(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004224
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】血液浄化装置及び送液ポンプの制御方法
(51)【国際特許分類】
A61M 1/16 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
A61M1/16 117
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103781
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄貴
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD01
4C077EE03
4C077HH02
4C077HH15
4C077JJ08
4C077JJ16
4C077JJ27
(57)【要約】
【課題】送液ポンプの流量が目標流量付近に到達するまでの時間を短縮することができると共に、フィードバック制御による流量変動を抑制することができる血液浄化装置及び送液ポンプの駆動制御方法を提供する。
【解決手段】ダイアライザ10に透析液を供給すると共にダイアライザ10からの透析液を排出する透析液回路41と、透析液回路41に配設された給液ポンプ63と、給液ポンプ63の流量が目標流量となるように給液ポンプ63を制御する給液ポンプ駆動制御動作を実行する制御部22と、を備え、給液ポンプ駆動制御動作では、フィードフォワード制御を行い、所定時間の経過を条件として、フィードフォワード制御からフィードバック制御に切り替える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血液を浄化する血液浄化器を介して血液浄化治療を施す血液浄化装置であって、
前記血液浄化器に透析液を供給すると共に前記血液浄化器からの透析液を排出する透析液回路と、
前記透析液回路に配設されると共に前記透析液回路において透析液を送液する送液ポンプと、
前記送液ポンプの流量が目標流量となるように前記送液ポンプを制御する駆動制御動作を実行する駆動制御部と、
前記送液ポンプの流量を検出する流量検出部と、を備え、
前記駆動制御動作では、前記流量検出部の検出値に基づかないフィードフォワード制御を行い、所定時間の経過又は所定流量の到達を条件として、前記フィードフォワード制御から前記流量検出部の検出値に基づくフィードバック制御に切り替える、
血液浄化装置。
【請求項2】
前記透析液回路は、
前記血液浄化器に使用前の透析液を供給する透析液供給流路と、
前記血液浄化器からの使用後の透析液を排出する透析液排出流路と、を有し、
前記送液ポンプとして、
前記透析液供給流路に配設される第1の送液ポンプと、
前記透析液排出流路に配設される第2の送液ポンプと、を備え、
前記駆動制御部は、前記第1の送液ポンプが起動する場合、前記第1の送液ポンプが復帰する場合、及び/又は前記第1の送液ポンプの目標流量を変更する場合に、前記第1の送液ポンプの制御動作として、前記駆動制御動作を実行する、
請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記透析液回路は、
前記血液浄化器に使用前の透析液を供給する透析液供給流路と、
前記血液浄化器からの使用後の透析液を排出する透析液排出流路と、
前記透析液排出流路に接続され、前記透析液排出流路の圧力を開放するバイパス流路と、
前記透析液排出流路に対して前記バイパス流路が連通する連通状態と、前記透析液排出流路に対して前記バイパス流路が連通しない非連通状態との間で、流路状態を切り替える電磁弁と、を有し、
前記送液ポンプとして、
前記透析液供給流路に配設される第1の送液ポンプと、
前記透析液排出流路に配設される第2の送液ポンプと、を備え、
前記駆動制御部は、前記電磁弁により前記連通状態から前記非連通状態に切り替える場合に、前記第2の送液ポンプの制御動作として、前記駆動制御動作を実行する、
請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記送液ポンプに対する指令値と前記流量とを関係付ける較正情報を取得する較正部を、更に備え、
前記フィードフォワード制御では、前記較正部によって取得した前記較正情報に基づく指令値により前記送液ポンプを制御する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
前記較正部は、相互に異なる複数の流量を目標流量として前記送液ポンプに対する前記フィードバック制御を実行することによって、前記複数の流量で液体が送液される状態を形成することで、前記複数の流量に対応する前記送液ポンプの指令値を取得し、取得した前記複数の流量に対する前記指令値に基づいて、前記較正情報としての関係式を算出する、
請求項4に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記較正部は、算出した前記関係式の正否に基づいて、前記送液ポンプ又は前記流量検出部の異常の有無を判定する、
請求項5に記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記較正部は、前記複数の流量に対する前記指令値を取得するときの前記フィードバック制御によって、前記送液ポンプの前記流量が目標流量に達しなかった場合、前記送液ポンプ又は前記流量検出部に異常があると判定する、
