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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042196
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】監視システム及び監視方法
(51)【国際特許分類】
   B21B 28/00 20060101AFI20240321BHJP
   B21B 27/10 20060101ALI20240321BHJP
   B21B 38/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B21B28/00
B21B27/10 A
B21B38/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146744
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(74)【代理人】
【識別番号】100123386
【弁理士】
【氏名又は名称】熊坂 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196667
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100130834
【弁理士】
【氏名又は名称】森 和弘
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 大洋
(57)【要約】
【課題】ロールを停止することなく、ロールや冷却装置の異常を監視することができ、しかも、冷却装置の異常を早期に発見することのできる監視システム及び監視方法を提供する。
【解決手段】熱間材から熱が伝達され、かつ、冷却装置3によって冷却されるロール2を監視する監視システム1であって、ロール2の熱画像を撮影する撮影装置6と、撮影装置6によって撮影した熱画像に基づいて冷却装置3の異常を監視する監視装置7と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間材から熱が伝達され、かつ、冷却装置によって冷却されるロールを監視する監視システムであって、
前記ロールの熱画像を撮影する撮影装置と、
前記撮影装置によって撮影した前記熱画像に基づいて前記冷却装置の異常を監視する監視装置と、
を備える、監視システム。
【請求項2】
前記監視装置は、前記熱画像に基づいて前記ロールの温度を推定し、当該推定した前記ロールの温度が予め設定された基準温度を超える場合に、前記冷却装置に異常があると判断する、
請求項1に記載の監視システム。
【請求項3】
前記冷却装置は、前記ロールの下側に配置されており、前記ロールの軸線方向に延びる冷却流体が流動するパイプと、前記パイプの軸線方向に予め定めた間隔をあけて設けられており、前記ロールに前記冷却流体を供給する複数の供給部と、を備え、
前記監視装置は、前記ロールの温度が前記基準温度を超える部分の下側に位置する供給部に異常があると判断する、
請求項2に記載の監視システム。
【請求項4】
前記監視装置は、前記ロールが前記熱間材に接触しているか否かを検知し、前記ロールが前記熱間材に接触していない場合に、前記ロールの温度が基準温度以内か否かを判定する、請求項2に記載の監視システム。
【請求項5】
前記監視装置は、前記冷却装置に異常があると判断した場合に、前記冷却装置の異常を報知する報知部をさらに備える、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の監視システム。
【請求項6】
前記撮影装置は、前記ロールの軸線方向で前記ロールの全長に亘って前記熱画像を撮影する、
請求項1に記載の監視システム。
【請求項7】
前記ロールは、前記熱間材を搬送する搬送コンベヤを構成する搬送ロールと、前記熱間材を圧延する圧延ロールとのうちの少なくとも一つである、
請求項1に記載の監視システム。
【請求項8】
熱間材から熱が伝達され、かつ、冷却装置によって冷却されるロールを監視する監視方法であって、
前記ロールの熱画像を撮影する撮影工程と、
前記撮影工程で撮影した熱画像を監視する監視工程と、
を有し、
前記監視工程では、前記熱画像に基づいて前記ロールの温度を特定し、当該特定された前記ロールの温度が予め設定された基準温度を超える場合に、前記冷却装置に異常があると判断する、
