(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042172
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】繊維補強モルタル組成物及びそのモルタル
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20240321BHJP
C04B 22/14 20060101ALI20240321BHJP
C04B 14/48 20060101ALI20240321BHJP
C04B 18/14 20060101ALI20240321BHJP
C04B 22/08 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B22/14 B
C04B14/48 C
C04B18/14 Z
C04B22/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146691
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】赤江 信哉
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB00
4G112MB12
4G112PA19
4G112PA28
4G112PB03
4G112PB11
(57)【要約】
【課題】ミキサ等の機器へのモルタル残存が少なく、且つ作業性が良好で高い強度発現性を示す繊維補強モルタル組成物及びそのモルタルを提供すること。
【解決手段】セメント、カルシウムアルミネート類、石膏類及びポゾラン物質からなる結合材と、金属繊維と、細骨材とを含み、ポゾラン物質の含有量が、結合材100質量部に対し、1~20質量部であり、金属繊維の含有量が、結合材100質量部に対し、3~30質量部であり、細骨材の含有量が、結合材100質量部に対し、110~330質量部である、繊維補強モルタル組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント、カルシウムアルミネート類、石膏類及びポゾラン物質からなる結合材と、金
属繊維と、細骨材とを含み、
前記ポゾラン物質の含有量が、前記結合材100質量部に対し、1~20質量部であり、
前記金属繊維の含有量が、前記結合材100質量部に対し、3~30質量部であり、
前記細骨材の含有量が、前記結合材100質量部に対し、110~330質量部である、繊維補強モルタル組成物。
【請求項2】
前記金属繊維のアスペクト比が25~150である、請求項1に記載の繊維補強モルタル組成物。
【請求項3】
前記金属繊維の端部がかぎ状である、請求項1又は2に記載の繊維補強モルタル組成物。
【請求項4】
膨張材を更に含む、請求項1又は2に記載の繊維補強モルタル組成物。
【請求項5】
請求項委1又は2に記載の繊維補強モルタル組成物と水とを含み、
前記水の含有量が、前記結合材100質量部に対し、25~45質量部である、繊維補強モルタル。
【請求項6】
JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」12.フロー試験に準じて、20℃環境下で測定した0打と15打のフロー値の比率([15打フロー値(mm)]/[0打フロー値(mm)])が1.3~1.8である、請求項5に記載の繊維補強モルタル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維補強モルタル組成物及びそのモルタルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建築構造物や土木構造物に対する超高層化・大規模化・高耐久性化の要求が一層明確になっている。このような構造物を実現するために高強度モルタルの開発が行われている。高強度モルタルとして、例えば、少なとも、セメント、ポゾラン質微粉末、粒径3.5mm以下の細骨材、減水剤及び水を含むことを特徴とする超高強度モルタルが開示されている(特許文献1)。
【0003】
各種構造物に用いられるコンクリートは本来耐久性に優れたものであるが、構造や使用環境によってその一部が劣化する場合がある。このような劣化が生じると構造物の機能が低下する恐れがあるため、劣化部位の修復及び補強が必要となる。劣化部位の修復及び補強には、例えば、セメント、フライアッシュ、液体の収縮低減剤をまぶした細骨材、流動化剤、膨張材、粉末ポリマー、増粘剤、及び短繊維を含有する繊維補強モルタル組成物が用いられる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-043234号公報
