(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004215
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】資機材固定装置
(51)【国際特許分類】
A62C 31/28 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
A62C31/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103754
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000192073
【氏名又は名称】株式会社モリタホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100098545
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100189717
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 貴章
(72)【発明者】
【氏名】廖 赤虹
(72)【発明者】
【氏名】金川 拓也
(72)【発明者】
【氏名】大室 健
(72)【発明者】
【氏名】松島 至俊
【テーマコード(参考)】
2E189
【Fターム(参考)】
2E189KB04
2E189KC01
2E189KC08
(57)【要約】
【課題】消火又は救助等に用いる資機材を開口の位置に固定できると共に、収納時等には使用時よりもコンパクトにできる資機材固定装置を提供すること。
【解決手段】一つの直線状部材11からなるか、又は複数の直線状部材11を互いの向きが90度異なるように組み合わされてなり、消火又は救助に用いる資機材1が取り付けられる資機材受け具10と、資機材受け具10に回転自在に設けられた挟持具20とを備え、挟持具20は、回転させることで、資機材受け具10に重なる収納位置と、資機材受け具10から突出した使用位置とに変更可能であり、挟持具20を使用位置に回転させた状態にて建築物に設けられた開口βの周縁を挟持することで、資機材が開口βの位置に固定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一つの直線状部材からなるか、又は複数の直線状部材を互いの向きが90度異なるように組み合わされてなり、消火又は救助に用いる資機材が取り付けられる資機材受け具と、
前記資機材受け具に回転自在に設けられた挟持具とを備え、
前記挟持具は、回転させることで、前記資機材受け具に重なる収納位置と、前記資機材受け具から突出した使用位置とに変更可能であり、
前記挟持具を前記使用位置に回転させた状態にて建築物に設けられた開口の周縁を挟持することで、前記資機材が前記開口の位置に固定されることを特徴とする資機材固定装置。
【請求項2】
前記挟持具を複数備えることを特徴とする請求項1に記載の資機材固定装置。
【請求項3】
前記挟持具は、
前記開口の周縁を挟持した状態において前記開口に対して垂直となる垂直部分、及び前記開口に対して平行となる平行部分を有する棒状の主体と、
前記主体の前記平行部分に係合した棒状の副体とを備え、
前記主体は前記資機材受け具を貫通しており、前記垂直部分の後端が前記資機材受け具の一方側、前記平行部分が前記資機材受け具の他方側に位置し、
前記主体の前記平行部分は内側から前記開口の周縁に当接し、
前記副体は外側から前記開口の周縁に当接することを特徴とする請求項2に記載の資機材固定装置。
【請求項4】
前記主体の前記垂直部分は、前記資機材受け具に対して垂直に移動させることができることを特徴とする請求項3に記載の資機材固定装置。
【請求項5】
前記副体は、前記主体の垂直部分と平行に移動させることができる隙間調節部と、前記隙間調節部の前端に設けられ前記隙間調節部よりも幅広の外当接部とを備え、
前記外当接部が外側から前記開口の周縁に当接することを特徴とする請求項3に記載の資機材固定装置。
【請求項6】
前記主体の平行部分は、前記外当接部と対向する位置に前記平行部分よりも幅広の内当接部を備え、
前記内当接部が内側から前記開口の周縁に当接することを特徴とする請求項5に記載の資機材固定装置。
