(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042104
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
B23Q 15/18 20060101AFI20240319BHJP
G05B 19/404 20060101ALI20240319BHJP
G05B 19/4155 20060101ALI20240319BHJP
【FI】
B23Q15/18
G05B19/404 K
G05B19/4155 V
【審査請求】有
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024017774
(22)【出願日】2024-02-08
(62)【分割の表示】P 2021557467の分割
【原出願日】2019-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】505377326
【氏名又は名称】ディッケル マホ ゼーバッハ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【弁理士】
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【弁理士】
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ブラント
(72)【発明者】
【氏名】イネス シュミット
(72)【発明者】
【氏名】イザベラ グレーデ
(72)【発明者】
【氏名】ジャニーン グレンツェル
(72)【発明者】
【氏名】クリスチャン ナウマン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ガイスト
(57)【要約】 (修正有)
【課題】工作機械のマップベースまたはモデルベースの温度補償を簡単に効率的に正確にユーザフレンドリーに行う工作機械の温度補償を提供すること。
【解決手段】本発明は、数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償するための方法および装置に関するものであり、前記工作機械の熱弾性挙動を記述する特性マップが、前記工作機械の制御システムに提供され、前記工作機械上の1つ以上の温度センサによって1つ以上の温度値が決定され、前記工作機械の前記制御システムにおいて、決定された前記1つ以上の温度値および提供された前記特性マップに基づいて、1つ以上の補償パラメータが決定され、決定された1つ以上の補償値に従って、前記工作機械の温度に依存した位置の変化が実行される。本発明によれば、提供される前記特性マップは、コンピュータ上で動作するニューラルネットワークによって調整または更新される。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償するための方法であって、
前記工作機械の制御装置において前記工作機械の温度挙動、特に熱弾性挙動、を記述する特性マップを提供すること、
前記工作機械上の1つ以上の温度センサによって1つ以上の温度値を決定すること、
決定された前記1つ以上の温度値および提供された前記特性マップに基づいて、前記工作機械の前記制御装置において1つ以上の補償パラメータを決定すること、
決定された1つ以上の補償値に従って、前記工作機械の温度に依存した位置変化を補償すること、を備え、
コンピュータ実施ニューラルネットワークによって、提供された前記特性マップを適応させることを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記ニューラルネットワークのための入力データは、前記工作機械の動作中、特に前記工作機械の作業プロセス中にリアルタイムで決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ニューラルネットワークのための入力データは、前記工作機械のセンサからのセンサデータ及び/又は前記工作機械のセンサからのセンサデータから算出された入力データを含むことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ニューラルネットワークの出力データは、前記特性マップを適応又は更新すること及び/又は前記ニューラルネットワークの出力データは、適応された又は更新された特性マップを指定することを特徴とする、請求項1ないし請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記特性マップを適応させることは、
前記制御装置に現在提供されている前記特性マップの少なくとも一部を前記ニューラルネットワークに読み込むこと、
特に前記工作機械のセンサからのセンサデータを含む入力データを、前記ニューラルネットワークに読み込むこと、
前記ニューラルネットワーク上の適応又は更新された特性マップの少なくとも一部のネットワーク構造を決定すること;及び/又は
前記特性マップを適応させることは、前記ニューラルネットワークに基づいて前記特性マップの1つ以上の係数を変更することを含むこと、を備えることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記制御装置に提供される前記特性マップが、決定された前記ネットワーク構造に基づいて適応または更新されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
提供された前記特性マップを適応させることは、前記コンピュータ実施ニューラルネットワークによって、特に一定の間隔で、繰り返し行われることを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に提供された前記特性マップを制御することを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記工作機械の前記1つ以上の温度センサのセンサ値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記ニューラルネッ
トワークに送信されることを特徴とする、請求項1ないし請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記工作機械の1つ以上の位置センサのセンサ値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記ニューラルネットワークに送信されることを特徴とする、請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記工作機械の前記1つ以上の位置センサが、前記工作機械の直線軸及び/又は回転軸の感知された実際値を出力することを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記工作機械の直線軸及び/又は回転軸の目標値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記制御装置から前記ニューラルネットワークに送信されることを特徴とする、請求項1ないし請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記工作機械上で実行される位置測定方法の位置測定値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データ及び/又は出力データとして、前記ニューラルネットワークに送信されることを特徴とする、請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記位置測定方法が、1つ以上の測定プローブによって前記工作機械上で実行され、
前記位置測定方法が、1つ以上の電磁気測定装置によって前記工作機械上で実行され、及び/又は、
前記工作機械上の前記位置測定方法が、1つ以上の光学測定装置によって、特にレーザー測定装置及び/又はカメラ装置によって実行されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記工作機械の前記熱弾性挙動を記述する前記特性マップが、前記工作機械の1つ以上のFEモデルに基づいて提供されることを特徴とする、請求項1ないし請求項14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に統合されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に接続された制御コンピュータに統合されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に接続された中央サーバに統合されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記中央サーバは、複数の工作機械の制御装置に接続されていることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記中央サーバが複数のニューラルネットワークを有し、各ニューラルネットワークが工作機械の1つに関連づけられ、前記複数のニューラルネットワークが互いに通信することを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記特性マップの特性マップエントリに基づいて変位マップを決定することを特徴とする、請求項1ないし請求項20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償するための制御システムであって、
前記工作機械の制御装置と、
コンピュータ実施ニューラルネットワークと、を備え、
前記工作機械の前記制御装置において前記工作機械の温度挙動、特に熱弾性挙動、を記述する特性マップが提供され、
前記工作機械の前記制御装置は、前記工作機械上の1つ以上の温度センサ及び提供された前記特性マップによって決定された、1つ以上の温度値に基づく1つ以上の補償パラメータを決定し、1つ以上の決定された補償値に従って前記工作機械の温度に依存した位置変化を補償するように構成され、及び、
前記コンピュータ実施ニューラルネットワークは、提供された前記特性マップを適応させるように構成される、制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償するための方法および装置に関し、特に、特性マップに基づいて数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償または補正するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、工作機械上で工作物を機械加工するとき、工作機械に熱的に誘発される位置誤差が加工精度に大きな影響を及ぼすことが知られている。したがって、原則として、とりわけ工作物を機械加工する場合、工作機械上の温度に関連した位置変化を低減するか、または、例えば、機械制御における能動的な温度制御及び/又は補償によって、機械加工精度に対するそれらの影響を低減することが望ましい。
【0003】
ここで、1つの選択肢は、工作機械への温度の影響を低減するために、工作機械または工作機械の環境を積極的に温度制御または冷却することである;例えば、独国特許出願公開第102014202878号を参照されたい。
【0004】
また、他の選択肢は、機械制御における機械軸の位置目標値の温度依存補正など、機械制御における補償である。従来技術では、これは例えば、工作機械の温度センサで温度を測定し、測定された温度を使用して、計算式によって補正パラメータを計算し、機械制御において目標軸の位置をリアルタイムで補正または適応させることで可能になっていた;例えば、独国特許出願公開第102010003303号を参照されたい。
【0005】
さらに、独国特許出願公開第102015115838号では、ニューラルネットワークを有する評価ユニットを備えた処理機械上で温度補償を実行することが提案されている。
【0006】
工作機械の機械制御における機械軸の位置目標値の温度依存補正のより新しい方法は、工作機械における位置変化のいわゆるマップベース補正または補償である。例えば、C.Naumann、Fraunhofer Institute for Machine
Tools and Forming Technology -IWU-、Chemnitz; Verbundinitiative Maschinenbau Sachsen -VEMAS-、Chemnitzによる論文“Kennfeldbasierte Korrektur thermischer Positionierfehler an Werkzeugmaschinen” : Digitalisierung in der Produktion. 3rd Saxon Day of Automation 2017: March 9th, 2017.を参照されたい。
【0007】
上記の論文では、特性マップに基づいた工作機械上の熱位置決め誤差の補正について述べている。この論文の「要約」では『工作機械の熱による位置決め誤差は、加工精度、ひいては工作機械の製品品質や収益性に大きな影響を及ぼし得る。熱による誤差は、機械の全誤差の最大75%を占めることもある。これらの誤差を低減するためのアプローチは、建設的な対策から、膨張係数の低い材料の使用、モデルベースの熱誤差の補正まで多岐にわたる。熱弾性誤差を低減するために産業界で行われている対策は、例えば、工作機械の熱対称設計や機械の熱的安定状態をもたらすことである。この目的のために、機械は通常、熱源の領域で冷却されるか、熱的に安定する(「動作温度」に達する)まで温められる
