(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042181
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】構造物形成システム、構造物形成方法及び構造物形成プログラム
(51)【国際特許分類】
B28B 1/30 20060101AFI20240321BHJP
E04G 21/02 20060101ALI20240321BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240321BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240321BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240321BHJP
【FI】
B28B1/30
E04G21/02 ESW
B33Y30/00
B33Y10/00
B33Y50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146713
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】中村 允哉
(72)【発明者】
【氏名】池田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】坂上 肇
(72)【発明者】
【氏名】大川 悠奈
【テーマコード(参考)】
2E172
4G052
【Fターム(参考)】
2E172AA07
2E172DC08
2E172DE06
2E172HA03
4G052DA01
4G052DB12
4G052DC06
(57)【要約】
【課題】形状の自由度が高い構造物を効率的に形成するための構造物形成システム、構造物形成方法及び構造物形成プログラムを提供する。
【解決手段】構造物形成システムCS1は、モルタルをノズル11から吐出させながらノズル11を移動させて、モルタルを積層させたモルタル枠を形成するプリンタ10と、補強材をノズル21から吐出させながらノズル21を移動させて、補強材を積層させた補強部材を形成するプリンタ20と、プリンタ10とプリンタ20とを制御する管理装置30と、を含んで構成される。管理装置30は、プリンタ10の積層状況に応じて、プリンタ20による積層を制御するとともに、プリンタ20の積層状況に応じて、プリンタ10による積層条件を制御する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
モルタルを第1ノズルから吐出させながら前記第1ノズルを移動させて、前記モルタルを積層させたモルタル枠を形成する第1プリンタと、
補強材を第2ノズルから吐出させながら前記第2ノズルを移動させて、前記補強材を積層させた補強部材を形成する第2プリンタと、
前記第1プリンタと前記第2プリンタとを制御する管理装置と、を含んで構成される構造物形成システムであって、
前記管理装置は、
前記第1プリンタの積層状況に応じて、前記第2プリンタによる積層を制御するとともに、
前記第2プリンタの積層状況に応じて、前記第1プリンタによる積層条件を制御することを特徴とする構造物形成システム。
【請求項2】
モルタルを第1ノズルから吐出させながら前記第1ノズルを移動させて、前記モルタルを積層させたモルタル枠を形成する第1プリンタと、
補強材を第2ノズルから吐出させながら前記第2ノズルを移動させて、前記補強材を積層させた補強部材を形成する第2プリンタと、
前記第1プリンタと前記第2プリンタとを制御する管理装置と、を含んで構成される構造物形成システムを用いて、構造物を形成するための方法であって、
前記管理装置が、
前記第1プリンタの積層状況に応じて、前記第2プリンタによる積層を制御するとともに、
前記第2プリンタの積層状況に応じて、前記第1プリンタによる積層条件を制御することを特徴とする構造物形成方法。
【請求項3】
モルタルを第1ノズルから吐出させながら前記第1ノズルを移動させて、前記モルタルを積層させたモルタル枠を形成する第1プリンタと、
補強材を第2ノズルから吐出させながら前記第2ノズルを移動させて、前記補強材を積層させた補強部材を形成する第2プリンタと、
