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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042205
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】着物
(51)【国際特許分類】
   A41D 1/00 20180101AFI20240321BHJP
   A44B 99/00 20100101ALI20240321BHJP
   A41F 19/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
A41D1/00 101D
A44B99/00 601D
A44B99/00 611J
A41F19/00 102J
A41F19/00 110E
A41F19/00 114
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146763
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】522367034
【氏名又は名称】奥野 麻紀
(74)【代理人】
【識別番号】110002435
【氏名又は名称】弁理士法人井上国際特許商標事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077919
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 義雄
(74)【代理人】
【識別番号】100172638
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 隆治
(74)【代理人】
【識別番号】100153899
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100159363
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 淳子
(72)【発明者】
【氏名】奥野 麻紀
【テーマコード(参考)】
3B030
【Fターム(参考)】
3B030BA01
3B030BB01
3B030BC02
(57)【要約】
【課題】着脱時間のさらなる短縮を図ることができるセパレートタイプの着物を提供する。
【解決手段】着物1は、下前部12と上前部13とを重ね合わせて留めるための面ファスナー18,19を有する上衣部10と、上衣部10とは分離された巻きスカート状の衣服からなり、ウエスト部31の巻き重ね部分のうちの外側部分と内側部分とを留めるための面ファスナー34,35を有する下衣部30と、を備えている。下衣部30の上縁部の表面にお端折り部33が予め形成されていてもよい。着物1は、上衣部10の衿部14に着脱可能に設けられた半衿部20を備えてもよく、半衿部20は、半衿部20における一方の衿先の表面と他方の衿先の裏面とを互いに係合させるための面ファスナー22,23を有してもよい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下前部と上前部とを重ね合わせて留めるための面ファスナーを有する上衣部と、
前記上衣部とは分離された巻きスカート状の衣服からなり、ウエスト部の巻き重ね部分のうちの外側部分と内側部分とを留めるための面ファスナーを有する下衣部と、を備えていることを特徴とする着物。
【請求項2】
前記上衣部の前記面ファスナーは、前記上前部側の衿先部の裏面に設けられた上前側係合部と、前記上前側係合部に係合可能なように前記下前部の表面に設けられた下前側係合部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の着物。
【請求項3】
前記上衣部は、前記下前部側の衿先部から横方向に延びる固定ベルトを備え、
前記固定ベルトは、前記上前部の裏側と前記上前部側の身八つ口とを順に通って前記上衣部の外側に突出し、さらに前記上衣部の背面側と前記下前部側の脇部とを順に通って前記上衣部の正面側に回された状態において、前記上前部の表面にオーバラップ可能な長さを有し、
前記上衣部の前記面ファスナーは、前記上前部の表面に設けられた上前側係合部と、前記上前側係合部に係合可能なように前記固定ベルトの先端部に設けられたベルト側係合部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の着物。
【請求項4】
前記上衣部は、横方向に延びるように設けられて長さ方向中央部において前記上衣部の背面部に固定された固定ベルトを備え、
前記固定ベルトは、一端部において前記上前部側の身八つ口を通って前記上衣部の内側に突入した状態で前記下前部の表面にオーバラップ可能であり、且つ、他端部において前記下前部側の脇部を通って前記上衣部の正面側に回された状態で前記上前部の表面にオーバラップ可能な長さを有し、
前記上衣部の前記面ファスナーは、前記下前部の表面に設けられた下前側係合部と、前記上前部の表面に設けられた上前側係合部と、前記下前側係合部に係合可能なように前記固定ベルトの前記一端部に設けられた第1ベルト側係合部と、前記上前側係合部に係合可能なように前記固定ベルトの前記他端部に設けられた第2ベルト側係合部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の着物。
【請求項5】
前記下衣部の前記面ファスナーは、前記外側部分の横方向先端部の裏面に設けられた第1外側係合部と、前記第1外側係合部に係合可能なように前記内側部分の表面に設けられた第1内側係合部とを含むことを特徴とする請求項1に記載の着物。
