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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042129
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60K 28/10 20060101AFI20240321BHJP
   B60W 50/14 20200101ALI20240321BHJP
【FI】
B60K28/10 Z
B60W50/14
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022138150
(22)【出願日】2022-08-31
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-03-19
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100095566
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 友雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179453
【弁理士】
【氏名又は名称】會田 悠介
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(72)【発明者】
【氏名】吉川 史哲
(72)【発明者】
【氏名】柳田 久則
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 崇
(72)【発明者】
【氏名】松下 悟史
【テーマコード(参考)】
3D037
3D241
【Fターム(参考)】
3D037FA01
3D037FA20
3D037FA24
3D037FB09
3D241BA60
3D241BA64
3D241BB72
(57)【要約】
【課題】車両の駆動力を制限する制御が無効化されている場合において、当該制御に関連する異常の発生を運転者に適切に通知することで運転者間での情報の共有を可能とし、車両の安全性を向上させることができる車両制御装置を提供する。
【解決手段】車両制御装置1は、アクセルペダルの操作を検出する検出手段と、アクセルペダルの操作に応じて車両の駆動力を制限する駆動力制限制御を実行する駆動力制限部21と、車両の電子キー5ごとに設定された制限設定情報に基づき、運転時に使用される電子キー5ごとに駆動力制限制御の有効化又は無効化を切り替える制限設定部22と、駆動力制限制御の実行に関連する異常が検出された際に運転者に対して通知を行う通知部24と、を備え、通知部24は、駆動力制限制御が無効化されている場合において、異常が検出されたときには、運転者に対して通知を行うことを特徴とする。
【選択図】図4

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のアクセルペダルの操作を検出するアクセルペダル操作検出手段と、
前記アクセルペダルの操作に応じて前記車両の駆動力を制限する駆動力制限制御を実行する駆動力制限部と、
前記車両の電子キーごとに設定された制限設定情報に基づき、前記車両の運転時に使用される前記電子キーごとに前記駆動力制限制御の有効化又は無効化を切り替える制限設定部と、
前記車両の前記駆動力制限制御の実行に関連する異常を検出し、前記異常が検出された際に運転者に対して通知を行う通知部と、を備え、
前記通知部は、前記駆動力制限制御が無効化されている場合において、前記異常が検出されたときには、前記運転者に対して前記通知を行うことを特徴とする、車両制御装置。
【請求項2】
前記駆動力制限制御を有効化する前記電子キーの前記制限設定情報を書き換え可能に記憶する記憶部と、前記記憶部に前記駆動力制限制御を有効化する前記電子キーの前記制限設定情報が記憶されている場合に前記駆動力制限制御が使用可能状態であると判定する状態判定部と、を更に備え、
前記通知部は、前記駆動力制限制御が使用可能状態であると判定され、かつ、前記駆動力制限制御が無効化されている場合において、前記異常が検出されたときには、前記運転者に対して前記通知を行うことを特徴とする、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記状態判定部は、前記記憶部に前記駆動力制限制御を有効化する前記電子キーの前記制限設定情報が記憶されていない場合に前記駆動力制限制御が使用可能状態ではないと判定し、
