(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042304
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】足場における落下物受取装置
(51)【国際特許分類】
E04G 5/00 20060101AFI20240321BHJP
E04G 21/32 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
E04G5/00 301D
E04G21/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146918
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000101662
【氏名又は名称】アルインコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077791
【弁理士】
【氏名又は名称】中野 収二
(72)【発明者】
【氏名】伴 和夫
(72)【発明者】
【氏名】板倉 涼
(57)【要約】
【課題】足場構築体の高所から落下する落下物を受け取る落下物受取装置を提供する。
【解決手段】一対の縦フレームの間に開口部を形成しており、ロール体からシート材を繰り出すことにより開口部を閉鎖し、ロール体にシート材を巻き取ることにより開口部を開放するように構成され、シート材(13)の両側縁部に設けた係止部(31)と、縦フレーム(8)に設けた係止レール(32)により係止機構(30)を形成し、係止部を前記係止レールに沿って移動可能に搭載すると共に、係止部が係止レールから前記開口部に向けて脱出しないように係止している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業空間を形成する足場構築体から外側空間に向けて突設される落下物受取装置であり、落下物受取装置は、シート材(13)を軸線廻りに巻回したロール体(12)により構成される閉鎖手段(6)と、前記ロール体の両端部から平行に延びる一対の縦フレーム(8)と、一対の縦フレームの間に形成された開口部(15)を有しており、前記シート材をロール体から繰り出すことにより前記開口部を閉鎖し、前記シート材をロール体に巻き取ることにより前記開口部を開放するように構成されており、
前記シート材(13)の両側縁部と縦フレーム(8)の相互に係止機構(30)が設けられており、
前記係止機構は、前記シート材の両側縁部に設けた係止部(31)と、前記縦フレームに沿う係止レール(32)により構成され、
前記係止部を前記係止レールに沿って移動可能に搭載すると共に、前記係止部が前記係止レールから前記開口部(15)に向けて脱出しないように係止する構成とされて成ることを特徴とする足場における落下物受取装置。
【請求項2】
前記係止部(31)は、前記シート材の両側縁部の長手方向に所定間隔をあけて配設された駒部材(34)により構成され、
前記係止レール(32)は、前記駒部材を摺動自在に挿入した状態で保持する挿入路(35)と、前記駒部材を開口部に向けて脱出しないように保持した状態でシート材の両側縁部を挿通させるスリット(36)を設けて成ることを特徴とする請求項1に記載の足場における落下物受取装置。
【請求項3】
前記シート材(13)の両側縁部は、該シート材の端縁部(13a)の長手方向に所定間隔をあけて突片部(33)を突設し、該突片部に前記駒部材(34)を設けており、
前記シート材をロール体に巻き取ったとき、前記突片部(33)がロール体(12)の軸方向に突出すると共に、複数の突片部(33)がロール体の径方向に重ならないように構成されて成ることを特徴とする請求項2に記載の足場における落下物受取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場等において足場構築体の作業空間で高所作業を行う際に、該作業空間から外側空間に向けて落下物が落下したとき、該落下物を受取り、地上に向けて落下する危険を防止するための落下物受取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
足場構築体の作業空間で高所作業を行う場合、作業中に、作業空間の外側の外側空間に向けて、作業者が使用する工具や作業用機材その他の物品が誤って落下するおそれがある。このような落下物は、地上を往来する者を直撃する危険があり、人身事故を招来する可能性がある。