【特許文献2】特開2011-121795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、モルタルの高強度化は単位セメント量の増加、ポゾラン物質の混入や低水結合材比での練り混ぜを可能とするための高性能減水剤の添加等により、モルタルの粘性が大きくなりやすい。その結果、作業性が低下したり、練り混ぜたモルタルを排出する際にミキサ内にモルタルが残存したりするという問題があった。加えて、速硬性を付与した高強度モルタルにおいてはミキサ内に残存するモルタルが硬化し、ミキサの性能に影響を与える恐れがあった。
【0006】
したがって、本発明は、ミキサ等の機器へのモルタル残存が少なく、且つ作業性が良好で高い強度発現性を示す繊維補強モルタル組成物及びそのモルタルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題について鋭意検討した結果、結合材の配合を調整し、金属繊維及び細骨材を適切に配合することでミキサ等の機器へのモルタル残存を減らすことができ、且つ作業性及び強度発現性に優れる繊維補強モルタル組成物及びそのモルタルが得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]セメント、カルシウムアルミネート類、石膏類及びポゾラン物質からなる結合材と、金属繊維と、細骨材とを含み、ポゾラン物質の含有量が、結合材100質量部に対し、1~20質量部であり、金属繊維の含有量が、結合材100質量部に対し、3~30質量部であり、細骨材の含有量が、結合材100質量部に対し、110~330質量部である、繊維補強モルタル組成物。
[2]金属繊維のアスペクト比が25~150である、[1]に記載の繊維補強モルタル組成物。
[3]金属繊維の端部がかぎ状である、[1]又は[2]に記載の繊維補強モルタル組成物。
[4]膨張材を更に含む、[1]又は[2]に記載の繊維補強モルタル組成物。
[5][1]又は[2]に記載の繊維補強モルタル組成物と水とを含み、水の含有量が、結合材100質量部に対し、25~45質量部である、繊維補強モルタル。
[6]JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」12.フロー試験に準じて、20℃環境下で測定した0打と15打のフロー値の比率([15打フロー値(mm)]/[0打フロー値(mm)])が1.3~1.8である、[5]に記載の繊維補強モルタル。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ミキサ等の機器へのモルタル残存が少なく、且つ作業性が良好で高い強度発現性を示す繊維補強モルタル組成物及びそのモルタルを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について説明する。
【0011】
本実施形態の繊維補強モルタル組成物は、セメント、カルシウムアルミネート類、石膏類及びポゾラン物質からなる結合材と、金属繊維と、細骨材とを含む。
【0012】
本実施形態に係る結合材は、セメント、カルシウムアルミネート類、石膏類及びポゾラン物質の4成分から構成される。
【0013】
セメントは、種々のものを使用することができ、例えば、普通、早強、超早強、低熱及び中庸熱等の各種ポルトランドセメント、エコセメント、速硬性セメント等が挙げられる。セメントとしては、速硬性及び流動性を両立しやすいという観点から、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメントが好ましい。セメントは、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0014】
セメントの含有量は、結合材100質量部に対し、50~75質量部であることが好ましく、55~70質量部であることがより好ましく、60~65質量部であることが更に好ましい。セメントの含有量が上記範囲内であれば、強度発現性がより一層向上する。
【0015】
カルシウムアルミネート類としては、CaOをC、Al2O3をA、Na2OをN、及びFe2O3をFとして表したとき、C3A、C2A、C12A7、CA、又はCA2等と表示される鉱物組成を有するカルシウムアルミネート、C4AF等と表示されるカルシウムアルミノフェライト、カルシウムアルミネートにハロゲンが固溶又は置換したC3A3・CaF2やC11A7・CaF2等と表示されるカルシウムフルオロアルミネートを含むカルシウムハロアルミネート、C8NA3やC3N2A5等と表示されるカルシウムナトリウムアルミネート、カルシウムリチウムアルミネート、アルミナセメント、並びにC3A3・CaSO4等と表示されるカルシウムサルホアルミネートを総称するものである。このカルシウムアルミネート類は、結晶質のもの、非結晶質のもの、非晶質及び結晶質が混在したもののいずれも使用可能である。カルシウムアルミネート類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。カルシウムアルミネート類の粉末度は、初期強度発現性をより向上させるという観点から、ブレーン比表面積で3000cm2/g以上であることが好ましく、5000cm2/g以上であることがより好ましい。また、カルシウムアルミネート類の粉末度は、ブレーン比表面積で8000cm2/g以下であることが好ましい。
