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  • 特開-塗装ブース 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004209
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】塗装ブース
(51)【国際特許分類】
   B05B 16/60 20180101AFI20240109BHJP
   B05B 14/43 20180101ALI20240109BHJP
【FI】
B05B16/60
B05B14/43
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103745
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】593081224
【氏名又は名称】タクボエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104488
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 良夫
(72)【発明者】
【氏名】西川 俊博
(72)【発明者】
【氏名】小島 光
【テーマコード(参考)】
4D073
【Fターム(参考)】
4D073DC02
4D073DC19
4D073DD02
4D073DD15
(57)【要約】
【課題】作業効率を落とすことなく、空調エネルギーの削減を可能にした塗装ブースを提供する。
【解決手段】塗装室2の内部に配置され又は塗装室2に連続して配置されて、塗装ロボット4及びワーク供給手段6が内部に備えられ、塗装室2内に開口した開口部3を有して、温度及び湿度を所定の値に調整した外気が前記塗装室2から供給されながら、ワーク供給手段6に取り付けたワークに向けて塗装ロボット4から塗料を噴霧することでワークの塗装を行う塗装ブース1であって、ワークの塗装の際に発生する塗料ミストを回収するためのミストキャッチャー10と、塗装ブース1内に供給された外気を外部に排気するための排気用ファン11と、排気用ファン11を介して塗装ブース1から排気される外気の一部を塗装ブース1に還流するための還流手段を有することを特徴としている。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗装室(2)の内部に配置され又は塗装室(2)に連続して配置されて、塗装ロボット(4)及びワーク供給手段(6)が内部に備えられ、塗装室(2)内に開口した開口部(3)を有して、温度及び湿度を所定の値に調整した外気が前記塗装室(2)から供給されながら、ワーク供給手段(6)に取り付けたワークに向けて塗装ロボット(4)から塗料を噴霧することでワークの塗装を行う塗装ブース(1)であって、
前記ワークの塗装の際に発生する塗料ミストを回収するためのミストキャッチャー(10)と、塗装ブース(1)内に供給された外気を外部に排気するための排気用ファン(11)と、該排気用ファン(11)を介して塗装ブース(1)から排気される外気の一部を塗装ブース(1)に還流するための還流手段を有することを特徴とした塗装ブース。
【請求項2】
前記還流手段は、前記排気用ファン(11)に連結された還流管(21)を有しており、前記塗装ブース(1)の側壁は排気穴が形成された給気空間を有しており、前記還流管(21)の先端部分が前記塗装ブース(1)における給気空間に連結され、塗装ブース(1)の側壁から排気の一部を戻すこととしたことを特徴とする請求項1に記載の塗装ブース。
【請求項3】
前記還流管(21)と塗装ブース(1)との連結部分にフィルターユニット(23)を介在させたことを特徴とする請求項2に記載の塗装ブース。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗装ブースに係り、より詳しくは、省エネを達成可能な塗装ブースに関する。
【背景技術】
【0002】
塗装ロボットを用いた塗装では一般的に、塗装室内に塗装ブースが配置されており、あるいは塗装室に連設した状態で塗装ブースが配置されており、塗装ブース内において、塗装対象のワークの塗装が行われる。
【0003】
即ち、塗装ブースには、塗装ロボットとワーク供給手段が備えられており、塗装ロボットに備えたスプレーガンよって、ワーク供給手段に取り付けられたワークに向けて塗料の噴霧を行うことで、ワークの塗装が行われる。
【0004】