【請求項6】
前記下衣部の前記面ファスナーは、前記内側部分の横方向先端部の表面に設けられた第2内側係合部と、前記第2内側係合部に係合可能なように前記外側部分の裏面に設けられた第2外側係合部とを更に含むことを特徴とする請求項5に記載の着物。
【請求項7】
前記下衣部のウエスト部における前記第1内側係合部と前記第2外側係合部との間の横方向領域に、横方向に伸縮可能な伸縮部が設けられていることを特徴とする請求項6に記載の着物。
【請求項8】
前記下衣部の上縁部の表面に、お端折り部が予め形成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の着物。
【請求項9】
前記上衣部の衿部に着脱可能に設けられた半衿部を備え、
前記半衿部は、該半衿部における一方の衿先の表面と他方の衿先の裏面とを互いに係合させるための面ファスナーを有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の着物。
【請求項10】
前記ウエスト部の外側に巻き付けられる帯部を備え、
前記帯部は、帯本体と、前記帯本体の裏面に重なるように設けられた固定バンドとを備え、
前記帯本体は、長さ方向の一端部の表面に他端部の裏面を係合させるための面ファスナーを有し、
前記固定バンドは、前記帯本体に比べて細くて柔らかいベルト状の部材であり、長さ方向の中央部において前記帯本体に固定されており、且つ、長さ方向の一端部の表面に他端部の裏面を係合させるための面ファスナーを有することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の着物。
【請求項11】
前記帯部は、前記帯本体に予め固定された帯締め部、帯揚げ部、及びしごき帯部と、前記帯本体に着脱可能な帯リボン部と、前記しごき帯部に着脱可能なしごきリボン部とを更に備えていることを特徴とする請求項10に記載の着物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いわゆるセパレートタイプの着物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、着物の着付けでは、まず、手縫い等によって半衿が襦袢(着物のインナーウェア)の衿に取り付けられ、この襦袢が着せられる。その後、長着が着せられ、衿合わせやお端折りが整えられて、帯が締められる。このような着付けの各作業はいずれも複雑であり、熟練の着付師であっても相当の時間がかかる。特に、幼い子どもや、身体に障害がある人に対する着付けにはより時間がかかりやすい。
【0003】
この課題に関連して、本来の着物よりも簡単に着脱可能なように上下に分離されたセパレートタイプの着物が知られている。
【0004】
例えば、特許文献1には、衿部と袖部を有する上衣部と、スカート状の下衣部とを備えたセパレートタイプの着物が開示されている。特許文献1の着物では、上衣部および下衣部のそれぞれに、固定用ベルト部材が設けられている。上衣部の固定用ベルト部材は、その一端部において上衣部の下前側(右側)の衿部に固定されており、他端部にクリップが設けられている。下衣部の固定用ベルト部材は、その中央部において下衣部上端のウエスト部に固定されており、両端部に、互いに係合可能な面ファスナーが設けられている。
【0005】
特許文献1の着物では、上衣部および下衣部の着用時にそれぞれ固定用ベルト部材が用いられる。具体的に、上衣部の着用時には、固定用ベルト部材を上前側(左側)の身八つ口から外に出して背中側から右脇腹に巻き付け、固定用ベルト部材の長さを適宜調整した上で、固定用ベルト部材先端のクリップを上前の衿部に留める。下衣部は、スカートのように着用者に下側から穿かされ、ウエスト部を締め付けるように固定用ベルト部材の両端部が引っ張られて、両端部の面ファスナーが留められることにより着用される。その後、着用者の腰に、上衣部および下衣部の外側から、帯状のお端折り部、及び、帯部が順次着用される。
【0006】
特許文献1の着物を含めて、セパレートタイプの着物では、お端折りの処理などの様々な作業を簡素化することができ、これにより、着付けを簡単に短時間で行うことが可能になる利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-075367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、感染症対策等の観点から、着付師と着用者の接触時間はできる限り短縮されることが好ましい。そのため、着付けに要する時間短縮のニーズは昨今ますます高まっている。これに対して、従来の着物には依然として改良の余地がある。
【0009】
そこで、本発明は、着脱時間のさらなる短縮を図ることができる着物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係る着物は、下前部と上前部とを重ね合わせて留めるための面ファスナーを有する上衣部と、前記上衣部とは分離された巻きスカート状の衣服からなり、ウエスト部の巻き重ね部分のうちの外側部分と内側部分とを留めるための面ファスナーを有する下衣部と、を備えていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る着物によれば、面ファスナーによって上衣部の下前部と上前部とを簡単に係脱させることができるとともに、面ファスナーによって巻きスカート状の下衣部の巻き重ね部分を簡単に係脱させることができる。そのため、上衣部および下衣部をいずれも簡単かつ迅速に着脱させることができ、着物の着脱に要する時間を従来のセパレートタイプの着物よりもさらに短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る着物を示す正面図である。
