(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042159
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】接着剤組成物及びカバーレイフィルム
(51)【国際特許分類】
C09J 177/00 20060101AFI20240321BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
C09J177/00
C09J163/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146668
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】591161623
【氏名又は名称】株式会社コバヤシ
(74)【代理人】
【識別番号】100147865
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 美和子
(72)【発明者】
【氏名】坂上 哲也
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EC001
4J040EG001
4J040KA16
4J040LA09
4J040MA02
4J040MA10
(57)【要約】
【課題】
FPCに使用される基材樹脂や銅箔等の金属箔との接着性に優れるとともに低誘電率の接着剤組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】 本技術は、ポリアミドエラストマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、を含有し、前記ポリアミドエラストマーの含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して17~99質量%であり、前記エポキシ樹脂の含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して3~46質量%である接着剤組成物を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミドエラストマーと、
エポキシ樹脂と、
エポキシ樹脂硬化剤と、
を含有し、
前記ポリアミドエラストマーの含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して17~99質量%であり、
前記エポキシ樹脂の含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して3~46質量%である接着剤組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂硬化剤の含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して3~37質量%である請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記ポリアミドエラストマーは、溶剤可溶性ポリアミドエラストマーである請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
前記エポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂及びノボラック型エポキシ樹脂からなる群から少なくとも一種選択されるものである請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
前記ノボラック型エポキシ樹脂は、ビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂及び/又はナフトール-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である請求項4に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
前記エポキシ樹脂硬化剤は、フェノール系硬化剤である請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項7】
さらに、硬化促進剤を含有する請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項8】
前記接着剤組成物と基材樹脂とを接着させたときの接着界面の剥離強度が10N/10mm以上である請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項9】
誘電率が3.1以下である請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項10】
前記基材樹脂がポリイミド又はポリテトラフルオロエチレンである請求項8に記載の接着剤組成物。
【請求項11】
請求項1に記載の接着剤組成物が少なくとも片側の表面に塗布されているカバーレイフィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物及びカバーレイフィルムに関する。より詳しくは、フレキシブルプリント回路基板に使用される接着剤組成物及びカバーレイフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
パソコン(PC)やスマートフォンなどの電子機器の多機能化、小型化に対応することができ、狭く複雑な内部に電子回路基板を組み込むため、薄く軽量で、折り曲げ可能なフレキシブルプリント回路基板(Flexible Printed Circuits、以下FPCということがある)が広く使用されている。近年、電子機器の小型化、軽量化、高密度化、高出力化が進み、配線板(電子回路基板)の性能に対する要求がますます高度なものとなっている。特に、FPCにおける伝送速度高速化のために、高い周波数の信号が使用されるようになっている。これに伴い、FPCには高周波領域での低誘電特性(低誘電率、低誘電正接)の要求が高まっている。このような低誘電特性を達成するため、FPCの基材樹脂や接着剤組成物の誘電体損失を低減する方策がなされている。
【0003】
フッ素系樹脂は、低誘電特性を有することが知られており、FPCで用いられる基材樹脂として、従来のポリイミド(PI)やポリエチレンテレフタレート(PET)の代わりに、ポリテトラフルオロエチレン(以下、PTFEということがある)やテトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(以下、FEPということがある)及びテトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、PFAということがある)が提案されている(特許文献1参照)。また、ポリオレフィン樹脂は、低誘電特性を有することが知られており、FPCで用いられるFPC用接着剤として、FPCの電気特性を向上させるために、オレフィン骨格を導入した変性ポリアミド接着剤組成物が提案されている(特許文献2参照)。また、芳香族オレフィンオリゴマー型改質剤とエポキシ樹脂を用いた接着剤組成物及びフレキシブルプリント配線板用カバーレイが提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-24265号公報
