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特開2024-42311情報処理装置、レーダ装置、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042311
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】情報処理装置、レーダ装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01W 1/10 20060101AFI20240321BHJP
   G01S 13/95 20060101ALI20240321BHJP
   G01S 13/87 20060101ALI20240321BHJP
   G01W 1/00 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
G01W1/10 T
G01S13/95
G01S13/87
G01W1/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146933
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越智 将太
(72)【発明者】
【氏名】塩川 教次
(72)【発明者】
【氏名】江頭 慶真
(72)【発明者】
【氏名】和田 将一
(72)【発明者】
【氏名】小林 哲也
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AE13
5J070AF01
5J070AH04
5J070AH19
5J070AH50
5J070AJ10
5J070AJ13
5J070AK01
5J070AK04
5J070BA01
5J070BD01
(57)【要約】
【課題】精度の高い合成雨量データを作成することが可能な情報処理装置、レーダ装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【解決手段】実施形態に係る情報処理装置が具備する処理部は、第1時間帯の第1及び第2気象データ、及び第1時間帯の地上雨量データを取得し、当該第1及び第2気象データに基づいて複数の第1特徴量を取得し、当該地上雨量データ及び複数の第1特徴量に基づいて学習データを作成し、当該学習データに基づいて複数の第1特徴量が入力された場合にパラメータを出力するように学習した学習済みモデルを生成する。処理部は、第2時間帯の第1及び第2気象データを取得し、当該第1及び第2気象データに基づいて複数の第2特徴量を取得し、複数の第2特徴量を学習済みモデルに入力することによってパラメータを取得し、当該パラメータに基づいて合成雨量データを作成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1気象レーダにおいて第1時間帯に観測された第1レーダ雨量値を含む第1時間帯の第1気象データ、前記第1気象レーダとは異なる第2気象レーダにおいて前記第1時間帯に観測された第2レーダ雨量値を含む第1時間帯の第2気象データ、及び地上雨量計において前記第1時間帯に計測された地上雨量値を含む第1時間帯の地上雨量データを取得し、
前記第1時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、当該第1時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値の精度に関する複数の第1特徴量を取得し、
前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値及び前記取得された複数の第1特徴量に基づいて学習データを作成し、
前記作成された学習データに基づいて、前記複数の第1特徴量が入力された場合に前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値に相当する雨量値を推定するためのパラメータを出力するように学習した学習済みモデルを生成し、
前記第1気象レーダにおいて前記第1時間帯よりも後の第2時間帯に観測された第1レーダ雨量値を含む前記第2時間帯の第1気象データ及び前記第2気象レーダにおいて前記第2時間帯に観測された第2レーダ雨量値を含む前記第2時間帯の第2気象データを取得し、
前記第2時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、当該第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値の精度に関する複数の第2特徴量を取得し、
前記取得された複数の第2特徴量を前記生成された学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力されるパラメータを取得し、
前記取得されたパラメータに基づいて、前記第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値を合成することによって合成雨量データを作成する処理部を具備する
情報処理装置。
【請求項2】
前記学習データは、前記複数の第1特徴量と、前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値に近いレーダ雨量値を観測した第1または第2気象レーダを識別するための識別情報とを含み、
前記学習済みモデルは、前記複数の第1特徴量が入力された場合に前記パラメータとして前記識別情報を出力するように学習し、
前記合成雨量データは、前記複数の第2特徴量が入力された場合に前記学習済みモデルから前記パラメータとして出力される識別情報によって識別される第1または第2気象レーダにおいて前記第2時間帯に観測された第1または第2レーダ雨量値を含む
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記学習データは、前記複数の第1特徴量と、前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値に近いレーダ雨量値を観測した第1または第2気象レーダを識別するための識別情報とを含み、
前記学習済みモデルは、前記複数の第1特徴量が入力された場合に前記パラメータとして前記地上雨量値に近いレーダ雨量値を観測する確率を前記第1及び第2気象レーダ毎に出力するように学習し、
前記合成雨量データは、前記複数の第2特徴量が入力された場合に前記学習済みモデルから前記パラメータとして前記第1及び第2気象レーダ毎に出力される確率を重みとして前記第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値を合成することによって作成される
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記学習データは、前記複数の第1特徴量と、前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値とを含み、
前記学習済みモデルは、前記複数の第1特徴量が入力された場合に前記パラメータとして前記地上雨量値に相当する推定雨量値を出力するように学習し、
前記合成雨量データは、前記複数の第2特徴量が入力された場合に前記学習済みモデルから前記パラメータとして出力される推定雨量値を含む
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記第1気象レーダは、当該第1気象レーダから送信された電波の第1反射波に基づいて算出される当該第1気象レーダの第1観測地点における第1レーダ雨量値を観測するように構成され、
前記第2気象レーダは、当該第2気象レーダから送信された電波の第2反射波に基づいて算出される当該第2気象レーダの第2観測地点における第2レーダ雨量値を観測するように構成され、
前記第1気象データは、前記第1レーダ雨量値に加えて、前記第1観測地点における受信電力、反射因子、ドップラー速度、ドップラー速度幅、反射因子差、偏波間相関係数、偏波間位相差、偏波間位相差変化率、前記第1レーダ雨量値の算出手法を示すフラグ値、及び降雨減衰量の積算値のうちの少なくとも1つを含み、
前記第2気象データは、前記第2レーダ雨量値に加えて、前記第2観測地点における受信電力、反射因子、ドップラー速度、ドップラー速度幅、反射因子差、偏波間相関係数、偏波間位相差、偏波間位相差変化率、前記第2レーダ雨量値の算出手法を示すフラグ値、及び降雨減衰量の積算値のうちの少なくとも1つを含む
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記複数の第1及び第2特徴量は、少なくとも前記第1及び第2レーダ雨量値、前記第1及び第2気象レーダから前記第1及び第2観測地点までの距離、前記第1及び第2レーダ雨量値の算出手法を示すフラグ値、前記降雨減衰量の積算値、前記第1及び第2レーダ雨量値の差を含む請求項5記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、
前記情報処理装置とは異なる外部装置によって提供される複数の気象要素に関する前記第1時間帯の予報値を含む第1時間帯の予報データを取得し、
前記第1時間帯の第1及び第2気象データと前記第1時間帯の予報データとに基づいて前記複数の第1特徴量を取得し、
前記外部装置によって提供される複数の気象要素に関する前記第2時間帯の予報値を含む第2時間帯の予報データを取得し、
前記第2時間帯の第1及び第2気象データと前記第2時間帯の予報データとに基づいて前記複数の第2特徴量を取得する
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記予報データは、地上面の気温、地上面の海面較正気圧、地上面の風速、地上面の雲量、各気圧面の上昇流、各気圧面の気温、各気圧面の風速及び各気圧面の相対湿度のうちの少なくとも1つの予報値を含む請求項7記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記処理部は、
前記複数の第1特徴量の組み合わせを変更しながら作成された第1学習データに基づいて複数の第1学習済みモデルを生成し、
前記作成された第1学習データの一部または当該第1学習データに相当する評価データを用いて前記生成された複数の第1学習済みモデルを評価し、
前記評価結果に基づいて前記複数の第1特徴量のうちの一部または全てである第3特徴量を選択し、
前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値及び前記選択された第3特徴量に基づいて作成された第2学習データに基づいて第2学習済みモデルを生成し、
前記第2時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、前記複数の第2特徴量のうちの前記第3特徴量に対応する第4特徴量を取得し、
前記取得された第4特徴量を前記作成された第2学習済みモデルに入力することによって当該第2学習済みモデルから出力されるパラメータを取得する
請求項1記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記第2気象データの代わりに、前記第2気象レーダにおいて観測された第2レーダ雨量値と前記第1及び第2気象レーダとは異なる第3気象レーダにおいて観測された第3レーダ雨量値とを合成した合成雨量値を含む外部雨量データを用いる請求項1記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記合成雨量データは、3次元座標空間における各座標点に前記第1及び第2レーダ雨量値を合成した合成雨量値が割り当てられたデータである請求項1記載の情報処理装置。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の情報処理装置を備える前記第1または第2気象レーダに相当するレーダ装置。
【請求項13】
第1気象レーダにおいて第1時間帯に観測された第1レーダ雨量値を含む第1時間帯の第1気象データ、前記第1気象レーダとは異なる第2気象レーダにおいて前記第1時間帯に観測された第2レーダ雨量値を含む第1時間帯の第2気象データ、及び地上雨量計において前記第1時間帯に計測された地上雨量値を含む第1時間帯の地上雨量データを取得し、
前記第1時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、当該第1時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値の精度に関する複数の第1特徴量を取得し、
前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値及び前記取得された複数の第1特徴量に基づいて学習データを作成し、
前記作成された学習データに基づいて、前記複数の第1特徴量が入力された場合に前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値に相当する雨量値を推定するためのパラメータを出力するように学習した学習済みモデルを生成し、
前記第1気象レーダにおいて前記第1時間帯よりも後の第2時間帯に観測された第1レーダ雨量値を含む第2時間帯の第1気象データ及び前記第2気象レーダにおいて前記第2時間帯に観測された第2レーダ雨量値を含む第2時間帯の第2気象データを取得し、
前記第2時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、当該第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値の精度に関する複数の第2特徴量を取得し、
前記取得された複数の第2特徴量を前記生成された学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力されるパラメータを取得し、
前記取得されたパラメータに基づいて、前記第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値を合成することによって合成雨量データを作成する
方法。
【請求項14】
コンピュータに、
第1気象レーダにおいて第1時間帯に観測された第1レーダ雨量値を含む第1時間帯の第1気象データ、前記第1気象レーダとは異なる第2気象レーダにおいて前記第1時間帯に観測された第2レーダ雨量値を含む第1時間帯の第2気象データ、及び地上雨量計において前記第1時間帯に計測された地上雨量値を含む第1時間帯の地上雨量データを取得することと、
前記第1時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、当該第1時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値の精度に関する複数の第1特徴量を取得することと、
前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値及び前記取得された複数の第1特徴量に基づいて学習データを作成することと、
前記作成された学習データに基づいて、前記複数の第1特徴量が入力された場合に前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値に相当する雨量値を推定するためのパラメータを出力するように学習した学習済みモデルを生成することと、
前記第1気象レーダにおいて前記第1時間帯よりも後の第2時間帯に観測された第1レーダ雨量値を含む第2時間帯の第1気象データ及び前記第2気象レーダにおいて前記第2時間帯に観測された第2レーダ雨量値を含む第2時間帯の第2気象データを取得することと、
前記第2時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、当該第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値の精度に関する複数の第2特徴量を取得することと、
前記取得された複数の第2特徴量を前記生成された学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力されるパラメータを取得することと、
前記取得されたパラメータに基づいて、前記第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値を合成することによって合成雨量データを作成することと
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置、レーダ装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、ゲリラ豪雨等の局所的気象現象による被害が増大しており、当該局所的気象現象を早期に探知するために気象レーダを用いることが知られている。気象レーダは、アンテナから送信(照射)された電波が雨粒で反射されることによって当該アンテナによって受信される反射波を利用することで、雨量値(降雨量)等を観測することができるレーダ装置(気象観測装置)である。このような気象レーダにおいては、雨量値を計測するために一般に用いられる地上雨量計と比較して、高い時間分解能及び空間分解能を実現することができる。
【0003】
ところで、気象レーダ単体の観測範囲は、限られている。また、気象レーダで観測された雨量値は、誤差を含む。このため、複数の気象レーダにおいて観測された雨量値を合成することで、広範囲かつ信頼性の高い合成雨量データを作成することが行われている。
【0004】
しかしながら、複数の気象レーダにおいて観測された雨量値を適切に合成しなければ、精度の高い合成雨量データを作成することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4369816号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】土屋修一、川崎将生、五道仁美、“降雨減衰補正と合成雨量作成手法の改良によるXRAINレーダ雨量値の精度向上”、土木学会論文集B1(水工学) Vol.71 No.4、2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、精度の高い合成雨量データを作成することが可能な情報処理装置、レーダ装置、方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