。また、環境を一定の状態にするために空調を行うこともある。これらの方法では、必要なエネルギーが大幅に増加し、結果として収益性が低下する。エネルギー需要の増加を伴わないモデルベースのアプローチとして、産業部門では相関補正が使用されている。相関モデルは、機械構造内の選択された温度測定点と動作点(ツールセンタポイントTCP)の変位を仲介する。マップベースの補正は、このような相関的なアプローチを表している。特性マップを用いて、工作機械の表面上の温度と現在の軸構成が、TCP変位に直接マッピングされる。特性マップは、測定または熱弾性シミュレーションからのデータで教示することができ、次いで、プロセス中に制御に統合されてオンラインで使用することができる。この論文では、熱弾性補正および補償戦略の概要を説明した後、マップベースの補正を提示する。この方法の手順とメリット・デメリットを論じ、最後に、この方法の機能性をデモ機で実験的に証明する。』と述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102014202878号
【特許文献2】独国特許出願公開第102010003303号
【特許文献3】独国特許出願公開第102015115838号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】C.Naumann、 “Kennfeldbasierte Korrektur thermischer Positionierfehler an Werkzeugmaschinen”、 Digitalisierung in der Produktion、 3rd Saxon Day of Automation 2017: March 9th, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
工作機械の温度補償を簡単に、効率的に、正確に、及び/又はユーザフレンドリーに行うという基本的なニーズと、上述の従来技術による工作機械のマップベースまたはモデルベースの温度補償の利点から、本発明の目的は、工作機械の改良された温度補償を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために独立請求項によれば、数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償するための方法および装置が提案される。従属請求項は、好ましいまたは特に好都合な例示的実施形態に関するものである。
【0012】
例示的な態様によれば、数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償するための方法が提案され、前記方法は、前記工作機械の制御装置上に前記工作機械の温度挙動を記述する特性マップを提供すること、前記工作機械上の1つ以上の温度センサによって1つ以上の温度値を決定すること、決定された前記1つ以上の温度値および提供された前記特性マップに基づいて、前記工作機械の前記制御装置上の1つ以上の補償パラメータを決定すること、決定された1つ以上の補償値に従って、前記工作機械の温度に依存した位置変化を補償すること、を含む。
【0013】
本発明によれば、数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償する方法、特にマップに基づく方法は、提供される特性マップ(または特性曲線マップ)がコンピュータ実施ニューラルネットワーク(computer-implemented neural network)によって
適応され、温度補償は特にニューラルネットワークを介して直接的にではなく、特性マップによって実行されることを特徴とする。
【0014】
換言すれば、本発明によれば、機械制御における温度補償が特性マップに基づいて実行され(すなわち、工作機械上の熱位置決め誤差のマップベースの補正)、そのマップがニューラルネットワークによって少なくとも1回または数回適応されることが特に好ましく提案される。
【0015】
これは、提供された特性マップに基づいて、工作機械の制御において、温度補償を効率的かつユーザフレンドリーに、またリアルタイムで極めて迅速かつ正確に行うことができるという相乗的な利益を有しており、例えば、FEシミュレーションに基づいて作成された特性マップは、要求に応じて、ニューラルネットワークを訓練することによって、または既に訓練されたニューラルネットワークによって最適化することができる。
【0016】
本発明によれば、数値制御された工作機械の温度挙動を記述する特性マップを適応させるための方法が、前記工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償する際に使用する例として提案されてもよく、前記方法は、コンピュータ実施ニューラルネットワークによって、提供された前記特性マップを適応させることを含む。
【0017】
本発明のさらなる例示的な態様または例示的な実施形態および好ましい実施形態を以下に説明する。
【0018】
好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークのための入力データは、前記工作機械の動作中、特に前記工作機械の作業プロセス中にリアルタイムで決定されてもよい。
【0019】
好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークのための入力データは、前記工作機械のセンサからのセンサデータ及び/又は前記工作機械のセンサのセンサデータから算出された入力データを含んでもよい。
【0020】
好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークの出力データは、前記特性マップを適応又は更新することができる。さらに好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークの出力データは、適応された又は更新された特性マップを指定してもよい。
【0021】
好ましい例示的な実施形態では、前記特性マップを適応させることは、前記制御装置に現在提供されている前記特性マップの少なくとも一部を前記ニューラルネットワークに読み込むこと;特に前記工作機械のセンサからのセンサデータを含む入力データを、前記ニューラルネットワークに読み込むこと;及び/又は前記ニューラルネットワーク上の適応又は更新された特性マップの少なくとも一部のネットワーク構造を決定することを備えていてもよい。
【0022】
好ましい例示的な実施形態では、前記制御装置に提供される前記特性マップが特に、決定された前記ネットワーク構造に基づいて適応または更新されてもよい。
【0023】
好ましい例示的な実施形態では、提供された前記特性マップを適応させることは、前記コンピュータ実施ニューラルネットワークによって、特に好ましくは一定の間隔で、繰り返し行われてもよい。
【0024】
好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に提供された前記特性マップを制御してもよい。
【0025】
好ましい例示的な実施形態では、前記工作機械の前記1つ以上の温度センサのセンサ値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記ニューラルネットワークに送信されてもよい。
【0026】
好ましい例示的な実施形態では、前記工作機械の1つ以上の位置センサからのセンサ値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記ニューラルネットワークに送信されてもよい。
【0027】
好ましい例示的な実施形態では、前記工作機械の前記1つ以上の位置センサが、前記工作機械の直線軸及び/又は回転軸の感知された実際値を出力してもよい。
【0028】
好ましい例示的な実施形態では、前記工作機械の直線軸及び/又は回転軸の目標値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記制御装置から前記ニューラルネットワークに送信されてもよい。
【0029】
好ましい例示的な実施形態では、前記工作機械上で実行される位置測定方法の位置測定値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記ニューラルネットワークに送信されてもよい。
【0030】
好ましい例示的な実施形態では、前記位置測定方法が、1つ以上の測定プローブによって前記工作機械上で実行されてもよい。さらに、追加的または代替的に、前記位置測定方法が、1つ以上の電磁気測定装置によって、及び/又は、1つ以上の光学測定装置によって、特にレーザー測定装置及び/又はカメラ装置によって、前記工作機械上で実行されてもよい。
【0031】
好ましい例示的な実施形態では、前記工作機械の前記温度挙動を記述する前記特性マップが、前記工作機械の1つ以上のFEモデル及び/又はFEシミュレーションに基づいて提供されてもよい。
【0032】
好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に統合されてもよい。
【0033】
好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に接続された制御コンピュータに統合されてもよい。
【0034】
好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に接続された中央サーバに統合されてもよい。
【0035】
好ましい例示的な実施形態では、前記中央サーバは、複数の工作機械の制御装置に接続されてもよい。
【0036】
好ましい例示的な実施形態では、前記中央サーバが複数のニューラルネットワークを含んでもよい。各ニューラルネットワークは好ましくは工作機械の1つに関連づけられてもよく、及び/又は前記複数のニューラルネットワークは互いに通信してもよい。
【0037】
好ましい例示的な実施形態では、本方法が、前記特性マップ(複数可)の特性マップエントリに基づいて変位マップを決定することをさらに備えていてもよい。
【0038】
さらなる態様及びそれらの利点、並びに、上述した態様及び特徴の利点及びより具体的な実装オプションは、以下の説明及び添付図の説明と共に述べられるが、これらに決して
限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明の例示的な実施形態による、工作機械上の温度補償のための特性マップKFの概略的な例示的図を示す。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による、工作機械上の温度補償のための複数の特性マップの概略的な例示的図を示す。
【
図3】工作機械上の温度補償のためのマップベースの方法の概略図を示す。
【
図4】工作機械上の温度補償のためのマップベースの方法のための特性マップを更新するためのニューラルネットワークの適用の概略図を示す。
【
図5】一例として、本発明の例示的な実施形態による、1つ以上の工作機械上の1つ以上の特性マップを適応させるためのシステムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下では、本発明の例または例示的な実施形態について、添付の図を参照して詳細に説明する。図中の同一または類似の要素は、同じ参照記号で示されることがあるが、時には異なる参照記号で示されることもある。
【0041】
本発明は、以下に説明する例示的な実施形態およびその実施上の特徴に決して限定または制限されるものではなく、むしろ、例示的な実施形態の変更、特に、説明した実施例の特徴の変更を介して、または説明した実施例の特徴の個々のものもしくは複数のものの組み合わせを介して、独立請求項の保護範囲に含まれるものも含まれることに留意されたい。
【0042】
工作機械における熱弾性効果は、現在、工作機械上の位置決め誤差の主な原因の一つとなっている。摩擦や加工プロセスに起因する入熱に加えて、環境との熱交換も無視できない。これらの熱の流れと、その結果としての温度や変形マップを求めるには、流体力学と構造力学の複雑な結合シミュレーションが必要になることがある。特に、2つのシミュレーションを結合することで、周囲の条件、つまり熱伝達係数が常に変化するため、可動部品を用いた過渡的なシミュレーション計算が困難になる。
【0043】
工作機械の熱原因による位置誤差を低減させるために産業界で広く行われている対策は、機械の熱的に安定した状態をもたらすことである。この目的のために、機械は通常、熱的に安定する(すなわち、「動作温度」に達する)まで、熱源の領域で冷却または暖機され得る。また、環境を一定の状態にするために空調を行うことも考えらる。これらのアプローチは、エネルギー需要を大幅に増加させ、その結果、収益性を低下させる。
【0044】
一方で、モデルベースまたはマップベースの補正アプローチは、追加のエネルギー投入を必要としない。相関補正は、モデルベースのアプローチとして産業分野で使用されている。マップベースのモデルは、通常、機械構造内の選択された温度測定点と、動作点、例えば工具位置(しばしばツールセンタポイント又はTCPとも呼ばれる)での変位との間を仲介する。