監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、監視システム及び監視方法に関し、特に、熱間材から熱を受け、かつ、冷却装置によって冷却されるロールを監視する監視システム及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製鉄所の製造ラインでは、様々なロールが利用されている。当該ロールとしては、例えば熱間鋼板(以下、熱間材と記す。)などを搬送する搬送ロールや、熱間材を圧延する圧延ロール等が挙げられる。この種のロールは主として金属材料によって構成されるため、熱間材から熱を受けてその温度が上昇すると、軟化あるいは強度が低下して摩耗しやすくなり、あるいは、ロールの表面に疵が生じる等の異常が生じる可能性がある。そのため、例えば、ロールに冷却水をスプレーして冷却するなどの方法によってロールを冷却する冷却装置がロールの近傍に設けられている。
【0003】
特許文献1には、ロールの異常を監視する装置の一例が記載されている。その装置は、ロールの表面を撮影するカメラを備えており、当該カメラによって撮影した画像に基づいて、ロールの表面の欠陥を検出するように構成されている。また、特許文献2には、ロール回転数計や板厚測定器を用いて圧延ロールの摩耗を監視する圧延ロールの表面性状の監視方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11-160243号公報
【特許文献2】特開平2-255207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された装置は、ロールの表面の欠陥や摩耗等を監視するものであるため、ロールの表面の欠陥や摩耗等の原因となり得るロールの冷却装置の異常を監視することができない。したがって、冷却装置の異常を発見するためには、各ロールの冷却装置を一つずつ点検せざるを得ない。また、製鉄所の製造ラインには、膨大な数のロールが設けられているため、冷却装置の点検には多大な労力を要する。さらに、冷却装置の点検を行う作業者の安全を考慮すると、冷却装置の点検はロールの停止中、すなわちロールによる熱間材の搬送や圧延を停止している場合に限られる。そのため、冷却装置の異常を早期に発見することができない可能性がある。なお、特許文献2に記載の監視方法であっても、上述した課題と同様の課題がある。
【0006】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、ロールを停止することなく、ロールや冷却装置の異常を監視することができ、しかも、冷却装置の異常を早期に発見することのできる監視システム及び監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の目的を達成するために、
[1]熱間材から熱が伝達され、かつ、冷却装置によって冷却されるロールを監視する監視システムであって、前記ロールの熱画像を撮影する撮影装置と、前記撮影装置によって撮影した前記熱画像に基づいて前記冷却装置の異常を監視する監視装置と、を備える、監視システム。
[2]前記監視装置は、前記熱画像に基づいて前記ロールの温度を推定し、当該推定した前記ロールの温度が予め設定された基準温度を超える場合に、前記冷却装置に異常があると判断する、上記の[1]に記載の監視システム。
[3]前記冷却装置は、前記ロールの下側に配置されており、前記ロールの軸線方向に延びる冷却流体が流動するパイプと、前記パイプの軸線方向に予め定めた間隔をあけて設けられており、前記ロールに前記冷却流体を供給する複数の供給部と、を備え、前記監視装置は、前記ロールの温度が前記基準温度を超える部分の下側に位置する供給部に異常があると判断する、上記の[2]に記載の監視システム。
[4]前記監視装置は、前記ロールが前記熱間材に接触しているか否かを検知し、前記ロールが前記熱間材に接触していない場合に、前記ロールの温度が前記基準温度以内か否かを判定する、上記の[2]に記載の監視システム。
[5]前記監視装置は、前記冷却装置に異常があると判断した場合に、前記冷却装置の異常を報知する報知部をさらに備える、上記の[1]ないし[4]のいずれかに記載の監視システム。
[6]前記撮影装置は、前記ロールの軸線方向で前記ロールの全長に亘って前記熱画像を撮影する、上記の[1]に記載の監視システム。
[7]前記ロールは、前記熱間材を搬送する搬送コンベヤを構成する搬送ロールと、前記熱間材を圧延する圧延ロールとのうちの少なくとも一つである、上記の[1]に記載の監視システム。
