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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042166
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】木材包装製品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B27K 5/00 20060101AFI20240321BHJP
   B27K 3/14 20060101ALI20240321BHJP
   B65B 31/02 20060101ALI20240321BHJP
   B65D 81/20 20060101ALI20240321BHJP
   B65D 81/26 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B27K5/00 F
B27K3/14
B65B31/02 A
B65D81/20 C
B65D81/26 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146681
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000213769
【氏名又は名称】朝日ウッドテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109911
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義仁
(74)【代理人】
【識別番号】100071168
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 久義
(74)【代理人】
【識別番号】100099885
【弁理士】
【氏名又は名称】高田 健市
(72)【発明者】
【氏名】近藤 伸樹
【テーマコード(参考)】
2B230
3E053
3E067
【Fターム(参考)】
2B230AA02
2B230AA03
2B230AA12
2B230AA15
2B230EB13
2B230EB33
2B230EC02
3E053AA06
3E053BA10
3E053CA01
3E053CA06
3E053FA01
3E067AA12
3E067AB99
3E067AC01
3E067BA12A
3E067BB12A
3E067BB14A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067BB25A
3E067CA05
3E067CA06
3E067CA07
3E067CA24
3E067EA06
3E067FA01
3E067FB11
3E067FB12
3E067FC01
3E067GA15
3E067GB13
3E067GC01
3E067GD01
(57)【要約】
【課題】保存物としての木材を常温で長期間保存できる木材包装製品を提供する。
【解決手段】本発明は、木材である保存物1を収容して真空状態に密封する包装用袋2を備える。包装用袋2が包装フィルム3によって構成されるとともに、包装フィルム3が、酸素ガスが透過し難いバリア層を含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材である保存物を収容して真空状態に密封する包装用袋を備え、
前記包装用袋が包装フィルムによって構成されるとともに、
前記包装フィルムが、酸素ガスが透過し難いバリア層を含むことを特徴とする木材包装製品。
【請求項2】
前記バリア層を構成する素材の酸素透過度が200cc/m・24hr・atm以下である請求項1に記載の木材包装製品。
【請求項3】
前記包装用袋内には、脱炭素剤が同封されている請求項1または2に記載の木材包装製品。
【請求項4】
保存物は、生単板である請求項1または2に記載の木材包装製品。
【請求項5】
前記包装フィルムは、基材層と、その基材層の外面側に積層された前記バリア層とを備える請求項1または2に記載の木材包装製品。
【請求項6】
請求項1または2に記載の木材包装製品を製造するための製造方法であって、
開口部を有する前記包装用袋に、その開口部から木材を収容し、
次いで、ノズル式真空装置のノズルを前記開口部に挿通して、前記包装用袋内を吸引して真空状態に設定し、
次いで、真空状態を維持したまま、前記ノズルを開口部から抜き取った後、前記開口部をシールすることによって木材包装製品を製造するようにしたことを特徴とする木材包装製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、包装用袋に生単板等の木材が収容された木材包装製品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
