(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042180
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ドア開口の浸水抑止具
(51)【国際特許分類】
E06B 7/18 20060101AFI20240321BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20240321BHJP
E06B 7/22 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
E06B7/18 A
E06B5/00 Z
E06B7/22
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146711
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105843
【弁理士】
【氏名又は名称】神保 泰三
(72)【発明者】
【氏名】市村 仁志
(72)【発明者】
【氏名】菅 将憲
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 佳勝
(72)【発明者】
【氏名】スウ ガイキ
【テーマコード(参考)】
2E036
2E239
【Fターム(参考)】
2E036AA01
2E036BA01
2E036CA01
2E036DA02
2E036EB02
2E036EC05
2E036GA02
2E036HB38
2E036HC03
2E036HC05
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】ドア開口に対する止水効果を出すために扉体が閉められる必要が無く、パテ等で扉体とドア枠の隙間を塞ぐ必要もないドア開口の浸水抑止具を提供する。
【解決手段】ドア開口の浸水抑止具1は、ドア開口81を開閉する扉体82が回動可能にドア枠83に支持されるドア8に取り付けられる。この浸水抑止具1は、ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側および沓摺83bの各々の屋外側面に対向する縁部を有する止水板11と、この止水板11の上記縁部の屋内側面に位置するシール部材12と、左右の縦戸当たり83aの下部側の屋内側面に対向する縁部を有し、左右の縦戸当たり83aの下部側を挟んで上記止水板11に対向して配置される固定部材13と、止水板11と固定部材13とを互いに連結して引き合わせる締付部材14と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドア開口を開閉する扉体を支持するドア枠に取り付けられるドア開口の浸水抑止具であって、
上記ドア枠の左右の縦部材の下部側および上記ドア枠の下部の横部材の各々の屋外側面に対向する縁部を有し、上記ドア開口の下部側を封鎖するように配置される止水板と、
上記止水板の上記縁部の屋内側面に位置するシール部材と、
上記ドア枠の左右の縦部材の下部側の屋内側面に対向する縁部を有し、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側を挟んで上記止水板に対向して配置される固定部材と、
上記止水板と上記固定部材とを互いに連結して引き合わせる締付部材と、
を備えており、
上記止水板は、上記シール部材に沿って当該シール部材よりも上記ドア開口の内側の位置で屋内側に突出する第1突出板部を有するとともに、この第1突出板部から上記ドア開口の内側方向に突出する複数の第1突起部を有しており、
上記固定部材は、上記第1突出板部よりも上記ドア開口の外側の位置で屋内側に突出して上記第1突出板部に一部が重なる第2突出板部を有するとともに、この第2突出板部の上記第1突出板部に重ならない部位から上記ドア開口の内側方向に突出する複数の第2突起部を有しており、
上記締付部材は、上記止水板と上記固定部材とを引き合わせる前の各第1突起部を収容する第1収容孔部および各第2突起部を収容する第2収容孔部を有しており、上記第1収容孔部および上記第2収容孔部の一方または両方は、上記止水板と上記固定部材とを引き合わせるために各第1突起部と各第2突起部とを互いに近づける締付孔部を有しており、当該締付部材のスライド動作によって、上記締付孔部の位置を移動させることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項2】
請求項1に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記締付部材は、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側の近傍の上記第1突出板部の縦部分および上記第2突出板部の縦部分に対向配置されて上下にスライドする縦スライド部材と、上記ドア枠の下部の横部材の近傍の上記第1突出板部の横部分および上記第2突出板部の横部分に対向配置されて左右にスライドする横スライド部材と、を備えることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項3】