実施形態に係る情報処理装置は、第1気象レーダにおいて第1時間帯に観測された第1レーダ雨量値を含む第1時間帯の第1気象データ、前記第1気象レーダとは異なる第2気象レーダにおいて前記第1時間帯に観測された第2レーダ雨量値を含む第1時間帯の第2気象データ、及び地上雨量計において前記第1時間帯に計測された地上雨量値を含む第1時間帯の地上雨量データを取得し、前記第1時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、当該第1時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値の精度に関する複数の第1特徴量を取得し、前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値及び前記取得された複数の第1特徴量に基づいて学習データを作成し、前記作成された学習データに基づいて、前記複数の第1特徴量が入力された場合に前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値に相当する雨量値を推定するためのパラメータを出力するように学習した学習済みモデルを生成し、前記第1気象レーダにおいて前記第1時間帯よりも後の第2時間帯に観測された第1レーダ雨量値を含む第2時間帯の第1気象データ及び前記第2気象レーダにおいて前記第2時間帯に観測された第2レーダ雨量値を含む第2時間帯の第2気象データを取得し、前記第2時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、当該第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値の精度に関する複数の第2特徴量を取得し、前記取得された複数の第2特徴量を前記生成された学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力されるパラメータを取得し、前記取得されたパラメータに基づいて、前記第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値を合成することによって合成雨量データを作成する処理部を具備する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示すブロック図。
図2】情報処理装置のシステム構成の一例を示す図。
図3】モデル生成処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図4】合成雨量データ作成処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図5】合成雨量データの表示態様の一例を示す図。
図6】本実施形態において作成された合成雨量データの精度について説明するための図。
図7】本実施形態の変形例において作成された合成雨量データの精度について説明するための図。
図8】第2実施形態におけるモデル生成処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図9】合成雨量データ作成処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図10】本実施形態において作成された合成雨量データの精度について説明するための図。
図11】第3実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示すブロック図。
図12】モデル生成処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図13】本実施形態において作成された合成雨量データの精度について説明するための図。
図14】第4実施形態におけるモデル生成処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図15】モデル生成処理において取得される特徴量の一覧を示す図。
図16】モデル生成処理において選択された特徴量の組み合わせの一例を示す図。
図17】合成雨量データ作成処理の処理手順の一例を示すフローチャート。
図18】本実施形態において作成された合成雨量データの精度について説明するための図。
図19】ランダムフォレストを適用した合成雨量データの表示例を示す図。
図20】サポートベクターマシンを適用した合成雨量データの表示例を示す図。
図21】勾配ブースティング決定木を適用した合成雨量データの表示例を示す図。
図22】第5実施形態に係る気象レーダの構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、各実施形態について説明する。
(第1実施形態)
まず、第1実施形態について説明する。本実施形態に係る情報処理装置(レーダ雨量値合成装置)は、アンテナ(送信機)から送信された電波が雨粒で反射されることによって当該アンテナ(受信機)によって受信される反射波(信号)に基づいて雨量値等を観測することができる複数の気象レーダ(レーダ装置)を備える気象レーダシステムに適用され、当該複数の気象レーダの各々において観測された雨量値(以下、レーダ雨量値と表記)を合成することによって広範囲かつ信頼性の高い合成雨量データを作成するために用いられる。
【0011】
ここで、本実施形態の比較例において作成される合成雨量データについて簡単に説明する。本実施形態の比較例においては、複数の気象レーダの各々において観測されたレーダ雨量値から高精度な合成雨量データを作成するために、例えば相対的に観測精度が高いと推測される条件の気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値の重みを大きくして加重平均するような手法が採用される。また、本実施形態の比較例においては、例えばレーダ雨量値の精度に関する複数の特徴量を基に気象レーダの優先順位を決定し、当該優先順位が高い気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値を選択する手法が採用される場合もある。
【0012】
なお、気象レーダの観測精度(レーダ雨量値の精度)は、例えば使用周波数(C帯/X帯)、偏波(単偏波/二重偏波)、アンテナ形状(パラボラ型/フェーズドアレイ型)及び送信機種別(固体素子型/電子管型)等によって異なる気象レーダの種別や、気象レーダ装置の諸元(送信電力、アンテナ利得及び最低受信感度等)、観測シーケンス(パルスヒット数及びアンテナ回転速度等)、信号処理仕様(干渉除去方式及びクラッタ除去方式等)、地理的条件(距離、高度及び遮蔽等)、気象条件(雨粒の粒径分布、粒子種別及び降雨分布等)及びこれらの組み合わせによって複雑に変動する。
【0013】
すなわち、気象レーダの観測精度に直接的または間接的に影響を与える特徴量は多数存在し、合成雨量データは、この多数の特徴量を考慮して作成されることが好ましい。
【0014】
しかしながら、本実施形態の比較例において合成雨量データを作成するために用いられる特徴量の組み合わせや当該特徴量に適用される係数及び閾値等は、レーダ雨量値の合成に関するアルゴリズムの設計者によって設定(決定)される。
【0015】
この場合、精度の高い合成雨量データを作成するために適切な特徴量、係数及び閾値等を設計者が決定することができればよいが、上記した多数の特徴量を全て設計者が分析し、適切な特徴量、係数及び閾値を決定することは困難である。
【0016】
このため、本実施形態の比較例においては、例えば1つから4つ程度の限られた特徴量のみを考慮して合成雨量データを作成しており、気象レーダの観測精度に関わる多数の特徴量を十分に活用することができていない。
【0017】
更に、近年では様々な種別の気象レーダが様々な機関により運用されていることから、このような気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値を精度よく合成することが必要である。しかしながら、気象レーダの種別や当該気象レーダを運用する機関が異なる場合には、上記した特徴量の種別及び品質に違いがある場合が多く、当該気象レーダの種別または当該気象レーダを運用する機関の様々な組み合わせに対して、上記した本実施形態の比較例において採用されている手法を拡張することは非常に困難である。
【0018】
そこで、本実施形態においては、気象レーダの観測精度(レーダ雨量値の精度)に関する多数の特徴量を考慮して複数の気象レーダが観測したレーダ雨量値を合成する(つまり、合成雨量データを作成する)ことが可能な情報処理装置を提供する。
【0019】
以下、本実施形態に係る情報処理装置について説明する。図1は、本実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示すブロック図である。
【0020】
図1に示すように、情報処理装置10は、第1データ取得部11、第1データ格納部12、第2データ取得部13、第2データ格納部14、処理部15及びモデル格納部16を含む。
【0021】
本実施形態においては複数の気象レーダとして第1及び第2気象レーダが用意されているものとし、情報処理装置10は、当該第1気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値と第2気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値とを合成することによって合成雨量データを作成する機能を有する。なお、本実施形態おける第1及び第2気象レーダは、同一の種別の気象レーダであってもよいし、異なる種別の気象レーダであってもよい。
【0022】
なお、本実施形態においては、後述するように所定の機械学習アルゴリズムを適用して生成される学習済みモデルを用いてレーダ雨量値を合成する構成を採用する。
【0023】
第1データ取得部11は、学習済みモデルを作成するためのデータを取得する。具体的には、第1データ取得部11は、第1気象レーダにおいて過去(第1時間帯)に観測されたレーダ雨量値を含む気象データ(以下、過去の第1気象データと表記)を取得する。なお、第1気象レーダは、当該第1気象レーダの観測範囲に含まれる複数の地点におけるレーダ雨量値を観測するように構成されている。以下、第1気象レーダの観測範囲に含まれる複数の地点(つまり、第1気象レーダがレーダ雨量値を観測することができる地点)を、便宜的に、第1気象レーダの観測地点と称する。なお、過去の第1気象データには、第1気象レーダの複数の観測地点の各々において観測されたレーダ雨量値が含まれている。
【0024】
また、第1データ取得部11は、第2気象レーダにおいて過去(第1時間帯)に観測されたレーダ雨量値を含む気象データ(以下、過去の第2気象データと表記)を取得する。なお、第2気象レーダは、当該第2気象レーダの観測範囲に含まれる複数の地点におけるレーダ雨量値を観測するように構成されている。以下、第2気象レーダの観測範囲に含まれる複数の地点(つまり、第2気象レーダがレーダ雨量値を観測することができる地点)を、便宜的に、第2気象レーダの観測地点と称する。なお、過去の第2気象データには、第2気象レーダの複数の観測地点の各々において観測されたレーダ雨量値が含まれている。
【0025】
更に、第1データ取得部11は、地上雨量計において過去(第1時間帯)に計測された地上雨量値を含む地上雨量データ(以下、過去の地上雨量データと表記)を取得する。なお、地上雨量計は、地上に設置することによって当該地上雨量計が設置された地点での雨量値を計測することが可能な機器である。本実施形態においては、例えば地域気象観測システム(AMeDAS:Automated Meteorological Data Acquisition System)において設置されている地上雨量計(によって計測された地上雨量値)を利用するものとする。以下、地上雨量計が設置されている地点を、便宜的に、地上雨量計の計測地点と称する。なお、地上雨量データには、地上雨量計の複数の計測地点の各々において計測された地上雨量値が含まれている。
【0026】
第1データ取得部11によって取得された過去の第1及び第2気象データと過去の地上雨量データとは、第1データ格納部12に格納される。
【0027】
第2データ取得部13は、上記した合成雨量データを作成するためのデータを取得する。この場合、第2データ取得部13は、第1気象レーダにおいて観測された現在のレーダ雨量値を含む気象データ(以下、現在の第1気象データと表記)を取得する。なお、現在の第1気象データには、第1気象レーダの複数の観測地点の各々におけるレーダ雨量値が含まれている。
【0028】
また、第2データ取得部13は、第2気象レーダにおいて観測された現在のレーダ雨量値を含む気象データ(以下、現在の第2気象データと表記)を取得する。なお、現在の第2気象データには、第2気象レーダの複数の観測地点の各々におけるレーダ雨量値が含まれている。
【0029】
なお、本実施形態における「現在」とは、上記した「過去(第1時間帯)」よりも後の時間帯(第2時間帯)を含む広義の「現在」を意図しており、狭義の現在の時刻等に制限されることは意図していない。
【0030】
上記したように本実施形態においては第1及び第2気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値(現在のレーダ雨量値)を合成する構成であるところ、当該第1及び第2気象レーダの観測範囲(複数の観測地点)の少なくとも一部は重複しているものとする。換言すれば、本実施形態においては、第1及び第2気象レーダの重複する観測範囲(観測地点)においてレーダ雨量値を合成することを想定している。
【0031】
第2データ取得部13によって取得された現在の第1及び第2気象データは、第2データ格納部14に格納される。
【0032】
処理部15は、学習部151及び合成部152を含む。学習部151は、上記した学習済みモデルを生成する処理を実行する機能部であり、学習データ作成部151a及び学習処理部151bを含む。
【0033】
学習データ作成部151aは、第1データ格納部12に格納された過去の第1及び第2気象データと過去の地上雨量データとを当該第1データ格納部12から取得する。学習データ作成部151aは、取得された過去の第1及び第2気象データに含まれるレーダ雨量値の精度に関する複数の特徴量を取得する。学習データ作成部151aは、取得された過去の地上雨量データに含まれる地上雨量値及び取得された複数の特徴量に基づいて学習済みモデルの生成に用いられるデータ(以下、学習データと表記)を作成する。
【0034】
学習処理部151bは、学習データ作成部151aによって作成された学習データに基づいて、上記した複数の特徴量が入力された場合に過去の地上雨量データに含まれる地上雨量値に相当する雨量値を推定するためのパラメータを出力する(つまり、特徴量から雨量値を予測する)ように学習した学習済みモデルを生成する。
【0035】
学習処理部151bによって生成された学習済みモデルは、モデル格納部16に格納される。
【0036】
合成部152は、合成雨量データを作成する(レーダ雨量値を合成する)処理を実行する機能部であり、特徴量取得部152a及び合成処理部152bを含む。
【0037】
特徴量取得部152aは、第2データ格納部14に格納された現在の第1及び第2気象データを当該第2データ格納部14から取得する。特徴量取得部152aは、取得された現在の第1及び第2気象データに含まれるレーダ雨量値の精度に関する複数の特徴量を取得する。なお、特徴量取得部152aによって作成される複数の特徴量の種類は、上記した学習データを作成するために学習データ作成部151aによって取得された複数の特徴量と対応しているものとする。
【0038】
なお、本実施形態における特徴量には例えば第1気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値の精度に関する特徴量(以下、第1気象レーダの特徴量と表記)と第2気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値の精度に関する特徴量(以下、第2気象レーダの特徴量と表記)とが含まれているが、上記したように本実施形態において第1及び第2気象レーダの種別は異なる場合があるため、当該第1気象レーダの特徴量(の種類)と当該第2気象レーダの特徴量(の種類)とは一致している必要はない。
【0039】
合成処理部152bは、モデル格納部16に格納された学習済みモデルを取得し、特徴量取得部152aによって取得された複数の特徴量を当該学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力されるパラメータを取得する。合成処理部152bは、取得されたパラメータに基づいて、上記した第2データ格納部14から取得された現在の第1及び第2気象データの各々に含まれるレーダ雨量値を合成することによって合成雨量データを作成する。
【0040】
なお、図1においては、便宜的に、過去の第1及び第2気象データと過去の地上雨量データとを取得する第1データ取得部11と、現在の第1及び第2気象データを取得する第2データ取得部13とが別個に設けられるものとして説明したが、当該第1データ取得部11及び第2データ取得部13は、1つのデータ取得部として実現されていても構わない。
【0041】
また、図1においては、便宜的に、過去の第1及び第2気象データと過去の地上雨量データとを格納する第1データ格納部12と、現在の第1及び第2気象データを格納する第2データ格納部14とが別個に設けられるものとして説明したが、当該第1データ格納部12及び第2データ格納部14は、1つのデータ格納部として実現されていてもよい。
【0042】
更に、本実施形態においては情報処理装置10が各部11~16を備えるものとして説明するが、当該各部11~16の一部は、当該情報処理装置10の外部に配置されていても構わない。
【0043】
図2は、図1に示す情報処理装置10のシステム構成の一例を示す。情報処理装置10は、CPU21、不揮発性メモリ22、RAM23及び通信デバイス24等を備える。
【0044】
CPU21は、情報処理装置10内の様々なコンポーネントの動作を制御するためのプロセッサである。CPU21は、単一のプロセッサであってもよいし、複数のプロセッサで構成されていてもよい。CPU21は、不揮発性メモリ22からRAM23にロードされる様々なプログラムを実行する。これらプログラムは、オペレーティングシステム(OS)及びレーダ雨量値合成プログラム23Aを含む様々なアプリケーションプログラムを含む。
【0045】
