(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042229
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】リポ多糖を含む組成物
(51)【国際特許分類】
C07H 13/06 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
C07H13/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146802
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100141195
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 恵美子
(72)【発明者】
【氏名】桑原 大知
【テーマコード(参考)】
4C057
【Fターム(参考)】
4C057AA05
4C057BB03
4C057CC04
4C057DD03
4C057HH03
(57)【要約】
【課題】本発明は、所定の構造又は所定の活性を有するグラム陰性菌のLPSを含む組成物の提供を目的とする。
【解決手段】グラム陰性菌のリポ多糖を含む組成物であって、前記リポ多糖がリピドAを有し、前記リピドAが所定の構造を有し、所定のリムルス活性を有する、組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラム陰性菌のリポ多糖を含む組成物であって、前記リポ多糖がリピドAを有し、
前記リピドAのグルコサミン骨格に、炭素数8~16の3-ヒドロキシアシル鎖が4本結合し、かつ、1又は2本の前記3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に炭素数8~13のアシル鎖がさらに結合し、
リムルス活性が30000EU/mg以上である、組成物。
【請求項2】
前記リピドAのグルコサミン骨格に、炭素数10~14の3-ヒドロキシアシル鎖が4本結合し、かつ、グルコサミン骨格の2位に結合する炭素数10~14の3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に炭素数12のアシル鎖がさらに結合する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記炭素数12のアシル鎖が、非還元末端側のグルコサミンの2位に結合する炭素数14の3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に結合し、還元末端側のグルコサミンの2位に結合する炭素数14の3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に結合しない、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記リピドAが、式(I)の構造:
【化6】
を有する、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
【請求項5】
グラム陰性菌がパラコッカス属に属する細菌である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グラム陰性菌のリポ多糖を含む組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
リポ多糖(以下、「LPS」又は「リポポリサッカライド」ともいう)は、大腸菌等のグラム陰性菌の細胞壁を構成する成分である。グラム陰性菌の死滅や破壊によりグラム陰性菌から遊離したLPSによって哺乳動物の発熱反応等の反応が引き起こされ、多量に与えられると死に至ることもあることから、LPSは内毒素(エンドトキシン)とも呼称される。
【0003】
LPSの基本構造は、脂質部分であるリピドA部分と多糖部分を含む。多糖部分はさらにコアとO抗原多糖側鎖で構成されている。通常、LPSは、リピドAが外膜に埋め込まれ、O抗原多糖側鎖が外に突き出た形で細胞壁に組み込まれており、細胞壁からは容易には遊離しない。グラム陰性菌が死滅して細胞が溶菌すると、LPSは遊離し、それが例えば動物細胞に作用することで様々な生理活性が発現する。
【0004】
遊離したLPSは標的細胞の細胞膜上のTLR4(toll like receptor 4)を介して作用を発現する。TLR4にLPSが結合すると細胞内シグナル伝達系を介してTNFα、IL-6、IL-12といった炎症性サイトカインの産生やI型インターフェロン(IFN)の産生が引き起こされる(非特許文献1)。特に、大腸菌等のLPSは、これらのシグナルを同時にかつ強力に活性化するために強い炎症が惹起される。
【0005】
このようにLPSはTLR4のシグナル伝達系を介してサイトカインの産生を促進する作用を有する。サイトカインの産生は、一般に、強い免疫賦活活性に繋がり細菌感染の防御のための生体防御反応に一定の役割を果たす。
【0006】
このように、LPSは免疫賦活活性を有することが知られていることから、LPSの免疫賦活活性を医薬品、化粧品、食品、飼料等に利用することも検討されている。しかしながら、通常の方法でグラム陰性菌からLPSを取得する場合には、高濃度又は高活性のLPSを取得することが難しい。