請求項2に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記縦スライド部材の上下のスライド動作が操作部材によって行えることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項4】
請求項2に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記縦スライド部材は、下方向のスライド動作を足によって加えるためのペダルを備えることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項5】
請求項2に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記横スライド部材の左右のスライド動作が操作部材によって行えることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項6】
請求項1に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記第1突起部および上記第2突起部の全部または一部は、上記第1収容孔部および上記第2収容孔部の少なくとも一方の壁面に接触する部位が回転可能であることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項7】
請求項1に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記第1突起部および上記第2突起部の全部または一部の先端が雄螺子部であり、この雄螺子部は上記第1収容孔部および上記第2収容孔部の少なくとも一方より出て位置することを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【請求項8】
請求項1に記載のドア開口の浸水抑止具において、上記締付孔部の奥端部は、この奥端部手前の部位に比べて、上記止水板と上記固定部材との引き合わせを弱める方向に拡張されていることを特徴とするドア開口の浸水抑止具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ドア開口からの外水の浸入を抑止する浸水抑止具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドア枠に開き戸式の扉体が開閉可能に取り付けられ、下枠の内側に下部戸当りが凸設され、ドア枠、戸当りおよび扉体に対して着脱可能な板材が戸当りに立て掛けられ、板材の下端部に沿って下部シールが設けられ、板材の側端部に沿って側部シールが設けられ、扉体が閉じた状態において板材の下端部と下部シールとが戸当りと扉体との間に挟持され、板材の側端部と側部シールとが戸当りと扉体との間に挟持される防水ドア構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記防水ドア構造は、上記扉体が閉じた状態において、上記板材の下端部と上記下部シールとが上記戸当りと上記扉体との間に挟持され、上記板材の側端部と上記側部シールとが上記戸当りと上記扉体との間に挟持される構造であるため、上記ドア開口に対する止水効果を出すためには、扉体が閉められている必要がある。このため、屋内から屋外へ避難する必要が生じた場合に、この屋外への避難が困難になるおそれがある。
【0005】
また、パテ等でドアとドア枠の隙間を塞ぐ対策では、外水が引いた後にパテを撤去する必要があり、この撤去作業に手間がかかる等の欠点がある。
【0006】
この発明は、ドア開口に対する止水効果を出すために扉体が閉められる必要が無く、パテ等で扉体とドア枠の隙間を塞ぐ必要もないドア開口の浸水抑止具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明のドア開口の浸水抑止具は、ドア開口を開閉する扉体を支持するドア枠に取り付けられるドア開口の浸水抑止具であって、
上記ドア枠の左右の縦部材の下部側および上記ドア枠の下部の横部材の各々の屋外側面に対向する縁部を有し、上記ドア開口の下部側を封鎖するように配置される止水板と、
上記止水板の上記縁部の屋内側面に位置するシール部材と、
上記ドア枠の左右の縦部材の下部側の屋内側面に対向する縁部を有し、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側を挟んで上記止水板に対向して配置される固定部材と、
上記止水板と上記固定部材とを互いに連結して引き合わせる締付部材と、
を備えており、
上記止水板は、上記シール部材に沿って当該シール部材よりも上記ドア開口の内側の位置で屋内側に突出する第1突出板部を有するとともに、この第1突出板部から上記ドア開口の内側方向に突出する複数の第1突起部を有しており、