【0045】
マップベースの補正法が最近提案されており、例えば、C.Naumann、Fraunhofer Institute for Machine Tools and Forming Technology -IWU-、Chemnitz; Verbundinitiative Maschinenbau Sachsen -VEMAS-、Chemnitzによる論文“Kennfeldbasierte Korrektur thermischer Positionierfehler an Werkzeugmaschinen” : Digitalisierung in der P
roduktion. 3rd Saxon Day of Automation 2017: March 9th, 2017.を参照されたい。
【0046】
特性マップに基づく補正方法の場合、温度補償は、機械の温度挙動を示す少なくとも1つの特性マップに基づいている。
【0047】
特性マップはデータ構造、特に回帰モデルとしてみることができ、マップは、1つ以上の入力変数から1つ以上の出力変数へのマッピングを示し又は表している。入力変数から出力変数へのマッピングの場合、特性曲線と呼ぶこともできる。
【0048】
特性曲線とは、例えば、コンポーネント、アセンブリ、またはデバイスの性質である2つの相互に依存する物理量をグラフ化したものである。特性曲線は、2次元座標系における曲線として表示されてもよい。
【0049】
特性曲線マップ、または略して特性マップは、例えば、複数の特性マップの形態で、または3次元座標系で、さらなる入力変数の関数としての複数の特性マップを表してもよい。
【0050】
特性曲線の例としては、ダイオードを流れる電流の電圧依存性が挙げられる。さらにダイオードの温度をパラメータとして加えると、ある温度に関連した複数の電流-電圧特性曲線からなる特性曲線マップとなる。制御工学では、特性曲線がシステムの静的挙動を記述する。実際には、特性曲線はとりわけ、動作点を定義するため、特性曲線のある点における線形近似を決定するために使用される。また、部品の電力損失を判定したり、センサによって出力される信号を補正したりするために使用されることもある。
【0051】
マップベースの補正または温度補償の場合、特性マップは、一組の入力変数を1次元変位または1次元補償パラメータに連続的にマッピングしたものとして理解することができる。最も重要な入力変数は通常、機械構造上および機械構造内の温度(例えば、機械ベッド上、工作機械の可動部品上、工作機械の回転可能または旋回可能な部品上など、機械構造内のセンサ位置に配置された1つ以上の温度センサによって記録または測定されたもの)、および、任意に機械軸の位置データである。
【0052】
いくつかの例示的な実施形態における変位補正では、位置の変化(例えば、TCPの位置の温度依存性の変化)に対する3次元または6次元の補正ベクトルが探されることがあるので、これらの補正方向のそれぞれに対して別個のマップが作成されてもよいし、または複数の出力変数を有する多次元マップが提供されてもよい。
【0053】
さらなる例示的な実施形態では、位置の変化そのものの代わりに、1つ以上の代替変数を出力変数として使用し、これらを下流のモデルを使用して、必要に応じて変位に変換することが可能である。
【0054】
例示的な実施形態は、産業界におけるニューラルネットワークと連携した特性マップの新たな適用に関するものである。
【0055】
当面の間、機械または工作機械は、例示的な実施形態において、FEメッシュの助けを借りて表されてもよい。
【0056】
先に使用されたセンサデータまたはセンサ値(例えば、温度値)に加えて、制御からのデータまたはパラメータも、さらなる例示的な実施形態において、FE解析に使用されてもよい。
【0057】
そのような制御データは、例えば、制御(例えば、駆動制御:電流制御、速度制御、位置制御)、監視、診断及び/又はモータ、メカニクス及び/又は位置検出(例えば、工作機械の駆動装置のモータ電流又はモータ電力)からのデータであってもよい。
【0058】
いくつかの例示的な実施形態によれば、機械または工作機械の1つ以上のFEモデルの解析から開始する、データ処理方法またはコンピュータベースのシミュレーションにおいて、機械の完全分析は、好ましくは機械または工作機械の温度挙動を記述する1つ以上の特性マップを生成または計算してもよい。
【0059】
さらなる例示的な実施形態では、FEMベースのシミュレーションに基づく1つ以上の特性マップの計算に加えて、またはその代替として、工作機械のコンピュータシミュレーション(いわゆる仮想工作機械またはいわゆるデジタルツイン)に基づいて、特性マップを計算し、決定し、及び/又は適応させてもよい。加えて又は代替的に、特性マップは、テスト動作における工作機械上の実験的決定に基づいて決定及び/又は適応されてもよい。
【0060】
ここで、特性マップは、回帰モデルとして、及び/又は、補間法または外挿法と組み合わせて使用することができるn次元マッピングの一例である。
【0061】
いくつかの例示的な実施形態では、特性は、テーブルまたはマトリックスの形態であってもよく、可能な入力データ(例えば、1つ以上の入力変数)のための出力データ(例えば、1つ以上の出力変数)を指定してもよく、または1つ以上の入力変数値を1つ以上の出力変数値にマッピングしてもよい。
【0062】
例えば、工作機械上の温度センサからの1つ以上の温度値を示してもよい、温度情報を示す入力データに加えて、さらなる入力データまたは入力変数が使用されてもよい。また、入力データまたは入力変数は、工作機械上及び/又は工作機械に隣接する空気湿度センサ及び/又は空気圧センサからの測定値を含んでもよい。
【0063】
さらに、入力データまたは入力変数は、位置センサの値(例えば、直線軸、回転軸、および旋回軸などの工作機械の可動部品上の位置測定器からの値)及び/又は機械制御から取得されたパラメータを含んでもよい。
【0064】
機械制御から取得された、または機械制御によって決定もしくは評価されたパラメータは、例えば、工作機械の軸の目標位置値、工作機械の軸の決定された実際の位置値、速度(例えば、スピンドル速度)、モータ電流、モータ電力などを含んでもよい。
【0065】
さらに、他のセンサ値を入力変数として使用してもよい。例えば、圧力測定値(例えば、工作機械の油圧及び/又は空圧システムの圧力値、工作機械の冷却回路システムの圧力値など)、揺動または振動測定値(例えば、振動または揺動センサからの)、力測定値(例えば、力センサ、歪みゲージセンサなどからの)、トルク測定値(例えば,トルクセンサからの、または力測定値に基づく計算からの)、アクティブパワー値、加速度測定値(例えば、加速度センサからの)、構造体伝搬音測定値(例えば、構造体伝搬音センサからの)などである。
【0066】
いくつかの例示的な実施形態では、温度変位の制御中補償のための補正項または1つ以上の補正パラメータが、入力された入力変数に基づいて、例えば、センサ及び/又は制御中データを評価することによって、時間的に離散した区間で繰り返しまたは周期的に機械制御に転送されてもよい。ここで、機械制御は、転送された補正項または1つ以上の補正
パラメータを使用して、例えば、転送された補正項または1つ以上の補正パラメータに基づいて、工作機械の1つ以上の可動部品(例えば、工作機械の直線軸、回転軸、及び/又は旋回軸)の目標位置を適応させることによって、温度補償を実行してもよい。
【0067】
例示的な実施形態によれば、好ましくは、新しいデータを使用して特性マップ(複数可)を更新することができるニューラルネットワーク構造も実装される。
【0068】
ニューラルネットワークのための新しい訓練データまたは入力データは、好ましくは、工作機械上での実際のプロセスまたは動作中(例えば、工作機械上での、実験的なテスト動作中及び/又は実際の加工プロセス中)から決定されてもよく、追加的または代替的に、ニューラルネットワークのための新しい訓練データまたは入力データは、例えば仮想工作機械上及び/又は工作機械のデジタルツインに基づいて、工作機械のコンピュータ実施シミュレーション(computer-implemented simulation)から決定されてもよい。
【0069】
FE解析、工作機械のコンピュータシミュレーション(仮想工作機械またはデジタルツイン)、及び/又は工作機械の実験的動作からの既存のデータと組み合わせて、ニューラルネットワークを使用して、特性マップ(複数可)を更新または適応または最適化する新しいデータを生成してもよい。
【0070】
例示的な実施形態では、ニューラルネットワークが工作機械上の実際の温度補償方法に直接影響を与えないことが特に好ましい。なぜなら、工作機械上の実際の温度補償方法は、好ましくは1つ以上の特性マップに基づいて機械制御で実行され、特性マップ(複数可)は、ニューラルネットワークによって1回または複数回、あるいは繰り返し適応または最適化されてもよいからである。
【0071】
ニューラルネットワークは、好ましくは、マップベースの補正に直接的な影響を及ぼさないが、特性マップ(複数可)を制御または影響し、したがって、温度補正に間接的な影響を及ぼすだけである。マップベースの補正は、特に好ましくは、1つ以上の特性マップに基づいて工作機械上で実施され、特性マップ(複数可)は、ニューラルネットワークによって適応または最適化される。
【0072】
いくつかの例示的な実施形態では、更新のためのニューラルネットワークの入力データは、工作機械の設置場所で記録されてもよく、特性マップ(複数可)の自動更新が可能である。
【0073】
1つの利点は、変動する影響に対して耐性があることである。加えて、本発明は、例えば新しい設置場所での新しい環境条件に対する機械または機械動作の適応を著しく改善することができる。さらに、変位誤差をさらに低減することができ、より高い製造精度が可能になるという利点もある。
【0074】
いくつかの例示的な実施形態の基礎は、工作機械の温度挙動を記述する1つ以上の特性マップを提供することである。これは、例えば、入力データまたは入力変数(例えば、温度、軸位置など)の選択、入力変数の限界値(例えば、温度、位置の;最大値及び/又は最小値)の定義、入力変数の離散化(例えば、特性マップグリッドの定義)、コアまたは基本関数(「カーネル関数」)の選択、センサの最適化、及び/又はデータの収集などを含むことができる。
【0075】
いくつかの例示的な実施形態では、1つ以上の特性マップ(複数可)は、データ処理プロセスまたはシミュレーション(例えば、FEまたはFEMシミュレーションまたは解析)に基づいて(例えば、最小二乗法に基づいて)計算されてもよい。いくつかの例示的な
実施形態では、1つ以上の特性マップは、追加的または代替的に、仮想工作機械上のデータ処理プロセスまたはシミュレーションに基づいて、または工作機械のデジタルツインに基づいて、及び/又はテスト動作における工作機械上の実験的決定に基づいて、計算または決定されてもよい。
【0076】
次に、1つ以上の計算された又は決定された特性マップ(複数可)が、例えば、特性マップ(複数可)を機械制御に転送することによって提供されてもよい。
【0077】
ニューラルネットワークによる特性マップ(複数可)の適応のために、特性マップ(複数可)または特性マップ(複数可)内のエントリは、ニューラルネットワークの入力データとして機械制御からニューラルネットワークに転送されてもよく、特性マップ(複数可)またはその少なくとも一部はニューラルネットワークに読み込まれてもよい。さらに、新しいデータまたは入力変数が、工作機械、工作機械のセンサ、及び/又は工作機械の機械制御から読み込まれてもよい。好ましくは、特性マップ(複数可)及び/又は特性マップ(複数可)の少なくとも1つ以上のエントリは、その後、ニューラルネットワークのネットワーク構造に基づいて更新または適応される。
【0078】
好ましい例示的な実施形態では、ニューラルネットワークのネットワーク構造は、放射基底関数及び/又は他の補間関数(例えば、線形および非線形回帰法)に基づいている。
【0079】
例示的な実施形態による継続的に学習する補償アルゴリズムは、好ましくは、ニューラルネットワーク及び/又は補間関数(例えば、線形及び/又は非回帰法、放射基底関数、多項式基底関数など)に基づいている。さらに、補間関数のための補間サポート点(interpolation supporting points)の独立した適応のために、遺伝的アルゴリズムが統合されてもよい。
【0080】
特性マップ(複数可)を適応または最適化するためのニューラルネットワークは、例えば、データベース、測定データ及び/又はシミュレーションデータに基づくデータ取得によって(例えば、仮想工作機械上のシミュレーションに基づいて、または工作機械のデジタルツインに基づいて、合成入力変数を生成することによって)、学習アルゴリズムを含んでもよい。
【0081】
本発明の例示的な実施形態は、好ましくは、特にニューラルネットワークによって、機械構造の熱的に誘発された変位のマップベースのエラー記述に基づいて、補償アルゴリズムを連続的に学習する方法に関するものである。
【0082】
補償方法の連続的な拡張は、特に好ましくは、機械加工中の工作機械の荷重ケース(load case)の記述、及び/又は工作機械の可動部品もしくは軸の位置設定に関するものである。
