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特開2024-42139制御装置、電力変換装置、及び制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042139
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】制御装置、電力変換装置、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
H02M3/155 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146633
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐賀 翔直
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AS04
5H730AS05
5H730AS08
5H730AS13
5H730AS17
5H730BB13
5H730BB14
5H730BB57
5H730DD03
5H730DD16
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD41
5H730FG05
5H730FG22
(57)【要約】      (修正有)
【課題】デッドタイム中に、出力電圧が不安定になることを抑制する電力変換装置の制御装置及び制御方法を提供する。
【解決手段】制御装置の制御部は、充電モード又は放電モードで動作中のデッドタイム中にリアクトルに流れる電流がゼロにならない第1モードの場合、第1電圧値及び第2電圧値に基づく第1条件で定められる第1デューティ比で、第1、第2スイッチング素子を交互にオンオフさせ、充電モードで動作中にデッドタイム中にリアクトルに流れる電流がゼロになる第2モードの場合、第1電圧値、第2電圧値及び電流値に基づく第2条件で定められる第2デューティ比で、第1、第2スイッチング素子を交互にオンオフさせ、放電モードで動作中にデッドタイム中にリアクトルに流れる電流がゼロになる第3モードの場合、第1電圧値、第2電圧値及び電流値に基づく第3条件で定められる第3デューティ比で、第1、第2スイッチング素子を交互にオンオフさせる。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子と直列に接続される第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子のソース端子と前記第2スイッチング素子のドレイン端子との間のノードに一端が接続されるリアクトルと、前記リアクトルの他端と前記第2スイッチング素子のソース端子との間に接続される第1コンデンサと、前記第1スイッチング素子のドレイン端子と前記第2スイッチング素子の前記ソース端子との間に接続される第2コンデンサとを備え、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせることで直流電圧を降圧または昇圧する電力変換装置を制御する制御装置であって、
前記第1コンデンサに印加される電圧の第1電圧値を取得する第1電圧値取得部と、
前記リアクトルに流れる電流の電流値を取得する電流値取得部と、
前記第2コンデンサに印加される電圧の第2電圧値を取得する第2電圧値取得部と、
前記リアクトルに流れる電流が前記リアクトルの前記他端から前記一端に流れる充電モードまたは前記リアクトルの前記一端から前記他端に流れる放電モードで動作中において、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の両方がオフであるデッドタイム中に、前記リアクトルに流れる電流がゼロにならない第1モードで、前記電力変換装置が動作する場合、前記第1電圧値及び前記第2電圧値に基づく第1条件で定められる第1デューティ比で、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせ、前記充電モードで動作中の前記デッドタイム中に前記リアクトルに流れる電流がゼロになる第2モードで、前記電力変換装置が動作する場合、前記第1電圧値、前記第2電圧値、及び前記電流値に基づく第2条件で定められる第2デューティ比で、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせ、前記放電モードで動作中の前記デッドタイム中に、前記リアクトルに流れる電流がゼロになる第3モードで、前記電力変換装置が動作する場合、前記第1電圧値、前記第2電圧値、及び前記電流値に基づく第3条件で定められる第3デューティ比で、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせる制御部と
を備える制御装置。
【請求項2】
前記第1デューティ比は、前記電流値の大きさによらず一定であり、
前記第2デューティ比及び前記第3デューティ比は、前記電流値に基づく予め定められた非線形の関数に従って変化する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記第1電圧値をVin、前記第2電圧値をVout、前記電流値をIin、前記リアクトルのインダクタンス値をL、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフの周期をTとした場合、
前記第1条件は、前記第1デューティ比をDCCMとした場合、
【数A】
であり、
前記第2条件は、前記第2デューティ比をDDCM(放電)とした場合、
【数B】
であり、
前記第3条件は、前記第3デューティ比をDDCM(充電)とした場合、
【数C】
である、請求項1に記載の制御装置。
【請求項4】
前記第1電圧値をVin、前記第2電圧値をVout、前記電流値をIin、前記リアクトルのインダクタンス値をL、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のスイッチング周波数をfSW、前記デッドタイムをTd、前記電流値の誤差をIdet_errとした場合、前記制御部は、前記電流値が
【数D】
を満たす場合、前記第2モードであると判断する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記第1電圧値をVin、前記第2電圧値をVout、前記電流値をIin、前記リアクトルのインダクタンス値をL、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のスイッチング周波数をfSW、前記デッドタイムをTd、前記電流値の誤差をIdet_errとした場合、前記制御部は、前記電流値が
【数E】
を満たす場合、前記第3モードであると判断する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記第1電圧値をVin、前記第2電圧値をVout、前記電流値をIin、前記リアクトルのインダクタンス値をL、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のスイッチング周波数をfSW、前記デッドタイムをTd、前記電流値の誤差をIdet_errとした場合、前記制御部は、前記電流値が
【数D】
を満たす場合、前記第2モードであると判断し、
前記制御部は、前記電流値が
【数E】
を満たす場合、前記第3モードであると判断する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記制御部は、前記電流値が式(D)及び式(E)を満たさない場合、前記第1モードであると判断する、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1つに記載の制御装置と、
前記第1スイッチング素子と、
