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  • 特開-空気入りタイヤ 図1
  • 特開-空気入りタイヤ 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042213
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/12 20060101AFI20240321BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
B60C11/12 D
B60C11/03 100C
B60C11/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146773
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100160794
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 寛明
(72)【発明者】
【氏名】乾 祐介
(72)【発明者】
【氏名】坂田 浩一
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB01
3D131BC34
3D131EB11V
3D131EB11X
3D131EB46X
3D131EB82V
3D131EB82W
3D131EB87V
3D131EB87W
3D131EC01W
3D131EC01X
3D131EC02V
(57)【要約】
【課題】偏摩耗を抑制することができる空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】複数の主溝60と、主溝60の間に配置される複数の陸70と、接地幅領域39を含むトレッド面37と、を有するトレッド30を備え、陸70は、中央陸71と、中央陸71の両側に配置される中間陸72、73と、を含み、中央陸71は、タイヤ周方向に間隔をおいて配置され、タイヤ周方向に交差する方向に延びる複数の中央サイプ81A、81Bを有し、中間陸72、73は、タイヤ周方向に間隔をおいて配置され、タイヤ周方向に交差する方向に延びる複数の中間サイプ91A、91Bを有し、中央陸71の幅と、中間陸72、73の幅との合計は、接地幅領域39の幅の40%以上であり、中央サイプ81A、81Bのタイヤ幅方向長さは、中央陸71の幅の50%以下であり、中間サイプ91A、91Bのタイヤ幅方向長さは、中間陸72、73の幅の50%以下である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、
タイヤ幅方向において前記主溝の間に配置される複数の陸と、
所定の接地幅領域を含むトレッド面と、を有するトレッドを備えた空気入りタイヤであって、
前記陸は、タイヤ幅方向中央に配置される中央陸と、
前記中央陸の両側に配置される中間陸と、を含み、
前記中央陸は、タイヤ周方向に間隔をおいて配置され、タイヤ周方向に交差する方向に延びる複数の中央サイプを有し、
前記中間陸は、タイヤ周方向に間隔をおいて配置され、タイヤ周方向に交差する方向に延びる複数の中間サイプを有し、
前記中央陸の幅と、前記中間陸の幅との合計は、前記接地幅領域の幅の40%以上であり、
前記中央サイプのタイヤ幅方向長さは、前記中央陸の幅の50%以下であり、
前記中間サイプのタイヤ幅方向長さは、前記中間陸の幅の50%以下である、空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記中央陸の幅と、前記中間陸の幅との合計は、前記接地幅領域の幅の40%以上60%以下であり、
前記中央サイプのタイヤ幅方向長さは、前記中央陸の幅の30%以上50%以下であり、
前記中間サイプのタイヤ幅方向長さは、前記中間陸の幅の30%以上50%以下である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記中央サイプは、前記中央陸のタイヤ幅方向両端に配置されており、
前記中間サイプは、前記中間陸のタイヤ幅方向両端に配置されている、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記トレッドは、タイヤ幅方向両側にショルダー陸を有し、
前記ショルダー陸はタイヤ周方向に間隔をおいて複数のブロックが設けられ、
タイヤ周方向に並ぶ前記中間サイプの数は、タイヤ周方向に並ぶ前記ブロックの数の2倍である、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
タイヤ周方向に並ぶ前記ブロックの数は、64である、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の溝によりトレッドパターンが形成されているトレッドを備えた空気入りタイヤが知られている。複数の溝としては、例えば、タイヤ周方向に沿った主溝や、複数の主溝間の陸の表面に形成されるサイプと呼ばれるタイヤ周方向に交差する方向に延びる細い溝などが挙げられる。特許文献1には、トレッドのゴム組成物であるSBRやカーボンブラック、シリカ等の成分比率を調整することにより、耐摩耗性の向上を図ったタイヤが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-73064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車重が大きい高荷重用のタイヤ等においては、タイヤ幅方向の中央部分が他の部分よりも多く摩耗する偏摩耗や、いわゆるトゥーヒール摩耗と呼ばれる偏摩耗が発生しやすい場合がある。この種の偏摩耗は、ゴム組成物の成分比率を調整しても改善はされにくいため、改良の余地がある。