【0083】
好ましい例示的な実施形態では、処理方法は制御において自律的に認識されてもよく、例えば、異なる処理方法に対してそれぞれ対応する特性マップを提供し、ニューラルネットワークによってそれらを適応または最適化することによって、適切な特性マップを用いて補正されてもよい。
【0084】
さらに、さらなる例示的な実施形態では、制御へのフィードバックを改善するために、センサの配置を適応または最適化してもよい。これはまた、改善されたセンサ配置を介して、予測的な状態推定を可能にする。
【0085】
図1は、本発明の例示的な実施形態による、工作機械上の温度補償のための特性マップ
KFの概略的な例示図である。
【0086】
特性マップKFは、入力変数として、工作機械のn個の温度センサからのi=1,…,n個の複数の温度測定値Tiと、工作機械の位置センサからのj=1,...,m個の複数
の位置測定値Xjとを組み込むような方法で例示的に提供される。位置測定値Xjは、好ましくは、工作機械のm個の可動部品、例えば工作機械のm個の可動軸の、位置(例えば、測定された実際の位置)を示す。位置計測値の代わりに、または位置計測値に加えて、機械制御からの位置目標値または軸目標値を使用することもできる。
【0087】
出力変数として、特性マップKFは、例えば、補正パラメータKPを出力し、この補正パラメータKPは、工作機械の熱的に誘発された位置変化を補正または補償するために、目標位置を適応させるための補正値または補償値として、機械制御において使用されてもよい。
【0088】
さらなる例示的な実施形態において、特性マップは、単に、入力変数として工作機械のn個の温度センサからのi=1,...,nの複数の温度測定値Tiを定義するだけであっ
てもよい(例えば、入力変数として位置測定値がない)。
【0089】
さらに、1つ以上の特性マップを用いて複数の補正パラメータを決定し、さらに入力変数を定義してもよい。
【0090】
図2は、本発明の例示的な実施形態による工作機械の温度補償のための複数の特性マップKF1、KF2、KF3、…の概略的な例示図である。
【0091】
特性マップKF1、KF2、KF3、...は、一例として、工作機械のn個の温度セン
サからのi=1、...、n個の複数の温度測定値Tiと、工作機械の位置センサからのj
=1、...、m個の複数の位置測定値Xjとが入力変数として組み込まれるように提供さ
れる。位置測定値Xjは、好ましくは、工作機械のm個の可動部品、例えば工作機械のm個の可動軸の、位置(例えば、測定された実際の位置)を示す。
【0092】
加えて、または代替として、機械制御のさらなるセンサ値及び/又はパラメータが、工作機械の可動部品(例えば、工作機械の直線軸、回転軸及び/又は旋回軸)の速度に関する速度値Xjのように、入力変数として読み取られてもよい。速度値Xjは、好ましくは、工作機械のm個の可動部品(例えば、工作機械のm個の可動軸)の速度を(例えば、測定された実際の位置の時間依存性によって)示す。加えて、または代替として、加速度値または加速度測定値も入力変数として組み込むことができる。
【0093】
加えて、または代替として、回転速度値ωk(例えば、スピンドル速度、アクスルドライブなどのモータ速度または駆動速度)、圧力値Pq(例えば、空気圧などの圧力測定値、工作機械の空気圧システムの圧力値、工作機械の油圧システムの圧力値、工作機械の冷却システムの圧力値)、および例えば湿度測定値など、機械制御のさらなるセンサ値及び/又はパラメータが入力変数として読み込まれてもよい。
【0094】
特性マップKF1、KF2、KF3はそれぞれ、一例として、それぞれの補正パラメータKP1、KP2、KP3を出力変数として出力し、これらの補正パラメータKP1、KP2、KP3は、1つ以上の目標位置を適応させるためのそれぞれの補正値または補償値として、工作機械の熱的に誘発された位置変化の補正または補償のために、機械制御において使用され得る。ここで、それぞれの補正パラメータKP1、KP2、KP3は、それぞれ、工作機械の個々の軸に対して使用可能な補正パラメータを指定してもよいし、また、個々の直交方向の補正パラメータを指定してもよい。また、それぞれ1つの出力変数を
有する特性マップKF1、KF2、KF3は、出力変数ベクトルが出力可能な多次元の出力変数空間を有する多次元特性マップとして理解または提供されてもよい。
【0095】
図3は、工作機械における温度補償のためのマップベースの方法の概略図である。
【0096】
ステップS301では、例えば、工作機械の温度挙動を示すまたは記述する1つ以上の特性マップが、工作機械の機械制御上に提供される。特性マップ(複数可)は、FEモデルベースのシミュレーションまたは解析で生成されたものであってもよく、好ましくは、保存されたデータ構造として(例えば、ルックアップテーブルまたはルックアップマトリクスとして)機械制御上に提供される。
【0097】
ステップS302では、入力データまたは入力変数が、例として工作機械上で決定される。これは好ましくは、工作機械の温度センサから温度測定値を読み取ることを含む。さらに、これは、工作機械の可動部品(例えば、可動軸)の実際の位置に関連する位置データを、例えば、機械制御から、または工作機械の位置測定センサから読み取ることを含んでいてもよい。さらに、追加のセンサデータや制御データを読み取ってもよい(上記参照)。
【0098】
ステップS303では、例えば、入力データまたは入力変数に基づいて、また提供された特性マップ(複数可)に基づいて、例えば特性マップ(複数可)の直接的な出力変数(複数可)として、及び/又は特性マップ(複数可)の出力変数(複数可)に基づくさらなる計算から、1つ以上の補正パラメータまたは補償パラメータが決定される。
【0099】
ステップS304では、例えば、決定された1つ以上の補正パラメータまたは補償パラメータに基づいて、機械制御において、工作機械上の位置の熱変化に対する温度補償または補正が実行される。
【0100】
ステップS302~S304は、好ましくは、温度補償を繰り返すために、例えば、周期的に、準連続的に(例えば、機械制御のクロック周波数に依存するクロック周波数で離散的に)、定期的に、所定のタイミングで、温度変化が検出されたときなどに、繰り返されてもよい。
【0101】
図4は、工作機械におけるマップベースの温度補償方法の特性マップを更新するためのニューラルネットワークの適用例を示す概略図である。
【0102】
ステップS401では、特性マップの入力変数が、一例として(例えば、機械制御から、または工作機械のセンサからセンサ値の直接送信を介して)読み込まれる。好ましくは、更新される特性マップの入力変数の一部または全部が読み込まれる。また、さらなる入力変数を読み取ることも可能である。代替的または追加的に、工作機械のコンピュータ実施シミュレーション(例えば、仮想工作機械上または工作機械のデジタルツインに基づいて)からセンサデータを生成することもできる、いわゆる合成的に生成されたセンサデータである。
【0103】
ステップS402では、一例として、特性マップ(複数可)または特性マップの少なくともエントリが読み出される。この目的のために、機械制御上で現在提供されている、または保存されている特性マップ、またはその少なくとも一部が読み出される。
【0104】
ステップS403では、一例として、追加の訓練データが任意に読み出される。ニューラルネットワークを訓練するためのそのような訓練データは、例えば、実際の位置と目標位置とを機械制御における追加の位置測定値と比較するために、例えば、工具の代わりに
追加的にクランプされた位置測定装置(例えば、測定プローブによる)を用いて、及び/又は追加的な位置測定装置(例えば、レーザー測定、カメラ測定などによる)を用いて、工作機械上の訓練ステップにおいて温度補償が実行される場合に、実際に測定された位置データを含んでもよい。
【0105】
代替的または追加的に、訓練データはまた、工作機械のコンピュータ実施シミュレーション(例えば、仮想工作機械上または工作機械のデジタルツインに基づいて)から生成されてもよく、または複数の工作機械からの履歴処理データを収集するデータベースから検索されてもよい。
【0106】
さらに、訓練データは、制御データから読み取ったデータを含んでいてもよい。
【0107】
ステップS404では、ニューラルネットワーク(例えば、訓練動作後または訓練動作中)、すなわち、例えば、訓練または既に訓練されたニューラルネットワークを使用して、提供された入力データ及び/又は特性マップ(複数可)に基づいて、ならびに場合によっては任意選択的に利用可能な訓練データに基づいて、読み取られた特性マップ(複数可)を少なくとも部分的に適応または更新してもよい。
【0108】
ステップS405では、適応または更新された特性マップ(複数可)、又は適応または更新されたエントリが機械制御に提供される。したがって、
図3による温度補償では、適応または更新された特性マップ、又は複数の適応または更新された特性マップが機械制御で提供されてもよい(例えば、
図3のステップS301として、または
図3のステップS302からS304の繰り返しの間にも)。
【0109】
図5は、一例として、本発明の例示的な実施形態による、1つ以上の工作機械上の1つ以上の特性マップを適応させるためのシステムを概略的に示す。
【0110】
本システムは、例えば、プロセッサ101と、プロセッサ101によって実行可能なニューラルネットワークNNが実装または格納された記憶装置102と、を有するサーバ100を備える。
【0111】
サーバ100は、一例として、通信ネットワーク200(例えば、LAN、WLAN、あるいは、インターネット)を介して、工作機械400の制御装置300に接続されている。工作機械400は、好ましくは、一例として、アクチュエータ401(例えば、スピンドルドライブ、アクスルドライブなど)と、センサ402(例えば、温度センサ、位置測定センサ、圧力センサ、湿度センサ、加速度センサ、振動センサ、及び/又は力センサなど)とを含む。
【0112】
制御装置300は、例えば、プロセッサ301と、1つ以上の特性マップKFが提供または格納されている記憶装置302とを備える。プロセッサ301は、好ましくは、特性マップ(複数可)KFに基づいて(例えば、上述の態様および例の1つ以上に従って)温度補償を実行するように構成される。
【0113】
例えば、サーバ100のプロセッサ101は、ニューラルネットワークNNを使用して、(例えば、上述の態様および例の1つ以上に従って)制御装置300で特性マップ(複数可)KFを適応または更新するように構成される。
【0114】
さらに、対応する工作機械400’および400”を有するさらなる制御装置300’および300”がサーバ100に接続されることで、ニューラルネットワークNNは、例えば、複数の工作機械(例えば、異なる設置場所で同じ設計のもの)における特性マップ
を適応または更新するために使用されてもよい。
【0115】
本発明の例または例示的な実施形態およびその利点は、添付の図を参照して上記で詳細に説明した。しかしながら、本発明は、上述した例示的な実施形態およびその実施上の特徴に決して限定または制限されるものではなく、むしろ、例示的な実施形態の変更、特に、記載された実施例の特徴の変更を介して、または記載された実施例の特徴の個々のものもしくは複数のものの組み合わせを介して、独立請求項の保護範囲内に含まれるものをさらに含むものであることに再度留意されたい。
【手続補正書】
【提出日】2024-03-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償するための方法であって、
前記工作機械の制御装置において前記工作機械の熱弾性挙動を記述する特性マップを提供し、前記特性マップが、前記工作機械の1つ以上のFEモデルに基づいて提供されること、
前記工作機械上の1つ以上の温度センサによって1つ以上の温度値を決定すること、
決定された前記1つ以上の温度値および提供された前記特性マップに基づいて、前記工作機械の前記制御装置において1つ以上の補償パラメータを決定すること、
決定された1つ以上の補償パラメータに従って、前記工作機械の温度に依存した位置変化を補償すること、
コンピュータに実装されたニューラルネットワークによって、提供された前記特性マップを繰り返し適応させること、を備え、
前記ニューラルネットワークのための入力データは、前記工作機械のセンサからのセンサデータ及び/又は前記工作機械のセンサからのセンサデータから算出された入力データを含む、方法。
【請求項2】
前記ニューラルネットワークのための入力データは、前記工作機械の動作中にリアルタイムで決定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ニューラルネットワークの出力データは、前記特性マップを適応又は更新すること及び/又は前記ニューラルネットワークの出力データは、適応された又は更新された特性マップを指定することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記特性マップを適応させることは、
前記制御装置に現在提供されている前記特性マップの少なくとも一部を前記ニューラルネットワークに読み込むこと、及び
入力データを、前記ニューラルネットワークに読み込むこと;及び/又は
前記特性マップを適応させることは、前記ニューラルネットワークに基づいて前記特性マップの1つ以上の係数を変更することを含むこと、を備えることを特徴とする、請求項
