(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042253
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F26B 11/22 20060101AFI20240321BHJP
F26B 3/24 20060101ALI20240321BHJP
F26B 3/20 20060101ALI20240321BHJP
F26B 25/04 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
F26B11/22
F26B3/24
F26B3/20
F26B25/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146841
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】391060199
【氏名又は名称】金井 正夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104237
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 秀昭
(72)【発明者】
【氏名】金井 正夫
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA04
3L113AB05
3L113AC05
3L113AC16
3L113AC58
3L113AC63
3L113AC67
3L113BA02
3L113BA36
3L113CB01
3L113CB29
3L113CB34
3L113DA10
(57)【要約】
【課題】乾燥槽内で伝熱面から被乾燥物に対する熱伝達率を高めることを可能とし、被乾燥物の乾燥効率をよりいっそう高めることができる乾燥装置を提供する。
【解決手段】被乾燥物が投入される乾燥槽11と、該乾燥槽11内で回転軸20に設けられた回転巻上羽根30と、を有し、乾燥槽11の内壁に、被乾燥物に熱を伝える伝熱面12aを備え、伝熱面12aの少なくとも一部に、被乾燥物が接触する境界での乱流を起こす凹凸模様121~123を設けた。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型の円筒形状をなし被乾燥物が投入される乾燥槽と、該乾燥槽内で鉛直軸心に沿って延びる回転軸に設けられた回転巻上羽根と、を有する乾燥装置において、
前記乾燥槽の内壁に、被乾燥物に熱を伝える伝熱面を備え、
前記伝熱面の少なくとも一部に、被乾燥物が接触する境界での乱流を起こす凹凸模様を設けたことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記凹凸模様は、前記伝熱面の基準面に対して内側に出っ張る凸部および/または外側に窪む凹部を多数設けてなることを特徴とする請求項1に記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記凹凸模様は、前記伝熱面の基準面に対して内側に出っ張る凸部をプレス加工して形成され、前記基準面から前記凸部の頂端までの高さは、1.0~1.5mmに設定されたことを特徴とする請求項2に記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記凹凸模様は、前記回転巻上羽根の最下端から最上端に重なる前記伝熱面の高さ位置に設けられたことを特徴とする請求項1,2または3に記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦型の円筒形状をなし被乾燥物が投入される乾燥槽と、該乾燥槽内で鉛直軸心に沿って延びる回転軸に設けられた回転巻上羽根と、を有する乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、粒状、粉末状、液状、塊状等と種々様々な被乾燥物を乾燥させる乾燥装置が知られている。特に本出願人は、サイクロンフィンと呼ばれる独自の羽根の開発により、理想の乾燥条件を実現することができる乾燥装置を既に提案している(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