【0005】
そこで本発明は、タイヤ幅方向中央の摩耗やトゥーヒール摩耗といった偏摩耗を抑制することができる空気入りタイヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる複数の主溝と、タイヤ幅方向において前記主溝の間に配置される複数の陸と、所定の接地幅領域を含むトレッド面と、を有するトレッドを備えた空気入りタイヤであって、前記陸は、タイヤ幅方向中央に配置される中央陸と、前記中央陸の両側に配置される中間陸と、を含み、前記中央陸は、タイヤ周方向に間隔をおいて配置され、タイヤ周方向に交差する方向に延びる複数の中央サイプを有し、前記中間陸は、タイヤ周方向に間隔をおいて配置され、タイヤ周方向に交差する方向に延びる複数の中間サイプを有し、前記中央陸の幅と、前記中間陸の幅との合計は、前記接地幅領域の幅の40%以上であり、前記中央サイプのタイヤ幅方向長さは、前記中央陸の幅の50%以下であり、前記中間サイプのタイヤ幅方向長さは、前記中間陸の幅の50%以下である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、タイヤ幅方向中央の摩耗やトゥーヒール摩耗といった偏摩耗を抑制することができる空気入りタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係るタイヤのタイヤ幅方向の半断面を示す図である。
図2】実施形態に係るタイヤのトレッド面を示す一部拡大正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、実施形態に係る空気入りタイヤであるタイヤ1の内部構造を示す図であって、タイヤ幅方向の半断面を示している。図2は、タイヤ1の正面図の一部拡大図であり、タイヤ1のトレッド面37を示している。実施形態に係るタイヤ1は、例えば、乗用車用の空気入りタイヤである。
【0010】
はじめに、図1を参照しつつタイヤ1の内部構造を説明する。タイヤ1の基本的な内部構造は、タイヤ幅方向の断面において左右対称となっている。図1は、タイヤ1の右半分の半断面を示しており、不図示の左半分も同じ構造である。
【0011】
図1の断面図は、タイヤ1を図示せぬ規定リムに装着し、かつ、規定内圧を充填した無負荷状態のタイヤ幅方向断面図である。なお、規定リムとは、タイヤサイズに対応してJATMAに定められた標準となるリムを指す。また、規定内圧とは、例えばタイヤが乗用車用である場合には180kPaである。
【0012】
図1においては、タイヤ幅方向を矢印X、タイヤ径方向を矢印Yで示している。タイヤ幅方向とは、タイヤ回転軸に平行な方向であり、図1における紙面左右方向である。タイヤ幅方向内側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面S1に近づく方向であり、図1においては紙面左側である。タイヤ幅方向外側とは、タイヤ幅方向においてタイヤ赤道面S1から離れる方向であり、図1においては紙面右側である。
【0013】
また、タイヤ径方向とは、タイヤ回転軸に垂直な方向であり、図1における紙面上下方向である。図1においては、タイヤ径方向Yとして図示している。タイヤ径方向外側とは、タイヤ回転軸から離れる方向であり、図1においては紙面上側である。タイヤ径方向内側とは、タイヤ回転軸に近づく方向であり、図1においては紙面下側である。
【0014】
図1に示すように、タイヤ1は、タイヤ幅方向両側に設けられた一対のビード10と、一対のビード10のそれぞれからタイヤ径方向外側に延びる一対のサイドウォール20と、一対のサイドウォール20の間に配置されたトレッド30と、一対のビード10の間に架け渡されて配置されたカーカスプライ40と、カーカスプライ40のタイヤ内腔側に配置されたインナーライナー50と、を備えている。
【0015】
ビード10は、ビードコア11と、ビードコア11からタイヤ径方向外側に延びるビードフィラー12と、リムストリップゴム13と、リムプロテクタ14と、を有している。
【0016】
ビードコア11は、ゴムが被覆された金属製のビードワイヤがタイヤ周方向に複数回巻かれた環状の部材である。ビードコア11は、空気が充填されたタイヤ1を、リムに固定する役目を果たす部材である。ビードフィラー12は、タイヤ径方向内側からタイヤ径方向外側に延びるにつれて厚みが減じる先細り形状となっている。ビードフィラー12は、ビード10の周辺部分の剛性を高め、高い操縦性および安定性を確保するために設けられる。ビードフィラー12は、例えば、周囲のゴム部材よりも硬度の高いゴムにより構成される。
【0017】
リムストリップゴム13は、ビードコア11およびビードフィラー12を囲んで設けられるカーカスプライ40の外側をさらに囲んでいる。リムストリップゴム13は、タイヤ1が装着されるリムの内側部分と接触する。リムストリップゴム13のタイヤ幅方向外側の外表面には、タイヤ周方向に沿った頂部13aが形成されている。頂部13aを含むリムストリップゴム13のタイヤ幅方向外側の部分は、外傷からリムを保護するリムプロテクタ14を構成する。リムプロテクタ14は、タイヤ周方向に環状に連続している。
【0018】
サイドウォール20は、カーカスプライ40のタイヤ幅方向外側に配置されたサイドウォールゴム21を含んでいる。サイドウォールゴム21は、タイヤ1の外壁面を構成する。サイドウォールゴム21は、タイヤ1がクッション作用をする際に最も撓む部分であり、通常、耐疲労性を有する柔軟なゴムが採用される。
【0019】