1ないし請求項3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記繰り返しは、一定の間隔で行われることを特徴とする、請求項1ないし請求項4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に提供された前記特性マップを制御することを特徴とする、請求項1ないし請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記工作機械の前記1つ以上の温度センサのセンサ値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記ニューラルネットワークに送信されることを特徴とする、請求項1ないし請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記工作機械の1つ以上の位置センサのセンサ値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記ニューラルネットワークに送信されることを特徴とする、請求項1ないし請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記工作機械の前記1つ以上の位置センサが、前記工作機械の直線軸及び/又は回転軸の感知された実際値を出力することを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記工作機械の直線軸及び/又は回転軸の位置目標値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記制御装置から前記ニューラルネットワークに送信されることを特徴とする、請求項1ないし請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記工作機械上で実行される位置測定方法の位置測定値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記ニューラルネットワークに送信されることを特徴とする、請求項1ないし請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記位置測定方法が、1つ以上の測定プローブによって前記工作機械上で実行され、
前記位置測定方法が、1つ以上の電磁気測定装置によって前記工作機械上で実行され、及び/又は、
前記工作機械上の前記位置測定方法が、1つ以上の光学測定装置によって実行されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に統合されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に接続された制御コンピュータに統合されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に接続された中央サーバに統合されていることを特徴とする、請求項1ないし請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記中央サーバは、複数の工作機械の制御装置に接続されていることを特徴とする、請
求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記中央サーバが複数のニューラルネットワークを有し、各ニューラルネットワークが工作機械の1つに関連づけられることを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記特性マップ内のエントリに基づいて変位マップを決定することを特徴とする、請求項1ないし請求項17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償するための制御システムであって、
前記工作機械の制御装置と、
コンピュータに実装されたニューラルネットワークと、を備え、
前記工作機械の前記制御装置において前記工作機械の熱弾性挙動を記述する特性マップが提供され、前記特性マップが、前記工作機械の1つ以上のFEモデルに基づいて提供され、
前記工作機械の前記制御装置は、前記工作機械上の1つ以上の温度センサ及び提供された前記特性マップによって決定された、1つ以上の温度値に基づく1つ以上の補償パラメータを決定し、1つ以上の決定された補償パラメータに従って前記工作機械の温度に依存した位置変化を補償するように構成され、及び、
前記コンピュータに実装されたニューラルネットワークは、提供された前記特性マップを繰り返し適応させるように構成され、
前記ニューラルネットワークのための入力データは、前記工作機械のセンサからのセンサデータ及び/又は前記工作機械のセンサからのセンサデータから算出された入力データを含む、制御システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償するための方法および装置に関し、特に、特性マップに基づいて数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償または補正するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、工作機械上で工作物を機械加工するとき、工作機械に熱的に誘発される位置誤差が加工精度に大きな影響を及ぼすことが知られている。したがって、原則として、とりわけ工作物を機械加工する場合、工作機械上の温度に関連した位置変化を低減するか、または、例えば、機械制御における能動的な温度制御及び/又は補償によって、機械加工精度に対するそれらの影響を低減することが望ましい。
【0003】
ここで、1つの選択肢は、工作機械への温度の影響を低減するために、工作機械または工作機械の環境を積極的に温度制御または冷却することである;例えば、独国特許出願公開第102014202878号を参照されたい。
【0004】
また、他の選択肢は、機械制御における機械軸の位置目標値の温度依存補正など、機械
制御における補償である。従来技術では、これは例えば、工作機械の温度センサで温度を測定し、測定された温度を使用して、計算式によって補正パラメータを計算し、機械制御において目標軸の位置をリアルタイムで補正または適応させることで可能になっていた;例えば、独国特許出願公開第102010003303号を参照されたい。
【0005】
さらに、独国特許出願公開第102015115838号では、ニューラルネットワークを有する評価ユニットを備えた処理機械上で温度補償を実行することが提案されている。
【0006】
工作機械の機械制御における機械軸の位置目標値の温度依存補正のより新しい方法は、工作機械における位置変化のいわゆるマップベース補正または補償である。例えば、C.Naumann、Fraunhofer Institute for Machine
Tools and Forming Technology -IWU-、Chemnitz; Verbundinitiative Maschinenbau Sachsen -VEMAS-、Chemnitzによる論文“Kennfeldbasierte Korrektur thermischer Positionierfehler an Werkzeugmaschinen” : Digitalisierung in der Produktion. 3rd Saxon Day of Automation 2017: March 9th, 2017.を参照されたい。
【0007】
上記の論文では、特性マップに基づいた工作機械上の熱位置決め誤差の補正について述べている。この論文の「要約」では『工作機械の熱による位置決め誤差は、加工精度、ひいては工作機械の製品品質や収益性に大きな影響を及ぼし得る。熱による誤差は、機械の全誤差の最大75%を占めることもある。これらの誤差を低減するためのアプローチは、建設的な対策から、膨張係数の低い材料の使用、モデルベースの熱誤差の補正まで多岐にわたる。熱弾性誤差を低減するために産業界で行われている対策は、例えば、工作機械の熱対称設計や機械の熱的安定状態をもたらすことである。この目的のために、機械は通常、熱源の領域で冷却されるか、熱的に安定する(「動作温度」に達する)まで温められる。また、環境を一定の状態にするために空調を行うこともある。これらの方法では、必要なエネルギーが大幅に増加し、結果として収益性が低下する。エネルギー需要の増加を伴わないモデルベースのアプローチとして、産業部門では相関補正が使用されている。相関モデルは、機械構造内の選択された温度測定点と動作点(ツールセンタポイントTCP)の変位を仲介する。マップベースの補正は、このような相関的なアプローチを表している。特性マップを用いて、工作機械の表面上の温度と現在の軸構成が、TCP変位に直接マッピングされる。特性マップは、測定または熱弾性シミュレーションからのデータで教示することができ、次いで、プロセス中に制御に統合されてオンラインで使用することができる。この論文では、熱弾性補正および補償戦略の概要を説明した後、マップベースの補正を提示する。この方法の手順とメリット・デメリットを論じ、最後に、この方法の機能性をデモ機で実験的に証明する。』と述べられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国特許出願公開第102014202878号
【特許文献2】独国特許出願公開第102010003303号
【特許文献3】独国特許出願公開第102015115838号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】C.Naumann、 “Kennfeldbasierte Korrektur thermischer Positionierfehler an Werkzeugmaschinen”、 Digitalisierung in der Produktion、 3rd Saxon Day of Automation 2017: March 9th, 2017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
工作機械の温度補償を簡単に、効率的に、正確に、及び/又はユーザフレンドリーに行うという基本的なニーズと、上述の従来技術による工作機械のマップベースまたはモデルベースの温度補償の利点から、本発明の目的は、工作機械の改良された温度補償を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述の目的を達成するために独立請求項によれば、数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償するための方法および装置が提案される。従属請求項は、好ましいまたは特に好都合な例示的実施形態に関するものである。
【0012】
例示的な態様によれば、数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償するための方法が提案され、前記方法は、前記工作機械の制御装置上に前記工作機械の温度挙動を記述する特性マップを提供すること、前記工作機械上の1つ以上の温度センサによって1つ以上の温度値を決定すること、決定された前記1つ以上の温度値および提供された前記特性マップに基づいて、前記工作機械の前記制御装置上の1つ以上の補償パラメータを決定すること、決定された1つ以上の補償値に従って、前記工作機械の温度に依存した位置変化を補償すること、を含む。
【0013】
本発明によれば、数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償する方法、特にマップに基づく方法は、提供される特性マップ(または特性曲線マップ)がコンピュータ実施ニューラルネットワーク(computer-implemented neural network)によって適応され、温度補償は特にニューラルネットワークを介して直接的にではなく、特性マップによって実行されることを特徴とする。
【0014】
換言すれば、本発明によれば、機械制御における温度補償が特性マップに基づいて実行され(すなわち、工作機械上の熱位置決め誤差のマップベースの補正)、そのマップがニューラルネットワークによって少なくとも1回または数回適応されることが特に好ましく提案される。
【0015】
これは、提供された特性マップに基づいて、工作機械の制御において、温度補償を効率的かつユーザフレンドリーに、またリアルタイムで極めて迅速かつ正確に行うことができるという相乗的な利益を有しており、例えば、FEシミュレーションに基づいて作成された特性マップは、要求に応じて、ニューラルネットワークを訓練することによって、または既に訓練されたニューラルネットワークによって最適化することができる。
【0016】
本発明によれば、数値制御された工作機械の温度挙動を記述する特性マップを適応させるための方法が、前記工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償する際に使用する例として提案されてもよく、前記方法は、コンピュータ実施ニューラルネットワークによって、提供された前記特性マップを適応させることを含む。
【0017】
本発明のさらなる例示的な態様または例示的な実施形態および好ましい実施形態を以下に説明する。
【0018】
