(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004218
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】水洗大便器
(51)【国際特許分類】
E03D 11/02 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
E03D11/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103759
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【弁理士】
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100224672
【弁理士】
【氏名又は名称】深田 孝徳
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 泰三
(72)【発明者】
【氏名】桃枝 理彰
(72)【発明者】
【氏名】吉村 英朗
【テーマコード(参考)】
2D039
【Fターム(参考)】
2D039AA02
2D039AC04
2D039AD01
2D039BB06
2D039DB05
2D039FC10
2D039FD01
(57)【要約】
【課題】本発明は、初めて便器洗浄を行う場合において、エアーハンマー現象によってリム吐水口から噴出された洗浄水が便器外に飛散することを防止することができる水洗大便器を提供する。
【解決手段】本発明の水洗大便器は、主給水路と、この主給水路の下流側で分岐するリム側給水路及びタンク側給水路と、主給水路からリム側給水路又は/及びタンク側給水路へ洗浄水を供給させる駆動弁と、洗浄開始信号に基づいて駆動弁を制御する制御部と、を有し、制御部は、洗浄開始信号を受信した場合に、駆動弁を制御することによって、リム側給水路へ洗浄水を供給させる第1洗浄モードと、タンク側給水路へ洗浄水を供給させた後にリム側給水路へ洗浄水を供給させる第2洗浄モードを備え、制御部は、貯水タンク内の水位に基づいて、第1洗浄モード又は第2洗浄モードに切り替えることを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の洗浄モードに切り替え可能な水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部の上縁に位置し内周面を有するリム部と、このリム部の内周面に沿って洗浄水を吐水するリム吐水口と、上記ボウル部の底部から延びて汚物を排出する排水トラップ部と、を備えた便器本体と、
給水源からこの便器本体内へ洗浄水を供給する主給水路と、この主給水路から分岐して上記リム吐水口へ洗浄水を導くリム側給水路と、上記主給水路から分岐して下流に設けられた貯水タンクへ洗浄水を導くタンク側給水路と、
上記主給水路から上記リム側給水路又は/及び上記タンク側給水路へ洗浄水を供給させる駆動弁と、
洗浄開始信号に基づいて上記駆動弁を制御する制御部と、を有し、
上記制御部は、上記洗浄開始信号を受信した場合に、上記駆動弁を制御することによって、上記リム側給水路へ洗浄水を供給させる第1洗浄モードと、上記タンク側給水路へ洗浄水を供給させた後に上記リム側給水路へ洗浄水を供給させる第2洗浄モードを備え、
上記制御部は、上記貯水タンク内の水位に基づいて、上記第1洗浄モード又は上記第2洗浄モードに切り替えることを特徴とする水洗大便器。
【請求項2】
上記駆動弁は、上記洗浄開始信号を受信する前の待機状態において、上記リム側給水路へ洗浄水を供給するように設定されている、請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項3】
上記制御部は、上記第2洗浄モードにおいて、上記貯水タンク内の水位が所定水位に到達した後に、上記リム側給水路へ洗浄水を供給するように上記駆動弁を制御する、請求項1又は2に記載の水洗大便器。
【請求項4】
上記制御部は、上記貯水タンク内の水位、及び、今回の洗浄回数又は前回の洗浄からの使用時間間隔に基づいて、上記第1洗浄モード又は上記第2洗浄モードに切り替え、
上記制御部は、上記今回の洗浄回数が所定回数よりも多い場合又は上記使用時間間隔が所定時間よりも短い場合、上記第2洗浄モードには切り替えないように制御する、請求項1に記載の水洗大便器。
【請求項5】
上記所定回数は、1回目である、請求項4に記載の水洗大便器。
【請求項6】
上記制御部は、上記水洗大便器への電力の供給又は洗浄水の供給が停止又は減少された場合、過去の洗浄回数をリセットする、請求項4又は5に記載の水洗大便器。
【請求項7】
複数の洗浄モードに切り替え可能な水洗大便器であって、
汚物を受けるボウル部と、このボウル部の上縁に位置し内周面を有するリム部と、このリム部の内周面に沿って洗浄水を吐水するリム吐水口と、上記ボウル部の底部から延びて汚物を排出する排水トラップ部と、上記ボウル部の底部に位置し上記排水トラップ部の入口部に向かって洗浄水を吐水するジェット吐水部と、を備えた便器本体と、
給水源からこの便器本体内へ洗浄水を供給する主給水路と、この主給水路から分岐して上記リム吐水口へ洗浄水を導くリム側給水路と、上記主給水路から分岐して上記ジェット吐水部へ洗浄水を導くジェット側給水路と、
上記主給水路から上記リム側給水路又は/及び上記ジェット側給水路へ洗浄水を供給させる駆動弁と、
洗浄開始信号に基づいて上記駆動弁を制御する制御部と、を有し、
上記制御部は、上記洗浄開始信号を受信した場合に、上記駆動弁を制御することによって、上記リム側給水路へ洗浄水を供給させる第1洗浄モードと、上記ジェット側給水路へ洗浄水を供給させた後に上記リム側給水路へ洗浄水を供給させる第2洗浄モードとを備え、
上記制御部は、今回の洗浄回数又は前回の洗浄からの使用時間間隔に基づいて、上記第1洗浄モード又は上記第2洗浄モードに切り替えることを特徴とする水洗大便器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗大便器に係り、特に、複数の洗浄モードに切り替え可能な水洗大便器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、特許文献1に示されているように、給水路切替弁を切り替えることによって、主給水路からの洗浄水をリム側給水路又はタンク側給水路(ジェット側給水路)へ供給し、リム吐水口又はジェット吐水口から吐水して便器洗浄を行う水洗大便器が知られている。
【0003】