【請求項7】
前記資機材受け具の前記他方側には、内側から前記開口の周縁に当接する後退防止材が設けられており、
前記後退防止材は、前記主体の前記内当接部よりも前記資機材受け具に近い位置にあることを特徴とする請求項6に記載の資機材固定装置。
【請求項8】
前記後退防止材は前記資機材受け具に回転自在に設けられ、
前記後退防止材は、回転させることで、前記資機材受け具に重なる収納位置と、前記資機材受け具から突出した使用位置とに変更可能であることを特徴とする請求項7に記載の資機材固定装置。
【請求項9】
前記後退防止材の回転は、前記挟持具の回転と連動していることを特徴とする請求項8に記載の資機材固定装置。
【請求項10】
底部を平面とし前記資機材受け具の前記一方側から突出した支持材を備え、
前記支持材は、前記開口の厚み方向に沿い前記開口の枠と接して配置されることを特徴とする請求項1に記載の資機材固定装置。
【請求項11】
前記資機材受け具は前記資機材としての放水器具を取り付け可能であることを特徴とする請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の資機材固定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災が発生した建築物の窓や非常口等に放水又は救助を行うための資機材を固定する資機材固定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルや倉庫といった内部に大きな空間を有する建築物で大規模火災が発生した場合、迅速に鎮火させるために外部から大流量の消火剤が当該建築物へ向けて放水(放射)される。その場合、放水の反動力が大きいため、放水ノズル(放水銃)は人が手で持つのではなく、架台に取り付けて放水することが一般的である。
大流量の放水に用いる放水銃は、特定の場所に予め設置されている固定放水銃と、火災発生時に車両で現場まで運んで設置する可搬式放水銃に大別される。可搬式放水銃の設置は、平らな場所に脚(スタンド)を開いて置くことを基本としている。
【0003】
ここで、特許文献1には、放水ノズル及び固定装置で構成され、固定装置は台座と水バッグを有しており、台座の内側に取り付けた水バッグが放水ノズルからの水圧で脹らむことにより、窓枠などを挟み付けて固定する構造の放水ノズル用水圧固定装置が開示されている。
また、特許文献2には、下枠又は同下枠下の壁部を屋外側と屋内側との間で挟圧する挟持機構を備え、建屋の外側から窓の下枠に懸垂させて配設し、下端より供給した水をノズルより窓外方向へ噴射拡散させ、屋内に立ちこめた煙を窓を介して屋外へ排出させる煙除去装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平07-056040号公報
【特許文献2】特開2020-185143号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
倉庫火災やビル火災など大空間内の大規模火災において、効率的に放水するには、建築物(火災区画)に設けられている出入口や窓等の非常時進入口から内部へ向けて放水する必要がある。しかし、非常時進入口(出入口や窓)は壁面に開けられた矩形の開口であって周縁には窓枠や扉枠が設けられていることが殆どであることから、平地に設置することが想定されている一般的な可搬式放水銃等の放水器具を開口の位置に設置することは困難である。また、排煙装置や送風装置、救助用資機材等についても、窓枠や扉枠が設けられた非常時進入口への設置は同様に困難である。さらに、消防車は様々な機器や装置を搭載する必要があり資機材の収納スペースが限られているため、資機材は出来るだけコンパクトであることが望ましい。
ここで、特許文献1に記載の放水ノズル用水圧固定装置は、窓枠などに放水ノズルを固定することができるが、水バッグを膨らませて用いる構造であるため、衝撃等により水バッグが破損すると放水ノズルの固定がずれてしまう可能性がある。また、収納時等のコンパクト化は考慮されていない。
また、特許文献2に記載の煙除去装置は、水を噴射拡散させるノズルを窓枠に固定するものであるが、当該ノズルは屋内を陰圧とするために建屋の外側へ向けて放水するものであり、大流量の消火剤を建屋の内側へ向けて放水するものでは無い。また、収納時等のコンパクト化は考慮されていない。
