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特開2024-42308電子部品加工用保護フィルムおよび電子部品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042308
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】電子部品加工用保護フィルムおよび電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240321BHJP
   B28D 7/04 20060101ALI20240321BHJP
   B28D 5/00 20060101ALI20240321BHJP
   C09J 7/38 20180101ALI20240321BHJP
【FI】
H01L21/78 M
H01L21/78 V
B28D7/04
B28D5/00 A
C09J7/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146927
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】櫻山 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】内田 寛明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】村上 由夏
(72)【発明者】
【氏名】降旗 渉
【テーマコード(参考)】
3C069
4J004
5F063
【Fターム(参考)】
3C069AA03
3C069BA02
3C069CA05
3C069CB01
3C069EA04
4J004AA10
4J004AA14
4J004AB01
4J004BA02
4J004CA05
4J004CA06
4J004CB03
4J004CC02
4J004DB02
4J004FA05
5F063AA02
5F063AA18
5F063CB06
5F063CB10
5F063CB28
5F063DD25
5F063DD34
5F063DD81
5F063DF12
5F063DF23
5F063DG03
5F063EE81
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電子部品用基板を良好に切断できる電子部品加工用保護フィルム及びその製造方法を提供する。
【解決手段】基材1と、基材の一方の面に配置された粘着層2と、を有し、基材の10%伸長時の荷重が、60N/15mm以下であり、試験により測定されるチップ間距離が、0.3mm以下である、電子部品加工用保護フィルム10の試験方法であって、電子部品加工用保護フィルムを所定の大きさに切り出して試験片を調製し、所定の大きさのシリコンウェハのミラー面に、幅方向のスクライブ線を形成し、試験片の粘着層の面を、シリコンウェハのスクライブ面に貼付し、シリコンウェハおよび試験片を有する積層体を、シリコンウェハが内側になるように、スクライブ線に沿って90°折り曲げて、シリコンウェハを2つのチップ52に分割し、折り曲げた積層体を元の状態に戻し、60秒間静置し2つのチップ間の距離を測定し、チップ間の距離dとする。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材と、前記基材の一方の面に配置された粘着層と、を有する電子部品加工用保護フィルムであって、
前記基材の10%伸長時の荷重が、60N/15mm以下であり、
下記試験により測定されるチップ間距離が、0.3mm以下である、電子部品加工用保護フィルム。
試験:下記工程(1)~(6)を順に有する。
(1)前記電子部品加工用保護フィルムを幅10mm、長さ50mm以上に切り出して試験片を調製する。
(2)厚さ725μm、幅10mm、長さ50mmのシリコンウェハのミラー面に、前記シリコンウェハの幅方向にスクライブ線を形成する。
(3)前記試験片の前記粘着層の面を、前記シリコンウェハのスクライブ面に貼付する。
(4)前記シリコンウェハおよび前記試験片を有する積層体を、前記シリコンウェハが内側、前記試験片が外側になるように、前記スクライブ線に沿って90°折り曲げて分断し、前記シリコンウェハを2つのチップに分割する。
(5)折り曲げた前記積層体を元の状態に戻し、60秒間静置する。
(6)前記2つのチップ間の距離を測定し、チップ間距離とする。
【請求項2】
前記基材が降伏点を有さない、請求項1に記載の電子部品加工用保護フィルム。
【請求項3】
前記粘着層が非シリコーン系粘着剤を含有する、請求項1または請求項2に記載の電子部品加工用保護フィルム。
【請求項4】
スクライブされた電子部品用基板をブレイクする工程において、前記電子部品用基板のスクライブ面に貼付されて使用される、請求項1または請求項2に記載の電子部品加工用保護フィルム。
【請求項5】
電子部品用基板の一方の面にダイシングテープを貼付する第1貼付工程と、
前記電子部品用基板の他方の面をスクライブするスクライブ工程と、
前記電子部品用基板のスクライブ面に、請求項1または請求項2に記載の電子部品加工用保護フィルムを貼付する第2貼付工程と、
前記ダイシングテープおよび前記電子部品加工用保護フィルムが貼付された前記電子部品用基板をブレイクするブレイク工程と、
前記ブレイク工程後、前記電子部品加工用保護フィルムを剥離する剥離工程と、
を有する、電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電子部品加工用保護フィルムおよび電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品用基板を切断して、個々の電子部品に分割する方法としては、例えば、電子部品用基板をスクライブおよびブレイクする方法が知られている。例えば特許文献1には、電子部品用基板を、ダイシングテープと呼ばれる粘着テープに貼り付けて固定した状態で、電子部品用基板をスクライブし、電子部品用基板のスクライブ面とは反対側の面からブレイクバーを押しつけて、電子部品用基板を撓ませることにより、電子部品用基板をブレイクする方法が開示されている。
【0003】
また、特許文献1には、スクライブされた電子部品用基板をブレイクする際、電子部品用基板のスクライブ面を保護するために、保護フィルムを配置することが開示されている。さらに、保護フィルムとして、例えば、樹脂フィルムまたは粘着フィルムを用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-181931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電子部品用基板のスクライブ面に保護フィルムを配置すると、切断不良が生じることがあった。
【0006】
本開示は、上記実情に鑑みてなされたものであり、電子部品用基板を良好に切断できる電子部品加工用保護フィルムを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態は、基材と、上記基材の一方の面に配置された粘着層と、を有し、上記基材の10%伸長時の荷重が、60N/15mm以下であり、下記試験により測定されるチップ間距離が、0.3mm以下である、電子部品加工用保護フィルムを提供する。試験:下記工程(1)~(6)を順に有する。(1)上記電子部品加工用保護フィルムを幅10mm、長さ50mm以上に切り出して試験片を調製する。(2)厚さ725μm、幅10mm、長さ50mmのシリコンウェハのミラー面に、上記シリコンウェハの幅方向にスクライブ線を形成する。(3)上記試験片の上記粘着層の面を、上記シリコンウェハのスクライブ面に貼付する。(4)上記シリコンウェハおよび上記試験片を有する積層体を、上記シリコンウェハが内側、上記試験片が外側になるように、上記スクライブ線に沿って90°折り曲げて分断し、上記シリコンウェハを2つのチップに分割する。(5)折り曲げた上記積層体を元の状態に戻し、60秒間静置する。(6)上記2つのチップ間の距離を測定し、チップ間距離とする。
