(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042307
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】ヘッドホン
(51)【国際特許分類】
H04R 1/10 20060101AFI20240321BHJP
【FI】
H04R1/10 103
H04R1/10 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146922
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】小林 力
【テーマコード(参考)】
5D005
【Fターム(参考)】
5D005BD02
5D005BD09
5D005BD13
(57)【要約】
【課題】メンテナンスを容易に行うことが可能であり、また、部品点数を少なく抑えることが可能であり、さらに、スピーカの位置調整を容易に行うこともできるヘッドホンを提供する。
【解決手段】ヘッドホンは、両端部に帯板状のガイド部20を有する外弧形状のヘッドバンド3と、ヘッドバンド3の両端部を構成するガイド部20の先端にそれぞれ接続された一対のスピーカと、両端部にガイド部20を挿通させるスライダ40を有する内弧形状のヘッドパッド4と、を備える。スライダ40は、ガイド部20を挿通させる挿通孔411と、挿通孔411に挿通されたガイド部20が摺動する壁面412と、ガイド部20を壁面412に向けて押し付ける押付部42と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端部に帯板状のガイド部を有する外弧形状のヘッドバンドと、
前記ヘッドバンドの両端部を構成する前記ガイド部の先端にそれぞれ接続された一対のスピーカと、
両端部に前記ガイド部を挿通させるスライダを有する内弧形状のヘッドパッドと、
を備え、
前記スライダは、前記ガイド部を挿通させる挿通孔と、前記挿通孔に挿通された前記ガイド部が摺動する壁面と、前記ガイド部を前記壁面に向けて押し付ける押付部と、を有するヘッドホン。
【請求項2】
前記スライダは、前記挿通孔を有するスライダ本体と、前記スライダ本体と別個に形成されて前記スライダ本体に取り付けられる前記押付部と、を有する請求項1に記載のヘッドホン。
【請求項3】
前記押付部は、弾性変形可能な弾性部材を含む請求項2に記載のヘッドホン。
【請求項4】
前記押付部は、前記弾性部材の弾性力によって前記ガイド部に押し当てられる当接部材を有する請求項3に記載のヘッドホン。
【請求項5】
前記弾性部材及び前記当接部材の形状が、互いに異なっている請求項4に記載のヘッドホン。
【請求項6】
前記スライダは、前記押付部が前記ガイド部を押す力を調整する押付調整部を有する請求項2から請求項5のいずれか一項に記載のヘッドホン。
【請求項7】
前記スライダ本体は、当該スライダ本体の外面から内面まで貫通する挿入孔を有し、
前記押付部は、前記挿入孔に挿入され、
前記押付調整部は、前記外面側から前記挿入孔に挿入されることで、前記押付部を前記挿通孔側に向けて所定の長さだけ押し込む押込み部を有する請求項6に記載のヘッドホン。
【請求項8】
前記ガイド部は、湾曲しており、
前記押付部は、湾曲した前記ガイド部の外側から前記ガイド部を前記壁面に向けて押し付ける請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のヘッドホン。
【請求項9】
前記スライダは、前記挿通孔を含むスライダ本体を有し、
前記壁面は、前記挿通孔の内面によって構成されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のヘッドホン。
【請求項10】
前記スライダは、前記挿通孔を含むスライダ本体を有し、