このような乾燥装置は、縦型の円筒形状の乾燥槽内に投入された被乾燥物が、回転軸に取り付けられた回転巻上羽根をなす複数の基羽根の回転により巻き上げられるように構成されている。かかる構成によれば、回転巻上羽根が回転すると、被乾燥物が遠心力によって乾燥槽の内壁にある伝熱面に薄膜状に押し付けられ、後から巻き上げられる被乾燥物が先に巻き上げられた被乾燥物を上方へ押し上げる作用と相俟って、被乾燥物を乾燥させることができる。
【0004】
ここで乾燥槽の伝熱面により、加熱手段からの熱が被乾燥物に伝わるが、伝熱面は、特に表面加工されることなく、円周方向に湾曲した凹凸のない滑面であった。そのため、回転巻上羽根の回転により被乾燥物が伝熱面に押し付けられた境界の流れは、いわゆる層流となることが発明者らの実験によって確かめられており、伝熱面における熱伝達率を高めるには限界があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2840639号公報
【特許文献2】特許第2958869号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、従来の乾燥装置では、乾燥槽の伝熱面に被乾燥物が層流接触するが、層流よりも乱流による熱伝達率の方が高いことが従来より知られている。これらの知見に基づき、伝熱面における熱伝達率を高める工夫によって、乾燥装置における被乾燥物の乾燥効率をより向上させるための改良が希求されていた。
【0007】
本発明は、前述したような従来の技術が有する問題点に着目してなされたものであり、乾燥槽内において伝熱面から被乾燥物に対する熱伝達率を高めることを可能とし、被乾燥物の乾燥効率をよりいっそう高めることができる乾燥装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前述した目的を達成するため、本発明の一態様は、
縦型の円筒形状をなし被乾燥物が投入される乾燥槽と、該乾燥槽内で鉛直軸心に沿って延びる回転軸に設けられた回転巻上羽根と、を有する乾燥装置において、
前記乾燥槽の内壁に、被乾燥物に熱を伝える伝熱面を備え、
前記伝熱面の少なくとも一部に、被乾燥物が接触する境界での乱流を起こす凹凸模様を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る乾燥装置によれば、乾燥槽内において伝熱面から被乾燥物に対する熱伝達率を高めることを可能とし、被乾燥物の乾燥効率をよりいっそう高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る乾燥装置の内部構造を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る乾燥装置の使用時の被乾燥物の様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面に基づき、本発明を代表する実施形態を説明する。
図1は、本実施形態に係る乾燥装置10の乾燥槽11の一部を破断して、内部構造も見えるようにした斜視図である。乾燥装置10は、その主要部をなす乾燥槽11に投入した被乾燥物を乾燥させるものである。被乾燥物は、生ゴミ、残飯、食品残滓、汚泥、スラッジ、家畜糞尿等と多岐に渡り、その形態も、粒状、粉末状、液状、塊状等、種々様々で、水分含量も多様である。なお、本発明は、以下に説明する実施形態に限定されるものではなく、既に周知な事項の詳細な説明等は、適宜省略する場合がある。
【0012】
<乾燥槽11について>
図1に示すように、乾燥槽11は、縦型の円筒形状に金属材により構成されている。乾燥槽11は、その下側に設けられた脚部11aによって、フロア上に軸心が鉛直となる姿勢に設置される。乾燥槽11の周壁部12の内壁は、加熱手段からの熱を被乾燥物に伝える伝熱面12aとなっている。ここで加熱手段は、例えば、乾燥槽11の外周を囲むように形成したジャケット13と、このジャケット13に連結され、ジャケット13内に熱媒体として、例えば蒸気を送り込むボイラー(図示省略)と、を備えてなる。
【0013】