そして、塗装室内においては、塗装ブースへのワークの搬入や塗装ブースからのワークの搬出、更に、塗装後のワークを次工程へ移送するための作業等が行われる。
【0005】
即ち、塗装室内では、塗装前のワークを準備し、この塗装前のワークを、ワーク供給手段へ取り付ける作業や、塗装済のワークをワーク供給手段から取り外す作業が行われ、更に、ワーク供給手段から取り外した塗装済のワークを乾燥工程等の次工程へ移動するための作業などが行われる。
【0006】
この関係を説明すると、塗装室内に塗装対象のワークを搬入した後に、塗装前のワークをワーク供給手段に取り付けて、その後に塗装ブースにおいて、ワーク供給手段に取り付けたワークへ塗装ロボットから塗料を噴霧することで、ワークの塗装を行う。そして、ワークの塗装が終了した後に、塗装済のワークをワーク供給手段から取り外し、取り外したワークは、塗装室から搬出して次工程へ移送する。
【0007】
ところで、ワークの塗装に用いる塗料には人体に有害な物質が含まれるため、塗装室内で作業を行う者に害が及ばないように、塗装により発生する塗料ミストを回収する必要がある。
【0008】
そこで、従来、所定の温度及び湿度に調整するとともにフィルターによってごみ等を除去した外気を、ファン等の給気手段によって塗装室内に供給するとともに、この塗装室内に供給した外気を塗装ブース内に供給して、塗装ブース内において、外気の気流を一定方向に流しながら、ミスト回収手段により塗装室内のミストを回収し、その後にミストを取り除いた外気を屋外へ排気することとしている。
【0009】
即ち、塗装室には給気装置が連結されており、この給気装置によって塗装室内には外気が供給される。そして、給気装置には、フィルター、熱交換器、加湿器、及びファンが備えられており、給気装置は、外気を内部に取り入れた後に、取り入れた外気について、フィルターでごみ等を除去し、熱交換器で所定の温度に調整し、更に加湿器で所定の湿度に調整し、その後に、塗装室に供給している。
【0010】
一方、塗装ブースには、塗装室内に開口した開口部を有しており、この開口部側から順番に、塗装ロボットとワーク供給手段が配置されている。そして、塗装前のワークをワーク供給手段に取り付け、その状態でワークの塗装を行い、塗装後は、塗装したワークをワーク供給手段から取り外すとともに未塗装のワークをワーク供給手段に取り付けて、ワーク供給手段に新たに取り付けたワークの塗装を行い、その後は、必要数のワークの塗装が終了するまで、ワークの入れ替えと塗装を繰り返すこととしている。
【0011】
また、塗装ブース内の奥側、具体的には、塗装室に開口した開口部の反対側には、塗料ミストを回収するためのミストキャッチャー等のミスト回収手段が備えられており、ミストキャッチャーには排気用ファンが連結されている。そしてこれによって、排気用ファンを作動させることで、開口部を介して、塗装室内に給気された外気を塗装ブース内に取り入れるとともに、塗装ブース内においては、取り入れた外気の気流をミストキャッチャー側の一定方向に流しながら、ミストキャッチャーにより塗装室内のミストを回収し、その後にミストを取り除いた外気を屋外へ排気することとしている。
【0012】
この、従来の塗装室の構成を示した図が図3である。そして、図において31が塗装室であり、この塗装室31の天井部にはフィルターユニット32が備えられている。
【0013】
一方、図において33は給気装置であり、この給気装置33は、前述したように、外気を内部に取り込むとともにこの取り込んだ外気を所定の温度及び湿度の調整し、その後にこの所定の温度及び湿度に調整した外気を、前記フィルターユニット32を介して塗装室31の内部に供給することとしている。
【0014】
そして、前記給気装置33は、フィルター34、熱交換器35、加湿器36、及びファン37が順番に配置されており、熱交換器35、加湿器36及びファン37を作動させることにより、所定の温度及び湿度に調整した外気を、給気管38を介して前記塗装室31内に供給することとしている。なお、図において39は、熱交換器35において外気を所定温度に調整するための空調熱源である。
【0015】
次に、図において41は塗装ブースであり、この塗装ブース41は、塗装室31内に配置され、塗装室31内に開口した開口部が備えられており、この開口部を介して塗装室31の内部と通じている。
【0016】
そして、塗装ブース41内には、スプレーガン43を備えた塗装ロボット42と、塗装対象となるワークが取り付けられるワーク供給手段44が配置され、塗装対象のワークをワーク供給手段44に取り付けた後に、その状態でスプレーガン43から、ワーク供給手段44に取り付けたワークに向けて塗料を噴霧し、それによりワークの塗装を行うこととしている。