【0007】
また、LPSの基本構造は、グラム陰性菌で似通っているものの、由来するグラム陰性菌の種類によりLPSの構造は異なることが知られている。しかし、一般に、グラム陰性菌のLPSの構造を決定することは容易ではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】生化学, 79, 769-776, 2007
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、グラム陰性菌のLPSを含有する組成物であって、前記LPSが所定の構造又は活性を有する前記組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、鋭意研究を行い、所定の構造又は所定の活性を有するグラム陰性菌のLPSを含む組成物を見出した。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
グラム陰性菌のリポ多糖を含む組成物であって、前記リポ多糖がリピドAを有し、
前記リピドAのグルコサミン骨格に、炭素数8~16の3-ヒドロキシアシル鎖が4本結合し、かつ、1又は2本の前記3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に炭素数8~13のアシル鎖がさらに結合し、
リムルス活性が30000EU/mg以上である、組成物。
[2]
前記リピドAのグルコサミン骨格に、炭素数10~14の3-ヒドロキシアシル鎖が4本結合し、かつ、グルコサミン骨格の2位に結合する炭素数10~14の3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に炭素数12のアシル鎖がさらに結合する、請求項1に記載の組成物。
[3]
前記炭素数12のアシル鎖が、非還元末端側のグルコサミンの2位に結合する炭素数14の3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に結合し、還元末端側のグルコサミンの2位に結合する炭素数14の3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に結合しない、請求項2に記載の組成物。
[4]
前記リピドAが、式(I)の構造:
【化1】
を有する、請求項1~3のいずれかに記載の組成物。
[5]
グラム陰性菌がパラコッカス属に属する細菌である、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、所定の構造及びリムルス活性を有するリピドAを有する、グラム陰性菌のLPSを含む組成物が提供される。
本発明により提供される組成物は、構造が特定されており、また、高いリムルス活性を有する点で、LPSの免疫賦活活性を医薬品、化粧品、食品、飼料等に利用する上で有用である。
【0012】
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】脂肪酸分析のGCチャートを示す。上図がパラコッカスLPS由来の脂肪酸の分析結果であり、下図が脂肪酸標準Mixの分析結果である。
【
図2】GC-MSのスペクトル(リテンションタイム9.440分)を示す。上図がパラコッカスLPS由来の脂肪酸の分析結果であり、下図がC12:1(C5-C6 cis)のデータベース収録データである。
【
図3】GC-MSのスペクトル(リテンションタイム14.417分)を示す。上図がパラコッカスLPS由来の脂肪酸の分析結果であり、下図が3-OH C10:0のデータベース収録データである。
【
図4】GC-MSのスペクトル(リテンションタイム23.010分)を示す。上図がパラコッカスLPS由来の脂肪酸の分析結果であり、下図が3-OH C14:0のデータベース収録データである。
【
図5】パラコッカス属に属する細菌由来のLPSのリピドA部分を陰イオンモードで測定した場合のMALDI-TOF MS 測定結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に限定されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。
【0015】
1.グラム陰性菌のLPS
本発明の組成物は、グラム陰性菌のLPSを含有する。グラム陰性菌は、その細胞壁にLPSを有することが知られている。本発明において、グラム陰性菌は、LPSを有するグラム陰性菌であればいずれでよく、限定されるわけではないが、例えば、プロテオバクテリア門(大腸菌、サルモネラ菌、シュードモナス菌、パラコッカス菌等)、シアノバクテリア門、スピロヘータ門、クロロビウム門、バクテロイデス門が含まれる。本発明において、グラム陰性菌は、好ましくはパラコッカス属に属する細菌である。
【0016】
