(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004226
(43)【公開日】2024-01-16
(54)【発明の名称】血液浄化装置
(51)【国際特許分類】
A61M 1/36 20060101AFI20240109BHJP
【FI】
A61M1/36 121
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022103784
(22)【出願日】2022-06-28
(71)【出願人】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】繁田 愼也
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA05
4C077BB01
4C077DD02
4C077DD26
4C077DD27
4C077EE01
4C077EE03
4C077EE04
4C077GG02
4C077HH03
4C077HH06
4C077HH13
4C077JJ08
4C077JJ19
4C077JJ25
4C077KK27
(57)【要約】
【課題】簡単な構成で且つプライミングや置換液の排出を迅速に行うことができる血液浄化装置を提供することができる。
【解決手段】血液浄化膜が内蔵されるダイアライザ10を介して血液を循環させる血液回路21と、ダイアライザ10に透析液を供給する透析液供給流路52と、ダイアライザ10から排液を排出する排液排出流路53と、透析液供給流路52に配設され、ダイアライザ10に供給する圧力を透析液に付与する給液ポンプ61と、排液排出流路53に配設されると共に、給液ポンプ61に対して別体且つ独立駆動可能に構成され、前記ダイアライザから排出する圧力を前記排液に付与する排液ポンプ71と、を備え、血液回路21と排液排出流路53とを連通した状態で、排液ポンプ71を駆動することで、血液回路21内の液体を排液排出流路53に吸引する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液浄化膜が内蔵される血液浄化器を介して患者の血液を浄化する血液浄化装置であって、
前記血液浄化器を介して前記血液を循環させる血液回路と、
前記血液浄化器に透析液を供給する透析液供給流路と、
前記血液浄化器からの排液を排出する排液排出流路と、
前記透析液供給流路に配設され、前記血液浄化器に供給する圧力を前記透析液に付与する給液ポンプと、
前記排液排出流路に配設されると共に、前記給液ポンプに対して別体且つ独立駆動可能に構成され、前記血液浄化器から排出する圧力を前記排液に付与する排液ポンプと、を備え、
前記血液浄化器を迂回して前記血液回路と前記排液排出流路とを連通する連通流路、又は前記血液浄化器を介して、前記血液回路と前記排液排出流路とを送液可能に連通した状態で、前記排液ポンプを駆動することで、前記血液回路内の液体を前記排液排出流路に吸引する、
血液浄化装置。
【請求項2】
供給配管を介して前記血液回路に接続され、プライミング液を貯留する貯留部と、
前記連通流路と、を更に備え、
前記連通流路を介して前記血液回路と前記排液排出流路とを連通した状態で、前記排液ポンプを駆動することで、前記貯留部から前記血液回路内に前記プライミング液を充填し、前記血液回路内をプライミングする、
請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項3】
前記排液排出流路における前記排液ポンプの上流側に配設され、前記排液中の気泡を除去する気泡除去部を、更に備え、
前記連通流路は、前記気泡除去部に接続されている、
請求項1又は2に記載の血液浄化装置。
【請求項4】
前記連通流路には、前記連通流路を開閉する開閉弁が配設され、
前記開閉弁を閉塞して前記血液回路と前記排液排出流路とを遮断させた状態で、前記排液ポンプを駆動して前記排液排出流路及び前記連通流路の所定領域内を蓄圧した後、前記開閉弁を開放することによって、蓄圧圧力に基づき前記血液回路内の液体を前記排液排出流路に吸引する、
請求項1又は2に記載の血液浄化装置。
【請求項5】
血液浄化治療後に、前記血液回路に置換液を充填することで前記血液回路内に残留する血液を患者に返血し、
前記血液浄化器を介して前記血液回路と前記排液排出流路とを連通した状態で、前記排液ポンプを駆動することで、前記血液回路に空気を導入しながら前記置換液を前記排液排出流路に排出する、