【0017】
また、前記塗装ブース41において、反開口部側の奥、即ちワーク供給手段44の奥側には、オイルや水で塗料ミストをキャッチするためのミストキャッチャー45が配置されるとともに、このミストキャッチャー45の上方の天井部には排気用ファン46が備えられている。そしてこれにより、塗装室31内に外気を供給するとともに、ミストキャッチャー45及び排気用ファン46を作動させることで、塗装室31内に供給された外気を塗装ブース41内に供給しつつ、塗装ブース41内において、気流を奥側に流しながら、ミストキャッチャー45により塗装ブース41内のミストを回収しつつ、塗装ブース41内に供給された外気を、排気用ファン46及び排気管47によって屋外へ排気している。
【0018】
ところで、塗装ロボットを用いたワークの塗装においては、大量のワークを処理するために、ワーク供給手段として回転テーブルを用いて、この回転テーブルの周縁部に複数のワークを配置し、更には、周縁部に複数のワークを配置した回転テーブルを複数個用いて、大量のワークの塗装を同時に行う場合がある。そして、その場合には、複数個の回転テーブルに対応してスプレーガンの数を複数個にし、それぞれのスプレーガンから各回転テーブルに配置したワークに向けて塗料を噴霧することも行われている。
【0019】
そのために、このように大量のワークを同時に塗装する構成とした場合には、塗装ロボットが大型化してしまい、それに伴い塗装ブースも大型化せざるを得なくなる。
【0020】
そして、このように塗装ブースが大型化した場合には、塗装室に供給する外気の量も多くなり、従って、外気の温度や湿度を調整するための空調エネルギーも膨大にならざるを得なくなり、それに伴い塗装コストが増えてしまうという問題点が指摘できる。即ち、従来は塗装ブースに供給する空気の全量を外気で賄っていたために、この塗装ブースに供給する外気を所定の温度及び湿度に調整するためのエネルギーが膨大になってしまい、コストが多くなっていた。
【0021】
そのため従来、塗装ブースからの排気の一部を塗装室へ戻す方法が提案されており、これにより、塗装室へ供給する外気の量を減らすことで、空調エネルギーの削減を可能にして、大量のワークを塗装するために塗装ブースが大型化した場合でも、空調エネルギーが膨大になることを防止して省エネを達成することが可能となった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】特開2006-15191号公報
【特許文献2】特開2007-268393号公報
【特許文献3】特開2009-154145号公報
【特許文献4】特開2010-51931号公報
【特許文献5】特開2018-1045号公報
【特許文献6】特開2019-55387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
しかしながら、フィルター等によって有害物質を除去した場合でも、塗装ブースから排気される排気から有害物質を完全に除去することができないため、前述のような従来の排気の一部を戻す方法では、塗装ブースからの排気の一部を塗装室に戻す方法を採用しているため、塗装室内に人が入らないことが前提となっている。
【0024】
その一方、前述したように、塗装室内ではワークの脱着を行うために、作業者が出入りする必要がある。そのため、排気の一部を塗装室に戻す従来の方法を採用する場合には、塗装が行われている間は塗装室内へ作業者が入らないようにする必要があり、ワークの塗装中は新たなワークの準備等を行うことができないため、作業効率が悪くなるという問題点が起こる。
【0025】
そこで、本発明は、作業効率を落とすことなく、空調エネルギーの削減を可能にした塗装ブースを提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の塗装ブースは、
塗装室の内部に配置され又は塗装室に連続して配置されて、塗装ロボット及びワーク供給手段が内部に備えられ、塗装室内に開口した開口部を有して、温度及び湿度を所定の値に調整した外気が前記塗装室から供給されながら、ワーク供給手段に取り付けたワークに向けて塗装ロボットから塗料を噴霧することでワークの塗装を行う塗装ブースであって、
ワークの塗装の際に発生する塗料ミストを回収するためのミストキャッチャーと、塗装ブース内に供給された外気を外部に排気するための排気用ファンと、排気用ファンを介して塗装ブースから排気される外気の一部を塗装ブースに還流するための還流手段を具備し、前記排気用ファンによって外部に排気される外気の一部を塗装ブースに戻すことを特徴としている。