【0003】
そこで、本出願人は、特許文献1に説明するような「朝顔」と称される落下物受取装置を提案している。この落下物受取装置は、落下物受取装置の矩形輪郭を形成する枠体と、前記枠体により区成された開口部を閉塞するパネル板により構成され、前記枠体は、左右一対の縦フレームの基端部に枢支片を設け、足場構築体に固設された支持ブラケットの枢軸に前記枢支片を枢結することにより取付けられる。
【0004】
枢結作業に際して、落下物受取装置は、縦フレームを起立姿勢とした状態で、下向きとされた基端部の枢支片を支持ブラケットに近づけ、枢支片の枢支孔を枢軸に外挿させながら枢結する作業が行われている。
【0005】
この際、縦フレームには、上向きとされた自由端側に位置して下向きに延びる伸縮自在なアームが回動自在に設けられており、該アームの下端部は、足場構築体の下方位置に固設された下側の支持ブラケットに枢結される。
【0006】
そこで、落下物受取装置は、前記枢軸を中心として縦フレームを起立姿勢から前記外側空間に向けて突出する傾斜姿勢とするように回動すると共に、伸縮自在なアームを所定長さに固定することにより、使用可能な状態とされる。これにより、落下物受取装置は、落下物を受け取りやすくなるように、枢軸から外側空間に向けて斜め上向きとした傾斜姿勢で固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4658021号公報
【特許文献2】特許第5919408号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、例えば、悪天候等、作業中断が必要な場合、落下物受取装置は、強風に煽られる危険があるので、強風を受け難い姿勢となるように姿勢変更することが望ましい。このため、傾斜姿勢から、アームを伸縮自在な状態にして、枢軸を中心として縦フレームを回動することにより、起立姿勢として、パネル板を足場構築体の作業空間に沿わせることが好ましい。
【0009】
しかしながら、起立姿勢とした状態においても、落下物受取装置は、枠体にパネル板を装着した平板状のものに形成されているので、強風を受けると煽られてしまうことが不可避である。
【0010】
このため、台風等の暴風雨が予想されるときは、パネル板を取外すという対策を考慮することができるが、その場合、作業者に枠体の分解やその他の煩雑な作業を強いる問題があり、再使用のため分解した枠体を再び組付けてパネル板を装着する場合も同様である。
【0011】
上記の問題を解決した足場における落下物受取装置は、本出願人において、先願発明として特願2021-63315号により提案したところであり、先願発明に係る落下物受取装置は、シート材を軸線廻りに巻回したロール体により構成される閉鎖手段と、前記ロール体の両端部から平行に延びる一対の縦フレームと、一対の縦フレームの間に形成された開口部を有しており、前記シート材をロール体から繰り出すことにより前記開口部を閉鎖し、前記シート材をロール体に巻き取ることにより前記開口部を開放するように構成されている。従って、シート材により開口部を閉鎖した状態で使用することにより、高所から落下する落下物を受け取ることができ、安全を確保するという落下物受取装置の本来の目的を達する反面、悪天候等による強風が予想されるときは、シート材を巻き取り開口部を開放させることにより、通気性を良好として、強風により煽られることを防止することができるという効果がある。
【0012】
ところで、先願発明の技術的範囲には関係がないが、その図面に示す実施形態の場合、シート材をロール体から繰り出して開口部を閉鎖することにより落下物受取装置として使用している際に、高所から落下物がシート材に衝突すると、シート材が変形することにより両側縁部を縦フレームから脱出するおそれがある。そして、両側縁部が縦フレームから離れると、シート材が更に変形することにより、落下物を受け取ることができず、下方に向けて通過させる危険がある。
【0013】
本発明は、この点の課題を解決した足場における落下物受取装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