請求項1に記載の血液浄化装置。
【請求項6】
前記排液排出流路における前記排液ポンプの上流側には、前記排液排出流路を開閉する排出側開閉弁が配設され、
前記排出側開閉弁を閉塞した状態で、前記排液ポンプを駆動して前記排液排出流路の所定領域内を蓄圧した後、前記排出側開閉弁を開放することによって、蓄圧圧力に基づき前記血液回路内の液体を前記排液排出流路に吸引する、
請求項5に記載の血液浄化装置。
【請求項7】
前記排液排出流路における前記排液ポンプの上流側に配設され、前記排液中の気泡を検知する気泡検知センサを、更に備えた、
請求項5又は6に記載の血液浄化装置。
【請求項8】
前記排液排出流路に接続され、前記排液ポンプを迂回して液体を排出する排出流路を、更に備え、
前記血液回路内の前記置換液を前記排液排出流路に排出する場合、前記気泡検知センサによって前記置換液中の気泡を検知したとき、前記排出流路で前記置換液を排出する、 請求項7に記載の血液浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血液浄化装置として、血液回路のプライミングや血液回路内の置換液の排出を、除水ポンプを用いて行うものである(特許文献1参照)。この血液浄化装置は、血液を体外循環可能な血液回路と、血液回路を流れる血液を浄化するダイアライザと、ダイアライザに透析液を導入する透析液導入ライン及び当該ダイアライザから透析液を排出する透析液排出ラインを含む配管部と、透析液導入ライン及び透析液排出ラインに配設され、透析液をダイアライザに供給し当該ダイアライザからの排液を排出させる複式ポンプと、複式ポンプを迂回する迂回ラインに配設され、ダイアライザを流れる血液から水分を取り除いて除水する除水ポンプと、血液回路と透析液排出ラインとを連通する連通ラインと、を備えている。この血液浄化装置では、血液回路のプライミングや血液回路内の置換液を排出する際、連通ラインを介して血液回路と透析液排出ラインとを連通させた状態で、除水ポンプを駆動することで、除水ポンプによって血液回路を吸引して、プライミングや排液を行う。このように、血液回路の吸引を除水ポンプで行うことで、プライミングや排液をするのに、別途ポンプを設ける必要がなく、簡単な構成でプライミングや排液を行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、従来の血液浄化装置では、血液回路の吸引に除水ポンプを用いているため、除水ポンプの圧力(吸引力)の兼ね合いで、プライミングや置換液の排出の高速化には限界があった。これに対し、プライミングや置換液の排出をより迅速に行うことが求められている。
【0005】
そこで、本発明は、簡単な構成で且つプライミングや置換液の排出を迅速に行うことができる血液浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、血液浄化膜が内蔵される血液浄化器を介して患者の血液を浄化する血液浄化装置であって、前記血液浄化器を介して前記血液を循環させる血液回路と、前記血液浄化器に透析液を供給する透析液供給流路と、前記血液浄化器からの排液を排出する排液排出流路と、前記透析液供給流路に配設され、前記血液浄化器に供給する圧力を前記透析液に付与する給液ポンプと、前記排液排出流路に配設されると共に、前記給液ポンプに対して別体且つ独立駆動可能に構成され、前記血液浄化器から排出する圧力を前記排液に付与する排液ポンプと、を備え、前記血液浄化器を迂回して前記血液回路と前記排液排出流路とを連通する連通流路、又は前記血液浄化器を介して、前記血液回路と前記排液排出流路とを送液可能に連通した状態で、前記排液ポンプを駆動することで、前記血液回路内の液体を前記排液排出流路に吸引する、血液浄化装置を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、簡単な構成で且つプライミングや置換液の排出を迅速に行うことができる血液浄化装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る血液浄化装置の構造を示した概略構造図である。
【
図3】プライミング動作を示したフローチャートである。
【
図5】置換液排出動作を示したフローチャートである。
【