【発明の効果】
【0027】
本発明の塗装ブースでは、塗装ブースからの排気の一部を塗装ブースに還流するための還流手段を具備することで、排気用ファンによって外部に排出される外気の一部を塗装ブースに戻すこととしている。そのために、塗装ブースに供給する空気をすべて新しい外気で賄う必要がなくなり、従って、塗装室に取り入れる外気の量を少なくすることができるので、塗装ブースが大型化した場合でも、空調エネルギーを少なく抑えることができ、塗装コストを削減することが可能である。
【0028】
また、本発明の塗装ブースでは、塗装ブースからの排気の一部を作業者が入る可能性がある塗装室へ戻す従来の方法と異なり、塗装ブースからの排気の一部を作業者が入ることがない塗装ブースに還流することとしているために、塗装が行われている間でも塗装室内へ作業者が入ることが可能となり、ワークの塗装中に新たなワークの準備等を行うことができるので、作業効率が悪くなることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の塗装ブースの実施例の構成を説明するための図である。
図2】本発明の塗装ブースの実施例の構成を平面側からの視野で説明した図である。
図3】従来の塗装ブースの構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の塗装ブースは、ワーク供給手段に対するワークの脱着作業や、塗装済ワークの次工程への移送が行われる塗装室内に配置され、又は塗装室に連続して配置される塗装ブースであって、塗装ロボット及びワーク供給手段が内部に備えられるとともに、塗装室内に開口した開口部を有している。
【0031】
そして、温度及び湿度を所定の値に調整した外気が前記塗装室から供給されながら、ワーク供給手段に取り付けたワークに向けて塗装ロボットから塗料を噴霧することでワークの塗装を行うこととしている。
【0032】
また、ワークの塗装の際に発生する塗料ミストを回収するためのミストキャッチャーと、塗装ブース内に供給された外気を排気するための排気用ファンを具備している。
【0033】
更に、塗装ブースからの排気の一部を塗装ブースに還流するための還流手段を具備しており、それにより、排気用ファンによって外部に排出される外気の一部を、塗装ブースに戻すこととしている。
【0034】
ここで、前記還流手段は排気用ファンに連結された還流管を有しており、前記塗装ブースの側壁には給気空間を形成し、前記還流管の先端部分を前記塗装ブースにおける給気空間に連結し、塗装ブースの側壁から排気の一部を戻すとよく、それにより、スプレー箇所の気流が乱れることを防止できる。
【0035】
また、前記還流管と塗装ブースとの連結部分にはフィルターを介在させており、これにより、塗装ブースに戻される排気をよりクリーンにすることを可能にしている。
【実施例0036】
本発明の塗装ブースの実施例について図面を参照して説明すると、図1及び図2は、本実施例の塗装ブースの構成を説明するための図であり、図1は側面側から見た内部を示しており、図2は平面側から見た構成を示している。そして、図において1が塗装ブースである。
【0037】
また、図において2は塗装室であり、本実施例における塗装ブース1は、塗装室2内に配置されており、塗装室2内に開口する開口部3を有して、これによって、塗装室2内と塗装ブース1内は、互いに通じた、連続したエリアとなっている。
【0038】
次に、図において4は塗装ロボットであり、この塗装ロボット4は、塗料を噴霧するためのスプレーガン5を備えている。なお、本発明において塗装ロボット4の種類は特に限定されず、据え置き型の塗装ロボットでもよく、あるいは天井から吊るしたアームにより構成される天吊り型ロボットでもよい。
【0039】
また、図において6はワーク供給手段であり、このワーク供給手段6にワークを取り付けた状態で、取り付けたワークに向けて前記スプレーガン5から塗料を噴霧し、それによりワークの塗装を行う。従って、塗装を行うワークは、塗装時においては、塗装ロボット4から見て塗装ブースの奥側、即ち反開口部3側に位置した配置としている。
【0040】
なお、図2において前記ワーク供給手段6は、複数個のワークを取り付けることが可能で回転自在とした円形の回転テーブル7が、支持アーム8の両端部分に備えられ、回転テーブル7の円周に沿って複数個のワークを取り付ける構成としている。
【0041】
