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  • 特開-コネキシン43抗体およびその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042116
(43)【公開日】2024-03-27
(54)【発明の名称】コネキシン43抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C07K 16/28 20060101AFI20240319BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240319BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240319BHJP
   C12N 15/13 20060101ALN20240319BHJP
【FI】
C07K16/28 ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P19/08
A61P35/00
A61P35/04
C12N15/13
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024018521
(22)【出願日】2024-02-09
(62)【分割の表示】P 2020554864の分割
【原出願日】2019-04-02
(31)【優先権主張番号】62/651,668
(32)【優先日】2018-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520382949
【氏名又は名称】アラマブ セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ヤンフェン ジャン
(57)【要約】
【課題】骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放不足に関連する疾患または症状を処置するための、好ましくは癌、癌転移、骨肉腫、骨粗鬆症または骨減少症を処置するための組成物および方法を提供すること。
【解決手段】一態様では、抗Cx43抗体またはその抗原結合断片であって、それぞれ配列番号1、2および3のアミノ酸配列を有する第1、第2および第3の重鎖相補性決定領域(CDR)配列と;それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列を有する第1、第2および第3の軽鎖CDR配列とを含む抗Cx43抗体またはその抗原結合断片が本明細書で提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年4月2日に出願された米国仮特許出願第62/651,668号(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)の優先権および利益を主張する。
【0002】
配列表
EFS-Webを介して提出された、43,787バイトのサイズを有する2019年4月1日に作成された「172628_020301_sequence.txt」という名称のASCIIテキストファイルは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
分野
本開示は、一般に、抗コネキシン(Cx)43抗体と、例えば骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放に関連する疾患または症状の処置におけるその使用とに関する。
【背景技術】
【0004】
背景
複数の予防的および治療的アプローチにもかかわらず、癌は、世界中で主な死因の1つである。2010~2020年に、米国における新たな癌症例の数は、男性では約24%増加して年間100万症例を超え、女性では約21%増加して年間90万症例を超えると予想される。最も増加すると予想される癌のタイプは、男性および女性の両方で黒色腫;男性では前立腺癌、腎臓癌、肝臓癌および膀胱癌;ならびに女性では肺癌、乳癌、子宮癌および甲状腺癌である。癌は依然として、米国における2番目に多い死因であり、死亡の4件ごとにほぼ1件を占めている。多くの癌は、現在のアプローチを用いて処置困難または不可能である。多くの癌は、現在の処置レジメンを回避するか、処置に対して耐性になるか、または処置後に再発する。
【0005】
癌が、それが由来する身体部分(例えば、乳房または前立腺)から他の身体部分(例えば、肝臓または骨)に広がり、二次腫瘍を確立すると、癌転移が起こる。骨は、最も多い癌転移部位の1つである。骨に転移する癌としては、限定されないが、乳癌、前立腺癌、肺癌および皮膚癌(例えば、黒色腫)が挙げられる。骨転移は、進行性乳癌および前立腺癌を有する患者の最大75%で特定され得る。骨転移(mets)は、臨床および生活の質に関する多くの重大な結果、例えば限定されないが、難治性疼痛、病的骨折、脊髄および神経圧迫、骨髄浸潤、ならびに運動障害に関連する。多くの場合、全身に存在する癌もまた、癌を治癒不能にし得る。
【0006】
正常な骨は、3つの主要な細胞タイプ:骨形成骨芽細胞、骨吸収破骨細胞および骨細胞から構成される。骨細胞は骨の細胞の約95%を構成し、溶骨活性および骨芽細胞活性を調整することにより骨再形成プロセスを維持する。癌細胞が骨に浸潤すると、正常な骨機能の多くが影響を受ける。癌細胞は局所微小環境と相互作用して、骨破壊および血管新生を介して癌細胞生存を促進する。
【0007】
骨細胞は、コネキシン(Cx)43ヘミチャネルとして公知のヘミチャネルを発現する。これらの骨細胞ヘミチャネルは、通常は閉鎖しており、機械刺激に曝露されると開放され得、様々な因子が骨微小環境に放出される。ヘミチャネルの開放により放出される因子は、腫瘍細胞遊走および骨転移を減少させ得る他のプロセスを媒介し得る。一般に使用されている有効なビスフォスフォネート薬であるアレンドロネート(AD)は、骨細胞におけるCx43ヘミチャネルを開放することができることが示されている。ビスフォスフォネートは、骨転移を含む多くの骨障害の処置について公知の薬物のクラスである。乳癌を有する患者では、ビスフォスフォネートの投与は、骨転移の発生率の減少および死亡率の減少に関連することが示されている。ADは、腫瘍の成長の減少ならびに骨破壊および疼痛の減少に関連している。ADは破骨細胞活性を阻害し、骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放を誘導する。しかしながら、AD投与は、複数の重篤な副作用を伴う。
【0008】
従って、例えばCx43ヘミチャネルを開放することにより癌転移を処置するための有効な方法および組成物の必要性が存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放(例えば、開放不足または不全)に関連する疾患または症状、例えば癌、癌転移、骨肉腫、骨粗鬆症または骨減少症を処置するための組成物および方法が本明細書で提供される。
【0010】
一態様では、抗Cx43抗体またはその抗原結合断片であって、
それぞれ配列番号1、2および3のアミノ酸配列を有する第1、第2および第3の重鎖相補性決定領域(CDR)配列と;
それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列を有する第1、第2および第3の軽鎖CDR配列とを含む抗Cx43抗体またはその抗原結合断片が本明細書で提供される。
【0011】
いくつかの実施形態では、抗体またはその断片は、配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを有し得る。
【0012】
別の態様では、抗Cx43抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号9~17からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む抗Cx43抗体またはその抗原結合断片が本明細書で提供される。
【0013】
別の態様では、抗体であって、FLSRPTEKTI(配列番号19)のアミノ酸配列内に位置するエピトープに結合する抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、エピトープは、配列番号19のF1、S3、R4、P5、T6、E7、K8、T9およびI10からなる群より選択される1個またはそれを超えるアミノ酸を含み得る。一実施形態では、エピトープは、配列番号19のF1、S3、R4、P5、T6、E7、K8、T9およびI10からなる。いくつかの実施形態では、エピトープは、配列番号19の10個すべてのアミノ酸を含み得る。特定の実施形態では、エピトープは、配列番号19の10個すべてのアミノ酸からなる。
【0014】
さらなる態様では、単離された抗Cx43抗体またはその抗原結合断片であって、Cx43への結合について、本明細書に開示される任意の抗体またはその断片と交差競合する単離された抗Cx43抗体またはその抗原結合断片が本明細書で提供される。特定の実施形態では、抗体またはその断片は、骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放を促進する。
【0015】
別の態様では、骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放を促進するための、好ましくは癌、癌転移、骨肉腫、骨粗鬆症または骨減少症を処置するための医薬組成物であって、本明細書に開示される抗体またはその断片と、薬学的に許容され得る担体とを含む医薬組成物が本明細書で提供される。
【0016】
骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放を促進するための、好ましくは癌、癌転移、骨粗鬆症または骨減少症を処置するための医薬を製造するための、本明細書に開示される抗体またはその断片の使用も本明細書で提供される。
【0017】
骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放を促進する、好ましくは癌、癌転移、骨肉腫、骨粗鬆症または骨減少症を処置するための方法であって、前記骨細胞を、有効量の本明細書に開示される抗体またはその断片と接触させることを含む方法が本明細書でさらに提供される。
【0018】
骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放(例えば、開放不足)に関連する疾患または症状を処置するための、好ましくは癌、癌転移、骨肉腫、骨粗鬆症または骨減少症を処置するための方法であって、治療有効量の本明細書に開示される抗体またはその断片を、それを必要とする患者に投与することを含む方法も本明細書で提供される。
特定の実施形態では、例えば、以下が提供される:
(項目1)
抗Cx43抗体またはその抗原結合断片であって、
それぞれ配列番号1、2および3のアミノ酸配列を有する第1、第2および第3の重鎖相補性決定領域(CDR)配列と;
それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列を有する第1、第2および第3の軽鎖C
DR配列とを含む、抗Cx43抗体またはその抗原結合断片。
(項目2)
配列番号7のアミノ酸配列を有する重鎖可変ドメインと、配列番号8のアミノ酸配列を有する軽鎖可変ドメインとを含む、項目1に記載の抗体またはその断片。
(項目3)
抗Cx43抗体またはその抗原結合断片であって、配列番号9~17からなる群より選択されるアミノ酸配列を有する重鎖と、配列番号18のアミノ酸配列を有する軽鎖とを含む、抗Cx43抗体またはその抗原結合断片。
(項目4)
抗Cx43抗体またはその抗原結合断片であって、Cx43に結合すると、FLSRPTEKTI(配列番号19)のアミノ酸配列内に位置するエピトープに結合する、抗Cx43抗体またはその抗原結合断片。
(項目5)
前記エピトープが、配列番号19のF1、S3、R4、P5、T6、E7、K8、T9およびI10からなる群より選択される1個またはそれを超えるアミノ酸を含む、項目4に記載の抗体またはその断片。
(項目6)
前記エピトープが、配列番号19のF1、S3、R4、P5、T6、E7、K8、T9およびI10からなる、項目4に記載の抗体またはその断片。
(項目7)
前記エピトープが、配列番号19の10個すべてのアミノ酸を含む、項目4に記載の抗体またはその断片。
(項目8)
前記エピトープが、配列番号19の10個すべてのアミノ酸からなる、項目4に記載の抗体またはその断片。
(項目9)
単離された抗Cx43抗体またはその抗原結合断片であって、Cx43への結合について、項目1~8のいずれか一項に記載の抗体またはその断片と交差競合する、単離された抗Cx43抗体またはその抗原結合断片。
(項目10)
単離された抗Cx43抗体またはその抗原結合断片であって、Cx43への結合について、項目1~3のいずれか一項に記載の抗体またはその断片と交差競合し、好ましくは、FLSRPTEKTI(配列番号19)のアミノ酸配列内に位置するエピトープに結合し、より好ましくは、前記エピトープが、配列番号19のF1、S3、R4、P5、T6、E7、K8、T9およびI10からなる群より選択される1個またはそれを超えるアミノ酸を含み、さらにより好ましくは、前記エピトープが、配列番号19の10個すべてのアミノ酸を含む、単離された抗Cx43抗体またはその抗原結合断片。
(項目11)
骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放を促進する、項目1~10のいずれか一項に記載の抗体またはその断片。
(項目12)
骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放を促進するための、好ましくは癌、癌転移、骨肉腫、骨粗鬆症または骨減少症を処置するための医薬組成物であって、項目1~11のいずれか一項に記載の抗体またはその断片と、薬学的に許容され得る担体とを含む、医薬組成物。
(項目13)
骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放を促進するための、好ましくは癌、癌転移、骨粗鬆症または骨減少症を処置するための医薬を製造するための、項目1~11のいずれか一項に記載の抗体またはその断片の使用。
(項目14)
骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放を促進する、好ましくは癌、癌転移、骨肉腫、骨粗鬆症または骨減少症を処置するための方法であって、前記骨細胞を、有効量の項目1~11のいずれか一項に記載の抗体またはその断片と接触させることを含む、方法。(項目15)
骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放に関連する疾患または症状を処置するための、好ましくは癌、癌転移、骨肉腫、骨粗鬆症または骨減少症を処置するための方法であって、治療有効量の項目1~11のいずれか一項に記載の抗体またはその断片を、それを必要とする患者に投与することを含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】抗体スクリーニングの生データの箱ひげ図。
【0020】
図2】高ストリンジェンシー条件下で抗体でプローブしたペプチドFLSRPTEKTIの完全置換分析のレタープロットグラフ。塩基配列はグラフの下に掲載されており、塩基配列の平均シグナルは赤色の線である。所与の位置における置換は、その置き換えについて記録されたシグナル強度でプロットされている。
【0021】
図3】高ストリンジェンシー条件下で抗体でプローブしたペプチドFLSRPTEKTIの完全置換分析のレタープロットグラフ。塩基配列はグラフの下に掲載されており、塩基配列の平均シグナルは赤色の線である。所与の位置における置換は、その置き換えについて記録されたシグナル強度でプロットされている。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
前述の一般的な説明および以下の詳細な説明は両方とも、例示的および説明的なものにすぎず、本開示の組成物および方法を限定するものではないことを理解すべきである。
【0023】
抗Cx43抗体またはその抗原結合断片に関する組成物および方法が本明細書に開示される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、国際公開第2015/027120号および国際公開第2017/147561号(これらは両方とも、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているものよりも優れた活性、薬物性(例えば、減少した毒性)、安定性および/または開発性(例えば、減少した生産コスト)を示す。特定の実施形態では、利点は予想外である。
【0024】
定義
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で用いられる特定の用語が本明細書にまとめられる。特に定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本開示が属する分野の当業者により一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0025】
本明細書で使用される場合、以下の用語および語句は、以下の意味を有することを意図する。