前記通知部は、前記駆動力制限制御が使用可能状態ではないと判定された場合において、前記異常が検出されたときには、前記運転者に対して前記通知を行わないことを特徴とする、請求項2に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の条件下で駆動力を制限する制御の有効化/無効化を切り替え可能な車両において、当該制御に関連する故障の発生を運転者に適切に通知する車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、交通参加者の中でも高齢者や障がい者や子供といった脆弱な立場にある人々にも配慮した持続可能な輸送システムへのアクセスを提供する取り組みが活発化している。この実現に向けて、車両の安全性向上に関する開発を通して交通の安全性や利便性をより一層改善する研究開発に注力している。
【0003】
車両の安全性に関する開発の一つとして、車両の発進時や停車時などの低速運転条件下で、運転者の誤操作等に起因する急加速を回避するために、車両の制駆動力を制御する技術が知られている。
【0004】
例えば特許文献1では、運転者の誤操作が生じている可能性の高い誤操作状態か否かを判定し、誤操作状態と判定した場合に車両の駆動力を制限する制限制御を実行するとともに、運転者に誤操作状態の解消を促す誤操作通知を実行する車両制御装置を開示している。この車両制御装置は、制限制御が実行できなくなる異常が発生したときに誤操作状態が生じていない場合は、異常が発生したことを運転者に通知する異常通知を実行し、異常発生時に誤操作状態が生じている場合は、異常通知は実行せずに誤操作通知を継続するように構成されており、これにより、異常発生後に運転者の誤操作をやめさせる可能性が低下することを防止している。
【0005】
また、この車両制御装置では、上述の制限制御の実行の許可/禁止を切り替えるためのスイッチが設けられており、運転者は、このスイッチを操作することにより、制限制御の実行を許可するか、禁止するかを選択することが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-131862号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に記載の車両制御装置では、制限制御の実行が許可されている場合において、制限制御の実行に関わる異常が発生したときに、それを運転者に通知する異常通知を実行することについて記載しているが、制限制御の実行が禁止されている場合に制限制御の実行に関わる異常が発生したときに、それを運転者に通知するか否かについては何ら記載されていない。
【0008】
しかしながら、例えば、家族間で車両を共有し、運転者が高齢者である場合に制限制御を有効化する一方で、運転者が非高齢者である場合に制限制御を無効化する、というような使い分けを行う場合において、非高齢者による運転時に、制限制御の実行に関わる故障等の異常が発生したときには、それを運転者に適切に通知することで、車両の共有者間で故障状態の情報を共有できるようにすることが望ましい。
【0009】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、車両の駆動力を制限する制御が無効化されている場合において、駆動力を制限する制御に関連する異常が発生したときに、それを運転者に適切に通知することにより運転者間での情報の共有を可能とし、車両の安全性を向上させることができる車両制御装置を提供することを目的とする。そして、延いては交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的を達成するために、本発明の請求項1に係る車両制御装置は、車両のアクセルペダルの操作を検出するアクセルペダル操作検出手段(実施形態における(以下、本項において同じ)ECU2、アクセルペダルセンサ41)と、アクセルペダルの操作に応じて車両の駆動力を制限する駆動力制限制御を実行する駆動力制限部21と、車両の電子キー5ごとに設定された制限設定情報に基づき、車両の運転時に使用される電子キー5ごとに駆動力制限制御の有効化又は無効化を切り替える制限設定部22と、車両の駆動力制限制御の実行に関連する異常を検出し、異常が検出された際に運転者に対して通知を行う通知部24と、を備え、通知部24は、駆動力制限制御が無効化されている場合において、異常が検出されたときには、運転者に対して通知を行うことを特徴とする。
【0011】