前記第1プリンタと前記第2プリンタとを制御する管理装置と、を含んで構成される構造物形成システムを用いて、構造物を形成するためのプログラムであって、
前記管理装置を、
前記第1プリンタの積層状況に応じて、前記第2プリンタによる積層を制御するとともに、
前記第2プリンタの積層状況に応じて、前記第1プリンタによる積層条件を制御する手段として機能させることを特徴とする構造物形成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、3次元プリンタを用いて形成したモルタルの枠部を備える構造物形成システム、構造物形成方法及び構造物形成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
立体の構造物を形成する場合、3次元(3D)プリンタを利用することがある。この3Dプリンタは、水平移動するノズルから材料を吐出させて形成した各層を積み重ねることにより立体形状を形成する(例えば、特許文献1、非特許文献1参照。)。特許文献1の構造物形成システムは、ノズルの吐出口からモルタルを下方に吐出させながら、ノズルを移動させることにより、構造物を形成する。また、非特許文献1には、3Dプリンタで形成した枠で囲まれた領域内に、超高強度高靭性の補強コンクリートを注入する技術が記載されている。
【0003】
一方、3Dプリンタで形成した型枠内に、補強コンクリートを注入する場合、注入された補強コンクリートによって、枠の側方から圧力(側圧)が加わる。この側圧が大きい場合、型枠が破損することがある。そこで、枠内に注入したモルタルの側圧に対抗するための技術も検討されている(例えば、特許文献2参照。)。この文献に記載された技術では、外枠と内枠のモルタルの積層途中にリング部を埋め込む。そして、外枠のリング部と内枠のリング部とを結合したセパレータを内部構造体に埋め込む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-69661号公報
【特許文献2】特開2021-62488号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】大林組、「3Dプリンター用特殊モルタルと超高強度繊維補強コンクリートとの複合構造を開発しました」、[online]、[令和4年9月11日検索]、インターネット〈URL:https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20190829_1.html〉
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したモルタルの積層技術では、モルタルに由来する引張力の負担に課題がある。非特許文献1に記載されているように、補強コンクリートとして超高強度高靭性のコンクリートを用いる場合には、材料コストが高くなる。また、モルタルの積層後に、鉄筋やPC鋼棒を型枠内に挿入した後で、コンクリートを打設することも可能である。しかしながら、後から鉄筋やPC鋼棒を挿入する場合には、挿入可能な形状に制限される。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための構造物形成システムは、モルタルを第1ノズルから吐出させながら前記第1ノズルを移動させて、前記モルタルを積層させたモルタル枠を形成する第1プリンタと、補強材を第2ノズルから吐出させながら前記第2ノズルを移動させて、前記補強材を積層させた補強部材を形成する第2プリンタと、前記第1プリンタと前記第2プリンタとを制御する管理装置と、を含んで構成される。そして、前記管理装置は、前記第1プリンタの積層状況に応じて、前記第2プリンタによる積層を制御するとともに、前記第2プリンタの積層状況に応じて、前記第1プリンタによる積層条件を制御する。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、形状の自由度が高い構造物を効率的に形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態のハードウェア構成の説明図である。
【
図4】実施形態の積層の説明図であって、(a)は1回目のモルタルの積層、(b)は1回目の金属の積層、(c)は2回目のモルタルの積層、(d)は2回目の金属の積層の説明図である。
【
図5】実施形態の積層の説明図であって、(a)は3回目のモルタルの積層、(b)は3回目の金属の積層、(c)はコンクリートの打設の説明図である。