前記壁面は、前記スライダ本体の内部に配置された別の部材によって構成されている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のヘッドホン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドホンに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、一対のスピーカをヘッドバンドで連結したヘッドホンが開示されている。特許文献1のヘッドホンは、各スピーカに設けられてヘッドバンドに対して摺動可能とされたスライダと、ヘッドバンドに設けられてスライダを摺動可能に保持するスライダ保持部と、を有する。スライダには、当該スライダをスライダ保持部に対して摺動させるためのスリットが形成されている。スライダ保持部は、スライダを挟み込む一対の板ばね部材、スライダのスリットに挿通される挿通部材、及び、これらを保持するための固定部材を有する。特許文献1のヘッドホンでは、スピーカ側のスライダをヘッドバンド及びスライダ保持部に対して摺動させることで、スピーカとヘッドバンドとの相対的な位置関係を調整することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のヘッドホンでは、スピーカをヘッドバンドに対して摺動可能に保持するための構造(スライダのスリット及びスライダ保持部)が、スピーカ及びヘッドバンドの両方に設けられている。また、スライダ保持部の構成が複雑である。このため、ヘッドホンのメンテナンス、特に、スピーカとヘッドバンドとの相対的な位置関係を調整するためのヘッドホンの調整構造のメンテナンスが面倒である。例えば、ヘッドホンの調整構造のメンテナンスを行うためには、スライダ保持部をヘッドバンドから取り外すためにスライダ保持部を分解する必要があるため、メンテナンスが面倒である。
【0005】
また、特許文献1のヘッドホンでは、スピーカをヘッドバンドに対して摺動可能に保持するための構造が、スピーカ及びヘッドバンドの両方に設けられているため、当該構造に必要な部品点数が多くなってしまう。ヘッドホンの構成部品点数が多いと、ヘッドホンを安価に製造することが難しい、ヘッドホンの組立が面倒である、といった問題が生じる。
また、特許文献1のヘッドホンでは、スライダ保持部が複数箇所でスライダを保持する構造となっている。このため、スライダをスライダ保持部の強い力で保持することができるが、スライダをスライダ保持部に対して動かしたときには、スライダ保持部によってスライダを保持する力が急変して引っ掛かりが生じてしまう。このことから、スピーカの位置を調整する際に、スライダが取り付けられたスピーカをヘッドバンドに対して滑らかに動かすことができない。すなわち、スピーカの位置調整が面倒である、という問題もある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、メンテナンスを容易に行うことが可能であり、また、部品点数を少なく抑えることが可能であり、さらに、スピーカの位置調整を容易に行うこともできるヘッドホンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第一の態様は、両端部に帯板状のガイド部を有する外弧形状のヘッドバンドと、前記ヘッドバンドの両端部を構成する前記ガイド部の先端にそれぞれ接続された一対のスピーカと、両端部に前記ガイド部を挿通させるスライダを有する内弧形状のヘッドパッドと、を備え、前記スライダは、前記ガイド部を挿通させる挿通孔と、前記挿通孔に挿通された前記ガイド部が摺動する壁面と、前記ガイド部を前記壁面に向けて押し付ける押付部と、を有するヘッドホンである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、メンテナンスを容易に行うことが可能であり、また、部品点数を少なく抑えることが可能であり、さらに、スピーカの位置調整を容易に行うこともできるヘッドホンを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係るヘッドホンを示す斜視図である。
【
図2】
図1のヘッドホンの要部を示す断面図である。
【
図3】
図2の領域IIIを拡大して示す断面図である。
【
図4】
図2,3において、ガイド部とスライダとの関係を模式的に示す図である。
【
図5】
図1~3のヘッドホンにおいて、ガイド部からガイド保持部を取り外した状態を示す斜視図である。
【
図6】
図5の構成において、スライダの一部を分解した分解斜視図である。
【
図7】
図5の構成において、スライダの一部を分解し、かつ、ガイド部をスライダ本体から抜き出した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、
図1~7を参照して本発明の一実施形態について説明する。