[8]熱間材から熱が伝達され、かつ、冷却装置によって冷却されるロールを監視する監視方法であって、前記ロールの熱画像を撮影する撮影工程と、前記撮影工程で撮影した熱画像を監視する監視工程と、を有し、前記監視工程では、前記熱画像に基づいて前記ロールの温度を特定し、当該特定された前記ロールの温度が予め設定された基準温度を超える場合に、前記冷却装置に異常があると判断する、監視方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、撮影装置で撮影したロールの熱画像に基づいて冷却装置の異常を監視するため、ロールを停止することがない。また、冷却装置を常時監視することができるため、冷却装置の異常を早期に発見することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る監視システムの一例を示す図である。
図2】本発明に係る監視システムで実行される制御の一例を示すフローチャートである。
図3】画像データの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る実施形態について説明する。図1は、本発明に係る監視システムの一例を示す図である。図1に示す監視システム1は、熱間鋼板(図示せず。以下、熱間材と記す。)を搬送するロール2の異常を監視することによってロール2を冷却する冷却装置3の異常を監視するように構成されている。
【0011】
熱間材は、所定温度(例えば850℃~1200℃程度)に熱せられた鋼板や鋼管等の材料を意味している。ロール2は、一例として、熱間材を所定箇所に向けて搬送する搬送コンベヤを構成する複数の搬送ロールや、熱間材を予め設定された厚さに圧延する圧延ロールなどを挙げることができる。
【0012】
搬送コンベヤは、例えば、従来知られたローラーコンベヤであってよい。搬送コンベヤは、複数の搬送ロールによって構成されており、搬送ロールは駆動ロールと従動ロールからなる。駆動ロールは、駆動力源(図示せず。)で発生させたトルクを受けて回転するように構成されている。駆動ロールの回転によって当該駆動ロールに接する熱間材に、搬送コンベヤに沿って移動する移動力を付与するように構成されている。駆動力源は一例としてモータであってよく、駆動ロールにトルク伝達可能に連結されている。従動ロールは、フリーロールと称されるロールであり、従動ロールの上に熱間材が載置される。上述した駆動ロールによって熱間材に移動力が付与されて熱間材が移動すると、熱間材に接触する従動ロールが当該熱間材によって回転させられる。
【0013】
搬送ロールや圧延ロールなどの各ロールは、強度あるいは剛性の点で、鉄や鉄合金によって形成されることが好ましい。それらのロールは、熱間材を搬送する過程や圧延する過程で熱間材から不可避的に熱が伝達されて加熱される。そのため、各ロールを冷却する冷却装置3が設けられている。これは、各ロールの温度が上昇すると、各ロールが軟化あるいは強度が低下して摩耗しやすくなり、また、各ロールの表面に疵が生じる等の異常が生じる可能性があるので、これらを避けるためである。以下、冷却装置3によって冷却されるロール2が搬送ロールである場合を例として説明する。
【0014】
詳細は図示しないが、複数のロール2は互いに平行に、かつ、一定の間隔をあけて並んで配置されている。図1に示す例では、ロール2の下側に冷却装置3が設けられている。
【0015】
図1に示す例では、冷却装置3は、水冷式の冷却装置である。冷却装置3は、複数のパイプ4を備えている。各パイプ4は、各ロール2の下側にそれぞれ配置されており、ロール2の軸線方向に延びている。また、各パイプ4は、互いに平行に、かつ、一定の間隔をあけて並んでいる。各パイプ4の一方の端部は液密状態を維持するように閉じている。各パイプ4の他方の端部は冷却流体の供給源(図示せず)に接続されている。各パイプ4の上側に、ロール2に冷却流体を供給する供給孔5が板厚方向に貫通して形成されている。供給孔5は、パイプ4の軸線方向に一定の間隔で形成されている。なお、各供給孔5にノズルが設けられていてもよい。冷却流体は例えば、工業用水(以下、工水と記す。)であってよい。上述した供給孔5が、本発明の供給部に相当している。
【0016】
ロール2の上方に、本発明の撮影装置に相当するカメラ6が設置されている。具体的には、搬送コンベヤによって搬送される熱間材に接触しない位置であって、かつ、ロール2の全長に亘って撮影できる位置にカメラ6が設置されている。なお、カメラ6は、複数のロール2を一度に撮影できる位置に設置されていることが好ましい。カメラ6は、一例として、サーモカメラであって、ロール2の表面の熱画像データ(以下、単に画像データと記す。)を連続的あるいは間欠的に撮影するようになっている。なお、本実施形態では、搬送コンベヤの運転時に、カメラ6によってロール2の表面の画像データを連続的に撮影する。カメラ6によって撮影される熱画像データが、本発明の熱画像に相当している。