図2】同着物を示す背面図である。
図3】同着物の上衣部および半衿部を示す図である。
図4】半衿部が取り付けられた状態の上衣部を示す図である。
図5】展開状態の下衣部の表面全体および裏面の要部を示す図である。
図6】帯部の表面および裏面を示す図である。
図7】本発明の別の実施形態に係る着物を示す正面図である。
図8】上衣部の第1変形例を示す正面図である。
図9】第1変形例における上衣部の留め方を説明するための図である。
図10】上衣部の第2変形例を示す正面図および背面図である。
図11】第2変形例における上衣部の留め方を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。
【0014】
[全体構成]
図1図6を参照しながら、本実施形態に係る着物1について説明する。図1の正面図および図2の背面図に、着物1の全体構成が示されている。この着物1は、七五三の行事において七歳の女の子に着用されるものである。
【0015】
着物1は、互いに分離された上衣部10と下衣部30とを備えたセパレートタイプの着物である。着物1は、上衣部10と下衣部30に加えて、半衿部20および帯部40をさらに備えている。以下、着物1の各構成要素について具体的に説明する。
【0016】
[上衣部]
図3(a)に示すように、上衣部10は、背面部11、下前部12、上前部13、一対の袖部15,16、及び衿部14を備えている。
【0017】
背面部11、下前部12、及び上前部13の上下寸法は、通常の長着よりも短い。着用状態において、背面部11は、着用者の背中に対向配置され、下前部12は、着用者の胸部右半部に対向配置され、上前部13は、着用者の胸部左半部に対向配置される。また、着用状態において、背面部11、下前部12、及び上前部13の裾は、着用者のウエストよりも少し低い高さに配置される。なお、背面部11と下前部12との境界、及び、背面部11と上前部13との境界におけるそれぞれの脇部には、通常の長着と同様の身八つ口(図9(a)及び図11(a)の参照符号13a参照)が設けられている。
【0018】
衿部14は、通常の長着の衿と同様に構成されている。衿部14は、着用者の首の裏側に配置される首裏部(頂部)14aと、首裏部14aから両側に延びる一対の衿先部14b,14cとを有する。一方の衿先部14bは、下前部12に沿って下前部12の下端まで延びており、他方の衿先部14cは、上前部13に沿って上前部13の下端まで延びている。袖部15,16は、通常の長着の袖と同様に構成されており、上下寸法も通常の長着の袖と同様である。
【0019】
上衣部10は、下前部12の表面に上前部13の裏面を係合させるための面ファスナーとして、互いに係合可能な上前側係合部18及び下前側係合部19を備えている。上前側係合部18及び下前側係合部19のうち、一方が面ファスナーのループ面であり、他方が面ファスナーのフック面となっている。
【0020】
上前側係合部18は、例えば、衿部14における上前部13側の衿先部14cの裏面に設けられている。上前側係合部18は、例えば、上下寸法よりも左右寸法が短い長方形状となっている。下前側係合部19は、上前側係合部18に係合可能なように下前部12の表面に設けられている。より具体的に、下前側係合部19は、下前部12における右脇腹に相当する部分に設けられている。下前側係合部19は、例えば、上下寸法よりも左右寸法が長い長方形状となっている。下前側係合部19の上下寸法は、上前側係合部18と同程度であり、下前側係合部19の左右寸法は、上前側係合部18よりも長くなっている。
【0021】
[半衿部]
図3(b)は、上衣部10の衿部14との対向面側から見た半衿部20を示す図である。通常の着物において、半衿は、襦袢(長着の内側に着用されるインナーウェア)の衿部に縫い付けられる。これに対して、本実施形態における半衿部20は、上衣部10の衿部14に着脱可能となっている。
【0022】
半衿部20は、帯状の部材であり、上衣部10の衿部14に沿って衿部14の裏面(内側の面)に取り付け可能となっている。上衣部10の衿部14に対する半衿部20の着脱のために、衿部14には上衣側係合部17が設けられ(図3(a)参照)、半衿部20には、上衣側係合部17に係合可能な半衿側係合部21が設けられている。上衣側係合部17と半衿側係合部21は、例えばスナップボタンで構成されている。
【0023】
図3(a)に示される上衣側係合部17は、衿部14の首裏部14aに設けられてる。図3(b)に示される半衿側係合部21は、半衿部20における衿部14との対向面(外側の面)に設けられている。半衿側係合部21は、半衿部20の長さ方向中央部に配置されている。上衣側係合部17と半衿側係合部21は、それぞれ1個のみ設けられている。
【0024】
図3(b)に示すように、半衿部20は、その一方の衿先の表面(外側の面)と他方の衿先の裏面(内側の面)とを互いに係合させるための面ファスナーとして、互いに係合可能な表面側係合部22及び裏面側係合部23を有する。表面側係合部22及び裏面側係合部23のうち、一方が面ファスナーのループ面であり、他方が面ファスナーのフック面となっている。表面側係合部22及び裏面側係合部23は、それぞれ半衿部20の長さ方向に延びる長方形状となっている。
【0025】
[上衣部および半衿部の着用手順]