木質単板は、建材や家具の化粧材として広く使用されている。木質単板には乾燥単板と水分を多く含む生単板とがあるが、乾燥単板は保存目的で乾燥させており、乾燥させることによって、変形や変色等の不具合が発生する。
【0003】
一方、生単板は、寸法精度や貼り付け時の作業性は優れているものの、保存方法に問題を抱えている。例えば生単板は短期間でカビ、腐れ、ムレ等の変色が発生し易く、常温の場合、木材を切削して生単板を製作してから、1日から2日以内で使用する必要があり、夏場等の気温が高い環境下では半日程度で使用する必要があった。
【0004】
従来においては、生単板の品質を保持しつつ保存期間を延ばすために例えば、生単板に対し防腐薬剤を塗布して冷蔵保存するようにした冷蔵保存方法や、生単板を冷凍保存するようにした冷凍保存方法が採用されている。
【0005】
ところが、冷蔵保存方法では、塗布する防腐薬剤の薬剤成分によって生単板が変色して品質が低下するおそれがあった。
【0006】
また冷凍保存方法では、解凍に時間がかかり、必要な際に直ぐに使用することができず、利便性の低下を来してしまう。さらに解凍時に熱を加えると、熱により変色してしまうため、自然解凍が多く用いられるが、自然解凍では解凍にむらが生じて、内部が解凍される前に、先に解凍された端部が腐ったり、変色し始めることもある。また解凍が不十分であると、生単板を剥がす際に、解凍が不十分な部分がくっ付いて破損してしまうこともある。
【0007】
このように冷蔵保存方法や冷凍保存方法では、種々の問題を抱えるばかりか、常温で保存できないため、保管場所にも制約があり、従来から、生単板等の木材を常温で長期間保存できる方法が切望されていた。
【0008】
このような状況下にあって従来、下記特許文献1において生単板を真空包装して長期間常温で保存できるようにした木質単板の真空包装方法が提案されている。
【0009】
この真空包装方法は、開口部を有する樹脂製フィルム容器内に生単板を収容して、高周波加熱によって70℃以上で乾燥させずに加熱殺菌した後、容器内を減圧してその減圧下においてフィルム容器の開口部をシールして、生単板を真空包装するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特公昭60-882号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上記従来の真空包装方法による生単板の真空包装製品では、樹脂製フィルムにおける気密性が十分ではなく、ある程度の空気(酸素等)の侵入による悪影響を考慮して、単板を真空包装する前に高周波加熱による殺菌処理を行う必要がある。このように単板に対し殺菌処理等の特殊な処理を必要とするためその分、生産効率の低下を来すという課題があった。さらに滅菌処理等には大がかりな設備が必要であるため、製造設備の大型化を来すという課題もあった。
【0012】
この発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、生単板等の木材を特殊な処理を必要とせずにそのままの状態で包装できて常温で長期間保存できるとともに、製造設備の小型化を図りつつ、効率良く製造することができる木材包装製品およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明は、以下の手段を備えるものである。
【0014】
[1]木材である保存物を収容して真空状態に密封する包装用袋を備え、
前記包装用袋が包装フィルムによって構成されるとともに、
前記包装フィルムが、酸素ガスが透過し難いバリア層を含むことを特徴とする木材包装製品。
【0015】
[2]前記バリア層を構成する素材の酸素透過度が200cc/m・24hr・atm以下である前項1に記載の木材包装製品。
【0016】
[3]前記包装用袋内には、脱炭素剤が同封されている前項1または2に記載の木材包装製品。
【0017】
[4]保存物は、生単板である前項1または2に記載の木材包装製品。
【0018】
[5]前記包装フィルムは、基材層と、その基材層の外面側に積層された前記バリア層とを備える前項1または2に記載の木材包装製品。
【0019】
[6]前項1または2に記載の木材包装製品を製造するための製造方法であって、
開口部を有する前記包装用袋に、その開口部から木材を収容し、
次いで、ノズル式真空装置のノズルを前記開口部に挿通して、前記包装用袋内を吸引して真空状態に設定し、