そこで、本発明が手段として構成したところは、作業空間を形成する足場構築体から外側空間に向けて突設される落下物受取装置であり、落下物受取装置は、シート材を軸線廻りに巻回したロール体により構成される閉鎖手段と、前記ロール体の両端部から平行に延びる一対の縦フレームと、一対の縦フレームの間に形成された開口部を有しており、前記シート材をロール体から繰り出すことにより前記開口部を閉鎖し、前記シート材をロール体に巻き取ることにより前記開口部を開放するように構成されており、前記シート材の両側縁部と縦フレームの相互に係止機構が設けられており、前記係止機構は、前記シート材の両側縁部に設けた係止部と、前記縦フレームに沿う係止レールにより構成され、前記係止部を前記係止レールに沿って移動可能に搭載すると共に、前記係止部が前記係止レールから前記開口部に向けて脱出しないように係止する構成とされて成る点にある。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、前記係止部は、前記シート材の両側縁部の長手方向に所定間隔をあけて配設された駒部材により構成され、前記係止レールは、前記駒部材を摺動自在に挿入した状態で保持する挿入路と、前記駒部材を開口部に向けて脱出しないように保持した状態でシート材の両側縁部を挿通させるスリットを設けている。
【0016】
特に好ましい実施形態において、前記シート材の両側縁部は、該シート材の端縁部の長手方向に所定間隔をあけて突片部を突設し、該突片部に前記駒部材を設けており、前記シート材をロール体に巻き取ったとき、前記突片部がロール体の軸方向に突出すると共に、複数の突片部がロール体の径方向に重ならないように構成されている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、落下物受取装置4の縦フレーム8、8の間に形成された開口部15は、シート材13をロール体12から繰り出すことにより閉鎖し、シート材13をロール体12に巻き取ることにより開放することができる。従って、シート材13により開口部15を閉鎖した状態で使用することにより、高所から落下する落下物を受け取り、安全を確保するという落下物受取装置4の本来の目的を達することができる反面、悪天候等による強風が予想されるときは、シート材13を巻き取り、開口部15を開放することにより、通気性を良好として、強風により煽られることを防止することが可能になる。
【0018】
そして、シート材13の両側縁部と縦フレーム8、8の相互に係止機構30を設け、係止部31を係止レール32に沿って移動させることによりシート材13の繰り出しと巻き取りを可能としながらも、係止部31を係止レール32から開口部15に向けて脱出しないように係止しているので、高所から落下物がシート材13に衝突した場合、シート材13の両側縁部が縦フレーム8、8に堅固に接続された状態を保持することにより、衝撃に耐え、落下物を好適に受け止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の1実施形態を示しており、落下物受取装置を足場構築体に取付けた状態の斜視図である。
【
図2】落下物受取装置に関し、閉鎖手段を構成するシート材をロール体に巻き取った状態を示しており、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【
図3】落下物受取装置に関し、閉鎖手段を構成するシート材をロール体から繰り出した状態の落下物受取装置を示しており、(A)は平面図、(B)は側面図である。
【
図4】閉鎖手段に関し、(A)はシート材をロール体から繰り出した状態を示す斜視図、(B)はシート材をロール体に巻き取った状態を示す側面図、(C)はシート材の縁部を部分的に拡大して示す斜視図である。
【
図5】ロールユニットを構成する横フレームと、ロール体と、軸支金具及び差込金具を分解状態で示す斜視図である。
【
図6】組立状態のロールユニットを示す斜視図である。
【
図7】縦フレームユニットを構成する縦フレームと、係着金具と、結合金具を分解状態で示す斜視図である。
【
図8】縦フレームユニットとロールユニットを示す斜視図である。
【
図9】縦フレームユニットにロールユニットを結合した状態を示す斜視図である。
【
図10】ロール体からシート材を縦フレームに沿って繰り出した状態を部分的断面により示す斜視図である。
【
図11】(A)は、シート材と縦フレームの相互に設けられた係止機構を示す横断面図、(B)はシート材の繰り出し方向の先端に設けられた保持バーのローラと縦フレームの関係を示す横断面図である。
【