図4に示すように、上衣部10の着用前にまず、半衿部20が上衣部10の衿部14に取り付けられる。上衣部10に対する半衿部20の着脱作業では、スナップボタンからなる上衣側係合部17と半衿側係合部21との係脱が1箇所のみ行われる。衿部14に半衿部20を取り付ける際は、1箇所のスナップボタンを留めるだけで、半衿部20を長さ方向に位置決めすることができる。また、この係合状態では、係合部17,21の軸心周りに半衿部20を回転可能となっている。そのため、衿部14に半衿部20を取り付けた後に、半衿部20の向きを整えることができる。したがって、上衣部10に対して半衿部20を簡単かつ速やかに取り付けることができる。
【0026】
続いて、半衿部20が取り付けられた状態の上衣部10が着用者に着せられ、半衿部20の衿元が整えられる。具体的には、半衿部20における下前部12側の衿先の外側に上前部13側の衿先が重ねられる。これにより、半衿部20の表面側係合部22に裏面側係合部23が係合され、半衿部20の衿先同士が固定される。
【0027】
このようにして着用された半衿部20は、襦袢に取り付けられる通常の半衿と同様、衿元において上衣部10の衿部14からはみ出して露出する。つまり、本実施形態の着物1では、襦袢を着用しなくても、衿元において通常の着物と同様の意匠性が得られる。そのため、襦袢の着用を省略することが可能になり、これによる着付け作業の簡素化を実現できる。
【0028】
なお、半衿部20は、上衣部10に一体化されることも考えられるが、本実施形態のように上衣部10から取外し可能となっていることが好ましい。これにより、汚れやすい半衿部20のみを洗うことができ、また、デザインが異なる複数種類の半衿部20を用意しておけば、好みに応じた半衿部20を選択して取り付けることができる。
【0029】
次に、上衣部10の下前部12の外側に上前部13が重ねられる。このとき、着用者の腹部に下前部12及び上前部13が適度にフィットするように一対の衿先部14b,14cが引っ張られ、下前側係合部19に上前側係合部18が留められる。これにより、上衣部10の着用が完了する。
【0030】
上衣部10を脱ぐ際は、着用時と逆の手順により、上衣部10の下前側係合部19から上前側係合部18を外し、半衿部20の表面側係合部22から裏面側係合部23を外せばよい。
【0031】
以上のように、本実施形態の上衣部10及び半衿部20は、それぞれ面ファスナーの係脱によって簡単に着脱することができる。そのため、上衣部10及び半衿部20の着脱を簡単かつ迅速に済ませることができる。
【0032】
[下衣部]
図5(a)の展開図に示すように、下衣部30は、上衣部10とは分離された巻きスカート状の衣服からなる。下衣部30は、図5(a)における右側部分の外側に左側部分が巻き重ねられるようにして着用される。下衣部30の上縁部は、着用者の腰に巻き付けられるウエスト部31である。
【0033】
下衣部30の上縁部の表面(外側の面)には、お端折り部33が予め形成されている。お端折り部33は、例えば、下衣部30の生地の折り畳み及び縫い付けによって、ウエスト部31から下方に延びるように形成されている。お端折り部33は、下衣部30の横方向の全幅に亘って設けられている。お端折り部33の上下寸法は、着用状態において帯部40の下側にお端折り部33の一部がはみ出すような寸法になっている(図1参照)。このようにお端折り部33が下衣部30に予め形成されていることにより、着物1の着付けにおいて、通常の着物の場合のようなお端折りを整える作業を省略しつつ、通常の着物のお端折りと同様の意匠性を得ることができる。
【0034】
図5(b)を参照しながら、下衣部30のウエスト部31の構成について更に説明する。図5(b)は、下衣部30の裏面側(内側)から見たウエスト部31及びその周辺部を拡大して示している。つまり、図5(b)に示されるウエスト部31の右側部分は、図5(a)の左側部分に相当し、図5(b)に示されるウエスト部31の左側部分は、図5(a)の右側部分に相当する。
【0035】
ウエスト部31の一部の横方向領域(周方向領域)には、横方向(周方向)に伸縮可能な伸縮部32が設けられている。伸縮部32には、例えばゴムバンドが設けられている。なお、伸縮部32のゴムバンドの表面および裏面は、下衣部30の生地によって被覆されてもよい。伸縮部32は、例えば、ウエスト部31の横方向中央部に設けられている。
【0036】
下衣部30は、ウエスト部31の巻き重ね部分のうちの外側部分(図5(b)の右側部分)と内側部分(図5(b)の左側部分)とを互いに係合させるための面ファスナー34,35を有する。下衣部30は、ウエスト部31の面ファスナー34,35の係脱によって着脱可能となっている。
【0037】
ウエスト部31の面ファスナー34には、外側に巻き重ねられる部分の横方向先端部(図5(b)の右側先端部)の裏面に設けられた第1外側係合部34aと、内側に巻き重ねられる部分(図5(b)の左側部分)の表面に設けられた第1内側係合部34bとが含まれる。第1外側係合部34a及び第1内側係合部34bのうち、一方が面ファスナーのループ面であり、他方が面ファスナーのフック面となっている。下衣部30が巻かれる着用状態において、第1外側係合部34aと第1内側係合部34bは互いに係合可能となっている。
【0038】
また、ウエスト部31の面ファスナー35には、内側に巻き重ねられる部分の横方向先端部(図5(b)の左側先端部)の表面に設けられた第2内側係合部35aと、外側に巻き重ねられる部分(図5(b)の右側部分)の裏面に設けられた第2内側係合部35bとが含まれる。第2内側係合部35a及び第2外側係合部35bのうち、一方が面ファスナーのループ面であり、他方が面ファスナーのフック面となっている。下衣部30が巻かれる着用状態において、第2内側係合部35aと第2外側係合部35bは互いに係合可能となっている。
【0039】
