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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024042322
(43)【公開日】2024-03-28
(54)【発明の名称】シール装置
(51)【国際特許分類】
   F16J 15/3252 20160101AFI20240321BHJP
   F16J 15/46 20060101ALI20240321BHJP
   F16J 15/18 20060101ALI20240321BHJP
   F16J 15/3232 20160101ALI20240321BHJP
   B63H 23/36 20060101ALI20240321BHJP
【FI】
F16J15/3252
F16J15/46
F16J15/18 C
F16J15/3232 201
B63H23/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022146959
(22)【出願日】2022-09-15
(71)【出願人】
【識別番号】000101879
【氏名又は名称】イーグル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【弁理士】
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【弁理士】
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【弁理士】
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】前田 生進
【テーマコード(参考)】
3J006
3J043
【Fターム(参考)】
3J006AE16
3J006AE28
3J006AE41
3J006AE45
3J006AE50
3J006CA01
3J043AA16
3J043BA08
3J043BA09
3J043CA02
3J043CB13
3J043DA09
(57)【要約】
【課題】長期に亘って密封性を確保できるシール装置を提供する。
【解決手段】ハウジング3に装着されるとともに、ハウジング3に挿通された回転軸2とシール部15,16が相対的に摺動してハウジング3と回転軸2との間を封止する周面シール体10を有するシール装置1であって、周面シール体10は、ハウジング3に対してシール部15,16の軸方向位置を変更して装着可能になっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに装着されるとともに、該ハウジングに挿通された回転軸とシール部が相対的に摺動して前記ハウジングと前記回転軸との間を封止する周面シール体を有するシール装置であって、
前記周面シール体は、前記ハウジングに対して前記シール部の軸方向位置を変更して装着可能になっているシール装置。
【請求項2】
前記周面シール体は、スペーサ部を介して前記ハウジングに固定されている請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
前記スペーサ部は、前記シール部を保持するリテーナと、前記リテーナと前記ハウジングとの間に配置されるディスタンスリングと、から構成されている請求項2に記載のシール装置。
【請求項4】
前記ディスタンスリングと前記ハウジングとが凹凸嵌合する請求項3に記載のシール装置。
【請求項5】
前記リテーナと前記ディスタンスリングとが凹凸嵌合する請求項3または4に記載のシール装置。
【請求項6】
前記ディスタンスリングと前記ハウジングとの凹凸嵌合部と、前記リテーナと前記ディスタンスリングとの凹凸嵌合部が同じ形状である請求項5に記載のシール装置。
【請求項7】
前記ディスタンスリングと前記ハウジングとの間と、前記ディスタンスリングと前記リテーナとの間と、にガスケットが配置されている請求項3に記載のシール装置。
【請求項8】
前記ディスタンスリングと前記ハウジングと、前記リテーナと前記ディスタンスリングと、が径方向に対向する面において直接接触している請求項7に記載のシール装置。
【請求項9】
前記ハウジングには、前記周面シール体よりも機外側に前記ハウジングと前記回転軸との間を一時的に封止可能な流体封止部を備えている請求項1に記載のシール装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シール装置に係り、特に船舶等に適用できるシール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シール装置は、例えば流体機器のケーシングと該ケーシングを貫通するように配置される回転軸との間を軸封するものである。このようなシール装置は、各種流体機器に多用されており、船舶内部から水中に延出するプロペラ軸の密封にも利用されている。