上記固定部材は、上記第1突出板部よりも上記ドア開口の外側の位置で屋内側に突出して上記第1突出板部に一部が重なる第2突出板部を有するとともに、この第2突出板部の上記第1突出板部に重ならない部位から上記ドア開口の内側方向に突出する複数の第2突起部を有しており、
上記締付部材は、上記止水板と上記固定部材とを引き合わせる前の各第1突起部を収容する第1収容孔部および各第2突起部を収容する第2収容孔部を有しており、上記第1収容孔部および上記第2収容孔部の一方または両方は、上記止水板と上記固定部材とを引き合わせるために各第1突起部と各第2突起部とを互いに近づける締付孔部を有しており、当該締付部材のスライド動作によって、上記締付孔部の位置を移動させることを特徴とする。
【0008】
上記の構成であれば、上記締付部材によって、上記止水板と上記固定部材とが互いに引き合い、上記止水板と上記固定部材とが上記ドア枠の左右の縦部材の下部側を挟み込むので、ドア開口に対する止水効果を出すために扉体が閉められている必要は無く、屋内から屋外へ避難する必要が生じた場合には、上記ドア開口から避難することができる。また、上記シール部材が、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側および上記ドア枠の下部の横部材の各々の屋外側面と上記止水板の上記縁部との間に介在するので、パテ等で扉体とドア枠の隙間を塞がなくても、外水が上記止水板をすり抜けて屋内に浸水するのを抑止することができる。そして、上記締付部材は、上記第1突起部を収容する第1収容孔部および上記第2突起部を収容する第2収容孔部を有しており、スライド動作によって、上記止水板と上記固定部材とを引き合わせることができるので、多くの箇所で螺子締め等を行うのに比べて、浸水抑止具をドア開口に迅速に取り付けることができる。
【0009】
上記締付部材は、上記ドア枠の左右の縦部材の下部側の近傍の上記第1突出板部の縦部分および上記第2突出板部の縦部分に対向配置されて上下にスライドする縦スライド部材と、上記ドア枠の下部の横部材の近傍の上記第1突出板部の横部分および上記第2突出板部の横部分に対向配置されて左右にスライドする横スライド部材と、を備えてもよい。これによれば、上記締付部材の装着およびスライド操作が上下と左右それぞれで行うことができる。
【0010】
上記縦スライド部材の上下のスライド動作が操作部材によって行えるようにしてもよい。これによれば、上記縦スライド部材の上下スライド操作が容易になる。
【0011】
上記縦スライド部材は、下方向のスライド動作を足によって加えるためのペダルを備えてもよい。これによれば、上記縦スライド部材の下げスライド操作が容易になる。
【0012】
上記横スライド部材の左右のスライド動作が操作部材によって行えるようにしてもよい。これによれば、上記横スライド部材の左右のスライド操作が容易になる。
【0013】
上記第1突起部および上記第2突起部の全部または一部は、上記第1収容孔部および上記第2収容孔部の少なくとも一方の壁面に接触する部位が回転可能であってもよい。これによれば、上記締付部材のスライド操作で生じる突起部と収容孔部の壁との摩擦を低減して、このスライド操作を円滑に行わせることができる。
【0014】
上記第1突起部および上記第2突起部の全部または一部の先端が雄螺子部であり、この雄螺子部は上記第1収容孔部および上記第2収容孔部の少なくとも一方より出て位置してもよい。これによれば、上記締付部材のスライド動作によって、上記止水板と上記固定部材とを引き合わせた後、上記雄螺子部にナットを締め付けて、上記締付部材の戻り動きを防止することができる。
【0015】
上記締付孔部の奥端部は、この奥端部手前の部位に比べて、上記止水板と上記固定部材との引き合わせを弱める方向に拡張されていてもよい。これによれば、上記締付部材のスライド動作によって、上記止水板と上記固定部材とを引き合わせた後に上記締付部材が戻り動くのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明であれば、ドア開口に対する止水効果を出すために扉体が閉められている必要が無いので、屋内から屋外へ避難する必要が生じた場合には、上記ドアから避難することができ、また、パテ等で扉体とドア枠の隙間を塞ぐ必要もないという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態のドア開口の浸水抑止具および当該浸水抑止具が取り付けられた玄関ドアの下部側を示した上側部分省略断面斜視図である。
【
図2】
図1のA-A矢視の概略の拡大縦断面図である。
【
図3】
図1に示したドア開口の浸水抑止具の分解斜視図である。
【
図4】
図1に示したドア開口の浸水抑止具の取り付け説明図である。
【
図5】
図1に示したドア開口の浸水抑止具における締付部材のスライド動作を示す説明図である。
【
図6】実施形態のドア開口の浸水抑止具における締付部材の変形例を示す説明図である。
【
図7】実施形態のドア開口の浸水抑止具のトグルクランプを備える構成例を示した説明図である。
【
図8】実施形態のドア開口の浸水抑止具の突起部が回転可能である構成例を示した説明図である。
【
図9】実施形態のドア開口の浸水抑止具の突起部にナットを装着する構成例を示した説明図である。