【特許文献2】特開2007-284515号公報
【特許文献3】特開2007-63306号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、低誘電特性を有する基材樹脂は、低極性のため、従来のエポキシ系接着剤組成物又はアクリル系接着剤組成物を用いた場合、接着力が弱く、カバーレイフィルム及び積層板等のFPC用部材の作製が困難であった。また、エポキシ系接着剤組成物及びアクリル系接着剤組成物は、低誘電特性に優れず、FPCの誘電特性を損なうという問題がある。
【0006】
また、低誘電特性を有するフッ素系樹脂を基材樹脂として使用する場合、銅箔等との接着性が弱いという問題がある。
【0007】
本技術は、FPCに使用される基材樹脂や銅箔等の金属箔との接着性に優れるとともに低誘電率の接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の構成を有する接着剤組成物が、基材樹脂との接着性に優れるとともに、低誘電率を有することを見出した。
【0009】
すなわち、本技術は、ポリアミドエラストマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、を含有し、前記ポリアミドエラストマーの含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して17~99質量%であり、
前記エポキシ樹脂の含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して3~46質量%である接着剤組成物を提供する。
前記エポキシ樹脂硬化剤の含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して3~37質量%でありうる。
本技術に従う接着剤組成物において、前記ポリアミドエラストマーは、溶剤可溶性ポリアミドエラストマーでありうる。
本技術に従う接着剤組成物において、前記エポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂及びノボラック型エポキシ樹脂からなる群から少なくとも一種選択されるものでありうる。
本技術に従う接着剤組成物において、前記ノボラック型エポキシ樹脂は、ビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂及び/又はナフトール-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂でありうる。
本技術に従う接着剤組成物において、前記エポキシ樹脂硬化剤は、フェノール系硬化剤でありうる。
本技術に従う接着剤組成物は、さらに、硬化促進剤を含有しうる。
本技術に従う接着剤組成物において、前記接着剤組成物と基材樹脂とを接着させたときの接着界面の剥離強度が10N/10mm以上でありうる。
本技術に従う接着剤組成物は、誘電率が3.1以下でありうる。
本技術に従う接着剤組成物において、前記基材樹脂がポリイミド又はポリテトラフルオロエチレンでありうる。
本技術は、前記接着剤組成物が少なくとも片側の表面に塗布されているカバーレイフィルムを提供する。
【発明の効果】
【0010】
本技術により、基材樹脂との接着性に優れるとともに、低誘電率を有する接着剤組成物を提供することができる。
なお、本技術の効果は、ここに記載された効果に必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態を示したものであり、本技術の範囲がこれらの実施形態のみに限定されることはない。
【0012】
本技術について、以下の順序で説明を行う。
1.本技術の説明
2.第1の実施形態(接着剤組成物の例)
(1)接着剤組成物の構成
(2)各成分の説明
(3)物性
(4)接着剤組成物の製造方法
(5)接着剤組成物の使用
3.実施例
【0013】
1.本技術の説明
【0014】
高速通信が求められる第五世代移動通信システム(5G)の通信デバイスにおいて用いられるフレキシブルプリント回路基板を構成する材料は低誘電率であることが重要である。このような低誘電率の材料として、特許文献1に開示されたフッ素系樹脂を基材樹脂として用いることや特許文献2、3に開示された接着剤組成物が提案されている。しかし、これらの接着剤組成物は、フッ素系樹脂が用いられる基材樹脂との接着性に劣っていた。
【0015】
本発明者は、接着剤組成物にポリアミドエラストマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、を含有し、前記ポリアミドエラストマーの含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して17~99質量%であり、前記エポキシ樹脂の含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して3~46質量%であることにより、基材樹脂との接着性が向上することを見出した。エポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂及びノボラック型エポキシ樹脂からなる群から少なくとも一種選択されるものであってよい。ノボラック型エポキシ樹脂は、ビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂及び/又はナフトール-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂であってよい。エポキシ樹脂硬化剤は、フェノール系硬化剤であってよい。本技術は、さらに、アミン触媒を含有してもよい。
【0016】
本技術に従う接着剤組成物の誘電率は、好ましくは3.1以下、より好ましくは2.9以下、さらに好ましくは2.9以下でありうる。
本技術に従う接着剤組成物は、接着剤組成物と基材樹脂とを接着させたときの接着界面の剥離強度が好ましくは10N/10mm以上、より好ましくは13N/10mm以上、さらに好ましく15N/10mm以上であってよい。
【0017】
2.第1の実施形態(接着剤組成物の例)
【0018】
(1)接着剤組成物の構成
【0019】
本実施形態の接着剤組成物は、ポリアミドエラストマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、を含有する。また、本実施形態の接着剤組成物は、さらに硬化促進剤を含有してもよい。
【0020】
(2)各成分の説明
【0021】
[ポリアミドエラストマー]
【0022】
本実施形態の接着剤組成物におけるポリアミドエラストマーは、ポリアミド成分とポリオキシアルキレングリコール及びジカルボン酸からなるポリエーテルエステル成分との反応で得られるポリエーテルエステルアミドであってもよく、またポリアミド成分とポリオキシアルキレングリコールの両末端をアミノ化又はカルボキシル化したものとジカルボン酸またはジアミンからなるポリエーテル成分との反応で得られるポリエーテルアミドであってもよい。
【0023】