また、本実施例のワーク供給手段6では、塗装ロボット4が位置する箇所を中心に回動自在とされた回転アーム9が備えられており、この回転アーム9の両端部分に、前記支持アーム8が連結されている。
【0042】
そして、回転アーム9は、塗装ロボット4から見て塗装ブースの奥側、即ち、反開口部側に位置する回転テーブル7に取り付けたワークに向けて塗料を噴霧しているときに、反対側の回転テーブル7に塗装前のワークを取り付けることを可能にしており、これにより、回転アーム9を回転することで、ワークの入れ替えを容易にしている。但し、ワーク供給手段6の形態は必ずしも図2に示す形態には限定されず、ワークを取り付けることが可能であればいずれでもよい。
【0043】
次に、図において10は、ワークに塗着しなかったオーバーミストを回収するためのミストキャッチャーである。即ち、前述したように、ワークの塗装に用いる塗料には人体に有害な物質が含まれるが、スプレーガンから噴霧された塗料の中にはワークに塗着せずにワークの後方に流れてしまうものがあり、この塗料を一般的にオーバーミストと言う。そして、このオーバーミストを放置した場合には塗装室内で作業する者に害が及んでしまう。そこで、本実施例の塗装ブース1では、塗装ブース1内にミストキャッチャー10を配置し、給気装置によって塗装室2内に外気を供給するとともに、この塗装室2内に取り入れた外気を塗装ブース1内に供給し、塗装ブース内において、取り入れた外気の気流をミストキャッチャー側の一定方向に流しながら、ミストキャッチャーにより塗装室内のミストを回収し、その後に塗装ブース内に給気された外気を屋外へ排気することとしている。
【0044】
ここで、塗装室1内に外気を供給するための給気装置について説明すると、図1において12が給気装置である。そして、本実施例における前記給気装置12も、前述の従来の給気装置と同様に、フィルター13、熱交換器14、加湿器15、及びファン16順番に配置されており、熱交換器14、加湿器15及びファン16を作動させることにより、外気を内部に取り込むとともに、この取り込んだ外気を所定の温度及び湿度の調整し、その後にこの所定の温度及び湿度に調整した外気を、給気管17及びフィルターユニット18を介して、塗装室2の内部に供給することとしている。なお、図において19は熱交換器14において外気を所定温度に調整するための空調熱源である。
【0045】
次に、前記塗装ブース1においては、反開口部3側の奥側にミストキャッチャー10を配置するとともに、ミストキャッチャー10の上方に排気用ファン11が備えられている。そしてこれにより、給気装置12によって塗装室2内に外気を供給するとともに、ミストキャッチャー10及び排気用ファン11を作動させることで、塗装室2内に供給された外気を塗装ブース1内に供給しつつ、塗装ブース1内においては、供給された外気の気流を奥側に流しながら、ミストキャッチャー10により塗装ブース1内のミストを回収しつつ、塗装ブース1内に供給された外気を、排気用ファン11によって塗装ブース1の外に排出することとしている。従ってこれにより、人体に有害な塗料ミストが塗装ブース1内に残ってしまうことを防止することができる。
【0046】
なお、ミストキャッチャーは、オイルや水で塗料ミストをキャッチするものであり、特に構造等は限定されないが、本実施例において前記ミストキャッチャー10は、ミストを捕捉するためのバッフル板を備えており、バッフル板にオイルを流し、このオイルでオーバーミストを捕捉することとしている。そして、バッフル板の後方に排気路が形成され、この排気路の途中にはフィルターが配置され、更に排気路の上方に前記排気用ファン11が備えられている。但し、前述したように、ミストキャッチャーの構造は特に限定されず、オーバーミストを捕捉可能であればいずれの構成にしてもよい。また、ミストキャッチャーは周知の技術であるために詳細な説明は省略する。
【0047】
次に、図において21は還流手段としての還流管である。即ち、前記排気用ファン11には、排気用の排気管20と、還流用の還流管21が連結され、排気管20の先端部分は塗装ブース1の外部に開放されている。そして、還流管21の先端部分は前記塗装ブース1に連結され、これにより、排気用ファン11からの排気の一部を塗装ブース1に戻すことにしている。
【0048】
ここで、排気用ファン11からの排気の一部を塗装ブース1に戻す方法について説明すると、本実施例においては、塗装ブース1における開口部3の近傍部分の両側の側壁は2層になっており、これにより、側壁内には給気空間が形成されている。そして、2層の側壁の内側、即ち塗装ブース1の内部に面した側壁にはパンチングがされて、排気穴としてのパンチング穴が多数形成されている。
