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特開2024-42222保全作業支援システム、および、保全作業支援方法
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  • 特開-保全作業支援システム、および、保全作業支援方法 図1
  • 特開-保全作業支援システム、および、保全作業支援方法 図2
  • 特開-保全作業支援システム、および、保全作業支援方法 図3
  • 特開-保全作業支援システム、および、保全作業支援方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042222
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】保全作業支援システム、および、保全作業支援方法
(51)【国際特許分類】
   B66B 5/00 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
B66B5/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146786
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000232955
【氏名又は名称】株式会社日立ビルシステム
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】竹中 浩一
【テーマコード(参考)】
3F304
【Fターム(参考)】
3F304BA07
3F304CA11
3F304EA33
3F304EA35
3F304ED13
(57)【要約】
【課題】 本発明は、異音を機械的に擬音化した擬音語を用いつつ、過去の類似不具合事例を精度よく抽出することができる、保全作業支援システムを提供することを目的とする。
【解決手段】 設備の保全作業を支援する保全作業支援システムであって、前記設備の異音に基づく代表擬音語に対応する同義語を登録した同義語管理部と、前記代表擬音語および該代表擬音語に対応する同義語に基づいて、過去に発生した類似不具合事例を抽出して提示する事例検索部と、を有する保全作業支援システム。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備の保全作業を支援する保全作業支援システムであって、
前記設備の異音に基づく代表擬音語に対応する同義語を登録した同義語管理部と、
前記代表擬音語および該代表擬音語に対応する同義語に基づいて、過去に発生した類似不具合事例を抽出して提示する事例検索部と、
を有することを特徴とする保全作業支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の保全作業支援システムにおいて、
前記事例検索部は、
前記代表擬音語に対応する同義語を抽出する同義語抽出部と、
前記代表擬音語および該代表擬音語の同義語を検索キーとして、前記異音に関連する過去の類似不具合事例を検索する類似事例検索部と、
検索した類似不具合事例を提示するとともに、該類似不具合事例の正誤入力を受ける提示事例正誤入力部と、
検索した類似不具合事例が誤っていると前記提示事例正誤入力部で受けた場合に、検索に用いる擬音語を追加入力させる同義語追加入力部と、
を有することを特徴とする保全作業支援システム。
【請求項3】
請求項2に記載の保全作業支援システムにおいて、
前記同義語抽出部は、前記異音に基づいて機械的に生成した代表擬音語を検索キーとして、前記同義語管理部から、作業者が作成した擬音語を同義語として抽出することを特徴とする保全作業支援システム。
【請求項4】
請求項2に記載の保全作業支援システムにおいて、
前記代表擬音語は、前記異音に基づいて機械的に生成した擬音語であり、
前記同義語は、前記異音に基づいて作業者が作成した擬音語であることを特徴とする保全作業支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載の保全作業支援システムにおいて、
前記同義語管理部は
前記代表擬音語の同義語を定義する同義語辞書と、
該同義語辞書の更新要否を判断する辞書更新判断部と、
更新要と判断された場合、前記同義語辞書に新規の同義語を追加する辞書更新部と、
を有することを特徴とする保全作業支援システム。
【請求項6】
請求項5に記載の保全作業支援システムにおいて、
適切な類似不具合事例を提示することに貢献した同義語について、前記同義語辞書に対し追加や更新を行い検索精度の向上を図ることを特徴とする保全作業支援システム。
【請求項7】
設備の保全作業を支援する保全作業支援方法であって、