好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークのための入力データは、
前記工作機械の動作中、特に前記工作機械の作業プロセス中にリアルタイムで決定されてもよい。
【0019】
好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークのための入力データは、前記工作機械のセンサからのセンサデータ及び/又は前記工作機械のセンサのセンサデータから算出された入力データを含んでもよい。
【0020】
好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークの出力データは、前記特性マップを適応又は更新することができる。さらに好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークの出力データは、適応された又は更新された特性マップを指定してもよい。
【0021】
好ましい例示的な実施形態では、前記特性マップを適応させることは、前記制御装置に現在提供されている前記特性マップの少なくとも一部を前記ニューラルネットワークに読み込むこと;特に前記工作機械のセンサからのセンサデータを含む入力データを、前記ニューラルネットワークに読み込むこと;及び/又は前記ニューラルネットワーク上の適応又は更新された特性マップの少なくとも一部のネットワーク構造を決定することを備えていてもよい。
【0022】
好ましい例示的な実施形態では、前記制御装置に提供される前記特性マップが特に、決定された前記ネットワーク構造に基づいて適応または更新されてもよい。
【0023】
好ましい例示的な実施形態では、提供された前記特性マップを適応させることは、前記コンピュータ実施ニューラルネットワークによって、特に好ましくは一定の間隔で、繰り返し行われてもよい。
【0024】
好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に提供された前記特性マップを制御してもよい。
【0025】
好ましい例示的な実施形態では、前記工作機械の前記1つ以上の温度センサのセンサ値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記ニューラルネットワークに送信されてもよい。
【0026】
好ましい例示的な実施形態では、前記工作機械の1つ以上の位置センサからのセンサ値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記ニューラルネットワークに送信されてもよい。
【0027】
好ましい例示的な実施形態では、前記工作機械の前記1つ以上の位置センサが、前記工作機械の直線軸及び/又は回転軸の感知された実際値を出力してもよい。
【0028】
好ましい例示的な実施形態では、前記工作機械の直線軸及び/又は回転軸の目標値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記制御装置から前記ニューラルネットワークに送信されてもよい。
【0029】
好ましい例示的な実施形態では、前記工作機械上で実行される位置測定方法の位置測定値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記ニューラルネットワークに送信されてもよい。
【0030】
好ましい例示的な実施形態では、前記位置測定方法が、1つ以上の測定プローブによって前記工作機械上で実行されてもよい。さらに、追加的または代替的に、前記位置測定方
法が、1つ以上の電磁気測定装置によって、及び/又は、1つ以上の光学測定装置によって、特にレーザー測定装置及び/又はカメラ装置によって、前記工作機械上で実行されてもよい。
【0031】
好ましい例示的な実施形態では、前記工作機械の前記温度挙動を記述する前記特性マップが、前記工作機械の1つ以上のFEモデル及び/又はFEシミュレーションに基づいて提供されてもよい。
【0032】
好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に統合されてもよい。
【0033】
好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に接続された制御コンピュータに統合されてもよい。
【0034】
好ましい例示的な実施形態では、前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に接続された中央サーバに統合されてもよい。
【0035】
好ましい例示的な実施形態では、前記中央サーバは、複数の工作機械の制御装置に接続されてもよい。
【0036】
好ましい例示的な実施形態では、前記中央サーバが複数のニューラルネットワークを含んでもよい。各ニューラルネットワークは好ましくは工作機械の1つに関連づけられてもよく、及び/又は前記複数のニューラルネットワークは互いに通信してもよい。
【0037】
好ましい例示的な実施形態では、本方法が、前記特性マップ(複数可)の特性マップエントリに基づいて変位マップを決定することをさらに備えていてもよい。
【0038】
[1]によれば、本発明が提供する、数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償するための方法は、
前記工作機械の制御装置において前記工作機械の温度挙動、特に熱弾性挙動、を記述する特性マップを提供すること、
前記工作機械上の1つ以上の温度センサによって1つ以上の温度値を決定すること、
決定された前記1つ以上の温度値および提供された前記特性マップに基づいて、前記工作機械の前記制御装置において1つ以上の補償パラメータを決定すること、
決定された1つ以上の補償値に従って、前記工作機械の温度に依存した位置変化を補償すること、を備え、
コンピュータ実施ニューラルネットワークによって、提供された前記特性マップを適応させる。
【0039】
[2]によれば、本発明が提供する[1]による方法において、
前記ニューラルネットワークのための入力データは、前記工作機械の動作中、特に前記工作機械の作業プロセス中にリアルタイムで決定される。
【0040】
[3]によれば、本発明が提供する[1]又は[2]による方法において、
前記ニューラルネットワークのための入力データは、前記工作機械のセンサからのセンサデータ及び/又は前記工作機械のセンサからのセンサデータから算出された入力データを含む。
【0041】
[4]によれば、本発明が提供する[1]ないし[3]の何れか1つによる方法において、
前記ニューラルネットワークの出力データは、前記特性マップを適応又は更新すること及び/又は前記ニューラルネットワークの出力データは、適応された又は更新された特性マップを指定する。
【0042】
[5]によれば、本発明が提供する[1]ないし[4]の何れか1つによる方法において、
前記特性マップを適応させることは、
前記制御装置に現在提供されている前記特性マップの少なくとも一部を前記ニューラルネットワークに読み込むこと、
特に前記工作機械のセンサからのセンサデータを含む入力データを、前記ニューラルネットワークに読み込むこと、
前記ニューラルネットワーク上の適応又は更新された特性マップの少なくとも一部のネットワーク構造を決定すること;及び/又は
前記特性マップを適応させることは、前記ニューラルネットワークに基づいて前記特性マップの1つ以上の係数を変更することを含むこと、を備える。
【0043】
[6]によれば、本発明が提供する[5]による方法において、
前記制御装置に提供される前記特性マップが、決定された前記ネットワーク構造に基づいて適応または更新される。
【0044】
[7]によれば、本発明が提供する[1]ないし[6]の何れか1つによる方法において、
提供された前記特性マップを適応させることは、前記コンピュータ実施ニューラルネットワークによって、特に一定の間隔で、繰り返し行われる。
【0045】
[8]によれば、本発明が提供する[1]ないし[7]の何れか1つによる方法において、
前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に提供された前記特性マップを制御する。
【0046】
[9]によれば、本発明が提供する[1]ないし[8]の何れか1つによる方法において、
前記工作機械の前記1つ以上の温度センサのセンサ値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記ニューラルネットワークに送信される。
【0047】
[10]によれば、本発明が提供する[1]ないし[9]の何れか1つによる方法において、
前記工作機械の1つ以上の位置センサのセンサ値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記ニューラルネットワークに送信される。
【0048】
[11]によれば、本発明が提供する[10]による方法において、
前記工作機械の前記1つ以上の位置センサが、前記工作機械の直線軸及び/又は回転軸の感知された実際値を出力する。
【0049】
[12]によれば、本発明が提供する[1]ないし[11]の何れか1つによる方法において、
前記工作機械の直線軸及び/又は回転軸の目標値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記制御装置から前記ニ
ューラルネットワークに送信される。
【0050】
[13]によれば、本発明が提供する[1]ないし[12]の何れか1つによる方法において、
前記工作機械上で実行される位置測定方法の位置測定値が、提供された前記特性マップを適応させるための前記ニューラルネットワークの入力データとして、前記ニューラルネットワークに送信される。
【0051】
[14]によれば、本発明が提供する[13]による方法において、
前記位置測定方法が、1つ以上の測定プローブによって前記工作機械上で実行され、
前記位置測定方法が、1つ以上の電磁気測定装置によって前記工作機械上で実行され、及び/又は、
前記工作機械上の前記位置測定方法が、1つ以上の光学測定装置によって、特にレーザー測定装置及び/又はカメラ装置によって実行される。
【0052】
[15]によれば、本発明が提供する[1]ないし[14]の何れか1つによる方法において、
前記工作機械の前記熱弾性挙動を記述する前記特性マップが、前記工作機械の1つ以上のFEモデルに基づいて提供される。
【0053】
[16]によれば、本発明が提供する[1]ないし[15]の何れか1つによる方法において、
前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に統合されている。
【0054】
[17]によれば、本発明が提供する[1]ないし[15]の何れか1つによる方法において、
前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に接続された制御コンピュータに統合されている。
【0055】
[18]によれば、本発明が提供する[1]ないし[15]の何れか1つによる方法において、
前記ニューラルネットワークが、前記工作機械の前記制御装置に接続された中央サーバに統合されている。
【0056】
[19]によれば、本発明が提供する[18]による方法において、
前記中央サーバは、複数の工作機械の制御装置に接続されている。
【0057】
[20]によれば、本発明が提供する[19]による方法において、
前記中央サーバが複数のニューラルネットワークを有し、各ニューラルネットワークが工作機械の1つに関連づけられ、前記複数のニューラルネットワークが互いに通信する。
【0058】
[21]によれば、本発明が提供する[1]ないし[20]の何れか1つによる方法において、
前記特性マップの特性マップエントリに基づいて変位マップを決定する。
【0059】
[22]によれば、本発明がさらに提供する、数値制御された工作機械の熱的に誘発された位置変化を補償するための制御システムは、
前記工作機械の制御装置と、
コンピュータ実施ニューラルネットワークと、を備え、
前記工作機械の前記制御装置において前記工作機械の温度挙動、特に熱弾性挙動、を記
述する特性マップが提供され、
前記工作機械の前記制御装置は、前記工作機械上の1つ以上の温度センサ及び提供された前記特性マップによって決定された、1つ以上の温度値に基づく1つ以上の補償パラメータを決定し、1つ以上の決定された補償値に従って前記工作機械の温度に依存した位置変化を補償するように構成され、及び、
前記コンピュータ実施ニューラルネットワークは、提供された前記特性マップを適応させるように構成される。
【0060】
さらなる態様及びそれらの利点、並びに、上述した態様及び特徴の利点及びより具体的な実装オプションは、以下の説明及び添付図の説明と共に述べられるが、これらに決して限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】本発明の例示的な実施形態による、工作機械上の温度補償のための特性マップKFの概略的な例示的図を示す。
【
図2】本発明の例示的な実施形態による、工作機械上の温度補償のための複数の特性マップの概略的な例示的図を示す。
【
図3】工作機械上の温度補償のためのマップベースの方法の概略図を示す。
【
図4】工作機械上の温度補償のためのマップベースの方法のための特性マップを更新するためのニューラルネットワークの適用の概略図を示す。
【