そこで、本発明は、消火又は救助等に用いる資機材を開口の位置に固定できると共に、収納時等には使用時よりもコンパクトにすることができる資機材固定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の本発明の資機材固定装置は、一つの直線状部材11からなるか、又は複数の直線状部材11を互いの向きが90度異なるように組み合わされてなり、消火又は救助に用いる資機材1が取り付けられる資機材受け具10と、資機材受け具10に回転自在に設けられた挟持具20とを備え、挟持具20は、回転させることで、資機材受け具10に重なる収納位置と、資機材受け具10から突出した使用位置とに変更可能であり、挟持具20を使用位置に回転させた状態にて建築物に設けられた開口βの周縁を挟持することで、資機材1が開口βの位置に固定されることを特徴とする。
請求項2記載の本発明は、請求項1に記載の資機材固定装置において、挟持具20を複数備えることを特徴とする。
請求項3記載の本発明は、請求項2に記載の資機材固定装置において、挟持具20は、開口βの周縁を挟持した状態において開口βに対して垂直となる垂直部分21A、及び開口βに対して平行となる平行部分21Bを有する棒状の主体21と、主体21の平行部分21Bに係合した棒状の副体22とを備え、主体21は資機材受け具10を貫通しており、垂直部分21Aの後端が資機材受け具10の一方側、平行部分21Bが資機材受け具10の他方側に位置し、主体21の平行部分21Bは内側から開口βの周縁に当接し、副体22は外側から開口βの周縁に当接することを特徴とする。
請求項4記載の本発明は、請求項3に記載の資機材固定装置において、主体21の垂直部分21Aは、資機材受け具10に対して垂直に移動させることができることを特徴とする。
請求項5記載の本発明は、請求項3に記載の資機材固定装置において、副体22は、主体21の垂直部分21Aと平行に移動させることができる隙間調節部22Bと、隙間調節部22Bの前端に設けられ隙間調節部22Bよりも幅広の外当接部22Cとを備え、外当接部22Cが外側から開口βの周縁に当接することを特徴とする。
請求項6記載の本発明は、請求項5に記載の資機材固定装置において、主体21の平行部分21Bは、外当接部22Cと対向する位置に平行部分21Bよりも幅広の内当接部21Cを備え、内当接部21Cが内側から開口βの周縁に当接することを特徴とする。
請求項7記載の本発明は、請求項6に記載の資機材固定装置において、資機材受け具10の他方側には、内側から開口βの周縁に当接する後退防止材30が設けられており、後退防止材30は、主体21の内当接部21Cよりも資機材受け具10に近い位置にあることを特徴とする。
請求項8記載の本発明は、請求項7に記載の資機材固定装置において、後退防止材30は資機材受け具10に回転自在に設けられ、後退防止材30は、回転させることで、資機材受け具10に重なる収納位置と、資機材受け具10から突出した使用位置とに変更可能であることを特徴とする。
請求項9記載の本発明は、請求項8に記載の資機材固定装置において、後退防止材30の回転は、挟持具20の回転と連動していることを特徴とする。
請求項10記載の本発明は、請求項1に記載の資機材固定装置において、底部を平面とし資機材受け具10の一方側から突出した支持材40を備え、支持材40は、開口βの厚み方向に沿い開口βの枠と接して配置されることを特徴とする。
請求項11記載の本発明は、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の資機材固定装置において、資機材受け具10は資機材1としての放水器具を取り付け可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、消火又は救助等に用いる資機材を建築物の非常時進入口等の開口βの位置に固定できると共に、収納時等には使用時よりもコンパクトにすることが可能な資機材固定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施例による資機材固定装置を開口の周縁に取り付けた状態を示す正面図
【
