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特開2024-4211旋回作業機、及び旋回作業機の方位検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004211
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】旋回作業機、及び旋回作業機の方位検出方法
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/26 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
E02F9/26 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103750
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110003041
【氏名又は名称】安田岡本弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】湯浅 純一
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015DA05
2D015HA03
2D015HB03
2D015HB04
(57)【要約】
【課題】単一の位置検出装置で旋回台の方位を検出する。
【解決手段】旋回作業機は、上下方向に延びる旋回軸心廻りに回転可能な旋回台と、旋回台に設けられた作業装置と、旋回台に設けられ、且つ位置を検出する位置検出装置と、位置検出装置が検出した検出位置に基づいて、旋回台の方位を演算する演算部と、を備え、演算部は、旋回台が旋回軸心廻りに回転をした際の複数の検出位置に基づいて、旋回軸心の軸心位置を演算し、軸心位置と、検出位置と、に基づいて旋回台の方位を演算する。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる旋回軸心廻りに回転可能な旋回台と、
前記旋回台に設けられた作業装置と、
前記旋回台に設けられ、且つ位置を検出する位置検出装置と、
前記位置検出装置が検出した検出位置に基づいて、前記旋回台の方位を演算する演算部と、
を備え、
前記演算部は、
前記旋回台が前記旋回軸心廻りに回転をした際の複数の前記検出位置に基づいて、前記旋回軸心の軸心位置を演算し、
前記軸心位置と、前記検出位置と、に基づいて前記旋回台の方位を演算する旋回作業機。
【請求項2】
前記演算部は、前記旋回台が前記回転を開始してから前記回転を停止するまでの複数の前記検出位置に基づいて、前記旋回軸心の軸心位置を演算する請求項1に記載の旋回作業機。
【請求項3】
前記旋回台に設けられ、且つ当該旋回台の前記旋回軸心廻りの旋回角度を検出する角度検出装置を備え、
前記演算部は、
前記軸心位置と、前記軸心位置の演算に用いた前記検出位置のうちのいずれかと、に基づいて演算した前記旋回台の方位を基準方位として、
前記基準方位と、前記基準方位に対応する旋回位置から現在の旋回位置までの旋回角度と、に基づいて、前記旋回台の現在の方位を演算する請求項1に記載の旋回作業機。
【請求項4】
前記演算部は、前記旋回台が前記回転を開始してから前記回転を停止するまでの複数の前記検出位置に基づいて、前記旋回軸心の軸心位置を演算し、
前記旋回台が前記回転を停止した際の旋回角度と現在の旋回角度との差と、前記基準方位と、に基づいて、前記旋回台の現在の方位を演算する請求項3に記載の旋回作業機。
【請求項5】
前記演算部は、前記旋回台が前記回転した際の複数の前記検出位置をフィルタリングするフィルタ処理部を有し、
前記フィルタ処理部は、前記旋回軸心から前記位置検出装置が検出する位置までの長さを半径とする円弧を含む略円弧状のエリア外に位置する検出位置を排除する請求項1に記載の旋回作業機。
【請求項6】
前記旋回台の傾斜角度を検出する傾斜検出装置を備え、
前記フィルタ処理部は、前記傾斜検出装置が検出した前記傾斜角度に基づいて、前記エリアを補正する請求項5に記載の旋回作業機。
【請求項7】
前記演算部は、前記旋回台が前記回転した際の複数の前記検出位置に基づいて、円又は楕円の近似線を演算し、当該近似線に基づいて、前記軸心位置を演算する請求項1に記載の作業機。
【請求項8】
前記演算部は、前記旋回台が前記回転した際の複数の前記検出位置に対して、円又は楕円の方程式の最小二乗法を用いて、前記近似線を演算する請求項7に記載の作業機。
【請求項9】
前記旋回台を前記旋回軸心廻りに支持し、且つ走行可能な下部走行体を備え、
前記演算部は、前記下部走行体が走行してから停止した場合において、最初に前記旋回台が前記回転した際の複数の前記検出位置に基づいて、前記軸心位置を演算する請求項1に記載の旋回作業機。
【請求項10】
前記位置検出装置は、前記旋回軸心から水平方向に離れた位置に配置されている請求項1に記載の旋回作業機。
【請求項11】
前記位置検出装置は、前記旋回台の端部に配置されている請求項10に記載の旋回作業機。
【請求項12】
作業装置が設けられた旋回台を上下方向に延びる旋回軸心廻りに回転させて、前記旋回台に設けられた位置検出装置により複数の検出位置を検出する第1ステップと、
前記位置検出装置が検出した複数の前記検出位置に基づいて、前記旋回軸心の軸心位置を演算する第2ステップと、
前記第2ステップで演算した前記軸心位置と、現在の前記検出位置と、に基づいて前記旋回台の方位を演算する第3ステップと、
を備えている旋回作業機の方位検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旋回作業機、及び旋回作業機の方位検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1に開示された積込機械が知られている。
特許文献1に開示された積込機械は、例えば機械本体に対して上下方向に回動自在に設けられた作業装置を備えた油圧ショベル等のバックホーであって、積込機械の方位を計測する積込機械方位センサを有している。積込機械方位センサは、例えばアンテナを2つ備えてそれぞれが取得したアンテナ位置の相対位置から方位を計測するデュアルアンテナGPSである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-75200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の積込機械では、デュアルアンテナGPSから構成される積込機械方位センサによって、積込機械の方位を計測することができる。
ここで、積込機械の方位の計測精度を向上させるために、デュアルアンテナGPSを構成する位置検出装置として、位置検出精度が高いGNSS受信機等の装置を採用することが考えられる。しかしながら、GNSS受信機等は、比較的高価であるため、デュアルアンテナGPSとして複数のGNSS受信機等を設けることで積込機械の製造コストが高くなるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、単一の位置検出装置で旋回台の方位を検出することができる旋回作業機及び旋回作業機の方位検出方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る旋回作業機は、上下方向に延びる旋回軸心廻りに回転可能な旋回台と、前記旋回台に設けられた作業装置と、前記旋回台に設けられ、且つ位置を検出する位置検出装置と、前記位置検出装置が検出した検出位置に基づいて、前記旋回台の方位を演算する演算部と、を備え、前記演算部は、前記旋回台が前記旋回軸心廻りに回転をした際の複数の前記検出位置に基づいて、前記旋回軸心の軸心位置を演算し、前記軸心位置と、前記検出位置と、に基づいて前記旋回台の方位を演算する。
【発明の効果】
【0007】
上記旋回作業機及び旋回作業機の方位検出方法によれば、単一の位置検出装置で旋回台の方位を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】旋回作業機を示す概略側面図である。
図2】旋回作業機を示す概略平面図である。
図3】旋回作業機のシステムを説明する図である。