本明細書において、パラコッカス属に属する細菌は、特に限定されない。パラコッカス属に属する細菌は、Paracoccus carotinifaciens、Paracoccus marcusii、Paracoccus haeundaensis及びParacoccus zeaxanthinifaciensが好ましく用いられ、Paracoccus carotinifaciens又はParacoccus zeaxanthinifaciensがより好ましく用いられ、特にParacoccus carotinifaciensが好ましく用いられる。パラコッカス属に属する細菌の具体的な菌株として、例えば、Paracoccus carotinifaciens E-396株(FERM BP-4283)、Paracoccus属細菌A-581-1株(FERM BP-4671)、Paracoccus marcusii DSM 11574株、Paracoccus属細菌N-81106株、Paracoccus haeundaensis BC 74171株、Paracoccus zeaxanthinifaciens ATCC 21588株、及びParacoccus sp. PC-1株が挙げられ、これらの変異株も本発明に好ましく用いられる。E-396株及びA-581-1株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)特許生物寄託センター(NITE-IPOD)(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)を国際寄託当局として以下のとおり国際寄託されている。
E-396株
識別のための表示:E-396、受託番号:FERM BP-4283、原寄託日:平成5年(1993年)4月27日
A-581-1株
識別のための表示:A-581-1、受託番号:FERM BP-4671、原寄託日:平成6年(1994年)5月20日
【0017】
2.リピドAの構造
グラム陰性菌のLPSはリピドAを有する。本発明において、リピドAは、グルコサミン2分子がβ(1→6)結合で結合したグルコサミン2分子を骨格とする。本明細書において、このリピドAの骨格を「グルコサミン骨格」と称する。
【0018】
本発明の一態様において、グルコサミン骨格の還元末端側のグルコサミンの1位にリン酸基が結合し、非還元末端のグルコサミンの4位にリン酸基が結合する。本発明の別の態様において、結合するリン酸は1~3であってもよく、さらに、リン酸は修飾されていてもよい。本発明の別の態様において、リン酸基の代わりに水酸基であってもよい。
【0019】
本発明におけるリピドAは、グルコサミン骨格に炭素数8~16のアシル鎖が4本直接結合しており、当該アシル鎖は3位に水酸基を有する。本明細書において、3位に水酸基を有するアシル鎖を3-ヒドロキシアシル鎖とも称する。
すなわち、リピドAは、グルコサミンの2位に3-ヒドロキシアシル鎖がアミド結合し、3位に3-ヒドロキシアシル鎖がエステル結合にしたグルコサミン2分子が結合している。2分子のグルコサミンは、同一のグルコサミン2分子であってもよいし、2分子間で異なる3-ヒドロキシアシル鎖が結合したグルコサミン2分子でもよい。
【0020】
本発明において、グルコサミンの2位及び3位に結合する3-ヒドロキシアシル鎖の炭素数は、8~16であり、好ましくは10~14、より好ましくは10、11、12、13又は14であり、さらに好ましくは10または14である。
【0021】
グルコサミン骨格に直接結合する3-ヒドロキシアシル鎖の有する二重結合の数は、0、1または2であり、好ましくは0である。
【0022】
本発明において、グルコサミン骨格に結合する3-ヒドロキシアシル鎖は、好ましくは3-OH10:0又は3-OH14:0である。
【0023】
本発明の一態様において、グルコサミンの2位に結合する3-ヒドロキシアシル鎖は3-OH14:0であり、グルコサミンの3位に結合する3-ヒドロキシアシル鎖は3-OH10:0である。
【0024】
本発明におけるリピドAは、グルコサミン骨格に直接結合する4本の3-ヒドロキシアシル鎖のうちの1本または2本について、3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に、炭素数8~13のアシル鎖がさらにエステル結合する。本発明の一態様において、グルコサミン骨格の2位に結合する3-ヒドロキシアシル鎖(1本又は2本)の3位の水酸基に、炭素数8~13のアシル鎖がさらにエステル結合する。このようなさらなるアシル鎖の結合により、リピドAは5本又は6本のアシル鎖を有する。
【0025】
本発明において、グルコサミン骨格に直接結合する3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に結合するアシル鎖の炭素数は、8~13であり、好ましくは8~12、より好ましくは12である。
【0026】
本発明において、グルコサミン骨格に直接結合する3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に結合するアシル鎖の有する二重結合の数は、0、1または2であり、好ましくは1である。
【0027】
本発明において、グルコサミン骨格に直接結合する3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に結合するアシル鎖は、好ましくはC12:1であり、より好ましくはカルボニル基の炭素から数えて5番目の炭素(C5-6間)に二重結合(シス)を有するC12:1(C12:1(Δ5))である。