請求項5に記載の血液浄化装置。
【請求項8】
血液浄化装置の透析液回路に配設された送液ポンプの流量が目標流量となるように、前記送液ポンプを制御する送液ポンプの制御方法であって、
前記送液ポンプの流量を検出する流量検出部の検出値に基づかないフィードフォワード制御を行い、所定時間の経過又は所定流量の到達を条件として、前記フィードフォワード制御から前記流量検出部の検出値に基づくフィードバック制御に切り替える、
送液ポンプの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置及び送液ポンプの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液浄化装置として、フィードバック制御によって、送液ポンプの駆動制御を行うものである(特許文献1参照)。この血液浄化装置は、血液浄化器と、血液浄化器に透析液を供給する透析液ラインと、血液浄化器から排液が排出される排液ラインと、透析液ラインに配設された送液ポンプ(透析液ポンプ)と、透析液と排液との水収支量(除水量)を検出する水収支量検出部と、を含み、水収支量検出部で検出された検出結果をフィードバックして、送液ポンプの駆動を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の血液浄化装置では、送液ポンプの流量が目標流量付近に到達するまでに時間が掛ってしまうと共に、送液ポンプのフィードバック制御によって透析液の流量変動が生じてしまう虞がある。流量変動が生じると、他のアクチュエータ(例えば、ヒータ等)のフィードバック制御に対して外乱を与えてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、送液ポンプの流量が目標流量付近に到達するまでの時間を短縮することができると共に、フィードバック制御による流量変動を抑制することができる血液浄化装置及び送液ポンプの駆動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、患者の血液を浄化する血液浄化器を介して血液浄化治療を施す血液浄化装置であって、前記血液浄化器に透析液を供給すると共に前記血液浄化器からの透析液を排出する透析液回路と、前記透析液回路に配設されると共に前記透析液回路において透析液を送液する送液ポンプと、前記送液ポンプの流量が目標流量となるように前記送液ポンプを制御する駆動制御動作を実行する駆動制御部と、前記送液ポンプの流量を検出する流量検出部と、を備え、前記駆動制御動作では、前記流量検出部の検出値に基づかないフィードフォワード制御を行い、所定時間の経過又は所定流量の到達を条件として、前記フィードフォワード制御から前記流量検出部の検出値に基づくフィードバック制御に切り替える、血液浄化装置を提供する。
【0007】
また、本発明は、上記目的を達成するために、血液浄化装置の透析液回路に配設された送液ポンプの流量が目標流量となるように、前記送液ポンプを制御する送液ポンプの制御方法であって、前記送液ポンプの流量を検出する流量検出部の検出値に基づかないフィードフォワード制御を行い、所定時間の経過又は所定流量の到達を条件として、前記フィードフォワード制御から前記流量検出部の検出値に基づくフィードバック制御に切り替える、送液ポンプの制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、送液ポンプの流量が目標流量付近に到達するまでの時間を短縮することができると共に、フィードバック制御による流量変動を抑制することができる血液浄化装置及び送液ポンプの駆動制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の構造を示した概略構造図である。
【
図2】較正動作の前半部を示したフローチャートである。
【
図3】較正動作の後半部を示したフローチャートである。
【
図4】給液ポンプ駆動制御動作及び排液ポンプ駆動制御動作における、時間に対する指令値及び流量の一例を示したグラフである。
【
図5】給液ポンプ駆動制御動作を示したフローチャートである。
【
図6】排液ポンプ駆動制御動作を示したフローチャートである。
【
図7】給液ポンプ駆動制御動作の変形例を示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置について説明する。この血液浄化装置は、ダイアライザを介して患者の血液を浄化する血液浄化治療を施す医療機器である。特に、本血液浄化装置は、フィードフォワード制御とフィードバック制御とを用いて、素早く目標流量付近に達し且つ安定した流量制御可能としたものである。
【0011】
(血液浄化装置の構成)
図1に示すように、血液浄化装置1は、患者Cの血液を浄化するダイアライザ10と、ダイアライザ10を介して患者Cの血液を循環させる体外循環ユニット11と、ダイアライザ10に接続され、ダイアライザ10に透析液を供給すると共に、ダイアライザ10からの透析液を排出する透析液給排ユニット12と、を備えている。体外循環ユニット11と透析液給排ユニット12とは、別体で構成されており、ダイアライザ10は、固定用治具13を介して体外循環ユニット11に着脱自在に取り付けられている。ダイアライザ10は、血液浄化器の一例である。
【0012】