伝熱面12aは、従来の乾燥装置のような単なる円周断面の滑面ではなく、被乾燥物が接触する境界での乱流を起こす凹凸模様が設けられた非滑面として形成されている。ここで凹凸模様は、伝熱面12aの基準面に対して内側に出っ張る凸部および/または外側に窪む凹部を多数設けてなり、その具体的な形状や寸法関係等が特に限定されるものではない。具体的な凹凸模様としては、例えば、
図1中の(a),(b),(c)に示すような各凹凸模様121~123が考えられる。
【0014】
図1中の(a)に示す凹凸模様121は、円形エンボスを千鳥配置にした円模様パターンであり、いわゆるポルカプレートをそのまま利用することができる。
図1中の(b)に示す凹凸模様122は、縞型突起を上下左右へ交互にずらしながら配置した縞模様パターンである。
図1中の(c)に示す凹凸模様123は、矩形の網目突起を格子状に並べて配置した網目式突起模様パターンである。これらの凹凸模様121~123は、例えば、乾燥槽11の周壁部12を金属板から製作するときに、金属板のプレス加工によって形成することができる。
【0015】
凹凸模様121~123は、何れも各模様を伝熱面12aの基準面に対して内側に出っ張る凸部によって形成している。ここで伝熱面12aの基準面から凸部の頂端までの高さは、1.0~1.5mmに設定すると良い。かかる高さが1.0mm未満であると、被乾燥物の境界に乱流が生じにくくなり、1.5mmを超えると、被乾燥物が引っ掛かりやすくなる虞がある。凹凸模様121~123は、何れも各模様を伝熱面12aの基準面に対して内側に出っ張る凸部としているが、逆に外側に窪む凹部として設けたり、これら凸部と凹部とを混在させても良い。
【0016】
このように、凹凸模様121~123をなす凸部や凹部は、それぞれ平面状に配置されるものではなく、湾曲した伝熱面12aに沿って湾曲した状態に配置されることは言うまでもない。なお、凹凸模様は、必ずしも規則的な模様が連続ないし繰り返すものでなくても良く、例えば、不規則な凹凸であっても構わない。また、伝熱面12aの表面に、例えば、リブ状やメッシュ状等の突起をなす別部材を多数設けて凹凸模様を後付けすることも可能である。
【0017】
ジャケット13には図示省略したが、熱媒体をジャケット13内に導く流入部と、熱媒体をジャケット13外に排出する排出部と、が設けられている。また、加熱手段の他の例として、蒸気の代わりに熱風をジャケット13内に送り込むように構成したり、あるいは、ジャケット13内に収容した熱媒体と、ジャケット13の外周に配設した電気ヒーターとから構成しても良い。すなわち、電気ヒーターからの熱を熱媒体を介して伝熱面12aに伝えるものである。さらに構成を簡略化して、ジャケット13の外周に配設した電気ヒーターの熱を伝熱面12aに直接伝えるように構成しても良い。このように加熱手段には種々のものが考えられる。
【0018】
乾燥槽11の内部に被乾燥物を供給したり外部に排出する構成も様々であり、例えば、乾燥槽11の上面部14の一部に開閉可能な供給口(図示省略)を設けて、この供給口より被乾燥物を内部に投入すると良い。一方、乾燥槽11の底面部15付近に開閉可能な排出口(図示省略)を設けて、この排出口より乾燥済みの被乾燥物を外部に排出すると良い。かかる構成によれば、全ての工程が終了するまで、途中で被乾燥物の供給ないし排出を行わないバッチ式の処理を行うものとなる。
【0019】
あるいは、図示省略したが、乾燥槽11の底面部15付近の周壁部12に供給管を接続して、被乾燥物を供給管より乾燥槽11内に供給する一方、上面部14付近の周壁部12に排出管を接続して、乾燥物を排出管より外部に排出するように構成しても良い。かかる構成によれば、被乾燥物の供給を区切って、間欠的に乾燥物を得るバッチ式の処理だけでなく、被乾燥物を連続的に供給すると共に乾燥物を連続的に排出する連続式の処理も可能となる。
【0020】
<回転軸20について>
図1に示すように、乾燥槽11内には、その鉛直軸心に沿って延びる回転軸20が配設されている。回転軸20は、乾燥槽11の上面部14と底面部15の中心を貫通した状態で軸支されている。回転軸20の上端部は、乾燥槽11の上面部14の中央上方に配設された電動モータ16に動力伝達可能に連結されている。一方、回転軸20の下端部は、乾燥槽11の底面部15の頂端下方に配設された軸受部17に回転可能に軸支されている。
【0021】
