(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042151
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】冷却構造及び電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20240321BHJP
H01G 2/08 20060101ALI20240321BHJP
H01G 2/10 20060101ALI20240321BHJP
H01G 4/32 20060101ALI20240321BHJP
H01G 4/224 20060101ALI20240321BHJP
H01G 4/40 20060101ALI20240321BHJP
H01G 17/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
H01G2/08 A
H01G2/10 C
H01G4/32 301D
H01G4/32 301F
H01G4/40 A
H01G17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146652
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【弁理士】
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【弁理士】
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 裕加
(72)【発明者】
【氏名】秋山 浩慶
(72)【発明者】
【氏名】小林 透典
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 優
(72)【発明者】
【氏名】徳永 翔平
(72)【発明者】
【氏名】沢木 勇人
(72)【発明者】
【氏名】友田 侑希
【テーマコード(参考)】
5E082
5H770
【Fターム(参考)】
5E082BC26
5E082DD13
5E082HH03
5E082HH06
5E082HH28
5E082HH47
5H770AA21
5H770BA01
5H770DA03
5H770DA41
5H770PA13
5H770PA42
5H770PA43
5H770QA06
5H770QA22
5H770QA28
(57)【要約】
【課題】電力変換装置の半導体モジュール及びコンデンサの冷却を同時に効率よく行い、部品点数の削減及び固定部の減少による小型化を図る。
【解決手段】冷却構造1は、電力変換装置のコンデンサCのコンデンサ素子を格納したコンデンサケース2の端面に沿って配される半導体モジュール11を液密に封止するモジュールカバー3を有する。モジュールカバー3の内面には、コンデンサケース2の端面の長手方向に沿うカバー側冷媒流路30が形成される。一方、コンデンサケース2の端面には、当該端面の長手方向に沿うケース側冷媒流路20が形成される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンデンサ素子を格納したコンデンサケースと、
このコンデンサケースの端面に沿って配される半導体モジュールを液密に封止すると共に当該端面及び当該半導体モジュールに冷媒が供されるモジュールカバーと、
を有し、
前記端面には、当該端面の長手方向に沿うケース側冷媒流路が形成され、
前記モジュールカバーの内面には、前記長手方向に沿うカバー側冷媒流路が形成されたこと
を特徴とする冷却構造。
【請求項2】
前記コンデンサケースまたは前記モジュールカバーは、樹脂、セラミックス若しくは金属からなることを特徴とする請求項1に記載の冷却構造。
【請求項3】
前記コンデンサケースと前記モジュールカバー、このモジュールカバーと前記半導体モジュール及びこの半導体モジュールと当該コンデンサケースは、接着剤により液密に接着されることを特徴とする請求項1に記載の冷却構造。
【請求項4】
前記ケース側冷媒流路または前記カバー側冷媒流路と対向する前記半導体モジュールの面には、放熱部材が配置されたことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造。
【請求項5】
前記コンデンサケースの内部には、前記冷媒を前記コンデンサ素子に供するケース内冷媒流路が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造。
【請求項6】
前記端面と対向する前記モジュールカバーの長手方向縁部には、前記半導体モジュールのスイッチング素子の位置決め溝が形成されたことを特徴とする請求項1に記載の冷却構造。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の冷却構造を有することを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インバータ回路のコンデンサと半導体モジュール(IGBT)の冷却構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図6に示された電力変換装置10のインバータ回路は放熱を図るためコンデンサC及び半導体モジュール11において冷却機構が各々具備される(特許文献1,2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-58214号公報