図12】操作バーの係止部と縦フレームの被係止部の関係を示しており、(A)は操作バーの係止部が被係止部に係止される前の状態を示す斜視図、(B)は係止された状態を示す斜視図である。
【
図13】操作バーの係止部と縦フレームの被係止部の関係を示しており、(A)は操作バーの係止部が被係止部に係止される前の状態を示す断面図、(B)は係止された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0021】
(足場構築体及び落下物受取装置)
図1に示すように、足場構築体1は、公知の構成のものであり、図例では単管足場を示しているが、枠組足場、その他の足場でも良く、上下方向に延びる支柱2に対して、足場板3を上下階層状に設けることにより作業空間が形成されている。
【0022】
足場構築体1の高所位置には、前記支柱2と足場板3により形成される作業空間の外側面Xよりも外側の外側空間Yに向けて張出状に突出するパネル状の落下物受取装置4が設けられている。
【0023】
落下物受取装置4は、足場構築体1における支柱2、2の間隔に対応する幅寸法Wを有するものとして形成され、図示省略しているが、多数の落下物受取装置4が前記作業空間の外側面Xに沿って連設され、通常、朝顔と称されている。
【0024】
落下物受取装置4は、矩形又は門形の輪郭を形成する枠体5と、前記枠体5により区成された開口部を開閉自在に閉鎖する閉鎖手段6により構成されており、前記枠体5は、足場構築体1に固設された支持ブラケット7に対して、基端部を着脱自在に枢結される左右一対の縦フレーム8、8と、縦フレームの先端部の間に架設された横フレーム9により形成されている。尚、縦フレーム8及び横フレーム9は、アルミニウム等の押出成形材により形成されている。
【0025】
足場構築体1に装着する際、落下物受取装置4は、縦フレーム8を起立姿勢とした状態で、該縦フレームの下向きとされた基端部を支持ブラケット7に枢結させられる。この際、縦フレーム8には、上向きとされた自由端側に位置して下向きに延びる伸縮自在なアーム10が回動自在に設けられている。
【0026】
そこで、落下物受取装置4は、支持ブラケット7に対して縦フレーム8を回動することにより、
図1に鎖線で示すような起立姿勢P1と、実線で示すように前記外側空間Yに向けて突出された傾斜姿勢P2との間で回動自在とされている。回動作業を作業空間から行うため、縦フレーム8の自由端側に係着金具11が設けられており、係着金具11にロープ等の索条を係着し、作業者が索条を繰り出すことにより縦フレーム8を起立姿勢P1から傾斜姿勢P2に向けて回動させ、反対に、索条を引き上げることにより縦フレーム8を傾斜姿勢P2から起立姿勢P1に向けて回動させることができるように構成している。
【0027】
支柱2には、前記支持ブラケット7の下方に位置して下側の支持ブラケット7aが固設されており、縦フレーム8を傾斜姿勢P2とした状態で、アーム10の下端部が下側の支持ブラケット7aに連結され、アーム10を所定長さとした状態で伸縮不能となるように固定される。
【0028】
これにより、縦フレーム8は、下方から方杖となるアーム10で支持されることにより傾斜姿勢P2を保持される。これにより、落下物受取装置4は、落下物を受け取りやすいように、支持ブラケット7から外側空間Yに向けて斜め上向きの傾斜姿勢とされる。
【0029】
(閉鎖手段)
図2ないし
図13に示すように、前記閉鎖手段6は、前記横フレーム9に沿って延びる軸線の廻りに回動自在に設けられたロール体12により構成されている。ロール体12は、軸部材12aの廻りに巻回されたシート材13により形成され、横フレーム9に結合することにより、ロールユニット14を構成しており、ロールユニット14の両端部から一対の縦フレーム8、8を平行に延設することにより、全体が門形とされた前記枠体5を構成し、縦フレーム8、8の間に、開口部15を形成する。
【0030】
そこで、前記開口部15は、
図2に示すように、シート材13をロール体12に巻き取ることにより開口させられ、
図3に示すように、シート材13をロール体12から繰り出すことにより閉鎖される。シート材13は、巻回自在な可撓性素材により形成されており、足場構築体1の高所から落下する落下物の突き抜けを防止する強靭性を備えていることが好ましい。
【0031】
(ロールユニット)
図5及び
図6に示すように、横フレーム9とロール体12は、軸支金具16及び差込金具17を介して結合することにより、前記ロールユニット14を構成する。