次いで、真空状態を維持したまま、前記ノズルを開口部から抜き取った後、前記開口部をシールすることによって木材包装製品を製造するようにしたことを特徴とする木材包装製品の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
発明[1]の木材包装製品によれば、木材である保存物を包装用袋によって真空包装する一方、包装用袋をバリア層を含む包装フィルムによって構成しているため、包装用袋内の気密性を十分に確保できて、保存物の変色等の品質劣化を防止しつつ常温で長期間保存することができる。さらに酸素の侵入を十分に抑制できるため、保存物に対し滅菌処理等の特殊な処理を施す必要がなく、生産効率の向上および設備の小型簡素化を図ることができる。また開封すれば、保存物としての木材を直ぐに使用でき、良好な利便性を得ることができる。
【0021】
発明[2][3]の木材包装製品によれば、包装用袋内への酸素の侵入をより確実に防止でき、上記の効果をより一層確実に得ることができる。
【0022】
発明[4]の木材包装製品によれば、生単板を不具合なく常温で長期間保存することができる。
【0023】
発明[5]の木材包装製品によれば、包装用袋の強度を向上できて、破れや穴あき等の不具合が発生するのをより確実に防止することができる。
【0024】
発明[6]の製造方法によれば、上記発明[1]の効果を有する木材包装製品を確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1はこの発明の実施形態である木材包装製品を示す斜視図である。
図2図2は実施形態の木材包装製品の製造方法において保存物を包装用袋に収容する直前の状態を示す斜視図である。
図3図3は実施形態の木材包装製品の製造方法において脱気中の状態を示す斜視図である。
図4図4はこの発明の変形例である木材包装製品の製造方法を説明するための断面図であって、図(a)は保存物を包装用袋に収容する直前の状態を示す図、図(b)は保存物を包装用袋に収容した直後の状態を示す図、図(c)は脱気中の状態を示す図、(d)は包装用袋の開口部をシールした状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
図1はこの発明の実施形態である木材包装製品を示す斜視図である。同図に示すように、本実施形態の木材包装製品は、保存物1としての生単板等の木材を収容して真空状態に密封する包装用袋2を備えている。
【0027】
本実施形態において、包装される保存物1は木材を対象としている。保存物1である木材としては、板子、積層フリッチ、板子または積層フリッチを切削して得られる生単板、積層フリッチを積層する前の製材(板子)、丸太をかつら剥きしたロータリー単板(生単板)等を挙げることができる。中でも本実施形態においては、切削等による製造後にカビ、腐れ等の変色を生じ易い生単板を包装するのに適している。
【0028】
単板としては、その製法は特に限定されるものではなく、スライサー(切削機)を用いた公知の方法で製作されたもので良い。
【0029】
包装する保存物1としての木材の含水率は40%~200%程度であり、スライサー等で切削し易い保存物1の含水率は70%~120%の範囲である。
【0030】
保存物1としての木材(単板)の樹種は特に限定されるものではないが例えば、メイプル、チェリー、ウォルナット、バーチ、アッシュ、カリン、クリ、アカシア、ビーチ、シカモア、オーク等の広葉樹、レッドシダー、ヘムロック、スプルース等の針葉樹を挙げることができる。中でも特に、切削後すぐに傷みやすいシカモア、白太部分は含水率が高く、痛みと寸法変化が起こりやすい白太を含むオークは、本実施形態の真空包装用の木材1として好適に用いることができる。
【0031】
本実施形態において、単板の厚みやサイズは特に限定されるものではなく、必要とする木材サイズ(製品サイズ)に合わせて適宜調整すれば良い。
【0032】
一般的な単板としては、厚さ0.2mm~0.5mm程度の薄単板、0.5mm~2.0mmの厚単板等が用いられる。
【0033】
また床材の化粧材として用いられる単板の一般的なサイズは、長さ1800mm~2300mm×巾250mm~350mmである。
【0034】
単板は、1枚単位で包装してもよいし、必要に応じて複数枚集積して包装してもよい。従って本実施形態において、包装する木材(単板)の高さとしては、単板数が1枚の場合には単体の厚さとなり、複数の場合には堆積した複数の単板の総厚みとなる。具体的には包装される木材の高さは0.2mm~150mmに調整するのが好ましい。
【0035】