【0017】
図1に示す監視システム1に、カメラ6で撮影した画像データに基づいて冷却装置3の異常を判断する監視装置7が設けられている。監視装置7は、マイクロコンピュータを主体にして構成されており、予め記憶されているデータ、演算式、および、取得したデータなどに基づいて演算を行い、その演算結果を出力データや制御指令信号として出力するように構成されている。図1に示す例では、カメラ6によって撮影した画像データが監視装置7に入力されるようになっている。また、監視装置7は、モニター8と、画像データに基づいてロール2の温度を推定して冷却装置3の異常を判断する判断部9と、判断部9で冷却装置3に異常があると判断された場合に、当該異常を周囲に報知する報知部10とを有している。
【0018】
モニター8は従来知られたモニターであってよい。モニター8に、カメラ6によって撮影した画像データを表示するようになっている。報知部10は、例えば、音声、音、光、あるいは、振動などによって冷却装置3の異常を周囲に、具体的には、オペレーターに冷却装置3の異常を報知するように構成されている。また、報知部10は、判断部9での冷却装置3の異常の判断結果をモニター8に表示するように構成されていてもよい。
【0019】
上述した構成の搬送コンベヤでは、熱間材を搬送すると、熱間材から熱を受けて各ロール2の温度が上昇する。そのため、少なくとも搬送コンベヤによって熱間材を搬送している間は、冷却装置3によって各ロール2に冷却流体が供給されて各ロール2が冷却されるようになっている。図1に示す例では、ロール2の下側にパイプ4が配置され、そのパイプ4の上側に複数の供給孔5が設けられている。そのため、各供給孔5からロール2の下側に位置する外周面に向けて工水がスプレー状に噴射される。これにより、ロール2が全長に亘って冷却される。
【0020】
図2は、本発明に係る監視システム1の監視装置7で実行される制御の一例を説明するためのフローチャートである。図2に示す制御例は、搬送コンベヤの運転時に、所定の短時間ごとに繰り返し実行される。図2に示す制御例では、先ず、判断部9は、搬送コンベヤによって熱間材が搬送されているか否かを判断する(ステップS1)。すなわち、監視対象であるロール2が熱間材に接触しているか否かを判断する。これは、例えば、搬送コンベヤに位置センサ(図示せず)を設けて、当該位置センサによって搬送コンベヤ上の熱間材の有無を検出することによって行うことができる。あるいは、駆動ロールに対する電流値を検出することによって行ってもよい。ステップS1で肯定的に判断された場合には、搬送コンベヤによって熱間材が搬送されており、ロール2の画像データを撮影できない。また、ロール2が熱間材に接触している間は、ロール2が冷却装置3から受ける冷却の影響よりも、ロール2が熱間材から受ける熱の影響が高いため、ロール2や冷却装置3の異常を発見することが難しい。そのため、ステップS1で否定的に判断されるまで、ステップS1の判断が繰り返し実行される。
【0021】
これに対して、ステップS1で否定的に判断された場合には、カメラ6によって撮影されたロール2の画像データに基づいて各ロール2の温度が基準温度以内であるか否かが判断される(ステップS2)。これは、画像データにおいて、基準温度を超えるデータの有無を検出することによって行う。図3は、画像データの一例を示す図である。図3に示すように、画像データは各ロール2の温度分布を示すデータであり、当該画像データに基づいて各ロール2の温度を特定する。そして、推定したロール2の温度と基準温度とを比較する。ロール2に基準温度を超える部分がある場合や、ロール2の全長に亘ってロール2の温度が基準温度を超える場合に、ステップS2で否定的に判断される。なお、ロール2に基準温度を超える部分がある場合には、当該部分は、図3に示すように筋状に現れる。また、ロール2の全長に亘ってロール2の温度が基準温度を超える場合には、当該部分は、図3にドットで示すようにロール2全体に現れる。なお、カメラ6によってロール2を撮像する工程が、本発明の撮影工程に相当し、画像データに基づいて各ロール2の温度が基準温度以内であるか否かを判断する工程が、本発明の監視工程に相当している。
【0022】
基準温度は、例えば、ロール2の耐久性を低下することなく、ロール2を使用することのできるロール2の温度の上限値であって、ロール2の材質や実験によって予め設定できる。本実施形態では、一例として基準温度は摂氏100℃である。画像データにおいて、基準温度を超えるデータがない場合には、すなわち、各ロール2の温度が基準温度以内である場合には、ステップS2で肯定的に判断される。その場合には、ステップS1に戻る。