前記第2スイッチング素子と、
前記リアクトルと、
前記第1コンデンサと、
前記第2コンデンサと
を備える電力変換装置。
【請求項9】
第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子と直列に接続される第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子のソース端子と前記第2スイッチング素子のドレイン端子との間のノードに一端が接続されるリアクトルと、前記リアクトルの他端と前記第2スイッチング素子のソース端子との間に接続される第1コンデンサと、前記第1スイッチング素子のドレイン端子と前記第2スイッチング素子の前記ソース端子との間に接続される第2コンデンサとを備え、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせることで直流電圧を降圧または昇圧する電力変換装置を制御する制御方法であって、
前記第1コンデンサに印加される電圧の第1電圧値を取得する段階と、
前記リアクトルに流れる電流の電流値を取得する段階と、
前記第2コンデンサに印加される電圧の第2電圧値を取得する段階と、
前記リアクトルの前記他端から前記一端に流れる充電モードまたは前記リアクトルの前記一端から前記他端に流れる放電モードで動作中において、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の両方がオフであるデッドタイム中に、前記リアクトルに流れる電流がゼロにならない第1モードで、前記電力変換装置が動作する場合、前記第1電圧値及び前記第2電圧値に基づく第1条件で定められる第1デューティ比で、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせ、前記充電モードで動作中の前記デッドタイム中に前記リアクトルに流れる電流がゼロになる第2モードで、前記電力変換装置が動作する場合、前記第1電圧値、前記第2電圧値、及び前記電流値に基づく第2条件で定められる第2デューティ比で、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせ、前記放電モードで動作中の前記デッドタイム中に、前記リアクトルに流れる電流がゼロになる第3モードで、前記電力変換装置が動作する場合、前記第1電圧値、前記第2電圧値、及び前記電流値に基づく第3条件で定められる第3デューティ比で、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせる段階と
を備える制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、電力変換装置、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、低出力時に電流不連続モードを実現する直流電圧変換回路が開示されている。特許文献2には、デッドタイムの影響による出力電圧変動に対して制御が不安定にならない制御部を備えたDC/DCコンバータが開示されている。
[先行技術文献]
[特許文献]
[特許文献1] 特開2021-170934号公報
[特許文献2] 特開2014-192914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
2つのスイッチング素子を交互にオンオフする相補スイッチングを行う場合に、デッドタイム中に、リアクトルに流れる電流がゼロになることで、出力電圧が不安定になる場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様に係る制御装置は、第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子と直列に接続される第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子のソース端子と前記第2スイッチング素子のドレイン端子との間のノードに一端が接続されるリアクトルと、前記リアクトルの他端と前記第2スイッチング素子のソース端子との間に接続される第1コンデンサと、前記第1スイッチング素子のドレイン端子と前記第2スイッチング素子の前記ソース端子との間に接続される第2コンデンサとを備え、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせることで直流電圧を降圧または昇圧する電力変換装置を制御する制御装置でよい。前記制御装置は、前記第1コンデンサに印加される電圧の第1電圧値を取得する第1電圧値取得部を備えてよい。前記制御装置は、前記リアクトルに流れる電流の電流値を取得する電流値取得部を備えてよい。前記制御装置は、前記第2コンデンサに印加される電圧の第2電圧値を取得する第2電圧値取得部を備えてよい。前記制御装置は、前記リアクトルに流れる電流が前記リアクトルの前記他端から前記一端に流れる充電モードまたは前記リアクトルの前記一端から前記他端に流れる放電モードで動作中において、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の両方がオフであるデッドタイム中に、前記リアクトルに流れる電流がゼロにならない第1モードで、前記電力変換装置が動作する場合、前記第1電圧値及び前記第2電圧値に基づく第1条件で定められる第1デューティ比で、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせ、前記充電モードで動作中の前記デッドタイム中に前記リアクトルに流れる電流がゼロになる第2モードで、前記電力変換装置が動作する場合、前記第1電圧値、前記第2電圧値、及び前記電流値に基づく第2条件で定められる第2デューティ比で、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせ、前記放電モードで動作中の前記デッドタイム中に前記リアクトルに流れる電流がゼロになる第3モードで、前記電力変換装置が動作する場合、前記第1電圧値、前記第2電圧値、及び前記電流値に基づく第3条件で定められる第3デューティ比で、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせる制御部を備えてよい。
【0005】
前記制御装置において、前記第1デューティ比は、前記電流値の大きさによらず一定でよい。前記第2デューティ比及び前記第3デューティ比は、前記電流値に基づく予め定められた非線形の関数に従って変化してよい。
【0006】
いずれかの前記制御装置において、前記第1電圧値をVin、前記第2電圧値をVout、前記電流値をIin、前記リアクトルのインダクタンス値をL、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のオンオフの周期をTとした場合、前記第1条件は、前記第1デューティ比をDCCMとした場合、
【数A】
でよい。
【0007】
前記第2条件は、前記第2デューティ比をDDCM(放電)とした場合、
【数B】
でよい。
【0008】
前記第3条件は、前記第3デューティ比をDDCM(充電)とした場合、
【数C】
でよい。
【0009】
いずれかの前記制御装置において、前記第1電圧値をVin、前記第2電圧値をVout、前記電流値をIin、前記リアクトルのインダクタンス値をL、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のスイッチング周波数をfSW、前記デッドタイムをTd、前記電流値の誤差をIdet_errとした場合、前記制御部は、前記電流値が、
【数D】
を満たす場合、前記第2モードであると判断してよい。
【0010】