トレッド30は、無端状のベルト31およびキャッププライ35と、トレッドゴム36と、を備えている。ベルト31は、カーカスプライ40のタイヤ径方向外側に配置されている。キャッププライ35は、ベルト31のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム36は、キャッププライ35のタイヤ径方向外側に配置されている。
【0020】
ベルト31は、トレッド30を補強する部材である。実施形態のベルト31は、インナーライナー50のタイヤ径方向外側に配置された内側ベルト32と、内側ベルト32のタイヤ径方向外側に配置された外側ベルト33と、を備えた2層構造である。内側ベルト32および外側ベルト33は、いずれも複数のスチールコード等のベルトコードがゴムで覆われた構造を有している。
【0021】
内側ベルト32は、外側ベルト33よりも幅広である。したがって、内側ベルト32のタイヤ幅方向外端32aは、外側ベルト33のタイヤ幅方向外端33aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。ベルト31を設けることにより、タイヤ1の剛性が確保され、路面に対するトレッド30の接地性が向上する。なお、ベルト31は2層構造に限らず、1層、あるいは3層以上の構造を有していてもよい。
【0022】
キャッププライ35は、ベルト31とともにトレッド30を補強する部材である。キャッププライ35は、例えば、ポリアミド繊維等の絶縁性を有する複数の有機繊維コードがゴムで覆われた構造を有している。キャッププライ35のタイヤ幅方向外端35aは、内側ベルト32のタイヤ幅方向外端32aよりもタイヤ幅方向外側に位置している。キャッププライ35は、ベルト31全体をタイヤ外表面側から覆っている。実施形態のキャッププライ35は1層であるが、2層以上の構造であってもよい。キャッププライ35を設けることにより、耐久性の向上や、走行時のロードノイズの低減を図ることができる。
【0023】
トレッドゴム36は、キャッププライ35のタイヤ径方向外側に配置されている。トレッドゴム36は、トレッド30の外表面であるトレッド面37を構成する部材である。トレッドゴム36のタイヤ幅方向外側端部36bは、キャッププライ35のタイヤ幅方向外端35aを越えてタイヤ径方向内側に湾曲している。このキャッププライ35のタイヤ幅方向外側端部36bは、サイドウォールゴム21のタイヤ径方向外側端部21bで覆われている。
【0024】
トレッド面37には、トレッドパターン38が設けられている。トレッドパターン38は本開示において特徴的な構成を有し、それについては後で詳述する。
【0025】
カーカスプライ40は、一対のビード10の間に架け渡されている。カーカスプライ40は、タイヤ1の骨格となるプライを構成している。カーカスプライ40は、一対のビード10の間を、一対のサイドウォール20およびトレッド30のタイヤ内腔側を通過する態様で、タイヤ1内に埋設されている。トレッド30においては、カーカスプライ40のタイヤ径方向外側にベルト31が配置されている。
【0026】
カーカスプライ40は、複数の図示せぬプライコードを含んでいる。複数のプライコードは、例えばタイヤ幅方向に沿った面内に沿って延びており、タイヤ周方向に並んで配列されている。このプライコードは、ポリエステルやポリアミド等の絶縁性の有機繊維コード等により構成されている。複数のプライコードがゴムにより被覆されて、カーカスプライ40が構成されている。
【0027】
カーカスプライ40は、プライ本体部40Aと、プライ折り返し部40Bと、屈曲部40Cと、を有する。プライ本体部40Aは、一方のビードコア11のタイヤ幅方向内側から、一方のサイドウォール20、トレッド30および他方のサイドウォール20を経て、他方のビードコア11のタイヤ幅方向内側まで延在する部分である。プライ折り返し部40Bは、プライ本体部40Aのタイヤ径方向内端からビードコア11周りに折り返されることにより、ビードフィラー12のタイヤ幅方向外側においてタイヤ径方向外側に延びている部分である。屈曲部40Cは、プライ本体部40Aからビードコア11周りにU字状に屈曲し、プライ折り返し部40Bにつながる部分である。プライ本体部40Aとプライ折り返し部40Bとは、屈曲部40Cを介して連続している。
【0028】
実施形態のカーカスプライ40は、第1のカーカスプライ41と第2のカーカスプライ42とが重ねられた2層構造を有している。プライ本体部40Aにおいては、第1のカーカスプライ41が第2のカーカスプライ42のタイヤ内腔側に配置される。プライ折り返し部40Bにおいては、第1のカーカスプライ41が第2のカーカスプライ42のタイヤ幅方向外側に配置されている。プライ折り返し部40Bの第1のカーカスプライ41は、屈曲部40Cからビードフィラー12の途中まで延びている。プライ折り返し部40Bの第2のカーカスプライ42は、屈曲部40Cからサイドウォール20のタイヤ径方向中央付近まで延びている。プライ折り返し部40Bの第2のカーカスプライ42のタイヤ径方向外側端部は、プライ本体部40Aの第2のカーカスプライ42に重ね合わされている。
【0029】
ビードフィラー12のタイヤ幅方向外側には、スチール部材による補強層であるサイド補強層45が配置されている。このサイド補強層45は、ビードフィラー12と、カーカスプライ40のプライ折り返し部40Bとの間に挟まれており、さらに、ビードフィラー12からタイヤ径方向外側に延びる部分を有する。
【0030】
実施形態のカーカスプライ40は2層構造であるが、カーカスプライ40は、1層であってもよいし、3層以上であってもよい。カーカスプライ40が2層、あるいはそれ以上の層構造のプライにより構成されると、タイヤ1がリムの装着部付近で局所的に変形することが十分に抑制されるので好ましい。