【0023】
ステップS2で否定的に判断された場合には、判断部9は、ロール2における基準温度を超える部分に対応する供給孔5の位置を特定する(ステップS3)。上述したように、各ロール2の下側に供給孔5が位置しているため、画像データに基づいて、ロール2における基準温度を超える部分の下側に位置する供給孔5を特定できる。具体的には、ステップS2でロール2のうち、いずれかの部分に基準温度を超える部分があると判断された場合には、当該基準温度を超える部分の下側に位置する供給孔5に異常が生じていると判断される。また、複数のロール2のうち、いずれかのロール2の全長に亘ってロール2の温度が基準温度を超える場合について説明する。その場合には、当該ロール2の冷却装置3つまり当該ロール2の下側に位置するパイプ4、あるいは、パイプ4に形成されている供給孔5のそれぞれに異常が生じていると判断される。
【0024】
次いで、上述したステップS3での判断結果が判断部9から報知部10に入力され、報知部10によって冷却装置3の異常がオペレーターに報知される(ステップS4)。なお、報知部10によって冷却装置3の異常を、音声、音、光、振動などによってオペレーターに報知する際に、ステップS3で特定した供給孔5をモニター8に表示してもよい。その後、このフローを一旦終了する。
【0025】
このように、上述した構成の監視システム1では、各ロール2の画像データに基づいて各ロール2を監視することによって、各ロール2を冷却する冷却装置3の異常を発見することができる。また、冷却装置3の異常をロール2の温度に基づいて監視するため、冷却装置3の異常箇所をピンポイントで把握することができると共に、当該異常箇所に対して速やかに点検や修理などのメンテナンスを行うことができる。さらに、カメラ6による監視範囲内の搬送コンベヤ上に熱間材がないときに、ロール2の温度が基準温度以内であるか否かを判断する。そのため、搬送コンベヤによって熱間材を搬送している場合であっても、つまり、搬送コンベヤによる熱間材の搬送を停止することなく、ロール2の冷却異常、および冷却装置3の異常を監視することができる。
【0026】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されない。上述した実施形態では、監視装置7によってロール2の冷却異常つまり冷却装置3の異常の有無を判断したが、これに代えて、人によって冷却装置3の異常の有無を判断してもよい。この場合、図2に示すフローチャートにおいて、ステップS1、および、ステップS2での判断を人によって行う。例えば、モニター8に画像データすなわち各ロール2の温度分布や最高温度を表示し、モニター8に表示された画像データを人によって監視する。そして、熱間材の搬送中ではなく、かつ、ロール2の表面温度(最高温度)が予め決められた基準温度を超えている場合に、冷却装置3に異常があると人が判断する。冷却装置3に異常があると判断した場合には、冷却装置3の点検や修理などのメンテナンスを行う。
【0027】
また、上述した実施形態では、搬送コンベヤの搬送ロール2を例として、本実施形態に係る監視システム1を説明したが、搬送ロール2に限らず、製鉄所の製造ライン等で用いられる圧延ロールなどの他のロールであってもよい。さらに、冷却装置3についても、冷却流体を噴射するスプレー方式あるいは外部冷却方式に限定されない。例えば、ロール2の内部に冷却流体の流路を形成し、その流路に冷却流体を流動させることによってロール2を冷却する内部冷却方式の冷却装置であってもよい。そして、工水に代えて、油やエアー等を冷却流体として使用してもよい。また、上述した実施形態では、ロール2の表面温度が基準温度以内か否かによって冷却装置3の異常を判断したが、これに代えて、複数のロール2同士の温度差を監視し、当該温度差が閾値を超えた場合に、冷却装置3に異常があると判断するように構成してもよい。あるいは、ロール2のうち、他の部分よりも温度の高い部分と、前記他の部分であって温度の低い部分との温度差を監視し、当該温度差が閾値を超えた場合に、冷却装置3に異常があると判断するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0028】
1 監視システム
2 ロール
3 冷却装置
4 パイプ
5 供給孔(供給部の一例)
6 カメラ(撮影装置の一例)
7 監視装置
8 モニター
9 判断部
10 報知部
図1
図2
図3