【0026】
「a」および「an」という冠詞は、その冠詞の1つのまたは1つを超える(すなわち、少なくとも1つの)文法的目的語を指すために本明細書で使用される。例として、「エレメント」は、1つのエレメントまたは1つを超えるエレメントを意味する。
【0027】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、記述されている値の20%以内、より好ましくは10%以内、最も好ましくは5%以内の許容され得る変動を意味する。
【0028】
「抗Cx43抗体」は、Cx43(例えば、その細胞外ドメイン)に免疫特異的に結合する抗体である。抗体は、単離された抗体であり得る。Cx43へのこのような結合は、例えば、1μM以下、100nM以下または50nM以下の値を有するKを示す。Kは、当業者に公知の任意の方法、例えば表面プラズモン共鳴アッセイまたは細胞結合アッセイにより測定され得る。抗Cx43抗体は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であり得る。
【0029】
本明細書で使用される場合、「抗体」は、標的エピトープに結合する結合ドメインを含むタンパク質である。抗体という用語は、免疫グロブリン重鎖および軽鎖分子を含むモノクローナル抗体、単一重鎖可変ドメイン抗体、ならびにモノクローナルおよび単一重鎖可変ドメイン抗体のキメラバリアントを含むそれらのバリアントおよび誘導体を含む。結合ドメインは、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片により実質的にコードされ、タンパク質は、抗原に免疫特異的に結合する。認識されている免疫グロブリン遺伝子としては、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロンおよびミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が挙げられる。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかに分類される。重鎖は、それぞれ免疫グロブリンクラスIgG、IgM、IgA、IgDおよびIgEを規定するガンマ、ミュー、アルファ、デルタまたはイプシロンとして分類される。ヒトおよびマウス種を含むほとんどの脊椎動物生物の場合、典型的な免疫グロブリン構造単位は、各ペアが1つの「軽」鎖(約25kD)および1つの「重」鎖(約50~70kD)を有するポリペプチド鎖の2つの同一のペアから構成されるテトラマーを含む。「V」およびV」は、それぞれこれらの軽鎖および重鎖の可変ドメインを指す。「C」およびC」は、軽鎖および重鎖の定常ドメインを指す。VおよびV上の各3つのβ鎖のループは、抗原への結合に関与し、「相補性決定領域」または「CDR」と称される。「Fab」(断片、抗原結合)領域は、抗体の各重鎖および軽鎖由来の1つの定常ドメインおよび1つの可変ドメイン、すなわちV、C、VおよびC1を含む。
【0030】
抗体は、インタクトな免疫グロブリンおよびその抗原結合断片を含む。「抗原結合断片」という用語は、抗原に結合するか、または抗原結合(すなわち、特異的結合)についてインタクトな抗体と(すなわち、それらが由来するインタクトな抗体と)競合する抗体のポリペプチド断片を指す。抗原結合断片は、当技術分野で周知の組換えまたは生化学的方法により生産され得る。例示的な抗原結合断片としては、Fv、Fab、Fab’、(Fab’)、CDR、パラトープおよびV、ならびにV鎖が(直接的にまたはペプチドリンカーを介して)互いに接続されて連続ポリペプチドを形成した単鎖Fv抗体(scFv)が挙げられる。
【0031】
抗体はまた、バリアント、キメラ抗体およびヒト化抗体を含む。本明細書で使用される場合、「抗体バリアント」という用語は、重鎖および/または軽鎖に単一または複数の突然変異を有する抗体を指す。いくつかの実施形態では、突然変異は可変領域に存在する。いくつかの実施形態では、突然変異は定常領域に存在する。「キメラ抗体」は、重鎖および軽鎖の各アミノ酸配列の一部が、特定の種に由来するかまたは特定のクラスに属する抗体における対応する配列と相同であり、鎖の残りのセグメントが、別のものにおける対応する配列と相同である抗体を指す。典型的には、これらのキメラ抗体では、軽鎖および重鎖の両方の可変領域は、ある種の哺乳動物に由来する抗体の可変領域を模倣し、定常部分は、別のものに由来する抗体における配列と相同である。このようなキメラ形態の1つの明確な利点は、例えば、例えば、ヒト細胞調製物に由来する定常領域と組み合わせて、非ヒト宿主生物由来の容易に入手可能なハイブリドーマまたはB細胞を使用して、現在公知の供給源から、可変領域を好都合に誘導し得ることである。可変領域は調製容易性の利点を有し、特異性はその供給源により影響を受けないが、ヒトの定常領域は、非ヒト供給源由来の定常領域よりも、抗体が注射された場合にヒト被験体から免疫反応を誘発する可能性が低い。しかしながら、前記定義は、この特定の例に限定されない。「ヒト化」抗体は、非ヒト種由来の免疫グロブリンに実質的に由来する抗原結合部位と、ヒト免疫グロブリンの構造および/または配列に基づく残りの免疫グロブリン分子構造とを有する分子を指す。抗原結合部位は、定常ドメインに融合された完全な可変ドメイン、または可変ドメインにおける適切なフレームワーク領域にグラフトされた相補性決定領域(CDR)のみのいずれかを含み得る。抗原結合部位は野生型であり得るか、または1つもしくはそれを超えるアミノ酸置換により改変され得、例えば、ヒト免疫グロブリンにより近く似るように改変され得る。ヒト化抗体のいくつかの形態は、すべてのCDR配列を保存する(例えば、マウス抗体由来の6つすべてのCDRを含有するヒト化マウス抗体)。ヒト化抗体の他の形態は、元の抗体に対して変化した1つまたはそれを超えるCDR(1つ、2つ、3つ、4つ、5つまたは6つ)を有し、これらは、1つまたはそれを超えるCDRに「由来する」1つまたはそれを超えるCDRとも称される。
【0032】
本明細書に記載される場合、抗体のアミノ酸残基は、カバット(Kabatら、(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th edition.Public Health Service,NIH,Bethesda,MD)の一般的なナンバリングにしたがってナンバリングされ得る。
【0033】
抗体と標的としてのCx43のエピトープとの間の結合の文脈で本明細書で使用される場合、「結合」という用語は、分子間の非共有結合的相互作用のプロセスを指す。好ましくは、前記結合は特異的である。抗体の特異性は、親和性に基づいて決定され得る。特異的抗体は、そのエピトープに対して10-7M未満、好ましくは10-8M未満の結合親和性または解離定数Kを有し得る。
【0034】
「親和性」という用語は、抗体の結合ドメインとエピトープとの間の結合反応の強度を指す。それは、結合ドメインとエピトープとの間で作用する引力および反発力の合計である。本明細書で使用される場合、親和性という用語は、解離定数Kを指す。
【0035】
「抗原」という用語は、抗体などの選択的結合物により結合されることができ、さらに、その抗原のエピトープに結合することができる抗体を産生するために動物で使用されることができる分子または分子の一部を指す。抗原は、1つまたはそれを超えるエピトープを有し得る。
【0036】
「癌」という用語は、周囲組織および潜在的には宿主における初期の異常細胞成長部位に遠位の組織への浸潤につながる宿主自体の細胞の無制御で異常な成長を広く指す。主要なクラスとしては、上皮組織(例えば、皮膚、扁平上皮細胞)の癌である癌腫;結合組織(例えば、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管など)の癌である肉腫;造血組織(例えば、骨髄組織)の癌である白血病;免疫細胞の癌であるリンパ腫および骨髄腫;ならびに脳および脊髄組織由来の癌を含む中枢神経系癌が挙げられる。「癌」、「新生物」および「腫瘍」は、本明細書では互換的に使用される。本明細書で使用される場合、「癌」は、新たなものまたは再発性のものにかかわらず、白血病、癌腫および肉腫を含むすべてのタイプの癌または新生物または悪性腫瘍を指す。癌の具体例は、癌腫、肉腫、骨髄腫、白血病、リンパ腫および混合型腫瘍である。癌の非限定的な例は、脳、黒色腫、膀胱、乳房、子宮頸部、結腸、頭頸部、腎臓、肺、非小細胞肺、中皮腫、卵巣、前立腺、肉腫、胃、子宮および髄芽腫の新たなまたは再発性の癌である。
【0037】
「エピトープ」という用語は、免疫グロブリンまたはT細胞受容体に特異的に結合することができる任意の決定基、好ましくはポリペプチド決定基を含む。特定の実施形態では、エピトープ決定基は、分子の化学的に活性な表面基、例えばアミノ酸、糖側鎖、ホスホリルまたはスルホニルを含み、特定の実施形態では、特定の三次元構造特徴および/または特定の電荷特徴を有し得る。一実施形態では、エピトープは、抗体により結合される抗原の領域である。特定の実施形態では、抗体は、それが、タンパク質および/または高分子の複雑な混合物においてその標的抗原を優先的に認識する場合に、抗原に特異的に結合するといわれる。エピトープマッピングのための方法は当技術分野で周知であり、例えば、X線共結晶学、アレイベースのオリゴペプチドスキャニング、部位特異的突然変異誘発、ハイスループット突然変異誘発マッピングおよび水素-重水素交換である。エピトープは、タンパク質の三次フォールディングにより並置した隣接アミノ酸または非隣接アミノ酸の両方から形成され得る。隣接アミノ酸から形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒への曝露で保持されるのに対して、三次フォールディングにより形成されたエピトープは、典型的には、変性溶媒による処理で失われる。エピトープは、典型的には、ユニークな空間的コンフォメーションで少なくとも3個、より通常には少なくとも5個または8~10個のアミノ酸を含む。
【0038】
エピトープに結合する抗体上の部位は「パラトープ」と称され、典型的には、結合されるとエピトープに近接するアミノ酸残基を含む。Sela-Culangら、Front Immunol.2013;4:302を参照のこと。
【0039】
「免疫組織化学」または「IHC」は、組織切片の細胞における抗原を検出し、生物学的組織における目的の抗原を免疫特異的に認識する抗体の結合およびその後の検出を可能にするプロセスを指す。IHC技術の総説については、例えば、Ramos-Varaら、Veterinary Pathology January 2014 vol.51 no.1,42-87(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。IHC結果を評価するために、異なる定性的および半定量的スコアリングシステムが開発されている。例えば、Fedchenkoら、Diagnostic Pathology,2014;9:221(これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。一例は、300の可能な値で細胞の割合に(「シグナルなし」の0から「強いシグナル」の3までのスコア化される)染色強度順序値を乗算した結果を追加することにより決定されるHスコアである。
【0040】
「免疫特異的」または「免疫特異的に」(「特異的に」と互換的に使用されることがある)は、免疫グロブリン遺伝子または免疫グロブリン遺伝子の断片により実質的にコードされるドメインを介して、目的のタンパク質の1つまたはそれを超えるエピトープに結合するが、抗原分子の混合集団を含有するサンプル中の他の分子を実質的に認識せずそれに結合しない抗体を指す。典型的には、抗体は、例えば、リアルタイム無標識バイオレイヤー干渉アッセイ、例えばOctet(登録商標)HTXバイオセンサーにより、または表面プラズモン共鳴、例えばBIACORE(商標)により、または溶液親和性ELISAにより測定した場合に、50nM以下の値を有するKで同族抗原に免疫特異的に結合する。このようなアッセイの使用は、当技術分野で周知である。
【0041】
「表面プラズモン共鳴」という用語は、例えばBIACORE(商標)システム(Pharmacia Biosensor AB,Uppsala,Sweden and Piscataway,N.J.)を使用して、バイオセンサーマトリックス内のタンパク質濃度の変化の検出により、リアルタイム生体分子相互作用の分析を可能にする光学現象を指す。
【0042】
バイオレイヤー干渉法は、生体分子相互作用を測定するための無標識技術である。それは、2つの面(バイオセンサーチップ上の固定化タンパク質の層および内部参照層)から反射された白色光の干渉パターンを分析する光学分析技術である。バイオセンサーチップに結合した分子の数の任意の変化は、リアルタイムで測定され得る干渉パターンのシフトを引き起こす(Abdiche,Y.Nら、Analytical Biochemistry,(2008),377(2),209-217)。特定の実施形態では、「リアルタイムバイオレイヤー干渉ベースのバイオセンサー(Octet HTXアッセイ)」を使用して、本明細書に開示される特定の抗Cx43抗体の結合特徴を評価した。
【0043】
「交差競合する」、「交差競合」、「交差遮断する(cross-block)」、「交差遮断された」および「交差遮断する(cross-blocking)」という用語は本明細書では互換的に使用され、直接的に、または標的Cx43に対する本開示の抗Cx43抗体のアロステリックモジュレーションを介して間接的に結合を妨害する抗体またはその断片の能力を意味する。抗体またはその断片が標的への別のものの結合を妨害することができる程度、およびしたがってそれが、本開示にしたがって交差遮断または交差競合するといえるかは、競合結合アッセイを使用して決定され得る。1つの特に適切な定量的交差競合アッセイは、FACSまたはAlphaScreenベースのアプローチを使用して、標識(例えば、Hisタグ付き、ビオチン化または放射性標識)抗体またはその断片と、他の抗体またはその断片との間の競合を、標的へのそれらの結合の点から測定する。一般に、交差競合抗体またはその断片は、例えば、アッセイ中に、二次抗体またはその断片の存在下で、本開示の免疫グロブリン単一可変ドメインまたはポリペプチドの記録された置換が、所与の量で存在する試験すべき潜在的交差遮断抗体またはその断片による最大理論置換(例えば、交差遮断されることを必要とする非放射性(例えば、非標識)抗体またはその断片による置換)の(例えば、FACSベースの競合アッセイで)100%までになるように、交差競合アッセイで標的に結合し得るものである。好ましくは、交差競合抗体またはその断片は、10%~100%、より好ましくは50%~100%である記録された置換を有する。
【0044】
抗体間の相互競合はまた、リアルタイム無標識バイオレイヤー干渉アッセイにより測定され得る。2つの抗体間の交差競合は、自己間結合のためにバックグラウンドシグナル未満である二次抗体の結合として表現され得る(一次抗体および二次抗体は同じ抗体である)。2つの抗体間の交差競合は、例えば、ベースライン自己間バックグラウンド結合未満である二次抗体の結合%として表現され得る(一次抗体および二次抗体は同じ抗体である)。
【0045】
本明細書で互換的に使用される場合、「促進する」、「増強する」および「誘導する」という用語は、生物学的活性(例えば、ヘミチャネル開放)の任意の統計的に有意な増加を指す。例えば、「促進」は、生物学的活性の約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または100%の増加を指し得る。
【0046】
「被験体」または「患者」という用語は、予防的または治療的処置のいずれかを受けるヒトまたは他の哺乳動物を含む。
【0047】
本明細書で使用される場合、「処置する(treat)」、「処置する(treating)」および「処置」という用語は、本明細書に記載されるものなどの治療的または予防的手段を指す。「処置」の方法は、癌もしくは再発性癌の1つもしくはそれを超える症候を予防し、治癒し、遅延させ、その重症度を軽減しもしくは改善するために、またはこのような処置の非存在下で予想されるものを超えて患者の生存を延長させるために、本明細書で提供されるCx43リガンドを患者、例えば癌を有する患者に投与することを用いる。「処置」の方法はまた、このような処置の非存在下で予想されるものを超える癌治療を患者において提供するために、本明細書で提供されるCx43リガンド(例えば、抗体)を患者に投与することを用いる。
【0048】