【0008】
本開示の他の実施形態は、電子部品用基板の一方の面にダイシングテープを貼付する第1貼付工程と、上記電子部品用基板の他方の面をスクライブするスクライブ工程と、上記電子部品用基板のスクライブ面に、上述の電子部品加工用保護フィルムを貼付する第2貼付工程と、上記ダイシングテープおよび上記電子部品加工用保護フィルムが貼付された上記電子部品用基板をブレイクするブレイク工程と、上記ブレイク工程後、上記電子部品加工用保護フィルムを剥離する剥離工程と、を有する、電子部品の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本開示は、電子部品用基板を良好に切断できる電子部品加工用保護フィルムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本開示における電子部品加工用保護フィルムを例示する概略平面図および断面図である。
図2】本開示における電子部品の製造方法を例示する工程図である。
図3】従来の保護フィルムを用いたブレイク工程を例示する概略断面図である。
図4】本開示における電子部品加工用保護フィルムを用いたブレイク工程を例示する工程図である。
図5】本開示における試験を説明するための工程図である。
図6】本開示における試験を説明するための工程図である。
図7】従来の保護フィルムを用いたブレイク工程を例示する工程図である。
図8】本開示における電子部品加工用保護フィルムを用いたブレイク工程を例示する工程図である。
図9】押し込み試験を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
下記に、図面等を参照しながら本開示の実施の形態を説明する。ただし、本開示は多くの異なる態様で実施することが可能であり、下記に例示する実施の形態の記載内容に限定されるべきではない。また、図面は説明をより明確にするため、実際の形態に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表わされる場合があるが、あくまで一例であり、限定して解釈されるべきではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0012】
本明細書において、ある部材の上に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「上に」あるいは「下に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。また、本明細書において、ある部材の面に他の部材を配置する態様を表現するにあたり、単に「面に」と表記する場合、特に断りの無い限りは、ある部材に接するように、直上あるいは直下に他の部材を配置する場合と、ある部材の上方あるいは下方に、さらに別の部材を介して他の部材を配置する場合との両方を含む。
【0013】
また、本明細書において、「フィルム」には、「シート」と呼ばれる部材も含まれる。
【0014】
以下、本開示における電子部品加工用保護フィルムおよび電子部品の製造方法について詳細に説明する。
【0015】
A.電子部品加工用保護フィルム
本開示の発明者らは、電子部品用基板のスクライブ面に配置される保護フィルムについて、鋭意検討を行い、保護フィルムによっては、スクライブされた電子部品用基板をブレイクする際に、切断不良が生じることが判明した。そして、切断不良の主な要因は、保護フィルムの延伸性および復元性であることを見出した。さらに、延伸性および復元性が良好な保護フィルムを用いることにより、電子部品用基板を良好に切断できることを知見した。本開示は、上記知見に基づくものである。
【0016】
本開示における電子部品加工用保護フィルムは、基材と、上記基材の一方の面に配置された粘着層と、を有し、上記基材の10%伸長時の荷重が、60N/15mm以下であり、下記試験により測定されるチップ間距離が、0.3mm以下である。試験:下記工程(1)~(6)を順に有する。(1)上記電子部品加工用保護フィルムを幅10mm、長さ50mm以上に切り出して試験片を調製する。(2)厚さ725μm、幅10mm、長さ50mmのシリコンウェハのミラー面に、上記シリコンウェハの幅方向にスクライブ線を形成する。(3)上記試験片の上記粘着層の面を、上記シリコンウェハのスクライブ面に貼付する。(4)上記シリコンウェハおよび上記試験片を有する積層体を、上記シリコンウェハが内側、上記試験片が外側になるように、上記スクライブ線に沿って90°折り曲げて分断し、上記シリコンウェハを2つのチップに分割する。(5)折り曲げた上記積層体を元の状態に戻し、60秒間静置する。(6)上記2つのチップ間の距離を測定し、チップ間距離とする。
【0017】
図1は、本開示における電子部品加工用保護フィルムの一例を示す概略断面図である。図1に例示するように、電子部品加工用保護フィルム10は、基材1と、基材1の一方の面に配置された粘着層2とを有する。基材1の10%伸長時の荷重は、所定の値以下である。また、電子部品加工用保護フィルム10においては、上記試験により測定されるチップ間距離が、所定の値以下である。
【0018】
図2(a)~(g)は、本開示における電子部品加工用保護フィルムを用いた電子部品の製造方法の一例を示す工程図である。まず、図2(a)に示すように、リングフレーム31に、基材21および粘着層22を有するダイシングテープ20の粘着層22の面を貼り付ける。続いて、図2(b)に示すように、リングフレーム31に固定されたダイシングテープ20の粘着層22の面を、電子部品用基板32の一方の面に貼り付ける。次いで、図2(c)に示すように、ダイシングテープ20に固定された電子部品用基板32の他方の面をスクライブして、スクライブ線33を形成する。次に、図2(d)に示すように、電子部品用基板32のスクライブ面S1に、電子部品加工用保護フィルム10の粘着層2の面を貼り付ける。次に、図2(e)~(f)に示すように、スクライブされた電子部品用基板32をブレイクする。この際、例えば、電子部品用基板32の下面に一対の受刃41を配置し、電子部品用基板32をブレイクバー42によって押圧することにより、電子部品用基板32を撓ませてブレイクする。これにより、電子部品用基板32を個々の電子部品33に分割する。次に、図2(f)~(g)に示すように、電子部品加工用保護フィルム10を剥離する。
【0019】
ここで、例えば図3に示すように、電子部品加工用保護フィルム100の延伸性が低いと、スクライブされた電子部品用基板32をブレイクする際、ブレイクバー42が押圧した部分において、電子部品加工用保護フィルム100が伸びず、電子部品用基板32が撓みにくくなってしまう。そのため、電子部品用基板32に曲げ応力がうまく伝わらないので、クラックが電子部品用基板32の厚さ方向に十分に進展せず、電子部品用基板32が分断されないことがある。なお、電子部品加工用保護フィルム100は、従来の保護フィルムであり、基材101と粘着層102とを有する。
【0020】
これに対し、本開示においては、基材の10%伸長時の荷重が所定の値以下であるため、基材は良好な延伸性を有することができる。そのため、例えば図4(a)~(b)に示すように、スクライブされた電子部品用基板32をブレイクする際、ブレイクバー42が押圧した部分において、電子部品加工用保護フィルム100が伸びることによって、電子部品用基板32が撓みやすくなる。よって、電子部品用基板32に安定して曲げ応力を加えることができる。これにより、例えば図4(b)に示すように、電子部品用基板32を良好に分断できる。
【0021】