この特許文献1の便器では、主給水路には、上流側から電磁開閉弁、給水路切替弁が設けられ、給水路切替弁の下流にリム側給水路又はタンク側給水路が接続されている。電磁開閉弁が開弁すると給水源から便器へ洗浄水が供給され、この洗浄水は、給水路切替弁によりリム側給水路又はタンク側給水路へ供給される。また、特許文献1の便器では、便器洗浄の開始時に、一瞬だけ、給水路切替弁をタンク側全開にしてタンク側給水路へ洗浄水を供給し、その後に給水路切替弁をリム側全開にしてリム側給水路へ洗浄水を供給している。これにより、便器洗浄の開始時に、主給水路に存在する空気を貯水タンク内に排出してからリム吐水して、リム吐水時に生じる異音や水はねを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、施工時やメンテナンス後において便器洗浄を行う場合(試運転の場合)には、電磁開閉弁よりも下流側の主給水路だけでなく電磁開閉弁よりも上流側の主給水路(給水ホース)にも空気が存在しており、通常の便器洗浄時よりも多くの空気が主給水路内に存在している。この状態において、上述した特許文献1の便器において試運転を行うと、主給水路内に存在する空気が圧縮されて一気にリム吐水口から噴出される、いわゆるエアーハンマー現象が発生する可能性がある。このエアーハンマー現象が発生すると、リム吐水口から噴出された洗浄水が便器外に飛散する恐れがある。
【0006】
そこで、本発明は、上述した従来の問題点を解決するためになされたものであり、施工時やメンテナンス後において便器洗浄を行う場合において、エアーハンマー現象によってリム吐水口から噴出された洗浄水が便器外に飛散することを防止することができる水洗大便器を提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した目的を達成するために、本発明は、複数の洗浄モードに切り替え可能な水洗大便器であって、汚物を受けるボウル部と、このボウル部の上縁に位置し内周面を有するリム部と、このリム部の内周面に沿って洗浄水を吐水するリム吐水口と、ボウル部の底部から延びて汚物を排出する排水トラップ部と、を備えた便器本体と、給水源からこの便器本体内へ洗浄水を供給する主給水路と、この主給水路から分岐してリム吐水口へ洗浄水を導くリム側給水路と、主給水路から分岐して下流に設けられた貯水タンクへ洗浄水を導くタンク側給水路と、主給水路からリム側給水路又は/及びタンク側給水路へ洗浄水を供給させる駆動弁と、洗浄開始信号に基づいて駆動弁を制御する制御部と、を有し、制御部は、洗浄開始信号を受信した場合に、駆動弁を制御することによって、リム側給水路へ洗浄水を供給させる第1洗浄モードと、タンク側給水路へ洗浄水を供給させた後にリム側給水路へ洗浄水を供給させる第2洗浄モードを備え、制御部は、貯水タンク内の水位に基づいて、第1洗浄モード又は第2洗浄モードに切り替えることを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、リム側給水路へ洗浄水を供給させる第1洗浄モードと、タンク側給水路へ洗浄水を供給させた後にリム側給水路へ洗浄水を供給させる第2洗浄モードを備え、制御部は、貯水タンク内の水位に基づいて、第1洗浄モード又は第2洗浄モードに切り替えるため、例えば貯水タンクが空であり、便器洗浄を行う場合は、自動で第2洗浄モードに切り替えられ、タンク側給水路へ洗浄水を供給した後にリム側給水路へ洗浄水を供給する。これにより、主給水路に存在する空気を貯水タンク内へ排出することができる。よって、便器洗浄を行う場合において、エアーハンマー現象によってリム吐水口から噴出された洗浄水が便器外に飛散することを防止することができる。
【0009】
本発明において、好ましくは、駆動弁は、洗浄開始信号を受信する前の待機状態において、リム側給水路へ洗浄水を供給するように設定されている。
このように構成された本発明においては、例えば停電時や駆動弁が故障した時に、手動で電磁開閉弁等を開くことによって便器洗浄を行うことができる。また、洗浄水をリム吐水口から排出させることができるので、オーバーフローして漏水するのを防止することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、制御部は、第2洗浄モードにおいて、貯水タンク内の水位が所定水位に到達した後に、リム側給水路へ洗浄水を供給するように駆動弁を制御する。
このように構成された本発明においては、第2洗浄モードにおいて、貯水タンク内の水位が所定水位に到達するまで、貯水タンクへ洗浄水を供給すると共に空気を排出するため、主給水路に存在する空気を貯水タンク内へ確実に排出することができる。
【0011】
本発明において、好ましくは、制御部は、貯水タンク内の水位、及び、今回の洗浄回数又は前回の洗浄からの使用時間間隔に基づいて、第1洗浄モード又は第2洗浄モードに切り替え、制御部は、今回の洗浄回数が所定回数よりも多い場合又は使用時間間隔が所定時間よりも短い場合、第2洗浄モードには切り替えないように制御する。
このように構成された本発明においては、便器洗浄を行う場合又は断水等により長時間便器が使用されなかった場合以外は、第2洗浄モードが実行されず、第1洗浄モードを実行して便器を洗浄することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、所定回数は、1回目である。
このように構成された本発明においては、便器洗浄を行う場合に第2洗浄モードを実行することができる。
【0013】
本発明において、好ましくは、制御部は、水洗大便器への電力の供給又は洗浄水の供給が停止又は減少された場合、過去の洗浄回数をリセットする。
このように構成された本発明においては、停電又は断水した場合に第2洗浄モードが実行されるため、復帰時に生じるエアーハンマー現象によってリム吐水口から噴出された洗浄水が便器外に飛散することを防止することができる。
【0014】
また、上述した目的を達成するために、本発明は、複数の洗浄モードに切り替え可能な水洗大便器であって、汚物を受けるボウル部と、このボウル部の上縁に位置し内周面を有するリム部と、このリム部の内周面に沿って洗浄水を吐水するリム吐水口と、ボウル部の底部から延びて汚物を排出する排水トラップ部と、ボウル部の底部に位置し排水トラップ部の入口部に向かって洗浄水を吐水するジェット吐水部と、を備えた便器本体と、給水源からこの便器本体内へ洗浄水を供給する主給水路と、この主給水路から分岐してリム吐水口へ洗浄水を導くリム側給水路と、主給水路から分岐してジェット吐水部へ洗浄水を導くジェット側給水路と、主給水路からリム側給水路又は/及びジェット側給水路へ洗浄水を供給させる駆動弁と、洗浄開始信号に基づいて駆動弁を制御する制御部と、を有し、制御部は、洗浄開始信号を受信した場合に、駆動弁を制御することによって、リム側給水路へ洗浄水を供給させる第1洗浄モードと、ジェット側給水路へ洗浄水を供給させた後にリム側給水路へ洗浄水を供給させる第2洗浄モードとを備え、制御部は、今回の洗浄回数又は前回の洗浄からの使用時間間隔に基づいて、第1洗浄モード又は第2洗浄モードに切り替えることを特徴としている。
【0015】