図4】旋回台が旋回軸心廻りに回転している場合を示す平面図である。
図5】旋回台が旋回軸心廻りに回転した場合における検出位置を示す平面図である。
図6A】フィルタ処理部のフィルタリングの一例を説明する第1図である。
図6B】フィルタ処理部のフィルタリングの一例を説明する第2図である。
図7A】第2算出部が算出した近似線の一例を示す第1図である。
図7B】第2算出部が算出した近似線の一例を示す第2図である。
図8】第3算出部が算出した基準方位及び第4算出部が算出した現在の方位の一例を示す図である。
図9】演算部が方位を演算する一連の流れを説明する図である。
図10】揺動体の位置の算出について説明する図である。
図11】第1の変形例における方位の演算を説明する図である。
図12】第1の変形例において演算部が方位を演算する一連の流れの一部を説明する図である。
図13】第1の変形例における旋回作業機のシステムを説明する図である。
図14】第2の変形例において演算部が方位を演算する一連の流れの一部を説明する図である。
図15】第3の変形例における旋回作業機のシステムを説明する図である。
図16】第3の変形例において演算部が方位を演算する一連の流れの一部を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
まず、旋回作業機1の全体構成について説明する。図1は、旋回作業機1を示す概略側面図である。また、図2は、旋回作業機1を示す概略平面図である。図1図2に示すように、旋回作業機1は、例えば旋回台2と、キャビン5と、下部走行体10と、作業装置20と、を備えているバックホー等である。旋回台2上には、運転席6が設けられている。
【0010】
以下、旋回作業機1の運転席6に着座した作業者(オペレータ)が向く方向(図1図2等の矢印A1方向)を前方、その反対方向(図1図2等の矢印A2方向)を後方という。また、作業者の左側(図1の手前側、図2の矢印B1方向)を左方、作業者の右側(図1の奥側、図2及の矢印B2方向)を右方という。また、前後方向に直交する方向である水平方向を幅方向(図2参照)という。
【0011】
旋回台2は、上下方向に延伸する旋回軸心(縦軸)X廻りに回転可能である。旋回台2は、旋回基板17とウエイト18とを有している。旋回基板17は、下部走行体10上に、旋回ベアリング3を介して左右に旋回自在に支持されている。旋回ベアリング3の中心は、旋回軸心Xであり、旋回基板17には、旋回モータMTが取り付けられている。旋回モータMTは、旋回基板17に設けられた油圧ポンプ(図示略)が吐出した作動油によって駆動する油圧機器であり、旋回基板17を旋回軸心X廻りに回転駆動するモータである。ウエイト18は、旋回台2の後部に設けられている。
【0012】
下部走行体10は、走行フレーム(トラックフレーム)11と、走行機構12と、を有する。走行フレーム11は、走行機構12が取り付けられ、且つ上部に旋回台2を支持する構造体である。
走行機構12は、例えば、クローラ式の走行装置である。走行機構12は、アイドラ13と、駆動輪14と、複数の転輪15と、無端状のクローラベルト16と、油圧ポンプが吐出した作動油によって駆動する走行モータML,MRと、を有する。走行モータML,MRは、油圧モータから構成されており、駆動輪14を駆動することでクローラベルト16を周方向に循環回走させる。走行機構12の前部にはドーザ装置29が設けられている。
【0013】
旋回台2の前部には、支持ブラケット7が設けられている。支持ブラケット7には、スイングブラケット8が装着されている。スイングブラケット8は、支持ブラケット7に対して縦方向の軸心廻りに揺動可能に支持されている。スイングブラケット8の揺動は、旋回台2に取り付けられたスイングシリンダ(図示略)の伸縮により行われる。なお、図1図2に示す例においては、図2に示すように、支持ブラケット7は、旋回基板17の幅方向の中央(旋回軸心Xを通る前後方向に延びる直線SL上)から右方に偏倚した位置に設けられている。
【0014】
図1に示すように、作業装置20は、旋回台2に設けられている。作業装置20は、揺動体とバケット25とを有している。本実施形態では、揺動体は、ブーム21とアーム23とを有している。揺動体であるアーム23の先端にバケット25が姿勢変更可能に取り付けられている。
バケット25の基端にはブラケット27が設けられている。バケット25は、ブラケット27を介してアーム23の先端に取り付けられている。バケット25は、側壁25Aと底壁25Bとバケット爪25Cとを有している。側壁25Aは、左側壁と右側壁とを含む。底壁25Bは、左側壁と右側壁とを連結している。バケット爪25Cは、バケット25の先端に設けられている。
【0015】
作業装置20は、ブーム21、アーム23及びバケット25の駆動機構(油圧アクチュエータ等)として、ブームシリンダ21a、アームシリンダ23a及びバケットシリンダ25aを有している。ブームシリンダ21a、アームシリンダ23a、及びバケットシリンダ25aは、油圧シリンダにより構成されている。
ブーム21の基端部は、スイングブラケット8に対して第1回転軸22廻りに揺動可能に枢支されている。アーム23の基端部は、ブーム21の先端部に対して第2回転軸24廻りに揺動可能に枢支されている。バケット25の基端部は、アーム23の先端部に対して第3回転軸26廻りに揺動可能に枢支されている。ブーム21は、ブームシリンダ21aの伸縮により上下に揺動する。アーム23は、アームシリンダ23aの伸縮により上下に揺動する。バケット25は、バケットシリンダ25aの伸縮によりスクイ・ダンプ動作する。
【0016】
旋回台2の右部には、旋回台2の旋回、走行機構12の駆動、作業装置20の駆動等を行うための油圧アクチュエータへの作動油の供給を制御するコントロールバルブ(図示略)等が搭載されている。旋回台2の後部には、原動機4、油圧ポンプ(図示略)等が搭載されている。原動機4は、ディーゼルエンジン、ガソリンエンジン等の内燃機関、又は電動モータ等である。原動機4は、内燃機関と電動モータとの両方を有するハイブリッド型であってもよい。
【0017】
旋回台2の上部には、キャビン5が搭載されている。キャビン5は、運転席6を保護する運転席保護装置である。運転席保護装置としてキャビン5に代えてキャノピを搭載してもよい。
運転席6の周囲には、旋回台2を旋回操作する旋回レバー、走行機構12を操作する走行レバー、作業装置20を操作する操作レバー(いずれも図示略)等を含む操作機器40が設けられている。
【0018】
図3は、旋回作業機1のシステムを説明する図である。図3に示すように、旋回作業機1は、制御装置30と、記憶装置34と、表示装置35と、を備えている。制御装置30、記憶装置34、及び表示装置35は、CAN(Controller Area Network)やフレックスレイ(FlexRay)等の車載用通信ネットワークNによって、相互通信が可能である。
制御装置30は、旋回作業機1が有する様々な機器を制御する装置である。制御装置30は、電気・電子部品、及びプログラム等から構成されている。記憶装置34は、不揮発性のメモリ等であり、オペレーティングシステムや、様々なアプリケーションソフト(Application software)を記憶しており、種々のプログラム等や旋回作業機1に関する様々な情報を記憶することができる。
【0019】
表示装置35は、旋回作業機1に関する情報等、旋回作業機1について様々な表示する表示画面35aを備えている。例えば、旋回作業機1は、走行機構12の速度(車速)を検出する車速検出装置(車速センサ)53を備え、表示装置35は、当該車速検出装置53が検出した車速を表示画面35aに表示することができる。車速検出装置53は、制御装置30と接続されており、検出した車速に関する信号(車速信号)を制御装置30に出力する。制御装置30は、当該車速信号に基づいて表示装置35に車速を表示させる。表示装置35の表示画面35aは、キャビン5の室内における運転席6に着座した作業者から視認可能な位置(例えば、運転席6の前方、斜め前方、或いは側方)に配置されている。なお、表示画面35aは、旋回作業機1に関する様々な設定を行うことが可能であってもよい。
【0020】