図6】血液浄化装置の変形例の構造を示した概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る血液浄化装置について説明する。この血液浄化装置は、ダイアライザを介して患者の血液を浄化する透析治療を行う医療機器であり、いわゆる血液透析装置である。特に、本血液浄化装置は、排液ポンプを用いて、血液回路のプライミングや血液回路内の置換液の排出を行うことで、プライミングや置換液の排出を簡単な構成でかつ迅速に行えるようにしたものである。
【0010】
(血液浄化装置の構成)
図1に示すように、血液浄化装置1は、患者Cの血液を浄化するダイアライザ10と、ダイアライザ10を介して患者Cの血液を循環させる体外循環ユニット11と、ダイアライザ10に接続され、ダイアライザ10に透析液を供給すると共に、ダイアライザ10からの排液を排出する透析液回路41を有した透析液給排ユニット12と、を備えている。体外循環ユニット11と透析液給排ユニット12とは、別体で構成されており、ダイアライザ10は、固定用治具13を介して体外循環ユニット11に着脱自在に取り付けられている。なお、ダイアライザ10は、血液浄化器の一例である。
【0011】
ダイアライザ10は、血液浄化膜(中空糸型の血液透析膜又は血液透析濾過膜、或いは、平膜型の血液透析膜又は血液濾過膜)を内蔵している。また、ダイアライザ10は、血液を導入する血液導入口10a及び導入した血液を導出する血液導出口10bを有すると共に、透析液を導入する透析液導入口10c及び導入した透析液を排出する透析液排出口10dを有している。ダイアライザ10では、血液浄化膜を介して血液と透析液とを接触させることで、血液を浄化する。
【0012】
体外循環ユニット11は、ダイアライザ10を介して患者Cの血液を循環させる血液回路21と、供給配管22aを介して血液回路21に接続された貯留バッグ22と、血液回路21に接続された血液回路側連通配管23と、制御部24と、を有している。貯留バッグ22は、プライミング液を貯留する貯留部の一例である。また、制御部24については、後述する。
【0013】
血液回路21は、ダイアライザ10の血液導入口10aに接続され、患者Cの血管から採取した血液をダイアライザ10に導く動脈側血液配管31と、ダイアライザ10の血液導出口10bに接続され、ダイアライザ10から排出された血液を患者Cの血管に戻す静脈側血液配管32と、を有している。
【0014】
動脈側血液配管31には、血液ポンプ33及び動脈側クランプ34が配設されている。血液ポンプ33は、血液に圧力を付与して送液する送液ポンプであり、例えば、しごき型ポンプで構成されている。動脈側クランプ34は、血液ポンプ33の上流側に配設され、動脈側血液配管31を開閉する。
【0015】
一方、静脈側血液配管32には、エアトラップチャンバ36、気泡検出器37及び静脈側クランプ38が配設されている。エアトラップチャンバ36は、血液中の気泡を捕捉するチャンバである。気泡検出器37は、血液中の気泡を検出する。静脈側クランプ38は、エアトラップチャンバ36及び気泡検出器37の下流側に配設され、静脈側血液配管32を開閉する。
【0016】
血液回路21では、動脈側クランプ34及び静脈側クランプ38を開放した状態で、血液ポンプ33を駆動することで、患者Cからの血液が、動脈側血液配管31を介してダイアライザ10に導かれ、ダイアライザ10によって浄化された後、静脈側血液配管32を介して患者Cに戻される。これにより、患者Cの血液が浄化される。
【0017】
貯留バッグ22は、供給配管22aを介して、動脈側血液配管31における血液ポンプ33と動脈側クランプ34との間に接続されている。貯留バッグ22は、プライミング液としての生理食塩水を貯留しており、プライミングの際には、貯留バッグ22に収容された生理食塩水を、供給配管22aを介して血液回路21に充填する。また、供給配管22aには、供給配管22aを開閉する供給側クランプ39が配設されている。
【0018】
血液回路側連通配管23は、エアトラップチャンバ36に接続されている。血液回路側連通配管23は、排液ポートPを介して、後述の透析液回路側連通配管42に接続され、透析液回路側連通配管42と共に、血液回路21と透析液回路41(の後述の排液排出流路53)とを連通する連通流路40を構成する。
【0019】
透析液給排ユニット12は、ダイアライザ10に透析液を供給すると共にダイアライザ10からの排液を排出する透析液回路41と、透析液回路41に接続された透析液回路側連通配管42と、透析液給排ユニット側制御部43と、を有している。