図5(a)~(d)および図6(a)~(c)は、上記試験を説明する工程図である。図5(a)に示すように、電子部品加工用保護フィルム10を幅10mm、長さ50mm以上に切り出して試験片を調製する。また、図5(b)に示すように、厚さ725μm、幅10mm、長さ50mmのシリコンウェハ51を準備する。次いで、図5(c)に示すように、シリコンウェハ51のミラー面に、シリコンウェハ51の幅方向D1にスクライブ線33を形成する。次に、図5(d)に示すように、電子部品加工用保護フィルム10の試験片の粘着層2の面を、シリコンウェハ51のスクライブ面S1に貼付する。次に、図6(a)に示すように、シリコンウェハ51および電子部品加工用保護フィルム10の試験片を有する積層体を、シリコンウェハ51が内側、電子部品加工用保護フィルム10試験片が外側になるように、スクライブ線33に沿って90°折り曲げる。これにより、シリコンウェハ51を分断し、シリコンウェハ51を2つのチップ52に分割する。その後、図6(b)に示すように、折り曲げた積層体を元の状態に戻し、60秒間静置する。そして、図6(c)に示すように、2つのチップ52間の距離dを測定し、チップ間距離とする。
【0022】
本開示において、上記チップ間距離は、電子部品加工用保護フィルムの復元性の指標として用いることができる。上記チップ間距離が小さい場合、電子部品加工用保護フィルムの復元性が高いといえる。一方、上記チップ間距離が大きい場合、電子部品加工用保護フィルムの復元性が低いといえる。
【0023】
ここで、例えば図7(a)~(c)に示すように、電子部品加工用保護フィルム100が延伸性を有していても、電子部品加工用保護フィルム100の復元性が低いと、電子部品用基板32をブレイクした際、ブレイクバー42が押圧した部分において、電子部品加工用保護フィルム100が伸びたままになってしまう。そのため、例えば図7(c)~(d)に示すように、続けて電子部品用基板32をブレイクする際、電子部品用基板32への力のかかり方が不均等になる。よって、例えば図7(d)に示すように、電子部品用基板32が斜めに割れるおそれがある。また、図示しないが、電子部品用基板32の切断面の端部が欠けてしまい、分割された電子部品34に欠けが生じおそれもある。
【0024】
これに対し、本開示においては、上記チップ間距離が所定の値以下であり、電子部品加工用保護フィルムの復元性が高い。そのため、例えば図8(a)~(c)に示すように、電子部品用基板32をブレイクした際、ブレイクバー42が押圧した部分において、電子部品加工用保護フィルム100が伸びた後、元の状態に戻ることができる。よって、例えば図8(c)~(d)に示すように、続けて電子部品用基板32をブレイクする際、電子部品用基板32に力を均等にかけることができる。これにより、例えば図8(d)に示すように、電子部品用基板32をスクライブ線33からほぼ垂直に割ることができる。また、図示しないが、電子部品用基板のブレイク時の電子部品の欠けおよび破損を抑制できる。
【0025】
したがって、電子部品の製造に本開示における電子部品加工用保護フィルムを用いることにより、歩留まりを向上できる。
【0026】
以下、本開示における電子部品加工用保護フィルムの各構成について説明する。
【0027】
1.電子部品加工用保護フィルムの物性
本開示の電子部品加工用保護フィルムにおいて、下記試験Iにより測定されるチップ間距離は、0.3mm以下であり、好ましくは0.2mm以下、さらに好ましくは0.1mm以下である。上記チップ間距離が上記範囲であるため、電子部品加工用保護フィルムは高い復元性を有することができる。そのため、スクライブされた電子部品用基板をブレイクする際、電子部品用基板に力を均等にかけることができる。これにより、電子部品用基板をほぼ垂直に割ることができる。よって、歩留まりを向上できる。一方、上記最チップ間距離は小さいほど好ましく、下限は特に限定されない。
【0028】
試験Iは、下記工程(1)~(6)を順に有する。
(1)電子部品加工用保護フィルムを幅10mm、長さ50mm以上に切り出して試験片を調製する。
(2)厚さ725μm、幅10mm、長さ50mmのシリコンウェハのミラー面に、シリコンウェハの幅方向にスクライブ線を形成する。
(3)試験片の粘着層の面を、シリコンウェハのスクライブ面に貼付する。
(4)シリコンウェハおよび試験片を有する積層体を、シリコンウェハが内側、試験片が外側になるように、スクライブ線に沿って90°折り曲げて分断し、シリコンウェハを2つのチップに分割する。
(5)折り曲げた積層体を元の状態に戻し、60秒間静置する。
(6)2つのチップ間の距離を測定し、チップ間距離とする。
【0029】
上記工程(2)において、シリコンウェハとしては、例えば、エレクトロニクスエンドマテリアルズコーポレーション社製の「8インチφSiベアウェーハ SB-0021」を使用できる。また、シリコンウェハをスクライブする際、例えば、ガラスカッター(トーヨー社製「TC-41V」)を使用できる。
【0030】
また、上記工程(2)において、シリコンウェハのミラー面に、シリコンウェハの幅方向にスクライブ線を形成する際、通常、例えば図5(c)に示すように、シリコンウェハ51の中心にスクライブ線33を形成する。この際、スクライブ線の深さは、2μmとする。
【0031】
上記工程(3)において、電子部品加工用保護フィルムの試験片の粘着層の面を、シリコンウェハのスクライブ面に貼付する方法としては、クラックを進展させないように、電子部品加工用保護フィルムをシリコンウェハに貼付できる方法であれば、特に限定されない。例えば、ローラを用いて、電子部品加工用保護フィルムをシリコンウェハに貼付する方法が挙げられる。ローラとしては、例えば、オサダコーポレーション社製「クリーンローラーHHPLタイプ」を使用できる。
【0032】
上記工程(4)において、例えば図6(a)に示すように、シリコンウェハ51および電子部品加工用保護フィルム10の試験片を有する積層体を、シリコンウェハ51が内側、電子部品加工用保護フィルム10の試験片が外側になるように、スクライブ線に沿って90°折り曲げる。この際、例えば、手動で上記積層体を折り曲げることができる。これにより、シリコンウェハ51を分断し、シリコンウェハ51を2つのチップ52に分割する。
【0033】
上記工程(5)において、折り曲げた積層体を元の状態に戻し、60秒間静置する。折り曲げた積層体を元の状態に戻すには、積層体を折り曲げる力を解放すればよい。
【0034】
上記工程(6)において、例えば図6(c)に示すように、2つのチップ52間の距離dを測定する。なお、2つのチップ52間の距離dは、一のチップ52の端部から、他のチップ52の端部までの距離をいう。また、2つのチップ間の距離を、チップ間距離とする。
【0035】
上記試験Iは、5回行い、算術平均値を採用する。
【0036】
上記チップ間距離を制御する手段としては、例えば、基材の引張特性を調整する方法等が挙げられる。具体的には、後述するように、基材が降伏点を有さない場合、上記チップ間距離が小さくなる傾向にある。また、後述するように、基材において、弾性変形領域が広い場合、上記チップ間距離が小さくなる傾向にある。
【0037】
また、本開示の電子部品加工用保護フィルムにおいて、下記試験IIを行ったときに、電子部品加工用保護フィルムが破断しないことが好ましい。これにより、電子部品加工用保護フィルムの復元性を高めることができる。
【0038】
試験IIは、下記工程(i)~(iv)を順に有する。
(i)電子部品加工用保護フィルムを幅10mm、長さ50mm以上に切り出して試験片を調製する。
(ii)厚さ725μm、幅10mm、長さ50mmのシリコンウェハのミラー面に、シリコンウェハの幅方向にスクライブ線を形成する。
(iii)試験片の粘着層の面を、シリコンウェハのスクライブ面に貼付する。
(iv)シリコンウェハおよび試験片を有する積層体を、シリコンウェハが内側、試験片が外側になるように、スクライブ線に沿って180°折り曲げる。
【0039】
上記工程(i)~(iii)は、上記試験Iの工程(1)~(3)と同様である。また、上記工程(iv)は、上記試験Iの工程(4)において、折り曲げ角度を90°に代えて180°とすること以外は、同様である。
【0040】