ウエスト部31の横方向において、第1外側係合部34aはウエスト部31の一端部に配置され、第2内側係合部35aはウエスト部31の他端部に配置されている。また、ウエスト部31の横方向において、第1内側係合部34bは、ウエスト部31の中央部と第2内側係合部35aとの間に配置され、第1外側係合部34aよりも長く形成されている。さらに、ウエスト部31の横方向において、第2外側係合部35bは、ウエスト部31の中央部と第1外側係合部34aとの間に配置され、第2内側係合部35aよりも長く形成されている。
【0040】
なお、ウエスト部31における第1内側係合部34bと第2外側係合部35bとの間の横方向領域は、着用状態においてウエスト部31が巻き重ねられない領域であり、当該領域に上述の伸縮部32が設けられている。つまり、ウエスト部31は、着用状態において、図5(b)における伸縮部32よりも左側部分の外側に伸縮部32よりも右側部分が巻き重ねられるように構成されている。
【0041】
さらに、ウエスト部31の裏面には、滑り止め部36が設けられてもよい。滑り止め部36としては、例えば、シリコン樹脂からなるシート状部材が用いられる。滑り止め部36は、ウエスト部31における内側に巻き重ねられる部分(図5(b)の伸縮部32よりも左側部分)の裏面に設けられている。滑り止め部36は、例えば、横方向に間隔を空けた複数箇所に設けられてもよい。
【0042】
[下衣部の着用手順]
下衣部30は、上衣部10の着用後に着用される。つまり、下衣部30は、上衣部10の裾の外側に重なるように着用される。
【0043】
着用の際、下衣部30は、ウエスト部31の伸縮部32が着用者の腰の後ろ側に当てられるように着用者の腰に巻き付けられる。これにより、着用者の右側の脇腹部分では、下衣部30における図5(a)の右側部分の外側に左側部分が巻き重ねられる。このとき、ウエスト部31の伸縮部32が適宜伸ばされながら、第2内側係合部35aに第2外側係合部35bが留められ、第1内側係合部34bに第1外側係合部34aが留められる。これにより、ウエスト部31の横方向両端部が固定され、下衣部30の着用が完了する。
【0044】
下衣部30の着用状態では、伸張状態の伸縮部32の復元力による締め付け力と、滑り止め部36における摩擦力とが着用者の腰に対して作用する。これにより、下衣部30のずり下がりが効果的に抑制される。
【0045】
下衣部30を脱ぐ際は、ウエスト部31の第2内側係合部35a及び第1内側係合部34bから第2外側係合部35b及び第1外側係合部34aを外せばよい。
【0046】
以上のように、本実施形態の下衣部30は、ウエスト部31の面ファスナー34,35を係脱させるだけで簡単に着脱することができる。下衣部30にはお端折り部33が予め形成されているため、着用時にお端折りを整える必要もない。そのため、下衣部30の着脱も簡単かつ迅速に済ませることができる。
【0047】
[帯部]
図6(a)及び図6(b)を参照しながら、帯部40の構成について説明する。図6(a)は、表面側(外側)から見た帯部40を示す図であり、図6(b)は、裏面側(内側)から見た帯部40を示す図である。
【0048】
帯部40は、帯本体41と、帯本体41の裏面に重なるように設けられた固定バンド50とを備える。帯本体41には、帯締め部42、帯揚げ部43、及びしごき帯部44が予め固定されている。
【0049】
帯締め部42は、帯本体41の表面(外側の面)における上下方向(幅方向)中央部に帯本体41の長さ方向に延びるように設けられている。帯締め部42は、例えば紐状の部材からなり、例えば長さ方向の複数箇所での縫い付けによって帯本体41に固定されている。帯本体41と帯締め部42との間には、扇子等の小物を差し込み保持可能となっている。
【0050】
帯揚げ部43は、帯本体41の上縁から上側にはみ出すように帯本体41の裏面に固定されている。帯揚げ部43は、例えば、帯本体41の長さ方向に延びる帯状部材からなり、例えば長さ方向の複数箇所での縫い付けによって帯本体41に固定されている。
【0051】
しごき帯部44は、帯本体41の下縁部に沿って帯本体41の長さ方向に延びるように設けられている。しごき帯部44は、帯状部材からなる。しごき帯部44は、例えば、帯本体41の下縁から下側にはみ出すように帯本体41の表面に固定されている。しごき帯部44は、その上縁部が帯本体41に縫い付けられている。この縫い付けは、しごき帯部44のほぼ全長に亘って連続的になされているが、一部において縫い付けが行われないことにより、次に説明するしごきリボン部45を取り付けるための差し込み口(図示せず)が、しごき帯部44の上縁部と帯本体41との間に形成されている。
【0052】
帯部40は、しごき帯部44に着脱可能なしごきリボン部45(図6(b)の二点鎖線参照)を更に備える。しごきリボン部45の裏面には、しごき帯部44に係合可能な係合部45aが設けられている。係合部45aは、例えば、下向きに延びる差し込み片で構成されている。係合部45aは、しごき帯部44の上縁部と帯本体41との間の上述の差し込み口(図示せず)に上側から差し込み可能となっている。
【0053】
なお、この差し込み口は、しごき帯部44の長さ方向の複数箇所(例えば3箇所)に形成されてもよい。この場合、しごきリボン部45の係合部45aが複数の差し込み口のうちのいずれか1つに選択的に係合されることで、しごき帯部44の長さ方向において、しごきリボン部45の取付位置を調整可能になる。
【0054】
帯本体41は、長さ方向の一端部の表面(外側の面)に他端部の裏面(内側の面)を係合させるための面ファスナーとして、互いに係合可能な裏面側係合部46及び表面側係合部47を有する。裏面側係合部46及び表面側係合部47のうち、一方が面ファスナーのループ面であり、他方が面ファスナーのフック面となっている。