旋回作業機1は、旋回台2に設けられた位置検出装置50が検出した検出位置Pdの位置情報に基づいて、旋回台2の方位Dを演算することができる。さらに、旋回作業機1は、演算した旋回台2の方位Dに基づいて、揺動体の位置Pwを演算することができる。ここで、旋回台2の方位Dとは、例えば旋回台2における作業装置20が向く水平面内の方向であって、旋回軸心Xを通る前後方向に延びる直線SLのうち、作業装置20の先端側(バケット25側)が指し示す方向である。なお、旋回台2の方位Dは、旋回軸心Xを基準とした、旋回台2上の所定の点を指し示す水平面内の方向であればよく、直線SLのうち、作業装置20の先端側が指し示す方向に限定されない。
【0021】
以下、旋回作業機1による旋回台2の方位Dの演算について詳しく説明する。図3に示すように、旋回作業機1は、位置検出装置50と、傾斜検出装置51と、角度検出装置52と、演算部(方位演算部)31と、を備えている。
位置検出装置50は、自己の位置である検出位置Pdを検出する装置である。位置検出装置50は、検出位置Pdの位置情報(緯度、経度を含む測位情報であって、本実施形態においては位置座標)を信号(位置信号)として、制御装置30に出力する。本実施形態においては、位置検出装置50は、全地球航法衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)の一例である周知のGPS(Global Positioning System)を利用して検出位置Pdを検出する。図1図2に示すように、位置検出装置50は、旋回軸心Xから離れた位置に配置されている。
【0022】
図4は、旋回台2が旋回軸心X廻りに回転している場合を示す平面図である。図4に示すように、下部走行体10が走行を停止している場合において、旋回台2が旋回軸心X廻りに回転すると、位置検出装置50のうち、検出位置Pdに対応する位置P´は、旋回軸心Xと位置P´との間の距離L1を半径R1とする円弧状の軌跡を描く。図5は、旋回台2が旋回軸心X廻りに回転した場合における検出位置Pdを示す平面図である。
【0023】
なお、図5等におけるx軸方向は、経度方向と一致し、y軸方向は、緯度方向と一致する。また、図5等においては、説明の都合上、下部走行体10の進行方向(前後方向)がy軸方向を向き、下部走行体10の幅方向がx軸方向を向いている場合を例示している。
位置検出装置50は、図1図2に示すように、本実施形態においては、ブラケット50aを介して、キャビン5の後上部に取り付けられている。また、図2に示す例においては、位置検出装置50は、旋回基板17の幅方向の中央に設けられている。
【0024】
なお、位置検出装置50の取り付け位置は、図1図2等に示す位置に限定されず、旋回台2のうち、旋回軸心Xから水平方向に離れた所定の位置を検出することができればよい。例えば、位置検出装置50は、キャビン5のルーフ5aに取り付けられていてもよいし、旋回台2に設けられたウエイト18、フレーム(図示略)、又は外装カバー9に設けられていてもよい。ただし、GNSSの測位信号の受信精度を高めるためには、旋回台2における比較的高い位置に位置検出装置50を設けることが好ましい。また、方位Dの検出精度を高めるためには、旋回軸心Xからの水平方向の距離が大きい位置に位置検出装置50を設けることが好ましい。
【0025】
以下、説明の都合上、図2に示すように位置検出装置50がキャビン5の後上部に取り付けられ、旋回軸心Xよりも後方であって、且つ幅方向の中央に配置されている場合を例に説明する。
傾斜検出装置51は、水平面に対する旋回台2の傾斜角度を検出する装置である。傾斜検出装置51は、検出した旋回台2の傾斜角度を信号(傾斜信号)として、制御装置30に出力する。本実施形態において、傾斜検出装置51は、慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)である。慣性計測装置は、加速度を検出する加速度センサ、角速度を検出するジャイロセンサ等を有している。慣性計測装置は、旋回台2、例えば、運転席6の下方に設けられ、旋回台2のロール角、ピッチ角、ヨー角等を検出することができる。なお、傾斜検出装置51は、旋回台2の傾斜角度として、ロール角及びピッチ角を検出することができればよく、上述したような慣性計測装置に限定されず、2軸チルトセンサであってもよい。
【0026】
角度検出装置52は、下部走行体10に対する旋回台2の旋回軸心X廻りの旋回角度θを検出する装置である。角度検出装置52は、検出した旋回角度θを信号(角度信号)として、制御装置30に出力する。本実施形態において、角度検出装置52は、ロータリエンコーダである。本実施形態において、旋回角度θは、旋回台2が初期位置(例えば作業装置20の前部と、下部走行体10の前部とが一致している場合の旋回台2の位置)における直線SLと、旋回台2が回転した後の位置における直線SLとが形成する角度である。
【0027】
また、角度検出装置52は、インクリメンタル形のロータリエンコーダである。このため、角度検出装置52は、旋回角度θを示す角度信号として、軸の回転変位量に対応するパルスを制御装置30に出力する。なお、角度検出装置52は、インクリメンタル形のロータリエンコーダに限定されず、アブソリュート形のロータリエンコーダであってもよい。斯かる場合、角度検出装置52は、旋回角度θを示す角度信号として、原点からの絶対位置を回転角度に対応するコードを制御装置30に出力する。
【0028】
なお、角度検出装置52は、旋回角度θを検出することができればよく、ロータリエンコーダに限定されない。また、角度検出装置52は、旋回台2に設けられていてもよく、下部走行体10に設けられていてもよい。
演算部31は、制御装置30に設けられた電気・電子部品、及び記憶装置34に組み込まれたプログラム等から構成されている。演算部31は、位置検出装置50が検出した検出位置Pdに基づいて、旋回台2の方位Dを演算する。詳しくは、演算部31は、下部走行体10が走行してから停止し、且つ旋回台2が最初に旋回軸心X廻りに回転をした際において、当該旋回台2が回転を開始してから当該回転を停止(終了)するまでの複数の検出位置Pdに基づく円又は楕円の近似線ALを演算する。演算部31は、当該近似線ALに基づいて旋回軸心Xの軸心位置(旋回軸心Xの位置座標)Pxを演算する。また、演算部31は、軸心位置Pxと、検出位置Pd(軸心位置Pxの演算に用いた検出位置Pdのうちのいずれか)と、に基づいて旋回台2の方位D(旋回台2が回転を停止した際において、旋回軸心Xを通る前後方向に延びる直線SL2のうち、作業装置20の先端側が指し示す方向である基準方位D1)を演算する。本実施形態においては、演算部31は、軸心位置Pxと、軸心位置Pxの演算に用いた検出位置Pdのうちのいずれかの平均であり、且つ旋回台2が回転を停止した際の位置を示す基準位置Ppと、に基づいて基準方位D1を演算する。そして、演算部31は、基準方位D1に対応する旋回位置から現在の旋回位置までの旋回角度θ(旋回台2が回転を停止した際の旋回角度θと現在の旋回角度θとの差)と、基準方位D1と、に基づいて、旋回台2の現在の方位(旋回軸心Xを通る前後方向に延びる直線SL3のうち、作業装置20の先端側が指し示す方向)D2を演算する。
【0029】
図3に示すように、演算部31は、第1取得部31aと、第2取得部31bと、第3取得部31cと、第4取得部31dと、第1算出部31eと、フィルタ処理部31fと、第2算出部31gと、第3算出部31hと、第4算出部31iと、を有している。第1取得部31a、第2取得部31b、第3取得部31c、第4取得部31d、第1算出部31e、フィルタ処理部31f、第2算出部31g、第3算出部31h、及び第4算出部31iは、制御装置30に設けられた電気・電子部品、及び記憶装置34に組み込まれたプログラム等から構成されている。
【0030】
第1取得部31aは、車速検出装置53から制御装置30に出力された車速信号に基づいて、下部走行体10の車速を取得する。第1取得部31aは、車速信号と、記憶装置34に記憶された演算式又は演算マップ等と、に基づいて、車速を取得する。第1取得部31aは、例えば、車速検出装置53が検出する車速のうち、下部走行体10が前進している場合の車速を正の値とし、後進している場合の車速を負の値として取得する。
【0031】