【
図6】別例の処理手順の説明図であって、(a)は1回目のモルタルの積層、(b)は連結部材の配置、(c)は1回目の金属の積層、(d)は3回目の金属の積層、(e)はコンクリートの打設の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1~
図5を用いて、構造物形成システム、構造物形成方法及び構造物形成プログラムを具体化した一実施形態を説明する。
図1に示すように、構造物形成システムCS1は、ネットワークを介して接続されたプリンタ10,20、管理装置30を用いる。本実施形態では、プリンタ10,20を用いて、木製の台座500上に、構造物を形成する。この台座500の積層領域501内には、金属マーカ502が配置される。この金属マーカ502は、後述する金属積層時の母材となる。
【0011】
プリンタ10は、モルタルを積層する3次元プリンタである。このプリンタ10は、第1ノズルとしてのノズル11、ロボットアーム12、圧送ポンプ13、調整装置14を備える。
ノズル11は、取付部を介して、移動手段としてのロボットアーム12に取り付けられる。ノズル11は、このロボットアーム12に支持され、このロボットアーム12の動きに従って水平方向や上下方向に移動する。ロボットアーム12は、後述する管理装置30の制御部31からの指示によって移動が制御される。本実施形態では、移動時においてもノズル11からのモルタルの吐出方向が常に下方になるように、ロボットアーム12を制御する。
【0012】
ノズル11の先端には、モルタルを下方に吐出する吐出口を備える。ノズル11の吐出口と反対側の端部には、ホースh1の端部が接続されている。ホースh1には、圧送ポンプ13、調整装置14が直列に接続される。この圧送ポンプ13は、圧力により、ホースh1を介して、モルタルをノズル11に供給する。調整装置14は、モルタルの硬化速度を調整するために凝結遅延剤(添加剤)の添加量(積層条件)を調節する。
【0013】
プリンタ20は、金属(補強材)を積層する3次元プリンタである。このプリンタ20は、例えば、WAAM(Wire Arc Additive Manufacturing)方式により実現される。WAAM方式としては、例えば、母材とワイヤとの間のアークを形成しながら、溶滴を母材に移行させることにより、金属線を3次元形状で積層(形成)するCMT(Cold Metal Transfer)技術を用いることができる。
【0014】
このプリンタ20は、金属ワイヤを吐出する第2ノズルとしてのノズル21、ロボットアーム22を備える。
ノズル21は、取付部を介して、移動手段としてのロボットアーム22に取り付けられる。ノズル21は、このロボットアーム22に支持され、このロボットアーム22の動きに従って水平方向や上下方向に移動する。ロボットアーム22は、後述する管理装置30の制御部31からの指示によって移動が制御される。
【0015】
(ハードウェア構成の説明)
図2を用いて、プリンタ10,20、管理装置30を構成する情報処理装置H10のハードウェア構成を説明する。情報処理装置H10は、通信装置H11、入力装置H12、表示装置H13、記憶部H14、プロセッサH15を備える。なお、このハードウェア構成は一例であり、他のハードウェアにより実現することも可能である。
【0016】
通信装置H11は、他の装置との間で通信経路を確立して、データの送受信を実行するインタフェースであり、例えばネットワークインタフェースや無線インタフェース等である。
【0017】
入力装置H12は、各種情報の入力を受け付ける装置であり、例えばマウスやキーボード等である。表示装置H13は、各種情報を表示するディスプレイ等である。
記憶部H14は、プリンタ10,20、管理装置30の各種機能を実行するためのデータや各種プログラムを格納する記憶装置である。記憶部H14の一例としては、ROM、RAM、ハードディスク等がある。
【0018】
プロセッサH15は、記憶部H14に記憶されるプログラムやデータを用いて、プリンタ10,20、管理装置30における各処理を制御する。プロセッサH15の一例としては、例えばCPUやMPU等がある。このプロセッサH15は、ROM等に記憶されるプログラムをRAMに展開して、各処理のための各種プロセスを実行する。
【0019】