【0032】
図例の場合、ロール体12は、筒状の巻取り芯材を軸部材12aとして、該軸部材12a両端に突設した回転軸12bにより軸支金具16に軸支されるように構成されているが、回転によりシート材13の巻き取りと繰り出しを可能とするものであれば良く、具体的な構成を問うものではない。
【0033】
図示実施形態の場合、横フレーム9は、庇部9aから取付壁9bを垂設した断面T形に形成されており、取付壁9bの前面に沿ってロール体12を配置し、取付壁9bの両端部の後面に差込金具17が固着される。図示省略しているが、ボルト・ナットやリベット等、任意の手段により固着され、差込金具17には取付壁9bの下方に突出する舌片状の差込部17aが設けられている。
【0034】
横フレーム9の両端に臨んで、前記差込金具17の外側面に前記軸支金具16がボルト・ナット等で固着され、一対の軸支金具16、16の軸支孔16aに前記回転軸12bを軸支する。これにより、
図6に示すように、横フレーム9にロール体12を結合したロールユニット14が組立てられる。
【0035】
図2ないし
図4に示すように、ロール体12は、シート材13の繰り出し側の先端縁部を下向きに延出させ、該先端縁部を保持する保持バー18を固着しており、保持バー18の両端にはローラ19が回転自在に軸支されている。
【0036】
更に、前記保持バー18は、外周方向に旋回自在な操作バー20を設けている。図示実施形態の場合、操作バー20を支持する旋回アーム21の基端部を保持バー18の外周に形成された溝に回動自在に嵌着している。尚、保持バー18及び操作バー20は、アルミニウム等の押出成形材により形成することができる。
【0037】
図示省略しているが、ロール体12は、常時、シート材13を巻き取るように弾発付勢するスプリングを備えた自動巻取り手段を設けることが好ましい。このような手段は、自動巻取り式のロールカーテン等における公知のものを使用することができる。その場合、シート材13は、スプリングに抗して引き出すことによりロール体12から繰り出され、引き出した状態で自由となるように解放すると、スプリングによりロール体12が回転することによりシート材13を巻き取るように構成される。
【0038】
(縦フレームユニット)
図7及び
図8に示すように、左右一対の縦フレーム8、8は、相互に溝開口を対向させて配置された溝形部材により形成されており、溝の両側壁を形成する上側(縦フレーム8を傾斜姿勢P2としたとき上向きとなる側)の第1側壁8aと下側の第2側壁8bと、溝底壁を形成する外側壁8c備えており、縦フレーム8の先端に臨む第1側壁8aの一部を切除することにより切欠き部22を形成している。
【0039】
縦フレーム8を構成する溝形部材の内部には、断面積の小さい別の溝形部材から成る小フレーム23が内装されており、縦フレーム8及び小フレーム23は、アルミニウム等の押出成形材により形成することができる。図示実施形態の場合、両フレーム8、23は、別々に成形されているが、一体に成形しても良い。尚、小フレーム23は、後述する係止機構30の係止レール32を構成する。従って、その詳細は後述する。
【0040】
縦フレーム8は、上述の係着金具11と、ロールユニット14の差込金具17を差し込んで固定するための結合金具24が組付けられ、これにより縦フレームユニット25を構成する。
【0041】
前記係着金具11は、ほぼL形の金属板により形成されており、基部を縦フレーム8の切欠き部22を介して外側壁8cの内側面に重ねると共にボルト・ナット等で固着され、この状態で係着孔11aが設けられた先端部を第1側壁8aから突出させられる。
【0042】
前記結合金具24は、ほぼコ字形に折曲された金属板により形成されており、縦フレーム8の先端において第2側壁8bに固着される。図示実施形態の場合、第2側壁8bには中空角形の膨出部8dが一体成形されており、結合金具24は、前記膨出部8dを抱持した状態で固着され、ほぼコ字形とされた内部空間を横断する方向に向けてロックピン24aが設けられている。
【0043】
(ロールユニットと縦フレームユニットの組付け)
図8及び
図9に示すように、ロールユニット14は、一対の縦フレームユニット25、25に対して、差込金具17の差込部17aを結合金具24に差し込むと共に、差込部17aのロック孔17bにロックピン24aを挿通係止することにより組付けられ、これにより、落下物受取装置4を構成する。この状態からロックピン24aの係止を解除すれば、両ユニット14、25を分解することができる。そして、組付けと分解は、ほぼワンタッチの作業で容易に行うことができる。