【0003】
特許文献1には、ケーシングと、ケーシングに挿通された推進軸と、シールリングと、を備えたシール装置が開示されている。推進軸は、シャフトと、シャフトの外周面に取付けられるライナーと、から構成されている。シールリングは、その外径端部がケーシングの内側に固定されており、内径端部にはライナーの外周面に摺動するリップが設けられている。また、ケーシングにおけるシールリングよりも機外側には、インフレータブルシールが設けられている。
【0004】
シール装置のメンテナンス時には、インフレータブルシールに空気を送り込み、シャフトとケーシングとの隙間を密封することで、機内側に流体が入り込むことなく、シール装置のメンテナンスを簡便に行うことができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003-26094号公報(第3頁、第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1のようなシール装置にあっては、シールリングのリップとライナーとが摺動する構造であるため、経年により、ライナーの外周面が摩耗して段差が形成されることがある。ライナーの外周面に段差が形成されると、シールリングによる密封性が低下するため、新しいライナーに交換する大掛かりなメンテナンスが頻繁に必要であった。
【0007】
本発明は、このような問題点に着目してなされたもので、長期に亘って密封性を確保できるシール装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明のシール装置は、
ハウジングに装着されるとともに、該ハウジングに挿通された回転軸とシール部が相対的に摺動して前記ハウジングと前記回転軸との間を封止する周面シール体を有するシール装置であって、
前記周面シール体は、前記ハウジングに対して前記シール部の軸方向位置を変更して装着可能になっている。
これによれば、メンテナンス時にシール部の軸方向位置が変更されるように周面シール体をハウジングに装着することができるため、回転軸の平滑な面で周面シール体のシール部を摺動させることができ、長期に亘って密封性を確保できる。
【0009】
前記周面シール体は、スペーサ部を介して前記ハウジングに固定されていてもよい。
これによれば、軸方向の長さが異なるスペーサ部に変更することで、シール部の軸方向位置を簡便に変更できる。
【0010】
前記スペーサ部は、前記シール部を保持するリテーナと、前記リテーナと前記ハウジングとの間に配置されるディスタンスリングと、から構成されていてもよい。
これによれば、リテーナとディスタンスリングとの取付け態様によりシール部の軸方向位置を細やかに調整できる。
【0011】
前記ディスタンスリングと前記ハウジングとが凹凸嵌合していてもよい。
これによれば、ディスタンスリングとハウジングとの軸心ずれを抑制できる。
【0012】
前記リテーナと前記ディスタンスリングとが凹凸嵌合していてもよい。
これによれば、リテーナとディスタンスリングとの軸心ずれを抑制できる。
【0013】
前記ディスタンスリングと前記ハウジングとの凹凸嵌合部と、前記リテーナと前記ディスタンスリングとの凹凸嵌合部が同じ形状であってもよい。
これによれば、ハウジングとリテーナとを簡便に直接固定することができる。
【0014】
前記ディスタンスリングと前記ハウジングとの間と、前記ディスタンスリングと前記リテーナとの間と、にガスケットが配置されていてもよい。
これによれば、ハウジングに対するディスタンスリングやリテーナの傾きを抑制できるため、ハウジングとディスタンスリングとリテーナとの軸心ずれを効果的に抑制できる。
【0015】
前記ディスタンスリングと前記ハウジングと、前記リテーナと前記ディスタンスリングと、が径方向に対向する面において直接接触していてもよい。
これによれば、径方向に対向する面において嵌め込まれるように接触するため、ハウジングに対するディスタンスリングやリテーナの傾きを抑制でき、ハウジングとディスタンスリングとリテーナとの軸心ずれを効果的に抑制できる。
【0016】
前記ハウジングには、前記周面シール体よりも機外側に前記ハウジングと前記回転軸との間を一時的に封止可能な流体封止部を備えていてもよい。
これによれば、メンテナンス時にハウジング内への流体の進入を防ぎつつ、シール部の軸方向位置を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施例1におけるシール装置を示す縦断面図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3図1の状態からディスタンスリングを変更した状態を示す縦断面図である。