不揮発性メモリ22は、補助記憶装置として用いられる記憶媒体である。RAM23は、主記憶装置として用いられる記憶媒体である。図2においては、不揮発性メモリ22及びRAM23のみが示されているが、情報処理装置10は、例えばHDD(Hard Disk Drive)及びSSD(Solid State Drive)等の他の記憶装置を備えていてもよい。
【0046】
通信デバイス24は、有線通信または無線通信を実行するように構成されたデバイスである。
【0047】
なお、本実施形態において、図1に示す第1データ取得部11及び第2データ取得部13は、例えば各種データを受信するための通信デバイス24等によって実現される場合を想定しているが、当該データを入力するための他のインタフェース等によって実現されていてもよい。
【0048】
また、本実施形態において、図1に示す第1データ格納部12、第2データ格納部14及びモデル格納部16は、例えば不揮発性メモリ22または他の記憶装置等によって実現される。
【0049】
更に、本実施形態において、図1に示す処理部15は、少なくとも1つのプロセッサによって実現される。プロセッサは、例えば制御装置及び演算装置を含み、アナログまたはデジタル回路等で実現される。プロセッサは、上記したCPU21であってもよいし、汎用目的プロセッサ、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、ASIC、FPGA及びこれらの組み合わせであってもよい。
【0050】
なお、処理部15の一部または全ては、CPU21(つまり、情報処理装置10のコンピュータ)にレーダ雨量値合成プログラム23Aを実行させること、すなわち、ソフトウェアによって実現され得る。このレーダ雨量値合成プログラム23Aは、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に格納して頒布されてもよいし、ネットワークを通じて情報処理装置10にダウンロードされてもよい。なお、処理部15の一部または全ては、専用のハードウェア等によって実現されてもよい。
【0051】
なお、上記した図1及び図2においては情報処理装置10が1つの装置であるものとして説明したが、当該情報処理装置10は、複数の装置で構成されていてもよい。具体的には、情報処理装置10は、例えば第1データ取得部11、第1データ格納部12及び学習部151を含む第1装置(学習装置)と、第2データ取得部13、第2データ格納部14及び合成部152を含む第2装置(合成装置)とを備えるシステム(レーダ雨量値合成システム)として構成されていてもよい。なお、この場合、モデル格納部16は、第1装置に含まれていてもよいし、第2装置に含まれていてもよい。
【0052】
以下、本実施形態に係る情報処理装置10の動作について説明する。本実施形態において、情報処理装置10は、学習済みモデルを生成する処理(以下、モデル生成処理と表記)及び合成雨量データを作成する処理(以下、合成雨量データ作成処理と表記)を主に実行する。
【0053】
まず、図3のフローチャートを参照して、モデル生成処理の処理手順の一例について説明する。
【0054】
モデル生成処理において、第1データ取得部11は、過去の第1気象データ(第1気象レーダの過去の気象データ)を取得する(ステップS1)。ステップS1において取得される過去の第1気象データは、第1気象レーダの複数の観測地点の各々において所定の期間に観測された過去のレーダ雨量値を含む。この過去の第1気象データは、例えば第1気象レーダから取得されてもよいし、第1気象データを管理する外部装置(情報処理装置10及び第1気象レーダ以外の装置)から取得されてもよい。また、過去の第1気象データは、情報処理装置10の内部に予め格納(保持)されていてもよい。
【0055】
次に、第1データ取得部11は、過去の第2気象データ(第2気象レーダの過去の気象データ)を取得する(ステップS2)。ステップS2において取得される過去の第2気象データは、第2気象レーダの複数の観測地点の各々において上記した第1気象レーダと同一の期間に観測された過去のレーダ雨量値を含む。この過去の第2気象データは、例えば第2気象レーダから取得されてもよいし、第2気象データを管理する外部装置(情報処理装置10及び第2気象レーダ以外の装置)から取得されてもよい。また、過去の第2気象データは、情報処理装置10の内部に予め格納(保持)されていてもよい。
【0056】
ここで、本実施形態における気象データ(第1及び第2気象データ)について説明する。まず、気象レーダ(第1及び第2気象レーダ)は、アンテナから送信された電波が雨粒で反射された反射波を受信することで、当該反射波に基づく観測データを取得する。この場合、気象レーダは、当該気象レーダからの各距離、各方位角及び各仰角によって特定される当該気象レーダの観測地点(気象レーダの観測範囲に含まれる地点)毎の観測データを取得する。なお、気象レーダは、1分間隔で観測を行う(つまり、1分間隔で観測データを取得する)ものとする。なお、本実施形態においては、気象レーダは、1分間隔で観測を行うものとして説明するが、当該気象レーダの観測頻度は1分間隔に限らず、例えば30秒間隔や5分間隔であってもよい。
【0057】
ここで、気象レーダが例えば水平方向の振動成分を有する単一の電波(水平偏波)を送信するように構成されている単偏波レーダである場合、当該気象レーダによって取得される観測データは、受信電力、反射因子、ドップラー速度及びドップラー速度幅(ドップラー速度のばらつき)を含む。なお、受信電力及び反射因子は同義的に扱われる場合があるが、本実施形態においては、反射因子は、主として雨粒から反射して返ってくる電波の強さを表しており、受信電力から算出されるものとする。
【0058】
また、気象レーダが例えば垂直方向及び水平方向の振動成分を有する2種類の電波(偏波)を送信するように構成されているマルチパラメータレーダである場合、当該気象レーダによって取得される観測データは、上記した受信電力、反射因子、ドップラー速度、ドップラー速度幅に加えて、2種類の電波を送信することに基づく反射因子差、偏波間相関係数及び偏波間位相差を含む。
【0059】
ここで、レーダ雨量値R(mm/h)は、経験的な変換式である以下の式(1)を用いて、上記した観測データに含まれる反射因子Zから算出することができる。なお、式(1)におけるB及びβは、経験的に得られている定数である。
【数1】
【0060】
また、上記した観測データに含まれる偏波間位相差によれば偏波間位相差変化率を算出することができるが、レーダ雨量値Rは、以下の式(2)を用いて、当該偏波間位相差変化率KDPから算出することも可能である。なお、式(2)におけるa及びbは、経験的に得られている定数である。
【数2】
【0061】
なお、偏波間位相差変化率KDPは、以下の式(3)を用いて算出される。すなわち、偏波間位相差変化率KDPは、偏波間位相差ΦDPの距離rに対する変化率に相当する。
【数3】
【0062】
上記したように気象レーダがマルチパラメータレーダである場合、上記した式(1)または式(2)のうちの少なくとも一方を用いてレーダ雨量値が算出されるが、一般に、式(2)を用いて算出されたレーダ雨量値(つまり、偏波間位相差変化率から算出されたレーダ雨量値)の方が式(1)を用いて算出されたレーダ雨量値(つまり、反射因子から算出されたレーダ雨量値)に比べて精度が高い。このため、例えばレーダ雨量値が式(1)または式(2)を用いて算出されたこと(つまり、レーダ雨量値の算出手法)を示すフラグ値(以下、雨量値算出手法フラグと表記)のような情報は、気象レーダの観測精度の推定に有用なパラメータであるといえる。なお、雨量値算出手法フラグQは、例えば以下の式(4)のように表される。
【数4】
【0063】
更に、気象レーダが設置されている位置(レーダサイト)と当該気象レーダの観測地点との間に雨域が存在する場合には、気象レーダから送信される電波(送信波)及び当該観測地点からの反射波(受信波)が当該雨域によって減衰し、当該気象レーダの観測精度が劣化する。このような電波の減衰量を降雨減衰量という。
【0064】
ここで、例えばレーダサイトと所定の観測地点との間で発生する降雨減衰量は、レーダサイトと当該観測地点との間の各地点における降雨減衰量の積算値に相当する。例えば「国総研資料 第909号 「XRAIN 雨量観測の実用化技術に関する検討資料」 付録B-13」によれば、この降雨減衰量の積算値PIA(Path Integrated Attenuation)は、以下の式(4)を用いて算出される。
【数5】
【0065】
なお、上記した式(5)におけるNは気象レーダから該当する観測地点までの動径方向の観測データの数、drは気象レーダの動径方向の距離分解能(km)である。また、式(5)におけるAhは、気象レーダと観測地点との間の各地点における降雨減衰量である。すなわち、式(5)は、降雨減衰量Ahを距離方向に積算することを表している。なお、降雨減衰量Ahは、以下の式(6)を用いて、偏波間位相差変化率KDPと係数ah1及びah2とから算出される。
【数6】
【0066】
更に、係数ah1は以下の式(7)を用いて算出され、係数ah2は以下の式(8)を用いて算出される。なお、式(7)及び(8)におけるELは、観測仰角(°)である。
【数7】
【0067】
本実施形態における気象データ(第1及び第2気象データ)は、気象レーダにおいて観測されるレーダ雨量値に加えて、上記した当該気象レーダの観測地点毎の観測データに含まれる受信電力、反射因子、ドップラー速度、ドップラー速度幅、反射因子差、偏波間相関係数及び偏波間位相差、当該観測データから算出される偏波間位相差変化率、雨量値算出手法フラグ及び降雨減衰量の積算値のうちの少なくとも1つを含むものとする。以下の説明においては、気象データに含まれる観測地点毎の受信電力、反射因子、ドップラー速度、ドップラー速度幅、反射因子差、偏波間相関係数、偏波間位相差、偏波間位相差変化率、雨量値算出手法フラグ、及び降雨減衰量の積算値のうちの少なくとも1つを、便宜的に、観測地点データと称する。換言すれば、本実施形態において気象データは、複数の観測地点データを含む。
【0068】
なお、上記したステップS1においては過去の第1気象データが取得され、ステップS2においては過去の第2気象データが取得されるが、上記したように第1及び第2気象レーダの種別は異なっていてもよいため、当該過去の第1気象データ(に含まれる各観測地点データ)と当該過去の第2気象データ(に含まれる各観測地点データ)とは異なるデータであってもよい。換言すれば、過去の第1及び第2気象データのデータ種別及び品質等は異なっていてもよい。具体的には、過去の第1気象データに含まれる各観測地点データが受信電力、反射因子、ドップラー速度、ドップラー速度幅、反射因子差、偏波間相関係数、偏波間位相差、レーダ雨量値、偏波間位相差変化率、雨量値算出手法フラグ及び降雨減衰量の積算値である場合に、過去の第2気象データに含まれる各観測地点データはレーダ雨量値のみであってもよい。
【0069】
また、第1データ取得部11は、過去の地上雨量データを取得する(ステップS3)。ここで、ステップS3において取得される過去の地上雨量データは、複数の計測地点の各々に設置されている地上雨量計において計測された1時間雨量値(つまり、1時間毎に計測された計測地点毎の地上雨量値)を含む。なお、本実施形態においては、過去の地上雨量データに含まれる地上雨量値が1時間雨量値であるものとして説明するが、当該地上雨量値は10分雨量値等であってもよい。過去の地上雨量データは、例えば地上雨量計を備える地域気象観測システムまたは地上雨量データを管理する外部装置から取得することができるものとする。また、過去の地上雨量データは、情報処理装置10の内部に予め格納(保持)されていてもよい。
【0070】
なお、本実施形態において、上記した気象レーダの観測地点と地上雨量計の計測地点とは必ずしも一致している必要はないが、第1及び第2気象データ(第1及び第2気象レーダの観測期間)と地上雨量データ(地上雨量計の計測期間)とは時間的に対応しているものとする。
【0071】
図3においてはステップS1~S3の順に処理が実行されることが示されているが、当該ステップS1~S3の処理の順番は入れ替えられてもよいし、当該ステップS1~S3の処理は並列に実行されてもよい。
【0072】
なお、ステップS1~S3において取得された過去の第1気象データ、過去の第2気象データ及び過去の地上雨量データは、第1データ格納部12に格納される。
【0073】
ここで、本実施形態において、情報処理装置10によって作成される合成雨量データは、例えば当該合成雨量データに対して規定されている2次元または3次元の座標系における各座標点に第1または第2気象データに含まれるレーダ雨量値(つまり、第1または第2気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値)を割り当てることによって作成される。なお、レーダ雨量値が割り当てられる座標点は、合成雨量データが作成される範囲を格子状に分割した際の格子点に相当する。
【0074】
このため、学習データ作成部151aは、ステップS1及びS2において取得された過去の第1及び第2気象データ(第1データ格納部12に格納された過去の第1及び第2気象データ)を、合成雨量データに対して規定されている座標系に対応するデータに変換する(ステップS4)。
【0075】
なお、本実施形態においては、合成雨量データに対して規定されている座標系が例えば緯度及び経度によって規定される座標平面であるものとして説明する。
【0076】
ここで、上記したように過去の第1及び第2気象データは、第1及び第2気象レーダの複数の観測地点に対応する観測地点データを含む。この場合、学習データ作成部151aは、第1及び2気象データに含まれる複数の観測地点データを、合成雨量データに対して規定されている座標平面(2次元の座標系)における複数の座標点に対応する複数の座標点データに変換する。
【0077】
これによれば、例えば過去の第1気象データに含まれる観測地点毎の受信電力、反射因子、ドップラー速度、ドップラー速度幅、反射因子差、偏波間相関係数、偏波間位相差、レーダ雨量値、偏波間位相差変化率、雨量値算出手法フラグ及び降雨減衰量の積算値が、合成雨量データに対して規定されている座標平面における座標点毎の受信電力、反射因子、ドップラー速度、ドップラー速度幅、反射因子差、偏波間相関係数、偏波間位相差、レーダ雨量値、偏波間位相差変化率、雨量値算出手法フラグ及び降雨減衰量の積算値に変換される。また、例えば過去の第2気象データに含まれる観測地点毎のレーダ雨量値が、合成雨量データに対して規定されている座標平面における座標点毎のレーダ雨量値に変換される。
【0078】
なお、上記した第1及び第2気象レーダの複数の観測地点と合成雨量データに対して規定されている座標平面における複数の座標点との対応関係(位置関係)は予め設定(認識)されており、ステップS4の処理は、当該対応関係に基づいて実行されればよい。
【0079】
ステップS4の処理が実行されると、学習データ作成部151aは、当該ステップS4において変換された過去の第1及び第2気象データに基づいて、当該過去の第1及び第2気象データに含まれるレーダ雨量値の精度に関する複数の特徴量を取得する(ステップS5)。なお、ステップS5の処理はステップS4の処理が実行された第1及び第2気象データに基づいて実行されるため、当該ステップS5においては、合成雨量データに規定されている座標平面における座標点毎に複数の特徴量が取得される。
【0080】
以下、ステップS5の処理について説明する。まず、学習データ作成部151aは、例えば第1及び第2気象データに含まれる座標点データを特徴量として取得(抽出)する。上記したように過去の第1気象データに含まれる座標点データが受信電力、反射因子、ドップラー速度、ドップラー速度幅、反射因子差、偏波間相関係数、偏波間位相差、レーダ雨量値、偏波間位相差変化率、雨量値算出手法フラグ及び降雨減衰量の積算値である場合には、学習データ作成部151aは、座標点毎の受信電力、反射因子、ドップラー速度、ドップラー速度幅、反射因子差、偏波間相関係数、偏波間位相差、レーダ雨量値、偏波間位相差変化率、雨量値算出手法フラグ及び降雨減衰量の積算値の各々を特徴量として取得する。更に、上記したように過去の第2気象データに含まれる座標点データがレーダ雨量値である場合には、学習データ作成部151aは、座標点毎のレーダ雨量値を特徴量として取得する。
【0081】
また、本実施形態においては、上記した特徴量以外に、当該過去の第1及び第2気象データを組み合わせたレーダ雨量値の精度に関する新たな特徴量を取得(作成)してもよい。
【0082】
具体的には、学習データ作成部151aは、例えば過去の第1気象データに含まれるレーダ雨量値(つまり、第1気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値)と過去の第2気象データに含まれるレーダ雨量値(つまり、第2気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値)との差を新たな特徴量として作成する。この場合、学習データ作成部151aは、同一の座標点に対応するレーダ雨量値の差を算出する。
【0083】
なお、本実施形態においては主に2つの気象レーダ(第1及び第2気象レーダ)において観測されたレーダ雨量値を合成する場合を想定しているが、本実施形態は、例えば3つ以上の気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値を合成する場合に適用されてもよい。この場合、2つの気象レーダの組み合わせ毎のレーダ雨量値の差を新たな特徴量として取得することができる。
【0084】
また、上記したように3つ以上の気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値を合成する場合には、基準値と当該3つ以上の気象レーダの各々において観測されたレーダ雨量値との差を新たな特徴量として取得してもよい。なお、基準値とは、3つ以上の気象レーダのうちの1つにおいて観測されたレーダ雨量値であってもよいし、当該3つ以上の気象レーダのうちの2つ以上において観測されたレーダ雨量値を合成した合成雨量値であってもよい。なお、ここで説明する合成雨量値(つまり、特徴量を取得するために基準値として用いる合成雨量値)は、2つ以上の気象レーダの各々において観測されたレーダ雨量値の平均値であってもよいし、当該2つ以上の気象レーダの観測精度に基づいて選択された1つの気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値であってもよい。