【0049】
また、側壁の給気空間の天井部分には、給気空間に通じたフィルターユニット23が連結され、前記還流管21の先端部分はこのフィルターユニット23に連結されている。そして、これにより、排気用ファン11からの排気の一部は、還流管21及びフィルターユニット23を介して塗装ブース1の側壁に形成した給気空間に供給され、更に、2層にした側壁における塗装ブース1の内部に面した側に形成したパンチ穴を通って、塗装ブース1の内部に戻される。そのため、塗装ブース1内に戻された排気の分だけ、塗装室に取り入れる外気の量を少なくすることができるので、それにより、取り入れた外気の温度及び湿度を調整するための空調エネルギーを削減することが可能となる。
【0050】
次に、このように構成される本実施例の塗装ブース1の作用について説明すると、ワークの塗装を行う場合には、給気装置12における熱交換器14、加湿器15及びファン16を作動させるとともに、ミストキャッチャー10及び排気用ファン11を作動させ、その状態でワークに向けて塗料を噴霧する。
【0051】
そうすると、給気装置12によって塗装室2内に供給された外気は、排気用ファン11の作用によって、塗装ブース1内に供給されるとともに、塗装ブース1内においてミストキャッチャー10側に流れていき、ミストキャッチャー10を通過した後に、排気用ファン11を通過していく。
【0052】
そして、ワークの塗装に伴って発生したオーバーミストは、塗装ブース1内を流れる外気の気流に乗って、ミストキャッチャー10側に流れていき、ミスとキャッチャー10によって捕捉される。
【0053】
一方、排気用ファン11からの排気は、一部は排気管20を通って塗装ブース1の外部に排出されるが、残りの一部は、還流管21を通って、塗装ブース1の内部に供給される。即ち、排気用ファン11からの排気の一部は、還流管21を通ってフィルターユニット23に供給され、更に、このフィルターユニット23を通過して、開口部3の近傍の側壁内に形成された給気空間に供給される。そして、給気空間内に供給された排気の一部は、塗装ブース1の内部に面した側の側壁に形成されたパンチ穴を通って塗装ブース1内に戻される。
【0054】
従って、これにより、還流管21を通って塗装ブース1に戻される排気の量の分だけ、給気装置12から供給される外気の量を減らすことができ、空調エネルギーを削減することが可能となる。
【0055】
そしてこのとき、本実施例の塗装ブース1では、塗装ブース1からの排気の一部を塗装ブースに還流することとしているために、ワークの塗装中に作業者が塗装室に入ることを禁止する必要が無くなり、ワークの塗装中でも、未塗装のワークのワーク供給手段への取り付けや塗装済のワークの次工程への移送等を行うことができ、作業効率を高めることが可能である。
【0056】
また、還流管21を通って戻される排気は、側壁に形成したパンチ穴を通って塗装ブース1の側壁から塗装ブース1の内部に戻されるために、塗装ブース1の内部に戻される排気の影響でスプレー箇所の気流が乱れることを、防止することもできる。
【0057】
なお、本実施例において塗装ブース1は、塗装室2の内部に配置した構成としているが、塗装ブースは必ずしも塗装室の内部に配置する必要はなく、塗装室内に供給された外気を取り入れることができる開口部を有していればよく、塗装室に連続した配置であってもよい。
【0058】
また、還流管21を通って戻ってくる排気を塗装ブース1の内部に戻す箇所は、必ずしも、塗装ブース1における側壁である必要はなく、塗装ブース1の内部に戻す構成であれば、塗装ブース1におけるいずれの部分に戻してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明の塗装ブースでは、塗装ブースからの排気の一部を塗装ブースに戻すことにより、空調エネルギーを削減するとともに、作業効率が下がることも防止しているため、オーバーミスト回収のために外気を取り入れる塗装ブースの全般に適用可能である。
【符号の説明】
【0060】
1 塗装ブース
2 塗装室
3 開口部
4 塗装ロボット
5 スプレーガン
6 ワーク供給手段
7 回転テーブル
8 支持アーム
9 回転アーム
10 ミストキャッチャー
11 排気用ファン
12 給気装置
13 フィルター
14 熱交換器
15 加湿器
16 ファン
17 給気管
18 フィルターユニット
19 熱源
20 排気管
21 還流管
23 フィルターユニット
図1
図2
図3