いずれかの前記制御装置において、前記第1電圧値をVin、前記第2電圧値をVout、前記電流値をIin、前記リアクトルのインダクタンス値をL、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のスイッチング周波数をfSW、前記デッドタイムをTd、前記電流値の誤差をIdet_errとした場合、前記制御部は、前記電流値が、
【数E】
を満たす場合、前記第3モードであると判断してよい。
【0011】
いずれかの前記制御装置において、前記第1電圧値をVin、前記第2電圧値をVout、前記電流値をIin、前記リアクトルのインダクタンス値をL、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子のスイッチング周波数をfSW、前記デッドタイムをTd、前記電流値の誤差をIdet_errとした場合、前記制御部は、前記電流値が、
【数D】
を満たす場合、前記第2モードであると判断してよい。
【0012】
前記制御部は、前記電流値が、
【数E】
を満たす場合、前記第3モードであると判断してよい。
【0013】
いずれかの前記制御装置において、前記制御部は、前記電流値が式(D)及び式(E)を満たさない場合、前記第1モードであると判断してよい。
【0014】
本発明の一態様に係る電力変換装置は、いずれかの前記制御装置と、前記第1スイッチング素子と、前記第2スイッチング素子と、前記リアクトルと、前記第1コンデンサと、前記第2コンデンサとを備えてよい。
【0015】
本発明の一態様に係る制御方法は、第1スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子と直列に接続される第2スイッチング素子と、前記第1スイッチング素子のソース端子と前記第2スイッチング素子のドレイン端子との間のノードに一端が接続されるリアクトルと、前記リアクトルの他端と前記第2スイッチング素子のソース端子との間に接続される第1コンデンサと、前記第1スイッチング素子のドレイン端子と前記第2スイッチング素子の前記ソース端子との間に接続される第2コンデンサとを備え、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせることで直流電圧を降圧または昇圧する電力変換装置を制御する制御方法でよい。前記制御方法は、前記第1コンデンサに印加される電圧の第1電圧値を取得する段階を備えてよい。前記制御方法は、前記リアクトルに流れる電流の電流値を取得する段階を備えてよい。前記制御方法は、前記第2コンデンサに印加される電圧の第2電圧値を取得する段階を備えてよい。前記制御方法は、前記リアクトルに流れる電流が前記リアクトルの前記他端から前記一端に流れる充電モードまたは前記リアクトルの前記一端から前記他端に流れる放電モードで動作中において、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子の両方がオフであるデッドタイム中に、前記リアクトルに流れる電流がゼロにならない第1モードで、前記電力変換装置が動作する場合、前記第1電圧値及び前記第2電圧値に基づく第1条件で定められる第1デューティ比で、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせ、前記充電モードで動作中の前記デッドタイム中に前記リアクトルに流れる電流がゼロになる第2モードで、前記電力変換装置が動作する場合、前記第1電圧値、前記第2電圧値、及び前記電流値に基づく第2条件で定められる第2デューティ比で、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせ、前記放電モードで動作中の前記デッドタイム中に前記リアクトルに流れる電流がゼロになる第3モードで、前記電力変換装置が動作する場合、前記第1電圧値、前記第2電圧値、及び前記電流値に基づく第3条件で定められる第3デューティ比で、前記第1スイッチング素子及び前記第2スイッチング素子を交互にオンオフさせる段階を備えてよい。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】電力変換装置の回路構成の一例を示す図である。
図2A】電力変換装置が放電モードから充電モードに切り替わる過程での入力リアクトルに流れるリプル電流などの様子を示す図である。
図2B図2Aで示す枠50で囲んだ部分の拡大図である。
図3】電力変換装置が昇圧チョッパとして動作する場合のリアクトル電圧、入力電流、及びゲート信号の波形の一例を示す図である。
図4】電力変換装置が降圧チョッパとして動作する場合のリアクトル電圧、入力電流、及びゲート信号の波形の一例を示す図である。
図5】放電モードにおいて、リアクトル電流が下限境界条件以下の電流値となる場合のリアクトル電圧、入力電流、及びゲート信号の波形の一例を示す図である。
図6】放電モードにおいて、リアクトル電流が上限境界条件以上の電流値となる場合のリアクトル電圧、入力電流、及びゲート信号の波形の一例を示す図である。
図7】放電モードでの入力電流と、デューティ比との関係を示す図である。
図8】充電モードにおいて、リアクトル電流が下限境界条件以下の電流値となる場合のリアクトル電圧、入力電流、及びゲート信号の波形の一例を示す図である。
図9】充電モードにおいて、リアクトル電流が上限境界条件以上の電流値となる場合のリアクトル電圧、入力電流、及びゲート信号の波形の一例を示す図である。
図10】充電モードでの入力電流と、デューティ比との関係を示す図である。
図11】制御部の機能ブロックの一例を示す図である。
図12】AVR部、及びACR部の機能ブロックの一例を示す図である。
図13】電流モード判断部の機能ブロックの一例を示す図である。
図14】デューティ比切替部の機能ブロックの一例を示す図である。
図15】デューティ比切替部の機能ブロックの他の一例を示す図である。
図16】他の形態に係る制御部の機能ブロックの一例を示す図である。
図17A図16に示す制御部を備える電力変換装置における入力電圧、及び出力電圧の時間変化の一例を示す図である。
図17B図16に示す制御部を備える電力変換装置におけるリアクトル電流の時間変化を示す図である。
図18A図11に示す制御部を備える電力変換装置における入力電圧、及び出力電圧の時間変化の一例を示す図である。
図18B図11に示す制御部を備える電力変換装置におけるリアクトル電流の時間変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、本実施形態に係る電力変換装置100の回路構成の一例を示す。電力変換装置100は、蓄電池101、昇降圧コンバータ1、駆動用インバータ104、駆動モータ105、充電用インバータ103、発電モータ102及び制御部20を備える。電力変換装置100は、例えば、ハイブリッド車両、電気車両など蓄電池101からの放電、及び蓄電池101への充電を実行する装置に搭載されてよい。
【0020】
昇降圧コンバータ1は、放電モードにおいて、蓄電池101からの直流電圧を昇圧して、駆動用インバータ104に出力する。さらに、昇降圧コンバータ1は、充電モードにおいて、充電用インバータ103からの直流電圧を降圧して、蓄電池101に出力する。
【0021】
駆動用インバータ104は、昇降圧コンバータ1からの直流電力を交流電力に変換して、駆動モータ105に出力する。充電用インバータ103は、発電モータ102からの交流電力を直流電力に変換して昇降圧コンバータ1に出力する。駆動モータ105及び発電モータ102は、負荷の一例である。
【0022】
昇降圧コンバータ1は、入力フィルタコンデンサ2、入力リアクトル3、上アーム用パワースイッチング素子4、下アーム用パワースイッチング素子5、直流中間コンデンサ6、入力電圧検出器10、入力電流検出器11、及び直流中間電圧検出器12を有する。
【0023】
入力フィルタコンデンサ2は、蓄電池101と並列に接続される。入力フィルタコンデンサ2の一端(正極端子)は、蓄電池101の正極端子に接続され、入力フィルタコンデンサ2の他端(負極端子)は、蓄電池101の負極端子に接続される。