第2取得部31bは、位置検出装置50が制御装置30に取得された位置信号に基づいて、検出位置Pdの位置情報(位置座標)を取得する。第2取得部31bは、位置信号と、記憶装置34に記憶された演算式等と、に基づいて、位置検出装置50が検出した検出位置Pdを位置座標として取得する。なお、第2取得部31bは、位置情報と、位置検出装置50が当該検出位置Pdを検出した時刻と、を対応付けて記憶装置34に記憶する。
【0032】
第3取得部31cは、傾斜検出装置51から制御装置30に出力された傾斜信号に基づいて、旋回台2のロール角とピッチ角とを取得する。第3取得部31cは、傾斜信号と、記憶装置34に記憶された演算式等と、に基づいて、ロール角及びピッチ角を取得する。
第4取得部31dは、角度検出装置52から制御装置30に出力された旋回信号に基づいて、旋回台2の回転方向及び旋回角度θを取得する。第4取得部31dは、旋回信号と、記憶装置34に記憶された演算式等と、に基づいて、旋回台2の回転方向及び旋回角度θを取得する。
【0033】
例えば、第4取得部31dは、角度検出装置52から入力されたA相のパルスとB相のパルスの出力タイミングによって、旋回台2の回転方向を取得する。また、第4取得部31dは、旋回台2が所定の初期位置に位置している場合を零として、角度検出装置52から入力されたパルスをカウントすることにより、旋回角度θを取得する。このため、第4取得部31dは、カウントを初期化(リセット)することにより、初期位置を再定義することができる。初期位置は、所定の位置であって、任意のタイミングにおいて、第4取得部31dがカウントを初期化した際の旋回台2の回転位置である。また、第4取得部31dは、初期位置における旋回角度θを零として、旋回台2が平面視において反時計回りに回転している場合の旋回角度θを正の値とし、旋回台2が平面視において時計回りに回転している場合の旋回角度θを負の値として取得する。
【0034】
第1算出部31eは、方位Dの演算に用いる検出位置Pd(候補位置Pc)として、位置検出装置50が検出した検出位置Pdから所定の条件を満たす検出位置Pdを抽出する。本実施形態において、候補位置Pcは、下部走行体10が走行してから停止して、旋回台2が最初に回転した際において、回転を開始してから当該回転を停止するまでの検出位置Pdである。
【0035】
第1算出部31eは、第1取得部31aが取得した車速の絶対値が所定の第1閾値(例えば零)を超過している場合、下部走行体10が走行している状態(走行状態)であると判断する。また、第1算出部31eは、第1取得部31aが取得した車速の絶対値が所定の第1閾値以下である場合、下部走行体10が停止している状態(走行停止状態)であると判断する。
【0036】
ここで、旋回作業機1で作業を行う場合、作業者は、旋回作業機1を操作して、下部走行体10を走行させて作業場に移動した後に、まず旋回台2を回転させるため、作業を実施する前に特別な操作を経ることなく、作業者が普段の作業を実施する中で、第1算出部31eは、上述した条件を満たす候補位置Pcを抽出することができる。
第1算出部31eは、第4取得部31dが取得した旋回角度θの変化量の絶対値が所定の第2閾値を超過している場合、旋回台2が回転している状態(回転状態)であると判断する。第1算出部31eは、第4取得部31dが取得した旋回角度θの変化量の絶対値が所定の第2閾値以下である場合、下部走行体10が停止している状態(回転停止状態)であると判断する。本実施形態においては、第2閾値は、零であって、第1算出部31eは、角度検出装置52からパルスが入力された場合、旋回台2が回転状態であると判断し、角度検出装置52からパルスが入力されていない場合、旋回台2が回転停止状態であると判断する。
【0037】
このため、第1算出部31eは、下部走行体10が回転停止状態から回転状態に移行し、角度検出装置52からパルスが入力された場合に、旋回台2が回転を開始したと判断する。一方、第1算出部31eは、下部走行体10が回転状態から回転停止状態に移行し、角度検出装置52からパルスが入力されなくなった場合に、旋回台2が回転を停止したと判断する。
【0038】
なお、候補位置Pcの条件は、上述した条件に限定されず、第1算出部31eは、旋回台2が回転を開始する前の所定時間内の検出位置Pd、及び旋回台2が回転を停止した後の所定時間内の検出位置Pdを候補位置Pcとして算出してもよい。
また、以下の説明において、第1算出部31eが候補位置Pcを算出する際に、旋回台2が回転を開始してから当該回転を停止するまでの旋回角度θの変化量を「基準角度θb」として説明することがある。つまり、図5に示すように、基準角度θbは、旋回台2が回転を開始した際において、旋回軸心Xを通る前後方向に延びる直線SL1と、直線SL2と、が形成する角度である。
【0039】
また、以下の説明において、第1算出部31eによって旋回台2が回転を停止したと判断した時点において、第2取得部31bが取得した検出位置Pdのことを「停止位置Pe」として説明する場合がある。
また、上述した一例において、第1算出部31eは、第1取得部31aが取得した車速に基づいて、下部走行体10が走行状態から走行停止状態に移行したか否かを判断するが、制御装置30が操作機器40の操作情報を取得できる場合、第1算出部31eは、当該操作情報に基づいて下部走行体10の状態(走行状態及び走行停止状態)を判断してもよい。また、第1算出部31eは、角度検出装置52から制御装置30に出力された旋回信号に基づいて、旋回台2が回転を開始したかを判断し、当該回転が停止したかを判断しているが、制御装置30が操作機器40の操作情報を取得できる場合、第1算出部31eは、当該操作情報に基づいて旋回台2の状態(回転状態及び回転停止状態)を判断してもよい。
【0040】
フィルタ処理部31fは、旋回台2が回転した際の複数の候補位置Pc(検出位置Pd)のフィルタリング(フィルタ処理)を行う。フィルタ処理部31fは、所定のエリアE外に位置する候補位置Pcを排除する。図6Aは、フィルタ処理部31fのフィルタリングの一例を説明する第1図である。図6Bは、フィルタ処理部31fのフィルタリングの一例を説明する第2図である。
【0041】
エリアEは、緯度と経度で示す位置座標の領域であって、図6Aに示すように、旋回軸心Xから位置検出装置50が検出する位置P´までの長さR1を半径とする円弧を含む略円弧状の領域である。なお、図6A図6Bにおいて、エリアE内に位置する候補位置Pcを黒点で記載し、エリアE外に位置する候補位置Pcを白点で記載している。
また、エリアEの中心角θeの大きさは、基準角度θbに対応している。なお、エリアEの中心角θeの大きさは、基準角度θbに対応していればよく、基準角度θbよりも所定値だけ大きくてもよい。エリアEの径方向の長さ(幅W)は、位置検出装置50が検出する検出位置Pdの誤差に応じて定義された大きさである。例えば、幅Wは、位置検出装置50が検出する検出位置Pdの誤差の大きさの2倍の大きさである。
【0042】
なお、幅Wは、検出位置Pdの誤差の大きさに応じた値であることが好ましく、2倍に限定されない。また、幅Wは、記憶装置34に予め記憶されている値であって、作業者が表示装置35等を操作して任意に変更できる構成であってもよい。このため、作業者が表示装置35等を操作して幅Wを小さくすることで軸心位置Pxの算出の精度を向上するよう設定できる。
【0043】
フィルタ処理部31fは、記憶装置34に記憶された演算式(第1演算式)や各種パラメータ(長さR1、幅W、基準角度θb等)に基づいてエリアEを演算する。演算式は、円又は楕円の方程式と各種パラメータに基づいて定義された数式である。また、フィルタ処理部31fは、傾斜検出装置51が検出した傾斜角度(ロール角及びピッチ角)に基づいて、エリアEを補正する。フィルタ処理部31fは、記憶装置34に記憶された演算式(第2演算式)と傾斜角度とに基づいてエリアEを補正する。
【0044】
このため、旋回台2が水平であって、第3取得部31cが取得した傾斜角度が零である場合、図6Aに示すように、エリアEは、半径R2が長さR1よりも幅Wの1/2大きい円(外円)C1と、半径R3が長さR1よりも幅Wの1/2小さい円(内円)C2と、に囲まれ、且つ中心角θeの大きさが基準角度θbと同値の領域である。外円C1及び内円C2は、同心円状に配置され、且つそれぞれ真円を描く。