図1に示すように、本実施形態のヘッドホン1は、一対のスピーカ2と、外弧形状のヘッドバンド3と、内弧形状のヘッドパッド4と、を備える。
【0011】
一対のスピーカ2は、それぞれドライバーユニット(不図示)と、ハウジング11と、を有する。ドライバーユニットは、入力信号に応じて振動板が振動することで音を放射するように構成されている。ハウジング11は、ドライバーユニットを収容する。
【0012】
ヘッドバンド3は、その長手方向において湾曲し、円弧状の外観を有する。ヘッドバンド3は、ガイド部20と、ガイド保持部30と、を有する。
ガイド部20は、ヘッドバンド3の両端部に構成し、それぞれヘッドバンド3の長手方向に延びる帯板状に形成されている。
図2、
図5に示すように、各ガイド部20は、その長手方向において湾曲するように形成されている。ガイド部20は、ヘッドバンド3と同じ向きに湾曲している。ガイド部20は、ヘッドバンド3に一体に形成されている。ガイド部20を含むヘッドバンド3は、弾性的に撓み変形可能である。
【0013】
ガイド保持部30は、ガイド部20と同様にヘッドバンド3の両端部に位置し、各ガイド部20に取り付けられる。
図2に示すように、各ガイド保持部30は、ガイド部20の撓み変形を抑制又は防止するように、ガイド部20の長手方向の両端を保持する。また、ガイド保持部30は、ガイド部20及び後述するスライダ40の一部を覆うように形成されている。
【0014】
図2,5に示すように、ガイド保持部30は、ガイド部20をその板厚方向から挟む内側部材31及び外側部材32を有する。内側部材31は湾曲したガイド部20の内側に配置され、外側部材32は湾曲したガイド部20の外側に配置される。内側部材31及び外側部材32には、それぞれガイド部20の長手方向に延びるスリット311,321が形成されている。スリット311,321には、後述するスライダ40が挿通される。
【0015】
図1に示すように、ガイド保持部30は、スピーカ2を取り付けるための取付部33を有する。取付部33は、ガイド保持部30のうちガイド部20の長手方向の先端に対応する部分(ガイド保持部30の先端部)に一体に形成されている。スピーカ2は、当該スピーカ2を揺動可能に支持するハンガー5を介して取付部33に取り付けられている。なお、スピーカ2は、例えば取付部33に直接取り付けられてもよい。スピーカ2がガイド保持部30に取り付けられることで、スピーカ2がガイド部20の先端に間接的に接続される。
【0016】
ヘッドパッド4は、ヘッドバンド3と同様に概ね円弧状の外観を有し、ヘッドバンド3の内側に配置される。ヘッドパッド4は、例えば可撓性を有してもよいし、ヘッドバンド3と同様に、弾性的に撓み変形可能であってもよい。ヘッドパッド4は、その長手方向の両端部にガイド部20を挿通させるスライダ40を有する。
【0017】
図2~
図4に示すように、各スライダ40は、挿通孔411と、壁面412と、押付部42と、を有する。挿通孔411は、ガイド部20を挿通させる孔である。壁面412は、挿通孔411に挿通されたガイド部20が摺動する面(摺動面)である。押付部42は、挿通孔411に挿通されたガイド部20を壁面412に向けて押し付ける。以下、本実施形態のスライダ40について、具体的に説明する。
【0018】
図3、
図4、
図6、
図7に示すように、本実施形態のスライダ40は、スライダ本体41と、押付部42と、押付調整部43と、を有する。
スライダ本体41は、前述した挿通孔411を有する。本実施形態の挿通孔411は、ガイド部20の挿通方向においてスライダ本体41の一端から他端まで連続して形成されている。このため、前述したスライダ40の壁面412は、挿通孔411の内面によって構成されている。また、本実施形態の挿通孔411は、直線状に延びている。なお、挿通孔411は、例えばガイド部20と同様に湾曲していてもよい。
【0019】
スライダ本体41は、押付部42が挿入される挿入孔413をさらに有する。挿入孔413は、少なくとも挿通孔411の内面に開口していればよい。本実施形態において、挿入孔413は、スライダ本体41の外面から内面まで貫通している。
図6において、挿入孔413の貫通方向から見た挿入孔413の平面視形状は、矩形状となっている。なお、挿入孔413の平面視形状は、例えば円形状など任意であってよい。
【0020】