【0024】
入力フィルタコンデンサ2の一端は、入力リアクトル3の一端にさらに接続される。入力リアクトル3の他端は、直列に接続された上アーム用パワースイッチング素子4のソース端子と下アーム用パワースイッチング素子5のドレイン端子との間のノードに接続される。上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5は、例えば絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ(IBGT)などのパワースイッチング素子である。入力フィルタコンデンサ2の他端は、下アーム用パワースイッチング素子5のソース端子にさらに接続される。
【0025】
直流中間コンデンサ6は、上アーム用パワースイッチング素子4のドレイン端子と下アーム用パワースイッチング素子5のソース端子との間に接続される。直流中間コンデンサ6の正極端子は、上アーム用パワースイッチング素子4のドレイン端子に接続される。直流中間コンデンサ6の負極端子は、下アーム用パワースイッチング素子5のソース端子に接続される。
【0026】
入力電圧検出器10は、入力フィルタコンデンサ2に印加される入力電圧の電圧値Vinを検出する。入力電流検出器11は、入力リアクトル3に流れるリアクト電流の電流値Iinを検出する。直流中間電圧検出器12は、直流中間コンデンサ6に印加される出力電圧(中間電圧)の電圧値Voutを検出する。
【0027】
制御部20は、電圧値Vin、電圧値Vout、及び電流値Iinに基づいて、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5のオンオフを制御する。
【0028】
電力変換装置100は、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5を交互にオンオフする相補スイッチングを行う間、蓄電池101からの電力を駆動モータ105に供給して、駆動モータ105を駆動させる放電モード、及び発電モータ102で発電された電力を蓄電池101に充電する充電モードのいずれかで動作している。
【0029】
このような動作を行う電力変換装置100において、制御部20が、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5を交互にオンオフする相補スイッチングを行う場合に、入力リアクトル3に流れるリプル電流の影響で、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5が共にオフの期間であるデッドタイムTd中に、入力リアクトル3に流れる電流がゼロになることで、出力電圧が不安定になる場合がある。
【0030】
そこで、制御部20は、放電モードまたは充電モードで動作中のデッドタイムTd中に、入力リアクトル3に流れる電流がゼロになる場合に、放電モードまたは充電モードで動作中のデッドタイム中に、入力リアクトル3に流れる電流がゼロにならない場合と異なるデューティ比で、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5をオンオフさせることで、出力電圧が不安定になることを抑制する。
【0031】
図2A及び図2Bは、電力変換装置100が放電モードから充電モードに切り替わる過程での入力リアクトル3に流れるリプル電流などの様子を示す。図2Bは、図2Aで示す枠50で囲んだ部分の拡大図である。図2A及び図2Bに示すように、リプル電流は変動するので、入力電流検出器11で検出される入力電流検出値(電流値Iin)に対して幅がある。ここで、放電モードにおいて、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5が共にオフの期間であるデッドタイムTd中に、入力リアクトル3に流れる電流がゼロになるのは、リプル電流の上限がゼロになる期間を含み、このときのモードを電流不連続モード(放電)と称する。また、充電モードにおいて、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5が共にオフの期間であるデッドタイムTd中に、入力リアクトル3に流れる電流がゼロになるのは、リプル電流の下限がゼロになる期間を含み、このときのモードを電流不連続モード(充電)と称する。また、放電モード及び充電モードにおいて、デッドタイムTd中に、入力リアクトル3に流れる電流がゼロにならないモードを電流連続モードと称する。
【0032】
制御部20は、放電モードにおいて、デッドタイムTd中に入力リアクトル3に流れる電流がゼロにならない電流連続モードで、電力変換装置100が動作する場合、電圧値Vin、及び電圧値Voutに基づく第1条件で定められる第1デューティ比で、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5を交互にオンオフさせる。
【0033】
入力リアクトル3のインダクタンス値をL、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5のオンオフの周期をTとした場合、第1条件は、第1デューティ比をDCCMとした場合、
【数1】
である。
【0034】
制御部20は、放電モードにおいて、デッドタイムTd中に入力リアクトル3に流れる電流がゼロになる電流不連続モード(放電)で、電力変換装置100が動作する場合、電圧値Vin、電流値Iin、及び電圧値Voutに基づく第2条件で定められる第2デューティ比で、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5を交互にオンオフさせる。
【0035】
電流不連続モード(放電)のデューティ比:DDCMは、以下の通り、導出される。電流不連続モード(放電)では、昇降圧コンバータ1は、昇圧チョッパとして動作する。
【0036】
図3は、電力変換装置100が昇圧チョッパとして動作する場合のリアクトル電圧、入力電流、及びゲート信号の波形の一例を示す。すなわち、図3は、放電モードにおける入力リアクトル3に印加されるリアクトル電圧、入力リアクトル3に流れるリアクトル電流、並びに上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5のオンオフのタイミングの時間的な変化を示す。
【0037】
図3において、時間Txは、上アーム用パワースイッチング素子4のオンオフ、及び下アーム用パワースイッチング素子5のオンオフが1回完了するまでの期間を示す。放電モードにおいて、時間Txは、下アーム用パワースイッチング素子5がオンした後、オフし、さらに上アーム用パワースイッチング素子4がオンした後、オフするまでの期間に相当する。図3に示すように、キャリア周期Tにおけるリアクトル電流の増加分と減少分は同じである。よって、時間TONでの電流増加分と時間T-Tonでの電流減少分が同じであるから、式(2)が成り立つ。
【数2】
【0038】
ここで、下アーム用パワースイッチング素子5がオンしてからオフした後、再度オンするまでの期間、すなわち、キャリア周期をTとし、キャリア周期Tにおける下アーム用パワースイッチング素子5のオンの割合をDとする。そして、式(2)に、Ton=DTを代入し、Tについて解くと、式(3)となる。
【数3】
【0039】
次に、リアクトル電流の最大値Imaxを導出する。最大値Imaxは、図3に示すように、下アーム用パワースイッチング素子5がオンしている時間Tonに、入力フィルタコンデンサ2に印加される入力電圧がVinの場合に、リアクトル値Lの入力リアクトル3に流れるリアクトル電流の増加量に相当する。よって、最大値Imaxは、式(4)で導出できる。
【数4】
【0040】
さらに、リアクトル電流の平均値Iavgは、式(5)で導出できる。
【数5】
【0041】
式(3)及び式(4)を式(5)に代入すると、平均値Iavgは、式(6)で表すことができる。