【0028】
本発明の一態様において、グルコサミン骨格に直接結合する3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に結合するアシル鎖は、非還元末端側のグルコサミンの2位に結合する3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に結合するが、還元末端側のグルコサミンの2位に結合する3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に結合しない。
【0029】
本発明におけるリピドAの態様の例示を以下に挙げる。
本発明の一態様において、リピドAは、グルコサミン骨格に炭素数8~16の3-ヒドロキシアシル鎖が4本結合し、かつ、1又は2本の前記3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に炭素数8~13のアシル鎖がさらに結合した構造を有する。
【0030】
本発明の別の態様において、リピドAは、グルコサミン骨格に炭素数10~14の3-ヒドロキシアシル鎖が4本結合し、かつ、グルコサミン骨格の2位に結合する炭素数10~14の3-ヒドロキシアシル鎖の1本又は2本について、その3位の水酸基に炭素数8~13のアシル鎖がさらに結合した構造を有する。
【0031】
本発明の別の態様において、リピドAは、グルコサミン骨格に炭素数10~14の3-ヒドロキシアシル鎖が4本結合し、かつ、グルコサミン骨格の2位に結合する炭素数10~14の3-ヒドロキシアシル鎖の1本又は2本について、その3位の水酸基に炭素数12のアシル鎖がさらに結合した構造を有する。
【0032】
本発明の別の態様において、リピドAは、グルコサミン骨格に炭素数10~14の3-ヒドロキシアシル鎖が4本結合し、かつ、グルコサミン骨格の2位に結合する炭素数10~14の3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に炭素数12のアシル鎖がさらに結合し、
前記炭素数12のアシル鎖が、非還元末端側のグルコサミンの2位に結合する炭素数14の3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に結合し、還元末端側のグルコサミンの2位に結合する炭素数14の3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に結合しない構造を有する。
【0033】
本発明の別の態様において、リピドAは、グルコサミン骨格に炭素数10又は14の3-ヒドロキシアシル鎖が4本結合し、かつ、グルコサミン骨格の2位に結合する炭素数14の3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に炭素数12のアシル鎖がさらに結合し、
前記炭素数12のアシル鎖が、非還元末端側のグルコサミンの2位に結合する炭素数14の3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に結合し、還元末端側のグルコサミンの2位に結合する炭素数14の3-ヒドロキシアシル鎖の3位の水酸基に結合しない構造を有する。
【0034】
本発明の一態様において、リピドAは、グルコサミンの2位に3-OH14:0が結合し、グルコサミンの3位に3-OH10:0が結合し、二重結合(シス)がC5-6間に含まれるC12:1が、非還元末端側のグルコサミンの2位に結合する3-OH14:0に結合した構造を有する。
【0035】
本発明の一態様において、リピドAは式(I)の構造を有する。
【化2】
【0036】
3.本発明の組成物
本発明は、グラム陰性菌を処理した処理物を含む組成物が、従来の菌体等よりも高いリムルス活性を得られることを見出した。本発明の組成物は、グラム陰性菌を精製、抽出等の処理を経て製造することができる。
【0037】
本発明の組成物は、グラム陰性菌のLPSを含む限り、グラム陰性菌の抽出物や乾燥菌体の態様であってもよい。例えば、グラム陰性菌を適宜培養し、得られた培養物を抽出処理した抽出物又は培養物を乾燥した乾燥菌体を、本発明の組成物とすることができる。
【0038】
また、上記抽出処理の前又は後に、濃縮、乾燥、希釈、破砕、粉砕、加熱等の処理を単独又は組み合わせた処理に供してもよい。乾燥処理には噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、ドラム乾燥が含まれる。破砕処理には、ホモジナイザー、フレンチプレス、乳鉢、ガラスビーズなどの手段による破砕が含まれる。菌体を破砕又は粉砕することにより、表面積が増え、より多くのLPSが界面に露出することが期待される。当業者であれば、グラム陰性菌の培養や、抽出等の処理を公知の方法に従い実施することができる。
【0039】
上記のとおり、グラム陰性菌の培養後の乾燥菌体またはその処理物を本発明の組成物とすることもできる。また、市販品を用いてもよい。例えば、パラコッカス属に属する細菌(Paracoccus carotinifaciens)の培養後の乾燥菌体であるPanaferd-AX(ENEOS株式会社)を用いることができる。
【0040】