図4図1の状態からディスタンスリングを取外した状態を示す縦断面図である。
図5】本発明の実施例2におけるシール装置のディスタンスリングを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係るシール装置を実施するための形態を実施例に基づいて以下に説明する。
【実施例0019】
実施例1に係るシール装置につき、図1から図4を参照して説明する。以下、図1の紙面左側をシール装置の機外側とし、紙面右側をシール装置の機内側として説明する。
【0020】
図1に示されるように、本実施例のシール装置1は、船舶のプロペラとモータとを接続する回転軸2が筒状のハウジング3を貫通する船尾管に適用されるものである。尚、シール装置1は船舶に用いられるものに限らず、自動車や一般産業機械等に用いられてもよい。
【0021】
図1および図2に示されるように、回転軸2は、シャフト21と、シャフト21の外周面に取付けられるライナー22および固定部材23と、から構成されている。ライナー22は、シャフト21に固定される固定部材23に固定されている。
【0022】
ハウジング3は、流体封止部としてのインフレータブルシール30と、筒状体33と、から構成されている。インフレータブルシール30は、筒状体33の機内側端部に取付けられている。このインフレータブルシール30の内径側には、ライナー22が配置されている。
【0023】
インフレータブルシール30は、環状のケース31と、環状のシール体32と、から構成されており、ハウジング3の一部を構成している。
【0024】
図2に示されるように、ケース31は、筒状体33よりも内径側に張り出している。また、ケース31の内周には、内径側に開口する環状凹溝31aが設けられている。また、ケース31には、環状凹溝31aとケース31の外周面とを連通する連通孔31bが設けられている。
【0025】
シール体32は、環状凹溝31a内に配置されている。このシール体32は、連通孔31bを通じて図示しない外部機器から圧縮空気が送り込まれることにより膨張し、ライナー22とケース31との間を一時的に密封できるようになっている。
【0026】
また、ケース31の機内側には、後述するようにシール装置1を固定する固定面31cが設けられている。固定面31cは、内径側が外径側よりも機外側に凹むように段状に形成されている。尚、固定面31cの内径側部位を凹部31dとして説明する。
【0027】
また、固定面31cの外径側部位には、軸方向に沿ったネジ孔31eが形成されている。ネジ孔31eは凹部31dよりも深く形成されている。
【0028】
図1および図2に示されるように、シール装置1は、周面シール体10と、スペーサ部としてのリテーナ11と、スペーサ部としてのディスタンスリング12と、から構成されている。
【0029】
周面シール体10は、環状のベース部材13,14と、シール部としてのシールリング15,16と、から構成されている。
【0030】
ベース部材13,14には、貫通孔13a,14aが周方向に複数設けられている(図1では1つのみ図示)。尚、ベース部材13には、径方向に貫通する導入孔13bが形成されている。
【0031】
リテーナ11には、貫通孔13a,14aと対応するネジ孔11aが周方向に複数設けられている(図1では1つのみ図示)。
【0032】
リテーナ11およびベース部材13,14は、周方向に分割された複数の部材を不図示のシール部材を介して締結して環状を成し、さらに、連結ボルト4が機内側からベース部材13,14の貫通孔13a,14aに挿入され、リテーナ11のネジ孔11aに螺合することで一体化されるようになっている。
【0033】
シールリング15の外径端部15aは、リテーナ11とベース部材13とに狭持されており、また、シールリング16の外径端部16aは、ベース部材13,14に狭持されている。
【0034】
また、リテーナ11の機外側には、ハウジング3の固定面31cに対向する被固定面11cが設けられている。被固定面11cは、内径側が外径側よりも機外側に突出するように段状に形成されている。尚、被固定面11cの内径側部位を凸部11dとして説明する。
【0035】
また、リテーナ11は、ネジ孔11aとは異なる位相に貫通孔11eが周方向に複数設けられている(図1では1つのみ図示)。
【0036】
図1および図2に示されるように、シールリング15は、環状をなす所謂リップシールであり、外径端部15aと内径端部15bと中間部15cとを備えている。
【0037】
中間部15cは、外径端部15aから内径方向に向けて一旦機内側に傾斜して延び、その後機外側に傾斜するように屈曲して内径方向に向けて延びている。すなわち、中間部15cは、断面視略逆L字状を成している。外径端部15aは取付け基部となっており、また、内径端部15bの内径端はライナー22に摺接するリップ、中間部15cは回転軸2の微小移動に追従するための可撓部となっている。