ダイアライザ10は、血液浄化膜(中空糸型の血液透析膜、あるいは血液透析濾過膜、平膜型の血液透析膜、あるいは血液濾過膜)を内在している。また、ダイアライザ10は、血液を導入する血液導入口10a及び導入した血液を導出する血液導出口10bを有すると共に、透析液を導入する透析液導入口10c及び導入した透析液を排出する透析液排出口10dを有している。ダイアライザ10では、血液浄化膜を介して血液と透析液とを接触させることで、血液を浄化する。また、ダイアライザ10では、透析液給排ユニット12の給液及び排液を制御することで、血液の除水を可能とする。
【0013】
体外循環ユニット11は、ダイアライザ10を介して患者Cの血液を循環させる体外循環回路21と、制御部22と、を有している。制御部22については、後述する。
【0014】
体外循環回路21は、ダイアライザ10の血液導入口10aに接続され、患者Cの血管から採取した血液をダイアライザ10に導く動脈側血液流路31と、ダイアライザ10の血液導出口10bに接続され、ダイアライザ10から排出された血液を患者Cの血管に戻す静脈側血液流路32と、動脈側血液流路31に配設され、血液を循環させる血液ポンプ34と、を有している。血液ポンプ34を駆動することで、患者Cからの血液が動脈側血液流路31を介してダイアライザ10に導かれ、ダイアライザ10によって血液が浄化された後、静脈側血液流路32を介して患者Cに戻される。これにより、患者Cの血液が浄化される。
【0015】
(透析液給排ユニットの構成)
透析液給排ユニット12は、ダイアライザ10に透析液を供給すると共にダイアライザ10からの透析液を排出する透析液回路41と、透析液給排ユニット側制御部42と、を有している。
【0016】
透析液回路41は、透析液を精製する透析液調製部51と、ダイアライザ10の透析液導入口10cに接続され、透析液調製部51で精製された使用前の透析液をダイアライザ10に供給する透析液供給流路52と、ダイアライザ10の透析液排出口10dに接続され、ダイアライザ10からの使用後の透析液を回収し排出する透析液排出流路53と、ダイアライザ10の前後で透析液供給流路52及び透析液排出流路53に接続され、ダイアライザ10を介さずに透析液供給流路52と透析液排出流路53とを連通する第1バイパス流路54と、を有している。
【0017】
透析液調製部51は、供給された純水と、濃縮液又は粉末からなる透析剤とから、透析液を調製する。透析液調製部51に供給される純水は、透析液給排ユニット12に搭載された純水製造部から供給される構成であってもよいし、透析液給排ユニット12の外部に設けられた純水製造装置から供給される構成であってもよい。なお、透析液調製部51も省略可能であり、例えば、外部の透析液供給装置等から、透析液給排ユニット12に透析液が供給されるよう構成してもよい。
【0018】
透析液供給流路52には、上流側から、給液ポンプ63、供給側制御用流量計64、供給側保護用流量計65及び第1電磁弁66が配設されている。給液ポンプ63は、透析液供給流路52の透析液を送液する送液ポンプである。給液ポンプ63を駆動することで、透析液をダイアライザ10に供給する。給液ポンプ63は、第1の送液ポンプの一例である。
【0019】
供給側制御用流量計64及び供給側保護用流量計65は、給液ポンプ63の下流側に配設され、給液ポンプ63の流量(すなわち透析液の流量)を検出する流量計である。供給側制御用流量計64は、給液ポンプ63を制御するための給液ポンプ63の流量を検出する制御用の流量計である。一方、供給側保護用流量計65は、供給側制御用流量計64及びその検出値が正常であることを保証するための保護用の流量計である。供給側制御用流量計64は、流量検出部の一例である。
【0020】
第1電磁弁66は、第1バイパス流路54が接続された接続位置よりも下流側に配設され、ダイアライザ10を通る流路から第1バイパス流路54への流路切替えを行うための電磁弁の1つである。
【0021】
透析液排出流路53には、上流側から、第2電磁弁71、排液ポンプ72、排出側制御用流量計73及び排出側保護用流量計74が配設されている。また、透析液排出流路53には、排液ポンプ72の前後に接続された第2バイパス流路75が配設されている。
【0022】
第2電磁弁71は、第1バイパス流路54が接続された接続位置よりも上流側に配設され、ダイアライザ10を通る流路から第1バイパス流路54への流路切替えを行うための電磁弁の1つである。
【0023】
排液ポンプ72は、透析液排出流路53の透析液を送液する送液ポンプである。排液ポンプ72を駆動することで、ダイアライザ10からの透析液を排出する。給液ポンプ63及び排液ポンプ72を制御して、給液ポンプ63の流量と排液ポンプ72の流量とを調整することで、ダイアライザ10における血液の除水量が制御される。排液ポンプ72は、第2の送液ポンプの一例である。
【0024】
排出側制御用流量計73及び排出側保護用流量計74は、排液ポンプ72の下流側に配設され、排液ポンプ72の流量(すなわち透析液の流量)を検出する流量計である。排出側制御用流量計73は、排液ポンプ72を制御するための排液ポンプ72の流量を検出する制御用の流量計である。一方、排出側保護用流量計74は、排出側制御用流量計73及びその検出値が正常であることを保証するための保護用の流量計である。排出側制御用流量計73は、流量検出部の一例である。
【0025】