本開示の電子部品加工用保護フィルムにおいて、ガラス板に対する粘着力は、例えば、0.01N/25mm以上1.0N/25mm以下であることが好ましく、0.05N/25mm以上0.8N/25mm以下であることがより好ましく、0.08N/25mm以上0.7N/25mm以下であることがさらに好ましい。ガラス板に対する粘着力が所定の値以下であることにより、分割された電子部品から電子部品加工用保護フィルムを容易に剥離できる。よって、電子部品加工用保護フィルムの剥離時に、電子部品に欠けや破損が生じるのを抑制できる。一方、ガラス板に対する粘着力が所定の値以上であることにより、スクライブされた電子部品用基板をブレイクする際、電子部品加工用保護フィルムに対する、電子部品用基板および分割された電子部品のずれを抑制できる。これにより、電子部品用基板への力のかかり方が不均等になるのを抑制し、電子部品用基板が斜めに割れるのをさらに抑制できる。
【0041】
ここで、ガラス板に対する粘着力は、JIS Z0237:2022(粘着テープ・粘着シート試験方法)の試験方法の方法1(温度23℃湿度50%、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠し、幅25mm、剥離角度180°、剥離速度300mm/minの条件で、試験片の長さ方向に剥がすことにより、測定できる。ガラス板は、日本タクト社製のフロート板ガラス(大きさ150mm×70mm、厚さ2mm)を使用する。
【0042】
また、本開示の電子部品加工用保護フィルムにおいて、SUS板に対する粘着力は、例えば、0.01N/25mm以上1.0N/25mm以下であることが好ましく、0.05N/25mm以上0.8N/25mm以下であることがより好ましく、0.08N/25mm以上0.7N/25mm以下であることがさらに好ましい。SUS板に対する粘着力が所定の値以下であることにより、分割された電子部品から電子部品加工用保護フィルムを容易に剥離できる。よって、電子部品加工用保護フィルムの剥離時に、電子部品に欠けや破損が生じるのを抑制できる。一方、SUS板に対する粘着力が所定の値以上であることにより、スクライブされた電子部品用基板をブレイクする際、電子部品加工用保護フィルムに対する、電子部品用基板および分割された電子部品のずれを抑制できる。これにより、電子部品用基板への力のかかり方が不均等になるのを抑制し、電子部品用基板が斜めに割れるのをさらに抑制できる。
【0043】
ここで、SUS板に対する粘着力は、JIS Z0237:2022(粘着テープ・粘着シート試験方法)の試験方法の方法1(温度23℃湿度50%、テープおよびシートをステンレス試験板に対して180°に引きはがす試験方法)に準拠し、幅25mm、剥離角度180°、剥離速度300mm/minの条件で、試験片の長さ方向に剥がすことにより、測定できる。SUS板は、例えば、SUS304、表面仕上げBA、厚さ1.5mm、大きさ100mm×150mmのSUS板を用いる。
【0044】
2.粘着層
本開示における粘着層は、スクライブされた電子部品用基板をブレイクする際には、電子部品加工用保護フィルムに電子部品用基板を十分に固定でき、また、スクライブされた電子部品用基板をブレイクした後は、電子部品加工用保護フィルムを容易に剥離できるものであれば、特に限定されない。中でも、粘着層は、微粘着性を示す粘着層であることが好ましい。
【0045】
微粘着性を示す粘着層においては、初期粘着力が低いものの、電子部品加工用保護フィルムを電子部品用基板に貼付する際には、電子部品加工用保護フィルムに電子部品用基板を十分に固定できる。また、初期粘着力が低いことから、再剥離性に優れており、スクライブされた電子部品用基板をブレイクした後は、電子部品加工用保護フィルムを容易に剥離できる。
【0046】
ここで、粘着層が微粘着性を示すとは、電子部品加工用保護フィルムを電子部品用基板に貼付する際には、電子部品加工用保護フィルムに電子部品用基板を十分に固定でき、スクライブされた電子部品用基板をブレイクした後は、電子部品加工用保護フィルムを容易に剥離できる程度の粘着力を示すことをいう。
【0047】
なお、電子部品加工用保護フィルムの粘着特性については、上述した通りである。
【0048】
(1)粘着層の材料
粘着層の材料は、上述の粘着特性を示すことが可能であれば特に限定されない。中でも、粘着層は、非シリコーン系粘着剤を含有することが好ましい。電子部品加工用保護フィルムの剥離後の工程において、シリコーン残渣による悪影響を防止できる。非シリコーン系粘着剤は、特に限定されないが、アクリル系粘着剤が好ましい。
【0049】
粘着層がアクリル系粘着剤を含有する場合、粘着層は、アクリル系樹脂を少なくとも含んでいればよい。中でも、粘着層の形成に用いられる粘着剤組成物は、アクリル系樹脂および架橋剤を含むことが好ましい。
【0050】
ここで、粘着層がアクリル系樹脂を含むとは、粘着層内において、アクリル系樹脂が、架橋を形成せずに単体で存在していてもよく、アクリル系樹脂間もしくはアクリル系樹脂と他の樹脂との間で架橋形成されてなる架橋体として存在していてもよく、上記単体および上記架橋体の両方が存在していてもよい。
【0051】
以下、粘着層の形成に用いられる粘着剤組成物の組成について例を挙げて説明する。
【0052】
(a)アクリル系樹脂
アクリル系樹脂としては、特に限定されず、例えば、(メタ)アクリル酸エステルを単独重合させた(メタ)アクリル酸エステル重合体、(メタ)アクリル酸エステルを主成分として(メタ)アクリル酸エステルと他の単量体とを共重合させた(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。中でも、(メタ)アクリル酸エステル共重合体が好ましい。
【0053】
ここで、(メタ)アクリル酸エステル共重合体において(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするとは、共重合体において、他の単量体よりも(メタ)アクリル酸エステルの割合が30質量%よりも多いことをいい、具体的には、共重合割合が51質量%以上であることをいう。
【0054】
なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸およびメタクリル酸の少なくとも一方をいう。
【0055】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1以上30以下の直鎖状または分岐状のアルキルエステル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル等を使用できる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、特開2014-101457号公報で開示されるものが挙げられる。(メタ)アクリル酸エステルは1種または2種以上を含んでいてもよい。中でも、炭素数1以上18以下、特に炭素数1以上8以下の(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。アクリル系樹脂のガラス転移温度が後述する範囲内になりやすく、粘着層の粘着性を向上できる。
【0056】
上記アクリル系樹脂は、(メタ)アクリル酸エステルとモノマーまたはオリゴマーとの共重合体であってもよい。(メタ)アクリル酸エステルの他に必要に応じて他のモノマーまたはオリゴマーを共重合成分として含むことで、凝集力、耐熱性等の改質を図れる。上記共重合成分は、例えば、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な官能基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。具体的には、カルボキシル基含有モノマー、酸無水物基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、スルホン酸基含有モノマー、リン酸基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー、ビニルエステル類、ビニルエーテル類、芳香族ビニル化合物等が挙げられる。また、共重合成分として、シアノ基含有モノマー、アミド基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、イソシアネート基含有モノマー等の窒素含有モノマーを用いてもよい。上記共重合成分は、アクリル酸エステル重合体に共重合成分として含まれてもよい。