【0031】
インナーライナー50は、一対のビード10の間のタイヤ内面を覆っている。インナーライナー50は、トレッド30およびトレッド30からサイドウォール20にわたる領域では、プライ本体部40Aの内面を覆っている。また、インナーライナー50は、サイドウォール20からビード10にわたる領域では、プライ本体部40Aおよびリムストリップゴム13の内面を覆っている。インナーライナー50は、耐空気透過性ゴムにより構成されており、タイヤ内腔内の空気が外部に漏れるのを防ぐ。
【0032】
ここで、ビードフィラー12に採用するゴムとしては、少なくともサイドウォールゴム21およびインナーライナー50よりも硬度が高いゴムが用いられる。ゴムの硬度は、JIS K6253-3:2012のデュロメータ硬さ タイプAである。
【0033】
例えば、サイドウォールゴム21の硬度を基準としたとき、ビードフィラー12の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1.2倍以上2.3倍以下程度が好ましい。リムストリップゴム13の硬度は、サイドウォールゴム21の硬度の1倍以上1.6倍以下程度がより好ましい。このような硬度とすることで、タイヤとしての柔軟性とビード10付近の剛性のバランスを確保することができる。また、トレッドゴム36の硬度は、接地性が良好で、かつ低燃費となる観点から比較的低いことが好ましく、例えば上記デュロメータ硬さ タイプAで50以上60以下程度が好ましい。
【0034】
以上が、実施形態に係るタイヤ1の内部構造である。次いで、図2を参照して、実施形態に係るトレッド30のトレッドパターン38について詳述する。なお、図2には、タイヤ幅方向Xおよびタイヤ周方向Cを示している。
【0035】
実施形態のトレッドパターン38は、複数の主溝60と、タイヤ幅方向において主溝60の間に配置される複数の陸70と、を備えている。複数の主溝60および複数の陸70は、いずれもタイヤ周方向に沿って環状に延びている。実施形態のトレッドパターン38は、いわゆる対称パターンであって、タイヤ1の回転方向が特定されない非方向性パターンである。
【0036】
トレッド30のトレッド面37は、走行時において実際に路面に接地する領域である接地幅領域39を有する。接地幅領域39は、タイヤ幅方向両端の接地端、すなわち図2において左側の第1の接地端39Aと右側の第2の接地端39Bとの間の領域である。トレッド面37において、第1の接地端39Aおよび第2の接地端39Bよりもタイヤ幅方向外側の領域は、通常では路面に接地しない。
【0037】
ここで、トレッドゴム36におけるタイヤ幅方向外側の部分であって、第1の接地端39Aおよび第2の接地端39Bのそれぞれからサイドウォールゴム21のタイヤ径方向外側端部21b(図1参照)付近までの部分を、ショルダー25という。ショルダー25は、サイドウォール20から接地幅領域39に移行する部分である。なお、図2には、タイヤ赤道S2から第1の接地端39Aおよび第2の接地端39Bまでの接地幅領域39の幅Wの半分の幅である半幅W1の領域をそれぞれ示している。
【0038】
なお、ここでいう接地端とは、正規リムに装着され正規内圧が充填された空気入りタイヤが接地し、そこへ正規荷重が負荷された条件下での、接地面のタイヤ幅方向端部のことである。正規荷重とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば”最大負荷能力”、TRAであれば表”TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば”LOAD CAPACITY”である。タイヤが乗用車用の場合には、前記荷重の88%に相当する荷重である。タイヤがレーシングカート用の場合、正規荷重は392Nである。
【0039】
複数の主溝60は、タイヤ幅方向中央に配置される一対の中央主溝60Aと、一対の中央主溝60Aのタイヤ幅方向外側に配置される一対の中間主溝60Bと、を含む。
【0040】
実施形態の主溝60の幅(タイヤ幅方向寸法)は、2つの中央主溝60Aが互いに同じ幅を有し、2つの中間主溝60Bが互いに同じ幅を有する。中央主溝60Aの幅と中間主溝60Bの幅は、同じであってもよく、異なっていてもよい。例えば、中央主溝60Aの幅は中間主溝60Bの幅より大きくてもよく、逆に中間主溝60Bの幅が中央主溝60Aより大きくてもよい。
【0041】
複数の陸70は、一対の中央主溝60Aの間に配置される1つの中央陸71と、中央主溝60Aと中間主溝60Bとの間に配置される中間陸としての第1の中間陸72および第2の中間陸73と、タイヤ幅方向両端に配置される第1のショルダー陸74および第2のショルダー陸75と、を含む。実施形態の各陸は、いずれもタイヤ周方向に連続するリブ状に形成されている。第1の中間陸72および第1のショルダー陸74は、図2において中央陸71の左側に配置されている。第2の中間陸73および第2のショルダー陸75は、図2において中央陸71の右側に配置されている。
【0042】
中央陸71は、その幅方向中央にタイヤ赤道S2が通る位置に配置されている。中央陸71は、トレッド面37すなわち中央陸71の外表面に開口する複数の中央サイプ81を有する。中央サイプ81は、タイヤ周方向に交差する方向に延びる形状を有する細い溝である。中央サイプ81の溝幅は、1mm以下である。
【0043】
複数の中央サイプ81は、複数の第1の中央サイプ81Aと、複数の第2の中央サイプ81Bと、を含む。第1の中央サイプ81Aは、中央陸71の第1のショルダー陸74側(図2で左側)の端縁に配置されている。第2の中央サイプ81Bは、中央陸71の第2のショルダー陸75側(図2で右側)の端縁に配置されている。