当業者であれば、抽出したパラコッカス属に属する細菌由来のLPSをさらに精製することができる。精製方法は、従来公知の方法に従うことができる。
【0041】
例えば、グラム陰性菌は、熱水フェノール法(O.Westphal, K. Jann, "Methods in Carbohydrate Chemistry", ed. by R. Whistler, Vol.5, p.83, Academic Press, New York (1965)、フェノール-クロロホルム-石油エーテル抽出法(PCP)法(C.Galanos, O. Luderitz, O. Westphal, Eur. J. Biochem., 9, 245 (1969))などで処理することにより、LPSを抽出することができる。
【0042】
LPSやPCP法の各精製ステップで得られる組成物を、本発明の組成物とすることができる。精製することにより、LPSの純度を向上することができる。PCP法の詳細は、実施例の記載を参照することができる。これらの方法で得られたグラム陰性菌のLPS抽出物を本発明の組成物することができる。また、本発明においては、PCP法で高度に精製されたLPSによって、LPSの構造の特定することができた。
【0043】
本発明の別の態様において、本発明の組成物は、レシチンやリゾレシチンを含有してもよい。当業者は、通常の技術を用いてレシチン又はリゾレシチンを組成物に含有させることができる。例えば、レシチン又はリゾレシチンの水溶液と、グラム陰性菌のLPS抽出物、グラム陰性菌の培養後の乾燥菌体またはその処理物を、ミキサー等で混合する。両親媒性分子であるレシチンまたはリゾレシチンと一緒にグラム陰性菌を処理することにより、LPS(特にパラコッカス属に属する細菌のLPS)の水分散性の改善や動物での吸収性の改善が見込まれる。
【0044】
LPSは免疫賦活活性を有することが知られている。本発明の組成物は、30000EU/mg以上のリムルス活性を示すことから、飼料組成物、医薬組成物、食品組成物、化粧品組成物として有用である。飼料、医薬、食品、化粧品として用いる場合、それぞれの用途に許容可能な担体をさらに含有させてもよい。
【0045】
4.リムルス活性
本発明の組成物は、従来よりも高いリムルス活性を示すことが見出された。リムルス活性は、カブトガニ血球抽出物の凝固を促進する活性であり、分子レベルでのエンドトキシンの生物活性である。リムルス活性は、カブトガニの血球抽出物より調製されたライセート試薬を用いて、エンドトキシンを検出又は定量するリムルス試験により測定される。リムルス試験には、ライセート試薬のゲル形成を指標とするゲル化法と光学的変化を指標とする光学的定量法(比濁法、比色法)がある。比濁法は、ライセート試薬のゲル化に伴う濁度(吸光度又は透過率)の変化を測定することにより、エンドトキシン濃度を測定する方法である。また、比色法は、エンドトキシンとライセート試薬の反応により生じた凝固酵素によって発色合成基質から遊離される発色基の量を吸光度又は透過率で測定する方法である。比色法には、カイネティック比色法とエンドポイント比色法がある。比濁法と比色法は、ほぼ同等のリムルス活性値を示すことから、本発明においては、リムルス活性は比濁法又は比色法(カイネティック比色法)を用いて測定される。リムルス活性は、市販のエンドトキシン測定キットにより測定することが可能である。
【0046】
本発明において、比濁法又は比色法(カイネティック比色法)により測定したリムルス活性は、30000EU/mg以上である。本発明におけるリムルス活性は、好ましくは4×104EU/mg以上、1×105EU/mg以上、1.2×105EU/mg以上、1.9×105EU/mg以上、1×106EU/mg以上、2×106EU/mg以上、3×106EU/mg以上、5×106EU/mg以上、1×107EU/mg以上、2×107EU/mg以上、3×107EU/mg以上、4×107EU/mg以上、4.5×107EU/mg以上、又は4.7×107EU/mg以上である。
【実施例0047】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0048】
試験1.LPSの精製
パラコッカス菌は、Paracoccus carotinifaciensを用い、パラコッカス菌由来のLPSはPCP(フェノール/クロロホルム/石油エーテル)法にて精製した。具体的には、パラコッカス菌由来のLPSの精製は、以下に示す4ステップにて行った。
【0049】
・ステップ1:パラコッカス菌乾燥菌体の脱脂
乾燥菌体として、Panaferd-AX(ENEOS株式会社)を用いた。乾燥菌体60gを50mLのコニカルチューブ12本(約5g/チューブ)に分注した。エタノール(4回)、アセトン(3回)およびジエチルエーテル(3回)の順で洗浄(各チューブ40mL/回)を行った。洗浄後、凍結乾燥した。乾燥重量は55.998gであった。
【0050】
・ステップ2:PCP法によるLPSの抽出
洗浄脱脂した菌体約56gを500mLの広口のガラス試薬ビンに加えた。液体フェノール(90g+水11mLの割合の混液)、クロロホルムおよび石油エーテル(2:5:8)から成るPCP混液を300mL加え、氷冷下でポリトロンで2分間攪拌した。懸濁液をステンレス遠心管8本に移し高速冷却遠心機モデル7780にて5,000×g、15分間遠心分離を行い、遠心分離後の上清(150mL)を50mLのコニカルチューブに回収した。残渣をさらに2回PCP混液で抽出し、遠心分離した上清を回収した。2回目では上清110mL、3回目では上清180mLが回収できた。