本明細書で使用される場合、「有効量」という用語は、患者に投与された場合に、癌の処置、予後予測または診断を達成するために十分な薬剤、例えばCx43リガンド、例えば抗Cx43抗体の量を指す。治療有効量は、処置されている患者および疾患症状、患者の体重および年齢、疾患症状の重症度、投与方法などに応じて変動し、当業者により容易に決定され得る。投与のための投与量は、例えば、本明細書で提供される抗体またはその抗原結合部分の約1ng~約10,000mg、約5ng~約9,500mg、約10ng~約9,000mg、約20ng~約8,500mg、約30ng~約7,500mg、約40ng~約7,000mg、約50ng~約6,500mg、約100ng~約6,000mg、約200ng~約5,500mg、約300ng~約5,000mg、約400ng~約4,500mg、約500ng~約4,000mg、約1μg~約3,500mg、約5μg~約3,000mg、約10μg~約2,600mg、約20μg~約2,575mg、約30μg~約2,550mg、約40μg~約2,500mg、約50μg~約2,475mg、約100μg~約2,450mg、約200μg~約2,425mg、約300μg~約2,000、約400μg~約1,175mg、約500μg~約1,150mg、約0.5mg~約1,125mg、約1mg~約1,100mg、約1.25mg~約1,075mg、約1.5mg~約1,050mg、約2.0mg~約1,025mg、約2.5mg~約1,000mg、約3.0mg~約975mg、約3.5mg~約950mg、約4.0mg~約925mg、約4.5mg~約900mg、約5mg~約875mg、約10mg~約850mg、約20mg~約825mg、約30mg~約800mg、約40mg~約775mg、約50mg~約750mg、約100mg~約725mg、約200mg~約700mg、約300mg~約675mg、約400mg~約650mg、約500mgまたは約525mg~約625mgの範囲であり得る。投与は、例えば、毎週、2週間ごと、3週間ごと、4週間ごと、5週間ごとまたは6週間ごとであり得る。投与レジメンは、最適な治療反応を提供するように調整され得る。有効量はまた、薬剤の毒性または有害効果(副作用)が最小化され、および/またはそれらを有益な効果が上回るものである。投与は、正確に、または毎週約6mg/kgもしくは12mg/kgで、または隔週12mg/kgもしくは24mg/kgで静脈内的であり得る。さらなる投与レジメンは以下に記載される。
【0049】
本明細書で使用される場合、組換え核酸技術、微生物学、免疫学、抗体操作ならびに分子生物学および細胞生物学の分野で使用される他の用語は、一般に、該当分野の当業者により理解されるであろう。例えば、従来技術は、組換えDNAを調製し、オリゴヌクレオチド合成を実施し、組織培養および形質転換(例えば、エレクトロポレーション、トランスフェクションまたはリポフェクション)を行うために使用され得る。酵素反応および精製技術は、製造業者の仕様書にしたがって、または当技術分野で一般に達成されるように、または本明細書に記載されるように実施され得る。前述の技術および手順は、一般に、当技術分野で周知の従来の方法にしたがって、本明細書を通して引用および議論される様々な一般的およびより具体的な参考文献に記載されているように実施され得る。例えば、Sambrookら、2001,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(これは、任意の目的のために参照により本明細書に組み込まれる)を参照のこと。特に具体的な定義が提供されない限り、本明細書に記載される分析化学、合成有機化学ならびに医療および医薬品化学に関連して利用される命名法ならびにそれらの実験手順および技術は、一般に使用される当技術分野で周知のものである。標準的な技術は、化学合成、化学分析、医薬品調製、製剤化および送達ならびに患者の処置に使用され得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、「含む(comprising)」または「含む(comprises)」という用語は、所与の実施形態に存在するが、不特定のエレメントを含み得る組成物、方法およびそれらの各構成要素に関して使用される。
【0051】
本明細書で使用される場合、「から本質的になる」という用語は、所与の実施形態に必要なエレメントを指す。この用語は、本開示のその実施形態の基本的および新規または機能的特徴に実質的に影響を及ぼさないさらなるエレメントの存在を許容する。
【0052】
「からなる」という用語は、実施形態のその説明に記載されていない任意のエレメントを除外した本明細書に記載される組成物、方法およびそれらの各構成要素を指す。
【0053】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、「a」、「an」および「the」という単数形は、文脈上特に明確な指示がない限り、複数形の言及を含む。したがって、例えば、「方法」への言及は、本明細書に記載され、および/または本開示などを読んだ当業者に明らかになるであろう1つまたはそれを超える方法および/または工程のタイプを含む。
【0054】
様々な態様および実施形態は、以下のサブセクションでさらに詳細に記載される。
【0055】
Cx43
タンパク質コネキシンにより形成されたヘミチャネルおよびギャップ結合を介して、様々な細胞が互いにおよび細胞外環境と伝達することができる。コネキシンタンパク質は、体全体に遍在的に発現される。6つのコネキシンタンパク質が1つのヘミチャネルを構成し、2つのヘミチャネルが1つのギャップ結合チャネルを構成する。ギャップ結合は、隣接細胞間の原形質膜に位置するチャネルのクラスタであり、細胞間伝達を媒介する。ヘミチャネルは、ギャップ結合チャネルとは別個の実体である。ヘミチャネルは、細胞内区画と細胞外環境との間の分子の交換を可能にする。
【0056】
骨細胞は、コネキシン(Cx)43ヘミチャネルとして公知のヘミチャネルを発現する。これらの骨細胞ヘミチャネルは、通常は閉鎖しており、機械刺激に曝露されると開放され得、様々な因子が骨微小環境に放出される。ヘミチャネルの開放により放出される因子は、腫瘍細胞遊走および骨転移を減少させ得る他のプロセスを媒介し得る。
【0057】
コネキシン-43は、ギャップ結合アルファ-1タンパク質(GJA1)としても公知であり、382個のアミノ酸から構成される43.0kDaのタンパク質である(NCBI参照配列:NP_000156.1)。GJA1は、長いC末端尾部、N末端ドメインおよび複数の膜貫通ドメインを含有する。このタンパク質はリン脂質二重層を4回通過し、そのC末端およびN末端は細胞質に露出している。C末端尾部は50個のアミノ酸から構成され、翻訳後修飾部位、ならびに転写因子、細胞骨格エレメントおよび他のタンパク質のための結合部位を含む。その結果として、C末端尾部は、pHゲーティングおよびチャネルアセンブリの調節などの機能の中心である。特に、この尾部をコードするGJA1遺伝子(NCBI遺伝子ID:2697)のDNA領域は高度に保存されているが、これは、それが突然変異耐性であるか、または突然変異すると致死的になることを示している。一方、N末端ドメインは、チャネルゲーティングおよびオリゴマー化に関与するので、チャネルの開放および閉鎖状態の切り替えを制御し得る。膜貫通ドメインはギャップ結合チャネルを形成し、細胞外ループは適切なチャネルドッキングを促進する。また、2つの細胞外ループはジスルフィド結合を形成し、2つのヘキサマーと相互作用して、完全なギャップ結合チャネルを形成する。
【0058】
抗Cx43抗体
Cx43ヘミチャネル開放の促進または増強は、骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放を誘導または促進し、それにより、例えば癌、癌転移、骨肉腫、骨粗鬆症または骨減少症を処置し得る。従って、抗Cx43抗体は、癌治療における有効な薬剤として使用され得る。
【0059】
特定の実施形態では、抗Cx43抗体は、モノクローナル抗体またはその抗原結合断片であり得る。特定の実施形態では、抗Cx43抗体は、改変されたもの、例えば、マウス抗Cx43抗体に由来するキメラまたはヒト化抗体であり得る。いくつかの実施形態では、抗Cx43抗体は、ヒトCx43タンパク質上に存在するエピトープ、例えば細胞外ループまたはその一部に結合する抗体またはその抗原結合断片である。
【0060】
例示的な抗Cx43抗体は、以下のCDR配列の1つまたはそれよりも多くを有し得る:
重鎖:
CDR1(配列番号1):GYTFTSYY
CDR2(配列番号2):INPSNAGT
CDR3(配列番号3):TREGNPYYTMNY
軽鎖:
CDR1(配列番号4):QSLLESDGKTY
CDR2(配列番号5):LVS
CDR3(配列番号6):WQGTHFPWT
【0061】
いくつかの実施形態では、驚くべきことに、上記CDR配列を有する抗体は、国際公開第2015/027120号および国際公開第2017/147561号に開示されているものと比較して優れた結合親和性および/または抗体安定性を示すことが発見された。理論に縛られるものではないが、重鎖CDR2における「NG」から「NA」への突然変異は、脱アミド化を減少させ得ると考えられる。特にCDR領域における抗体脱アミド化は、結合親和性の変化、抗体の分解および電荷バリアントの変化を引き起こし得、抗体機能に影響を与え、抗体生産のコストを増加させ得る。従って、本明細書に開示されるCDRは、改善された結合親和性および抗体安定性を提供し、国際公開第2015/027120号および国際公開第2017/147561号に開示されているものよりも有利な技術的効果をもたらす。
【0062】
例えば、CDRグラフティング、生殖細胞系列モデリングおよび3D構造分析を使用してモノクローナル抗体をヒト化および最適化して、抗体の薬剤性および/または開発性を増加させ得る。いくつかの実施形態では、ヒト化の後、抗Cx43抗体は、以下の可変ドメインの一方または両方を有し得る:
重鎖可変ドメイン(配列番号7):
EVQLVQSGAEVKKPGASVKVSCKASGYTFTSYYMYWVRQAPGQGLEWIGGINPSNAGTNFNEKFKNRATLTVDKSTSTAYMELSSLRSEDTAVYYCTREGNPYYTMNYWGQGTLVTVSS
軽鎖可変ドメイン(配列番号8):
DVVMTQSPLSLPVTIGQPASISCKSSQSLLESDGKTYLNWLQQRPGQSPRRLIYLVSKLDSGVPDRFSGSGSGTDFTLKISRVEAEDVGVYYCWQGTHFPWTFGGGTKVEIK
【0063】
選択実施形態では、抗Cx43抗体は、例えば、1つまたはそれを超える突然変異を必要に応じて含有し得る例えばヒトIgG1またはIgG4の定常領域(the constant regain)に融合された可変ドメインを有し得る。いくつかの実施形態では、突然変異は、結合親和性および抗体の安定性を維持しながら、抗体の細胞傷害性エフェクター機能を低減または最小化するように設計され得る。例えば、抗Cx43抗体は、以下の重鎖配列(太字部分は可変ドメインに対応し、非太字部分は定常領域に対応する)の1つまたはそれよりも多くを有し得る。
【0064】
【化1】

【化2】

【化3】
【0065】
いくつかの実施形態では、抗Cx43抗体は、以下の軽鎖配列(太字部分は可変ドメインに対応し、非太字部分は定常領域に対応する)を有し得る。
【化4】
【0066】
さらに別の実施形態では、抗Cx43抗体は、それぞれがCx43上の同じまたは異なるエピトープに結合する2つまたはそれを超える抗Cx43抗体の混合物またはカクテルを含み得る。
【0067】
いくつかの実施形態では、特異性の少なくとも1つが本明細書に開示される抗Cx43抗体またはその抗原結合断片である二重特異性抗体が作製され得る。他の特異性は、処置されている疾患に関与する別の標的に対するものであり得る。
【0068】
一態様では、医薬の製造のためのCx43リガンドの使用が提供される。別の態様では、患者における腫瘍成長および/または転移を抑制する方法であって、患者に有効量のCx43リガンドを投与することを含む方法が提供される。
【0069】
抗Cx43抗体の調製
抗Cx43抗体は、当技術分野で一般に公知の様々な方法を使用して作製され得る。例えば、ファージディスプレイ技術を使用して、ヒト抗体ライブラリーをスクリーニングし、治療のための完全ヒトモノクローナル抗体を生産し得る。高親和性結合物は、中和研究の候補と考えられ得る。あるいは、従来のモノクローナルアプローチを使用し得、マウスまたはウサギをヒトタンパク質で免疫化し、候補結合物を同定および試験し、最後に、重鎖および軽鎖の結合部位をヒト抗体コード配列にグラフトすることにより、ヒト化抗体を生産し得る。
【0070】
抗体は、典型的には、各ペアが(典型的には約25kDaの分子量を有する)1つの全長「軽」鎖および(典型的には約50~70kDaの分子量を有する)1つの全長「重」鎖を有するポリペプチド鎖の2つの同一のペアを含む。各鎖のアミノ末端部分は、典型的には、抗原認識に典型的に関与する約100~110個またはそれを超えるアミノ酸の可変領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、典型的には、エフェクター機能に関与する定常領域を規定する。重鎖および軽鎖の各可変領域は、典型的には、相補性決定領域またはCDRとも称される3つの超可変領域により接続された4つの比較的保存されたフレームワーク領域(FR)を含む同じ一般構造を示す。各ペアの2つの鎖由来のCDRは、典型的には、フレームワーク領域によりアライメントされ、このアライメントが、特定のエピトープへの結合を可能にし得る。N末端からC末端に、軽鎖および重鎖可変領域は両方とも、典型的には、ドメインFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3およびFR4を含む。各ドメインへのアミノ酸の割り当ては、典型的には、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest(1987 and 1991,National Institutes
of Health,Bethesda,Md.)、Chothia&Lesk,1987,J.Mol.Biol.196:901-917またはChothiaら、1989,Nature 342:878-883)の定義に従う。
【0071】
モノクローナル抗体の開発により、抗体は、医薬品として有用かつ興味深いものになった。モノクローナル抗体は、抗体分子を生産する任意の方法を使用して、培養液中の連続細胞株により生産される。モノクローナル抗体を調製するための適切な方法の例としては、Kohlerら(1975,Nature 256:495-497)のハイブリドーマ法およびヒトB細胞ハイブリドーマ法(Kozbor,1984,J.Immunol.133:3001;およびBrodeurら、1987,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,Marcel Dekker,Inc.,New York,pp.51-63)が挙げられる。
【0072】
モノクローナル抗体は、治療薬として使用するために改変され得る。一例は、重鎖および/または軽鎖の一部が、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同であり、鎖の残りが、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である「キメラ」抗体である。他の例は、それらが所望の生物学的活性を示す限り、このような抗体の断片である。米国特許第4,816,567号;およびMorrisonら、(1985),Proc.Natl.Acad.Sci.USA 81:6851-6855を参照のこと。関連開発は「CDRグラフト」抗体であり、この抗体は、特定の種に由来するかまたは特定の抗体クラスもしくはサブクラスに属する1つまたはそれを超える相補性決定領域(CDR)を含み、抗体鎖の残りは、別の種に由来するかまたは別の抗体クラスもしくはサブクラスに属する抗体における対応する配列と同一または相同である。
【0073】
別の開発は「ヒト化」抗体である。非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当技術分野で周知である(米国特許第5,585,089号および米国特許第5,693,762号を参照のこと;ラマ抗体のヒト化については、Cecile Vinckeら、J.Biol.Chem.2009;284:3273-3284も参照のこと)。一般に、ヒト化抗体は非ヒト動物により産生され、次いで、典型的にはこの抗体の非抗原認識部分由来の特定のアミノ酸残基が、対応するアイソタイプのヒト抗体における前記残基と相同になるように改変される。ヒト化は、例えば、当技術分野で記載されている方法(Jonesら、1986,Nature 321:522-525;Riechmannら、1988,Nature 332:323-327;Verhoeyenら、1988,Science 239:1534-1536)を使用して、齧歯類可変領域の少なくとも一部をヒト抗体の対応する領域に置換することにより実施され得る。
【0074】
より最近は、ヒトへの抗原の曝露を伴わないヒト抗体(「完全ヒト抗体」)の開発である。内因性マウス免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体のレパートリーを産生することができるトランスジェニック動物(例えば、マウス)を使用して、このような抗体は、必要に応じて担体にコンジュゲートされた(典型的には少なくとも6つの連続アミノ酸を有する)抗原による免疫化により生産される。例えば、Jakobovitsら、1993,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551-2555;Jakobovitsら、1993,Nature 362:255-258;およびBruggermannら、1993,Year in Immunol.7:33を参照のこと。これらの方法の一例では、トランスジェニック動物は、その中のマウス重および軽免疫グロブリン鎖をコードする内因性マウス免疫グロブリン遺伝子座を無能力化し、ヒト重鎖および軽鎖タンパク質をコードする遺伝子座をそのゲノムに挿入することにより生産される。次いで、完全未満の改変を有する部分的改変動物を交配させて、所望の免疫系改変のすべてを有する動物を得る。免疫原を投与されると、これらのトランスジェニック動物は、これらの抗原に対して免疫特異的な抗体であって、可変領域を含む(マウスではなく)ヒトアミノ酸配列を有する抗体を産生する。国際公開第96/33735号および国際公開第94/02602号(これらは、参照により組み込まれる)を参照のこと。さらなる方法は、米国特許第5,545,807号、国際公開第91/10741号、国際公開第90/04036号ならびに欧州特許第546073号および欧州特許出願公開第546073号(これらは、参照により組み込まれる)に記載されている。ヒト抗体はまた、本明細書に記載されるように、宿主細胞における組換えDNAの発現により、またはハイブリドーマ細胞における発現により生産され得る。