【数6】
【0042】
よって、電流不連続モード(放電)のDuty比:DDCM(放電)は、式(7)で表すことができる。すなわち、DDCM(放電)は、電流値に基づく非線形の関数に従って変化する。DDCM(放電)は、電流値Iin、電圧値Vin、及び電圧値Voutに基づく予め定められた非線形の関数に従って変化する。
【数7】
【0043】
また、制御部20は、充電モードにおいて、デッドタイムTd中に、入力リアクトル3に流れる電流がゼロになる電流不連続モード(充電)で、電力変換装置100が動作する場合、電圧値Vin、電流値Iin、及び電圧値Voutに基づく第3条件で定められる第3デューティ比で、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5を交互にオンオフさせる。
【0044】
制御部20は、充電モードにおいて、デッドタイムTd中に、入力リアクトル3に流れる電流がゼロにならない電流連続モードで、電力変換装置100が動作する場合、電圧値Vin、及び電圧値Voutに基づく第4条件で定められる第4デューティ比で、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5を交互にオンオフさせる。
【0045】
入力リアクトル3のインダクタンス値をL、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5のオンオフの周期(キャリア周期)をTとした場合、第4条件は、第1条件と同じでよく、第4デューティ比をDCCMとした場合、式(8)で表される。
【数8】
【0046】
制御部20は、充電モードにおいて、デッドタイムTd中に入力リアクトル3に流れる電流がゼロになる電流不連続モード(充電)で、電力変換装置100が動作する場合、電圧値Vin、電流値Iin、及び電圧値Voutに基づく第3条件で定められる第3デューティ比で、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5を交互にオンオフさせる。
【0047】
電流不連続モード(充電)のデューティ比:DDCM(充電)は、以下の通り、導出される。電流不連続モード(充電)では、昇降圧コンバータ1は、降圧チョッパとして動作する。
【0048】
図4は、電力変換装置100が降圧チョッパとして動作する場合のリアクトル電圧、入力電流、及びゲート信号の波形の一例を示す。図4は、充電モードにおける入力リアクトル3に印加されるリアクトル電圧、入力リアクトル3に流れるリアクトル電流、並びに上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5のオンオフのタイミングの時間的な変化を示す。
【0049】
図4において、時間Tは、入力フィルタコンデンサ2に電流が流れている期間を示す。図3に示すように、キャリア周期Tにおけるリアクトル電流の増加分と減少分は同じである。よって、時間TONでの電流増加分と時間T-TONでの電流減少分とが同じであるため、式(9)が成り立つ。
【数9】
【0050】
キャリア周期をTとし、キャリア周期Tにおける下アーム用パワースイッチング素子5のオンの割合、すなわちオンデューティ比をDとする。そして、式(9)に、TON=DTを代入し、Tについて解くと、式(10)となる。
【数10】
【0051】
次に、リアクトル電流の最大値Imaxを導出する。図4より、下アーム用パワースイッチング素子5がオンしている時間TONに、入力フィルタコンデンサ2に印加される入力電圧がVin、直流中間コンデンサ6に印加される出力電圧がVoutとした場合、最大値Imaxは、リアクトル値Lの入力リアクトル3に、入力電圧Vinと出力電圧Voutとの差分が印加される条件でのリアクトル電流の増加量に相当する。よって、最大値Imaxは、式(11)で導出できる。
【数11】
【0052】
さらに、リアクトル電流の平均値Iavgは、式(12)で導出できる。
【数12】
【0053】
式(10)及び式(11)を式(12)に代入すると、平均値Iavgは、式(13)で表すことができる。
【数13】
【0054】
よって、電流不連続モード(充電)のデューティ比:Duty比:DDCM(充電)は、式(14)で表すことができる。
【数14】
【0055】
ただし、式(14)のデューティ比は、降圧チョッパ基準である為、図4に示す昇圧チョッパ基準に変換し、DDCM(充電)は、式(15)で表すことができる。すなわち、DDCM(充電)は、電流値に基づく非線形の関数に従って変化する。DDCM(充電)は、電流値Iin、電圧値Vin、及び電圧値Voutに基づく予め定められた非線形の関数に従って変化する。
【数15】
【0056】
続いて、放電モードでの電流連続モードと、電流不連続モード(放電)とが切り替わる境界条件について説明する。放電モードでの電流連続モードと電流不連続モード(放電)との上限境界条件は、デッドタイムTd中に入力リアクトル3のリプル電流が0(A)になる条件である。
【0057】
下アーム用パワースイッチング素子5がオンである時間TONでは、入力リアクトル3には入力電圧Vinが印加され、リアクトル電流Iinが増加する。
【0058】
ここで、リアクトル電流Iinは、式(16)で表すことができる。
【数16】
【0059】
下アーム用パワースイッチング素子5がオンしている時間をTON、オンデューティ比をD、キャリア周期をT、スイッチング周波数をfswとした場合、TONは、式(17)で表すことができる。
【数17】
【0060】
また、オンデューティ比Dは、入力電圧をVin、出力電圧をVoutとした場合、式(18)で表すことができる。
【数18】
【0061】
式(16)に式(17)及び式(18)を代入すると、リアクトル電流Iinは、式(19)で表すことができる。
【数19】
【0062】
一方、上限境界条件においては、リアクトル電流Iinの平均値の2倍がリアクトル電流Iinのリプル電流となるので、式(20)が成り立つ。
【数20】
【0063】
式(19)及び式(20)より、放電モードでの電流連続モードと電流不連続モード(放電)とが切り替わる上限境界条件におけるリアクトル電流の最大の電流値IBCMHighは、式(21)で表すことができる。
【数21】
【0064】
次に、放電モードでの下限境界条件について説明する。放電モードでの電流連続モードと電流不連続モード(放電)とが切り替わる下限境界条件におけるリアクトル電流の最小の電流値IBCMLowは、上アーム用パワースイッチング素子4がオフする時のリアクトル電流Iinの絶対値がデッドタイムTd中に増加する電流の電流値と同値である。
【0065】
上アーム用パワースイッチング素子4がオフするタイミングのリアクトル電流IinがデッドタイムTd中に増加するリアクトル電流の電流増加量ditdは、式(16)を用いて、式(22)で表すことができる。
【数22】
【0066】
上アーム用パワースイッチング素子4がオフするタイミングのリアクトル電流Iinがデッドタイム中に増加する電流と同値となるためには、上アーム用パワースイッチング素子4がオフするタイミングのリアクトル電流Iinが、上限境界条件におけるリアクトル電流の最大の電流値IBCMHighから、デッドタイムTd中の電流増加分ditdを減算した値と同値となればよい。よって、式(21)及び式(22)から式(23)で表すことができる。
【数23】
【0067】
よって、式(22)及び式(23)から、放電モードでの電流連続モードと電流不連続モード(放電)とが切り替わる下限境界条件におけるリアクトル電流の最小の電流値IBCMLowは、式(24)で表すことができる。
【数24】
【0068】
以上により、放電モードにおいて、電流不連続モード(放電)となるリアクトル電流の電流値Iinの範囲は、式(21)及び式(24)から、式(25)で表すことができる。
【数25】
【0069】