前記設備の異音に基づく代表擬音語に対応する同義語を登録する同義語管理処理と、
前記代表擬音語および該代表擬音語に対応する同義語に基づいて、過去に発生した類似不具合事例を抽出して提示する事例検索処理と、
を有することを特徴とする保全作業支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現地技術者による機械設備の不具合の調査や復旧作業を支援する、保全作業支援システム、および、保全作業支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
機械設備が発する異音に基づいて不具合を診断する従来技術として、特許文献1に記載の診断装置が知られている。例えば、同文献の要約書には「軸受異常診断装置100は、音響センサによって取得される音響データS20の特徴量を抽出する特徴量抽出手段40を備え、音響データに基づいて回転機器の軸受の状態を診断するものであって、回転機器が発生する音を表す擬音語S10を軸受の異常音の特徴量に変換する特徴量変換部10を備え、音響データの特徴量と、軸受の異常音の特徴量と、に基づいて、軸受の状態を診断する。」と記載されており、段落0025には「擬音語S10の入力は、タッチパネル等に擬音語の一覧を表示してその複数候補の中からメンテナンスエンジニアが選択する手段や、メンテナンスエンジニアが、聞こえた音をテキストデータとして入力する手段などが適用される。」と記載されている。
【0003】
このように、特許文献1では、現地技術者(メンテナンスエンジニア)が聞いた異音として選択または入力した擬音語と、音響センサが取得した音響データの双方を特徴量に変換し、両特徴量に基づいて機器の異常を精度よく判定する不具合診断方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2017/212645号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、現地技術者に異音の擬音語化を委ねる場合、例え同じ異音であっても現地技術者が異なれば異なる擬音語を選択する可能性があり、異音の擬音語への変換にはバラツキが生じる可能性がある。
【0006】
この問題の対策として、異音を機械的に擬音語へ変換する方法が有効である。しかし、機械的に生成した擬音語と、過去に現地作業者が聞き取って検索キーとして登録した擬音語の間にも変換バラツキが含まれるため、前者と後者の擬音語のどちらを検索キーとして用いても、過去の類似不具合事例を抽出する際に抽出漏れが生じ、不具合の調査や復旧作業に有用な最適事例を現地技術者に提示できない可能性があった。
【0007】
そこで、本発明は、異音を擬音語化した擬音語を検索キーとして用いつつ、適切な類似不具合事例を抽出することができる、保全作業支援システム、および、保全作業支援を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の保全作業支援システムは、設備の保全作業を支援するシステムであって、前記設備の異音に基づく代表擬音語に対応する同義語を登録した同義語管理部と、前記代表擬音語および該代表擬音語に対応する同義語に基づいて、過去に発生した類似不具合事例を抽出して提示する事例検索部と、を有する保全作業支援システムとした。
【発明の効果】
【0009】
本発明の保全作業支援システム、または、保全作業支援方法によれば、異音を擬音語化した擬音語を検索キーとして用いつつ、適切な類似不具合事例を精度よく抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例1の保全作業支援システムの機能ブロック図。
図2】実施例1の同義語辞書のデータ構造図。
図3】実施例1の保全作業支援システムの処理フロー図。
図4】実施例2の同義語辞書のデータ構造図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を用いて本発明の実施例を説明する。なお、各図、各実施例において、同一または類似の構成要素については同じ符号を付け、重複する説明は省略することとする。
【実施例0012】
まず、図1から図3を用いて、本発明の実施例1に係る保全作業支援システム100を説明する。
【0013】
図1は、保全作業支援システム100の機能ブロック図である。この保全作業支援システム100は、現地技術者が機械設備の不具合の調査や復旧作業を行う際に、その機械設備が発する異音に関連する過去の類似不具合事例を検索するシステムの一例であり、異音採取ユニット1と、復旧支援ユニット2を有している。以下、各ユニットの詳細を順次説明する。
【0014】
<異音採取ユニット1>