このように構成された本発明においては、リム側給水路へ洗浄水を供給させる第1洗浄モードと、ジェット側給水路へ洗浄水を供給させた後にリム側給水路へ洗浄水を供給させる第2洗浄モードを備え、制御部は、今回の洗浄回数又は前回の洗浄からの使用時間間隔に基づいて、第1洗浄モード又は第2洗浄モードに切り替えるため、例えば便器洗浄を行う場合は、自動で第2洗浄モードに切り替えられ、ジェット側給水路へ洗浄水を供給した後にリム側給水路へ洗浄水を供給する。これにより、主給水路に存在する空気をジェット側給水路へ排出することができる。よって、便器洗浄を行う場合において、エアーハンマー現象によってリム吐水口から噴出された洗浄水が便器外に飛散することを防止することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の水洗大便器によれば、便器洗浄を行う場合において、エアーハンマー現象よりリム吐水口から噴出された洗浄水が便器外に飛散することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の第1実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による水洗大便器のコントローラユニットを示すブロック図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による水洗大便器の給水路切替弁の詳細を示す図である。
【
図4】本発明の第1実施形態による水洗大便器の洗浄モードの切替制御を示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第1実施形態の「試運転モード」における水洗大便器の動作を示したタイムチャートである。
【
図6】本発明の第1実施形態の「通常洗浄モード」における水洗大便器の動作を示したタイムチャートである。
【
図7】本発明の第2実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
【
図8】本発明の第3実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の第1実施形態(以下、第1実施形態)による水洗大便器について説明する。
先ず、
図1~
図3により、第1実施形態による水洗大便器の全体構成を説明する。
図1は、第1実施形態による水洗大便器の全体構成図、
図2は、第1実施形態による水洗大便器のコントローラユニットを示すブロック図、
図3は、第1実施形態による水洗大便器の給水路切替弁の詳細を示す図である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、第1実施形態による水洗大便器1は、陶器製の便器本体2と、便器本体2へ洗浄水を供給するバルブユニット4と、洗浄水を貯水する貯水タンク6と、貯水タンク6に貯水された洗浄水を便器本体2へ供給する加圧ポンプ8とを備えている。
【0020】
便器本体2には、汚物を受けるボウル部10と、このボウル部10の上縁に位置し内周面を有するリム部12と、このボウル部10の底部から延びて汚物を排出する排水トラップ部14とが形成されている。リム部12の内部には、リム導水路16が形成され、このリム導水路16の下流端であるリム吐水部18には、リム吐水を行うリム吐水口20が形成されている。リム吐水口20は、水洗大便器1を前方から見て、ボウル部10の右側前方に形成されており、洗浄水を後方に向けて吐水してリム部12の内周面に沿って旋回流を形成するようになっている。
【0021】
また、便器本体2の下方には、ジェット導水路22が形成され、このジェット導水路22の下流端であるジェット吐水部24には、ジェット吐水を行うジェット吐水口26が形成されている。ジェット吐水口26は、ボウル部10の底部に位置し、排水トラップ部14の入口部14aに指向してほぼ水平に配置され、排水トラップ部14の入口部14aに向かって洗浄水を吐水するようになっている。
【0022】
排水トラップ部14は、入口部14aと、この入口部14aから上昇するトラップ上昇管14bと、このトラップ上昇管14bから下降するトラップ下降管14cとからなり、トラップ上昇管14bとトラップ下降管14cとの間が頂部14dとなっている。ここで、排水トラップ部14のトラップ下降管の下端には、排水ソケット28が接続されている。
【0023】
第1実施形態による水洗大便器は、洗浄水を供給する水道管30に直結されており、水道の給水圧力によりリム吐水口20から洗浄水が吐水されるようになっている。また、ジェット吐水に関しては、貯水タンク6に貯水された洗浄水が加圧ポンプ8によって加圧され、大流量でジェット吐水口26から吐水されるようになっている。
【0024】
次に、
図1により、第1実施形態による水洗大便器のバルブユニット4を詳細に説明する。
図1に示すように、給水源である水道管30から洗浄水が供給される主給水路32が設けられ、この主給水路32には、上流側から、止水栓34、ストレーナ36、分岐金具38、定流量弁40、ダイヤフラム式の電磁開閉弁42、給水路切替弁44がそれぞれ設けられている。これらの定流量弁40、電磁開閉弁42、及び、給水路切替弁44は、バルブユニット4として、一体的に組立てたものとなっている。また、主給水路32は、便器外で水道管30と接続する給水ホース及びその下流に接続される樹脂製の管から構成されている。
【0025】
また、給水路切替弁44の下流側には、リム吐水口20に洗浄水を供給するためのリム側給水路46、及び、貯水タンク6に洗浄水を供給するためのタンク側給水路48が接続されている。リム側給水路46の下流端にはリム導水路16が接続され、水道の給水圧力により洗浄水がリム吐水口20まで供給されるようになっている。
【0026】
定流量弁40は、止水栓34、ストレーナ36、分岐金具38を介して流入した洗浄水を、所定の流量以下に絞るためのものである。また、定流量弁40を通過した洗浄水は、電磁開閉弁42に流入し、電磁開閉弁42を通過した洗浄水は、給水路切替弁44により、リム側であるリム側給水路46からリム吐水口20へ、又は、タンク側であるタンク側給水路48から貯水タンク6へ供給されるようになっている。
【0027】
給水路切替弁44(駆動弁)は、リム側給水路46とタンク側給水路48の両方に同じタイミングで洗浄水を供給可能であって、リム側とタンク側への給水量及び流量の割合を任意に変更できる切替弁である。
図3に示すように、給水路切替弁44は、主給水路32に開口する第1ポート44a、タンク側給水路48に開口する第2ポート44b、リム側給水路46に開口する第3ポート44cを備えている。給水路切替弁44は、これらの各ポートを切り替えるための、ロータ(弁体)44dを備え、このロータ44dが、駆動モータであるステッピングモータ(図示せず)により所望位置に駆動されるようになっている。
【0028】
より具体的には、給水路切替弁44は、洗浄水を貯水タンク6に供給する場合は、
図3(a)に示すように、第3ポート44cを閉鎖して第1ポート44aと第2ポート44bを連通させ、一方、洗浄水をリム吐水口20に供給する場合は、
図3(b)に示すように、第2ポート44bを閉鎖して第1ポート44aと第3ポート44cを連通させる。