ポリアミド成分としては具体的には、ヘキサメチレンジアミン、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、ビス(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(4-アミノ-3-メチルシクロヘキシル)メタン、キシリレンジアミン類などの脂肪族、脂環族又は芳香族のジアミンとアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、重合脂肪酸などの脂肪族、脂環族又は芳香族のジカルボン酸とから製造されるポリアミド、ω-アミノカプロン酸、11-アミノウンデカン酸、12-アミノドデカン酸などのアミノカルボン酸から製造されるポリアミド、ε-カプロラクタム、ラウロラクタムなどのラクタムから製造されるポリアミド及びこれらの成分からなる共重合ポリアミド、又はこれらのポリアミドの混合物などが挙げられる。特に、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸、ヘキサメチレンジアミンとアゼライン酸及び/又はセバシン酸と重合脂肪酸、12-アミノドデカン酸、カプロラクタムとから製造されるポリアミドが好ましく用いられる。これらのポリアミド成分の数平均分子量は500~5,000の範囲内にあることが好ましい。
【0024】
本実施形態の接着剤組成物で用いられるポリオキシアルキレングリコールの例としては、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとのブロック共重合体又はランダム共重合体、エチレンオキサイドとテトラヒドロフランとのブロック共重合体又はランダム共重合体及びこれらの両末端をアミノ化又はカルボキシル化したものが挙げられる。これらポリオキシアルキレングリコールの数平均分子量は200~3,000の範囲内にあることが好ましい。
【0025】
本本実施形態の接着剤組成物で用いられるジカルボン酸としては、炭素数が6~20のジカルボン酸が好ましく、具体的にはアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸などが挙げられる。
【0026】
特に、重合性及びポリアミドエラストマーの物性の観点から、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸が好ましく用いられる。
【0027】
ジアミンとしては、例えば、前記芳香族、脂環族、脂肪族ジアミンが挙げられる。その中でヘキサメチレンジアミンが好ましく用いられる。
【0028】
接着剤組成物の耐衝撃性の低下を抑制する観点、接着剤組成物の機械的強度の低下や熱的特性の低下を抑制する観点から、ポリアミドエラストマーのポリアミド成分/ポリエーテルエステル成分又はポリエーテル成分の割合は重量比で95/5~20/80の範囲が好ましい。
【0029】
ポリアミドエラストマーの製造方法としては、均一なエラストマーが得られる方法であればどのような方法でも採用できる。例えば、ポリエーテルエステルアミドは、先ずポリアミドオリゴマーを合成し、これにポリオキシアルキレングリコールとジカルボン酸を加え加熱し減圧下で高重合度化する方法で得られるし、またポリアミド形成性モノマーとポリオキシアルキレングリコールとジカルボン酸とを一緒に仕込み、加熱して均質化した後に減圧下で高重合度化する方法でも得られる。
【0030】
本実施形態の接着剤組成物におけるポリアミドエラストマーは溶剤可溶性であるのが好ましい。溶剤としては、単独有機溶剤と混合系有機溶剤が挙げられる。単独有機溶剤としてはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブチルアルコール、イソブチルアルコール、ベンジルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジアセトンアルコール等のアルコール系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン等のケトン系溶剤、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン等の芳香族系溶剤、酢酸メチル、酢酸エチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート等のエステル系溶剤、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロメタン、トリクロロエチレン等の塩素系溶剤、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、n-メチル-2-ピロリドン等が挙げられる。混合系有機溶剤としては、トルエン/メタノール、トルエン/イソプロパノール、n-プロパノール/シクロヘキサン、n-プロパノール/メチルシクロヘキサン、シクロヘキサノン/n-プロパノール、シクロヘキサノン/メチルエチルケトン等が挙げられる。本実施形態の接着剤組成物におけるポリアミドエラストマーは、例えば、樹脂濃度10重量%で温度50℃で溶解させた後、23℃で一晩静置した後、目視にて状態を観察した際、溶解、濁りあり、ゲル状となるものが好ましい。このようなポリアミドエラストマーの市販品としては、商品名「TPAE-32」(T&K TOKA社製)、商品名「TPAE-12」(T&K TOKA社製)、商品名「TPAE-617」(T&K TOKA社製)、商品名「TPAE-H471EP」(T&K TOKA社製)、商品名「TPAE-826」(T&K TOKA社製)等を挙げることができる。
【0031】
溶剤に対する可溶性の観点から、ポリアミドエラストマーの含有量は、接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して、17質量%以上であり、30質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、60質量%以上であることがさらに好ましく、70質量%以上であることがさらにより好ましい。また、ポリアミドエラストマーの含有量は、接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して、99質量%以下であり、95質量%以下であることが好ましく、90質量%以下であることがより好ましく、85質量%以下であることがさらに好ましく、80質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0032】
[エポキシ樹脂]
【0033】
本実施形態の接着剤組成物におけるエポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を有するものであり、分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであってもよい。エポキシ樹脂は、耐熱性エポキシ樹脂であることが好ましい。例えば、耐熱性エポキシ樹脂として軟化点が50℃以上であるエポキシ樹脂を好ましく用いることができる。また、このような耐熱性エポキシ樹脂としてガラス転移温度Tgが高いエポキシ樹脂を好ましく用いることができる。具体的には、例えば、ガラス転移温度Tgが150℃以上(DMA測定)であるエポキシ樹脂を好ましく用いることができる。
【0034】