回転軸20には、回転巻上羽根30が設けられている。回転軸20は、電動モータ16の駆動により回転駆動し、回転巻上羽根30は、回転軸20と同期して回転するように構成されている。なお、電動モータ16は、上面部14の上方ではなく底面部15の下方に配設するように構成しても良い。また、回転軸20は、同軸上で上下に並ぶ複数の回転軸部を繋げるように構成しても良い。
【0022】
<回転巻上羽根30について>
本実施形態では、回転巻上羽根30は、回転軸20の下端側と略中央とに上下2段に設けられている。ただし、回転巻上羽根30の具体的な数や配置は、
図1に示したものに限定されることはなく、乾燥槽11の高さや寸法に応じて適宜定め得る設計事項である。例えば、回転軸20の下端側に、回転巻上羽根30を1つだけ設けたり、あるいは、3つ以上の回転巻上羽根30,30…を上下複数段に並べて設けても良い。
【0023】
図1に示すように、上下2段の回転巻上羽根30は、それぞれ回転軸20を中心に円周方向に並ぶように配された複数の基羽根31を備え、本実施形態では何れも3枚の基羽根31を備えてなる。
図1において、上段の回転巻上羽根30では、各基羽根31を含む構成の一部を省略している。なお、本実施形態では、上下の各回転巻上羽根30は、それぞれ同様に構成されているが、例えば、各回転巻上羽根30毎に、基羽根31の数や長さを変える等して、異なるように構成しても良い。
【0024】
回転巻上羽根30を構成する各基羽根31は、互いに同一形状に形成されており、位相が略120度ずれた状態に配置されている。各基羽根31は、それぞれ回転軸20に一端が取り付けられたアーム32の他端より連続して延びるように支持されている。ここでアーム32は、基羽根31の構成の一部と見做しても良い。各基羽根31は、それぞれ平面視で回転軸20を中心とする円周方向に延び、被乾燥物をアーム32の他端に連なる始端から載せて終端まで移動させつつ、巻き上げ可能な平坦面31a(
図2参照)を備えている。
【0025】
各基羽根31の平坦面31aは、それぞれ回転方向Rと逆方向に向かって、始端から終端にかけて斜め上方に延びるように形成されている。すなわち、各基羽根31は、被乾燥物を平坦面31a上に載せて巻き上げつつ、遠心力P(
図2参照)によって乾燥槽11の伝熱面12aに押し付けるように構成されている。ここで平坦面31aは、平面視で360度の円周範囲内の長さまで一定幅に延び、平坦面31aの外周端は、前記伝熱面12aの円筒形状に沿った弧状に形成されている。
【0026】
図2に示すように、平坦面31aの外周端と伝熱面12aとの間には、各基羽根31の回転を許容するクリアランスUが設けられている。なお、クリアランスUは、基羽根31の始端から終端にかけて一定である必要はなく、例えば、基羽根31の回転方向Rと逆方向に向かって次第に広くなるように設定しても良い。各基羽根31は、前記回転軸20に放射状に取り付けられたアーム32の他端より連続して延びるように支持されている。
【0027】
本実施の形態では、基羽根31とアーム32とは、一体的に成形されたものであり、一枚の金属板を裁断して曲げ加工することにより構成されている。すなわち、アーム32は、基羽根31と同様に一定幅に延びた板状であり、前記回転軸20より半径方向に直線状に延びる部材である。このアーム32の先端側に、基羽根31の始端が一体的に連続している。
【0028】
より詳しくは、下段の回転巻上羽根30におけるアーム32は、その幅方向において基羽根31の平坦面31aの傾斜に合わせて斜めに傾くように曲げられており、
図1に示すように、乾燥槽11の底板15に対して所定角度で傾斜している。これにより、アーム32は、底板15上に溜まる被乾燥物を積極的に掻き取る作用を果たす。なお、上段の回転巻上羽根30におけるアーム32は、特に幅方向における傾斜は設けられていない。
【0029】
また、前記凹凸模様121~123に関して、
図1では伝熱面12aのほぼ全域に設けるように図示しているが、伝熱面12aの少なくとも一部に設ければ足りる。凹凸模様121~123を設ける効果的な領域としては、例えば、回転巻上羽根30の最下端(基羽根31の始端)から最上端(基羽根31の終端)に重なる伝熱面12aの高さ位置に限定して設けることが考えられる。また、伝熱面12aにおいて、各回転巻上羽根30の最下端(基羽根31の始端)から最上端(基羽根31の終端)を超えて、さらに回転巻上羽根30の高さ分(基羽根31の始端から終端の高さ)の領域まで、凹凸模様121~123を設けても良い。
