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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042178
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】口腔用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/44 20060101AFI20240321BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20240321BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240321BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
A61K8/44
A61K8/49
A61K8/34
A61K8/73
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146709
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】弁理士法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 典敬
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB242
4C083AB472
4C083AC131
4C083AC132
4C083AC621
4C083AC622
4C083AC792
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD042
4C083AD271
4C083AD272
4C083AD281
4C083AD282
4C083AD351
4C083AD352
4C083AD641
4C083AD642
4C083CC41
4C083DD22
4C083EE07
4C083EE33
(57)【要約】
【課題】トラネキサム酸やε-アミノカプロン酸、ニコチン酸、又はアスコルビン酸のような水溶性有機酸を口腔内粘膜へ効果的に吸着させることのできる口腔用組成物に関する。
【解決手段】次の成分(A)、(B)及び(C1):
(A)トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、ニコチン酸、及びアスコルビン酸から選ばれる1種又は2種以上の水溶性有機酸
(B)エリスリトール 20質量%以上55質量%以下
(C1)キサンタンガム、プルラン、及びヒドロキシエチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の粘結剤
を含有し、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びカラギーナンから選ばれる1種又は2種の粘結剤(C2)の含有量が0.7質量%以下であるか、或いは成分(C2)を含有せず、成分(C1)及び成分(C2)の合計含有量が、0.1質量%以上1.5質量%以下である口腔用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C1):
(A)トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、ニコチン酸、及びアスコルビン酸から選ばれる1種又は2種以上の水溶性有機酸
(B)エリスリトール 20質量%以上55質量%以下
(C1)キサンタンガム、プルラン、及びヒドロキシエチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の粘結剤
を含有し、
カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びカラギーナンから選ばれる1種又は2種の粘結剤(C2)の含有量が0.7質量%以下であるか、或いは成分(C2)を含有せず、
成分(C1)及び成分(C2)の合計含有量が、0.1質量%以上1.5質量%以下である口腔用組成物。
【請求項2】
さらに、ソルビトール(D)を5質量%以上35質量%以下含有する請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
成分(A)がトラネキサム酸を含む場合、口腔用組成物中におけるトラネキサム酸の含有量が、0.01質量%以上2.5質量%以下である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
成分(A)がε-アミノカプロン酸を含む場合、口腔用組成物中におけるε-アミノカプロン酸の含有量が、0.01質量%以上2質量%以下である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項5】
成分(A)がニコチン酸を含む場合、口腔用組成物中におけるニコチン酸の含有量が0.2質量%以上5質量%以下である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項6】
成分(A)がアスコルビン酸を含む場合、口腔用組成物中におけるアスコルビン酸の含有量が0.01質量%以上3質量%以下である請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
抗炎症性作用又は抗プラスミン作用等をもたらすことで知られるトラネキサム酸やε-アミノカプロン酸は、これら所望の作用を発揮させるべく、従来より種々の口腔用組成物に用いられている。
例えば、特許文献1には、トラネキサム酸、アルデヒド基を有する化合物等、及び特定のポリアクリル酸を特定の質量比で含有する口腔用組成物が開示されている。また、特許文献2には、トラネキサム酸又はε-アミノカプロン酸、銅イオン又は亜鉛イオン、及びモノフルオロリン酸ナトリウムを特定の含有量とする口腔用組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-98678号公報