さらに、
図3(c)に示すように、給水路切替弁44において、ロータ44dにより、第2ポート44bと第3ポート44cのそれぞれの一部を閉鎖することにより、主給水路32をリム側給水路46とタンク側給水路48の両方に連通させることもできるようになっている。
【0029】
このように、第1実施形態においては、給水路切替弁44においてロータ44dを駆動することにより、リム吐水口20(リム側)と貯水タンク6(貯水タンク側)に供給される洗浄水の総流量を100%とした場合に、全洗浄水をリム側給水路46に供給する状態(リム側100%)から全洗浄水をタンク側給水路48に供給する状態(貯水タンク側100%)までの範囲で、リム側給水路46とタンク側給水路48とに供給する洗浄水の流量の割合を切り替え操作できるようになっている。
【0030】
また、貯水タンク6の下部には、ポンプ側給水路50が接続されており、このポンプ側給水路50の下流端にはポンプ室52を備えた加圧ポンプ8が接続されている。さらに、加圧ポンプ8とジェット導水路22はジェット側給水路54により接続されており、加圧ポンプ8が、貯水タンク6に貯水された洗浄水を加圧してジェット吐水口26まで供給するようになっている。
【0031】
加圧ポンプ8は、貯水タンク6に貯水された洗浄水を加圧して、ジェット吐水口26から吐水させるためのものである。加圧ポンプ8は、貯水タンク6の下部から延びるポンプ側給水路50により接続され、貯水タンク6内に貯水された洗浄水を加圧する。第1実施形態においては、加圧ポンプ8は、貯水タンク6内の洗浄水を加圧して、洗浄水を所定の流量でジェット吐水口26から吐水させるようになっている。なお、第1実施形態の水洗大便器1は、加圧ポンプ8を採用しているが、これに代えて、水のエネルギーを蓄圧する蓄圧式ブースターにしてもよい。
【0032】
次に、上述したリム側給水路46には、リム吐水用バキュームブレーカ53が設けられており、リム側給水路46に負圧が発生した時に洗浄水のリム吐水口20からの逆流を防止している。また、リム吐水用バキュームブレーカ53は、
図1に示すように、ボウル部10の上端面よりも上方に配置され、これにより、逆流を確実に防止している。さらに、リム吐水用バキュームブレーカ53の大気開放部から溢れた洗浄水は、戻り管路56を通って貯水タンク6に流入するようになっている。タンク側給水路48にも、逆止弁であるバキュームブレーカ58が設けられており、洗浄水の貯水タンク6からの逆流を防止している。
【0033】
貯水タンク6は、密閉タイプの貯水タンクであり、タンク側給水路48と貯水タンク6の接続部には、ボール式逆止弁60が設けられている。このボール式逆止弁60により、貯水タンク6が後述するオーバーフロー流路の上端の位置を越えて満水状態になった場合でも、ボールが浮上して、タンク側給水路48との接続部を閉鎖するので、洗浄水がタンク側給水路48に逆流することがないようになっている。なお、第1実施形態において、貯水タンク6は、約2.5リットルの内容積を有する。
【0034】
同様に、戻り管路56と貯水タンク6の接続部にも、ボール式逆止弁62が設けられており、貯水タンク6が後述するオーバーフロー流路72の上端の位置を越えて満水状態になった場合でも、洗浄水が戻り管路56に逆流することはないようになっている。
【0035】
さらに、貯水タンク6の底部には、水抜栓64が設けられている。この水抜栓64は、加圧ポンプ8よりも下方の、貯水タンク6の下端部付近の高さに配置されている。このため、水抜栓64を開放することにより、メンテナンス時等に貯水タンク6内及び加圧ポンプ8内の洗浄水を排出することができるようになっている。
【0036】
バルブユニット4には、電磁開閉弁42の開閉操作、給水路切替弁44の切替操作、及び、加圧ポンプ8の回転数や作動時間等を制御するコントローラ66が内蔵されている。
【0037】
貯水タンク6の内部には、上端フロートスイッチ68、及び、下端フロートスイッチ70が配置されている。
上端フロートスイッチ68は、貯水タンク6内の水位が通常使用時の最高水位L3より少しだけ低い所定位置L2に達するとオン状態に切り替わり、コントローラ66はこれを検知して、電磁開閉弁42を閉鎖させる。
【0038】
下端フロートスイッチ70は、貯水タンク6内の水位が通常使用時の最低水位L1まで低下するとオン状態に切り替わり、コントローラ66はこれを検知して、加圧ポンプ8を停止させる。
【0039】
さらに、オーバーフロー流路72が設けられ、このオーバーフロー流路72の上端は貯水タンク6内に開口し、その下端は、ジェット側給水路54に接続されている。
【0040】
このオーバーフロー流路72には逆止弁であるフラッパー弁74が取り付けられている。このオーバーフロー流路72及びフラッパー弁74により、洗浄水のジェット吐水口26からの逆流を防止すると共に、これらの間の縁切りを行うことができるようになっている。
【0041】
図2に示すように、コントローラ66(制御部)は、使用者により便器洗浄スイッチ76が押されると、電磁開閉弁42、給水路切替弁44、加圧ポンプ8を順次作動させ、通常の便器洗浄では、リム吐水口20から吐水し、リム吐水を継続させながら、次にジェット吐水口26からの吐水を開始させて、ボウル部10を洗浄させるようになっている。さらに、コントローラ66は、洗浄終了後、電磁開閉弁42を開放し、給水路切替弁44を貯水タンク6側に切り替えて貯水タンク6に洗浄水を補給させるようになっている。コントローラ66は、貯水タンク6内の水位が上昇し、上端フロートスイッチ68が規定の貯水量を検出すると、電磁開閉弁42を閉弁して給水を停止させるようになっている。
【0042】
また、コントローラ66は、洗浄開始操作として便器洗浄スイッチ76が押されて洗浄開始信号を受信した場合、貯水タンク内の水位、今回の洗浄回数、前回の洗浄からの使用時間間隔に基づいて、「通常洗浄モード(第1洗浄モード)」、「試運転モード(第2洗浄モード)」、及び「給水モード(第3洗浄モード)」の3種類の洗浄モードのうちの1つのモードに自動で(使用者が切替スイッチなどを操作することなく)切り替えるようになっている。ここで、「通常洗浄モード」とは、通常の便器洗浄を行う洗浄モードである。「試運転モード」とは、例えば施工時において初めて便器洗浄を行う場合(試運転の場合)、主給水路内に存在している空気を排出してから便器洗浄を行う洗浄モードである。「給水モード」とは、貯水タンクが空の場合、貯水タンクに貯水してから便器洗浄を行う洗浄モードである。
【0043】
また、コントローラ66は、洗浄開始信号を受信する前の待機状態において、リム側給水路46へ洗浄水を供給するように給水路切替弁44を設定している。また、コントローラ66は、センサ(図示せず)からの信号に基づいて、停電等により水洗大便器への電力の供給が停止又は減少していることを判定するようになっている。また、コントローラ66は、前回の洗浄からの使用時間間隔を計測しており、この使用時間間隔に基づいて、断水等により洗浄水の供給が停止又は減少していることを判定するようになっている。