【0057】
アクリル系樹脂の重量平均分子量は、例えば、10万以上200万以下であることが好ましく、20万以上100万以下であることがより好ましく、40万以上80万以下であることがさらに好ましい。重量平均分子量が上記範囲よりも小さいと、粘着層の粘着特性が劣る可能性がある。一方、重量平均分子量が上記範囲よりも大きいと、粘着剤組成物の塗工性が悪化する可能性がある。
【0058】
ここで、本明細書において、重量平均分子量とは、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した際のポリスチレン換算値である。重量平均分子量は、例えば、測定装置に東ソー株式会社製のHLC-8220GPCを、カラムに東ソー株式会社製のTSKGEL-SUPERMULTIPORE-HZ-Mを、溶媒にTHFを、標準品として分子量が1050、5970、18100、37900、96400、706000の標準ポリスチレンを用いることで測定できる。
【0059】
アクリル系樹脂のガラス転移温度は、例えば、-100℃以上0℃以下であることが好ましく、-80℃以上-20℃以下であることがより好ましい。ガラス転移温度が上記範囲にあるアクリル系樹脂を粘着剤組成物の主剤として用いることにより、所望の粘着特性が得られやすくなる。
【0060】
アクリル系樹脂のガラス転移温度は、使用するモノマー単位の種類や、組み合わせるモノマー単位の比率等を変更することにより、適宜調整できる。アクリル系樹脂は、モノマーを単独重合した重合体(ホモポリマー)の場合であっても、ガラス転移温度が上記範囲となる場合がある。しかし、ホモポリマーのガラス転移温度が上記範囲にないようなモノマー単位の使用が、制限されるわけではない。種々のモノマー単位を組み合わせて共重合した共重合体のガラス転移温度が、上記範囲内にあればよい。
【0061】
ここで、本明細書において、ガラス転移温度は、損失正接(tanδ)のピークトップの値に基づく方法(DMA法)により測定された値を意味する。また、損失正接は、損失弾性率/貯蔵弾性率の値により決定される。これら弾性率は、重合体または共重合体に対して一定の周波数で力を付与したときの応力を動的粘弾性測定装置を用いて測定される。
【0062】
アクリル系樹脂は、上述した(メタ)アクリル酸エステル、モノマー、オリゴマー等の単量体を、通常の溶液重合、塊状重合、乳化重合または懸濁重合等の方法により重合させることにより得られる。
【0063】
(b)架橋剤
架橋剤は、アクリル系樹脂を架橋させることが可能な架橋剤であればよく、一般的な架橋剤を使用できる。架橋剤としては、例えば、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、金属キレート系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤等が挙げられる。
【0064】
架橋剤の含有量は、例えば、アクリル系樹脂100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下であり、好ましくは0.3質量部以上10質量部以下である。架橋剤の含有量が上記範囲内であることにより、所望の粘着特性が得られやすくなる。
【0065】
(3)他の成分
粘着剤組成物は、必要に応じて、例えば、滑剤、可塑剤、充填剤、フィラー、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、光安定剤、着色剤等の任意の添加剤を含んでいてもよい。
【0066】
(2)粘着層の構成
粘着層の厚さは、所望の粘着力を示すことが可能な厚さであればよく、例えば、3μm以上50μm以下であり、好ましくは5μm以上40μm以下である。
【0067】
粘着層の形成方法としては、例えば、基材またはセパレータ上に粘着剤組成物を塗布し、必要に応じて加熱する方法が挙げられる。
【0068】
3.基材
本開示における基材は、上記粘着層を支持する部材である。
【0069】
基材の10%伸長時の荷重は、60N/15mm以下であり、好ましくは30N/15mm以下であり、さらに好ましくは10N/15mm以下である。基材の上記荷重が上記範囲であるため、基材は良好な延伸性を有することができる。そのため、スクライブされた電子部品用基板をブレイクする際、電子部品加工用保護フィルムの基材が伸びることによって、電子部品用基板を撓みやすくすることができる。よって、電子部品用基板に安定して曲げ応力を加えることができ、電子部品用基板を良好に切断できる。一方、基材の10%伸長時の荷重は、例えば、1N/15mm以上であることが好ましい。基材の上記荷重が小さすぎると、柔軟性が高くなりすぎて、電子部品加工用保護フィルムの取り扱いが困難になる可能性がある。
【0070】
なお、基材の10%伸長時の荷重とは、基材のMD方向における10%伸長時の荷重と基材のTD方向における10%伸長時の荷重との平均値をいう。
【0071】
また、MD方向とは、基材の製造時における流れ方向をいい、TD方向とは、MD方向に対して垂直な方向をいう。例えば、電子部品加工用保護フィルムが長尺状である、または枚葉状であり矩形状である場合、MD方向は電子部品加工用保護フィルムの長さ方向、TD方向は電子部品加工用保護フィルムの幅方向を示す。
【0072】
ここで、基材のMD方向およびTD方向の10%伸長時の荷重はそれぞれ、JIS K7127:1999に準拠して測定できる。具体的な測定条件を下記に示す。引張試験機としては、例えば、エー・アンド・デイ社製「テンシロンRTF1150」を使用できる。
(測定条件)
・試験片:試験片タイプ2(15mm×100mm)
・チャック間距離:50mm
・引張速度:200mm/min
【0073】
基材の引張弾性率は、例えば、500MPa以下であることが好ましく、300MPa以下であることがより好ましく、200MPa以下であることがさらに好ましい。基材の引張弾性率が上記範囲であることにより、基材の延伸性を高めることができる。一方、基材の引張弾性率は、例えば、50MPa以上であることが好ましい。基材の引張弾性率が低すぎると、基材が極端に柔らかくなり、電子部品加工用保護フィルムの取り扱いが困難になる可能性がある。
【0074】
ここで、基材の引張弾性率は、JIS K7127:1999に準拠して測定できる。具体的な測定条件を下記に示す。引張試験機としては、例えば、エー・アンド・デイ社製「テンシロンRTF1150」を使用できる。
(測定条件)
・試験片:試験片タイプ2(15mm×100mm)
・チャック間距離:50mm
・引張速度:200mm/min
【0075】
基材の破断時の伸びは、例えば、200%以上であることが好ましく、300%以上であることがより好ましく、400%以上であることがさらに好ましい。基材の破断時の伸びが上記範囲であることにより、基材の延伸性を高めることができる。一方、基材の破断時の伸びは、例えば、2000%以下であることが好ましい。基材の破断時の伸びが大きすぎると、基材が変形しやすくなり、電子部品加工用保護フィルムの取り扱いが困難になる可能性がある。
【0076】
なお、基材の破断時の伸びとは、基材のMD方向における破断時の伸びと基材のTD方向における破断時の伸びとの平均値をいう。
【0077】
ここで、基材のMD方向およびTD方向の破断時の伸びはそれぞれ、JIS K7127:1999に準拠して測定できる。具体的な測定条件を下記に示す。引張試験機としては、例えば、エー・アンド・デイ社製「テンシロンRTF1150」を使用できる。