第2バイパス流路75は、透析液排出流路53の圧力を解放するための流路であり、透析液排出流路53における排液ポンプ72の前後に接続されている。また、第2バイパス流路75には、透析液排出流路53に対して第2バイパス流路75が連通する連通状態と、透析液排出流路53に対して第2バイパス流路75が連通しない非連通状態との間で、流路状態を切り替える第3電磁弁76が配設されている。第3電磁弁76を開放することで、透析液排出流路53と第2バイパス流路75とを連通して、透析液回路41の圧力を解放し、透析液排出流路53を圧力解放状態にする。一方、第3電磁弁76を閉塞することで、透析液排出流路53と第2バイパス流路75との連通が切断され、透析液排出流路53を通常状態(非圧力解放状態)に戻す。
【0026】
第1バイパス流路54には、第4電磁弁55が配設されている。第4電磁弁55を開放しつつ、第1電磁弁66及び第2電磁弁71を閉塞することで、ダイアライザ10を通る流路から第1バイパス流路54への流路切替えを行う。一方、第4電磁弁55を閉塞しつつ、第1電磁弁66及び第2電磁弁71を開放することで、第1バイパス流路54からダイアライザ10を通る流路への流路切替えを行う。
【0027】
透析液給排ユニット側制御部42は、体外循環ユニット11の制御部22と通信を行い、制御部22の指令に従って、給液ポンプ63、排液ポンプ72及び各電磁弁55、66、71、76を制御する。透析液給排ユニット側制御部42は、CPU等の演算素子、メモリ、ソフトウェア、インターフェイス、通信ユニット等を適宜組み合わせて実現される。
【0028】
(制御部及びその制御)
ここで
図1乃至
図6を参照して、体外循環ユニット11の制御部22及び当該制御部22による制御について説明する。制御部22は、血液ポンプ34を制御すると共に、透析液給排ユニット側制御部42と通信を行い、透析液給排ユニット側制御部42を介して、給液ポンプ63、排液ポンプ72及び各電磁弁55、66、71、76を制御する。また、制御部22は、透析液給排ユニット側制御部42を介して、各流量計64、65、73、74の検出値を受け付ける。特に、制御部22は、較正動作、給液ポンプ駆動制御動作及び排液ポンプ駆動制御動作を実行する。制御部22は、CPU等の演算素子、メモリ、ソフトウェア、インターフェイス、通信ユニット等を適宜組み合わせて実現される。また、制御部22は、駆動制御部及び較正部の一例であり、給液ポンプ駆動制御動作及び排液ポンプ駆動制御動作は、駆動制御動作及び送液ポンプの駆動制御方法の一例である。
【0029】
較正動作は、フィードフォワード制御に用いる指令値と流量との比例関係式を取得する動作であり、相互に異なる2つの流量における指令値を取得し、これらに基づいて比例関係式を算出するものである。比例関係式は、ポンプ63、72に対する指令値と流量とを関係付ける較正情報の一例である。なお、本実施形態では、上記2つの流量の一例として、300mL/minと、500mL/minとを用いる。
【0030】
また、本実施形態では、指令値として、例えば、DA値を用いる。このDA値は、制御部22から、透析液給排ユニット側制御部42を介して各ポンプ(給液ポンプ63、排液ポンプ72等)に向けて出力される指令値である。厳密には、DA値は、16bit表現のデジタル信号として、制御部22のマイコンから、透析液給排ユニット側制御部42のマイコンを介してDAコンバータに出力され、DAコンバータにおいて、対応する指令電圧に変換されるものであり、変換された指令電圧が各ポンプ63、72に入力される。この入力された指令電圧によって、各ポンプ63、72が駆動する。なお、制御部22又は透析液給排ユニット側制御部42が、DAコンバータを有し、DA値から指令電圧への変換を行う構成であってもよいし、血液浄化装置1が、制御部22及び透析液給排ユニット側制御部42とは別体のDAコンバータを有する構成であってもよい。
【0031】
図2及び
図3は、較正動作を示したフローチャートである。
図2に示すように、較正動作では、まず、第1電磁弁66、第2電磁弁71及び第3電磁弁76を閉塞し(S1)、第4電磁弁55を開放する(S2)。これにより、ダイアライザ10を通る流路から第1バイパス流路54に流路切替えを行うと共に、透析液排出流路53を非圧力解放状態にする。
【0032】
その後、300mL/minを目標流量とするフィードバック制御により給液ポンプ63及び排液ポンプ72を駆動する(S3)。これにより、300mL/minの流量で透析液が送液される状態を形成する。フィードバック制御の実施によって、各制御用流量計64、73で検出された流量が、所定秒数継続して300mL/minの近傍範囲(例えば±2の範囲)にならず(S4:No)、所定時間経過した場合(S5:Yes)、各ポンプ63、72又は各制御用流量計64、73に異常があると判定し、警報を出力して(S6)、本動作を終了する。すなわち、フィードバック制御によって、給液ポンプ63及び排液ポンプ72の流量が目標流量に達しなかった場合、各ポンプ63、72又は各制御用流量計64、73に異常があると判定する。なお、フィードバック制御とは、制御用流量計64、73の検出値(流量)を定期的にフィードバックして指令値を変更しつつ、変更した指令値によりポンプ63、72を駆動する制御である。
【0033】
一方、フィードバック制御の実施によって、各制御用流量計64、73で検出された流量が、所定秒数継続して300mL/minの近傍範囲になった場合(S4:Yes)、給液ポンプ63及び排液ポンプ72の指令値を記録する(S7)。これにより、流量が300mL/minのときの各ポンプ63、72の指令値を取得する。
【0034】