【0020】
透析液回路41は、透析液を精製する透析液調製部51と、ダイアライザ10の透析液導入口10cに接続され、透析液調製部51で精製された透析液をダイアライザ10に供給する透析液供給流路52と、ダイアライザ10の透析液排出口10dに接続され、ダイアライザ10からの排液を回収し排出する排液排出流路53と、を有している。
【0021】
透析液調製部51は、供給された純水と、濃縮液又は粉末からなる透析剤とから、透析液を調製する。透析液調製部51に供給される純水は、透析液給排ユニット12に搭載された純水製造部から供給される構成であってもよいし、透析液給排ユニット12の外部に設けられた純水製造装置から供給される構成であってもよい。なお、透析液調製部51も省略可能であり、例えば、外部の透析液供給装置等から、透析液給排ユニット12に透析液が供給されるよう構成してもよい。
【0022】
透析液供給流路52には、給液ポンプ61及び第1電磁弁62が配設されている。給液ポンプ61は、ダイアライザ10に供給する圧力を透析液に付与して、透析液を送液する送液ポンプであり、例えば、ダイアフラムポンプで構成されている。給液ポンプ61を駆動することで、透析液をダイアライザ10に供給する。第1電磁弁62は、給液ポンプ61の下流側に配設され、透析液供給流路52を開閉する。
【0023】
排液排出流路53には、排液ポンプ71及び第2電磁弁72が配設されている。排液ポンプ71は、給液ポンプ61に対して別体且つ独立駆動可能に構成され、ダイアライザ10から排出する圧力を排液に付与して、排液を送液する送液ポンプであり、例えば、ダイアフラムポンプで構成されている。排液ポンプ71を駆動することで、ダイアライザ10からの排液を排出する。第2電磁弁72は、排液ポンプ71の上流側に配設され、排液排出流路53を開閉する。
【0024】
透析液回路側連通配管42は、排液排出流路53における排液ポンプ71と第2電磁弁72との間に接続されている。透析液回路側連通配管42は、排液ポートPを介して、血液回路側連通配管23に接続され、血液回路側連通配管23と共に、ダイアライザ10を迂回して血液回路21と排液排出流路53とを連通する連通流路40を構成する。すなわち、連通流路40は、一端が、静脈側血液配管32におけるエアトラップチャンバ36に接続され、他端が、排液排出流路53における排液ポンプ71の上流側に接続されている。また、透析液回路側連通配管42には、連通流路40を開閉する第3電磁弁73が配設されている。プライミングの際には、第2電磁弁72を閉塞すると共に第3電磁弁73を開放した状態で、排液ポンプ71を駆動することで、排液ポンプ71の上流側に接続された連通流路40を介して、血液回路21を吸引する。なお、第2電磁弁72は、排出側開閉弁の一例であり、第3電磁弁73は、開閉弁の一例である。
【0025】
透析液給排ユニット側制御部43は、体外循環ユニット11の制御部24と通信を行い、制御部24の指令に従って、給液ポンプ61、排液ポンプ71及び各電磁弁62、72、73を制御する。透析液給排ユニット側制御部43は、CPU等の演算素子、メモリ、ソフトウェア、インターフェイス、通信ユニット等を適宜組み合わせて実現される。
【0026】
(制御部及びその制御の説明)
ここで、制御部24及び当該制御部24による制御について説明する。制御部24は、CPU等の演算素子、メモリ、ソフトウェア、インターフェイス、通信ユニット等を適宜組み合わせて実現されるものであり、気泡検出器37の検出値を受け付けると共に、血液ポンプ33及び各クランプ34、38、39を制御する。また、制御部24は、透析液給排ユニット側制御部43と通信を行い、透析液給排ユニット側制御部43を介して、給液ポンプ61、排液ポンプ71及び各電磁弁62、72、73を制御する。
【0027】
制御部24は、血液ポンプ33、給液ポンプ61及び排液ポンプ71を制御して、透析治療動作を実行する。透析治療動作では、血液ポンプ33を駆動して、ダイアライザ10を介して血液を循環すると共に、給液ポンプ61を駆動して、ダイアライザ10に透析液を供給し、排液ポンプ71を駆動して、ダイアライザ10からの排液を排出する。これによって、患者Cの血液がダイアライザ10を介して循環されつつ、ダイアライザ10に対し透析液が給排出されて、患者Cの血液が浄化される。
【0028】