【0038】
内径端部15bは、ガータスプリング6によりライナー22の外周面に接触した状態が保持されている。
【0039】
シールリング16は、シールリング15と同一構成であり、外径端部16aと内径端部16bと中間部16cとを備えている。内径端部16bは、ガータスプリング7によりライナー22の外周面に接触した状態が保持されている。
【0040】
ディスタンスリング12は、周方向に分割された複数の部材を不図示のシール部材を介して締結して環状を成し、さらに、内径側部位12aが外径側部位12bよりも機外側にずれて段状に配置され、断面視略逆Z形状をなしている。
【0041】
外径側部位12bには、軸方向に貫通する貫通孔12cが周方向に複数設けられている(図1では1つのみ図示)。
【0042】
尚、ディスタンスリング12の機外側端面における内径側を凸部12d、機内側端面における内径側を凹部12eとして説明する。
【0043】
このディスタンスリング12の凸部12dの端面から外径側部位12bの機内側端面12fまで距離、すなわちディスタンスリング12の軸方向寸法はL1となっている。
【0044】
ディスタンスリング12の凸部12dは、インフレータブルシール30におけるケース31の凹部31dに嵌合し、リテーナ11の凸部11dは、ディスタンスリング12の凹部12eに嵌合している。
【0045】
また、ディスタンスリング12における外径側部位12bの機外側端面12gと、固定面31cにおける外径側と、の間には、ガスケット8が配置されている。
【0046】
また、ディスタンスリング12における外径側部位12bの機内側端面12fと、被固定面11cにおける外径側と、の間には、ガスケット9が配置されている。
【0047】
ガスケット8,9には、貫通孔12cに対応する孔8a,9aが設けられている。
【0048】
インフレータブルシール30のケース31と、ディスタンスリング12と、リテーナ11とは、ガスケット8,9を狭持した状態で、装着ボルト5が機内側からリテーナ11の貫通孔11e、ディスタンスリング12の貫通孔12cに挿入され、ケース31のネジ孔31eに螺合することで連結されるようになっている。
【0049】
次に、シール装置1の組み立て手順の一例について図1図2に基づいて説明する。先ず、リテーナ11とディスタンスリング12との間にガスケット9を介在させるとともに、ディスタンスリング12とインフレータブルシール30のケース31との間にガスケット8を介在させた状態で装着ボルト5によりケース31に対してリテーナ11およびディスタンスリング12を密封状に装着する。
【0050】
詳しくは、ディスタンスリング12の凸部12dの端面とケース31の凹部31dの端面とが当接した状態にあっては、機外側端面12gと固定面31cにおける外径側との間には隙間が形成される。この隙間はガスケット8の厚みよりも小さくなっている。
【0051】
また、リテーナ11の凸部11dの端面とディスタンスリング12の凹部12eの端面とが当接した状態にあっては、機内側端面12fと被固定面11cにおける外径側との間に隙間が形成される。この隙間はガスケット9の厚みよりも小さくなっている。
【0052】
凸部12dの端面と凹部31dの端面、および凸部11dの端面と凹部12eの端面が当接するまで装着ボルト5を緊締すると、ガスケット8,9が軸方向に圧縮されて、機外側端面12gと固定面31cにおける外径側との間、機内側端面12fと被固定面11cにおける外径側との間が確実に密封される。
【0053】
その後、リテーナ11とベース部材13とでシールリング15の外径端部15aを狭持し、ベース部材13,14でシールリング16の外径端部16aを狭持した状態で連結ボルト4によりリテーナ11に対して周面シール体10を組み立てる。これにより、リテーナ11とベース部材13との間、ベース部材13,14の間が密封される。
【0054】
その後、ベース部材13の導入孔13bに導入管41を接続する。これにより、ベース部材13とシールリング15,16とで区画された空間40内に導入管41から潤滑流体を導入することができるようになる。尚、導入管41は可撓管であるため、軸方向の広い範囲でベース部材13の導入孔13bに接続可能となっている。
【0055】
このようなシール装置1にあっては、長期間の使用により、シールリング15,16が摩耗するため、定期的に新しいシールリング15,16に交換するようになっている。このようなメンテナンス時には、インフレータブルシール30によりライナー22とケース31との間を一時的に密封できるため、機内側への海水の流入を防ぎながらメンテナンスを簡便に行うことができる。
【0056】