(測定条件)
・試験片:試験片タイプ2(15mm×100mm)
・チャック間距離:50mm
・引張速度:200mm/min
【0078】
基材は、降伏点を有さないことが好ましい。すなわち、基材は、応力-歪み曲線において、弾性変形を示すことが好ましい。応力-歪み曲線は、引張試験により得られる応力と歪みの関係曲線であり、歪み(%)を横軸に、応力(MPa)を縦軸にとって描かれる。応力-歪み曲線における降伏点までの領域は、弾性変形領域とみなせ、応力-歪み曲線における降伏点以降の領域は、塑性変形領域とみなせる。そのため、基材が降伏点を有さない場合には、基材は弾性変形を示すということができる。よって、電子部品加工用保護フィルムは、良好な復元性を有することができる。これにより、スクライブされた電子部品用基板をブレイクする際、電子部品用基板に力を均等にかけることができる。したがって、電子部品用基板をほぼ垂直に割ることができる。ゆえに、歩留まりを向上できる。
【0079】
ここで、「降伏」とは、応力-歪み曲線で見られるように、物体に働く応力が弾性限度を超えると応力の増大がないのに変形が徐々に進行する現象のことをいい、「降伏点」とは、弾性挙動の最大応力値における点のことをいう。
【0080】
降伏点の有無は、以下の方法により確認することができる。基材についてMD方向およびTD方向にそれぞれ引張試験を行い、基材が破断するまでの応力と歪みを測定し、歪みを横軸、応力を縦軸にそれぞれプロットする。その際、傾きが正の値からゼロまたは負の値に変化する応力値をとる場合を、降伏点を有するとする。また、傾きが正の値からゼロまたは負の値に変化する応力値をとらない場合を、降伏点を有さないとする。引張試験は、JIS K7127に準拠して行うことができる。引張試験機としては、例えば、エー・アンド・デイ社製「テンシロンRTF1150」を使用できる。基材は、MD方向およびTD方向の引張試験のいずれの場合においても、降伏点を有さないことが好ましい。
【0081】
一方、基材は、降伏点を有していてもよい。この場合、弾性変形領域が広いことが好ましい。弾性変形領域が広い場合には、スクライブされた電子部品用基板をブレイクする際、基材において、塑性変形が起こりにくく、弾性変形を生じさせることができる。そのため、上述のような、基材が降伏点を有さない場合と同様の効果が得られる。
【0082】
基材は、上述の物性を満たす基材であれば特に限定されない。基材の材質としては、例えば、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、熱可塑性エラストマー、ゴム系材料が挙げられる。オレフィン樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、ポリブタジエン、エチレン酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体が挙げられる。塩化ビニル樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体が挙げられる。ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートが挙げられる。ポリアミド樹脂としては、例えば、ナイロンが挙げられる。熱可塑性エラストマーとしては、例えば、オレフィン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、スチレン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、アクリル系エラストマー、アミド系エラストマーが挙げられる。ゴム系材料としては、例えば、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、多硫化ゴムが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
中でも、オレフィン樹脂または塩化ビニル樹脂が好ましく、塩化ビニル樹脂がより好ましい。すなわち、基材は、オレフィン樹脂または塩化ビニル樹脂を含有することが好ましく、塩化ビニル樹脂を含有することがより好ましい。塩化ビニル樹脂は可塑剤を添加することにより軟化するため、いわゆる軟質塩化ビニル樹脂を用いることにより、降伏点を有さない基材とすることができる。
【0084】
塩化ビニル樹脂としては、例えば、ポリ塩化ビニル、塩素化ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、塩素化ポリエチレン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル-エチレン共重合体、塩化ビニル-プロピレン共重合体、塩化ビニル-スチレン共重合体、塩化ビニル-イソブチレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニル-スチレン-無水マレイン酸三元共重合体、塩化ビニル-スチレン-アクリロニトリル三元共重合体、塩化ビニル-ブタジエン共重合体、塩化ビニル-イソプレン共重合体、塩化ビニル-塩素化プロピレン共重合体、塩化ビニル-塩化ビニリデン-酢酸ビニル三元共重合体、塩化ビニル-マレイン酸エステル共重合体、塩化ビニル-メタクリル酸エステル共重合体、塩化ビニル-アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル-各種ビニルエーテル共重合体等の塩素含有樹脂等を挙げることができる。また、これらの塩素含有樹脂の混合物を用いることができる。さらに、これらの塩素含有樹脂と他の塩素を含まない樹脂との、混合物、ブロック共重合体、グラフト共重合体等を用いることもできる。他の塩素を含まない樹脂としては、例えば、アクリロニトリル-スチレン共重合体、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン三元共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-エチル(メタ)アクリレート共重合体、ポリエステル等が挙げられる。
【0085】
基材は、必要に応じて、例えば、可塑剤、充填剤、酸化防止剤、光安定剤、帯電防止剤、滑剤、分散剤、難燃剤、着色剤等の各種の添加剤を含有していてもよい。
【0086】
基材は、例えば、単層であってもよく、多層であってもよい。
【0087】
基材の粘着層側の面には、粘着層との密着性を向上させるために、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、特に限定されず、例えば、コロナ処理、プラズマ処理、オゾン処理、フレーム処理、プライマー処理、アルカリ処理等が挙げられる。
【0088】
基材の厚さは、上述の電子部品加工用保護フィルムの物性を満たしてれば特に限定されず、基材の材質等に応じて適宜選択される。基材の厚さは、例えば、20μm以上500μm以下であり、40μm以上350μm以下であってもよく、50μm以上200μm以下であってもよい。
【0089】
4.他の構成
本開示における電子部品加工用保護フィルムは、上記の基材および粘着層の他に、必要に応じて、他の構成を有していてもよい。
【0090】
電子部品加工用保護フィルムは、基材と粘着層との間にプライマー層を有していてもよい。プライマー層により基材および粘着層の密着性を高めることができる。
【0091】
本開示における電子部品加工用保護フィルムは、基材の粘着層とは反対側の面にセパレータを有していてもよい。
【0092】
5.用途
本開示の電子部品加工用保護フィルムは、電子部品用基板の切断工程において好ましく使用される。中でも、本開示の電子部品加工用保護フィルムは、スクライブされた電子部品用基板をブレイクする工程において使用されることがより好ましい。例えば図3(d)に示すように、電子部品加工用保護フィルム10は、スクライブされた電子部品用基板32をブレイクする工程において、電子部品用基板32のスクライブ面S1に貼付されて使用されることが好ましい。