【0044】
以下、第1実施形態による水洗大便器の洗浄モードの切替制御について説明する。
図4は、第1実施形態による水洗大便器の洗浄モードの切替制御を示すフローチャートである。
図4は、Sは各工程を示す。
【0045】
まず、
図4に示すように、S1では、使用者によって洗浄開始操作が行われる。使用者が便器洗浄スイッチ76を押すと、便器洗浄スイッチ76から洗浄開始信号がコントローラ66に送信される。
【0046】
S2では、コントローラ66が洗浄開始信号を受信すると、コントローラ66は、貯水タンク6内の下端フロートスイッチ70がオン状態であるか否か(貯水タンク6が空であるか否か)を判定する。コントローラ66が下端フロートスイッチ70からオン信号を受信していない場合、下端フロートスイッチ70がオフ状態であると判定される(S2;No)。この場合、貯水タンク6内に洗浄水が溜まっているため、コントローラ66によって、電磁開閉弁42、給水路切替弁44、及び加圧ポンプ8が駆動されて「通常洗浄モード」が実行される(S6)。コントローラ66が下端フロートスイッチ70からオン信号を受信している場合、下端フロートスイッチ70がオン状態であり、貯水タンク6内が空であると判定される(S2;Yes)。
【0047】
S3では、コントローラ66は、洗浄を実行する今回の洗浄回数が1回目(初回)であるか否かを判定する。過去実行された過去の洗浄回数データは、コントローラ66の記憶部(図示せず)に記憶されており、コントローラ66は、この過去の洗浄回数データに「1」を加算した回数を今回の洗浄回数として判定する。過去の洗浄回数データが「0」である場合、コントローラ66は、今回の洗浄回数が1回目であると判定する(S3;Yes)。この場合、主給水路32(特に、電磁開閉弁42の上流側の主給水路32)に空気が存在しているため、コントローラ66によって、電磁開閉弁42及び給水路切替弁44が駆動されて「試運転モード」が実行される(S4)。過去の洗浄回数データが「1以上」である場合、コントローラ66は、今回の洗浄回数を2回目以上であると判定し(S3;No)、コントローラ66によって、電磁開閉弁42及び給水路切替弁44が駆動されて「給水モード」が実行される(S5)。
ここで、1回目(初回)とは、実際に初めて便器洗浄を行う場合だけでなく、下述するように過去の洗浄回数データがリセットされて今回の洗浄回数が1回目と判定された場合も含んでいる。
【0048】
また、S3で、コントローラ66は、洗浄開始信号を受信した時に前回の洗浄からの使用時間間隔が所定時間(例えば12時間)を経過している場合、過去の洗浄回数データをリセットして「0」にし、今回の洗浄回数が1回目であると判定する(S3;Yes)。これにより、コントローラ66は、断水等により水洗大便器への洗浄水の供給が停止されている場合、主給水路32に空気が存在している可能性があるため、S4で「試運転モード」を実行するようになっている。
【0049】
また、S3で、コントローラ66は、洗浄開始信号を受信した時に水洗大便器への電力の供給が停止されている場合、過去の洗浄回数データをリセットして「0」にし、今回の洗浄回数が1回目であると判定する(S3;Yes)。これにより、コントローラ66は、停電等により水洗大便器への電力の供給が停止されている場合、主給水路32に空気が存在している可能性があるため、S4で「試運転モード」を実行するようになっている。
【0050】
S4~S6で、コントローラ66によって、「通常洗浄モード」、「試運転モード」、及び「給水モード」のうち1つが実行される。これにより、洗浄モードの切替制御が終了する。
【0051】
上述した第1実施形態では、S3で、使用時間間隔が所定時間を経過した場合や電力の供給が停止された場合に、過去の洗浄回数データをリセットして「0」にし、今回の洗浄回数が1回目であると判定しているが、これらに代えて又はこれらに加えて、1日当たりの洗浄回数が減少した場合や水洗大便器へ供給されている電力が減少している場合に、過去の洗浄回数データをリセットして「0」にし、今回の洗浄回数が1回目であると判定してもよい。
【0052】
次に、上記のステップS4に相当する、「試運転モード」における水洗大便器の動作について説明する。
図5は、「試運転モード」における水洗大便器の動作を示したタイムチャートである。
【0053】
図5に示すように、先ず、待機状態(時刻t0~t1)において、給水路切替弁44は、リム側給水路46に全開状態(リム側100%)の位置、即ち、タンク側給水路48に全閉状態(貯水タンク側0%)の位置となっている。
【0054】
まず、待機状態(時刻t0~t1)で、便器洗浄スイッチ76が押されると、コントローラ66が洗浄開始信号を受信し(時刻t1)、給水路切替弁44は、リム側給水路46に全開状態の位置から、タンク側給水路48に全開状態(貯水タンク側100%)の位置に切り替えられる(時刻t1~t2)。
【0055】
次に、時刻t2において、給水路切替弁44がタンク側給水路48に全開状態(貯水タンク側100%)、即ち、リム側給水路46に全閉状態(リム側0%)の位置になったときに、電磁開閉弁42が開弁し、洗浄水を主給水路32に流入させて貯水タンク6内へ排出する。これにより、電磁開閉弁42の上流の主給水路32及び電磁開閉弁42と給水路切替弁44との間の主給水路32に存在している空気を貯水タンク6内に排出することができるようになっている。この結果、主給水路32に存在している空気が圧縮されてリム吐水口20から一気に噴出されることを防止できるようになっている。
【0056】
次に、時刻t2~t5の間で、タンク給水が所定時間継続され、貯水タンク6内に洗浄水が貯水される。時刻t3では、貯水タンク6内の水位が所定の水位L1になると下端フロートスイッチ70がオフ状態となり、時刻t4では、貯水タンク6内の水位が所定の水位L2になると上端フロートスイッチ68がオン状態になる。時刻t4~t5で、タンク給水が継続され、時刻t5で、貯水タンク6内の水位がL2よりも少し高い所定の水位L3に到達して、貯水タンク6は満水状態となる。
【0057】
次に、時刻t5~t6において、給水路切替弁44は、タンク側給水路48に全開状態の位置(貯水タンク側100%)から、リム側給水路46に全開状態の位置(リム側100%)に切り替えられる。これにより、洗浄水がリム吐水口20から吐水される。
【0058】
次に、時刻t6~t8の間で、給水路切替弁44は、リム側給水路46に全開状態の位置(リム側100%)に維持される。時刻t6から所定時間継続してリム吐水口20から洗浄水が吐水される。所定時間経過後、時刻t7において、電磁開閉弁42が閉弁し、リム吐水が停止される。
【0059】
次に、時刻t8~t9の間で、給水路切替弁44は、リム側給水路46に全開状態の位置から、タンク側給水路48に全開状態の位置に切り替えられ、時刻t9~10の間で、タンク側給水路48に全開状態の位置に維持される。
【0060】