図2】同資機材固定装置を開口の周縁に取り付けた状態を示す側面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の第1の実施の形態による資機材固定装置は、一つの直線状部材からなるか、又は複数の直線状部材を互いの向きが90度異なるように組み合わされてなり、消火又は救助に用いる資機材が取り付けられる資機材受け具と、資機材受け具に回転自在に設けられた挟持具とを備え、挟持具は、回転させることで、資機材受け具に重なる収納位置と、資機材受け具から突出した使用位置とに変更可能であり、挟持具を使用位置に回転させた状態にて建築物に設けられた開口の周縁を挟持することで、資機材が開口の位置に固定されるものである。
本実施の形態によれば、挟持具で建築物の非常時進入口等の開口の周縁を挟むことにより、資機材受け具に取り付けられた可搬式放水銃等の資機材を開口の位置に一時的に固定できるため、従来よりも消火及び救助活動を安全かつ効率的に行うことができる。また、挟持具が回転可能であることで、開口の周縁のうちどの箇所を挟むかの選択の幅を広げることができる。また、挟持具は回転させて突出量の少ない収納位置にすることが可能であるため、収納時には資機材固定装置をコンパクトにすることができる。
【0010】
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態による資機材固定装置において、挟持具を複数備えるものである。
本実施の形態によれば、資機材が開口の位置に固定された状態を安定して維持することができる。
【0011】
本発明の第3の実施の形態は、第2の実施の形態による資機材固定装置において、挟持具は、開口の周縁を挟持した状態において開口に対して垂直となる垂直部分、及び開口に対して平行となる平行部分を有する棒状の主体と、主体の平行部分に係合した棒状の副体とを備え、主体は資機材受け具を貫通しており、垂直部分の後端が資機材受け具の一方側、平行部分が資機材受け具の他方側に位置し、主体の平行部分は内側から開口の周縁に当接し、副体は外側から開口の周縁に当接するものである。
本実施の形態によれば、開口の周縁を主体と副体により挟むことができる。
【0012】
本発明の第4の実施の形態は、第3の実施の形態による資機材固定装置において、主体の垂直部分は、資機材受け具に対して垂直に移動させることができるものである。
本実施の形態によれば、開口の周縁の壁等に対する資機材受け具の位置調節が容易となるため、資機材の固定作業を迅速に完了することができる。
【0013】
本発明の第5の実施の形態は、第3の実施の形態による資機材固定装置において、副体は、主体の垂直部分と平行に移動させることができる隙間調節部と、隙間調節部の前端に設けられ隙間調節部よりも幅広の外当接部とを備え、外当接部が外側から開口の周縁に当接するものである。
本実施の形態によれば、隙間調節部を前後に移動させることにより外当接部から開口の周縁の壁等までの距離を変更できるため、壁の厚みに関わらず外当接部を壁等に確実に押し当てることができる。また、幅広の外当接部を壁等に密接させることで、挟持状態を安定して維持することができる。
【0014】
本発明の第6の実施の形態は、第5の実施の形態による資機材固定装置において、主体の平行部分は、外当接部と対向する位置に平行部分よりも幅広の内当接部を備え、内当接部が内側から開口の周縁に当接するものである。
本実施の形態によれば、幅広の内当接部を壁等に密接させることで、挟持状態を安定して維持することができる。
【0015】
本発明の第7の実施の形態は、第6の実施の形態による資機材固定装置において、資機材受け具の他方側には、内側から開口の周縁に当接する後退防止材が設けられており、後退防止材は、主体の内当接部よりも資機材受け具に近い位置にあるものである。
本実施の形態によれば、建築物内へ向けて放水する際の放水銃の放水反動力等により資機材受け具が外側に大きく動いてしまうことを後退防止材で抑制し、資機材が開口に固定された状態を維持することができる。
【0016】
本発明の第8の実施の形態は、第7の実施の形態による資機材固定装置において、後退防止材は資機材受け具に回転自在に設けられ、後退防止材は、回転させることで、資機材受け具に重なる収納位置と、資機材受け具から突出した使用位置とに変更可能であるものである。