【0045】
フィルタ処理部31fは、旋回台2が水平である場合のエリアEを基準エリアEbとして、当該基準エリアEbを傾斜角度に基づいて補正する。このため、旋回作業機1が傾斜地に位置し、旋回台2が傾いており、第3取得部31cが取得した傾斜角度(ロール角及びピッチ角)が零以外である場合、フィルタ処理部31fは、基準エリアEbを当該傾斜角度だけ傾斜した領域に補正する。即ち、外円C1及び内円C2は、同心円状に配置され、且つそれぞれ楕円を描く。
【0046】
また、フィルタ処理部31fは、演算したエリアEをより多くの候補位置PcがエリアE内に位置するよう移動させ、エリアE外に位置する候補位置Pcを排除することで掃引を行う。
なお、上述した実施形態において、フィルタ処理部31fは、第1演算式及び各種パラメータに基づいて基準エリアEbを演算し、第2演算式及び傾斜角度に基づいて当該基準エリアEbを補正しているが、記憶装置34は、第1演算式と第2演算式を組み合わせた単一の演算式を記憶し、フィルタ処理部31fは、当該単一の演算式と、各種パラメータ(長さR1、幅W、基準角度θb、及び傾斜角度)に基づいてエリアEを演算してもよい。
【0047】
第2算出部31gは、フィルタ処理部31fがフィルタリングした複数の候補位置Pc(検出位置Pd)に基づいて、円又は楕円の近似線ALを算出(演算)する。第2算出部31gは、近似線ALを緯度と経度で示す座標系の近似式によって算出する。図7Aは、第2算出部31gが算出した近似線ALの一例を示す第1図である。図7Bは、第2算出部31gが算出した近似線ALの一例を示す第2図である。
【0048】
第2算出部31gは、旋回台2が回転した際の複数の検出位置Pdに対して、円又は楕円の方程式の最小二乗法を用いて、近似線ALを算出する。最小二乗法のモデル関数は、傾斜角度に基づいて楕円の方程式を補正した演算式であって、各種パラメータ(長さR1、傾斜角度)を代入して用いられる。
このため、旋回台2が水平であって、第3取得部31cが取得した傾斜角度が零である場合、図7Aに示すように、第2算出部31gが算出した近似線ALは、半径が長さR1の真円となる。一方、旋回台2が傾いており、第3取得部31cが取得した傾斜角度(ロール角及びピッチ角)が零以外である場合、図7Bに示すように、第2算出部31gが算出した近似線ALは、半径が長さR1の真円を傾斜角度で補正した楕円となる。
【0049】
第3算出部31hは、第2算出部31gが算出した近似線ALに基づいて、当該近似線ALの中心の位置(中心位置)Poを旋回軸心Xの軸心位置Pxとして算出(演算)する。また、第3算出部31hは、算出した軸心位置Pxと、基準位置Ppと、に基づいて、軸心位置Pxと基準位置Ppを通る直線SL2を旋回台2の方位D(基準方位D1)として算出する。図8は、第3算出部31hが算出した基準方位D1及び第4算出部31iが算出した現在の方位D2の一例を示す図である。
【0050】
第3算出部31hは、基準方位D1を緯度と経度で示す座標系の数式で算出する。第3算出部31hは、位置検出装置50が検出した検出位置Pdから少なくとも停止位置Peを含む検出位置Pd(終了位置Pa)を抽出し、当該検出位置Pdに基づいて基準位置Ppを算出する。終了位置Paとは、第1算出部31eによって旋回台2が回転を停止したと判断した時点の前後の所定時間内において、第2取得部31bが取得した複数の検出位置Pdである。第3算出部31hは、複数の終了位置Paの位置情報の平均値に基づいて基準位置Ppを算出する。
【0051】
なお、図8において、終了位置Paを白点で記載し、基準位置Ppを黒点で記載している。
また、本実施形態においては、第3算出部31hは、複数の位置情報の平均値を基準位置Ppとして算出するが、第3算出部31hは、少なくとも停止位置Peを含む検出位置Pdに基づいて基準位置Ppを算出すればよく、第3算出部31hが参照する検出位置Pd(終了位置Pa)は、停止位置Peのみであってもよいし、停止位置Peを含む2つ以上の検出位置Pdであってもよい。
【0052】
第3算出部31hは、基準方位D1を算出すると、第4取得部31dのカウントを初期化させ、初期位置を再定義させる。つまり、再定義された初期位置において、旋回軸心Xを通る前後方向に延びる直線は、直線SL2である。
第4算出部31iは、基準方位D1と、旋回角度θに基づいて、旋回台2の現在の方位D2を算出(演算)する。第4算出部31iは、基準方位D1に対応する旋回位置から現在の旋回位置までの旋回角度θ(旋回台2が回転を停止した際の旋回角度θと現在の旋回角度θとの差)と、基準方位D1と、に基づいて、旋回台2の現在の方位D2を算出する。なお、本実施形態においては、第3算出部31hによって、第4取得部31dのカウントが初期化され、初期位置が再定義されるため、旋回台2が回転を停止した際の旋回角度θは、零である。
【0053】
第4算出部31iは、現在の旋回角度θと基準方位D1とに基づいて、旋回台2の現在の方位D2を緯度と経度で示す座標系の数式で算出する。本実施形態において、現在の旋回角度θは、現在の位置において旋回軸心Xを通る前後方向に延びる直線SL3と、直線SL2と、が形成する角度である。現在の旋回角度θと基準方位D1とに基づいて、旋回台2の現在の方位D2を緯度と経度で示す座標系の数式で算出する。即ち、第2取得部31bが取得した旋回角度θが正の値である場合、第4算出部31iは、軸心位置Pxを中心として基準方位D1を変化量だけ、反時計回りに傾けることで現在の方位D2を算出する。一方、第2取得部31bが取得した旋回角度θが負の値である場合、第4算出部31iは、基準方位D1を変化量だけ、軸心位置Pxを中心として時計回りに傾けることで現在の方位D2を算出する。
【0054】
図9は、演算部31が方位Dを演算する一連の流れを説明する図である。以下、図9を用いて、第1算出部31eによる候補位置Pcの抽出、フィルタ処理部31fによる候補位置Pcのフィルタリング、第2算出部31gによる近似線ALの算出、第3算出部31hによる軸心位置Px及び基準方位D1の算出、並びに第4算出部31iによる現在の方位D2の算出の一連の流れについて説明する。
【0055】
まず、第1算出部31eは、第1取得部31aが取得した車速に基づいて、下部走行体10が走行状態か否かを判断する(S10)。第1算出部31eは、下部走行体10が走行状態であると判断すると(S10,Yes)、第1算出部31eが第1取得部31aの取得した車速に基づいて、下部走行体10が走行状態から走行停止状態に移行したか否かを判断する(S11)。第1算出部31eは、下部走行体10が走行状態から走行停止状態に移行していないと判断した場合(S11,No)、S11の処理を継続し、下部走行体10が走行状態から走行停止状態に移行したと判断した場合(S11,Yes)、第4取得部31dが取得した旋回信号に基づいて、旋回台2が回転を開始したか否かを判断する(S12)。
【0056】
第1算出部31eが、旋回台2は回転を開始していないと判断すると(S12,No)、S12の処理を継続し、旋回台2は回転を開始したと判断すると(S12,Yes)、位置検出装置50が検出位置Pdを検出する(S13)。第2取得部31bは、位置検出装置50が検出した位置情報を記憶装置34に記憶させる。第1算出部31eは、第4取得部31dが取得した旋回信号に基づいて、旋回台2が回転を停止したか否かを判断する(S14)。
【0057】
第1算出部31eは、旋回台2が回転を停止していないと判断した場合(S14,No)、即ち旋回台2が回転を停止するまでの間、S13の処理を実行する。一方、第1算出部31eは、旋回台2が回転を停止したと判断すると(S14,Yes)、第1算出部31eが旋回台2は回転を開始したと判断してから(S12,Yes)、旋回台2は回転を停止したと判断する(S14,Yes)までの間(旋回期間)において、記憶装置34から第2取得部31bが取得した位置情報の抽出を行い、候補位置Pcとして算出する(S15)。このため、第1算出部31eは、下部走行体10が走行してから停止した際に、旋回台2が旋回することで候補位置Pcを算出することができる。
【0058】