【0075】
いくつかの実施形態では、ファージディスプレイ技術は、治療用抗体をスクリーニングするために使用され得る。ファージディスプレイでは、抗体レパートリーを線維状バクテリオファージの表面上にディスプレイし得、免疫原に結合するファージについて、構築ライブラリーをスクリーニングし得る。抗体ファージは、バクテリオファージの遺伝子操作、ならびに反復ラウンドの抗原誘導選択およびファージ増殖に基づく。この技術は、Cx43モノクローナル抗体のインビトロ選択を可能にする。ファージディスプレイプロセスは、抗体ライブラリー調製から始まり、続いて、可変重(VH)および可変軽(VL)PCR産物をファージディスプレイベクターにライゲーションし、モノクローナル抗体のクローンの分析に至る。M13バクテリオファージに元々由来する大腸菌の線維状バクテリオファージのpIIIマイナーカプシドタンパク質に融合されたscFvとしてVHおよびVLを発現するように操作されたファージディスプレイベクター(例えば、ファージミドpComb3X)に、抗体レパートリーに相当するVHおよびVL PCR産物をライゲーションする。しかしながら、ファージディスプレイベクターpComb3Xは、大腸菌で完全バクテリオファージをコードするために必要なすべての他の遺伝子を有しない。それらの遺伝子については、ファージディスプレイベクターライブラリーで形質転換された大腸菌にヘルパーファージを追加する。結果は、それぞれがその表面上にCx43モノクローナル抗体を発現し、中に各ヌクレオチド配列を有するベクターを内包するファージのライブラリーである。ファージディスプレイはまた、大腸菌の特定の株で(ファージカプシドタンパク質に付着されていない)Cx43モノクローナル抗体それ自体を生産するために使用され得る。生産されたmAbの特性評価および精製を可能にするために、ファージディスプレイベクター内でVLおよびVH配列の後に、さらなるcDNAが操作される。具体的には、溶液からの容易な精製を可能にするために、組換え抗体は、血球凝集素(HA)エピトープタグおよびポリヒスチジンを有し得る。
【0076】
多様な抗体ファージライブラリーは、ヘルパーファージを感染させた約10個の独立した大腸菌形質転換体から生産される。バイオパニングを使用して、ライブラリーは、モノクローナル抗体の発現表面を介して、上記免疫原配列またはその断片に結合するファージについてスクリーニングされ得る。周期的なパニングは、潜在的に非常にまれな抗原結合クローンを取り出すことを可能にし、複数ラウンドの(ELISAプレート上に、または溶液中では細胞表面上に固定化された)抗原へのファージ結合、洗浄、溶出、および大腸菌におけるファージ結合物の再増幅からなる。各ラウンド中に、特異的結合物は、非結合物を洗い流し、結合ファージクローンを選択的に溶出することによりプールから選択される。3または4ラウンドの後、表面Cx43モノクローナル抗体を介したファージクローンの高度に特異的な結合は、固定化免疫原における直接選択に特徴的である。
【0077】
別の方法は、アフィニティークロマトグラフィーによる精製に適切なC末端Hisタグを上記免疫原配列に追加することである。精製タンパク質は、適切なアジュバントと一緒にマウスに接種され得る。ハイブリドーマで産生されたモノクローナル抗体は、免疫原への結合について試験され得、陽性結合物は、本明細書のアッセイに記載されているようにスクリーニングされ得る。
【0078】
完全ヒト抗体はまた、(Hoogenboomら、1991,J.Mol.Biol.227:381;およびMarksら、1991,J.Mol.Biol.222:581に開示されているように)ファージディスプレイライブラリーから生産され得る。これらのプロセスは、線維状バクテリオファージの表面上への抗体レパートリーのディスプレイ、および選択した抗原へのそれらの結合によるその後のファージ選択を通じて、免疫選択を模倣する。1つのこのような技術は、このようなアプローチを使用するMPLおよびmsk受容体に対する高親和性機能的アゴニスト抗体の単離について記載する国際公開第99/10494号(これは、参照により組み込まれる)に記載されている。
【0079】
上記抗体をコードするヌクレオチド配列が決定され得る。その後、キメラ、CDRグラフト、ヒト化および完全ヒト抗体もまた、組換え方法により生産され得る。抗体をコードする核酸は宿主細胞に導入され、当技術分野で一般に公知の材料および手順を使用して発現され得る。
【0080】
本開示は、Cx43に対する抗体を提供する。好ましくは、抗体はCx43に結合する。好ましい実施形態では、本開示は、重鎖および軽鎖免疫グロブリン分子、特にその可変領域に対応する配列をコードするヌクレオチド配列およびそれらを含むアミノ酸配列を提供する。好ましい実施形態では、特にCDR1からCDR3のCDRに対応する配列が提供される。さらなる実施形態では、本開示は、このような免疫グロブリン分子を発現するハイブリドーマ細胞株およびそれから産生されるモノクローナル抗体、好ましくはヒトCx43に対する精製ヒトモノクローナル抗体を提供する。
【0081】
本開示の抗Cx43抗体の軽鎖および重鎖可変領域のCDRは、同じまたは別の種由来のフレームワーク領域(FR)にグラフトされ得る。特定の実施形態では、抗Cx43抗体の軽鎖および重鎖可変領域のCDRは、コンセンサスヒトFRにグラフトされ得る。コンセンサスヒトFRを作るために、いくつかのヒト重鎖または軽鎖アミノ酸配列由来のFRをアライメントさせて、コンセンサスアミノ酸配列を特定する。抗Cx43抗体重鎖または軽鎖のFRは、異なる重鎖または軽鎖由来のFRに置き換えられ得る。抗Cx43抗体の重鎖および軽鎖のFRにおけるまれなアミノ酸は、典型的には置き換えられないが、FRアミノ酸の残りは置き換えられ得る。まれなアミノ酸は、それらがFRに通常見られない位置にある特定のアミノ酸である。本開示の抗Cx43抗体由来のグラフト可変領域は、抗Cx43抗体の定常領域とは異なる定常領域と共に使用され得る。あるいは、グラフト可変領域は、単鎖Fv抗体の一部である。CDRグラフティングは、例えば、米国特許第6,180,370号、米国特許第5,693,762号、米国特許第5,693,761号、米国特許第5,585,089号および米国特許第5,530,101号(これらは、任意の目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0082】
いくつかの実施形態では、本開示の抗体は、ハイブリドーマ株により産生され得る。これらの実施形態では、本開示の抗体は、約4pM~1μMの解離定数(K)でCx43に結合する。本開示の特定の実施形態では、抗体は、約100nM未満、約50nM未満または約10nM未満のKでCx43に結合する。
【0083】
実施形態では、本開示の抗体は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4アイソタイプ、例えばIgG1アイソタイプのものである。特定の実施形態では、抗体は、ヒトカッパまたはラムダ軽鎖およびヒトIgG1、IgG2またはIgG4重鎖を含む。実施形態では、抗体の可変領域は、IgG1、IgG2またはIgG4アイソタイプの定常領域にライゲーションされる。特定の実施形態では、抗体の可変領域は、IgG1、IgG2またはIgG4アイソタイプの定常領域以外の定常領域にライゲーションされる。特定の実施形態では、本開示の抗体は、哺乳動物細胞における発現のためにクローニングされる。
【0084】
代替的な実施形態では、本開示の抗体は、ハイブリドーマ細胞株以外の細胞株で発現され得る。これらの実施形態では、特定の抗体をコードする配列は、適切な哺乳動物宿主細胞の形質転換のために使用され得る。これらの実施形態によれば、形質転換は、ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための任意の公知の方法であって、例えば、ポリヌクレオチドをウイルス(またはウイルスベクター)にパッケージングすること、および宿主細胞にウイルス(またはベクター)を形質導入することを含む方法を使用して、または当技術分野で公知のトランスフェクション手順により達成され得る。このような手順は、米国特許第4,399,216号、米国特許第4,912,040号、米国特許第4,740,461号および米国特許第4,959,455号(これらはすべて、任意の目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に例示されている。一般に、使用される形質転換手順は、形質転換すべき宿主に依存し得る。異種ポリヌクレオチドを哺乳動物細胞に導入するための方法は当技術分野で周知であり、限定されないが、デキストラン媒介性トランスフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリブレン媒介性トランスフェクション、プロトプラスト融合、エレクトロポレーション、リポソームへのポリヌクレオチドのカプセル化、および核へのDNAの直接マイクロインジェクションが挙げられる。
【0085】
本開示の方法の特定の実施形態によれば、Cx43抗体の重鎖定常領域、重鎖可変領域、軽鎖定常領域または軽鎖可変領域のアミノ酸配列をコードする核酸分子は、標準的なライゲーション技術を使用して適切な発現ベクターに挿入される。好ましい実施形態では、Cx43抗体重鎖または軽鎖定常領域は、適切な可変領域のC末端に追加され、発現ベクターにライゲーションされる。ベクターは、典型的には、用いられる特定の宿主細胞で機能的であるように選択される(すなわち、遺伝子の増幅および/または遺伝子の発現が起こり得るように、ベクターは宿主細胞機構と適合性である)。発現ベクターの総説については、Goeddel(ed.),1990,Meth.Enzymol.Vol.185,Academic Press.N.Y.を参照のこと。
【0086】
典型的には、宿主細胞のいずれかで使用される発現ベクターは、プラスミド維持のための、ならびに外因性ヌクレオチド配列のクローニングおよび発現のための配列を含有し得る。このような配列は、典型的には、以下のヌクレオチド配列の1つまたはそれよりも多くを含む:プロモーター、1つまたはそれを超えるエンハンサー配列、複製起点、転写終結配列、ドナーおよびアクセプタースプライス部位を含有する完全イントロン配列、ポリペプチド分泌のためのリーダー配列をコードする配列、リボソーム結合部位、ポリアデニル化配列、発現させるべきポリペプチドをコードする核酸を挿入するためのポリリンカー領域、ならびに選択可能なマーカーエレメント。これらの配列は、当技術分野で周知である。
【0087】
本開示の発現ベクターは、市販のベクターなどの出発ベクターから構築され得る。このようなベクターは、所望の隣接配列のすべてを含有してもよいしまたは含有しなくてもよい。本明細書に記載される隣接配列の1つまたはそれよりも多くがベクターにまだ存在しない場合、それらは個別に取得され、ベクターにライゲーションされ得る。各隣接配列を得るために使用される方法は、当業者に周知である。
【0088】
ベクターが構築され、抗Cx43抗体を含む軽鎖または重鎖または軽鎖および重鎖をコードする核酸分子がベクターの適切な部位に挿入された後、完成ベクターは、増幅および/またはポリペプチド発現のための適切な宿主細胞に挿入され得る。選択宿主細胞への抗Cx43抗体の発現ベクターの形質転換は、トランスフェクション、感染、リン酸カルシウム共沈殿、エレクトロポレーション、マイクロインジェクション、リポフェクション、DEAE-デキストラン媒介性トランスフェクション、または他の公知の技術を含む周知の方法により達成され得る。選択方法は、部分的には、使用すべき宿主細胞のタイプに依存するであろう。これらの方法および他の適切な方法は当業者に周知であり、例えば、前掲のSambrookらに記載されている。
【0089】
宿主細胞は、適切な条件下で培養されると抗Cx43抗体を合成し、続いて、(宿主細胞がそれを培地に分泌する場合には)培養培地から、または(それが分泌されない場合には)それを産生する宿主細胞から直接収集し得る。適切な宿主細胞の選択は、所望の発現レベル、活性に望ましいまたは必要なポリペプチド改変(例えば、グリコシル化またはリン酸化)、および生物学的に活性な分子へのフォールディングの容易性などの様々な要因に依存するであろう。
【0090】
発現のための宿主として利用可能な哺乳動物細胞株は当技術分野で周知であり、限定されないが、American Type Culture Collection(ATCC)から入手可能な多くの不死化細胞株、例えば限定されないが、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚性腎臓細胞(HEK)、HeLa細胞、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、サル腎臓細胞(COS)、ヒト肝細胞癌腫細胞(例えば、HepG2)および多くの他の細胞株が挙げられる。特定の実施形態では、どの細胞株が高い発現レベルを有し、構成的Cx43結合特性を有する抗体を産生するかを決定することにより、細胞株を選択し得る。別の実施形態では、それ自体抗体を作製しないが、異種抗体を作製および分泌する能力を有するB細胞系統(例えば、マウス骨髄腫細胞株NS0およびSP2/0)から細胞株を選択し得る。
【0091】
エピトープマッピングおよび関連技術
本開示は、Cx43分子の1つまたはそれを超えるドメイン、例えば細胞外ループ内に見られる1つまたはそれを超えるアミノ酸と相互作用する抗Cx43抗体を提供する。抗体が結合するエピトープは、1つまたはそれを超える細胞外ループ内に位置する2つまたはそれを超える(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つ、9つまたはそれを超える)アミノ酸の1つまたはそれを超える隣接配列を含み得る。あるいはまたは加えて、エピトープは、1つまたはそれを超える細胞外ループ(例えば、立体構造エピトープ)内に位置する1つまたはそれを超える非隣接アミノ酸(またはアミノ酸配列)を含み得る。
【0092】
当業者に公知の様々な技術は、抗体がポリペプチドまたはタンパク質内の「1つまたはそれを超えるアミノ酸と相互作用する」かを決定するために使用され得る。例示的な技術としては、ルーチンな交差遮断アッセイ、例えばAntibodies,Harlow and Lane(Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.)に記載されているものが挙げられる。他の方法としては、アラニンスキャニング突然変異分析、ペプチドブロット分析(Reineke(2004)Methods Mol.Biol.248:443-63)、ペプチド切断分析結晶学的研究およびNMR分析が挙げられる。加えて、エピトープ切断、エピトープ抽出および抗原の化学的改変などの方法が用いられ得る(Tomer(2000)Prot.Sci.9:487-496)。
【0093】
抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用され得る別の方法は、質量分析により検出される水素/重水素交換である。一般に、水素/重水素交換法では、目的のタンパク質を重水素標識し、続いて、抗体を重水素標識タンパク質に結合させることを伴う。次に、タンパク質/抗体複合体を水に移し、抗体複合体により保護されたアミノ酸内の交換可能なプロトンは、界面の一部ではないアミノ酸内の交換可能なプロトンよりも遅い速度で重水素-水素逆交換を受ける。その結果として、タンパク質/抗体界面の一部を形成するアミノ酸は重水素を保持し得るので、界面に含まれないアミノ酸と比較して比較的高い質量を示し得る。抗体の解離後、標的タンパク質をプロテアーゼ切断および質量分析に供し、それにより、抗体が相互作用する特定のアミノ酸に対応する重水素標識残基が明らかになる。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267:252-259;Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A-265Aを参照のこと。
【0094】