【0030】
<乾燥装置10の作用>
次に、本実施形態に係る乾燥装置10の作用について説明する。
図1において、乾燥槽11の上面部14にある供給口(図示省略)より被乾燥物を投入する。そして、電動モータ16を駆動して、回転軸20をR方向へ回転させる。このとき、ボイラーからジャケット13内に蒸気を導入して、伝熱面12aを加熱する。乾燥槽11内に投入された被乾燥物は、乾燥槽11の底面部15上で、先ず下段の回転巻上羽根30の回転に伴いアーム32によって掻き取られ、各基羽根31の始端側へすくい上げられる。
【0031】
各基羽根31の始端よりすくい上げられた被乾燥物は、そのまま平坦面31a上を終端に向かって、回転巻上羽根30の回転方向Rと逆方向へ巻き上げられて上昇する。このとき、
図2に示すように、各基羽根31の平坦面31a上の被乾燥物は、遠心力Pによって伝熱面12aに薄膜状に押し付けられる。ここで平坦面31aは、伝熱面12aに沿って延び、その外周端は伝熱面12aとの間にクリアランスUが保たれる。よって、回転巻上羽根30は、被乾燥物に過度の衝撃を与えることなく、被乾燥物への巻き上げ作用と、伝熱面12aへの押し付け作用を効果的に発揮することができる。
【0032】
図2に示すように、伝熱面12aに薄膜状に押し付けられた被乾燥物は、一側で伝熱面12aに接触する被加熱面を有すると共に、他側で乾燥槽11内の空間の空気と接触する蒸発面を有する。そして、伝熱面12aに接触した被乾燥物は、伝熱面12aからの熱により、その場である程度の水分蒸発が起こる。伝熱面12aへの接触時の水分蒸発によって含水率が低くなった被乾燥物は、含水率の高い被乾燥物と入れ換わるようにして蒸発面に移動する。
【0033】
被乾燥物が伝熱面12aに押し付けられた境界の流れは、従来の乾燥装置では伝熱面が滑面であるため、回転巻上羽根30の回転方向Rの逆方向に向かう層流となることが発明者らによって確かめられていた。また、一般に層流よりも乱流による熱伝達率の方が高いことが従来より知られている。一方、本乾燥装置10では、伝熱面12aには凹凸模様121~123があって非滑面であるため、伝熱面12aに押し付けられた被乾燥物は、伝熱面12aとの境界で乱流を起こす状態となる。従って、伝熱面12aにおいて被乾燥物に対する熱伝達率が高くなる。
【0034】
しかも、伝熱面12aに凹凸模様121~123があることにより、被乾燥物が伝熱面12aと接触する表面積も増大するため、被乾燥物に含まれている水分の蒸発がいっそう促進される。これにより、乾燥装置10における被乾燥物の乾燥効率を大幅に高めることが可能となる。また、凹凸模様121~123によって、伝熱面12aに被乾燥物が付着し難くなるという効果もある。なお、各基羽根31の平坦面31aの外周端と伝熱面12aとの間のクリアランスUは、凹凸模様121~123の凸部の頂端を基準として設けられる。
【0035】
図2において、蒸発面に移動した被乾燥物は、空気に晒されることでさらに水分蒸発が進むことになる。また、被乾燥物は、伝熱面12a側から蒸発面へ移動すると同時に、各基羽根31による巻き上げ作用により、後から巻き上げる被乾燥物が先に巻き上げた被乾燥物を連続的に押し、被乾燥物は伝熱面12aに沿って上昇していく。つまり、被乾燥物は、伝熱面12aから蒸発面へ移動しつつ、伝熱面12aに沿って巻き上がり、上昇しつつ乾燥することになる。
【0036】
さらに、回転巻上羽根30が上下に複数段あることにより、各段毎に被乾燥物を巻き上げつつ、薄膜状に伝熱面12aに押し付け、後から巻き上げる被乾燥物で先に巻き上げた被乾燥物を一段上まで押すように上昇させることになる。これにより、下段の回転巻上羽根30から上段の回転巻上羽根30まで、被乾燥物を連続して乾燥しつつ順次上昇させることができ、乾燥槽11の縦方向における伝熱面12a全面を有効に活用することになり、縦型の利点を生かした非常に高い乾燥効率を確実に実現することができる。
【0037】
[本発明の構成と作用効果]
以上、本発明の各種実施形態について説明したが、本発明は前述した各種実施形態に限定されるものではない。前述した各種実施形態から導かれる本発明について、以下に説明する。
【0038】