プロセッサH15は、自身が実行するすべての処理についてソフトウェア処理を行なうものに限られない。例えば、プロセッサH15は、自身が実行する処理の少なくとも一部についてハードウェア処理を行なう専用のハードウェア回路(例えば、特定用途向け集積回路:ASIC)を備えてもよい。すなわち、プロセッサH15は、以下で構成し得る。
【0020】
〔1〕コンピュータプログラム(ソフトウェア)に従って動作する1つ以上のプロセッサ
〔2〕各種処理のうち少なくとも一部の処理を実行する1つ以上の専用のハードウェア回路、或いは
〔3〕それらの組み合わせ、を含む回路(circuitry)
プロセッサは、CPU並びに、RAM及びROM等のメモリを含み、メモリは、処理をCPUに実行させるように構成されたプログラムコード又は指令を格納している。メモリ、すなわちコンピュータ可読媒体は、汎用又は専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。
【0021】
(管理装置30)
次に、
図1を用いて、管理装置30の機能を説明する。
管理装置30は、制御部31、設計情報記憶部32を備えている。
【0022】
制御部31は、構造物形成プログラムを実行することにより、第1制御部311、第2制御部312、連携制御部313として機能する。
第1制御部311は、構造物の型枠(モルタル枠)を形成するために、ロボットアーム12の動きを制御する処理を実行する。このロボットアーム12の動きによって、積層させるモルタルの経路に応じてノズル11を移動させる。
更に、第1制御部311は、圧送ポンプ13、調整装置14を制御する処理を実行する。具体的には、第1制御部311は、圧送ポンプ13の駆動を制御することにより、モルタルの吐出量を調節する。また、第1制御部311は、調整装置14を制御することにより、添加剤の添加量を調節する。
【0023】
第2制御部312は、型枠内の補強部材を形成するために、ロボットアーム22の動きを制御する処理を実行する。このロボットアーム22の動きによって、積層させる金属の経路に応じてノズル21を移動させる。
連携制御部313は、第1制御部311と第2制御部312とを連携させる処理を実行する。本実施形態では、連携制御部313は、プリンタ10によるモルタルの積層状況に応じて、プリンタ20に対して、金属の積層を指示する。ここでは、連携制御部313は、プリンタ10のロボットアーム12と、プリンタ20のロボットアーム22とが干渉しないように制御する。また、連携制御部313は、金属の積層状況に応じて、モルタルの積層を制御する。ここでは、連携制御部313は、金属の積層により生じる温度上昇(環境温度)を予測して、プリンタ10の圧送ポンプ13、調整装置14を制御する。具体的には、先行積層の下層モルタルが、後続積層の上層モルタルと接合可能なように、モルタルの吐出量、添加剤の添加量によりモルタルの硬化時間を調節する。更に、連携制御部313は、金属の積層状況(金属の積層量、積層領域の距離、積層時間等)に応じて環境温度の上昇を予測する温度予測関数を備える。
【0024】
設計情報記憶部32には、構造物を積層により形成するために、プリンタの制御情報(プリンタ10の第1制御情報、プリンタ20の第2制御情報)が記録される。この制御情報は、積層により構築する構造物の設計を行なった場合に記録される。第1制御情報は、プリンタ10を動作させることにより、一連のモルタル枠を形成するための情報である。このモルタル枠は、所望の形状の構造物の外面を構成するように設計される。第2制御情報は、プリンタ20を動作させることにより、一連の補強部材を形成するための情報である。この補強部材は、構造物において所望の構造耐力を有するように設計される。第1制御情報、第2制御情報には、動作開始条件、経路に関する情報等が記録される。
【0025】
動作開始条件情報は、プリンタ10,20による積層を開始する条件を示す情報である。例えば、第2制御情報の動作開始条件には、第1制御情報の進捗(所定階層の積層終了等)が記録される。また、第1制御情報の動作開始条件には、第2制御情報の進捗が記録される。この動作開始条件情報により、複数の第1制御情報、第2制御情報を、順次、切り替えたり、併用したりして、プリンタ10,20により、一連の所定経路区間毎にモルタル枠、補強部材を積層する。
【0026】