なお、以下の説明において、旋回台2を旋回軸心X廻りに回転させて、位置検出装置50により複数の検出位置Pdを検出するS12~S14のようなステップのことを第1ステップということがある。
第1算出部31eがS15の処理を行うと、フィルタ処理部31fは、第1演算式や各種パラメータに基づいてエリアEを演算する(S16)。フィルタ処理部31fは、エリアEを演算すると(S16)、より多くの候補位置PcがエリアE内に位置するよう当該エリアEを移動させる(S17)。フィルタ処理部31fは、エリアE外に位置する候補位置Pcを排除することで掃引を行う(S18)。
【0059】
フィルタ処理部31fがS18の処理を行うと、第2算出部31gは、フィルタ処理部31fがフィルタリングした複数の候補位置Pcに対して、円又は楕円の方程式の最小二乗法を用いて、近似線ALを算出する(S19)。
第2算出部31gがS19の処理を行うと、第3算出部31hは、第2算出部31gが算出した近似線ALに基づいて、当該近似線ALの中心位置Poを旋回軸心Xの軸心位置Pxとして算出する(S20)。言い換えると、S20は、第1ステップ(S13)において、位置検出装置50が検出した複数の検出位置Pdに基づいて、旋回軸心Xの軸心位置Pxを演算するステップ(第2ステップ)である。また、第3算出部31hは、位置検出装置50が検出した検出位置Pdから少なくとも停止位置Peを含む検出位置Pd(終了位置Pa)を抽出し、当該検出位置Pdに基づいて基準位置Ppを算出する(S21)。
【0060】
第3算出部31hは、S20で算出した軸心位置Pxと、S21で算出した基準位置Ppと、に基づいて、軸心位置Pxと基準位置Ppを通る直線を旋回台2の方位D(基準方位D1)として算出して、当該基準方位D1を記憶装置34に記憶させる(S22)。つまり、S22は、第2ステップで演算した軸心位置Pxと、基準位置Ppと、に基づいて旋回台2の方位Dを演算するステップである(第3ステップ)。
【0061】
第3算出部31hは、基準方位D1を算出すると(S22)、第4取得部31dのカウントを初期化させ、初期位置を再定義させる(S23)。第3算出部31hがS23の処理を停止すると、第1算出部31eがS10の処理を実行する。
また、第1算出部31eが下部走行体10は走行停止状態であると判断すると(S10,No)、第4算出部31iは、記憶装置34に軸心位置Px及び基準方位D1が記憶されているか否かを判断する(S24)。第4算出部31iは、記憶装置34に軸心位置Px及び基準方位D1が記憶されていると判断した場合(S24,Yes)、記憶装置34に記憶された軸心位置Px及び基準方位D1、並びに第4取得部31dが取得した旋回角度θに基づいて、現在の方位D2を算出する(S25)。
【0062】
第4算出部31iが現在の方位D2を算出すると(S25)、一連の処理を停止する。なお、第4算出部31iが記憶装置34に軸心位置Px及び基準方位D1が記憶されていないと判断した場合(S24,No)、第1算出部31eは、S10の処理を実行する。
このため、下部走行体10が走行状態になると(S10,Yes)、S11~S22の処理によって基準方位D1が再定義されることになる。一方、下部走行体10が走行停止状態を維持され(S10,No)、記憶装置34に軸心位置Px及び基準方位D1が記憶されている場合(S24,Yes)、第4算出部31iは、S11~S22の処理によって算出された基準方位D1に基づいて現在の方位D2を算出することになる(S25)。
【0063】
これにより、旋回作業機1が備える位置検出装置50が単一である場合であっても、旋回台2の方位Dを演算することができる。このため、旋回台2(旋回作業機1)の方位Dを演算する機能を低コストで導入することができる。また、基準方位D1と、旋回角度θと、に基づいて現在の方位D2を演算するため、基準方位D1の演算後には、位置検出装置50の検出誤差が発生せず、演算部31は、より精度高く現在の方位D2を演算することができる。
【0064】
次に、旋回作業機1における揺動体の位置Pwの演算について詳しく説明する。図3に示すように、旋回作業機1は、位置演算部32を有している。位置演算部32は、制御装置30に設けられた電気・電子部品、及び記憶装置34に組み込まれたプログラム等から構成されている。位置演算部32は、旋回作業機1に設けられたセンサが検出した信号と、演算部31が演算した旋回台2の方位D(現在の方位D2)と、に基づいて、揺動体の位置Pwを演算できる。位置演算部32が演算した揺動体の位置Pwは、例えば表示装置35に表示される。また、位置演算部32が演算した揺動体の位置Pwと、記憶装置34に記憶された位置情報とに基づいて、旋回作業機1が自律して作業を行うような構成であってもよい。
【0065】
図10は、揺動体の位置Pwの算出について説明する図である。図10に示すように、本実施形態において、位置演算部32は、揺動体の位置Pwとして、作業装置20が作業を行う位置(作業位置)Pwを演算する。特に、位置演算部32は、作業位置Pwとして、揺動体のうちバケット爪25Cの位置座標を演算する。なお、位置演算部32が演算する作業位置Pwは、バケット爪25Cの位置座標に限定されず、バケット25の底壁25Bの中央部等であってもよい。
【0066】
例えば、作業装置20には、第1回転軸22、第2回転軸24、及び第3回転軸26の回転角度を検出する角度センサ54(ブーム角度センサ54a、アーム角度センサ54b、作業具角度センサ54c、スイング角度センサ54d)が設けられている。角度センサ54は、例えば制御装置30に接続され、且つ検出した回転角度を信号として制御装置30に出力するポテンショメータである。
【0067】
具体的には、ブーム角度センサ54aは、ブーム21の揺動角度(回動位置)を検出し、アーム角度センサ54bは、アーム23の揺動角度(回動位置)を検出する。作業具角度センサ54cは、アーム23の先端側に対するバケット25の揺動角度(回動位置)を検出し、スイング角度センサ54dは、支持ブラケット7に対するスイングブラケット8の揺動角度(回動位置)を検出する。
【0068】
位置演算部32は、角度センサ54が検出した回転角度と、記憶装置34に記憶されている演算式と、に基づいて、旋回軸心Xから作業位置Pwまでの長さ(前後方向の長さL2、幅方向の長さL3)を演算する。位置演算部32は、演算した長さL2,L3と、第3取得部31cが取得した傾斜角度と、現在の方位D2を示す数式と、軸心位置Pxと、に基づいて、作業位置Pwを算出する。
【0069】
なお、位置演算部32は、作業位置Pwを算出できればよく、角度センサ54は、ポテンショメータに限定されず、例えば、ブームシリンダ21a、アームシリンダ23a、バケットシリンダ25a、及びスイングシリンダのストローク(伸長位置)を検出し、その検出結果からブーム21、アーム23、バケット25、及びスイングブラケット8の揺動角度を演算するようにしてもよい。また、作業装置20の周辺を撮像する撮像装置(カメラ)を用いて、ブーム21、アーム23、バケット25、及びスイングブラケット8の揺動角度を検出するような構成であってもよい。
【0070】
なお、上述した実施形態においては、下部走行体10が走行状態になると(S10,Yes)、演算部31は、S11~S22の処理によって基準方位D1を再定義していたが、所定の条件を満たす場合、基準方位D1を初期化しない構成であってもよい。図11は、第1の変形例における方位Dの演算を説明する図である。図11に示すように、下部走行体10が走行停止状態から走行状態に移行し、演算部31が基準方位D1を算出した際の位置から前方又は後方に直進走行した場合において、旋回台2の旋回角度θが維持されている場合には、演算部31は、基準方位D1を更新せず、軸心位置Pxを補正してもよい。
【0071】
図12は、第1の変形例において演算部31が方位Dを演算する一連の流れの一部を説明する図である。図12に示すように、S10において第1算出部31eが下部走行体10は走行状態であると判断してから、下部走行体10が走行状態から走行停止状態に移行したと判断する(S11,Yes)までの間(移動期間)において、下部走行体10が直進方向に前進又は後進を継続し、旋回動作を行わなかった場合、演算部31は、軸心位置Pxを補正する処理を実行する。
【0072】