抗原構造ベースの抗体プロファイリング(ASAP)としても公知の改変支援プロファイリング(MAP)は、化学的または酵素的に改変された抗原表面への各抗体の結合プロファイルの類似性にしたがって、同じ抗原に対する多数のモノクローナル抗体(mAb)を分類する方法である(米国特許出願公開第2004/0101920号(これは、その全体が参照により具体的に本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。各カテゴリーは、別のカテゴリーにより表されるエピトープとは明らかに異なるかまたは部分的に重複するユニークなエピトープを反映し得る。遺伝的に異なる抗体に対して特性評価を集中させ得るように、この技術は、遺伝的に同一の抗体の迅速なフィルタリングを可能にする。ハイブリドーマスクリーニングに適用される場合、MAPは、所望の特徴を有するmAbを産生するまれなハイブリドーマクローンの同定を容易にし得る。MAPは、本発明の抗体を、異なるエピトープに結合する抗体のグループに選別するために使用され得る。
【0095】
本開示は、同じエピトープまたはエピトープの一部に結合する抗Cx43抗体を提供する。同様に、本開示はまた、Cx43またはその断片への結合について、本明細書に記載される特定の例示的な抗体のいずれかと競合する抗Cx43抗体を含む。例えば、本開示は、Cx43への結合について、本明細書に記載される抗体から得られた1つまたはそれを超える抗体と交差競合する抗Cx43抗体を含む。
【0096】
当技術分野で公知のルーチンな方法を使用することにより、抗体が参照抗Cx43抗体と同じエピトープに結合するか、または結合について競合するかを容易に決定し得る。例えば、試験抗体が本発明の参照抗Cx43抗体と同じエピトープに結合するかを決定するために、飽和条件下で参照抗体をCx43またはペプチドに結合させ得る。次に、Cx43分子に結合する試験抗体の能力を評価する。参照抗Cx43抗体との飽和結合後に、試験抗体がCx43に結合することができる場合、試験抗体は、参照抗Cx43抗体とは異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。他方、参照抗Cx43抗体との飽和結合後に、試験抗体がCx43に結合することができない場合、試験抗体は、本開示の参照抗Cx43抗体が結合するエピトープと同じエピトープに結合し得る。
【0097】
結合について抗体が参照抗Cx43抗体と競合するかを決定するために、上記結合方法論が2方向で実施され得る。第1の方向では、飽和条件下で参照抗体をCx43に結合させ、続いて、Cx43分子への試験抗体の結合を評価し得る。第2の方向では、飽和条件下で試験抗体をCx43分子に結合させ、続いて、Cx43分子への参照抗体の結合を評価し得る。両方向で、第1の(飽和)抗体のみがCx43分子に結合することができる場合、試験抗体および参照抗体は、Cx43への結合について競合すると結論付けられる。当業者により認識されるように、結合について参照抗体と競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同一のエピトープに結合しなくてもよいが、重複または隣接エピトープに結合することにより参照抗体の結合を立体的に遮断し得る。
【0098】
2つの抗体は、それぞれが抗原への他方の結合を競合的に阻害(遮断)する場合、同じまたは重複エピトープに結合する。すなわち、1、5、10、20または100倍過剰の一方の抗体は、競合結合アッセイで測定した場合に、他方の結合を少なくとも50%、しかし好ましくは75%、90%またはさらに99%阻害する(例えば、Junghansら、Cancer Res.1990 50:1495-1502を参照のこと)。あるいは、一方の抗体の結合を低減または排除する抗原における本質的にすべてのアミノ酸突然変異が他方の結合を低減または排除する場合、2つの抗体は同じエピトープを有する。一方の抗体の結合を低減または排除するいくつかのアミノ酸突然変異が他方の結合を低減または排除する場合、2つの抗体は重複エピトープを有する。
【0099】
次いで、さらなるルーチン実験(例えば、ペプチド突然変異および結合分析)を行って、試験抗体の結合の観察された欠如が、実際に参照抗体と同じエピトープへの結合によるものであるか、または立体遮断(または別の現象)が、観察された結合の欠如の原因であるかを確認し得る。この種の実験は、ELISA、RIA、表面プラズモン共鳴、フローサイトメトリー、または当技術分野で利用可能な任意の他の定量的もしくは定性的抗体結合アッセイを使用して実施され得る。
【0100】
様々な実施形態では、抗体であって、FLSRPTEKTI(配列番号19)のアミノ酸配列内に部分的または全体的に位置するエピトープに結合する抗体が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、エピトープは、配列番号19のF1、S3、R4、P5、T6、E7、K8、T9およびI10からなる群より選択される1つまたはそれを超えるアミノ酸を含み得る。一実施形態では、エピトープは、配列番号19のF1、S3、R4、P5、T6、E7、K8、T9およびI10からなる。いくつかの実施形態では、エピトープは、配列番号19の10個すべてのアミノ酸を含み得る。特定の実施形態では、エピトープは、配列番号19の10個すべてのアミノ酸からなる。
【0101】
医薬組成物およびその使用
別の態様では、本明細書に開示される方法で使用され得る医薬組成物、すなわち、骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放を促進するための、好ましくは癌、癌転移、骨肉腫、骨粗鬆症または骨減少症を処置するための医薬組成物が提供される。
【0102】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、Cx43リガンドと、薬学的に許容され得る担体とを含む。Cx43リガンドは、薬学的に許容され得る担体と共に医薬組成物に製剤化され得る。加えて、医薬組成物は、例えば、組成物を患者の処置に使用して、骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放を促進するための、好ましくは癌、癌転移、骨肉腫、骨粗鬆症または骨減少症を処置するための説明書を含み得る。
【0103】
一実施形態では、Cx43リガンドは、抗Cx43抗体またはその抗原結合断片であり得る。
【0104】
本明細書で使用される場合、「薬学的に許容され得る担体」は、生理学的に適合する任意のおよびすべての溶媒、分散媒、コーティング、抗細菌剤および抗真菌剤、等張剤および吸収遅延剤、バッファーならびに他の賦形剤などを含む。好ましくは、担体は、非経口、経口または局所投与に適切である。投与経路に応じて、活性化合物、例えば小分子または生物剤は、酸の作用および化合物を不活性化し得る他の天然条件から化合物を保護する材料でコーティングされ得る。
【0105】
薬学的に許容され得る担体としては、滅菌水溶液または分散液、および滅菌注射液または分散液の即時調製のための滅菌粉末、ならびに錠剤、丸剤、カプセルなどの調製のための従来の賦形剤が挙げられる。薬学的に活性な物質の製剤化のためのこのような媒体および薬剤の使用は、当技術分野で公知である。任意の従来の媒体または薬剤が活性化合物と不適合であることを除いて、本明細書で提供される医薬組成物におけるそれらの使用が企図される。補助的な活性化合物もまた、組成物に組み込まれ得る。
【0106】
薬学的に許容され得る担体は、薬学的に許容され得る抗酸化剤を含み得る。薬学的に許容され得る抗酸化剤の例としては、(1)水溶性抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、システイン塩酸塩、重硫酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムなど;(2)油溶性抗酸化剤、例えばパルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、アルファ-トコフェロールなど;および(3)金属キレート剤、例えばクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸などが挙げられる。
【0107】
本明細書で提供される医薬組成物に用いられ得る適切な水性および非水性担体の例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)およびそれらの適切な混合物、ならびに注射可能な有機エステル、例えばオレイン酸エチルが挙げられる。必要な場合には、例えば、レシチンなどのコーティング材料の使用により、分散液の場合には必要な粒径の維持により、および界面活性剤の使用により、適切な流動性が維持され得る。多くの場合、等張剤、例えば糖、多価アルコール、例えばマンニトール、ソルビトールまたは塩化ナトリウムを組成物に含めることが有用であり得る。注射可能な組成物の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアレート塩およびゼラチンを組成物に含めることによりもたらされ得る。
【0108】
これらの組成物はまた、機能的賦形剤、例えば保存剤、湿潤剤、乳化剤および分散剤を含み得る。
【0109】
治療用組成物は、典型的には、滅菌のものであり、非系統学的であり、製造および保管の条件下で安定でなければならない。組成物は、溶液、マイクロエマルジョン、リポソーム、または高い薬物濃度に適切な他の規則構造として製剤化され得る。
【0110】
滅菌注射液は、要求に応じて、上記に列挙されている成分の1つまたは組み合わせと共に、必要量の活性化合物を適切な溶媒に組み込み、続いて、例えば精密濾過により滅菌することにより調製され得る。一般に、分散液は、基本分散媒と、上記に列挙されているものからの必要な他の成分とを含有する滅菌ビヒクルに活性化合物を組み込むことにより調製される。滅菌注射液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法としては、真空乾燥および冷凍乾燥(凍結乾燥)が挙げられ、事前に滅菌濾過されているその溶液から有効成分および任意のさらなる所望の成分の粉末が得られる。有効成分は、滅菌条件下で、追加の薬学的に許容され得る担体、および必要とされ得る任意の保存剤、バッファー、または噴霧剤とともに混合され得る。
【0111】
微生物の存在の防止は、前掲の滅菌手順により、ならびに様々な抗菌剤および抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノールソルビン酸などを含めることにより確実にされ得る。また、等張剤、例えば糖、塩化ナトリウムなどを組成物に含めることが望ましい場合がある。加えて、注射可能な医薬品形態の持続的吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンを含めることによりもたらされ得る。
【0112】
Cx43リガンドを含む医薬組成物は単独で、または併用療法で投与され得る。例えば、併用療法は、Cx43リガンドと、少なくとも1つまたはそれを超えるさらなる治療剤、例えば以下でさらに詳細に議論される当技術分野で公知の1つまたはそれを超える化学療法剤とを含む本明細書で提供される組成物を含み得る。医薬組成物はまた、放射線療法および/または手術と組み合わせて投与され得る。
【0113】
投与レジメンは、最適な所望の反応(例えば、治療反応)を提供するように調整される。例えば、単回ボーラスを投与してもよいし、いくつかの分割用量を経時的に投与してもよいし、または治療状況の緊急事態により示されるように用量を比例的に減少もしくは増加させてもよい。
【0114】
抗体の投与のための例示的な投与量範囲としては、10~1000mg(抗体)/kg(患者の体重)、10~800mg/kg、10~600mg/kg、10~400mg/kg、10~200mg/kg、30~1000mg/kg、30~800mg/kg、30~600mg/kg、30~400mg/kg、30~200mg/kg、50~1000mg/kg、50~800mg/kg、50~600mg/kg、50~400mg/kg、50~200mg/kg、100~1000mg/kg、100~900mg/kg、100~800mg/kg、100~700mg/kg、100~600mg/kg、100~500mg/kg、100~400mg/kg、100~300mg/kgおよび100~200mg/kgが挙げられる。例示的な投与スケジュールとしては、3日ごとに1回、5日ごとに1回、7日ごとに1回(すなわち、1週間に1回)、10日ごとに1回、14日ごとに1回(すなわち、2週間ごとに1回)、21日ごとに1回(すなわち、3週間ごとに1回)、28日ごとに1回(すなわち、4週間ごとに1回)および1カ月ごとに1回が挙げられる。
【0115】
投与の容易性および投与量の均一性のために、単位剤形で非経口組成物を製剤化することが有利であり得る。本明細書で使用される場合、単位剤形は、処置すべき患者にとって単位投与量として適した物理的に別個の単位を指し;各単位は、任意の必要な薬学的担体と共同して所望の治療効果をもたらすように計算された所定量の活性剤を含有する。単位剤形の仕様は、(a)活性化合物のユニークな特徴および達成すべき特定の治療効果、ならびに(b)個体における感受性の処置のためにこのような活性化合物を配合する技術に固有の制約により決定され、それらに直接依存する。
【0116】
本明細書に開示される医薬組成物中の有効成分の実際の投与量レベルは、患者に対する毒性を伴わずに、特定の患者、組成物および投与様式について所望の治療反応を達成するために有効な有効成分の量が得られるように変動し得る。投与の文脈で本明細書で使用される場合、「非経口」は、通常は注射による腸内および局所投与以外の投与様式を意味し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および注入が挙げられる。
【0117】
本明細書で使用される場合、「非経口投与」および「非経口投与される」という語句は、通常は注射または注入による腸内(すなわち、消化管を介した)および局所投与以外の投与様式を指し、限定されないが、静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、被膜内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、くも膜下、脊髄内、硬膜外および胸骨内注射および注入が挙げられる。静脈内注射および注入は、多くの場合、抗体投与に(排他的ではないが)使用される。
【0118】
本明細書で提供される薬剤が医薬品としてヒトまたは動物に投与される場合、それらは単独で、または薬学的に許容され得る担体と組み合わせて例えば0.001~90%(例えば、0.005~70%、例えば0.01~30%)の有効成分を含有する医薬組成物として投与され得る。
【0119】
特定の実施形態では、骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放を促進するために、好ましくは癌、癌転移、骨肉腫、骨粗鬆症または骨減少症を処置するための本明細書で提供される方法および使用は、Cx43リガンドと、Cx43リガンドではない少なくとも1つのさらなる抗癌剤との投与を含み得る。
【0120】
一実施形態では、少なくとも1つのさらなる抗癌剤は、少なくとも1つの化学療法薬を含む。このような化学療法薬の非限定的な例としては、プラチナベースの化学療法薬(例えば、シスプラチン、カルボプラチン)、タキサン(例えば、パクリタキセル(Taxol(登録商標))、ドセタキセル(Taxotere(登録商標))、EndoTAG-1(商標)(正荷電脂質ベースの複合体にカプセル化されたパクリタキセルの製剤;MediGene)、Abraxane(登録商標)(アルブミンに結合したパクリタキセルの製剤))、チロシンキナーゼ阻害剤(例えば、イマチニブ/Gleevec(登録商標)、スニチニブ/Sutent(登録商標)、ダサチニブ/Sprycel(登録商標))およびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0121】
別の実施形態では、少なくとも1つのさらなる抗癌剤は、EGFR阻害剤、例えば抗EGFR抗体またはEGFRシグナル伝達の小分子阻害剤を含む。例示的な抗EGFR抗体は、セツキシマブ(Erbitux(登録商標))である。セツキシマブは、ImClone Systems Incorporatedから市販されている。抗EGFR抗体の他の例としては、マツズマブ(EMD72000)、パニツムマブ(Vectibix(登録商標);Amgen);ニモツズマブ(TheraCIM(商標))およびmAb806が挙げられる。EGFRシグナル伝達経路の例示的な小分子阻害剤はゲフィチニブ(Iressa(登録商標))であり、AstraZenecaおよびTevaから市販されている。EGFRシグナル伝達経路の小分子阻害剤の他の例としては、エルロチニブHCL(OSI-774;Tarceva(登録商標)、OSI Pharma);ラパチニブ(Tykerb(登録商標)、GlaxoSmithKline);カネルチニブ(カネルチニブ二塩酸塩、Pfizer);ペリチニブ(Pfizer);PKI-166(Novartis);PD158780;およびAG1478(4-(3-クロロアニリノ)-6,7-ジメトキシキナゾリン)が挙げられる。
【0122】
さらに別の実施形態では、少なくとも1つのさらなる抗癌剤は、VEGF阻害剤を含む。例示的なVEGF阻害剤は、抗VEGF抗体、例えばベバシズマブ(Avastatin(登録商標);Genentech)を含む。
【0123】
さらに別の実施形態では、少なくとも1つのさらなる抗癌剤は、抗ErbB2抗体を含む。適切な抗ErbB2抗体としては、トラスツズマブおよびペルツズマブが挙げられる。