【0044】
複数の第1の中央サイプ81Aと、複数の第2の中央サイプ81Bとが、タイヤ周方向に間隔をおいて交互に配置されている。複数の第1の中央サイプ81Aのタイヤ周方向ピッチおよび複数の第2の中央サイプ81Bのタイヤ周方向ピッチは、等ピッチであってもよく、不等ピッチであってもよい。第1の中央サイプ81Aおよび第2の中央サイプ81Bは、同じ円弧状の形状を有しており、タイヤ周方向に互いに隣接する一対の第1の中央サイプ81Aおよび第2の中央サイプ81Bが、点対称になるように配置されている。
【0045】
第1の中央サイプ81Aは、図2において、中央陸71の左側に隣接する中央主溝60Aに開口し、その開口端から、タイヤ周方向一方側である下側に向かって延びてからタイヤ周方向他方側である上側に短く湾曲し、タイヤ赤道S2には到達せずに終端している。第1の中央サイプ81Aは、全体的にはタイヤ赤道S2に向かうにつれてタイヤ周方向一方側(図2で下側)に延びるように傾斜している。
【0046】
第2の中央サイプ81Bは、図2において、中央陸71の右側に隣接する中央主溝60Aに開口し、その開口端から、タイヤ周方向他方側である上側に向かって延びてからタイヤ周方向一方側である下側に短く湾曲し、タイヤ赤道S2には到達せずに終端している。第2の中央サイプ81Bは、全体的にはタイヤ赤道S2に向かうにつれてタイヤ周方向他方側(図2で上側)に延びるように傾斜している。
【0047】
第1の中央サイプ81Aおよび第2の中央サイプ81Bは、互いに逆向きの形状を有するが、形状としては互いに同じである。以下の説明で、第1の中央サイプ81Aおよび第2の中央サイプ81Bに共通する事項を説明する場合には、第1の中央サイプ81Aおよび第2の中央サイプ81Bをまとめて中央サイプ81という場合がある。
【0048】
中央陸71において、中央サイプ81は、中央陸71のタイヤ幅方向両端に配置されている。
【0049】
第1の中央サイプ81Aのタイヤ幅方向長さL1は、中央陸71の幅G1の50%以下であることが好ましく、中央陸71の幅G1の30%以上50%以下であればより好ましい。これと同様に、第2の中央サイプ81Bのタイヤ幅方向長さL2は、中央陸71の幅G1の50%以下であることが好ましく、中央陸71の幅G1の30%以上50%以下であればより好ましい。したがって、第1の中央サイプ81Aおよび第2の中央サイプ81Bのそれぞれは、中央陸71のタイヤ幅方向端部からタイヤ幅方向中央であるタイヤ赤道S2にちょうど達していてよく、その場合、タイヤ幅方向長さL1、L2は最長となる。いずれにしろ、第1の中央サイプ81Aおよび第2の中央サイプ81Bは、タイヤ周方向で互いに重なる部分は有さない。
【0050】
第1の中間陸72および第2の中間陸73は、いずれも、トレッド面37すなわちその外表面に開口する複数の中間サイプ91を有する。中間サイプ91は、タイヤ周方向に交差する方向に延びる形状を有する細い溝である。中間サイプ91の溝幅は、1mm以下である。
【0051】
複数の中間サイプ91は、複数の第1の中間サイプ91Aと、複数の第2の中間サイプ91Bと、を含む。第1の中間サイプ91Aは、第1の中間陸72および第2の中間陸73のそれぞれの、第1のショルダー陸74側(図2で左側)の端縁に配置されている。第2の中間サイプ91Bは、第1の中間陸72および第2の中間陸73のそれぞれの、第2のショルダー陸75側(図2で右側)の端縁に配置されている。
【0052】
複数の第1の中間サイプ91Aと、複数の第2の中間サイプ91Bとが、タイヤ周方向に間隔をおいて交互に配置されている。複数の第1の中間サイプ91Aのタイヤ周方向ピッチおよび複数の第2の中間サイプ91Bのタイヤ周方向ピッチは、等ピッチであってもよく、不等ピッチであってもよい。第1の中間サイプ91Aおよび第2の中間サイプ91Bは、同じ円弧状の形状を有しており、タイヤ周方向に互いに隣接する一対の第1の中間サイプ91Aおよび第2の中間サイプ91Bが、点対称になるように配置されている。
【0053】
第1の中間陸72の第1の中間サイプ91Aは、図2において第1の中間陸72の左側に隣接する中間主溝60Bに開口し、その開口端から、上記タイヤ周方向一方側と反対側である上側に傾斜しながら右側に短く延びてから、タイヤ周方向反対側である下側に山なりに屈曲して傾斜しながら右側に延び、第1の中間陸72の幅方向中央には到達せずに終端している。一方、第1の中間陸72の第2の中間サイプ91Bは、第1の中間陸72の右側に隣接する中央主溝60Aに開口し、その開口端から、タイヤ周方向他方側である下側に傾斜しながら左側に短く延びてから、タイヤ周方向反対側である上側に山なりに屈曲して傾斜しながら左側に延び、第1の中間陸72の幅方向中央には到達せずに終端している。
【0054】
第2の中間陸73の第1の中間サイプ91Aは、図2において第2の中間陸73の左側に隣接する中央主溝60Aに開口し、その開口端から、タイヤ周方向他方側である上側に傾斜しながら右側に短く延びてから、タイヤ周方向反対側である下側に山なりに屈曲して傾斜しながら右側に延び、第2の中間陸73の幅方向中央には到達せずに終端している。一方、第2の中間陸73の第2の中間サイプ91Bは、第2の中間陸73の右側に隣接する中間主溝60Bに開口し、その開口端から、タイヤ周方向一方側である下側に傾斜しながら左側に短く延びてから、タイヤ周方向反対側である上側に山なりに屈曲して傾斜しながら左側に延び、第2の中間陸73の幅方向中央には到達せずに終端している。
【0055】