この車両制御装置によれば、アクセルペダルの操作に応じて駆動力制限制御が実行されるが、この駆動力制限制御は、車両の電子キーごとに設定された制限設定情報に基づき、車両の運転時に使用される電子キーごとに有効化又は無効化が切り替えられる。したがって、例えば、家族間で同じ車両を共有している場合などに、運転に不安を感じている高齢の運転者は、駆動力制限制御を有効化する電子キーを使用することで、駆動力制限制御による運転支援を受けることができ、アクセルペダルの誤操作等に起因する急加速を防止することができるので、事故の可能性を低減して安全性を高めることができる。一方、特に運転に不安を感じていない他の運転者は、駆動力制限制御を無効化する電子キーを使用することで、不必要に駆動力を制限されることがなくなり、ドライバビリティを向上させることができる。
【0012】
また、この車両制御装置は、駆動力制限制御の実行に関連する異常を検出し、それを運転者に通知する通知部を備えており、通知部は、そのような異常が検出されたときには、駆動力制限制御が無効化されている場合であっても、運転者に対して通知を行う。これにより、駆動力制限制御を無効化して運転を行っている最中に、駆動力制限制御の実行に影響を与えうる故障が発生した場合であっても、検出された故障が運転者に通知されるので、運転者は故障の発生を直ちに知ることができ、それを他の運転者に共有することができる。
【0013】
このようにして、本発明の車両制御装置によれば、車両の駆動力を制限する制御が無効化されている場合において、駆動力を制限する制御に関連する異常が発生したときに、それを運転者に適切に通知することにより運転者間での情報の共有を可能とし、車両の安全性を向上させることができる車両制御装置を提供することができる。
【0014】
本発明の請求項2に係る発明は、請求項1に記載の車両制御装置において、駆動力制限制御を有効化する電子キー5の制限設定情報を書き換え可能に記憶する記憶部3と、記憶部3に駆動力制限制御を有効化する電子キー5の制限設定情報が記憶されている場合に駆動力制限制御が使用可能状態であると判定する状態判定部23と、を更に備え、通知部24は、駆動力制限制御が使用可能状態であると判定され、かつ、駆動力制限制御が無効化されている場合において、異常が検出されたときには、運転者に対して通知を行うことを特徴とする。
【0015】
この構成によれば、記憶部は、駆動力制限制御を有効化する電子キーの制限設定情報を書き換え可能に記憶することができ、状態判定部は、駆動力制限制御を有効化する電子キーの制限設定情報が記憶されていることをもって駆動力制限制御が使用可能状態であると判定する。このように、本構成では、駆動力制限制御が使用可能状態であるか否かの判定が行われ、使用可能状態であると判定された場合に、車両の運転時に使用される電子キーに基づき、駆動力制限制御の有効化又は無効化が切り替えられる。
【0016】
そして、駆動力制限制御が使用可能状態であると判定され、かつ、駆動力制限制御が無効化されている場合において、駆動力制限制御の実行に影響を与えうる故障等の異常が検出されたときには、運転者に対して異常の発生を通知する。したがって、このような場合に運転者は故障の発生を直ちに知ることができ、それを他の運転者に共有することができるので、車両の安全性を向上させることができる。
【0017】
本発明の請求項3に係る発明は、請求項2に記載の車両制御装置において、状態判定部23は、記憶部3に駆動力制限制御を有効化する電子キー5の制限設定情報が記憶されていない場合に駆動力制限制御が使用可能状態ではないと判定し、通知部24は、駆動力制限制御が使用可能状態ではないと判定された場合において、異常が検出されたときには、運転者に対して通知を行わないことを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、記憶部に駆動力制限制御を有効化する電子キーの制限設定情報が記憶されておらず、駆動力制限制御が使用可能状態にないと判定した場合には、駆動力制限制御の実行に影響を与えうる故障等の異常の発生が検出されたとしても、運転者に対する通知は行われない。したがって、運転者に対して不要な通知が行われることがなく、運転者が混乱したり不安を感じたりすることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る車両制御装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の一実施形態に係る車両制御装置における駆動力制限制御の使用可能状態判定の制御処理を示すフローチャートである。