押付部42は、スライダ本体41と別個に形成され、スライダ本体41に取り付けられる。具体的に、押付部42は、前述したスライダ本体41の挿入孔413に挿入される。本実施形態の押付部42は、弾性部材421と、当接部材422と、を含む。
【0021】
弾性部材421は、弾性変形可能な部材である。本実施形態の弾性部材421は、シリコンゴムである。なお、弾性部材421は、その他のゴム、あるいは、ばね(例えばスプリングコイル)であってもよい。本実施形態の押付部42は、この弾性部材421の弾性力を利用してガイド部20をスライダ本体41の壁面412方向に押し付ける。
当接部材422は、弾性部材421の弾性力によってガイド部20に押し当てられる部材である。本実施形態の当接部材422は、弾性部材421よりも弾性率が高い部材、すなわち弾性部材421よりも硬い部材である。当接部材422は、例えばPOM(ポリアセタール)であってよいが、これに限られない。
これら弾性部材421と当接部材422とは、スライダ本体41の挿入孔413に挿入された状態で、スライダ本体41の外面側からスライダ本体41の挿入孔413に順番に並ぶ。
【0022】
弾性部材421及び当接部材422の形状は、互いに異なっている。具体的に、弾性部材421と当接部材422とでは、弾性部材421が弾性的に変形していない状態で挿入孔413の貫通方向における長さが異なっている。挿入孔413の貫通方向から見た弾性部材421及び当接部材422の形状は、同じ形状であり、挿入孔413の平面視形状に対応する大きさの矩形状である。これにより、弾性部材421及び当接部材422が、挿入孔413に挿入された状態で挿入孔413の貫通方向を軸として回転することを防止できる。
【0023】
本実施形態の押付部42は、湾曲したガイド部20の外側からガイド部20をスライダ本体41の壁面412に向けて押し付ける。このため、押付部42によってガイド部20が押し付けられるスライダ本体41の壁面412は、湾曲したガイド部20の内側に接するかたちで位置する。
【0024】
図7に示すように、押付調整部43は、押付部42がスライダ本体41の挿通孔411に挿通されたガイド部20を押す力を調整する。本実施形態の押付調整部43は、押込み部431を有する。押込み部431は、スライダ本体41の外面側から挿入孔413に挿入される。これにより、押込み部431は、挿入孔413に挿入された押付部42を挿通孔411側に向けて所定の長さだけ押し込む。
【0025】
押付調整部43は、蓋部432をさらに有する。蓋部432は、挿入孔413が開口するスライダ本体41の外面に重ねて配置され、挿入孔413の開口を覆う。蓋部432には、前述した押込み部431が一体に形成されている。なお、押込み部431は、例えば蓋部432と別個に形成され、蓋部432に固定されてもよい。蓋部432が挿入孔413の開口を覆うことで、押込み部431が挿入孔413に挿入される。蓋部432は、挿入孔413の開口を覆った状態で、固定用ねじ433によってスライダ本体41に固定される。蓋部432には、当該蓋部432をスライダ本体41に固定した固定用ねじ433を隠すための目隠し板44が取り付けられる。スライダ本体41に固定された蓋部432及びこれに取り付けられた目隠し板44は、挿入孔413の貫通方向から見てスライダ本体41の縁の外側に張り出す。これら蓋部432及び目隠し板44は、ヘッドホン1の利用者がスライダ40をガイド部20に対してその長手方向に移動させるための操作部として機能する。
【0026】
以上のように構成される本実施形態の押付調整部43では、スライダ本体41の挿入孔413に挿入される押込み部431の長さを調整することで、挿入孔413に挿入された押付部42を挿通孔411側に向けて押し込む長さを調整することができる。これにより、押付部42がガイド部20を押す力を押付調整部43によって調整することができる。なお、挿入孔413に挿入される押込み部431の長さの調整は、蓋部432から突出する押込み部431の長さを調整することで行われてよい。
【0027】
図1に示すように、スライダ40は、ヘッドパッド4の両端部に取り付けられている。以下、ヘッドパッド4に対するスライダ40の取付構造について説明する。
図3、
図7に示すように、スライダ40は、ヘッドパッド4の端部を保持するヘッドパッド保持部45を有する。ヘッドパッド保持部45は、スライダ本体41に設けられた挿通突起451と、挿通突起451の先端に取り付けられる抜け止め部材452と、を有する。