【0085】
ここではレーダ雨量値の差を新たな特徴量として取得するものとして説明したが、レーダ雨量値以外の他の特徴量の差を新たな特徴量として取得してもよい。
【0086】
また、学習データ作成部151aは、降雨分布を表す特徴量を新たな特徴量として取得(作成)してもよい。降雨分布を表す特徴量は、第1及び第2気象レーダの各々において観測されたレーダ雨量値の空間平均値、標準偏差(分散値)、最大値及び降雨が観測された座標点(格子点)の割合等を含む。
【0087】
ところで、上記したように地上雨量値は1時間雨量であるところ、第1及び第2気象レーダにおいては例えば1分間隔で観測データが取得されている(つまり、1分間隔の特徴量が取得される)。このため、学習データ作成部151aは、上記したように取得された複数の特徴量の各々から、過去の地上雨量データに含まれる地上雨量値(AMeDAS1時間雨量値)に対応する特徴量を取得(作成)する。地上雨量値に対応する特徴量は、例えば当該地上雨量計の計測地点(つまり、地上雨量計が設置されている地点)に最も近い座標点(以下、対象座標点と表記)について取得された特徴量のうち、当該地上雨量値が計測された1時間の間(以下、地上雨量値の計測期間と表記)に該当する特徴量の平均値とする。換言すれば、地上雨量値に対応する特徴量は、当該地上雨量値の計測期間と同期間の時間サンプルの平均をとることで取得される。具体的には、例えば第1気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値を例にして説明すると、地上雨量値に対応するレーダ雨量値(特徴量)は、当該地上雨量値が計測された1時間の間に第1気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値の平均値である。ここでは第1気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値について説明したが、他の特徴量についても同様である。すなわち、ステップS5においては、地上雨量値に対応する複数の特徴量が取得される。
【0088】
なお、地上雨量値に対応する特徴量は、他の手法で取得(作成)されてもよい。具体的には、地上雨量値に対応する特徴量は、例えばレーダ雨量値を考慮して取得されてもよい。例えば特徴量が雨量値算出手法フラグであるものとすると、対象座標点について取得されたレーダ雨量値のうちの地上雨量値の計測期間に該当するレーダ雨量値の積算値に対する雨量値算出手法フラグの値が1であるレーダ雨量値が占める割合を、地上雨量値に対応する雨量値算出手法フラグ(特徴量)として取得してもよい。
【0089】
この場合における地上雨量値に対応する特徴量Qhourは、以下の式(9)を用いて算出される。
【数8】
【0090】
なお、式(9)における雨量値算出手法フラグQは、上記した式(4)に表されるように、反射因子Zから算出されたレーダ雨量値Rの場合は0、偏波間位相差変化率KDPから算出されたレーダ雨量値Rの場合は1である。また、式(9)におけるNは、上記した地上雨量値の計測期間中のレーダ雨量値(サンプル)の数である。
【0091】
式(9)を用いて算出される地上雨量値に対応する特徴量Qhourは、地上雨量値の計測期間中のサンプルの平均値を地上雨量値に対応する特徴量とする場合に比べ、特徴量の特性の変化が少ない。一般に機械学習アルゴリズムを適用する場合、学習済みモデルを生成する際(本実施形態では、後述する図3に示すステップS7に相当)に用いる特徴量の特性と、学習済みモデルを使用して予測結果を出力する際(本実施形態では、後述する図4に示すステップS16に相当)に用いる特徴量の特性とは、同一に近いほど好ましいことから、雨量値算出手法フラグQにおいては、式(9)を用いて地上雨量値に対応する特徴量を取得することが有用であると考えられる。
【0092】
同様に、地上雨量値の計測期間内のサンプルの平均値を地上雨量値に対応する特徴量とする場合に比べ、式(9)と同等の式により地上雨量値に対応する特徴量を算出する方が特性の変化が少ないと考えられる特徴量においては、式(9)と同等の式により地上雨量値に対応する特徴量を算出することが好ましい。
【0093】
次に、式(9)を用いて算出される地上雨量値に対応する特徴量Qhourが、地上雨量値の計測期間中のサンプルの平均値を地上雨量値に対応する特徴量とする場合に比べ、サンプル毎の特徴量に対する特性の変化が少ないことを示す。まず、雨量値算出手法フラグQは、上記したように偏波間相関位相差変化率と反射因子とのいずれからサンプルのレーダ雨量値を算出したかを示すフラグである。言い換えると、雨量値算出手法フラグQは偏波間相関位相差変化率と反射因子とのいずれがサンプルのレーダ雨量値の算出に寄与したかを示す特徴量である。各サンプルの雨量値算出手法フラグQから、地上雨量値の計測期間中のサンプルの平均値、または式(9)により地上雨量値に対応する特徴量を作成する場合、地上雨量値に対応する特徴量は0から1の間の値となる。この地上雨量値に対応する特徴量は、1に近いほど偏波間位相差変化率の寄与が大きいことを示し、0に近いほど反射因子の寄与が大きいことを示す特徴量であると考えられる。
【0094】
上記を踏まえ、例として、地上雨量値の計測期間中の半分のサンプルのレーダ雨量値が30mm/hかつ雨量値算出手法フラグQが1(偏波間位相差変化率からレーダ雨量値が算出されたサンプル)、残りの半分のサンプルのレーダ雨量値が2mm/hかつ雨量値算出手法フラグQが0(反射因子からレーダ雨量値が算出されたサンプル)である場合について説明する。この場合、地上雨量値に対応するレーダ雨量値は16mm/h(地上雨量値の計測期間中のサンプルの平均値)となる。ここで、地上雨量値に対応するレーダ雨量値16mm/hのうち15mm/hは雨量値算出手法フラグQが1のレーダ雨量値のサンプルの寄与によるものである。また、地上雨量値の計測期間中の雨量値算出手法フラグのサンプルの平均値は0.50、式(9)を用いて算出されるQhourは0.94である。地上雨量値の計測期間中の雨量値算出手法フラグのサンプルの平均値0.50は、地上雨量値に対応するレーダ雨量値16mm/hに対する偏波間位相差変化率及び反射因子の寄与の大きさが同等であることを意味し、偏波間位相差変化率の寄与が射因子の寄与に比べ大きいことを反映できていない。一方で、式(9)を用いて算出されたQhour=0.94(=15/16)を用いる場合、地上雨量値に対応するレーダ雨量値16mm/hに対して偏波間位相差変化率の寄与が反射因子の寄与に比べ大きいことを反映できている。このように、雨量値算出手法フラグQにおいては、レーダ雨量値を考慮して(つまり、式(9)を用いて)地上雨量値に対応する特徴量を取得する方が、地上雨量値の計測期間中のサンプルの平均値を地上雨量値に対応する特徴量とする場合に比べ、サンプルごとの特徴量に対する特性の変化が少ない。
【0095】
なお、ここで説明した特徴量は一例であり、ステップS5においては、過去の第1及び第2気象データに基づいてレーダ雨量値の精度に関する複数の特徴量が取得されればよい。すなわち、ステップS5において取得される複数の特徴量は、ここで説明した複数の特徴量のうちの一部が省略されたものであってもよいし、ここで説明した特徴量以外の特徴量を含むものであってもよい。
【0096】
ステップS5の処理が実行されると、学習データ作成部151aは、ステップS3において取得された過去の地上雨量データ(第1データ格納部12に格納された過去の地上雨量データ)及び当該ステップS5において取得された複数の特徴量(地上雨量値に対応する複数の特徴量)に基づいて学習データを作成する(ステップS6)。
【0097】
この場合、学習データ作成部151aは、過去の地上雨量データに含まれる地上雨量値(1時間雨量値)を教師データ(真値)とする学習データを作成する。具体的には、学習データ作成部151aは、上記した対象座標点(地上雨量計の計測地点に最も近い座標点)毎に、例えば過去の地上雨量データに含まれる地上雨量値に最も近いレーダ雨量値(当該地上雨量値に対応するレーダ雨量値)を観測した第1または第2気象レーダを識別するための識別情報(教師データ)と、当該地上雨量値に対応する複数の特徴量とを含むデータセットを学習データとして作成する。
【0098】
なお、ここでは地上雨量値に最も近いレーダ雨量値を観測した第1または第2気象レーダを識別するための識別情報を教師データとするものとして説明したが、最も近いレーダ雨量値を観測した1つの気象レーダに限られず、当該地上雨量値との差分が小さい1つ以上の気象レーダを識別するための識別情報を教師データとしてもよい。
【0099】
また、第1または第2気象レーダを識別するための識別情報としては、例えば当該第1または第2気象レーダに割り当てられている番号(以下、レーダ番号と表記)等を用いることができる。
【0100】
また、詳しい説明については省略するが、ステップS3において取得された過去の地上雨量データに時間が異なる複数の地上雨量値が含まれている場合、上記したステップS5及びS6の処理は、当該時間(地上雨量値)毎に実行される。
【0101】
次に、学習処理部151bは、ステップS6において作成された学習データを用いた学習処理を実行する(ステップS7)。
【0102】
ステップS7においては、地上雨量値に対応する複数の特徴量の各々を説明変数、教師データ(レーダ番号)を目的変数として教師あり学習が行われる。なお、教師あり学習は、例えばランダムフォレスト、サポートベクターマシン、勾配ブースティング決定木及びニューラルネットワーク等の既知の機械学習アルゴリズムに基づいて行われる。また、教師あり学習を行う手法(機械学習アルゴリズム)に合わせて、各特徴量の値の分布を平均0、分散1のデータに変換する標準化等の前処理がステップS7において実行されてもよい。
【0103】
上記したステップS7の処理が実行された場合には、複数の特徴量が入力された場合に、地上雨量値に相当するレーダ雨量値(精度の高いレーダ雨量値)を観測すると推定(予測)される気象レーダに割り当てられているレーダ番号を出力するように学習した(構築された)学習済みモデルが生成される。なお、本実施形態における学習済みモデルは、複数の特徴量に応じて、上記した合成雨量データにおいて規定されている座標平面における座標点毎にレーダ番号を出力するように学習するものとする。本実施形態においては、このようなレーダ番号を地上雨量値に相当する雨量値を推定するためのパラメータとして、合成雨量データを作成する際に利用する。
【0104】
ステップS7の処理が実行されることによって生成された学習済みモデルは、モデル格納部16に格納される。
【0105】
なお、図3に示すモデル生成処理によって生成された学習済みモデルは、続く合成雨量データ作成処理(図4に示す処理)において繰り返し使用することが可能である。このため、図3に示すモデル生成処理は、合成雨量データ作成処理が実行される毎に実行される必要はない。また、図3に示すモデル生成処理を実行する学習部151と図4に示す合成雨量データ作成処理を実行する合成部152は別個の装置であってもよい。
【0106】
次に、図4のフローチャートを参照して、合成雨量データ作成処理の処理手順の一例について説明する。
【0107】
合成雨量データ作成処理において、第2データ取得部13は、現在の第1気象データ(第1気象レーダの現在の気象データ)を取得する(ステップS11)。ステップS11において取得される現在の第1気象データは、第1気象レーダの複数の観測地点の各々において観測された現在のレーダ雨量値を含む。この現在の第1気象データは、例えば第1気象レーダから取得されてもよいし、第1気象データを管理する外部装置(情報処理装置10及び第1気象レーダ以外の装置)から取得されてもよい。
【0108】
次に、第2データ取得部13は、現在の第2気象データ(第2気象レーダの現在の気象データ)を取得する(ステップS12)。ステップS12において取得される現在の第2気象データは、第2気象レーダの複数の観測地点の各々において観測された現在のレーダ雨量値を含む。この現在の第2気象データは、例えば第2気象レーダから取得されてもよいし、第2気象データを管理する外部装置(情報処理装置10及び第2気象レーダ以外の装置)から取得されてもよい。
【0109】
ここで、上記した過去の第1及び第2気象データはそれぞれ複数の観測地点データを含むものとして説明したが、現在の第1及び第2気象データにおいても当該過去の第1及び第2気象データに含まれる複数の観測地点データとデータ種別及び品質が同一の観測地点データ(現在の観測地点データ)を含む。つまり、例えば過去の第1気象データに含まれる各観測地点データ(過去の各観測地点データ)が受信電力、反射因子、ドップラー速度、ドップラー速度幅、反射因子差、偏波間相関係数、偏波間位相差、レーダ雨量値、偏波間位相差変化率、雨量値算出手法フラグ及び降雨減衰量の積算値である場合には、現在の第1気象データに含まれる各観測地点データも同様に、受信電力、反射因子、ドップラー速度、ドップラー速度幅、反射因子差、偏波間相関係数、偏波間位相差、レーダ雨量値、偏波間位相差変化率、雨量値算出手法フラグ及び降雨減衰量の積算値である。また、例えば過去の第2気象データに含まれる各観測地点データがレーダ雨量値のみである場合には、現在の第2気象データに含まれる各観測地点データも同様に、レーダ雨量値のみである。
【0110】
図4においてはステップS11及びS12の順に処理が実行されることが示されているが、当該ステップS11及びS12の処理の順番は入れ替えられてもよいし、当該ステップS11及びS12の処理は並列に実行されてもよい。
【0111】
なお、ステップS11及びS12において取得された現在の第1及び第2気象データは、第2データ格納部14に格納される。
【0112】
次に、特徴量取得部152aは、ステップS11及びS12において取得された現在の第1及び第2気象データ(第2データ格納部14に格納された現在の第1及び第2気象データ)を、合成雨量データに対して規定されている座標系に対応するデータに変換する(ステップS13)。なお、ステップS13の処理は過去の第1及び第2気象データを現在の第1及び第2気象データとした点以外は上記した図3に示すステップS4の処理と同様の処理であるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0113】
ステップS13の処理が実行されると、特徴量取得部152aは、当該ステップS13において変換された現在の第1及び第2気象データに基づいて、当該現在の第1及び第2気象データに含まれるレーダ雨量値の精度に関する複数の特徴量を取得する(ステップS14)。なお、ステップS14の処理は過去の第1及び第2気象データを現在の第1及び第2気象データとした点以外は上記した図3に示すステップS5の処理と同様の処理であるため、ここではその詳しい説明を省略する。すなわち、ステップS14においては、図3に示すステップS5において取得される特徴量と種類が同一の特徴量が取得される。
【0114】
ただし、図3に示すステップS5においては地上雨量値(が計測された1時間)に対応する複数の特徴量が取得されるものとして説明したが、合成雨量データ作成処理においては現在の第1及び第2気象データが取得されているため、ステップS14においては、現在(の時間)に対応する複数の特徴量が得される。
【0115】
次に、合成処理部152bは、上記したモデル生成処理において生成された学習済みモデルを用いて、現在の第1及び第2気象データに含まれるレーダ雨量値(つまり、第1及び第2気象レーダにおいて観測された現在のレーダ雨量値)を合成する処理を実行する。
【0116】
この場合、合成処理部152bは、上記したステップS14において取得された複数の特徴量をモデル格納部16に格納されている学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから座標点毎に出力されるレーダ番号(第1または第2気象レーダに割り当てられている番号)を取得する(ステップS15)。なお、ステップS15において取得される座標点毎のレーダ番号は、当該座標点において地上雨量値に近いレーダ雨量値を観測すると推定される気象レーダ(第1または第2気象レーダ)に割り当てられているレーダ番号に相当する。
【0117】
次に、合成処理部152bは、ステップS15において座標点毎に取得されたレーダ番号に基づいて合成雨量データを作成する(ステップS16)。
【0118】
ここで、合成雨量データは、上記したように当該合成雨量データにおいて規定されている座標平面における各座標点に合成雨量値を割り当てることによって作成される。この場合、合成処理部152bは、ステップS15において特定の座標点について取得されたレーダ番号が割り当てられている気象レーダ(第1または第2気象レーダ)において観測されたレーダ雨量値(当該座標点に対応する現在のレーダ雨量値)を合成雨量値として当該座標点に割り当てる処理を、全ての座標点に対して実行する。
【0119】
具体的には、例えば合成雨量データにおいて規定されている座標平面における第1座標点について第1気象レーダに割り当てられているレーダ番号が取得(推定)されている場合には、当該第1座標点には第1気象レーダにおいて観測された現在のレーダ雨量値(つまり、現在の第1気象データに含まれるレーダ雨量値)が割り当てられる。また、例えば合成雨量データにおいて規定されている座標平面における第2座標点について第2気象レーダに割り当てられているレーダ番号が取得(推定)されている場合には、当該第2座標点には第2気象レーダにおいて観測された現在のレーダ雨量値(つまり、現在の第2気象データに含まれるレーダ雨量値)が割り当てられる。
【0120】
上記した合成雨量データ作成処理が実行されることによって作成された合成雨量データは、例えばユーザによって使用される端末装置(例えば、スマートフォンまたはタブレットコンピュータ等)等において表示される。この場合、合成雨量データは、例えば図5に示すように、地図上に重畳させる態様で表示され得る。これによれば、各座標点に割り当てられた合成雨量値に応じた色を地図上に表示することができる。
【0121】
上記したように本実施形態におけるモデル学習処理においては、過去(第1時間帯)の第1及び第2気象データに含まれるレーダ雨量値(第1時間帯に観測された第1及び第2レーダ雨量値)の精度に関する複数の特徴量(第1特徴量)が取得され、過去の地上雨量データに含まれる地上雨量値及び当該複数の特徴量に基づいて学習データが作成され、当該学習データに基づいて、複数の特徴量が入力された場合に過去の地上雨量データに含まれる地上雨量値に相当する雨量値を推定するためのパラメータを出力するように学習した学習済みモデルが生成される。