【0055】
裏面側係合部46は、帯本体41の一端部の裏面(内側の面)に設けられ、表面側係合部47は、帯本体41の他端部の表面(外側の面)に設けられている。裏面側係合部46及び表面側係合部47は、それぞれ長方形状である。上下方向(帯本体41の幅方向)に関して、裏面側係合部46及び表面側係合部47は略等しい寸法を有し、横方向(帯本体41の長さ方向)に関しては、裏面側係合部46の寸法よりも表面側係合部47の寸法が長くなっている。
【0056】
また、帯部40は、帯本体41に着脱可能な帯リボン部48(図2の二点鎖線参照)を更に備えている。帯リボン部48には、帯本体41の内側に上側から差し込み可能なプレート状の差し込み部(図示せず)が設けられている。帯リボン部48は、差し込み部が上衣部10と帯本体41との隙間に差し込まれることで、帯本体41に取り付け可能となっている。
【0057】
図6(b)に示される固定バンド50は、帯本体41に比べて細くて柔らかいベルト状の部材である。固定バンド50は、長さ方向に伸縮可能な伸縮部材であり、例えばゴムバンドで構成されている。固定バンド50は、自然長において帯本体41よりも短い。固定バンド50は、その長さ方向の中央部において帯本体41に固定されている。固定バンド50は、例えば縫い付けによって帯本体41の長さ方向中央部に固定されている。
【0058】
固定バンド50は、長さ方向の一端部の表面(外側の面)に他端部の裏面(内側の面)を係合させるための面ファスナーとして、互いに係合可能な裏面側係合部51及び表面側係合部52を有する。裏面側係合部51及び表面側係合部52のうち、一方が面ファスナーのループ面であり、他方が面ファスナーのフック面となっている。
【0059】
裏面側係合部51は、固定バンド50の一端部の裏面(内側の面)に設けられ、表面側係合部52は、固定バンド50の他端部の表面(外側の面)に設けられている。裏面側係合部51及び表面側係合部52は、それぞれ長方形状である。上下方向(固定バンド50の幅方向)に関して、裏面側係合部51及び表面側係合部52は略等しい寸法を有し、横方向(固定バンド50の長さ方向)に関しては、裏面側係合部51の寸法よりも表面側係合部52の寸法が長くなっている。
【0060】
[帯部の着用手順]
帯部40は、上衣部10及び下衣部30の着用後に、下衣部30のウエスト部31の外側に巻き付けられるように着用される。
【0061】
着用の際は、下衣部30のウエスト部31の前面部に帯部40の長さ方向中央部の裏面が当てられながら、まずは固定バンド50が着用者の腰に巻き付けられる。このとき、固定バンド50が長さ方向に適宜伸ばされながら、表面側係合部52に裏面側係合部51が留められる。続いて、帯本体41が、固定バンド50の外側から着用者の腰に巻き付けられ、表面側係合部47に裏面側係合部46が留められる。
【0062】
その後、図2に示すように、しごき帯部44にしごきリボン部45が取り付けられ、帯本体41に帯リボン部48が取り付けられる。なお、しごきリボン部45はしごき帯部44に予め取り付けられていてもよい。以上の手順により帯部40が着用されることで、着物1の着用が全て完了する。
【0063】
帯部40の着用状態では、伸張状態の固定バンド50の復元力による締め付け力が着用者の腰に対して作用する。これにより、帯部40のずり下がりが効果的に抑制される。また、帯部40に帯締め部42、帯揚げ部43、しごき帯部44、しごきリボン部45、及び帯リボン部48が設けられていることにより、通常の着物の帯と同様の意匠性が発揮されている。
【0064】
帯部40を取り外す際は、まず帯リボン部48を取り外して、帯本体41の係合部46,47、及び、固定バンド50の係合部51,52を順に外せばよい。
【0065】
以上のように、本実施形態の帯部40は、固定バンド50及び帯本体41の面ファスナー46,47,51,52を係脱させるだけで簡単に着脱することができる。帯本体41には帯締め部42、帯揚げ部43、しごき帯部44が予め固定されているため、帯締め、帯揚げ、及びしごき帯の着脱作業も不要になる。そのため、帯部40の着脱も簡単かつ迅速に済ませることができる。
【0066】
[本実施形態の効果]
本実施形態に係る着物1によれば、上衣部10の下前部12の表面に対する上前部13の裏面の係脱、半衿部20の一対の衿先同士の係脱、巻きスカート状の下衣部30の巻き重ね部分同士の係脱、並びに、帯部40の帯本体41及び固定バンド50の端部同士の係脱を、いずれも面ファスナーによって簡単かつ迅速に行うことができる。そのため、上衣部10、半衿部20、下衣部30、及び帯部40をいずれも簡単かつ迅速に着脱させることができる。したがって、着物1全体として通常の着物と同様の意匠性を発揮させつつ、着物1の着脱に要する時間を従来のセパレートタイプの着物よりもさらに短縮することができる。
【0067】
[別の実施形態]
図7を参照しながら、別の実施形態に係る着物101について説明する。この着物101は、七五三の行事において三歳の女の子に着用されるものである。なお、図7において、上述の実施形態と同様の構成要素には同じ参照符号が付されている。
【0068】
一般に、三歳の女の子には帯は着用されず、代わりに被布110が着せられる。そこで、図7に示す着物101では、上述の帯部40(図1参照)が省略されている。また、この着物101では、下衣部30に上述のお端折り部33(図1参照)が設けられていない。着物101のその他の構成は、上述の着物1と同様である。
【0069】