【特許文献2】国際公開第2019/216108号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1~2に記載の口腔用組成物であっても、口腔内に適用した際、これらトラネキサム酸やε-アミノカプロン酸のような有効成分を口腔内粘膜へ充分に吸着させることができず、さらなる改善を要する状況にある。
【0005】
したがって、本発明は、トラネキサム酸やε-アミノカプロン酸、ニコチン酸、又はアスコルビン酸のような水溶性有機酸を口腔内粘膜へ効果的に吸着させることのできる口腔用組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、ニコチン酸、及びアスコルビン酸から選ばれる1種又は2種以上の水溶性有機酸を特定量のエリスリトールとともに含有しつつ、特定の粘結剤の含有を特定の条件を満たすよう制御することにより、トラネキサム酸等の水溶性有機酸の口腔内粘膜への吸着性を顕著に高めることのできる口腔用組成物を見出した。
【0007】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C1):
(A)トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、ニコチン酸、及びアスコルビン酸から選ばれる1種又は2種以上の水溶性有機酸
(B)エリスリトール 20質量%以上55質量%以下
(C1)キサンタンガム、プルラン、及びヒドロキシエチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の粘結剤
を含有し、
カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びカラギーナンから選ばれる1種又は2種の粘結剤(C2)の含有量が0.7質量%以下であるか、或いは成分(C2)を含有せず、
成分(C1)及び成分(C2)の合計含有量が、0.1質量%以上1.5質量%以下である口腔用組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の口腔用組成物によれば、トラネキサム酸やε-アミノカプロン酸、ニコチン酸、又はアスコルビン酸のような水溶性有機酸を組成物中に不要に留まらせることなく、効果的に口腔内粘膜に吸着させることができ、かかる水溶性有機酸による所望の効果を充分に享受することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の口腔用組成物は、成分(A)として、トラネキサム酸、ε-アミノカプロン酸、ニコチン酸、及びアスコルビン酸から選ばれる1種又は2種以上の水溶性有機酸を含有する。かかる成分(A)は、口腔内へ適用されることにより、抗炎症性作用や抗プラスミン作用等の作用を発揮する成分である。
なお、水溶性有機酸とは、25℃の水100gに対する溶解度が1.0g以上である水溶性の有機酸を意味する。
【0010】
しかしながら、これらの有機酸はいずれも水溶性であるために、口腔への適用の際、他の含有成分との相互作用により組成物中に包埋されたままの状態となって、その後のすすぎ等により他の含有成分とともに口腔外に吐出されてしまい、口腔内粘膜に留まりにくい傾向にあると推定される。これらの成分は、口腔内粘膜に留まらせて良好に吸着させないと、所望の作用を充分に発揮することができないおそれが高まる。
ここで本発明者は、成分(A)とともに、後述する特定量である成分(B)のエリスリトール及び成分(C1)の特定の粘結剤を含有することにより、口腔への適用の際、予想外にも、組成物中からの成分(A)の放出を促進する効果を発揮して、成分(A)が他の含有成分とともに口腔外へ吐出されてしまうのを抑制し、成分(A)の口腔内粘膜への吸着性を効果的に高めることができることを見出し、本発明を想到するに至ったものである。
【0011】
成分(A)の含有量は、かかる成分(A)の種類によって、もたらし得る有効成分としての作用が異なることから、その種類に応じて変動し得る。
例えば、成分(A)がトラネキサム酸を含む場合、トラネキサム酸の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上であり、さらに好ましくは0.03質量%以上であり、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは1.7質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。また、成分(A)がトラネキサム酸を含む場合、トラネキサム酸の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.01質量%以上2.5質量%以下であり、より好ましくは0.02~1.7質量%であり、さらに好ましくは0.03~1質量%である。
【0012】
成分(A)がε-アミノカプロン酸を含む場合、ε-アミノカプロン酸の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.02質量%以上であり、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは2質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは1質量%以下である。また、成分(A)がε-アミノカプロン酸を含む場合、ε-アミノカプロン酸の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.01質量%以上2質量%以下であり、より好ましくは0.02~1.5質量%であり、さらに好ましくは0.05~1質量%である。
【0013】
成分(A)がニコチン酸を含む場合、ニコチン酸の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.2質量%以上であり、より好ましくは0.35質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは5質量%以下であり、より好ましくは3質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以下である。また、成分(A)がニコチン酸を含む場合、ニコチン酸の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.2質量%以上5質量%以下であり、より好ましくは0.35~3質量%であり、さらに好ましくは0.5~2質量%である。