【0122】
また、本実施形態における合成雨量データ作成処理においては、現在(第1時間帯よりも後の第2時間帯)の第1及び第2気象データに含まれるレーダ雨量値(第2時間帯に観測された第1及び第2レーダ雨量値)の精度に関する複数の特徴量(第2特徴量)が取得され、当該複数の特徴量を学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力されるパラメータが取得され、当該パラメータに基づいて現在の第1及び第2気象データに含まれるレーダ雨量値を合成することによって合成雨量データが作成される。
本実施形態においては、気象レーダの観測精度(レーダ雨量値の精度)に直接的または間接的に影響を与える特徴量が多数存在する場合であっても、機械学習アルゴリズムを適用することによって当該多数の特徴量を十分活用することが可能であるため、精度の高い合成雨量データを作成することができる。
【0123】
ここで、本実施形態において作成された合成雨量データの精度について簡単に説明する。例えば0.5mm/h以上の地上雨量値を計測した地上雨量計が設置されている計測地点i(AMeDAS地点)における地上雨量値(1時間雨量値)yを真値とし、当該計測地点に最も近い座標点(格子点)に割り当てられた合成雨量値の1時間平均値Rを以下の式(10)に示すRMSE(Root Mean Squared Error)により評価することを考える。
【数9】
【0124】
なお、式(10)におけるNは、評価の対象となる期間中に0.5mm/h以上の地上雨量値が計測された回数(つまり、AMeDASデータの総数)である。
【0125】
図6は、上述した本実施形態の比較例において作成された合成雨量データと、本実施形態において作成された合成雨量データとのRMSEの比較結果を示している。RMSEは値が小さいほど精度が高いことを表す精度評価指標であるが、図6に示すように、本実施形態の比較例において作成された合成雨量データのRMSEよりも、本実施形態において作成された合成雨量データのRMSEの方が値が小さい。すなわち、図6によれば、本実施形態に比較例に比べて、本実施形態は、高精度な合成雨量データの作成を実現することができるといえる。
【0126】
更に、本実施形態においてはレーダ雨量値を合成する気象レーダの種別や当該気象レーダを運用する機関が異なる(つまり、第1及び第2気象データのデータ種別や品質が異なる)ような場合であっても適用可能であるため、様々な気象レーダシステムに対して容易に導入することが可能である。
【0127】
ところで、本実施形態においては、学習データが過去の第1及び第2気象データに基づいて取得された複数の特徴量と過去の地上雨量データによって示される地上雨量値に近いレーダ雨量値を観測した第1または第2気象レーダを識別するための識別情報(第1または第2気象レーダに割り当てられているレーダ番号)とを含み、学習済みモデルが当該複数の特徴量が入力された場合に当該レーダ番号を出力するように学習し、現在の第1及び第2気象データに基づいて取得された複数の特徴量が入力された場合に学習済みモデルから出力されるレーダ番号が割り当てられている第1または第2気象レーダにおいて観測された現在のレーダ雨量値を合成雨量値として含む合成雨量データが作成されるものとして主に説明したが、本実施形態は、上記したように地上雨量値に相当する雨量値を推定するためのパラメータを出力するように学習した学習済みモデルを用いて合成雨量データを作成する構成であればよい。
【0128】
具体的には、学習済みモデルは過去の第1及び第2気象データに基づいて取得された複数の特徴量が入力された場合にパラメータとして地上雨量値に近いレーダ雨量値を観測する確率を第1及び第2気象レーダ毎に出力するように学習していてもよい。なお、この学習済みモデルは、上記したレーダ番号と同様に、座標点毎に確率を出力するものとする。この場合、合成雨量データは、現在の第1及び第2気象データに基づいて取得された複数の特徴量が入力された場合に学習済みモデルからパラメータとして第1及び第2気象レーダ毎に出力される確率を重みとして当該第1及び第2気象レーダにおいて観測された現在のレーダ雨量値を合成することによって作成される。具体的には、例えば特定の座標点について学習済みモデルから出力された第1気象レーダの確率が80%であり、第2気象レーダの確率が20%であるものとすると、第1気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値×80%と、第2気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値×20%とを加算した結果(つまり、第1及び第2気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値を加重平均した値)を当該座標点に対応する合成雨量値として含む合成雨量データを作成することができる。
【0129】
更に、本実施形態においては学習データが複数の特徴量とレーダ番号とを含むものとして説明したが、例えばレーダ番号ではなく地上雨量値を直接推定することが可能な学習済みモデルを生成するために、当該学習データは、過去の第1及び第2気象データに基づいて取得された複数の特徴量と過去の地上雨量データに含まれる地上雨量値(教師データ)とを含んでいてもよい。このような学習データによれば、複数の特徴量が入力された場合にパラメータとして地上雨量値に相当する推定雨量値を出力するように学習済みモデルを学習させることができ、現在の第1及び第2気象レーダに基づいて取得された複数の特徴量が入力された場合に座標点毎に学習済みモデルからパラメータとして出力される推定雨量値を含む合成雨量データを作成することができる。
【0130】
なお、上記したように地上雨量値を直接推定することが可能な学習済みモデルを用いて合成雨量データを作成する構成を本実施形態の変形例とすると、図7は、本実施形態の比較例において作成された合成雨量データと、本実施形態の変形例において作成された合成雨量データとのRMSEの比較結果を示している。図7に示すように、本実施形態の比較例において作成された合成雨量データのRMSEよりも、本実施形態において作成された合成雨量データのRMSEの方が値が小さい。すなわち、図7によれば、本実施形態の比較例に比べて、本実施形態の変形例は、高精度な合成雨量データの作成を実現することができるといえる。
【0131】
また、上記した本実施形態においては学習済みモデルから出力されたレーダ番号に基づいて選択されたレーダ雨量値(つまり、第1または第2気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値)を合成雨量値として含む合成雨量データが作成されるが、本実施形態の変形例は、複数の気象レーダ(第1及び第2気象レーダ)において観測されたレーダ雨量値とは異なる新たな合成雨量値を含む合成雨量データが作成される構成に相当する。このため、本実施形態の変形例においては、合成雨量データに含まれる合成雨量値の自由度が高く、本実施形態と比べて、地上雨量値により近い合成雨量値(推定雨量値)を得ることができる可能性が高い。
【0132】
一方、本実施形態の変形例において過去の気象データ(つまり、学習データ)とは降雨事例(局所的大雨、台風及び前線等)が類似していない気象データ(つまり、珍しい降雨事例の気象データ)が現在の気象データとして取得された場合には、学習済みモデルから出力される推定雨量値の精度が不安定になる可能性がある。このため、合成雨量データの安定性を重視する場合には、本実施形態において説明した学習済みモデルを用いるようにしてもよい。
【0133】
なお、本実施形態においては、例えば第1気象データが、当該第1気象レーダから送信された電波の反射波(第1反射波)に基づいて算出される第1気象レーダの各観測地点におけるレーダ雨量値(第1レーダ雨量値)に加えて、受信電力、反射因子、ドップラー速度、ドップラー速度幅、反射因子差、偏波間相関係数、偏波間位相差、偏波間位相差変化率、レーダ雨量値の算出手法を示すフラグ値(雨量値算出手法フラグ)、及び降雨減衰量の積算値のうちの少なくとも1つを含むものとして説明したが、当該第1気象データは、これら以外を含むデータであってもよい。ここでは第1気象データについて説明したが、第2気象データについても同様である。
【0134】
また、本実施形態においては、合成雨量データに対して2次元の座標系(座標平面)が規定されているものとして主に説明したが、当該座標系は緯度、経度及び高度によって規定される3次元の座標系(3次元座標空間)であってもよい。すなわち、本実施形態において作成される合成雨量データは、3次元座標空間における各座標点に合成雨量値が割り当てられたデータであってもよい。
【0135】
この場合、地上付近(低仰角)の観測地点毎の観測地点データを含む第1及び第2気象データに基づいて取得される複数の特徴量について学習データを作成し、合成雨量データに対して規定されている座標空間における座標点毎に学習済みモデルによる推定を行う(つまり、地上雨量値に相当する雨量値を推定するためのパラメータを出力する)ことで、3次元の合成雨量データを作成することが可能となる。なお、合成雨量データに規定されている座標空間における座標地点毎の特徴量は、地上付近(低仰角)から上空(高仰角)の観測地点毎の観測地点データを含む第1及び第2気象データに基づいて取得すればよい。
【0136】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。本実施形態においては、前述した第1実施形態と同様の部分についてはその詳しい説明を省略し、当該第1実施形態とは異なる部分について主に述べる。なお、本実施形態に係る情報処理装置の構成は、前述した第1実施形態と同様であるため、適宜、図1等を用いて説明する。
【0137】
前述した第1実施形態においては学習済みモデルの生成及び合成雨量データの作成に第1及び第2気象データを利用する構成について説明したが、本実施形態は、例えば外部装置によって提供される複数の気象要素に関する予報値を含む予報データを更に利用する点で、当該第1実施形態とは異なる。具体的には、本実施形態においては、例えば気象庁に導入されているメソ数値予報モデルを用いて得られる数値予報データ(GPV)を利用するものとする。
【0138】
以下、本実施形態に係る情報処理装置10の動作について説明する。ここでは、前述した第1実施形態と同様に、モデル生成処理及び合成雨量データ作成処理について説明する。
【0139】
まず、図8のフローチャートを参照して、モデル生成処理の処理手順の一例について説明する。
【0140】
本実施形態におけるモデル生成処理においては、前述した図3に示すステップS1及びS2の処理に相当するステップS21及びS22の処理が実行される。
【0141】
次に、第1データ取得部11は、過去の予報データ(過去の予報値を含む予報データ)を取得する(ステップS23)。過去の予報データは、例えば上記したメソ数値予報モデルGPVを用いて得られている過去の数値予報データであり、当該メソ数値予報モデルGPVを運用する外部装置等から取得される。また、過去の予報データは、情報処理装置10の内部に予め格納(保持)されていてもよい。
【0142】
ここで、本実施形態における予報データ(数値予報データ)について説明する。予報データは、例えば39時間または78時間先までの地上面及び複数の気圧面(高度)における各気象要素について、約5kmの水平格子点間隔で配置されている地点で予報した数値(予報値)を含むデータである。なお、以下の説明においては、各気象要素について数値が予報される複数の地点の各々を、便宜的に、予報地点と称する。
【0143】
なお、予報データにおいて数値が予報される気象要素には、地上面の気温、地上面の海面較正気圧、地上面の風速、地上面の雲量、各気圧面の上昇流(鉛直流)、各気圧面の気温、各気圧面の風速及び各気圧面の相対湿度のうちの少なくとも1つを含む。このような気象要素は、降雨の性質(層状性降雨、対流性降雨、台風に伴う降雨等)の判別に寄与すると考えられる。具体的には、気象レーダが降雨(に相当するレーダ雨量値)を観測した際に、当該観測地点に対応する予報地点における地上面の気温が高く上昇が強いと予報(予測)されている場合、大気が不安定で対流性の降雨が発生しやすいこと及び当該気象レーダにおいて観測された降雨が対流性の降雨であることが推測される。また、気象レーダが降雨を観測した際に、当該観測地点に対応する予報地点における地上面の海面較正気圧が低く、風速の絶対値が大きいと予報(予測)されている場合、気象レーダにおいて観測された降雨が台風や低気圧に伴う降雨であると推測される。
【0144】
気象レーダの観測精度は降雨の性質によって変動することから、上記した予報データ(に含まれる予報値)は、気象レーダの観測精度に関わる特徴量として有用であると考えられる。
【0145】
なお、予報データ(数値予報データ)は予報した時点から数時間後の各気象要素についての予報値を含むデータであるため、ステップS23においては、ステップS21及びS22において取得された過去の気象データに含まれるレーダ雨量値が観測された時点から数時間前の予報データ(つまり、当該観測時点の予報値を含む予報データ)が取得されるものとする。
【0146】
ステップS23の処理が実行されると、図3に示すステップS3の処理に相当するステップS24の処理が実行される。
【0147】
図8においてはステップS21~S24の順に処理が実行されることが示されているが、当該ステップS21~S24の処理の順番は入れ替えられてもよいし、当該ステップS21~S24の処理は並列に実行されてもよい。
【0148】
次に、学習データ作成部151aは、ステップS1~S3において取得された過去の第1気象データ、過去の第2気象データ及び過去の予報データを、合成雨量データに対して規定されている座標系に対応するデータに変換する(ステップS25)。なお、ステップS25の処理は図3に示すステップS4の処理に相当する処理であるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0149】
この場合、過去の第1及び第2気象データに含まれる複数の観測地点データは、合成雨量データに対して規定されている座標平面における複数の座標点に対応する複数の座標点データに変換される。
【0150】
同様に、過去の予報データに含まれる予報地点毎の予報値(予報地点データ)は、合成雨量データに対して規定されている座標平面における複数の座標点に対応する複数の座標点データに変換される。これによれば、例えば予報データに含まれる予報地点毎の地上面の気温、地上面の海面較正気圧、地上面の風速、地上面の雲量、各気圧面の上昇流、各気圧面の気温、各気圧面の風速及び各気圧面の相対湿度のうちの少なくとも1つの予報値が、座標点毎の当該予報値に変換される。なお、上記した複数の予報地点と合成雨量データに対して規定されている座標平面における複数の座標点との対応関係(位置関係)は予め設定(認識)されているものとする。
【0151】
ステップS25の処理が実行されると、学習データ作成部151aは、当該ステップS25において変換された過去の第1気象データ、過去の第2気象データ及び過去の予報データに基づいて、当該過去の第1及び第2気象データに含まれるレーダ雨量値の精度に関する複数の特徴量を取得する(ステップS26)。
【0152】
なお、ステップS26において取得される複数の特徴のうちの過去の第1及び第2気象データに基づいて取得される特徴量については前述した第1実施形態において説明した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。以下、予報データに基づいて取得される特徴量について詳しく説明する。
【0153】
ステップS26において、学習データ作成部151aは、例えば過去の予報データに含まれる座標点データを特徴量として取得(抽出)する。上記したように過去の予報データに含まれる座標点データが地上面の気温、地上面の海面較正気圧、地上面の風速、地上面の雲量、各気圧面の上昇流、各気圧面の気温、各気圧面の風速及び各気圧面の相対湿度の予報値である場合には、学習データ作成部151aは、座標点毎の地上面の気温、地上面の海面較正気圧、地上面の水平風速の絶対値、地上面の雲量(例えば、下層、中層及び上層の雲量)、各気圧面(例えば、850hPa気圧面、700hPa気圧面及び500hPa気圧面)の気温、各気圧面の高度、各気圧面の水平風速の絶対値、各気圧面の相対湿度、及び各気圧面の上昇流等の各々を特徴量として取得する。
【0154】
なお、本実施形態においては、上記した特徴量以外に、当該過去の予報データ(各座標点データ)に基づいて新たな特徴量を取得(作成)してもよい。
【0155】
具体的には、学習データ作成部151aは、各気圧面間の各気象要素についての予報値の差分を大気の成層状態を表す新たな特徴量として取得してもよい。この場合、学習データ作成部151aは、例えば850hPa面の各気象要素についての予報値から700hPa面の各気象要素についての予報値を減算した値と、850hPa面の各気象要素についての予報値から500hPa面の各気象要素についての予報値を減算した値とを含む特徴量を作成することができる。なお、ここでは各気圧面として850hPa面、700hPa面及び500hPa面を想定しているが、他の気圧面についての予報値を使用してもよい。
【0156】
なお、上記した第1及び第2気象レーダにおいては例えば1分間隔で観測データが取得されている(つまり、ステップS26においては過去の第1及び第2気象データに基づいて1分間隔の特徴量が取得される)ところ、一般に、予報データに含まれる各気象要素について数値を予報する間隔は気象レーダにおいて観測データを取得する間隔よりも長い。この場合、学習データ作成部151aは、予報データに含まれる各時刻の座標点データ(予報値)を用いて時間方向に線形補間を行うことによって、過去の第1及び第2気象データに基づいて取得される特徴量と同程度の間隔の特徴量を予報データから取得するようにしてもよい。
【0157】
また、予報データに含まれる予報値(つまり、予報結果)には位置ずれが生じている場合があるが、当該位置ずれの影響を考慮し、特徴量を取得する座標点(格子点)を中心とした複数の座標点の各々に対応する座標点データの平均値を新たな特徴量として取得してもよい。
【0158】
なお、詳細な説明については省略するが、ステップS26においては、前述した第1実施形態と同様に、地上雨量値(が計測された1時間)に対応する複数の特徴量が取得されるものとする。