次にデッドタイムTdの影響による電流検出誤差について説明する。図5は、放電モードにおいて、リアクトル電流Iinが下限境界条件以下の電流値となる場合のリアクトル電圧、入力電流、及びゲート信号の波形の一例を示す。
【0070】
図5に示すように、リアクトル電流Iinが下限境界条件以下の場合、電流検出タイミングであるキャリア周期の「谷」のタイミングTaと、リアクトル電流の電流値Iinが平均値となるタイミングTbとが一致しているため、デッドタイムTdの影響による誤差はない。
【0071】
図6は、放電モードにおいて、リアクトル電流が上限境界条件以上の電流値となる場合のリアクトル電圧、入力電流、及びゲート信号の波形の一例を示す。
【0072】
図6に示すように、リアクトル電流Iinが上限境界条件以上の場合、電流検出タイミングであるキャリア周期の「谷」のタイミングTaと、リアクトル電流の電流値Iinが平均値となるタイミングTbがデッドタイムTdの1/2ずれており、デッドタイムTdのずれの影響による電流検出誤差が生じる。この時の電流検出誤差は、式(26)で表すことができる。
【数26】
【0073】
放電モードでの電流不連続モード(放電)となる電流値範囲は、デッドタイムTdのずれによる電流検出誤差を考慮すると、式(25)及び式(26)より、式(27)で表すことができる。
【数27】
【0074】
さらに、入力電流検出器11の精度誤差Idet_errを考慮すると、放電モードでの電流不連続モード(放電)となる電流値範囲は、式(28)で表すことができる。
【数28】
【0075】
ここで、Idet_errは入力電流検出器11の最大検出値の5%などに設定してよい。
【0076】
図7は、放電モードでの入力電流、すなわち、リアクトル電流の電流値Iinと、デューティ比との関係を示す。図7は、電流値Iinの大きさに関わらず、デューティ比を式(1)で導出する場合、すなわち「連続モードDuty」のときの入力電流とデューティ比との関係、及びデューティ比を式(7)で導出する場合、すなわち「不連続モードDuty」のときの入力電流とデューティ比との関係を示す。さらに、図7は、電流値Iinが式(28)を満たす場合、デューティ比を式(7)で導出し、電流値Iinが式(28)を満たさない場合、デューティ比を式(1)で導出する場合、すなわち「混在制御Duty」のときの入力電流とデューティ比との関係を示す。
【0077】
図7に示すように、混在制御Dutyの場合、放電モードにおいて、電流値Iinが式(28)を満たさない場合、デューティ比は、電流値Iinの大きさにかからず、一定となり、電流値Iinが式(28)を満たす場合、デューティ比は、電流値Iinの大きさに対して非線形に変化する。
【0078】
続いて、充電モードでの電流連続モードと、電流不連続モード(充電)とが切り替わる境界条件について説明する。充電モードでの電流連続モードと電流不連続モード(充電)との上限境界条件は、デッドタイムTd中に入力リアクトル3のリプル電流が0(A)になる条件である。
【0079】
リプル電流を導出するための関係式は、放電モードのときと同じでよい。しかし、充電モードのときの入力リアクトル3に流れる電流の方向は、放電モードのときの方向とは逆になる。したがって、電流値Iinの符号を考慮して、式(21)に基づいて、充電モードでの電流連続モードと電流不連続モード(放電)とが切り替わる上限境界条件におけるリアクトル電流の最大の電流値IBCMHighは、式(29)で表すことができる。
【数29】
【0080】
次に、下限境界条件について説明する。充電モードでの電流連続モードと電流不連続モード(充電)とが切り替わる下限境界条件におけるリアクトル電流の最小の電流値IBCMLowは、下アーム用パワースイッチング素子5がオフする時のリアクトル電流Iinの絶対値がデッドタイムTd中に減少する電流と同値である。
【0081】
下アーム用パワースイッチング素子5がオフするタイミングのリアクトル電流IinがデッドタイムTd中に減少するリアクトル電流の電流減少量ditdは、式(16)を用いて、式(30)で表すことができる。
【数30】
【0082】
下アーム用パワースイッチング素子5がオフするタイミングのリアクトル電流IinがデッドタイムTd中に減少する電流と同値となるためには、下アーム用パワースイッチング素子5がオフするタイミングのリアクトル電流Iinが、上限境界条件におけるリアクトル電流の最大の電流値IBCMHighに、デッドタイムTd中の電流減少分ditdを加算した値と同値となればよい。よって、式(29)及び式(30)から式(31)で表すことができる。
【数31】
【0083】
式(30)及び式(31)から、充電モードでの電流連続モードと電流不連続モード(充電)とが切り替わる下限境界条件におけるリアクトル電流の最小値の電流値IBCMLowは、式(32)で表すことができる。
【数32】
【0084】
以上より、充電モードにおいて、電流不連続モード(充電)となるリアクトル電流の電流値Iinの範囲は、式(29)及び式(32)から、式(33)で表すことができる。
【数33】
【0085】
次に、デッドタイムTdの影響による電流検出誤差について説明する。図8は、充電モードにおいて、リアクトル電流が下限境界条件以下の電流値となる場合のリアクトル電圧、入力電流、及びゲート信号の波形の一例を示す。
【0086】
図8に示すように、リアクトル電流Iinが下限境界条件以下の場合、電流検出タイミングであるキャリア周期の「谷」のタイミングTaと、リアクトル電流のIinが平均値となるタイミングTbがデッドタイムTdの1/2ずれており、デッドタイムTdのすれの影響による電流検出誤差が生じる。この時の電流検出誤差は、式(26)で表すIerr_tdと同じである。
【0087】
図9は、充電モードにおいて、リアクトル電流が上限境界条件以上の電流値となる場合のリアクトル電圧、入力電流、及びゲート信号の波形の一例を示す。
【0088】
図9に示すように、リアクトル電流Iinが上限境界以上の場合、電流検出タイミングであるキャリア周期の「谷」のタイミングTaと、リアクトル電流の電流値Iinが平均値となるタイミングTbとが一致しているため、デッドタイムTdの影響による誤差はない。
【0089】
充電モードでの電流不連続モード(充電)となる電流値範囲は、デッドタイムTdのずれによる電流検出誤差を考慮すると、式(26)及び式(33)より、式(34)で表すことができる。
【数34】
【0090】
さらに、入力電流検出器11の精度誤差Idet_errを考慮すると、充電モードでの電流不連続モード(充電)となる電流値範囲は、式(35)で表すことができる。
【数35】
【0091】
ここで、Idet_errは入力電流検出器11の最大検出値の5%などに設定してよい。
【0092】
リアクトル電流Iinが式(28)及び式(35)で示す電流値範囲に含まれない場合、電力変換装置100は、放電モード、または充電モードでの電流連続モードで動作している。
【0093】
図10は、充電モードでの入力電流、すなわち、リアクトル電流の電流値Iinと。デューティ比との関係を示す。図10は、電流値Iinの大きさに関わらず、デューティ比を式(1)で導出する場合、すなわち「連続モードDuty」のときの入力電流とデューティ比との関係、及びデューティ比を式(15)で導出する場合、すなわち「不連続モードDuty」のときの入力電流とデューティ比との関係を示す。さらに、図10は、電流値Iinが式(35)を満たす場合、デューティ比を式(15)で導出し、電流値Iinが式(35)を満たさない場合、デューティ比を式(1)で導出する場合、すなわち「混在制御Duty」のときの入力電流とデューティ比との関係を示す。
【0094】
図10に示すように、充電モードにおいて、電流値Iinが式(35)を満たさない場合、デューティ比は、電流値Iinの大きさにかからず、一定となり、電流値Iinが式(35)を満たす場合、デューティ比は、電流値Iinの大きさに対して非線形に変化する。
【0095】