【0016】
カルシウムアルミネート類の含有量は、結合材100質量部に対し、10~35質量部であることが好ましく、12~30質量部であることがより好ましく、14~25質量部であることが更に好ましい。カルシウムアルミネート類の含有量が上記範囲内であれば、速硬性がより優れたものとなりやすい。
【0017】
石膏類としては、例えば、無水石膏、半水石膏、二水石膏等が挙げられる。石膏類としては、強度発現性を更に向上させるという観点から、無水石膏が好ましい。石膏類は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0018】
石膏類の含有量としては、結合材100質量部に対し、無水物換算で7~23質量部であることが好ましく、8~20質量部であることがより好ましく、9~15質量部であることが更に好ましい。石膏類の含有量が上記範囲内であれば、長期の強度発現性がより一層向上する。石膏類の粉末度は、長期の強度発現性をより向上させるという観点から、ブレーン比表面積で4500cm2/g以上であることが好ましく、6000cm2/g以上であることがより好ましい。また、石膏類の粉末度は、ブレーン比表面積で15000cm2/g以下であることが好ましい。
【0019】
ポゾラン物質は、JIS A 6201:2015に記載されている各種フライアッシュ、JIS A 6207:2016に記載されているシリカフューム、スラグ粉末、非晶質アルミノシリケート等が挙げられる。ポゾラン物質は、長期の強度発現性や施工性に一層優れるという観点から、シリカフューム、非晶質アルミノシリケートが好ましい。ポゾラン物質は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0020】
ポゾラン物質の含有量は、結合材100質量部に対し、1~20質量部である。ポゾラン物質の含有量が上記範囲外であると、強度発現性が低下し、モルタルの練り混ぜ性や流動性といった作業性も低下する。作業性及び強度発現性が更に良好になり、機器へのモルタルの残存が一層少なくなるという観点から、ポゾラン物質の含有量は、結合材100質量部に対し、3~15質量部であることが好ましく、5~10質量部であることがより好ましい。ポゾラン物質の粉末度は、長期の強度発現性をより向上させるという観点から、BET比表面積で5m2/g以上であることが好ましく、10m2/g以上であることがより好ましい。また、ポゾラン物質の粉末度は、BET比表面積で30m2/g以下であることが好ましい。
【0021】
金属繊維は、金属製であれば特に限定されず、例えば、鋼繊維、ステンレス繊維、アモルファス金属繊維、及びそれらの表面に化学的・物理的な処理を施したもの等が挙げられる。金属繊維としては、モルタルの混練性及び硬化性状を両立し、機器へのモルタルの残存が一層少なくなるという観点から、鋼繊維が好ましい。金属繊維は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。金属繊維の形状は特に限定されるものではなく、直線状、先端が折れ曲がったかぎ状等が挙げられる。機器へのモルタルの残存が一層少なくなるという観点から、金属繊維の形状はかぎ状であることが好ましい。かぎ状の金属繊維において、折れ曲がり部は先端の片側だけでにあってもよく、両側にあってもよいが、機器へのモルタルの残存がより一層少なくなるという観点から、両側にある方が好ましい。
【0022】
金属繊維の含有量は、結合材100質量部に対し、3~30質量部である。金属繊維の含有量が上記範囲外であると、金属繊維の分散性や流動性といった作業性及び初期強度発現性が低下する。機器へのモルタルの残存が一層少なくなり、またより高い靭性を付与することができるという観点から、金属繊維の含有量は、結合材100質量部に対し、4~25質量部であることが好ましく、5~20質量部であることがより好ましい。
【0023】
金属繊維の全長は、10~50mmであることが好ましく、13~45mmであることがより好ましく、20~40mmであることが更に好ましい。金属繊維の全長が上記範囲内であれば、モルタルの混練性及び作業性が更に向上する。
【0024】
金属繊維のアスペクト比(全長/直径)は25~150であることが好ましく、30~100であることがより好ましく、40~65であることが更に好ましい。アスペクト比が上記範囲内であれば、モルタルの混練性及び作業性が一層向上し、ダレが生じにくくなる。