また、制御部24は、血液ポンプ33、排液ポンプ71、各電磁弁62、72、73及び各クランプ34、38、39を制御して、プライミング動作及び置換液排出動作を実行する。ここで
図2乃至
図5を参照して、プライミング動作及び置換液排出動作について説明する。
【0029】
(プライミング動作の説明)
プライミング動作は、血液透析動作の前に、血液回路21内に生理食塩水を充填する動作である。また、プライミング動作は、
図2に示すように、動脈側血液配管31及び静脈側血液配管32の先端同士をカプラ81によって連結し連通した状態で行われる。また、プライミング動作は、第2電磁弁72を閉塞し、動脈側クランプ34及び静脈側クランプ38を開放した状態で行われる。制御部24が、プライミング動作を実行する。
【0030】
図2及び
図3に示すように、プライミング動作では、まず、第3電磁弁73を閉塞し(S1)、供給側クランプ39を開放する(S2)。その後、排液ポンプ71を駆動する(S3)。すなわち、第3電磁弁73を閉塞して、血液回路21と排液排出流路53とを遮断させた状態で排液ポンプ71を駆動することで、排液ポンプ71から第2電磁弁72及び第3電磁弁73までの配管内(所定領域内)を陰圧化(血液回路21よりも圧力を低く)し蓄圧する(
図2(a)参照)。これにより、第3電磁弁73を開放したとき、排液排出流路53内の排液が血液回路21に逆流しないようにする。なお、排液ポンプ71から第2電磁弁72及び第3電磁弁73までの配管内が陰圧化したか否かの判定は、例えば、排液ポンプ71から第2電磁弁72及び第3電磁弁73までの配管に設けた圧力検出部の検出値によって行う。なお、当該圧力検出部は、例えば、排液排出流路53における排液ポンプ71と第2電磁弁72との間に設けられ、血液浄化治療で透析液圧を検出(監視)する透析液圧センサを兼用してもよく、これに代えて、任意のセンサを他用途との兼用又は専用で用いることも可能である。
【0031】
排液ポンプ71から第3電磁弁73までの配管内を陰圧化(蓄圧)したら、排液ポンプ71を駆動した状態のまま、第3電磁弁73を開放する(S4)。第3電磁弁73の開放によって、連通流路40を介して血液回路21と排液排出流路53とを送液可能に連通した状態で、排液ポンプ71を駆動する状態となる。これによって、排液ポンプ71により、連通流路40を介して血液回路21を吸引する。すなわち、S3で蓄圧した蓄圧圧力に基づき血液回路21を吸引する。排液ポンプ71により血液回路21を吸引し、血液回路21内を陰圧化することで、貯留バッグ22に貯留された生理食塩水が動脈側血液配管31に流入する。血液回路21に流入した生理食塩水は、カプラ81を経て静脈側血液配管32を通りエアトラップチャンバ36に至る。そして、エアトラップチャンバ36から連通流路40を介して排液排出流路53に流入し排液ポンプ71に到達する。これにより、動脈側血液配管31及び静脈側血液配管32における、貯留バッグ22の接続位置からエアトラップチャンバ36までの配管が充填され、またエアトラップチャンバ36にも生理食塩水が蓄積される(
図2(b)参照)。すなわち、排液ポンプ71を駆動することで、血液回路21内の生理食塩水を排液排出流路53に吸引する。
【0032】
第3電磁弁73の開放から一定時間経過して、貯留バッグ22の接続位置からエアトラップチャンバ36までの流路に生理食塩水が充填されたら、第3電磁弁73を閉塞し(S5)、排液ポンプ71を停止する(S6)。その後、供給側クランプ39を閉塞して(S7)、血液ポンプ33を駆動(逆転駆動)する(S8)。血液ポンプ33の駆動によって、血液回路21内で生理食塩水が流動し、エアトラップチャンバ36で空気が一部捕捉されつつ、生理食塩水が血液回路21内で循環する(
図2(c)参照)。なお、
図2(c)の例では、血液ポンプ33を逆転駆動する構成としたが、血液ポンプ33を正転駆動する構成であってもよい。
【0033】
生理食塩水を一定時間循環させたら、気泡検出器37によって、血液回路21内を流動する空気量を検出する(S9)。検出の結果、血液回路21内を流動する空気量が一定値未満ではないと判定された場合(S9:No)、S2に戻り、S2からS8までの一連の動作を繰返し行う。これによって、徐々に血液回路21内に生理食塩水を充填していき、血液回路21内の空気量を減少させていく。そして、血液回路21内に空気がなくなり、血液回路21内を流動する空気量が一定値未満であると判定された場合(S9:Yes)、本プライミング動作を終了する。これにより、血液回路21内に生理食塩水を充填し、血液回路21内をプライミングする。なお、貯留バッグ22から生理食塩水を吸引したとき(S4)、エアトラップチャンバ36にも生理食塩水が蓄積されるため、1回の吸引で血液回路21内に溜まる生理食塩水の量が多くなり、上記一連の動作(S2~S8)の繰返し回数を少なくすることができる。