【0044】
これにより、落下物受取装置4は、前記ユニット14、25を分解した状態で搬送し、現場において、組立て及び分解を簡単容易に行うことができる利点がある。
【0045】
(シート材を繰り出すための構成)
図10ないし
図13に示すように、縦フレーム8は、溝形部材の溝開口部と小フレーム23の間に走行通路26を形成し、保持バー18に設けたローラ19を走行通路26の内部に沿って走行自在となるように挿入しており、これにより、シート材13の繰り出し及び巻き取りのための案内機構を構成している。この際、走行通路26の横幅とローラ19の外径は、ローラ19が通路内面に接しながら転動するように形成することが好ましい。更に、溝開口部は、第1側壁8a及び第2側壁8bの縁部を内向きに折曲することにより狭窄され、ローラ19の走行中に、保持バー18が横方向(バーの軸方向)に蛇行しないように構成することが好ましい。
【0046】
図示実施形態の場合、保持バー18を引き下げることによりロール体12から繰り出されるシート材13は、両側の端縁部13a、13aを前記走行通路26の内部に位置させるように構成されている。シート材13は、
図4(A)に鎖線で示すように、両側縁部が保持バー18の軸端を超えて張り出すように形成されており、これにより、シート材13の両縁に沿って連続的に延びる端縁部13aを形成している。従って、シート材13は、端縁部13a、13aを縦フレーム8、8の溝内部、つまり、走行通路26の内部に挿入した状態で、ロール体12から繰り出され、巻き取られるように構成されている。
【0047】
保持バー18は、作業者の手指で操作バー20を把持することにより引き下げられる。操作バー20は、一対の縦フレーム8、8に跨るように長く形成され、前記旋回アーム21を起立させることにより、操作バー20の両端部を縦フレーム8の走行通路26の内部ではなく、外部において第1側壁8aの上側に配置させられる。
【0048】
作業者が操作バー20を把持してロール体12からシート材13を繰り出し、
図3に示すように、縦フレーム8、8の間の開口部15をシート材13で閉鎖した状態において、操作バー20を固定するための閉止手段が設けられている。閉止手段は、
図12及び
図13に示すように、前記操作バー20の両端部により形成された閉止部27と、縦フレーム8の基端部で足場の支持ブラケット7に枢結される枢支金具28の近傍に形成された凹入部から成る受入部29により構成されている。
【0049】
図12(A)及び
図13(A)に示すように、操作バー20を引き下げることによりシート材13が繰り出されて開口部15が閉鎖されたとき、その位置で操作バー20の両端部の閉止部27が受入部29に臨まされる。そこで、
図12(B)及び
図13(B)に示すように、旋回アーム21を介して操作バー20を旋回させると、閉止部27が受入部29に嵌入されることにより係止するので、操作バー20は、シート材13の巻き取り方向に向けて移動不能とされる。閉鎖した開口部15を開放するため、シート材13をロール体12に巻き取らせるときは、旋回アーム21を介して操作バー20を旋回させることにより、閉止部27を受入部29から脱出させれば良い。この際、上述のように、ロール体12に自動巻取り手段を設けている場合は、ロール体12が自動的に回転することにより、シート材13を巻き取らせることができる。
【0050】
(係止機構)
シート材13の両側縁部と縦フレーム8の相互には、係止機構30が設けられている。係止機構30は、ロール体12から繰り出したシート材13により開口部15を閉鎖した状態で、落下物受取装置4を使用している最中に、高所からの落下物がシート材13に衝突したときでも、シート材13の両側縁部を縦フレーム8から離脱させないように、相互に堅固な接続状態を維持するように構成されている。
【0051】
そこで、係止機構30は、シート材13の両側縁部に設けた係止部31と、縦フレーム8に沿う係止レール32により構成され、前記係止部31を前記係止レール32に沿って移動自在に搭載すると共に、係止部31が係止レール32から開口部15に向けて脱出しないように係止するように構成している。
【0052】
図3及び