【
図10】実施形態のドア開口の浸水抑止具の収容孔部の変形例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、実施形態のドア開口の浸水抑止具1は、例えば、玄関ドア8に取り付けて用いられる。浸水抑止具1の玄関ドア8への取り付けは、例えば、豪雨により自宅への外水の接近が予想される場合に行われる。通常時においては、浸水抑止具1は、専用のバッグに収納されるか、或いは、玄関等に設けた収納ボックス等に収納することができる。
【0019】
玄関ドア8は、ドア開口81を開閉する扉体82がヒンジ84によって回動可能にドア枠83に支持される構造を有する。上記ドア枠83は、上側戸当たり(図示せず)と、左右の縦部材としての縦戸当たり83aと、下部の横部材としての沓摺83bと、を有する。
【0020】
上記の上側戸当たり、縦戸当たり83a、および沓摺83bの各々の屋外側面には、
図2に示すように、風雨の屋内への浸入を阻止するゴムパッキン85が貼付されている。このゴムパッキン85は、例えば、内部が空洞で変形容易であり、上記扉体82が閉じられることで、この扉体82に押圧されて変形し、扉体82の縁部の屋内面側と、上記上側戸当たり、縦戸当たり83a、および沓摺83bの各々の屋外側面との間を封止する。なお、一般に、ゴムパッキン85によって、外水の屋内への浸入を阻止することは困難である。
【0021】
そして、浸水抑止具1は、
図3にも示すように、止水板11と、シール部材12と、固定部材13と、締付部材14と、を備える。
【0022】
止水板11は、例えば、腐食しにくいステンレスやアルミニウム合金を素材として形成された板材であり、高さは、例えば20cm~50cm程度とされ、上記ドア開口81の下部側を封鎖するように配置される。また、止水板11は、その横幅が上記ドア開口81の横幅(左右の縦戸当たり83a・83aの内側面間)よりも広幅であり、上記ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側および沓摺83bの各々の屋外側面に対向する縁部を有する。なお、止水板11は、外水を受ける際の押圧力で変形を生じない程度の剛性を有するのが望ましい。
【0023】
シール部材12は、止水板11における上記縁部の屋内側面に予め貼付されている。なお、シール部材12を止水板11とは別体のものとし、浸水抑止具1をドア枠83に取り付ける際に、上記止水板11に取り付けるようにしてもよい。シール部材12は、例えば、EPDM(エチレンプロピレンジエン)ゴムを材料としたテープ等からなる。また、シール部材12は、一例として、ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの突出量(横幅)よりも広い幅を有しており、また、厚さは1cm程度とされ、浸水抑止具1がドア枠83に取り付けられた際に、上記ゴムパッキン85に覆い被さるようになっている。なお、シール部材12は、EPDMゴムに限らないが、容易に変形してシール性を確保できる部材であるのが望ましい。
【0024】
固定部材13は、例えば、止水板11と同様に、ステンレスやアルミニウム合金を素材として形成された凹字状部材であり、高さは、例えば20cm~50cm程度とされる。また、固定部材13は、上記ドア開口81の横幅(左右の縦戸当たり83a・83aの内側面間)よりも広幅であり、上記ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側の屋内側面に対向する縁部を有する。固定部材13は、上記沓摺83b上に置かれて、上記ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側を挟んで上記止水板11に対向するように配置される。
【0025】
さらに、上記した止水板11は、シール部材12に沿って当該シール部材12よりも上記ドア開口81の内側の位置で屋内側に突出する凹字状の第1突出板部11aを有するとともに、この第1突出板部11aから上記ドア開口81の内側方向に突出する円柱状の複数の第1突起部11bを所定間隔で有している。
【0026】
さらに、上記した固定部材13は、第1突出板部11aよりも上記ドア開口81の外側となる位置で屋内側に突出して当該第1突出板部11aに一部が重なる凹字状の第2突出板部13aを有するとともに、この第2突出板部13aの上記第1突出板部11aに重ならない部位において上記ドア開口81の内側方向に突出する複数の円柱状の第2突起部13bを上記所定間隔と同じ間隔で有している。
【0027】
締付部材14は、止水板11と固定部材13とを互いに連結して引き合わせるものである。この締付部材14は、止水板11と固定部材13とを引き合わせる前の各第1突起部11bを収容する第1収容孔部141および各第2突起部13bを収容する第2収容孔部142の対を複数有している。さらに、第1収容孔部141は、止水板11と固定部材13とを引き合わせるために各第1突起部11bと各第2突起部13bとを互いに近づける締付孔部141aを有しており、当該締付部材14がスライドすることで、各第1突起部11bおよび各第2突起部13bの位置に締付孔部141aが移動し、止水板11と固定部材13とが引き合う。