経路情報は、プリンタ10のノズル11、プリンタ20のノズル21の移動経路を特定するための情報である。この移動情報は、一連の移動経路について、時系列に、ノード位置(3次元座標)が並べられた情報である。この時系列のノード間を結んだリンク(走行経路)上を、ノズル11,ノズル21を移動させることにより、それぞれ、モルタル積層処理、金属積層処理を行なう。
【0027】
(構造物の形成方法)
次に、
図3~
図5を用いて、上述した構造物の形成方法を説明する。この構造物の形成は、モルタル積層処理、金属積層処理により実現される。
まず、管理装置30の制御部31は、添加量の制御処理を実行する(ステップS11)。具体的には、制御部31の第1制御部311は、モルタルの積層領域の環境温度に応じて、凝結遅延剤の添加量を決定する。ここでは、第1制御部311は、上層の積層までに下層の積層が凝結しないように、硬化速度を調整する添加量を決定する。そして、第1制御部311は、調整装置14に対して、決定した添加量の投入を指示する。
【0028】
次に、管理装置30の制御部31は、モルタルノズル移動処理を実行する(ステップS12)。具体的には、制御部31の第1制御部311は、モルタル枠の最下層(第1層)を形成する。ここでは、第1制御部311は、プリンタ10のノズル11を積層位置に対応させて配置する。そして、第1制御部311は、ノズル11の吐出口からモルタルを吐出させる。そして、第1制御部311は、モルタルを吐出させながら、モルタル積層の第1制御情報の経路に従って、ロボットアーム12を動かすことにより、モルタル枠を形成する第1層を形成する。
【0029】
そして、モルタル枠の第1層の形成を完了した場合、第1制御部311は、ノズル11の吐出口を一階層分上げて、第1層と同様に、第1層の上層に第2層を形成する。この階層形成を、第1制御情報に従って、所定の階層数まで繰り返す。所定の階層数は、モルタル枠の形状に応じて、内部に補強部材を積層可能な高さにより決定される。ここでは、後続する金属積層処理において、プリンタ20のロボットアーム22が動作可能な範囲を実現できるアスペクト比を用いて決定される。ここで、アスペクト比は、プリンタ20のノズル21を挿入する開口面の大きさ、及び高さの割合である。この高さは、金属積層を行なう空間のモルタル階層数に対応する。例えば、開口面が大きい場合には、所定の階層数を大きくし、開口面が小さい場合には、所定の階層数を小さくする。
【0030】
所定の階層まで積層した場合、制御部31の第1制御部311は、プリンタ10のノズル11からモルタルの吐出を停止する。
例えば、
図4(a)に示すように、プリンタ10を用いたモルタル積層により、3階層(所定の階層)のモルタル枠600を形成する。
【0031】
次に、管理装置30の制御部31は、モルタル積層領域の判定処理を実行する(ステップS21)。具体的には、制御部31の連携制御部313は、モルタル積層の第1制御情報に基づいて、モルタルの積層状況を判定する。そして、金属積層の第2制御情報の積層開始条件を満足している場合には、連携制御部313は、第2制御部312に対して、金属の積層開始を指示する。
【0032】
次に、管理装置30の制御部31は、金属ノズル移動処理を実行する(ステップS22)。具体的には、制御部31の第2制御部312は、補強部材を形成する。ここでは、第2制御部312は、プリンタ20のノズル21を積層位置に対応させて配置する。そして、第2制御部312は、ノズル21の吐出口から金属ワイヤを供給し、溶接を行ないながら、第2制御情報の経路に従って、ロボットアーム22を動かすことにより、補強部材を形成する。
【0033】
図4(b)に示すように、プリンタ20を用いた金属積層により、モルタル枠600で囲まれた領域内において、金属マーカ502に接続された補強部材610を形成する。
次に、管理装置30の制御部31は、終了判定処理を実行する(ステップS23)。具体的には、制御部31の連携制御部313は、後続の積層工程の有無により終了を判定する。この判定は、設計情報記憶部32を用いて、先行の制御情報を積層開始条件とする後続の制御情報の有無により行なわれる。
【0034】