【0014】
成分(A)がアスコルビン酸を含む場合、アスコルビン酸の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは3質量%以下であり、より好ましくは2.5質量%以下であり、さらに好ましくは1.5質量%以下である。また、成分(A)がアスコルビン酸を含む場合、アスコルビン酸の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.01質量%以上3質量%以下であり、より好ましくは0.05~2.5質量%であり、さらに好ましくは0.5~1.5質量%である。
【0015】
本発明の口腔用組成物は、成分(B)として、エリスリトールを20質量%以上55質量%以下含有する。かかる成分(B)は、組成物中において溶解又は分散した状態で存在し、本発明の口腔用組成物を口腔へ適用の際、成分(A)が組成物中から放出されるのを促進して、かかる成分(A)の口腔内粘膜への吸着性を有効に高めることに寄与する。
【0016】
エリスリトールは、異性体として、L―エリスリトール、D-エリスリトール、meso-エリスリトールが存在するが、本発明では、成分(B)として、これらいずれを用いてもよい。
【0017】
成分(B)の含有量は、成分(A)の口腔内粘膜への吸着性を有効に高める観点から、本発明の口腔用組成物中に、20質量%以上であって、好ましくは25質量%以上であり、より好ましくは34質量%以上であり、さらに好ましくは37質量%以上である。また、成分(B)の含有量は、組成物中における各成分の均一な溶解性又は分散性を確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、55質量%以下であって、好ましくは50質量%以下であり、より好ましくは48質量%以下であり、さらに好ましくは45質量%以下である。そして、成分(B)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、20質量%以上55質量%以下であって、好ましくは25~50質量%であり、より好ましくは34質量%~48質量%であり、さらに好ましくは37~45質量%である。
【0018】
成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((B)/(A))は、成分(A)の口腔内粘膜への吸着性を有効に高める観点から、好ましくは10以上であり、より好ましくは20以上であり、さらに好ましくは60以上であり、またさらに好ましくは300以上であり、好ましくは5000以下であり、より好ましくは3000以下であり、さらに好ましくは1500以下であり、またさらに好ましくは1000以下である。そして、成分(A)の含有量と成分(B)の含有量との質量比((B)/(A))は、好ましくは10以上5000以下であり、より好ましくは20~3000であり、さらに好ましくは60~1500であり、またさらに好ましくは300~1000である。
【0019】
本発明の口腔用組成物は、成分(C1)として、キサンタンガム、プルラン、及びヒドロキシエチルセルロースナトリウムから選ばれる1種又は2種以上の粘結剤を含有する。かかる成分(C1)を含有することにより、組成物中における各成分の均一な溶解性又は分散性を確保しつつ、本発明の口腔用組成物を口腔へ適用の際、成分(B)による組成物中からの成分(A)の放出促進効果を増強させることができる。
かかる成分(C1)としては、成分(B)による組成物中からの成分(A)の放出促進効果を有効に増強する観点から、キサンタンガムがより好ましい。
【0020】
成分(C1)の含有量は、成分(A)の口腔内粘膜への吸着性を有効に高める観点から、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.02質量%以上であり、より好ましくは0.08質量%以上であり、さらに好ましくは0.3質量%以上であり、好ましくは2.0質量%以下であり、より好ましくは1.5質量%以下であり、さらに好ましくは0.8質量%以下である。そして、成分(C1)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.02~2.0質量%であり、より好ましくは0.08~1.5質量%であり、さらに好ましくは0.3~0.8質量%である。
【0021】
本発明の口腔用組成物は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及びカラギーナンから選ばれる1種又は2種の粘結剤(C2)の含有量が0.7質量%以下であるか、或いは成分(C2)を含有しない。本発明の口腔用組成物中に、かかる成分(C2)が過剰に存在すると、成分(A)の組成物中からの放出を阻害して、成分(A)の口腔内粘膜への吸着性が損なわれるおそれもあるとともに、組成物中における各成分の溶解性又は分散性を低下させるおそれがあるため、その含有を制限するものである。
【0022】
成分(C2)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、0.7質量%以下であって、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.4質量%以下であり、さらに好ましくは0.3質量%以下であり、またさらに好ましくは0.1質量%以下であり、よりさらに好ましくは0.05質量%以下であり、またさらに好ましくは0.01質量%以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、成分(C2)を含有しない。
【0023】
本発明の口腔用組成物が成分(C2)を含有する場合、成分(A)の含有量と成分(C2)の含有量との質量比((C2)/(A))は、成分(A)の口腔内粘膜への吸着性を有効に高める観点から、好ましくは40以下であり、より好ましくは20以下であり、さらに好ましくは10以下である。
【0024】