次に、時刻t10~t11の間で、給水路切替弁44は、タンク側給水路48に全開状態の位置から、リム側給水路46に全開状態の位置に切り替えられ、時刻t11において、給水路切替弁44がリム側給水路46に全開状態の位置に戻り、待機状態(時刻t0~t1と同じ状態)に復帰する。
【0061】
コントローラ66は、時刻t0~t1及び時刻t11以降の待機状態では、洗浄開始信号を受信可能になっているが、時刻t1~t11の間は、コントローラ66は洗浄開始信号を受信しないようになっている。これにより、「試運転モード」を確実に実行するようになっている。
【0062】
次に、上記ステップS5に相当する、「給水モード」における水洗大便器の動作について説明する。
【0063】
先ず、待機状態において、給水路切替弁44は、リム側給水路46に全開状態の位置となっている。この待機状態で便器洗浄スイッチ76が押されると、コントローラ66が洗浄開始信号を受信し、給水路切替弁44は、リム側給水路46とタンク側給水路48が開状態の位置に切り替えられる。次に、電磁開閉弁42が開弁し、リム給水とタンク給水が開始される。タンク給水が所定時間継続されて貯水タンク6が満水状態となると、給水路切替弁44がリム側給水路46に全開状態の位置となる。このような給水モードを備えることで、エアーハンマー現象によってリム吐水口20から噴出された洗浄水が便器外に飛散することを防止しつつ、貯水タンク6内の洗浄水がオーバーフローして機外漏水することを避けることができる。また、貯水タンク6を確実に満水状態にして洗浄動作を完了することができる。
【0064】
次に、上記のステップS6に相当する、「通常洗浄モード」における水洗大便器の動作について説明する。
図6は、通常洗浄モードにおける水洗大便器の動作を示したタイムチャートである。
【0065】
図6に示すように、先ず、待機状態(時刻t0~t1)において、給水路切替弁44は、リム側給水路46に全開状態(リム側100%)の位置、即ち、タンク側給水路48に全閉状態(貯水タンク側0%)の位置となっている。
【0066】
まず、待機状態(時刻t0~t1)で、便器洗浄スイッチ76が押されると、コントローラ66が洗浄開始信号を受信し(時刻t1)、給水路切替弁44は、リム側給水路46に全開状態の位置(リム側100%)から、ソフトリム吐水の開始位置(リム側30%貯水タンク側70%)に切り替えられる(時刻t1~t2)。ソフトリム吐水の開始位置では、主給水路32がリム側給水路46とタンク側給水路48の両方に連通しており、給水路切替弁44がリム側30%貯水タンク側70%の状態になっている。ここで、「ソフトリム吐水」とは、リム吐水時に生じる異音の発生や水はね等を防止するために、リム吐水口から大量の洗浄水を一気に吐水するのではなく、リム吐水口から洗浄水を徐々に吐水させる吐水形態である。
【0067】
次に、時刻t3において、給水路切替弁44がリム側30%貯水タンク側70%の状態で電磁開閉弁42が開弁し、洗浄水を主給水路32に流入させる。これにより、給水路切替弁44の上流側にある主給水路32内に存在している空気を貯水タンク6内に排出しながら、洗浄水をリム吐水口20から吐水することができるようになっている。この結果、洗浄開始時、主給水路32内に存在する空気の一部をタンク側給水路48へ排出し、残りをリム側給水路46から排出するので、従来のタンク側全開の場合と比較して貯水タンク6の内圧の増加を抑制することができるようになっている。また、リム吐水口から主給水路32内に存在する空気の一部だけが排出されるので、リム吐水時に生じる異音や水はねを防止することができるようになっている。さらに、洗浄開始信号を受信してから直ぐにリム吐水が開始されるため、洗浄開始の操作からリム吐水開始までのタイムラグを低減させることができるようになっている。
なお、上述した第1実施形態では、ソフトリム吐水の開始位置を、給水路切替弁44がリム側30%貯水タンク側70%の状態にある位置にしたが、これに限定されず、リム側20~40%貯水タンク側80~60%の状態の位置にしてもよい。
【0068】
次に、時刻t3~t4の間に、給水路切替弁44は、リム側30%貯水タンク側70%の状態の位置からリム側50%貯水タンク側50%の位置に徐々に切り替えられる。時刻t3~t4の間では、リム側給水路46に供給される洗浄水の流量の増加量の変化率である流量増加率は、比較的小さい第1の流量増加率Aであり、これとは逆に、タンク側給水路48に供給される洗浄水の流量の減少量の変化率である流量減少率は、比較的小さい第1の流量減少率である。即ち、リム側給水路46に供給される洗浄水の流量は、比較的小さい第1の流量増加率Aで増加し、これとは逆に、タンク側給水路48に供給される洗浄水の流量は、比較的小さい第1の流量減少率で減少する。この結果、リム吐水口20から吐水される洗浄水は、一気に増えずに徐々に増えるので、リム吐水時に生じる異音や水はねを防止することができるようになっている。また、タンク給水される洗浄水は徐々に減るので、貯水タンク6の内圧の増加を抑制することができるようになっている。
【0069】
また、第1の流量増加率Aでリム側給水路46に洗浄水が供給される時間(時刻t3~t4)は、後述する第2の流量増加率Bでリム側給水路46に洗浄水が供給される時間(時刻t4~t5)よりも長く設定されている。この結果、貯水タンク6の内圧の増加を確実に抑制することができる共にリム吐水時に生じる異音や水はねを確実に防止することができるようになっている。
【0070】
次に、時刻t4において、給水路切替弁44は、リム側50%貯水タンク側50%の状態の位置になり、リム側給水路46に供給される洗浄水の流量が増えてリム側給水路46の大半(各給水路の流路断面積のうち約70~90%)が洗浄水でほぼ満たされる。
【0071】
次に、時刻t4~t5の間に、給水路切替弁44は、リム側50%貯水タンク側50%の状態の位置からリム側給水路46に全開状態(リム側100%)の位置に徐々に切り替えられる。時刻t4~t5の間では、リム側給水路46に供給される洗浄水の流量は、第1の流量増加率Aより大きい第2の流量増加率Bで増加し、これとは逆に、タンク側給水路48に供給される洗浄水の流量は、第1の流量減少率より大きい第2の流量減少率で減少する。この結果、リム側給水路46に供給させる洗浄水の流量を第1の流量増加率Aより大きい第2の流量増加率Bで増加させるので、比較的短い時間で全洗浄水をリム吐水口20から吐水させることができるようになっている。
なお、t2~t5の間において、第1実施形態では、流量増加率を2段階(第1の流量増加率Aと第2の流量増加率B)で変化させているが、これに限定されず、3段階以上で流量変化率を変化させてもよい。
【0072】
時刻t5~t13に、一定の大量の洗浄水が継続的にリム吐水口20に供給され、洗浄水がリム吐水口20から吐水され続ける。
【0073】
次に、時刻t5から所定時間経過後、時刻t6~t11の間において、ジェット吐水を行うために、加圧ポンプ8をオン状態とし、加圧ポンプ8が貯水タンク6内の洗浄水をジェット吐水口26へ供給し、洗浄水をジェット吐水口26から吐水する。
