマルション(1)をジャケット付き攪拌反応容器に投入後、250rpmでの攪拌中にエマルション(2)を添加したのち、室温で60分攪拌後、反応溶液が50℃になるように温水を通水し、50℃で反応させた。反応途中にサンプリングを実施したところ、101.5μmであったが、皮膜が弱く、室温での攪拌と50℃での攪拌で合計8時間反応させた。反応溶液の2倍量のトルエン中に反応溶液を投入後、吸引ろ過の際にマイクロカプセルが潰れ、凝集物となりマイクロカプセルが得られなかった。
【0092】
(比較例4)
実施例1と同様にして、エマルション(2)の調製において、スタビオD-370N(三井化学社製)30重量部を、酢酸エチル30重量部に溶解させ、パラフィン系溶剤(MORESCO製モレスコホワイトP-100)600重量部(乳化剤としてサンソフト818R(太陽化学社製)を7重量%含む)に加え、ホモミキサー(PRIMIX社製MARKII)を用いて5000rpmで攪拌して、エマルション粒子(2)が分散したエマルション(2)を調製した。エマルション粒子(2)の液滴径(平均粒径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、31.3μmであった。r/Rの値は、0.3084であった。
【0093】
得られたエマルション(1)をジャケット付き攪拌反応容器に投入後、250rpmでの攪拌中にエマルション(2)を添加したのち、室温で60分攪拌後、反応溶液が50℃になるように温水を通水し、50℃で180分反応させた。反応終了後、反応溶液の2倍量のトルエン中に反応溶液を投入後、吸引ろ過によりマイクロカプセルを得た。このマイクロカプセルの粒子径(平均粒子径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、130.3μmであったが、マイクロカプセルから内包されている水が漏れ出しており、赤外線水分計(ケツト科学研究所社製FD-720)によりマイクロカプセルの水分量を測定し、マイクロカプセルの含水率を求めたところ、25.0%であった。
【0094】
<疎水性物質を内包するマイクロカプセルの調製>
(実施例6)
ポリイソシアネートとしてスタビオD-370N(三井化学社製)10重量部とタケネートD-262(三井化学社製)3重量部と、疎水性物質1-ベンジル―2―メチルイミダゾール32重量部とを混合溶解して、溶液(1)を得た。この溶液(1)をパラフィン系溶剤(MORESCO社製モレスコホワイトP-100)300重量部(乳化剤としてKF-6038(信越シリコーン社製)を0.5重量%含む)に加え、ホモミキサー(PRIMIX社製MARKII)を用いて4500rpmで攪拌してエマルション粒子(1)が分散したエマルション(1)を調製した。エマルション粒子(1)の液滴径(平均粒径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、15.1μmであった。
【0095】
一方、ヘキサメチレンジアミン(富士フイルム和光純薬社製)4重量部を、パラフィン系溶剤(MORESCO製モレスコホワイトP-100)300重量部(乳化剤としてKF-6038(信越シリコーン社製)を0.5重量%含む)に加え、ホモミキサー(PRIMIX社製MARKII)を用いて8000rpmで攪拌して、エマルション粒子(2)が分散したエマルション(2)を調製した。エマルション粒子(2)の液滴径(平均粒径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、1.5μmであった。
【0096】
得られたエマルション(1)をジャケット付き攪拌反応容器に投入後、速やかに250rpmでの攪拌中にエマルション(2)を添加したのち、室温で60分攪拌後、反応溶液が50℃になるように温水を通水し、50℃で150分反応させた。反応終了後、反応溶液の2倍量のヘキサン中に反応溶液を投入後、吸引ろ過によりマイクロカプセルを得た。このマイクロカプセルの粒子径(平均粒子径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、15.8μmであった。
【0097】
(実施例7)
実施例6において以下を変更してマイクロカプセルを得た。
エマルション(1)をジャケット付き攪拌反応容器に投入後、250rpmで90分攪拌後、エマルション(2)を添加したこと以外は実施例2と同様にして、マイクロカプセルを得た。なお、エマルション(2)を添加するにあたり、エマルション(1)をジャケット付き攪拌反応容器に投入後、10分毎に平均粒径を測定し、分散値(標準偏差)が広がらず、液滴径(平均粒径)が19.2μmであることを確認し、エマルション(2)を添加した。
【0098】
反応終了後、マイクロカプセルの粒子径(平均粒子径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、19.8μmであった。
【0099】
(実施例8)
実施例6において以下を変更してマイクロカプセルを得た。
エマルション(1)の調製において、ホモミキサー(PRIMIX社製MARKII)を用いて4500rpmで攪拌するかわりに、スリーワンモーターを用いて回転数を400rpmに変更し、エマルション粒子(1)が分散したエマルション(1)を調製した。エマルション粒子(1)の液滴径(平均粒径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、98.5μmであった。