【0124】
一態様では、本開示の組み合わせの改善された有効性は、治療的相乗効果を達成することにより実証され得る。
【0125】
「治療的相乗効果」という用語は、所与の用量の2つの製品の組み合わせが、同じ用量の2つの各製品単独の最良よりも有効である場合に使用される。一例では、治療的相乗効果は、パラメータ腫瘍体積の反復測定(例えば、時間因子)を用いた二元配置分散分析から得られる推定値を使用して、組み合わせを最良の単剤と比較することにより評価され得る。
【0126】
「添加剤」という用語は、所与の用量の2つまたはそれを超える製品の組み合わせが、2つまたはそれを超える各製品で得られる有効性の合計と同等に有効である場合を指し、「超添加剤」という用語は、組み合わせが、2つまたはそれを超える各製品で得られる有効性の合計よりも有効である場合を指す。
【0127】
有効性(組み合わせの有効性を含む)を定量し得る別の方法は、以下の方程式:log10細胞死滅=T-C(日数)/3.32×T(式中、T-Cは、細胞の成長(これは、処置群(T)の腫瘍および対照群(C)の腫瘍が所定の値(例えば、1gまたは10mL)に達するまでの平均時間(日数単位)である)の遅延を表し、Tは、対照動物で腫瘍の体積が2倍になるために必要な時間(日数単位)を表す)にしたがって決定されるlog10細胞死滅を計算することによるものである。この測定を適用する場合、log10細胞死滅が0.7を超えるかまたはそれに等しい場合、製品は活性であると考えられ、log10細胞死滅が2.8を超える場合、製品は非常に活性であると考えられる。
【0128】
この測定を使用すると、それ自体の最大耐用量で使用される組み合わせ(各構成成分は、一般にその最大耐用量未満であるかまたはそれに等しい用量で存在する)は、log10細胞死滅が、単独で投与された際の最良の構成成分のlog10細胞死滅の値を超える場合に治療的相乗効果を示す。例示的な場合では、組み合わせのlog10細胞死滅は、組み合わせの最良の構成成分のlog10細胞死滅の値を少なくとも1log細胞死滅だけ超える。
【0129】
癌治療を提供するための組成物および方法が本明細書に開示される。前記方法は、それを必要とする被験体の骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放を促進することを含み得る。Cx43モジュレーション(例えば、抗Cx43抗体)は、独立した癌治療として、または他の癌治療と組み合わせて使用され得る。
【0130】
骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放を促進するための、好ましくは癌、癌転移、骨肉腫、骨粗鬆症または骨減少症を処置するための方法であって、本明細書に開示される抗Cx43抗体のいずれか1つまたはそれよりも多くを、それを必要とする被験体に投与することを含む方法も本明細書で提供される。
【0131】
様々な実施形態では、本明細書に開示される方法は、被験体に有効量の抗Cx43抗体またはその抗原結合断片を投与することを含み得る。一般に、有効量は治療的および/または予防的に投与され得る。
【0132】
処置は、このような癌を患っているか、それを有するか、それに対して感受性であるか、またはそれを発症するリスクを有する被験体、特にヒトに適切に投与され得る。「リスクを有する」被験体の決定は、診断試験または被験体もしくは医療提供者の意見(例えば、遺伝子検査、酵素またはタンパク質マーカー、家族歴など)による客観的または主観的決定により行われ得る。このような処置を必要とする被験体の特定は、被験体または医療専門家の判断内であり得、主観的(例えば、意見)または客観的(例えば、試験または診断方法により測定可能)であり得る。
【0133】
製剤の投与
限定されないが、再構成製剤および液体製剤を含む本開示の製剤は、公知の方法、例えばボーラスとしての静脈内投与にしたがって、または、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、髄腔内、経口、局所もしくは吸入経路による一定期間にわたる持続注入により、抗Cx43抗体による処置を必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに投与される。
【0134】
実施形態では、製剤は、静脈内または皮下(すなわち、皮膚の下)投与により哺乳動物に投与される。このような目的のために、製剤は、シリンジを使用して注射され得る。しかしながら、製剤の投与のための他のデバイス、例えば注射デバイス(例えば、INJECT-EASE(商標)およびGENJECT(商標)デバイス;インジェクターペン(例えば、GENPEN);自動注射デバイス、無針デバイス(例えば、MEDIJECTOR(商標)およびBIOJECTOR(商標));および皮下パッチ送達システムが利用可能である。
【0135】
特定の実施形態では、本開示は、単一用量投与単位のためのキットを対象とする。このようなキットは、単一または複数のチャンバーのプレフィルドシリンジの両方を含む治療用タンパク質または抗体の水性製剤の容器を含む。例示的なプレフィルドシリンジは、Vetter GmbH,Ravensburg,Germanyから入手可能である。
【0136】
タンパク質の適切な投与量(「治療有効量」)は、例えば、処置すべき症状、症状の重症度および経過、タンパク質が予防または治療目的で投与されるか、以前の治療、患者の病歴および抗Cx43抗体への反応、使用される製剤の形式、ならびに主治医の裁量に依存するであろう。抗Cx43抗体は、一度にまたは一連の処置にわたって患者に適切に投与され、診断以降の任意の時点で患者に投与され得る。抗Cx43抗体は、単独処置として、または問題の症状の処置において有用な他の薬物もしくは治療と併せて投与され得る。
【0137】
抗Cx43抗体の場合、初回候補投与量は、患者への投与について約0.1~100または1~20mg/kgの範囲であり得、1回またはそれを超える個別投与の形態をとり得る。しかしながら、他の投与レジメンが有用であり得る。このような治療の進行は、従来の技術により容易にモニタリングされる。
【0138】
本開示の特定の実施形態によれば、複数用量の抗Cx43抗体(または抗Cx43抗体と、本明細書で言及されるさらなる治療活性剤のいずれかとの組み合わせを含む医薬組成物)は、規定の時間にわたって被験体に投与され得る。本開示のこの態様の方法は、複数用量の本開示の抗Cx43抗体を被験体に逐次投与することを含む。本明細書で使用される場合、「逐次投与」は、各用量の抗Cx43抗体が、異なる時点で、例えば所定の間隔(例えば、時間、日、週または月)だけ離れた異なる日に、被験体に投与されることを意味する。本開示は、患者に単一の初回用量の抗Cx43抗体、続いて1つまたはそれを超える二次用量の抗Cx43抗体、必要に応じて続いて1つまたはそれを超える三次用量の抗Cx43抗体を逐次投与することを含む方法を含む。抗Cx43抗体は、0.1mg/kg~約100mg/kgの用量で投与され得る。
【0139】
「初回用量」、「二次用量」および「三次用量」という用語は、本開示の抗Cx43抗体の投与の時間的順序を指す。したがって、「初回用量」は、処置レジメンの開始時に投与される用量(「ベースライン用量」とも称される)であり;「二次用量」は、初回用量の後に投与される用量であり;「三次用量」は、二次用量の後に投与される用量である。初回、二次および三次用量はすべて、同じ量の抗Cx43抗体を含有し得るが、一般に、投与頻度の点で互いに異なり得る。しかしながら、特定の実施形態では、初回、二次および/または三次用量に含まれる抗Cx43抗体の量は、処置の過程中に互いに変動する(例えば、適切な場合には上下に調整される)。特定の実施形態では、2つまたはそれを超える(例えば、2つ、3つ、4つまたは5つの)用量は、処置レジメンの開始時に「ローディング用量」として投与され、その後の用量は、より低頻度基準で投与される(例えば、「維持用量」)。
【0140】
本開示の特定の例示的な実施形態では、各二次および/または三次用量は、直前の用量の1から26(例えば、1、1、2、2、3、3、4、4、5、5、6、6、7、7、8、8、9、9、10、10、11、11、12、12、13、13、14、14、15、15、16、16、17、17、18、18、19、19、20、20、21、21、22、22、23、23、24、24、25、25、26、26またはそれを超える)週間後に投与される。本明細書で使用される場合、「直前の用量」という語句は、複数回投与の手順において、手順の次の用量の投与の前に患者に投与された抗Cx43抗体の用量を意味する。
【0141】
本開示のこの態様の方法は、患者に任意の数の二次および/または三次用量の抗Cx43抗体を投与することを含み得る。例えば、特定の実施形態では、単一の二次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つまたはそれを超える(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたはそれを超える)二次用量が患者に投与される。同様に、特定の実施形態では、単一の三次用量のみが患者に投与される。他の実施形態では、2つまたはそれを超える(例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、8つまたはそれを超える)三次用量が患者に投与される。
【0142】
複数の二次用量を伴う実施形態では、各二次用量は、他の二次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各二次用量は、直前の用量の1~2週間または1~2カ月後に患者に投与され得る。同様に、複数の三次用量を伴う実施形態では、各三次用量は、他の三次用量と同じ頻度で投与され得る。例えば、各三次用量は、直前の用量の2~12週間後に患者に投与され得る。本開示の特定の実施形態では、二次および/または三次用量が患者に投与される頻度は、処置レジメンの過程にわたって変動し得る。投与頻度はまた、臨床検査後の個々の患者の必要性に応じて、医師による処置の過程中に調整され得る。
【0143】
本開示は、-10または2~6のローディング用量が第1の頻度(例えば、1週間に1回、2週間ごとに1回、3週間ごとに1回、1カ月に1回、2カ月ごとに1回など)で患者に投与され、続いて、2つまたはそれを超える維持用量がより低頻度基準で患者に投与される投与レジメンを含む。例えば、本開示のこの態様によれば、ローディング用量が、例えば1カ月に1回の頻度で投与される場合(例えば、2つ、3つ、4つまたはそれを超えるローディング用量が1カ月に1回投与される)、維持用量は、患者に5週間ごとに1回、6週間ごとに1回、7週間ごとに1回、8週間ごとに1回、10週間ごとに1回、12週間ごとに1回などで投与され得る。
【実施例0144】
行われた実験および達成された結果を含む以下の実施例は、例示目的で提供されているにすぎず、本開示を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0145】
実施例1:結合親和性
以下のプロトコールにしたがって、Cx43への結合親和性について、最適化配列を試験した。
【0146】
1.Biacore T200を脱着する
2.新たなCM5チップを挿入する
3.HBS-EP+バッファー(10mM Hepes、150mM NaCl、3mM EDTA、0.05%界面活性剤P20[tween20])で3回プライミングする。
4.前提条件:100ul/分で新たなセンサーグラムを開始する。高粘度溶液(エクストラクリーン)で再生コマンドを使用して、各10ulの2×100mM HCl、2×50mM NaOH、2×0.5%SDSを注入する。これは、カップリングのためにチップをクリーニングおよび調製する。タンパク質が付着した後ではなく、ブランクチップに対してのみこれを行う。
5.GEヒト抗体捕捉キットに付属の説明書にしたがって、使用する各表面(参照表面を含む)に抗ヒトIgG Fc(GE:BR-1008-39)を別個にアミンカップリングする。簡潔に言えば、Mabを10mM酢酸ナトリウムpH5で25ug/mlに希釈する。5ul/分で新たなセンサーグラムを開始する。立て続けに、NHS/EDCで7’を活性化し、Mab7’を注入し、エタノールアミン7’でブロッキングする。典型的には、10,000~12,000RU/表面が得られる。この後、3M MgClで20ul/分で30秒間10回再生する。(本発明者らは、GEマウス抗体捕捉キット(GE:BR-1008-38)を使用したことを除いて、マウスIgGを用いた実験を同様に行ったことに留意する。唯一の違いは、抗マウスIgG抗体を30ug/mlでカップリングし、10mMグリシン-HCl pH1.7で20ul/分で3分間再生することである)。
6.正規化の後、HBS-EP+バッファーで1回プライミングする。
7.次いで、アミンカップリングの直後に実験を実施した。実験の間にかなりの時間があった場合、チップを取り出して4℃で保存した。チップを機器に戻す場合には、この後、HBS-EP+で3回プライミングし、正規化し、HBS-EP+で1回プライミングした。
【0147】
以下のパラメータを使用して、プログラムを作成した。
概要:
バッファー=HBS-EP+
流速=100ul/分
データ収集レート=1Hz
サンプルコンパートメント温度=15℃(これは、注入前にサンプルが保持される温度である)
アッセイラン温度=25℃
二重検出、Fc2-Fc1
【0148】
実験の各サイクルについて:
a.5ug/ml MabをFC2に5ul/分で180秒間注入することにより、Mab Ab#KをFC2に捕捉させ、1%Tween20の注入後に追加の洗浄のみを行った。
b.1M NaClを両FCに30ul/分で30秒間注入し、続いて、追加のバッファー洗浄および180秒間の安定化を行った。
c.100ul/分で210秒間の高速注入を用いてサンプル(ペプチド)を注入し、両FCに対して300秒間の解離を行い、続いて、追加のバッファー洗浄および60秒間の安定化を行った。
e.両表面を3M MgClで20ul/分で30秒間再生し、高粘度溶液を選択し、続いて、バッファー洗浄および60秒間の安定化を行った。
【0149】
以下のようにサイクルをプログラミングした。
1.機器を安定化するためにバッファーの10回のスタートアップ注入。
2.濃度系列の各ペプチド(PEP1、PEP2、PEP3):0、4nM、12nM、37nM、111nM、333nM、1000nM
サイクル1~10 スタートアップ
サイクル11~17 PEP1(914)
サイクル18~24 PEP2(915)
サイクル25~31 PEP3(916)
サイクル32~38 PEP1(914)
サイクル39~45 PEP2(915)
サイクル46~52 PEP3(916)
サイクル53~59 PEP1(914)
サイクル60~66 PEP2(915)
サイクル67~73 PEP3(916)
【0150】
データ分析
T200評価ソフトウェア2.0を使用して、データを分析した。動態に最適な条件下で平衡に達したので、3回反復の各セットからの(Fc2-Fc1)データを、1:1結合動態モデルまたは定常状態親和性モデルのいずれかにグローバルフィッティングした。両方法で得られた結果は類似していた。
【0151】
MabをCM5チップの表面に捕捉させたすべての実験において、上記プロトコールに従った。
【0152】
以下のプロトコールにしたがって、CAPチップも使用した。
1.製造業者の説明書にしたがって、GE Healthcareのビオチン捕捉キット(28920234)のCAPチップを調製した。簡潔に言えば、それを機器(T200)にドッキングし、ランニングバッファー(HBS-EP+)で3回プライミングし、スタンバイモードでランニングバッファーで一晩水和させた。次いで、再生溶液(6M GuHCl、250mM NaOH)を30ul/分で3×60秒間注入することにより、それをコンディショニングした。この後、1回の正規化および1回のプライミングを行った。次いで、それが実験に使用可能になった。以下のパラメータを使用して、プログラムを作成した。
【0153】
概要:
バッファー=HBS-EP+
流速=100ul/分
データ収集レート=1Hz
サンプルコンパートメント温度=15℃(これは、注入前にサンプルが保持される温度である)
アッセイラン温度=25℃
二重検出、Fc4-Fc3
【0154】
実験の各サイクルについて:
a.キットのビオチン捕捉試薬を2ul/分で300秒間注入することにより、ビオチン捕捉試薬をFc3およびFc4に捕捉させる。
b.3ug/mlペプチド2を5ul/分で120秒間注入し、続いて、追加のバッファー洗浄および120秒間の安定化を行うことにより、ビオチン化ペプチドをFc4に捕捉させる。
c.100ul/分で210秒間の高速注入を用いてサンプル(Mab)を注入し、両FCに対して300秒間の解離を行う。
d.両表面を6M GuHCl、250mM NaOHで30ul/分で120秒間再生し(高粘度溶液を選択し)、続いて、バッファー洗浄および120秒間の安定化を行う。
【0155】
以下のようにサイクルをプログラミングした。
1.機器を安定化するためにバッファーの5回のスタートアップ注入。
2.濃度系列の各Mab(IまたはH):0、6.2nM、18.5nM、55.6nM、166.7nM、500nMをランした。
サイクル1~5 スタートアップ
サイクル6~11 Mab I
サイクル12~17 Mab H
サイクル18~23 Mab I
サイクル24~29 Mab H