異音採取ユニット1は、機械設備が発した異音を代表擬音語に変換するためのユニットであり、例えば、スマートフォン等の携帯型コンピューターである。この異音採取ユニット1は、機械設備の異音を録音するためのマイク11と、録音した異音データを機械的に代表擬音語へ変換する擬音語生成部12を有する。異音を発する機械設備がエレベータやエスカレーターである場合、擬音語生成部12で機械的に生成される代表擬音語は、例えば、「ゴロゴロ」、「カンカン」、「コンコン」などである。
【0015】
なお、図1の異音採取ユニット1では、異音を機械的に代表擬音語へ変換しているが、現地技術者が異音を聞き取り、代表擬音語をテキストデータとして入力する方式を採用しても良い。
【0016】
<復旧支援ユニット2>
復旧支援ユニット2は、異音採取ユニット1から入力された代表擬音語の同義語を抽出することで、代表擬音語と同義語の双方を検索キーとして、機械設備の異音に関連する類似不具合事例を検索するためのユニットであり、例えば、異音採取ユニット1と通信可能なクラウド上のサーバー等のコンピューターである。この復旧支援ユニット2は、主に類似不具合事例を検索するための事例検索部21と、主に同義語を管理するための同義語管理部22を有する。
【0017】
<<事例検索部21>>
事例検索部21は、代表擬音語に対応する同義語を抽出する同義語抽出部21aと、代表擬音語またはその同義語に対応する過去の類似不具合事例を検索する類似事例検索部21bと、検索した類似不具合事例を現地技術者に提示するとともに、提示された類似不具合事例の正誤の入力を現地技術者に求める提示事例正誤入力部21cと、正解となる類似不具合事例が提示されなかった場合に、現地技術者が異音相当と考える擬音語をテキストデータとして追加入力させる同義語追加入力部21dを有する。なお、各部の詳細は図3を用いて後述する。
【0018】
<<同義語管理部22>>
同義語管理部22は、代表擬音語の同義語を登録したテーブルである同義語辞書22aと、同義語辞書22aの更新要否を判断する辞書更新判断部22bと、同義語辞書22aに新たな同義語を追加する辞書更新部22cを有する。なお、各部の詳細は図3を用いて後述する。
【0019】
ここで、図2を用いて、同義語辞書22aのデータ構造の一例を説明する。ここに示すように、同義語辞書22aは、代表擬音語とその同義語を対応付けたテーブルであり、例えば、ある異音に基づいて機械的に生成した代表擬音語「ゴロゴロ」に対応する同義語としては、過去に人が異音を聞き取り擬音語化した、「ゴトゴト」、「ガラガラ」、「ガリガリ」の三種類の同義語が登録されている。なお、同義語辞書22aへの同義語の登録方法については、後述する図3のステップS8の説明中で詳細を述べることとする。
【0020】
<フローチャート>
次に、図3の処理フロー図を用いて、機械設備で異音が発生した場合における、保全作業支援システム100の動作を、現地技術者の挙動にも触れつつ順次説明する。なお、図3においては、異音採取ユニット1はマイクとタッチパネルディスプレイを備えたスマートフォンであるものとする。
【0021】
まず、ステップS1では、現地技術者は、異音採取ユニット1のマイク11を異音発生源に近づけ、機械設備で発生している異音の音データを採取する。
【0022】
次に、ステップS2では、擬音語生成部12は、ステップS1で採取した音データを機械的に擬音語化し、代表擬音語として復旧支援ユニット2へ送信する。なお、異音採取ユニット1から復旧支援ユニット2に代表擬音語を送信する際には、対応中の機械設備に関する情報(機種情報、設備ID等)を共に送信する。
【0023】
ステップS3では、復旧支援ユニット2の同義語抽出部21aは、同義語辞書22aを参照して、機械的に生成した代表擬音語に対応する同義語を抽出する。例えば、機械的に生成した代表擬音語が「ゴロゴロ」であった場合、同義語辞書22aが図2に例示する内容であれば、同義語抽出部21aは代表擬音語「ゴロゴロ」の同義語である「ゴトゴト」、「ガラガラ」、「ガリガリ」の三種類の擬音語を抽出する。
【0024】
ステップS4では、類似事例検索部21bは、対応中の機械設備に対する情報(機種情報、設備ID等)と、ステップS2で生成した代表擬音語と、ステップS3で抽出した同義語を検索キーとして用い、図示しない不具合事例データベースから、過去の類似する不具合事例を検索し、現地技術者へ提示する。従って、ステップS3の具体例の状況下では、「ゴロゴロ」、「ゴトゴト」、「ガラガラ」、「ガリガリ」の各擬音語と対応する不具合事例が現地技術者に提示されこととなる。なお、現地技術者への不具合事例の提示は、スマートフォン(異音採取ユニット1)のディスプレイを介して行えばよい。
【0025】