【0028】
挿通突起451は、スライダ本体41のうち挿通孔411に挿通されるガイド部20の内側に位置する。挿通突起451は、ヘッドパッド4の端部に形成された孔49に挿通される。図示例において、スライダ本体41の挿通突起451、及び、これに対応するヘッドパッド4の孔49の数は、2つであるが、これに限ることはない。
抜け止め部材452は、挿通突起451の先端に取り付けられることで、ヘッドパッド4の端部が挿通突起451から抜けることを防ぐ。抜け止め部材452は、固定用ねじ453によってスライダ本体41に固定される。スライダ本体41の挿通突起451をヘッドパッド4の端部の孔49に挿通させ、抜け止め部材452を挿通突起451の先端に固定することで、ヘッドパッド4の端部がガイド部20の内側においてスライダ40に保持される。
【0029】
図2、
図3に示すように、本実施形態のスライダ40では、スライダ本体41のうち湾曲したガイド部20の外側に位置する部位が、ガイド保持部30の外側部材32のスリット321に挿通されて、ガイド保持部30の外側に突出する。そして、スライダ40の操作部として機能する押付調整部43の蓋部432及び目隠し板44が、外側部材32の外側に位置する。一方、スライダ本体41のうち湾曲したガイド部20の内側に位置する部位が、ガイド保持部30の内側部材31のスリット311に挿通されて、ガイド保持部30の外側に突出する。そして、スライダ40のヘッドパッド保持部45が、内側部材31の外側に位置する。
【0030】
以上のように構成される本実施形態のヘッドホン1では、ヘッドバンド3のガイド部20がヘッドパッド4のスライダ40の挿通孔411に挿通されていることで、スライダ40をガイド部20の長手方向に摺動させることができる。スライダ40をガイド部20に対して摺動させることで、一対のスピーカ2とヘッドパッド4との相対的な位置関係が変化する。一対のスピーカ2とヘッドパッド4との相対的な位置関係を適宜調整することで、ヘッドパッド4を利用者の頭部に沿うように配置させると同時に、一対のスピーカ2を利用者の両耳に対応する位置に配置することができる。
【0031】
また、ガイド部20は、スライダ40の押付部42によってスライダ40の壁面412に向けて押し付けられることで、スライダ40の押付部42と壁面412との間に挟まれる。これにより、スライダ40をガイド部20の長手方向の所定位置に保持することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態のヘッドホン1では、スライダ40をガイド部20に対して摺動させたり保持させたりするための構造、すなわち挿通孔411及び押付部42が、いずれもスライダ40に設けられ、ガイド部20には設けられていない。すなわち、スライダ40をガイド部20に対して摺動させたり保持させたりするための構造がスライダ40に集約されている。このため、スライダ40を分解することなくガイド部20から取り外すことができる。これにより、ヘッドホン1、特にスピーカ2とヘッドパッド4との相対的な位置関係を適宜調整するためのヘッドホン1の調整構造のメンテナンスを容易に行うことができる。
【0033】
また、本実施形態のヘッドホン1では、スライダ40をガイド部20に対して摺動させたり保持させたりするための構造がスライダ40に集約されていることで、当該構造に必要な部品点数を少なくすることができる。また、ヘッドホン1を安価に製造することができる。さらに、ヘッドホン1を容易に組み立てることが可能となる。
【0034】
また、本実施形態のヘッドホン1では、スライダ40の押付部42がガイド部20を1つの箇所で押し付ける、すなわち、スライダ40が1つの箇所でガイド部20に保持される。このため、スライダ40をガイド部20に対して動かしても、押付部42がガイド部20を押す力(すなわちスライダ40を保持する力)が急変することを抑制できる。このことから、一対のスピーカ2とヘッドパッド4との相対的な位置関係を調整する際に、スライダ40をガイド部20に対して滑らかに動かすことができ、スライダ40を動かす摺動感が軽い。したがって、スピーカ2の位置調整を容易に行うことができる。
また、本実施形態のヘッドホン1では、スライダ40の押付部42がガイド部20を押し付けることで、スライダ40がガイド部20に保持される。このため、利用者がヘッドホン1を装着した状態で、スライダ40がガイド部20に対して移動し難い、という利点もある。