【特許文献2】特開2021-171199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のインバータ回路の冷却構造は、コンデンサCの冷却の際にはコンデンサCのコンデンサ素子の外面に冷媒流路が設けられる。また、半導体モジュール11の冷却の際には半導体モジュール11の主面に冷媒流路が配置される。このように従来の冷却構造は冷媒の給排機構や流路の引き回し等の部材が増えて小型化及びコスト的に不利となる。
【0005】
また、コンデンサCや半導体モジュール11の冷媒流路は電力変換装置のケースにも配置されるが、伝熱シート等を介してコンデンサCの熱を当該ケースに伝達させる放熱構造を付加した場合、当該冷却流路と当該ケースとの間に熱抵抗が発生する。
【0006】
本発明は、以上の事情を鑑み、電力変換装置の半導体モジュール及びコンデンサの冷却を同時に効率よく行い、部品点数の削減及び固定部の減少による小型化を図ることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明の一態様は、コンデンサ素子を格納したコンデンサケースと、このコンデンサケースの端面に沿って配される半導体モジュールを液密に封止すると共に当該端面及び当該半導体モジュールに冷媒が供されるモジュールカバーと、を有し、前記端面には、当該端面の長手方向に沿うケース側冷媒流路が形成され、前記モジュールカバーの内面には、前記長手方向に沿うカバー側冷媒流路が形成された冷却構造である。
【0008】
本発明の一態様は、前記冷却構造において、前記コンデンサケースまたは前記モジュールカバーは、樹脂、セラミックス若しくは金属からなる。
【0009】
本発明の一態様は、前記冷却構造において、前記コンデンサケースと前記モジュールカバー、このモジュールカバーと前記半導体モジュール及びこの半導体モジュールと当該コンデンサケースは、接着剤により液密に接着される。
【0010】
本発明の一態様は、前記冷却構造において、前記ケース側冷媒流路または前記カバー側冷媒流路と対向する前記半導体モジュールの面には、放熱部材が配置される。
【0011】
本発明の一態様は、前記冷却構造において、前記コンデンサケースの内部には、前記冷媒を前記コンデンサ素子に供するケース内冷媒流路が形成される。
【0012】
本発明の一態様は、前記冷却構造において、前記端面と対向する前記モジュールカバーの長手方向縁部には、前記半導体モジュールのスイッチング素子の位置決め溝が形成される。
【0013】
本発明の一態様は、上記の冷却構造を有する電力変換装置である。
【発明の効果】
【0014】
以上の本発明によれば、インバータ回路の半導体モジュール及びコンデンサの冷却を同時に効率よく行え、部品点数の削減及び固定部の減少による小型化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】(a)本発明の一態様である冷却構造の斜視図、(b)当該冷却構造の分解図。
【
図2】(a)前記冷却構造の半導体モジュールが配置されたコンデンサの斜視図、(b)当該コンデンサの上面図、(c)当該冷却構造のモジュールカバーの上面斜視図、(d)当該モジュールカバーの下面斜視図。
【
図3】(a)前記モジュールカバーの上面斜視図、(b)半導体モジュールが配置された当該モジュールカバーの下面斜視図、(c)当該モジュールカバーの下面図、(d)当該モジュールカバーの側面図。
【
図4】(a)前記冷却構造の冷媒の流れを説明した当該冷却構造の斜視図、(b)当該冷却構造の縦断図。
【
図5】本発明の他の一態様である冷却構造の分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0017】
図1に示された本実施形態の電力変換装置10のインバータ回路の冷却構造1は、
図6のコンデンサCのコンデンサ素子を格納したコンデンサケース2の端面に沿って配される同図の半導体モジュール11を液密に封止するモジュールカバー3を有する。コンデンサケース2及びモジュールカバー3は、樹脂、セラミックス若しくは金属からなる。半導体モジュール11としては例えばパワーカード型IGBTが適用される。
【0018】
モジュールカバー3の外面において、一端側にはコンデンサケース2の端面及び半導体モジュール11の冷却に供される冷媒の供給管31が、他端側には当該冷却に供された冷媒の排出管32が、接続される。
【0019】
図2のように、モジュールカバー3の内面には、コンデンサケース2の端面の長手方向に沿うカバー側冷媒流路30が形成される。一方、コンデンサケース2の端面には、当該端面の長手方向に沿うケース側冷媒流路20が形成される。
【0020】