第1の中間サイプ91Aおよび第2の中間サイプ91Bは、円弧の向きが互いに逆向きの円弧状の形状を有するが、形状としては互いに同じである。以下の説明で、第1の中間サイプ91Aおよび第2の中間サイプ91Bに共通する事項を説明する場合には、第1の中間サイプ91Aおよび第2の中間サイプ91Bをまとめて中間サイプ91という場合がある。
【0056】
第1の中間陸72および第2の中間陸73のそれぞれにおいて、中間サイプ91は、それら中間陸72、73のタイヤ幅方向両端に配置されている。
【0057】
第1の中間サイプ91Aのタイヤ幅方向長さL3は、第1の中間陸72の幅G2の50%以下であることが好ましく、第1の中間陸72の幅G2の30%以上50%以下であればより好ましい。これと同様に、第2の中間サイプ91Bのタイヤ幅方向長さL4は、第2の中間陸73の幅G3の50%以下であることが好ましく、第2の中間陸73の幅G3の30%以上50%以下であればより好ましい。したがって、第1の中間サイプ91Aおよび第2の中間サイプ91Bのそれぞれは、各中間陸のタイヤ幅方向端部からタイヤ幅方向中央にちょうど達していてよく、その場合、タイヤ幅方向長さL3、L4は最長となる。いずれにしろ、第1の中間サイプ91Aおよび第2の中間サイプ91Bは、タイヤ周方向で互いに重なる部分は有さない。
【0058】
中央サイプ81および中間サイプ91のうち、タイヤ周方向でみた場合、1つの第1の中央サイプ81Aと、2つの第1の中間サイプ91Aとが、タイヤ周方向でほぼ同じ位置になるように配置されている。したがってこれらタイヤ周方向でほぼ位置が揃う3つのサイプである1つの第1の中央サイプ81Aと2つの第1の中間サイプ91Aとは、タイヤ幅方向に沿ってほぼ並列している。また、1つの第2の中央サイプ81Bと、2つの第2の中間サイプ91Bとが、タイヤ周方向で隣接する第1の中央サイプ81Aおよび第1の中間サイプ91Aに対してタイヤ周方向にずれた位置で、タイヤ周方向でほぼ同じ位置になるように配置されている。したがってこれらタイヤ周方向でほぼ位置が揃う3つのサイプである1つの第2の中央サイプ81Bと2つの第2の中間サイプ91Bとは、タイヤ幅方向に沿ってほぼ並列している。
【0059】
また、第1の中央サイプ81A、第2の中央サイプ81Bは、いずれもタイヤ周方向に向かってほぼ凸となる円弧状であるが、その円弧の向きは、タイヤ幅方向でみた場合交互に逆向きとなるように変化している。また、第1の中間サイプ91Aおよび第2の中間サイプ91Bは、いずれもタイヤ周方向に向かってほぼ凸となる円弧状であるが、その円弧の向きは、タイヤ幅方向でみた場合交互に逆向きとなるように変化している。
【0060】
ここで、中央陸71の幅G1、第1の中間陸72の幅G2および第2の中間陸73の幅G3に関して述べる。中央陸71の幅G1と、第1の中間陸72の幅G2と、第2の中間陸73の幅G3との合計は、接地幅領域39の幅の40%以上であることが好ましく、接地幅領域39の幅の40%以上60%以下であればより好ましい。
【0061】
第1の中間陸72の幅G2および第2の中間陸73の幅G3は、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。また、第1の中間陸72の幅G2および第2の中間陸73の幅G3は、中央陸71の幅G1と同じでもよく、異なっていてもよい。
【0062】
第1のショルダー陸74は、トレッドパターン38として複数の第1のスリット110を有している。第2のショルダー陸75は、トレッドパターン38として複数の第2のスリット120を有している。これらスリット110、120は、いずれも1mmを超える溝幅を有する溝であり、タイヤ周方向に交差する方向に延びている。第1のショルダー陸74および第2のショルダー陸75のそれぞれは、トレッドパターン38を構成する溝としては、上述した中央サイプ81や中間サイプ91のような溝幅が1mm以下の細いサイプは有していない。
【0063】
第1のショルダー陸74の複数の第1のスリット110は、タイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。複数の第1のスリット110のタイヤ周方向のピッチは、例えば20mm以上40mm以下の範囲で等ピッチ、あるいは不等ピッチに配置されている。第1のスリット110は、タイヤ周方向の一方側(図2において下側)に緩やかな凸となるような円弧状の形状を有している。第1のスリット110のタイヤ幅方向内側端は、第1のショルダー陸74に隣接する中間主溝60Bには到達せず、終端している。一方、第1のスリット110のタイヤ幅方向外側端は、第1のショルダー陸74側のショルダー25まで延び、ショルダー25の外表面に開放している。
【0064】
第2のショルダー陸75の複数の第2のスリット120は、タイヤ周方向に間隔をおいて配置されている。複数の第2のスリット120のタイヤ周方向のピッチは、例えば20mm以上40mm以下の範囲で等ピッチ、あるいは不等ピッチに配置されている。第2のスリット120は、第1のスリット110とは反対側のタイヤ周方向側(図2において上側)に緩やかな凸となるような円弧状の形状を有している。第2のスリット120のタイヤ幅方向内側端は、第2のショルダー陸75に隣接する中間主溝60Bに到達せず、終端している。一方、第2のスリット120のタイヤ幅方向外側端は、第2のショルダー陸75側のショルダー25まで延び、ショルダー25の外表面に開放している。
【0065】
第1のスリット110および第2のスリット120は、凸の向きが互いに異なっているが同じ円弧形状であり、図2において互いに点対称になるように配置されている。第1のスリット110は、そのタイヤ幅方向の中央やや外側に、第1の接地端39Aが通る状態に配置されている。第2のスリット120は、そのタイヤ幅方向の中央やや外側に、第2の接地端39Bが通る状態に配置されている。