ステップS5では、現地技術者は、ステップS4で提示された過去不具合事例を参考に機械設備の調査や復旧作業を行うが、それと同時に、提示された不具合事例が実際の不具合に関連するかを判定する。そして、提示された事例中に、実際の不具合に関連するもの(正解)がなかった場合は、ステップS6に進み、正解があった場合は、ステップS7に進む。なお、本ステップでは、スマートフォン(異音採取ユニット1)のタッチパネルディスプレイをインターフェースとして、提示事例正誤入力部21cが現地技術者に判断結果の入力を促すものとする。
【0026】
正解があった場合、現地技術者は、保全作業支援システム100が提示した不具合事例を参照して機械設備の調査や復旧作業を行う。そして、現地技術者が復旧作業の終了を通知したときに、保全作業支援システム100から現地技術者への情報提供が終了する。
【0027】
ステップS6では、現地技術者は、聞き取った異音を擬音語化したテキストデータを擬音語として追加入力する。その後、ステップS4に進み、追加入力された擬音語を検索キーとして、不具合事例データベースを再検索する。図3から明らかなように、再検索は実際の不具合と関連する過去不具合事例が提示されるまで繰り返される。なお、本ステップでは、スマートフォン(異音採取ユニット1)のタッチパネルディスプレイをインターフェースとして、同義語追加入力部21dが現地技術者に擬音語のテキストデータの入力を促すものとする。
【0028】
一方、ステップS7に進んだ場合、辞書更新判断部22bは、現地技術者が追加入力して正解が得られた擬音語が、同義語辞書22aに既に登録されているかを確認する。そして、登録されていなければ、ステップS8に進み、登録されていれば、同義語辞書22aを更新することなく調査を終了する。
【0029】
ステップS8では、辞書更新部22cは、適切な不具合事例の検索に失敗した代表擬音語の新たな同義語として、ステップS6で現地技術者が追加入力した擬音語を同義語辞書22aに追加登録する。
【0030】
本ステップにより、次回の診断時のステップS2で、不適切な代表擬音語が機械的に生成された場合であっても、続くステップS3、S4では、追加登録された新規同義語を検索キーとして利用できるため、新規同義語の登録前には抽出できなかった適切な類似不具合事例を現地技術者に提示できるようになる。
【0031】
<本実施例の効果>
以上で説明した本実施例の保全作業支援システムによれば、機械設備の異音を機械的に擬音語化した代表擬音語に対応する過去の類似不具合事例に加え、同義語辞書に登録された同義語に対応する過去の類似不具合事例も抽出できるので、適切な類似不具合事例を精度よく提示することができる。
【0032】
また、所与の同義語辞書を参照しても適当な過去の類似不具合事例を抽出できなかった場合は、同義語辞書に新規の同義語を追加登録できるので、同義語辞書の品質を経時的に高めることもできる。
【実施例0033】
次に、図4を用いて、本発明の実施例2に係る保全作業支援システム100を説明する。なお、実施例1との共通点については重複説明を省略する。
【0034】
上記したように、実施例1においては、図3のステップS8にて未登録の同義語を追加登録することで同義語辞書22aの品質を経時的に高めている。しかしながら、保全作業支援システム100の長期運用により、同義語辞書22aへの同義語登録数が過剰になると、各代表擬音語に対応する検索条件範囲が広がり過ぎるため、実際の不具合との関連が少ない情報も抽出する可能性が高くなり、適切な情報の抽出精度の維持が難しくなる。そのため、本実施例の同義語辞書22aでは、テーブルのデータ構造を高度化し、より尤度の高い情報を優先的に提示できるようにした。
【0035】
すなわち、図2図4の比較から分かるように、本実施例の同義語辞書22aでは、過去の出現回数や、復旧対応時の有効性などを用いた優先度のカラムを設けたテーブル構造を用い、まずは、優先度の高い同義語(例えば、優先度が0.8以上の同義語)のみを用いて初回の検索抽出を行う。そして、優先度の高い同義語に基づいて検索した情報が適当でない場合は、次に優先度の高い同義語(例えば、優先度が0.6以上の同義語)を用いて2回目の検索抽出を行う。これを適当に繰り返すことで、より尤度の高い情報から順に現地技術者に提示することができるようになり、検索キー候補である同義語が過剰になったことの弊害を抑制することができる。
【0036】
なお、ここでは優先度を決める方法として、過去の出現回数や、復旧対応時の有効性を挙げているが、優先度の決め方はこの例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
100 保全作業支援システム
1 異音採取ユニット
11 マイク
12 擬音語生成部
2 復旧支援ユニット
21 事例検索部
21a 同義語抽出部
21b 類似事例検索部
21c 提示事例正誤入力部
21d 同義語追加入力部
22 同義語管理部
22a 同義語辞書
22b 辞書更新判断部
22c 辞書更新部
図1
図2
図3
図4