図13は、第1の変形例における旋回作業機1のシステムを説明する図である。図13に示すように、演算部31は、補正部31jを有している。補正部31jは、移動期間において旋回台2が回転しないで、下部走行体10が直進走行を継続している場合、当該移動期間の始点Sと、終点Gと、において位置検出装置50が検出した検出位置Pdの位置情報に基づいて軸心位置Pxを補正する。
【0073】
補正部31jは、第4取得部31dが取得した旋回角度θに基づいて、旋回台2の旋回角度θが維持されているか否かを判断する。また、補正部31jは、操作機器40の操作情報に基づいて、下部走行体10が直進走行を維持しているか、旋回走行を行っているかを判断する。補正部31jは、第2取得部31bが取得した検出位置Pdの位置情報に基づいて、移動期間の始点Sにおける検出位置Psの位置情報と、終点Gにおける検出位置Pgの位置情報と、を取得する。
【0074】
また、補正部31jは、始点Sにおける検出位置Psの位置情報と、終点Gにおける検出位置Pgの位置情報と、に基づいて、移動期間において下部走行体10が移動した距離(経度方向の移動距離Lx、及び緯度方向の移動距離Ly)を演算する。そして、補正部31jは、下部走行体10が移動した移動距離Lx,Lyと同じだけ軸心位置Pxをオフセットすることで、軸心位置Pxを補正する。補正部31jは、補正後の軸心位置Pxを記憶装置34に記憶されている軸心位置Pxに上書きして記憶させる。
【0075】
以下、図12を用いて、補正部31jによる軸心位置Pxの補正について説明する。
図12に示すように、第1算出部31eが下部走行体10は走行状態であると判断すると(S10,Yes)、補正部31jは、第4取得部31dが取得した旋回角度θに基づいて、旋回台2の旋回角度θが維持されているか否かを判断する(S31)。補正部31jは、旋回台2の旋回角度θが維持されていると判断した場合(S31,Yes)、操作機器40の操作情報に基づいて、下部走行体10が直進走行しているか否かを判断する(S32)。
【0076】
補正部31jは、下部走行体10が直進走行していると判断すると(S32,Yes)、第1取得部31aの取得した車速に基づいて、下部走行体10が走行状態から走行停止状態に移行したか否かを判断する(S33)。補正部31jは、下部走行体10が走行状態から走行停止状態に移行していないと判断した場合(S33,No)、S31の処理を実行する。一方、補正部31jは、下部走行体10が走行状態から走行停止状態に移行したと判断した場合(S33,Yes)、第2取得部31bが取得し且つ記憶装置34に記憶された位置情報に基づいて、移動期間の始点Sにおける検出位置Psの位置情報と終点Gにおける検出位置Pgの位置情報とを取得する(S34)。
【0077】
補正部31jは、始点Sにおける検出位置Psの位置情報と終点Gにおける検出位置Pgの位置情報に基づいて、移動期間において下部走行体10が移動した移動距離Lx,Lyを演算し、下部走行体10が移動した移動距離Lx,Lyと同じだけ軸心位置Pxをオフセットすることで、軸心位置Pxを補正する(S35)。補正部31jが軸心位置Pxを補正すると(S35)、第4算出部31iがS24の処理を実行する。
【0078】
なお、補正部31jが旋回台2の旋回角度θが維持されていないと判断した場合(S31,No)、及び補正部31jが下部走行体10は旋回走行していると判断した場合(S32,No)、第1算出部31eは、S11の処理を実行する。
また、図12に示す例においては、S31において、旋回台2の旋回角度θが維持されているか否かを判断しているが、移動期間の始点Sにおける旋回角度θと終点Gにおける旋回角度θとが同値であればよく、補正部31jは、S31に代えてS33とS34との間において、移動期間の始点Sにおける旋回角度θと終点Gにおける旋回角度θとが同値であるか判断してもよい。斯かる場合、補正部31jは、移動期間の始点Sにおける旋回角度θと終点Gにおける旋回角度θとが同値であると判断すると、S34の処理を実行し、同値でないと判断すると、第1算出部31eがS11の処理を実行する。
【0079】
演算部31は、下部走行体10が走行してから停止した際に、旋回台2が旋回することで基準方位D1を演算していたが、当該旋回台2の旋回角度θの変化量(基準角度θb)が所定の第3閾値以下である場合に、基準方位D1の演算処理をやり直してもよい。図14は、第2の変形例における演算部31が方位Dを演算する一連の流れの一部を説明する図である。以下、図14を用いて、第2の変形例における第1算出部31eの処理について説明する。
【0080】
具体的には、図14に示すように、下部走行体10が走行してから停止して(S11,Yes)、旋回台2は回転を開始し(S12,Yes)、旋回台2が回転を停止しても(S14,Yes)、第1算出部31eは、基準角度θbの絶対値が第3閾値以下であると判断した場合(S41,No)、S12の処理に戻る。斯かる場合、制御装置30は、作業者に対して基準方位D1の算出をやり直す旨の報知を行ってもよい。
【0081】
一方、旋回台2が回転を停止して(S14,Yes)、第1算出部31eは、基準角度θbの絶対値が第3閾値を超過していると判断すると(S41,Yes)、S15の処理に進む。第3閾値は、記憶装置34に予め記憶されている値であって、例えば5°や10°である。なお、第3閾値は、作業者が表示装置35等を操作して任意に変更できる構成であってもよい。
【0082】
報知装置は、例えば制御装置30に接続される装置であって、本実施形態においては、表示装置35である。
図3に示すように、演算部31は、報知制御部33を有している。第1算出部31eが、基準角度θbの絶対値が第3閾値以下であると判断すると(S41,No)、報知制御部33は、当該判断結果を取得し、且つ報知装置を制御して、当該報知装置に作業者への報知を実行させる。報知制御部33は、制御装置30に設けられた電気・電子部品、及び記憶装置34に組み込まれたプログラム等から構成されている。例えば報知制御部33は、表示装置35に報知画面(図示略)を表示させて、基準方位D1の算出をやり直す旨を報知する。詳しくは、報知画面は、作業者に対して操作機器40を操作して、旋回台2を回転させることを促すメッセージ(報知メッセージ)を表示する。
【0083】
なお、上述した実施形態において、報知装置が表示装置35である場合を例に説明したが、報知装置は、表示装置35に限定されず、音声や警告音によって報知を行うスピーカや、点灯や点滅により報知を行うランプであってもよい。斯かる場合において、第1算出部31eが、基準角度θbの絶対値が第3閾値以下であると判断すると(S41,No)、報知制御部33は、スピーカから報知メッセージを出力させたり、ランプを点滅させたりする。
【0084】
また、旋回作業機1は、操作を受け付ける操作具41を備え、演算部31は、当該操作具41の操作に応じて、S11~S22に代えて、或いは加えて当該S11~S12と同様の処理を行って基準方位D1を再定義(初期化)してもよい。図15は、第3の変形例における旋回作業機1のシステムを説明する図である。図15に示すように、操作具41は、制御装置30と通信可能に接続され、且つ操作を受け付けるスイッチである。操作具41は、操作を受け付けると、旋回台2を所定の旋回角度θ(例えば5°以上、又は10°以上等)だけ回転させるよう指示する指示信号を制御装置30に出力する。操作具41は、例えば押圧操作可能なプッシュスイッチである。なお、操作具41は、プッシュスイッチに限定されず、表示装置35が操作を受け付けるタッチパネルである場合、表示装置35に表示されたアイコン等の表示画像であってもよい。
【0085】
また、演算部31は、旋回制御部31kを有している。旋回制御部31kは、操作具41の操作に応じて、コントロールバルブを制御し、旋回モータMTによって旋回台2を所定の方向に所定の旋回角度θだけ回転させる。旋回制御部31kが操作具41の操作に応じて旋回台2を回転させる方向、及び旋回角度θは、設定情報として記憶装置34に予め記憶されており、作業者が表示装置35等を操作して任意に変更できる構成であってもよい。なお、旋回制御部31kは、操作具41から入力された指示信号に基づいて、旋回台2を所定の方向に所定の旋回角度θだけ回転させたあと、当該旋回角度θを維持してもよいし、後述するS54の処理が完了後、元の旋回角度θに戻すよう、所定の方向と反対方向に旋回台2を回転させてもよい。