【0034】
(置換液排出動作の説明)
置換液排出動作は、血液浄化装置1が血液治療後に血液回路21に置換液(例えば、生理食塩水)を充填することで血液回路21内に残留する血液を患者Cに返血した後に、当該返血に際して血液回路21に充填された置換液を排出する動作である。また、置換液排出動作は、
図4に示すように、動脈側血液配管31及び静脈側血液配管32の先端を患者Cから取り外して空気開放した状態で行われる。また、置換液排出動作は、第3電磁弁73及び供給側クランプ39を閉塞した状態で行われる。制御部24が、置換液排出動作を実行する。
【0035】
図4及び
図5に示すように、置換液排出動作では、まず、動脈側クランプ34及び静脈側クランプ38を閉塞し(S11)、第2電磁弁72を閉塞する(S12)。その後、排液ポンプ71を駆動する(S13)(
図4(a)参照)。すなわち、第2電磁弁72を閉塞した状態で排液ポンプ71を駆動することで、排液ポンプ71から第2電磁弁72及び第3電磁弁73までの配管内(所定領域内)を陰圧化(血液回路21よりも圧力を低く)し、蓄圧する。これにより、第2電磁弁72を開放したとき、排液排出流路53内の排液が血液回路21に逆流しないようにする。なお、排液ポンプ71から第2電磁弁72及び第3電磁弁73までの配管内が陰圧化したか否かの判定は、例えば、排液ポンプ71から第2電磁弁72及び第3電磁弁73までの配管に設けた圧力検出部の検出値によって行う。なお、当該圧力検出部は、例えば、排液排出流路53における排液ポンプ71と第2電磁弁72との間に設けられ、血液浄化治療で透析液圧を検出(監視)する透析液圧センサを兼用してもよく、これに代えて、任意のセンサを他用途との兼用又は専用で用いることも可能である。
【0036】
排液ポンプ71から第2電磁弁72までの配管内を陰圧化したら、第2電磁弁72を開放し(S14)、動脈側クランプ34及び静脈側クランプ38を開放して(S15)、血液ポンプ33を駆動する(S16)。第2電磁弁72の開放及び血液ポンプ33の駆動によって、ダイアライザ10を介して血液回路21と排液排出流路53とを送液可能に連通した状態で、排液ポンプ71及び血液ポンプ33を駆動する状態となる。これにより、排液ポンプ71によって、ダイアライザ10を介して血液回路21内の置換液を排液排出流路53に吸引する。すなわち、S13で蓄圧した蓄圧圧力に基づき血液回路21内の置換液を排液排出流路53に吸引する。具体的には、排液ポンプ71及び血液ポンプ33の駆動によって、排液ポンプ71の圧力で、静脈側血液配管32に空気が導入されながら静脈側血液配管32内の置換液がダイアライザ10を介して排液排出流路53に流入し排出されると共に、血液ポンプ33の圧力で、動脈側血液配管31に空気が導入されながら動脈側血液配管31内の置換液がダイアライザ10を介して排液排出流路53に流入し排出される(
図4(b)参照)。これにより、血液回路21内の置換液が排液排出流路53を介して排出される。なお、排液ポンプ71の流量と血液ポンプ33の流量とが同等であると、動脈側血液配管31内の置換液のみ排出され、静脈側血液配管32内の置換液が排出されない現象が生じる。そのため、血液ポンプ33の目標流量に対し、排液ポンプ71の目標流量を、静脈側血液配管32内の置換液を排出する流量分だけ多くする。
【0037】
置換液を排出が終了したら、血液ポンプ33を停止し(S17)、第2電磁弁72を閉塞して(S18)、排液ポンプ71を停止する(S19)。これにより、本置換液排出動作を終了する。
【0038】
(実施形態の作用及び効果)
以上、上記実施形態の構成によれば、プライミングや置換液排出における血液回路21の吸引を、排液ポンプ71を用いて行う構成であるため、簡単な構成で且つプライミングや置換液の排出を迅速に行うことができる。すなわち、ダイアライザ10から排出する圧力を排液に付与する排液ポンプ71を、給液ポンプ61に対し独立駆動可能とし、この排液ポンプ71を血液回路21の吸引に利用することで、高い圧力で血液回路21を吸引することができる。これにより、プライミングや置換液排出をより迅速に(例えば、除水ポンプを用いる場合の約30倍程度の速度で)行うことができると共に、別途高圧力のポンプを設ける必要がなく、血液浄化装置1を簡単な構成にすることができる。