このようなエポキシ樹脂として、具体的には、特に限定されないが、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、及び脂環式エポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1つを用いることができる。ノボラック型エポキシ樹脂としては、例えば、ビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂及び/又はナフトール-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂としては、好ましくはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂又はノボラック型エポキシ樹脂を用いることができ、より好ましくはジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、ビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂又はナフトール-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂を用いることができる。ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂の市販品としては、商品名「XD-1000」(日本化薬社製)等を挙げることができ、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂の市販品としては、商品名「EPPN-502H」(日本化薬社製)等を挙げることができ、ビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、商品名「NC-3000-H」(日本化薬社製)等を挙げることができ、ナフトール-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂の市販品としては、商品名「NC-7000L」(日本化薬社製)等を挙げることができる。
【0035】
基材樹脂との接着性を優れたものとするとともに、優れた耐熱性を有し、低誘電率の接着剤組成物を得る観点から、本実施形態の接着剤組成物において、エポキシ樹脂の含有量は、接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して、3質量%以上であり、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上であることがさらに好ましく、15質量%以上であることがさらにより好ましい。また、エポキシ樹脂の含有量は、接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して、46質量%以下であり、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0036】
[エポキシ樹脂硬化剤]
【0037】
本実施形態の接着剤組成物はエポキシ樹脂硬化剤を含む。エポキシ樹脂硬化剤としては、例えば、フェノール系硬化剤を用いることが好ましい。フェノール系硬化剤は、一分子内にフェノール性水酸基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般であり、その分子量、分子構造については特に限定されるものではない。このようなフェノール系硬化剤は、フェノールとビスアルコキシメチルベンゼン等とを反応させることにより合成可能である。フェノール系硬化剤の市販品としては、商品名「KAYAHARD GPH-65」(日本化薬社製)等を挙げることができる。
【0038】
エポキシ樹脂の架橋反応(硬化反応)を十分にして接着剤組成物の耐熱性を向上させる観点から、本実施形態の接着剤組成物において、エポキシ樹脂硬化剤の含有量は、接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して、3質量%以上であることが好ましく、5質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上であることがさらに好ましく、15質量%以上であることがさらにより好ましい。また、エポキシ樹脂硬化剤の含有量は、接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して、37質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、25質量%以下であることがさらに好ましく、20質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0039】
[硬化促進剤]
【0040】
本実施形態の接着剤組成物は、さらに硬化促進剤を含有してもよい。硬化促進剤はエポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤の架橋反応を促進するような触媒能を持つ化合物であればどのようなものであってもよい。
【0041】
例えば、エポキシ樹脂に対する硬化促進剤としては第3級アミン、環状アミン類、イミダゾール類、有機リン化合物、第4級アンモニウム塩等が挙げられる。ここで、必要に応じてカルボン酸金属塩等を添加して、硬化反応をさらに促進させてもよい。硬化促進剤の市販品として、商品名「キュアゾール(登録商標) 2E4MZ-CN」(四国化成工業社製)(イミダゾール系エポキシ樹脂硬化促進剤)等が挙げられる。
【0042】
硬化反応を促進させる観点から、本実施形態の接着剤組成物において、硬化促進剤の含有量は、接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して、0.17質量%以上であることが好ましく、0.18質量%以上であることがより好ましく、0.19質量%以上であることがさらに好ましく、0.20質量%以上であることがさらにより好ましい。また、硬化促進剤の含有量は、接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して、1.0質量%以下であるのが好ましく、0.8質量%以下であることがより好ましく、0.6質量%以下であることがさらに好ましく、0.4質量%以下であることがさらにより好ましい。
【0043】
[その他の成分]
【0044】
本実施形態の接着剤組成物には、その機能性の更なる向上を目的として、以上で挙げたもの以外の成分を含んでいてもよい。例えば、紫外線防止剤、酸化防止剤、カップリング剤、可塑剤、フラックス、難燃剤、着色剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤、無機フィラー、有機フィラーが挙げられる。
【0045】
(3)物性
【0046】
[剥離強度]
【0047】
本実施形態に係る接着剤組成物において、基材樹脂又は銅箔等の金属との接着力を表すパラメータとして剥離強度を使用する。接着剤組成物と基材樹脂とを接着させたときの接着界面の剥離強度が大きな値であるほど接着力が大きいことを示し、接着性に優れていることを示す。本実施形態に係る接着剤組成物において、接着剤組成物と基材樹脂とを接着させたときの接着界面の剥離強度が好ましくは10N/10mm以上、より好ましくは11N/10mm以上、さらに好ましくは12N/10mm以上であってよい。より詳細には基材樹脂がポリイミド樹脂の場合、接着剤組成物とポリイミド樹脂とを接着させたときの接着界面の剥離強度が好ましくは10N/10mm以上、より好ましくは11N/10mm以上、さらに好ましくは12N/10mm以上であってよい。基材樹脂がポリテトラフルオロエチレン樹脂の場合、接着剤組成物とポリテトラフルオロエチレン樹脂とを接着させたときの接着界面の剥離強度が好ましくは10N/10mm以上、より好ましくは13N/10mm以上、さらに好ましくは15N/10mm以上であってよい。以下、剥離強度の測定方法について説明する。なお、接着剤組成物は溶液型接着剤又はシート形状のシート型接着剤として使用され得るので、それぞれについての試験片の作製方法について説明する。