【0074】
リム吐水によりボウル部10内及び排水トラップ部14内の溜水水位が上昇した状態でジェット吐水を行っているので、短時間でサイホン作用を起動させ、しかも、強いサイホン作用を発生させることができるようになっている。この結果、サイホン作用起動のためのジェット吐水の洗浄水量を少なくすることができるので、節水化を達成できるようになっている。
【0075】
また、ジェット吐水中にリム吐水が途切れることなく継続して行われるので、排水トラップ部14の入口部14aに空気が流入し難くなり、サイホン切れ音を抑制することができるようになっている。また、浮遊系の汚物を溜水の中心に集めながらジェット吐水することで、浮遊系の汚物がボウル面へ張り付くことを防いで、浮遊系の汚物も確実に排出することができるようになっている。
【0076】
次に、このジェット吐水のとき、コントローラ66が加圧ポンプ8の回転数を以下のように制御する。
先ず、コントローラ66は、時刻t7~t8において、加圧ポンプ8の回転数を急上昇させて、時刻t8~t9の間に、加圧ポンプ8を高速回転させる。これにより、加圧ポンプ8による加圧力が大きくなり、ジェット吐水口26から大流量(第1の流量)の洗浄水が吐水される。このとき、リム吐水口20から継続してリム吐水がなされているので、リム吐水口20から吐水される洗浄水の流量が加わり、大流量の洗浄水が、排水トラップ部14の入口部14aに流入し、サイホン現象が急速に引き起こされ、ボウル部10内の溜水及び汚物が素早く排出される。
【0077】
次に、コントローラ66は、時刻t9~t11において、大洗浄の場合(
図6の実線を参照)、加圧ポンプ8の回転数を減少させて、加圧ポンプ8を中速回転させる。これにより、加圧ポンプ8による加圧力が減少し、ジェット吐水口26から第1の流量より小さい中流量(第2の流量)の洗浄水が吐水される。このとき、中流量の洗浄水が排水トラップ部14の入口部14aに流入するので、サイホン現象を維持させて、ボウル部10内の溜水及び汚物が確実に排出される。また、ジェット吐水口26から吐水される洗浄水を第1流量から第2の流量へ減少させてサイホン現象を維持しているために汚物等の排水性能と節水化を同時に達成することができるようになっている。
【0078】
また、コントローラ66は、時刻t9~t11において、小洗浄の場合(
図6の点線を参照)、加圧ポンプ8の回転数を減少させて、加圧ポンプ8を低速回転させ、その後に中速回転させる。これにより、加圧ポンプ8による加圧力が減少し、ジェット吐水口26から第1及び第2の流量より小さい小流量(第3の流量)の洗浄水が吐水され、その後、サイホン現象が弱まる前に、加圧ポンプ8の回転数が上昇し、加圧ポンプ8を中速回転にさせ、ジェット吐水口26から中流量(第2の流量)の洗浄水が吐水される。これにより、大洗浄の場合よりも少ない流量でサイホン現象を維持することができるようになっている。
【0079】
次に、時刻t10において、貯水タンク6内の洗浄水の水位がL1よりも低下して、下端フロートスイッチ70がオン状態となると、所定の遅延時間後に、加圧ポンプ8の作動を停止する(時刻t11)。このとき、加圧ポンプ8の回転数を、ジェット吐水口26からの吐水が漸減するように、時刻t11から時刻t12までの間、ゆっくりと低減させる。これにより、ジェット吐水を急激に終了することにより生じる切れ音の発生を防止することができるようになっている。
【0080】
時刻t11において、ジェット吐水は終了したが、このとき、リム吐水は依然として継続しており、時刻t11から時刻t13までの所定時間、リム吐水(後リム吐水)だけ継続される。
この後、時刻t13~t14において、給水路切替弁44をリム側全開から貯水タンク側全開に切り替える。これにより、貯水タンク6内に洗浄水が貯水される。
【0081】
時刻t15では、貯水タンク6内の水位が所定の水位L1になると下端フロートスイッチ70がオフ状態となり、時刻t16では、貯水タンク6内の水位が所定の水位L2になると上端フロートスイッチ68がオン状態になる。時刻t16~t17で、タンク給水が継続され、時刻t17で、電磁開閉弁42が閉弁し、貯水タンク6への洗浄水の供給が停止される。これにより、貯水タンク6内の水位がL2よりも少し高い所定の水位L3になり、貯水タンク6は満水状態となる。次に、時刻t17~18の間で、給水路切替弁44は、タンク側給水路48に全開状態の位置に維持される。
【0082】
次に、時刻t18~t19の間で、給水路切替弁44は、タンク側給水路48に全開状態の位置から、リム側給水路46に全開状態の位置に切り替えられ、時刻t19において、給水路切替弁44がリム側給水路46に全開状態の位置に戻り、待機状態(時刻t0~t1と同じ状態)に復帰する。
【0083】
次に、
図7により、本発明の第2実施形態(以下、第2実施形態)による水洗大便器を説明する。
図7は第2実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
第2実施形態による水洗大便器の基本構成は、上述した第1実施形態と同様であるため、以下第1実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0084】
先ず、第2実施形態においては、第1実施形態における給水路切替弁44及び電磁開閉弁42が設けられておらず、リム側給水路46にリム側電磁開閉弁80が設けられ、タンク側給水路48にタンク側電磁開閉弁82がそれぞれ設けられている。これらのリム側電磁開閉弁80及びタンク側電磁開閉弁82は、駆動弁として機能し、コントローラ66によって、開閉されると共に弁体の開度が多段階で制御されるようになっている。
【0085】
第2実施形態においては、コントローラ66がリム側電磁開閉弁80及びタンク側電磁開閉弁82を駆動させることによって、上述した第1実施形態と同様に、「通常洗浄モード」、「試運転モード」、及び「給水モード」を実行することができるようになっている。
【0086】
次に、
図8により、本発明の第3実施形態(以下、第3実施形態)による水洗大便器を説明する。
図8は本発明の第3実施形態による水洗大便器の全体構成図である。
第3実施形態による水洗大便器の基本構成は、上述した第1実施形態と同様であるため、以下第1実施形態と異なる部分のみ説明する。
【0087】
先ず、第3実施形態においては、第1実施形態における貯水タンク6及び加圧ポンプ8を備えておらず、給水路切替弁44の下流側は、リム側給水路46及びジェット側給水路54に接続されている。ジェット側給水路54の下流端は、ジェット導水路22に接続され、水道の給水圧力により洗浄水がジェット吐水口26から吐水されるようになっている。
【0088】
第3実施形態においては、コントローラ66が給水路切替弁44を駆動させることによって、上述した第1実施形態と同様に、「通常洗浄モード」、「試運転モード」、及び「給水モード」を実行することができるようになっている。