本実施の形態によれば、後退防止材は回転させて突出量の少ない収納位置にすることが可能であるため、収納時には資機材固定装置をコンパクトにすることができる。
【0017】
本発明の第9の実施の形態は、第8の実施の形態による資機材固定装置において、後退防止材の回転は、挟持具の回転と連動しているものである。
本実施の形態によれば、収納位置から使用位置への変更又はその逆を、後退防止材と挟持具で同時に行えるため、別々に回転させるよりも手間を減らすことができる。
【0018】
本発明の第10の実施の形態は、第1の実施の形態による資機材固定装置において、底部を平面とし資機材受け具の一方側から突出した支持材を備え、支持材は、開口の厚み方向に沿い開口の枠と接して配置されるものである。
本実施の形態によれば、開口の枠に乗っている資機材受け具の安定性が支持材によって増すため、資機材を開口の位置にスムーズに固定することができる。
【0019】
本発明の第11の実施の形態は、第1から第10のいずれか一つの実施の形態による資機材固定装置において、資機材受け具は資機材としての放水器具を取り付け可能であるものである。
本実施の形態によれば、可搬式放水銃等の放水器具を火災が発生した建物の出入口や窓などの開口に機動的に設置できるため、消防隊員が安全な場所から遠隔操作により火災区画内部に有効に放水することができる。
【実施例0020】
以下、本発明の一実施例による資機材固定装置について説明する。
図1は本実施例による資機材固定装置を開口の周縁に取り付けた状態を示す正面図、
図2は資機材固定装置を開口の周縁に取り付けた状態を示す側面図である。
資機材固定装置は、消火又は救助に用いる資機材1が取り付けられる資機材受け具10と、資機材受け具10に設けられた挟持具20、後退防止材30、支持材40、及び回転材50を備える。
建築物は例えばビルや倉庫等である。建築物の外壁や内壁等の壁αには、非常時進入口ともなる窓や出入口等の開口βが設けられており、資機材固定装置は、消火又は救助に用いる資機材1を開口βの位置に固定するのに用いる。なお、開口βには窓ガラスや扉が設けられるが、図では省略している。
本実施例では、資機材受け具10に取り付ける資機材1を放水銃等の放水器具としている。放水銃は、先端に大流量の消火剤を放射可能な放水ノズル等が取り付けられ、後端に消防ホースが接続される。
なお、資機材受け具10に取り付ける資機材1は、排煙装置や送風装置など気流を発生させる装置や、高所からの脱出に用いられる脱出用スライダー(脱出用シューター)や梯子など救出用の機材とすることもできる。
【0021】
資機材受け具10は、四本の直線状部材11を互いの向きが90度異なるように矩形枠状に組み合わせてなる。なお、資機材受け具10は、一本の直線状部材11のみで構成したI字状、二本の直線状部材11で構成したL字状、三本の直線状部材11で構成したコ字状等とすることも可能である。直線状部材11としては、例えば角パイプを用いることができる。
【0022】
挟持具20は、開口βの周縁にある壁α等を厚み方向に挟むのに用いる。挟持具20は複数設けることが好ましく、本実施例では資機材受け具10の四隅それぞれに回転材50を介して回転自在に挟持具20を取り付けている。回転材50は、ボールプランジャ等を利用し所定の回転角度ごと(例えば0°,90°,180°,270°など)に保持できる構造としている。
挟持具20は、資機材固定装置が開口βに設置された状態においては、資機材受け具10から外方へ突出して、建築物の開口βの周縁にある壁α等を挟んでいる。挟持具20で建築物の非常時進入口等の開口βの周縁を挟むことにより、資機材受け具10に取り付けられた放水銃等の資機材1を開口βの位置に一時的に固定できるため、従来よりも消火及び救助活動を安全かつ効率的に行うことができる。
ここで、下表1に、資機材固定装置を開口βに固定するにあたり、挟持具20の使用個数と挟持箇所の組合せ例を示す。
【表1】
表1に示すように、開口βの上下左右の周縁のうち二箇所以上を挟持することが望ましい。例えば
図1では、資機材受け具10を開口βの一側方に寄せた配置とし、四つの挟持具20のうちの三つで開口βの下方二箇所と側方一箇所を挟んでおり、表1中のパターンIIに該当する。このように開口βの周縁の複数箇所を挟持具20で挟むことで、資機材1が開口βの位置に固定された状態を安定して維持することができる。