【0086】
図16は、第3の変形例における演算部31が方位Dを演算する一連の流れの一部を説明する図である。以下、図16を用いて、操作具41が操作された場合に演算部31による方位Dの演算について説明する。
第1算出部31eがS10において下部走行体10が走行停止状態であると判断すると(S10,No)、旋回制御部31kは、操作具41から指示信号が入力されているか否かを判断する(S51)。旋回制御部31kは、操作具41から指示信号が入力されていると判断した場合(S51,Yes)、記憶装置34に記憶された設定情報に基づいて旋回モータMTを制御し、旋回台2を所定方向に回転を開始する(S52)。
【0087】
旋回制御部31kが旋回台2の回転を開始すると(S52)、位置検出装置50が検出位置Pdを検出する(S53)。第2取得部31bは、位置検出装置50が検出した位置情報を記憶装置34に記憶させる。第1算出部31eは、第4取得部31dが取得した旋回信号に基づいて、旋回台2が回転を停止したか否かを判断する(S54)。
第1算出部31eは、旋回台2が回転を停止していないと判断した場合(S54,No)、即ち旋回台2が回転を停止するまでの間、S53の処理を実行する。一方、第1算出部31eは、旋回台2が回転を停止したと判断すると(S54,Yes)、旋回制御部31kが旋回台2の回転を開始してから(S52)、旋回台2は回転を停止したと判断する(S54,Yes)までの間(旋回期間)において、記憶装置34から第2取得部31bが取得した位置情報の抽出を行い、候補位置Pcとして算出する(S55)。このため、第1算出部31eは、操作具41の操作に応じて旋回制御部31kが旋回台2を回転することで候補位置Pcを算出することができる。第1算出部31eは、S55の処理を実行すると、フィルタ処理部31fがS16の処理を実行する。
【0088】
また、旋回制御部31kが操作具41から指示信号が入力されていないと判断した場合(S51,No)、第4算出部31iは、S24の処理を実行する。
なお、S52~S54は、旋回台2を旋回軸心X廻りに回転させて、位置検出装置50により複数の検出位置Pdを検出するため、第1ステップといえる。
上述した旋回作業機1は、上下方向に延びる旋回軸心X廻りに回転可能な旋回台2と、旋回台2に設けられた作業装置20と、旋回台2に設けられ、且つ位置を検出する位置検出装置50と、位置検出装置50が検出した検出位置Pdに基づいて、旋回台2の方位Dを演算する演算部31と、を備え、演算部31は、旋回台2が旋回軸心X廻りに回転をした際の複数の検出位置Pdに基づいて、旋回軸心Xの軸心位置Pxを演算し、軸心位置Pxと、検出位置(基準位置)Ppと、に基づいて旋回台2の方位Dを演算する。
【0089】
上記構成によれば、旋回作業機1が備える位置検出装置50が単一である場合であっても、旋回台2の方位Dを演算することができる。このため、旋回台2(旋回作業機1)の方位Dを演算する機能を低コストで導入することができる。
また、演算部31は、旋回台2が回転を開始してから回転を停止するまでの複数の検出位置Pdに基づいて、旋回軸心Xの軸心位置Pxを演算する。
【0090】
上記構成によれば、旋回台2の回転時の検出位置Pdのうち、演算に用いる検出位置Pdが多く、それぞれの離間距離を大きくすることができるため、演算部31は、旋回軸心Xの軸心位置Pxを精度高く演算することができる。
また、旋回作業機1は、旋回台2に設けられ、且つ当該旋回台2の旋回軸心X廻りの旋回角度θを検出する角度検出装置52を備え、演算部31は、軸心位置Pxと、前記軸心位置Pxの演算に用いた検出位置Pdのうちのいずれかと、に基づいて演算した旋回台2の方位Dを基準方位D1として、基準方位D1と、基準方位D1に対応する旋回位置から現在の旋回位置までの旋回角度θと、に基づいて、旋回台2の現在の方位D2を演算する。
【0091】
上記構成によれば、基準方位D1と、旋回角度θと、に基づいて現在の方位D2を演算するため、基準方位D1の演算後に位置検出装置50による位置検出に誤差が生じても、現在の方位D2に影響がないため、演算部31は、より精度高く現在の方位D2を演算することができる。
また、演算部31は、旋回台2が回転を開始してから回転を停止するまでの複数の検出位置Pdに基づいて、旋回軸心Xの軸心位置Pxを演算し、旋回台2が回転を停止した際の旋回角度θと現在の旋回角度θとの差と、基準方位D1と、に基づいて、旋回台2の現在の方位D2を演算する。
【0092】
上記構成によれば、演算部31は、比較的簡単な処理により、精度高く現在の方位D2を演算することができる。
また、演算部31は、旋回台2が回転した際の複数の検出位置Pdをフィルタリングするフィルタ処理部31fを有し、フィルタ処理部31fは、旋回軸心Xから位置検出装置50が検出する位置までの長さを半径とする円弧を含む略円弧状のエリアE外に位置する検出位置Pdを排除する。
【0093】
上記構成によれば、位置検出装置50が検出した検出位置Pdのうち、位置検出に誤差が生じた検出位置Pdを排除することができる。このため、方位Dの演算精度を向上させることができる。
また、旋回作業機1は、旋回台2の傾斜角度を検出する傾斜検出装置51を備え、フィルタ処理部31fは、傾斜検出装置51が検出した傾斜角度に基づいて、エリアEを補正する。
【0094】
上記構成によれば、フィルタ処理部31fは、旋回作業機1が傾斜地に位置している場合であっても、フィルタリングの精度を向上させることができる。
また、演算部31は、旋回台2が回転した際の複数の検出位置Pdに基づいて、円又は楕円の近似線ALを演算し、当該近似線ALに基づいて、軸心位置Pxを演算する。
上記構成によれば、演算部31は、旋回軸心Xの軸心位置Pxを精度高く演算することができる。
【0095】
また、演算部31は、旋回台2が回転した際の複数の検出位置Pdに対して、円又は楕円の方程式の最小二乗法を用いて、近似線ALを演算する。
上記構成によれば、演算部31は、比較的簡単な処理によって、旋回軸心Xの軸心位置Pxを精度高く演算することができる。
また、旋回作業機1は、旋回台2を旋回軸心X廻りに支持し、且つ走行可能な下部走行体10を備え、演算部31は、下部走行体10が走行してから停止した場合において、最初に旋回台2が回転した際の複数の検出位置Pdに基づいて、軸心位置Pxを演算する。
【0096】
上記構成によれば、通常、旋回作業機1で作業を行う場合、作業場に走行後にまず旋回台2を回転させるため、作業を実施する前に特別な操作を経ることなく、普段の作業の中で、軸心位置Pxを演算することができる。
また、位置検出装置50は、旋回軸心Xから水平方向に離れた位置に配置されている。
上記構成によれば、位置検出装置50は、離れた位置を検出できるため、演算部31は、より精度高く方位Dを演算することができる。
【0097】
また、位置検出装置50は、旋回台2の端部に配置されている。
上記構成によれば、位置検出装置50は、離れた位置を検出できるため、演算部31は、一層精度高く方位Dを演算することができる。
また、旋回作業機1の方位検出方法は、作業装置20が設けられた旋回台2を上下方向に延びる旋回軸心X廻りに回転させて、旋回台2に設けられた位置検出装置50により複数の検出位置Pdを検出する第1ステップと、位置検出装置50が検出した複数の検出位置Pdに基づいて、旋回軸心Xの軸心位置Pxを演算する第2ステップと、第2ステップで演算した軸心位置Pxと、基準位置Ppと、に基づいて旋回台2の方位Dを演算する第3ステップと、を備えている。
【0098】
以上、本発明について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0099】
1 旋回作業機
2 旋回台
10 下部走行体
20 作業装置
31 演算部
31f フィルタ処理部
50 位置検出装置
51 傾斜検出装置
52 角度検出装置
AL 近似線
D 方位
D1 基準方位
D2 現在の方位
E エリア
Pd 検出位置
Px 軸心位置
X 旋回軸心
θ 旋回角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16