【0048】
(溶液型接着剤の試験片の作製)
【0049】
固形の接着剤組成物を溶剤に60℃で溶解し、溶液型接着剤を作製する。基材として、厚み25μmのポリイミドフィルム(商品名「カプトン(登録商標)V」(東レ・デュポン社製))または厚み50μmのポリテトラフルオロエチレンシート(商品名「バルフロン(登録商標)両面処理テープ7990(バルカー社製)」)を用いる。溶液型接着剤をバーコーター(ワイヤーバーNo.#38、線径0.95mm、メッシュ27本/IN巾、塗布量38~47.5WETg/m2、丸協技研社製)を用いて、膜厚10μmとなるように基材上に塗布する。溶液型接着剤が塗布された基材を100℃で2分間乾燥して、溶液型接着剤が硬化した基材片を調製する。硬化した膜厚10μmの溶液型接着剤に厚み12μmの銅箔(商品名「表面処理銅箔」(福田 金属箔粉社製))を温度150℃、圧着圧力3MPaで3分間圧着する。その後、温度150℃、圧着圧力3MPaで30分間加熱養生し、試験片とする。
【0050】
(シート型接着剤の試験片の作製)
【0051】
固形の接着剤組成物を溶剤に60℃で溶解し、溶液型接着剤を作製する。離型フィルムとして、PETフィルム(商品名「KOBATECH RF(登録商標)130SGN」(コバヤシ社製))を用い、溶液型接着剤をバーコーター(ワイヤーバーNo.#68、線径1.7mm、メッシュ14本/IN巾、塗布量68~85WETg/m2、丸協技研社製)を用いて、膜厚25μmとなるように離型フィルム上に塗布し、シート型接着剤を作製する。基材として、厚み25μmのポリイミドフィルム(商品名「カプトン(登録商標)V」(東レ・デュポン社製))または厚み50μmのポリテトラフルオロエチレンシート(商品名「バルフロン(登録商標)両面処理テープ7990(バルカー社製)」)を用いる。シート型接着剤をポリイミドフィルムまたはポリテトラフルオロエチレンシートに100℃で仮接着させ、離型フィルムを剥がす。離型フィルムが剥がされた面に厚み12μmの銅箔(商品名「表面処理銅箔」(福田 金属箔粉社製))を温度150℃、圧着圧力0.3MPaで3分間圧着する。その後、温度150℃、圧着圧力3MPaで30分間加熱養生し、試験片とする。
【0052】
(剥離試験)
【0053】
試験片を幅10mmに裁断し、測定試料とする。JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験法」に準拠し、測定試料に前処理を行う。粘着・皮膜剥離解析装置「商品名「VPA-2」(協和界面科学社製)を用いて、JIS Z0237に準じて、剥離速度300mm/分で90°方向の引張試験を行い、90°剥離強度(N/10mm)を測定し、剥離強度を測定する。
【0054】
[誘電率]
【0055】
本実施形態に係る接着剤組成物において、誘電率は、3.1以下であるのが好ましく、2.9以下であるのがより好ましく、2.7以下であるのがさらに好ましく、2.5以下であるのがさらにより好ましい。以下、誘電率の測定方法について説明する。
【0056】
(誘電率の測定)
【0057】
離型フィルムが剥がされたシート型接着剤を外径φ7.00 mm、内径φ3.04 mmのドーナツ状に加工して試料サンプルとする。試料サンプルを同軸サンプルホルダー(商品名「CSH-APC7」(EMラボ社製)、サンプルホルダー長2mm)に押し込む。ベクトルネットワーク・アナライザ(商品名「8720ES」(Agilent Technologies社製))のポートと同軸サンプルホルダーをAPC-7ケーブルで接続する。ベクトルネットワーク・アナライザを60分間ウォームアップする。試料サンプルを同軸サンプルホルダーに装着した状態で周波数10GにおけるSパラメータを測定し、誘電率に変換する。
【0058】
(4)接着剤組成物の製造方法
【0059】
本実施形態に係る接着剤組成物は、上述のポリアミドエラストマー、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤等の各成分を攪拌、混合することにより得られる。得られた接着剤組成物は通常、溶剤に溶かして使用される。溶剤としては、上記ポリアミドエラストマーを溶解する溶剤を用いることができる。ここで、上記ポリアミドエラストマーがアルコール可溶性ポリアミドエラストマーである場合は、アルコール系溶剤と他の溶剤の1種又は2種以上を併用した混合溶剤を用いることが好ましい。例えば、アルコール系溶剤とケトン系溶剤の混合液、アルコール系溶剤と芳香族系溶剤とケトン系溶剤の混合液等が用いられる。なお、前記アルコール可溶性ポリアミドエラストマーの場合は、接着剤組成物に用いられる溶剤全体に対するアルコール量は、20~80質量%の範囲に設定されることが好ましい。前記範囲であれば、ポリアミドエラストマー、エポキシ樹脂のすべての樹脂が良好に溶解する。なお、接着剤組成物を溶剤に溶解させる際、適宜、加熱される。例えば、50℃以上で加熱されるのが好ましい。
【0060】
上記のように、接着剤組成物を溶解して用いる際、望みの膜厚を形成する観点及び溶液の粘度の向上を抑制して均一な塗工を達成する観点から、その樹脂固形分濃度は、3~80質量%に設定されていることが好ましく、より好ましくは、10~50質量%の範囲である。
【0061】
(5)接着剤組成物の使用
【0062】
(フレキシブル銅張積層板)
【0063】
ポリイミドフィルム等の電気絶縁性の基材フィルムの一面に上記接着剤組成物溶液を塗工し、40~250℃の温度、好ましくは、70~170℃で2~10分間程度乾燥し、次いで銅箔と80~150℃で熱ラミネートすることにより、フレキシブル銅張積層板を作製する。このフレキシブル銅張積層板を更にアフターキュア(100~200℃、30分~4時間)することにより接着剤組成物を硬化させて、最終的なフレキシブル銅張積層板を得る。上記接着剤組成物の乾燥後の厚さは、通常5~45μmであり、好ましくは5~18μmである。
【0064】
(カバーレイフィルム)
【0065】
ポリイミドフィルム等の電気絶縁性の基材フィルムの一面に上記接着剤組成物溶液を塗工し、40~250℃の温度、好ましくは、70~170℃で2~10分間程度乾燥することにより、カバーレイフィルムを作成する。上記乾燥は、熱風乾燥、遠赤外線加熱、高周波誘導加熱等がなされる炉を通過させることにより行われる。上記接着剤組成物の乾燥後の厚さは、通常5~45μmであり、好ましくは10~35μmである。なお、このようにして得られたカバーレイフィルムの接着剤塗工面には、保管等のため、一時的に離型フィルムを積層してもよい。上記離型フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、シリコーン離型処理紙、ポリオレフィン樹脂コート紙、TPXフィルム、フッ素系樹脂フィルム等の公知のものが用いられる。
【0066】
本技術は、以下のような構成を採用することもできる。
[1]
ポリアミドエラストマーと、
エポキシ樹脂と、
エポキシ樹脂硬化剤と、
を含有し、
前記ポリアミドエラストマーの含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して17~99質量%であり、