【0039】
(変形例)
以上、本発明の実施形態を説明したが、上記した実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0040】
例えば、
図6に示すように、排液排出流路53における排液ポンプ71の上流側に配設され、排液中の気泡を除去する気泡捕獲器101(気泡除去部の一例)を更に備え、連通流路40(透析液回路側連通配管42)の透析液回路41側を気泡捕獲器101に接続する構成であってもよい。かかる場合、気泡捕獲器101は、例えば、排液中の気泡を検出する気泡検知センサ101aと、脱ガスチャンバ101bとを含んで構成されている。そして、例えば、透析液回路41が、排液排出流路53に接続され、排液ポンプ71を迂回して液体を排出する排出流路102を更に有し、気泡検知センサ101aによって脱ガスチャンバ101b内の空気量を検出し、脱ガスチャンバ101b内の空気量が所定量以上になったとき、排出流路102で脱ガスチャンバ101b内の空気を排出する構成とする。かかる構成によれば、プライミング動作時に、排液ポンプ71に空気が入るのを防止することができる。これにより、排液ポンプ71において、エア噛みにより吐出力が低下するのを防止することができる。すなわち、当該構成によって、エア噛みにより吐出力が低下する小型の排液ポンプ71を利用することができ、排液ポンプ71を小型化することができる。また、排液排出流路53における排液ポンプ71の上流側に配設された気泡捕獲器101をプライミング動作時のエア抜きにも利用するため、透析治療動作時の排液のエア抜きと、プライミング動作時の排液のエア抜きとを、単一の気泡捕獲器101で行うことができ、血液浄化装置1を簡単な構成にすることができる。
【0041】
また、
図6に記載の構成では、排液排出流路53における排液ポンプ71の上流側に気泡検知センサ101aを配設したことで、置換液排出動作時においても、排液ポンプ71内に空気が入り込むのを防止することができる。さらに、
図6に記載の構成において、血液回路21内の置換液を排液排出流路53に排出する場合(置換液排出動作における置換液排出時)、気泡検知センサ101aによって置換液中の気泡を検知したとき、排出流路102で置換液を排出することで、置換液排出動作時において、排液ポンプ71に空気を入れることなく、置換液を排出することができる。
【0042】
また、上記実施形態においては、置換液排出動作における置換液の排出を、ダイアライザ10を介して行う構成であったが、これに限るものではない。すなわち、置換液排出動作における置換液の排出を、第2電磁弁72を閉塞しつつ第3電磁弁73を開放し、連通流路40を介して血液回路21と排液排出流路53とを連通した状態で行う構成であってもよい。つまり、置換液排出動作における置換液の排出を、連通流路40を介して血液回路21と排液排出流路53とを連通した状態で、排液ポンプ71を駆動することで行う構成であってもよい。かかる場合には、プライミング動作と同様、第3電磁弁73を閉塞した状態で排液ポンプ71を駆動し、排液ポンプ71から第3電磁弁73までの配管内(所定領域内)を陰圧化し蓄圧した後、第3電磁弁73を開放して置換液の排出を行う。
【0043】
(実施形態のまとめ)
次に、以上説明した実施形態から把握される技術思想について、実施形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号等は、特許請求の範囲における構成要素を実施形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0044】
《1》血液浄化膜が内蔵される血液浄化器(10)を介して患者(C)の血液を浄化する血液浄化装置(1)であって、前記血液浄化器(10)を介して前記血液を循環させる血液回路(21)と、前記血液浄化器(10)に透析液を供給する透析液供給流路(52)と、前記血液浄化器(10)からの排液を排出する排液排出流路(53)と、前記透析液供給流路(52)に配設され、前記血液浄化器(10)に供給する圧力を前記透析液に付与する給液ポンプ(61)と、前記排液排出流路(53)に配設されると共に、前記給液ポンプ(61)に対して別体且つ独立駆動可能に構成され、前記血液浄化器(10)から排出する圧力を前記排液に付与する排液ポンプ(71)と、を備え、前記血液浄化器(10)を迂回して前記血液回路(21)と前記排液排出流路(53)とを連通する連通流路(40)、又は前記血液浄化器(10)を介して、前記血液回路(21)と前記排液排出流路(53)とを送液可能に連通した状態で、前記排液ポンプ(71)を駆動することで、前記血液回路(21)内の液体を前記排液排出流路(53)に吸引する、血液浄化装置(1)。