図3】本発明の一実施形態に係る車両制御装置における駆動力制限制御の有効化判定の制御処理を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係る車両制御装置における異常通知の制御処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態を詳細に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る車両制御装置の構成を概略的に示している。本実施形態の車両制御装置1は、自動車等の車両に搭載されるものであり、車両のエンジン(又はモータ)の始動とともに起動し、車両の走行中に、走行状態に応じて駆動力を制限するための駆動力制限制御を実行することが可能に構成されている。また、車両制御装置1は、駆動力制限制御の実行に影響を与え得る故障等の異常が発生したときにこれを検出し、所定の条件下で、異常の発生を運転者に通知することが可能に構成されている。
【0021】
車両制御装置1は、ECU(Electronic Control Unit)2、記憶部3、及びセンサ群4により構成されており、ECU2は、CPU、RAM、ROM及びI/Oインターフェース(いずれも図示せず)などから成るマイクロコンピュータで構成されている。ECU2には、アクセルペダル41、アクセル開度センサ42、車輪速センサ43、シフトポジションセンサ44、加速度センサ45、ヨーレートセンサ46などを含むセンサ群4が接続されており、各センサの検出信号は、逐次、ECU2に入力される。
【0022】
アクセルペダルセンサ41は、運転者によるアクセルペダルの踏み込み量、及びアクセルペダル踏み込み量の単位時間当たりの増加量として算出されるアクセルペダル踏み込み速度等を検出するためのセンサである。アクセルペダルセンサ41により検出された踏み込み量や踏み込み速度等に関する信号は、ECU2に出力される。
【0023】
アクセル開度センサ42は、車両のアクセル開度、すなわちスロットルバルブ7の開度を検出する。アクセル開度センサ42により検出されたアクセル開度に関する信号は、ECU2に出力される。
【0024】
車輪速センサ43は、車両の各車輪に設けられ、各車輪の回転に応じて発生するパルス信号をECU2に出力する。ECU2は、各車輪からの検出信号に基づき車輪ごとの車輪速を取得し、これらを平均することによって車速を取得する。
【0025】
シフトポジションセンサ44は、車両の車室内の運転席付近に設けられたシフトスイッチ又はシフトレバー(いずれも不図示)の操作位置を検出するためのセンサである。シフトスイッチ/レバーは、その操作位置に応じて各種のシフトポジション、例えば前進走行用のDレンジ、後進走行用のRレンジ、駐車用のPレンジ等を選択するものである。シフトポジションセンサ44により検出されたシフトポジションの情報は、ECU2に出力される。
【0026】
加速度センサ45は、例えば車両の前後方向、左右方向、及び上下方向の加速度をそれぞれ検出するためのセンサである。加速度センサ45により検出された加速度に関する信号は、ECU2に出力される。
【0027】
ヨーレートセンサ46は、上から見たときの車両の重心周りの角速度であるヨーレートに応じた信号をECU2に出力する。ECU2は、ヨーレートセンサ46からの信号に基づきヨーレートを取得する。
【0028】
ECU2は、ROM又はRAMに記憶されたプログラムを読み出して実行することにより、駆動力制限部21、制限設定部22、状態判定部23、通知部24といった各部の機能を実現する。
【0029】
駆動力制限部21は、所定の条件下で、運転者による急アクセル操作があったとの判定が成立した場合に、スロットルバルブ7の開度の上限値を制限すること等により、車両の駆動力を制限する駆動力制限制御を実行する。なお、モータを動力源とする電動車両やハイブリッド車両の場合、スロットルバルブの開度制限に代えて、例えばモータの出力を制限すること等により車両の駆動力を制限する構成とすることができる。
【0030】
こうした駆動力制限制御の実行のための所定条件は、設計に応じて適宜変更可能であり、例えば、シフトポジションがDレンジの場合とRレンジの場合とで、条件とする車速を異ならせてもよい。また、ブレーキペダルの踏み込み状態や、ウインカーの点灯状態、走行路面の勾配などの各種条件を考慮して、急アクセル操作が誤操作によるものである可能性がより高い走行条件に限定して駆動力制限制御を実行するように設定することも可能である。
【0031】
また、運転者による急アクセル操作があったとの判定は、例えば、アクセルペダルの踏み込み量や踏み込み速度、踏み込み回数などのアクセルペダル操作量が所定のしきい値を超えたことを条件として行うように設定することができる。
【0032】
また、車両の駆動力を制限する場合の制限の掛け方は、誤操作による急アクセル操作があった場合に、車両の急発進を抑制して事故等の危険を回避できるように設定する。例えば、スロットルバルブ7の開度の上限値をほぼ0に設定し、車両にクリープ現象相当の駆動力しか作用しないように設定してもよい。また、スロットルバルブ7の開度の上限値をほぼ0に設定した後、所定車速を超えない範囲で徐々に制限を緩めるように設定することも可能である。駆動力制限の実行中に、アクセルペダルの踏み込みが解除された場合は、急アクセル操作が終了したと判定し、駆動力の制限を解除する。