前記エポキシ樹脂の含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して3~46質量%である接着剤組成物。
[2]
前記エポキシ樹脂硬化剤の含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して3~37質量%である[1]に記載の接着剤組成物。
[3]
前記ポリアミドエラストマーは、溶剤可溶性ポリアミドエラストマーである[1]又は[2]に記載の接着剤組成物。
[4]
前記エポキシ樹脂は、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂及びノボラック型エポキシ樹脂からなる群から少なくとも一種選択されるものである[1]~[3]のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
[5]
前記ノボラック型エポキシ樹脂は、ビフェニレンノボラック型エポキシ樹脂及び/又はナフトール-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂である[4]に記載の接着剤組成物。
[6]
前記エポキシ樹脂硬化剤は、フェノール系硬化剤である[1]~[5]のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
[7]
さらに、硬化促進剤を含有する[1]~[6]のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
[8]
前記接着剤組成物と基材樹脂とを接着させたときの接着界面の剥離強度が10N/10mm以上である[1]~[7]のいずれか一つに記載の接着剤組成物。
[9]
誘電率が3.1以下である[1]~[8]のいずれか一つ請求項1に記載の接着剤組成物。
[10]
前記基材樹脂がポリイミド又はポリテトラフルオロエチレンである[8]に記載の接着剤組成物。
[11]
[1]に記載の接着剤組成物が少なくとも片側の表面に塗布されているカバーレイフィルム。
【実施例0067】
3.実施例
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本発明の代表的な実施例の一例を示したものであり、本発明の範囲はこれらの実施例のみに限定されるものでない。
【0068】
本実施例において、剥離強度、誘電率は、上述の一実施形態にて説明した測定方法により求められたものである。
【0069】
[実施例1]
【0070】
(溶液型接着剤の試験片の作製)
【0071】
ポリアミドエラストマとして、商品名「TPAE-32」(T&K TOKA社製)を19質量部、エポキシ樹脂として、商品名「XD-1000」(日本化薬社製)を1質量部、エポキシ樹脂硬化剤として、フェノール系硬化剤である商品名「GPH-65」(日本化薬社製)を0.79質量部、硬化促進剤として、「キュアゾール(登録商標)2E4MZ」(四国化成社製)を0.05質量部含有する接着剤組成物を、溶剤(組成比;トルエン:メタノール:シクロヘキサノン=40:20:40の混合溶剤)100質量部に60℃で溶解し、溶液型接着剤を作製した。なお、接着剤組成物において、ポリアミドエラストマーの含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して91.2質量%であり、エポキシ樹脂の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して4.80質量%であり、エポキシ樹脂硬化剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して3.79質量%であり、硬化促進剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して0.24質量%であった。
【0072】
基材として、厚み25μmのポリイミドフィルム(商品名「カプトン(登録商標)V」(東レ・デュポン社製))または厚み50μmのポリテトラフルオロエチレンシート(商品名「バルフロン(登録商標)両面処理テープ7990(バルカー社製)」)を用いた。溶液型接着剤をバーコーター(ワイヤーバーNo.#38、線径0.95mm、メッシュ27本/IN巾、塗布量38~47.5WETg/m2、丸協技研社製)を用いて、膜厚10μmとなるように基材上に塗布した。溶液型接着剤が塗布された基材を100℃で2分間乾燥して、溶液型接着剤が硬化した基材片を調製した。硬化した膜厚10μmの溶液型接着剤に厚み12μmの銅箔(商品名「表面処理銅箔」(福田金属箔粉社製))を温度150℃、圧着圧力3MPaで3分間圧着した。その後、温度150℃、圧着圧力3MPaで30分間加熱養生し、試験片とした。
【0073】
(シート型接着剤の試験片の作製)
【0074】
溶液型接着剤を調製した際に使用した接着剤組成物を溶剤に60℃で溶解し、溶液型接着剤を作製した。離型フィルムとして、PETフィルム(商品名「KOBATECH RF(登録商標)130SGN」(コバヤシ社製))を用い、溶液型接着剤をバーコーター(ワイヤーバーNo.#68、線径1.7mm、メッシュ14本/IN巾、塗布量68~85WETg/m2、丸協技研社製)を用いて、膜厚25μmとなるように離型フィルム上に塗布し、シート型接着剤を作製した。基材として、厚み25μmのポリイミドフィルム(商品名「カプトン(登録商標)V」(東レ・デュポン社製))または厚み50μmのポリテトラフルオロエチレンシート(商品名「バルフロン(登録商標)両面処理テープ7990(バルカー社製)」)を用いた。シート型接着剤をポリイミドフィルムまたはポリテトラフルオロエチレンシートに100℃で仮接着させ、離型フィルムを剥がした。離型フィルムが剥がされた面に厚み12μmの銅箔(商品名「表面処理銅箔」(福田金属箔粉社製))を温度150℃、圧着圧力0.3MPaで3分間圧着した。その後、温度150℃、圧着圧力3MPaで30分間加熱養生し、試験片とした。
【0075】
上記2.(3)物性で説明した剥離強度の測定方法、誘電率の測定方法により、得られた試験片について剥離強度と誘電率を測定した。結果を表1に示す。また、剥離試験の際、目視により破壊状態を確認した。溶液型接着剤及びシート型接着剤のいずれにおいても、基材であるポリイミドフィルム及びポリテトラフルオロエチレンシートから銅箔を剥離する際、銅箔が破壊された。
【0076】
[実施例2]
【0077】
実施例1とは、ポリアミドエラストマとして、商品名「TPAE-32」(T&K TOKA社製)を17質量部、エポキシ樹脂として、商品名「XD-1000」(日本化薬社製)を3質量部、エポキシ樹脂硬化剤として、フェノール系硬化剤である商品名「GPH-65」(日本化薬社製)を2.37質量部を配合した点で相違するが、その他の条件及び方法は、実施例1と同一にして溶液型接着剤及びシート型接着剤を得た。なお、接着剤組成物において、ポリアミドエラストマーの含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して75.8質量%であり、エポキシ樹脂の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して13.4質量%であり、エポキシ樹脂硬化剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して10.6質量%であり、硬化促進剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して0.22質量%であった。得られた物性は、表1に示されるとおりの値を有した。剥離試験の際、目視により破壊状態を確認した。溶液型接着剤及びシート型接着剤のいずれにおいても、基材であるポリイミドフィルム及びポリテトラフルオロエチレンシートから銅箔を剥離する際、銅箔が破壊された。