その後、500mL/minを目標流量とするフィードバック制御により給液ポンプ63及び排液ポンプ72を駆動する(S8)。これにより、500mL/minの流量で透析液が送液される状態を形成する。フィードバック制御の実施によって、各制御用流量計64、73で検出された流量が、所定秒数継続して500mL/minの近傍範囲(例えば±2の範囲)にならず(S9:No)、所定時間経過した場合(S10:Yes)、各ポンプ63、72又は各制御用流量計64、73に異常があると判定し、警報を出力して(S11)、本動作を終了する。
【0035】
一方、フィードバック制御の実施によって、各制御用流量計64、73で検出された流量が、所定秒数継続して500mL/minの近傍範囲になった場合(S9:Yes)、給液ポンプ63及び排液ポンプ72の指令値を記録する(S12)。これにより、流量が500mL/minのときの各ポンプ63、72の指令値を取得する。
【0036】
1回目の指令値の記録処理(S2~S12)が終了したら、
図3に示すように、確認用の2回目の指令値の記録処理(S13~S22)を行う。すなわち、1回目の記録処理と同様、まず、300mL/minを目標流量とするフィードバック制御により給液ポンプ63及び排液ポンプ72を駆動する(S13)。フィードバック制御の実施によって、各制御用流量計64、73で検出された流量が、所定秒数継続して300mL/minの近傍範囲にならず(S14:No)、所定時間経過した場合(S15:Yes)、各ポンプ63、72又は各制御用流量計64、73に異常があると判定し、警報を出力して(S16)、本動作を終了する。
【0037】
一方、フィードバック制御の実施によって、各制御用流量計64、73で検出された流量が、所定秒数継続して300mL/minの近傍範囲になった場合(S14:Yes)、給液ポンプ63及び排液ポンプ72の指令値を記録する(S17)。
【0038】
その後、500mL/minを目標流量とするフィードバック制御により給液ポンプ63及び排液ポンプ72を駆動する(S18)。フィードバック制御の実施によって、各制御用流量計64、73で検出された流量が、所定秒数継続して500mL/minの近傍範囲にならず(S19:No)、所定時間経過した場合(S20:Yes)、各ポンプ63、72又は各制御用流量計64、73に異常があると判定し、警報を出力して(S21)、本動作を終了する。一方、フィードバック制御の実施によって、各制御用流量計64、73で検出された流量が、所定秒数継続して500mL/minの近傍範囲になった場合(S18:Yes)、給液ポンプ63及び排液ポンプ72の指令値を記録する(S22)。
【0039】
2回の記録処理を終了したら、各ポンプ63、72の各流量(300mL/min及び500mL/min)について、1回目に記録した指令値と2回目に記録した指令値とが一致するか否かを判定する(S23)。1回目の指令値と2回目の指令値とが一致しないと判定された場合(S23:No)、警報を出力して(S24)、本動作を終了する。一方、1回目の指令値と2回目の指令値とが一致すると判定された場合(S23:Yes)、2回目の指令値に基づいて、指令値と流量との比例関係式を算出する(S25)。すなわち、2回目の記録処理によって記録した、流量が300mL/minである時の給液ポンプ63の指令値と、流量が500mL/minである時の給液ポンプ63の指令値と、に基づいて、給液ポンプ63における指令値と流量との比例関係式を算出する。また、2回目の記録処理によって記録した、流量が300mL/minである時の排液ポンプ72の指令値と、流量が500mL/minである時の排液ポンプ72の指令値と、に基づいて、排液ポンプ72における指令値と流量との比例関係式を算出する。
【0040】
各ポンプ63、72の比例関係式を算出したら、各ポンプ63、72の比例関係式(の主に傾き)が、所定の範囲内であるか否かに基づいて、各ポンプ63、72又は各制御用流量計64、73の異常の有無を判定する。すなわち、算出した各ポンプ63、72の比例関係式の正否に基づいて、各ポンプ63、72又は各制御用流量計64、73の異常の有無を判定する。各ポンプ63、72の比例関係式が所定の範囲を超え、異常値であると判定された場合(S26:No)、各ポンプ63、72又は各制御用流量計64、73に異常があると判定して、警報を出力する(S27)。一方、各ポンプ63、72の比例関係式が所定の範囲内であり、正常値であると判定された場合(S26:Yes)、各ポンプ63、72又は各制御用流量計64、73に異常がないと判定して、本動作を終了する。このように、本実施形態では、比例関係式を取得する較正動作の中で、各ポンプ63、72又は各制御用流量計64、73の異常判定を行うことで、異常の検出を容易に行うことができる。
【0041】
給液ポンプ駆動制御動作は、給液ポンプ63の流量が目標流量となるように給液ポンプ63の駆動を制御する動作であり、
図4に示すように、供給側制御用流量計64の検出値に基づかないフィードフォワード制御(FF制御)で目標流量に到達すると推定される所定時間経過するまで、フィードフォワード制御を行い、当該所定時間経過した後、フィードフォワード制御から供給側制御用流量計64の検出値に基づくフィードバック制御(FB制御)に切り替えるものである。フィードフォワード制御とは、供給側制御用流量計64の検出値に基づかずに、一定の指令値によりポンプ63、72を駆動する制御である。給液ポンプ駆動制御動作では、較正動作で取得した比例関係式に基づいて算出される目標流量に対する指令値を、フィードフォワード制御の指令値として用いる。本実施形態では、当該指令値によるフィードフォワード制御によって10秒間給液ポンプ63を駆動すれば、給液ポンプ63の流量が目標流量に達すると推定されるため、上記「フィードフォワード制御で目標流量になると推定される所定時間」を10秒間とする。