【0159】
ステップS26の処理が実行されると、図3に示すステップS6及びS7の処理に相当するステップS27及びS28の処理が実行される。
【0160】
次に、図9のフローチャートを参照して、合成雨量データ作成処理の処理手順の一例について説明する。
【0161】
本実施形態における合成雨量データ作成処理においては、前述した図4に示すステップS11及びS12の処理に相当するステップS31及びS32の処理が実行される。
【0162】
次に、第2データ取得部13は、現在の予報データを取得する(ステップS33)。現在の予報データは、例えば数値予報データ(GPV)を管理する外部装置等から取得される。また、ステップS33においては、現時点の予報値を含む予報データ(つまり、各気象要素について数時間前に予報された現在の予報値を含む予報データ)が取得されるものとする。
【0163】
ここで、上記した過去の予報データは過去の各気象要素についての予報値を含むものとして説明したが、現在の予報データにおいても当該過去の予報データと同一の各気象要素についての予報値を含む。つまり、例えば過去の予報データに地上面の気温、地上面の海面較正気圧、地上面の風速、地上面の雲量、各気圧面の上昇流、各気圧面の気温、各気圧面の風速及び各気圧面の相対湿度の予報値が含まれている場合には、現在の予報データも同様に、地上面の気温、地上面の海面較正気圧、地上面の風速、地上面の雲量、各気圧面の上昇流、各気圧面の気温、各気圧面の風速及び各気圧面の相対湿度の予想値を含む。
【0164】
図9においてはステップS31~S33の順に処理が実行されることが示されているが、当該ステップS31~S33の処理の順番は入れ替えられてもよいし、当該ステップS31~S33の処理は並列に実行されてもよい。
【0165】
なお、ステップS31~S33において取得された現在の第1気象データ、現在の第2気象データ及び現在の予報データは第2データ格納部14に格納される。
【0166】
次に、特徴量取得部152aは、ステップS31~S33において取得された現在の第1気象データ、現在の第2気象データ及び現在の予報データ(第2データ格納部14に格納された現在の第1気象データ、現在の第2気象データ及び現在の予報データ)を、合成雨量データに対して規定されている座標系に対応するデータに変換する(ステップS34)。なお、ステップS34の処理は過去の第1気象データ、過去の第2気象データ及び過去の予報データを現在の第1気象データ、現在の第2気象データ及び現在の予報データとした点以外は上記した図8に示すステップS25の処理と同様の処理であるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0167】
ステップS34の処理が実行されると、特徴量取得部152aは、当該ステップS34において変換された現在の第1気象データ、現在の第2気象データ及び現在の予報データに基づいて、当該現在の第1及び第2気象データに含まれるレーダ雨量値の精度に関する複数の特徴量を取得する(ステップS35)。なお、ステップS35の処理は過去の第1気象データ、過去の第2気象データ及び過去の予報データを現在の第1気象データ、原罪の第2気象データ及び現在の予報データとした点以外は上記した図8に示すステップS26の処理と同様であるため、ここではその詳しい説明を省略する。すなわち、ステップS35においては、図8に示すステップS26において取得される特徴量と種類が同一の特徴量が取得される。
【0168】
ただし、図8に示すステップS26においては地上雨量値(が計測された1時間)に対応する複数の特徴量が取得されるものとして説明したが、合成雨量データ作成処理においては現在の第1気象データ、現在の第2気象データ及び現在の予報データが取得されているため、ステップS35においては、現在(の時間)に対応する複数の特徴量が取得される。
【0169】
次に、前述した図4に示すステップS15及びS16の処理に相当するステップS36及びS37の処理が実行される。
【0170】
上記したように本実施形態においては、情報処理装置10とは異なる外部装置によって提供される複数の気象要素に関する過去の予報値を含む過去の予報データが取得され、過去の第1及び第2気象データと過去の予報データとに基づいて複数の特徴量(第1特徴量)が取得され、当該複数の特徴量を用いて学習済みモデルが生成される。また、本実施形態においては、上記した外部装置によって提供される複数の気象要素に関する現在の予報値を含む現在の予報データが取得され、現在の第1及び第2気象データと現在の予報データとに基づいて複数の特徴量(第2特徴量)が取得され、当該複数の特徴量(及び学習済みモデル)を用いて合成雨量データが作成される。
【0171】
本実施形態においては、このような構成により、例えば各気象要素(気象条件)が各気象レーダ(第1及び第2気象レーダ)の観測精度に与える影響を考慮した上で高精度な合成雨量データを作成することが可能となる。
【0172】
なお、本実施形態においては、予報データが地上面の気温、地上面の海面較正気圧、地上面の風速、地上面の雲量、各気圧面の上昇流、各気圧面の気温、各気圧面の風速及び各気圧面の相対湿度のうちの少なくとも1つの予報値を含むものとして説明したが、当該予報データは、これら以外を含むデータであってもよい。
【0173】
ここで、図10は、前述した第1実施形態の比較例において作成された合成雨量データと、本実施形態において作成された合成雨量データとのRMSEの比較結果を示している。ここでは「局地的大雨」、「台風」及び「前線」という3つの降雨事例についてのRMSEを示しており、図10に示すように、前述した第1実施形態の比較例において作成された合成雨量データのRMSEよりも、本実施形態おいて作成された合成雨量データのRMSEの方が全ての降雨事例において値が小さい。すなわち、図10によれば、前述した第1実施形態の比較例に比べて、本実施形態は、気象要素に応じて合成雨量値を変化させることにより、様々な降雨事例において高精度な合成雨量データの作成を実現することができるといえる。
【0174】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態について説明する。本実施形態においては、前述した第1及び第2実施形態と同様の部分についてはその詳しい説明を省略し、当該第1実施形態とは異なる部分について主に述べる。
【0175】
本実施形態は、過去の第1及び第2気象データと過去の予報データとに基づいて取得される多数の特徴量の中から学習済みモデルを生成するために用いられる特徴量の組み合わせを選択する点で、前述した第1及び第2実施形態とは異なる。
【0176】
図11は、本実施形態に係る情報処理装置の構成の一例を示すブロック図である。図11においては、前述した図1と同様の部分には同一参照符号を付して、その詳しい説明については省略する。
【0177】
図11に示すように、本実施形態に係る情報処理装置10の処理部15に含まれる学習部151は、特徴量選択部151cを備える。
【0178】
ここで、学習データ作成部151aは過去の第1気象データ、過去の第2気象データ及び過去の予報データに基づいて複数の特徴量を取得するが、特徴量選択部151cは、学習データ作成部151a及び学習処理部151bと連係動作し、当該学習データ作成部151aによって取得された複数の特徴量の中から、学習済みモデルを生成するために有用な特徴量の組み合わせ(つまり、精度の高い学習済みモデルを生成することが可能な特徴量)を選択する。
【0179】
本実施形態において、学習処理部151bは、このように特徴量選択部151cによって選択された特徴量を用いて作成される学習データに基づいて学習済みモデルを生成する(当該学習データを用いた学習処理を実行する)。
【0180】
また、本実施形態において、特徴量取得部152aは、現在の第1気象データ、現在の第2気象データ及び現在の予報データに基づいて上記した特徴量選択部151cによって選択された特徴量(と種類が同一の特徴量)を取得する。
【0181】
なお、本実施形態に係る情報処理装置10のハードウェア構成は前述した第1実施形態と同様であるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0182】
以下、本実施形態に係る情報処理装置10の動作について説明する。ここでは、前述した第1及び第2実施形態と同様に、モデル生成処理及び合成雨量データ作成処理について説明する。
【0183】
まず、図12のフローチャートを参照して、モデル生成処理の処理手順の一例について説明する。
【0184】
本実施形態におけるモデル生成処理においては、前述した図8に示すステップS21~S26の処理に相当するステップS41~S46の処理が実行される。
【0185】
ここで、ステップS46においては、前述した第1及び第2実施形態において説明したように、過去の第1気象データ、過去の第2気象データ及び過去の予報データに基づいて複数の特徴量が取得されるが、以下、当該複数の特徴量のうちの任意の数の特徴量の組み合わせの各々について、ステップS47~S49の処理が実行される。ここでは、ステップS47及びS48の処理の対象となる特徴量の組み合わせを対象特徴量と称する。
【0186】
まず、学習データ作成部151aは、ステップS44において取得された過去の地上雨量データに含まれる地上雨量値及び対象特徴量に基づいて学習データ(以下、第1学習データと表記)を作成する(ステップS47)。なお、ステップS47の処理は複数の特徴量を対象特徴量とした点以外は前述した図3に示すステップS6及び図8に示すステップS27の処理と同様であるので、ここではその詳しい説明を省略する。
【0187】
次に、学習処理部151bは、ステップS47において作成された第1学習データを用いた学習処理を実行する(ステップS48)。なお、ステップS48の処理は学習に用いられる学習データが異なる点以外は前述した図3に示すステップS7及び図8に示すステップS28と同様であるので、ここではその詳しい説明を省略する。すなわち、ステップS48の処理が実行されることによって、学習済みモデルが生成される。なお、学習済みモデルについては、前述した第1及び第2実施形態において説明した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。以下、ステップS48の処理が実行されることによって生成された学習済みモデルを特徴量選択用モデルと称する。
【0188】
ステップS48の処理が実行されると、特徴量選択部151cは、特徴量選択用モデルに対する評価処理を実行する(ステップS49)。
【0189】
以下、ステップS49の処理について説明する。ステップS49においては、上記したステップS47において作成された学習データの一部を特徴量選択用モデルに対する評価用のデータ(以下、評価データと表記)として用いる。具体的には、特徴量選択部151cは、評価データに含まれる対象特徴量を特徴量選択用モデルに入力することによって当該特徴量選択用モデルから出力されるパラメータ(例えば、レーダ番号)を取得し、当該レーダ番号が割り当てられている気象レーダ(第1または2気象レーダ)において観測されたレーダ雨量値を合成雨量値として各座標点に割り当てることによって合成雨量データを作成する。更に、特徴量選択部151cは、ステップS44において取得された過去の地上雨量データに含まれる地上雨量値を真値とし、作成された合成雨量データのRMSEを算出することにより、特徴量選択用モデルを評価する。なお、合成雨量データの作成及びRMSEによる評価については、前述した第1実施形態において説明した通りであるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0190】
なお、上記したように第1学習データのうちの一部を評価データとして用いる場合、上記したステップS48の処理は、当該評価データを除いた第1学習データを用いて実行されるものとする。また、ここでは第1学習データのうちの一部を評価データとして用いるものとして説明したが、評価データ(当該第1学習データに相当するデータ)は、第1学習データとは別に用意されていてもよい。
【0191】
上記したステップS49の処理が実行されることによって算出されたRMSEは、対象特徴量の評価値として特徴量選択部151cの内部に保持される。
【0192】
ステップS49の処理が実行されると、特徴量の全ての組み合わせについて、ステップS47~S49の処理が実行されたか否かが判定される(ステップS50)。
【0193】
全ての組み合わせについて処理が実行されていないと判定された場合(ステップS50のNO)、ステップS47に戻って処理が繰り返される。この場合、上記した対象特徴量とは異なる特徴量の組み合わせを新たな対象特徴量として処理が実行される。
【0194】
すなわち、本実施形態においては、ステップS46において取得された複数の特徴量の組み合わせを変更しながら作成された学習データに基づいて複数の特徴量選択用モデル(学習済みモデル)を生成し、当該生成された複数の特徴量選択用モデル(つまり、特徴量の組み合わせの各々)を評価するような処理が実行される。
【0195】
一方、全ての組み合わせについて処理が実行されたと判定された場合(ステップS50のYES)、特徴量選択部151cは、当該特徴量選択部151cの内部に保持されている特徴量の組み合わせ(対象特徴量)毎の評価値に基づいて、1つの特徴量の組み合わせ(すなわち、ステップS46において取得された複数の特徴量のうちの一部または全て)を選択する(ステップS51)。上記したように評価値がRMSEである場合には、特徴量選択部151cは、当該RMSEが最も小さい特徴量の組み合わせを選択する。なお、ステップS51において選択された特徴量の組み合わせは、合成部152(に含まれる特徴量取得部152a)に通知される。
【0196】
ステップS51の処理が実行されると、学習データ作成部151aは、ステップS44において取得された過去の地上雨量データ及びステップS51において選択された特徴量の組み合わせに基づいて学習データ(以下、第2学習データと表記)を作成する(ステップS52)。ステップS52において作成された第2学習データは、学習処理部151bに渡される。
【0197】
次に、学習処理部151bは、上記した第2学習データを用いた学習処理を実行する(ステップS53)。なお、ステップS53の処理は、前述した図3に示すステップS7及び図8に示すステップS28の処理と同様であるため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0198】
なお、ここではステップS52において新たに第2学習データが作成されるものとして説明したが、当該第2学習データは上記したステップS51において選択された特徴量の組み合わせに対して実行されたステップS47の処理において作成された第1学習データに相当するため、学習処理部151bは、既に作成されている当該第1学習データを利用してステップS53の処理を実行してもよい。つまり、ステップS52の処理は省略されても構わない。
【0199】
また、ここでは特徴量の組み合わせの各々の評価値がRMSEであるものとして説明したが、当該評価値は、RMSE以外の指標に基づく値であってもよい。具体的には、評価値は、例えば地上雨量データを基準としたときの相関係数、総雨量比、平均誤差または特徴量選択用モデルの正解率等であってもよい。なお、特徴量選択用モデルの正解率は、例えば地上雨量値に近いレーダ雨量値を観測した気象レーダのレーダ番号(第1または第2気象レーダに割り当てられている識別情報)を推定(予測)し出力する特徴量選択用モデルにおいて、地上雨量値に近いレーダ雨量値を観測した気象レーダのレーダ番号を出力した場合を正解とした場合における地上雨量値の計測地点(または座標点)全体に対しての正解の割合をいう。
【0200】
また、図12に示す例においては、特徴量の全ての組み合わせについてステップS47~S49の処理が実行される(つまり、特徴量の全ての組み合わせを総当たりで評価する)ものとして説明したが、例えばステップS46において取得される特徴量の数が多い場合には全ての組み合わせを評価すると処理量が膨大となることが想定される。このような場合には、例えばステップS48において実行される学習処理においてランダムフォレストまたは勾配ブースティング決定木等の公知の手法を適用することによって各特徴量の重要度を算出(出力)することが可能な特徴量選択用モデルを生成するようにしてもよい。なお、重量度とは、各特徴量がどの程度の割合で学習済みモデルにおける推定(予測)に用いられているかを表す指標である。なお、勾配ブースティング決定木を適用する場合には、例えば各特徴量が勾配ブースティング決定木を構成する各決定木の分岐に用いられた数を全体の分岐数で除算した値(つまり、割合)を重要度とすることができる。
【0201】
このような構成においては、例えば全ての特徴量を用いて特徴量選択用モデルの生成及び評価を行い、当該特徴量選択用モデルから出力された重要度が低い特徴量を除外して特徴量選択用モデルの生成及び評価を行い、当該特徴量選択用モデルから出力された重要度が低い特徴量を更に除外して特徴量選択モデルの生成及び評価を行うというサイクルを繰り返す。これによれば、特徴量の全ての組み合わせについて網羅的に評価処理を実行することなく、重要度が低い(と推定された)特徴量を排除しながら評価値が最も高くなる(RMSEの場合は値が最も小さくなる)特徴量の組み合わせを選択(探索)することが可能となる。
【0202】
次に、合成雨量データ作成処理の処理手順について説明する。なお、ここでは、便宜的に、前述した図9を用いて説明する。
【0203】
本実施形態における合成雨量データ作成処理においては、前述した図9に示すステップS31~S34の処理が実行される。
【0204】
ここで、本実施形態においては、上記したように図12に示すステップS51の処理が実行された場合に、当該ステップS51において選択された特徴量の組み合わせが特徴量選択部151cから特徴量取得部152aに通知される。
【0205】
これにより、特徴量取得部152aは、特徴量選択部151cからの通知(特徴量の組み合わせ)に従って、現在の第1気象データ、現在の第2気象データ及び現在の予報データに基づいて当該特徴量の組み合わせに対応する複数の特徴量(つまり、選択された特徴量と種類が同一の特徴量)を取得する(ステップS35)。
【0206】
上記したステップS35の処理が実行されると、ステップS36及びS37の処理が実行される。