【0051】
・ステップ3:LPSの沈殿精製(粗精製LPSの取得)
ガラス試験管16本に各6mL上清を分注し、遠心エバポレーターで減圧下溶媒(40℃)を留去した。溶媒が減ったガラス管に上清を追加して上清の全量について溶媒を留去した。溶媒除去後の上清(フェノール液)に水をフェノール液の1/10量加えた。遠心分離(3,500rpm×20分)を行い、上清をデカントで別のチューブに移した。チューブの底に沈殿が認められた。沈殿を80%フェノールで2回(1回につき3mL)、エーテルで4回順次洗浄(1回につき3mL程度)し、エーテル除去後減圧乾燥した。粗精製LPSを447mg取得した。
【0052】
・ステップ4:粗精製LPSの高度精製
粗精製LPS440mgを10mg/mLになるように注射用水に懸濁・溶解した。1M Tris-HCl pH8.0を10mMとなるように加えた。1M MgCl2水溶液を2mMとなるように加えた。ベンゾナーゼ溶液を終濃度10U/mLになるように13.2μL加えた。37℃で6時間インキュベートすることにより核酸分解酵素処理をした。核酸分解酵素処理液にプロティナーゼKを終濃度100μg/mLになるよう20mg/mLの水溶液を加え、37℃で16時間インキュベートした。核酸分解酵素処理とタンパク分解酵素処理を行った粗LPS液を4本に分け、分画分子量10kDaの遠心式限外ろ過チューブ4本を用いて限外ろ過を行った。処理液を限外ろ過後に、注射用水で限外ろ過は4回行った。
限外ろ過の内液を回収し、注射用水で共洗いした。粗LPS濃度で5mg/mLになるように注射用水を加えて88mLとした。トリエチルアミン(TEA)を終濃度0.2%、デオキシコール酸Na(DOC)を終濃度0.5%になるように加え溶解懸濁した。液を8本の50mLのコニカルチューブに11mLずつ分注した。水飽和フェノールを等量(11mL)ずつ加え、氷水中で10分間置き、その後遠心分離(3,500rpm×20分間)を行い、水層(上相)を別の50mLコニカルチューブに回収した。
フェノール層に、回収した水層と等量の0.2%TEA、0.5%DOC水溶液を加え混合した。5分間放置後、氷水中で10分間置き、その後、遠心分離(3,500rpm×20分間)を行った。水層(上相)を別の50mLコニカルチューブに回収した。
回収した水層を8本の50mLコニカルチューブに分注し、等量の水飽和フェノールを加え、液を混ぜた。5分間放置後、氷水中で10分間置き、その後、遠心分離(3,500×20分間)を行った。水層(上相)を別の50mLコニカルチューブに回収した。
回収した水層を8本に分注し、3M酢酸ナトリウム水溶液(pH5.2)を終濃度30mMになるように加えて、終濃度が75%になるようにチューブごとにエタノール33mLを加えた。よく混ぜた後、-20℃で16時間保存した。
遠心チューブの液を遠心管8本に分注し高速冷却遠心機を用いて遠心分離(4℃、10,000g×30分)を行った。上清はデカントで除去し、得られた沈殿を、100%エタノール20mLずつで計4回洗浄した。得た沈殿を凍結乾燥し、秤量し、67.2mgの高度精製LPSを得た。
【0053】
LPSの純度は以下の式で算出した。
式:LPS量=高度精製LPS量-不純物量
LPS(純度)(%)=LPS量/高度精製LPS量×100
高度精製LPS中には、不純物として核酸およびタンパク質が含まれる。高度精製LPSに含まれる核酸の量はUV吸光度法にて、タンパク質の量はLowry法にてそれぞれ測定した。
【0054】
ステップ4実施後のLPSの純度を以下に示す。
LPS(%) 核酸(%) タンパク質(%) 合計(%)
97.82 1.35 0.82 100.00
【0055】
試験2.GC-MSによる脂肪酸分析方法によるパラコッカス菌由来LPSの構造特定
(1)サンプル調製
パラコッカス菌由来LPSとして、試験1で調製したパラコッカス菌由来LPS(高度精製品)を用いた。1 mgの精製LPSを試験管に入れ、5% HCl メタノール溶液を加えた。蓋をして100℃で2時間インキュベートした。冷却後、1 mLの水と1 mLの標準液(10μg/mLパルミチン酸メチル-d31)を加え、攪拌混合した。遠心分離(3,000 rpm, 5 min)し、上清をサンプルとして取得した。脂肪酸標準Mix(Supelco(登録商標)37 component FAME Mix)も分析した。
【0056】
(2)装置及び測定条件
GC-MS: GCMS2010Ultra (SHIMADZU CORPORATION)を測定装置として用い、表1の測定条件で測定した。
【0057】
【0058】
【0059】
【0060】
表2に示す構成成分量から、上位の3つの脂肪酸、すなわち、C12:1、3-hydroxy fatty acid-1及び3-hydroxy fatty acid-2がLPSの構成に含まれていると判断された。また、C18:1とC18:0は含有量が少ないことから、不純物と判断した。なお、この試験では、すべのエステル、アミド結合が分解されなかった可能性もあるため、C12:1、3-hydroxy fatty acid-1及び3-hydroxy fatty acid-2間のcomponent ratioは、リピドAの構造特定に考慮しなかった。