図5】一例として、本発明の例示的な実施形態による、1つ以上の工作機械上の1つ以上の特性マップを適応させるためのシステムの概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下では、本発明の例または例示的な実施形態について、添付の図を参照して詳細に説明する。図中の同一または類似の要素は、同じ参照記号で示されることがあるが、時には異なる参照記号で示されることもある。
【0063】
本発明は、以下に説明する例示的な実施形態およびその実施上の特徴に決して限定または制限されるものではなく、むしろ、例示的な実施形態の変更、特に、説明した実施例の特徴の変更を介して、または説明した実施例の特徴の個々のものもしくは複数のものの組み合わせを介して、独立請求項の保護範囲に含まれるものも含まれることに留意されたい。
【0064】
工作機械における熱弾性効果は、現在、工作機械上の位置決め誤差の主な原因の一つとなっている。摩擦や加工プロセスに起因する入熱に加えて、環境との熱交換も無視できない。これらの熱の流れと、その結果としての温度や変形マップを求めるには、流体力学と構造力学の複雑な結合シミュレーションが必要になることがある。特に、2つのシミュレーションを結合することで、周囲の条件、つまり熱伝達係数が常に変化するため、可動部品を用いた過渡的なシミュレーション計算が困難になる。
【0065】
工作機械の熱原因による位置誤差を低減させるために産業界で広く行われている対策は、機械の熱的に安定した状態をもたらすことである。この目的のために、機械は通常、熱的に安定する(すなわち、「動作温度」に達する)まで、熱源の領域で冷却または暖機され得る。また、環境を一定の状態にするために空調を行うことも考えられる。これらのアプローチは、エネルギー需要を大幅に増加させ、その結果、収益性を低下させる。
【0066】
一方で、モデルベースまたはマップベースの補正アプローチは、追加のエネルギー投入を必要としない。相関補正は、モデルベースのアプローチとして産業分野で使用されている。マップベースのモデルは、通常、機械構造内の選択された温度測定点と、動作点、例
えば工具位置(しばしばツールセンタポイント又はTCPとも呼ばれる)での変位との間を仲介する。
【0067】
マップベースの補正法が最近提案されており、例えば、C.Naumann、Fraunhofer Institute for Machine Tools and Forming Technology -IWU-、Chemnitz; Verbundinitiative Maschinenbau Sachsen -VEMAS-、Chemnitzによる論文“Kennfeldbasierte Korrektur thermischer Positionierfehler an Werkzeugmaschinen” : Digitalisierung in der Produktion. 3rd Saxon Day of Automation 2017: March 9th, 2017.を参照されたい。
【0068】
特性マップに基づく補正方法の場合、温度補償は、機械の温度挙動を示す少なくとも1つの特性マップに基づいている。
【0069】
特性マップはデータ構造、特に回帰モデルとしてみることができ、マップは、1つ以上の入力変数から1つ以上の出力変数へのマッピングを示し又は表している。入力変数から出力変数へのマッピングの場合、特性曲線と呼ぶこともできる。
【0070】
特性曲線とは、例えば、コンポーネント、アセンブリ、またはデバイスの性質である2つの相互に依存する物理量をグラフ化したものである。特性曲線は、2次元座標系における曲線として表示されてもよい。
【0071】
特性曲線マップ、または略して特性マップは、例えば、複数の特性マップの形態で、または3次元座標系で、さらなる入力変数の関数としての複数の特性マップを表してもよい。
【0072】
特性曲線の例としては、ダイオードを流れる電流の電圧依存性が挙げられる。さらにダイオードの温度をパラメータとして加えると、ある温度に関連した複数の電流-電圧特性曲線からなる特性曲線マップとなる。制御工学では、特性曲線がシステムの静的挙動を記述する。実際には、特性曲線はとりわけ、動作点を定義するため、特性曲線のある点における線形近似を決定するために使用される。また、部品の電力損失を判定したり、センサによって出力される信号を補正したりするために使用されることもある。
【0073】
マップベースの補正または温度補償の場合、特性マップは、一組の入力変数を1次元変位または1次元補償パラメータに連続的にマッピングしたものとして理解することができる。最も重要な入力変数は通常、機械構造上および機械構造内の温度(例えば、機械ベッド上、工作機械の可動部品上、工作機械の回転可能または旋回可能な部品上など、機械構造内のセンサ位置に配置された1つ以上の温度センサによって記録または測定されたもの)、および、任意に機械軸の位置データである。
【0074】
いくつかの例示的な実施形態における変位補正では、位置の変化(例えば、TCPの位置の温度依存性の変化)に対する3次元または6次元の補正ベクトルが探されることがあるので、これらの補正方向のそれぞれに対して別個のマップが作成されてもよいし、または複数の出力変数を有する多次元マップが提供されてもよい。
【0075】
さらなる例示的な実施形態では、位置の変化そのものの代わりに、1つ以上の代替変数を出力変数として使用し、これらを下流のモデルを使用して、必要に応じて変位に変換することが可能である。
【0076】
例示的な実施形態は、産業界におけるニューラルネットワークと連携した特性マップの新たな適用に関するものである。
【0077】
当面の間、機械または工作機械は、例示的な実施形態において、FEメッシュの助けを借りて表されてもよい。
【0078】
先に使用されたセンサデータまたはセンサ値(例えば、温度値)に加えて、制御からのデータまたはパラメータも、さらなる例示的な実施形態において、FE解析に使用されてもよい。
【0079】
そのような制御データは、例えば、制御(例えば、駆動制御:電流制御、速度制御、位置制御)、監視、診断及び/又はモータ、メカニクス及び/又は位置検出(例えば、工作機械の駆動装置のモータ電流又はモータ電力)からのデータであってもよい。
【0080】
いくつかの例示的な実施形態によれば、機械または工作機械の1つ以上のFEモデルの解析から開始する、データ処理方法またはコンピュータベースのシミュレーションにおいて、機械の完全分析は、好ましくは機械または工作機械の温度挙動を記述する1つ以上の特性マップを生成または計算してもよい。
【0081】
さらなる例示的な実施形態では、FEMベースのシミュレーションに基づく1つ以上の特性マップの計算に加えて、またはその代替として、工作機械のコンピュータシミュレーション(いわゆる仮想工作機械またはいわゆるデジタルツイン)に基づいて、特性マップを計算し、決定し、及び/又は適応させてもよい。加えて又は代替的に、特性マップは、テスト動作における工作機械上の実験的決定に基づいて決定及び/又は適応されてもよい。
【0082】
ここで、特性マップは、回帰モデルとして、及び/又は、補間法または外挿法と組み合わせて使用することができるn次元マッピングの一例である。
【0083】
いくつかの例示的な実施形態では、特性は、テーブルまたはマトリックスの形態であってもよく、可能な入力データ(例えば、1つ以上の入力変数)のための出力データ(例えば、1つ以上の出力変数)を指定してもよく、または1つ以上の入力変数値を1つ以上の出力変数値にマッピングしてもよい。
【0084】
例えば、工作機械上の温度センサからの1つ以上の温度値を示してもよい、温度情報を示す入力データに加えて、さらなる入力データまたは入力変数が使用されてもよい。また、入力データまたは入力変数は、工作機械上及び/又は工作機械に隣接する空気湿度センサ及び/又は空気圧センサからの測定値を含んでもよい。
【0085】
さらに、入力データまたは入力変数は、位置センサの値(例えば、直線軸、回転軸、および旋回軸などの工作機械の可動部品上の位置測定器からの値)及び/又は機械制御から取得されたパラメータを含んでもよい。
【0086】
機械制御から取得された、または機械制御によって決定もしくは評価されたパラメータは、例えば、工作機械の軸の目標位置値、工作機械の軸の決定された実際の位置値、速度(例えば、スピンドル速度)、モータ電流、モータ電力などを含んでもよい。
【0087】
さらに、他のセンサ値を入力変数として使用してもよい。例えば、圧力測定値(例えば、工作機械の油圧及び/又は空圧システムの圧力値、工作機械の冷却回路システムの圧力
値など)、揺動または振動測定値(例えば、振動または揺動センサからの)、力測定値(例えば、力センサ、歪みゲージセンサなどからの)、トルク測定値(例えば,トルクセンサからの、または力測定値に基づく計算からの)、アクティブパワー値、加速度測定値(例えば、加速度センサからの)、構造体伝搬音測定値(例えば、構造体伝搬音センサからの)などである。
【0088】
いくつかの例示的な実施形態では、温度変位の制御中補償のための補正項または1つ以上の補正パラメータが、入力された入力変数に基づいて、例えば、センサ及び/又は制御中データを評価することによって、時間的に離散した区間で繰り返しまたは周期的に機械制御に転送されてもよい。ここで、機械制御は、転送された補正項または1つ以上の補正パラメータを使用して、例えば、転送された補正項または1つ以上の補正パラメータに基づいて、工作機械の1つ以上の可動部品(例えば、工作機械の直線軸、回転軸、及び/又は旋回軸)の目標位置を適応させることによって、温度補償を実行してもよい。
【0089】
例示的な実施形態によれば、好ましくは、新しいデータを使用して特性マップ(複数可)を更新することができるニューラルネットワーク構造も実装される。
【0090】
ニューラルネットワークのための新しい訓練データまたは入力データは、好ましくは、工作機械上での実際のプロセスまたは動作中(例えば、工作機械上での、実験的なテスト動作中及び/又は実際の加工プロセス中)から決定されてもよく、追加的または代替的に、ニューラルネットワークのための新しい訓練データまたは入力データは、例えば仮想工作機械上及び/又は工作機械のデジタルツインに基づいて、工作機械のコンピュータ実施シミュレーション(computer-implemented simulation)から決定されてもよい。
【0091】
FE解析、工作機械のコンピュータシミュレーション(仮想工作機械またはデジタルツイン)、及び/又は工作機械の実験的動作からの既存のデータと組み合わせて、ニューラルネットワークを使用して、特性マップ(複数可)を更新または適応または最適化する新しいデータを生成してもよい。
【0092】
例示的な実施形態では、ニューラルネットワークが工作機械上の実際の温度補償方法に直接影響を与えないことが特に好ましい。なぜなら、工作機械上の実際の温度補償方法は、好ましくは1つ以上の特性マップに基づいて機械制御で実行され、特性マップ(複数可)は、ニューラルネットワークによって1回または複数回、あるいは繰り返し適応または最適化されてもよいからである。
【0093】
ニューラルネットワークは、好ましくは、マップベースの補正に直接的な影響を及ぼさないが、特性マップ(複数可)を制御または影響し、したがって、温度補正に間接的な影響を及ぼすだけである。マップベースの補正は、特に好ましくは、1つ以上の特性マップに基づいて工作機械上で実施され、特性マップ(複数可)は、ニューラルネットワークによって適応または最適化される。
【0094】
いくつかの例示的な実施形態では、更新のためのニューラルネットワークの入力データは、工作機械の設置場所で記録されてもよく、特性マップ(複数可)の自動更新が可能である。
【0095】
1つの利点は、変動する影響に対して耐性があることである。加えて、本発明は、例えば新しい設置場所での新しい環境条件に対する機械または機械動作の適応を著しく改善することができる。さらに、変位誤差をさらに低減することができ、より高い製造精度が可能になるという利点もある。
【0096】
いくつかの例示的な実施形態の基礎は、工作機械の温度挙動を記述する1つ以上の特性マップを提供することである。これは、例えば、入力データまたは入力変数(例えば、温度、軸位置など)の選択、入力変数の限界値(例えば、温度、位置の;最大値及び/又は最小値)の定義、入力変数の離散化(例えば、特性マップグリッドの定義)、コアまたは基本関数(「カーネル関数」)の選択、センサの最適化、及び/又はデータの収集などを含むことができる。
【0097】
いくつかの例示的な実施形態では、1つ以上の特性マップ(複数可)は、データ処理プロセスまたはシミュレーション(例えば、FEまたはFEMシミュレーションまたは解析)に基づいて(例えば、最小二乗法に基づいて)計算されてもよい。いくつかの例示的な実施形態では、1つ以上の特性マップは、追加的または代替的に、仮想工作機械上のデータ処理プロセスまたはシミュレーションに基づいて、または工作機械のデジタルツインに基づいて、及び/又はテスト動作における工作機械上の実験的決定に基づいて、計算または決定されてもよい。
【0098】
次に、1つ以上の計算された又は決定された特性マップ(複数可)が、例えば、特性マップ(複数可)を機械制御に転送することによって提供されてもよい。
【0099】