【0156】
結合親和性の結果(表1)は、一般に結合親和性が少なくとも維持され、多くの場合、驚くほど増強されたことを示す。
【0157】
【表1】
【0158】
実施例2.Fc受容体結合分析
Fcエフェクター機能は、受容体へのFcの結合により媒介される。受容体としては、FCRI、FCRIIa、FCRIIb、FCRIIIa、FCRIIIb、C1qおよびFcRnが挙げられる。FcRnを除くほとんどのFc受容体への結合親和性を減少させて、抗体半減期を維持しながら、潜在的なインビボ毒性を最小化することが一般に望ましい。以下の表面プラズモン共鳴(SPR)および酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)プロトコールを使用して、様々な抗体に対する様々なFc受容体結合を試験した。
【0159】
A.FCRI結合
実験:Biacore 8K
チップ:CM5
(1)固定化
注入の直前に400mM EDCおよび100mM NHSを混合することにより、アクチベーターを調製した。CM5センサーチップを混合物で420秒間活性化した。次いで、10mM NaAc(pH4.5)中30μg/mLのTHE(商標)Hisタグ抗体をチャネル1~8に30μL/分の流速で400秒間注入した。1Mエタノールアミン-HCl(GE)により、チップを不活性化した。
【0160】
(2)リガンドの捕捉および分析物のラン
ランニングバッファー(1×HBS-EP+)中2μg/mL CD64をチャネル1~4のFc2に10μL/分の流速で30秒間注入した。6つの濃度(40、20、10、5、2.5および1.25nM)の分析物20170905-Ab#C-02、20170905-Ab#D-02、20170908-Ab#G-02、20170920-Ab#H-02およびランニングバッファーをチャネル1~4のFc1-Fc2に30μL/分の流速で180の会合段階、続いて400の解離で順番に注入した。分析物濃度にしたがって昇順で、リガンドの捕捉および分析物のランを6サイクル反復する。あらゆる解離段階の後に、再生バッファーとして10mMグリシンpH1.5を注入した。
【0161】
ランニングバッファー(1×HBS-EP+)中2μg/mL CD64をチャネル1~6のFc2に10μL/分の流速で30秒間注入した。8つの濃度(10240、5120、2560、1280、640、320、160および80nM)の分析物20170907-Ab#K-02、20170908-Ab#L-02、20170915-Ab#O-02、20170919-Ab#P-02、20170919-Ab#S-02および20170920-Ab#T-02およびランニングバッファーをチャネル1~6のFc1-Fc2に30μL/分の流速で60の会合段階、続いて90の解離で順番に注入した。分析物濃度にしたがって昇順で、リガンドの捕捉および分析物のランを8サイクル反復する。あらゆる解離段階の後に、再生バッファーとして10mMグリシンpH1.5を注入した。
【0162】
(3)再生
チップを10mMグリシンpH1.5で再生した。
【0163】
(4)データ分析
リガンドの捕捉なしの表面チャネルFc1を参照減算の対照表面として使用した。参照チャネルおよびバッファーチャネルデータから各相互作用の最終データを差し引いた。CD64への20170905-Ab#C-02、20170905-Ab#D-02、20170908-Ab#G-02、20170920-Ab#H-02結合の実験データを1:1結合モードでフィッティングした。分析物20170907-Ab#K-02、20170908-Ab#L-02、20170915-Ab#O-02、20170919-Ab#P-02、20170919-Ab#S-02および20170920-Ab#T-02の10240nM曲線を除去して、より良好なフィットを可能にした。相対的な実験データは定常状態親和性によりフィッティングし、以下の表2に示されている。
【0164】
【表2】
【0165】
すべての抗体は、低いFCRI結合を示したかまたはFCRI結合を示さなかったが、これは有利である。
【0166】
B.FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIa、FcγRIIIbへの結合実験:Biacore 8K
チップ:CM5
(1)固定化
注入の直前に400mM EDCおよび100mM NHSを混合することにより、アクチベーターを調製した。CM5センサーチップを混合物で420秒間活性化した。次いで、10mM NaAc(pH4.5)中30μg/mLのTHE(商標)Hisタグ抗体をチャネル1~8に30μL/分の流速で400秒間注入した。1Mエタノールアミン-HCl(GE)により、チップを不活性化した。
【0167】
(2)リガンドの捕捉および分析物のラン
ランニングバッファー(1×HBS-EP+)中1μg/mL FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaまたはFcγRIIIbをチャネル1~8のFc2に10μL/分の流速で15秒間注入した。分析物をそれぞれチャネル1~8に注入した。一連の分析物濃度(以下の表3を参照のこと)を30μL/分の流速で60秒間の会合段階、続いて90秒間の解離でモニタリングした。あらゆる解離段階の後に、再生バッファーとして10mMグリシンpH1.5を注入した。
【0168】
【表3】
【0169】
(3)再生
チップを10mMグリシンpH1.5で再生した。
【0170】
(4)データ分析
リガンドの捕捉なしの表面チャネルFc1を参照減算の対照表面として使用した。参照チャネルおよびバッファーチャネルデータから各相互作用の最終データを差し引いた。FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaおよびFcγRIIIbへの抗体結合の実験データは定常状態親和性モードによりフィッティングし、以下の表4に示されている。
【0171】
【表4】
【0172】
すべての抗体は、低いFcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaおよびFcγRIIIb結合を示したかまたはFcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIIaおよびFcγRIIIb結合を示さなかったが、これは有利である。
【0173】
C.FcRnへの結合
実験:Biacore 8K
チップ:CM5
(1)バッファー交換
取扱説明書にしたがって脱塩カラムを使用して、ヒトFcRnのバッファーをランニングバッファー(50mM NaHPO、50mM NaHPO、150mM NaCl、0.05%Tween20、pH6.0)に交換した。Nanodropにより、濃度を決定した。
【0174】
(2)固定化
注入の直前に400mM EDCおよび100mM NHS(GE)を混合することにより、アクチベーターを調製した。CM5センサーチップを混合物で10μL/分の流速で420秒間活性化した。次いで、10mM NaAc(pH5.5)中5μg/mLの抗体をそれぞれチャネル1~8のFc2に10μL/分の流速で60秒間注入した。相対的Fc1をブロッキングした。1Mエタノールアミン-HCl(GE)により、チップを10μL/分の流速で420秒間不活性化した。
【0175】
(2)分析物のラン
分析物FcRnをそれぞれチャネル1~8に注入した。8つの濃度のFcRn(0、93.75、187.5、375、750、1500、3000および6000nM)を30μL/分の流速で60秒間の会合段階、続いて90秒間の解離でモニタリングした。相互作用分析の各サイクルの後、センサーチップ表面を1×PBS(pH7.4)で10μL/分の流速で30秒間再生した。
【0176】
(3)再生
チップを1×PBS(pH7.4)で再生した。
【0177】
(4)データ分析
固定化抗体なしの表面チャネルFc1を参照減算の対照表面として使用した。参照チャネルおよびバッファーチャネルデータから各相互作用の最終データを差し引いた。実験データは定常状態親和性モードによりフィッティングし、以下の表5に示されている。
【0178】
【表5】
【0179】
すべての抗体は同様のFcRn結合を示したが、これは望ましい。
【0180】
D.ELISAによるC1qへの結合
プレート(Nunc)を3μg/mLの抗体で4℃で一晩コーティングした。ブロッキングおよび洗浄の後、C1qをブロッキングバッファー(600、189.75、60.01、18.98、6.00、1.90、0.60、0.19、0.06および0.02μg/mL)で半対数滴定し、室温で2時間インキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、続いて、二次抗体ヒツジ抗ヒトC1qAb-HRPと共に1時間インキュベートした。洗浄後、TMB基質を添加し、2M HClにより相互作用を停止した。マイクロプレートリーダー(Molecular Device)を使用して450nmの吸光度を読み取り、以下の表6に示した。
【0181】
【表6】
【0182】
すべての抗体は、低いC1q結合を示したかまたはC1q結合を示さなかったが、これは有利である。
【0183】
実施例3.エピトープマッピング
標的分子のエピトープを再構築するために、固相Fmoc合成を使用して、ペプチドベースのエピトープ模倣物のライブラリーを合成した。独自の親水性ポリマー製剤でグラフトし、続いて、N-ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)と共にジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)を使用してt-ブチルオキシカルボニル-ヘキサメチレンジアミン(BocHMDA)と反応させ、続いて、トリフルオロ酢酸(TFA)を使用してBoc基を切断することにより、アミノ官能化ポリプロピレン支持体を得た。標準的なFmoc-ペプチド合成を使用して、カスタム改変JANUS液体ハンドリングステーション(Perkin Elmer)により、アミノ官能化固体支持体上でペプチドを合成した。
【0184】
足場上化学結合ペプチド(CLIPS)技術を使用して、構造模倣物の合成を行った。CLIPS技術は、ペプチドを単一ループ、二重ループ、三重ループ、シート様フォールド、ヘリックス様フォールドおよびそれらの組み合わせに構造化することを可能にする。CLIPSテンプレートをシステイン残基にカップリングする。ペプチド中の複数のシステインの側鎖を1つまたは2つのCLIPSテンプレートにカップリングする。例えば、P2 CLIPS(2,6-ビス(ブロモメチル)ピリジン)の0.5mM溶液を重炭酸アンモニウム(20mM、pH7.8)/アセトニトリル(1:3(v/v))に溶解させる。この溶液をペプチドアレイに添加する。CLIPSテンプレートは、ペプチドアレイの固相結合ペプチド(3μlウェルの455ウェルプレート)に存在する2つのシステインの側鎖に結合するであろう。溶液中で完全にカバーされている間、ペプチドアレイを溶液中で穏やかに30~60分間振盪する。最後に、ペプチドアレイを過剰のHOで十分に洗浄し、PBS中1%SDS/0.1%2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオールを含有する破壊バッファー(pH7.2)中、70℃で30分間で超音波処理し、続いて、HO中でさらに45分間超音波処理する。今度はシステインが3つである以外は同様の方法で、ペプチドを有するT3 CLIPSを作製した。
【0185】
以下の設計にしたがって、ペプチドの異なるセットを合成した。一部のミニカードのペプチドの実際の順序をランダム化したことに留意する。
【表7】
【0186】
各合成ペプチドへの抗体の結合をELISAで試験した。ペプチドアレイを一次抗体溶液と共にインキュベートした(4℃で一晩)。洗浄後、ペプチドアレイを適切な抗体ペルオキシダーゼコンジュゲート(SBA;ヤギ抗ヒトHRPコンジュゲート、Southern Biotech)の1/1000希釈物と共に25℃で1時間インキュベートした。洗浄後、ペルオキシダーゼ基質2,2’-アジノ-ジ-3-エチルベンズチアゾリンスルホネート(ABTS)および20μl/mlの3%Hを添加した。1時間後、発色を測定した。電荷結合素子(CCD)カメラおよび画像処理システムを用いて、発色を定量した。
【0187】
CCDカメラから得られた値は、標準的な96ウェルプレートELISAリーダーと同様に0~3000mAUの範囲である。結果を定量し、ラボデータベースに保存する。時々、ウェルが気泡を含有して偽陽性値が生じるので、カードを手動で検査し、気泡により引き起こされたいかなる値も0としてスコア化する。
【0188】
合成ペプチドの品質を検証するために、陽性および陰性対照ペプチドの別個のセットを並行して合成した。市販の抗体3C9および57.9(Posthumusら、(1990)J.Virol.64:3304-3309を参照のこと)を用いて、これらをスクリーニングした。
【0189】
完全なデータセットのグラフ概要は図1に示されている。ここでは、箱ひげ図は各データセットを示し、各データセット内の平均ELISAシグナル、分布および外れ値を示す。実験条件(抗体の量、ブロッキング強度など)に応じて、ELISAデータの異なる分布が得られる。具体的には、箱の下部および上部は、データの25パーセンタイルおよび75パーセンタイルである。箱の中央付近のバンドは、50パーセンタイル(中央値)である。ひげは1.5四分位範囲であり、データセット内の統計的外れ値を示すものである(Mcgillら、(1978)The American Statistician,32:12-16)。
【0190】
高ストリンジェンシー条件下、高濃度で、抗体を試験した。記録された結果は図2および図3に示されている。2つの各ペプチドセットのデータを別個に分析した。
【0191】
リード配列FLSRPTEKTIの置換バリアントで記録されたデータの分析は、配列内のいずれかの残基の多くの置換が、程度は異なるが、抗体の結合に悪影響を与えることを示唆した(図2)。唯一の例外(L2PおよびL2Yの置き換えを許容しないが、すべての他の置き換えに対して依然として非感受性である残基L2)が見られた。
【0192】
リード配列FLSRPTEKTIの短縮バリアントで記録されたデータの分析は、配列のN末端が抗体により好まれることを示した(図3)。FLSRPTEKTIの中央部分に由来する多くの構築物もよく認識されている。
【0193】
要約すると、リード配列FLSRPTEKTIに由来する2つのタイプのペプチドバリアント(単一残基突然変異体および短縮バリアント)から構成されるペプチドアレイで、抗体を試験した。抗体は、高ストリンジェンシー条件下で検出可能な結合をもたらした。FLSRPTEKTI全体にわたる多くの置き換えは、抗体にとって望ましくないものであった。抗体は、配列のN末端部分に由来するより強力な結合短縮構築物であった。
【0194】
実施例4.抗体の安定性
抗体の安定性は、開発、有効性、生産コストなどに影響を与える重要な要素である。配列最適化後、重要な安定性パラメータを評価した。酸性および熱条件下における様々な抗体の種分布プロファイルを試験した。すべての抗体は、改善された安定性を示す。
【0195】
A.SE-UPLC(サイズ排除超高速液体クロマトグラフ)
製剤:PBS、pH6.5または7.2
濃度(mg/mL):5.28、5.13、5.00、5.17、5.01、5.26、4.92、5.04、4.99、5.12(すべて約5mg/mL)
条件:室温、酸性処理、次いで4℃で1週間または40℃で1週間保管
2μLのサンプルをACQUITY UPLC Protein BEH SEC 200、1.7μm、4.6×150mmカラムに0.3mL/分の流速で10分間注入した。50mMリン酸ナトリウム、500mM NaCl、pH6.2の移動相を使用した。すべての抗体は、様々なpH、熱および保管条件下で望ましい安定性を示す。
【0196】
B.rCE-SDS(還元キャピラリー電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム)
製剤:PBS、pH6.5、7.2、6.2
濃度(mg/mL):0.5
条件:室温、酸性処理、次いで4℃で1週間または40℃で1週間保管
LabChip GXIIシステム(PerkinElmer)に供する前に、還元標識バッファー中でサンプルを調製した。すべての抗体は、様々なpH、熱および保管条件下で望ましい安定性を示す。
【0197】
実施例5.ヘミチャネル開放のためのアッセイ
A.インビトロアッセイ
本明細書に開示される抗体は、色素取り込みアッセイを使用して、ヘミチャネル開放に対するそれらの効果についてインビトロで試験され得る。色素は、蛍光トレーサー色素(例えば、エチジウムブロミドまたはルシファーイエロー)であり得る。
【0198】
一例では、流体流動装置(FFLA)(Parrallel Plate Flow Chamber)またはその改良版が使用され得る。FFLAは、骨における動的流体微小環境を模倣して、流体流動剪断応力(FFSS)を生じさせる。細胞を定常層流に曝露して、パラレルプレートフローチャンバー中で細胞を培養する。
【0199】
骨細胞は、骨細胞小腔/小管ネットワークでFFSSによりもたらされた機械的ひずみを感知する。骨流体流動は、血管外圧と、骨細胞に加えられた周期的機械的負荷とにより駆動され、ピーク生理学的負荷は、8~30dyn/cmであることが提案されている。特定の態様では、FFSSレベルは、骨内の流体流動を測定する以前の研究から報告された生理学的値の範囲内であった。流体剪断応力の規模は、フローループのカラム高さを調整することにより変化され得る。