さらにシール装置1を長期間使用すると、ライナー22におけるシールリング15,16との接触部分が摩耗して段差が形成されることがある。このような場合には、ライナー22におけるシールリング15,16の接触位置を軸方向に変更するメンテナンスが行われる。このようなメンテナンス時も同様にインフレータブルシール30により機内側への海水の流入を防ぎながらメンテナンスを簡便に行うことができる。
【0057】
具体的には、図3に示されるように、図1の状態から軸方向寸法L1のディスタンスリング12を軸方向寸法L2のディスタンスリング12’に変更する。軸方向寸法L2は、軸方向寸法L1よりも長くなっている(L1<L2)。これにより、図1図2の状態よりもライナー22におけるシールリング15,16の接触位置を機内側にずらし、ライナー22の平滑な面でシールリング15,16を接触させることができる。
【0058】
このとき、リテーナ11の凸部11dがディスタンスリング12’の凹部12e’に嵌合し、ディスタンスリング12’の凸部12d’がインフレータブルシール30の凹部31dに嵌合するため、リテーナ11とディスタンスリング12’とインフレータブルシール30との軸芯ずれを抑制できる。
【0059】
尚、ディスタンスリング12よりも軸方向寸法が短いディスタンスリングに変更することによりシールリング15,16の接触位置を機外側にずらしてもよい。
【0060】
また、別の態様として、図4に示されるように、図1の状態からディスタンスリング12を取外し、リテーナ11とインフレータブルシール30のケース31とを直接接続する。これにより、図1図2の状態よりもライナー22におけるシールリング15,16の接触位置を機外側にずらし、ライナー22の平滑な面でシールリング15,16を接触させることができる。
【0061】
このとき、リテーナ11の凸部11dがインフレータブルシール30の凹部31dに嵌合するため、リテーナ11とインフレータブルシール30との軸芯ずれを抑制できる。
【0062】
以上説明したように、本実施例のシール装置1は、周面シール体10がハウジング3の一部を構成するインフレータブルシール30に対して周面シール体10のシールリング15,16の軸方向位置を変更して装着可能になっている。これによれば、メンテナンス時にシールリング15,16の軸方向位置が変更されるように周面シール体10をシールリング15,16に装着することができるため、ライナー22の平滑な面でシールリング15,16を摺動させることができ、長期に亘って密封性を確保できる。
【0063】
また、周面シール体10は、スペーサ部としてのリテーナ11およびディスタンスリング12を介してインフレータブルシール30に固定されている。これによれば、リテーナ11およびディスタンスリング12の軸方向の長さが異なるように変更することで、シールリング15,16の軸方向位置を簡便に変更できる。
【0064】
また、スペーサ部は、シールリング15,16を保持するリテーナ11と、リテーナ11とインフレータブルシール30との間に配置されるディスタンスリング12と、から構成されている。これによれば、リテーナ11とディスタンスリング12との取付け態様によりシールリング15,16の軸方向位置を細やかに調整できる。例えば、リテーナ11およびディスタンスリング12の一方または両方の軸方向長さを変更することでシールリング15,16を様々な軸方向位置に変更できる。
【0065】
また、ディスタンスリング12(またはディスタンスリング12’)とインフレータブルシール30とが凹凸嵌合している。これによれば、ディスタンスリング12(またはディスタンスリング12’)とインフレータブルシール30の軸心ずれを抑制できる。
【0066】
また、リテーナ11とディスタンスリング12(またはディスタンスリング12’)とが凹凸嵌合している。これによれば、リテーナ11とディスタンスリング12(またはディスタンスリング12’)との軸心ずれを抑制できる
【0067】
ディスタンスリング12,12’とインフレータブルシール30との凹凸嵌合部と、リテーナ11とディスタンスリング12,12’との凹凸嵌合部が同じ形状である。具体的には、インフレータブルシール30の固定面31cと、ディスタンスリング12,12’の機内側端面とは、略同一形状をなし、ディスタンスリング12,12’の機外側端面とリテーナ11の被固定面11cとは、略同一形状をなしている。これによれば、インフレータブルシール30とリテーナ11とを簡便に直接固定することができるため、シールリング15,16の軸方向位置をさらに細やかに調整できる。
【0068】
また、ディスタンスリング12,12’とインフレータブルシール30との間と、前記ディスタンスリング12,12’とリテーナ11との間と、にガスケット8,9が配置されている。これによれば、ハウジング3に対するディスタンスリング12,12’とリテーナ11の傾きを抑制できるため、インフレータブルシール30とディスタンスリング12,12’とリテーナ11との軸心ずれを効果的に抑制できる。