【0033】
制限設定部22は、上述した駆動力制限制御の有効化と無効化の切り替えを行う。この有効化/無効化の切り替えは、車両の運転に用いられる電子キー5ごとに設定された制限設定情報に基づき行われる。以下、詳しく説明する。
【0034】
電子キー5は、電子キー5ごとに設定されたID情報(以下、電子キーID31という。)を、電子キー5内部の記憶部(不図示)に保持しており、例えば電子キー5に設けられたスイッチ(不図示)を操作することにより、近傍にある車両の認証装置(不図示)に対して電子キーID31を送信することができるように構成されている。
【0035】
電子キー5は、1台の車両に対して複数作成することが可能であり、各電子キー5の電子キーID31は、予め認証装置に登録されることで認証装置と紐づけられる。車両の運転開始時には、運転者が所持する電子キー5の電子キーID31が認証装置に登録されたものと一致するか否かの照合を行うことにより認証が行われ、この認証に成功することで、車両のドアロックを開錠又は施錠したり、エンジンやモータを始動させたりすることができるように構成されている。
【0036】
本実施形態では、電子キーID31を、駆動力制限制御の有効化/無効化を切り替えるための制限設定情報として用いる。車両制御装置1の記憶部3は、車両の認証装置に登録された電子キーID31を記憶するとともに、そのうちの任意のものを、駆動力制限制御を有効化する電子キーID(以下、動作許可キーID32という。)として登録することが可能に構成されている。なお、通常、記憶部3への電子キーID31及び動作許可キーID32の登録の作業は、例えば購入された車両の納車時などに、ディーラー店のスタッフ等により、専用端末である診断機6を介して行われる。
【0037】
制限設定部22は、車両制御装置1の起動時に、運転者が所持する電子キー5の電子キーID31を識別し、それが動作許可キーID32として登録されたものであるか否かを判別する。運転者が所持する電子キー5が動作許可キーID32として登録されたものである場合は、駆動力制限制御を有効化し、動作許可キーID32として登録されたものではない場合は、駆動力制限制御を無効化する。
【0038】
このようにして、複数の電子キー5を、駆動力制限制御を有効化するものと無効化するものとに分けて設定することができる。したがって、例えば家族間で同じ車両を共有している場合などに、駆動力制限制御を有効化する電子キー5と無効化する電子キー5の両方を保有し、運転時に使用する電子キー5を使い分けることにより、運転者ごとに駆動力制限制御の有効化/無効化を容易に切り替えることができる。これにより、例えば運転に不安を感じている高齢の運転者は、駆動力制限制御を有効化する電子キーを使用することで、駆動力制限制御による運転支援を受ける一方で、特に運転に不安を感じていない他の運転者は、駆動力制限制御を無効化する電子キーを使用することで、不必要に駆動力を制限されることを回避する、というような使い分けが可能となる。
【0039】
状態判定部23は、車両制御装置1が搭載された車両において、上述した有効化/無効化を切り替え可能な駆動力制限制御が使用可能状態に設定されているか否かを判定する。当該判定は、記憶部3に、動作許可キーID32が登録されているか否かに基づき行われる。すなわち、記憶部3に1つ以上の動作許可キーID32が登録されている場合は、駆動力制限制御は使用可能状態に設定されていると判断し、動作許可キーID32が1つも登録されていない場合は、駆動力制限制御は使用可能状態に設定されていないと判断する。
【0040】
上述のとおり、動作許可キーID32の登録は、通常、車両の納車時などに、ディーラー店のスタッフ等により専用端末である診断機6を介して行われる。運転者は、車両の購入時などに、任意に選択可能な車両のオプション機能として、駆動力制限制御を使用可能状態に設定するか否かを選択することができる。
【0041】
このように、本実施形態においては、例えば車両の購入時等に、駆動力制限制御を使用可能状態に設定するか否かを選択することができることに加え、使用可能状態に設定する場合は、駆動力制限制御を有効化する電子キー5と無効化する電子キー5をそれぞれ設定することで、車両の運転の度に、例えば運転者ごとに、駆動力制限制御を有効化するか無効化するかを選択することができる。
【0042】