【0207】
すなわち、本実施形態において実行される合成雨量データ作成処理は、上記したように取得される特徴量の種類が異なる点以外は前述した第2実施形態と同様の処理である。
【0208】
上記したように本実施形態におけるモデル生成処理においては、例えば過去の第1気象データ、過去の第2気象データ及び過去の予報データに基づいて取得された複数の特徴量(第1特徴量)の組み合わせを変更しながら作成された第1学習データに基づいて複数の特徴量選択用モデル(学習済みモデル)が生成され、当該作成された第1学習データの一部または当該学習データに相当する評価データを用いて当該複数の特徴量選択用モデルが評価され、当該評価結果(例えば、RMSE等の合成雨量データの評価指標)に基づいて複数の特徴量のうちの一部または全てである特徴量の組み合わせ(第3特徴量)が選択され、当該選択された特徴量の組み合わせに基づいて作成された第2学習データに基づいて学習済みモデルが生成される。また、本実施形態における合成雨量データ作成処理においては、現在の第1気象データ、現在の第2気象データ及び現在の予報データに基づいて上記したように選択された特徴量に対応する特徴量(第4特徴量)が取得され、当該取得された特徴量を学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力されるパラメータ(例えば、レーダ番号)が取得され、当該パラメータに基づいて合成雨量データが作成される。
【0209】
ここで、前述した第1及び第2実施形態においては多数の特徴量を考慮して合成雨量データを作成することができるため、当該合成雨量データの精度は向上すると考えられるが、当該多数の特徴量の中には、合成雨量データの精度向上に対する寄与度が低いばかりでなく、当該精度向上の妨げとなるようなものが含まれている可能性がある。
【0210】
これに対して、本実施形態においては、上記したように合成雨量データ(つまり、学習済みモデル)の精度を向上させることができる特徴量(の組み合わせ)を選択することにより、より高精度な合成雨量データを作成することが可能となる。
【0211】
ここで、図13は、前述した第1実施形態の比較例において作成された合成雨量データと、前述した第2実施形態において作成された合成雨量データと、本実施形態において作成された合成雨量データとのRMSEの比較結果を示している。ここでは、「局地的大雨」、「台風」及び「前線」という3つの降雨事例についてのRMSEを示しており、図13に示すように、前述した第1実施形態の比較例及び前述した第2実施形態において作成された合成雨量データのRMSEよりも、本実施形態において作成された合成雨量データのRMSEの方が全ての降雨事例において値が小さい。すなわち、図13によれば、前述した第1実施形態の比較例及び前述した第2実施形態に比べて、本実施形態は、様々な降雨事例においてより高精度な合成雨量データの作成を実現することができるといえる。
【0212】
なお、本実施形態においては前述した第2実施形態に対して特徴量(の組み合わせ)を選択する構成を適用する(つまり、本実施形態を第2実施形態に適用する)ものとして主に説明したが、本実施形態は、第1実施形態に適用されても構わない。
【0213】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態について説明する。本実施形態においては、前述した第1~第3実施形態と同様の部分についてはその詳しい説明を省略し、当該第1~第3実施形態と異なる部分について主に述べる。なお、本実施形態に係る情報処理装置の構成は、前述した第1実施形態と同様であるため、適宜、図1等を用いて説明する。
【0214】
前述した第1~第3実施形態においては第1気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値を含む第1気象データ及び第2気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値を含む第2気象データを利用する構成について説明したが、本実施形態は、当該第2気象データの代わりに、例えば第2気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値と第1及び第2気象レーダとは異なる第3気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値とを合成した合成雨量値(外部雨量値)を含むデータ(以下、外部雨量データと表記)を利用する点で、当該第1~第3実施形態とは異なる。なお、外部雨量データの例としては、例えば気象庁または国土交通省において運用されているレーダネットワークにおいて作成された合成雨量データが想定される。一般的には、例えば第1気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値を上記した外部雨量データに含まれる合成雨量値と合成することは想定されていないが、本実施形態においては、このようなレーダ雨量値と合成雨量値とを合成することによってより精度の高い合成雨量データを作成することを考える。
【0215】
以下、本実施形態に係る情報処理装置10の動作について説明する。ここでは、前述した第1~第3実施形態と同様に、モデル生成処理及び合成雨量データ作成処理について説明する。
【0216】
まず、図14フローチャートを参照して、モデル生成処理の処理手順の一例について説明する。
【0217】
本実施形態におけるモデル生成処理においては、前述した図12に示すステップS41の処理に相当するステップS61の処理が実行される。
【0218】
次に、第1データ取得部11は、過去の外部雨量データを取得する(ステップS62)。ステップS62において取得される過去の外部雨量データは、例えば各緯度及び各経度によって規定される各格子点(各観測地点)における所定の期間の過去の合成雨量値を含む。この合成雨量値は、複数の気象レーダの各々において観測されたレーダ雨量値が合成されることによって得られた雨量値である。過去の外部雨量データは、例えば外部雨量データを管理する外部装置(情報処理装置10及び第1気象レーダ以外の装置)から取得されてもよいし、情報処理装置10の内部に予め格納(保持)されていてもよい。
【0219】
次に、前述した図12に示すステップS43~S46の処理に相当するステップS63~S66の処理が実行される。
【0220】
以下、ステップS66において取得される特徴量について説明する。なお、ここではステップS61において取得された過去の第1気象データ、ステップS62において取得された過去の外部雨量データ及びステップS63において取得された過去の予報データに基づいて複数の特徴量が取得されればよいが、ここでは、前述した第1~第3実施形態において説明した特徴量以外の特徴量について主に説明する。
【0221】
まず、本実施形態において、学習データ作成部151aは、外部雨量データに含まれる合成雨量値を特徴量として取得することができる。また、前述した第1実施形態においては、降雨分布を表す特徴量として、第1気象データに含まれるレーダ雨量値の空間平均値、標準偏差(分散値)及び最大値等を取得(作成)するものとして説明したが、学習データ作成部151aは、同様に外部雨量データに含まれる合成雨量値の空間平均値、標準偏差(分散値)及び最大値等を取得することもできる。また、降雨分布を表す特徴量には、外部雨量データにおいて降雨が観測された座標点(格子点)の割合等が含まれていてもよい。
【0222】
また、上記したように外部雨量データに含まれる合成雨量値が複数の気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値を合成することによって得られた雨量値であるものとすると、当該気象レーダの各々(の位置)と本実施形態において作成されるべき合成雨量データにおいて規定されている座標平面における座標点(に対応する位置)との距離が特徴量として取得(作成)されてもよい。また、外部雨量データに含まれる合成雨量値の元となるレーダ雨量値を観測した複数の気象レーダの各々と座標点との距離の平均値を特徴量としてもよい。このような特徴量は、外部雨量データに含まれる各座標点における合成雨量値の観測精度を推定する指標として有用であると考えられる。なお、この特徴量を取得するために用いられる外部雨量データに含まれる合成雨量値の元となるレーダ雨量値を観測した複数の気象レーダの各々の位置は、外部雨量データに含まれていてもよいし、情報処理装置10内に予め格納(保持)されていてもよい。
【0223】
更に、上記した特徴量の差を新たな特徴量として取得してもよい。この場合、学習データ作成部151aは、例えば第1気象データに含まれるレーダ雨量値と外部雨量データに含まれる合成雨量値との差や、第1気象データ及び外部雨量データ間における雨量値の空間平均値、標準偏差、最大値及び降雨が観測された座標点の割合の差を特徴量として取得する。また、学習データ作成部151aは、第1気象レーダと座標点との距離と、外部雨量データに含まれる合成雨量値の元となるレーダ雨量値を観測した複数の気象レーダの各々と当該座標点との距離の平均値との差を特徴量として取得してもよい。
【0224】
ここで、図15は、本実施形態において過去の第1気象データ、過去の外部雨量データ及び過去の予報データに基づいて取得され得る特徴量を一覧として示している。
【0225】
なお、図15に示す特徴量の各々については前述した第1~第3実施形態及び本実施形態において既に説明したものであるため、ここではその詳しい説明については省略するが、図15においては、例えば気象データ(第1気象データ)に基づいて取得される9個の特徴量が示されている。なお、図15中の「レーダ雨量値の空間平均値、標準偏差、最大値」は、空間平均値、標準偏差及び最大値がそれぞれ1つの特徴量としてカウントされている。
【0226】
また、図15においては、例えば外部雨量データに基づいて取得される11個の特徴量が示されている。なお、図15中の「合成雨量値の空間平均値、標準偏差、最大値」は、空間平均値、標準偏差及び最大値がそれぞれ1つの特徴量としてカウントされている。また、図15中の「元となるレーダ雨量値を観測した複数の気象レーダの各々と座標点との距離」については、当該複数の気象レーダの数が5である場合を想定しており、当該5つの気象レーダのうちの1つの気象レーダと座標点との距離が1つの特徴量としてカウントされている。すなわち、「元となるレーダ雨量値を観測した複数の気象レーダの各々と座標点との距離」は、5つの特徴量を表している。
【0227】
また、図15においては、例えば気象データと外部雨量データとの差に基づいて取得される6個の特徴量が示されている。なお、図15中の「雨量値の空間平均値、標準偏差、最大値の差」は、空間平均値の差、標準偏差の差及び最大値の差がそれぞれ1つの特徴量としてカウントされている。
【0228】
また、図15においては、例えば予報データ(地上面)に基づいて取得される6個の特徴量が示されている。なお、図15中の「雲量(下層、中層、上層)」は、下層の雲量、中層の雲量及び上層の雲量がそれぞれ1つの特徴量としてカウントされている。
【0229】
また、図15においては、例えば予報データ(気圧名)に基づいて取得される15個の特徴量が示されている。なお、図15中の「850hPa面の上昇流、気温、高度、水平風速の絶対値、相対湿度」は、上昇流、気温、高度、水平風速の絶対値及び相対湿度がそれぞれ1つの特徴量としてカウントされている。図15中の「700hPa面の上昇流、気温、高度、水平風速の絶対値、相対湿度」及び「500hPa面の上昇流、気温、高度、水平風速の絶対値、相対湿度」についても同様である。
【0230】
また、図15においては、予報データ(気圧面間の差)に基づいて取得される10個の特徴量が示されている。なお、図15中の「850hPa面と700hPa面の上昇流、気温、高度、水平風速の絶対値、相対湿度の差」は、上昇流の差、気温の差、高度の差、水平風速の絶対値及び相対湿度の差がそれぞれ1つの特徴量としてカウントされている。図15中の「850hPa面と500hPa面の上昇流、気温、高度、水平風速の絶対値、相対湿度の差」についても同様である。
【0231】
すなわち、図15においては、本実施形態においては過去の第1気象データ、過去の外部雨量データ及び過去の予報データに基づいて合計で57個の特徴量が取得されることを示している。
【0232】
なお、ここでは57個の特徴量が取得されるものとして説明したが、本実施形態において取得される特徴量は、少なくとも気象データ(第1気象データ)に基づいて取得される「レーダ雨量値」、「気象レーダと座標点との距離」、「レーダ雨量値の算出手法のフラグ値」、「降雨減衰量の積算値雨」、と、気象データと外部雨量データとの差に基づいて取得される「雨量値の差」とを含むことを想定しており、他の特徴に関しては適宜取捨選択されてもよい。また、本実施形態において取得される特徴量は、図15に示す特徴量以外の特徴量を含んでいてもよい。
【0233】
ステップS66の処理が実行されると、図12に示すステップS47~S51の処理に相当するステップS67~S71の処理が実行される。
【0234】
ここで、図16は、ステップS71において選択された特徴量(の組み合わせ)の一例を示している。図16においては、前述した第3実施形態において説明した重要度を利用して選択された17個の特徴量が当該重要度とともに示されている。
【0235】
ステップS71の処理が実行されると、図12に示すステップS52及びS53の処理に相当するステップS72及びS73の処理が実行される。
【0236】
次に、図17のフローチャートを参照して、合成雨量データ作成処理の処理手順の一例について説明する。
【0237】
本実施形態における合成雨量データ作成処理においては、前述した図9に示すステップS31の処理に相当するステップS81の処理が実行される。
【0238】
次に、第2データ取得部13は、現在の外部雨量データを取得する(ステップS82)。ステップS82において取得される現在の外部雨量データは、上記した過去の外部雨量データと同様に、各緯度及び各経度によって規定される各格子点(各観測地点)における現在の合成雨量値を含む。現在の外部雨量データは、例えば外部雨量データを管理する外部装置(情報処理装置10及び第1気象レーダ以外の装置)から取得されるものとする。
【0239】
ステップS82の処理が実行されると、図9に示すステップS33の処理に相当するステップS83の処理が実行される。
【0240】
図17においてはステップS81~S83の順に処理が実行されることが示されているが、当該ステップS81~S83の処理の順番は入れ替えられてもよいし、当該ステップS81~S83の処理は並列に実行されてもよい。
【0241】
なお、ステップS81~S83において取得された現在の第1気象データ、現在の外部雨量データ及び現在の予報データは、第2データ格納部14に格納される。
【0242】
次に、図9に示すステップS34~S37の処理に相当するステップS84~S87の処理が実行される。なお、ステップS85においては、特徴量選択部151cからの通知(上記した図14に示すステップS71において選択された特徴量の組み合わせ)に従って、当該特徴量の組み合わせに対応する複数の特徴量が取得される。
【0243】
すなわち、本実施形態において実行される合成雨量データ作成処理は、上記したように取得される特徴量の種類が異なる点以外は前述した第3実施形態と同様の処理である。
【0244】
上記したように本実施形態においては、前述した第1~第3実施形態における第2気象データ(過去及び現在の第2気象データ)の代わりに、複数の気象レーダ(例えば、第2及び第3気象レーダ)において観測されたレーダ雨量値を合成した合成雨量値を含む外部雨量データを用いる構成により、単に第1気象レーダに観測されたレーダ雨量値と第2気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値とを合成する構成よりも精度の高い合成雨量データを作成することができる可能性がある。
【0245】
ここで、図18は、気象データ(例えば、第1気象データ)のみを利用して作成された雨量データと、外部雨量データのみを利用して作成された雨量データと、本実施形態において作成された合成雨量データとのRMSEの比較結果を示している。ここでは、「局地的大雨1」「局地的大雨2」、「台風1」、「台風2」、「前線1」及び「前線2」という6つの降雨事例についてのRMSEを示している。更に、図18においては、本実施形態において合成雨量データを作成するために、機械学習アルゴリズムとしてランダムフォレスト、サポートベクターマシン及び勾配ブースティング決定木の各々を適用して生成された3つの学習済みモデルを用いた場合を想定している。なお、サポートベクターマシンにおいては、前処理として各特徴量の標準化が行われているものとする。
【0246】
まず、外部雨量データは上記したように複数の気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値を合成した合成雨量値を含むため、当該外部雨量データのみを利用して作成された雨量データのRMSEは、単体の気象レーダにおいて観測されたレーダ雨量値を含む気象データのみを利用して作成された雨量データのRMSEよりも値が小さい。
【0247】
これに対して、図18によれば、学習済みモデルを生成するための機械学習アルゴリズムとしてランダムフォレスト、サポートベクターマシン及び勾配ブースティング決定木のいずれを適用したとしても、本実施形態において作成された合成雨量データのRMSEは、一部の降雨事例において例外はあるものの、外部雨量データのみを利用して作成された雨量データのRMSEよりも概ね値が小さい。すなわち、本実施形態における構成は、合成雨量データの精度向上に寄与するものであるといえる。
【0248】
ただし、機械学習アルゴリズムの差異に着目すると、ランダムフォレストを適用して生成された学習済みモデルを用いて作成された合成雨量データ(以下、ランダムフォレストを適用した合成雨量データと表記)のRMSEは、例えば「局地的大雨2」の降雨事例で外部雨量データのみを利用して作成された雨量データのRMSEよりも値が大きく、精度が高いとはいえない。すなわち、ランダムフォレストを適用した合成雨量データは、サポートベクターマシン及び勾配ブースティング決定木を適用して生成された学習済モデルを用いて作成された合成雨量データ(以下、サポートベクターマシンン及び勾配ブースティング決定木を適用した合成雨量データと表記)よりも精度の安定性が低いと考えられる。
【0249】