【0042】
図5は、給液ポンプ駆動制御動作を示すフローチャートである。
図5に示すように、給液ポンプ駆動制御動作では、まず、較正動作で取得した給液ポンプ63の比例関係式に基づいて、目標流量に対する指令値を算出する(S31)。その後、算出した指令値によるフィードフォワード制御によって給液ポンプ63を駆動する(S32)。フィードフォワード制御による給液ポンプ63の駆動を開始してから上記所定時間(10秒間)経過したら(S33:Yes)、給液ポンプ63の駆動制御を、フィードフォワード制御からフィードバック制御に切り替える(S34)。これにより、本動作を終了する。
【0043】
排液ポンプ駆動制御動作は、排液ポンプ72の流量が目標流量となるように排液ポンプ72の駆動を制御する動作であり、
図4に示すように、排出側制御用流量計73の検出値に基づかないフィードフォワード制御で目標流量になると推定される所定時間経過するまで、フィードフォワード制御を行い、当該所定時間経過した後、フィードフォワード制御から排出側制御用流量計73の検出値に基づくフィードバック制御に切り替えるものである。排液ポンプ駆動制御動作では、較正動作で取得した比例関係式に基づいて算出される目標流量に対する指令値を、フィードフォワード制御の指令値として用いる。本実施形態では、当該指令値によるフィードフォワード制御によって10秒間排液ポンプ72を駆動すれば、排液ポンプ72の流量が目標流量に達すると推定されるため、上記「フィードフォワード制御で目標流量になると推定される所定時間」を10秒間とする。
【0044】
図6は、排液ポンプ駆動制御動作を示すフローチャートである。
図6に示すように、排液ポンプ駆動制御動作では、まず、較正動作で取得した排液ポンプ72の比例関係式に基づいて、目標流量に対する指令値を算出する(S41)。その後、算出した指令値によるフィードフォワード制御によって排液ポンプ72を駆動する(S42)。フィードフォワード制御による排液ポンプ72の駆動を開始してから上記所定時間(10秒間)経過したら(S43:Yes)、排液ポンプ72の駆動制御をフィードフォワード制御からフィードバック制御に切り替える(S44)。これにより、本動作を終了する。
【0045】
血液浄化装置1では、起動工程、治療準備工程、患者穿針・脱血工程、治療工程、治療中断工程、患者抜針・返血工程、排液工程、洗浄・消毒工程、待機工程及び調整工程が実行される。較正動作は、起動工程における自己診断時と調整工程とにおいて実行される。
【0046】
一方、給液ポンプ駆動制御動作は、起動工程における給液ポンプ63の起動時、治療中断工程における給液ポンプ63の復帰時、準備工程、患者抜針・返血工程、治療工程及び患者抜針・返血工程における給液ポンプ63の目標流量の変更時において実行される。すなわち、制御部22は、給液ポンプ63の起動時(給液ポンプ63が起動する場合)、給液ポンプ63の復帰時(給液ポンプ63が復帰する場合)及び給液ポンプ63の目標流量の変更時(給液ポンプ63の目標流量を変更する場合)において、給液ポンプ63の制御動作として、上記給液ポンプ駆動制御動作を実行する。このように、給液ポンプ63の起動時や復帰時、目標流量の変更時において、フィードフォワード制御を行った後にフィードバック制御に切り替える給液ポンプ駆動制御動作を行うことで、給液ポンプ63の流量が目標流量付近に到達するまでの時間を短縮することができると共に、フィードバック制御による流量変動を抑制することができる。
【0047】
また、排液ポンプ駆動制御動作は、起動工程、治療準備工程、患者穿針・脱血工程、治療工程、治療中断工程、患者抜針・返血工程、洗浄・消毒工程、待機工程及び調整工程における、開放状態の第3電磁弁76を閉塞するときに実行される。つまり、排液ポンプ駆動制御動作は、第3電磁弁76を開放して透析液排出流路53と第2バイパス流路75とを連通させた状態から、第3電磁弁76を閉塞して透析液排出流路53と第2バイパス流路75とを非連通状態にするときに実行される。すなわち、制御部22は、第3電磁弁76により第2バイパス流路75を連通状態から非連通状態に切り替える時(第3電磁弁76により連通状態から非連通状態に切り替える場合)において、排液ポンプ72の制御動作として、上記排液ポンプ駆動制御動作を実行する。このように、第2バイパス流路75の連通を切り替えるときに、フィードフォワード制御を行った後にフィードバック制御に切り替える排液ポンプ駆動制御動作を行うことで、第2バイパス流路75の連通切替え時に生じる排出側制御用流量計73の検出誤差の影響を受けることなく、排液ポンプ72を駆動することができる。なお、第3電磁弁76を開放した状態では、フィードフォワード制御を行い、第3電磁弁76を閉塞した時、フィードフォワード制御からフィードバック制御に切り替える構成であってもよい。
【0048】
(実施形態の作用及び効果)
以上、上記実施形態の構成によれば、フィードフォワード制御を実施した後、フィードフォワード制御からフィードバック制御に切り替える駆動制御動作を行うことで、