【0061】
(4)脂肪酸の構造特定
次に、C12:1, 3-hydroxy fatty acid-1, 3-hydroxy fatty acid-2のそれぞれについて、MSのフラグメントピークに基づき構造を特定した。
【0062】
C12:1脂肪酸は、GCのリテンションタイム(9.440 min)と、データベースのMSフラグメントピークとの照合により、C5-C6にcis型の二重結合を有するC12:1脂肪酸であると特定された(
図2)。
【0063】
3-hydroxy fatty acid-1は、MSフラグメントピークから3-OH-10:0であると推察された。すなわち、通常、3-ヒドロキシ脂肪酸は[M-18]、[M-50]及び[M-92]の3つの特徴的なピークを有し、3-hydroxy fatty acid-1が3-OH-10:0である場合は、これら3つのピークはそれぞれ、[M-18]+ 184、[M-50]+ 152及び[M-92]+ 110にて観測される。3-hydroxy fatty acid-1は、これらのピークを有することから3-OH-10:0であると推察された(
図3)。
【0064】
【0065】
3-hydroxy fatty acid-2も3-hydroxy fatty acid-1と同様の手法で、3-OH-14:0と特定された(
図4)。
【0066】
【0067】
本試験例におけるGC-MSによる脂肪酸分析方法により、パラコッカス菌由来LPSは、C5-C6にcis型の二重結合を有するC12:1脂肪酸、3-OH-10:0及び3-OH-14:0を含むことが明らかになった。
【0068】
試験3.MALDI-TOF MSによるLPSとリピドAの測定
(1)Lipid Aの調製方法
試験2と同様に、試験3では、パラコッカス菌由来LPSとして、試験1で調製したパラコッカス菌由来LPS(高度精製品)を用いた。4 mgの精製LPSを試験管に入れ、2%酢酸水溶液で100℃、2時間インキュベートすることで、LPSを加水分解した。冷却後、沈殿を遠心分離(13,000×g, 2分)で集め、水で数回洗浄し、MALDI-TOF MS用サンプルとした。
【0069】
(2)装置と測定条件
MALDI-TOF MS: AXIMA Performance(SHIMADZU CORPORATION)を測定装置として用い、表3の測定条件で測定した。
【0070】
【0071】
(3)結果
MALDI-TOF MS分析(陰イオンモード)を
図5に示す。
図5から、Lipid Aの陰イオンピークは1472であると考えられた。3つのフラグメントピーク1392、1302及び1222は、それぞれ1392(-HPO
3)、1302(-3-OH-10:0)及び1222(-HPO
3と-3-OH-10:0)と同定された。
本試験例から、パラコッカス菌由来LPSは、Lipid Aリン酸エステルと3-OH-10:0脂肪酸を有することが分かった。
また、リピドA全体の分子量は1473であることが明らかになった(
図5)。この分子量に合うように脂肪酸(C5-C6にcis型の二重結合を有するC12:1脂肪酸、3-OH-10:0及び3-OH-14:0)を組み合わせると、リピドAは、C5-C6にcis型の二重結合を有するC12:1脂肪酸を1本、3-OH-10:0を2本及び3-OH-14:0を2本有することが理解される。
【0072】
LPSのリピドAでは、グルコサミン2分子に直接結合する脂肪酸は、3位に水酸基を有する3-ヒドロキシアシル鎖であることが多いことが知られている。このため、3位に水酸基を有しないC12:1脂肪酸は、直接グルコサミンに結合していないと推定される。また、16S rRNA解析において、Paracoccus carotinifaciensはRhodobacter sphaeroidesと93%の同一性を有することから、互いに類縁種であってリピドAの構造も類似すると推定される(FEMS Microbiology Reviews 4 (1988) 143-154)。試験3及び試験4の結果と、リピドAにおけるこれまでの知見を参酌すると、Paracoccus carotinifaciensのリピドAは、3-OH-14:0がグルコサミンの2位アミノ基にアミド結合を介して結合し、3-OH-10:0がグルコサミンの3位水酸基にエステル結合を介して結合し、C5-C6にcis型の二重結合を有するC12:1脂肪酸が、3-OH-14:0の3位水酸基にエステル結合を介して結合する構造を有することが推定された。Paracoccus carotinifaciensのリピドAが上記構造を有することは、16S rRNA解析においてParacoccus carotinifaciensと97%の同一性を有するParacoccus denitrificansのLPS構造に関する知見と一致する。すなわち、Paracoccus denitrificansのLPSでは、3-OH-10:0及びC12:1脂肪酸はそれぞれエステル結合した形でリピドAに存在し、3-OH-14:0と3-oxo-14:0(試験3と試験4では検出されず)はアミド結合した形でリピドAに存在するとの知見(FEMS Microbiology Letters 37 (1986) 63-67)がある。