図11は、制御部20の機能ブロックの一例を示す。制御部20は、AVR部201、ACR部202、加算器222、PWM演算部203、電流モード判断部300、及びデューティ比切替部400を有する。
【0096】
AVR部201は、自動電圧調節器であり、直流中間電圧検出値が直流中間電圧指令となる入力電流指令を演算し、ACR部202に出力する。ACR部202は、自動電流調節器であり、入力電流検出値が入力電流指令となるように指令値を演算する。
【0097】
電流モード判断部300は、入力電圧検出値、直流中間電圧検出値、インダクタンス値、キャリア周波数設定値、及びデッドタイム設定値に基づいて、電力変換装置100の動作モードが、電流不連続モード(放電)、または電流不連続モード(充電)であるかを判定する。
【0098】
デューティ比切替部400は、入力電圧検出値、直流中間電圧検出値、インダクタンス値、デッドタイム値、及び入力電圧検出値に基づいて、現在の動作モードに応じたデューティ比を演算し、デューティ比を示す演算結果を出力する。
【0099】
加算器222は、ACR部202の演算結果と、デューティ比切替部400の演算結果とを加算して、λ指令として演算結果を出力する。PWM演算部203は、λ指令の演算結果と、キャリア周波数波形とを比較することで、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5をオンオフさせる指令であるそれぞれのゲート信号を演算し、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5のそれぞれにゲート信号を出力する。
【0100】
図12は、AVR部201、及びACR部202の機能ブロックの一例を示す。AVR部201は、減算器220と、PI調節器210とを有する。減算器220は、直流中間電圧指令値から、直流中間電圧検出値を減算して、偏差Evを演算し、偏差EvをPI調節器210を出力する。PI調節器210は、偏差Evに基づいて入力電流指令値を演算し、出力する。PI調節器210は、偏差Evに応じた比例制御P及び積分制御Iを実行し、偏差Evが小さくなるような入力電流指令値を演算する。
【0101】
ACR部202は、減算器221と、PI調節器211とを有する。減算器221は、入力電流指令値から、入力電流検出値を減算して、偏差Ecを演算し、偏差EcをPI調節器211に出力する。PI調節器211は、偏差Ecに対して比例制御P及び積分制御Iを実行して、偏差Ecが小さくなるような指令値を演算する。
【0102】
図13は、電流モード判断部300の機能ブロックの一例を示す。電流モード判断部300は、放電上限値演算部301、放電下限値演算部302、充電上限値演算部303、充電下限値演算部304、コンパレータ310、311、312、及び313、AND演算器320、及び321を有する。
【0103】
放電上限値演算部301は、入力電圧値、直流中間電圧検出値、インダクタンス値、キャリ周波数設定値、及びデッドタイム設定値の入力を受けて、式(28)に従って、放電モードでの電流不連続モード(放電)となる電流値範囲の上限値(放電)を演算する。放電下限値演算部302は、入力電圧値、直流中間電圧検出値、インダクタンス値、キャリ周波数設定値、及びデッドタイム設定値の入力を受けて、式(28)に従って、放電モードでの電流不連続モード(放電)となる電流値範囲の下限値(放電)を演算する。
【0104】
充電上限値演算部303は、入力電圧値、直流中間電圧検出値、インダクタンス値、キャリ周波数設定値、及びデッドタイム設定値の入力を受けて、式(35)に従って、充電モードでの電流不連続モード(充電)となる電流値範囲の上限値(充電)を演算する。充電下限値演算部304は、入力電圧値、直流中間電圧検出値、インダクタンス値、キャリ周波数設定値、及びデッドタイム設定値の入力を受けて、式(35)に従って、充電モードでの電流不連続モード(充電)となる電流値範囲の下限値(充電)を演算する。
【0105】
コンパレータ310は、上限値(放電)より入力電流検出値が小さい場合、真「1」を出力する。コンパレータ311は、下限値(放電)より入力電流検出値が大きい場合、真「1」を出力する。AND演算器320は、コンパレータ310及びコンパレータ311の出力が共に真「1」である場合、電力変換装置100が電流不連続モード(放電)で動作していることを示す信号をデューティ比切替部400に出力する。AND演算器320は、コンパレータ310及びコンパレータ311の出力がいずれか一方が真「1」でない場合、電力変換装置100が電流不連続モード(放電)で動作していないことを示す信号をデューティ比切替部400に出力する。
【0106】
コンパレータ312は、上限値(充電)より入力電流検出値が小さい場合、真「1」を出力する。コンパレータ313は、下限値(充電)より入力電流値が大きい場合、真「1」を出力する。AND演算器321は、コンパレータ312及びコンパレータ313の出力が共に真「1」である場合、電力変換装置100が電流不連続モード(充電)で動作していることを示す信号をデューティ比切替部400に出力する。AND演算器321は、コンパレータ312及びコンパレータ313の出力がいずれか一方が真「1」でない場合、電力変換装置100が電流不連続モード(充電)で動作していないことを示す信号をデューティ比切替部400に出力する。
【0107】
図14は、デューティ比切替部400の機能ブロックの一例を示す。デューティ比切替部400は、連続モードデューティ比演算部401、不連続モード(放電)デューティ比演算部402、不連続モード(充電)デューティ比演算部403、コンパレータ420、及びデューティ比選択部410を有する。
【0108】
連続モードデューティ比演算部401は、入力電圧値、及び直流中間電圧検出値の入力を受けて、式(1)に従って、電流連続モードにおけるデューティ比DCCMを演算する。
【0109】
不連続モード(放電)デューティ比演算部402は、入力電圧検出値、直流中間電圧検出値、インダクタンス値、及びデッドタイム設定値の入力を受けて、式(7)に従って、電流不連続モード(放電)におけるデューティ比DDCM(放電)を演算する。
【0110】
不連続モード(充電)デューティ比演算部403は、入力電圧検出値、直流中間電圧検出値、インダクタンス値、及びデッドタイム設定値の入力を受けて、式(15)に従って、電流不連続モード(放電)におけるデューティ比DDCM(充電)を演算する。
【0111】
コンパレータ420は、入力電流検出値と、0とを比較し、入力電流検出値が0より大きい場合、真「1」を出力し、入力電流検出値が0より小さい場合、偽「0」を出力する。コンパレータ420の出力が真「1」の場合、電力変換装置100が放電モードであり、偽「0」の場合、電力変換装置100が充電モードである。
【0112】
不連続モード(放電)デューティ比演算部402は、コンパレータ420の出力が真「1」の場合、デューティ比DDCM(放電)を演算し、コンパレータ420の出力が偽「0」の場合、デューティ比DDCM(放電)を演算しない。
【0113】
不連続モード(充電)デューティ比演算部403は、コンパレータ420の出力が真「1」の場合、デューティ比DDCM(充電)を演算せず、コンパレータ420の出力が偽「0」の場合、デューティ比DDCM(充電)を演算する。
【0114】
不連続モード(放電)デューティ比演算部402、及び不連続モード(充電)デューティ比演算部403のデューティ比の演算をいずれか一方に制限することで、演算時間を短縮できる。
【0115】
デューティ比選択部410は、電流モード判断部300の出力に応じて、連続モードデューティ比演算部401、不連続モード(放電)デューティ比演算部402、及び不連続モード(充電)デューティ比演算部403の何れか1つの演算結果となるデューティ比を出力する。
【0116】