床材の化粧材として用いる単板は一般的なサイズであれば、5坪分で30枚、10坪分で60枚、30坪分で180枚、60坪分で360枚となり、この枚数単位が生産ロットとなるため、本実施形態の木材包装製品では、生産ロットに対応する枚数の単板を堆積して包装するのが好ましい。
【0036】
図1に示すように本実施形態の木材包装製品の包装用袋2としては、包装フィルム3が用いられている。
【0037】
本実施形態において、包装フィルム3としては、酸素を透過し難いガスバリア性のバリア層を備えている。
【0038】
バリア層を構成する素材としては、アルミ箔、アルミ蒸着膜、透明蒸着膜(アルミナ、シリカ等)、バリアナイロン、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、エチレンビニルアルコール共重合樹脂(EVOH、エバール)等を例示することができる。これらのバリア層素材のうち、アルミ箔、アルミ蒸着膜はバリア性能が高いものの、非透明であり保存物1が視認できず、開梱前の包装状態のままでは、梱包された保存物の状態を確認することは困難である。従って包装状態のままで保存物を確認できる透明蒸着膜や、バリアナイロンを用いるのが好ましい。
【0039】
包装フィルム3のバリア層は、JIS K 7126-2:2006の等圧法(温度23℃、湿度90%RH)に準拠する酸素透過度(バリア性能)が、200cc/m・24hr・atm以下、好ましくは150cc/m・24hr・atm以下、より好ましくは100cc/m・24hr・atm以下、より一層好ましくは85cc/m・24hr・atm以下、さらに好ましくは30cc/m・24hr・atm以下の素材を用いるのが良い。すなわち酸素透過度がこの範囲に設定された素材をバリア層として用いることによって、包装用袋2内への酸素の侵入を確実に防止でき、高品質を維持したまま常温で長期間保管できるという本発明の効果をより確実に得ることができる。なお本実施形態における酸素透過度は、バリア層を構成する素材固有の数値であり、例えばバリア層の厚みによって数値が変化するものではない。
【0040】
上記の酸素透過度は、一般的に200cc/m・24hr・atm以下でバリア性能があるとされており、100cc/m・24hr・atm以下で十分なバリア性能があるとされており、30cc/m・24hr・atm以下で高いバリア性能があるとされている
例えば上記バリアナイロンにおける標準的な酸素透過度は90cc/m・24hr・atmである。
【0041】
包装フィルム3としては、バリア層単独で構成しても良いが、ベースフィルム層(基材層)にバリア層が積層された2層構造で構成しても良いし、バリア層を含む3層以上で構成しても良い。
【0042】
ベースフィルム層を含む2層構造の場合、ベースフィルム層の種類は特に限定されるものではないが、ベースフィルム層の素材としては例えば、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレン(PP)、特にヒートシール性の観点からは低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いるのが好ましい。
【0043】
さらにシール性を考慮すると、ベースフィルム層は、包装フィルム3の内面、つまりベースフィルム層の外面側にバリア層を設けるようにするのが良い。
【0044】
包装フィルム3の厚みは、総厚70μm以上に設定するのが良く、より好ましくは100μm以上に設定するのが良い。すなわち厚みが薄過ぎる場合、作業時に包装フィルム3(包装用袋2)に破れ、穴あきが発生するおそれがあるため、上記の厚みに設定するのが良い。
【0045】
次に上記包装フィルム3を用いて生単板等の保存物1を真空包装して、本実施形態の木材包装製品を製造するための製造方法について説明する。
【0046】
図2に示すように、周囲4辺のうち、1辺が開放された開口部20とし、残り3辺が閉塞(密閉)された平面視矩形状の包装用袋2を準備しておく。具体的には、1枚の包装フィルム3を2つ折りで折り畳んで、折り畳み辺22に隣接する2つの辺23をヒートシールによって閉塞(密閉)するとともに、折り畳み辺22に対向する1辺21をヒートシールせずに開口部20として構成する。図2において、包装用袋3の2つの辺23に沿って設けられた縞模様の部分は、ヒートシールが施されたシール部24である。
【0047】
なお本実施形態では、1枚の包装フィルム3を用いて1つの包装用袋2を製作する場合を例に挙げているが、2枚の包装フィルム3を用いて1つの包装用袋2を製作することもできる。すなわち矩形状の2枚の包装フィルム3を重ね合わせて、周囲4辺のうち3辺をヒートシールして閉塞するとともに、残り1辺をヒートシールせずに開口部として構成すれば、2枚の包装フィルム3によって1つの包装用袋を製作することも可能である。言うまでもなく3枚以上の包装フィルム3を適宜継ぎ合わせて1つの包装用袋を製作することも可能である。