図4に示すように、ポンプ63、72の流量が目標流量付近に達する時間を短縮することができる。また、ポンプ63、72の流量が目標流量付近に達した状態からフィードバック制御を開始するため、フィードバック制御による流量を抑制することができる。特に、本実施形態のような透析液回路41に2つのポンプ63、72を配設した構成では、各ポンプ63、72のフィードバック制御の影響を相互に受けることになるため、振幅の大きい外乱が生じやすい。また、本実施形態では、図外の温度調整手段における透析液の温度調整や透析液調製部51における濃度調整を、ポンプ63、72による流量調整と同時進行で行うため、これらのフィードバック制御が相互に影響し、振幅の大きい外乱が生じやすい。これに対し、上記駆動制御動作によって、振幅の大きい外乱が生じるのを防止又は抑制することができる。これにより、透析液回路41における圧力変動を抑制することができるため、透析液回路41の配管への負荷はもちろん、ダイアライザ10への負荷や、患者Cへの負荷も抑制することができる。
【0049】
また、上記実施形態の構成によれば、第2バイパス流路75の連通を切り替えるときに、フィードフォワード制御を行った後にフィードバック制御に切り替える排液ポンプ駆動制御動作を行うことで、第2バイパス流路75の連通切替え時に生じる排出側制御用流量計73の検出誤差の影響を受けることがない。これによって、第2バイパス流路75の連通切替え時にも、安定した流量制御を行うことができる。
【0050】
また。上記実施形態の構成によれば、較正動作を行って、ポンプ63、72の流量と指令値との比例関係式を取得し、これに基づく指令値によりフィードフォワード制御を行うため、フィードフォワード制御を精度良く行うことができる。
【0051】
(変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記に記載した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0052】
例えば、上記実施形態においては、給液ポンプ駆動制御動作及び排液ポンプ駆動制御動作において、所定時間の経過を条件として、フィードフォワード制御からフィードバック制御に切り替える構成であったが、所定流量の到達を条件として、フィードフォワード制御からフィードバック制御に切り替える構成であってもよい。具体的には、例えば、ポンプ63、72の流量が目標流量の近傍範囲に達することを条件とし、ポンプ63、72の流量が目標流量の近傍範囲に達した時点で、フィードフォワード制御からフィードバック制御に切り替える構成であってもよい。すなわち、制御部22は、給液ポンプ駆動制御動作及び排液ポンプ駆動制御動作において、流量が目標流量の所定の近傍範囲に達するまで、フィードフォワード制御を行い、流量が目標流量の所定の近傍範囲に達した後、フィードフォワード制御からフィードバック制御に切り替える構成であってもよい。かかる場合、例えば、
図7に示すように、所定時間経過したかを判定する工程(S33)に代えて、供給側制御用流量計64等の流量検出部により給液ポンプ63の流量を監視し、給液ポンプ63の流量が目標流量の所定の近傍範囲(例えば、目標流量±10%の範囲)に達したか否かを判定する工程(S51)を行う。そして、給液ポンプ63の流量が目標流量の所定の近傍範囲に達したと判定(検出)されたら、フィードフォワード制御からフィードバック制御に切り替える。なお、
図7では、給液ポンプ駆動制御動作の例を挙げたが、排液ポンプ駆動制御動作の場合には、
図6のS43の工程を、排出側制御用流量計73等の流量検出部により排液ポンプ72の流量を監視し、排液ポンプ72の流量が目標流量の所定の近傍範囲(例えば、目標流量±10%の範囲)に達したか否かを判定する工程に変更する。また、時間及び流量の両方を監視し、時間の条件及び流量の条件のいずれか一方を満たした時点で、フィードフォワード制御からフィードバック制御に切り替える構成であってもよい。
【0053】
また、上記実施形態においては、較正動作において、流量300mL/minに対する指令値と、流量500mL/minに対する指令値との2つの流量に対する指令値に基づいて、比例関係式を算出する構成であったが、相互に異なる複数の流量に対する指令値を取得し、取得した複数の流量に対する指令値に基づいて、比例関係式を算出する構成であれば、これに限るものではない。すなわち、較正動作において、3つ以上の流量に対する指令値を取得し、これらに基づいて、比例関係式を算出する構成であってもよい。
【0054】
また、上記実施形態及び本変形例で記載される数値は例示に過ぎず、適宜変更してよい。
【0055】
また、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、フィードフォワード制御とフィードバック制御を任意に組み合わせてもよい。例えば、最初にフィードバック制御を行った後に、フィードフォワード制御に切り替え、再度、フィードバック制御に切り替えてもよい。また、フィードフォワード制御から、一時的に制御動作を中断した上で、フィードバック制御に切り替えてもよい。
【0056】
(実施形態のまとめ)
次に、以上説明した実施形態から把握される技術思想について、実施形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0057】
《1》患者(C)の血液を浄化する血液浄化器(10)を介して血液浄化治療を施す血液浄化装置(1)であって、前記血液浄化器(10)に透析液を供給すると共に前記血液浄化器(10)からの透析液を排出する透析液回路(41)と、前記透析液回路(41)に配設されると共に前記透析液回路(41)において透析液を送液する送液ポンプ(63、72)と、前記送液ポンプ(63)の流量が目標流量となるように前記送液ポンプ(63、72)を制御する駆動制御動作を実行する駆動制御部(22)と、前記送液ポンプ(63、72)の流量を検出する流量検出部(64、73)と、を備え、前記駆動制御動作では、前記流量検出部(64、73)の検出値に基づかないフィードフォワード制御を行い、所定時間の経過又は所定流量の到達を条件として、前記フィードフォワード制御から前記流量検出部(64、73)の検出値に基づくフィードバック制御に切り替える、血液浄化装置(1)。