【0093】
B.電子部品の製造方法
本開示における電子部品の製造方法は、電子部品用基板の一方の面にダイシングテープを貼付する第1貼付工程と、上記電子部品用基板の他方の面をスクライブするスクライブ工程と、上記電子部品用基板のスクライブ面に、上述の電子部品加工用保護フィルムを貼付する第2貼付工程と、上記ダイシングテープおよび上記電子部品加工用保護フィルムが貼付された上記電子部品用基板をブレイクするブレイク工程と、上記ブレイク工程後、上記電子部品加工用保護フィルムを剥離する剥離工程と、を有する。
【0094】
図3(a)~(g)は、本開示における電子部品の製造方法の一例を示す工程図である。なお、図3(a)~(g)については、上述の「A.電子部品加工用保護フィルム」の項に記載したので、ここでの説明は省略する。
【0095】
本開示においては、上述の「A.電子部品加工用保護フィルム」の項に記載したように、上述の電子部品加工用保護フィルムを用いることにより、歩留まりを向上できる。
【0096】
以下、本開示における電子部品の製造方法の各工程について説明する。
【0097】
1.第1貼付工程
第1貼付工程においては、電子部品用基板の一方の面にダイシングテープを貼付する。
【0098】
電子部品用基板としては、特に限定されず、例えば、シリコンウェハ、ガラス基板、セラミック基板等が挙げられる。
【0099】
ダイシングテープは、通常、基材と、基材の一方の面に配置された粘着層とを有する。ダイシングテープとしては、一般的なダイシングテープを使用できる。
【0100】
電子部品用基板の一方の面にダイシングテープを貼付する方法としては、一般的な方法を適用できる。この際、通常、リングフレームが用いられる。例えば図3(a)~(b)に示すように、リングフレーム31に、ダイシングテープ20の粘着層22の面を貼付した後、リングフレーム31に固定されたダイシングテープ20を、電子部品用基板32の一方の面に貼付する。
【0101】
2.スクライブ工程
スクライブ工程においては、上記電子部品用基板の他方の面をスクライブする。
【0102】
スクライブ工程においては、例えば、カッターホイール、レーザー等を用いて、電子部品用基板をスクライブできる。電子部品用基板には、通常、スクライブ線を格子状に形成する。
【0103】
3.第2貼付工程
第2貼付工程においては、上記電子部品用基板のスクライブ面に、上述の電子部品加工用保護フィルムを貼付する。
【0104】
電子部品加工用保護フィルムについては、上述の「A.電子部品加工用保護フィルム」の項に詳しく記載したので、ここでの説明は省略する。
【0105】
電子部品用基板のスクライブ面に電子部品加工用保護フィルムを貼付する方法としては、一般的な方法を適用できる。例えば、台の上に電子部品用基板を置き、電子部品用基板の上方に、電子部品加工用保護フィルムの粘着層の面を下向きにして電子部品加工用保護フィルムを配置し、電子部品加工用保護フィルムの上方から押し型で軽く押しつけることにより、電子部品用基板に電子部品加工用保護フィルムを貼付できる。
【0106】
電子部品用基板に電子部品加工用保護フィルムを貼付する際、例えば図3(d)に示すように、電子部品加工用保護フィルム10は、リングフレーム31に貼付されるとともに、電子部品用基板32の周囲において、ダイシングテープ20と貼合されることが好ましい。電子部品用基板を安定良く固定できるからである。
【0107】
なお、通常、第1貼付工程、スクライブ工程および第2貼付工程の順に行われるが、スクライブ工程、第1貼付工程および第2貼付工程の順に行ってもよい。
【0108】
4.ブレイク工程
ブレイク工程においては、上記ダイシングテープおよび上記電子部品加工用保護フィルムが貼付された上記電子部品用基板をブレイクする。
【0109】
スクライブされた電子部品基板をブレイクする方法としては、一般的な方法を適用できる。例えば、ブレイクバーまたはローラ等を用いた押圧による三点曲げ方式を採用できる。
【0110】
ブレイク工程の一例を示す。まず、図3(d)~(e)に示すように、電子部品用基板32のスクライブ面32、すなわち、電子部品加工用保護フィルム10が下側になるように、電子部品用基板32を反転させる。次に、図3(e)に示すように、スクライブ線33が、一対の受刃41の間に位置するように、電子部品用基板32を支持テーブル(図示なし)に置く。次いで、ダイシングテープ20の上方から、ブレイクバー42をスクライブ線33に向かって押し下げることにより、電子部品用基板32を一対の受刃41の間で三点曲げ方式により撓ませて、スクライブ線33に沿ってブレイクする。これにより、格子状のスクライブ線のうち、一の方向のスクライブ線に沿って電子部品用基板をブレイクする。続いて、図示しないが、支持テーブルを90度回転させて、同様の方法により、他の方向のスクライブ線に沿って電子部品用基板をブレイクする。
【0111】
ブレイク工程では、一対の受刃に代えて、電子部品用基板の下面に緩衝材を配置してもよい。
【0112】
5.剥離工程
剥離工程においては、上記ブレイク工程後、上記電子部品加工用保護フィルムを剥離する。
【0113】
電子部品加工用保護フィルム10は、例えば図3(f)~(g)に示すように、リングフレーム31、分割された電子部品34、およびダイシングテープ20から剥離される。
【0114】
6.他の工程
上記剥離工程後は、ダイシングテープを引き伸ばして、電子部品同士の間隔を広げるエキスパンド工程と、電子部品をダイシングテープから剥離して、電子部品をピックアップするピックアップ工程とを行ってもよい。また、ピックアップ工程後に、ピックアップされた電子部品を基板に接着するダイボンディング工程を行ってもよい。
【0115】
また、上記剥離工程後は、電子部品のダイシングテープとは反対側の面に、転写テープを貼付する第3貼付工程と、ダイシングテープをリングフレームおよび電子部品から剥離して、リングフレームおよび電子部品を転写テープに転写する転写工程とを行ってもよい。
【0116】
なお、本開示は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態は、例示であり、本開示における特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本開示における技術的範囲に包含される。
【実施例0117】
以下、実施例および比較例を示し、本開示をさらに説明する。
【0118】
[実施例1]
アクリル系粘着主剤(重量平均分子量:約50万、酸フリータイプ)100質量部と、ヘキサメチレンジイソシアネート系架橋剤8質量部と、カルボジイミド系架橋剤5質量部とを、トルエンおよびメチルエチルケトンの混合溶媒(質量比1:1)で希釈し、十分に分散させて、粘着剤組成物を調製した。
【0119】
ポリエチレンテレフタレート(PET)セパレータ(ニッパ株式会社製「PET50×1-M-J2」、厚さ50μm)上に、乾燥後の厚さが10μmとなるように上記粘着剤組成物を塗工し、110℃オーブンで1分間乾燥させて、粘着層を形成した。
【0120】
厚さ90μmのポリ塩化ビニル(PVC)基材(ロンシール社製「FV5」)を、上記粘着層上にラミネートした後、40℃で3日間エージングを行い、電子部品加工用保護フィルムを作製した。
【0121】
[実施例2]
PVC基材に代えて、厚さ25μmのポリイミド(PI)基材(PI Advanced Materials社製「GF100」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電子部品加工用保護フィルムを作製した。
【0122】
[比較例1]
PVC基材に代えて、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレート(PET)基材(東レ社製「S105」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電子部品加工用保護フィルムを作製した。