【0066】
第1のスリット110および第2のスリット120に対して、上述した中央サイプ81および中間サイプ91のそれぞれは、概ね、タイヤ周方向において隣り合う一対の第1のスリット110の間、およびタイヤ周方向において隣り合う一対の第2のスリット120の間に、2つずつが配置されている。すなわち、中央サイプ81においては、第1中央サイプ81Aと、この第1中央サイプ81Aのタイヤ周方向一方側(図2で下側)に隣接する第2中央サイプ81Bとの2つが1組となり、これら1組の中央サイプ81が、タイヤ周方向において隣り合う一対の第1のスリット110の間、およびタイヤ周方向において隣り合う一対の第2のスリット120の間に配置されている。また、中間サイプ91においては、第1中間サイプ91Aと、この第1中間サイプ91Aのタイヤ周方向一方側(図2で下側)に隣接する第2中間サイプ91Bとの2つが1組となり、これら1組の中間サイプ91が、タイヤ周方向において隣り合う一対の第1のスリット110の間、およびタイヤ周方向において隣り合う一対の第2のスリット120の間に配置されている。
【0067】
上記実施形態のタイヤ1によれば、以下の効果を奏する。
【0068】
(1)実施形態に係るタイヤ1は、タイヤ周方向に延びる複数の主溝60と、タイヤ幅方向において主溝60の間に配置される複数の陸70と、所定の接地幅領域39を含むトレッド面37と、を有するトレッド30を備えた空気入りタイヤであって、陸70は、タイヤ幅方向中央に配置される中央陸71と、中央陸71の両側に配置される第1の中間陸72および第2の中間陸73と、を含み、中央陸71は、タイヤ周方向に間隔をおいて配置され、タイヤ周方向に交差する方向に延びる複数の中央サイプ81として第1の中央サイプ81Aおよび第2の中央サイプ81Bを有し、各中間陸72、73は、タイヤ周方向に間隔をおいて配置され、タイヤ周方向に交差する方向に延びる複数の中間サイプ91として第1の中間サイプ91Aおよび第2の中間サイプ91Bをそれぞれ有し、中央陸71の幅G1と、第1の中間陸72の幅G2と、第2の中間陸73の幅G3との合計は、接地幅領域39の幅の40%以上であり、中央サイプ81のタイヤ幅方向長さL1、L2は、中央陸71の幅の50%以下であり、中間サイプ91のタイヤ幅方向長さL3、L4は、各中間陸の幅の50%以下である。
【0069】
実施形態に係るタイヤ1においては、中央陸71および各中間陸72、73の幅が比較的大きいため、中央陸71および各中間陸72、73の剛性が向上する。このため、内圧が高圧であっても、中央陸71を含むトレッド面37のタイヤ幅方向中央が他の部分よりも多く摩耗する偏摩耗が抑制される。一方、中央陸71および各中間陸72、73の幅が大きいと剛性が高まる反面、接地性が低くなる傾向にあるので、中央サイプ81および中間サイプ91を設けることにより、接地性のコントロールができる。また、中央サイプ81および中間サイプ91が長すぎると高トルクがかかった際にトゥーヒール摩耗が生じやすくなるが、中央サイプ81および中間サイプ91の幅は、中央陸71および中間陸72、73の幅の50%以下と比較的短いため、トゥーヒール摩耗が抑制される。すなわち、トレッド面37のタイヤ幅方向中央の摩耗やトゥーヒール摩耗といった偏摩耗をバランスよく効果的に抑制することができる。
【0070】
例えば、EV(Electric Vehicle)等の車両の中には、高重量、かつ高トルクで、タイヤ内圧が高いものがある。タイヤ内圧が高いと、トレッド面の幅方向中央が多く摩耗する偏摩耗が生じやすく、高トルクはトゥーヒール摩耗が生じやすい。そして、重量大の車両は、これら双方の偏摩耗が生じやすい。したがって実施形態のタイヤ1は、このような高重量、かつ高トルクで、タイヤ内圧が高いタイヤを装着するような車両に好適である。
【0071】
(2)実施形態に係るタイヤ1においては、中央陸71の幅G1と、第1の中間陸72の幅G2、第2の中間陸73の幅G3との合計は、接地幅領域39の幅Wの40%以上60%以下であり、中央サイプ81のタイヤ幅方向長さL1、L2は、中央陸71の幅G1の30%以上50%以下であり、中間サイプ91のタイヤ幅方向長さL3、L4は、各中間陸72、73の幅L3、L4の30%以上50%以下であることが好ましい。
【0072】
これにより、トレッド面37のタイヤ幅方向中央の摩耗やトゥーヒール摩耗といった偏摩耗をバランスよく効果的に抑制することができる。
【0073】
(3)実施形態に係るタイヤ1においては、中央サイプ81は、中央陸71のタイヤ幅方向両端に配置されており、中間サイプ91は、第1の中間陸72および第2の中間陸73のそれぞれにおいて、それら中間陸72、73のタイヤ幅方向両端に配置されている。
【0074】
これにより、中央陸71および各中間陸72、73の実質的な硬度が適度に低くなる。中央陸71および各中間陸72、73の剛性向上という特性に、硬度が適度に低くなる点が加味されることにより、剛性向上と偏摩耗抑制の作用がバランスよく確保される。
【0075】
第1のショルダー陸74および第2のショルダー陸75はサイプがないため、剛性が向上するとともに、サイプに起因するトゥーヒール摩耗が生じない。なお、第1のショルダー陸74および第2のショルダー陸75は、タイヤ周方向に隣接する第1のスリット110の間、およびタイヤ周方向に隣接する第2のスリット120の間のそれぞれに、タイヤ周方向に並ぶブロックを有するが、このブロックのタイヤ周方向に並ぶ数は、64程度と比較的少ないことが、剛性向上の観点から好ましい。タイヤ周方向における第1のスリット110の間および第2のスリット120の間のブロックの数が64程度の場合、第1のスリット110および第2のスリット120も同数の64となる。そして、実施形態の中央サイプ81および中間サイプ91の数は、それぞれ第1のスリット110および第2のスリット120の2倍程度の数であって、例えば128程度の数を有している。