【0025】
細骨材は特に限定されず、川砂、珪砂、砕砂、寒水石、石灰石砂、スラグ骨材、軽量骨材等が挙げられる。これらの細骨材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0026】
細骨材の含有量は、結合材100質量部に対し、110~330質量部である。細骨材の含有量が上記範囲外であると、モルタルの練り混ぜ性の低下や機器へのモルタルの付着が生じる。機器へのモルタルの残存が一層少なくなるという観点から、細骨材の含有量は、結合材100質量部に対し、150~300質量部であることが好ましく、200~270質量部であることがより好ましい。
【0027】
本実施形態の繊維補強モルタル組成物は膨張材を含んでもよい。繊維補強モルタル組成物が膨張材を含むことで、モルタルの圧縮強度及び寸法変化率が優れたものとなる。膨張材は、コンクリート用膨張材として一般に使用されているJIS適合の膨張材(JIS A 6202:2008)であれば、何れの膨張材でもかまわない。膨張材としては、例えば、遊離生石灰を主成分とする膨張材(生石灰系膨張材)、アウインを主成分とする膨張材(エトリンガイト系膨張材)、遊離生石灰とエトリンガイト生成物質の複合系膨張材が挙げられる。膨張材は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。膨張材はブレーン比表面積が2000~6000cm2/gのものを使用することが好ましい。
【0028】
膨張材の含有量は、結合材100質量部に対し、0.1~5質量部であることが好ましく、0.5~4質量部であることがより好ましく、1~3質量部であることが更に好ましい。膨張材の含有量が上記範囲内であれば、圧縮強度、寸法変化率等がより一層優れたものとなる。
【0029】
本実施形態の繊維補強モルタル組成物は減水剤を含んでもよい。減水剤は、高性能減水剤、高性能AE減水剤、AE減水剤及び流動化剤を含む。このような減水剤としては、JIS A 6204:2011「コンクリート用化学混和剤」に規定される減水剤が挙げられる。減水剤としては、例えば、ポリカルボン酸系減水剤、ナフタレンスルホン酸系減水剤、リグニンスルホン酸系減水剤、メラミン系減水剤が挙げられる。これらの減水剤の中でも、少量の添加量であっても流動性保持時間を確保しやすいという観点から、ポリカルボン酸系減水剤が好ましい。減水剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0030】
減水剤の含有量は、結合材100質量部に対し、固形分換算で0.1~5質量部であることが好ましく、0.2~3質量部であることがより好ましく、0.3~1質量部であることが更に好ましい。減水剤の含有量が上記範囲内であれば、可使時間を確保しやすく、流動性がより一層向上する。
【0031】
本実施形態の繊維補強モルタル組成物は凝結遅延剤を含んでもよい。繊維補強モルタル組成物が凝結遅延剤を含むことで、夏場等ポリマーセメントモルタルの練り上り温度が高くなる場合においても、可使時間を確保しやすい。凝結遅延剤としては、例えば、クエン酸、グルコン酸、リンゴ酸、酒石酸等の有機酸又はその塩;ホウ酸、ホウ酸ナトリウム等のホウ酸塩、リン酸塩、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩等の無機塩;糖類が挙げられる。これらの中でも、クエン酸、クエン酸塩、酒石酸、酒石酸塩、アルカリ金属炭酸塩が好ましい。凝結遅延剤は、粉体であってもよく、液状体(例えば、水溶液、エマルジョン、懸濁液の形態)であってもよい。凝結遅延剤は、一種を単独で用いてもよく、二種以上を併せて用いてもよい。
【0032】
凝結遅延剤の含有量は、結合材100質量部に対し、固形分換算で0.1~7.5質量部であることが好ましく、0.3~5質量部であることがより好ましく、0.5~3.5質量部であることが最も好ましい。凝結遅延剤の含有量が上記範囲内であれば、可使時間を更に確保しやすく、初期強度発現性が低下しにくい。
【0033】
本実施形態の繊維補強モルタル組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲で各種混和材料を配合してもよい。混和材料としては、例えば、発泡剤、消泡剤、増粘剤、セメント用ポリマー、防水材、防錆剤、収縮低減剤、保水剤、顔料、繊維、撥水剤、白華防止剤、急結剤(材)、急硬剤(材)、石粉、火山灰、空気連行剤、表面硬化剤が挙げられる。
【0034】
本実施形態の繊維補強モルタル組成物を製造する方法は、特に限定されず、例えば、V型混合機や可傾式コンクリートミキサー等の重力式ミキサー、ヘンシェル式ミキサー、噴射型ミキサー、リボンミキサー、パドルミキサー等のミキサーにより上記成分を混合することで製造することができる。