【0035】
また、本実施形態のヘッドホン1のスライダ40においては、ガイド部20をスライダ40の壁面412に押し付ける押付部42が、ガイド部20を挿通させるスライダ本体41と別個に形成され、当該スライダ40に取り付けられている。このため、スライダ40をガイド部20に対して摺動することで、押付部42がガイド部20に対して擦れて摩耗してしまっても、スライダ40のうち押付部42だけを交換すればよい。これにより、スライダ40全体を交換する場合と比較して、ヘッドホン1のメンテナンス費用を安価に抑えることができる。
【0036】
また、本実施形態のヘッドホン1では、スライダ40の押付部42が弾性変形可能な弾性部材421を含む。これにより、押付部42の弾性部材421の弾性力を利用して、ガイド部20をスライダ本体41の壁面412に押し付けることができる。
【0037】
さらに、本実施形態のヘッドホン1では、押付部42が、弾性部材421の弾性力によってガイド部20に押し当てられる当接部材422をさらに有する。このため、当接部材422として、弾性部材421よりも硬い部材を採用することができる。これにより、弾性部材421がガイド部20に押し当てられる場合と比較して、スライダ40がガイド部20に対して摺動することで押付部42がガイド部20に対して擦れても、押付部42の摩耗を効果的に抑制することができる。したがって、ヘッドホン1のメンテナンスを行う頻度を少なくすることができる。
また、当接部材422をガイド部20に押し当てる場合には、弾性部材421をガイド部20に押し当てる場合と比較して、押付部42がガイド部20に接触した痕跡(接触跡)が残り難い、という利点もある。
【0038】
また、本実施形態のヘッドホン1では、弾性部材421及び当接部材422の形状が互いに異なっている。これにより、押付部42をスライダ本体41に取り付ける際に、弾性部材421及び当接部材422のサイズや色が同等であっても、スライダ本体41に対する弾性部材421及び当接部材422の取付位置に誤りが生じることを防止できる。すなわち、スライダ40が誤って組み立てられることを抑制することができる。
【0039】
また、本実施形態のヘッドホン1において、スライダ40は、押付部42がガイド部20を押す力を調整する押付調整部43を有する。このため、押付調整部43によって押付部42がガイド部20を押す力を適切に調整することができる。これにより、スライダ40をガイド部20の長手方向の所定位置に保持しつつ、スライダ40をガイド部20の長手方向に摺動させることができる。
【0040】
また、本実施形態のヘッドホン1において、スライダ本体41は、スライダ本体41の外面から内面まで貫通し、押付部42が挿入される挿入孔413を有する。押付調整部43は、スライダ本体41の外面側から挿入孔413に挿入されることで、押付部42を挿通孔411側に向けて所定の長さだけ押し込む押込み部431を有する。押込み部431によって押付部42を挿通孔411側に向けて押し込む長さを調整することで、押付部42がガイド部20を押す力を調整することができる。
【0041】
また、本実施形態のヘッドホン1では、ガイド部20がヘッドバンド3の外弧形状に対応するように湾曲している。このため、利用者がヘッドホン1を装着した際に、一対のスピーカ2を利用者の両耳に当てた状態で、ヘッドバンド3(あるいはガイド保持部30)と利用者の頭部との隙間を小さくすることができる。これにより、利用者はヘッドホン1をより安定した状態で装着することができる。
【0042】
さらに、本実施形態のヘッドホン1では、スライダ40の押付部42が、湾曲したガイド部20の外側からガイド部20をスライダ40の壁面412に向けて押し付ける。このため、湾曲したガイド部20の曲率が、当該ガイド部20の長手方向において一定ではなく変化していても、ガイド部20をスライダ40の押付部42と壁面412との間に挟む力が、ガイド部20の長手方向の位置に応じて変化することを効果的に抑制できる。以下、この点について説明する。
【0043】