先ず、本発明は、縦型の円筒形状をなし被乾燥物が投入される乾燥槽11と、該乾燥槽11内で鉛直軸心に沿って延びる回転軸20に設けられた回転巻上羽根30と、を有する乾燥装置10において、
前記乾燥槽11の内壁に、被乾燥物に熱を伝える伝熱面12aを備え、
前記伝熱面12aの少なくとも一部に、被乾燥物が接触する境界での乱流を起こす凹凸模様121~123を設けたことを特徴とする。
【0039】
このような乾燥装置10によれば、伝熱面12aに凹凸模様121~123があるため、伝熱面12aに押し付けられた被乾燥物は、伝熱面12aとの境界で乱流を起こす状態となる。従って、伝熱面12aにおいて被乾燥物に対する熱伝達率が高くなる。しかも、凹凸模様121~123によって、被乾燥物が伝熱面12aと接触する表面積も増大するため、被乾燥物の乾燥がいっそう促進される。これにより、乾燥装置10における被乾燥物の乾燥効率を大幅に高めることが可能となる。
【0040】
また、本発明では、前記凹凸模様121~123は、前記伝熱面12aの基準面に対して内側に出っ張る凸部および/または外側に窪む凹部を多数設けてなることを特徴とする。
【0041】
このような構成によれば、凹凸模様121~123を容易に設けることが可能であり、具体的な模様のバリエーションも豊富となり、被乾燥物が伝熱面12aに接触する境界で乱流を起こしやすい模様を色々と試すことが可能となる。
【0042】
また、本発明では、前記凹凸模様121~123は、前記伝熱面12aの基準面に対して内側に出っ張る凸部をプレス加工して形成され、前記基準面から前記凸部の頂端までの高さは、1.0~1.5mmに設定されたことを特徴とする。
【0043】
このような構成によれば、凹凸模様121~123を、例えば、乾燥槽11の内壁を金属板から製作するときに、金属板のプレス加工によって容易に設けることができる。また、凹凸模様121~123の凸部が、伝熱面12aの基準面から過度に出っ張ることもなく、回転巻上羽根20との干渉を防ぐことができると共に、被乾燥物に乱流が生じるスペースを確保することができる。
【0044】
さらに、本発明では、前記凹凸模様121~123は、前記回転巻上羽根30の最下端から最上端に重なる前記伝熱面12aの高さ位置に設けられたことを特徴とする。
【0045】
このような構成によれば、凹凸模様121~123を伝熱面12aの全域に設けなくても、最も乾燥効率を高める部位に設けることにより、簡易な構成でもって被乾燥物の乾燥効率を高めることが可能となる。
【0046】
以上、本発明の実施形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成はこれらの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。例えば、本実施形態の乾燥槽11は、全体的に寸胴の円筒形であるが、他に例えば、乾燥槽11の上面部14から底面部15に向かって横断面積が漸次縮径する逆円錐台形に構成しても良い。
【0047】
また、本実施形態では、回転巻上羽根30は上下2段に配置されているが、回転巻上羽根30の具体的な数や配置は、乾燥槽11の高さや寸法に応じて、1段のみ、あるいは本実施形態のように2段、さらには3段以上として構成しても良い。また、本実施形態では、回転巻上羽根30は3つの基羽根31を備えているが、基羽根31の数や形状も図示したものに限定されることはない。さらに、伝熱面12aに設けた凹凸模様121~123に関しても、前述したように図示したものに限定されることはない。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の乾燥装置においては、様々な種類の被乾燥物に対応可能であり、特に、固形物や半固形物を含む被乾燥物や粘性の強い被乾燥物であっても、効率良く乾燥させることが可能な乾燥装置として幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0049】
10…乾燥装置
11…乾燥槽
12…周壁部
12a…伝熱面
121…凹凸模様
122…凹凸模様
123…凹凸模様
13…ジャケット
14…上面部
15…底面部
16…電動モータ
17…軸受部
20…回転軸
30…回転巻上羽根
31…基羽根
31a…平坦面
32…アーム