【0023】
後退防止材30は、直線状部材11よりも十分長さの短いプレート等で構成され、資機材受け具10の隅に回転材50を介して回転自在に取り付けられている。後退防止材30は、資機材固定装置が開口βに設置された状態においては、資機材受け具10から外方へ突出して、建築物等の内側から開口βの周縁に当接する。これにより、建築物等の中へ向けて放水する際に放水銃の放水反動力により資機材受け具10が建築物等の外側に大きく動いてしまうことを後退防止材30で抑制し、資機材1が開口βに固定された状態を維持することができる。
後退防止材30は複数設けることが好ましいが、すべての直線状部材11に設けなくてもよい。本実施例では、
図1に示すように、資機材1を取り付ける直線状部材11の両端にのみ後退防止材30を設けている。これにより、後退防止材30を設けることによる重量やコストの増加を抑制しつつ、資機材1を安定して保持し続けることができる。
【0024】
図3は資機材固定装置の一部を示す写真であり、
図3(a)は斜め上方からの撮影写真、
図3(b)は上方からの撮影写真である。
支持材40は、直線状部材11に一端がネジ等で固定されて直線状部材11に対して略垂直に突出しており、平らな底面は直線状部材11の底面と略面一となっている。支持材40の長さ(突出量)は、例えば約20cmとするなど、一般的に想定される開口βの厚みよりも十分に大きいものとする。また、本実施例においては、支持材40は直線状部材11に対して略垂直に接続されているが、直線状部材11に対して斜めに接続されることでも良い。いずれの場合においても、支持材40の垂直方向の飛び出しが資機材受け具10の厚みに対して十分に大きい必要がある。
支持材40は、開口βの厚み方向に沿い開口βの枠に底面が接して配置される。支持材40があることにより、資機材1が取り付けられた資機材受け部10を開口βの枠に配置したときの安定性が増すため、資機材1を開口βの位置にスムーズに固定することができる。また、支持材40は、
図3に示すように資機材1を保持する役割も併せ持つことができる。
なお、支持材40はすべての直線状部材11に設けなくてもよい。本実施例では、四つの直線状部材11のうち資機材1が配置される直線状部材11にのみ支持材40を設けている。これにより、支持材40を設けることによる重量やコストを抑制しつつ、資機材1を安定して保持し続けることができる。
【0025】
図4は資機材固定装置の一部を示す斜視図であり、
図1における資機材固定装置の左隅部分である。
挟持具20は、棒状の主体21と副体22を備えており、開口βの周縁にある壁α等を主体21と副体22により挟持することができる。
【0026】
主体21は、開口βに対して略垂直となる垂直部分21Aと、開口βに対して略平行となる平行部分21BとによってL字型をなしており、平行部分21Bの先端には内側から壁αに当接する内当接部21Cが設けられている。内当接部21Cは、例えば矩形プレートであり、平行部分21Bよりも幅が大きい。
主体21は資機材受け具10を貫通しており、垂直部分21Aの後端は資機材受け具10の一方側に位置し、平行部分21Bは資機材受け具10の他方側に位置する。ここで、資機材受け具10の一方側とは建築物等の外側に向けられる側であり、他方側とは建築物等の内側に向けられる側である。
主体21の垂直部分21Aは、資機材受け具10に軸支されており、前後方向に移動(スライド)させることができる。
【0027】
副体22は、主体21と接続する棒状の主体接続部22A、ボルトのように螺旋状の溝が形成された隙間調節部22B、円板状の外当接部22C、及び隙間調節部22Bの移動操作に用いる棒状のハンドル22Dを備える。
主体接続部22Aは、主体21の垂直部分21Aを通す孔を一端側に有し、隙間調節部22Bを通す雌ねじ孔を他端側に有する。主体接続部22Aは、主体21に係合した状態で前後方向に移動(スライド)させることができる。主体接続部22Aの長さは、主体21の平行部分21Bの長さと略同一である。
隙間調節部22Bは、主体接続部22Aの雌ねじ孔に螺合して通されており、主体21の垂直部分21Aと略平行に前進又は後退させることができる。