終了判定処理(ステップS23)において、後続の積層工程が残っていると判定した場合には、管理装置30の制御部31は、金属積層状況の判定処理を実行する(ステップS13)。具体的には、制御部31の連携制御部313は、金属の第2制御情報による金属の積層状況が、モルタル積層の第1制御情報の積層開始条件を満足していると判定した場合には、第1制御部311に対して、モルタルの積層開始を指示する。この場合、後続の第2制御情報による金属の積層状況(金属の積層量、積層領域の距離、積層時間等)に応じて、温度予測関数を用いて環境温度の上昇を予測する。そして、連携制御部313は、第1制御部311に対して、予測した環境温度に関する情報を提供する。この場合、管理装置30の制御部31は、添加量の制御処理(ステップS11)以降の処理を繰り返す。
【0035】
図4(c)に示すように、プリンタ10を用いたモルタル積層により、モルタル枠600の上層に、更に3階層を積層したモルタル枠601を形成する。
次に、
図4(d)に示すように、モルタル積層の終了後、プリンタ20を用いた金属積層により、先行の金属積層の補強部材610を母材として補強部材611を形成する。
【0036】
次に、
図5(a)に示すように、プリンタ10を用いたモルタル積層により、モルタル枠601の所定領域の上層に、更に3階層を積層したモルタル枠602を形成する。
次に、
図5(b)に示すように、プリンタ20を用いた金属積層により、先行の金属積層の補強部材611を母材として補強部材612を形成する。
【0037】
終了判定処理(ステップS23)において、すべての積層工程を終了と判定した場合には、プリンタ10,20による積層処理を終了する。
そして、モルタル枠内に、コンクリートの打設(ステップS31)を行なう。
【0038】
図5(c)に示すように、モルタル枠601,602を型枠として用いて、コンクリート700を打設する。これにより、構造物710が完成する。この構造物710は、モルタル枠602を外面に有し、内部に補強部材612を備える。
【0039】
(作用)
本実施形態によれば、プリンタ10によるモルタル積層と、プリンタ20を用いた金属積層とを連携させることにより、モルタル枠内に補強部材が形成される。
【0040】
本実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態では、管理装置30の制御部31は、添加量の制御処理を実行する(ステップS11)。これにより、次工程のタイミングに応じて、先行積層のモルタルの硬化を調整することができる。モルタル積層においては、先行積層のモルタルが、後続積層までに硬化してしまうと、階層間の接合が困難になる。本実施形態では、プリンタ10によるモルタル積層とともに、プリンタ20による金属積層を行なうので、凝結遅延剤の添加量を制御することにより、両積層のタイミングを考慮することができる。
【0041】
(2)本実施形態では、管理装置30の制御部31は、モルタルノズル移動処理を実行する(ステップS12)。これにより、構造物の外面を構成するモルタル枠を形成することができる。ここでは、プリンタ10を用いることにより、比較的自由度が高い形状を形成することができる。
【0042】
(3)本実施形態では、管理装置30の制御部31は、モルタル積層領域の判定処理を実行する(ステップS21)。これにより、モルタルの積層状況に応じて、金属の積層を制御することができる。複数のプリンタ10,20を用いるため、ロボットアーム12,22間の干渉等を抑制することができる。
【0043】
(4)本実施形態では、管理装置30の制御部31は、金属ノズル移動処理を実行する(ステップS22)。これにより、モルタル枠に囲まれた領域に補強部材を形成することができる。モルタル積層の途中段階で、金属積層を行なうので、プリンタ20を用いることにより、目的に応じた補強部材の形状を形成することができる。
【0044】
(5)本実施形態では、管理装置30の制御部31は、金属積層状況の判定処理を実行する(ステップS13)。これにより、金属の積層状況に応じて、次工程のモルタルを積層することができる。金属積層により、温度上昇が生じる可能性があるが、この温度上昇を予測して、添加量の制御処理(ステップS11)を実行することができる。
【0045】
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
・上記実施形態では、プリンタ10,20を用いる。構造物の形成に用いるプリンタ数は複数であれば、2台に限定されるものではない。
【0046】
・上記実施形態では、補強材として金属を積層するが、コンクリートを補強できる材料であれば、金属に限定されるものではない。