【0100】
次に実施例6のエマルション(2)の調製において、ホモミキサー(PRIMIX社製MARKII)を用いた回転数を2000rpmに変更し、エマルション粒子(2)が分散したエマルション(2)を調製した以外は、実施例6と同様にしてマイクロカプセルを得た。なお、エマルション粒子(2)の液滴径(平均粒径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、7.8μmであった。
【0101】
反応終了後、マイクロカプセルの粒子径(平均粒子径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、105.0μmであった。
【0102】
(比較例5)
実施例6のエマルション(2)の調製において、ホモミキサー(PRIMIX社製MARKII)を用いて4000rpmで攪拌して、エマルション粒子(2)が分散したエマルション(2)を調製した。エマルション粒子(2)の液滴径(平均粒径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、3.0μmであった。実施例6と同様に反応をさせ、マイクロカプセルを得た。r/Rの値は、0.1987であった。
【0103】
このマイクロカプセルの粒子径(平均粒子径)をマイクロスコープ(キーエンス社製VHX-6000)により測定したところ、22.0μmであった。
【0104】
<評価>
硬度試験(耐圧性)
実施例6、実施例7、実施例8及び比較例5で得たマイクロカプセルの耐圧性を、市販のあぶらとり紙を用いて以下のように評価した。
【0105】
市販のあぶらとり紙の上に載せたマイクロカプセルの上側にもあぶらとり紙を載せ、小型卓上試験機Eztest(島津製作所社製)の硬さモードで押し込みの圧力を45Nから下げていった際のあぶらとり紙にマイクロカプセルに内包している疎水物質が染み出し、あぶらとり紙に吸収される(染み出しを感知される)圧力を確認し、染み出しが感知されなくなった圧力を求めた(圧力耐性として記載)。結果を表1に示す。
【0106】
【0107】
本発明のマイクロカプセルは、個々の粒子が均一に揃っているため、加圧時の耐性が優れていることにより、内包物が加圧により漏出し難くなっていることが分かった。
【0108】
<エポキシ樹脂のアダクト体を内包するマイクロカプセル内の調製>
(実施例9)
アダクト体Aの作成
1-ベンジル-2-メチルイミダゾール17.2重量部とビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製jER828)6.33重量部とメチルエチルケトン20mlとを、30℃で1時間以上攪拌してアダクト体Aを作成した。
【0109】
実施例6において、疎水性物質である1-ベンジル-2-メチルイミダゾールの代わりに上記アダクト体32重量部に変更した以外は実施例6と同様にして、マイクロカプセルを得た。エマルション粒子(1)の粒径Rは15.1μmで、エマルション粒子(2)の粒径rは、1.5μmであった。従って、r/Rの値は0.0993であった。
【0110】
(実施例10)
<アダクト体Bの作成>
2-メチルイミダゾール5.80重量部とビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製jER828)4.47重量部とメチルエチルケトン80mlを30℃で1時間以上攪拌後、室温に戻し、アダクト体Bを作成した。
【0111】
実施例6において、疎水性物質1-ベンジル-2-メチルイミダゾールの代わりに上記アダクト体B32重量部に変更した以外は実施例6と同様にして、マイクロカプセル得た。エマルション粒子(1)の粒径Rは15.1μmで、エマルション粒子(2)の粒径rは、1.3μmであった。従って、r/Rの値は0.0861であった。
【0112】
(実施例11)
<アダクト体Cの作成>
2―フェニルイミダゾール10.2重量部とビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル社製jER828)4.47重量部とメチルエチルケトン80mlを30℃で1時間以上攪拌後、室温に戻し、アダクト体Cを作成した。
【0113】
実施例6において、疎水性物質1-ベンジル-2-メチルイミダゾールの代わりに上記アダクト体C32重量部に変更した以外は実施例6と同様にして、マイクロカプセル得た。エマルション粒子(1)の粒径Rは15.1μmで、エマルション粒子(2)の粒径rは、1.4μmであった。従って、r/Rの値は0.0927であった。
【0114】
本発明のマイクロカプセルは、マイクロカプセル化により、硬化剤単独使用時よりも貯蔵安定性に優れ、更に内包物をエポキシ樹脂アダクト体にすることによって、大幅に貯蔵安定性が向上することが分かった。
【0115】
以下の表2には、実施例と比較例のエマルション(1)の粒径(Rμm)、エマルション(2)の粒径(rμm)、r/Rの値、エマルション粒子(2)のエマルション粒子(1)中への溶解度(%)、得られたマイクロカプセルの粒径(μm)および得られたマイクロカプセルの水分量(%)を記載した。
【表2】
前記マイクロカプセルのコア剤が、水、水溶性蓄熱材、熱膨張性炭化水素または熱膨張性炭化水素のフッ化物、エポキシ樹脂硬化剤またはエポキシ樹脂硬化促進剤である請求項1~4のいずれか一項に記載のマイクロカプセルの製造方法。