図7に示す着物101においても、上衣部10、半衿部20、及び下衣部30を面ファスナーの係脱によって簡単かつ迅速に着脱することができる。したがって、上述の着物1と同様、着物101全体として通常の着物と同様の意匠性を発揮させつつ、着物101の着脱に要する時間を効果的に短縮することができる。
【0070】
[上衣部の第1変形例]
図8及び図9を参照しながら、第1変形例に係る上衣部210について説明する。第1変形例においては、上衣部210を留めるための構成が上述の上衣部10と異なり、その他の構成は上述の上衣部10と同様である。なお、図8及び図9において、上述の上衣部10と同様の構成要素には同じ参照符号が付されている。第1変形例は、上述の七歳用の着物1および三歳用の着物101のいずれにも適用可能である。
【0071】
図8に示すように、第1変形例に係る上衣部210は、下前部12と上前部13とを重ね合わせて留めるために用いられる固定ベルト230を備えている。固定ベルト230は、下前部12側の衿先部14bから横方向に延びるように設けられている。固定ベルト230の基端部は、例えば縫い付けによって、衿先部14bの裏面に固定されている。固定ベルト230の先端は自由端である。固定ベルト230は、長さ方向に伸縮可能な素材(例えばゴムバンド)で構成されることが好ましい。
【0072】
また、上衣部210は、下前部12と上前部13とを重ね合わせて留めるための面ファスナーとして、互いに係合可能な上前側係合部222とベルト側係合部232とを備えている。上前側係合部222及びベルト側係合部232のうち、一方が面ファスナーのループ面であり、他方が面ファスナーのフック面となっている。
【0073】
上前側係合部222は、上前部13の表面(外側の面)に設けられている。より具体的に、上前側係合部222は、上前部13と衿先部14cとに跨がって設けられている。上前側係合部222は、上下寸法よりも左右寸法が長い長方形状となっている。
【0074】
ベルト側係合部232は、固定ベルト230の先端部の裏面(内側の面)に設けられている。ベルト側係合部232は、固定ベルト230の長さ方向に延びる長方形状となっている。ベルト側係合部232は、上前側係合部222よりも長尺となっている。
【0075】
図9(a)及び図9(b)を参照しながら、上衣部210の留め方について説明する。
【0076】
図9(a)に示すように、半衿部20が取り付けられた上衣部210が着用者に着せられ、半衿部20の着用が完了した状態で、上衣部210を留める作業が行われる。この作業では、まず、固定ベルト230の先端部が上前部13の裏側(内側)を通って上前部13側(左側)の身八つ口13aから上衣部210の外側に突き出される。
【0077】
さらに、固定ベルト230の突出部分は、上衣部210の背面側と下前部12側(右側)の脇部とを順に通って、図9(b)に示すように、上衣部210の正面側に回される。固定ベルト230は、このように巻き回された状態において上前部13の表面にオーバラップ可能な長さを有している。
【0078】
最後に、着用者の腹部に下前部12及び上前部13が適度にフィットするように固定ベルト230の先端部と上前部13側の衿先部14cとが引っ張られながら、上前側係合部222にベルト側係合部232が留められる。このとき、ベルト側係合部232は、その長さ方向の任意の位置で上前側係合部22に係合可能である。これにより、上衣部210の着用が完了する。
【0079】
上衣部210を脱ぐ際は、着用時と逆の手順により、上前側係合部222からベルト側係合部232を外して、固定ベルト230の巻き回しを解除すればよい。第1変形例においても、面ファスナー222,232の係脱によって上衣部210の着脱を簡単かつ迅速に済ませることができる。
【0080】
なお、上衣部210の外側には、上述の帯部40(図1及び図2参照)又は被布110(図7参照)がさらに着せられるため、着物1,101の着用完了状態では、固定ベルト230の露出によって意匠性が損なわれる問題は生じない。
【0081】
[上衣部の第2変形例]
図10及び図11を参照しながら、第2変形例に係る上衣部310について説明する。第2変形例においては、上衣部310を留めるための構成が上述の上衣部10と異なり、その他の構成は上述の上衣部10と同様である。なお、図10及び図11において、上述の上衣部10と同様の構成要素には同じ参照符号が付されている。第2変形例は、上述の七歳用の着物1および三歳用の着物101のいずれにも適用可能である。
【0082】
図10(b)に示すように、第2変形例に係る上衣部310は、下前部12と上前部13とを重ね合わせて留めるために用いられる固定ベルト330を備えている。固定ベルト330は、横方向に延びるように上衣部310の背面に設けられている。固定ベルト330の長さ方向中央部330aは、例えば縫い付けによって、上衣部310の背面部11に固定されている。固定ベルト330の両側の先端は自由端である。固定ベルト330は、長さ方向に伸縮可能な素材(例えばゴムバンド)で構成されることが好ましい。
【0083】
図10(a)及び図10(b)に示すように、上衣部310は、下前部12と上前部13とを重ね合わせて留めるための面ファスナーとして、下前側係合部321、上前側係合部322、第1ベルト側係合部331、及び第2ベルト側係合部332を備えている。下前側係合部321と第1ベルト側係合部331とは、互いに係合可能となっており、下前側係合部321及び第1ベルト側係合部331のうち、一方が面ファスナーのループ面であり、他方が面ファスナーのフック面となっている。上前側係合部322と第2ベルト側係合部332とは、互いに係合可能となっており、上前側係合部322及び第2ベルト側係合部332のうち、一方が面ファスナーのループ面であり、他方が面ファスナーのフック面となっている。