【0035】
本実施形態の繊維補強モルタル組成物は、水と混合して繊維補強モルタルとして調製することができ、その水の含有量は用途に応じて適宜調整すればよい。水の含有量は、結合材100質量部に対して25~45質量部であることが好ましく、28~40質量部であることがより好ましく、30~35質量部であることが更に好ましい。水の含有量が上記範囲内であれば、金属繊維の混練性、並びに、初期及び長期の強度発現性がより一層優れたものとなる。
【0036】
本実施形態の繊維補強モルタルは、JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」12.フロー試験に準じて、20℃環境下で測定した0打と15打のフロー値の比率([15打フロー値(mm)]/[0打フロー値(mm)])が1.3~1.8であることが好ましく、1.32~1.6であることがより好ましく、1.35~1.5であることが更に好ましい。モルタルのフロー値の比率が上記範囲内であれば、モルタルの伸びがよく作業性に一層優れるものとなる。
【0037】
本実施形態の繊維補強モルタルの調製は、通常のモルタル組成物と同様の混練器具を使用することができ、特に限定されるものではない。混練器具としては、例えば、モルタルミキサー、ハンドミキサー、傾胴ミキサー、二軸ミキサー、パン型ミキサー等が挙げられる。
【0038】
本実施形態の繊維補強モルタル組成物及び繊維補強モルタルは、高強度のモルタルでありながら、金属繊維の分散性に優れるものである。したがって、高い強度発現性が求められる各種構造物や現場の補修・補強に好適に用いることができる。その施工方法は特に限定されず、型枠を作り充填する方法、コテ塗り、振動機を用いて敷き均す方法等が選択できる。
【実施例0039】
以下、本発明の実施例に基づいて説明するが、本発明がこれらに限定されるものではない。
【0040】
[使用材料]
・セメント(C):早強セメント 比表面積4500cm2/g
・カルシウムアルミネート(CA):CaO/Al2O3=1.4、ガラス化率:40%、ブレーン比表面積5000cm2/g
・石膏(CS):ブレーン比表面積7000cm2/g
・ポゾラン物質(SF):シリカフューム BET比表面積:15m2/g
・細骨材:珪砂(S)(粒度調整済み)
・繊維:鋼繊維(F1):繊維長30mm、アスペクト比45、両端部かぎ状
ポリプロピレン繊維(F2):繊維長12mm、、アスペクト比280、
鋼繊維(F3):繊維長13mm、アスペクト比62、直線形状
・膨張材:生石灰系膨張材、比表面積3200cm2/g
・減水剤:ポリカルボン酸系高性能減水剤
・遅延剤:クエン酸塩
【0041】
[繊維補強モルタル組成物の配合設計]
セメント、カルシウムアルミネート類、石膏類及びポゾラン物質からなる結合材を表1に示す質量部の割合とし、結合材100質量部に対して、表1に示す含有量及び種類の金属繊維、細骨材、膨張材2質量部、減水剤0.5質量部、凝結遅延剤0.6質量部として配合設計した。
【0042】
[モルタルの作製]
20℃環境下において結合材100質量部に対して、水32質量部を添加し、表1で配合設計したモルタル組成物の各材料(繊維以外)を添加し、パン型強制練りミキサで90秒混練して、その後、繊維を添加し60秒混錬しモルタルを約25L作製した。
【0043】
【0044】
[評価方法]
各項目については、以下の方法で評価した。評価結果を表2に示す。
1)フレッシュ性状(コンシステンシー)
JIS R 5201:2015「セメントの物理試験方法」12.フロー試験に準じて、20℃環境下でモルタルの引抜き(0打)及び15打フロー値を測定し、これをコンシステンシーとして評価した。
2)圧縮強度
JIS A 1108:2018「コンクリートの圧縮強度試験方法」に準じて、材齢4時間及び28日における圧縮強度を測定した。供試体の寸法は、直径100mm、高さ200mmとした。材齢28日の供試体は翌日に脱型した後、材齢日まで水中で養生した。養生は常に20℃の恒温槽内で行った。
3)排出ロス率
モルタルミキサで作製したモルタルを掻き落とし等せずに容器に排出し、その重量を測定し、投入した材料重量に対する重量割合によりモルタル排出率を算出した。算出したモルタル排出率を100%より差し引くことで排出ロス率を算出した。排出ロス率が8質量%以下であれば良好とし、8質量%を超える場合は不良と判断した。
【0045】
【0046】
実施例の繊維補強モルタルは、排出ロスが少なく、且つ0打フローと15打フローの比率がよいためモルタルの伸びがよく作業性に優れ、高い圧縮強度を示した。一方、練り混ぜが困難だったNo.4,8,14のモルタルを始め、比較例の繊維補強モルタルは作業性、圧縮強度、モルタルの排出ロス等の性能が優れなかった。