【0200】
ヘミチャネルの機能性を評価するために使用されるアッセイは、ヘミチャネルの細孔を通過するために十分に小さい蛍光トレーサー分子を使用し得る。ヘミチャネルが閉鎖している場合、分子は通過し得ない。ヘミチャネルが開放している場合、色素は通過して細胞の蛍光発光を引き起こし、蛍光の定量を可能にし得る。臭化エチジウムがDNAに付着すると、それは蛍光を発するようになる。ルシファーイエローは、それが細胞内に配置されると蛍光を発する。
【0201】
色素転移法は、細胞を細胞外蛍光透過性トレーサーに曝露することを含み得る。いくつかの条件が細胞膜の透過性を増加させない限り、細胞外透過性トレーサーは、細胞の外側に残る分子である。特定の態様では、トレーサーは、1、2または3kDa未満の質量を有する。他の態様では、トレーサーは正味電荷を有するであろう。このような透過性トレーサーとしては、限定されないが、アニオン色素ルシファーイエロー(LY;正味電荷=-1)およびカチオンプローブ臭化エチジウム(Etd;正味電荷=+1)、ヨウ化プロピジウム(PI;正味電荷=+2)が挙げられる。DNAへの結合により、EtBrの蛍光は増強され、コントラストが増加し、より容易な識別が可能になる。特定の態様では、細胞外色素は、異なる期間で、またはヘミチャネルを開放する刺激の適用後に除去され、各細胞により保持される蛍光強度が定量される。特定の態様では、蛍光強度は、スナップショット画像で定量される。
【0202】
ヘミチャネル開放を試験するためのインビトロアッセイで使用される材料としては、ヘミチャネル発現細胞または細胞株が挙げられる。様々なコネキシンヘミチャネルを発現する細胞または細胞株は、当技術分野で公知の方法および/または発現ベクターを使用して取得、単離または操作され得る。
【0203】
骨細胞:動物(マウス、ラット、ウサギ、ニワトリを含む)などから単離された初代骨細胞、または限定されないが、MLO-Y4細胞などを含む骨細胞株。
【0204】
癌細胞:乳癌細胞株:ER、PR、HERおよびTP53陽性/陰性細胞(例えば、MD-MBA-231、MCF7、T47DまたはZR751)を含む。MDA-MB-231は乳腺管癌腫である。Py8119乳腺腫瘍細胞株は、C57Bl/6 MMTV-PyMT雌(マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター駆動性ポリオーマミドルT導入遺伝子)マウスで生じた自然発生乳腺腫瘍から樹立された。癌遺伝子(ポリオーマミドルT導入遺伝子)の発現は、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーターにより駆動される。
【0205】
前立腺癌細胞株:アンドロゲン受容体および5α-レダクターゼ陽性/陰性ならびにアンドロゲン感受性/非感受性細胞株(例えば、LNCaP-Rf、BM18、pRNA-1-1/ras、RC58T/hTERT、PPC-1など)を含む。
【0206】
骨芽細胞:MLO-A5骨芽細胞は、コネキシン43を発現するので対照として使用されるが、それらは、アレンドロネートにより刺激された場合に開放していないように思われる。
【0207】
トレーサー分子としては、限定されないが、ルシファーイエロー、エチジウムブロミド、エバンスブルー、Alexa350、Alexa488およびAlexa594が挙げられる。
【0208】
Cx43(E2):Cx43(E2)抗体は、Cx43ヘミチャネルに特異的である。Cx43E2は、Cx43ヘミチャネルの第2の細胞外ループに結合し、ヘミチャネルの開放を妨げる。
【0209】
抗体がヘミチャネルを開放するかを決定するための方法は、以下の工程の1つまたはそれよりも多くを含む:
(a)コネキシン発現細胞または細胞株を単離、取得または生産すること。例えば、初代骨細胞は、頭蓋冠から単離され得る。他の細胞タイプは、当技術分野で公知の他の方法を使用して単離され得る。特定の態様では、頭蓋冠骨細胞は、動物(例えば、16日齢のニワトリ胚性頭蓋冠または新生児マウス)から単離される。動物を断頭し、頭蓋冠骨を解剖し、70%アルコールに迅速に浸漬する。次いで、頭蓋冠骨をαMEMに入れ、PBSで複数回洗浄する。クリーニングした骨を新鮮αMEMに入れる。骨を細断し、1.5mm領域サイズに切断する。骨片をコラゲナーゼで処理して軟組織および類骨を除去し、続いて、EDTAを使用して脱灰し得る。最後に、コラゲナーゼによる処理および激しい撹拌により、骨片から骨細胞を放出させる。
【0210】
(b)長骨から初代骨細胞を単離すること。長骨骨細胞は、2~3週齢のマウスまたはラットから単離され得る。例えば、マウスに過量の麻酔を与え、頸椎脱臼させ、断頭し、70%エタノールに浸漬する。依然としてインタクトな関節の末端を有する大腿骨および脛骨を単離する。肢を70%アルコールに迅速に浸漬し、αMEMに入れる。αMEM中の肢をPBSで洗浄する。筋肉の大部分を除去し、腱/靭帯から分離する。クリーニングした骨を新鮮αMEMに入れる。すべての骨をクリーニングしたら、PBSを使用して骨髄を洗い流す直前に、メスを使用して各骨の両端を切断する。骨を長さ1.5~2mmに切断し、コラゲナーゼで処理する。一例では、骨片をコラゲナーゼで連続9回処理して、すべての他の組織および類骨を除去し、続いて、EDTAを使用して脱灰する。
【0211】
(c)細胞または細胞株を培養すること。例えば、コラーゲンコーティングプレート上で初代および/または骨細胞細胞株を培養し、透過性トレーサーを含有する記録培地(HCOを含まないHEPESで緩衝されたα-MEM培地)に浸漬する。
【0212】
(d)試験抗体を投与すること。培養細胞を試験抗体と所望の時間接触させて置く。
【0213】
(e)透過性トレーサー取り込みを決定すること。透過性トレーサー取り込みは、細胞内のトレーサーの量を検出することにより決定される。特定の態様では、タイムラプス記録が使用される。蛍光は、使用されているトレーサーまたは他のプローブの蛍光の波長に基づいて、顕微鏡で日食フィルタを用いて、異なる細胞における目的の領域で記録され得る。特定の態様では、画像は、2分ごとに高速冷却デジタルカメラによりキャプチャされ、画像処理は、ImageJソフトウェアを用いて実施される。収集データは、基本蛍光と対比して初期蛍光および目的の時点の蛍光の倍率差として示され得る。
【0214】
スナップショット画像の場合、細胞を透過性トレーサーに5~10分間曝露し、PBSで複数回リンスし、ホルムアルデヒドで固定し得る。特定の態様では、蛍光視野の少なくとも3つの顕微鏡写真が、顕微鏡を用いて撮影される。画像分析は、ImageJソフトウェアを用いて行われる。ランダムセルのピクセル密度の平均が測定される。
【0215】
コネキシンヘミチャネルの開放の確認は、例えば、骨細胞を試験抗体と一緒にCx43(E2)抗体(Cx43ヘミチャネルを特異的に阻害するポリクローナル抗体)と共にインキュベートすることにより得られ得る。試験抗体がCx43ヘミチャネルを開放する場合、このチャネル開放は、Cx43(E2)抗体により遮断される。Cx43ヘミチャネルの開放を制御するために、骨細胞は、流体流動剪断応力および/またはAD(これらは両方とも、骨細胞におけるヘミチャネルを開放することが公知である)で処理される。
【0216】
特定の例では、MLO-Y4骨細胞を、1μg/ml Cx43(E2)抗体の非存在下または存在下、20μM ADまたは試験抗体で30分間処理した。臭化エチジウム色素取り込みを行い、未処理基本取り込みレベルと比較して定量した。カルシウムの存在下でアッセイを行った。低カルシウム条件を(ヘミチャネルを開放する)対照として使用し得る。ADまたは試験抗体により誘導される骨細胞ヘミチャネルの開放は、Cx43(E2)抗体により遮断される。
【0217】
B.インビボアッセイ
特定の態様では、骨細胞におけるCx43モジュレーションは、候補試薬を長骨に注入し、蛍光トレーサー色素(例えば、カルセインまたはエバンスブルー)を使用して、骨細胞におけるヘミチャネルの開放をインサイチューで検出することにより決定される。
【0218】
骨細胞におけるヘミチャネルを分析するためのインビボアッセイの一例は、3~4月齢のマウスまたはラットを使用する。動物を計量する。腹腔内(IP)注射により、試験抗体を動物に導入する。2~4時間後、蛍光トレーサー色素(エバンスブルー、Alexa594)を動物の外側尾静脈にまたはIP注射により注射する。注:動物の体重の最大1%を注射し得る。特定の態様では、尾静脈注射の前に、動物を温めて尾静脈を拡張する。2~4時間後、動物を乱切し、筋肉組織を含まない脛骨および大腿骨を解剖し、PBSで複数回洗浄する。骨をパラホルムアルデヒドで固定し、14%EDTA溶液で4℃で2週間、または定常撹拌下で室温で3~5日間脱灰する。骨をPBSで洗浄し、PBS中30%スクロースに一晩浸漬し、OCT化合物に包埋する。典型的には、必要な場合にはモールド中で骨の位置を調整する。クリオスタットを使用して厚さ5μmの凍結切片を切断し、切片をPBSでリンスし、PBS中50%グリセロールを使用してマウントする。蛍光顕微鏡下で骨切片を検査し得、トレーサー色素を取り込んだ骨における骨細胞の程度を、Image Jを使用して定量する。
【0219】
骨細胞におけるCx43ヘミチャネルの開放は、骨細胞におけるCx43ヘミチャネルを開放する脛骨への機械的負荷により確認され得る。これは、インビボで骨細胞におけるヘミチャネル開放の陽性対照として機能し得る。陰性対照については、骨細胞におけるCx43の欠損を有するマウスが使用される。このマウスは、10kb DMP-1 CreおよびCx43 floxマウスと交配することにより生成される。
【0220】
実施例6.癌細胞遊走、生存性および転移のアッセイ
A.インビトロアッセイ
癌細胞遊走のアッセイ。骨細胞におけるCx43ヘミチャネルは、ADまたはFFSSの投与により開放される。開放したヘミチャネルは、培地への様々な因子の放出を可能にし、馴化培地(CM)が得られる。ADまたはFFSS処理CM中の放出された因子は、軟寒天および創傷治癒アッセイにより決定した場合に、癌細胞遊走を減少させる。対照CMで処理された癌細胞は、正常な遊走を示す。軟寒天アッセイは、足場依存性成長とは対照的に、足場非依存性成長のアッセイである。癌細胞のみが軟寒天上で成長し得、このマトリックス上におけるそれらの成長は、癌細胞増殖の程度を示す。
【0221】
特定の実施形態では、癌(例えば、乳房または前立腺)細胞はCMと共にインキュベートされ、癌細胞増殖、遊走および浸潤が決定される。
【0222】
癌細胞成長および生存性は、WST-1(水溶性テトラゾリウム塩)アッセイ、トリパンブルー法を使用する生細胞カウンティング、BrdU DNA取り込み、および細胞増殖アッセイを使用して決定され得る。WST-1アッセイでは、細胞増殖は、Synergy HTマルチモードマイクロプレートリーダー(Biotek)を用いて450nmの発光波長で測定される。
【0223】
細胞遊走アッセイは、典型的には、24ウェル組織培養プレート(BD Biosciences)中、トランスウェルメンブレンフィルタインサートで実施される。トランスウェルメンブレンフィルタインサートは、例えば、直径6.5mm、孔径8μmおよび厚さ10nmのポリカーボネートメンブレンであり得る。
【0224】
浸潤アッセイは、BD Biocoat成長因子還元マトリゲル浸潤チャンバー(BD
Biosciences)で実施される。癌細胞株を回収し、試験抗体にかかわらず骨細胞由来のCMに再懸濁する。癌細胞懸濁液をインサートの上側に添加する。細胞を37℃で様々な時間インキュベートする。フィルタを通って遊走しない細胞を除去し、インサートを通って遊走する細胞を固定し、Hema 3 Stat Pack(Fisher
Scientific)で染色する。インサート当たり5つの視野における遊走細胞数を光学顕微鏡下でカウントする。
【0225】
ADまたはFFSSまたは本明細書に開示される抗体で処理して、Cx43ヘミチャネル開放を刺激した骨細胞由来のCMでインキュベートした場合、乳癌細胞遊走は減少し得る。E2抗体により骨細胞Cx43ヘミチャネルを遮断した場合、癌細胞遊走に対するこの阻害効果は弱化された。骨芽細胞から収集したCMと共にインキュベートした場合、またはADで直接処理した場合、癌細胞遊走のこの減少は見られない。本明細書に開示される抗体によるCx43ヘミチャネルの開放は、乳癌細胞成長および遊走に対して保護的である。
【0226】
B.インビボアッセイ
インビボにおける骨転移に対する試験抗体の効果は、脛骨内注射骨転移モデルおよび/または心臓内注射癌転移アッセイを使用して決定される。
【0227】
脛骨内注射骨転移モデル。前記方法は、イソフルランを使用して1月齢の正常または免疫不全マウスを麻酔することを含む。また、鎮痛薬としてブプレノルピン-HCl(0.3mg/ml)をマウスに与える。蛍光または化学発光マーカーを発現する癌細胞(例えば、正常マウスについてはLuc-GFPを発現するPy8119細胞、または免疫不全マウスについてはLuc-GFPを発現するMD-MBA-231)を使用して、脛骨内注射を実施する。30ゲージ針が取り付けられたハミルトンシリンジにより、事前に作られた穴を通して、癌細胞を右脛骨の骨髄領域に接種する。対照として、PBSを左脛骨に注射した。試験抗体または生理食塩水を5週間にわたって週2回腹腔内投与する。生物発光イメージングまたは蛍光を用いて、腫瘍細胞接種の3日後から毎週、脛骨内腫瘍成長をモニタリングする。十分な生物発光イメージング後の研究の終了時に、X線画像を撮影して骨の質を試験し、蛍光顕微鏡を用いて標識転移性癌細胞コロニーを観察およびカウントする。
【0228】
心臓内注射骨転移モデル。2~3月齢の正常または免疫不全マウスをイソフルランにより麻酔し、鎮痛薬としてブプレノルピン-HCl(0.3mg/ml)も与える。蛍光または化学発光マーカーを発現する癌細胞(例えば、正常マウスについてはLuc-GFPを発現するPy8119細胞、または免疫不全マウスについてはLuc-GFP-MD-MBA-231)をマウスの左心室に注射する。手順は以下を含む:針を作業者に向かって右に傾けて保持し、胸骨の左約3mmにある2番目の肋間腔にそれを挿入する。約5mm進めて、真っ赤な動脈血の拍動流がハブに入るのが観察されるまで、針を穏やかに回す。細胞懸濁液を30秒間かけて注射する。針を抜いて、アルコールワイプを使用して圧力を注射部位に30秒間適用する。麻酔から完全に回復するまで、マウスを温めた表面に置く。心臓内注射後に生物発光または蛍光イメージングを実施して、腫瘍細胞接種の3日後から毎週、腫瘍細胞の分布を検証する。十分な生物発光イメージング後の研究の終了時に、X線画像を撮影して骨の質を評価し、蛍光顕微鏡を用いて標識転移性癌細胞コロニーを観察およびカウントする。
【0229】
Cx43条件付きノックアウト(cKO)マウス。ホモ接合性Cx43グローバルノックアウトは致死的であるので、および本発明者らは骨細胞で発現されるCx43の役割も調べたいので、骨細胞特異的Cx43ノックアウトマウスを生成した。floxed Cx43遺伝子についてホモ接合性のマウスをCx43グローバルヘテロ接合性マウスと交配させて、骨細胞におけるCx43の完全な欠失を促進する。次いで、Cx43fl/-マウス(子孫の50%)を、ヒトDMP-1プロモーターにより駆動されるCreリコンビナーゼを発現するマウスと交配させた。これにより、Cx43 fl/-、DMP1 Cre+またはCx43 fl/-、DMP1 Cre-のマウスを作製した(ごく一部はCx43fl/flまたはCx43-/-である)。免疫組織化学により、Cx43欠損骨細胞を確認した。
【0230】
研究は、8つの群のマウスを含み得る:アレンドロネート(AD)で処置したWT、ADなしのWT、ADで処置したcKO、ADなしのcKO、試験抗体(TA)で処置したWT、TAなしのWT、TAで処置したcKO、およびTAなしのcKO。ADまたはTAを150μg/kg体重でマウスに投与した。ADまたはTA処置の場合、KOでは、WTマウスと比較して骨転移が増加すると予想される。また、ADまたはTA処置なしの場合、WTマウスとノックアウトマウスとの間で骨転移は同様であるはずである。
【0231】
本開示の様々な態様は単独で、組み合わせて、または上記実施形態で具体的に議論されていない様々な配置で使用され得るので、その適用において、前述の説明に記載されているかまたは図面に示されている構成要素の詳細および配置に限定されない。例えば、一実施形態に記載されている態様は、他の実施形態に記載されている態様と任意の方法で組み合わされ得る。
【0232】
主題の開示の特定の実施形態を議論したが、上記本明細書は限定的ではなく例示的なものである。本明細書の検討により、本開示の多くの変形物が当業者に明らかになるであろう。本開示の全範囲は、特許請求の範囲と均等物の全範囲および本明細書とこのような変形物を参照することにより決定されるべきである。
【0233】
参照による組み込み
本明細書で参照されるすべての刊行物、特許および特許出願は、個々の各刊行物、特許または特許出願が参照により組み込まれることが具体的に示されている場合と同程度に、すべての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
【配列表】
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