図4に示すように、シート材13の両側縁部は、両縁に沿って連続的に延びる端縁部13a、13aの長手方向に所定間隔をあけて突片部33を突設しており、該突片部33に駒部材34を設けている。図示実施形態の場合、シート材13から一体に突片部33を形成しているが、別体のシート素材等により形成した突片部33をシート材13に固着しても良い。
【0053】
駒部材34は、
図4(B)に示すように、突片部33を貫通する軸線Zに関して、短円柱状に形成された一対の駒片34a、34aにより構成され、突片部33を表裏両面から挟持した駒片34a、34aをボルト等で結合している。
【0054】
このように構成することにより、
図4(C)に示すように、シート材13をロール体12に巻き取ったとき、シート材13は、外周面と内周面を重ねて接触させながら連続して巻回され、次第に巻回直径を増大する。これに対して、突片部33は、ロール体12の軸方向に突出するので、駒部材34がロール体12の軸端よりも外部に位置させられる。そして、駒部材34は、ロール体12の外部で所定間隔をあけた状態で間欠的に巻回されるので、ロール体12の巻回直径を増大させて膨らませることはない。この際、シート材13の巻回により次第に径大化するロール体12の直径に対して、突片部33の所定間隔の距離を算出して設定することにより、図示のように、複数の突片部33がロール体12の径方向に重ならず配置されるように構成することが好ましい。これにより、内周側の駒部材34と外周側の駒部材34を干渉させない状態として巻き取ることが可能になる。
【0055】
このように構成した係止部31に対して、縦フレーム8の係止レール32は、
図10及び
図11に示すように、縦フレーム8の内部に設けられた小フレーム23により構成されており、前記駒部材34を移動自在に挿入させる挿入路35と、前記走行通路26と挿入路35を連通させるスリット36を形成している。従って、シート材13の両側縁部は、端縁部13aを走行通路26に挿入した状態で、突片部33をスリット36に挿通させることにより、駒部材34を挿入路35に移動自在に内装させられる。
【0056】
図4(C)に示すように、ロール体12は、シート材13を巻き取った状態で、端縁部13aを含んでシート材13を連続的に巻回し、駒部材34と共に突片部33を間欠的に巻回している。そこで、ロール体12から、上述のように、操作バー20を引き下げることにより、シート材13を繰り出したとき、それに伴い、突片部33及び駒部材34が間欠的に繰り出され、縦フレーム8の先端から挿入路35に進入させられる。このため、縦フレーム8の先端部には、
図10に示すように、駒部材34を挿入路35に導くためのガイド手段37が設けられている。
【0057】
ガイド手段37は、
図7及び
図8に示すように、挿入路35に向けて傾斜するV形となるように対向配置された一対のガイド板37aにより形成され、前記係着金具11に固着されている。従って、上述のように係着金具11を縦フレーム8の先端部に取付固定したとき、ガイド手段37が挿入路35に正しく位置決めされた状態で設置されるように構成されている。
【0058】
(作用)
上記の実施形態に係る落下物受取装置4によれば、シート材13がロール体12に巻き取られた状態で、作業者が操作バー20を把持して縦フレーム8の基端部に向けて引き下げると、ロール体12からシート材13が繰り出され、シート材13により開口部15が閉鎖される。これにより、落下物受取装置4は、高所から落下する落下物を受け取ることができ、本来の目的を達成する。操作バー20を引き下げたとき、保持バー18のローラ19が縦フレーム8の内部で走行通路26に案内されながら走行し、保持バー18に固着されたシート材13の繰り出し先端縁部を好適に牽引するので、作業を容易に行うことができる。繰り出されるシート材13は、端縁部13aを走行通路26の内部に繰り出され、突片部33をスリット36に挿通させた状態で、駒部材34を挿入路35に沿って移動させる。
【0059】
操作バー20の閉止部27は、受入部29に臨まされた状態で、操作バー20を下向きに押動すると、旋回アーム21が保持バー18の外周方向に旋回することにより、閉止部27を受入部29に嵌入させられる。
【0060】
この際、受入部29を開閉自在に閉鎖するロック蓋を設け、閉止部27が不慮に受入部29から脱出しないようにロックするように構成しても良い。
【0061】