成分(C1)及び成分(C2)の合計含有量は、組成物の安定性を維持し、成分(C1)による成分(A)の口腔内粘膜への吸着性の向上を有効に図りつつ、成分(C2)による成分(A)の口腔内粘膜への吸着性の低下を阻止する観点から、本発明の口腔用組成物中に、0.1質量%以上であって、好ましくは0.15質量%以上であり、より好ましくは0.18質量%以上であり、1.5質量%以下であって、好ましくは1.2質量%以下であり、より好ましくは0.7質量%以下である。そして、成分(C1)及び成分(C2)の合計含有量は、本発明の口腔用組成物中に、0.1質量%以上1.5質量%以下であって、好ましくは0.15~1.2質量%であり、より好ましくは0.18~0.7質量%である。
【0025】
本発明の口腔用組成物は、成分(C1)及び成分(C2)以外の粘結剤の含有を制限されるのが好ましい。かかる成分(C1)及び成分(C2)以外の粘結剤としては、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、メチルセルロース、ペクチン、又は寒天等が挙げられる。
成分(C1)及び成分(C2)以外の粘結剤の含有量は、成分(A)の口腔内粘膜への高い吸着性を確保する観点から、本発明の口腔用組成物中に、合計で、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.1質量%以下であり、さらに好ましくは0.05質量%以下であり、またさらに好ましくは0.01質量%以下であり、或いは本発明の口腔用組成物は、成分(C1)及び成分(C2)以外の粘結剤を含有しないのが好ましい。
【0026】
本発明の口腔用組成物は、アニオン界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤から選ばれる1種又は2種以上の界面活性剤を含有することができる。
アニオン界面活性剤としては、オレイン酸塩、ラウリン酸塩等の脂肪酸塩;ラウリル硫酸塩、ミリスチル硫酸塩、パルミチル硫酸塩、ステアリル硫酸塩、オクチル硫酸塩、カプリル硫酸塩等のアルキル硫酸又はその塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩等のアルキルスルホン酸塩;アルキルリン酸塩等のアルキルリン酸塩;高級脂肪酸スルホン化モノグリセリド塩、イセチオン酸の脂肪酸エステル塩;ポリオキシエチレンモノアルキルリン酸塩;N-アシルアミノ酸、N-アシルタウリン、及びこれらの塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0027】
ノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;ショ糖脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;モノステアリン酸グリセリド等のグリセリン脂肪酸エステル;アルキルグルコシド;モノステアリン酸デカグリセリド、モノミリスチン酸デカグリセリド等のポリグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンモノアルキル(又はアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド等の脂肪酸アルカノールアミド;並びにポリエチレングリコール脂肪酸エステルから選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0028】
両性界面活性剤としては、アルキルアミンオキシド;ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン;2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチル-N-イミダゾリウムベタイン等のイミダゾリニウムベタイン;ラウリルスルホベタインやラウリルヒドロキシスルホベタイン等のアルキルスルホベタイン;ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン等のヤシ油脂肪酸アミドアルキルベタイン;N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム等の長鎖アルキルイミダゾリンベタイン塩から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
【0029】
界面活性剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.3質量%以上であり、より好ましくは0.5質量%以上であり、さらに好ましくは0.7質量%以上であり、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.8質量%以下である。そして、界面活性剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.3~2.5質量%であり、より好ましくは0.5~2.0質量%であり、さらに好ましくは0.7~1.8質量%である。
【0030】
なお、界面活性剤として、アニオン界面活性剤を含有する場合、成分(A)の口腔内粘膜への吸着性を充分に高める観点から、その含有量の決定には、さらなる考慮を要する。具体的には、アニオン界面活性剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは0.3質量%以上であり、さらに好ましくは0.5質量%以上であり、好ましくは1.5質量%以下であり、より好ましくは1.3質量%以下であり、さらに好ましくは1.1質量%以下である。そして、アニオン界面活性剤の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは0.1~1.5質量%であり、より好ましくは0.3~1.3質量%であり、さらに好ましくは0.5~1.1質量%である。
【0031】
本発明の口腔用組成物は、組成物中における各成分の均一な溶解性又は分散性を確保し、本発明の口腔用組成物の口腔へ適用の際における成分(A)の良好な放出促進効果をも確保する観点から、さらにソルビトール(D)を含有することができる。
成分(D)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは35質量%以下であり、より好ましくは30質量%以下である。そして、成分(D)の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以上35質量%以下であり、より好ましくは10~30質量%である。