外当接部22Cは、隙間調節部22Bよりも幅広であって隙間調節部22Bの前端に設けられており、外側から壁αに当接する。外当接部22Cは、主体21の内当接部21Cと対向した位置にある。
ハンドル22Dは、隙間調節部22Bの後端側に設けられた孔に通されている。ハンドル22Dを回し隙間調節部22Bを回転させることで、隙間調節部22Bを前進又は後退させることができる。
なお、隙間調節部22Bは、本実施例のように全体が前後に移動するものではなく、一部が前後にスライドする等の伸縮構造のものであってもよい。
【0028】
資機材固定装置を開口βの周縁に設置する際は、主体21側においては内当接部21Cを開口βの周縁にある壁αの内側に密接させ、副体22側においてはハンドル22Dを回して隙間調節部22Bを前進させ外当接部22Cを開口βの周縁にある壁αの外側に押し当てる。これにより、内当接部21Cと外当接部22Cとで開口βの周縁の壁αを挟み込んだ状態となり、比較的幅が大きい内当接部21Cと外当接部22Cが壁αに密接しているため、挟持状態を安定して維持することができる。
また、隙間調節部22Bを前後に移動させることにより外当接部22Cから壁αまでの距離(外当接部22Cと内当接部21Cとの隙間)を変更できるため、当該距離を壁αの厚みに応じて迅速に調節し、外当接部22Cを壁αに確実に押し当てることができる。
また、主体21や主体接続部22Aを、それぞれ前後方向に移動可能としていることで、開口βの周縁の壁αに対する資機材受け具10の位置調節や、内当接部21Cと外当接部22Cとの隙間調節等が容易となるため、資機材1の固定作業を迅速に完了することができる。また収納時や持ち運び時においては、資機材受け具10と挟持具20との位置を適切に調節して資機材固定装置をコンパクトにすることができる。
【0029】
後退防止材30は、主体21の内当接部21Cと同じく資機材受け具10の他方側に位置するが、主体21の内当接部21Cが開口βから少し離れた位置で壁αに当接するのに対し、開口βに比較的近い位置で壁αに当接するようになっている。
上記のように挟持具20と後退防止材30は、共通の回転材50を介して資機材受け具10に取り付けられており、回転材50の回転軸を軸として所定の角度に回転させることで、下向きや横向き等に向きを変えることができる。これにより、開口βが矩形状である場合、各挟持具20は開口βの水平辺と鉛直辺のどちらでも挟むことが可能であることが可能な場面が増え、挟む箇所の選択の幅が広がるため、現場の状況に柔軟に対応して資機材固定装置を迅速に設置することができる。
挟持具20の回転と後退防止材30の回転は連動しており、挟持具20を回転させると、それと同時に後退防止材30も同じ角度だけ回転する。これにより、収納位置から使用位置への変更動作又はその逆の動作を両部材同時に行えるため、別々に回転させるよりも手間を減らすことができる。
【0030】
図5は非展開状態の資機材固定装置を示す図である。
収納時や現場までの運搬時は、挟持具20及び後退防止材30を回転させて資機材受け具10に重なる収納位置とすることで、資機材固定装置を非展開状態とする。一方、壁αに設置するにあたっては、挟持具20及び後退防止材30を回転させて資機材受け具10から外方へ突出した使用位置とすることで、資機材固定装置を展開状態とする。
収納位置は、資機材受け具10の外方への挟持具20及び後退防止材30の突出量が使用位置よりも小さくなる位置であり、本実施例では
図5のように資機材受け具10の矩形枠内に納まる位置としている。これにより、非展開状態における資機材固定装置全体の大きさを展開状態よりもコンパクトにすることができる。このため、消防車等における収納スペースに資機材固定装置が占める割合を小さくすることができ、また、挟持具20及び後退防止材30が資機材受け具10の枠内に収められていることで、持ち運び時などに挟持具20や後退防止材30が建屋等に接触して損傷する可能性を小さくできる。
本発明による資機材固定装置は、可搬式放水銃を火災が発生した建物の出入口や窓などの開口に機動的に設置できるため、消防隊員が安全な場所から遠隔操作により火災区画内部に有効に放水することができる。また、可搬式放水銃のみならず、可搬式の送風機や避難用器具等も資機材固定装置を用いて開口に設置することができる。