【0069】
また、ガスケット8,9は、凹凸嵌合部において径方向に対向する面同士の間に配置されていないため、言い換えれば、ディスタンスリング12,12’とインフレータブルシール30、ディスタンスリング12,12’とリテーナ11が径方向に対向する面においてそれぞれ直接接触しているため、ディスタンスリング12,12’とインフレータブルシール30、ディスタンスリング12,12’とリテーナ11に傾きが生じることを抑えることができる。
【0070】
また、ガスケット8,9は、装着ボルト5の近傍に配置されるので、ガスケット8,9が装着ボルト5と径方向にずれて配置される形態に比べてディスタンスリング12,12’とインフレータブルシール30、ディスタンスリング12,12’とリテーナ11に傾きが生じることを抑えることができる。
【0071】
また、ハウジング3は、周面シール体10よりも機外側にハウジング3と回転軸2との間を一時的に封止可能なインフレータブルシール30を備えている。これによれば、メンテナンス時にハウジング3内への海水の進入を防ぎつつ、シールリング15,16の軸方向位置を変更することができる。
【実施例0072】
次に、実施例2に係るシール装置につき、図5を参照して説明する。尚、前記実施例と同一構成で重複する構成の説明を省略する。
【0073】
図5に示されるように、実施例2におけるシール装置100は、ディスタンスリング120が弾性を有する部材から構成されている。これによれば、ガスケット8,9を用いずにディスタンスリング120によりインフレータブルシール30とリテーナ11との間を密封することができる。
【0074】
以上、本発明の実施例を図面により説明してきたが、具体的な構成はこれら実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0075】
例えば、前記実施例1,2では、ディスタンスリング12,12’,120の有無や、使用されるディスタンスリング12,12’,120の軸方向寸法の違いにより、周面シール体10のシールリング15,16の軸方向位置が変更される形態を例示したが、リテーナの軸方向寸法を変更することによりシールリング15,16の軸方向位置を変更してもよい。
【0076】
また、前記実施例1,2では、周面シール体10のベース部材13,14が軸方向に分割される形態を例示したが、ベース部材は軸方向に連続する1つの部材から構成されていてもよい。尚、メンテナンスの作業性の観点からベース部材は周方向に分割されていることが好ましい。
【0077】
また、周面シール体10のベース部材の軸方向複数箇所にシールリング15,16を取付ける取付部を設け、シールリング15,16を取付ける取付部を適宜選択することでシールリング15,16の軸方向位置を変更してもよい。
【0078】
また、前記実施例1,2では、シール部として2つのシールリング15,16が設けられている形態を例示したが、シール部は1つであってもよい。
【0079】
また、前記実施例1,2では、シールリング15,16がリップシールである形態を例示したが、リップシールに限られず、回転軸に摺接する部位を有する他の形態のシールリングであってもよい。
【0080】
また、前記実施例1,2では、ディスタンスリングとハウジングとの凹凸嵌合部、リテーナとディスタンスリングとの凹凸嵌合部は、環状の凸部と環状の凹部とで構成される形態を例示したが、これに限られず、例えば、ピン状の凸部と該凸部に嵌合する凹部とで構成されていてもよい。尚、凹凸嵌合部の構成を省略しても構わない。
【0081】
また、前記実施例1,2では、シールリング15,16が回転軸2のライナー22に当接する形態を例示したが、シャフト21に直接当接していてもよい。
【0082】
また、前記実施例1,2では、ハウジング3の一部として構成されるインフレータブルシール30にディスタンスリング12,12’,120やリテーナ11が装着される形態を例示したが、インフレータブルシール30の構成を省略し、筒状体33にディスタンスリング12,12’,120やリテーナ11を直接装着してもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 シール装置
2 回転軸
3 ハウジング
8,9 ガスケット
10 周面シール体
11 リテーナ(スペーサ)
11d 凸部(凹凸嵌合部)
12,12’ ディスタンスリング
12d,12d’ 凸部(凹凸嵌合部)
12e,12e’ 凹部(凹凸嵌合部)
15,16 シールリング(シール部)
21 シャフト
22 ライナー
30 インフレータブルシール(ハウジング)
31d 凹部(凹凸嵌合部)
100 シール装置
120 ディスタンスリング
図1
図2
図3
図4
図5