図4に示すように、湾曲したガイド部20は、当該ガイド部20の外側においてスライダ40の押付部42によって押し付けられる1つの押付点P1と、湾曲したガイド部20の内側においてガイド部20の長手方向におけるスライダ40の壁面412の両端に位置する2つの支持点P2と、の間で挟まれる。このようなガイド部20の挟み込みの態様は、ガイド部20の曲率が変化しても変わらない。これにより、ガイド部20の長手方向においてガイド部20に対するスライダ40の位置が変化しても、ガイド部20をスライダ40の押付部42と壁面412との間に挟む力が変化することを抑制できる。
【0044】
ガイド部20を押付部42と壁面412との間に挟む力が変化することを抑制できることで、スライダ40をガイド部20の長手方向に摺動させるために要する力が、ガイド部20の長手方向の位置に応じて変化すること(例えば急変すること)を抑制できる。このことから、一対のスピーカ2とヘッドパッド4との相対的な位置関係を調整する際に、スライダ40をガイド部20に対して滑らかに動かすことができ、スライダ40を動かす摺動感が軽い。したがって、ヘッドホン1の利用者は、一対のスピーカ2とヘッドパッド4との相対的な位置関係を容易に調整することができる。
また、ガイド部20を押付部42と壁面412との間に挟む力が、ガイド部20の長手方向の位置に応じて変化することを抑制できることで、スライダ40をガイド部20に保持させる力がガイド部20の長手方向の位置に応じて変化することも抑制できる。したがって、ガイド部20におけるスライダ40の位置に関わらず、利用者がヘッドホン1を装着した状態では、スライダ40がガイド部20に対して移動し難い、という利点もある。
【0045】
また、本実施形態のヘッドホン1では、押付部42によってガイド部20が押しつけられるスライダ40の壁面412が、スライダ本体41の挿通孔411の内面によって構成されている。このため、スライダ40の壁面412がスライダ本体41とは別の部材によって構成される場合と比較して、スライダ40の容易かつ安価に製造することができる。また、スライダ40の壁面412がスライダ本体41とは別の部材によって構成される場合と比較して、ガイド部20をスライダ40の挿通孔411に容易に挿通させて、スライダ40に簡単に取り付けることができる。
【0046】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0047】
本発明において、押付調整部43は、例えば押付部42を含んでもよい。例えば、挿入孔413に挿入される押付部42の長さ(例えば弾性部材421及び/又は当接部材422の長さ)を調整することで、押付部42がスライダ本体41の挿通孔411に挿通されたガイド部20を押す力を調整することができる。
【0048】
本発明において、押付部42は、例えば弾性部材421のみを備えてもよい。この場合には、押付部42の弾性部材421がガイド部20に押し当てられる。
また、押付部42は、例えば当接部材422のみを備えてもよい。
【0049】
本発明において、押付部42は、例えばスライダ本体41に一体に形成され、スライダ本体41の内面(例えば挿通孔411の内面)から突出する突起であってもよい。
【0050】
本発明において、ヘッドバンド3は、例えばガイド保持部30を備えなくてもよい。この場合、スピーカ2は、例えばヘッドバンド3のガイド部20の先端に直接取り付けられてもよい。
【0051】
本発明において、スライダ本体41の挿通孔411は、例えば、ガイド部20の挿通方向におけるスライダ本体41の一端及び他端のみに形成され、スライダ本体41の内部は空洞となっていてもよい。この場合、スライダ本体41の内部においてガイド部20が摺動するスライダ40の壁面412は、例えばスライダ本体41の内部に配置された別の部材によって構成されてよい。
スライダ40の壁面412がスライダ本体41の内部に配置された別の部材によって構成される場合、スライダ40の壁面412はガイド部20に対して摺動することで、壁面412がガイド部20に対して擦れて摩耗してしまっても、スライダ40のうち壁面412を含む別部材だけを交換すればよい。これにより、スライダ40全体を交換する場合と比較して、ヘッドホンのメンテナンス費用を安価に抑えることができる。
【符号の説明】
【0052】
1…ヘッドホン、2…スピーカ、3…ヘッドバンド、4…ヘッドパッド、20…ガイド部、40…スライダ、41…スライダ本体、42…押付部、43…押付調整部、411…挿通孔、412…壁面、413…挿入孔、421…弾性部材、422…当接部材、431…押込み部