【0028】
第1収容孔部141の一方の端側は、第1突起部11bの直径よりも例えば5~10mm程度広くされた広幅孔部分となっており、他方の端側は、孔を形成する壁面が屋内側に寄って位置することで、第1突起部11bの直径よりも僅かに広い幅で上記締付孔部141aが形成されている。上記広幅孔部分と締付孔部141aとの境界には傾斜壁面部が形成されており、上記広幅孔部分から締付孔部141aへの移行が円滑に行われるようになっている。一方、第2収容孔部142は、全体が第2突起部13bの直径よりも僅かに広い幅で形成されている。
【0029】
また、締付部材14は、第1突出板部11aの縦部分および第2突出板部13aの縦部分に対向配置されて上下にスライドする縦スライド部材14Aと、第1突出板部11aの横部分および第2突出板部13aの横部分に対向配置されて左右にスライドする横スライド部材14Bと、を別々に備えている。縦スライド部材14Aの第1収容孔部141は、上側に締付孔部141aを位置させており、縦スライド部材14Aを下方にスライド動作させることで、止水板11と固定部材13とが引き合うようにしている。
【0030】
縦スライド部材14Aに形成されている雌螺子部に、上下のスライド動作を手によって加える操作部材としてのハンドル143の雄螺子部がねじ込まれている。さらに、縦スライド部材14Aは、その下部側に、下方向のスライド動作を足によって加えるためのペダル144も備えている。また、横スライド部材14Bに形成されている雌螺子部に、左右のスライド動作を手によって加える操作部材としてのハンドル143の雄螺子部がねじ込まれている。
【0031】
上記浸水抑止具1の玄関ドア8への取り付けは、
図4および
図5に示すように、扉体82を開けた状態で、上記ドア枠83の左右の縦戸当たり83aを挟んで屋外側に止水板11を配置し、屋内側に固定部材13を配置する。これらの配置によって、止水板11の第1突出板部11aと固定部材13の第2突出板部13aの一部が重なるとともに、第1突起部11bと第2突起部13bとが、上記ドア開口81の開口面に直交する方向に並ぶ。
【0032】
上記のように並ぶ第1突起部11bと第2突起部13bに、縦スライド部材14Aの第1収容孔部141および第2収容孔部142をそれぞれはめ込む。同様に、第1突起部11bと第2突起部13bに、横スライド部材14Bの第1収容孔部141および第2収容孔部142をそれぞれはめ込む。このとき、第1突起部11bは、第1収容孔部141の上記広幅孔部分に入れる。その後に、縦スライド部材14Aおよび横スライド部材14Bをそれぞれスライドさせる。このスライドによって、第1突起部11bの位置に、第1収容孔部141の締付孔部141aが移動し、止水板11と固定部材13とが引き合い、シール部材12およびゴムパッキン85は押しつぶされ、シール部材12がゴムパッキン85に覆い被さる。
【0033】
上記の構成であれば、締付部材14によって、止水板11と固定部材13とが引き合い、止水板11と固定部材13とが上記ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側を挟み込むので、ドア開口81に対する止水効果を出すために扉体82が閉められている必要は無く、屋内から屋外へ避難する必要が生じた場合には、ドア開口81から避難することができる。また、シール部材12が、上記ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側および上記ドア枠83の下部の沓摺83bの各々の屋外側面と止水板11の上記縁部との間に介在するので、パテ等で扉体とドア枠83の隙間を塞がなくても、外水が止水板11をすり抜けて屋内に浸水するのを抑止することができる。そして、締付部材14は、第1突起部11bを収容する第1収容孔部141および第2突起部13bを収容する第2収容孔部142を有しており、スライド動作によって、止水板11と固定部材13とを引き合わせることができるので、多くの箇所で螺子締め等を行うのに比べて、浸水抑止具1をドア開口81に迅速に取り付けることができる。なお、上記締付孔部141aは第1収容孔部141に形成されたが、これに限らず、第2収容孔部142の側に形成されてもよいし、第1収容孔部141および第2収容孔部142の両方に形成されてもよい。また、上記広幅孔部分と上記締付孔部との境界には傾斜壁面部が形成されたが、これに限らず、階段状壁面であってもよい。
【0034】
また、締付部材14が縦スライド部材14Aと、横スライド部材14Bと、を別々に備えるので、当該締付部材14の装着およびスライド操作を各々簡単に行うことができる。なお、
図6に示すように、縦スライド部材14Aと横スライド部材14Bとが別々とされず、これら縦スライド部材14Aと横スライド部材14Bとが、ヒンジ14cおよび連結板14dによって連結された構成としてもよい。
【0035】