【0123】
[比較例2]
PVC基材に代えて、厚さ50μmのポリプロピレン(PP)基材(三井東セロ社製「RXC-22」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電子部品加工用保護フィルムを作製した。
【0124】
[比較例3]
PVC基材に代えて、厚さ50μmのポリイミド(PI)基材(PI Advanced Materials社製「GF200」)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、電子部品加工用保護フィルムを作製した。
【0125】
[評価]
(1)基材の10%伸長時の荷重
基材について、JIS K7127:1999に準拠し、試験片:試験片タイプ5、チャック間距離:60mm、引張速度:100mm/minの条件で、MD方向およびTD方向の10%伸長時の荷重をそれぞれ測定した。そして、MD方向における10%伸長時の荷重およびTD方向における10%伸長時の荷重の平均値を求めた。引張試験機としては、エー・アンド・デイ社製「テンシロンRTF1150」を用いた。
【0126】
(2)基材の引張弾性率
基材について、JIS K7127:1999に準拠し、試験片:試験片タイプ2(15mm×100mm)、チャック間距離:50mm、引張速度:200mm/minの条件で、引張弾性率を測定した。引張試験機としては、エー・アンド・デイ社製「テンシロンRTF1150」を用いた。
【0127】
(3)基材の破断時の伸び
基材について、JIS K7127:1999に準拠し、試験片:試験片タイプ2(15mm×100mm)、チャック間距離:50mm、引張速度:200mm/minの条件で、破断時の伸びを測定した。引張試験機としては、エー・アンド・デイ社製「テンシロンRTF1150」を用いた。
【0128】
(4)チップ間距離
(4-1)折り曲げ角度90°
電子部品加工用保護フィルムを幅10mm、長さ50mm以上に切り出して試験片を調製した。また、厚さ725μm、幅10mm、長さ50mmのシリコンウェハ(エレクトロニクスエンドマテリアルズコーポレーション社製「8インチφSiベアウェーハ SB-0021」)を準備した。トーヨー社製のガラスカッター「TC-41V」を用いて、シリコンウェハのミラー面に、シリコンウェハの幅方向にスクライブ線を1本形成した。この際、スクライブ線の深さは2μmであった。次いで、試験片からセパレータを剥離して、粘着層の面を露出させた。次に、試験片の粘着層の面を、シリコンウェハのスクライブ面に貼付した。次に、シリコンウェハおよび試験片を有する積層体を、シリコンウェハが内側、試験片が外側になるように、スクライブ線に沿って90°折り曲げて分断し、シリコンウェハを2つのチップに分割した。その後、折り曲げた積層体を元の状態に戻し、60秒間静置した。そして、2つのチップ間の距離を測定し、チップ間距離とした。試験は、5回行い、算術平均値を採用した。
【0129】
(4-2)折り曲げ角度180°
シリコンウェハおよび試験片を有する積層体を折り曲げる際に、折り曲げ角度を180°にしたこと以外は、上記と同様にして、チップ間距離を求めた。
【0130】
なお、シリコンウェハおよび試験片を有する積層体を折り曲げた際に、試験片が破断した場合は、「破断」と評価した。
【0131】
(5)押し込み試験
電子部品加工用保護フィルムを幅10mm、長さ30mm以上に切り出して試験片を調製した。また、厚さ725μm、幅10mm、長さ30mmのシリコンウェハ(エレクトロニクスエンドマテリアルズコーポレーション社製「8インチφSiベアウェーハ SB-0021」)を準備した。トーヨー社製のガラスカッター「TC-41V」を用いて、シリコンウェハのミラー面に、シリコンウェハの幅方向にスクライブ線を1本形成した。この際、スクライブ線の深さは2μmであった。次いで、試験片からセパレータを剥離して、粘着層の面を露出させた。次に、試験片の粘着層の面を、シリコンウェハのスクライブ面に貼付した。次に、エー・アンド・デイ社製のテンシロン万能試験機および図9(a)に示すような圧縮型曲げ試験冶具(3点曲げ)を用いて、ブレイク適性を確認した。図9(b)に示すように、圧縮型曲げ試験冶具の支持台101の間隔を25mmに設定し、圧子102がシリコンウェハ103に到達した位置から、圧子102を10mm/minで押し下げて、最大荷重から2%荷重が低下した点を破断点とし、破断点で圧子102の降下が止まるように設定した。シリコンウェハ103のスクライブ面を下にして、シリコンウェハ103に対して圧子102を上記破断点まで降下させ、シリコンウェハ103が最下層まで割れているか否かを確認した。試験は5回行い、5回中、シリコンウェハが最下層まで割れた回数をカウントした。ブレイク適性は下記基準にて評価した。
A:5回中、シリコンウェハが最下層まで割れた回数が5回であった。
B:5回中、シリコンウェハが最下層まで割れた回数が4回であった。
C:5回中、シリコンウェハが最下層まで割れた回数が3回以下であった。
【0132】
【表1】
【0133】
実施例1~2では、基材の10%伸長時の荷重が所定の範囲であり、かつ、90°曲げでのチップ間距離が所定の範囲であり、延伸性および復元性が良好であるため、シリコンウェハを良好に破断できた。一方、比較例1、3では、90°曲げでのチップ間距離は所定の範囲であり、十分な復元性を示したが、基材の10%伸長時の荷重が大きいため、シリコンウェハが完全に破断されない場合があった。また、比較例2では、90°曲げでのチップ間距離が長く、復元性が不十分であるため、シリコンウェハの破断時に力が均等に加わらない可能性がある。
【0134】
本開示は、以下の[1]~[5]を提供する。
[1]基材と、上記基材の一方の面に配置された粘着層と、を有する電子部品加工用保護フィルムであって、
上記基材の10%伸長時の荷重が、60N/15mm以下であり、
下記試験により測定されるチップ間距離が、0.3mm以下である、電子部品加工用保護フィルム。
試験:下記工程(1)~(6)を順に有する。
(1)上記電子部品加工用保護フィルムを幅10mm、長さ50mm以上に切り出して試験片を調製する。
(2)厚さ725μm、幅10mm、長さ50mmのシリコンウェハのミラー面に、上記シリコンウェハの幅方向にスクライブ線を形成する。
(3)上記試験片の上記粘着層の面を、上記シリコンウェハのスクライブ面に貼付する。
(4)上記シリコンウェハおよび上記試験片を有する積層体を、上記シリコンウェハが内側、上記試験片が外側になるように、上記スクライブ線に沿って90°折り曲げて分断し、上記シリコンウェハを2つのチップに分割する。
(5)折り曲げた上記積層体を元の状態に戻し、60秒間静置する。
(6)上記2つのチップ間の距離を測定し、チップ間距離とする。
[2]上記基材が降伏点を有さない、[1]に記載の電子部品加工用保護フィルム。
[3]上記粘着層が非シリコーン系粘着剤を含有する、[1]または[2]に記載の電子部品加工用保護フィルム。
[4]スクライブされた電子部品用基板をブレイクする工程において、上記電子部品用基板のスクライブ面に貼付されて使用される、[1]から[3]までのいずれかに記載の電子部品加工用保護フィルム。
[5]電子部品用基板の一方の面にダイシングテープを貼付する第1貼付工程と、
上記電子部品用基板の他方の面をスクライブするスクライブ工程と、
上記電子部品用基板のスクライブ面に、[1]から[4]までのいずれかに記載の電子部品加工用保護フィルムを貼付する第2貼付工程と、
上記ダイシングテープおよび上記電子部品加工用保護フィルムが貼付された上記電子部品用基板をブレイクするブレイク工程と、
上記ブレイク工程後、上記電子部品加工用保護フィルムを剥離する剥離工程と、
を有する、電子部品の製造方法。
【符号の説明】
【0135】
1 … 基材
2 … 粘着層
10 … 電子部品加工用保護フィルム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9