上述のとおり、ロール体12から繰り出されるシート材13は、端縁部13aを縦フレーム8の走行通路26に内挿すると共に、突片部33をスリット36に挿通しており、駒部材34を挿入路35の内部に保持されている。即ち、駒部材34により構成された係止部31と、挿入路35により構成された係止レール32により、シート材13の端縁部13aと縦フレーム8を相互に係止する係止機構30が構成されており、端縁部13aが前記走行通路26から脱出することを阻止している。
【0062】
このため、高所から落下物がシート材13に衝突したとき、シート材13は、両側縁部が縦フレーム8、8に対して堅固な接続状態を保持しており、縦フレーム8から離脱することはないので、これにより、衝撃に耐え、落下物を好適に受け止める。
【0063】
ところで、係止機構30は、図示実施形態の場合、係止部31が駒部材34により構成され、係止レール32が小フレーム23の挿入路35により構成されているが、このような構成に限らず、種々の設計変更が可能である。例えば、縦フレーム8の内部に外側壁8cに臨む軌条を設けることにより係止レール32を形成し、シート材13の端縁部13aからJ形の金具で形成された突片部33を介して前記軌条に嵌合状態で転動する車輪を設けることにより係止部31を形成することも可能である。従って、係止機構30は、要するに、係止部31が係止レール32に沿って移動可能に搭載され、係止部31が係止レール32から開口部15に向けて脱出しないように係止する構成とされたものであれば良く、そのための具体的な構成は問わない。
【0064】
ところで、天候悪化等により、強風が予想される場合は、シート材13をロール体12に巻き取り、開口部15a開放させることにより、落下物受取装置4を全体的に枠組みだけの風通しが良い状態とすることができ、これにより、強風で煽られることを防止することが可能となる。
【0065】
ロール体12によりシート材13を巻き取るための構成は、図示省略しているが、上述のように、ロール体12の内部に巻き取り方向に付勢力を作用するスプリングを備えた自動巻取り手段を設けておけば、操作バー20の閉止部27を受入部29から離脱させたとき、スプリングによりロール体12の巻取り芯材が駆動回転され、シート材13を自動的に巻き取るように構成することが可能になる。
【0066】
或いは、ロール体12の巻取り芯材の両端部の回転軸にハンドルを設け、手動でハンドルを回転することにより、シート材13をロール体12に巻き取るように構成しても良い。この場合は、巻取り芯材の回転軸12bの軸端部を軸支金具16から突出させ、クランク形式のハンドルを係脱自在に係止して手動回転させるように構成することが好ましい。
【0067】
ロール体12に巻き取られたシート材13は、外周面と内周面を重ねて接触させながら連続して巻回され、次第に巻回直径を増大する。この際、係止機構30の係止部31を構成する駒部材34は、ロール体12の軸方向に突出する突片部33により、ロール体12の軸端よりも外部に位置した状態で、間欠的に巻回されるので、ロール体12の巻回直径を大きく膨らませることはない。この際、複数の突片部33は、ロール体12の径方向に重ならないように構成され、これにより、内周側の突片部33と外周側の突片部33が相互に干渉することはなく、納まりの良い巻回状態が得られる。そして、このように、突片部33及び駒部材34を間欠的に移動させる構成としているので、巻き取り及び繰り出しのために大きな力が必要とされることもない。
【符号の説明】
【0068】
1 足場構築体
2 支柱
3 足場板
4 落下物受取装置
5 枠体
6 閉鎖手段
7 支持ブラケット
7a 下側の支持ブラケット
8 縦フレーム
8a 第1側壁
8b 第2側壁
8c 外側壁
8d 膨出部
9 横フレーム
9a 庇部
9b 取付壁
10 アーム
11 係着金具
11a 係着孔
12 ロール体
12a 軸部材
12b 回転軸
13 シート材
13a 端縁部
14 ロールユニット
15 開口部
16 軸支金具
16a 軸支孔
17 差込金具
17a 差込部
17b ロック孔
18 保持バー
19 ローラ
20 操作バー
21 旋回アーム
22 切欠き部(縦フレーム)
23 小フレーム
24 結合金具
24a ロックピン
25 縦フレームユニット
26 走行通路
27 閉止部
28 枢支金具
29 受入部
30 係止機構
31 係止部
32 係止レール
33 突片部
34 駒部材
34a 駒片
35 挿入路
36 スリット
37 ガイド手段
37a ガイド板