【0084】
図10(a)に示すように、下前側係合部321は、下前部12の表面(外側の面)に設けられている。より具体的に、下前側係合部321は、下前部12と衿先部14bとに跨がって設けられている。下前側係合部321は、上下寸法よりも左右寸法が長い長方形状となっている。
【0085】
上前側係合部322は、上前部13の表面(外側の面)に設けられている。より具体的に、上前側係合部322は、上前部13と衿先部14cとに跨がって設けられている。上前側係合部322は、上下寸法よりも左右寸法が長い長方形状となっている。
【0086】
図10(b)に示すように、第1ベルト側係合部331は、固定ベルト330の一端部の裏面(内側の面)に設けられている。第1ベルト側係合部331は、固定ベルト330の長さ方向に延びる長方形状となっている。第2ベルト側係合部332は、固定ベルト330の他端部の裏面(内側の面)に設けられている。第2ベルト側係合部332は、固定ベルト330の長さ方向に延びる長方形状となっている。
【0087】
図11(a)及び図11(b)を参照しながら、上衣部310の留め方について説明する。
【0088】
図11(a)に示すように、半衿部20が取り付けられた上衣部310が着用者に着せられ、半衿部20の着用が完了した状態で、上衣部310を留める作業が行われる。この作業では、まず、固定ベルト330の一端部が上前部13側(左側)の身八つ口13aから上衣部310の内側に突入される。固定ベルト330の一端側部分は、この突入状態において下前部12の表面にオーバラップ可能な長さを有している。続いて、着用者の腹部に下前部12が適度にフィットするように固定ベルト330の一端部と下前部12側の衿先部14bとが引っ張られながら、下前側係合部321に第1ベルト側係合部331が留められる。
【0089】
次に、図11(b)に示すように、固定ベルト330の他端部が下前部12側(右側)の脇部を通って上衣部310の正面側に回される。固定ベルト330の他端側部分は、このように巻き回された状態において上前部13の表面にオーバラップ可能な長さを有している。最後に、着用者の腹部に上前部13が適度にフィットするように固定ベルト330の他端部と上前部13側の衿先部14cとが引っ張られながら、上前側係合部322に第2ベルト側係合部332が留められる。これにより、上衣部310の着用が完了する。
【0090】
上衣部310を脱ぐ際は、着用時と逆の手順により、上前側係合部322から第2ベルト側係合部332を外して、下前側係合部321から第1ベルト側係合部331を外せばよい。第2変形例においても、面ファスナー321,322,331,332の係脱によって上衣部310の着脱を簡単かつ迅速に済ませることができる。
【0091】
なお、上衣部310の外側には、上述の帯部40(図1及び図2参照)又は被布110(図7参照)がさらに着せられるため、着物1,101の着用完了状態では、固定ベルト330の露出によって意匠性が損なわれる問題は生じない。
【0092】
以上、上述の実施形態を挙げて本発明を説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではない。
【0093】
例えば、上述の実施形態では、七五三用の着物1,101を例に挙げて本発明を説明したが、本発明は、その他の用途で着用される着物にも同様に適用可能である。つまり、本発明に係る着物の着用者は、子どもに限られず大人であってもよいし、着用者の性別も問わない。本発明に係る着物によれば、子どもまたは身体に障害がある人などを含めて、あらゆる着用者に対して、簡単かつ迅速に着脱させることができる。
【0094】
また、本発明において、面ファスナーからなる各係合部18,19,22,23,34,35,46,47,51,52,222,232,321,322,331,332の形状、大きさ、及び配置は、それぞれの係合機能を損なわない限り適宜変更可能である。
【0095】
さらに、上述の実施形態では、上衣部10に対して半衿部20を着脱させるための係合部がスナップボタン(上衣側係合部17及び半衿側係合部21)で構成されているが、本発明において、当該係合部の具体的係合手段は特に限定されるものでなく、面ファスナー等のその他の係合手段で構成されてもよい。
【符号の説明】
【0096】
1 着物
10 上衣部
11 背面部
12 下前部
13 上前部
13a 身八つ口
14 衿部
15,16 袖部
17 上衣側係合部
18 上前側係合部(面ファスナー)
19 下前側係合部(面ファスナー)
20 半衿部
21 半衿側係合部
22 表面側係合部(面ファスナー)
23 裏面側係合部(面ファスナー)
30 下衣部
31 ウエスト部
32 伸縮部
33 お端折り部
34a 第1外側係合部
34b 第1内側係合部
35a 第2内側係合部
35b 第2外側係合部
36 滑り止め部
40 帯部
41 帯本体
42 帯締め部
43 帯揚げ部
44 しごき帯部
45 しごきリボン部
46 裏面側係合部(面ファスナー)
47 表面側係合部(面ファスナー)
48 帯リボン部
50 固定バンド
51 裏面側係合部(面ファスナー)
52 表面側係合部(面ファスナー)
101 着物
110 被布
210 上衣部
222 上前側係合部(面ファスナー)
230 固定ベルト
232 ベルト側係合部(面ファスナー)
310 上衣部
321 下前側係合部(面ファスナー)
322 上前側係合部(面ファスナー)
330 固定ベルト
331 第1ベルト側係合部(面ファスナー)
332 第2ベルト側係合部(面ファスナー)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11