【0076】
(4)すなわち実施形態に係るタイヤ1においては、トレッド30は、タイヤ幅方向両側に第1のショルダー陸74および第2のショルダー陸75を有し、第1のショルダー陸74および第2のショルダー陸75にはタイヤ周方向に間隔をおいて複数のブロックが設けられ、タイヤ周方向に並ぶ中間サイプ91の数は、タイヤ周方向に並ぶブロックの数の2倍であることが好ましい。これにより、ショルダー陸の剛性の向上が図られる。
【0077】
(5)また、実施形態に係るタイヤ1においては、タイヤ周方向に並ぶスリット間のブロックの数は、64であることが好ましい。これにより、ショルダー陸の剛性の向上が図られる。
【0078】
なお、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の目的を達成できる範囲で変形、改良などを行っても、本発明の範囲に含まれる。
【0079】
以上説明した実施形態の構成は、乗用車の他に、ライトトラック、トラック、バス等の各種車両用のタイヤとして採用することができる。
【実施例0080】
以下、実施例について説明する。接地幅領域の幅に対する中央陸および中間陸の幅の合計の比率が35%以上60%以下の範囲、かつ、中央陸および中間陸の幅に対する中央サイプおよび中間サイプのタイヤ幅方向長さの比率が30%以上55%以下の範囲で適宜組み合わせた12種類のタイヤを作製した。表1に、それらタイヤのデータを、本発明の条件を満たす実施例1~7と、本発明外の比較例1~5とに分けて示す。なお、表1では、「接地幅領域の幅に対する中央陸および中間陸の幅の合計の比率」を「中央陸+中間陸の比率(%)」と表記し、「中央陸の幅に対する中央サイプのタイヤ幅方向長さの比率、および中間陸の幅に対する中間サイプのタイヤ幅方向長さの比率」を「サイプの比率(%)」と表記している。
【0081】
なお、実施例1~7および比較例1~5のタイヤは、いずれも上述した実施形態と同様の基本構成を有する。また、表1に示す各タイヤの中央陸+中間陸の比率およびサイプの比率の各データは、タイヤを正規リムに装着し、正規内圧とした無負荷状態でのデータである。
【0082】
【表1】
【0083】
実施例1~7および比較例1~5のタイヤにつき、中央陸の摩耗、トゥーヒール摩耗および接地性を、空気圧を260kPa、タイヤが備えるロードインデックスにおける最大負荷荷重の70%の負荷を与えた状態で評価した。中央陸の摩耗およびトゥーヒール摩耗は、タイヤを車両に装着して一定距離走行し、走行後のタイヤの摩耗状態を確認することにより評価した。なお、中央陸の摩耗は、中央陸が他の陸よりも多く摩耗する偏摩耗が生じている状態をいう。中央陸の摩耗の評価は、ショルダー陸の摩耗量に対する中央陸の摩耗量が、1倍以上1.5倍未満を◎、1.5倍以上2倍未満を〇、2倍以上を△とした。トゥーヒール摩耗の評価は、サイプの前後の摩耗量の差が、0.5mm未満を◎、0.5mm以上1.0mm未満を〇、1mm以上を△とした。接地性の評価は、上記荷重でタイヤを接地させた状態でのフットプリントに基づき評価される。具体的には、実施例1の中間陸の接地面積を基準としたとき、その基準面積に対する各実施例及び各比較例の中間陸の接地面積の比率に基づき評価される。その評価としては、中間陸だけの接地面積を100%としたとき、100%以上の場合は◎、90%以上99%以下の場合は〇、80%以上89%以下の場合は△、80%未満の場合は×とした。
【0084】
表1によれば、比較例1~3のように中央陸および中間陸の比率が40%を下回ると、中央陸の摩耗が多い偏摩耗が生じる。比較例4、5は中央陸および中間陸の比率が40%以上であるが、サイプの比率が50%を超えるとトゥーヒール摩耗が生じる。一方、本発明の実施例1~6においては、中央陸の摩耗が多い偏摩耗およびトゥーヒール摩耗の抑制と接地性とがバランスよく確保される。また、実施例7は、「中央陸+中間陸」の比率が60%と高く剛性が高いことと、サイプの比率が30%と小さいことが相まって、中央陸の摩耗およびトゥーヒール摩耗に関しては良好であったが、剛性が高すぎることにより接地性がやや不十分となった。接地性の悪化低下は路面追従性が低下して車両挙動の線形性が下がり、操縦安定性が損なわれるため、摩耗の観点から「中央陸+中間陸」の比率は60%を超えないことが好ましい。実施例のタイヤにおいては、中央陸の比率が大きくなれば、ゴム量が増加することにより中央陸の摩耗量はショルダー陸よりも低減し、偏摩耗は抑制される。一方、トゥーヒール摩耗はサイプの比率が低減するほど発生しにくい。これらの特性をバランスよく得る上で、中央陸の幅と、中間陸の幅との合計が接地幅領域の幅の40%以上が確保され、中央サイプのタイヤ幅方向長さが中央陸の幅の50%以下であり、中間サイプのタイヤ幅方向長さが中間陸の幅の50%以下であることが有効である。
【符号の説明】
【0085】
1 タイヤ(空気入りタイヤ)
30 トレッド
37 トレッド面
39 接地幅領域
40 カーカスプライ
60 主溝
70 陸
71 中央陸
72 第1の中間陸(中間陸)
73 第2の中間陸(中間陸)
74 第1のショルダー陸(ショルダー陸)
75 第2のショルダー陸(ショルダー陸)
81 中央サイプ
91 中間サイプ
G1 中央陸の幅
G2 第1の中間陸の幅
G3 第2の中間陸の幅
L1 第1の中央サイプのタイヤ幅方向長さ
L2 第2の中央サイプのタイヤ幅方向長さ
L3 第1の中間サイプのタイヤ幅方向長さ
L4 第2の中間サイプのタイヤ幅方向長さ
W 接地幅領域の幅
図1
図2