縦スライド部材14Aが上下のスライド動作を手によって加えるためのハンドルを備えると、この縦スライド部材14Aのスライド操作が容易になる。また、縦スライド部材14Aが下方向のスライド動作を足によって加えるためのペダル144を備えると、この縦スライド部材14Aの下げスライド操作が容易になる。また、横スライド部材14Bが左右のスライド動作を手によって加えるためのハンドル143を備えると、この横スライド部材14Bのスライド操作が容易になる。
【0036】
図7に示すように、例えば、横スライド部材14Bを、操作部材としてのトグルクランプ15によってスライド動作させてもよい。このような構成では、例えば、沓摺83bの上面には、トグルクランプ15のベース板の下面から下方に突出する固定ピン部15aが挿入される装着穴部83cを形成しておく。また、横スライド部材14Bに引っ掛けピン15bを設けておく。トグルクランプ15のフック15cを引っ掛けピン15bに引っ掛けてトグルクランプ15のレバー15dを操作することで、横スライド部材14Bをスライド動作させことができる。なお、トグルクランプ15を横スライド部材14Bに装着し、引っ掛けピン15bに相当するピンを沓摺83bの上面に装着できる構成とすることも可能である。また、横スライド部材14Bに限らず、縦スライド部材14Aの上下のスライド動作がトグルクランプ15によって行えるようにしてもよい。
【0037】
また、第1突起部11bおよび第2突起部13bの全部または一部は、第1収容孔部141および第2収容孔部142の少なくとも一方の壁面に接触する部位が回転可能であってもよい。
図8に示すように、例えば、第1突起部11bは、第1突出板部11aに固定された固定軸部と、この固定軸部に回転可能にはめ込まれた回転体部とにより構成されてもよい。同様に、第2突起部13bは、第2突出板部13aに固定された固定軸部と、この固定軸部に回転可能にはめ込まれた回転体部とにより構成されてもよい。これによれば、締付部材14のスライド操作で生じる第1突起部11bの回転体部と第1収容孔部141の壁との摩擦を低減して、このスライド操作を円滑に行わせることができる。
【0038】
また、
図9に示すように、第1突起部11bおよび第2突起部13bの全部または一部がその先端に雄螺子部Bを有しており、この雄螺子部Bが第1収容孔部141および第2収容孔部142の少なくとも一方から、所定長さ出て位置してもよい。これによれば、締付部材14のスライド動作によって、止水板11と固定部材13とを引き合わせた後、上記雄螺子部BにナットNを締め付けて、締付部材14の戻り動きを防止することができる。ナットNは手操作の容易な蝶ナットとするのがよい。
【0039】
図10に示すように、締付孔部141aの奥端部141bは、この奥端部141bの手前の部位に比べて、止水板11と固定部材13との引き合わせを弱める方向、この例では、屋外方向に拡張されていてもよい。これによれば、締付部材14のスライド動作によって、止水板11と固定部材13とを引き合わせた後に、締付部材14が戻り動くのを抑制することができる。
【0040】
また、少なくとも、止水板11における上記縁部(ドア枠83の左右の縦戸当たり83aの下部側および沓摺83bの各々の屋外側面に対向する縁部)および第1突出板部11aが板材からなっていればよい。すなわち、止水板11は、その全体が板材からなるものに限らず、上記縁部および第1突出板部11aが板材からなり、この板材に例えば防水シートが水密状態に接着された構造のものでもよい。
【0041】
なお、この実施形態の浸水抑止具1は、止水板11をドア開口81に取り付けた状態でも、扉体82を通常通り閉めことができるという利点があるが、このような形態の浸水抑止具1に限られない。ドア開口81に対する止水効果を出すために扉体82は閉められる必要は無いので、止水板11をドア開口81に取り付けた状態では扉体82が閉じられない態様としてもよい。
【0042】
また、上述したように、上記ゴムパッキン85が変形性に優れたものである場合には、シール部材12は、上記変形に追従してシール性を確保できる素材から成るのが望ましいが、上記ゴムパッキン85としてあまり変形しないものが用いられる場合には、シール部材12は変形追従性が低いものでもよい。
【0043】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0044】
1 :浸水抑止具
8 :玄関ドア
11 :止水板
11a :第1突出板部
11b :第1突起部
12 :シール部材
13 :固定部材
13a :第2突出板部
13b :第2突起部
14 :締付部材
14A :縦スライド部材
14B :横スライド部材
14c :ヒンジ
14d :連結板
15 :トグルクランプ(操作部材)
15a :固定ピン部
15b :引っ掛けピン
15c :フック
15d :レバー
81 :ドア開口
82 :扉体
83 :ドア枠
83a :縦戸当たり
83b :沓摺
83c :装着穴部
84 :ヒンジ
85 :ゴムパッキン
141 :第1収容孔部
141a :締付孔部
141b :奥端部
142 :第2収容孔部
143 :ハンドル(操作部材)
144 :ペダル
B :雄螺子部
N :ナット