【0048】
この包装用袋2に、開口部20を介して保存物1を収容する。本実施形態においては、保存物1として生単板が複数枚集積された集積体が用いられている。
【0049】
包装用袋2内に保存物1を収容した後、シーラー付きのノズル式真空装置(真空パック装置)を用いて保存物1を包装用袋2内に真空包装する。すなわち図3に示すように真空装置のノズル51を包装用袋2の開口部20に挿通配置するとともに、真空装置のスポンジ状の押え部材(図示省略)によって包装用袋2の開口部20を上下両側から挟み込んで開口部20(1辺21)を気密状態に閉塞する。その状態でノズル51に配管接続された真空ポンプによって、ノズル51を介して包装用袋2内を後述する所定の気圧まで脱気する。その後、ノズル51を抜き取ってから図1に示すように、開口部20に対応する1辺21をヒートシールして密封することによって、保存物1が包装用袋2内に真空包装(真空パック)された本実施形態の木材包装製品が製造される。
【0050】
なお真空パックする際には保存物1としての木材と一緒に脱酸素剤を同梱しても良い。これにより、包装用袋2内の酸素がより一層少なくなる。こうして、包装用袋2内の酸素がある程度以下になると、カビや菌は活動を中止し、保存物1としての木材にカビや菌が発生するのを確実に抑制することができる。
【0051】
本実施形態においては、大気圧を0kPaとして、おおよそ-80kPa~-60kPaで包装用袋2内を脱気するのが好ましい。これにより、大気圧に対して包装用袋2内が1/1000~1/10000の圧力になり、包装用袋2内が低真空ないし中真空の範囲となる。
【0052】
また包装用袋2の開口部20をヒートシールするときの包装用袋2内の真空度は低真空(10Pa~10Pa)に設定するのが良く、より好ましくは中真空(10Pa~10-1Pa)に設定するのが良い。この包装用袋2内の圧力は低くなるほど、真空度は高くなり、真空度は高い方が好ましい。
【0053】
なお上記実施形態においては、ノズル式真空装置を用いて包装用袋2内を脱気するようにしたが、それだけに限られず、本発明においては、チャンバー(ボックス)式の真空装置を用いて包装用袋2内を脱気するようにしても良い。チャンバー式の真空装置は、チャンバー内に、保存物1を収容した包装用袋2をセットし、チャンバーの蓋を閉めて、チャンバー内部を真空にした状態で、包装用袋2の開口部20をシールする方法である。
【0054】
本実施形態においては、チャンバー式の真空装置よりも、ノズル式の真空装置を用いるのが好ましい。すなわち、チャンバー式の真空装置を用いる場合、保存物入りの包装用袋2(包装製品)の大きさ(サイズ)がチャンバーに収容できるサイズしか取り扱うことができないため、製品サイズに制限が生じ、大きいサイズの包装製品を製造することは困難であるとともに、チャンバー内全域を真空にする必要があるため、大きな真空ポンプが必要となり、真空設備の大型化を来すおそれがある。これに対し、ノズル式の真空装置では、ノズルを用いて包装用袋2内を真空にするものであるため、包装製品のサイズにほとんど制限がなく、大きいサイズの包装製品も製造できるとともに、包装用袋2内を真空にするだけであるため、小さい真空ポンプで対応でき、真空設備の小型化を図ることができる。
【0055】
以上のように本実施形態の木材包装製品によれば、生単板等の保存物1を包装用袋2内に収容して真空包装するものであるため、カビ、腐れ、ムレ等による生単板の変色を抑制しつつ、常温で長期間保存することができる。特に本実施形態においては、包装用袋2が酸素を透過し難いバリア層を含む包装フィルム3によって構成されているため、酸素の浸入を確実に防止することができ、カビ、腐れ、ムレ等をより確実に防止できて、保存物1の保存状態(品質)を良好に維持することができる。
【0056】
また本実施形態の木材包装製品は、開梱すれば保存物1を直ぐに使用できるため、冷凍保存等とは異なり、保存物1としての木材を使用する前の解凍が必要なく、早急な使用に対しても難なく対応することができる。さらに板子や木材フリッチの状態で真空包装しておくことにより、解凍時間を待たずに、板子や積層フリッチを使用して直ぐに切削できるので、不良品等によって単板に不足が生じたとしても直ぐに補充することができる。
【0057】
また本実施形態の包装製品においては、保存物1としての木材の防腐を確実に行えるため、梱包する木材に防腐薬剤を塗布する必要がなく、その薬剤成分による変色も確実に防止でき、木材の品質を確実に維持することができる。
【0058】