これにより、送液ポンプの流量が目標流量付近に達するまでの時間を短縮することができると共に、送液ポンプの流量変動を抑制することができる。
《2》前記透析液回路(41)は、前記血液浄化器(10)に使用前の透析液を供給する透析液供給流路(52)と、前記血液浄化器(10)からの使用後の透析液を排出する透析液排出流路(53)と、を有し、前記送液ポンプ(63、72)として、前記透析液供給流路(52)に配設される第1の送液ポンプ(63)と、前記透析液排出流路(53)に配設される第2の送液ポンプ(72)と、を備え、前記駆動制御部(22)は、前記第1の送液ポンプ(63)が起動する場合、前記第1の送液ポンプ(63)が復帰する場合、及び/又は前記第1の送液ポンプ(63)の目標流量を変更する場合に、前記第1の送液ポンプ(63)の制御動作として、前記駆動制御動作を実行する、《1》に記載の血液浄化装置(1)。
これにより、送液ポンプの起動時、復帰時及び目標流量の変更時において、送液ポンプの流量が目標流量付近に達するまでの時間を短縮することができると共に、送液ポンプの流量変動を抑制することができる。
《3》前記透析液回路(41)は、前記血液浄化器(10)に使用前の透析液を供給する透析液供給流路(52)と、前記血液浄化器(10)からの使用後の透析液を排出する透析液排出流路(53)と、前記透析液排出流路(53)に接続され、前記透析液排出流路(53)の圧力を開放するバイパス流路(75)と、前記透析液排出流路(53)に対して前記バイパス流路(75)が連通する連通状態と、前記透析液排出流路(53)に対して前記バイパス流路(75)が連通しない非連通状態との間で、流路状態を切り替える電磁弁(76)と、を有し、前記送液ポンプ(63、72)として、前記透析液供給流路(52)に配設される第1の送液ポンプ(63)と、前記透析液排出流路(53)に配設される第2の送液ポンプ(72)と、を備え、前記駆動制御部(22)は、前記電磁弁(76)により前記連通状態から前記非連通状態に切り替える場合に、前記第2の送液ポンプ(72)の制御動作として、前記駆動制御動作を実行する、《1》に記載の血液浄化装置(1)。
これにより、バイパス流路の連通切替え時に生じる流量計の検出誤差の影響を受けることなく、送液ポンプを制御することができる。
《4》前記送液ポンプ(63、72)に対する指令値と前記流量とを関係付ける較正情報を取得する較正部(22)を、更に備え、前記フィードフォワード制御では、前記較正部(22)によって取得した前記較正情報に基づく指令値により前記送液ポンプ(63、72)を制御する、《1》乃至《3》のいずれか1つに記載の血液浄化装置(1)。
これにより、フィードフォワード制御を精度良く行うことができる。
《5》前記較正部(22)は、相互に異なる複数の流量を目標流量として前記送液ポンプ(63、72)に対する前記フィードバック制御を実行することによって、前記複数の流量で液体が送液される状態を形成することで、前記複数の流量に対応する前記送液ポンプ(63、72)の指令値を取得し、取得した前記複数の流量に対する前記指令値に基づいて、前記較正情報としての関係式を算出する、《4》に記載の血液浄化装置(1)。
これにより、フィードフォワード制御をより精度良く行うことができる。
《6》前記較正部(22)は、算出した前記関係式の正否に基づいて、前記送液ポンプ(63、72)又は前記流量検出部(64、73)の異常の有無を判定する、《5》に記載の血液浄化装置(1)。
これにより、較正動作の中で異常判定を行うことができるので、異常の検出の容易に行うことができる。
《7》前記較正部(22)は、前記複数の流量に対する前記指令値を取得するときの前記フィードバック制御によって、前記送液ポンプ(63、72)の前記流量が目標流量に達しなかった場合、前記送液ポンプ(63、72)又は前記流量検出部(64、73)に異常があると判定する、《5》又は《6》に記載の血液浄化装置(1)。
これにより、較正動作の中で異常判定を行うことができるので、異常の検出の容易に行うことができる。
《8》血液浄化装置(1)の透析液回路(41)に配設された送液ポンプ(63、72)の流量が目標流量となるように、前記送液ポンプ(63、72)を制御する送液ポンプ(63、72)の制御方法であって、前記送液ポンプ(63、72)の流量を検出する流量検出部(64、73)の検出値に基づかないフィードフォワード制御を行い、所定時間の経過又は所定流量の到達を条件として、前記フィードフォワード制御から前記流量検出部(64、73)の検出値に基づくフィードバック制御に切り替える、送液ポンプ(63、72)の制御方法。
これにより、送液ポンプの流量が目標流量付近に達するまでの時間を短縮することができると共に、送液ポンプの流量変動を抑制することができる。
【符号の説明】
【0058】
1:血液浄化装置、 10:ダイアライザ、 22:制御部、 41:透析液回路、 52:透析液供給流路、 53:透析液排出流路、 63:給液ポンプ、 64:供給側制御用流量計、 72:排液ポンプ、 73:排出側制御用流量計、 75:第2バイパス流路、 76:第3電磁弁、 C:患者