通知部24は、駆動力制限部21により運転者による急アクセル操作があったと判定された場合に、各種のHMI(Human Machine Interface)8を介して、急アクセル操作が検出されたことや、駆動力を抑制する機能が作動していることなどを運転者に通知する。このようなHMIを介した通知の例としては、ダッシュボードやコントロールパネル等に設けられたディスプレイ上に文字で警告を表示する、車載スピーカーから音声による注意や警告音を発する、などが挙げられるが、これらに限られず、運転者に適切に注意を促すことができるものであれば、どのようなものであってもよい。
【0043】
また、通知部24は、公知の手法により、センサ群4の各センサ41~46の動作を監視し、各センサの故障や、各センサとECU2の間の通信系統の故障など、駆動力制限制御の実行に影響を与え得る異常が発生した場合に、それを検出可能に構成されている。異常が検出された場合、後述する所定の条件下で、HMI8を介して、異常が検出されたことや、駆動力を抑制する機能が正常に作動していないことなどを運転者に通知する。
【0044】
図2は、本実施形態の車両制御装置1における、駆動力制限制御の使用可能状態判定の制御処理を示す。本処理は、通常は、ディーラー店における車両の納車時や設定変更時に、車両制御装置1を診断機6と接続した際に実行される。
【0045】
本処理では、まずステップ201(「S201」と図示。以下同じ)において、ディーラー店のスタッフ等により、駆動力制限制御を有効化する電子キー5として登録する電子キー5の電子キーID31が、動作許可キーID32として記憶部3に書き込まれているか否かを判別する。
【0046】
この判別結果がYESで、記憶部3に動作許可キーID32が書き込まれている場合、ステップ202に進み、フラグF_APresの値を「1」にセットし、本処理を終了する。一方、ステップ201の判別結果がNOで、記憶部3に動作許可キーID32が書き込まれていない場合、ステップ203に進み、フラグF_APresの値を「0」にセットし、本処理を終了する。
【0047】
なお、フラグF_APresは、記憶部3に動作許可キーID32が書き込まれているか否かを示すものであり、動作許可キーID32が書き込まれているときに「1」、書き込まれていないときに「0」にセットされるものである。このフラグF_APresの値が「1」の場合、駆動力制限制御が使用可能状態に設定されていることを意味し、値が「0」の場合、駆動力制限制御が使用可能状態に設定されていないことを意味する。
【0048】
次に、図3は、本実施形態の車両制御装置1における、駆動力制限制御の有効化判定の制御処理を示す。本処理は、車両制御装置1の起動時(すなわち、車両のエンジン(モータ)始動時)に実行される。
【0049】
本処理では、まずステップ301において、フラグF_APresの値が「1」にセットされているか否かを判別する。この判別結果がNOの場合、すなわちフラグF_APresの値が「0」である場合、駆動力制限制御は使用可能状態に設定されていないため、次のステップへは進まず、本処理を終了する。
【0050】
一方、ステップ301の判別結果がYESの場合、すなわちフラグF_APresの値が「1」である場合、駆動力制限制御は使用可能状態に設定されているため、次のステップ302に進む。ステップ302では、運転者が所持する電子キー5(すなわち、運転時に使用される電子キー5)の電子キーID31が、記憶部3に動作許可キーID32として登録されているか否かを判別する。
【0051】
ステップ302の判別結果がYESで、運転者が所持する電子キー5の電子キーID31が動作許可キーID32として登録されている場合、ステップ303に進み、フラグF_APactの値を「1」にセットし、本処理を終了する。一方、ステップ302の判別結果がNOで、運転者が所持する電子キー5の電子キーID31が動作許可キーID32として登録されていない場合、ステップ304に進み、フラグF_APactの値を「0」にセットし、本処理を終了する。
【0052】
なお、フラグF_APactは、運転者が所持する電子キー5の電子キーID31が動作許可キーID32として登録されているか否かを示すものであり、動作許可キーID32として登録されているときに「1」、動作許可キーID32として登録されていないときに「0」にセットされるものである。このフラグF_APactの値が「1」の場合、駆動力制限制御が有効化されていることを意味し、値が「0」の場合、駆動力制限制御が無効化されていることを意味する。
【0053】
次に、図4は、本実施形態の車両制御装置1における、異常通知の制御処理を示す。本処理は、車両の通常運転状態において、所定時間ごとに繰り返し実行される。本処理では、まずステップ401において、駆動力制限制御の実行に影響を与え得るセンサ群や通信系統の故障等の異常が検出されたか否かを判定する。
【0054】