【0078】
[実施例3]
【0079】
実施例1とは、ポリアミドエラストマとして、商品名「TPAE-32」(T&K TOKA社製)を15質量部、エポキシ樹脂として、商品名「XD-1000」(日本化薬社製)を5質量部、エポキシ樹脂硬化剤として、フェノール系硬化剤である商品名「GPH-65」(日本化薬社製)を3.95質量部を配合した点で相違するが、その他の条件及び方法は、実施例1と同一にして溶液型接着剤及びシート型接着剤を得た。なお、接着剤組成物において、ポリアミドエラストマーの含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して62.5質量%であり、エポキシ樹脂の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して20.8質量%であり、エポキシ樹脂硬化剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して16.5質量%であり、硬化促進剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して0.21質量%であった。得られた物性は、表1に示されるとおりの値を有した。剥離試験の際、目視により破壊状態を確認した。溶液型接着剤及びシート型接着剤のいずれにおいても、基材であるポリイミドフィルム及びポリテトラフルオロエチレンシートから銅箔を剥離する際、銅箔が破壊された。
【0080】
[実施例4]
【0081】
実施例1とは、ポリアミドエラストマとして、商品名「TPAE-32」(T&K TOKA社製)を13質量部、エポキシ樹脂として、商品名「XD-1000」(日本化薬社製)を7質量部、エポキシ樹脂硬化剤として、フェノール系硬化剤である商品名「GPH-65」(日本化薬社製)を5.5質量部を配合した点で相違するが、その他の条件及び方法は、実施例1と同一にして溶液型接着剤及びシート型接着剤を得た。なお、接着剤組成物において、ポリアミドエラストマーの含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して50.9質量%であり、エポキシ樹脂の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して27.4質量%であり、エポキシ樹脂硬化剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して21.5質量%であり、硬化促進剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して0.20質量%であった。得られた物性は、表1に示されるとおりの値を有した。剥離試験の際、目視により破壊状態を確認した。溶液型接着剤及びシート型接着剤のいずれにおいても、基材であるポリイミドフィルム及びポリテトラフルオロエチレンシートから銅箔を剥離する際、銅箔が破壊された。
【0082】
[実施例5]
【0083】
実施例1とは、ポリアミドエラストマとして、商品名「TPAE-32」(T&K TOKA社製)を10質量部、エポキシ樹脂として、商品名「XD-1000」(日本化薬社製)を10質量部、エポキシ樹脂硬化剤として、フェノール系硬化剤である商品名「GPH-65」(日本化薬社製)を7.9質量部を配合した点で相違するが、その他の条件及び方法は、実施例1と同一にして溶液型接着剤及びシート型接着剤を得た。なお、接着剤組成物において、ポリアミドエラストマーの含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して35.8質量%であり、エポキシ樹脂の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して35.8質量%であり、エポキシ樹脂硬化剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して28.3質量%であり、硬化促進剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して0.18質量%であった。得られた物性は、表1に示されるとおりの値を有した。剥離試験の際、目視により破壊状態を確認した。溶液型接着剤及びシート型接着剤のいずれにおいても、基材であるポリイミドフィルム及びポリテトラフルオロエチレンシートから銅箔を剥離する際、銅箔が破壊された。
【0084】
[比較例1]
【0085】
実施例1とは、ポリアミドエラストマとして、商品名「TPAE-32」(T&K TOKA社製)を5質量部、エポキシ樹脂として、商品名「XD-1000」(日本化薬社製)を15質量部、エポキシ樹脂硬化剤として、フェノール系硬化剤である商品名「GPH-65」(日本化薬社製)を11.85質量部を配合した点で相違するが、その他の条件及び方法は、実施例1と同一にして溶液型接着剤及びシート型接着剤を得た。なお、接着剤組成物において、ポリアミドエラストマーの含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して15.7質量%であり、エポキシ樹脂の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して47.0質量%であり、エポキシ樹脂硬化剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して37.1質量%であり、硬化促進剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して0.16質量%であった。得られた物性は、表1に示されるとおりの値を有した。剥離試験の際、目視により破壊状態を確認した。溶液型接着剤及びシート型接着剤のいずれにおいても、基材であるポリイミドフィルム及びポリテトラフルオロエチレンシートから銅箔を剥離する際、ポリイミドフィルム界面及びポリテトラフルオロエチレンシート界面が破壊された。
【0086】
[比較例2]
【0087】
実施例1とは、ポリアミドエラストマとして、商品名「TPAE-32」(T&K TOKA社製)を0質量部、エポキシ樹脂として、商品名「XD-1000」(日本化薬社製)を20質量部、エポキシ樹脂硬化剤として、フェノール系硬化剤である商品名「GPH-65」(日本化薬社製)を15.81質量部を配合した点で相違するが、その他の条件及び方法は、実施例1と同一にして溶液型接着剤及びシート型接着剤を得た。なお、接着剤組成物において、ポリアミドエラストマーの含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して0質量%であり、エポキシ樹脂の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して55.8質量%であり、エポキシ樹脂硬化剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して44.1質量%であり、硬化促進剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して0.14質量%であった。得られた物性は、表1に示されるとおりの値を有した。剥離試験の際、目視により破壊状態を確認した。溶液型接着剤及びシート型接着剤のいずれにおいても、基材であるポリイミドフィルム及びポリテトラフルオロエチレンシートから銅箔を剥離する際、ポリイミドフィルム界面及びポリテトラフルオロエチレンシート界面が破壊された。