【0073】
【0074】
試験4.リムルス活性測定
パラコッカス菌由来LPSのリムルス活性を測定した。
【0075】
(1)測定サンプル
試験4では、パラコッカス菌由来LPSとして、試験1でPCP法にて精製したパラコッカス菌由来LPS:「高度精製品」(ステップ4で得られた高度精製LPS)、「アセトン脱脂」(ステップ1で得られたLPS)、及び「粗精製LPS」(ステップ3で得られた粗精製LPS)を用いた。
【0076】
また、PCP法以外の精製法によるパラコッカス菌由来LPSとして、Panaferd-AX(「Panaferd-AX(未処理)」)、Panaferd-AX微粉砕品(「微粉砕品」)、Panaferd-AX微粉砕品+レシチン(界面活性剤)(「微粉砕品+レシチン」)、Panaferd-AX微粉砕品+リゾレシチン(界面活性剤)(「微粉砕品+リゾレシチン」)も測定サンプルとして用いた。
【0077】
これらの測定サンプルは以下のように準備した。
「Panaferd-AX(未処理)」は、Panaferd-AX(ENEOS株式会社)を用いた。
「微粉砕品」:100gのPanaferd-AXと900gの水を混合し、高圧ホモジナイザーPanda PLUS 2000を用いて100MPaで10回処理して破砕した。破砕液を凍結乾燥したものを、Panaferd-AX微粉砕品とした。
「微粉砕品+レシチン」:50mLチューブにレシチン(辻製油製SLP-PC70)を300mg秤量し、15mLのイオン交換水を入れて、1時間ダイレクトミキサーで混合した。この操作により、レシチンの2%水溶液(均一溶媒)が得られた。微粉砕品を3g秤量し、レシチン水溶液に入れ、1時間ダイレクトミキサーで混合した。混合液を凍結乾燥した粉末を「微粉砕品+レシチン」とした。
「微粉砕品+リゾレシチン」:レシチンの代わりにリゾレシチン(辻製油製SLP-LPC70)を用いた他は、「微粉砕品+レシチン」の製造方法と同様の方法で「微粉砕品+リゾレシチン」を得た。
【0078】
(2)リムルス活性の測定方法1(比濁法)
PCP法にて精製したパラコッカス菌由来LPSのリムルス活性は、Limulus ES-II plus CS single test wako(富士フイルム和光純薬株式会社 Cat# 299-77201)を用いた比濁法により測定した。
エッペンドルフチューブ(1.5mL)各サンプルを5mgはかりとり、水を加えて5mg/mL懸濁液を作製した。懸濁液をVoltexにて5分撹拌した後、9000rpm、20℃で15分遠心し、その上清を測定に使用した。
上清200μLをLimulus ES-II plus CS single test wakoのライセート試薬に入れ、Voltexにて10秒撹拌した。ライセート試薬をトキシノメーター(富士フイルム和光純薬株式会社 Cat# ET-6000/J)にセットし、カイネティックモードで、430nmの吸光度を経時測定した:測定間隔15秒、総測定時間60分、温度37℃。なお、本測定は、ライセート試薬のゲル化にかかる時間を指標として定量しており、測定時間によって結果が変わるものではない。
【0079】
(3)リムルス活性の測定方法2(比色法)
PCP法以外の精製法によるパラコッカス菌由来LPSのリムルス活性は、試験キット:LONZA Limulus Amebocyte Lysate (LAL) Kinetic-QCLを用い、Limulus測定(比色法)にて測定した。検量線作成にはキットに付属のE. coli O55:B5 Endotocin[E50-643]を50EU/mLとなるよう希釈し使用した。
エッペンドルフチューブ(1.5mL)に各サンプルを50mgはかりとり、水を加えて100mg/mL懸濁液を作製した。懸濁液をVoltexにて5分撹拌した後、9000rpm、20℃で15分遠心し、その上清を測定に使用した。
上清100μLを96well plateに入れ、プレートリーダーで37℃、10分間プレインキュベートした。Limulus試薬を100μL入れ、プレートリーダーのkineticモードで吸光度405nmを経時測定した:測定間隔1分、測定総時間60分、温度37℃。なお、本測定は、吸光度が0.2上昇するのにかかった時間を指標として定量しており、測定時間によって結果が変わるものではない。
【0080】
既存のデータから、比濁法と比色法はほぼ同等のリムルス活性値が得られることが理解されるため、両方法によるリムルス活性値を比較することは可能である。
【0081】
(4)結果
上記(2)及び(3)の方法で測定されたリムルス活性の値を表4に示す。
【0082】
【0083】
上記のように、本発明の組成物は、高いリムルス活性を示すことが示された。
本発明により、所定の構造を有するリピドAを有する、グラム陰性菌のLPSを含む組成物が提供される。また、別の態様において、本発明により、所定のリムルス活性値を有するグラム陰性菌のLPSを含む組成物が提供される。
本発明により提供される組成物は、構造及び/又はリムルス活性の点でLPSの免疫賦活活性を医薬品、化粧品、食品、飼料等に利用する上で有用である。