・上記実施形態では、モルタル積層後に金属積層を行なう。補強部材610が、モルタル積層の障害にならなければ、積層の順番は限定されるものではない。
【0047】
・上記実施形態では、木製の台座500上に金属マーカ502を配置する。金属製の台座500を用いてもよい。この場合には、金属マーカ502を用いないで、台座500を母材として用いることができる。
・上記実施形態では、設計情報記憶部32に記録された第1制御情報、第2制御情報を用いて、プリンタ10,20を制御する。ここでは、動作開始条件情報を用いて、複数の第1制御情報、第2制御情報を、順次、切り替えたり、併用したりして、プリンタ10,20により、一連のモルタル枠、補強部材を積層する。これに代えて、動作開始条件情報を用いないで、積層状況を動的に判断して、積層の開始、中断、再開を行なうようにしてもよい。この場合には、積層開始から終了までのすべてのモルタル積層、金属積層についての経路情報を、それぞれ、第1制御情報、第2制御情報に記録しておく。そして、管理装置30の制御部31は、プリンタ10,20のロボットアーム12,22の干渉や積層可能なアスペクト比、環境温度を動的に予測する。この場合、プリンタ10,20を考慮して、アスペクト比、環境温度に応じた積層条件を動的に判断しながら、第1制御情報、第2制御情報による積層の中断、再開を繰り返す。
【0048】
・上記実施形態では、金属マーカ502を母材として、プリンタ20を用いて補強部材を形成する。ここで、補強部材610をモルタル枠600に接続してもよい。この場合には、所定のモルタル積層を行なった場合に、積層上に金属製の連結部材を配置する。そして、プリンタ20を用いた金属積層において、連結部材を母材として、補強部材と接合する。この場合、対向するモルタル枠600に連結部材を配置し、両者を接続する補強部材を、金属積層により形成することにより、セパレータとして機能させることができる。
【0049】
図6(a)に示すように、プリンタ10を用いたモルタル積層により、3階層(所定の階層)のモルタル枠600を形成する。
次に、
図6(b)に示すように、3階層(所定の階層)のモルタル枠600上に、連結部材800を載置する。この連結部材800は、金属積層領域に対して、一部が突起するように載置される。
【0050】
次に、
図6(c)に示すように、プリンタ20を用いた金属積層により、金属マーカ502、連結部材800に接続された補強部材615を形成する。
そして、
図6(d)に示すように、モルタル積層、連結部材800の配置、金属積層を繰り返すことにより、モルタル枠605内に配置された補強部材616を形成する。
【0051】
図6(e)に示すように、モルタル枠605を型枠として用いて、コンクリート700を打設する。これにより、構造物720が完成する。この構造物720は、モルタル枠605を外面に有し、内部に補強部材616を備える。この場合、連結部材800に接続された補強部材616が、コンクリート700の打設時のセパレータとして機能する。
【0052】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(a)前記管理装置が、前記第1プリンタによって積層させたモルタル枠で囲まれた領域のアスペクト比に基づいて、前記第2プリンタを動作させることを特徴とする請求項1に記載の構造物形成システム。
【0053】
(b)前記管理装置が、前記第2プリンタによる積層に応じて、環境温度の上昇を予測して、前記第1プリンタの積層条件を調整することを特徴とする請求項1又は(a)に記載の構造物形成システム。
【0054】
(c)前記管理装置が、前記予測した環境温度に応じて、モルタルへの凝結遅延剤の添加量を調節することを特徴とする(b)に記載の構造物形成システム。
(d)前記管理装置が、前記モルタル積層の途中の積層モルタル枠上に載置された連結部材を連結する補強部材を、前記第2プリンタを用いて積層することを特徴とする請求項1、(a)~(c)に記載の構造物形成システム。
【符号の説明】
【0055】
CS1…構造物形成システム、10,20…プリンタ、11,21…ノズル、12,22…ロボットアーム、13…圧送ポンプ、14…調整装置、30…管理装置、31…制御部、311…第1制御部、312…第2制御部、313…連携制御部、32…設計情報記憶部、600…モルタル枠、610…補強部材、700…コンクリート。