デューティ比選択部410は、電流不連続モード(放電)の信号が偽「0」で、かつ電流不連続モード(充電)の信号が偽「0」である場合、連続モードデューティ比演算部401の演算結果を選択して、出力する。
【0117】
デューティ比選択部410は、電流不連続モード(放電)の信号が真「1」で、電流不連続モード(充電)の信号が偽「0」である場合、不連続モード(放電)デューティ比演算部402の演算結果を選択して、出力する。
【0118】
デューティ比選択部410は、電流不連続モード(放電)の信号が偽「0」で、電流不連続モード(充電)の信号が真「1」である場合、不連続モード(充電)デューティ比演算部403の演算結果を選択して、出力する。
【0119】
図15は、デューティ比切替部400の機能ブロックの他の一例を示す。図14に示すデューティ比切替部400と同様に、連続モードデューティ比演算部401は、入力電圧値、及び直流中間電圧検出値の入力を受けて、式(1)に従って、電流連続モードにおけるデューティ比DCCMを演算する。
【0120】
不連続モード(放電)デューティ比演算部402は、入力電圧検出値、直流中間電圧検出値、インダクタンス値、及びデッドタイム設定値の入力を受けて、式(7)に従って、電流不連続モード(放電)におけるデューティ比DDCM(放電)を演算する。
【0121】
不連続モード(充電)デューティ比演算部403は、入力電圧検出値、直流中間電圧検出値、インダクタンス値、及びデッドタイム設定値の入力を受けて、式(15)に従って、電流不連続モード(放電)におけるデューティ比DDCM(充電)を演算する。
【0122】
減算器430は、連続モードデューティ比演算部401の演算結果から、不連続モード(放電)デューティ比演算部402の演算結果を減算して、積算器470に出力する。スイッチ450は、電流不連続モード(放電)の信号が真「1」で、かつ電流不連続モード(充電)の信号が偽「0」である場合、真「1」をLPF460に出力する。スイッチ450は、電流不連続モード(放電)の信号が真「1」で、かつ電流不連続モード(充電)の信号が偽「0」でない場合、偽「0」をLPF460に出力する。LPF460は、予め定められた時定数で入力値を変化させた結果を積算器470に出力する。LPF460の時定数は、50msなどに設定されてよい。
【0123】
積算器470は、LPF460の出力と減算器430の演算結果を積算し、減算器432に出力する。減算器432は、連続モードデューティ比演算部401の演算結果から積算器470の積算結果を減算する。
【0124】
これにより、LPF460の時定数によってデューティ比の変化を緩やかにできるので、電流連続モードでのデューティ比と電流不連続モード(放電)でのデューティ比との切り替え時の影響を緩和しつつ、直流中間電圧を安定して制御できる。
【0125】
減算器431は、連続モードデューティ比演算部401の演算結果から、不連続モード(充電)デューティ比演算部403の演算結果を減算して、積算器471に出力する。スイッチ451は、電流不連続モード(充電)の信号が真「1」で、かつ電流不連続モード(放電)の信号が偽「0」である場合、真「1」をLPF461に出力する。スイッチ451は、電流不連続モード(充電)の信号が真「1」で、かつ電流不連続モード(充電)の信号が偽「0」でない場合、偽「0」をLPF461に出力する。LPF461は、予め定められた時定数で入力値を変化させた結果を積算器471に出力する。LPF461の時定数は、50msなどに設定されてよい。
【0126】
積算器471は、LPF461の出力と減算器431の演算結果を積算し、減算器433に出力する。減算器433は、連続モードデューティ比演算部401の演算結果から積算器471の積算結果を減算する。
【0127】
これにより、LPF461の時定数によってデューティ比の変化を緩やかにできるので、電流連続モードでのデューティ比と電流不連続モード(充電)でのデューティ比との切り替え時の影響を緩和しつつ、直流中間電圧を安定して制御できる。
【0128】
図16は、リアクトル電流の電流値Iinの大きさによらず、式(1)に従って導出されたデューティ比で電力変換装置100を動作させる場合の制御部20の機能ブロックの一例である。制御部20は、電流モード判断部300、不連続モード(放電)デューティ比演算部402及び不連続モード(充電)デューティ比演算部403を有さない点で、図11に示す制御部20と異なる。
【0129】
図16に示す制御部20によれば、リアクトル電流の電流値Iinの大きさによらず、連続モードデューティ比演算部401が、入力電圧検出値、及び中間電圧検出値の入力を受けて、式(1)に従ってデューティ比を演算する。
【0130】
図17Aは、図16に示す制御部20で上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5のオンオフを制御する場合の入力電圧、及び出力電圧(中間電圧)の時間変化を示す。図17Bは、図16に示す制御部20で上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5のオンオフを制御する場合のリアクトル電流の時間変化を示す。
【0131】
図17A及び図17Bに示すように、リアクトル電流の電流値Iinの大きさによらず、入力電圧検出値、及び中間電圧検出値に基づく式(1)に従ったデューティ比で、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5をオンオフする場合、リアクトル電流が安定せず、出力電圧が安定しない。
【0132】
図18Aは、図11に示す制御部20で上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5のオンオフを制御する場合の入力電圧、及び出力電圧(中間電圧)の時間変化を示す。図18Bは、図11に示す制御部20で上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5のオンオフを制御する場合のリアクトル電流の時間変化を示す。
【0133】
図18A及び図18Bに示すように、デッドタイム中に、入力リアクトル3に流れる電流がゼロにならない場合と異なるデューティ比で、上アーム用パワースイッチング素子4及び下アーム用パワースイッチング素子5をオンオフさせることで、リアクトル電流が安定し、出力電圧が不安定になることを抑制できる。
【0134】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0135】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0136】
1 昇降圧コンバータ
2 入力フィルタコンデンサ
3 入力リアクトル
4 上アーム用パワースイッチング素子
5 下アーム用パワースイッチング素子
6 直流中間コンデンサ
10 入力電圧検出器
11 入力電流検出器
12 直流中間電圧検出器
20 制御部
100 電力変換装置
101 蓄電池
102 発電モータ
103 充電用インバータ
104 駆動用インバータ
105 駆動モータ
201 AVR部
202 ACR部
203 PWM演算部
210,211 PI調節器
220,221 減算器
222 加算器
300 電流モード判断部
301 放電上限値演算部
302 放電下限値演算部
303 充電上限値演算部
304 充電下限値演算部
310,311,312,313 コンパレータ
320,321 AND演算器
400 デューティ比切替部
401 連続モードデューティ比演算部
402 不連続モード(放電)デューティ比演算部
403 不連続モード(充電)デューティ比演算部
410 デューティ比選択部
420 コンパレータ
430,431,432,433 減算器
450,451 スイッチ
470,471 積算器
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17A
図17B
図18A
図18B