さらに本実施形態の包装製品においては、菌の発生も確実に防止できるため、保存物1としての木材に高周波加熱による殺菌処理を施す必要がなく、その分、生産効率の向上を図ることができるとともに、殺菌処理用の設備も不要で製造設備の小型簡素化を図ることができる。
【0059】
図4(a)~図(d)はこの発明の変形例である木材包装製品の製造方法を説明するための断面図である。この変形例の木材包装製品の製造方法においては、図4(a)に示すように上端面(天面)に開口部20を有するボックス状の包装用袋2が用いられる。包装される保存物1としての木材は上記と同様、複数の生単板が集積された集積体となっている。
【0060】
図4(b)に示すようにこの保存物1が上端の開口部20から包装用袋2内に収容される。次に図4(c)に示すようにノズル式真空装置のノズル51が開口部20に挿通配置されるとともに、真空装置の押え部材52によって両側から挟み込まれて開口部20が閉塞される。その状態でノズル5を介して包装用袋2内が脱気される。
【0061】
その後、ノズル51が抜き取られてから図4(d)に示すように、開口部20がヒートシールされて密封される。これにより、保存物1が包装用袋2内に真空包装された本発明の変形例としての木材包装製品が製造される。
【0062】
この木材包装製品において他の構成は上記実施形態の木材包装製品と同様である。この変形例の木材包装製品においても上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【実施例0063】
【表1】
【0064】
<実施例1>
積層フリッチを切削して生単板を得た。この生単板を60枚集積して保存物1とした。保存物1としての生単板は、7種類の樹種、すなわち、メイプル、ウォルナット、オーク、シカモア、チェリー、カリン、アッシュの7種類の樹種の生単板をそれぞれ準備した。
【0065】
積層フリッチの材料となる板子も保存物1として準備した。この板子も上記と同様、7種類の樹種の板子を準備した。
【0066】
こうして7種類の生単板と、7種類の板子との計14種類の保存物1を準備した。
【0067】
次に表1に示すように、ベースフィルム層としての厚さ100μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムの外面に、バリア層としての厚さ15μmのバリアナイロンを積層した包装フィルム3を準備した。なおバリアナイロンのバリア性能(酸素透過度)は、85cc/m・24hr・atmである。
【0068】
図2に示すようにこの包装フィルム3を2つ折りに折り畳んで、折り畳み辺22に隣接する2つの辺23をヒートシールによってシールすることによって、折り畳み辺22に対向する1辺21に開口部20を有する三方袋状の包装用袋2を作製した。
【0069】
次に図3に示すようにこの包装用袋2に保存物1を収容して、ノズル式の真空装置を用いて上記実施形態と同様に、脱気して開口部20をシールして、実施例1のサンプル(木材包装製品)を作製した。包装用袋2内の脱気は、-80kPa~-60kPaで行った。
【0070】
なおサンプルは、上記14種類の保存物1毎に作製し、計14個の実施例1のサンプルを作製した。
【0071】
<実施例2>
表1に示すように、ベースフィルム層としての3層ポリエチレン(PE+PEクロス+PE)フィルムの外面に、バリア層としての透明蒸着膜が蒸着された厚さ115μmの包装用フィルムを準備した。なお透明蒸着膜のバリア性能(酸素透過度)は、1.5cc/m・24hr・atmである。
【0072】
この包装用フィルムを用いて、上記実施例1と同様にして実施例2のサンプル(木材包装製品)を作製した。
【0073】
<実施例3>
表1に示すように、厚さ10μmの低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムに厚さ27μmの直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)フィルムを積層してベースフィルム層を作製し、そのベースフィルム層の外面に、アルミ蒸着膜が蒸着された厚さ12μmのPETフィルムを積層して、包装用フィルムを準備した。なおアルミ蒸着膜のバリア性能(酸素透過度)は、1cc/m・24hr・atm以下である。
【0074】
この包装用フィルムを用いて、上記実施例1と同様にして実施例3のサンプル(木材包装製品)を作製した。
【0075】
<実施例4>
表1に示すように、厚さ12μmのPETフィルムに透明蒸着膜が蒸着されたバリア層のみを用いて(ベースフィルム層を含まない)包装フィルムを作製した。なお透明蒸着膜のバリア性能(酸素透過度)は、1cc/m・24hr・atm以下である。
【0076】