ニューラルネットワークによる特性マップ(複数可)の適応のために、特性マップ(複数可)または特性マップ(複数可)内のエントリは、ニューラルネットワークの入力データとして機械制御からニューラルネットワークに転送されてもよく、特性マップ(複数可)またはその少なくとも一部はニューラルネットワークに読み込まれてもよい。さらに、新しいデータまたは入力変数が、工作機械、工作機械のセンサ、及び/又は工作機械の機械制御から読み込まれてもよい。好ましくは、特性マップ(複数可)及び/又は特性マップ(複数可)の少なくとも1つ以上のエントリは、その後、ニューラルネットワークのネットワーク構造に基づいて更新または適応される。
【0100】
好ましい例示的な実施形態では、ニューラルネットワークのネットワーク構造は、放射基底関数及び/又は他の補間関数(例えば、線形および非線形回帰法)に基づいている。
【0101】
例示的な実施形態による継続的に学習する補償アルゴリズムは、好ましくは、ニューラルネットワーク及び/又は補間関数(例えば、線形及び/又は非回帰法、放射基底関数、多項式基底関数など)に基づいている。さらに、補間関数のための補間サポート点(interpolation supporting points)の独立した適応のために、遺伝的アルゴリズムが統合されてもよい。
【0102】
特性マップ(複数可)を適応または最適化するためのニューラルネットワークは、例えば、データベース、測定データ及び/又はシミュレーションデータに基づくデータ取得によって(例えば、仮想工作機械上のシミュレーションに基づいて、または工作機械のデジタルツインに基づいて、合成入力変数を生成することによって)、学習アルゴリズムを含んでもよい。
【0103】
本発明の例示的な実施形態は、好ましくは、特にニューラルネットワークによって、機械構造の熱的に誘発された変位のマップベースのエラー記述に基づいて、補償アルゴリズムを連続的に学習する方法に関するものである。
【0104】
補償方法の連続的な拡張は、特に好ましくは、機械加工中の工作機械の荷重ケース(load case)の記述、及び/又は工作機械の可動部品もしくは軸の位置設定に関するもので
ある。
【0105】
好ましい例示的な実施形態では、処理方法は制御において自律的に認識されてもよく、例えば、異なる処理方法に対してそれぞれ対応する特性マップを提供し、ニューラルネットワークによってそれらを適応または最適化することによって、適切な特性マップを用いて補正されてもよい。
【0106】
さらに、さらなる例示的な実施形態では、制御へのフィードバックを改善するために、センサの配置を適応または最適化してもよい。これはまた、改善されたセンサ配置を介して、予測的な状態推定を可能にする。
【0107】
図1は、本発明の例示的な実施形態による、工作機械上の温度補償のための特性マップKFの概略的な例示図である。
【0108】
特性マップKFは、入力変数として、工作機械のn個の温度センサからのi=1,…,n個の複数の温度測定値Tiと、工作機械の位置センサからのj=1,...,m個の複数
の位置測定値Xjとを組み込むような方法で例示的に提供される。位置測定値Xjは、好ましくは、工作機械のm個の可動部品、例えば工作機械のm個の可動軸の、位置(例えば、測定された実際の位置)を示す。位置計測値の代わりに、または位置計測値に加えて、機械制御からの位置目標値または軸目標値を使用することもできる。
【0109】
出力変数として、特性マップKFは、例えば、補正パラメータKPを出力し、この補正パラメータKPは、工作機械の熱的に誘発された位置変化を補正または補償するために、目標位置を適応させるための補正値または補償値として、機械制御において使用されてもよい。
【0110】
さらなる例示的な実施形態において、特性マップは、単に、入力変数として工作機械のn個の温度センサからのi=1,...,nの複数の温度測定値Tiを定義するだけであってもよい(例えば、入力変数として位置測定値がない)。
【0111】
さらに、1つ以上の特性マップを用いて複数の補正パラメータを決定し、さらに入力変数を定義してもよい。
【0112】
図2は、本発明の例示的な実施形態による工作機械の温度補償のための複数の特性マップKF1、KF2、KF3、…の概略的な例示図である。
【0113】
特性マップKF1、KF2、KF3、...は、一例として、工作機械のn個の温度センサからのi=1、...、n個の複数の温度測定値Tiと、工作機械の位置センサからのj=1、...、m個の複数の位置測定値Xjとが入力変数として組み込まれるように提供される。位置測定値Xjは、好ましくは、工作機械のm個の可動部品、例えば工作機械のm個の可動軸の、位置(例えば、測定された実際の位置)を示す。
【0114】
加えて、または代替として、機械制御のさらなるセンサ値及び/又はパラメータが、工作機械の可動部品(例えば、工作機械の直線軸、回転軸及び/又は旋回軸)の速度に関する速度値Xjのように、入力変数として読み取られてもよい。速度値Xjは、好ましくは、工作機械のm個の可動部品(例えば、工作機械のm個の可動軸)の速度を(例えば、測定された実際の位置の時間依存性によって)示す。加えて、または代替として、加速度値または加速度測定値も入力変数として組み込むことができる。
【0115】
加えて、または代替として、回転速度値ωk(例えば、スピンドル速度、アクスルドライブなどのモータ速度または駆動速度)、圧力値Pq(例えば、空気圧などの圧力測定値、工作機械の空気圧システムの圧力値、工作機械の油圧システムの圧力値、工作機械の冷
却システムの圧力値)、および例えば湿度測定値など、機械制御のさらなるセンサ値及び/又はパラメータが入力変数として読み込まれてもよい。
【0116】
特性マップKF1、KF2、KF3はそれぞれ、一例として、それぞれの補正パラメータKP1、KP2、KP3を出力変数として出力し、これらの補正パラメータKP1、KP2、KP3は、1つ以上の目標位置を適応させるためのそれぞれの補正値または補償値として、工作機械の熱的に誘発された位置変化の補正または補償のために、機械制御において使用され得る。ここで、それぞれの補正パラメータKP1、KP2、KP3は、それぞれ、工作機械の個々の軸に対して使用可能な補正パラメータを指定してもよいし、また、個々の直交方向の補正パラメータを指定してもよい。また、それぞれ1つの出力変数を有する特性マップKF1、KF2、KF3は、出力変数ベクトルが出力可能な多次元の出力変数空間を有する多次元特性マップとして理解または提供されてもよい。
【0117】
図3は、工作機械における温度補償のためのマップベースの方法の概略図である。
【0118】
ステップS301では、例えば、工作機械の温度挙動を示すまたは記述する1つ以上の特性マップが、工作機械の機械制御上に提供される。特性マップ(複数可)は、FEモデルベースのシミュレーションまたは解析で生成されたものであってもよく、好ましくは、保存されたデータ構造として(例えば、ルックアップテーブルまたはルックアップマトリクスとして)機械制御上に提供される。
【0119】
ステップS302では、入力データまたは入力変数が、例として工作機械上で決定される。これは好ましくは、工作機械の温度センサから温度測定値を読み取ることを含む。さらに、これは、工作機械の可動部品(例えば、可動軸)の実際の位置に関連する位置データを、例えば、機械制御から、または工作機械の位置測定センサから読み取ることを含んでいてもよい。さらに、追加のセンサデータや制御データを読み取ってもよい(上記参照)。
【0120】
ステップS303では、例えば、入力データまたは入力変数に基づいて、また提供された特性マップ(複数可)に基づいて、例えば特性マップ(複数可)の直接的な出力変数(複数可)として、及び/又は特性マップ(複数可)の出力変数(複数可)に基づくさらなる計算から、1つ以上の補正パラメータまたは補償パラメータが決定される。
【0121】
ステップS304では、例えば、決定された1つ以上の補正パラメータまたは補償パラメータに基づいて、機械制御において、工作機械上の位置の熱変化に対する温度補償または補正が実行される。
【0122】
ステップS302~S304は、好ましくは、温度補償を繰り返すために、例えば、周期的に、準連続的に(例えば、機械制御のクロック周波数に依存するクロック周波数で離散的に)、定期的に、所定のタイミングで、温度変化が検出されたときなどに、繰り返されてもよい。
【0123】
図4は、工作機械におけるマップベースの温度補償方法の特性マップを更新するためのニューラルネットワークの適用例を示す概略図である。
【0124】
ステップS401では、特性マップの入力変数が、一例として(例えば、機械制御から、または工作機械のセンサからセンサ値の直接送信を介して)読み込まれる。好ましくは、更新される特性マップの入力変数の一部または全部が読み込まれる。また、さらなる入力変数を読み取ることも可能である。代替的または追加的に、工作機械のコンピュータ実施シミュレーション(例えば、仮想工作機械上または工作機械のデジタルツインに基づい
て)からセンサデータを生成することもできる、いわゆる合成的に生成されたセンサデータである。
【0125】
ステップS402では、一例として、特性マップ(複数可)または特性マップの少なくともエントリが読み出される。この目的のために、機械制御上で現在提供されている、または保存されている特性マップ、またはその少なくとも一部が読み出される。
【0126】
ステップS403では、一例として、追加の訓練データが任意に読み出される。ニューラルネットワークを訓練するためのそのような訓練データは、例えば、実際の位置と目標位置とを機械制御における追加の位置測定値と比較するために、例えば、工具の代わりに追加的にクランプされた位置測定装置(例えば、測定プローブによる)を用いて、及び/又は追加的な位置測定装置(例えば、レーザー測定、カメラ測定などによる)を用いて、工作機械上の訓練ステップにおいて温度補償が実行される場合に、実際に測定された位置データを含んでもよい。
【0127】
代替的または追加的に、訓練データはまた、工作機械のコンピュータ実施シミュレーション(例えば、仮想工作機械上または工作機械のデジタルツインに基づいて)から生成されてもよく、または複数の工作機械からの履歴処理データを収集するデータベースから検索されてもよい。
【0128】
さらに、訓練データは、制御データから読み取ったデータを含んでいてもよい。
【0129】
ステップS404では、ニューラルネットワーク(例えば、訓練動作後または訓練動作中)、すなわち、例えば、訓練または既に訓練されたニューラルネットワークを使用して、提供された入力データ及び/又は特性マップ(複数可)に基づいて、ならびに場合によっては任意選択的に利用可能な訓練データに基づいて、読み取られた特性マップ(複数可)を少なくとも部分的に適応または更新してもよい。
【0130】
ステップS405では、適応または更新された特性マップ(複数可)、又は適応または更新されたエントリが機械制御に提供される。したがって、
図3による温度補償では、適応または更新された特性マップ、又は複数の適応または更新された特性マップが機械制御で提供されてもよい(例えば、
図3のステップS301として、または
図3のステップS302からS304の繰り返しの間にも)。
【0131】
図5は、一例として、本発明の例示的な実施形態による、1つ以上の工作機械上の1つ以上の特性マップを適応させるためのシステムを概略的に示す。
【0132】
本システムは、例えば、プロセッサ101と、プロセッサ101によって実行可能なニューラルネットワークNNが実装または格納された記憶装置102と、を有するサーバ100を備える。
【0133】
サーバ100は、一例として、通信ネットワーク200(例えば、LAN、WLAN、あるいは、インターネット)を介して、工作機械400の制御装置300に接続されている。工作機械400は、好ましくは、一例として、アクチュエータ401(例えば、スピンドルドライブ、アクスルドライブなど)と、センサ402(例えば、温度センサ、位置測定センサ、圧力センサ、湿度センサ、加速度センサ、振動センサ、及び/又は力センサなど)とを含む。
【0134】
制御装置300は、例えば、プロセッサ301と、1つ以上の特性マップKFが提供または格納されている記憶装置302とを備える。プロセッサ301は、好ましくは、特性
マップ(複数可)KFに基づいて(例えば、上述の態様および例の1つ以上に従って)温度補償を実行するように構成される。
【0135】
例えば、サーバ100のプロセッサ101は、ニューラルネットワークNNを使用して、(例えば、上述の態様および例の1つ以上に従って)制御装置300で特性マップ(複数可)KFを適応または更新するように構成される。
【0136】
さらに、対応する工作機械400’および400”を有するさらなる制御装置300’および300”がサーバ100に接続されることで、ニューラルネットワークNNは、例えば、複数の工作機械(例えば、異なる設置場所で同じ設計のもの)における特性マップを適応または更新するために使用されてもよい。
【0137】
本発明の例または例示的な実施形態およびその利点は、添付の図を参照して上記で詳細に説明した。しかしながら、本発明は、上述した例示的な実施形態およびその実施上の特徴に決して限定または制限されるものではなく、むしろ、例示的な実施形態の変更、特に、記載された実施例の特徴の変更を介して、または記載された実施例の特徴の個々のものもしくは複数のものの組み合わせを介して、独立請求項の保護範囲内に含まれるものをさらに含むものであることに再度留意されたい。