これにより、簡単な構成で且つプライミングや置換液の排出を迅速に行うことができる。
《2》供給配管(22a)を介して前記血液回路(21)に接続され、プライミング液を貯留する貯留部(22)と、前記連通流路(40)と、を更に備え、前記連通流路(40)を介して前記血液回路(21)と前記排液排出流路(53)とを連通した状態で、前記排液ポンプ(71)を駆動することで、前記貯留部(22)から前記血液回路(21)内に前記プライミング液を充填し、前記血液回路(21)内をプライミングする、《1》に記載の血液浄化装置(1)。
これにより、簡単な構成で且つプライミングを迅速に行うことができる。
《3》前記排液排出流路(53)における前記排液ポンプ(71)の上流側に配設され、前記排液中の気泡を除去する気泡除去部(101)を、更に備え、前記連通流路(40)は、前記気泡除去部(101)に接続されている、《1》又は《2》に記載の血液浄化装置(1)。
これにより、排液ポンプに空気が入るのを防止することができる。
《4》前記連通流路(40)には、前記連通流路(40)を開閉する開閉弁(73)が配設され、前記開閉弁(73)を閉塞して前記血液回路(21)と前記排液排出流路(53)とを遮断させた状態で、前記排液ポンプ(71)を駆動して前記排液排出流路(53)及び前記連通流路(40)の所定領域内を蓄圧した後、前記開閉弁(73)を開放することによって、蓄圧圧力に基づき前記血液回路(21)内の液体を前記排液排出流路(53)に吸引する、《1》又は《2》に記載の血液浄化装置(1)。
これにより、排液排出流路内の排液が血液回路に逆流するのを防止することができる。
《5》血液浄化治療後に、前記血液回路(21)に置換液を充填することで前記血液回路(21)内に残留する血液を患者(C)に返血し、前記血液浄化器(10)を介して前記血液回路(21)と前記排液排出流路(53)とを連通した状態で、前記排液ポンプ(71)を駆動することで、前記血液回路(21)に空気を導入しながら前記置換液を前記排液排出流路(53)に排出する、《1》乃至《3》のいずれか1つに記載の血液浄化装置(1)。
これにより、簡単な構成で且つ置換液の排出を迅速に行うことができる。
《6》前記排液排出流路(53)における前記排液ポンプ(71)の上流側には、前記排液排出流路(53)を開閉する排出側開閉弁(72)が配設され、前記排出側開閉弁(72)を閉塞した状態で、前記排液ポンプ(71)を駆動して前記排液排出流路(53)の所定領域内を蓄圧した後、前記排出側開閉弁(72)を開放することによって、蓄圧圧力に基づき前記血液回路(21)内の液体を前記排液排出流路(53)に吸引する、《5》に記載の血液浄化装置(1)。
これにより、排液排出流路内の排液が血液回路に逆流するのを防止することができる。
《7》前記排液排出流路(53)における前記排液ポンプ(71)の上流側に配設され、前記排液中の気泡を検知する気泡検知センサ(101a)を、更に備えた、《5》又は《6》に記載の血液浄化装置(1)。
これにより、排液ポンプに空気が入るのを防止することができる。
《8》前記排液排出流路(53)に接続され、前記排液ポンプ(71)を迂回して液体を排出する排出流路(102)を、更に備え、前記血液回路(21)内の前記置換液を前記排液排出流路(53)に排出する場合、前記気泡検知センサ(101a)によって前記置換液中の気泡を検知したとき、前記排出流路(102)から前記置換液を排出する、《7》に記載の血液浄化装置(1)。
これにより、置換液排出動作時において、排液ポンプに空気を入れることなく、置換液を排出することができる。
【符号の説明】
【0045】
1:血液浄化装置、 10:ダイアライザ、 21:血液回路、 22:貯留バッグ、 22a:供給配管、 40:連通流路、 52:透析液供給流路、 53:排液排出流路、 61:給液ポンプ、 71:排液ポンプ、 72:第2電磁弁、 73:第3電磁弁、 101:気泡捕獲器、 101a:気泡検知センサ、 102:排出流路、 C:患者