この包装用フィルムを用いて、上記実施例1と同様にして実施例4のサンプル(木材包装製品)を作製した。
【0077】
<実施例5>
表1に示すように、厚さ20μmのポリサンドラミネート(SPE)フィルムに厚さ40μmの低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムを積層してベースフィルム層を作製し、そのベースフィルム層の外面に、バリア層としての厚さ15μmのバリアナイロンを積層した包装フィルム3を準備した。なおバリアナイロンのバリア性能(酸素透過度)は、85cc/m・24hr・atmである。
【0078】
この包装用フィルムを用いて、上記実施例1と同様にして実施例5のサンプル(木材包装製品)を作製した。
【0079】
<比較例1>
包装用袋に保存物を収納して脱気せずに開口部をシールした以外は、実施例2と同様にして比較例1のサンプル(木材包装製品)を作製した。
【0080】
<比較例2>
低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムからなるベースフィルム層のみを用いて(バリア層を含まない)包装フィルムを作製した。なお低密度ポリエチレンのバリア性能(酸素透過度)は、4000cc/m・24hr・atmである。
【0081】
この包装用フィルムを用いて、上記実施例1と同様にして比較例2のサンプル(木材包装製品)を作製した。
【0082】
<保存状態の評価>
実施例1~5および比較例1,2の各サンプルを常温および夏場の高温環境を想定した40℃恒温室で保管し、1ヶ月後に開梱して保存物(木材)の保存状態を評価した。評価方法としては、外観観察によりカビ、ムレ等の変色の有無を確認し、さらに寸法変化や含水率変化を確認した。それにより、変色がなく、寸法変化や含水率変化がほとんどないものを「○」と評価し、変色、寸法変化、含水率変化のいずれかが生じたものを「×」と評価した。その評価結果を表1に併せて示す。
【0083】
評価結果から明らかなように、本発明に関連した実施例1~5の木材包装製品では、長期間保存しても保存状態が良好であることが判る。ただし、実施例3,4の木材包装製品は、包装用袋(包装フィルム)の強度が少し低く、作業時や運搬時に雑に取り扱うと、包装用袋に破れや穴あきが発生するおそれがあった。
【0084】
これに対し比較例1,2の木材包装製品では、保管開始から2日後の時点で、カビ、ムレが発生し始め、1ヶ月後には際立った変色、寸法変化、含水率低下が認められ、保存状態が不良であることが判った。
【0085】
なお実施例1~5に相当する木材包装製品を用いて1年間保管して、保存状態を確認したところ、上記同様に保存状態が良好であることを確認し得た。
【産業上の利用可能性】
【0086】
この発明の木材包装製品は、生単板等の木材を高品質で保管する際に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0087】
1: 保存物(木材)
2:包装用袋
20:開口部
3:包装フィルム
51:ノズル
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-09-27
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材である保存物を収容して真空状態に密封する包装用袋を備え、
前記包装用袋が包装フィルムによって構成されるとともに、
前記包装フィルムが、酸素ガスが透過し難いバリア層を含むことを特徴とする木材包装製品。
【請求項2】
前記バリア層を構成する素材の酸素透過度が200cc/m・24hr・atm以下である請求項1に記載の木材包装製品。
【請求項3】
前記包装用袋内には、脱酸素剤が同封されている請求項1または2に記載の木材包装製品。
【請求項4】
保存物は、生単板である請求項1または2に記載の木材包装製品。
【請求項5】
前記包装フィルムは、基材層と、その基材層の外面側に積層された前記バリア層とを備える請求項1または2に記載の木材包装製品。
【請求項6】
請求項1または2に記載の木材包装製品を製造するための製造方法であって、
開口部を有する前記包装用袋に、その開口部から木材を収容し、
次いで、ノズル式真空装置のノズルを前記開口部に挿通して、前記包装用袋内を吸引して真空状態に設定し、
次いで、真空状態を維持したまま、前記ノズルを開口部から抜き取った後、前記開口部をシールすることによって木材包装製品を製造するようにしたことを特徴とする木材包装製品の製造方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
[3]前記包装用袋内には、脱酸素剤が同封されている前項1または2に記載の木材包装製品。