コンデンサケース2の端面と対向するモジュールカバー3の長手方向縁部には、
図6の半導体モジュール11のスイッチング素子S1,S2、スイッチング素子S3,S4、スイッチング素子S5,S6の位置決め溝33,34,35が形成されている。
【0021】
位置決め溝33,34,35に各々配されたスイッチング素子S1,S2、スイッチング素子S3,S4、スイッチング素子S5,S6のP側,N側の接続端子は、コンデンサケース2から引き出されたコンデンサCのP側,N側の接続端子と各々接触可能となる。尚、
図2(b)のスイッチング素子S1,S2において、下方向に並んでいる端子の一方がP側の接続端子、他方がN側の接続端子である。スイッチング素子S3,S4、及び、スイッチング素子S5,S6においても同様である。
【0022】
以上のモジュールカバー3及びコンデンサケース2の材質としてはインバータ装置のコンデンサケースに採用されている周知の樹脂、セラミック、金属等を適用すればよい。
【0023】
そして、コンデンサケース2とモジュールカバー3、モジュールカバー3と半導体モジュール11、半導体モジュール11とコンデンサケース2は、
図2,3のように、コンデンサケース2,モジュールカバー3の長手方向,短手方向の縁部23,36の全面に塗布される接着剤により液密に接着される。
【0024】
また、
図2,3に示すように、ケース側冷媒流路20及びカバー側冷媒流路30と対向する半導体モジュール11の主面(スイッチング素子S1,S2,S3,S4,S5,S6の実装面)には放熱部材4が配置させると、半導体モジュール11の冷却効果が高まる。放熱部材4としては周知の熱伝導性の板状の材料を適用すればよい。
【0025】
さらに、
図5のように、コンデンサケース2の内部には、前記冷媒を前記コンデンサ素子の冷却に供するケース内冷媒流路21をコンデンサケース2のモジュールカバー3が配される端面以外の端面に沿って確保するとよい。ケース内冷媒流路21は、コンデンサケース2内で前記コンデンサ素子を封止する充填材(ポッティング材)22の成形により形成される(特許文献1)。
【0026】
図2~5を参照しながら冷却構造1の作用効果について説明する。
【0027】
モジュールカバー3の供給管31から流入した冷媒は
図4のように半導体モジュール11の周囲及びコンデンサケース2の両面を流通してモジュールカバー3の排出管32から流出する。前記流通の過程で前記冷媒が半導体モジュール11の両面の放熱部材4(
図2,3)と接触することで半導体モジュール11が冷却される。さらに、
図5のように前記冷媒の一部がコンデンサケース2のケース内冷媒流路21を流通する過程でコンデンサCも同時に冷却され、特に、放熱効果が低くなるケース側冷媒流路20と反対のコンデンサケース2の端面の冷却が可能となる。
【0028】
さらに、
図3のようにコンデンサケース2とモジュールカバー3と半導体モジュール11が接着剤により接着されることで、半導体モジュール11を収納する空間(流路)が液密状態となり、外部への液漏れの発生がなくなる。したがって、半導体モジュール11の端子への液体の付着及びこれに伴う短絡等の事故を防止できる。
【0029】
また、モジュールカバー3のカバー側冷媒流路30及びコンデンサケース2のケース側冷媒流路20により、冷媒が半導体モジュール11の両面に接触して流れるので、当該両面に放熱部材4が配置されることで、半導体モジュール11の冷却効果が向上する。放熱部材4は、前記両面に限定することなく、一方の面(ケース側冷媒流路20またはカバー側冷媒流路30と対向する半導体モジュール11の面)にも適用してもよい。
【0030】
以上の冷却構造1によれば、TIM材等の熱伝導部材を介することなくコンデンサケース2と半導体モジュール11を同時に効率よく冷却できる。特に、半導体モジュール11が配されるコンデンサケース2の端面にケース側冷媒流路20が確保されたことで、半導体モジュール11、コンデンサケース2を個々に冷却する従来の冷却構造よりも部品点数が削減でき、小型化及び低コスト化を図ることができる。また、コンデンサケース2の内部にケース内冷媒流路21が確保されたことで、コンデンサケース2内のコンデンサ素子も同時に冷却でき、特に放熱効果が低くなるケース側冷媒流路20と反対のコンデンサケース2の端面の冷却が可能となる。さらに、モジュールカバー3の長手方向縁部に、位置決め溝33,34,35が形成されたことで、電力変換装置10を組み立てた際にコンデンサCと半導体モジュール11の接続端子同士が接触可能となり、ESL(等価直列インダクタンス)を低減できる。
【0031】
尚、本発明の冷却構造は、パワーカード型IGBTに限定することなく、他の電力用の半導体モジュールに対しても適用できる。
【符号の説明】
【0032】
1…冷却構造
2…コンデンサケース、20…ケース側冷媒流路、21…ケース内冷媒流路、22…充填材、23…縁部
3…モジュールカバー、30…カバー側冷媒流路、31…供給管、32…排出管、33,34,35…位置決め溝、36…縁部
4…放熱部材
10…電力変換装置、11…半導体モジュール、C…コンデンサ、S1,S2,S3,S4,S5,S6…スイッチング素子