【0088】
[実施例6]
【0089】
実施例1とは、ポリアミドエラストマとして、商品名「TPAE-32」(T&K TOKA社製)を15質量部、エポキシ樹脂として、商品名「NC-3000-H」(日本化薬社製)を5質量部、エポキシ樹脂硬化剤として、フェノール系硬化剤である商品名「GPH-65」(日本化薬社製)を3.46質量部を配合した点で相違するが、その他の条件及び方法は、実施例1と同一にして溶液型接着剤及びシート型接着剤を得た。なお、接着剤組成物において、ポリアミドエラストマーの含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して63.8質量%であり、エポキシ樹脂の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して21.3質量%であり、エポキシ樹脂硬化剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して14.7質量%であり、硬化促進剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して0.21質量%であった。得られた物性は、表1に示されるとおりの値を有した。剥離試験の際、目視により破壊状態を確認した。溶液型接着剤及びシート型接着剤のいずれにおいても、基材であるポリイミドフィルム及びポリテトラフルオロエチレンシートから銅箔を剥離する際、銅箔が破壊された。
【0090】
[実施例7]
【0091】
実施例1とは、ポリアミドエラストマとして、商品名「TPAE-32」(T&K TOKA社製)を15質量部、エポキシ樹脂として、商品名「EPPN-502H」(日本化薬社製)を5質量部、エポキシ樹脂硬化剤として、フェノール系硬化剤である商品名「GPH-65」(日本化薬社製)を5.95質量部を配合した点で相違するが、その他の条件及び方法は、実施例1と同一にして溶液型接着剤及びシート型接着剤を得た。なお、接着剤組成物において、ポリアミドエラストマーの含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して57.7質量%であり、エポキシ樹脂の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して19.2質量%であり、エポキシ樹脂硬化剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して22.9質量%であり、硬化促進剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して0.19質量%であった。得られた物性は、表1に示されるとおりの値を有した。剥離試験の際、目視により破壊状態を確認した。溶液型接着剤及びシート型接着剤のいずれにおいても、基材であるポリイミドフィルム及びポリテトラフルオロエチレンシートから銅箔を剥離する際、銅箔が破壊された。
【0092】
[実施例8]
【0093】
実施例1とは、ポリアミドエラストマとして、商品名「TPAE-32」(T&K TOKA社製)を15質量部、エポキシ樹脂として、商品名「NC-7000L」(日本化薬社製)を5質量部、エポキシ樹脂硬化剤として、フェノール系硬化剤である商品名「GPH-65」(日本化薬社製)を4.31質量部を配合した点で相違するが、その他の条件及び方法は、実施例1と同一にして溶液型接着剤及びシート型接着剤を得た。なお、接着剤組成物において、ポリアミドエラストマーの含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して61.6質量%であり、エポキシ樹脂の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して20.5質量%であり、エポキシ樹脂硬化剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して17.7質量%であり、硬化促進剤の含有量は接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して0.21質量%であった。得られた物性は、表1に示されるとおりの値を有した。剥離試験の際、目視により破壊状態を確認した。溶液型接着剤及びシート型接着剤のいずれにおいても、基材であるポリイミドフィルム及びポリテトラフルオロエチレンシートから銅箔を剥離する際、銅箔が破壊された。
【0094】
試験結果を表1に示す。
【0095】
【0096】
表1から、以下のことが分かる。なお、表1中の単位は質量部である。
【0097】
実施例1~8の接着剤組成物はいずれも、ポリアミドエラストマーと、エポキシ樹脂と、エポキシ樹脂硬化剤と、を含有し、ポリアミドエラストマーの含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して17~99質量%であり、エポキシ樹脂の含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して3~46質量%であった。そのため、実施例1~8の接着剤組成物はいずれも、ポリイミドフィルム及びポリテトラフルオロエチレンシートを基材とした場合の剥離強度が10N/mm以上であり接着性に優れるとともに、誘電率が3.1以下と低い値を有し、低誘電率の誘電特性を有するものであった。
【0098】
ポリアミドエラストマの含有量が接着剤組成物の質量(溶剤を除く固形分)に対して17質量%に満たない比較例1、ポリアミドエラストマを含有しない比較例2は、いずれも、ポリイミドフィルム及びポリテトラフルオロエチレンシートを基材とした場合の剥離強度が10N/mmに満たないものであり、接着性の劣ったものとなることが分かる。
【0099】
以上、本技術の実施形態及び実施例について具体的に説明したが、本技術は、上述の実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本技術の技術的思想に基づく各種の変形が可能である。
【0100】
例えば、上述の実施形態及び実施例において挙げた構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等はあくまでも例に過ぎず、必要に応じてこれと異なる構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等を用いてもよい。
【0101】
また、上述の実施形態及び実施例の構成、方法、工程、形状、材料、及び数値等は、本技術の主旨を逸脱しない限り、互いに組み合わせることが可能である。
【0102】
また、本明細書において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値または下限値は、他の段階の数値範囲の上限値または下限値に置き換えてもよい。本明細書に例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。