【0089】
以下、上述した本実施形態による水洗大便器の作用効果を説明する。
本実施形態による水洗大便器1においては、コントローラ66は、洗浄開始信号を受信した場合に、駆動弁である給水路切替弁44(又は電磁開閉弁80,82)を制御することによって、リム側給水路46へ洗浄水を供給させる通常洗浄モード(第1洗浄モード)S4と、タンク側給水路48へ洗浄水を供給させた後にリム側給水路46へ洗浄水を供給させる試運転モード(第2洗浄モード)S6を備え、コントローラ66は、貯水タンク6内の水位に基づいて、通常洗浄モード又は試運転モードに切り替える。
【0090】
このような本実施形態においては、リム側給水路46へ洗浄水を供給させる通常洗浄モードと、タンク側給水路48へ洗浄水を供給させた後にリム側給水路46へ洗浄水を供給させる試運転モードを備え、コントローラ66は、貯水タンク6内の水位に基づいて、通常洗浄モード又は試運転モードに切り替えるため、例えば貯水タンク6が空であり、初めて便器洗浄を行う場合(過去の洗浄回数データがリセットされて今回の洗浄回数が1回目と判定された場合も含む)は、自動で試運転モードに切り替えられ、タンク側給水路48へ洗浄水を供給させた後にリム側給水路46へ洗浄水を供給させる。これにより、給水路切替弁44(又は電磁開閉弁80,82)、電磁開閉弁42よりも上流側の主給水路32に存在する空気を貯水タンク6内へ排出することができる。よって、初めて便器洗浄を行う場合において、エアーハンマー現象によってリム吐水口20から噴出された洗浄水が便器外に飛散することを防止することができる。
【0091】
また、本実施形態においては、給水路切替弁44(又は電磁開閉弁80,82)は、洗浄開始信号を受信する前の待機状態において、リム側給水路46へ洗浄水を供給するように設定されている。このような本実施形態においては、例えば停電時や給水路切替弁44(又は電磁開閉弁80,82)が故障した時に、手動で電磁開閉弁等を開くことによって便器洗浄を行うことができる。また、洗浄水をリム吐水口20から排出させることができるので、オーバーフローして漏水するのを防止することができる。
【0092】
また、本実施形態においては、コントローラ66は、試運転モードにおいて、貯水タンク6内の水位が満水状態である所定水位L3に到達した後に、リム側給水路46へ洗浄水を供給するように給水路切替弁44(又は電磁開閉弁80,82)を制御する。このような本実施形態においては、試運転モードにおいて、貯水タンク6内の水位が所定水位L3に到達するまで、貯水タンク6へ洗浄水を供給すると共に空気を排出するため、給水路切替弁44(又は電磁開閉弁80,82)、電磁開閉弁42よりも上流側の主給水路32に存在する空気を貯水タンク6内へ確実に排出することができる。
【0093】
また、本実施形態においては、コントローラ66は、貯水タンク6内の水位、及び、今回の洗浄回数又は前回の洗浄からの使用時間間隔に基づいて、通常洗浄モード又は試運転モードに切り替え、コントローラ66は、今回の洗浄回数が所定回数よりも多い場合又は使用時間間隔が所定時間よりも短い場合、試運転モードには切り替えないように制御する。このような本実施形態においては、初めて便器洗浄を行う場合又は断水等により長時間便器が使用されなかった場合以外は、試運転モードが実行されず、通常洗浄モードを実行して便器を洗浄することができる。
【0094】
また、本実施形態においては、試運転モードを実行する洗浄回数の所定回数は、1回目である。このような本実施形態においては、初めて便器洗浄を行う場合に試運転モードを実行することができる。
【0095】
また、本実施形態においては、コントローラ66は、水洗大便器1への電力の供給又は洗浄水の供給が停止又は減少された場合、過去の洗浄回数をリセットする。このような本実施形態においては、停電又は断水した場合に試運転モードを実行させるため、復帰時に生じるエアーハンマー現象によってリム吐水口20から噴出された洗浄水が便器外に飛散することを防止することができる。
【0096】
また、本実施形態による水洗大便器1においては、コントローラ66は、洗浄開始信号を受信した場合に、給水路切替弁44を制御することによって、リム側給水路46へ洗浄水を供給させる通常洗浄モードと、ジェット側給水路54へ洗浄水を供給させた後にリム側給水路46へ洗浄水を供給させる試運転モードとを備え、コントローラ66は、今回の洗浄回数又は前回の洗浄からの使用時間間隔に基づいて、通常洗浄モード又は試運転モードに切り替える。
【0097】
このような本実施形態においては、リム側給水路46へ洗浄水を供給させる通常洗浄モードと、ジェット側給水路54へ洗浄水を供給させた後にリム側給水路46へ洗浄水を供給させる試運転モードを備え、コントローラ66は、今回の洗浄回数又は前回の洗浄からの使用時間間隔に基づいて、通常洗浄モード又は試運転モードに切り替えるため、例えば初めて便器洗浄を行う場合は、自動で試運転モードに切り替えられ、ジェット側給水路54へ洗浄水を供給させた後にリム側給水路46へ洗浄水を供給させる。これにより、給水路切替弁44、電磁開閉弁42よりも上流側の主給水路32に存在する空気をジェット側給水路54へ排出することができる。よって、初めて便器洗浄を行う場合において、エアーハンマー現象によってリム吐水口20から噴出された洗浄水が便器外に飛散することを防止することができる。
【0098】
上述した本実施形態は、水洗大便器がジェット吐水を行う便器であるが、これに限定されるものではなく、ジェット吐水を行わず、リム吐水のみを行う便器に本発明を適用することができる。この場合、水洗大便器は、第1実施形態と同様に、貯水タンク及び加圧ポンプを備えて、加圧ポンプの下流側の給水路がリム吐水口に接続するように構成される。
【0099】
また、上述した本実施形態は、コントローラは、貯水タンク内の水位、今回の洗浄回数又は前回の洗浄からの使用時間間隔に基づいて、通常洗浄モード又は試運転モードに切り替えているが、これらに限定されるものではなく、貯水タンク内の水位、今回の洗浄回数又は前回の洗浄からの使用時間間隔、又はその他の条件に基づいて、通常洗浄モード、試運転モード、給水モード、又はその他の複数のモードに切り替えてもよい。
【0100】
本発明は、加圧ポンプを備えておらず、貯水タンクのみを備えた水洗大便器に適用することができる。また、本発明は、重力式のタンクを備えた水洗大便器にも適用することができる。また、本発明は、大流量の洗浄水を所定時間継続して便器本体へ供給するジェットポンプを備えた水洗大便器にも適用することができる。
【符号の説明】
【0101】
1 水洗大便器
2 便器本体
6 貯水タンク
8 加圧ポンプ
10 ボウル部
12 リム部
14 排水トラップ部
20 リム吐水口
26 ジェット吐水口
32 主給水路
42 電磁開閉弁
44 給水路切替弁
46 リム側給水路
48 タンク側給水路
50 ポンプ側給水路
54 ジェット側給水路
66 コントローラ(制御部)