この判定結果がNOで、故障等の異常が検出されていないときは、運転者に通知すべき事柄は特にないため、ステップ404に進み、運転者に対する通知を行わず、本処理を終了する。一方、ステップ401の判定結果がYESで、故障等の異常が検出されたときは、次のステップ402において、フラグF_APresの値が「1」にセットされているか否かを判別する。
【0055】
この判別結果がNOで、フラグF_APresの値が「0」である場合、駆動力制限制御は使用可能状態に設定されていないと判断し、運転者に対する異常の通知は行わない。したがって、この場合もステップ404に進み、運転者に対する通知を行わず、本処理を終了する。このように制御することで、駆動力制限制御が使用可能状態に設定されていない車両の運転者に対し駆動力制限制御に関する異常を通知して運転者を混乱させることを回避することができる。
【0056】
一方、ステップ402の判別結果がYESで、フラグF_APresの値が「1」である場合、駆動力制限制御は使用可能状態に設定されていると判断し、次のステップ403において、フラグF_APactの値が「1」にセットされているか否かを判別する。
【0057】
この判別結果がYESで、フラグF_APactの値が「1」である場合、駆動力制限制御は有効化されていると判断し、次のステップ405において、車両に備えられた各種のHMIを介し、運転者に対して駆動力制限制御の実行に関する異常が検出されたことや、駆動力制限制御が正常に作動していないことなどを通知し、本処理を終了する。本実施形態では、例えばコントロールパネルに設けられたディスプレイ上に「急アクセル抑制機能異常」、「システムは作動しません」のようなメッセージを表示するとともに、車載スピーカーから警告音を発することで、運転者に対する通知を行う。なお、警告音は、所定時間吹鳴した後、停止するように構成することができる。一方、ディスプレイ上のメッセージの表示は、メッセージ消去のための所定の操作を行うまでは継続して表示され続けるように構成することができる。これにより、異常が発生したことを運転者が忘れてしまうことを防止することができる。
【0058】
一方、ステップ403の判別結果がNOで、フラグF_APactの値が「0」である場合、駆動力制限制御は無効化されていると判断するが、この場合も、続くステップ406において、HMIを介し、異常が検出されたことや、駆動力制限制御が正常に作動していないことなどを運転者に通知し、本処理を終了する。通知の内容や方法は、ステップ405と同様のものであってよい。このように制御することにより、運転者は、駆動力制限制御に影響を与え得る故障等の異常の発生を直ちに了知することができる。したがって、車両を共有する他の運転者などに異常の情報を共有したり、故障の修理を手配するなどの対応を進めることができる。
【0059】
以上のように、本実施形態の車両制御装置1によれば、駆動力制限制御の実行に影響を与え得る故障等の異常を検出したときは、駆動力制限制御が無効化されている場合であっても、運転者に対して異常の発生等を通知する。したがって、本実施形態の車両制御装置1により、駆動力制限制御を無効化して運転を行っている最中に故障等が発生した場合であっても、運転者は故障等の発生を直ちに知ることができ、情報の共有や故障への対応を行うことが可能となるので、車両の安全性を向上させることができる。
【0060】
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。たとえば、上述の実施形態では、センサ群4として各センサ41~46を説明したが、これらのセンサはあくまで例示であり、センサ群4は、駆動力制限制御の実行に関する他のセンサを含んでいてもよい。例えば、センサ群4は、ブレーキペダルセンサやウインカーセンサ、勾配センサなどを含むことができる。
【0061】
また、実施形態では、ECU2の外部に記憶部3を設ける構成としたが、ECU内部のROMやRAMが記憶部3の機能を果たすように構成してもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。
【符号の説明】
【0062】
1 車両制御装置
2 ECU(アクセルペダル操作検出手段)
3 記憶部
4 センサ群
5 電子キー
6 診断機
7 スロットルバルブ
8 HMI(Human Machine Interface)
21 駆動力制限部
22 制限設定部
23 状態判定部
24 通知部
31 電子キーID
32 動作許可キーID
41 アクセルペダルセンサ(アクセルペダル操作検出手段)
42 アクセル開度センサ
43 車輪速センサ
44 シフトポジションセンサ
45 加速度センサ
46 ヨーレートセンサ

図1
図2
図3
図4