【0032】
本発明の口腔用組成物は、水を含有する。本発明における水とは、口腔用組成物に配合した精製水等だけでなく、配合した各成分に含まれる水分をも含む、口腔用組成物中に含まれる全水分を意味する。かかる水を含有することにより、含有する上記各成分を良好に溶解又は分散させて、所望の効果を充分に発揮させることができる。
【0033】
具体的には、水の含有量は、本発明の口腔用組成物中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは60質量%以下であり、より好ましくは55質量%以下である。そして、水の含有量は、好ましくは5~60質量%であり、より好ましくは10~55質量%である。
【0034】
本発明の口腔用組成物における水分量は、精製水等の配合した水分量、及び上記成分(A)等の配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業社製)を用いることができる。この装置では、口腔用組成物を5gとり、無水メタノール25gに懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して全水分量(W)を測定することができる。
【0035】
本発明の口腔用組成物は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記成分のほか、例えば、殺菌剤;吸油量が50~150mL/100gの研磨性シリカ等の研磨剤;プロピレングリコールやポリエチレングリコール等の湿潤剤;保存剤;成分(A)以外の有効成分や薬効成分;香料;色素等を適宜含有させることができる。
【0036】
本発明の口腔用組成物の25℃におけるpHは、成分(A)の口腔内粘膜への良好な吸着性を確保する観点から、好ましくは6以上であり、より好ましくは6.3以上であり、さらに好ましくは6.5以上であり、好ましくは10以下であり、より好ましくは9.8以下であり、さらに好ましくは9.6以下であり、またさらに好ましくは9以下であり、よりさらに好ましくは8.5以下であり、またさらに好ましくは8以下であり、よりさらに好ましくは7.5以下である。そして、本発明の口腔用組成物の25℃におけるpHは、好ましくは6以上10以下であり、より好ましくは6.3~9.8であり、さらに好ましくは6.5~9.6であり、またさらに好ましくは6.5~9であり、よりさらに好ましくは6.5~8.5であり、またさらに好ましくは6.5~8であり、よりさらに好ましくは6.5~7.5である。
【実施例0037】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0038】
[実施例1~10、比較例1~9]
表1~3に示す処方にしたがい、常法により所定の成分を混合して各口腔用組成物を調製した。
次いで、得られた口腔用組成物を用い、下記方法にしたがって各測定及び評価を行った。なお、得られた各口腔用組成物のpHは、いずれも6.5~7.5の範囲であった。
結果を表1~3に示す。
【0039】
《成分(A)の寒天への吸着量及び吸着率》
1.5質量%濃度の寒天水溶液を24ウェルプレート上に1mL添加し、常温にて2時間放置して固化させ、固化した寒天表面を口腔内粘膜とみなした。次に、得られた口腔用組成物を寒天表面に1g添加し、3分間静置した後、寒天表面を水で3回洗浄した。
次いで、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用い、下記測定条件にしたがって、洗浄後の寒天表面に吸着した成分(A)の量(吸着量:mg/mL)を測定した。
また、各口腔用組成物における成分(A)の含有量を100%基準とし、測定した成分(A)の吸着量(mg/mL)を元に、寒天表面への成分(A)の吸着率(%)を算出した。かかる値が大きいほど、口腔内粘膜への成分(A)の吸着性が高いことを示す。
【0040】
・HPLC測定条件
装置:LC-2030C 3D(島津製作所社製)
《成分(A)がトラネキサム酸又はε-アミノカプロン酸である場合》
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:220nm)
カラム:TSKgel ODS-100V
カラム温度:25℃
移動相:無水リン酸二水素ナトリウム11.0gを水500mLに溶解し、トリエチルアミン5mL及びラウリル硫酸ナトリウム1.4gを加えた。次いで、リン酸によりpH2.5に調整した後、水を加えて600mLとし、さらにメタノール400mLを加えて移動相とした。
流量:0.6mL/分
【0041】
《成分(A)がニコチン酸である場合》
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:230nm)
カラム:Inertsil ODS-3
カラム温度:40℃
移動相:A)CHOH,B)1g CHCOOH 5mM IPCC-06,A/B=7/93 v/v
流量:1.0mL/分
【0042】
《成分(A)がアスコルビン酸である場合》
検出器:紫外吸光光度計(測定波長:270nm)
カラム:Inertsil NH2
カラム温度:40℃
移動相:A)CHCN,B)CHOH,C)0.01M りん酸二水素ナトリウム水溶液,D)0.03%ホモシステイン,A/B/C/D=600/30/100/30v/v/v/v
流量:1.0mL/分
【0043】
《ヒト試験による成分(A)の吸着性の評価》
40~50代の男性5名を被験者とし、ダブルブラインドクロスオーバー試験を実施して解析した。
まず、初期値として、歯磨剤の使用前におけるGingival Index(GI)を測定した。次いで、実施例1又は比較例1の歯磨剤を2週間使用後、再度GIを測定した。これらの値を元に、歯磨剤の使用前後におけるGIの変化を解析し、その変化量(GI変化量)を求めて成分(A)の吸着性の評価の指標とした。
なお、GI変化量の値は、被験者ごとに、歯磨剤の使用前のGI(初期値)から歯磨剤の使用後のGIの値を減じた値を求め、全被験者の平均値とした。かかる値が大きいほど、成分(A)の吸着性に優れることを意味する。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】