また、図19は、ランダムフォレストを適用した合成雨量データの表示例を示す。図20は、サポートベクターマシンを適用した合成雨量データの表示例を示す。図21は、勾配ブースティング決定木を適用した合成雨量データの表示例を示す。なお、図19図21においては、各座標点に割り当てられた雨量値を階級毎に色分けすることによって地図上に合成雨量データを表示した例を示している。
【0250】
図19図21を比較すると、図20に示すサポートベクターマシンを適用した合成雨量データにおいては左側に放射状の分布が視認される(つまり、視覚的な違和感がある)のに対し、図19に示すランダムフォレストを適用した合成雨量データ及び図21に示す勾配ブースティング決定木を適用した合成雨量データにおいては視角的な違和感が少ない。
【0251】
すなわち、図19図21によれば、各機械学習アルゴリズムを適用した合成雨量データには視覚的品質の観点で差異が生じ、特にランダムフォレスト及び勾配ブースティング決定木を適用した合成雨量データは、サポートベクターマシンを適用した合成雨量データと比べて視覚的な違和感が生じにくいといえる。
【0252】
以上の精度の安定性及び視覚的品質の観点によれば、本実施形態における学習済みモデルを生成するための機械学習アルゴリズムとしては、ランダムフォレスト及びサポートベクターマシンよりも勾配ブースティング決定木の方が適している。
【0253】
なお、本実施形態においては第3実施形態における第2気象データの代わりに外部雨量データを利用する(つまり、本実施形態を第3実施形態に適用する)ものとして主に説明したが、本実施形態は、第1実施形態に適用されても構わない。
【0254】
(第5実施形態)
次に、第5実施形態について説明する。本実施形態においては、前述した第1~第4実施形態と同様の部分についてはその詳しい説明を省略し、当該第1~第4実施形態とは異なる部分について主に述べる。
【0255】
前述した第1~第4実施形態においてはレーダ雨量値を観測する気象レーダ(例えば、第1気象レーダ)とは別個の装置として構成されている情報処理装置について説明したが、本実施形態は、当該情報処理装置が気象レーダに組み込まれる点で、当該第1~第4実施形態とは異なる。
【0256】
図22は、本実施形態に係る気象レーダの構成の一例を示す。図22に示すように、気象レーダ30は、情報処理装置10を備えるとともに、更に観測部31、信号処理部32及びデータ受信部33を備える。なお、図22に示す気象レーダ30は、例えば前述した第1気象レーダとして用いられる場合を想定しているが、第2気象レーダとして用いられてもよい。
【0257】
観測部31は、アンテナ(図示せず)を介して電波を照射し、当該電波が雨粒で反射された反射波を受信する。
【0258】
信号処理部32は、観測部31において受信された反射波(の信号)を処理することによって各観測地点における観測データを取得し、当該観測データに基づいて気象データ(例えば、レーダ雨量値等)を生成する。このように信号処理部32によって生成された気象データは、例えば前述した現在の第1気象データとして情報処理装置10に出力される。なお、信号処理部32によって生成された気象データは、過去の第1気象データとして用いるために情報処理装置10内に格納(保持)されてもよい。
【0259】
データ受信部33は、例えば前述した第2気象データ、予報データ及び外部雨量データ等の情報処理装置10において用いられる各種データを受信する。データ受信部33によって受信された第2気象データ、予報データ及び外部雨量データは、情報処理装置10に出力される。なお、データ受信部33は、情報処理装置10に含まれる第1データ取得部11及び第2データ取得部13に含まれていてもよい。
【0260】
情報処理装置10は、前述した第1~第4実施形態において説明した情報処理装置と同様の構成を有する。
【0261】
なお、本実施形態は情報処理装置10が気象レーダ30に組み込まれている点以外は前述した第1~第4実施形態と同様であるため、当該情報処理装置10を含む気象レーダの動作についての説明は省略する。
【0262】
本実施形態においては、前述した第1~第4実施形態において説明した情報処理装置を備える気象レーダ30(レーダ装置)であっても、当該第1~第4実施形態において説明したように精度の高い合成雨量データを作成することができる。
【0263】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、精度の高い合成雨量データを作成することができる。
【0264】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0265】
前述した実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
[1]
第1気象レーダにおいて第1時間帯に観測された第1レーダ雨量値を含む第1時間帯の第1気象データ、前記第1気象レーダとは異なる第2気象レーダにおいて前記第1時間帯に観測された第2レーダ雨量値を含む第1時間帯の第2気象データ、及び地上雨量計において前記第1時間帯に計測された地上雨量値を含む第1時間帯の地上雨量データを取得し、
前記第1時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、当該第1時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値の精度に関する複数の第1特徴量を取得し、
前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値及び前記取得された複数の第1特徴量に基づいて学習データを作成し、
前記作成された学習データに基づいて、前記複数の第1特徴量が入力された場合に前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値に相当する雨量値を推定するためのパラメータを出力するように学習した学習済みモデルを生成し、
前記第1気象レーダにおいて前記第1時間帯よりも後の第2時間帯に観測された第1レーダ雨量値を含む前記第2時間帯の第1気象データ及び前記第2気象レーダにおいて前記第2時間帯に観測された第2レーダ雨量値を含む前記第2時間帯の第2気象データを取得し、
前記第2時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、当該第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値の精度に関する複数の第2特徴量を取得し、
前記取得された複数の第2特徴量を前記生成された学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力されるパラメータを取得し、
前記取得されたパラメータに基づいて、前記第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値を合成することによって合成雨量データを作成する処理部を具備する
情報処理装置。
[2]
前記学習データは、前記複数の第1特徴量と、前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値に近いレーダ雨量値を観測した第1または第2気象レーダを識別するための識別情報とを含み、
前記学習済みモデルは、前記複数の第1特徴量が入力された場合に前記パラメータとして前記識別情報を出力するように学習し、
前記合成雨量データは、前記複数の第2特徴量が入力された場合に前記学習済みモデルから前記パラメータとして出力される識別情報によって識別される第1または第2気象レーダにおいて前記第2時間帯に観測された第1または第2レーダ雨量値を含む
[1]記載の情報処理装置。
[3]
前記学習データは、前記複数の第1特徴量と、前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値に近いレーダ雨量値を観測した第1または第2気象レーダを識別するための識別情報とを含み、
前記学習済みモデルは、前記複数の第1特徴量が入力された場合に前記パラメータとして前記地上雨量値に近いレーダ雨量値を観測する確率を前記第1及び第2気象レーダ毎に出力するように学習し、
前記合成雨量データは、前記複数の第2特徴量が入力された場合に前記学習済みモデルから前記パラメータとして前記第1及び第2気象レーダ毎に出力される確率を重みとして前記第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値を合成することによって作成される
[1]記載の情報処理装置。
[4]
前記学習データは、前記複数の第1特徴量と、前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値とを含み、
前記学習済みモデルは、前記複数の第1特徴量が入力された場合に前記パラメータとして前記地上雨量値に相当する推定雨量値を出力するように学習し、
前記合成雨量データは、前記複数の第2特徴量が入力された場合に前記学習済みモデルから前記パラメータとして出力される推定雨量値を含む
[1]記載の情報処理装置。
[5]
前記第1気象レーダは、当該第1気象レーダから送信された電波の第1反射波に基づいて算出される当該第1気象レーダの第1観測地点における第1レーダ雨量値を観測するように構成され、
前記第2気象レーダは、当該第2気象レーダから送信された電波の第2反射波に基づいて算出される当該第2気象レーダの第2観測地点における第2レーダ雨量値を観測するように構成され、
前記第1気象データは、前記第1レーダ雨量値に加えて、前記第1観測地点における受信電力、反射因子、ドップラー速度、ドップラー速度幅、反射因子差、偏波間相関係数、偏波間位相差、偏波間位相差変化率、前記第1レーダ雨量値の算出手法を示すフラグ値、及び降雨減衰量の積算値のうちの少なくとも1つを含み、
前記第2気象データは、前記第2レーダ雨量値に加えて、前記第2観測地点における受信電力、反射因子、ドップラー速度、ドップラー速度幅、反射因子差、偏波間相関係数、偏波間位相差、偏波間位相差変化率、前記第2レーダ雨量値の算出手法を示すフラグ値、及び降雨減衰量の積算値のうちの少なくとも1つを含む
[1]~[4]のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[6]
前記複数の第1及び第2特徴量は、少なくとも前記第1及び第2レーダ雨量値、前記第1及び第2気象レーダから前記第1及び第2観測地点までの距離、前記第1及び第2レーダ雨量値の算出手法を示すフラグ値、前記降雨減衰量の積算値、前記第1及び第2レーダ雨量値の差を含む[5]記載の情報処理装置。
[7]
前記処理部は、
前記情報処理装置とは異なる外部装置によって提供される複数の気象要素に関する前記第1時間帯の予報値を含む第1時間帯の予報データを取得し、
前記第1時間帯の第1及び第2気象データと前記第1時間帯の予報データとに基づいて前記複数の第1特徴量を取得し、
前記外部装置によって提供される複数の気象要素に関する前記第2時間帯の予報値を含む第2時間帯の予報データを取得し、
前記第2時間帯の第1及び第2気象データと前記第2時間帯の予報データとに基づいて前記複数の第2特徴量を取得する
[1]~[6]のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[8]
前記予報データは、地上面の気温、地上面の海面較正気圧、地上面の風速、地上面の雲量、各気圧面の上昇流、各気圧面の気温、各気圧面の風速及び各気圧面の相対湿度のうちの少なくとも1つの予報値を含む[7]記載の情報処理装置。
[9]
前記処理部は、
前記複数の第1特徴量の組み合わせを変更しながら作成された第1学習データに基づいて複数の第1学習済みモデルを生成し、
前記作成された第1学習データの一部または当該第1学習データに相当する評価データを用いて前記生成された複数の第1学習済みモデルを評価し、
前記評価結果に基づいて前記複数の第1特徴量のうちの一部または全てである第3特徴量を選択し、
前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値及び前記選択された第3特徴量に基づいて作成された第2学習データに基づいて第2学習済みモデルを生成し、
前記第2時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、前記複数の第2特徴量のうちの前記第3特徴量に対応する第4特徴量を取得し、
前記取得された第4特徴量を前記作成された第2学習済みモデルに入力することによって当該第2学習済みモデルから出力されるパラメータを取得する
[1]~[8]のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[10]
前記第2気象データの代わりに、前記第2気象レーダにおいて観測された第2レーダ雨量値と前記第1及び第2気象レーダとは異なる第3気象レーダにおいて観測された第3レーダ雨量値とを合成した合成雨量値を含む外部雨量データを用いる[1]~[9]のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[11]
前記合成雨量データは、3次元座標空間における各座標点に前記第1及び第2レーダ雨量値を合成した合成雨量値が割り当てられたデータである[1]~[11]のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[12]
[1]~[11]のいずれか一項に記載の情報処理装置を備える前記第1または第2気象レーダに相当するレーダ装置。
[13]
第1気象レーダにおいて第1時間帯に観測された第1レーダ雨量値を含む第1時間帯の第1気象データ、前記第1気象レーダとは異なる第2気象レーダにおいて前記第1時間帯に観測された第2レーダ雨量値を含む第1時間帯の第2気象データ、及び地上雨量計において前記第1時間帯に計測された地上雨量値を含む第1時間帯の地上雨量データを取得し、
前記第1時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、当該第1時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値の精度に関する複数の第1特徴量を取得し、
前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値及び前記取得された複数の第1特徴量に基づいて学習データを作成し、
前記作成された学習データに基づいて、前記複数の第1特徴量が入力された場合に前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値に相当する雨量値を推定するためのパラメータを出力するように学習した学習済みモデルを生成し、
前記第1気象レーダにおいて前記第1時間帯よりも後の第2時間帯に観測された第1レーダ雨量値を含む第2時間帯の第1気象データ及び前記第2気象レーダにおいて前記第2時間帯に観測された第2レーダ雨量値を含む第2時間帯の第2気象データを取得し、
前記第2時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、当該第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値の精度に関する複数の第2特徴量を取得し、
前記取得された複数の第2特徴量を前記生成された学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力されるパラメータを取得し、
前記取得されたパラメータに基づいて、前記第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値を合成することによって合成雨量データを作成する
方法。
[14]
コンピュータに、
第1気象レーダにおいて第1時間帯に観測された第1レーダ雨量値を含む第1時間帯の第1気象データ、前記第1気象レーダとは異なる第2気象レーダにおいて前記第1時間帯に観測された第2レーダ雨量値を含む第1時間帯の第2気象データ、及び地上雨量計において前記第1時間帯に計測された地上雨量値を含む第1時間帯の地上雨量データを取得することと、
前記第1時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、当該第1時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値の精度に関する複数の第1特徴量を取得することと、
前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値及び前記取得された複数の第1特徴量に基づいて学習データを作成することと、
前記作成された学習データに基づいて、前記複数の第1特徴量が入力された場合に前記第1時間帯の地上雨量データに含まれる地上雨量値に相当する雨量値を推定するためのパラメータを出力するように学習した学習済みモデルを生成することと、
前記第1気象レーダにおいて前記第1時間帯よりも後の第2時間帯に観測された第1レーダ雨量値を含む第2時間帯の第1気象データ及び前記第2気象レーダにおいて前記第2時間帯に観測された第2レーダ雨量値を含む第2時間帯の第2気象データを取得することと、
前記第2時間帯の第1及び第2気象データに基づいて、当該第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値の精度に関する複数の第2特徴量を取得することと、
前記取得された複数の第2特徴量を前記生成された学習済みモデルに入力することによって当該学習済みモデルから出力されるパラメータを取得することと、
前記取得されたパラメータに基づいて、前記第2時間帯の第1及び第2気象データに含まれる第1及び第2レーダ雨量値を合成することによって合成雨量データを作成することと
を実行させるためのプログラム。
【符号の説明】
【0266】
10…情報処理装置、11…第1データ取得部、12…第1データ格納部、13…第2データ取得部、14…第2データ格納部、15…処理部、16…モデル格納部、21…CPU、22…不揮発性メモリ、23…RAM、23A…レーダ雨量値合成プログラム、24…通信デバイス、151…学習部、151a…学習データ作成部、151b…学習処理部、151c…特徴量選択部、152…合成部、152a…特徴量取得部、152b…合成処理部。
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